JP5050290B1 - シリコン合金蛍光体のシリーズとその製造方法、及び同シリコン合金蛍光体のシリーズを用いた発光装置とその透光材 - Google Patents

シリコン合金蛍光体のシリーズとその製造方法、及び同シリコン合金蛍光体のシリーズを用いた発光装置とその透光材 Download PDF

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Abstract

【課題】シリコン合金蛍光体のシリーズとその製造方法、及び同シリコン合金蛍光体のシリーズを用いた発光装置とその透光材を提供すること。
【解決手段】圧力及び温度を制御しながら行う燃焼合成法により製造された後粉末化され、重量%で、シリコン30〜70、窒素10〜45、アルミニウム1〜40、及び酸素1〜40を含有し、一種又は二種のサイアロン結晶からなり、発光中心となる付活剤元素を添加されたシリコン合金蛍光体と、添加されないシリコン合金蛍光体とを含み、励起源の照射を受けることにより、紫〜青〜緑〜黄〜橙〜赤の可視光線の各域に属するピーク波長を有する蛍光を発する複数のシリコン合金蛍光体からなり、励起源との組合せによって、任意の光色を作り出すことができる蛍光体のシリーズを提供する。これにより、高演色性の白色LED照明器具や任意の光色を発する発光装置を実現できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、高演色性を有する白色LED(発光ダイオード)照明及び任意の光色を作り出すことができる発光装置の実現を可能とする、種々の波長を有する蛍光を発するシリコン合金蛍光体のシリーズとその燃焼合成法、及び同蛍光体を用いた発光装置と同発光装置用透光材に関する。
近時、LEDや有機EL等、「次世代照明」の研究開発が加速している。
とりわけ白色LEDは、発光効率(lm/W)が高く、消費電力削減による環境負荷の低減、超寿命、水銀等の有害物質や割れやすいガラスを使用しないこと等、数々の利点があることから活発な研究開発が行われてきており、既に携帯電話の光源等として普及している。今後、蛍光灯をも超える更なる高効率化が期待されることから、近時研究開発が一層活発化しており、一般の家庭やオフィス等で使用される屋内灯としての普及、将来的には現在一般的に使用されている蛍光灯に置き換わることが待ち望まれている。
しかし、現状の白色LEDは、自然光とは大きく異なる不自然な光色であるため、屋内灯としては未だ不適当であり、より自然な光を放つ、所謂演色性(物体の色の見え方に及ぼす光源の性質・影響)の良い照明用白色LEDが求められている。
白色光は、紫−青−緑−黄−橙−赤という可視光線の全域に渡って連続したスペクトルによって実現される光である。しかし、人間の目には、光の三原色(RGB:赤、緑、青)の混合や、補色関係(色相環で正反対に位置する関係)にある2色、例えば赤と緑、青と橙、黄と紫等の混合も白色に見えるため、この効果を利用して白色光の代用とする手法で、白色LEDの研究開発が進められてきた。
前者の効果を利用したのが、赤、緑、青色のLEDのチップを用いて1つの発光源とする手法である。このような3色LEDは、大型の映像表示装置等の発光素子として使用されているが、黄・シアンのスペクトルが欠落しているため、自然光とは程遠く、照明用には適さないとされる。
これに対し、後者の効果を利用したのが、青色LEDと蛍光体とを組合わせる手法である。蛍光体による発光は、吸収したエネルギーよりも低エネルギー、すなわち、より長い波長の光を発するものであり、蛍光体が受けた光より波長の短い光は得られないため、白色LEDの実現には、比較的波長の短い青色のLEDが必要であった。青色LEDの普及とこの方式の開発により、白色LED開発も加速した。
この方式は、蛍光体を分散させた樹脂製の封止材でLEDのチップを覆う構造で、蛍光による光と蛍光体を透過した光の混合により白色光を得ることができる。具体的な構造としては、非特許文献1、2の図1のように、砲弾型、表面実装(SMD:Surface Mount Device)型等がある。単一のチップとそれを覆うパッケージのみで白色発光が実現できるため、高効率且つ低コストという利点があり、この方式が白色LED開発の主流となっている。中でも、青色LEDと視感度の高い黄色蛍光体とを組合わせることで非常に明るい白色を実現した、青黄色系擬似白色LEDが追究されてきた。近時の白色LEDの進歩は目覚しく、直管型蛍光等の発光効率100lm/Wを超える白色LEDも出現している。
これは、以下のような原理に基づくものである。すなわち、色の感覚は、網膜内にある3種類の錐体細胞が吸収する可視光線の割合によって生まれる。これらはそれぞれ、長波長、中波長、短波長に反応するもので、赤(L)錐体、緑(M)錐体、青(S)錐体とからなる。赤錐体・緑錐体は、進化の過程で分離したものであるため、波長感度が近く、橙色付近で重なりが見られる。このため、黄色の光を用いると、1つの波長で赤錐体・緑錐体の双方に感受させることができる。ここに青い光を加えると、人間の目には青、緑、赤の3色の光を感じたのと同じ結果が生じ、白い光を感じさせることができる。
そして、蛍光体は、無機又は有機材料に発光中心元素を微少量添加したものであり、青黄色系擬似白色LEDの場合、この発光中心が、青色の波長を吸収して黄色の波長を出すという作用を有する。このため、蛍光体が発する黄色の波長と蛍光体に吸収されずに透過した青色の波長とが組み合わさることにより、白色に発光する。
しかし、この手法によると、現実には赤と緑のスペクトルが欠落しているため、やはり不自然な白色で、演色性が不十分であり、一般的な白色光源としての普及には至っていない。一口に「白色」と言っても、昼光色・昼白色・白色という色温度の高い白色と、温白色・電球色という色温度の低い温かみのある白色があり、青黄色系擬似白色LEDでは後者の白色を実現することはできなかった。
そこで、更なる演色性の向上を図り、青色LEDの光を高効率に緑色光に変換する、緑色サイアロン蛍光体が新たに開発され、実用化が図られている。
特許第3921545号公報 特許第3975451号公報 特許第4210761号公報 特許第4339352号公報 特許第4444362号公報
フジクラ技報 No.108、1〜5頁、広崎尚登外、「サイアロン蛍光体を用いた白色LED」(2005年4月) フジクラ技報 No.109、1〜4頁、広崎尚登外、「照明用白色LED」(2005年10月) 東芝レビュー2009 Vol.64 No.4、60〜63頁、「高効率と高演色性をともに実現できる白色LED用緑色サイアロン蛍光体」(2009年)
しかし、現状の蛍光体との組合せでは、やはり演色性に乏しく、更に多種類の波長を有する蛍光体の実用化が求められている。また、製造コストの低減等、下記のような課題もある。
(1)多種の波長を有するシリコン合金蛍光体群の実用化とそのシステム化、それによる演色性の高い屋内灯及び任意の光色を発する発光装置の実用化
限りなく太陽光に近く柔らか味のある、透明光に近い、高演色性の白色LEDが追求されているが、未だ決定的知見は得られておらず、さらなる高演色性に寄与する新規な蛍光体の研究開発が行われている。特に、光源として使用するLEDの発光効率の高い波長において励起効率が高く、波長依存性の少ない発光体の開発が要請されている。
人の視覚に柔らか味を与える自然光は、380〜780nmの波長から構成されている。このスペクトルの全域に渡る波長を有する多数種の蛍光体で構成された白色LEDは、自然光に近い高演色性を有することになるが、現時点では10種程度の蛍光体しか開発されておらず、実用化されているものはさらに限られている。上記した光と色の原理から、さらなる高演色性を有する白色LEDの実現には、種々の波長を有する多数の蛍光体の開発・実用化が必須条件であると言える。
そして、そのような多数種の蛍光体が実用化できれば、所謂「白色LED」に限らず、LED、有機ELやブラックライトを励起源として、任意の光色を作り出し、種々の用途に利用できる発光装置の実用化も可能となる。
このような観点から、目下、Si−Al−O−N固溶体であって、595〜630nmに蛍光スペクトルのピークを有する黄色蛍光体の単相αサイアロン、470〜490nmに蛍光スペクトルのピークを有する緑色蛍光体の単相βサイアロン、及び620nmに蛍光スペクトルのピークを有する赤色蛍光体のカズン蛍光体とが開発され、これらを組合せた3原色による高演色性の白色LEDの実現を狙った開発が行なわれている。
これらの中でも、高輝度を有する緑色蛍光体として、Eu(ユーロピウム)で付活したβサイアロン固溶体が注目されており、バックライト、ヘッドライト等高輝度を要する用途に適しているとされている。しかし、現状の緑色βサイアロン蛍光体は、窒化珪素を原料にした固相焼結法によって製造しているため生産性が極めて悪く、製造原価も極めて高価である。
本発明により、これらの課題が抜本的に解決される。
(2)サイアロン蛍光体の低価格化
現在、緑色蛍光体として最適とされているβサイアロンは極めて高価で、一般的照明器具に適用するには、抜本的な製造方法の改善による低価格化を達成する必要があるとされている。
一般的な製造方法は、原料となる窒化珪素、アルミナ及びイットリア等を、2000℃の窒素雰囲気中で長時間かけて反応させる固相焼成法である。この様にして得られたβサイアロンは塊状であり、極めて高い硬度を有している。蛍光体を用いた発光装置は、蛍光体の微粒子を混入させた封止樹脂で励起源を覆う構造であるから、クラッシャ等の粉砕器で長時間かけて粉砕して蛍光体粉末を製造しなければならない。さらに、固相焼成時に生成するガラス相を除去する目的で、粉砕後に酸処理が行なわれており、そのコストは膨大である(特許文献3参照)。
本発明によりこれらの課題が解決される。
(3)サイアロン蛍光体の高輝度化
現状のサイアロン蛍光体は、未だ輝度が不十分であり、一般照明器具用として普及させるためには、さらなる高輝度化が求められる。
特許文献1〜3及び非特許文献1〜3に示される様に、従来、βサイアロンは、主要原料である窒化珪素粉末にアルミナ及びイットリア等の粉末を混合し、窒素雰囲気において高温度で焼成されて合成されている。窒化珪素からβサイアロンが合成されるメカニズムは、固相域でのアルミニウム及び酸素の拡散反応によるものである。焼成時間の経過と共に、窒化珪素がβサイアロンに除々に変態するが、窒化珪素が100%βサイアロンに変態することは物理現象論的に不可能である。そのために、窒化珪素が相当量に残存する(特許文献1、2参照)。併せて、焼成時にガラス相が生成される(特許文献3参照)。窒化珪素及びアモルファスの両相は、βサイアロンの蛍光体としての輝度を妨げる不純物相である。
換言すれば、残存窒化珪素及びアモルファス相の生成なしにβサイアロンが合成できれば、高輝度のサイアロン蛍光体が得られるということである。
本発明により、これらの課題が解決できる。
(4)サイアロンの高耐熱性活用による発光装置の高寿命化
蛍光体には、温度上昇や長時間の駆動により、効果が低下する温度消光という現象が見られる。このため、蛍光体を用いた照明器具には、高出力を得るために大きな電力を投じると発熱が増え、発熱により高温になると発光効率が落ちる、という弱点がある。従って、より高温に耐え得る蛍光体が求められる。
よって、本発明は、多数の波長を有する種々のシリコン合金蛍光体群の中から適宜選択して組合わせ、屋内灯として使用可能な自然な光を放つ白色LEDや、任意の光色を発する発光装置を実現し、同時にこれを低価格で提供することを可能とし、また、より高輝度、高耐熱性の蛍光体を提供することにより、次世代照明の普及を促進することを目的とする。
本発明は、燃焼合成装置内圧力を1MPa以下、該装置内に設けられた反応容器内温度を2000℃以下に制御しながら行う燃焼合成法により製造された後粉末化され、
重量%で、シリコン30〜70、窒素10〜45、アルミニウム1〜40、及び酸素1〜40を含有するシリコン合金蛍光体のシリーズであって、
1重量%以下の1種又は2種以上の発光中心となる付活剤元素を添加された前記シリコン合金蛍光体と、前記付活剤元素を添加されない前記シリコン合金蛍光体とを含み、
前記シリコン合金蛍光体は、一種又は二種のサイアロン結晶からなり、
励起源の照射を受けることにより、それぞれ、380〜430nmの紫色域、430〜490nmの青色域、490〜550nmの緑色域、550nm〜590nmの黄色域、590〜610の橙色域、610〜780nmの赤色域からなる可視光線の各域に属するピーク波長を有する蛍光を発する複数のシリコン合金蛍光体からなり、
励起源と、該励起源を覆う透光材に含まれる前記シリコン合金蛍光体との組合せによって、任意の光色を作り出すことができることを特徴とするシリコン合金蛍光体のシリーズによって前記課題を解決した。
また、本発明は、重量%で、シリコン30〜70、窒素10〜45、アルミニウム1〜40、及び酸素1〜40を含有するシリコン合金蛍光体の製造方法であって、
圧力と温度の制御手段と、反応容器とを具えた燃焼合成装置を用い、
前記反応容器中に、金属シリコン、アルミニウム、アルミナ及び/又はシリカを供給し、
1重量%以下の1種又は2種以上の発光中心となる付活剤元素を添加し、又は前記付活剤元素を添加せずに、
前記燃焼合成装置内を真空状態とした後、所定量の窒素を供給し、
前記反応容器中に充填された金属シリコン、アルミニウム、アルミナ及び/又はシリカに着火して燃焼させ、
前記燃焼合成装置内圧力を1MPa以下、前記反応容器内温度を2000℃以下に制御しながら行う燃焼合成法により合成した後、
粉砕して微粉末化することによって、
一種又は二種のサイアロン結晶からなり、
励起源の照射を受けることにより、それぞれ、380〜430nmの紫色域、430〜490nmの青色域、490〜550nmの緑色域、550nm〜590nmの黄色域、590〜610の橙色域、610〜780nmの赤色域からなる可視光線の各域に属するピーク波長を有する蛍光を発し、
励起源と、該励起源を覆う透光材に含まれる前記シリコン合金蛍光体との組合せによって、任意の光色を作り出すことができるシリコン合金蛍光体のシリーズを構成することを特徴とするシリコン合金蛍光体のシリーズの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、励起源と、該励起源を覆う透光材とを有する発光装置であって、
前記透光材は、請求項1から3のいずれかのシリコン合金蛍光体のシリーズを構成するシリコン合金蛍光体であって、380〜430nmの紫色域、430〜490nmの青色域、490〜550nmの緑色域、550nm〜590nmの黄色域、590〜610の橙色域、610〜780nmの赤色域のうち、少なくとも4種の異なる波長域に属するピーク波長を有するシリコン合金蛍光体が、合成樹脂に混練されてなり、
励起源との組合せによって、任意の光色を作り出すことができるように構成されていることを特徴とする発光装置を提供する。
さらにまた、励起源を覆う透光材であって、
前記透光材は、請求項1から3のいずれかのシリコン合金蛍光体のシリーズを構成するシリコン合金蛍光体が、合成樹脂に混練されてなり、
前記シリコン合金蛍光体が、380〜430nmの紫色域、430〜490nmの青色域、490〜550nmの緑色域、550nm〜590nmの黄色域、590〜610の橙色域、610〜780nmの赤色域のうち、少なくとも4種の異なる波長域に属するピーク波長を有する蛍光を発し、
励起源との組合せによって、任意の光色を作り出すことができるように構成されていることを特徴とする発光装置用透光材を提供する。
(1)「パレット方式」の実現とそれによる演色性の高い屋内灯、任意の光色を発する発光装置の実用化
本発明により、種々の波長を有するサイアロン蛍光体を提供することが可能となる。予め準備した波長の異なる多数のサイアロン蛍光体粉末から、目標とする白色その他の光色に応じた複数の波長を有する蛍光体粉末を適宜選択し、これらを、LED素子等の励起源を覆う透光材に均一混入することにより、高演色の自然光に近い白色LEDや目的に応じた所望の光色を有する発光装置の製造が可能となる。従ってまた、上記の光と色の原理によれば、光源も、一般的な青色LEDに限らず、近時商品化されてきている紫外LEDや近紫外LEDであってもよく、本発明によれば、光源も含めて、自由な組合せにより、所望の光色を得ることができる。
この様に、本発明が提供する、無数の蛍光体から複数の蛍光体を適宜選択し組合わせる方式を「パレット方式」と呼ぶこととする。このパレット方式の実現により、特に屋内灯としての白色LEDの普及、その他の照明・発光手段への代替が進めば、膨大な省エネルギー効果が達成できる。
(2)サイアロン蛍光体の低価格化
発明者等が既に特許化している燃焼合成法によれば、酸素含有量が多く、鉄等の金属元素等を不純物元素として含有する低価格金属シリコンを原料として用いることができ、これをアルミニウム等とともに窒素雰囲気中で燃焼させることにより、短時間でサイアロン微細結晶を合成することができる。燃焼合成反応による発熱反応によりサイアロンが合成されるため、合成時に投入するエネルギーは皆無であり、合成時間も短時間である。その上、得られる結晶は極めて微細なため、粉砕に要する時間も極めて短時間である。また、燃焼合成法ではガラス相が生成されないため、酸処理工程も不要である。
そして、本発明で提案する全てのサイアロン蛍光体が、燃焼合成法により合成され得ることは言うまでもない。従って、従来技術に比し、はるかに多くの種類の蛍光体を、はるかに低価格で提供することが可能となる。
(3)サイアロン蛍光体の高輝度化
燃焼合成反応は、気体状態で進行する。反応終了とともに、燃焼合成による発熱は終了する。気体は自然冷却を始め、トレイ上に、エピタキシャル成長により結晶を構成する。その平均直径は、3〜5μmの微細針状結晶である。蛍光体としての輝度は結晶性に依存することから、発明者等の開発した燃焼合成法によれば、高輝度のサイアロン蛍光体が得られる。このプロセスは燃焼合成における必須プロセスであり、この必須プロセスによる高結晶化が、サイアロン蛍光体の高輝度化に大きく寄与している。
また、上記のとおり、従来の固相合成法によると、蛍光体としての輝度を妨げる不純物相となる窒化珪素及びアモルファスの両相が生成される。これに対し、燃焼合成によると、投入した原料は全て気化し、気体からの冷却により高純度のサイアロン固溶体がエピタキシャル生成する。投入原料の残存は皆無である。このため、固相焼成法で認められる原料の残存は皆無であるとともに、アモルファス相も存在しないという大きな特徴がある。
さらに、粉砕後に1500℃以下の焼鈍工程を付加することにより、結晶の再配列が可能となるため、更なる高輝度化が可能となる。
(4)サイアロンの高耐熱性の活用による発光装置の高寿命化
本発明によるサイアロン蛍光体は、高温強度、高温での耐酸化性に優れているので、発光装置の高寿命化に貢献できる。
これらの効果が相俟って、屋内灯用の演色性の高い白色LEDの普及が可能となる。白色LEDは、白熱電球の10倍以上に及ぶ発光効率達成の可能性も高く、大電流用途への適用により、消費電力低減に大きく貢献することができる。
本発明のシリコン合金蛍光体を合成するための制御型燃焼合成装置の概念的構成図。 各種サイアロンの組成領域を示す、燃焼合成で構成した50Si−Al−N−Οの三元系状態図。 οサイアロンが40%(οサイアロン+βサイアロンの共晶組織が60%)の組成を有するサンプルが、異なる2種のサイアロン結晶から構成され、且つ窒化珪素・アモルファス相を含有していないことを示すX線回折像。 460nmの波長で励起したβサイアロン単相100%のサンプルの蛍光スペクトル。 βサイアロンとοサイアロンの量比の変化に伴う、蛍光体の発光波長の変化を示す図。 βサイアロンの格子定数aの変化に伴う、蛍光体の発光波長の変化を示す図。 258nmの紫外線で励起したβサイアロン単相100%のサンプルの蛍光スペクトル。 258nmの紫外線で励起したβサイアロン単相100%の他のサンプルの蛍光スペクトル。 不純物量が蛍光体の発光強度に及ぼす影響を示す図。 燃焼合成法により合成したβサイアロンの結晶の写真。 粉砕後の粒径が発光強度に及ぼす影響を示す図。 (200)面ピークの半価幅と発光強度との関係を示す図。 粉砕後の焼鈍の温度と発光強度の関係を示す図。 白色LED照明器具のSMD型パッケージの一例を示す図。
以下、図面を参照しつつ、本発明について詳述する。なお、以下では、近時特に改良が求められている白色LEDを中心に論ずるが、上記してきたとおり、本発明はこれに限られるものではなく、同様の論理から、任意の光色を発する発光装置の実現も可能としたものである。
表1は、白色LED発光技術として活用されている、蛍光体材種別発光色と励起源の最新の組合せ状況である。
最も自然光に近い組合せは、励起源として青色の光を発する化合物半導体と、波長470〜490nmで黄緑の蛍光を発するβサイアロンとの組合せ(表中◎)とされている。しかし、この種の白色LEDは、輝度の点では優れているものの、自然光に比較した演色性が不十分であることから、青色LEDに別色のLEDを組合せることや、複数の蛍光体を組合せる方法が検討されている。
しかし、380〜780nmの波長から構成され、複数光色の組合せからなる自然光の足元に及ばないのは、言わば当然である。従って、結論的には、極めて多数の波長を有する蛍光体を開発することが必須であり、且つ、その多数種類の蛍光体を、低コストで、適宜選択し組合わせることのできるよう、一連のシリーズとして提供し、一つのシステムとして提示することが望まれる。
この課題は、以下の方法で解決することができる。
本発明者等は、地中に大量に存在する低価格シリコンを活用した、制御型燃焼合成法によるSi−Al−O−N固溶体の製造方法、これに用いる制御型燃焼合成装置、及び同固溶体の粉末を用いた焼結体の製造方法を発明し、これらは、「シリコン合金の燃焼合成方法及び燃焼合成装置」、「シリコン合金焼結体の製造方法」として既に特許を得ている(特許文献4、5)。すなわち、Si−Al−O−N固溶体は、一般にサイアロンと呼ばれているが、発明者等が開発した制御型燃焼合成法によって製造したSi−Al−O−N固溶体(の粉末を原料とした焼結体)は、金属様の特性を有し、鉄鋼に代替し得る構造材料として利用可能であることから、発明者等はこれを「シリコン合金」とし、その実用化を推進してきた。
以下でも、発明者等が開発した制御型燃焼合成方法によって得られるサイアロンを「シリコン合金」として論ずる。
この技術を活用して、シリコン合金をEuで付活したところ、緑色蛍光体であるβサイアロンの燃焼合成に成功し、100%の収率で、発光波長のピークが500nm前後の緑色蛍光体を得ることができた。
しかも、燃焼合成後に生ずる、気体→固体への変化の際のエピタキシャル結晶成長により、良好な微細結晶が得られ、この微細な結晶性から極めて良好な蛍光発光強度が得られた。
さらに、以下の様な検証を行うとともに、シリコン合金製造技術の応用技術として、サイアロン蛍光体の製造技術を確立することができた。
発明者等は、シリコン合金の燃焼合成方法について上記特許出願をした後も、燃焼合成の実験で、図2に示す多数の単相サイアロンの合成に成功している。この中には、緑色蛍光体となるβサイアロンの他、黄色蛍光体となるαサイアロンも含まれている。この他に、οサイアロン、χサイアロン及びRサイアロンも合成できている。
さらに、これらの単相間に存在する領域には、それぞれの相の複合相域が構成され、2種の単相サイアロンの共晶反応で形成される、量比の異なる二相構造を有する無数の二相サイアロンが存在している。それぞれの相の量比の違いによる物性の変化を勘案すると、無限数のサイアロンが得られることになる。
発明者等は、燃焼合成時の冷却速度を毎分50℃以下に制御して冷却する制御冷却法により、βサイアロン相とοサイアロン相とが混在して組織構造を構成する二相共晶シリコン合金が得られることを発見し、特願2010−246540(二相共晶シリコン合金とその製造法、及び同シリコン合金粉末を用いた焼結体の製造方法)として、既に特許出願している。
これらの無限数のサイアロンに発光中心元素を添加することにより、異なる視感色を有する多数のサイアロン蛍光体を製造することができると考えられる。
これらのサイアロンは、以下の様に、本発明者等が既に特許化・実用化している燃焼合成装置(図1)及び燃焼合成法を用いることにより、容易に合成することができる。
すなわち、圧力と温度の制御手段と、反応容器とを具えた燃焼合成装置を用い、装置内を真空状態とした後、所定量の窒素を供給し、反応容器中に充填された金属シリコン、アルミニウム、アルミナ及び/又はシリカに着火して燃焼させ、装置内圧力を1MPa以下、反応容器内温度を2000℃以下に制御しながら行う方法により、燃焼合成する。目標とするサイアロン組成を合成できる様、既存実績データをベースに歩留を加味して上記の原料を正確に秤量し、供給する。なお、窒素は、燃焼合成反応の際に組成バランス量として気相中に平衡的に含有されるので、固体成分を正確に秤量投入すれば、目標とする任意のシリコン合金を容易に合成することができる。
より具体的には、真空状態とした装置10内に、所定量の窒素を供給し、金属シリコン、アルミニウム、アルミナ及び/又はシリカを装置内の反応容器20中に供給して、着火機構22によって着火、燃焼させる。圧力センサ24により装置内の圧力を検出し、窒素供給機能と装置内の反応ガス排出機能とを具えたガス圧力制御弁26により装置内の圧力を制御し、温度検知手段28により反応容器20内の温度を検出し、温度検知手段28により検出された温度に応じて、装置全体を覆う水冷ジャケットによる第1冷却機構30と、装置内に設けた冷却用プレートによる第2冷却機構32に供給される冷却水量を制御して、反応容器20内の温度を制御し、装置内圧力を1MPa以下、反応容器内温度を2000℃以下に制御しながら燃焼合成する。
この合成方法及び合成装置を用いれば、通常の電気炉還元精錬によって硅石又は硅砂から製造される金属シリコンの内、半導体用途用の酸素含有量の少ない高価格の高グレード金属シリコンではなく、酸素含有量が多く、且つ、鉄等の金属元素等を不純物元素として含有する低価格金属シリコンを、原料として用いることができる。
また、この制御型燃焼合成によって得られるシリコン合金は、短時間で粉末化することができ、且つ、粒度の揃った粉末を得ることができるという点でも優れている。良好な粉砕性により、超微粉末への加工が、短時間、低コストで実施できる。
さらなる実験により、Eu、Ce(セリウム)、Sm(サマリウム)、Mn(マンガン)等の発光中心元素を添加して燃焼合成する場合も、全く同様に燃焼合成することができることが分かった。そして、この様にしてEu等の付活剤(発光中心元素)を添加して得た燃焼合成シリコン合金は、それぞれ固有の波長を有する蛍光体であることを見出した。換言すれば、これら種々の発光中心元素を添加したシリコン合金によって、無数の異なる波長を有する無数の蛍光体群を構成することができることが判明した。
これにより、αサイアロン(黄色)−βサイアロン(緑)−カズン蛍光体(赤)が最適と考えられている現状の蛍光体の組合せを一気に多様化することができ、自然光に近い高演色特性を有する白色LEDを得る高い可能性が期待される。
(1)高演色性、パレット方式の実現手段
図2において、各符号はそれぞれ以下のサイアロンの組成領域を示している。
1:βサイアロン
2:βサイアロン+οサイアロン
3:οサイアロン
4:βサイアロン+χサイアロン
5:οサイアロン+χサイアロン
6:χサイアロン
7:Rサイアロン
8:αサイアロン
微量の付活剤(発光中心元素)Euを添加した複数の二相共晶シリコン合金(図2の領域2:βサイアロン+οサイアロン)の微細粉末を、燃焼合成法及び制御冷却法により合成し、その組成を、図2の矢印の方向に変化させた(Al≒5重量%に固定)。
表2に、それぞれの燃焼合成シリコン合金の化学成分値を示す。これらの内、οサイアロンが40%(すなわち、οサイアロン+βサイアロンの共晶組織が60%)の組成を有するサンプルのX線回折像を図3に示す。図3から、οサイアロンとβサイアロンの二相で構成されていることが分かる。
これらのシリコン合金を、日立F−4010分光蛍光光度計を用いて、蛍光体からの発光スペクトルが極大値を示す波長を求めた。なお、照射する励起波長を220nmから50nm毎に変化させて520nmまで連続的に測定をし、強い蛍光を発する励起波長を探した。測定スピードは240nm/minである。
その結果、励起波長460nmで相対強度の高い蛍光スペクトルの得られることを見出した。οサイアロンの面積率が0%、すなわちβサイアロン単相100%のサンプルの分光蛍光光度計による測定結果の例を図4に示す。励起光波長は460nm、蛍光スペクトル波長は530nmであった。そして、図5に示されているように、οサイアロンの面積率が0〜40%のシリコン合金においては、極大蛍光波長が530nm(緑色域)、40〜60%のものは530〜590nm(緑−黄色域)、60〜100%のものは590nm(橙色域)と変化している。
図中、横軸=0%は、Si6−ZAl8−Z(0<Z≦4.2)において、Z=1のβサイアロン単相100%であることを意味しており、既述のとおり、これが緑色蛍光体として利用できることは既に知られていた。しかし、本発明により、οサイアロンの比率が増加するにつれて発光色は黄色味を帯び、οサイアロン100%で極大蛍光波長が590nmの橙色となる、というように、異なるサイアロンの二相混合体では、各サイアロンの発する固有波長が混ざり合い、それぞれのサイアロンの量比の変化に伴って、視感色が連続的に変化する蛍光体発光色が得られることについて新たな知見が得られた。これは、所望の視感色を有する極めて多数種の蛍光体からなる「パレット」を得ることが可能となり、さらにそれらを組合わせることにより、用途に応じた適切な光色の発光装置が実現できることを意味する。
なお、付活剤を添加しない場合にも、385nmの波長を有する赤紫色の蛍光発光が認められた。これは、多数の蛍光発光体を組合せる際に活用することができる。
また、βサイアロン相とοサイアロン相とが混在する二相領域では、両相のスペクトルが混在することから、スペクトルの半価幅は各相単独の場合のほぼ2倍となり、幅広い波長領域を有する蛍光を発することが分かった。これは、2種以上のサイアロン相が同時に存在することによって生じた効果であり、これにより、より高度な演色性が得られることは、本発明の特徴且つ有利な効果である。
上記のとおり、βサイアロン+οサイアロンの他、βサイアロン+χサイアロン(図2の領域4)、οサイアロン+χサイアロン(図2の領域5)の生成領域も存在する。これら種々の二相からなるシリコン合金蛍光体によって、波長領域の拡大と、それによる演色性の向上を図ることができる。
図2のβサイアロン単相固溶体領域(記号1)内においては、窒素の含有量を減らしアルミニウムと酸素の含有量を増やす方向で(図中1の左下から右上へ)構成元素の組成比を変化させることにより、結晶格子は大きくなり、格子の1辺を表すa軸(格子定数a)は、0.760nm→0.780nmと連続的に変化する。これらの組成のβサイアロンについて、微量の付活剤(発光中心元素)Euを添加した場合の格子定数と蛍光発光波長との関係を図6に示した。格子定数が0.760nm→0.780nmと変化するのに伴い、蛍光発光波長は、520nm→585nmとなっている。すなわち、その蛍光色は、緑→黄→黄橙と変化している。
このように、βサイアロン単相固溶体においても、構成元素含有量を変化させて格子定数aを変化させることにより、得られる蛍光体の発光波長を変化させることができる。
以上のように、シリコン合金組成図(図2)から、付活剤(発光中心元素)を添加したシリコン合金によって、極めて多数の幅広い波長を有する蛍光体を提供することができることが分かる。
また、表2における、οサイアロンの面積率が0%、すなわちβサイアロン単相100%の付活剤無添加の固溶体に、波長220〜270nmの紫外線を照射したところ、397〜450nmに発光波長のピークを有する蛍光を認めた。すなわち、βサイアロン固溶体は、付活剤無添加で、低波長域の紫外線に励起されて、紫〜青色の蛍光を発する。
例として、258nmの紫外線で励起したサンプルの蛍光スペクトルを図7、図8に示す。それぞれ、420nm、445nmにピークを有する青紫〜青色の蛍光を発していることが分かる。
(2)不純物相を有しないことによる高輝度化
既述のとおり、窒化珪素及びアモルファスの両相は、βサイアロンの蛍光体としての輝度を妨げる不純物相であり、これらの生成なしにβサイアロンが合成できれば、高輝度のサイアロン蛍光体が得られることを意味する。
表2に示された全てのサンプルの表面に、CuKa1の波長のX線を照射して得られた回折線の角度(2θ)を、既知物質の回折データチャート(JCPDSカード)と比較した。その結果、得られた回折線は、全てβサイアロンとοサイアロンのものであった。窒化珪素の回折線は全く検出されず、アモルファス相が存在する場合に一般的に観測される幅広く拡散したX線回折像も検出されなかった。
図3において、横軸の反射角度(2θ)上に、JCPDSカードから得られたβサイアロン(●印)及びοサイアロン(○印)回折線の角度(2θ)を表示した。得られた回折像は、全てβサイアロンοサイアロンに一致している。
図中、JCPDSカードから求めた窒化珪素の回折角度に相当する位置に↑を表示したが、この位置に一致する回折像は全く得られていない。このことから、窒化珪素は全く存在しないことが検証できた。
また、アモルファス相が存在する場合に一般的に観測される幅広く拡散したX線回折像も検出されていない。
α窒化珪素又はβ窒化珪素を原料に、アルミナ、イットリア等と付活剤を添加し、固相焼成法で合成して得られる従来のβサイアロンでは、焼成後に、特許文献1〜3に示される様に、常に原料のα・β窒化珪素が残存する。本発明では、α・β窒化珪素を原料として使用していないため、当然のことながらα・β窒化珪素は皆無であるし、アモルファス相も形成されないことが、図3のX線回折像から検証されている。
これにより、本発明によれば、従来のものより高輝度の蛍光体が得られる。
(3)不純物元素が発光スペクトル相対強度に及ぼす影響
表3に示す化学組成のシリコン合金(βサイアロン)について、Fe、Ca、Mg、Zr等の不純物量が蛍光体の発光強度(輝度)に及ぼす影響を調査した結果を図9に示す。
図9に見られる様に、不純物量が増加するに伴い蛍光スペクトルの相対強度は低下していく。1%を超えると発光強度は50%を下回るから、不純物元素含有量は1%以下が好ましい。
(4)付活剤(発光中心元素)を添加したシリコン合金が広範な成分域で蛍光体としての機能を発揮する例
表4は、様々な組成を有するシリコン合金に、Eu、Ce、Sm等の発光中心元素を添加したときの、蛍光色と極大発光波長を示すものである。シリコン合金に発光中心元素を添加することにより、広範な組成領域に渡り構成されるサイアロンが、様々な蛍光体として機能を発揮することが分かる。
なお、ここに挙げられている発光中心元素は一例に過ぎず、他にも、Sc、Y、La、Pr、Nd、Pm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類元素、表3に挙げられているMn、及びこれらの化合物の1種又は2種以上を選択することができる。母体の元素とこれら発光中心元素との組合せにより、蛍光色にさらなるバリエーションを与えることができる。
(5)燃焼合成法と従来の固相焼結法とによる、サイアロン製造工程の凡その比較
燃焼合成法によれば、極めて短時間でシリコン合金を合成することができる。製造時間は、従来法対比で、1/10以下となり得る。
しかも、得られるシリコン合金は、極めて結晶方位性に優れたものである。燃焼合成法によって得られるサイアロン固溶体の例として、βサイアロンの拡大写真を図10に示した。燃焼合成と同時に気相合成反応が進行し、燃焼合成終了と共に気相が冷却され、図10に示すような単結晶が、エピタキシャル成長により生成される。極めて結晶方位性に優れている様子が認められる。
既述のとおり、蛍光体としての輝度は結晶性に依存することから、本発明によれば、高輝度のサイアロン蛍光体が得られる。
(6)結晶粒径と蛍光スペクトル相対強度との関係
本発明によるシリコン合金蛍光体は、燃焼合成で得られた極めて結晶性の優れた単結晶を粉砕して微粒化し、これを、励起源を覆う透光材に混入して使用する。その際の最適な粒径について、発光強度(輝度)との関係で調査した。
その結果を図11に示す。結晶粒径が10μm以下で発光強度が95%を超えているから、10μm以下であることが好ましい。しかし、余りに微細すぎると発光強度が低下するから、1μm以上5μm以下が最も好ましい。
(7)結晶の完全性と蛍光スペクトル相対強度との関係
結晶を粉砕加工すると結晶に歪が生じ、結晶に歪が生ずると発光強度(輝度)が低下する。蛍光発光強度が最も大きいのは(200)面からの反射光であるから、発生した歪を、X線回折における(200)面ピークの半価幅で評価し、粉砕後の半価幅の増加率と発光強度との関係を図12に示した。
半価幅が増加すると結晶性が低下し発光強度が低下する。10%を超えると発光強度は90%を割るので、粉砕後の半価幅の増加率は10%以下とするのが好ましい。
(8)粉砕後の焼鈍と蛍光スペクトル相対強度との関係
粉砕時に加わる応力により結晶内に歪が生じ、これによって発光強度は低下するが、焼鈍により回復することができる。図13に示すように、1150℃×1時間の焼鈍で90%、1300℃×1時間の焼鈍で100%の回復が見られるが、1500℃、また2時間を超えると、結晶が一部昇華するので、1150℃以上1500℃以下の温度で2時間以内行うのが好ましい。すなわち、同温度まで加熱し1〜2時間保持した後、徐冷する。
以上見てきたとおり、本発明によれば、概要以下のような可視光線の波長の全域に渡る、様々な波長、従って様々な視感色を有する蛍光体を提供することができる。
既述のとおり、本発明によれば、所望の光色に合わせ、無数の蛍光体の中から複数の蛍光体を適宜選択し組合わせる「パレット方式」を実現することができる。これを活用して白色LED照明器具を製造する場合には、励起源のLED等に近い位置に長波長の蛍光体を、励起源から離れるにつれて短波長の蛍光体を配置するとよい。
図13に、SMD型パッケージの一例を示す。Lは励起源のLEDであり、16は基板である(電極等の図示は省略)。樹脂やセラミック等で成型したキャビティ内にLEDチップLを実装した後、蛍光体を分散させたエポキシやシリコーン等の樹脂を封入する。キャビティの内側面は反射板となっており、より多くの光を取り出すことができるようになっている。
なお、既述のとおり、励起源は有機ELやブラックライト等であってもよい。
従来、封止材に混入されるサイアロン蛍光体は、1種か多くても3種であったため、蛍光体の配置・配列については特に考慮されず、蛍光体をランダムに分散させる形で形成されてきた。しかし、他数種の蛍光体を低価格で提供でき、従って任意に組合わせることができる本発明においては、その配置・配列を特に考慮する意義と必要性がある。
この場合、Lに近い程長波長の蛍光体を、Lから離れるにつれて短波長の蛍光体を配置すべく、封止材を層状に形成するとよい。例えば、11に赤〜橙、12に橙〜黄、13に黄〜緑、14に緑〜青、15に青〜紫の蛍光体を分散させた樹脂層を形成する。換言すれば、パッケージ外部から遠い程長波長の蛍光体を、パッケージ外部に近い程短波長の蛍光体を配置することになる。このような構成にすることによって、Lに近くキャビティ底部にある蛍光体の光も遠くまで届くから、様々な波長(色)の光が混ざり合うことにより、より自然光に近い白色照明を得ることができる。
折りしも、首都圏を中心とした電力供給不足は長期化が見込まれており、消費電力の少ないLEDの需要は高まっているが、価格が壁となっている。数個の買替えで済む家庭と比べ、企業等では導入に伴うコストの高さ故に対応が遅れている。しかし、大口の利用者が採用するほど、節電効果が高いことは言うまでもなく、低価格化の実現は急務である。低価格化が実現すれば、屋内照明器具に限らず、種々の電化製品の光源としても活用され得るから、次世代照明の普及も加速させることができる。
また、燃焼合成法によるサイアロン蛍光体製造体制を確立すると同時に、製造したこれら多数種の蛍光体をストックし、安価にかつ容易に任意の蛍光体が入手できる流通システムを構築することにより、本発明の提供する「パレット方式」を実現することができる。この様に開かれた蛍光体販売体制を構築することが、白色LEDを初めとする次世代照明の本格普及には必須であると考えられる。
本発明の適用により、任意の光色を実現する蛍光体が安価に供給されるから、あらゆる場において省電力を達成することができる。電球色による間接照明が好まれるため、蛍光灯が未だ一般家庭に広く受け入れられていない米国においても、エネルギー不足と電気代高騰への対応に関心が高まっているようであり、本発明によって、演色性が高く、所望の白色光を実現できる白色LEDの普及が実現すれば、我が国の主力輸出商品となり得、外貨獲得に貢献できる。
1:βサイアロン
2:βサイアロン+οサイアロン
3:οサイアロン
4:βサイアロン+χサイアロン
5:οサイアロン+χサイアロン
6:χサイアロン
7:Rサイアロン
8:αサイアロン
10:燃焼合成装置
20:反応容器
24:圧力センサ
26:ガス圧力制御弁
28:温度検知手段
30:第1冷却機構
32:第2冷却機構

Claims (9)

  1. 反応容器中に充填された金属シリコン、アルミニウム、アルミナ及び/又はシリカに着火し、燃焼合成装置内圧力を1MPa以下、該装置内に設けられた反応容器内温度を2000℃以下に制御しながら行う燃焼合成法により製造された後粉末化され、
    重量%で、シリコン30〜70、窒素10〜45、アルミニウム1〜40、及び酸素1〜40を含有するシリコン合金蛍光体のシリーズであって、
    1重量%以下の1種又は2種以上の発光中心となる付活剤元素を添加された前記シリコン合金蛍光体と、前記付活剤元素を添加されない前記シリコン合金蛍光体とを含み、
    前記シリコン合金蛍光体は、一種又は二種のサイアロン結晶からなり、
    励起源の照射を受けることにより、それぞれ、380〜430nmの紫色域、430〜490nmの青色域、490〜550nmの緑色域、550nm〜590nmの黄色域、590〜610の橙色域、610〜780nmの赤色域からなる可視光線の各域に属するピーク波長を有する蛍光を発する複数のシリコン合金蛍光体からなり、
    励起源と、該励起源を覆う透光材に含まれる前記シリコン合金蛍光体との組合せによって、任意の光色を作り出すことができることを特徴とする、
    シリコン合金蛍光体のシリーズ。
  2. 前記シリコン合金蛍光体のシリーズを構成する各シリコン合金蛍光体において、シリコン、アルミニウム、酸素及び窒素以外の不純物元素の含有量が1重量%以下である、請求項1のシリコン合金蛍光体のシリーズ。
  3. 前記シリコン合金蛍光体のシリーズを構成する各シリコン合金蛍光体が、粒径10μm以下に粉末化され、X線回折における(200)面ピークの半価幅の粉砕後増加率が10%以下である、請求項1又は2のシリコン合金蛍光体のシリーズ。
  4. 圧力と温度の制御手段と、反応容器とを具えた燃焼合成装置を用い、
    前記反応容器中に、金属シリコン、アルミニウム、アルミナ及び/又はシリカを供給し、
    1重量%以下の1種又は2種以上の発光中心となる付活剤元素を添加し、又は前記付活剤元素を添加せずに、
    前記燃焼合成装置内を真空状態とした後、所定量の窒素を供給し、
    前記反応容器中に充填された金属シリコン、アルミニウム、アルミナ及び/又はシリカに着火して燃焼させ、
    前記燃焼合成装置内圧力を1MPa以下、前記反応容器内温度を2000℃以下に制御しながら行う燃焼合成法により、重量%で、シリコン30〜70、窒素10〜45、アルミニウム1〜40、及び酸素1〜40を含有する、一種又は二種のサイアロン結晶からなるシリコン合金蛍光体のシリーズを合成した後、
    前記シリコン合金蛍光体を粉砕して微粉末化することによって、
    励起源の照射を受けることにより、それぞれ、380〜430nmの紫色域、430〜490nmの青色域、490〜550nmの緑色域、550nm〜590nmの黄色域、590〜610の橙色域、610〜780nmの赤色域からなる可視光線の各域に属するピーク波長を有する蛍光を発し、
    励起源と、該励起源を覆う透光材に含まれる前記シリコン合金蛍光体との組合せによって、任意の光色を作り出すことができることを特徴とする、
    シリコン合金蛍光体のシリーズの製造方法。
  5. 前記シリコン合金蛍光体のシリーズの製造方法において、微粉末化後、不活性環境又は真空環境において1200℃以上1500℃以下での焼鈍を行う、請求項のシリコン合金蛍光体のシリーズの製造方法。
  6. 励起源と、該励起源を覆う透光材とを有する発光装置であって、
    前記透光材は、請求項1から3のいずれかのシリコン合金蛍光体のシリーズを構成するシリコン合金蛍光体であって、380〜430nmの紫色域、430〜490nmの青色域、490〜550nmの緑色域、550nm〜590nmの黄色域、590〜610の橙色域、610〜780nmの赤色域のうち、少なくとも4種の異なる波長域に属するピーク波長を有するシリコン合金蛍光体が、合成樹脂に混練されてなり、
    励起源との組合せによって、任意の光色を作り出すことができるように構成されていることを特徴とする、
    発光装置。
  7. 請求項6の発光装置であって、前記透光材が層状に形成され、前記励起源により近い位置により波長の長いシリコン合金蛍光体を有する透光材層が、前記励起源からより遠い位置により波長の短いシリコン合金蛍光体を有する透光材層が形成されている、発光装置。
  8. 励起源を覆う透光材であって、
    前記透光材は、請求項1から3のいずれかのシリコン合金蛍光体のシリーズを構成するシリコン合金蛍光体が、合成樹脂に混練されてなり、
    前記シリコン合金蛍光体が、380〜430nmの紫色域、430〜490nmの青色域、490〜550nmの緑色域、550nm〜590nmの黄色域、590〜610の橙色域、610〜780nmの赤色域のうち、少なくとも4種の異なる波長域に属するピーク波長を有する蛍光を発し、
    励起源との組合せによって、任意の光色を作り出すことができるように構成されていることを特徴とする、
    発光装置用透光材。
  9. 請求項8の発光装置用透光材であって、前記少なくとも4種の異なる波長域に属するピーク波長を有するシリコン合金蛍光体が各別に合成樹脂に混練され、前記励起源により近い位置により波長の長いシリコン合金蛍光体が、前記励起源からより遠い位置により波長の短いシリコン合金蛍光体が配置されるべく層状に形成されている、発光装置用透光材。
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