〔第1実施形態〕
<クラッチ装置の全体構成>
図1から図3に示すように、クラッチ装置1は、エンジンからトランスミッションの第1入力軸91および第2入力軸92に動力を伝達するための装置であって、入力回転体10と、第1プレッシャプレート組立体37と、第2プレッシャプレート組立体47と、第1クラッチディスク組立体5と、第2クラッチディスク組立体6と、第1摩耗追従機構8Aと、第2摩耗追従機構8Bと、駆動機構7と、を備えている。入力回転体10(より詳細には第1フライホイール3)、第1プレッシャプレート組立体37および第1クラッチディスク組立体5により第1クラッチC1が構成されている。入力回転体10(より詳細には第2フライホイール4)、第1プレッシャプレート組立体37および第2クラッチディスク組立体6により第2クラッチC2が構成されている。第1クラッチC1は、第1入力軸91へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルクローズタイプのクラッチである。一方、第2クラッチC2は、第2入力軸92へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルオープンタイプのクラッチである。例えば、第1クラッチC1が第1速、第3速および第5速において動力を伝達し、第2クラッチC2が第2速および第4速において動力を伝達する。後述するように、第1クラッチC1および第2クラッチC2は駆動機構7を共有しているので、クラッチ装置1の小型化が可能となっている。
なお、以降の説明では、ノーマルオープンタイプのクラッチは、アクチュエータから駆動力が付与されていない状態で、エンジンからトランスミッションへ必要動力を伝達していないクラッチと定義し、ノーマルクローズタイプのクラッチとは、アクチュエータから駆動力が付与されていない状態で、エンジンからトランスミッションへ必要動力を伝達可能なクラッチと定義する。必要動力とは、車両を駆動するために必要な動力であり、アクセルを踏むことなく車両を微速走行させる程度の動力(例えば、クリープ動力)は含まれない。
また、図示はしていないが、図1〜図3において、クラッチ装置1の右側にエンジン、クラッチ装置1の左側にトランスミッションがそれぞれ配置されている。したがって、図1〜図3においてエンジン側は右側、トランスミッション側は左側となる。
<入力回転体10>
入力回転体10は、エンジンから動力が伝達される部材であり、フレキシブルプレート(図示せず)やダンパー(図示せず)を介してクランクシャフト(図示せず)に連結されている。入力回転体10は回転軸Xを中心に回転する。入力回転体10は主に、第1フライホイール3と、第2フライホイール4と、を有している。
(1)第1フライホイール3
第1フライホイール3は環状の第1円板部33を有している。第1フライホイール3は、第2フライホイール4に固定されており、第2フライホイール4と一体回転する。
(2)第2フライホイール4
第2フライホイール4は環状の第2円板部43を有している。第2円板部43は第1円板部33と軸方向に空間を隔てて配置されている。第2フライホイール4は、第1フライホイール3に固定されており、第1フライホイール3と一体回転する。第2フライホイール4はベアリング34を介して第2入力軸92により回転可能に支持されている。ベアリング34は第2フライホイール4の内周部に固定されている。ベアリング34は第2フライホイール4を介して第1フライホイール3も回転可能に支持している。ベアリング34は第2入力軸92に装着されたスナップリング96によりエンジン側への移動を規制されている。これにより、第2入力軸92に対する入力回転体10のエンジン側への移動が規制される。ベアリング34およびスナップリング96が第2クラッチC2をエンゲージ状態に切り替える際の駆動力を受ける。
<第1プレッシャプレート組立体37>
第1プレッシャプレート組立体37は、第1プレッシャプレート39と、第1摩耗追従機構8Aと、を有している。
第1プレッシャプレート39は、第1クラッチディスク組立体5を第1フライホイール3に押し付けるための環状の部材であり、第1円板部33と第2円板部43との軸方向間に配置されている。第1プレッシャプレート39は第1円板部33に対して一体回転可能かつ軸方向に移動可能に配置されている。具体的には、第1プレッシャプレート39は、第1ストラッププレート(図示せず)により第1フライホイール3に連結されている。
第1摩耗追従機構8Aは、第1摩擦部57(後述)の摩耗に起因する第1クラッチC1の荷重特性の変化を低減するための機構であり、第1プレッシャプレート39に装着されている。第1摩耗追従機構8Aは、第1摩擦部57の摩耗量を検出し、検出した摩耗量に応じて駆動機構7に押される支点位置を軸方向に変化させる。これにより、第1摩擦部57が摩耗しても、支点位置はほとんど変化せず、この結果、第1クラッチC1の荷重特性は概ね一定に保たれる。
<第2プレッシャプレート組立体47>
第2プレッシャプレート組立体47は、第2プレッシャプレート49と、第2摩耗追従機構8Bと、を有している。
第2プレッシャプレート49は、第2クラッチディスク組立体6を第2フライホイール4に押し付けるための環状の部材であり、第1円板部33と第2円板部43との軸方向間に配置されている。第2プレッシャプレート49は、第2円板部43に対して一体回転可能かつ軸方向に移動可能に配置されている。具体的には、第2プレッシャプレート49は、第2ストラッププレート(図示せず)により第2フライホイール4に連結されている。
第2摩耗追従機構8Bは、第2摩擦部67(後述)の摩耗に起因する第2クラッチC2の荷重特性の変化を低減するための機構であり、第2プレッシャプレート49に装着されている。第2摩耗追従機構8Bは、第2摩擦部67の摩耗量を検出し、検出した摩耗量に応じて駆動機構7に押される支点位置を軸方向に変化させる。これにより、第2摩擦部67が摩耗しても、支点位置はほとんど変化せず、この結果、第2クラッチC2の荷重特性は概ね一定に保たれる。
<第1クラッチディスク組立体5>
第1クラッチディスク組立体5は、入力回転体10から第1入力軸91へ動力を伝達するためのアッセンブリであり、第1入力軸91に対して一体回転可能かつ軸方向に移動可能に連結されている。第1クラッチディスク組立体5は、第1摩擦部57と、第1入力部材52と、を有している。
第1摩擦部57は第1円板部33と第1プレッシャプレート39との軸方向間に配置されている。第1摩擦部57は第1円板部33および第1プレッシャプレート39と摺動可能に設けられている。第1摩擦部57はクッショニングプレート(図示せず)を含んでいるので、第1プレッシャプレート39と第1円板部33との間に第1摩擦部57が挟み込まれると、クッショニングプレートが軸方向に圧縮され、クッション力が第1プレッシャプレート39および第1円板部33に作用する。
第1入力部材52は、第1摩擦部57から動力が伝達される部材であり、第1摩擦部57と連結されている。第1入力部材52は第1入力軸91に連結されている。
<第2クラッチディスク組立体6>
第2クラッチディスク組立体6は、入力回転体10から第2入力軸92へ動力を伝達するためのアッセンブリであり、第2入力軸92に対して一体回転可能かつ軸方向に移動可能に連結されている。第2クラッチディスク組立体6は、第2摩擦部67と、第2入力部材62と、を有している。
第2摩擦部67は第2円板部43と第2プレッシャプレート49との軸方向間に配置されている。第2摩擦部67は入力回転体10および第2プレッシャプレート49と摺動可能に設けられている。第2摩擦部67はクッショニングプレート(図示せず)を含んでいるので、第2プレッシャプレート49と第2円板部43との間に第2摩擦部67が挟み込まれると、クッショニングプレートが軸方向に圧縮され、クッション力が第2プレッシャプレート49および第2円板部43に作用する。
第2入力部材62は、第2摩擦部67から動力が伝達される部材であり、第2摩擦部67と連結されている。第2入力部材62は第2入力軸92に連結されている。
<駆動機構7>
駆動機構7は、第1クラッチC1および第2クラッチC2の動力伝達を操作するための機構であって、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に軸方向の押付力を伝達する。第1クラッチC1および第2クラッチC2は1つの駆動機構7を共有している。具体的には、駆動機構7は、ダイヤフラムスプリング70と、アシストスプリング75と、第1中間プレート71と、第2中間プレート72と、複数の中間スプリング73と、を有している。
ダイヤフラムスプリング70(レバー部材の一例)は、クラッチ装置1として1つだけ設けられており、第1クラッチC1および第2クラッチC2で共通の部材である。ダイヤフラムスプリング70は第1クラッチC1に対して弾性力を付与するように予め圧縮された状態で配置されている。具体的には、ダイヤフラムスプリング70は、第2フライホイール4により弾性変形可能に支持されており、駆動機構7(後述)を介して第1プレッシャプレート39に軸方向の押付力を付与している。第2フライホイール4には複数の支持部材45が固定されている。複数の支持部材45には2つのワイヤリング46が装着されている。ダイヤフラムスプリング70は2つのワイヤリング46を介して支持部材45により弾性変形可能に支持されている。
ダイヤフラムスプリング70に駆動力を付与していない状態で、ダイヤフラムスプリング70の押付力により第1クラッチディスク組立体5は第1円板部33と第1プレッシャプレート39との間に挟み込まれている。つまり、第1クラッチC1はノーマルクローズタイプである。
アシストスプリング75は、第2クラッチC2をエンゲージ状態に切り替える際の駆動力を低減するために設けられており、第2クラッチC2へダイヤフラムスプリング70を介して伝達される押付力(第2押付力)をアシストしている。具体的には、アシストスプリング75は、コーンスプリングであり、ダイヤフラムスプリング70のトランスミッション側に配置されている。アシストスプリング75は第2フライホイール4に固定された支持部材45により弾性変形可能に支持されている。アシストスプリング75はダイヤフラムスプリング70の内周部に対してエンジン側へのアシスト力を付与している。より詳細には、アシストスプリング75の内周部はレリーズベアリング95により支持されている。これにより、ダイヤフラムスプリング70に付与すべき駆動力を低減することができる。
第1中間プレート71は、ダイヤフラムスプリング70から第1プレッシャプレート組立体37へ押付力(ダイヤフラムスプリング70の弾性力)を伝達するための部材であり、入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。ダイヤフラムスプリング70から第1中間プレート71を介して第1クラッチC1に押付力が付与されている際、第2中間プレート72の一部は、第1中間プレート71と第1プレッシャプレート組立体37との間に挟み込まれる。より詳細には、ダイヤフラムスプリング70に駆動力を付与していない状態で、第1中間プレート71はダイヤフラムスプリング70によりエンジン側に押されている。このとき、第2中間プレート72の一部は、第1中間プレート71および第1摩耗追従機構8Aの軸方向間に挟み込まれている。このため、ダイヤフラムスプリング70の押付力は第1中間プレート71および第2中間プレート72を介して第1プレッシャプレート組立体37に伝達される。
第2中間プレート72は、ダイヤフラムスプリング70から第2プレッシャプレート組立体47へ押付力(アクチュエータ90の駆動力)を伝達するための部材であり、入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70および第2中間プレート72を介して第2クラッチC2に押付力が付与されている際、第1中間プレート71の一部は、第2中間プレート72と第2プレッシャプレート組立体47との間に挟み込まれる。より詳細には、アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70にレリーズベアリング95を介して駆動力が伝達されると、この駆動力はダイヤフラムスプリング70および第2中間プレート72を介して第2プレッシャプレート組立体47に伝達される。このとき、第1中間プレート71の一部は第2中間プレート72および第2摩耗追従機構8Bの間に挟み込まれている。このため、ダイヤフラムスプリング70の押付力は第2中間プレート72および第1中間プレート71を介して第2プレッシャプレート組立体47に伝達される。なお、図2に示す状態で、第1中間プレート71および第2中間プレート72の間には隙間Aが形成されている。隙間Aは中間スプリング73の伸縮量に相当する。また、図1に示すように、隙間Aはダイヤフラムスプリング70の外周部と第2中間プレート72との軸方向間の隙間と概ね同じに設定されている。
中間スプリング73は、ダイヤフラムスプリング70を用いて第1クラッチC1および第2クラッチC2が切り替えられる間に(押付力F11が第1クラッチC1および第2クラッチC2に付与されていない場合に)第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持されるように、第1クラッチC1および第2クラッチC2に対して弾性力F2(連結保持力)を付与する。具体的には、中間スプリング73は、第1中間プレート71および第2中間プレート72の間に予め圧縮された状態で配置されている。本実施形態では、中間スプリング73の弾性力F2は、第1クラッチC1および第2クラッチC2での伝達動力がクリープ動力に概ね等しくなる大きさに設定されている。
ここで、最小動力伝達状態とは、ドライバーがトルク切れを感じない程度の最小動力が伝達されている状態をいう。最小動力とは、例えば、アクセルを踏むことなく車両を微速走行させる程度のクリープ動力が挙げられる。これらの定義は、以降の説明でも同様である。
中間スプリング73は、第1中間プレート71をトランスミッション側に押圧している。中間スプリング73は、第2中間プレート72をエンジン側に押圧している。中間スプリング73は、円周方向に間隔を空けて配置されており、第1中間プレート71および第2中間プレート72により弾性変形可能に支持されている。
<荷重特性>
ここで、クラッチ装置1の荷重特性について説明する。
図4(A)に示すグラフでは、横軸がダイヤフラムスプリング70の作用点P1の軸方向の移動量を示しており、第1縦軸が第1クラッチC1および第2クラッチC2のトルク容量を示しており、さらに第2縦軸が第1中間プレート71および第2中間プレート72の移動量を示している。また、図4(B)に示すグラフでは、横軸が第1クラッチディスク組立体5の第1摩擦部57のたわみ量を示しており、縦軸が第1クラッチC1のトルク容量を示している。
図1に示すクラッチ装置1は、第1クラッチC1がエンゲージ状態となっており、第2クラッチC2がレリーズ状態となっている。ここで、クラッチのエンゲージ状態とは、エンジンからトランスミッションへクラッチを介して必要動力を伝達できる状態を意味しており、クラッチのレリーズ状態とは、エンジンからトランスミッションへクラッチを介して必要動力を伝達できない状態を意味している。図3に示すクラッチ装置1は、第1クラッチC1がレリーズ状態となっており、第2クラッチC2がエンゲージ状態となっている。図4(A)の横軸の右端が図1に示す状態に対応しており、図4(A)の横軸の左端が図3に示す状態に対応している。
レリーズベアリング95に駆動力が付与されていない場合、クラッチ装置1は図1に示す状態となる。具体的には、第1クラッチC1はエンゲージ状態となり、第2クラッチC2はレリーズ状態となる。この状態では、ダイヤフラムスプリング70の弾性力により第1プレッシャプレート組立体37がエンジン側に押圧されている。
第1クラッチC1をエンゲージ状態からレリーズ状態に切り替え、かつ、第2クラッチC2をレリーズ状態からエンゲージ状態に切り替える場合、レリーズベアリング95を介してアクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70に駆動力が伝達される。ダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側に押されると、第1クラッチC1がエンゲージ状態からレリーズ状態に切り替わり、その後、第2クラッチがレリーズ状態からエンゲージ状態に切り替わる。
具体的には、ダイヤフラムスプリング70の内周部がレリーズベアリング95によりエンジン側に徐々に押されると、ワイヤリング46により支持されている部分を支点としてダイヤフラムスプリング70が弾性変形し、ダイヤフラムスプリング70の外周部(作用点P1)がトランスミッション側に徐々に移動する。この結果、ダイヤフラムスプリング70から第1プレッシャプレート組立体37に付与されている押付力F11が徐々に小さくなる。このとき、第1摩擦部57のたわみ量も徐々に小さくなり、第1摩擦部57のクッション力F31に押されて第1中間プレート71および第2中間プレート72が作用点P1とともにトランスミッション側に移動する。
クッション力F31が中間スプリング73の弾性力F2と釣り合う位置に第1プレッシャプレート組立体37が到達すると、そこから先はクッション力F31と弾性力F2とが釣り合うように中間スプリング73が徐々に伸びる。このとき、第2中間プレート72は第1摩耗追従機構8Aに押し付けられた状態となり、第1中間プレート71はダイヤフラムスプリング70の外周部に押し付けられた状態となる。つまり、第1中間プレート71と第2中間プレート72との移動量に差が生じ始める。やがて、第1中間プレート71により第2フライホイール4がトランスミッション側へ押され始め、第2摩擦部67が第2プレッシャプレート組立体47と第2フライホイール4との間に挟み込まれる。中間スプリング73の弾性力F2、第1摩擦部57のクッション力F31および第2摩擦部67のクッション力F32が釣り合う状態になると、ダイヤフラムスプリング70の押付力F11はゼロになるが、弾性力F2により第1クラッチC1および第2クラッチC2のエンゲージ状態がそれぞれ保たれる(図2)。したがって、ダイヤフラムスプリング70の押付力F11がゼロになっても、トルク切れが生じない。
図2に示す状態から、さらにダイヤフラムスプリング70の内周部がレリーズベアリング95によりエンジン側に押されると、今度は第2クラッチC2がエンゲージ状態に移行する。具体的には、第2中間プレート72がダイヤフラムスプリング70によりトランスミッション側に押され、第2中間プレート72がトランスミッション側へ移動する。このとき、中間スプリング73が徐々に圧縮され、第2中間プレート72が第1中間プレート71と軸方向に当接すると、第1中間プレート71、第2中間プレート72および第2プレッシャプレート組立体47がトランスミッション側へ移動する。この結果、第2摩擦部67が第2プレッシャプレート組立体47と第2フライホイール4との間に挟み込まれ、第2クラッチC2がエンゲージ状態となる(図3)。
ここで、アシストスプリング75の作用について図5(A)および図5(B)を用いて説明する。図5(A)はダイヤフラムスプリング70の作用点P1での押付荷重特性を示している。図5(B)はレリーズベアリング95でのレバー駆動力特性を示している。
図5(A)に示すように、ダイヤフラムスプリング70のセット位置P11は第1クラッチC1のエンゲージ状態でのダイヤフラムスプリング70の位置に対応している。レバー駆動力の低減を考慮して、セット位置P11はレリーズ時にダイヤフラムスプリング70の押付荷重が徐々に小さくなるような位置に設定されている。
しかし、ダイヤフラムスプリング70を弾性変形させる力に加えて、第2クラッチC2の連結時には、ダイヤフラムスプリング70を介して第2クラッチC2に対して押付力を伝達する必要がある。図5(B)に示すように、そうすると、図5(B)に示すように、第2クラッチC2のエンゲージ状態では、アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70に伝達されるクラッチ駆動力F4が急激に増大し、アクチュエータ90の負荷が高くなってしまう。
そこで、このクラッチ装置1では、アシストスプリング75によりアクチュエータ90の付加を軽減している。アシストスプリング75は、レリーズベアリング95をエンジン側に押している。つまり、アシストスプリング75のアシスト力F42によりレリーズベアリング95はエンジン側に押されている。したがって、クラッチ駆動力F4の一部を、このアシスト力F42で補うことができ、図5(B)に示すように、アシストスプリング75がない場合に比べて、レバー駆動力F41を全体的に低減できる。
さらに、図5(A)に示すように、レリーズベアリング95に作用するアシストスプリング75のアシスト力F42は、第2クラッチC2のエンゲージ状態付近で最大となるような荷重特性に設定されている。したがって、必要押付力が急激に増大する第2クラッチC2の連結動作時のレバー駆動力F41を効果的に低減させることができる。
<クラッチ装置1の動作>
アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70へ駆動力が作用していない状態では、図1に示すように、ダイヤフラムスプリング70の弾性力が第1中間プレート71および第2中間プレート72を介して第1プレッシャプレート組立体37に伝達されている。この結果、第1クラッチC1を介してエンジンからトランスミッションへ動力が伝達される。
動力伝達ラインを第1クラッチC1から第2クラッチC2に切り替える際、第1クラッチC1および第2クラッチC2が共通のダイヤフラムスプリング70により駆動される。具体的には、第1クラッチC1のエンゲージ状態で、ダイヤフラムスプリング70の内周部にレリーズベアリング95から駆動力が入力されると、ダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側へ移動し、それに伴い、ダイヤフラムスプリング70の外周部(作用点P1)がトランスミッション側へ移動する。この結果、第1プレッシャプレート組立体37に伝達されている弾性力が徐々に小さくなり、第1クラッチC1の伝達動力が徐々に小さくなる。
ダイヤフラムスプリング70の作用点P1がトランスミッション側へ移動すると、第1中間プレート71、第2中間プレート72および中間スプリング73もトランスミッション側へ移動する。このとき、図4(A)に示すように、第1摩擦部57のクッション力F31が中間スプリング73の弾性力F2と等しくなるまでは、第1中間プレート71および第2中間プレート72は軸方向に当接した状態で一体となってトランスミッション側へ移動する。クッション力F31が弾性力F2と等しくなると、クッション力F31が小さくなるにつれて中間スプリング73が徐々に伸びていき、中間スプリング73により第1中間プレート71が第2中間プレート72から徐々に引き離されていく(図4(A)の位置Q1)。このとき、中間スプリング73の弾性力F2が徐々に小さくなり、第1クラッチC1のトルク容量も徐々に小さくなる。このとき、第2中間プレート72は第1摩耗追従機構8Aに押し付けられた状態で軸方向に移動し、第1中間プレート71はダイヤフラムスプリング70に押し付けられた状態で軸方向に移動する。
第1中間プレート71がトランスミッション側へ移動すると、第1中間プレート71が第2摩耗追従機構8Bに当接し、第2プレッシャプレート組立体47が第1中間プレート71によりトランスミッション側へ押される(図4(A)の位置Q2)。この結果、第2クラッチC2のトルク容量が徐々に大きくなり、第2摩擦部67のクッション力F32も徐々に大きくなる。
やがて、中間スプリング73の弾性力F2が第1摩擦部57のクッション力F31および第2摩擦部67のクッション力F32と等しくなると、第2プレッシャプレート組立体47の移動が停止し、第1中間プレート71がダイヤフラムスプリング70の外周部から離れる。この結果、ダイヤフラムスプリング70から作用点P1に作用する押付力F11がゼロになり、第1摩擦部57のクッション力F31、第2摩擦部67のクッション力F32および中間スプリング73の弾性力F2が釣り合った状態となる(図4(A)の位置Q3、図2に示す状態)。このとき、中間スプリング73の弾性力F2により、第1クラッチC1および第2クラッチC2のエンゲージ状態がわずかに保たれる。このときの第1クラッチC1および第2クラッチC2の伝達動力T0は、クリープ動力に概ね等しい。
さらにダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側に押されると、ダイヤフラムスプリング70の外周部により第2中間プレート72がトランスミッション側へ押され始める。この結果、第2プレッシャプレート49と第2円板部43との間に第2クラッチディスク組立体6の第2摩擦部67が挟み込まれ、第2クラッチC2の伝達動力が上昇する。レリーズベアリング95を所定の位置まで駆動すると、ダイヤフラムスプリング70を介して第2プレッシャプレート組立体47に伝達される押付力F12が大きくなり、第2クラッチC2がエンゲージ状態となる。これにより、第2クラッチC2を介して第2入力軸92に動力が伝達される。
第2クラッチC2が連結される際、アシストスプリング75のアシスト力F42がレリーズベアリング95に作用しているので、図5(B)に示すように、第2クラッチC2をエンゲージ状態に切り替える際にレリーズベアリング95に付与すべきアクチュエータ90のレバー駆動力F41が低減されている。
<クラッチ装置1の特徴>
以上に説明したように、このクラッチ装置1では、ダイヤフラムスプリング70を用いて第1クラッチC1および第2クラッチC2が切り替えられる間に(押付力F11が第1クラッチC1および第2クラッチC2に付与されていない場合に)第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持されるように、第1クラッチC1および第2クラッチC2に対して中間スプリング73により弾性力F2(連結保持力)が付与される。したがって、1つのダイヤフラムスプリング70を用いて第1クラッチC1および第2クラッチC2の切り替えを行っても、トルク切れの発生を防止できる。
また、第1クラッチC1および第2クラッチC2が1つのダイヤフラムスプリング70で駆動されるので、1つのアクチュエータ90のみを設ければよく、このため、クラッチ装置1の小型化を実現できる。
以上より、このクラッチ装置1では、トルク切れを防止しつつ小型化を実現できる。
〔第2実施形態〕
前述の第1実施形態では、第1クラッチC1がノーマルクローズタイプであり、第2クラッチC2がノーマルオープンタイプであるが、第1クラッチC1がノーマルオープンタイプ、かつ、第2クラッチC2がノーマルクローズタイプであってもよい。
なお、以降の説明では、前述の第1実施形態の構成と実質的に同じ機能を有する構成については、同じ符号を使用し、その詳細な説明については省略する。
図6に示すように、第2実施形態に係るクラッチ装置101は、入力回転体10と、第1プレッシャプレート組立体37と、第2プレッシャプレート組立体47と、第1クラッチディスク組立体5と、第2クラッチディスク組立体6と、第1摩耗追従機構8Aと、第2摩耗追従機構8Bと、駆動機構107と、を備えている。入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37、第1クラッチディスク組立体5および駆動機構107により第1クラッチC1が構成されている。入力回転体10、第2プレッシャプレート組立体47、第2クラッチディスク組立体6および駆動機構107により第2クラッチC2が構成されている。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2は駆動機構107を共有している。
なお、図示はしていないが、図6において、クラッチ装置101の右側にエンジン、クラッチ装置101の左側にトランスミッションがそれぞれ配置されている。したがって、図6においてエンジン側は右側、トランスミッション側は左側となる。
<駆動機構107>
駆動機構107は、第1クラッチC1および第2クラッチC2の動力伝達を操作するための機構であって、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に軸方向の押付力を伝達する。具体的には、駆動機構107は、ダイヤフラムスプリング70と、アシストスプリング75と、第1中間プレート171と、第2中間プレート172と、複数の中間スプリング73と、を有している。
ダイヤフラムスプリング70(レバー部材の一例)は、クラッチ装置1として1つだけ設けられており、第1クラッチC1および第2クラッチC2で共通の部材である。ダイヤフラムスプリング70は第2クラッチC2に対して弾性力を付与するように予め圧縮された状態で配置されている。ダイヤフラムスプリング70は第2フライホイール104により弾性変形可能に支持されている。具体的には、第2フライホイール104は第2円板部43から軸方向に突出する複数の支持突起149を有している。ダイヤフラムスプリング70の外周部は支持突起149により軸方向に支持されている。ダイヤフラムスプリング70は第2中間プレート172と作用点P101で当接している。ダイヤフラムスプリング70は第2フライホイール104と第2中間プレート172との間で予め圧縮されている。このため、ダイヤフラムスプリング70は第2中間プレート172を介して第2プレッシャプレート49に軸方向の押付力を付与している。また、第2フライホイール104には複数の支持部材145が固定されている。複数の支持部材145はアシストスプリング75の外周部を支持している。
ダイヤフラムスプリング70に駆動力を付与していない状態で、ダイヤフラムスプリング70の押付力により第2クラッチディスク組立体6は第2円板部43と第2プレッシャプレート49との間に挟み込まれている。つまり、第2クラッチC2はノーマルクローズタイプである。
第1中間プレート171は、ダイヤフラムスプリング70から第1プレッシャプレート組立体37へ押付力(アクチュエータ90の駆動力)を伝達するための部材であり、入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70および第1中間プレート171を介して第1クラッチC1に押付力が付与されている際、第2中間プレート172の一部は、第1中間プレート171と第1プレッシャプレート組立体37との間に挟み込まれる。より詳細には、アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70にレリーズベアリング95を介して駆動力が伝達されると、この駆動力はダイヤフラムスプリング70および第1中間プレート171を介して第1プレッシャプレート組立体37に伝達される。このとき、第2中間プレート172の一部は第1中間プレート171および第1摩耗追従機構8Aとの間に挟み込まれている。このように、アクチュエータ90の駆動力は、ダイヤフラムスプリング70、第1中間プレート171および第2中間プレート172を介して第1プレッシャプレート組立体37に伝達される。
第2中間プレート172は、ダイヤフラムスプリング70から第2プレッシャプレート組立体47へ押付力(ダイヤフラムスプリング70の弾性力)を伝達するための部材であり、入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。ダイヤフラムスプリング70から第2中間プレート172を介して第2クラッチC2に押付力が付与されている際、第1中間プレート171の一部は、第2中間プレート172と第2プレッシャプレート組立体47との間に挟み込まれる。より詳細には、ダイヤフラムスプリング70に駆動力を付与していない状態で、第2中間プレート172はダイヤフラムスプリング70によりトランスミッション側に押されている。このとき、第1中間プレート171の一部は、第2中間プレート172と第2摩耗追従機構8Bとの軸方向間に挟み込まれている。このため、ダイヤフラムスプリング70の押付力は第1中間プレート171および第2中間プレート172を介して第2プレッシャプレート組立体47に伝達される。
中間スプリング73は、ダイヤフラムスプリング70を用いて第1クラッチC1および第2クラッチC2が切り替えられる間に(押付力F11が第1クラッチC1および第2クラッチC2に付与されていない場合に)第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持されるように、第1クラッチC1および第2クラッチC2に対して弾性力F2を付与する。具体的には、中間スプリング73は、第1中間プレート171および第2中間プレート172の間に予め圧縮された状態で配置されている。本実施形態では、中間スプリング73の弾性力F2は、第1クラッチC1および第2クラッチC2での伝達動力がクリープ動力に概ね等しくなる大きさに設定されている。
中間スプリング73は、第1中間プレート171をトランスミッション側に押圧している。中間スプリング73は、第2中間プレート172をエンジン側に押圧している。中間スプリング73は、円周方向に間隔を空けて配置されており、第1中間プレート171および第2中間プレート172により弾性変形可能に支持されている。
<クラッチ装置1の動作>
アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70へ駆動力が作用していない状態では、図6に示すように、ダイヤフラムスプリング70の弾性力が第2中間プレート172、第1中間プレート171および第2摩耗追従機構8Bを介して第2プレッシャプレート49に伝達されている。この結果、第2クラッチC2を介してエンジンからトランスミッションへ動力が伝達される。
動力伝達ラインを第2クラッチC2から第1クラッチC1に切り替える際、第2クラッチC2の連結解除および第1クラッチC1の連結が共通のダイヤフラムスプリング70を介して行われる。具体的には、第2クラッチC2のエンゲージ状態で、ダイヤフラムスプリング70の内周部にレリーズベアリング95から駆動力が入力される。この結果、ダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側へ移動し、それに伴い、ダイヤフラムスプリング70の作用点P101がトランスミッション側へ移動する。この結果、第2プレッシャプレート49に伝達されている弾性力が徐々に小さくなり、第2クラッチC2の伝達動力が徐々に小さくなる。
ダイヤフラムスプリング70の作用点P101がエンジン側へ移動すると、第1中間プレート171、第2中間プレート172および中間スプリング73もエンジン側へ移動する。このとき、第2摩擦部67のクッション力F32が中間スプリング73の弾性力F2と等しくなるまでは、第1中間プレート171および第2中間プレート172は軸方向に当接した状態で一体となってエンジン側へ移動する。クッション力F32が弾性力F2と等しくなると、中間スプリング73が徐々に伸びていき、第1中間プレート171が第2中間プレート172から引き離されていく。このとき、第1中間プレート171は第2摩耗追従機構8Bに押し付けられた状態で軸方向に移動し、第2中間プレート172はダイヤフラムスプリング70に押し付けられた状態で軸方向に移動する。
第1中間プレート171がトランスミッション側へ移動すると、第1中間プレート171が第2摩耗追従機構8Bに当接し、第2プレッシャプレート組立体47が第1中間プレート171によりトランスミッション側へ押される。この結果、第2クラッチC2のトルク容量が徐々に大きくなり、第2摩擦部67のクッション力F32も徐々に大きくなる。
やがて、中間スプリング73の弾性力F2が第1摩擦部57のクッション力F31および第2摩擦部67のクッション力F32と等しくなると、第2プレッシャプレート組立体47の移動が停止し、第1中間プレート171がダイヤフラムスプリング70の外周部から離れる。この結果、ダイヤフラムスプリング70から作用点P1に作用する押付力F111がゼロになり、第1摩擦部57のクッション力F31、第2摩擦部67のクッション力F32および中間スプリング73の弾性力F2が釣り合った状態となる。このとき、中間スプリング73の弾性力F2により、第1クラッチC1および第2クラッチC2のエンゲージ状態がわずかに保たれる。このときの第1クラッチC1および第2クラッチC2の伝達動力は、クリープ動力に概ね等しい。
さらにダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側に押されると、ダイヤフラムスプリング70により第1中間プレート171がエンジン側へ押され始める。この結果、第1プレッシャプレート39と第1円板部33との間に第1クラッチディスク組立体5の第1摩擦部57が挟み込まれ、第1クラッチC1の伝達動力が上昇する。レリーズベアリング95を所定の位置まで駆動すると、ダイヤフラムスプリング70を介して第1プレッシャプレート39に伝達される押付力F112が大きくなり、第1クラッチC1がエンゲージ状態となる。これにより、第1クラッチC1を介して第1入力軸91に動力が伝達される。
アシストスプリング75のアシスト力がレリーズベアリング95に作用しているので、第1実施形態と同様に、第1クラッチC1をエンゲージ状態に切り替える際にレリーズベアリング95に付与すべき駆動力が低減されている。
以上に説明したクラッチ装置101でも、トルク切れを防止しつつ小型化を図ることができる。
〔第3実施形態〕
前述の第1および第2実施形態では、ノーマルオープンタイプとノーマルクローズタイプのクラッチが組み合わされているが、第1クラッチおよび第2クラッチがいずれもノーマルオープンタイプのクラッチであってもよい。
例えば、図7に示すように、第3実施形態に係るクラッチ装置201は、入力回転体10と、第1プレッシャプレート組立体37と、第2プレッシャプレート組立体47と、第1クラッチディスク組立体5と、第2クラッチディスク組立体6と、第1摩耗追従機構8Aと、第2摩耗追従機構8Bと、駆動機構207と、を備えている。入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第1クラッチディスク組立体5により第1クラッチC1が構成されている。入力回転体10、第2プレッシャプレート組立体47および第2クラッチディスク組立体6により第2クラッチC2が構成されている。第1クラッチC1および第2クラッチC2は駆動機構207を共有している。第1クラッチC1は、第1入力軸91へ動力を伝達するための機構であり、ノーマルオープンタイプのクラッチである。また、第2クラッチC2は、第2入力軸92へ動力を伝達するための機構であり、ノーマルオープンタイプのクラッチである。
なお、図示はしていないが、図7において、クラッチ装置201の右側にエンジン、クラッチ装置201の左側にトランスミッションがそれぞれ配置されている。したがって、図7においてエンジン側は右側、トランスミッション側は左側となる。
<駆動機構207>
駆動機構207は、第1クラッチC1および第2クラッチC2の動力伝達を操作するための機構であって、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に軸方向の押付力を伝達する。第1クラッチC1および第2クラッチC2は1つの駆動機構207を共有している。具体的には、駆動機構207は、駆動レバー270と、第1中間プレート71と、第2中間プレート72と、複数の中間スプリング73と、を有している。
駆動レバー270(レバー部材の一例)は、クラッチ装置201として1つだけ設けられており、第1クラッチC1および第2クラッチC2で共通の部材である。前述の第1および第2実施形態とは異なり、駆動レバー270は、低剛性の部材であり、第1クラッチC1および第2クラッチC2を押し付けるだけの弾性力を発生させることができないが、アクチュエータ90から第1中間プレート71および第2中間プレート72に駆動力を伝達することができる。駆動レバー270は第2フライホイール4により弾性変形可能に支持されている。第2フライホイール4には複数の支持部材45が固定されている。複数の支持部材45には2つのワイヤリング46が装着されている。駆動レバー270は2つのワイヤリング46を介して支持部材45により弾性変形可能に支持されている。
アクチュエータ90から駆動レバー270に駆動力が付与されていない状態では、図7に示すように、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、中間スプリング73の弾性力F2によりエンゲージ状態をわずかに保っている。駆動レバー270の内周部は、レリーズベアリング295により軸方向に支持されている。レリーズベアリング295にはスナップリング296が装着されている。レリーズベアリング295とスナップリング296との間に駆動レバー270の内周部は挟み込まれている。アクチュエータ90は駆動レバー270に対して軸方向の両側に駆動力を付与可能に配置されている。レリーズベアリング295を介してアクチュエータ90から駆動レバー270に軸方向の両側(エンジン側およびトランスミッション側)に駆動力を伝達することができる。
第1中間プレート71は、駆動レバー270から第1プレッシャプレート組立体37へ押付力(アクチュエータ90の駆動力)を伝達するための部材であり、入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。アクチュエータ90から駆動レバー270および第1中間プレート71を介して第1クラッチC1に押付力が付与されている際、第2中間プレート72の一部は、第1中間プレート71と第1プレッシャプレート組立体37との間に挟み込まれる。より詳細には、アクチュエータ90から駆動レバー270にレリーズベアリング295を介してトランスミッション側への駆動力が付与されている状態で、第1中間プレート71は駆動レバー270によりエンジン側に押されている。このとき、第2中間プレート72の一部は、第1中間プレート71と第1摩耗追従機構8Aとの間に挟み込まれている。このため、駆動レバー270に伝達された駆動力は第1中間プレート71および第2中間プレート72を介して第1プレッシャプレート組立体37に伝達される。
第2中間プレート72は、駆動レバー270から第2プレッシャプレート組立体47へ押付力(アクチュエータ90の駆動力)を伝達するための部材であり、入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。アクチュエータ90から駆動レバー270および第2中間プレート72を介して第2クラッチC2に押付力が付与されている際、第1中間プレート71の一部は、第2中間プレート72と第2プレッシャプレート組立体47との間に挟み込まれる。より詳細には、アクチュエータ90から駆動レバー270にレリーズベアリング95を介してエンジン側への駆動力が付与されている状態で、第2中間プレート72は駆動レバー270によりトランスミッション側に押されている。このとき、第1中間プレート71の一部は、第2中間プレート72と第2摩耗追従機構8Bとの間に挟み込まれている。このため、駆動レバー270に伝達された駆動力は第2中間プレート72および第1中間プレート71を介して第2プレッシャプレート組立体47に伝達される。
中間スプリング73は、駆動レバー270を用いて第1クラッチC1および第2クラッチC2が切り替えられる間に(押付力F11が第1クラッチC1および第2クラッチC2に付与されていない場合に)第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持されるように、第1クラッチC1および第2クラッチC2に対して弾性力F2(連結保持力)を付与する。具体的には、中間スプリング73は、第1中間プレート71および第2中間プレート72の間に予め圧縮された状態で配置されている。本実施形態では、中間スプリング73の弾性力F2は、第1クラッチC1および第2クラッチC2での伝達動力がクリープ動力に概ね等しくなる大きさに設定されている。
中間スプリング73は、第1中間プレート71をトランスミッション側に押圧している。中間スプリング73は、第2中間プレート72をエンジン側に押圧している。中間スプリング73は、円周方向に間隔を空けて配置されており、第1中間プレート71および第2中間プレート72により弾性変形可能に支持されている。
<クラッチ装置201の動作>
アクチュエータ90から駆動レバー270へ駆動力が作用していない状態では、図7に示すように、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47には駆動レバー270から押付力は伝達されていない。
しかし、中間スプリング73の弾性力F2により、第1プレッシャプレート組立体37はエンジン側へ押されており、第2プレッシャプレート組立体47はトランスミッション側へ押されている。具体的には、第1プレッシャプレート39には第2中間プレート72および第1摩耗追従機構8Aを介して中間スプリング73から弾性力が伝達されている。また、第2プレッシャプレート49には第1中間プレート71および第2摩耗追従機構8Bを介して中間スプリング73から弾性力が伝達されている。したがって、駆動レバー270に駆動力が伝達されていない状態で、中間スプリング73の弾性力F2により第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持される。
図7に示す状態で、レリーズベアリング295から駆動レバー270の内周部にトランスミッション側への駆動力が伝達されると、駆動レバー270を介して第1中間プレート71がエンジン側へ押される。この結果、第1中間プレート71と第2中間プレート72との間で中間スプリング73が圧縮され、第1中間プレート71が第2中間プレート72と当接する。さらに駆動レバー270の内周部がトランスミッション側へ押されると、第1中間プレート71および第2中間プレート72を介して第1プレッシャプレート組立体37がエンジン側へ押される。この結果、第1クラッチC1がエンゲージ状態となる。
また、図7に示す状態で、レリーズベアリング295から駆動レバー270の内周部にエンジン側への駆動力が伝達されると、駆動レバー270を介して第2中間プレート72がトランスミッション側へ押される。この結果、第1中間プレート71と第2中間プレート72との間で中間スプリング73が圧縮され、第2中間プレート72により第1中間プレート71を介して第2プレッシャプレート組立体47がトランスミッション側へ押される。この結果、第2クラッチC2がエンゲージ状態となる。
以上に説明したクラッチ装置201でも、トルク切れを防止しつつ小型化を図ることができる。
〔第4実施形態〕
前述の第1実施形態では、中間スプリング73は第1中間プレート71および第2中間プレート72の間に予め圧縮された状態で配置されているが、中間スプリング73を第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47の間に配置してもよい。
例えば図8〜図10に示すように、クラッチ装置301は、入力回転体10と、第1プレッシャプレート組立体37と、第2プレッシャプレート組立体47と、第1クラッチディスク組立体5と、第2クラッチディスク組立体6と、駆動機構307と、を備えている。入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第1クラッチディスク組立体5により第1クラッチC1が構成されている。入力回転体10、第2プレッシャプレート組立体47および第2クラッチディスク組立体6により第2クラッチC2が構成されている。第1クラッチC1および第2クラッチC2は駆動機構307を共有している。第1クラッチC1は、第1入力軸91へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルオープンタイプのクラッチである。一方、第2クラッチC2は、第2入力軸92へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルクローズタイプのクラッチである。
なお、図示はしていないが、図8〜図10において、クラッチ装置301の右側にエンジン、クラッチ装置301の左側にトランスミッションがそれぞれ配置されている。したがって、図8〜図10においてエンジン側は右側、トランスミッション側は左側となる。
<駆動機構307>
駆動機構307は、第1クラッチC1および第2クラッチC2の動力伝達を操作するための機構であって、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に軸方向の押付力を伝達する。第1クラッチC1および第2クラッチC2は1つの駆動機構307を共有している。具体的には、駆動機構307は、ダイヤフラムスプリング70と、アシストスプリング75と、連結プレート組立体375と、複数の中間スプリング373と、を有している。
ダイヤフラムスプリング70(レバー部材の一例)は、クラッチ装置301として1つだけ設けられており、第1クラッチC1および第2クラッチC2で共通の部材である。ダイヤフラムスプリング70は第2クラッチC2に対して弾性力を付与するように予め圧縮された状態で配置されている。ダイヤフラムスプリング70は第2フライホイール304により弾性変形可能に支持されている。具体的には、第2フライホイール304は第2円板部43から軸方向に突出する複数の支持突起349を有している。ダイヤフラムスプリング70の外周部は支持突起349により軸方向に支持されている。ダイヤフラムスプリング70は連結プレート組立体375と支点P301で当接している。ダイヤフラムスプリング70は第2フライホイール304と連結プレート組立体375との間で予め圧縮されている。このため、ダイヤフラムスプリング70は連結プレート組立体375を介して第2プレッシャプレート組立体47に軸方向の押付力を付与している。ダイヤフラムスプリング70に駆動力を付与していない状態で、ダイヤフラムスプリング70の押付力により第2クラッチディスク組立体6は第2円板部43と第2プレッシャプレート49との間に挟み込まれている。つまり、第2クラッチC2はノーマルクローズタイプである。
アシストスプリング75は、第2クラッチC2をエンゲージ状態に切り替える際の駆動力を低減するために設けられており、第2クラッチC2へダイヤフラムスプリング70を介して伝達される押付力(第2押付力)をアシストしている。具体的には、アシストスプリング75は、コーンスプリングであり、ダイヤフラムスプリング70のトランスミッション側に配置されている。アシストスプリング75は連結プレート組立体375により弾性変形可能に支持されている。アシストスプリング75はダイヤフラムスプリング70の内周部に対してエンジン側へのアシスト力を付与している。より詳細には、アシストスプリング75の内周部はレリーズベアリング95により支持されている。これにより、ダイヤフラムスプリング70に付与すべき駆動力を低減することができる。
連結プレート組立体375(中間部材の一例)は、ダイヤフラムスプリング70から第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47へ押付力(ダイヤフラムスプリング70の弾性力あるいはアクチュエータ90の駆動力)を伝達するための組立体であり、入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。連結プレート組立体375は、第1プレッシャプレート組立体37を軸方向の両側に駆動可能に配置されており、第2プレッシャプレート組立体47を軸方向の両側に駆動可能に配置されている。具体的には、連結プレート組立体375は、連結プレート376と、駆動部材377と、第1スナップリング378と、第2スナップリング379と、2つのワイヤリング374と、を有している。
連結プレート376は、押付力を駆動部材377に伝達するための概ね環状の部材であり、駆動部材377に連結されている。連結プレート376には2つのワイヤリング374が装着されている。ダイヤフラムスプリング70は2つのワイヤリング374の間に挟み込まれており、連結プレート376は2つのワイヤリング374を介してダイヤフラムスプリング70を軸方向に支持している。したがって、レリーズベアリング95によりダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側へ駆動されると、連結プレート376はエンジン側へ移動する。
駆動部材377は、第1摩耗追従機構8Aおよび第2摩耗追従機構8Bと軸方向に当接可能に配置されており、連結プレート376と連結されている。具体的には、駆動部材377は、軸方向に細長く延びる第1部分377aと、第1部分377aから半径方向内側に突出する第2部分377bと、を有している。第1部分377aの端部は連結プレート376と連結されている。また、第1部分377aには第1スナップリング378および第2スナップリング379が装着されている。第1スナップリング378は、第2プレッシャプレート組立体47をエンジン側へ駆動するための部材であり、第2摩耗追従機構8Bと軸方向に当接可能に配置されている。第2スナップリング379は、第1プレッシャプレート組立体37をトランスミッション側へ駆動するための部材であり、第1摩耗追従機構8Aと軸方向に当接可能に配置されている。
第2部分377bは第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47の軸方向間(より詳細には、第1摩耗追従機構8Aおよび第2摩耗追従機構8Bの軸方向間)に配置されている。第2部分377bは、第1摩耗追従機構8Aと軸方向に当接可能に配置されており、第2摩耗追従機構8Bと軸方向に当接可能に配置されている。
中間スプリング373は、ダイヤフラムスプリング70を用いて第1クラッチC1および第2クラッチC2が切り替えられる間に(押付力F11が第1クラッチC1および第2クラッチC2に付与されていない場合に)第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持されるように、第1クラッチC1および第2クラッチC2に対して弾性力F2を付与する。具体的には、中間スプリング373は、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47の軸方向間に予め圧縮された状態で配置されている。中間スプリング373の両端は突起(図示せず)や穴(図示せず)などにより第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47と一体回転可能に支持されている。本実施形態では、中間スプリング373の弾性力F2は、第1クラッチC1および第2クラッチC2での伝達動力がクリープ動力に概ね等しくなる大きさに設定されている。
<クラッチ装置301の動作>
アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70へ駆動力が作用していない状態では、図8に示すように、ダイヤフラムスプリング70の弾性力が連結プレート組立体375を介して第2プレッシャプレート49に伝達されている。この結果、第2クラッチC2を介してエンジンからトランスミッションへ動力が伝達される。
動力伝達ラインを第2クラッチC2から第1クラッチC1に切り替える際、第2クラッチC2および第1クラッチC1の切り替えがダイヤフラムスプリング70および連結プレート組立体375を介して行われる。具体的には、第2クラッチC2のエンゲージ状態で、ダイヤフラムスプリング70の内周部にレリーズベアリング95から駆動力が入力される。この結果、ダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側へ移動し、それに伴い、ダイヤフラムスプリング70の支点P301がエンジン側へ移動する。したがって、第2プレッシャプレート49に伝達されている弾性力が徐々に小さくなり、第2クラッチC2の伝達動力が徐々に小さくなる。
ダイヤフラムスプリング70の支点P301がトランスミッション側へ移動すると、連結プレート組立体375もトランスミッション側へ移動する。このとき、第1摩擦部57のクッション力F31が中間スプリング373の弾性力F2と等しくなるまでは、連結プレート組立体375は第1摩耗追従機構8Aと軸方向に当接した状態で一体となってトランスミッション側へ移動する。クッション力F31が弾性力F2と等しくなると、中間スプリング373が徐々に伸びていき、第1プレッシャプレート組立体37を第2プレッシャプレート組立体47から引き離していく。このとき、第1摩耗追従機構8Aは駆動部材377の第2部分377bに押し付けられた状態で連結プレート組立体375とともに軸方向に移動し、第2摩耗追従機構8Bは第1スナップリング378に押し付けられた状態で連結プレート組立体375とともに軸方向に移動する。
やがて、ダイヤフラムスプリング70から支点P301に作用する押付力F11がゼロになると、第1摩擦部57のクッション力F31、第2摩擦部67のクッション力F32および中間スプリング373の弾性力F2が釣り合った状態となる(図9参照)。このとき、中間スプリング373の弾性力F2により、第1クラッチC1および第2クラッチC2のエンゲージ状態がわずかに保たれる。このときの第1クラッチC1および第2クラッチC2の伝達動力は、クリープ動力に概ね等しい。
さらにダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側に押されると、ダイヤフラムスプリング70の外周部により連結プレート組立体375を介して第1プレッシャプレート組立体37がエンジン側へ押され始める。この結果、第1プレッシャプレート39と第1円板部33との間に第1クラッチディスク組立体5の第1摩擦部57が挟み込まれ、第1クラッチC1の伝達動力が上昇する。レリーズベアリング95を所定の位置まで駆動すると、ダイヤフラムスプリング70を介して第1プレッシャプレート39に伝達される押付力F12が大きくなり、第1クラッチC1がエンゲージ状態となる(図10参照)。これにより、第1クラッチC1を介して第1入力軸91に動力が伝達される。
アシストスプリング75のアシスト力がレリーズベアリング95に作用しているので、第1クラッチC1をエンゲージ状態に切り替える際にレリーズベアリング95に付与すべき駆動力が低減されている。
以上に説明したクラッチ装置301でも、トルク切れを防止しつつ小型化を図ることができる。
〔第5実施形態〕
前述の第4実施形態では、第1クラッチC1がノーマルオープンタイプであり、第2クラッチC2がノーマルクローズタイプであるが、第1クラッチC1がノーマルクローズタイプ、かつ、第2クラッチC2がノーマルオープンタイプであってもよい。
例えば図11に示すように、クラッチ装置401は、入力回転体10と、第1プレッシャプレート組立体37と、第2プレッシャプレート組立体47と、第1クラッチディスク組立体5と、第2クラッチディスク組立体6と、第1摩耗追従機構8Aと、第2摩耗追従機構8Bと、駆動機構407と、を備えている。入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第1クラッチディスク組立体5により第1クラッチC1が構成されている。入力回転体10、第2プレッシャプレート組立体47および第2クラッチディスク組立体6により第2クラッチC2が構成されている。第1クラッチC1および第2クラッチC2は駆動機構407を共有している。第1クラッチC1は、第1入力軸91へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルクローズタイプのクラッチである。一方、第2クラッチC2は、第2入力軸92へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルオープンタイプのクラッチである。
なお、図示はしていないが、図11において、クラッチ装置601の右側にエンジン、クラッチ装置401の左側にトランスミッションがそれぞれ配置されている。したがって、図11においてエンジン側は右側、トランスミッション側は左側となる。
<駆動機構407>
駆動機構407は、第1クラッチC1および第2クラッチC2の動力伝達を操作するための機構であって、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に軸方向の押付力を伝達する。第1クラッチC1および第2クラッチC2は1つの駆動機構407を共有している。具体的には、駆動機構407は、ダイヤフラムスプリング70と、アシストスプリング75と、連結プレート組立体475と、複数の中間スプリング373と、を有している。
ダイヤフラムスプリング70(レバー部材の一例)は、クラッチ装置401として1つだけ設けられており、第1クラッチC1および第2クラッチC2で共通の部材である。ダイヤフラムスプリング70は第2クラッチC2に対して弾性力を付与するように予め圧縮された状態で配置されている。ダイヤフラムスプリング70は第2フライホイール404により弾性変形可能に支持されている。具体的には、第2フライホイール404は第2円板部43から軸方向に突出する複数の支持突起449を有している。ダイヤフラムスプリング70は支持突起449により軸方向に支持されている。ダイヤフラムスプリング70は連結プレート組立体475と支点P401で当接している。ダイヤフラムスプリング70は第2フライホイール404と連結プレート組立体475との間で予め圧縮されている。このため、ダイヤフラムスプリング70は連結プレート組立体375を介して第2プレッシャプレート組立体47に軸方向の押付力を付与している。ダイヤフラムスプリング70に駆動力を付与していない状態で、ダイヤフラムスプリング70の押付力により第1クラッチディスク組立体5は第1円板部33と第1プレッシャプレート39との間に挟み込まれている。つまり、第1クラッチC1はノーマルクローズタイプである。
アシストスプリング75は、第2クラッチC2をエンゲージ状態に切り替える際の駆動力を低減するために設けられており、第2クラッチC2へダイヤフラムスプリング70を介して伝達される押付力(第2押付力)をアシストしている。具体的には、アシストスプリング75は、コーンスプリングであり、ダイヤフラムスプリング70のトランスミッション側に配置されている。アシストスプリング75は連結プレート組立体475により弾性変形可能に支持されている。アシストスプリング75はダイヤフラムスプリング70の内周部に対してエンジン側へのアシスト力F42を付与している。より詳細には、アシストスプリング75の内周部はレリーズベアリング95により支持されている。これにより、ダイヤフラムスプリング70に付与すべき駆動力を低減することができる。
連結プレート組立体475(中間部材の一例)は、ダイヤフラムスプリング70から第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47へ押付力(ダイヤフラムスプリング70の弾性力あるいはアクチュエータ90の駆動力)を伝達するための組立体であり、入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。連結プレート組立体475は、第1プレッシャプレート組立体37を軸方向の両側に駆動可能に配置されており、第2プレッシャプレート組立体47を軸方向の両側に駆動可能に配置されている。具体的には、連結プレート組立体475は、連結プレート476と、駆動部材377と、第1スナップリング378と、第2スナップリング379と、2つのワイヤリング474と、を有している。
連結プレート476は、押付力を駆動部材377に伝達するための概ね環状の部材であり、駆動部材377に連結されている。連結プレート476には2つのワイヤリング474が装着されている。ダイヤフラムスプリング70の外周部は2つのワイヤリング474の間に挟み込まれており、連結プレート476は2つのワイヤリング474を介してダイヤフラムスプリング70を軸方向に支持している。したがって、レリーズベアリング95によりダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側へ駆動されると、連結プレート476はトランスミッション側へ移動する。連結プレート476には駆動部材377が連結されている。駆動部材377には第1スナップリング378および第2スナップリング379が装着されている。
中間スプリング373は、ダイヤフラムスプリング70を用いて第1クラッチC1および第2クラッチC2が切り替えられる間に第1クラッチC1および第2クラッチC2のエンゲージ状態が維持されるように、第1クラッチC1および第2クラッチC2に対して弾性力F2(連結保持力)を付与する。具体的には、中間スプリング373は、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47の軸方向間に予め圧縮された状態で配置されている。中間スプリング373の両端は突起(図示せず)や穴(図示せず)などにより第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47と一体回転可能に支持されている。本実施形態では、中間スプリング373の弾性力F2は、第1クラッチC1および第2クラッチC2での伝達動力がクリープ動力に概ね等しくなる大きさに設定されている。
<クラッチ装置401の動作>
アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70へ駆動力が作用していない状態では、図11に示すように、ダイヤフラムスプリング70の弾性力が連結プレート組立体475を介して第1プレッシャプレート39に伝達されている。この結果、第1クラッチC1を介してエンジンからトランスミッションへ動力が伝達される。
動力伝達ラインを第1クラッチC1から第2クラッチC2に切り替える際、第1クラッチC1および第2クラッチC2の切り替えが共通のダイヤフラムスプリング70および連結プレート組立体475を介して行われる。具体的には、第1クラッチC1のエンゲージ状態で、ダイヤフラムスプリング70の内周部にレリーズベアリング95から駆動力が入力される。この結果、ダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側へ移動し、それに伴い、ダイヤフラムスプリング70の支点P401がトランスミッション側へ移動する。したがって、第1プレッシャプレート39に伝達されている弾性力が徐々に小さくなり、第1クラッチC1の伝達動力が徐々に小さくなる。
ダイヤフラムスプリング70の支点P401がトランスミッション側へ移動すると、連結プレート組立体475もトランスミッション側へ移動する。このとき、第1摩擦部57のクッション力F31が中間スプリング373の弾性力F2と等しくなるまでは、連結プレート組立体475は第1摩耗追従機構8Aと軸方向に当接した状態で一体となってトランスミッション側へ移動する。クッション力F31が弾性力F2と等しくなると、中間スプリング373が徐々に伸びていき、第1プレッシャプレート組立体37を第2プレッシャプレート組立体47から引き離していく。このとき、第1摩耗追従機構8Aは駆動部材377の第2部分377bに押し付けられた状態で連結プレート組立体475とともに軸方向に移動し、第2摩耗追従機構8Bは第1スナップリング378に押し付けられた状態で連結プレート組立体475とともに軸方向に移動する。
連結プレート組立体475がトランスミッション側へ移動すると、連結プレート組立体475が第2摩耗追従機構8Bに当接し、第2プレッシャプレート組立体47が連結プレート組立体475によりトランスミッション側へ押される。この結果、第2クラッチC2のトルク容量が徐々に大きくなり、第2摩擦部67のクッション力F32も徐々に大きくなる。
やがて、ダイヤフラムスプリング70から支点P401に作用する押付力F11がゼロになると、第1摩擦部57のクッション力F31、第2摩擦部67のクッション力F32および中間スプリング373の弾性力F2が釣り合った状態となる。このとき、中間スプリング373の弾性力F2により、第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持される。このときの第1クラッチC1および第2クラッチC2の伝達動力は、クリープ動力に概ね等しい。
さらにダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側に押されると、ダイヤフラムスプリング70の外周部により連結プレート組立体475がトランスミッション側へ押され始める。この結果、第2プレッシャプレート49と第2円板部43との間に第2クラッチディスク組立体6の第2摩擦部67が挟み込まれ、第2クラッチC2の伝達動力が上昇する。レリーズベアリング95を所定の位置まで駆動すると、ダイヤフラムスプリング70を介して第2プレッシャプレート49に伝達される押付力F12が大きくなり、第2クラッチC2がエンゲージ状態となる。これにより、第2クラッチC2を介して第2入力軸92に動力が伝達される。
アシストスプリング75のアシスト力がレリーズベアリング95に作用しているので、第2クラッチC2をエンゲージ状態に切り替える際にレリーズベアリング95に付与すべき駆動力が低減されている。
以上に説明したクラッチ装置401でも、トルク切れを防止しつつ小型化を図ることができる。
〔第6実施形態〕
前述の第4および第5実施形態では、ノーマルオープンタイプとノーマルクローズタイプのクラッチが組み合わされているが、第1クラッチおよび第2クラッチがいずれもノーマルオープンタイプのクラッチであってもよい。
例えば図12に示すように、クラッチ装置501は、入力回転体10と、第1プレッシャプレート組立体37と、第2プレッシャプレート組立体47と、第1クラッチディスク組立体5と、第2クラッチディスク組立体6と、第1摩耗追従機構8Aと、第2摩耗追従機構8Bと、駆動機構507と、を備えている。入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第1クラッチディスク組立体5により第1クラッチC1が構成されている。入力回転体10、第2プレッシャプレート組立体47および第2クラッチディスク組立体6により第2クラッチC2が構成されている。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2は駆動機構507を共有している。第1クラッチC1は、第1入力軸91へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルオープンタイプのクラッチである。また、第2クラッチC2は、第2入力軸92へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルオープンタイプのクラッチである。
なお、図示はしていないが、図12において、クラッチ装置601の右側にエンジン、クラッチ装置501の左側にトランスミッションがそれぞれ配置されている。したがって、図12においてエンジン側は右側、トランスミッション側は左側となる。
<駆動機構507>
駆動機構507は、第1クラッチC1および第2クラッチC2の動力伝達を操作するための機構であって、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に軸方向の押付力を伝達する。第1クラッチC1および第2クラッチC2は1つの駆動機構507を共有している。具体的には、駆動機構507は、駆動レバー570と、アシストスプリング75と、連結プレート組立体575と、複数の中間スプリング373と、を有している。
駆動レバー570(レバー部材の一例)は、クラッチ装置501として1つだけ設けられており、第1クラッチC1および第2クラッチC2で共通の部材である。前述の第4および第5実施形態とは異なり、駆動レバー570は低剛性の部材であり、アクチュエータ90から連結プレート組立体575に駆動力を伝達する。駆動レバー570は第2フライホイール4により弾性変形可能に支持されている。第2フライホイール504には複数の支持部材545が固定されている。複数の支持部材545には2つのワイヤリング546が装着されている。駆動レバー570は2つのワイヤリング546を介して支持部材545により弾性変形可能に支持されている。
駆動レバー570に駆動力を付与していない状態では、図12に示すように、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、中間スプリング373の弾性力によりエンゲージ状態をわずかに保っている。駆動レバー570の内周部は、レリーズベアリング595により軸方向に支持されている。レリーズベアリング595にはスナップリング596が装着されている。レリーズベアリング595とスナップリング596との間に駆動レバー570の内周部は挟み込まれている。アクチュエータ90は駆動レバー570に対して軸方向の両側に駆動力を付与可能に配置されている。レリーズベアリング595を介してアクチュエータ90から駆動レバー570に軸方向の両側(エンジン側およびトランスミッション側)に駆動力を伝達することができる。
連結プレート組立体575は、駆動レバー570から第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47へ押付力(アクチュエータ90の駆動力)を伝達するための組立体であり、入力回転体10、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。連結プレート組立体575は、第1プレッシャプレート組立体37を軸方向の両側に駆動可能に配置されており、第2プレッシャプレート組立体47を軸方向の両側に駆動可能に配置されている。具体的には、連結プレート組立体575は、連結プレート576と、駆動部材377と、第1スナップリング378と、第2スナップリング379と、2つのワイヤリング574と、を有している。
連結プレート576は、押付力を駆動部材377に伝達するための概ね環状の部材であり、駆動部材377に連結されている。連結プレート576には2つのワイヤリング574が装着されている。ダイヤフラムスプリング70は2つのワイヤリング574の間に挟み込まれており、連結プレート576は2つのワイヤリング574を介してダイヤフラムスプリング70を軸方向に支持している。レリーズベアリング95によりダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側へ駆動されると、連結プレート576はエンジン側へ移動する。連結プレート576には駆動部材377が連結されている。駆動部材377には第1スナップリング378および第2スナップリング379が装着されている。
中間スプリング373は、ダイヤフラムスプリング70を用いて第1クラッチC1および第2クラッチC2が切り替えられる間に(押付力F11が第1クラッチC1および第2クラッチC2に付与されていない場合に)第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持されるように、第1クラッチC1および第2クラッチC2に対して弾性力F2を付与する。具体的には、中間スプリング373は、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47の軸方向間に予め圧縮された状態で配置されている。中間スプリング373の両端は突起(図示せず)や穴(図示せず)などにより第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47と一体回転可能に支持されている。本実施形態では、中間スプリング373の弾性力F2は、第1クラッチC1および第2クラッチC2での伝達動力がクリープ動力に概ね等しくなる大きさに設定されている。
<クラッチ装置501の動作>
アクチュエータ90から駆動レバー570へ駆動力が作用していない状態では、図12に示すように、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47には駆動レバー570から押付力は伝達されていない。
一方、中間スプリング373の弾性力F2により、第1プレッシャプレート組立体37はエンジン側へ押されており、第2プレッシャプレート組立体47はトランスミッション側へ押されている。具体的には、第1プレッシャプレート39には連結プレート組立体575および第1摩耗追従機構8Aを介して中間スプリング373から弾性力が伝達されている。また、第2プレッシャプレート49には連結プレート組立体575および第2摩耗追従機構8Bを介して中間スプリング373から弾性力が伝達されている。したがって、駆動レバー570に駆動力が伝達されていない状態で、中間スプリング373の弾性力F2により第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持されている。
図12に示す状態で、レリーズベアリング595から駆動レバー570の内周部にトランスミッション側への駆動力が伝達されると、駆動レバー570を介して連結プレート組立体575がエンジン側へ押される。この結果、第1プレッシャプレート39と第2プレッシャプレート49との間で中間スプリング373が圧縮される。さらに駆動レバー570の内周部がエンジン側へ押される。連結プレート組立体575を介して第1プレッシャプレート組立体37がエンジン側へ押される。この結果、第1クラッチC1がエンゲージ状態となる。
また、図12に示す状態で、レリーズベアリング595から駆動レバー570の内周部にエンジン側への駆動力が伝達されると、駆動レバー570を介して連結プレート組立体575がトランスミッション側へ押される。この結果、第1プレッシャプレート39および第2プレッシャプレート49の間で中間スプリング373が圧縮され、駆動レバー570により連結プレート組立体575および第2摩耗追従機構8Bを介して第2プレッシャプレート49がトランスミッション側へ押される。この結果、第2クラッチC2がエンゲージ状態となる。
以上に説明したクラッチ装置501でも、トルク切れを防止しつつ小型化を図ることができる。
〔第7実施形態〕
前述の実施形態では、入力回転体10が第1フライホイール3および第2フライホイール4を有しているが、入力回転体10が第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47の間の配置された1つのフライホイールから構成されていてもよい。
例えば図13に示すように、クラッチ装置601は、入力回転体610と、第1プレッシャプレート組立体37と、第2プレッシャプレート組立体47と、第1クラッチディスク組立体5と、第2クラッチディスク組立体6と、第1摩耗追従機構8Aと、第2摩耗追従機構8Bと、駆動機構607と、を備えている。入力回転体610、第1プレッシャプレート組立体37および第1クラッチディスク組立体5により第1クラッチC1が構成されている。入力回転体610、第2プレッシャプレート組立体47および第2クラッチディスク組立体6により第2クラッチC2が構成されている。第1クラッチC1および第2クラッチC2は駆動機構607を共有している。第1クラッチC1は、第1入力軸91へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルオープンタイプのクラッチである。一方、第2クラッチC2は、第2入力軸92へ動力を伝達するための機構であり、本実施形態ではノーマルクローズタイプのクラッチである。例えば、第1クラッチC1が第1速、第3速および第5速において動力を伝達し、第2クラッチC2が第2速および第4速において動力を伝達する。
なお、図示はしていないが、図13において、クラッチ装置601の右側にエンジン、クラッチ装置601の左側にトランスミッションがそれぞれ配置されている。したがって、図13においてエンジン側は右側、トランスミッション側は左側となる。
<入力回転体610>
入力回転体610は、エンジンから動力が伝達される部材であり、フレキシブルプレート(図示せず)を介してクランクシャフト(図示せず)に連結されている。入力回転体610は回転軸Xを中心に回転する。入力回転体610は主に、フライホイール611と、支持部材612と、を有している。
フライホイール611は、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47の間(より詳細には、第1クラッチディスク組立体5および第2クラッチディスク組立体6の間)に配置されており、ベアリング34を介して第2入力軸92により回転可能に支持されている。ベアリング34は第2入力軸92に装着されたスナップリング96によりエンジン側への移動を規制されている。これにより、第2入力軸92に対する第2フライホイール4のエンジン側への移動が規制される。ベアリング34およびスナップリング96が第1クラッチC1をレリーズ状態に切り替える際のアクチュエータ90の駆動力あるいは第2クラッチC2をエンゲージ状態に切り替える際のアクチュエータ90の駆動力を受ける。
支持部材612は、ダイヤフラムスプリング70およびアシストスプリング75を支持する概ね環状の部材であり、フライホイール611の外周部に固定されている。
<駆動機構607>
駆動機構607は、第1クラッチC1および第2クラッチC2の動力伝達を操作するための機構であって、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に軸方向の押付力を伝達する。第1クラッチC1および第2クラッチC2は1つの駆動機構607を共有している。具体的には、駆動機構607は、ダイヤフラムスプリング70と、アシストスプリング75と、第1中間プレート671と、第2中間プレート672と、複数の中間スプリング673と、を有している。
ダイヤフラムスプリング70(レバー部材の一例)は、クラッチ装置601として1つだけ設けられており、第1クラッチC1および第2クラッチC2で共通の部材である。ダイヤフラムスプリング70は第1クラッチC1に対して弾性力を付与するように予め圧縮された状態で配置されている。具体的には、ダイヤフラムスプリング70は、第2フライホイール4により弾性変形可能に支持されており、第2中間プレート672および第1中間プレート671を介して第2プレッシャプレート49に軸方向の押付力を付与している。支持部材612には2つのワイヤリング646が装着されている。ダイヤフラムスプリング70は2つのワイヤリング646を介して支持部材612により弾性変形可能に支持されている。
ダイヤフラムスプリング70に駆動力を付与していない状態で、ダイヤフラムスプリング70の押付力により第1クラッチディスク組立体5はフライホイール611と第2プレッシャプレート49との間に挟み込まれている。つまり、第2クラッチC2はノーマルクローズタイプである。
アシストスプリング75は、第2クラッチC2をエンゲージ状態に切り替える際の駆動力を低減するために設けられており、第2クラッチC2へダイヤフラムスプリング70を介して伝達される押付力(第2押付力)をアシストしている。具体的には、アシストスプリング75は、コーンスプリングであり、ダイヤフラムスプリング70のトランスミッション側に配置されている。アシストスプリング75は第2フライホイール4に固定された支持部材45により弾性変形可能に支持されている。アシストスプリング75はダイヤフラムスプリング70の内周部に対してエンジン側へのアシスト力を付与している。より詳細には、アシストスプリング75の内周部はレリーズベアリング95により支持されている。これにより、ダイヤフラムスプリング70に付与すべき駆動力を低減することができる。
第1中間プレート671は、ダイヤフラムスプリング70から第1プレッシャプレート組立体37へ押付力(アクチュエータ90の駆動力)を伝達するための部材であり、入力回転体610、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。ダイヤフラムスプリング70から第1中間プレート671を介して第1クラッチC1に押付力が付与されている際、第2中間プレート672は、第1中間プレート671によりトランスミッション側へ駆動される。より詳細には、アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70を介して第1中間プレート671に駆動力が付与されている状態で、第1中間プレート671はダイヤフラムスプリング70によりトランスミッション側に押されている。このとき、第1中間プレート671は第2中間プレート672に引っかかるように配置されているので、第1中間プレート671とともに第2中間プレート672はトランスミッション側へ移動する。このとき、第2中間プレート672により第1プレッシャプレート組立体37がトランスミッション側へ押され、アクチュエータ90の駆動力がダイヤフラムスプリング70、第1中間プレート671および第2中間プレート672を介して第1プレッシャプレート組立体37に伝達される。
第2中間プレート672は、ダイヤフラムスプリング70から第2プレッシャプレート組立体47へ押付力(ダイヤフラムスプリング70の弾性力)を伝達するための部材であり、入力回転体610、第1プレッシャプレート組立体37および第2プレッシャプレート組立体47に対して軸方向に移動可能かつ一体回転可能に配置されている。アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70および第2中間プレート672を介して第2クラッチC2に押付力が付与されている際、第1中間プレート671の一部は、第2中間プレート672と第2プレッシャプレート組立体47との間に挟み込まれる。より詳細には、ダイヤフラムスプリング70が第2中間プレート672をエンジン側へ押圧すると、ダイヤフラムスプリング70の弾性力は第2中間プレート672および第1中間プレート671を介して第1プレッシャプレート39に伝達される。このとき、第1中間プレート671の一部は第2中間プレート672および第2摩耗追従機構8Bの間に挟み込まれている。
中間スプリング673は、ダイヤフラムスプリング70を用いて第1クラッチC1および第2クラッチC2が切り替えられる間に(押付力F11が第1クラッチC1および第2クラッチC2に付与されていない場合に)第1クラッチC1および第2クラッチC2の最小動力伝達状態が維持されるように、第1クラッチC1および第2クラッチC2に対して弾性力F2(連結保持力)を付与する。具体的には、中間スプリング673は、第1中間プレート671および第2中間プレート672の間に予め圧縮された状態で配置されている。本実施形態では、中間スプリング673の弾性力F2は、第1クラッチC1および第2クラッチC2での伝達動力がクリープ動力に概ね等しくなる大きさに設定されている。
中間スプリング673は、第1中間プレート671をトランスミッション側に押圧している。中間スプリング673は、第2中間プレート672をエンジン側に押圧している。中間スプリング673は、円周方向に等間隔で配置されており、第1中間プレート671および第2中間プレート672により弾性変形可能に支持されている。
<クラッチ装置601の動作>
アクチュエータ90からダイヤフラムスプリング70へ駆動力が作用していない状態では、図13に示すように、ダイヤフラムスプリング70の弾性力が第2中間プレート672、第1中間プレート671および第2摩耗追従機構8Bを介して第2プレッシャプレート49に伝達されている。この結果、第2クラッチC2を介してエンジンからトランスミッションへ動力が伝達される。
動力伝達ラインを第2クラッチC2から第1クラッチC1に切り替える際、第2クラッチC2および第1クラッチC1の切り替えが共通のダイヤフラムスプリング70を介して行われる。具体的には、第2クラッチC2のエンゲージ状態で、ダイヤフラムスプリング70の内周部にレリーズベアリング95から駆動力が入力される。この結果、ダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側へ移動し、それに伴い、ダイヤフラムスプリング70の外周部(支点P601)がトランスミッション側へ移動する。この結果、第2プレッシャプレート49に伝達されている弾性力が徐々に小さくなり、第2クラッチC2の伝達動力が徐々に小さくなる。
ダイヤフラムスプリング70の支点P601がトランスミッション側へ移動すると、第1中間プレート671、第2中間プレート672および中間スプリング673もトランスミッション側へ移動する。このとき、第2摩擦部67のクッション力F32が中間スプリング673の弾性力F2と等しくなるまでは、第1中間プレート671および第2中間プレート672は軸方向に当接した状態で一体となってトランスミッション側へ移動する。クッション力F32が弾性力F2と等しくなると、中間スプリング673が徐々に伸びていき、第2中間プレート672を第1中間プレート671から引き離していく。このとき、第2中間プレート672はダイヤフラムスプリング70に押し付けられた状態で軸方向に移動し、第1中間プレート671は第2摩耗追従機構8Bに押し付けられた状態で軸方向に移動する。
第2中間プレート672がトランスミッション側へ移動すると、第2中間プレート672が第1摩耗追従機構8Aに当接し、第1プレッシャプレート組立体37が第2中間プレート72によりトランスミッション側へ押される。この結果、第1クラッチC1のトルク容量が徐々に大きくなり、第1摩擦部57のクッション力F32も徐々に大きくなる。
やがて、中間スプリング673の弾性力F2が第1摩擦部57のクッション力F31および第2摩擦部67のクッション力F32と等しくなると、第2中間プレート672の移動が停止し、第2中間プレート672がダイヤフラムスプリング70の外周部から離れる。この結果、ダイヤフラムスプリング70から第2中間プレート672に作用する押付力F11がゼロになり、第1摩擦部57のクッション力F31、第2摩擦部67のクッション力F32および中間スプリング673の弾性力F2が釣り合った状態となる。このとき、中間スプリング673の弾性力F2により、第1クラッチC1および第2クラッチC2のエンゲージ状態がわずかに保たれる。このときの第1クラッチC1および第2クラッチC2の伝達動力は、クリープ動力に概ね等しい。
さらにダイヤフラムスプリング70の内周部がエンジン側に押されると、ダイヤフラムスプリング70の外周部により第1中間プレート671がトランスミッション側へ押される。この結果、第1プレッシャプレート39とフライホイール611との間に第1クラッチディスク組立体5の第1摩擦部57が挟み込まれ、第1クラッチC1の伝達動力が上昇する。レリーズベアリング95を所定の位置まで駆動すると、ダイヤフラムスプリング70を介して第1プレッシャプレート39に伝達される押付力が大きくなり、第1クラッチC1がエンゲージ状態となる。これにより、第1クラッチC1を介して第2入力軸92に動力が伝達される。
アシストスプリング75のアシスト力がレリーズベアリング95に作用しているので、第1クラッチC1をエンゲージ状態に切り替える際にレリーズベアリング95に付与すべき駆動力が低減されている。
以上に説明したクラッチ装置601でも、トルク切れを防止しつつ小型化を図ることができる。
〔第8実施形態〕
前述の第1〜第7実施形態では、中間スプリング73、373および673を用いてトルク切れを防止しており、中間スプリング73、373および673の弾性力F2は第1クラッチC1および第2クラッチC2での伝達動力がクリープ動力に概ね等しくなる大きさに設定されている。
しかし、車両の走行状態によってはクリープ動力では小さい場合も考えられる。例えば、登坂時に第1速から第2速へトランスミッションの変速段を切り替える際に、クラッチ装置で大きな動力を伝達しているので、動力伝達ラインが第1クラッチから第2クラッチへ切り替わる間に、トルク切れに近い現象が生じる可能性がある。
そこで、第1入力軸91あるいは第2入力軸92に補助的に動力を入力する動力源を別途設けてもよい。ここでは、その動力源もクラッチ装置の一部として説明する。
具体的には、図14に示すように、クラッチ装置701は、入力回転体10と、第1プレッシャプレート組立体37と、第2プレッシャプレート組立体47と、第1クラッチディスク組立体5と、第2クラッチディスク組立体6と、第1摩耗追従機構8Aと、第2摩耗追従機構8Bと、駆動機構7と、補助モータ94と、モータ制御部99と、を備えている。補助モータ94およびモータ制御部99以外の構成は、前述のクラッチ装置1と同じである。
図15に示すように、補助モータ94(アシスト駆動部の一例)は必要に応じて第1入力軸91に動力を入力する。モータ制御部99は補助モータ94を制御する。モータ制御部99は、動力伝達ラインが第1クラッチC1から第2クラッチC2へ切り替えられる際に、切替前の変速段が第1速であり、かつ、エンジン回転速度が基準回転速度R0を超えている場合に、モータ制御部99は補助モータ94を駆動する。駆動開始および終了のタイミングは、アクチュエータ90の駆動量に基づいて決定される。具体的には、アクチュエータ90はレリーズベアリング95の軸方向位置を検出することができ、レリーズベアリング95の位置情報がアクチュエータ90からモータ制御部99へ所定の周期で入力される。レリーズベアリング95の位置情報により伝達動力が減少する期間を特定できる。
このように、補助モータ94およびモータ制御部99によりトルク切れをより効果的に防止することができる。
なお、図14に示すクラッチ装置701では、第1入力軸91に補助モータ94が連結されているが、図16に示すように、第2入力軸92に補助モータ94が連結されていてもよい。さらに、第1入力軸91および第2入力軸92にそれぞれ補助モータが連結されていてもよい。
〔他の実施形態〕
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。なお、前述の実施形態の構成と実質的に同じ機能を有する構成については、前述の実施形態と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
(1)前述の実施形態では、乾式クラッチ装置を例にクラッチ装置について説明しているが、湿式クラッチ装置であっても前述の技術を適用することができる。
(2)前述の実施形態では、第1プレッシャプレート組立体37が第1摩耗追従機構8Aを有しており、第2プレッシャプレート組立体47が第2摩耗追従機構8Bを有している。しかし、第1プレッシャプレート組立体37が第1摩耗追従機構8Aを有していなくてもよく、第2プレッシャプレート組立体47が第2摩耗追従機構8Bを有していなくてもよい。
(3)前述の第7実施形態では、第1クラッチC1がノーマルオープンタイプであり、かつ、第2クラッチC2がノーマルクローズタイプであるが、第1クラッチC1がノーマルクローズタイプであり、かつ、第2クラッチC2がノーマルオープンタイプであってもよい。さらに、第1クラッチC1および第2クラッチC2がともにノーマルオープンタイプであってもよい。
(4)前述の実施形態では、ダイヤフラムスプリング70、駆動レバー270および駆動レバー570を例にレバー部材について説明しているが、レバー部材の構成は前述の実施形態に限定されない。
(5)前述の実施形態では、第1中間プレート71、171および671を例に第1中間部材について説明しているが、第1中間部材の構成は前述の実施形態に限定されない。例えば、第1中間部材は複数の部材から構成されていてもよい。
同様に、前述の実施形態では、第2中間プレート72、172および672を例に第2中間部材について説明しているが、第2中間部材の構成は前述の実施形態に限定されない。例えば、第2中間部材は複数の部材から構成されていてもよい。
(6)前述の実施形態では、第1クラッチおよび第2クラッチでの伝達動力がクリープ動力に概ね等しくなる大きさに、中間弾性部材の連結保持力が設定されているが、中間弾性部材の連結保持力の大きさは、これに限定されない。
(7)前述の実施形態では、入力回転体が第2入力軸により半径方向に支持されているが、入力回転体が第1入力軸により半径方向に支持されていてもよいし、入力回転体が第1および第2入力軸により半径方向に支持されていてもよい。
また、前述の実施形態では、入力回転体の軸方向の移動が第2入力軸により規制されているが、入力回転体の軸方向の移動が第1入力軸により規制されていてもよく、さらに、入力回転体の軸方向の移動が第1および第2入力軸により規制されていてもよい。