JP5047820B2 - トナーシール材 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真装置におけるトナーの漏出を防止するためのトナーシール材及びその製造方法に関する。
近年、プリンター、コピー機、ファクシミリなどの印刷装置において電子写真方式が急速に普及している。電子写真方式とは、原稿画像をデジタル化し、デジタル信号に応じてレーザー光を感光体に照射し感光体上に静電潜像を形成した後、帯電させたトナーにより現像して画像を形成する方式である。図1は、電子写真方式のメカニズムを説明するための概略模式図を示し、図2は、電子写真装置における現像部の概略部分斜視図を示す。図1に示すように、現像部1には、摩擦帯電などにより現像部内で帯電されたトナー2が収容されており、トナー2は回転する現像ロール3より感光体(感光ロール)6の表面に搬送される。すなわち、現像ロール3に付着したトナー2は、現像ブレード4によって薄膜化され、現像部1の外部にある感光体(感光ロール)6との当接面まで搬送される。感光体6には、レーザー光の照射により静電潜像が形成されており、その像に応じて現像ロール3上のトナー2が感光体6の上に転移し、さらに、感光体6に付着したトナー画像が印刷用紙7に転写される。
このように、電子写真方式は、現像ロールや感光体などの回転駆動機構を利用して、トナーによる画像を転写する機構である。回転駆動機構は、その構造上、トナー収容部外に露出させる必要があるため、回転駆動機構部とトナー収容部(現像部)との境界部からトナーが漏出し易い。そこで、トナーの漏出を防止するために、これらの境界部の隙間を埋めるためのシール材が使用されている。なかでも、トナーを収容する現像部においては、トナーの漏出が特に問題となり、通常、図1及び図2に示すように、現像ロール3の軸方向の両端部において、ロールの周に沿って切り欠きリング状のトナーシール材5が装着されている。このようなトナーシール材5は、現像部内を密閉する目的で現像ロール3と密着されるため、現像ロール3はトナーシール材5と接触した状態で回転される。従って、トナーシール材5には、ロールが円滑に回転し、機械的な不具合や騒音の発生などを抑制するための摺動性(低摩擦性)に加えて、回転するロールを損傷させず、ロールとの密着性を向上させるための柔軟性が要求される。特に、トナーは10μm程度の微粒子であり、近年は10μm未満の微粒子も開発されているため、トナーの漏出防止と摺動性及び柔軟性とを高度に充足する必要がある。
このようなトナーシール材としては、例えば、特開平9−269656号公報(特許文献1)には、接着剤を塗布した基材に静電電界を印加して繊維を植毛する静電植毛法により、前記基材の表面に所定の長さのポリ4フッ化エチレン繊維を植毛して製造したシール材が開示されている。しかし、このシール材では、密閉性が充分でなく、トナーの漏出を充分に抑制できない。さらに、繊維が端部のみで接着剤により固定されているため、繊維の脱落が生じ易い。
また、特開2006−317647号公報(特許文献2)には、稼働部材の表面と密接してオイル補給やトナー漏出防止などを達成するフェルト材であって、繊度7〜50デシテックスの摺動性繊維及び剛直性繊維と、繊度0.5〜6.0デシテックスの細繊径繊維とをニードルパンチで一体化させたシート層を備え、前記シートの接触面における立毛がほぼカット状になっている写真画像形成プロセス用のフェルト材が開示されている。しかし、このフェルト材でも、フェルトの緻密性やロールとの密着性が低く、トナーの漏出を充分に抑制できない。さらに、ニードルパンチにより繊維を固定しているため、繊維の接合が不均一であり、繊維が脱落し易く、部分的にトナーが漏出し易い部分が存在する。フェルト材などの繊維集合体の場合、トナーが一旦漏出すると、その部分から拡大し一層トナーが漏出し易いという性質を有している。
特開平9−269656号公報(請求項1) 特開2006−317647号公報(請求項1)
従って、本発明の目的は、トナーの漏出を防止でき、かつ摺動性も高いトナーシール材及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、形態安定性(保持性)、成形加工性及び耐久安定性にも優れるトナーシール材及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、適度に柔軟で回転ロールに対して密着でき密閉性を向上、回転ロールとの密着性が高く、繊維の脱落が抑制されたトナーシール材及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、湿熱接着性繊維と潜在的に加熱捲縮性を有する複合繊維とを含むウェブを高温水蒸気で処理して、湿熱接着性繊維で適度にウェブを融着するとともに、複合繊維の三次元捲縮を発現させて繊維を交絡させた不織繊維集合体が、トナーの漏出を防止でき、かつ摺動性も高いことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のトナーシール材は、湿熱接着性繊維と熱収縮率の異なる複数の樹脂が相分離構造を形成した複合繊維とを含む不織繊維集合体で構成されたトナーシール材であって、前記不織繊維集合体の内部において、前記湿熱接着性繊維により融着した繊維の接着点が略均一に分布し、かつ前記複合繊維が平均曲率半径20〜200μmで略均一に捲縮して交絡している。本発明では、繊維の接着点の分布における「略均一」とは、厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維接着率がいずれも5〜25%であり、かつ各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合が50%以上であることを意味する。また、複合繊維の捲縮における「略均一」とは、厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における複合繊維の繊維湾曲率がいずれも1.5以上であり、かつ各領域における複合繊維の繊維湾曲率の最大値に対する最小値の割合が75%以上であることを意味する。前記湿熱接着性繊維は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体で構成された鞘部と、ポリエステル系樹脂で構成された芯部とで形成された芯鞘型複合繊維であってもよい。前記複合繊維は、ポリアルキレンアリレート系樹脂と変性ポリアルキレンアリレート系樹脂とで構成され、かつ並列型又は偏芯芯鞘型構造であってもよい。前記湿熱接着性繊維と前記複合繊維との割合(質量比)が、前者/後者=20/80〜60/40程度である。本発明の不織繊維集合体の見掛け密度は0.05〜0.15g/cm3程度であってもよい。また、フラジール形法による通気度が10〜300cm3/cm2・秒程度であり、かつ25%圧縮応力が0.1〜30N/30mmφ程度、50%圧縮応力が30〜150N/30mmφ程度であってもよい。本発明のトナーシール材は、電子写真方式印刷装置における回転ロールの軸方向の両端部からのトナー漏出を抑制するためのシール材であってもよい。
本発明には、湿熱接着性繊維と、熱収縮率の異なる複数の樹脂が相分離構造を形成した複合繊維とを含む繊維をウェブ化する工程と、生成した繊維ウェブを高温水蒸気で加熱処理して融着及び捲縮する工程とを含む前記トナーシール材の製造方法も含まれる。
本発明のトナーシール材は、これを構成する不織繊維集合体の内部において、熱収縮率の異なる複数の樹脂が相分離構造を形成した複合繊維が、均一に捲縮して略コイル状(螺旋状又はつるまきばね状)の立体捲縮を発現することにより、交絡しており、湿熱接着性繊維により均一に融着しているため、集合体の内部の緻密性(又はトナー粒子捕捉性)が向上することによりトナーの漏出を防止でき、不織繊維構造体の表面に存在するコイル状立体捲縮により、回転ロールに対する摺動性も向上する。また、不織繊維集合体の内部において、湿熱接着性繊維により均一に融着しているため、適度な強度及び硬質性を有しており、形態安定性(保持性)及び成形加工性に優れるとともに、長期間使用してもロールを損傷することなく、シール材自身の変形(へたり)も少ない。さらに、コイル状立体捲縮の発現による交絡と湿熱接着性繊維の均一な融着により、繊維の融着面積が少ないにも拘わらず、効率良く繊維が固定されることにより、繊維の脱落も抑制されている。また、適度な柔軟性(又はクッション性)も併せ持つため、所望の形状に曲げることも可能であり、回転ロールに対しても柔軟な当たりで密着でき、高い密閉性を実現できる。
[トナーシール材]
本発明のトナーシール材は、湿熱接着性繊維と熱収縮率の異なる複数の樹脂が相分離構造を形成した複合繊維とを含む不織繊維集合体で構成されている。この不織繊維集合体は、湿熱接着性繊維と、熱収縮率(又は熱膨張率)の異なる複数の樹脂が相分離構造を形成した複合繊維(潜在捲縮性複合繊維)とを含み、集合体内部において、前記湿熱接着性繊維が略均一に融着し、かつ前記複合繊維が平均曲率半径20〜200μmで略均一に捲縮して、各繊維が充分に交絡している。この不織繊維集合体は、詳細は後述するように、前記湿熱接着性繊維と複合繊維とを含むウェブに高温(過熱又は加熱)水蒸気を作用させて、湿熱接着性繊維の融点以下の温度で接着作用を発現し、繊維同士を部分的に接着させるとともに、前記複合繊維に捲縮を発現し、繊維同士を機械的に絡み合わせることにより得られる。その結果、本発明のトナーシール材は、湿熱接着性繊維の点接着又は部分接着によって、適度に小さな空隙を保持しながら、少量の接着点で接着するともに、複合繊維の捲縮によっても繊維同士が交絡している。さらに、本発明のトナーシール材は、この交絡により内部における緻密性を発現するだけでなく、内部も均一な不織布構造を有しているため、トナーに対する保持性も高く、トナーの保持量を向上できる。
(湿熱接着性繊維)
本発明では、湿熱により軟化した湿熱接着性繊維が交差する繊維との間で点接着するため、小さい接着面積であるにも拘わらず、捲縮した複合繊維を効率よく固定することにより、柔軟性と形態安定性とを両立できる。
湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂で構成されている。湿熱接着性樹脂は、高温水蒸気によって容易に実現可能な温度において、流動又は容易に変形して接着機能を発現可能であればよい。具体的には、熱水(例えば、80〜120℃、特に95〜100℃程度)で軟化して自己接着又は他の繊維に接着可能な熱可塑性樹脂、例えば、セルロース系樹脂(メチルセルロースなどのC1-3アルキルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのヒドロキシC1-3アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1-3アルキルセルロース又はその塩など)、ポリアルキレングリコール樹脂(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリC2-4アルキレンオキサイドなど)、ポリビニル系樹脂(ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニルアルコール系重合体、ポリビニルアセタールなど)、アクリル系共重合体およびその塩[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドなどのアクリル系単量体で構成された単位を含む共重合体又はそのアルカリ金属塩など]、変性ビニル系共重合体(イソブチレン、スチレン、エチレン、ビニルエーテルなどのビニル系単量体と、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物との共重合体又はその塩など)、親水性の置換基を導入したポリマー(スルホン酸基やカルボキシル基、ヒドロキシル基などを導入したポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン又はその塩など)、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸系樹脂など)などが挙げられる。さらに、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー又はゴム(スチレン系エラストマーなど)などのうち、熱水(高温水蒸気)の温度で軟化して接着機能を発現可能な樹脂も含まれる。
これらの湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。湿熱接着性樹脂は、通常、親水性高分子又は水溶性樹脂で構成される。これらの湿熱接着性樹脂のうち、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系重合体、ポリ乳酸などのポリ乳酸系樹脂、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体、特に、エチレンやプロピレンなどのα−C2-10オレフィン単位を含むビニルアルコール系重合体、特に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましい。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体において、エチレン単位の含有量(共重合割合)は、例えば、10〜60モル%、好ましくは20〜55モル%、さらに好ましくは30〜50モル%程度である。エチレン単位がこの範囲にあることにより、湿熱接着性を有するが、熱水溶解性はないという特異な性質が得られる。エチレン単位の割合が少なすぎると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が、低温の蒸気(水)で容易に膨潤又はゲル化し、水に一度濡れただけで形態が変化し易い。一方、エチレン単位の割合が多すぎると、吸湿性が低下し、湿熱による繊維融着が発現し難くなるため、実用性のある強度の確保が困難となる。エチレン単位の割合が、特に30〜50モル%の範囲にあると、シート又は板状への成形加工性が特に優れる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体におけるビニルアルコール単位の鹸化度は、例えば、90〜99.99モル%程度であり、好ましくは95〜99.98モル%、さらに好ましくは96〜99.97モル%程度である。鹸化度が小さすぎると、熱安定性が低下し、熱分解やゲル化によって安定性が低下する。一方、鹸化度が大きすぎると、繊維自体の製造が困難となる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、必要に応じて選択できるが、例えば、200〜2500、好ましくは300〜2000、さらに好ましくは400〜1500程度である。重合度がこの範囲にあると、紡糸性と湿熱接着性とのバランスに優れる。
湿熱接着性繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面[偏平状、楕円状、多角形状、3〜14葉状、T字状、H字状、V字状、ドッグボーン(I字状)など]に限定されず、中空断面状などであってもよい。
湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂を含む複数の樹脂で構成された複合繊維であってもよい。複合繊維は、湿熱接着性樹脂を少なくとも繊維表面の一部に有していればよいが、接着性の点から、湿熱接着性樹脂が表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して占めるのが好ましい。
湿熱接着性繊維が表面を占める複合繊維の横断面構造としては、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型又は多層貼合型、放射状貼合型、ランダム複合型などが挙げられる。これらの横断面構造のうち、接着性が高い構造である点から、湿熱接着性樹脂が全表面を長さ方向に連続して占める構造である芯鞘型構造(すなわち、鞘部が湿熱接着性樹脂で構成された芯鞘型構造)が好ましい。
複合繊維の場合、湿熱接着性樹脂同士を組み合わせてもよいが、非湿熱接着性樹脂と組み合わせてもよい。非湿熱接着性樹脂としては、非水溶性又は疎水性樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの非湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの非湿熱接着性樹脂のうち、耐熱性及び寸法安定性の点から、融点が湿熱接着性樹脂(特にエチレン−ビニルアルコール系共重合体)よりも高い樹脂、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
ポリエステル系樹脂としては、ポリC2-4アルキレンアリレート系樹脂などの芳香族ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、特に、PETなどのポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、エチレンテレフタレート単位の他に、他のジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)やジオール(例えば、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)で構成された単位を20モル%以下程度の割合で含んでいてもよい。
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6−12などの脂肪族ポリアミドおよびその共重合体、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから合成された半芳香族ポリアミドなどが好ましい。これらのポリアミド系樹脂にも、共重合可能な他の単位が含まれていてもよい。
湿熱接着性樹脂と非湿熱接着性樹脂(繊維形成性重合体)とで構成された複合繊維の場合、両者の割合(質量比)は、構造(例えば、芯鞘型構造)に応じて選択でき、湿熱接着性樹脂が表面に存在すれば特に限定されないが、例えば、湿熱接着性樹脂/非湿熱接着性樹脂=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜15/85、さらに好ましくは60/40〜20/80程度である。湿熱接着性樹脂の割合が多すぎると、繊維の強度を確保し難く、湿熱接着性樹脂の割合が少なすぎると、繊維表面の長さ方向に連続して湿熱接着性樹脂を存在させるのが困難となり、湿熱接着性が低下する。この傾向は、湿熱接着性樹脂を非湿熱接着性繊維の表面にコートする場合においても同様である。
湿熱接着性繊維の平均繊度は、用途に応じて、例えば、0.01〜100dtex程度の範囲から選択でき、好ましくは0.1〜50dtex、さらに好ましくは0.5〜30dtex(特に1〜10dtex)程度である。平均繊度がこの範囲にあると、繊維の強度と湿熱接着性の発現とのバランスに優れる。
湿熱接着性繊維の平均繊維長は、例えば、10〜100mm程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは25〜75mm(特に35〜55mm)程度である。平均繊維長がこの範囲にあると、繊維が充分に絡み合うため、繊維集合体の機械的強度が向上する。
湿熱接着性繊維の捲縮率は、例えば、1〜50%、好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜30%(特に10〜20%)程度である。また、捲縮数は、例えば、1〜100個/25mm、好ましくは5〜50個/25mm、さらに好ましくは10〜30個/25mm程度である。
(潜在捲縮性複合繊維)
潜在捲縮性複合繊維は、複数の樹脂の熱収縮率(又は熱膨張率)の違いに起因して、加熱により捲縮を生じる非対称又は層状(いわゆるバイメタル)構造を有する繊維(潜在捲縮繊維)である。複数の樹脂は、通常、軟化点又は融点が異なる。複数の樹脂は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(低密度、中密度又は高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリC2-4オレフィン系樹脂など)、アクリル系樹脂(アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体などのアクリロニトリル単位を有するアクリロニトリル系樹脂など)、ポリビニルアセタール系樹脂(ポリビニルアセタール樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体など)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体など)、スチレン系樹脂(耐熱ポリスチレンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリC2-4アルキレンアリレート系樹脂など)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ポリアミド系樹脂、半芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミドなどの芳香族ポリアミド系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂(セルロースエステルなど)などの熱可塑性樹脂から選択してもよい。さらに、これらの各熱可塑性樹脂には、共重合可能な他の単位が含まれていてもよい。
これらの樹脂のうち、本発明では、高温水蒸気で加熱処理しても溶融又は軟化して繊維が融着しない点から、軟化点又は融点が100℃以上の非湿熱接着性樹脂(又は耐熱性疎水性樹脂又は非水性樹脂)、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましく、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。本発明では、高温水蒸気で処理しても複合繊維による融着が起こらないように、複合繊維の表面に露出する樹脂は非湿熱接着性繊維であるのが好ましい。
複合繊維を構成する複数の樹脂は、熱収縮率が異なっていればよく、同系統の樹脂の組み合わせであっても、異種の樹脂の組み合わせであってもよい。
本発明では、密着性の点から、同系統の樹脂の組み合わせで構成されているのが好ましい。同系統の樹脂の組み合わせの場合、通常、単独重合体(必須成分)を形成する成分(A)と、変性重合体(共重合体)を形成する成分(B)との組み合わせが用いられる。すなわち、必須成分である単独重合体に対して、例えば、結晶化度や融点又は軟化点などを低下させる共重合性単量体を共重合させて変性することにより、単独重合体よりも結晶化度を低下させるか、非晶性とし、単独重合体よりも融点又は軟化点などを低下させてもよい。このように、結晶性、融点又は軟化点を変化させることにより、熱収縮率に差異を設けてもよい。融点又は軟化点の差は、例えば、5〜150℃、好ましくは50〜130℃、さらに好ましくは70〜120℃程度であってもよい。変性に用いられる共重合性単量体の割合は、全単量体に対して、例えば、1〜50モル%、好ましくは2〜40モル%、さらに好ましくは3〜30モル%(特に5〜20モル%)程度である。単独重合体を形成する成分と、変性重合体を形成する成分との複合比率(質量比)は、繊維の構造に応じて選択できるが、例えば、単独重合体成分(A)/変性重合体成分(B)=90/10〜10/90、好ましくは70/30〜30/70、さらに好ましくは60/40〜40/60程度である。
本発明では、潜在捲縮性の複合繊維を製造し易い点から、複合繊維は芳香族ポリエステル系樹脂の組み合わせ、特に、ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)と、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)との組み合わせであってもよい。特に、本発明では、ウェブ形成後に捲縮を発現するタイプが好ましく、この点からも前記組み合わせが好ましい。ウェブ形成後に捲縮が発現することにより、効率良く繊維同士が交絡し、より少ない融着点数でウェブの形態保持が可能となるため、適度な柔軟性を実現できる。
ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)は、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などの対称型芳香族ジカルボン酸など)とアルカンジオール成分(エチレングリコールやブチレングリコールなどC3-6アルカンジオールなど)との単独重合体であってもよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート系樹脂などが使用され、通常、固有粘度0.6〜0.7程度の一般的なPET繊維に用いられるPETが使用される。
一方、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)では、必須成分である前記ポリアルキレンアリレート系樹脂(A)の融点又は軟化点、結晶化度を低下させる共重合成分、例えば、非対称型芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸成分や、ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)のアルカンジオールよりも鎖長の長いアルカンジオール成分及び/又はエーテル結合含有ジオール成分が使用できる。これらの共重合成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの成分のうち、ジカルボン酸成分として、非対称型芳香族カルボン酸(イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸などのC6-12脂肪族ジカルボン酸)などが汎用され、ジオール成分として、アルカンジオール(1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどC3-6アルカンジオールなど)、(ポリ)オキシアルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシC2-4アルキレングリコールなど)などが汎用される。これらのうち、イソフタル酸などの非対称型芳香族ジカルボン酸、ジエチレングリコールなどのポリオキシC2-4アルキレングリコールなどが好ましい。さらに、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)は、C2-4アルキレンアリレート(エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなど)をハードセグメントとし、(ポリ)オキシアルキレングリコールなどをソフトセグメントとするエラストマーであってもよい。
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)において、ジカルボン酸成分として、融点又は軟化点を低下させるためのジカルボン酸成分(例えば、イソフタル酸など)の割合は、ジカルボン酸成分の全量に対して、例えば、1〜50モル%、好ましくは5〜50モル%、さらに好ましくは15〜40モル%程度である。ジオール成分として、融点又は軟化点を低下させるためのジオール成分(例えば、ジエチレングリコールなど)の割合は、ジオール成分の全量に対して、例えば、30モル%以下、好ましくは10モル%以下(例えば、0.1〜10モル%程度)である。共重合成分の割合が低すぎると、充分な捲縮が発現せず、捲縮発現後の不織繊維集合体の摺動性や緻密性が低下する。一方、共重合成分の割合が高すぎると、捲縮発現性能は高くなるが、安定に紡糸することが困難となる。
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)は、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸成分、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール成分などを併用して分岐させてもよい。
複合繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面[偏平状、楕円状、多角形状、3〜14葉状、T字状、H字状、V字状、ドッグボーン(I字状)など]に限定されず、中空断面状などであってもよいが、通常、丸型断面である。
複合繊維の横断面構造としては、複数の樹脂に形成された相分離構造、例えば、芯鞘型、海島型、ブレンド型、並列型(サイドバイサイド型又は多層貼合型)、放射型(放射状貼合型)、中空放射型、ブロック型、ランダム複合型などの構造が挙げられる。これらの横断面構造のうち、加熱により自発捲縮を発現させ易い点から、相部分が隣り合う構造(いわゆるバイメタル構造)や、相分離構造が非対称である構造、例えば、偏芯芯鞘型、並列型構造が好ましい。
なお、複合繊維が偏芯芯鞘型などの芯鞘型構造である場合、表面に位置する鞘部の非湿熱性接着性樹脂と熱収縮差を有し捲縮可能であれば、芯部は湿熱接着性樹脂(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系重合体など)や、低い融点又は軟化点を有する熱可塑性樹脂(例えば、ポリスチレンや低密度ポリエチレンなど)で構成されていてもよい。
複合繊維の平均繊度は、例えば、0.1〜50dtex程度の範囲から選択でき、好ましくは0.5〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtex(特に1.5〜3dtex)程度である。繊度が細すぎると、繊維そのものが製造し難くなることに加え、繊維強度を確保し難い。また、捲縮を発現させる工程において、綺麗なコイル状捲縮を発現させ難くなる。一方、繊度が太すぎると、繊維が剛直となり、十分な捲縮を発現し難くなる。
複合繊維の平均繊維長は、例えば、10〜100mm程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは25〜75mm(特に40〜60mm)程度である。繊維長が短すぎると、繊維ウェブの形成が難しくなることに加え、捲縮を発現させる工程において、繊維同士の交絡が不十分となり、緻密性の確保が困難となる。また、繊維長が長すぎると、均一な目付の繊維ウェブを形成することが難しくなるばかりか、ウェブ形成時点で繊維同士の交絡が多く発現し、捲縮を発現する際にお互いに妨害し合って捲縮の発現が低下し、摺動性の発現が困難となる。
この複合繊維は、熱処理を施すことにより、捲縮が発現(顕在化)し、略コイル状(螺旋状又はつるまきバネ状)の立体捲縮を有する繊維となる。
加熱前の捲縮数(機械捲縮数)は、例えば、0〜30個/25mm、好ましくは1〜25個/25mm、さらに好ましくは5〜20個/25mm程度である。加熱後の捲縮数は、例えば、30個/25mm以上(例えば、30〜200個/25mm)であり、好ましくは35〜150個/25mm、さらに好ましくは40〜120個/25mm程度であり、45〜120個/25mm(特に50〜100個/25mm)程度であってもよい。
本発明における不織繊維集合体は、高温水蒸気で捲縮されているため、複合繊維の捲縮が、集合体の内部において略均一に発現するという特徴を有している。具体的には、例えば、厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域のうち、中央部(内層)において、1周以上のコイルクリンプを形成している繊維の数が、例えば、5〜50本/5mm(面方向の長さ)×0.2mm(厚み)であり、好ましくは5〜40本/5mm(面方向の長さ)×0.2mm(厚み)、さらに好ましくは10〜40本/5mm(面方向の長さ)×0.2mm(厚み)である。本発明では、大部分の捲縮繊維、集合体内部において(集合体の表面付近から中心部に亘り)、捲縮数が均一であるため、粘着剤を含んでいなくても、実用的な強度を有している。なお、本願明細書において、「厚み方向に三等分した領域」とは、不織繊維集合体の厚み方向に対して直交する方向にスライスして三等分した各領域のことを意味する。
さらに、繊維集合体の内部において、捲縮が均一であることは、例えば、厚み方向において、繊維湾曲率が均一であることによっても評価できる。繊維湾曲率とは、繊維(捲縮した状態の繊維)の両端の距離(L1)に対する繊維長(L2)の比(L2/L1)であり、繊維湾曲率(特に厚み方向の中央の領域における繊維湾曲率)が、例えば、1.5以上(例えば、1.5〜5)、好ましくは1.6〜4、さらに好ましくは1.7〜3(特に1.8〜2.5)程度である。なお、本発明では、後述するように、繊維集合体断面の電子顕微鏡写真に基づいて繊維湾曲率を測定するため、前記繊維長(L2)は、三次元的に捲縮した繊維を引き延ばして直線状にした繊維長(実長)ではなく、写真に写った二次元的に捲縮した繊維を引き延ばして直線状にした繊維長(写真上の繊維長)を意味する。すなわち、本発明における繊維長(写真上の繊維長)は、実際の繊維長よりも短く計測される。
さらに、本発明では、集合体の内部において、略均一に捲縮が発現しているため、繊維湾曲率が均一である。本発明では、繊維湾曲率の均一性は、例えば、集合体の厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の層における繊維湾曲率の比較によって評価できる。すなわち、厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維湾曲率はいずれも前記範囲にあり、各領域における繊維湾曲率の最大値に対する最小値の割合(繊維湾曲率が最大の領域に対する最小の領域の比率)が、例えば、75%以上(例えば、75〜100%)、好ましくは80〜99%、さらに好ましくは82〜98%(特に85〜97%)程度である。
繊維湾曲率及びその均一性の具体的な測定方法としては、繊維集合体の断面を電子顕微鏡写真で撮影し、厚み方向に三等分した各領域から選択した領域について繊維湾曲率を測定する方法が用いられる。測定する領域は、三等分した表層(表面域)、内層(中央域)、裏層(裏面域)の各層について、長さ方向2mm以上の領域で測定を行う。また、各測定領域の厚み方向については、各層の中心付近において、それぞれの測定領域が同じ厚み幅を有するように設定する。さらに、各測定領域は、厚み方向において平行で、かつ各測定領域内において繊維湾曲率を測定可能な繊維片が100本以上(好ましくは300本以上、さらに好ましくは500〜1000本程度)含まれるように設定する。これらの各測定領域を設定した後、領域内の全ての繊維の繊維湾曲率を測定し、各測定領域ごとに平均値を算出した後、最大の平均値を示す領域と、最小の平均値を示す領域との比較により繊維湾曲率の均一性を算出する。
不織繊維集合体を構成する捲縮繊維は、前述の如く、捲縮発現後において略コイル状の捲縮を有する。この捲縮繊維のコイルで形成される円の平均曲率半径は、例えば、10〜250μm程度の範囲から選択でき、例えば、20〜200μm(例えば、50〜200μm)、好ましくは50〜160μm(例えば、60〜150μm)、さらに好ましくは70〜130μm程度である。ここで、平均曲率半径は、捲縮繊維のコイルにより形成される円の平均的大きさを表す指標であり、この値が大きい場合は、形成されたコイルがルーズな形状を有し、言い換えれば捲縮数の少ない形状を有していることを意味する。また、捲縮数が少ないと、繊維同士の交絡も少なくなるため、緻密性を発現するためには不利となる。逆に、平均曲率半径が小さすぎるコイル状捲縮を発現させた場合は、繊維同士の交絡が十分行われず、ウェブ強度を確保することが困難となるばかりか、このような捲縮を発現する潜在捲縮性複合繊維の製造も非常に難しくなる。
コイル状に捲縮した複合繊維において、コイルの平均ピッチは、例えば、0.03〜0.5mm、好ましくは0.03〜0.3mm、さらに好ましくは0.05〜0.2mm程度である。
湿熱接着性繊維と複合繊維(潜在捲縮性複合繊維)との割合(質量比)は、前者/後者=1/99〜90/10程度の範囲から選択できるが、例えば、5/95〜80/20、好ましくは10/90〜70/30、さらに好ましくは20/80〜60/40(特に25/75〜65/35)程度である。両者の割合がこの範囲にあると、複合繊維の捲縮による繊維の交絡と、湿熱接着性繊維の融着とのバランスが良く、柔軟性と形態安定性及び緻密性とが両立する。
本発明の不織繊維集合体には、これらの繊維に加えて、前記繊維の特性を損なわない範囲で、他の繊維が含まれていてもよい。他の繊維としては、例えば、湿熱接着性繊維の項で例示された非湿熱接着性樹脂で構成された繊維、潜在捲縮性複合繊維の項で例示された樹脂で構成された繊維の他、セルロース系繊維[例えば、天然繊維(木綿、羊毛、絹、麻など)、半合成繊維(トリアセテート繊維などのアセテート繊維など)、再生繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル(例えば、登録商標名:「テンセル」など)など)など]、無機繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維など)などが使用できる。他の繊維の平均繊度及び平均繊維長は、潜在捲縮性複合繊維と同様である。これら他の繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これら他の繊維のうち、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などが好ましい。特に、混紡性などの点から、潜在捲縮性複合繊維と同種の繊維であってもよく、例えば、潜在捲縮性複合繊維がポリエステル系繊維である場合、他の繊維もポリエステル系繊維であってもよい。
他の繊維の割合は、繊維集合体全体に対して、例えば、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下(例えば、0.1〜5質量%程度)である。
本発明の不織繊維集合体は、さらに、慣用の添加剤、例えば、安定剤(銅化合物などの熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、抗菌剤、消臭剤、香料、着色剤(染顔料など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、繊維表面に担持されていてもよく、繊維中に含まれていてもよい。
(トナーシール材の特性)
本発明のトナーシール材は、前記繊維で構成されたウェブから得られる不織繊維構造を有しており、その形状は、特に限定されず、シールする隙間の形状に応じて適宜選択できるが、通常、シート状又は板状である。
さらに、本発明のトナーシール材において、適度な硬質性(形態安定性や成形加工性)と柔軟性とをバランスよく備えた不織繊維構造とするためには、繊維集合体の内部形状において、湿熱接着性繊維の融着によって繊維の接着状態が適度に調整されるとともに、複合繊維の捲縮により、隣接又は交差する繊維が捲縮コイル部で互いに交絡する必要がある。
詳しくは、不織繊維集合体は、湿熱接着性繊維が捲縮した複合繊維又は他の湿熱接着性繊維と交差した交点(すなわち、湿熱接着性繊維同士の交点、湿熱接着性繊維と捲縮した複合繊維との交点)で融着しているのが好ましい。本発明では、不織繊維集合体において、不織繊維構造を構成する繊維は、湿熱接着性繊維によって、各々の繊維の接点で接着しているが、できるだけ少ない接点数で繊維集合体の形態を保持するためには、この接着点が集合体の表面付近から内部に亘って概ね均一に分布しているのが好ましい。例えば、集合体が板状の場合、面方向及び厚み方向(特に、均一化が困難な厚み方向)に沿って、集合体表面から内部(中央)、そして裏面に至るまで、均一に分布しているのが好ましい。接着点が表面又は内部などに集中すると、クッション性が低下し、接着点の少ない部分における形態安定性が低下する。例えば、従来の方法で、充分に接着と捲縮を発現させるために、高温で長時間処理すると、熱源に近い部分が過剰に接着してクッション性(特に初期応力に対する柔軟性)が低下する。さらに、潜在捲縮性複合繊維(例えば、低融点樹脂部)が溶融して接着し、柔軟性が低下する。
これに対して、本発明における不織繊維集合体は、集合体の表面付近から内部に亘って概ね均一に分布し、効率よく繊維を固定しているため、湿熱接着性繊維による融着点数が少なく、エラストマー成分を使用していないにも拘わらず、形態安定性を発現でき、クッション性及び耐へたり性も両立できる。さらに、湿熱接着性繊維によって、各繊維が融着されているため、繊維の脱落も抑制でき、例えば、繊維集合体を目的のサイズに切断して使用しても、切断面からの繊維の脱落が抑制され、構造の破壊も起こりにくい。
具体的には、本発明のトナーシール材は、不織繊維構造を構成する繊維が前記湿熱接着性繊維の融着により繊維接着率30%以下(例えば、3〜30%)、好ましくは5〜25%、さらに好ましくは7〜20%(特に10〜20%)程度で接着されている。本発明における繊維接着率は、後述する実施例に記載の方法で測定できるが、不織繊維断面における全繊維の断面数に対して、2本以上接着した繊維の断面数の割合を示す。従って、繊維接着率が低いことは、複数の繊維同士が融着する割合が少ないことを意味する。本発明では、このように接着率が低いため、後述する複合繊維のコイル状捲縮と相俟って、繊維集合体に良好なクッション性を発現できる。
融着の均一性について、例えば、板状体である場合、集合体の厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維接着率がいずれも前記範囲にあるのが好ましい。さらに、各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合(繊維接着率が最大の領域に対する最小の領域の比率)が、例えば、50%以上(例えば、50〜100%)、好ましくは60〜99%、さらに好ましくは70〜98%(特に75〜97%)程度である。本発明では、繊維接着率が、厚み方向において、このような均一性を有しているため、少ない融着点でも、形態を保持でき、柔軟性と形態安定性とを両立できる。
なお、本発明において、「厚み方向に三等分した領域」とは、板状集合体の厚み方向に対して直交する方向にスライスして三等分した各領域のことを意味する。
融着の度合いを示す繊維接着率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、繊維集合体の断面を拡大した写真を撮影し、所定の領域において、接着した繊維断面の数に基づいて簡便に測定できる。しかし、湿熱接着性繊維の割合が多い場合など、束状に繊維が融着している場合には、各繊維が束状に又は交点で融着しているため、繊維単体として観察することが困難な場合もある。この場合、例えば、融解や洗浄除去などの手段で接着部の融着を解除し、解除前の切断面と比較することにより繊維接着率を測定できる。
このように、本発明のトナーシール材では、湿熱接着性繊維による融着が均一に分散して点接着しているだけでなく、これらの点接着が短い融着点距離(例えば、数十〜数百μm)で緻密にネットワーク構造を張り巡らしている。このような構造により、本発明の繊維集合体は、繊維構造が有する柔軟性により、所望の形状に曲げることが可能であり、回転ロールの形状に対して追従性が高く、密閉性を向上できるとともに、微細に分散した繊維の各融着点に外力が分散して小さくなるため、高い形態安定性を発現していると推定できる。
さらに、本発明のトナーシール材の内部形状は、複合繊維の捲縮が発現してコイル状に形状変化することにより、各繊維が捲縮コイル部によって、隣接又は交差する繊維(捲縮繊維同士、又は捲縮繊維と湿熱接着性繊維)がお互いに絡み合って拘束又は掛止された構造を有している。
各繊維の配向については特に限定されないが、例えば、シート状又は板状である場合、不織繊維集合体を構成する繊維の配列状態が適度に調整されていてもよい。すなわち、繊維集合体を構成する繊維(コイル状捲縮繊維の場合、コイルの軸芯方向)が、概ねシート面に対して平行に配列しながら、お互いに交差するように配列されていてもよい。なお、本願明細書では、「面方向に対し略平行に配向している」とは、例えば、ニードルパンチによる交絡のように、局部的に多数の繊維が厚み方向に沿って配向している部分が繰り返し存在しない状態を意味する。繊維集合体をニードルパンチで交絡させると、厚み方向に沿った繊維の比率が高くなるため、繊維集合体の面方向への変形が困難となり、大きな荷重をかけて変形させると、元の形状に戻らなくなる。従って、繊維を平行に配列させる点からは、ニードルパンチによる繊維の交絡の程度を低減するか、交絡しないのが好ましい。
さらに、このような板状集合体において、繊維がシート面に対して平行して配列している場合、隣接又は交差する繊維は、捲縮コイル部で互いに交絡しているが、繊維集合体の厚み方向(又は斜め方向)でも、軽度に繊維が交絡している。特に、本発明では、繊維集合体において、ウェブ形成後に、コイル状に収縮する過程で繊維が交絡し、交絡したコイル部により繊維が適度に拘束されている。さらに、交絡した繊維は、湿熱接着性繊維によって融着されているため、柔軟性を発現する。
一方、繊維集合体において、厚み方向(シート面に対し垂直方向)に配向している繊維が多く存在すると、この繊維もコイル状の捲縮を形成することとなるため、繊維同士が極めて複雑に絡み合うこととなる。その結果、他の繊維を必要以上に拘束又は固定し、さらに繊維を構成するコイルの伸縮を阻害するため、繊維集合体全体の柔軟性を低減させる。従って、できるだけ繊維をシート面に対して平行に配向させるのが望ましい。
本発明のトナーシール材は、面方向と厚み方向との異方性だけでなく、通常、製造工程の流れ方向(MD)と幅方向(CD方向)との間で異方性を有している。すなわち、本発明のトナーシール材は、製造の過程において、繊維(コイル状捲縮繊維の場合、コイルの軸芯方向)が面方向と略平行となるだけでなく、面方向と略平行に配向した繊維は、流れ方向に対しても略平行となる傾向がある。その結果、矩形状繊維集合体が製造される場合、繊維集合体の製造における流れ方向と幅方向との間で、摺動性が異方性を有する。回転ロールに沿わせて装着する場合は、流れ方向をロールの回転方向に向けて装着することで、トナーシール材とロールとの摺動性を向上できる。なお、本発明のトナーシール材は、不織繊維集合体の表面において、コイル形状を有する繊維が存在することにより、トナーが漏れないように繊維が緻密に集合体を形成しているにも拘わらず、表面のコイル状繊維が余分なトナーを掻き取る作用を示す。さらに、ロール表面との接触においても繊維集合体表面では、コイルの一部がロール表面と接触するだけなので、ロールとトナーシール材との接触面積も小さく、両者の間で大きな摩擦抵抗を生じることなく、優れた摺動性を確保できる。そして、このトナーシール材をロール表面に押しつける力が働いた場合であっても、このコイルが変形することにより力を吸収するため、優れた摺動性を維持できる。
本発明のトナーシール材の通気度は、フラジール形法による通気度で10cm3/cm2・秒以上(例えば、10〜300cm3/cm2・秒)、好ましくは15〜250cm3/cm2・秒、さらに好ましくは20〜200cm3/cm2・秒程度である。通気度が小さすぎると、柔軟性が低下する。一方、通気度が大き過ぎると、緻密性が低下し、トナーが漏出する。
本発明のトナーシール材の密度は、具体的には、見掛け密度が、例えば、0.02〜0.2g/cm3程度の範囲から選択でき、例えば、0.05〜0.15g/cm3、好ましくは0.07〜0.12g/cm3、さらに好ましくは0.08〜0.1g/cm3程度である。見かけ密度が低すぎると、形態安定性及び緻密性が低下し、逆に高すぎると、形態安定性は確保できるものの、柔軟性が低下する。本発明では、均一性の高い融着と捲縮とを組み合わせることにより、比較的低密度であるにも拘わらず、トナーシール材の形態保持性及び緻密性を保持しつつ、柔軟性を発現することを可能としている。
本発明のトナーシール材の目付(加熱後の目付)は、用途に応じて、例えば、50〜10000g/m2程度の範囲から選択でき、好ましくは150〜3000g/m2、さらに好ましくは200〜1000g/m2(特に300〜500g/m2)程度である。目付が小さすぎると、形態安定性及びトナー捕捉能を確保することが難しく、また、目付が大きすぎると、厚すぎて湿熱加工において、高温水蒸気が充分にウェブ内部に入り込めず、厚み方向に融着や捲縮が均一な集合体とするのが困難になる。
本発明のトナーシール材は、クッション性に優れ、特に、初期応力が低く、タッチが柔軟である。さらに、初期の応力が小さいにも拘わらず、50%圧縮までに応力が高くなり、ロールをしっかり抑えることが可能となる。具体的には、25%圧縮応力(25%圧縮したときの応力)は、例えば、0.1〜30N/30mmφ(例えば、0.1〜25N/30mmφ)、好ましくは1〜25N/30mmφ、さらに好ましくは5〜25N/30mmφ程度である。一方、50%圧縮応力(50%圧縮したときの応力)は、例えば、30〜150N/30mmφ、好ましくは40〜100N/30mmφ、さらに好ましくは45〜100N/30mmφ程度である。両者の比率は、25%圧縮応力/50%圧縮応力=1/20〜1/1.5、好ましくは1/10〜1/2、さらに好ましくは1/8〜1/3程度である。このような範囲にあると、クッション性と密閉性とのバランスが優れる。
また、本発明のトナーシール材の圧縮率は、例えば、1〜50%程度の範囲から選択でき、例えば、2〜40%、好ましくは3〜30%、さらに好ましくは5〜20%(特に7〜20%)程度である。
本発明のトナーシール材は、形態安定性にも優れ、少なくとも一方向(例えば、板状集合体の場合の長さ方向など)における破断伸度が30%以上であってもよく、好ましくは50%以上(例えば、50〜250%)、さらに好ましくは80%以上(例えば、80〜200%)程度である。破断伸度がこの範囲にあると、トナーシール材の形態安定性が高い。
本発明のトナーシール材は、少なくとも一方向において、30%伸長後における変形率(30%戻り歪み)が、例えば、20%以下(例えば、3〜20%)、好ましくは15%以下(例えば、5〜15%)、さらに好ましくは10%以下(例えば、5〜10%)である。歪みがこの範囲にあると、変形に対する形態安定性が高い。
本発明のトナーシール材が板状又はシート状である場合、その厚さは、特に限定されないが、1〜100mm程度の範囲から選択でき、例えば、2〜50mm、好ましくは3〜30mm、さらに好ましくは5〜20mm程度である。厚さが薄すぎると、トナーの捕捉能が定価する。なお、シート状繊維集合体を積層して使用してもよい。
さらに、本発明のトナーシール材は、板状又はシート状であっても厚さのばらつき(厚さ斑)が少なく、厚みが略均一である。具体的には、シートの面方向の5mm以上の長さにおいて、シート厚みの最大値に対する最小値の割合(最小値/最大値)が90%以上(例えば、90〜99.9%)、好ましくは93%以上(例えば、93〜99%)、さらに好ましくは95%以上(例えば、95〜98%)である。このように、本発明のトナーシール材は、不織繊維構造であるにも拘わらず、厚みが均一であるため、回転ロールと密着できるため、密閉性を向上できる。
(トナーシール材の製造方法)
本発明のトナーシール材の製造方法は、前記湿熱接着性繊維及び前記潜在捲縮性複合繊維を含む繊維をウェブ化する工程と、生成した繊維ウェブを高温水蒸気で加熱処理して融着及び捲縮する工程とを含む。
本発明のトナーシール材の製造方法では、まず、前記湿熱接着性繊維及び前記潜在捲縮性複合繊維を含む繊維をウェブ化する。ウェブの形成方法としては、慣用の方法、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法などの直接法、メルトブロー繊維やステープル繊維などを用いたカード法、エアレイ法などの乾式法などを利用できる。これらの方法のうち、メルトブロー繊維やステープル繊維を用いたカード法、特にステープル繊維を用いたカード法が汎用される。ステープル繊維を用いて得られたウェブとしては、例えば、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、パラレルウェブ、クロスラップウェブなどが挙げられる。
次に、得られた繊維ウェブは、ベルトコンベアにより次工程へ送られ、高温水蒸気で加熱処理され、湿熱接着性繊維の融着により、繊維同士が三次元的に接着され、潜在捲縮性繊維の捲縮の発現により、繊維同士が交絡する。本発明では、加熱方法として、高温水蒸気で処理する方法を用いることにより、繊維集合体の表面から内部に亘り、均一な融着と捲縮を発現できる。なお、融着及び捲縮工程の前工程として、繊維が飛散するのを抑制する点などから、得られた繊維ウェブの一部の繊維を、低圧力水(例えば、0.1〜1.5MPa、好ましくは0.5〜1MPa程度の水)をスプレーなどにより噴霧又は噴射(吹き付け)して交絡させる方法などにより軽度に絡合する工程を経てもよい。
具体的には、得られた繊維ウェブは、ベルトコンベアにより次工程へ送られ、次いで過熱又は高温蒸気(高圧スチーム)流に晒されることにより、本発明の不織繊維構造を有する繊維集合体が得られる。すなわち、ベルトコンベアで運搬された繊維ウェブは、蒸気噴射装置のノズルから噴出される高速高温水蒸気流の中を通過する際、吹き付けられた高温水蒸気により湿熱接着性繊維の融着により、繊維同士が三次元的に接着されるとともに、潜在捲縮性繊維の捲縮の発現により、潜在捲縮性複合繊維が特定の曲率半径を有するコイル状に形を変えながら移動し、繊維同士の3次元的交絡が発現する。特に、本発明における繊維ウェブは通気性を有しているため、高温水蒸気が内部にまで浸透し、略均一な組織を有する繊維集合体を得ることができる。
繊維ウェブは、ベルトコンベアで搬送されて高温水蒸気処理に供せられるが、繊維ウェブは高温水蒸気処理と同時に収縮する。従って、供給する繊維ウェブは、高温水蒸気に晒される直前では、目的とする繊維集合体の大きさに応じてオーバーフィードされているのが望ましい。オーバーフィードの割合は、目的の繊維集合体の長さに対して、110〜300%、好ましくは120〜250%程度である。
使用するベルトコンベアは、基本的には加工に用いる繊維ウェブの形態を乱すことなく高温水蒸気処理することができれば、特に限定されるものではなく、エンドレスコンベアが好適に用いられる。尚、一般的な単独のベルトコンベアであってもよく、必要に応じてもう1台のベルトコンベアを組み合わせて、両ベルト間にウェブを挟むようにして運搬してもよい。このように運搬することにより、繊維ウェブを処理する際に、処理に用いる水、高温水蒸気、コンベアの振動などの外力により運搬してきた繊維ウェブの形態が変形するのが抑制できる。また、処理後の不織繊維の密度や厚さをこのベルトの間隔を調整することにより制御することも可能となる。
繊維ウェブに水蒸気を供給するためには、慣用の水蒸気噴射装置が用いられる。この水蒸気噴射装置としては、所望の圧力と量で、ウェブ全幅に亘り概ね均一に水蒸気を吹き付け可能な装置が好ましい。2台のベルトコンベアを組み合わせた場合、一方のコンベア内に装着され、通水性のコンベアベルト、又はコンベアの上に載置されたコンベアネットを通してウェブに水蒸気を供給する。他方のコンベアには、サクションボックスを装着してもよい。サクションボックスによって、繊維ウェブを通過した過剰の水蒸気を吸引排出できる。また、繊維ウェブの表及び裏の両側を一度に水蒸気処理するために、さらに前記水蒸気噴射装置が装着されているコンベアとは反対側のコンベアにおいて、前記水蒸気噴射装置が装着されている部位よりも下流部のコンベア内に別の水蒸気噴射装置を設置してもよい。下流部の蒸気噴射装置及びサクションボックスがない場合、繊維ウェブの表と裏を蒸気処理したい場合は、一度処理した繊維ウェブの表裏を反転させて再度処理装置内を通過させることで代用してもよい。
コンベアに用いるエンドレスベルトは、繊維ウェブの運搬や高温水蒸気処理の妨げにならなければ、特に限定されない。ただし、高温水蒸気処理をした場合、その条件により繊維ウェブの表面にベルトの表面形状が転写される場合があるので、用途に応じて適宜選択するのが好ましい。特に、表面の平坦な繊維集合体を得たい場合には、メッシュの細かいネットを使用すればよい。なお、90メッシュ程度が上限であり、概ね90メッシュより粗いネット(例えば、10〜50メッシュ程度のネット)が好ましい。これ以上のメッシュの細かなネットは、通気性が低く、水蒸気が通過し難くなる。メッシュベルトの材質は、水蒸気処理に対する耐熱性などの観点より、金属、耐熱処理したポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアリレート系樹脂(全芳香族系ポリエステル系樹脂)、芳香族ポリアミド系樹脂などの耐熱性樹脂などが好ましい。
水蒸気噴射装置から噴射される高温水蒸気は、気流であるため、水流絡合処理やニードルパンチ処理とは異なり、被処理体である繊維ウェブ中の繊維を大きく移動させることなく繊維ウェブ内部へ進入する。この繊維ウェブ中への水蒸気流の進入作用及び湿熱作用によって、水蒸気流が繊維ウェブ内に存在する各繊維の表面を湿熱状態で効率的に覆い、均一な熱接着及び熱捲縮が可能になると考えられる。また、乾熱処理に比べても、繊維内部に対して充分に熱を伝動できるため、表面及び厚み方向における捲縮の程度が概ね均一になる。
高温水蒸気を噴射するためのノズルは、所定のオリフィスが幅方向に連続的に並んだプレートやダイスを用い、これを供給される繊維ウェブの幅方向にオリフィスが並ぶように配置すればよい。オリフィス列は一列以上あればよく、複数列が並行した配列であってもよい。また、一列のオリフィス列を有するノズルダイを複数台並列に設置してもよい。
プレートにオリフィスを開けたタイプのノズルを使用する場合、プレートの厚さは、0.5〜1mm程度であってもよい。オリフィスの径やピッチに関しては、目的とする繊維固定と、捲縮発現に伴う繊維交絡が効率よく実現できる条件であれば特に制限はないが、オリフィスの直径は、通常、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、さらに好ましくは0.2〜0.5mm程度である。オリフィスのピッチは、通常、0.5〜3mm、好ましくは1〜2.5mm、さらに好ましくは1〜1.5mm程度である。オリフィスの径が小さすぎると、ノズルの加工精度が低くなり、加工が困難になるという設備的な問題点と、目詰まりを起こしやすくなるという運転上の問題点が生じ易い。逆に、大きすぎると、十分な水蒸気噴射力を得ることが困難となる。一方、ピッチが小さすぎると、ノズル孔が密になりすぎるため、ノズル自体の強度が低下する。一方、ピッチが大きすぎると、高温水蒸気が繊維ウェブに充分に当たらないケースが生じるため、ウェブ強度の確保が困難となる。
使用する高温水蒸気についても、目的とする繊維の固定と、繊維の捲縮発現に伴う適度な繊維交絡が実現できれば特に限定はなく、使用する繊維の材質や形態により設定すればよいが、圧力は、例えば、0.1〜2MPa、好ましくは0.2〜1.5MPa、さらに好ましくは0.3〜1MPa程度である。水蒸気の圧力が高すぎたり、強すぎる場合には、ウェブを形成する繊維が必要以上に動いて地合の乱れを生じたり、繊維が溶融しすぎて部分的に繊維形状を保持できなくなったり、必要以上に交絡する可能性がある。また、圧力が弱すぎると、繊維の融着や捲縮発現に必要な熱量を被処理物であるウェブに与えることができなくなったり、水蒸気がウェブを貫通できず、厚み方向に繊維融着斑や捲縮の不均一を生ずる場合がある。また、ノズルからの水蒸気の均一な噴出の制御が困難になる場合がある。
高温水蒸気の温度は、例えば、70〜150℃、好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃程度である。高温水蒸気の処理速度は、例えば、200m/分以下、好ましくは0.1〜100m/分、さらに好ましくは1〜50m/分程度である。
必要であれば、板状の繊維集合体を複数枚重ねて積層体としてもよく、他の資材と積層して積層体を形成してもよい。さらに、成形加工により所望の形態(円柱状、四角柱状、球状、楕円体状などの各種形状)に加工してもよい。
このようにして繊維ウェブの繊維を部分的に湿熱接着し、捲縮を発現させた後、得られる不織繊維集合体に水分が残留する場合があるので、必要に応じて繊維集合体を乾燥してもよい。乾燥に関しては、乾燥用加熱体に接触した集合体表面の繊維が、乾燥の熱により繊維が溶融して繊維形態が消失しないことが必要であり、繊維形態が維持できる限り、慣用の方法を利用できる。例えば、不織布の乾燥に使用されるシリンダー乾燥機やテンターのような大型の乾燥設備を使用してもよいが、残留している水分は微量であり、比較的軽度な乾燥手段により乾燥可能なレベルである場合が多いため、遠赤外線照射、マイクロ波照射、電子線照射などの非接触法や熱風を吹き付けたり、通過させる方法などが好ましい。
さらに、本発明のトナーシール材は、前述のように、湿熱接着性繊維を高温水蒸気により接着させて得られるが、部分的に(得られた繊維集合体同士の接着など)、他の慣用の方法、例えば、部分的な熱圧融着(熱エンボス加工など)、機械的圧縮(ニードルパンチなど)などの処理方法により接着されていてもよい。
このようにして得られた不織繊維集合体の形状は、通常、板状又はシート状であるが、板状集合体(必要に応じて、所望の厚さに積層した積層体)を利用する形状に切断して加工してもよく、板状集合体を熱成形により二次成形してもよい。さらに、本発明のトナーシール材は、自由に曲げることができるため、シールする部位に応じた長さ及び幅に切断した後、曲げて装着してもよい。例えば、現像ロールの軸方向の両端部に装着する場合には、特定の大きさに切断した板状集合体を現像ロールに沿わせて曲げるだけで、切り欠きリング状のトナーシール材とすることができる。
本発明のトナーシール材は、高い摺動性を有し、かつ回転ロールからのトナーの漏出を防止できるため、トナーを使用する電子写真方式の印刷装置であれば、特に限定されず、レーザープリンター、ファクシミリ、複写(コピー)機などの現像部(例えば、トナーカートリッジにおける現像部など)におけるトナーシール材として利用できる。使用箇所は、トナーの漏出を防止する必要がある箇所であれば特に限定されないが、本発明のトナーシール材は摺動性に優れるため、現像ロールや感光体などの回転ロール(特に現像ロール)の軸方向の両端部におけるトナーシール材として特に有用である。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例における各物性値は、以下に示す方法により測定した。なお、実施例中の「部」及び「%」はことわりのない限り、質量基準である。
(1)目付(g/m2
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
(2)厚さ(mm)、見掛け密度(g/cm3
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて厚さを測定し、この値と目付の値とから見掛け密度を算出した。
(3)捲縮数
JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法」(8.12.1)に準じて評価した。
(4)平均曲率半径
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織繊維集合体の断面を100倍に拡大した写真を撮影した。撮影した不織繊維集合体の断面写真に写っている繊維の中で、1周以上の螺旋(コイル)を形成している繊維について、その螺旋に沿って円を描いたときの円の半径(コイル軸方向から捲縮繊維を観察したときの円の半径)を求め、これを曲率半径とした。なお、繊維が楕円状に螺旋を描いている場合は、楕円の長径と短径との和の1/2を曲率半径とした。ただし、捲縮繊維が充分なコイル捲縮を発現していない場合や、繊維の螺旋形状が斜めから観察されることにより楕円として写っている場合を排除するために、楕円の長径と短径との比が0.8〜1.2の範囲に入る楕円だけを測定対象とした。なお、測定は、任意の断面について撮影したSEM画像について測定し、n数=100の平均値として示した。
(5)繊維湾曲率及びその均一性
不織繊維集合体の断面における電子顕微鏡写真(倍率100倍)を撮影し、撮影された繊維の映し出された部分において、厚み方向において、表層、内層、裏層の3つの領域に三等分し、各層の中心付近において、長さ方向2mm以上で、かつ測定可能な繊維片が500本以上含むように測定領域を設定した。これらの領域について、その繊維の一方の端部ともう一方の端部との端部間距離(最短距離)を測定し、さらにその繊維の繊維長(写真上の繊維長)を測定した。すなわち、繊維の端部が不織繊維集合体の表面に露出している場合は、その端部をそのまま端部間距離を測定するための端部とし、端部が不織繊維集合体内部に埋没している場合は、不織繊維集合体内部に埋没する境界部分(写真上の端部)を端部間距離を測定するための端部とした。このとき、撮影された繊維のうち、100μm以上に亘って連続していることが確認できない繊維像に関しては測定の対象外とした。そして、端部間距離(L1)に対するその繊維の繊維長(L2)の比(L2/L1)から、繊維湾曲率を算出した。なお、繊維湾曲率の測定は、厚み方向に三等分した表層、内層、裏層ごとに平均値を算出した。さらに、各層の最大値と最小値の割合から繊維湾曲率の厚み方向における均一性を算出した。
図3に、撮影された繊維の測定方法についての模式図を示す。図3(a)は、一方の端部が表面に露出し、他方の端部が不織繊維集合体内部に埋没した繊維を示し、この繊維の場合、端部間距離L1は、繊維の端部から不織繊維集合体内部に埋没する境界部分までの距離になる。一方、繊維長L2は、繊維の観察できる部分(繊維の端部から不織繊維集合体の内部に埋没するまでの部分)の繊維を写真上で二次元的に引き延ばした長さになる。
図3(b)は、両端部が不織繊維集合体の内部に埋没した繊維を示し、この繊維の場合、端部間距離L1は、不織繊維集合体表面に露出した部分における両端部(写真上の両端部)の距離になる。一方、繊維長L2は、不織繊維集合体の表面に露出している部分の繊維を写真上で二次元的に引き延ばした長さになる。
(6)繊維接着率
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、繊維集合体断面を100倍に拡大した写真を撮影した。撮影した繊維集合体の厚み方向における断面写真を厚み方向に三等分し、三等分した各領域(表面、内部(中央)、裏面)において、そこに見出せる繊維切断面(繊維端面)の数に対して繊維同士が接着している切断面の数の割合を求めた。各領域に見出せる全繊維断面数のうち、2本以上の繊維が接着した状態の断面の数の占める割合を以下の式に基づいて百分率で表わした。なお、繊維同士が接触する部分には、融着することなく単に接触している部分と、融着により接着している部分とがある。但し、顕微鏡撮影のために繊維集合体を切断することにより、繊維集合体の切断面においては、各繊維が有する応力によって、単に接触している繊維同士は分離する。従って、断面写真において、接触している繊維同士は、接着していると判断できる。
繊維接着率(%)=(2本以上接着した繊維の断面数)/(全繊維断面数)×100
但し、各写真について、断面の見える繊維は全て計数し、繊維断面数100以下の場合は、観察する写真を追加して全繊維断面数が100を超えるようにした。なお、三等分した各領域についてそれぞれ繊維接着率を求め、その最大値と最小値との割合から厚み方向における均一性を算出した。
(7)圧縮率
圧縮機を使用し、繊維集合体に0.5g/m2の荷重をかけたときの厚さ(A1)を測定する。次に、35g/m2の荷重をかけたときの厚さ(A2)を測定し、下記式により算出した。
圧縮率(%)=100×(A1−A2)/A1
(8)25%及び50%圧縮応力
JIS K6400−2「7.3圧縮たわみ測定 B法」に準じて、40mmφの円形加圧板を100mm/分の速度で動かし、30mmφの円柱状のサンプルの最初の厚さの50%まで押し込んだ後、すぐに同じ速度で戻したとき(同じ速度で負荷を取り除いたとき)の力−たわみ曲線から、25%圧縮時の応力、50%圧縮時の応力の値を読み取った。
(9)破断伸度
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。なお、破断伸度は不織布の流れ(MD)方向及び幅(CD)方向について測定した。
(10)30%伸長後戻り歪み
JIS L1096「一般織物試験方法 8.13伸長弾性率」に準じて、5cm幅×20cm長のサンプルを準備し、これを掴み間隔10cm、1cm/分の引張速度で30%伸長させた後、すぐに同じ速度で戻した場合(同じ速度で負荷を取り除いた場合)に、応力が0となったときの伸度を30%伸長後戻り歪みとした。
(11)カッター切断後の形状安定性
サンプルを5mm角の立方体形状にカットし、50cm3の水を入れてある三角フラスコ(100cm3)に投入した。このフラスコを振とう器(ヤマト科学社製、「MK160型」)に装着し、振幅30mmの旋回方式にて60rpmの速度で30分間振とうさせた。振とう後、形態変化及び形態保持状態を目視確認した。
(12)厚さばらつき
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法 6.3厚さC法」を用いて任意の10点について厚さを測定し、平均値に対する最大値と最小値との差の比率を百分率で表した。
(13)通気度
JIS L1096に準じてフラジール形法にて測定した。
(14)トナー漏れ
サンプルを長さ30mm×5mm幅にカットし、レーザープリンター(セイコーエプソン(株)製、LP−800)のトナーカートリッジ(LPA4ETC3)の現像ロールに装着し、A4サイズの紙に「A」の文字を40行×40桁記載した文書を100枚プリントアウトした後、カートリッジを取り出してトナーの漏れ状態を目視で観察した。観察後、カートリッジを元に戻し、同様の試験を10回繰り返した。
実施例1
湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量44モル%、鹸化度98.4モル%)である芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「ソフィスタ」、繊度3dtex、繊維長51mm、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm、捲縮率13.5%)を準備した。
一方、潜在捲縮性繊維として、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂(A成分)と、イソフタル酸20モル%及びジエチレングリコール5モル%を共重合した変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B成分)とで構成されたサイドバイサイド型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「PN−780」、1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分熱処理後における捲縮数62個/25mm)を準備した。
前記芯鞘型複合ステープル繊維(湿熱接着性繊維)と、前記サイドバイサイド型複合ステープル繊維(潜在捲縮性複合繊維)とを、質量比で、湿熱接着性繊維/潜在捲縮性複合繊維=30/70の割合で混綿した後、カード法により目付約80g/m2のカードウェブを作製し、このウェブを5枚重ねて合計目付400g/m2のカードウェブとした。
このカードウェブを、50メッシュ、幅500mmのステンレス製エンドレス金網を装備したベルトコンベアに移送した。尚、このベルトコンベアの金網の上部には同じ金網を有するベルトコンベアが装備されており、それぞれが同じ速度で同方向に回転し、これら両金網の間隔を任意に調整可能なベルトコンベアを使用した。
次いで、下側のベルトコンベアに備えられた水蒸気噴射装置ヘカードウェブを導入し、この装置から0.4MPaの高温水蒸気をカードウェブの厚み方向に向けて通過するように(垂直に)噴出して水蒸気処理を施し、本発明の不織繊維集合体を得た。この水蒸気噴射装置は、下側のコンベア内に、コンベアネットを介して高温水蒸気をウェブに向かって吹き付けるようにノズルが設置され、上側のコンベアにサクション装置が設置されていた。また、この噴射装置のウェブ進行方向における下流側には、ノズルとサクション装置との配置が逆転した組合せである噴射装置がもう一台設置されており、ウェブの表裏両面に対して水蒸気処理を施した。
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、ノズルがコンベアの幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられた水蒸気噴射装置を使用した。加工速度は3m/分であり、ノズル側とサクション側の上下コンベアベルト間の間隔(距離)は10mmとした。ノズルはコンベアベルトの裏側にベルトとほぼ接するように配置した。
結果を表1に示す。
得られた繊維集合体の表面を電子顕微鏡写真で撮影した結果を図4及び図5(図4を拡大した写真)に示す。なお、写真中のスケールバーは、図4が500μmの長さを示し、図5が200μmの長さを示す。
さらに、厚み方向の断面を電子顕微鏡写真で撮影した結果を、図6に示す。なお、写真中のスケールバーは200μmの長さを示す。
図4及び5の結果から明らかなように、実施例1で得られた不織繊維集合体は、各繊維が、表面で略コイル状に捲縮して面方向に略平行に配列していることが観察できた。さらに、各繊維が、厚み方向において均一に略コイル状に捲縮するとともに、湿熱接着性の交点で繊維が融着し、不織繊維集合体の面方向に対して略平行に配向していることが観察できた。
この不織繊維集合体を長さ30mm×幅5mmに切断し、レーザープリンター(セイコーエプソン(株)製、LP−800)のトナーカートリッジ(LPA4ETC3)の現像ロールに装着し、トナー漏れを評価した。
実施例2
湿熱接着性繊維と潜在捲縮性複合繊維とを、湿熱接着性繊維/潜在捲縮性複合繊維=20/80の割合(質量比)で混綿する以外は実施例1と同様にして繊維集合体を得た。結果を表1に示す。
実施例3
湿熱接着性繊維と潜在捲縮性複合繊維とを、湿熱接着性繊維/潜在捲縮性複合繊維=60/40の割合(質量比)で混綿する以外は実施例1と同様にして繊維集合体を得た。結果を表1に示す。
比較例1
カードウェブを水蒸気処理する代わりに、150℃の熱風乾燥機内で3分間熱処理する以外は実施例1と同様にして、不織繊維集合体を得た。結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、実施例で得られたトナーシール材は、各種特性に優れ、トナー漏れもなかった。これに対して、比較例で得られたトナーシール材は、トナー漏れが起こり、80枚あたりから印刷余白部にトナーが付着し始めた。
図1は、電子写真方式のメカニズムを説明するための概略模式図である。 図2は、電子写真方式印刷装置における現像部の概略部分斜視図である。 図3は、本発明における繊維湾曲率の測定方法を示す模式図である。 図4は、実施例1で得られたトナーシール材における表面の電子顕微鏡写真(低倍率)である。 図5は、実施例1で得られたトナーシール材における表面の電子顕微鏡写真(高倍率)である。 図6は、比較例1で得られたトナーシール材における厚み方向断面の電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1:現像部
2:トナー
3:現像ロール
4:現像ブレード
5:トナーシール材
6:感光体
7:印刷用紙

Claims (10)

  1. 湿熱接着性繊維と熱収縮率の異なる複数の樹脂が相分離構造を形成した複合繊維とを含む不織繊維集合体で構成されたトナーシール材であって、前記不織繊維集合体の内部において、前記湿熱接着性繊維により融着した繊維の接着点が略均一に分布し、かつ前記複合繊維が平均曲率半径20〜200μmで略均一に捲縮して交絡しているトナーシール材。
  2. 厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維接着率がいずれも5〜25%であり、かつ各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合が50%以上である請求項1記載のトナーシール材。
  3. 厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における複合繊維の繊維湾曲率がいずれも1.5以上であり、かつ各領域における複合繊維の繊維湾曲率の最大値に対する最小値の割合が75%以上である請求項1又は2記載のトナーシール材。
  4. 湿熱接着性繊維が、エチレン−ビニルアルコール系共重合体で構成された鞘部と、ポリエステル系樹脂で構成された芯部とで形成された芯鞘型複合繊維である請求項1〜3のいずれかに記載のトナーシール材。
  5. 複合繊維が、ポリアルキレンアリレート系樹脂と変性ポリアルキレンアリレート系樹脂とで構成され、かつ並列型又は偏芯芯鞘型構造である請求項1〜4のいずれかに記載のトナーシール材。
  6. 湿熱接着性繊維と複合繊維との割合(質量比)が、前者/後者=20/80〜60/40である請求項1〜5のいずれかに記載のトナーシール材。
  7. 見掛け密度が0.05〜0.15g/cm3である請求項1〜6のいずれかに記載のトナーシール材。
  8. フラジール形法による通気度が10〜300cm3/cm2・秒であり、かつ25%圧縮応力が0.1〜30N/30mmφ、50%圧縮応力が30〜150N/30mmφである請求項1〜7のいずれかに記載のトナーシール材。
  9. 電子写真装置における回転ロールの軸方向の両端部からのトナー漏出を防止するためのシール材である請求項1〜8のいずれかに記載のトナーシール材。
  10. 湿熱接着性繊維と、熱収縮率の異なる複数の樹脂が相分離構造を形成した複合繊維とを含む繊維をウェブ化する工程と、生成した繊維ウェブを高温水蒸気で加熱処理して融着及び捲縮する工程とを含む請求項1〜9のいずれかに記載のトナーシール材の製造方法。
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