JP5046096B2 - ナトリウムの製造方法およびナトリウム製造装置 - Google Patents

ナトリウムの製造方法およびナトリウム製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、ナトリウムの製造方法およびナトリウム製造装置に関し、特に不純物含有ナトリウムを電解精製して精製ナトリウムを製造するナトリウムの製造方法およびナトリウム製造装置に関する。
ナトリウム硫黄電池は、正極に硫黄を、負極にナトリウムを、電解質にβアルミナを使用した二次電池である。ナトリウム硫黄電池は、電力貯蔵用の電池として注目されており、数多く製造されている。これに伴い、使用済みナトリウム硫黄電池が今後大量に発生することが予想されるため、使用済みナトリウム硫黄電池に含まれるナトリウムなどの有用資源を再利用する技術を開発することが求められている。
使用済みナトリウム硫黄電池から回収したナトリウムには、鉄や硫黄などの不純物が含まれていることが多い。したがって、使用済みナトリウム硫黄電池から回収したナトリウムを再利用するためには、これらの不純物を除去する必要がある。
従来のナトリウムの精製方法として、ナトリウムイオン導電性の固体電解質を用いた方法がある(例えば、特許文献1〜3参照)。この方法では、不純物含有ナトリウムと精製ナトリウムとの間に固体電解質(βアルミナ)を介在させた状態で、不純物含有ナトリウムと精製ナトリウムとの間に電圧を印加する。このようにすることで、不純物含有ナトリウムに含まれるナトリウムは固体電解質を通過して精製ナトリウム側に移動するが、不純物は固体電解質を通過せずに不純物含有ナトリウム内に留まるため、不純物含有ナトリウムからナトリウムを精製することができる。
特許文献4には、塩化ナトリウムの溶融塩を電気分解することでナトリウムを製造する方法が開示されている。この方法では、塩化ナトリウムの溶融塩を調製するために、塩化ナトリウムを800℃以上に加熱する必要がある。また、ナトリウムの析出および塩素の発生という2つの反応を伴う塩化ナトリウムの電気分解を引き起こすためには、約2.8V(理論分解電圧)以上の電圧を印加する必要がある。
特開2002−080987号公報 特開2002−014195号公報 特開2002−014197号公報 特開2006−016633号公報
しかしながら、上記従来のナトリウムの精製方法には、大量のエネルギーを消費してしまうという問題がある。
すなわち、特許文献1〜3に記載のナトリウムの精製方法では、ナトリウムを精製する際に、不純物含有ナトリウムおよび固体電解質を200〜500℃程度まで加熱するとともに、過電圧以上の電圧(0.3V程度)を電極間に印加しなければならない。このとき、固体電解質を介した電気分解の速度が遅く、加熱時間および電圧印加時間が長くなってしまうため、大量のエネルギーを消費してしまうのである。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、少ないエネルギー消費量でより効率的に不純物含有ナトリウムから精製ナトリウムを製造することができるナトリウムの製造方法およびナトリウム製造装置を提供することを目的とする。
本発明者は、電解精製する際に使用する電解質を溶融塩電解液とすることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第一は、以下のナトリウムの製造方法に関する。
[1]不純物含有ナトリウムを電解精製して精製ナトリウムを製造する方法であって、前記不純物含有ナトリウムを陽極とし、かつ溶融塩電解液を電解質として、前記不純物含有ナトリウムに含まれるナトリウムを陰極に析出させるステップを含むナトリウムの製造方法。
[2]前記溶融塩電解液は、アルミニウムのハロゲン化物およびアルカリ金属のハロゲン化物からなり、そのモル比が50:50〜52:48の範囲内である[1]に記載のナトリウムの製造方法。
[3]前記溶融塩電解液は、塩化アルミニウムおよび塩化ナトリウムからなり、そのモル比が50:50〜52:48の範囲内である、[2]に記載のナトリウムの製造方法。
[4]前記溶融塩電解液は、塩化アルミニウム(A)、塩化ナトリウム(B)および塩化カリウム(C)からなり、A:(B+C)のモル比が50:50〜52:48の範囲内であり、かつB:Cのモル比が60:40〜100:0の範囲内である、[2]に記載のナトリウムの製造方法。
[5]前記溶融塩電解液は、塩化アルミニウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなり、そのモル比が50:30:20〜52:29:19の範囲内である、[4]に記載のナトリウムの製造方法。
[6]前記溶融塩電解液は、120〜160℃で溶融する、[1]〜[5]のいずれかに記載のナトリウムの製造方法。
[7]前記不純物含有ナトリウムは、ナトリウム硫黄電池から得られたものである、[1]〜[6]のいずれかに記載のナトリウムの製造方法。
また、本発明の第二は、以下のナトリウム製造装置に関する。
[8]不純物含有ナトリウムを電解精製して精製ナトリウムを製造するナトリウム製造装置であって、溶融塩電解液と、前記溶融塩電解液を収容する電解槽と、前記不純物含有ナトリウムを含む陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源手段と、前記電源手段と前記陽極との間、および前記電源手段と前記陰極との間を電気的に接続する一対の導電性部材と、前記溶融塩電解液および前記不純物含有ナトリウムを加熱する加熱手段と、を有し、前記陽極および前記陰極を前記溶融塩電解液に接触させた状態で前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して、前記不純物含有ナトリウムに含まれるナトリウムを陰極に析出させるナトリウム製造装置。
[9]前記導電性部材は、タングステン、モリブデンまたは炭素からなる、[8]に記載のナトリウム製造装置。
本発明によれば、従来の技術に比べて低温環境下でも電解精製を迅速に行うことができるので、加熱および電圧印加に必要なエネルギーの消費量を削減することができる。すなわち、本発明によれば、従来の技術に比べてより少ないエネルギー消費量で不純物含有ナトリウムから精製ナトリウムを製造することができる。
1.本発明のナトリウムの製造方法について
本発明のナトリウムの製造方法は、不純物含有ナトリウムを電解精製して精製ナトリウムを製造する方法であって、不純物含有ナトリウムを陽極とし、溶融塩電解液を電解質として電気分解を行い、不純物含有ナトリウムに含まれるナトリウムを陰極に析出させるステップを含む。なお、本明細書において「不純物含有ナトリウム」とは、ナトリウム以外の原子、例えば鉄や硫黄などの不純物を含む、ナトリウムを主成分とする組成物を意味する。また、「精製ナトリウム」とは、不純物含有ナトリウムよりも前記ナトリウム以外の原子の含有率が低い、ナトリウムを主成分とする組成物を意味する。
上記のように不純物含有ナトリウムを陽極とし、溶融塩電解液を電解質として電気分解を行うと、陽極では、不純物含有ナトリウムに含まれるナトリウムがナトリウムイオンとなって溶融塩電解液に溶出する。後述する溶融塩電解液に対するナトリウムのイオン化傾向は、鉄や硫黄などの不純物のイオン化傾向に比べて大きい。したがって、ナトリウムのみがナトリウムイオンとなって溶融塩電解液に溶出し、その他の不純物は不純物含有ナトリウム中に残存する。また、絶縁体は溶融塩電解液に溶解しないため、セラミックスなどの絶縁体も不純物含有ナトリウム中に残存する。
一方、陰極では、溶融塩電解液に含まれるナトリウムイオンがナトリウムとして陰極の表面に析出する。このとき、後述する溶融塩電解液を用いることで、ナトリウムのみを陰極の表面に析出させることができる。陰極は、ナトリウムがその表面に析出できるものであれば特に限定されず、例えば、精製ナトリウムまたは導電性部材を用いることができる。
このように、本発明のナトリウムの製造方法では、不純物含有ナトリウムに含まれる成分のうちナトリウムのみを溶融塩電解液に溶出させるとともに、溶融塩電解液に含まれるナトリウムを陰極の表面に析出させることで、不純物含有ナトリウムからナトリウムのみを取り出すことができる。
[溶融塩電解液について]
本発明は、電解精製を行う際に電解質として溶融塩電解液を用いることを特徴とする。本発明で使用する溶融塩電解液は、電解精製を行っている間にナトリウム以外の物質がナトリウムよりも先に陰極の表面に析出しないものであれば特に限定されないが、省エネの観点からその融点が低いものが好ましい。
本発明者は、アルミニウムのハロゲン化物およびアルカリ金属のハロゲン化物からなり、そのモル比が「アルミニウムのハロゲン化物:アルカリ金属のハロゲン化物=50〜52:48〜50」の範囲内である溶融塩電解液が上記要件を満たすことを見出した。特に以下の二種類の溶融塩電解液は、ナトリウムがその他の金属(アルミニウムおよびカリウム)よりも先に陰極に析出し、かつその融点が低い(100℃程度)という特徴を有するため、本発明で使用する溶融塩電解液として好ましい。
(a)AlCl−NaCl系溶融塩電解液(融点:110℃)
AlCl:NaCl=50〜52:48〜50(モル比)
(b)AlCl−NaCl−KCl系溶融塩電解液(融点:95℃〜)
AlCl:(NaCl+KCl)=50〜52:48〜50(モル比)
NaCl:KCl=60:40〜100:0(モル比)
上記(b)の溶融塩電解液では、「AlCl:NaCl:KCl=50〜52:29〜30:19〜20(モル比)」の共晶組成の溶融塩電解液が、融点(95℃)が低く、特に好ましい。
上記(a)または(b)の溶融塩電解液を使用する場合、電解精製する際の溶融塩電解液の温度は、融点以上であれば特に限定されないが、省エネの観点から120〜160℃程度、好ましくは140〜150℃程度とすることが好ましい。
[陽極と陰極との間に印加する電圧について]
本発明のナトリウムの製造方法では、陽極(不純物含有ナトリウム)と陰極との間に直流電圧を印加して電気分解を行う。このとき電極間に印加する電圧は、反応に必要な過電圧以上の電圧であって、かつ陽極においてナトリウムのみがナトリウムイオンとして溶融塩電解液に溶解する電圧であれば特に限定されない。電極間に印加する電圧が大きすぎると、陽極において不純物が溶融塩電解液に溶出してしまう可能性がある。電極間に印加する電圧は、溶融塩電解液の温度や導電性部材の材質などに応じて適宜設定すればよいが、例えば0.2〜1.0V程度、好ましくは0.2〜0.4V程度とすればよい。
[不純物の溶出を監視する方法について]
本発明のナトリウムの製造方法では、不純物含有ナトリウムに含まれるナトリウムの大半が溶融塩電解液に溶出してしまうと、不純物含有ナトリウム中に残存している不純物も溶融塩電解液に溶出してしまう可能性がある。もし、鉄や硫黄などの不純物が溶融塩電解液に溶出してしまうと、これらの不純物はナトリウムよりも先に陰極の表面に析出してしまうため、ナトリウムの純度が低下してしまうことになる。したがって、本発明では、不純物含有ナトリウムからの不純物の溶出を監視するために、定電流電解または定電位(電圧)電解により電解精製を行うことが好ましい。
例えば、定電流電解によりナトリウムを精製する場合は、一定の電流密度で電流を印加しているときの陽極と陰極との間の電圧を監視することで、陽極における不純物の溶出を監視することができる。すなわち、不純物含有ナトリウムからナトリウムのみが溶出している間は、電圧はほぼ一定の値を示すが、不純物が溶出し始めた後は、電圧が急激に上昇するのである(実施例参照)。
同様に、定電位電解によりナトリウムを精製する場合は、陽極と陰極との間の電圧を一定の値に維持しているときの電流値を監視することで、陽極における不純物の溶出を監視することができる。すなわち、不純物含有ナトリウムからナトリウムのみが溶出している間は、電流はほぼ一定の値を示すが、不純物が溶出し始めた後は、電流値が急激に下降するのである。
このように、電圧または電流の急激な変化の有無を監視することで、不純物の溶出の有無を確認することができる。高純度のナトリウムを精製するためには、不純物が溶融塩電解質に溶出する前に(すなわち、電圧または電流の急激な変化が生じる前に)原料となる不純物含有ナトリウムを陽極にさらに提供すればよい。このようにすることで、不純物の溶出を防ぐことができるので、陰極にナトリウムのみを析出させることができる。
2.本発明のナトリウム製造装置について
本発明のナトリウムの製造方法は、例えば以下に示す装置を用いて不純物含有ナトリウムを電解精製することにより実施すればよい。
図1は、本発明のナトリウム製造装置の一例を示す模式図(断面図)である。この例では、不純物含有ナトリウムを陽極とし、精製ナトリウムを陰極としている。
図1において、ナトリウム製造装置100は、溶融塩電解液170を収容する電解槽110、隔壁120、加熱部130、第一の導電性部材140、第二の導電性部材150および電源160を有する。ナトリウム製造装置100を使用する際には、図1に示すように、不純物含有ナトリウム180を第一の導電性部材140および溶融塩電解液170と接触するように配置し、精製ナトリウム190を第二の導電性部材150および溶融塩電解液170と接触するように配置する。
電解槽110は、溶融塩電解液170を収容する絶縁性の容器である。電解槽110の材質は、溶融塩電解液170、不純物含有ナトリウム180および精製ナトリウム190の電解時の温度に耐えうる耐熱性を有し、かつナトリウムおよび溶融塩電解液170と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、電解槽110として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の容器やアルミナセラミックス製の容器などを用いることができる。
隔壁120は、不純物含有ナトリウム180および精製ナトリウム190が電解槽110内に提供された際に、不純物含有ナトリウム180と精製ナトリウム190とを隔離する絶縁性の部材である。隔壁120の材質は、溶融塩電解液170、不純物含有ナトリウム180および精製ナトリウム190の電解時の温度に耐えうる耐熱性を有し、かつナトリウムおよび溶融塩電解液170と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、隔壁120として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の部材やアルミナセラミックス製の部材などを用いることができる。
加熱部130は、溶融塩電解液170、不純物含有ナトリウム180および精製ナトリウム190を電気分解を行いうる温度に加熱する。例えば、加熱部130は、電解槽110の下面および/または側面に配置されたヒーターである。加熱部130が加熱する温度は、溶融塩電解液170の種類に応じて適宜設定すればよい。例えば、前述の(a)または(b)の溶融塩電解液を用いる場合は、溶融塩電解液が120〜160℃程度になるように加熱すればよい。この温度では、不純物含有ナトリウム180および精製ナトリウム190も、溶融して液体状態となる。
第一の導電性部材140は、電源160と電気的に接続されており、不純物含有ナトリウム180(陽極)に正の電圧を印加する導電性の部材である。同様に、第二の導電性部材150は、電源160と電気的に接続されており、精製ナトリウム190(陰極)に負の電圧を印加する導電性の部材である。第一の導電性部材140および第二の導電性部材150の材質は、溶融塩電解液170、不純物含有ナトリウム180および精製ナトリウム190の電解時の温度に耐えうる耐熱性を有し、かつナトリウムおよび溶融塩電解液170と反応しないものであれば特に限定されない。例えば、第一の導電性部材140または第二の導電性部材150として、タングステンやモリブデンなどの高融点金属やガラス状カーボンからなる部材を用いることができる。第一の導電性部材140および第二の導電性部材150は、電気分解の進行とともに不純物含有ナトリウム180または精製ナトリウム190の量が変化しても、不純物含有ナトリウム180または精製ナトリウム190との電気的接続をそれぞれ維持できるように配置されることが好ましい。
電源160は、不純物含有ナトリウム180を陽極とし、精製ナトリウム190を陰極として、電極間に直流電圧を印加する。不純物含有ナトリウム180と精製ナトリウム190との間に印加する電圧は、溶融塩電解液170の温度や導電性部材140,150の材質などに応じて適宜設定すればよいが、通常は0.2〜1.0V程度であり、好ましくは0.2〜0.4V程度である。
図2は、ナトリウム製造装置100を用いてナトリウムを精製する様子を示す模式図である。図2では、加熱部130および電源160の図示を省略する。
図2(A)に示すように、不純物含有ナトリウム180を陽極とし、精製ナトリウム190を陰極として電極間に直流電圧を印加すると、陽極(不純物含有ナトリウム180)では、不純物含有ナトリウム180に含まれるナトリウムがナトリウムイオンとなって溶融塩電解液170に溶出し、陰極では、溶融塩電解液170に含まれるナトリウムイオンがナトリウムとして精製ナトリウム190の表面に析出する。この反応は電極間に直流電圧を印加している限り続くため、図2(B)に示すように、不純物含有ナトリウム180は時間の経過とともに減少し、精製ナトリウム190は時間の経過とともに増加する。したがって、陽極側に不純物含有ナトリウム180を提供し、陰極側で析出した精製ナトリウム190を回収することで、不純物含有ナトリウム180から精製ナトリウム190を製造することができる。精製ナトリウム190を回収する方法は、特に限定されないが、例えば図2(B)に示すように電解槽110の陰極側の側壁の高さを一部低くして、精製ナトリウム190を電解槽110の外に流出させるようにすればよい。
図3は、本発明のナトリウム精製装置の別の例を示す模式図(断面図)である。この例では、不純物含有ナトリウムを陽極とし、導電性部材を陰極としている。図3において、図1のナトリウム製造装置と同じ構成要素については同一の符号を付し、重複箇所の説明を省略する。
図3において、ナトリウム製造装置200は、溶融塩電解液170を収容する電解槽110、隔壁120、加熱部130、第一の導電性部材140、第二の導電性部材210および電源160を有する。ナトリウム製造装置200を使用する際には、図3に示すように、不純物含有ナトリウム180を第一の導電性部材140および溶融塩電解液170と接触するように配置する。
第二の導電性部材210は、電源160と電気的に接続されており、それ自身が陰極としても機能する導電性の部材である。第二の導電性部材210の材質は、前述の導電性部材と同様のものを用いることができる。第二の導電性部材210は、溶融塩電解液170に浸漬されていることが好ましい。
図4は、ナトリウム製造装置200を用いてナトリウムを精製する様子を示す模式図である。図4では、加熱部130および電源160の図示を省略する。
図4(A)に示すように、不純物含有ナトリウム180を陽極とし、第二の導電性部材210を陰極として電極間に直流電圧を印加すると、陽極では、不純物含有ナトリウム180に含まれるナトリウムがナトリウムイオンとなって溶融塩電解液170に溶出し、陰極では、溶融塩電解液170に含まれるナトリウムイオンがナトリウムとして第二の導電性部材210の表面に析出する。この反応は電極間に直流電圧を印加している限り続くため、図4(B)に示すように、不純物含有ナトリウム180は時間の経過とともに減少し、精製ナトリウム190は時間の経過とともに増加する。第二の導電性部材210(陰極)の表面に一定量の精製ナトリウム190が析出すると、析出した精製ナトリウム190は溶融塩電解液170上に浮上する。したがって、陽極側に不純物含有ナトリウム180を提供し、陰極側で浮上した精製ナトリウム190を回収することで、不純物含有ナトリウム180から精製ナトリウム190を製造することができる。
以上のように、本発明のナトリウムの製造方法およびナトリウム製造装置は、電解質として溶融塩電解液を用いることで、従来の技術に比べて低温環境下(例えば、120〜160℃程度)かつ低電圧(例えば、0.2〜0.4V程度)でナトリウムを迅速に電解精製することができる。したがって、本発明のナトリウムの製造方法は、加熱および電圧印加に必要なエネルギーの消費量を従来の技術に比べて削減することができる。
例えば、本発明のナトリウムの製造方法およびナトリウム製造装置は、使用済みのナトリウム硫黄電池から回収した鉄や硫黄などの不純物を含むナトリウムからナトリウムを精製するのに好適である。
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
本実施例では、先端にナトリウムを析出させた鉄電極(不純物含有ナトリウムに相当する)からナトリウムを精製した例を示す。
(不純物含有ナトリウムの準備)
ポリテトラフルオロエチレン製の電解槽に溶融塩電解液(AlCl:NaCl=51:49、150℃)を入れ、鉄製の棒(以下、「鉄電極」という)およびガラス状カーボンの棒(以下、「カーボン電極」という)を溶融塩電解液に1cm程度浸漬した。次いで、鉄電極を陰極とし、カーボン電極を陽極として、10mA/cmの電流密度で5分間通電した。その結果、図5(A)に示すように、鉄電極310ではナトリウム330が析出し、カーボン電極320では塩素ガス340が発生した。
通電を止めた後、鉄電極およびカーボン電極を溶融塩電解液にさらに1cm程度深く浸漬した。その結果、図5(B)に示すように、鉄電極310の表面ではナトリウム330と鉄が共存した状態となった。このナトリウム330と鉄が共存している部分350を「鉄を不純物として含む不純物含有ナトリウム」と仮定して、以下の電解精製を行った。
(ナトリウムの電解精製)
図6(A)に示すように、ナトリウム330が析出した鉄電極310(不純物含有ナトリウム350)を陽極とし、カーボン電極320を陰極として、10mA/cmの電流密度で定電流電解を行った。その結果、鉄電極310(陽極)ではナトリウム330が溶出し、カーボン電極320(陰極)ではナトリウム360が析出した。図6(B)は、定電流電解を行っている間の通電時間と電圧との関係を示すグラフである。図6(B)に示すように、鉄電極310(陽極)においてナトリウム330が溶出している間は、電圧はほぼ一定の値(またはわずかな上昇傾向)を示した。
さらに定電流電解を続けると、図7(A)に示すように、鉄電極310(陽極)上のナトリウム330が完全に溶出するのが観察された。このとき、ナトリウム330が完全に溶出する直前に、電圧が急激に上昇(約0.5V)するのが観察された(図7(B)参照)。この時点で通電を止めて、鉄電極310の表面を観察したが、鉄が溶出している兆候を見つけることはできなかった。したがって、カーボン電極320上に析出したナトリウム360は、鉄をほとんど含まない純粋なナトリウムであると考えられる。
本発明によれば、低温仕様の設備および安価な電解質を用いて、塩素ガスを発生させることなくかつ少ないエネルギー消費量で、不純物含有ナトリウムからナトリウムを製造(精製)することができる。例えば、本発明のナトリウムの製造方法およびナトリウム製造装置は、使用済みのナトリウム硫黄電池から回収したナトリウムをリサイクルする上で有用である。
本発明の一実施の形態に係るナトリウム製造装置の構成を示す断面図 図1のナトリウム製造装置を用いてナトリウムを製造する様子を示す模式図 本発明の別の実施の形態に係るナトリウム製造装置の構成を示す断面図 図3のナトリウム製造装置を用いてナトリウムを製造する様子を示す模式図 実施例において不純物含有ナトリウムを準備する手順を示す模式図 (A)実施例においてナトリウムが溶出している間の電解精製の様子を示す模式図、(B)実施例においてナトリウムが溶出している間の通電時間と電圧との関係を示すグラフ (A)実施例においてナトリウムが完全に溶出した後の電解精製の様子を示す模式図、(B)実施例においてナトリウムが完全に溶出した後の通電時間と電圧との関係を示すグラフ
符号の説明
100,200 ナトリウム製造装置
110 電解槽
120 隔壁
130 加熱部
140 第一の導電性部材
150,210 第二の導電性部材
160 電源
170 溶融塩電解液
180 不純物含有ナトリウム
190,330,360 (精製)ナトリウム
310 鉄電極
320 カーボン電極
340 塩素ガス
350 不純物含有ナトリウムと仮定した部分

Claims (8)

  1. 不純物含有ナトリウムを電解精製して精製ナトリウムを製造する方法であって、
    前記不純物含有ナトリウムを陽極とし、かつ溶融塩電解液を電解質として、前記不純物含有ナトリウムに含まれるナトリウムを陰極に析出させるステップを含み、
    前記溶融塩電解液は、アルミニウムのハロゲン化物およびアルカリ金属のハロゲン化物からなり、そのモル比が50:50〜52:48の範囲内である、
    ナトリウムの製造方法。
  2. 前記溶融塩電解液は、塩化アルミニウムおよび塩化ナトリウムからなり、そのモル比が50:50〜52:48の範囲内である、請求項に記載のナトリウムの製造方法。
  3. 前記溶融塩電解液は、塩化アルミニウム(A)、塩化ナトリウム(B)および塩化カリウム(C)からなり、
    A:(B+C)のモル比が50:50〜52:48の範囲内であり、
    かつB:Cのモル比が60:40〜100:0の範囲内である、
    請求項に記載のナトリウムの製造方法。
  4. 前記溶融塩電解液は、塩化アルミニウム、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムからなり、そのモル比が50:30:20〜52:29:19の範囲内である、請求項に記載のナトリウムの製造方法。
  5. 前記溶融塩電解液は、120〜160℃で溶融する、請求項〜請求項のいずれか一項に記載のナトリウムの製造方法。
  6. 前記不純物含有ナトリウムは、ナトリウム硫黄電池から得られたものである、請求項1に記載のナトリウムの製造方法。
  7. 請求項1に記載のナトリウムの製造方法により精製ナトリウムを製造するナトリウム製造装置であって、
    アルミニウムのハロゲン化物およびアルカリ金属のハロゲン化物からなり、そのモル比が50:50〜52:48の範囲内である溶融塩電解液と、
    前記溶融塩電解液を収容する電解槽と、
    前記不純物含有ナトリウムを含む陽極と、
    陰極と、
    前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源手段と、
    前記電源手段と前記陽極との間、および前記電源手段と前記陰極との間を電気的に接続する一対の導電性部材と、
    前記溶融塩電解液および前記不純物含有ナトリウムを加熱する加熱手段と、
    を有し、
    前記陽極および前記陰極を前記溶融塩電解液に接触させた状態で前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して、前記不純物含有ナトリウムに含まれるナトリウムを陰極に析出させるナトリウム製造装置。
  8. 前記導電性部材は、タングステン、モリブデンまたは炭素からなる、請求項に記載のナトリウム製造装置。
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