図2は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を示す模式図である。
図3は、同噴流浴装置において浴槽を側面方向から見た模式図である。
図4は、同噴流浴装置において噴流ノズル11が設けられた短辺側浴槽壁4a側のリム下空間を示す模式図。
本実施形態に係る噴流浴装置は、図2に表すように、浴槽1と、浴槽1の浴槽壁3bに開口された吸入口5と、循環路13、14と、循環路13、14の途中に設けられた加圧装置であるポンプ7と、浴槽壁4aに対して保持された噴流ノズル11とを備える。
浴槽1は、略平行に相対向する一対の長辺側浴槽壁3a、3bと、略平行に相対向する一対の短辺側浴槽壁4a、4bとを有する。
吸入口5は長辺側浴槽壁3bに形成されている。ポンプ7が駆動されると、浴槽1の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5を介して循環路13へと吸い込まれる。
一般に、入浴者は、向かい合う一対の短辺側浴槽壁4a、4bのうちの一方の短辺側浴槽壁(図2に示す具体例では短辺側浴槽壁4a)に背をもたれかけて、他方の短辺側浴槽壁(図2に示す具体例では短辺側浴槽壁4b)に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺側浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺側浴槽壁に形成するのが望ましい。なお、図2に示す具体例では、吸入口5を、長辺側浴槽壁3bに形成したが長辺側浴槽壁3aに形成してもよい。
循環路13の一端は吸入口5に接続され、他端はポンプ7の吸入口に接続されている。循環路14の一端はポンプ7の吐出口に接続され、他端は噴流ノズル11の流水導入口に接続されている。ポンプ7は、吸入口5から循環路13内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧してポンプ7の下流側の循環路14に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、噴流ノズル11の流水導入口に流入する。使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設けることが望ましい。
図2に示す具体例では、一方の短辺側浴槽壁4aに、2つの噴流ノズル11を取り付けている。2つの噴流ノズル11は、略同じ高さ(例えば、浴槽1の底面から概ね230mm)に所定距離隔てて(例えば、2つの噴流ノズル11間の距離は概ね160mm)で、且つ、2つの噴流ノズル11の設置位置の中心と短辺側浴槽壁4a方向の中央部が一致するように設けられている。噴流ノズル11が取り付けられた一方の短辺側浴槽壁4aの反対側の他方の短辺側浴槽壁4bの上方には浴槽側水栓が設けられる。したがって、通常、入浴者は自然と噴流ノズル11が設けられた側の短辺側浴槽壁4aに背中を向けた姿勢で入浴する。
図1は、噴流ノズル11の模式断面図である。
噴流ノズル11は、大きく分けて、略円筒形状でほぼまっすぐに延在する筒体20と、筒体20の軸方向の上流側端部に設けられた湾曲部30とを有する。筒体20と湾曲部30とは一体成形構造であってもよいし、別体のものを結合させてもよい。また、筒体20は、略円筒形状に限らず、略楕円筒形状であってもよい。
湾曲部30の内部には流水導入部22が形成され、その流水導入部22における上流側端部の最上流端には、前述した循環路14と浴槽1の外部で接続される流水導入口21が開口形成されている。筒体20の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口形成されている。
噴流ノズル11は、噴出口26を浴槽1の内部に臨ませて、前述した浴槽1における一方の短辺側浴槽壁4aに保持されている。噴流ノズル11は浴槽1のあふれ縁より下で、浴槽壁4aに対して保持されている。ここで、「あふれ縁」とは、浴槽1内に浴槽水をためていったとき、最初に浴槽1内から溢れる部分の浴槽1の縁(またはリム)を意味する。このような構成のため、噴流ノズル11からの噴流を浴槽水中に噴出させることができる。
流水導入部22の下流側端部は、流水導入部22の中で最も流路断面が縮小された流路断面収縮部23として機能する。流路断面収縮部23の最下流端は、筒体20の軸方向の上流側端部に開口している。
流水導入部22の流路断面は円形または楕円形であり、その流路断面積は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次減少している。すなわち、流水導入部22の流路は、上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次細くなっている。
流路断面収縮部23の流路断面の中心は、筒体20の軸中心C1に一致している。流水導入部22の流路断面の中心を通る流路中心線C2は曲率を有する曲線を描き、すなわち、流水導入部22は湾曲している。その流路中心線C2の下流端位置は、チャンバー25の軸中心C1に一致している。
流路断面収縮部23は、筒体20の内部に形成されたチャンバー25に連通し、且つチャンバー25に対して流路断面が縮小されている。また、流路断面収縮部23は、その流路断面の中心を、チャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の軸方向に対して略平行に延在し、径が一定な直管状に形成されている。すなわち、流水導入部22の流路は上流側から下流側に向けて漸次細くなり、その細くなった先には、流路径が一定な直管部(流路断面収縮部23)が続いている。
流路断面収縮部23と噴出口26との間の筒体20の内部には、筒体20の軸方向に延在するチャンバー25が設けられている。
チャンバー25の軸方向の上流側端部には、流路断面収縮部23に対して流路断面が急拡大(例えば径が3倍以上急拡大された)された流路断面急拡大部24が設けられている。流路断面急拡大部24は、流路断面収縮部23より下流側で流路断面収縮部23に連通している。
チャンバー25の軸方向の下流側端部には噴出口26が開口している。チャンバー25の内壁面は、流路断面急拡大部24から噴出口26の近傍に至るまで、チャンバー25の軸中心C1に対して略平行に延在し、また、チャンバー25は流路断面急拡大部24の内径寸法のまま噴出口26近傍まで続いている。チャンバー25における軸方向の上流側端部が流路断面急拡大部24として機能し、チャンバー25における軸方向の下流側端部が噴出口26として機能する。
流路断面収縮部23から流路断面急拡大部24にかけての流路壁面は略垂直に変化している。すなわち、流路断面収縮部23の流路壁面は、チャンバー25の軸方向に対して略平行であるのに対して、流路断面急拡大部24として機能するチャンバー25の軸方向の上流側端部の壁面は、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続いて径外方に広がって形成されている。この流路壁面の急変化により、後述するように流路断面急拡大部24にて、壁面からの流れの剥離が生じる。
なお、流路断面急拡大部24の流路壁面は流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に広がっていることに限らず、流路断面急拡大部24にて、流れの剥離が生じる程度に、下流側に向けて流路断面が拡径する漏斗(またはラッパ)状に形成されていてもよい。ただし、流路断面収縮部23の流路壁面に対して略垂直に続くように流路断面急拡大部24の流路壁面が形成されている方が、流路断面急拡大部24における流れの剥離を促進させやすい。
また、噴出口26近傍のチャンバー25内に、噴出口26へと通じるチャンバー25内流路の一部を遮る遮蔽体27を設けている。遮蔽体27は例えば円盤状に形成され、その中心をチャンバー25の軸中心C1に一致させて、チャンバー25の内部に設けられている。
遮蔽体27は、例えば、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部との間に放射状に設けられた図示しない複数本の保持部材を介してチャンバー25の内壁部に対して保持されている。それら保持部材は、円盤状の遮蔽体27の外周面のまわりに周方向に沿って等間隔で設けられ、よって、遮蔽体27によってチャンバー25内流路のすべてが遮蔽されず、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部との間には、チャンバー25から噴出口26への流水の流れを許容する流路が確保されている。
また、チャンバー25の軸方向の下流側端部における噴出口26へと続く内壁面に、チャンバー25の軸中心C1に向けて傾斜した環状の傾斜面28を形成している。傾斜面28は、上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に軸中心C1に近づくように傾斜している。
次に、本実施形態に係る噴流浴装置の作用について説明する。
図2、3において、浴槽1近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽1内に貯留された浴槽水が吸入口5から循環路13内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、循環路14を介して、噴流ノズル11の流水導入口21に導入される。
流水導入口21から導入された加圧浴槽水は、流水導入部22を流れ、この下流側端部である流路断面収縮部23から流路断面急拡大部24を経てチャンバー25内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入する際、流路断面の急拡大により、流路内壁面に沿って流れることができなくなり、流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
一般的に、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー25の内壁面の周の一部に流れが再付着する。
チャンバー25の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー25内壁面に沿い、遮蔽体27の外周面とチャンバー25内壁面との間を噴出口26に向かって流れ、噴出口26の上流側手前でチャンバー25の軸中心C1に向かうように傾斜して形成された傾斜面28に沿って軸中心C1に対して傾斜した噴流として噴出口26から浴槽1内に噴出する。
以上のようにして、チャンバー25内に、主流(図1において太線矢印aで表す)が形成される。
流路断面収縮部23に比べて噴出口26の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー25内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されること、さらにチャンバー25内に流路の一部を遮るように遮蔽体27が設けられていることによって、前述した主流の一部は、噴出口26から噴出されず、図1において矢印bで表すように、チャンバー25の上流側に戻される。
その上流側に戻された流れが、流路断面急拡大部24付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、流路断面急拡大部24付近で中心軸C1まわりに旋回流が形成され、これにより、主流の流路壁面に対する再付着位置が周方向で不規則に変化し、噴出口26からは中心軸C1まわりに不規則に旋回した噴流が噴出される。
入浴者は、噴流ノズル11から噴出される旋回噴流を、腰、背、肩、手、足等の身体の一部に受けることにより、マッサージ効果を得ることができる。噴流ノズル11から噴出される噴流は、一般的に広く知られる気泡浴装置による細く強い直線的な噴流とは異なり、太くやわらかい旋回噴流であるため、腰を包み込む、背中、腰全体を押すようにもみほぐすなど、局所的に強い刺激感ではなく、広範囲をもみほぐすような手もみに近いマッサージ感を得ることができ、長時間入浴していても飽きがなくゆったりとリラックスできる。また、直線的な強い噴流を局所的に受ける場合には、所望の部位にその噴流を受けるべく姿勢を保つために緊張状態になりがちであったが、本実施形態の旋回噴流は広範囲にわたってやわらかい刺激を与えるため、入浴者に緊張を強いることなく、力を抜いたリラックスした状態にさせやすい。
本実施形態に係る噴流ノズル11から噴出される噴流は旋回しているので、気泡が混入されなくても、マッサージ感を受けるのに十分な刺激感が得られる。むしろ気泡混入では得られない水で押されるような手もみに近いマッサージ感が得られる。また、気泡を混入しない分、噴流の噴出音及び気泡混入時の音を低減して、静かな環境でよりリラックスできる。なお、チャンバー25内は噴出口26面に比べ圧力が低く、ノズル11が図3中に示すような高さ位置に取り付けられるのであれば、チャンバー25内は概ね負圧を生じており、チャンバー壁の任意の位置に空気流入口を設けることで、容易に気泡を自給混入させることが可能であるので、本実施形態に係る旋回噴流に気泡を混入してもよく、その場合、気泡を混入しない場合よりも噴流の旋回力が弱まる。
また、本実施形態に係る噴流ノズル11は、内部に導入された流体自身が、前述したようにチャンバー25内での還流作用によって、噴出口26から噴出される噴流の旋回を励起する構成となっているため、特許文献1のような回転摺動部分が不要であり、ノズル構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、回転摺動部分における摩耗やゴミ詰まりなどによる旋回性能低下の心配もない。
また、前述したように、特許文献1のノズルは二重筒状になった入れ子構造となっている。したがって、構造が複雑になるとともに、内筒に相当するノズル本体と、外筒に相当する取付部材との間に細い隙間が形成されており、その隙間にゴミ等がつまる目詰まりの心配もある。同様に、特許文献2、3においても、ノズルが二重筒構造となっている。したがって、構造が複雑になると共に、狭い流路(隙間)の目詰まりの心配がある。
これに対して本実施形態では、特許文献1、2、3のように中心の流路の外側に別の流路が細い隙間として形成されておらず、チャンバー25を形成した筒体20は一重構造である。すなわち、ひとつの筒体20によって周囲が囲まれる単一空間(流路)内で、噴出口26へと向かう主流、および主流とは逆方向に流れる還流が形成され、浴槽水中に旋回噴流として噴出される。したがって、構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、目詰まりによる旋回性能低下の心配もない。
また、前述したように、特許文献5、6、7のノズルは、内部で旋回流を形成する単筒構造のノズルの周壁部にノズル筒体内への流入口が開口された構造であり、ノズル筒体内に流入した主流は筒体内で定常的かつ強力な旋回流を形成する。そのため、ノズル出口面から吐水される噴流は、卓越した遠心力により筒体軸方向(体表面に向かう方向)への直進性は失われ、ノズル出口面全体から径方向に均一に広がった噴流となり、広範囲を単調に刺激する噴流となってしまう。
これに対して本実施形態では、旋回流を励起するためのチャンバー25への流入口として機能する流路断面収縮部23は、チャンバー25を囲む筒体20の周壁部には形成されてはおらず、チャンバー25の軸方向の上流側端部に開口している。したがって、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入した主流は、流路断面急拡大部24で流路壁面から剥離した後、チャンバー25の内周面に再付着して噴出口26より直進性を保ったまま噴出し、さらに、その主流の流路壁面(チャンバー25の内周面)への再付着位置がチャンバー25内に形成される循環流(戻り流)により変化することで、噴出方向が変化するため、刺激箇所が時間とともに変化するような変化に富んだ噴流刺激が得られる。
なお、本実施形態において、前述したように、チャンバー25内静圧は、浴槽1内に貯留された浴槽水の静圧より低く、チャンバー25内部では下流側に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されるため、遮蔽体27を設けなくても、主流の一部をチャンバー25上流側に戻す還流を形成することは可能である。ただし、遮蔽体27を設けた方が、逆静圧勾配(流れ方向に対して静圧が上昇)だけを利用した還流形成に比べ、噴流噴出方向の切り替わりを生じさせるための循環流の形成が安定するため、噴流の旋回が安定する。すなわち、噴流旋回方向もしくは噴流移動方向が反転しにくくなる。
また、傾斜面28を設けなくても、前述したように主流がチャンバー25の内周面における周の一部に偏ることから筒体軸方向に対して偏向した噴流が実現されるが、本実施形態のように噴出口26の上流側の手前に傾斜面28を設け、その傾斜面28に主流を沿わせることで、主流の偏向を促進することができ、より広範囲にわたるやわらかな旋回噴流を形成しやすくなる。
ここで、図6に示す比較例1の噴流ノズル51と、図7に示す比較例2の噴流ノズル61と、前述した本実施形態に係る噴流ノズル11とを比較する。
噴流ノズル11において図1に表す各寸法d0、D、DCB、h、Dout、L、X、DIN、L0、L1は、それぞれ以下のように設計し、比較対象とした。流路断面収縮部23の内径d0=8.3mm、流路断面急拡大部24及びチャンバー25の内径D=27.8mm、遮蔽体27の外径DCB=20.9mm、遮蔽体27の軸方向厚さh=5.8mm、噴出口26の口径Dout=22.3mm、チャンバー25の長さL=76.6mm、遮蔽体27の軸方向の中心から噴出口26までの距離X=10.4mm、流水導入口21の口径DIN=20mm、ノズル全長L0=118mm、直管状の流路断面収縮部23の軸方向長さL1=3mm。
比較例1の噴流ノズル51においても、筒体20の軸方向の上流側端部に湾曲部50が設けられ、その湾曲部50の内部には流水導入部52が設けられている。流水導入部52の下流側端部は、筒体20内に形成されたチャンバー25と連通する流路断面収縮部53として機能する。この比較例1では、流水導入部52は、上流側に開口形成された流水導入口54から下流側の流路断面収縮部53にかけて、ほぼ一定の流路径(流路断面積)のまま湾曲している。比較例1において、ノズル全長L0=181mm、流路断面収縮部53の内径d0=8.3mm、流水導入口54の口径DIN=20mm、直管状の流路断面収縮部53の軸方向長さL1=3mmと設計し、流路断面急拡大部以降の形状は前述の比較対象と同一形状とした。
比較例2の噴流ノズル61では、筒体20の軸方向の上流側端部に屈曲部60が設けられ、その屈曲部60の内部には流水導入部62が設けられている。流水導入部62の下流側端部は、筒体20内に形成されたチャンバー25と連通する流路断面収縮部63として機能する。この比較例2では、流水導入部62は、上流側に開口形成された流水導入口64から下流側の流路断面収縮部63にかけて、略直角に曲がっている。比較例2において、ノズル全長L0=136mm、流路断面収縮部63の内径d0=8.3mm、流水導入口64の口径DIN=20mm、直管状の流路断面収縮部63の軸方向長さL1=3mmと設計し、流路断面急拡大部以降の形状は前述の比較対象と同一形状とした。
噴流ノズル11に加圧浴槽水を供給するポンプ7や配管類は、図4に模式的に示すように、噴流ノズル11が取り付けられた短辺側浴槽壁4aの側方の空間に配置される。
浴槽1が建物内の設置場所に設置された状態で浴槽壁4aの側方に確保できるスペースには制限があり、ノズルと配管との接続部分は「L」字状に曲がったエルボ形状とされるのが一般的である。
ここで、比較例1のように、内部に形成される流路(流水導入部52)の径がほぼ一定な湾曲部50を用いた場合には、ノズル51においてチャンバー25よりも上流側に突出する部分が長くなってしまい、限られたスペースに設置するための小型化要求に応えられない。
これに対して、比較例2のように、流水導入部62を略直角に屈曲させると、チャンバー25よりも上流側に突出する部分の長さを抑えることができるが、流水導入部62における流路の急変化により内部流体に乱れが生じる。
ここで、本発明者等は、本実施形態に係る噴流ノズル11、比較例1の噴流ノズル51、比較例2の噴流ノズル61について、噴出される噴流の旋回性能の評価を行った。
旋回性能評価方法としては、各ノズルの(噴出口側の)先端に厚み0.05mmの筒状のゴム膜を取り付け、噴出される噴流の旋回に伴う、水中におけるゴム膜の旋回を高速度ビデオカメラにて1秒100コマの条件で撮影した。そして、ノズル先端より50mmの位置における、チャンバーの中心軸に対して直交する鉛直方向断面のゴム膜の両端位置を1コマずつ把握し、そのゴム膜の両端位置の算術平均値をノズル先端より50mm位置における噴出噴流中心位置とし、20秒間における噴出噴流中心位置の経時変化値の標準偏差値を噴流振れ幅と定義し、旋回性能評価値とした。40(リットル/分)流水時の評価結果を表1に示す。この旋回性能評価値(噴流振れ幅)が大きいほど、入浴者は噴流の旋回感をよく感じることができる。
比較例2では、旋回性能評価値が本実施形態の場合の約半分であり、これは、前述した略直角な流水導入部62における流水の乱れにより、チャンバー内で還流が形成されにくくなっていることに起因する。
本実施形態、比較例1、比較例2において、それぞれの流路断面収縮部より空気中に40リットル/分で噴流を噴出して、その様子を観察したところ、比較例2では、本実施形態及び比較例1よりも噴流が広範囲に拡散しまうのが確認できた。
すなわち、一重構造の筒体内部に形成されたチャンバー内における流水自身の作用により旋回した流れを生成する構造においては、流路断面急拡大部より上流側における流水の乱れが大きいと、流路断面急拡大部において噴流が広範囲に急速に広がり、チャンバー内で主流と還流(戻り流)とに分離できるスペースがなくなるため、流体自身による十分な自己励起旋回性能が発揮されなくなる。
これに対して、本実施形態では、比較例2の約2倍の旋回性能評価値が得られており、その旋回噴流による変化に富んだ刺激感を得ることができる。しかも、本実施形態では、流水導入部22の流路は上流側端部から下流側端部である流路断面収縮部23に向けて漸次細くなり、その流路の流路中心線C2の下流端位置がチャンバー25の軸中心C1に一致するようにチャンバー25につながる構造であるため、流水導入部の流路径が一定のまま湾曲した比較例1に比べて、湾曲部の筒体軸方向への突出長さを短くすることができる。すなわち、本実施形態によれば、噴出噴流の旋回性能を損なうことなく、省スペース設置が可能となる。
前述した実施形態では、流路断面収縮部23を、チャンバー25の軸方向に対して略平行に延在し径が一定な直管状としたが、これに限ることなく、図5に示す流路断面収縮部43のように、流路径(流路断面積)が漸次小さくなる形状に形成してもよい。すなわち、図5に示す流路断面収縮部43の内壁面は、上流側から下流側(チャンバー25側)に向かうにつれてチャンバー25の軸中心C1に向かうように傾斜している。
ここで、図1に示す直管状の流路断面収縮部23と、図5に示す傾斜(勾配)がつけられた流路断面収縮部43とで、旋回性能の比較評価を行った。図1に示す流路断面収縮部23及び図5に示す流路断面収縮部43共に、軸方向長さを同じ6mmとした。また、図5の流路断面収縮部43における勾配は3/100とした。旋回性能の評価は、表1の場合の評価と同様に行った。この結果を表2に示す。
表2の結果より、流路断面収縮部は、径の変化しない直管形状とした方が大きな旋回性能を得るにあたって、より望ましいと言える。
また、流路断面収縮部23を直管形状とした場合であっても、その軸方向がチャンバー25の軸方向に対して傾いていると、チャンバー25内の特定の内壁面に主流が付着しやすくなり、主流付着位置の変化による旋回流生成を起こしにくくなるため、直管形状の流路断面収縮部23の軸方向はチャンバー25の軸方向に対して略平行とするのが望ましい。また、同様の観点から、流路断面収縮部23の流路断面の中心は、チャンバー25の軸中心C1に一致させるのが望ましい。
流水導入部の流路中心線C2は、図1に示すように直線と単一円弧の組み合わせのみに限定されるものではなく、図8に示すように直線と複数曲率を有する曲線との組み合わせでもよい。本具体例構造において、ノズル全長を131mm、チャンバー25へと続く流水導入部下流側端部の該直管部軸方向長さL1を26mm、流水導入部下流側のノズル形状を図1に示す実施形態と同一形状とし、40(リットル/分)流水時の表1と同様の評価を行ったところ、旋回性能評価値は図1の形状の場合と同等であった。
1…浴槽、5…吸入口、11…噴流ノズル、20…筒体、22…流水導入部、23,43…流路断面収縮部、24…流路断面急拡大部、25…チャンバー、26…噴出口、27…遮蔽体、30…湾曲部