図1ないし図3は、本発明のプレス成形金型の実施形態を説明する上での第1の参考例を示すものであり、図4は、かかるプレス成形金型を用いた切削工具の切刃部材の製造方法により製造される切刃部材を示すものである。ここで、この切刃部材は、図24に示した縦刃式のスローアウェイチップと略同様の構成を有するものであって、略方形平板状のチップ本体1を有し、このチップ本体1の厚さ方向(図4において上下方向)を向いて方形をなす一対の平板面2と、この平板面2の周りに配置される4つの周面とを備えていて、上記一対の平板面2間の間隔、すなわちチップ本体1の厚さ方向の寸法が、上記4つの周面のうち互いに反対側に位置するもの同士の間隔、すなわちチップ本体1の幅寸法および長さ寸法よりも小さくされている。
さらに、これら4つの周面のうち、互いに反対側に位置する一対の周面(図4において左手前と右奥の周面)はすくい面3とされるとともに、このすくい面3と上記平板面2との交差稜線には切刃4が、また該すくい面3と残りの一対の他の周面(図4において左右の周面)5との交差稜線に切刃6がそれぞれ形成されていて、上記平板面2および他の周面5がそれぞれこれら切刃4,6に対する逃げ面とされている。また、切刃4,6が交差するコーナ部7は1/4凸円弧状とされ、これに伴い平板面2と他の周面5との交差稜線部も、すくい面3に平行な断面が1/4凸円弧をなす凸曲面状のコーナ稜線部8とされている。ただし、すくい面3は、図24のようなチップブレーカ9が形成されてはおらず、逃げ面とされる平板面2、他の周面5、およびコーナ稜線部8に直交する平坦面とされている。さらに、一対の平板面2の中央間にはチップ本体1を厚さ方向に貫通する取付穴10が形成されている。そして、このようなスローアウェイチップは、チップ本体1と同形で焼結の際の収縮代分だけ各寸法が大きくされた圧粉体を、超硬合金等の切刃部材の原料粉末から本参考例の上記プレス成形金型によってプレス成形して焼結することにより製造される。
このような圧粉体をプレス成形して切刃部材としてのスローアウェイチップを製造するための本参考例のプレス成形金型は、図1および図2に示すように、互いに対向して図示されない駆動手段により相対的に離接させられる複数の主パンチ11,12と、接近したこれら主パンチ11,12の周囲を取り囲むように配設されるダイ13と、そしてこのダイ13に設けられて、接近した主パンチ11,12間に画成されるキャビティー14に向けて主パンチ11,12の離接方向とは異なる方向から離接させられる副パンチ15とを備えている。ここで、本参考例では主パンチ11,12は図示の通り上下方向に離接させられるように配設される一方、副パンチ15はこの主パンチ11,12の離接方向に垂直な方向、すなわち水平方向にキャビティー14に向けて離接させられる。また、本参考例では一対の副パンチ15が間にキャビティー14を挟むように一直線上に互いに対向して、このキャビティー14に向けて該直線に沿って離接するように配設させられている。
そして、主パンチ11,12が離接する上下方向は、プレス成形される圧粉体においてチップ本体1に焼結させられたときの上記厚さ方向に対応する方向とされており、これら主パンチ11,12が接近することにより、主パンチ11,12間に投入された上記原料粉末が該主パンチ11,12の互いに対向するプレス面11A,12Aによって押圧されて圧縮され、圧粉体においてチップ本体1の上記平板面2に対応する面が成形される。また、本参考例では上記一対の副パンチ15が離接する方向は、上記圧粉体においてチップ本体1のすくい面3が形成される周面に対応する面に対向する方向とされており、従ってこれら一対の副パンチ15がキャビティー14に向けて接近することにより、圧粉体において上記すくい面3に対応する面が成形される。従って、この副パンチ15のキャビティー14側を向くプレス面15Aは、圧粉体においてチップ本体1のすくい面3に対応する面と略等しい寸法形状とされ、すなわち横長の長方形の4隅のコーナ部が1/4凸円弧によって面取りされたような形状とされる。
一方、圧粉体においてチップ本体1の上記他の周面5に対応する面側は、本参考例ではダイ13によって成形される。すなわち、図2に示すように上記ダイ13には、接近した主パンチ11,12間に画成されるキャビティー14に対して、該主パンチ11,12の離接方向と副パンチ15の離接方向とに垂直な方向(図2における左右方向。図1においては図面に直交する方向)に外側に向けて凹となる凹部16が形成されており、この凹部16のキャビティー14内側を向く底面16Aは主パンチ11,12の離接方向と副パンチ15の離接方向とに平行な平坦面とされていて、この底面16Aにより圧粉体においてチップ本体1の上記他の周面5に対応する面が成形される。また、上記主パンチ11,12の離接方向側における凹部16の両縁部には、底面16Aに滑らかに連なる断面凹円弧状をなしてキャビティー14の内側に延びる凹曲面状の壁面16Bがそれぞれ形成されており、プレス成形の際に主パンチ11,12が接近して位置決めされることによりキャビティー14が形成された時点で、これらの壁部16Bは主パンチ11,12の上記プレス面11A,12Aに滑らかに連なるようにされていて、圧粉体においてチップ本体1の上記コーナ稜線部8に対応する部分が成形される。
ここで、この壁面16Bは、図3(a)に示すようにその断面が1/4円弧に満たないものとされていてもよく、この場合には、主パンチ11,12のプレス面11A,12Aの凹部16側の両側縁部に、該主パンチ11,12が上述のように位置決めされてキャビティ14が形成された状態で壁面16Bに滑らかに連なる断面円弧状の凹曲面部17が形成され、この凹曲面部17と壁面16Bとにより、圧粉体において上記コーナ稜線部8に対応する断面1/4円弧の凸曲面が成形される。従って、この場合には、圧粉体においてチップ本体1の上記平板面2の全部とこの平板面2側のコーナ稜線部8の一部に対応する部分が主パンチ11,12によって成形され、コーナ稜線部8の残りと他の周面5に対応する部分とがダイ13によって成形される。なお、この場合において、上記凹曲面部17側でダイ13に摺接する主パンチ11,12の外周面18と凹曲面部17とがなす交差角αは45°以上とされるのが望ましく、これよりも交差角αが小さいとこれら凹曲面部17と外周面18との交差稜線部分が鋭角になりすぎて欠損を生じるおそれがある。
また、上記壁面16Bは、図3(b)に示すようにその断面が丁度1/4円弧となるような凹曲面とされていてもよく、この場合には主パンチ11,12のプレス面11A,12Aに上述のような凹曲面部17は形成されず、このプレス面11A,12Aと主パンチ11,12の上記外周面18との交差角αは90°となり、圧粉体において他の周面5から丁度コーナ稜線部8の全体に対応する部分までがダイ13の上記凹部16によって成形される。さらに、この壁面16Bは、図3(c)に示すようにその断面が1/4円弧を越えて主パンチ11,12の離接方向に垂直な方向に延びるように形成されていてもよく、この場合にも主パンチ11,12のプレス面11A,12Aに上述のような凹曲面部17は形成されずに、プレス面11A,12Aと外周面18との交差角αは90°となる。そして、この場合には、圧粉体においては他の周面5からコーナ稜線部8を越えて平板面2の他の周面5側の縁部に対応する部分までがダイ13の上記凹部16によって成形されることとなり、主パンチ11,12は圧粉体において平板面2の上記縁部間の一部に対応する部分のみを成形することになる。
なお、これら主パンチ11,12のうち、本参考例では下側の主パンチ12に、主パンチ11,12の上記離接方向に向けて上記キャビティー14内に出没可能とされるピン19が備えられている。このピン19は、チップ本体1の取付穴10に対応する貫通穴を圧粉体に形成するものであって、円柱状をなし、下側の主パンチ12の上記プレス面12A中央部に開口するように形成された円孔12Bに嵌挿され、該主パンチ12とは独立して駆動されてプレス面12Aから上向きに突出するように出没可能とされている。一方、上側の主パンチ11には、そのプレス面11Aの中央部に開口するように円孔11Bが形成されており、接近した主パンチ11,12間に画成されたキャビティー14内に突出したピン19の先端(上端)部は、この上側の主パンチ11の円孔11B内に嵌挿されて収容される。
また、上記ダイ13は、キャビティー14を間にして分割されて離接可能とされている。すなわち、本参考例では、ダイ13は、図2に示すように主パンチ11,12の離接方向においてキャビティー14の略中央に位置する分割面Pによりこれら主パンチ11,12の離接方向と平行な方向に分割される一対の分割ダイ13A,13Bによって構成されており、上記分割面Pは主パンチ11,12の離接方向に垂直な平面とされている。そして、これらの分割ダイ13A,13Bは、主パンチ11,12の離接やピン19の出没とは独立して、該主パンチ11,12の離接方向と平行な方向に相対的に離接可能とされる。なお、このうち一方の分割ダイ(例えば、下側の分割ダイ13B)は上記副パンチ15とともに主パンチ11,12の離接方向の位置を固定しておき、他方の分割ダイ(例えば、上側の分割ダイ13A)のみを離接させるようにしてもよい。
次に、このように構成されたプレス成形金型により、上記縦刃式スローアウェイチップに製造される圧粉体を成形する場合の、切削工具の切刃部材の製造方法の参考例について図5により説明すると、まず図5(a)に示されるように分割ダイ13A,13Bを接近させてダイ13を構成し、下側の主パンチ12をキャビティー14が形成される位置から離間させるとともに副パンチ15はキャビティー14の位置まで接近させた状態で、上側の主パンチ11をダイ13から離間させておいてその開口部から、WCを主成分とする超硬合金やTiC−TiNを主成分とするサーメット等の原料粉末を投入して、所定量が充填されるようにする。なお、このときピン19は、その上端が投入された原料粉末と略等しい高さとなるように下側の主パンチ12のプレス面12Aから突出させられている。
次いで、図5(b)に示すように、上側の主パンチ11が下側主パンチ12に向けて接近してピン19を円孔11B内に嵌挿しつつダイ13に挿入されて前進(降下)してゆくが、このとき下側の主パンチ12は接近する上側主パンチ11に対して離間するように後退するとともに副パンチ15もキャビティー14側から離間するように後退し、これにより投入された原料粉末はこれら主パンチ12および副パンチ15が後退した空間へと引き込まれるように充填され、圧縮工程前の原料粉末の移送工程の終了となる。そして、上側の主パンチ11が所定の位置まで前進したところで、下側の主パンチ12も上側主パンチ11に向けて接近して前進(上昇)するとともに、副パンチ15もキャビティー14側に向けて接近するように前進して主パンチ11,12とともに原料粉末を圧縮し、図5(c)に示されるように所定の形状のキャビティー14を画成するとともに、その内部にこのキャビティー14の形状に対応した圧粉体をプレス成形する。すなわち、主パンチ11,12によって圧粉体におけるチップ本体1の上記平板面2に対応する面の少なくとも一部を成形するとともに、副パンチ15によってすくい面3に対応する面を成形し、残りの他の周面5に対応する面等の部分はダイ13によって成形する。
なお、このとき、上記副パンチ15のキャビティー14への接近による原料粉末の圧縮は、主パンチ11,12が原料粉末を圧縮し始めてから圧縮を終了するまでに接近する移動量の50%以上を移動した後に終了するように設定されている。すなわち、図5(b)に示したように上側の主パンチ11が降下する一方で下側の主パンチ12が後退して原料粉末を引き込んでから前進(上昇)に転じた時点を主パンチ11,12による圧縮の開始とし、図5(c)に示したようにこれら上下の主パンチ11,12が互いに接近して上記所定の形状のキャビティー14を画成した時点を圧縮の終了としたとき、圧縮の開始からの主パンチ11,12の移動量が、これら圧縮開始と終了の間に主パンチ11,12が移動する移動量L(図5(b)参照)の1/2に達した後に、副パンチ15が上記キャビティー14を画成する位置に達して停止し、該副パンチ15による原料粉末の圧縮が終了するようになされている。従って、副パンチ15による圧縮終了は主パンチ11,12による圧縮終了と同時(主パンチ11,12の移動量が上記移動量Lに達した時点)でもよく、またそれ以降であってもよい。
そして、こうして圧粉体が成形されたなら、ピン19を後退させてキャビティー14から下側主パンチ12内に没入させるとともに、ダイ13を分割して分割ダイ13A,13Bを離間させ、さらに上側の主パンチ11と副パンチ15を離間(後退)させることにより、成形された圧粉体は下側の主パンチ12上に載置されただけの状態となるので、これを取り出して焼結することにより、図4に示したような縦刃式スローアウェイチップすなわち切削工具の切刃部材を製造することができる。
従って、このような製造方法およびプレス成形金型においては、主パンチ11,12と、これら主パンチ11,12の離接方向とは異なる方向に離接する副パンチ15とによって原料粉末が圧縮されるので、これら主パンチ11,12の離接方向と副パンチ15の離接方向との多方向から擬似的にキャビティー14内において原料粉末を等方的に圧縮して圧粉体をプレス成形することができる。このため、単に互いに対向して離接する一対のパンチによって原料粉末を圧縮する場合などに比べ、圧粉体において原料粉末を満遍なくより均一に圧縮することができるので、こうしてプレス成形された圧粉体を焼結しても微少な変形や歪みすら生じることがなく、圧粉体のプレス成形によっても極めて高精度の切刃部材を製造することが可能となる。
例えば、本参考例では、上述のような縦刃式スローアウェイチップに製造される圧粉体を成形するのに際し、ダイ13の凹部16によって圧粉体の他の周面5に対応する面とコーナ稜線部8の一部(図3(a)の場合)、または全部(図3(b)の場合)、またはコーナ稜線部8の全部と平板面2の一部(図3(c)の場合)に対応する面とが成形されるようになされているが、特に図3(c)のように凹部16の後退量が大きい場合には、上下の主パンチ11,12による圧縮だけではこの凹部16内で原料粉末を極めて均一に圧縮するのは困難となる。ところが、これに対して本参考例によれば、副パンチ15が主パンチ11,12の離接方向と垂直な上記凹部16の延びる方向にキャビティ14に向けて接近して原料粉末を圧縮することにより、この凹部16内に充填された原料粉末をも十分に圧縮することができ、圧粉体の全体においてその原料粉末の圧縮の確実な均一化を図ることが可能となるので、こうしてプレス成形された圧粉体を焼結したスローアウェイチップにおいては、特に上記他の周面5からコーナ稜線部8にかけての部分を所望の形状寸法とすることができ、これに伴い切削工具の切刃部材として重要な切刃6からコーナ部7にかけての部分も極めて高精度に形成することができる。
これは、例えば上記すくい面3にチップブレーカ9が形成された図24に示したような縦刃式スローアウェイチップを製造する場合も同様であり、本参考例においてこのようなスローアウェイチップに製造される圧粉体を成形するには、図6および図7に示す変形例のプレス成形金型のように、副パンチ15のプレス面15Aに、圧粉体におけるチップブレーカ9に対応した形状に応じて凹凸が逆になるように、凹部15Bや凸部15Cを形成すればよい。ここで、図8(a)は、この変形例によって製造される縦刃式スローアウェイチップのチップブレーカ9部分の断面図であり、このチップブレーカ9は、切刃4.6またはコーナ部7に、平板面2、他の周面5、およびコーナ稜線部8に垂直な幅の短いランド部20を介して、すくい面3の内側(図8(a)において右側)に向かうに従い漸次後退した後に隆起する凹溝状とされており、さらにその内側には平板面2、他の周面5、およびコーナ稜線部8に垂直で切刃4,6およびコーナ部7よりも突出した平坦面21が形成されて、チップ本体1の一対のすくい面3のうち一方のすくい面3周縁の切刃4,6、およびコーナ部7を切削に用いる際に、他方のすくい面3の平坦面21が切削工具のチップ取付座壁面に当接して着座させられるようになされている。
そして、これに応じて図6に示すように副パンチ15のプレス面15Aにも、その外周縁に当該副パンチ15の離接方向に垂直な幅狭枠状の平坦面15Dが形成されるとともに、その内側には該プレス面15Aの内側に向かうに従い漸次隆起する上記凸部15Cと、この凸部15Cから副パンチ15が離間する方向に後退してキャビティー14に対し凹となる上記凹部15Bとが形成され、この凹部15Bの底面15Eは上記平坦面15Dよりも副パンチ15の離間する方向に後退した平坦面とされる。なお、この変形例によって製造される縦刃式スローアウェイチップでは、図8(b)に示すように取付穴10が、上記厚さ方向中央部においてこの厚さ方向中央部に向かうに従い漸次縮径する縮径部10Aを有したいわゆるベル穴構造とされており、これに伴い主パンチ11,12のプレス面11A,12Aにおいて上記円孔11B,12Bの周りには、それぞれ先端に上記縮径部10Aに対応する部分を圧粉体の貫通穴に成形する縮径部22Aが形成された概略円筒状の突部22が形成され、ピン19はこれらの突部22の内径部に嵌挿されるようにして出没可能とされる。
従って、このような変形例においても、図7に示すようにダイ13に形成された凹部16によってチップ本体1の他の周面5に対応する圧粉体の面の周辺が成形される場合に、主パンチ11,12の離接方向とは異なる水平方向から離接する副パンチ15により、該凹部16に充填された原料粉末を均一に圧縮することができる。そして、さらに当該変形例では、上記他の周面5とは異なるすくい面3となる周面に上述のような凹状のチップブレーカ9や凸状の平坦面21が形成される場合でも、この副パンチ15に上述のような凸部15Cや凹部15Bを形成することにより、これらチップブレーカ9や平坦面21に応じた凹凸を圧粉体のすくい面3に対応する面が確実かつ均一に圧縮されるように成形することができる。なお、すくい面3に形成されるチップブレーカ9が切刃4,6やコーナ部7から突出するものだけである場合には、これに応じて上記プレス面15Aに凹部のみを形成すればよく、逆にチップブレーカ9がすくい面3に凹状に形成されるものだけである場合にはプレス面15Aにも凸部のみを形成すればよい。
しかるに、例えばこのような凹部15Bや凸部15Cを上記凹部16と同様にダイ13側に形成しておくことも考えられるが、特に上記縦刃式スローアウェイチップのようにすくい面3の外周側を周回する凹溝状のチップブレーカ9の内側に切刃4,6やコーナ部7より凸となる平坦面21が形成されるのに伴い、枠状に周回する凸部15Cの内側に大きく凹んだ凹部15Bが形成される場合には、主パンチ11,12による圧縮だけではこの凹部15Bの底面近傍に原料粉末を確実に回り込ませて他の部分と均一に圧縮するのは困難となるおそれがある。ところが、これ対して、本参考例の上記変形例によれば、副パンチ15に形成された凹凸部15B,15Cが凹凸する方向に該副パンチ15が離接させられることとなるので、たとえ凹部15Bの底面近傍でも原料粉末を確実かつ均一に圧縮して圧粉体を成形することができ、従ってチップ本体1において着座の基準となる上記平坦面21をより高精度に形成することが可能となる。
また、この変形例も含めた上記参考例では、平板状のチップ本体1に製造される圧粉体のうち最も面積の大きくなる上記平板面2に対応する面の少なくとも一部が上下方向に離接する主パンチ11,12によって成形されて、これら主パンチ11,12により原料粉末がチップ本体1の寸法の小さい厚さ方向に対応する方向に圧縮されて圧粉体が成形されるようになされており、より均一な原料粉末の圧縮を図ることができる。特に、本参考例のように取付穴10とされる貫通穴が圧粉体に成形される場合でも、この貫通穴を成形するピン19は、主パンチ11,12の離接方向すなわち主パンチ11,12による圧縮方向に沿ってキャビティー14内に突出させられるので、このピン19の周辺においても均一な原料粉末圧縮比を得ることができる。しかも、変形例のように上記突部22によってベル穴状の貫通穴を成形する場合でも、本参考例ではこの主パンチ11,12による圧縮に加えて副パンチ15によりピン19の突出方向に垂直な方向からも原料粉末が圧縮されるので、主パンチ11,12の両突部22間の環状に凹となる部分にも確実に原料粉末を押し込んで圧縮の均一化を図ることができる。
さらに、こうして副パンチ15によって主パンチ11,12とともに原料粉末を圧縮するのに際して、本参考例の製造方法では、主パンチ11,12が原料粉末を圧縮し始めてから圧縮を終了するまでの移動量Lの50%以上移動して接近した後に、副パンチ15による原料粉末の圧縮が終了するようになされており、主パンチ11,12による圧縮が十分になされないうちに副パンチ15がキャビティー14を画成する位置に達して圧縮を終了することにより、あたかもこの副パンチ15部分がダイ13の一部となったところに主パンチ11,12による圧縮が行われるような状態となるのを防ぐことができ、この副パンチ15の圧縮による圧粉体の圧縮の均一化効果を確実に奏することが可能となる。なお、この副パンチ15による原料粉末の圧縮終了は、当該製造方法における圧縮工程時間の短縮等を考慮すると主パンチ11,12による圧縮の終了と略同時までの間とされるのが望ましいが、上述のようにこの主パンチ11,12による原料粉末の圧縮の終了後とされていてもよい。
さらにまた、本参考例の製造方法では、主パンチ11,12の間に原料粉末が投入された後に、副パンチ15がキャビティー14を画成する位置から一旦離間し、しかる後に再び接近して原料粉末を圧縮するようになされており、これにより投入された原料粉末を副パンチ15が離間して後退する際に形成される空間に十分に引き込んでから圧縮することができるので、圧粉体における一層確実な原料粉末の圧縮の均一化を図ることができる。また、本参考例では同時に下側の主パンチ12も上側の主パンチ11に対して離間(後退)して下降することにより、この下側主パンチ12の上の空間にも原料粉末を引き込んでから上側主パンチ11との間で圧縮することができるので、この主パンチ11,12の離接方向にも圧縮の均一化を図ることができる。ただし、上記副パンチ15による原料粉末圧縮のための移動量が小さい場合には、上述のように副パンチ15を一旦離間させることなく、例えば下側の主パンチ12による引き込みが終了して上側の主パンチ11とによる圧縮が開始された時点で同時に、あるいはそれより後などに、そのままキャビティー14側に向けて接近させて圧縮を行うようにしてもよい。
一方、本参考例のプレス成形金型では、主パンチ11,12の離接方向に対して副パンチ15の離接方向が垂直とされており、特に主パンチ11,12が上下方向に離接させられるのに対して副パンチ15は水平に離接させられるので、これら主パンチ11,12と副パンチ15を離接させるための駆動手段を該離接方向に沿った直交座標に基づいて設計すればよく、設計の簡略化を図ってより低廉なプレス成形金型を提供することができ、従って切刃部材(縦刃式スローアウェイチップ)の製造コストの一層の低減を図ることができる。また、本参考例ではプレス成形された圧粉体を取り出すのに、ダイ13もこのキャビティー14を間にして複数の分割ダイ13A,13Bに分割されて離接可能とされており、しかもこのダイ13の分割方向が主パンチ11,12の離接方向と平行な方向、すなわち上下方向とされているので、このダイ13を分割して離接させるための駆動手段についても設計の簡略化を図りつつ、成形された圧粉体を容易に金型から取り出すことが可能となる。
ただし、本参考例ではこのようにダイ13を分割して圧粉体を取り出すようにしているが、例えば図1および図2に示した参考例のように主パンチ11,12のプレス面11A,12Aに変形例のような突部22や逆に凹部などが形成されていない場合には、ダイ13を分割することなく、圧縮終了後にピン19を後退させてプレス面12Aから没入させてから、一対の副パンチ15のうち一方をキャビティー14に対して離間させるとともに、他方をこの一方の副パンチ15が離間する側に圧粉体ごと押し出して取り出すことも可能である。また、ダイ13を分割するにしても、上記参考例のように主パンチ11,12の離接する方向と平行な方向の他に、この離接方向と垂直な、例えば副パンチ15の離接方向に平行な方向(図1における左右方向)や、主、副パンチ11,12,15の離接方向に双方に垂直な方向(図2における左右方向)にダイ13を分割して離接させるようにしてもよく、場合によっては圧粉体に対して抜き勾配が与えられる方向に斜めにダイ13を2またはそれ以上の分割ダイに分割して離接させてもよい。
なお、こうしてダイ13を分割するのと同様に、上記主パンチ11,12や副パンチ15についても、その少なくとも1つを上記ダイ13と同様に複数の分割パンチによって構成するようにしてもよい。ただし、この場合に複数の分割パンチによって構成される主パンチ11,12と副パンチ15とのうちの少なくとも一つは、その離接方向に沿った分割面によって分割されて、各分割パンチがこの分割面で摺接しながら該離接方向に互いに独立して離接させられることとなる。
そして、このように主パンチ11,12や副パンチ15を複数の分割パンチで構成したときには、この分割されたパンチによって成形される圧粉体の面のなかでもその離接方向における原料粉末充填量や圧縮比の細かな制御を行うことができ、より均一な密度の圧粉体を得ることが可能となる。例えば、上記参考例において、副パンチ15の離接方向にキャビティー14側から見て上記ピン19が投影される副パンチ15の中央部分では、該離接方向にピン19が位置するため、単一の副パンチ15によって圧縮するとその両側の部分に比べて原料粉末の充填量が相違して圧縮比も変化してしまうのに対し、この中央部分と両側部分とで副パンチ15を分割してこれらを独立して離接させることにより、このような原料粉末充填量の相違に応じて圧縮比が均一化するように中央部分と両側部分とで充填量を制御することが可能となる。
さらに、本参考例では、チップ本体1の他の周面5に対応する圧粉体の面と、この他の周面5と上記平板面2との交差稜線部に形成される断面1/4凸円弧状のコーナ稜線部8に対応する部分の一部または全部、あるいはその全部と平板面2のコーナ稜線部8側の縁部とが、図3(a)〜(c)に示したようにダイ13に形成された凹部16によって成形されるようになされている。しかるに、この点、例えばこのような凹部16をダイ13側に設けずに、図3(d)に示すように平板面2からコーナ稜線部8の全部に対応する圧粉体部分を上記主パンチ11,12によって成形しようとすると、この主パンチ11,12のプレス面11A,12Aの縁部に形成される凹曲面部17と主パンチ11,12のダイ13に摺接する外周面18とがなす交差角αが限りなく0°に近くなり、その交差稜線部分の強度が損なわれて欠損を生じてしまうおそれがあるが、上述のようにコーナ稜線部8の少なくとも一部に対応する部分をダイ13によって成形するようにした本参考例では、この交差角αを望ましくは45°以上と大きく確保することができて、このような主パンチ11,12の欠損を防止することが可能となる。
ところで、このような主パンチ11,12や、あるいは副パンチ15の欠損のおそれは、互いに異なる方向から離接するこれら主パンチ11,12と副パンチ15とがそれぞれ接近してキャビティー14を画成する際に、例えば主パンチ11,12や副パンチ15の駆動手段の制御誤差等により、該主パンチ11,12と副パンチ15とがともに所定のキャビティー14を画成する位置よりも内側に接近しすぎて互いに干渉あるいは接触することによっても生じうる。そこで、このような干渉や接触による主パンチ11,12や副パンチ15の欠損を確実に防ぐには、図9に示す本参考例の他の変形例や図10に示すその他の変形例のように、上記プレス成形金型において、これら主パンチ11,12と副パンチ15とを、上記キャビティー14が画成される原料粉末の圧縮終了位置において互いに間隔をあけて配置されるようにすればよい。そして、この場合にも本参考例の製造方法においては、この間隔をあけた部分では圧粉体の表面がダイ13によって成形されることとなる。
ここで、図9に示す変形例では、主パンチ11,12のプレス面11A,12Aが、副パンチ15の圧縮終了時におけるそのプレス面15Aの位置よりも該副パンチ15の離接方向(図9における左右方向)においてキャビティ14の内側に位置するように、圧粉体において成形されるチップ本体1の上記平板面2に対応する面よりもこの副パンチ15の離接方向に小さくされることにより、原料粉末の圧縮終了位置においてこれら主パンチ11,12と副パンチ15との間に間隔Xがあけられるようにされている。従って、この場合にも主パンチ11,12は、圧粉体における上記平板面2に対応する面の間隔X部分を除いた一部のみを成形することとなり、この間隔X部分すなわちチップ本体1の少なくとも平板面2のうち切刃4に連なる部分に対応する圧粉体部分は、主パンチ11,12の離接方向を向いて該間隔Xの幅を有するダイ13側の成形面13Cによって成形されることとなる。
また、これとは逆に図10に示す変形例では、図10(a)に示すように副パンチ15のプレス面15Aが、主パンチ11,12の圧縮終了時におけるそのプレス面11A,12Aの位置よりも該主パンチ11,12の離接方向(図10(a)〜(c)における上下方向)においてキャビティ14の内側に位置するように、圧粉体におけるチップ本体1のすくい面3に対応する面よりも小さくされることにより、原料粉末の圧縮終了位置においてこれら主パンチ11,12と副パンチ15との間に間隔Xがあけられるようにされている。従って、この場合には、副パンチ15は圧粉体における上記すくい面3に対応する面の一部のみを成形することとなり、残りのすくい面3に対応する面は副パンチ15の離接方向を向くダイ13の成形面13Dによって成形される。
ただし、この図10に示す変形例においてプレス面15Aは、図10(b)に示すようにすくい面3に対応する面から全周に亙って間隔X分だけ一回り小さくなるようにされていてもよく、この場合に上記成形面13Dは、副パンチ15の離接方向から見て上記間隔Xの幅で周回する概略窓枠状とされる。また、プレス面15Aは図10(c)に示すように主パンチ11,12との接触のおそれがある部分だけ間隔Xで小さくされていてもよく、この場合に成形面13Dは、副パンチ15の離接方向から見て主パンチ11,12の圧縮終了時におけるプレス面11A,12Aの位置から内側に上記間隔Xの幅で該プレス面11A,12Aに沿って延びる帯状に形成される。
従って、これらのような第1の参考例の変形例によれば、上述のようにキャビティー14が画成された状態で原料粉末の圧縮終了位置における主パンチ11,12と副パンチ15との間に間隔Xがあけられるので、たとえその離接のための駆動手段に制御誤差等が生じたりして該主パンチ11,12と副パンチ15とが所定の圧縮終了位置より接近しすぎてキャビティ14内に突出してしまったとしても、図9に示した変形例では副パンチ15の突出量が上記間隔X以下であれば、また図10に示した変形例では主パンチ11,12の突出量が間隔X以下であれば、これら主パンチ11,12と副パンチ15とが接触したり干渉したりすることはなく、その欠損を防止することができる。
しかも、図9に示した変形例では、主パンチ11,12の突出量に関わらず副パンチ15の突出量が上記間隔X未満であれば、圧粉体においてチップ本体1の切刃4,6およびコーナ部7に対応する稜線部は副パンチ15のプレス面15Aの外周縁そのままに所定の輪郭を描くように成形されることとなり、また図10に示した変形例でも、図10(b)に示した例の場合には、主パンチ11,12の圧縮終了位置が所定の位置であれば、圧粉体における切刃4,6およびコーナ部7に対応する稜線部は、副パンチ15の突出量に関わらずダイ13に形成されたプレス面15Aより一回り大きな成形面13Dの辺稜部と主パンチ11,12のプレス面11A,12Aの副パンチ15側辺稜部とによって成形される。すなわち、これらの変形例、特に図9に示した変形例では、切削工具の切刃部材として重要なチップ本体1の切刃4,6およびコーナ部7となる部分を圧粉体において確実に所定の形状、寸法に成形することができるので、切削加工に用いて高精度の加工を行うことが可能な切刃部材(スローアウェイチップ)を提供することができる。
ただし、上記間隔Xは、これが小さすぎると、主、副パンチ11,12,15の駆動手段の制御誤差によってはこれら主パンチ11,12と副パンチ15との接触や干渉を確実に防ぐことができなくなるおそれがある。一方、逆にこの間隔Xが大きすぎると上記成形面13C,13Dの幅も大きくなり、すなわち離接しないダイ13によって圧粉体が成形される部分が大きくなって、異なる方向から離接する上記主パンチ11,12と副パンチ15とによって原料粉末を圧縮することにより圧粉体において圧縮の均一化を図るという効果を十分に奏することができなくなるおそれが生じる。このため、上記間隔Xは0.01mm〜5mmの範囲に設定されるのが望ましい。
なお、これら図9と図10に示した変形例は適宜組み合わせてもよく、すなわち副パンチ15の少なくとも一方と、主パンチ11,12の一方とには図9の変形例を適用して間隔Xをあけるとともに、主パンチ11,12の他方とには図10の変形例を適用するようにしてもよい。また、これら図9、図10の変形例の双方を組み合わせて、主パンチ11,12のプレス面11A,12Aは、圧縮終了時の副パンチ15のプレス面15Aの位置よりもその離接方向おいてキャビティ14内側に位置するようにして、圧粉体における上記平板面2に対応する面よりも副パンチ15の離接方向に小さくするとともに、副パンチ15のプレス面15Aも、主パンチ11,12の圧縮終了時のプレス面11A,12Aの位置よりその離接方向おいてキャビティ14内側に位置するようにして、圧粉体におけるすくい面3に対応する面よりも全周に亙ってあるいは部分的に小さくなるようにしてもよい。この場合において上記間隔Xは、上記圧縮終了位置における主パンチ11,12のプレス面11A,12Aと副パンチ15のプレス面15Aとの隣接する辺稜部同士の間隔とすればよい。
さらに、上記図10(b)に示した変形例においては、上述のようにダイ13の成形面13Dが副パンチ15の離接方向から見て上記間隔Xの幅で周回する概略窓枠状とされていて、その内側に望むように接近した副パンチ15のプレス面15Aと該成形面13Dとにより、圧粉体においてチップ本体1のすくい面3に対応する面が成形されるようになされている。そこで、このような変形例によって、例えば図24および図8(a)に示したようにチップ本体1のすくい面3において切刃4,6およびコーナ部7の内側にランド部20を介して凹溝状のチップブレーカ9や平坦面21が形成された縦刃式スローアウェイチップを製造する場合には、図6に示した変形例において副パンチ15のプレス面15A側に形成されていた平坦面15Dや、この平坦面15Dと凸部15C、あるいはこれらに加えて凹部15Bの底面15E周縁までの部分を、上記ダイ13側の成形面13Dに形成するようにしてもよい。
なお、このような場合においては、上記ダイ13側の成形面13Dと副パンチ15のプレス面15Aとの境界が、平坦面15Dと凸部15Cとの境界、またはこの凸部15Cの突端、あるいは凹部15Bの底面15Eの周縁などに位置するように設定するのが望ましい。これにより、チップ本体1のすくい面3においてランド部20とチップブレーカ9との境界、または凹溝状のチップブレーカ9の溝底、あるいはこのチップブレーカ9が隆起して平坦面21と交差する交差稜線部など、このすくい面3が曲折する折れ線部分に対応する部分に成形面13Dとプレス面15Aとの境界を位置させるようにして圧粉体をプレス成形することができるので、例えば上述のように副パンチ15の駆動手段に制御誤差が生じたりしてプレス面15Aの位置がずれた場合でも、このプレス面15Aと成形面13Dとのずれによって圧粉体に形成される段差が、チップ本体1においてランド部20上や平坦面21上、あるいはチップブレーカ9の傾斜面上に形成されたりするのを避けることができる。
次に、図11ないし図17は、本発明の切削工具の切刃部材の製造方法および該製造方法に用いられる圧粉体のプレス成形金型の第2の参考例を示すものであり、この第2の参考例のプレス成形金型において上記第1の参考例のプレス成形金型と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。本参考例では、第1の参考例と同様に図4に示した方形平板状の縦刃式のスローアウェイチップを製造するのに際して、圧粉体においてチップ本体1の上記平板面2に対応する面を主パンチ11,12によって成形するとともに、他の周面5に対応する面をこの主パンチ11,12の離接方向とは異なる方向から離接する副パンチ23によって成形するものである。
すなわち、図11および図12に示すように、本参考例においても主パンチ11,12は上下方向に離接させられるとともに、これら上下の主パンチ11,12間に画成されるキャビティー14に向けては一対の上記副パンチ23が、そのプレス面23Aを互いに対向させて1直線上に水平方向に離接させられる。そして、これらの副パンチ23のプレス面23Aには、第1の参考例においてダイ13に形成されたのと同様に、圧粉体においてチップ本体1の他の周面5に対応する面を成形する底面16Aと、コーナ稜線部8に対応する部分の少なくとも一部を成形する断面円弧をなす凹曲面状の壁面16Bとを備えた凹部16が形成されており、これらの副パンチ23が主パンチ11,12とともに上記キャビティー14に投入された原料粉末を圧縮することにより、上記縦刃式スローアウェイチップに製造される圧粉体がプレス成形される。
なお、キャビティー14内の主パンチ11,12の離接方向と副パンチ23の離接方向との双方に直交する方向(図11においては図面に垂直な方向。図12においては左右方向)を向く面はダイ13に形成され、この直交方向に垂直すなわち主、副パンチ11,12,23の離接方向に平行な平坦面とされて、圧粉体におけるチップ本体1の上記すくい面3に対応する面を成形するダイ13側の成形面24とされる。従って、この成形面24に、キャビティー14に対して後退する凹部とキャビティー14に向けて突出する凸部とのうち少なくとも一方を形成しておけば、この凹凸部を反転させた形状のチップブレーカに対応する凸凹部を圧粉体の上記すくい面3に対応する面に成形することができる。
また、このダイ13も、キャビティー14を間にして図12に示す分割面Pから主パンチ11,12の離接方向に平行な上下方向に分割される複数の分割ダイ13A,13Bにより構成される。勿論、主パンチ11,12の離接方向に垂直な水平方向、例えば図11における左右方向や図12における左右方向にダイ13を分割するようにしてもよい。ただし、上述のようにダイ13側の成形面24に凹部や凸部が形成される場合には、ダイ13はこの凹部や凸部が凹凸する上記主パンチ11,12の離接方向と副パンチ23の離接方向との双方に直交する水平方向に分割される。また、この参考例のプレス成形金型によって圧粉体をプレス成形する際の第2の参考例の製造方法における主パンチ11,12および副パンチ23の離接動作は、図5(a)〜(c)に示した第1の参考例の場合と同様でよい。
従って、このような第2の参考例においても、第1の参考例と同様にキャビティー14に投入される原料粉末が、主パンチ11,12とこれら主パンチ11,12の離接方向とは異なる方向に離接させられる副パンチ23とによって圧縮されて圧粉体がプレス成形されるので、この圧粉体において原料粉末の圧縮の均一化を図ることができ、こうして成形された圧粉体を焼結することにより、微少な変形や歪みを抑えて極めて高精度の切刃部材(縦刃式スローアウェイチップ)を製造することが可能となる。すなわち、本参考例では、チップ本体1の他の周面5とコーナ稜線部8の少なくとも一部に対応する部分を圧粉体に成形するキャビティー14に対して後退した凹部16が、この主パンチ11,12とは異なる方向にキャビティー14に向けて離接する副パンチ23のキャビティー14側を向くプレス面23Aに形成されており、該副パンチ23が原料粉末の投入されたキャビティー14に向けて接近することにより、この凹部16の後退量が大きくても該凹部16内に原料粉末を十分に充填しつつ主パンチ11,12とともに圧縮して原料粉末が均一に圧縮された圧粉体を成形することができる。
ところで、このように凹部16が副パンチ23に形成された第2の参考例においても、特に該凹部16の上記壁面16Bが上述のように断面円弧の凹曲面状に形成されていると、この壁面16Bとダイ13と摺接する副パンチ23の外周面25とがなす交差角βが小さすぎる場合、例えば上記壁面16Bが断面1/4凹円弧状とされていて交差角βが限りなく0°に近くなる場合には、この壁面16Bと外周面25との交差稜線部分の強度が著しく損なわれてしまう。そして、このように上記交差稜線部分の強度が損なわれた副パンチ23と主パンチ11,12が、それぞれの駆動手段の制御誤差等によって接触したり干渉を生じたりすると、この交差稜線部分が容易に欠損してしまう結果となる。
そこで、このような副パンチ23の欠損を防止するのに、1つには、上記第1の参考例の場合と同様に、この副パンチ23と主パンチ11,12とを、図13(a)〜(c)に示す変形例のようにその圧縮終了位置において互いに間隔Xをあけて配置されるようにすればよい。ここで、図13(a)に示す変形例では、副パンチ23のプレス面23Aに、圧粉体においてチップ本体1の上記他の周面5に対応する面全部を成形する底面16Aと、コーナ稜線部8のうちこの他の周面5側の一部に対応する面を成形する断面凹円弧状の壁面16Bとが形成される一方、主パンチ11,12のプレス面11A,12Aにも、第1の参考例の図3(a)に示したのと同じように、副パンチ23側の両側縁部に断面円弧状の凹曲面部17が形成され、これら主パンチ11,12と副パンチ23とが圧縮終了位置に達したところで、副パンチ23の上記壁面16と外周面25との交差稜線部と、主パンチ11,12の上記凹曲面部17の突端との間に図示のような間隔Xがあけられる。従って、この変形例では、圧粉体においてチップ本体1のコーナ稜線部8のうちの一部に対応する部分が、上記間隔X部分においてキャビティ14を画成することとなるダイ13側の成形面13Eによって成形される。
また、図13(b)に示す変形例では、副パンチ23のプレス面23Aは、上記凹部16のうち圧粉体においてチップ本体1の他の周面5に対応する面全部を成形する底面16Aのみが形成されて平面状とされるとともに、主パンチ11,12のプレス面11A,12Aも図3(b)に示したのと同様に、圧粉体においてチップ本体1の上記平板面2に対応する面の全部のみを成形する平面状とされており、従ってこれら主パンチ11,12のプレス面11A,12Aと外周面18との交差角αおよび副パンチ23のプレス面23Aと外周面25との交差角βは90°とされ、圧粉体においてチップ本体1のコーナ稜線部8の全部に対応する部分が、これら主パンチ11,12と副パンチ23との間隔X部分においてダイ13側の成形面13Eにより成形される。さらに、図13(c)に示す変形例では、主、副パンチ11,12,23のプレス面11A,12A,23Aが、圧粉体においてチップ本体1の平板面2と他の周面5のうちコーナ稜線部8側の縁部を除いた一部に対応する部分を成形するように平面状に形成されており、やはり外周面18,25との交差角α,βは90°とされるとともに、圧粉体においてコーナ稜線部8とこのコーナ稜線部8側の平板面2および他の周面5の縁部とに対応する部分は、主パンチ11,12と副パンチ23との間隔X部分に臨むダイ13の成形面13Eにより成形される。
なお、これらの変形例においても、上記間隔Xは第1の参考例と同様に0.01mm〜5mmの範囲とされるのが望ましく、また上記交差角βも45°以上とされるのが望ましい。また、これら図13(a)〜(c)に示した変形例は、その主パンチ11,12側の構成と副パンチ23側の構成とを適宜組み替えて採用するようにしてもよく、例えば副パンチ23のプレス面23Aには図13(a)のように凹部16の底面16Aと断面凹円弧状の壁面16Bとを形成する一方で、主パンチ11,12のプレス面11A,12Aは図13(b)、(c)のように平面状として、圧粉体においてコーナ稜線部8に対応する部分のうち上記壁面16Bにより成形される部分以外の部分や平板面2の縁部に対応する部分をダイ13の成形面13Eによって成形するようにしてもよく、逆に主パンチ11,12のプレス面11A,12Aには図13(a)のように凹曲面部17を形成する一方で、副パンチ23のプレス面23Aは図13(b)、(c)のように平面状として、圧粉体においてコーナ稜線部8に対応する部分のうち凹曲面部17により成形される部分以外の部分や、圧粉体の他の周面5のコーナ稜線部8側の縁部に対応する部分を成形面13Eによって成形するようにしてもよい。さらに、上下の主パンチ11,12同士の間や一対の副パンチ23同士の間でも異なる構成を採用してもよい。
一方、上述のような副パンチ23の欠損や主パンチ11,12の欠損を防止する手段の他の1つとして、本参考例では図14ないし図17に示す変形例のように、これら主パンチ11,12と副パンチ23のうちの一方のパンチに、その原料粉末の圧縮終了位置において他方のパンチの周面に摺接する摺接面を、この他方のパンチの離接方向に延びるように形成するようにしてもよい。ここで、図14および図15に示す変形例は副パンチ23が上記一方のパンチ、主パンチ11,12が他方のパンチとなる場合であって、副パンチ23のプレス面23Aには凹部16が形成されるとともに、この凹部16とダイ13に摺接する副パンチ23の外周面25との間に、主パンチ11,12の離接方向(上下方向)に延びる平面状の摺接面26が形成されている。また、図16および図17に示す変形例では、逆に主パンチ11,12が一方のパンチ、副パンチ23が他方のパンチとされて、主パンチ11,12のプレス面11A,12Aには凹曲面部17の少なくとも一部が形成されるとともに、その突端の上記外周面18との間に、副パンチ23の離接方向(図16,17における左右方向)に延びる平面状の摺接面27が形成される。
これらのような変形例のプレス成形金型においては、原料粉末の圧縮終了前に、まず上記一方のパンチがその圧縮終了位置に達して位置決めされ、次いで他方のパンチがその外周面を一方のパンチの摺接面に摺接させつつ圧縮終了位置に達して位置決めされ、キャビティー14を画成する。すなわち、副パンチ23が摺接面26の形成された一方のパンチとされる場合には、図14(a)に示すように互いに異なる離接方向から主、副パンチ11,12,23が接近して原料粉末を圧縮しつつも、まず先に図14(b)に示すように副パンチ23が圧縮終了位置に達し、その摺接面26が、主パンチ11,12の外周面18と摺接するダイ13の摺接面13Fと面一となった状態で位置決めされる。なお、この時点で主パンチ11,12は、その離接方向に副パンチ23の外周面25を越えて接近してはいない。そして、このように副パンチ23が位置決めされた後で、主パンチ11,12が、その外周面18をダイ側の上記摺接面13Fから副パンチ23の摺接面26に摺接させつつ接近し、プレス面11A、12Aが凹部16の壁面16Bに滑らかに連なったところで圧縮終了位置に達して位置決めされることにより、図14(c)に示すようにキャビティー14が画成されて原料粉末の圧縮が終了し、圧粉体がプレス成形される。
また、摺接面27が形成された一方のパンチが主パンチ11,12である図16の変形例の場合には、図16(a)に示すようにやはり主、副パンチ11,12,23が異なる離接方向から接近して原料粉末を圧縮しつつ、まず図16(b)に示すように主パンチ11,12が先に圧縮終了位置に達して位置決めされることにより、上記摺接面27が副パンチ23の外周面25と摺接するダイ13側の摺接面13Gと面一とされる。そして、その後に副パンチ23が、その離接方向に主パンチ11,12の外周面18の位置を越えて接近して、そのプレス面23Aが主パンチ11,12の上記凹曲面部17と滑らかに連なったところで圧縮終了位置に達して位置決めされ、これにより図16(c)に示すようにキャビティー14が画成されて原料粉末の圧縮が終了するとともに圧粉体がプレス成形される。
なお、図14に示す変形例において、上記副パンチ23における摺接面26が凹部16に交差する位置は、図15(a)に示すように該凹部16における壁面16Bが、圧粉体においてチップ本体1のコーナ稜線部8の断面がなす1/4円弧の一部に対応する部分を成形するような位置とされていてもよく、この場合に上記1/4円弧の残りの一部に対応する部分は主パンチ11,12のプレス面11A,12Aに形成された凹曲面部17によって成形される。また、図15(b)に示すようにこの壁面16Bが上記1/4円弧の全部に対応する部分を成形したり、図15(c)に示すように壁面16Bがこの1/4円弧の全部とチップ本体1の平板面2におけるコーナ稜線部8側の縁部とに対応する部分を成形したりするような位置とされていてもよく、これらの場合には主パンチ11,12のプレス面11A,12Aは凹曲面部17を備えない平面状とされて、図15(b)の場合はチップ本体1における平板面2に対応する部分の全部が、また図15(c)の場合は上記縁部を除いた平板面2の一部に対応する部分が、圧粉体においてこれらプレス面11A,12Aによって成形される。
一方、図16に示した変形例においても、主パンチ11,12における摺接面27が凹曲面部17に交差する位置は、図17(a)に示すように圧粉体においてチップ本体1のコーナ稜線部8の断面がなす1/4円弧の一部に対応する部分をこの凹曲面部17が成形するような位置とされていてもよく、この場合に上記1/4円弧の残りの一部に対応する部分は副パンチ23に形成された凹部16の壁面16Bにより成形される。また、図17(b)に示すように凹曲面部17が上記1/4円弧の全部に対応する部分を成形したり、図17(c)に示すように凹曲面部17がこの1/4円弧の全部とチップ本体1の他の周面5におけるコーナ稜線部8側の縁部とに対応する部分を成形したりするような位置とされていてもよく、これらの場合に副パンチ23のプレス面23Aは図16に示したように凹部16が形成されることのない平面状とされて、図17(b)の場合はチップ本体1の他の周面5に対応する圧粉体部分の全部が、また図17(c)の場合は上記縁部を除いた他の周面5の一部に対応する圧粉体部分がこのプレス面23Aによって成形される。
従って、これらの変形例においては、主、副パンチ11,12,23の駆動手段の制御には高い精度が要求されるものの、摺接面26,27が形成されることにより、主パンチ11,12や副パンチ23のプレス面11A,12A,23Aと外周面18,25との交差稜線部に先端が鋭利となる強度の弱い部分が形成されるのを避けることができ、かかる部分における欠損の発生を防止することが可能となる。また、これらの変形例のプレス成形金型を用いた本参考例の製造方法の変形例では、上記図14(a)〜(c)や図16(a)〜(c)に示したように、原料粉末の圧縮終了前にまず上記一方のパンチがその圧縮終了位置に達して位置決めされ、次いで他方のパンチがその離接方向に一方のパンチの外周面の位置を越えて接近し、この一方のパンチの上記摺接面に摺接しながら圧縮終了位置に達して位置決めされることにより、キャビティー14が画成されて圧粉体がプレス成形されるので、一方のパンチの摺接面と他方のパンチの外周面との間に原料粉末が噛み込まれて詰まりを生じたりすることがない。すなわち、図14、15に示した変形例で副パンチ23が位置決めされる前に主パンチ11,12がダイ13からキャビティー14側に突出したり、図16、17に示した変形例で主パンチ11,12が位置決めされる前に副パンチ23が突出したりすると、外周面18,25と摺接面26,27との間に原料粉末が詰まりを生じ、副パンチ23または主パンチ11,12を所定の圧縮終了位置まで接近させることができなくなるおそれがある。
なお、上記他方のパンチ(図14、15に示す変形例では主パンチ11,12、図16、17に示す変形例では副パンチ23)の離接方向における上記摺接面26,27の幅Wは、これが小さすぎると、一方のパンチ(図14、15に示す変形例では副パンチ23、図16、17に示す変形例では主パンチ11,12)において、その外周面18,25とプレス面11A,12A,23Aに形成された凹曲面部17や壁面16Bとの間隔すなわち上記交差稜線部の先端周辺の肉厚が小さくなり、十分な強度を確保することができずに欠損等を防止できなくなるおそれがある。しかしながら、この幅Wが大きすぎても、一方のパンチが圧縮終了位置に達して位置決めされてから、その摺接面26,27に他方のパンチが摺接しつつこの他方のパンチの圧縮終了位置に達するまでの移動量が大きくなってしまい、一方のパンチとともに原料粉末を圧縮することによる圧粉体の均一圧縮効果が損なわれてしまうおそれがあるので、上記摺接面26,27の幅Wは0.1mm〜5mmの範囲とされるのが望ましい。
ところで、図1ないし図10に示した第1の参考例では方形平板状の縦刃式スローアウェイチップに製造される圧粉体においてチップ本体1のすくい面3に対応する周面を副パンチ15によって成形する場合を、また図11ないし図17に示した第2の参考例では上記すくい面3に隣接する他の周面に対応する面を副パンチ23によって成形する場合をそれぞれ説明したが、これらを組み合わせて、主パンチ11,12の離接方向とも異なり、かつ互いにも異なる方向に離接させられる複数の副パンチ15,23により、主パンチ11,12とともに原料粉末を圧縮して圧粉体を成形するように構成してもよく、これによって原料粉末をより多方向から等方的に圧縮してさらに圧縮の均一な圧粉体を成形することが可能になり、従って一層高精度の寸法形状を有するスローアウェイチップすなわち切刃部材を製造することができる。なお、この場合においても圧粉体の一部はダイ13によって成形するようにしてもよく、また例えば図14ないし図17に示した第2の参考例の変形例において主パンチ11,12と副パンチ23とによって画成されたキャビティー14に、これら主パンチ11,12の離接方向と副パンチ23の離接方向との双方に直交する方向(図14ないし図17の図面に直交する方向)から、圧粉体においてすくい面3に対応する面を成形する副パンチ15が嵌挿されるように離接させれば、圧粉体のすべての面をこれら主、副パンチ11,12,15,23のプレス面11A,12A,15A,23Aによって成形することも可能となる。
最後に、このような第1、第2の参考例およびその変形例を踏まえて、図18および図19は本発明のプレス成形金型の一実施形態を示すものであり、この実施形態のプレス成形金型は、図20ないし図23に示すような略正三角形平板状の溝入れ加工等に使用される縦刃式スローアウェイチップに製造される圧粉体を成形するためのものである。すなわち、このスローアウェイチップにおいては、そのチップ本体1の厚さ方向を向く三角形状の平板面2のうち、一方の平板面2(図21において上側の平板面2)ではその中央部2Aが一段突出するようにされて、この中央部2Aと他方の平板面2(図21において下側の平板面2)の略全体とが上記厚さ方向に垂直な平坦面とされるとともに、これらの平板面2がなす三角形の3つの角部分においては、それぞれ該角部で交差する一対の周面の一方にすくい面3が形成されるとともに他の周面5が逃げ面とされ、これらすくい面3と逃げ面とされる他の周面5との交差稜線が切刃6とされている。なお、このすくい面3と逃げ面とされる上記他の周面5とは、図21に示すように上記他方の平板面2がなす平坦面の延長面Qに対して90°よりも僅かに大きい傾斜角θをなし、一方の平板面2側に向かうに従い上記中央部2Aに傾斜して延びるように形成されている。
また、この切刃6の両端には凸円弧状をなすコーナ部7が形成されており、これらのコーナ部7に連なる上記他の周面5と両平板面2の上記角部分との交差稜線部は、この交差稜線部が延びる方向に直交する断面が該平板面2と他の周面5とに滑らかに連なる凸円弧等をなすように形成された凸曲面状のコーナ稜線部8とされている。さらに、このコーナ稜線部8に交差する平板面2の上記角部分のうち上記一方の平板面2側の部分は、コーナ稜線部8からこの一方の平板面2中央部の上記平坦面側に向かうに従い、反対側の上記他方の平板面2に向けて傾斜する傾斜面2Bとされている。また、チップ本体1の周面のうち上記三角形の角部分以外の部分、すなわち周方向に隣接する角部の一方に形成されたすくい面3と他方に形成された上記逃げ面となる他の周面5との間の部分は、上記一方の平板面2の中央部側の部分が上記厚さ方向に沿った平面28とされるとともに、この平面28から他方の平板面2側の部分は、該他方の平板面2側に向かうに従いチップ本体1の内側に傾斜する傾斜面29とされている。
さらにまた、図22(a)〜(c)に示されるように、上記すくい面3は切刃6から該すくい面3の奥側に向けて(図22(a)、(b)において切刃6から上側に向けて)、またすくい面3と上記両平板面2との交差稜線部からそれぞれチップ本体1の厚さ方向(図22(a)、(c)において左右方向)の内側に向けて、これら切刃6や両平板面2との交差稜線部に対して漸次後退する凹面状に形成されている一方、該すくい面3の中央部には略四角錐台形の凸状チップブレーカ30が形成されていて、このチップブレーカ30の突端は切刃6や上記交差稜線部よりも突出した位置に形成されている。また、このスローアウェイチップの取付穴10は、図23に示すように上記一方の平板面2側(図23において上側)が小径とされるとともに他方の平板面2側(図23において下側)は大径とされ、チップ本体1の厚さ方向(図23における上下方向)の中央部に他方の平板面2側から一方の平板面2側に向かうに従い漸次縮径する縮径部10Aが形成されたベル穴形状とされている。
従って、このような三角形平板状のスローアウェイチップを粉末プレス成形による圧粉体から製造しようとすると圧粉体も三角形平板状となるため、例えば特許文献1に記載のように原料粉末を上記チップ本体1の厚さ方向に対応する方向に垂直に圧縮して圧粉体を成形する方法および金型では、原料粉末を均一に圧縮することがますます困難となって現実的には製造することができない。そこで、本実施形態のプレス成形金型では、主パンチ11,12によって原料粉末を上記チップ本体1の厚さ方向に対応する方向に圧縮するとともに、これら主パンチ11,12とは異なる方向に離接する複数(本実施形態では3つ)の副パンチ15によっても原料粉末を圧縮して、図1ないし図10に示した第1の参考例のプレス成形金型と同様に圧粉体においてチップ本体1の上記すくい面3に対応する面をそれぞれ成形するようにしている。
ここで、本実施形態では、まずダイ13が、上下方向に離接する主パンチ11,12の離接方向と平行な方向、すなわち上下方向にキャビティー14を間にして分割面Pから分割される3組の分割ダイ13A,13Bと、周方向においてこれら分割ダイ13A,13Bの組の間にそれぞれ配設されて、主、副パンチ11,12,15によって画成されるキャビティ14に対して固定された3つの分割固定ダイ13Hとから構成されており、図19に示すように、一体化された上記分割ダイ13A,13Bに形成される凹部16により、圧粉体においてチップ本体1の切刃6に連なって逃げ面とされる他の周面5に対応する部分が成形され、また上記分割固定ダイ13Hにより周面のうちの上記平面28および傾斜面29に対応する部分が成形される。なお、チップ本体1のすくい面3および逃げ面とされる他の周面5が上述のような傾斜を有していることから、このチップ本体1と相似の形状を有して成形される圧粉体に対して抜き勾配を与えるために、分割ダイ13A,13Bの上記分割面Pは、成形される圧粉体において上記コーナ稜線部8のうち上記チップ本体1の厚さ方向に対応する方向に垂直な方向に最も突出した部分、すなわち図19に示すようにダイ13においては凹部16のうち最も凹んだ部分を境界として分割ダイ13A,13Bが分割されるように配設される。
また、本実施形態では主パンチ11,12も、当該主パンチ11,12の離接方向(上下方向)に沿った分割面Rにより分割される複数の分割パンチによってそれぞれ構成されている。すなわち、上側の主パンチ11は、チップ本体1の上記一方の平板面2のうち厚さ方向に垂直な上記中央部2Aに対応する部分を成形する内主パンチ11Cと、この一方の平板面2がなす三角形の角部側の3つの上記傾斜面2Bに対応する部分をそれぞれ成形する3つの外主パンチ11Dとにより分割可能に構成されるとともに、下側の主パンチ12も、上記他方の平板面2のうち上記中央部2Aと反対側の部分に対応する部分を成形する内主パンチ12Cと、上記傾斜面2Bの反対側の部分に対応する部分を成形する3つの外主パンチ12Dとにより分割可能に構成されている。
従って、上側の上記内主パンチ11Cのプレス面11Aと下側の内、外主パンチ12C,12Dのプレス面12Aとは、チップ本体1の厚さ方向に対応した主パンチ11,12の離接方向に垂直な平面とされる一方、上側の外主パンチ11Dのプレス面11Aは上記分割面R側に向かうに従いキャビティー14側に向かう傾斜面とされる。さらに、これら上側の内、外主パンチ11C,11D同士と下側の内、外主パンチ12C,12D同士とは、それぞれ上記分割面Rで互いに摺接しながらその離接方向(上下方向)に独立して離接可能とされている。ただし、上側の3つの外主パンチ11D同士と下側の3つの外主パンチ12D同士は、それぞれに互いに同期して一体に離接させられる。また、下側の内主パンチ12Cのプレス面12A中央部には、チップ本体1の上述のようなベル穴形状の取付穴10を形成するための突部22が、ピン19が出没する円孔12Bの周りに形成されている。
なお、一体化された上記分割ダイ13A,13Bと上記分割固定ダイ13Hとによって構成されるダイ13には3つの副パンチ15が嵌挿されて、上記主パンチ11,12間に画成されるキャビティー14に向け、本実施形態では図18に示すように平面視に略三角形状をなす該キャビティー14の各辺に略直交する方向に、かつ主パンチ11,12が離接する上下方向に垂直な方向である水平方向に離接させられる。従って、本実施形態でも、これら主パンチ11,12と副パンチ15とがキャビティー14に向けて接近することにより該キャビティー14に投入された原料粉末が圧縮されて圧粉体が成形され、このとき圧粉体においてチップ本体1の周面のうち3つの上記すくい面3に対応する部分が、これら3つの副パンチ15によってそれぞれ成形される。さらに、この副パンチ15の各プレス面15Aには、チップ本体1のすくい面3がなす凹面に対応してキャビティー14に向け突出する凸部15Cがプレス面15Aの外周側に枠状に形成されるとともに、プレス面15Aの中央部には上記凸状チップブレーカ30に対応してキャビティー14に対して後退する凹部15Bが形成されている。
このように構成された本発明の一実施形態のプレス成形金型および該プレス成形金型を用いた切削工具の切刃部材の製造方法によれば、第1、第2の参考例のように方形平板状の切刃部材(縦刃式スローアウェイチップ)以外の、上述のような三角形平板状のものも原料粉末のプレス成形による圧粉体から製造することができ、この圧粉体が主パンチ11,12と、その離接方向とは異なる方向から離接させられる副パンチ15とによって多方向から等方的に原料粉末を圧縮して成形されるものであるので、その原料粉末の圧縮の均一化を図ることができて、焼結の際の微少な変形や歪みのない高精度の寸法形状を有する切刃部材を製造することが可能となる。そして、本発明によれば、このような三角形平板状や、第1、第2の参考例のような方形平板状の切刃部材のみならず、それ以上の多角形平板状のものや星形のように周面自体が凹凸する形状のもの、あるいは平板状以外の複雑な形状を有する切刃部材などでも、射出成形等によらずにプレス成形による圧粉体から高精度に製造することが可能となる。
また、上述のように主パンチ11,12がそれぞれ複数の内主パンチ11C,12Cと外主パンチ11D,12Dとに分割されて互いに独立して離接可能とされた本実施形態のプレス成形金型では、上記一方の平板面2の中央部2Aと傾斜面2B部分とで図21に示すように厚さの異なるチップ本体1に製造される圧粉体を成形する場合でも、圧縮開始時の内主パンチ11C,12C間の間隔と外主パンチ11D,12D間の間隔とを適宜調整したりして充填される原料粉末量を制御したりすることにより、原料粉末圧縮比を確実に均一化することができる。なお、本実施形態では、圧粉体の上記すくい面3に対応する部分を副パンチ15によって成形するようにしているが、第2の参考例のように切刃6の逃げ面とされる他の周面5に対応する部分を副パンチによって成形してもよく、さらにこれらすくい面3と他の周面5とに対応する部分を、主パンチ11,12の離接方向と異なり、かつ互いにも異なる方向に離接させられる複数の副パンチによってそれぞれ成形するようにしてもよい。
また、本発明では、上述のようにプレス成形による圧粉体において原料粉末の圧縮の均一化を図ることにより、かかる圧粉体を焼結するだけで極めて高精度の切刃部材を製造することを可能としているが、さらに切刃部材の精度の向上等が必要な場合などには、焼結後のスローアウェイチップにおいてそのチップ本体の周面や平板面の少なくとも一部に砥石によって研削加工を施したり、切刃にホーニング加工を施したりしてもよい。