以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。まず、図1ないし図8を参照して、本実施の形態のインクジェットプリンタ1について説明する。インクジェットプリンタ1は、具体的には布帛にインクジェット方式で印刷を行う布帛印刷装置である。
(インクジェットプリンタ1の全体構成)
本実施の形態のインクジェットプリンタ1は、インクを噴射するノズル面を備える第一記録ヘッド21および第二記録ヘッド22にインクを供給して、被記録媒体へ印刷を行う。インクジェットプリンタ1は、被記録媒体として、Tシャツ等の布帛を扱い、入力された画像情報等に基づいて印刷を行う。図1及び図2に示すように、インクジェットプリンタ1は平面板状のベース2を下面に備え、その上部に本体カバー10を設けている。
インクジェットプリンタ1は、第一記録ヘッド21を搭載したキャリッジ13の移動を、インクジェットプリンタ1の左右方向に案内するためのガイドレール11を備えている。インクジェットプリンタ1は、このガイドレール11の右端付近に第一キャリッジモータ24(図7参照)を設け、左端付近にプーリ(図示省略)を設けている。インクジェットプリンタ1は、第一キャリッジモータ24と前記プーリとの間に、キャリッジベルト(図示省略)を架設している。このキャリッジベルトはキャリッジ13の背面に固定している。キャリッジ13は、ガイドレール11に対して摺動可能に結合している。キャリッジ13は、第一キャリッジモータ24の駆動によって、ガイドレール11に沿って往復移動する。尚、ガイドレール11は、右または左の端部の何れかに第一記録ヘッド21のメンテナンスを行う図示しないキャッピング機構、ワイプ機構、および、パージ機構を設けている。
本体カバー10は、側面の右端部にインク収納手段としての第一カートリッジ収容部31aを設けている。第一カートリッジ収容部31aは、4つの第一インクカートリッジ31をそれぞれ収容する収容凹部を有している。第一インクカートリッジ31は、薄型の矩形箱状に形成している。第一インクカートリッジ31は、不透明の白色インクを貯留したインクパック31b(図3参照)を保持している。
第一カートリッジ収容部31aは、それぞれの収容凹部に、カートリッジ挿入センサ61(図3、図4参照)を設けている。カートリッジ挿入センサ61は、フォトセンサ(光学式センサ)で構成している。
第一カートリッジ収容部31aは、収容凹部の上方に、側面視コの字形の支持部材70(図3参照)を設けている。支持部材70は、棒状のインク量検出部材71(図3参照)を上下に回動可能に軸支している。インク量検出部材71は、第一インクカートリッジ31の上方に位置している。インク量検出部材71は、右端に樹脂で形成した略台形の検出部72(図3参照)を有している。
第一カートリッジ収容部31aは、前記収容凹部の各々にインク量検出手段としてのカートリッジ内インク量センサ62(図3参照)を設けている。カートリッジ内インク量センサ62は、インク量検出部材71の左端部に配置している。カートリッジ内インク量センサ62は、フォトセンサ(光学式センサ)で構成している。
カートリッジ内インク量センサ62は、インク量検出部材71の角度位置に応じてインク量を検出することができる。カートリッジ内インク量センサ62は、発光部と受光部とからなる検出部をインク量検出部材71の揺動方向に沿って多数配列したものである。インク量検出部材71の角度位置に応じてこれらの検出部の検出状態が変化する。
インクパック31bのインク容量が後述する第1のインク容量になったときの前記検出部の検出状態と、インク容量が後述する第2のインク容量になったときの前記検出部の検出状態とがROM120に記憶してある。カートリッジ内インク量センサ62から読み出した検出状態と、ROM120に記憶した検出状態とをCPU110が比較することにより、インクパック31bのインク容量と第1のインク容量との大小判別と、インクパック31bのインク容量と第2のインク容量との大小判別とが可能となる。
検出部72は、第一インクカートリッジ31の上部壁の略中央に設けた穴(図示省略)からカートリッジの内部に侵入し、第一インクカートリッジ31内のインクパック31bに接触している。インク量検出部材71は、インクパック31bに貯留したインクの量に応じて揺動する。
第一カートリッジ収容部31aは、前記収容凹部の各々にインク種類検出手段としてのカートリッジ種類識別センサ64(図3参照)を設けている。カートリッジ種類識別センサ64は、フォトセンサ(光学式センサ)で構成している。図4に示すように、カートリッジ種類識別センサ64は、平面視凹型形状であり、カートリッジの種類に応じた数のセンサ(本実施形態の場合は3つ)64a〜64cを有している。
図3及び図4に示すように、第一インクカートリッジ31は、左端部に、カートリッジ挿入センサ61の発光部からの光を遮るための遮光部31cと、カートリッジ種類識別センサ64の発光部からの光を遮るための遮光部31dを備えている。遮光部31dは、インクの種類毎に異なる位置に設けている。例えば、白色インクを貯留した第一インクカートリッジ31は、カートリッジ種類識別センサ64a,64bの発光部からの光を遮るように遮光部31dを設けている。
インク供給管としての第一インク供給チューブ34は第一インクカートリッジ31と前記第一記録ヘッド21とを接続している。印刷時には第一インクカートリッジ31内の白インクが第一インク供給チューブ34を経由して第一記録ヘッド21に供給される。
第一インク供給チューブ34は、透明且つ可撓性のチューブである。第一記録ヘッド21への白インクの供給は印刷中においても実行される。第一記録ヘッド21を搭載したキャリッジ13は、印刷中ガイドレール11の右端と左端の間を移動可能であるため、第一インク供給チューブ34はガイドレール11よりも長い。インクジェットプリンタ1は、キャリッジ13の移動に伴って第一インク供給チューブ34をキャリッジ13に円滑に追従させるために、第一アーム36を備えている。
第一アーム36は、後アーム部と前アーム部とを備えている。後アーム部は、本体カバー10内に設けた支点36aを中心に回動する。前アーム部は、その一端が後アーム部に設けた支点36bに連結している。前アーム部は、その他端が支点36cによりキャリッジ13に連結している。第一アーム36は、キャリッジ13の移動に伴って回動する。
インクジェットプリンタ1は、ガイドレール11と平行にガイドレール12を架設している。ガイドレール12は、第二記録ヘッド22を搭載したキャリッジ14の移動を案内する。図2に示すように、ガイドレール12は、本体カバー10の高さ方向において、ガイドレール11よりも高い位置に設けてある。
インクジェットプリンタ1は、このガイドレール12の左端付近に第二キャリッジモータ25(図7参照)を設け、右端付近にプーリ(図示省略)を設けている。インクジェットプリンタ1は、第二キャリッジモータ25と前記プーリとの間にキャリッジベルト(図示省略)を架設している。このキャリッジベルトはキャリッジ14の背面に固定している。キャリッジ14は、ガイドレール12に対して摺動可能に結合している。キャリッジ14は、第二キャリッジモータ25の駆動によって往復移動する。尚、ガイドレール12は、右または左の端部の何れかに第二記録ヘッド21のメンテナンスを行う図示しないキャッピング機構、ワイプ機構及びパージ機構を設けている。
本体カバー10は、側面の左端部にインク収納手段としての第二カートリッジ収容部32aを設けている。第二カートリッジ収容部32aは、4つの第二インクカートリッジ32をそれぞれ収容する収容凹部を有している。第二インクカートリッジ32は、薄型の矩形箱状に形成している。第二インクカートリッジ32は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色のインクを貯留したインクパック(図示省略)を保持している。インク供給管としての第二インク供給チューブ35は第二インクカートリッジ32と第二記録ヘッド22とを接続している。印刷時には第二インクカートリッジ32内のCMYKの各色のインクが第二インク供給チューブ35を経由して第二記録ヘッド22に供給される。
第二インク供給チューブ35は、可撓性のチューブである。第二記録ヘッド22へのCMYKの各色インクの供給は、印刷中においても実行される。第二記録ヘッド22を搭載したキャリッジ14は、印刷中ガイドレール12の左端と右端の間を移動可能であるため、第二インク供給チューブ35は、ガイドレール12よりも長い。インクジェットプリンタ1は、キャリッジ14の移動に伴って第二インク供給チューブ35をキャリッジ14に円滑に追従させるために、第二アーム37を備えている。
第二アーム37は、後アーム部と前アーム部とを備えている。後アーム部は、本体カバー10内に設けた支点37aを中心に回動する。前アーム部は、その一端が後アーム部に設けた支点37bに連結している。前アーム部は、その他端が支点37cによりキャリッジ14に連結している。第二アーム37は、キャリッジ14の移動に伴って回動する。
尚、本実施の形態では、インクジェットプリンタ1の左右方向(図1における左右方向)が第一記録ヘッド21および第二記録ヘッド22の主走査方向となる。
インクジェットプリンタ1は、ベース2に、インクジェットプリンタ1の前後方向に沿って被記録媒体を保持したプラテン5を移動するための送り機構7を設けている。図1において、下方向がインクジェットプリンタ1の前方向に相当し、上方向がインクジェットプリンタ1の後方向に相当する。
この送り機構7は、図示しないガイドレールと、当該ガイドレールの後端部(図1における上側の端部)に設けたステッピングモータ等のプラテン搬送モータ40(図7参照)とで構成している。プラテン5は、プラテン搬送モータ40の駆動により、図1の上下方向に送り機構7のガイドレールに沿って往復移動する。
プラテン5は、形状を平面視五角形に形成している。詳細には、長方形状の板体の短辺のうち、作業者に対向する側の短辺の中央が突出した形状の五角形であり、その上面が、被記録媒体を水平に載置するのに適した平坦な形状となっている。尚、このプラテン5は、複数の種類があり、被記録媒体であるTシャツ等のサイズ、形状により使用するプラテン5の種類を変更することが可能である。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、前面の右端部に、インクジェットプリンタ1の操作を行うための操作パネル28を設けている。この操作パネル28は、印刷を指示する印刷ボタン29、および各種の表示を行うLCDで構成したディスプレイ30を備えている。
次に、本実施形態における回収機構について説明する。回収機構は、第一インク供給チューブ34の内部を大気開放状態と大気遮断状態とに切換え可能な大気開放手段で構成される。図5に示すように、大気開放手段としての大気開放バルブ44は、第一記録ヘッド21と第一インクカートリッジ31とを連結する第一インク供給チューブ34にT字型の継ぎ手52を介して接続している。フィルタ51cは、大気開放バルブ44の継ぎ手52と反対側に設けてある。フィルタ51cは、空気中の塵が第一インク供給チューブ34内に侵入するのを防ぐ。大気開放バルブ44は、電磁バルブで構成しており、電気信号に応じて、第一インク供給チューブ34の内部を大気開放状態と大気遮断状態とに切換える。第一記録ヘッド21がキャップ45(図6参照)に覆われているときに、大気開放バルブ44により第一インク供給チューブ34の内部を大気開放状態にすると、第一インク供給チューブ34内のインクが、第一インクカートリッジ31に回収される。
この原理を、図6を用いて説明する。図6(A)に示すように、第一記録ヘッド21がキャップ45に覆われているときに、大気開放バルブ44により第一インク供給チューブ34の内部が大気遮断状態になっている場合には、第一記録ヘッド21のノズル面と、第一インクカートリッジ31のインク供給位置との水頭差は小さいため、インクは回収されない。
しかし、図6(B)に示すように、第一記録ヘッド21がキャップに覆われている時に、大気開放バルブ44により第一インク供給チューブ34の内部が大気開放状態となった場合には、第一記録ヘッド21のノズル面と、第一インクカートリッジ31のインク供給位置との水頭差は大きくなり、第一インク供給チューブ34内のインクは第一インクカートリッジ31に回収される。
本実施形態においては、大気開放バルブ44の上流側、すなわち、第一インクカートリッジ31側には図6(A)、(B)に点線で示すフィルタ51bを設けている。大気開放バルブ44の下流側、すなわち、第一記録ヘッド21側には図6(A)、(B)に点線で示すフィルタ51aを設けている。これらのフィルタ51a、51bにより、インク回収を行った際にインク内に含まれる異物を確実に捕獲することができる。
(インクジェットプリンタ1の電気的構成)
次に、図7を参照して、インクジェットプリンタ1の電気的な構成について説明する。図7に示すように、インクジェットプリンタ1は、インクジェットプリンタ1全体の制御を司るCPU110を設けている。CPU110は、バス115を介して、ROM120と、RAM130とを接続している。ROM120は、CPU110が実行するインクジェットプリンタ1の動作を制御するための各種の制御プログラム等を記憶する。ROM120は、第1のインク容量と第2のインク容量とを記憶している。第1のインク容量は、第一インクカートリッジ31が格納可能な最大容量から第一インク供給チューブ34が収容可能な容量を差し引いた量である。例えば、最大容量は、500mlで、第一インク供給チューブ34が収容可能な容量は、約30mlである。第2のインク容量は、1回の印刷指示で印刷可能な範囲をインクで全て印刷(ベタ印刷)するのに必要なインク量である。例えば、打滴密度600×600dpiで、1画素あたりの吐出量が約40pl(ピコリットル)、印刷可能な範囲が14×16inchの場合、1回の印刷指示で印刷可能な範囲をインクで全て印刷するのに必要なインク量は、(打滴密度)×(1画素あたりの吐出量)×(印刷可能な範囲)の計算式により約12.9mlとなる。RAM130は、データを一時的に記憶するものである。
CPU110は、バス115を介して、通信処理部150を接続している。通信処理部150は、USB、あるいは、パラレル等のケーブル160を介して、パーソナルコンピュータ170と接続している。CPU110は、バス115を介して、記録ヘッド駆動制御部141と、ヘッド搬送制御部142と、プラテン搬送モータ駆動部143と、大気開放制御部144と、キー入力部145と、表示制御部146と、センサ入力部147とを接続している。
記録ヘッド駆動制御部141は、第一記録ヘッド21の各チャネルに設けた圧電アクチュエータ、および、第二記録ヘッド22の各チャネルに設けた圧電アクチュエータを駆動するためのものである。ヘッド搬送制御部142は、第一キャリッジモータ24と第二キャリッジモータ25とを駆動するためのものである。プラテン搬送モータ駆動部143は、プラテン搬送モータ40を駆動するためのものである。大気開放制御部144は、大気開放バルブ44を制御するためのものである。
キー入力部145は、操作パネル28上に設けた印刷開始キー29a、キャンセルキー29b、メンテナンスキー29c、アップキー29d、ダウンキー29e、OKキー29f(図8(A)参照)からの信号を入力するものである。表示制御部146は、操作パネル28上に設けたデータランプ30a、エラーランプ30b、および、ディスプレイ30(図8(A)参照)を制御するものである。
作業者がメンテナンスキー29cを押下すると、図8(A)に示す状態となり、ディスプレイ30に、"Head Cleaning"、"Test Print"、"Ink Unloading"というメニューを表示する。この時、CPU110は、ディスプレイ30に、選択箇所である"Head Cleaning"上のカーソルの色が背景色と異なるように表示している。この状態から、作業者がアップキー29dとダウンキー29eを操作することにより、カーソルが上下に移動し、所望の処理を選択可能となっている。例えば、図8(A)に示す状態から、作業者がダウンキー29eを2回押下すると、図8(B)に示すように"Ink Unloading"上にカーソルが移動する。この状態で作業者がOKキー29fを押下すると、インク回収処理が開始される。尚、このインク回収処理については後述する。
センサ入力部147は、カートリッジ挿入センサ61、カートリッジ内インク量センサ62、カートリッジ種類識別センサ64からの信号を入力するものである。
カートリッジ挿入センサ61は、発光部と受光部とを有している。第一インクカートリッジ31を第一カートリッジ収容部31aに装着すると、第一インクカートリッジ31に設けた遮光部31cがカートリッジ挿入センサ61の発光部と受光部の間に入る。遮光部31cが発光部からの光を遮ることで、第一インクカートリッジ31を第一カートリッジ収容部31aに装着したことが検出できる。
カートリッジ内インク量センサ62は、発光部と受光部とを有している。後述するように、インクパック31b内にインクが回収されると、インクパック31bが膨らんで検出部72が上昇し、インク量検出部材71の左端部が下降する。逆に、印刷によりインクパック31b内のインクが消費されると、インクパック31bがしぼんで検出部72が下降し、インク量検出部材71の左端部が上昇する。CPU110はカートリッジ内インク量センサ62の検出部の検出状態と、ROM120が記憶した第1のインク容量と第2のインク容量の検出状態とを比較し、インクパック31b内のインク容量が第1のインク容量以上か否か、第2のインク容量以下か否かを判別する。
カートリッジ種類識別センサ64a〜64cは、それぞれ発光部と受光部とを有している。前述したように、白色インクを貯留した第一インクカートリッジ31の遮光部31dがカートリッジ種類識別センサ64a,64bの発光部からの光を遮り、且つカートリッジ種類識別センサ64cの受光部が発光部からの光を受光する。インクジェットプリンタ1のROM120は、第一インクカートリッジ31の種類と、カートリッジ種類識別センサ64a〜64cのそれぞれの信号とが関連付けられたテーブルを有しており、このテーブルを参照することによって、第一カートリッジ収容部31aに装着された第一インクカートリッジ31aの種類が白色インクであることが検出できる。
(全体の処理の流れ)
次に、図9のフローチャートを参照して、本実施形態のインクジェットプリンタ1における全体の処理の流れについて説明する。尚、図9のフローチャートに示すアルゴリズムは、ROM120にプログラムとして記憶している。CPU110は、ROM120に記憶しているプログラムを実行する。
まず、作業者が図示しない電源スイッチにより電源をオンすると、CPU110は初期化を行う(ステップS1)。この初期化処理としては、第一記録ヘッド21および第二記録ヘッド22のノズルのメニスカスを整えるためのフラッシング処理がある。CPU110は、初期化が成功したか否かを判断する(ステップS2)。初期化が成功しなかった場合には(ステップS2:No)、CPU110は警告音を出力するとともに、エラーランプ30bを点灯して警告表示を行う(ステップS9)。
次に、CPU110は、作業者が操作パネル28を用いて、「印刷」、「インク回収」以外のメニューを選択したか否かを判断する(ステップS10)。作業者が「印刷」、「インク回収」以外のメニューを選択したとCPU110が判断した場合には(ステップS10:Yes)、CPU110は対応する処理を実行した後(ステップS11)、処理をステップS3に移行しメニュー選択待機状態となる。
ステップS10において、作業者が電源スイッチをオフにした場合(ステップS10:No、ステップS12:Yes)、CPU110は処理を終了する。
ステップS2において、初期化が成功した場合には(ステップS2:Yes)、CPU110は処理をステップS3に移行しメニュー選択待機状態となり、作業者が選択したメニューに応じた各処理を行う。ステップS3において、作業者が印刷開始キー29aを押下した場合には(ステップS3:Yes)、CPU110は印刷データがあるか否かを判断する(ステップS4)。印刷データがない場合には(ステップS4:No)、CPU110は警告音を出力して(ステップS6)、ステップS3に移行しメニュー選択待機状態に戻る。印刷データがある場合には(ステップS4:Yes)、印刷を実行して(ステップS5)、ステップS3に移行しメニュー選択待機状態に戻る。
次に、作業者が印刷開始キー29aを押下しなかった場合(ステップS3:No)、作業者がメニュー画面からインク回収を選択したか否かをCPU110は判断する(ステップS7)。作業者がメニュー画面からインク回収を選択した場合には(ステップS7:Yes)、CPU110は第一インク供給チューブ34内のインクを第一インクカートリッジ31に回収し(ステップS8)、処理をステップS3に移行しメニュー選択待機状態に戻る。ステップS7において、作業者がメニュー画面からインク回収を選択しなかった場合には(ステップS7:No)、前述したステップS10の処理に移行する。
(インク回収処理の流れ)
次に、図10のフローチャートを参照して、インク回収処理の流れについて説明する。尚、図10のフローチャートに示すアルゴリズムは、ROM120にプログラムとして記憶している。CPU110は、ROM120に記憶しているプログラムを実行する。
インク回収処理は、図8(B)に示すように、作業者が"Ink Unloading"を選択した状態でOKキー29fを押下すると開始される。
まず、インク回収処理が開始されると、CPU110はインク回収開始メッセージをディスプレイ30に表示する(ステップS800)。次に、CPU110はカートリッジ挿入センサ61からの入力により、第一インクカートリッジ31が第一カートリッジ収容部31aの収容凹部に装着されているか否かを検出する(ステップS810)。第一インクカートリッジ31が第一カートリッジ収容部31aに装着されていない場合には(ステップS810:No)、CPU110はエラーランプ30bを点灯し、「インクカートリッジが挿入されていません」というエラーメッセージをディスプレイ30に表示して(ステップS811)、処理を中止する。
ステップS810において、第一インクカートリッジ31が第一カートリッジ収容部31aに装着されている場合には(ステップS810:Yes)、CPU110はカートリッジ内インク量センサ62からの入力により、第一インクカートリッジ31内のインク量が第1のインク容量以上か否かを判断する(ステップS820)。第一インクカートリッジ31内のインク量が第一インクカートリッジ31に格納可能な最大容量から第一インク供給チューブ34に収容可能な容量を差し引いた量以上の場合には(ステップS820:Yes)、CPU110は「インクカートリッジ内のインクが一杯です」というエラーメッセージをディスプレイ30に表示して(ステップS821)、インク回収処理を中止する。これは、インク回収を行う前に、第一インクカートリッジ31内のインク量が第一インクカートリッジ31に格納可能な最大容量から第一インク供給チューブ34に収容可能な容量を差し引いた量以上の場合、インク回収を実行しても第一インク供給チューブ34内のインクを全て回収できないためである。
ステップS820において、CPU110は第一インクカートリッジ31内のインク量が第一インクカートリッジ31に格納可能な最大容量から第一インク供給チューブ34に収容可能な容量を差し引いた量以上でないと判断した場合(ステップS820:No)、第一インクカートリッジ31内のインク量が、第2のインク容量より少ないか否かを判断する(ステップS830)。
第一インクカートリッジ31内のインク量が、1回の印刷指示で印刷可能な範囲をインクで全て印刷するのに必要なインク量より少ない場合(ステップS830:Yes)、CPU110は「インクカートリッジ内にインクがありません」というエラーメッセージをディスプレイ30に表示して(ステップS831)、インク回収処理を中止する。これは、インク回収を行う前に、第一インクカートリッジ31内のインク量が1回の印刷指示で印刷可能な範囲をインクで全て印刷するのに必要なインク量より少ない場合、インクを回収しても第一インクカートリッジ31内のインク量が1回の印刷指示で印刷可能な範囲をインクで全て印刷するのに必要な量に満たない場合があり、次回の印刷時に途中でインク切れを起こす可能性があるからである。
ステップS830において、CPU110は第一インクカートリッジ31内のインク量が1回の印刷指示で印刷可能な範囲をインクで全て印刷するのに必要なインク量より少なくないと判断した場合(ステップS830:No)、カートリッジ種類識別センサ64からの入力により、第一カートリッジ収容部31aの収容凹部に装着している第一インクカートリッジ31が所定の種類か否かを判断する(ステップS840)。
所定の種類と異なるカートリッジが、第一カートリッジ収容部31aの収容凹部に装着してある場合には(ステップS840:No)、CPU110は「インクカートリッジの種類が異なっています」というエラーメッセージをディスプレイ30に表示して(ステップS841)、インク回収処理を中止する。例えば、所定の種類が白色インクのカートリッジである場合に、CMYK等、白色と異なる色のインクのカートリッジを第一カートリッジ収容部31aの収容凹部に装着したときにインクの回収を中止するものである。これは、作業者が誤って所定と異なる種類のインクカートリッジを装着した場合に、インクを回収してしまい、第一インクカートリッジ31内で異なる種類同士のインクが混ざってしまうのを防ぐためである。
本実施形態において、ステップS820、ステップS830を実行するCPU110がインク量判断手段に相当し、ステップS840を実行するCPU110がインク種類判断手段に相当する。
ステップS840において、所定の種類の第一インクカートリッジ31が第一カートリッジ収容部31aの収容凹部に装着してある場合には(ステップS840:Yes)、CPU110は大気開放バルブ44により第一インク供給チューブ34内を大気開放状態に切換える(ステップS850)。
大気開放バルブ44が大気開放状態になると、CPU110は「インク回収中です」というインク回収中メッセージをディスプレイ30に表示する(ステップS860)。第一インク供給チューブ34内のインクは、前述した水頭差により第一インクカートリッジ31に回収される。
第一インク供給チューブ34内のインクが、第一インクカートリッジ31に回収されると、CPU110は第一インク供給チューブ34内のインクを全て回収するのに十分な予め設定した時間(設定時間)が経過したか否かを判断する(ステップS870)。尚、ステップS850において、大気開放バルブ44により第一インク供給チューブ34内を大気開放状態に切換えたとき、CPU110は内部のタイマーを起動している。ステップS870では、CPU110は該タイマーと設定時間とを比較する。
設定時間が経過していない場合には(ステップS870:No)、CPU110は処理を再度ステップS870に移行する。設定時間が経過した場合(ステップS870:Yes)、CPU110は大気開放バルブ44により第一インク供給チューブ34内を大気遮断状態に切換える(ステップS880)。このように、設定時間経過後に第一インク供給チューブ34内を大気遮断状態に切換えるので、第一インク供給チューブ34内が大気開放状態のままとなって残留インクが乾燥してしまうことを確実に防止することができる。
その後、CPU110は「完了しました」というインク回収終了メッセージをディスプレイに表示して(ステップS890)、インク回収処理を終了する。
以上のような処理の結果、インクジェットプリンタ1は、第一インク供給チューブ34内のインクを、第一インクカートリッジ31に回収する前に、カートリッジ内インク量センサ62からの入力により、第一インクカートリッジ31内のインクの量を検出する。第一インクカートリッジ31内のインクの量が第一インクカートリッジ31に格納可能な最大容量から第一インク供給チューブ34に収容可能な容量を差し引いた量以上であるか、又は1回の印刷指示で印刷可能な範囲をインクで全て印刷するのに必要なインク量より少ないと判断した場合、CPU110はインク回収を中止する。
第一インクカートリッジ31内のインクの量が第一インクカートリッジ31に格納可能な最大容量から第一インク供給チューブ34に収容可能な容量を差し引いた量以上の場合、CPU110はインク回収を中止するので、インク回収中に第一インクカートリッジ31内にインクが満たされてしまい、第一インク供給チューブ34内のインクを全て第一インクカートリッジ31内に回収できなくなるのを防ぐことができる。
第一インクカートリッジ31内のインクの量が1回の印刷指示で印刷可能な範囲をインクで全て印刷するのに必要な量より少ない場合、CPU110はインク回収を中止するので、第一インク供給チューブ34内のインクを全て第一インクカートリッジ31内に回収することはできても、回収したインクを再利用したときに、印刷の途中でインク切れが発生してしまうのを防ぐことができる。従って、第一インク供給チューブ34内のインクを回収する際、確実に回収でき、無駄なく再利用することができる。
インクジェットプリンタ1は、第一インク供給チューブ34内のインクを、第一インクカートリッジ31に回収する前に、カートリッジ種類識別センサ64からの入力により、第一インクカートリッジ31の種類を検出する。第一インクカートリッジ31の種類が所定の種類と異なる場合には、CPU110はインクの回収を中止するので、第一インクカートリッジ31内で異なる種類同士のインクが混ざってしまうのを防ぐことができる。
インクの回収は、大気開放バルブ44を用いることによって、第一インク供給チューブ34内のインクを、インク水頭差を利用して確実に第一インクカートリッジ31内に回収することができる。回収した後は、作業者は第一インクカートリッジ31を取り外して振動を与えることにより、内部を十分に攪拌することができる。その攪拌済みのインクカートリッジを作業者が再度インクジェットプリンタ内部に装着して次回の印刷に使用することにより、従来のパージ処理で廃棄されていたチューブ内の白インクを廃棄することなく使うことができる。また、インク流路を取り外したり、分岐させたりする必要がないので、第一インク供給チューブ34内のインクが未使用のまま残ることなく回収され、確実に再利用することができる。
尚、前述したステップS821、ステップS831、ステップS841、ステップS850、S880の処理を実行するCPU110が、制御手段として機能する。
(他の実施形態)
上述した例では、第一インクカートリッジ31内のインクの量を検出するために、フォトセンサ(光学式センサ)で構成するカートリッジ内インク量センサ62を設けるようにしたが、本発明はこのような例に限定されるものでなく、ロードセル等の重量センサを設けるようにしてもよいし、フォトセンサと重量センサの両方を併用するようにしてもよい。重量センサを設けた場合、CPU110は第一インクカートリッジ31の重さによって第一インクカートリッジ31内のインクの量を判断する。第一インクカートリッジ31の重量が所定重量である場合には、CPU110はインク回収処理を中止する。
この重量センサを用いることによって、インクジェットプリンタ1は、フォトセンサを用いるのと同様に、インク回収を行う前の第一インクカートリッジ31の重量から、インク回収を行うか否か判断することができる。また、フォトセンサと重量センサを併用することによって、インクジェットプリンタ1は、より確実に第一インクカートリッジ31内のインク量を検出することができる。
上述した例では、第1のインク容量及び第2のインク容量について、カートリッジ内インク量センサ62により検出するようにしたが、本発明はこのような例に限定されるものでなく、第一インクカートリッジ31内にインクが満たされているとき等を検出しておいて、印刷によるインクの使用量から算出する等、適宜変更可能である。
この場合、CPU110は、ROM120が記憶している1回の印刷によるインクの使用量から、第一インクカートリッジ31を装着した時点から印刷を実行する度に第一インクカートリッジ31内のインクの残量を算出する。CPU110は、第一インクカートリッジ31内のインクの残量と、ROM120が記憶している第一インク供給チューブ34内のインク量とから、第一インクカートリッジ31内のインクが第1のインク容量以上でなく、第2のインク容量以下でないと判断したら、インク回収処理を中止しないようにしてもよい。
上述した例では、回収機構について、白インク用のインク供給路側に大気開放手段を設けた場合について説明したが、CMYK用のインク供給路側にも大気開放手段を設けるようにしてもよい。
上述した例では、回収機構について、第一インク供給チューブ34に大気開放バルブ44を設けるようにしたが、本発明はこのような例に限られるものでなく、第一インク供給チューブ34内のインクを吸引するための吸引用ポンプを設けるようにしてもよい。
本発明の回収機構は、白インクにのみ有効なものではなく、固形成分が多く、沈降や濃度勾配の発生し易いインクに対して有効である。