以下、添付図面に即してこの発明に係るパンツを実施するための形態について説明する。
図1はこの発明の第1実施例に係るパンツの正面図であり、図2は図1に示すパンツの背面図である。また、図3は図1に示すパンツの斜視図である。尚、この明細書において、上下、左右または前後などの記載は、着用者にとっての上下、左右または前後方向を意味し、表とは着用されたパンツにおいて露出される部分または人体に接触しない部分を、裏とは被覆される部分または人体に接触する部分を意味する。
図1から図3において、符号P1はパンツを示す。パンツP1は、主として男性が着用するブリーフ型のパンツであり、パンツP1の前面を構成する前身頃F1、パンツP1の背面を構成する後身頃Bおよび穿き口Wに縫着される腰ゴムWGからなる。
前身頃F1は、左前身頃FLと、右前身頃FRと、左前身頃FLと右前身頃FRとの間に縫着される腹当てクロッチLUとからなり、腹当てクロッチLUには局部を出し入れするための前開き(図1および3では前立てLMに隠れて見えない)が形成される。また、パンツP1には、左前身頃FLと後身頃Bによって左裾口HLが形成され、右前身頃FRと後身頃Bによって右裾口HRが形成される。
前身頃F1には、前開きを覆う前立てLMが腹当てクロッチLUに重なるように縫着される。前立てLMは、左右の端縁が前身頃F1に縫着され(具体的には、左側の端縁が左前身頃FLに、右側の端縁が右前身頃FRに縫着される)、下方の端縁が後身頃Bに縫着されるが、上方の端縁である上辺は縫着されずに開口している(開口部LMA)。また、この上辺は斜めに開口される。
尚、図1において、前立てLMに示す円形状の破線aは隆起する部位であることを示すものであって、実際の生地片に線があるわけではない。
図4は、パンツP1の左前身頃FL、右前身頃FRおよび後身頃Bの裁断形状(生地片)を表側から見た平面図である。
図4に示す如く、左前身頃FLと右前身頃FRは、一対の身頃であって左右対称形状に裁断される。また、左前身頃FL、右前身頃FRおよび後身頃Bは伸縮可能な素材、例えばポリウレタン糸を含むニットから製作される。
左前身頃FLは、後に穿き口Wの一部となる上端縁1−9、後に後身頃Bと縫着される側端縁1−2、後に左裾口HLの一部となる下端縁2−3、後に後身頃Bと縫着されて後股ぐりとなる端縁3−4、後に腹当てクロッチLUと縫着される曲線辺たる端縁4−9からなる。
右前身頃FRは、上記した左前身頃FLの説明が大略妥当するので、同一符号にダッシュ(’)を付して説明する。右前身頃FRは、後に穿き口Wの一部となる上端縁1’−9’、後に後身頃Bと縫着される側端縁1’−2’、後に右裾口HRの一部となる下端縁2’−3’、後に後身頃Bと縫着されて後股ぐりとなる端縁3’−4’、後に腹当てクロッチLUと縫着される曲線辺たる端縁4’−9’からなる。
後身頃Bは、後に穿き口Wの一部となる上端縁10−18、後に左前身頃FLと縫着される側端縁18−17、後に右前身頃FRと縫着される側端縁10−11、後に左裾口HLの一部となる下端縁16−17、後に右裾口HRの一部となる下端縁12−11、後に左前身頃FL、右前身頃FRおよび腹当てクロッチLUと縫着されて後股ぐりとなる曲線辺たる端縁12−16からなる。
図5は腹当てクロッチLUと前立てLMを重ねて側面から見た拡大右側面図(図5−1)と表側から見た拡大平面図(図5−2)であり、図6は腹当てクロッチLUの裁断形状(図6−1)と前立てLMの裁断形状(図6−2)を示す平面図である。また、図7は腹当てクロッチLUと前立てLMを表側右前方から見た斜視図であり、図8は腹当てクロッチLUと前立てLMを重ね、裏側右側方から見た斜視図である。
尚、図5において、かっこ書で示した符号の部位は実際には他の生地片等によって隠れて見えないが、当該生地片等の裏側にかっこ書の符号の部位が位置していることを意味するものである(この明細書において以下同じ)。
腹当てクロッチLUは、図5−1または図6−1に示す如く、腹当て布Ad1と内股マチ布Bd1からなり、腹当て布Ad1は、図6−1に示す如く、後に内股マチ布Bd1に縫着される一端部E1dと、一端部E1dに連続して形成され、後に左前身頃FLと右前身頃FRに縫着される他端部E2dからなる。
腹当て布Ad1の一端部E1dは、両側端(図6−1において左右の側端)において長さが略等しく設定された直線辺たる端縁20−21および端縁24−23と、端縁20−21と端縁24−23の間に連続して円弧状(凸弧状)に形成される端縁21−22−23と、他端部E2dと連続する線分20−24とで画された部位から構成される。
また、端縁20−21と端縁24−23の外形線の延長線のなす角度PA1は、想像線で示す如く、約90度(略直角)とされ、一端部E1dは、平面視において、PA1を頂角、線分20−24を底辺とする大略直角二等辺三角形状に形成される。尚、この明細書において「約」または「略」などと記載したのは、素材の伸縮性の違いなどによって寸法や形状が若干変わる場合もあるためである。
腹当て布Ad1の他端部E2dは、上記した大略直角二等辺三角形状の底辺にあたる線分20−24から連続して形成されると共に、左右の端縁が湾曲して(凹弧状に)形成される平面視略矩形形状を呈する大略矩形形状部からなる。
具体的には、他端部E2dは、一端部E1dに連続する線分20−24と、後に腹当てクロッチLUの右側端縁となる曲線辺たる端縁20−32−29と、後に穿き口Wに縫着される直線辺たる上端縁29−28−27と、後に腹当てクロッチLUの左側端縁となり、一部(端縁24−25)が前開きLHAとして構成される端縁24−25−26−27とからなる。尚、端縁24−25は、後に前開きLHAを構成するので、左前身頃FLには縫着されず、また局部の出し入れに利用されるため、縦方向(上下方向)の長さは適宜に設定される。
ところで、腹当て布Ad1は、端縁20−32−29と端縁24−25−26−27とが、図(図6−1)中、前開きLHAの右側の破線で示すように左右対称となっていない。即ち、後に前開きLHAを構成する端縁24−25が、左右対称であると仮定した場合の図中破線で示す曲線よりも所定長さ(例えば1.5cm)分左方向に引き伸ばされて構成されており、その分、右側の端縁20−32−29側よりも布の面積が増加している(図中格子状で示す補正代LHAS)。
これは、着用者がパンツを着用すると前開きに横方向(左右方向)の張力が加わり、前開きが横に開こうとし、また、排尿の度に前開きを開く動作が繰り返されると、時間の経過とともに前開きが横に開いたまま(伸びたまま)よれて型崩れしてしまうことが生じ得るが、そうすると、図6−1に示す本来の前開きの位置に相当する図中の破線部がさらに内側(右側)に伸びてしまうため、こういった前開きのよれを補正するため、よれる方向(右側)とは反対方向に予め前開きの端縁24−25を拡張するように構成したものである。
これにより、例えば使用が繰り返されて前開きがよれて右側に伸びてしまったとしても、前開きが伸びきって開口したままになる状態を防止することができる。即ち、予め前開きのよれを予測して、よれる方向とは反対方向に補正分の布である補正代LHASを追加することにより、たとえよれが生じたとしても、前開きが伸びきって開口してしまうことがないようにした。
次いで内股マチ布Bd1について説明すると、内股マチ布Bd1は、後に腹当て布Ad1の一端部E1dと縫着される一端部F1dと、一端部F1dに連続して形成されると共に、後に左前身頃FL,右前身頃FRおよび後身頃Bに縫着される他端部F2dとからなる。
一端部F1dは、腹当て布Ad1の一端部E1dと略同形状に形成される。具体的には、一端部F1dは、両側端(図6−1において左右の側端)において長さが略等しく設定された直線辺たる端縁50−51および端縁54−53と、端縁50−51と端縁54−53の間に連続して円弧状(凸弧状)に形成される端縁51−52−53と、他端部F2dと連続する線分50−54とで画された部位からなる。また、端縁50−51と端縁54−53の外形線の延長線のなす角度PB1は約90度(略直角)とされ、一端部F1dは、平面視において、PB1を頂角、線分50−54を底辺とする大略直角二等辺三角形状に形成される。
内股マチ布Bd1において円弧状に形成された端縁51−52−53は、腹当て布Ad1の端縁21−22−23と曲率が略同等となるように設定される。また、腹当て布Ad1の端縁21−22−23と内股マチ布Bd1の端縁51−52−53の弦Kの長さG1(正確には、端縁21−22−23と端縁51−52−53における仕上がり線(内側線)の弦Kの長さG1)は、着用者の体型(詳しくは、着用者の局部の形状や大きさ等を含めた体型)を考慮して所定値に設定される。具体的には、着用者を標準体型とするとき、所定値は5.5cmまたはその近傍の値とされる。
また、弦Kから円弧状に形成された部位の先端(正確には、端縁21−22−23と端縁51−52−53において縫い代部分を除いた先端、即ち、仕上がり線(内側線)の先端)22,52までの長さG2も着用者の体型を考慮した値、具体的には着用者を標準体型とするとき、約1.0cmに設定される。
内股マチ布Bd1の説明を続けると、他端部F2dは、一端部F1dの大略直角二等辺三角形状の底辺にあたる線分50−54から連続して形成される大略台形形状部、正確には平面視において大略等脚台形形状を呈する大略台形形状部を備えると共に、大略台形形状部の脚が形成されるべき部位(想像線Jで示す部位)が湾曲して形成される。
具体的には、他端部F2dは、一端部F1dに連続する線分50−54と、後に腹当てクロッチLUの左側端縁となる端縁54−55−56と、後にパンツP1の後股ぐり(後身頃B)に縫着され、腹当てクロッチLUの後方端縁となる下端縁56−57−58と、後に腹当てクロッチLUの右側端縁となる端縁50−59−58とで画された部位からなる。
また、一端部F1dの端縁50−51と他端部F2dの端縁50−59は、図示の如く連続して形成されると共に、それら端縁50−51と端縁50−59とのなす角度は略直角(約90度)とされる。
また、一端部F1dの端縁53−54と他端部F2dの端縁54−55も連続して形成され、端縁53−54と端縁54−55とのなす角度は略直角(約90度)とされる。
尚、図6−1において、腹当て布Ad1と内股マチ布Bd1の外形線から所定距離内側の位置には外形線と同形状の線(内側線)が示されるが、この内側線と外形線との間は縫い代部分を表す。即ち、内側線は、理解の便宜のために、腹当てクロッチLUが完成したときの仕上がり線を示すものであって、実際の生地片に線があるわけではない。
以上のように構成された腹当て布Ad1の一端部E1dと内股マチ布Bd1の一端部F1dを縫着することで、図7−1に示すような形状の腹当てクロッチLUが完成する。
先ず腹当て布Ad1の、図6−1に示す端縁24−25には薄平ゴム、具体的にはポリウレタンゴムがフラットな状態で同時に縫着されながら端かがりが施され、続いて図5−2に示す折り返しステッチST1始末が施されて前開きLHAが形成される。その後、一端部E1dの端縁20−21−22−23−24と内股マチ布Bd1の一端部F1dの端縁50−51−52−53−54とを縫着する。正確には、端縁20−21と端縁50−51、端縁21−22−23と端縁51−52−53および端縁23−24と端縁53−54をそれぞれ重なるように位置させつつ縫着する。
これにより、縫合部M’付近は、頂点部分が丸みを帯びた凸形状(錐体形状)、具体的には大略円錐体形状Y’(図5−1参照)に形成される。また、腹当て布Ad1と内股マチ布Bd1において円弧状に形成された部位である端縁21−22−23と端縁51−52−53を縫着することによってその内側には、図5−2に想像線で示すように大略半球形状を呈する空間Nが形成され、その空間Nの直径Dも着用者の体型を考慮して設定される(具体的には、着用者を標準体型とするとき、直径Dは3.5cmまたはその近傍の値とされる)。即ち、腹当てクロッチLUは空間N等によって、局部をサポートするサポート機能(サポート空間)を有する。
このように、腹当てクロッチLUに局部を支持可能な錐体形状のサポート空間Nを形成することで、局部を確実かつ安定に支持でき、局部のサポート性と安定感を向上させることができる。
また、腹当て布Ad1の一端部E1dと内股マチ布Bd1の一端部F1dは略同形状、具体的には、端縁20−21と端縁50−51および端縁23−24と端縁53−54の長さが略同一で、端縁21−22−23と端縁51−52−53の曲率が略同等となる。このため、腹当て布Ad1と内股マチ布Bd1の縫合部M’は平面視において横一直線に横断するように形成される。
このようにサポート機能を有する腹当てクロッチLUを構成することで、縫合部M’付近は着用者の局部の形状に即した凸形状(錐体形状。円錐体形状Y’)に形成される。
次に前立てLMについて説明すると、前立てLMは、図5−1,5−2または図6−2に示す如く、前立て布Ad1’と表股マチ布Bd1’とからなる。前立て布Ad1’は、図6−2に示す如く、後に表股マチ布Bd1’と縫着される一端部E3dと、一端部E3dに連続して形成され、後に左前身頃FLと右前身頃FRに縫着される他端部E4dとからなる。
前立て布Ad1’の一端部E3dは、両側端(図6−2において左右の側端)において長さが略等しく設定された直線辺たる端縁40−41および端縁44−43と、端縁40−41と端縁44−43の間に連続して円弧状(凸弧状)に形成される端縁41−42−43と、他端部E4dと連続する線分40−44とで画された部位から構成される。また、端縁40−41と端縁44−43の外形線の延長線のなす角度PA1は、想像線で示す如く、約90度(略直角)とされ、一端部E3dは、平面視において、PA1を頂角、線分40−44を底辺とする大略直角二等辺三角形状に形成される。
前立て布Ad1’の他端部E4dは、上記した大略直角二等辺三角形状の底辺にあたる線分40−44から連続して形成される。具体的には、他端部E4dは、一端部E3dに連続する線分40−44と、後に腹当てクロッチLUの右側端縁となる曲線辺たる端縁40−49と、後に開口部LMAを構成する上端縁47−48−49と、後に腹当てクロッチLUの左側端縁となる端縁44−45−46−47からなる。
ところで、前立て布Ad1’の上端縁47−48−49は、斜めの曲線辺として構成されるが、具体的には、端縁47−48を結ぶ直線と略垂直に交わる垂線を下方に伸ばしたときに、この垂線が腹当てクロッチLUと前立てLMとを重ねて縫着したときの腹当てクロッチLUの左側端縁24−25に形成される前開きLHAを貫通(交差)するような向きになるように斜めに形成される。換言すると、前立てLMの上辺にあたる開口部LMAが前開きLHAに向いて(面して)開口するように構成される。
従って、上端縁47−48−49に形成された開口部LMAから着用者が手(具体的には右手)を挿入すると、開口部LMAは前開きLHAに向いて開口しているため、その手が自然に前開きLHAの方向に伸びるようになる。このため、局部を迅速かつ容易に出すことができるようになり、排尿時の使い勝手が向上する。即ち、前方に単に前開きを有しているたけの従来のパンツでは、排尿時、先ず前開きを探すことから始める必要があるが、本発明では上記の構成としたので、開口部に手を挿入すれば、その手は自然に前開きに到達するようになるため、前開きを探すといったことは必要なくなる。
また、前立て布Ad1’の上端縁47−48−49のうち、下方側端部49付近、具体的には下方側端部49から上方に所定長さ分(縁49−48)が湾曲状に形成される。即ち、前立てLMの開口部LMAの下位側の端部が凹状に湾曲される。これは、着用者が開口部LMAに手(右手)を挿入したときに、手の小指球の形や厚みが凹状に形成されたこの湾曲部に合うようにするためであり、これにより手が開口部LMAにフィットして使い勝手がより向上する。
尚、この部分(縁49−48)を湾曲させずに、例えば通常通り直線状にして腹当てクロッチLUの右側端縁(端縁32−29)と前立てLMの上端縁47−48−49とのなす角度(下方側端部49)が鋭角になるように構成すると、開口部に手を挿入したときに、下方側端部49付近の布や縫合部分に大きな力が加わり、この部分のダメージが大きくなってしまうという不都合がある。しかし、上記のように下方側端部49付近を湾曲状にすることで、下方側端部49付近の布や縫合部分に加わる力が分散されるので、そのような問題も回避することができる。
さらに、前立て布Ad1’の上端縁47−48−49のうち、上方側端部47から下方に所定長さ分(縁47−48)が湾曲状に形成される。即ち、前立てLMの開口部LMAの上位側の端部が凸状に湾曲される。これは上記した腹当てクロッチLUの前開きLHAに形成された補正代LHASの場合と同様の目的を達成するためになされたものである。
即ち、着用者が開口部LMAに手を挿入すると、上端縁47−48−49には上端縁47−48−49を下方に拡げようとする力が加わり、手の出し入れを繰り返すことで上端縁47−48−49が拡がったまま(下方に垂れたまま)よれてしまうことが生じ得る。換言すると、上端縁47−48−49のうちの縁47−48が図6−2において端縁47−48を結ぶ破線の位置よりもさらに下側に伸びてしまう。
そこで、こういった上端縁47−48−49のよれを予め予想し、このよれ分を補正するような湾曲部を設けた。具体的には、端縁47−48を、端縁47−48を結ぶ破線よりも所定長さ(例えば1.0cm)上方に引き伸ばして面積を拡張した(図中格子状で示す補正代LMAS)。これにより、使用が繰り返されることで上端縁47−48−49がよれても、上端縁47−48−49が下方に伸びきってしまうのを防止することができる。
次いで表股マチ布Bd1’について説明すると、表股マチ布Bd1’は、後に前立て布Ad1’の一端部E3dと縫着される一端部F1d’と、一端部F1d’に連続して形成され、後に左前身頃FL,右前身頃FRおよび後身頃Bに縫着される他端部F2d’とからなる。
一端部F1d’は、前立て布Ad1’の一端部E3dと略同形状に形成される。具体的には、一端部F1d’は、両側端(図6−2において左右の側端)において長さが略等しく設定された直線辺たる端縁50’−51’および端縁54’−53’と、端縁50’−51’と端縁54’−53’の間に連続して円弧状(凸弧状)に形成される端縁51’−52’−53’と、他端部F2d’と連続する線分50’−54’とで画された部位からなる。また、端縁50’−51’と端縁54’−53’の外形線の延長線のなす角度PB1は約90度(略直角)とされ、一端部F1d’は、平面視において、PB1を頂角、線分50’−54’を底辺とする大略直角二等辺三角形状に形成される。
表股マチ布Bd1’の端縁51’−52’−53’は、前立て布Ad1’の端縁41−42−43の曲率と略同等となるように設定される。
また、前立て布Ad1’と表股マチ布Bd1’の端縁41−42−43と端縁51’−52’−53’の弦Kの長さG1(正確には、各端縁41−42−43,51’−52’−53’における仕上がり線(内側線)の弦Kの長さG1)は、着用者の体型(詳しくは、着用者の局部の形状や大きさ等を含めた体型)を考慮して所定値に設定される。具体的には、着用者を標準体型とするとき、所定値は5.5cmまたはその近傍の値とされる。
また、弦Kから円弧状に形成された部位の先端(正確には、端縁41−42−43と端縁51’−52’−53’において縫い代部分を除いた先端、即ち、仕上がり線(内側線)の先端)42,52’までの長さG2も着用者の体型を考慮した値、具体的には着用者を標準体型とするとき、約1.0cmに設定される。
表股マチ布Bd1’の説明を続けると、他端部F2d’は、一端部F1d’の大略直角二等辺三角形状の底辺にあたる線分50’−54’から連続して形成される大略台形形状部、正確には平面視において大略等脚台形形状を呈する大略台形形状部を備えると共に、大略台形形状部の脚が形成されるべき部位(想像線Jで示す部位)が湾曲して形成される。
具体的には、他端部F2d’は、一端部F1d’に連続する線分50’−54’と、後に腹当てクロッチLUの左側端縁となる端縁54’−55’−56’と、後にパンツP1の後股ぐり(後身頃B)に縫着され、腹当てクロッチLUの後方端縁となる下端縁56’−57’−58’と、後に腹当てクロッチLUの右側端縁となる端縁50’−59’−58’とで画された部位から構成される。
また、一端部F1d’の端縁50’−51’と他端部F2d’の端縁50’−59’は、図示の如く連続して形成されると共に、それら端縁50’−51’と端縁50’−59’とのなす角度は略直角(約90度)とされる。
また、一端部F1d’の端縁53’−54’と他端部F2d’の端縁54’−55’も連続して形成され、端縁53’−54’と端縁54’−55’とのなす角度は略直角(約90度)とされる。
尚、図6−2において、前立て布Ad1’と表股マチ布Bd1’の外形線から所定距離内側の位置に、外形線と同形状の内側線が示されるが、これは上記の腹当て布Ad1や内股マチ布Bd1の場合と同様に縫い代部分を表す。
以上のように構成された前立て布Ad1’の一端部E3dと表股マチ布Bd1’のF1d’を縫着することで、図7−2に示すような形状の前立てLMが完成する。
先ず前立て布Ad1’の、図6−2に示す端縁47−48−49には薄平ゴム、具体的にはポリウレタンゴムがフラットな状態で同時に縫着されながら端かがりが施され、続いて図5−2に示す折り返しステッチST2始末が施されて開口部LMAが形成される。その後、一端部E3dの端縁40−41−42−43−44と表股マチ布Bd1’の一端部F1d’の端縁50’−51’−52’−53’−54’とを縫着する。正確には、端縁40−41と端縁50’−51’、端縁41−42−43と端縁51’−52’−53’および端縁43−44と端縁53’−54’をそれぞれ重なるように位置させつつ縫着する。
これにより、縫合部M付近は、頂点部分が丸みを帯びた凸形状(錐体形状)、具体的には大略円錐体形状Y(図5−1)に形成される。また、前立て布Ad1’と表股マチ布Bd1’において円弧状に形成された部位である端縁41−42−43と端縁51’−52’−53’を縫着することによってその内側には、図5−1に想像線で示す如く、大略半球形状を呈する空間N’が形成され、その空間N’の直径Dも着用者の体型を考慮して設定される。即ち、前立てLMは空間N’によって、局部をサポートするサポータ機能(サポート空間)を有する。
腹当てクロッチLUと同様、前立てLMにも錐体形状のサポート空間N’を形成することで、腹当てクロッチLUのサポート空間Nと共に局部を確実かつ安定に支持でき、局部のサポート性と安定感を向上させることができる。
また、前立て布Ad1’の一端部E3dと表股マチ布Bd1’の一端部F1d’は略同形状、具体的には、端縁40−41と端縁50’−51’、端縁44−43と端縁54’−53’の長さが略同一で、端縁41−42−43と端縁51’−52’−53’の曲率が略同等であるため、図5−2に示す如く、前立て布Ad1’と表股マチ布Bd1’の縫合部Mは、平面視において横一直線に横断するように形成される。
このようにサポート機能を有する前立てLMを構成することで、縫合部M付近は着用者の局部の形状に即した凸形状(錐体形状。円錐体形状Y)に形成される。
腹当てクロッチLUと前立てLMは、図8に示す如く、腹当てクロッチLUの左側端縁の一部である曲線辺たる端縁25−26と前立てLMの左側端縁の一部である端縁46−47のみ部分仮縫い止めされ、腹当てクロッチLUの左側端縁の一部である端縁54−55−56と前立てLMの左側端縁の一部である端縁54’−55’−56’、腹当てクロッチLUの下端縁56−57−58と前立てLMの下端縁56’−57’−58’および腹当てクロッチLUの端縁58−59−50(20)−32と前立てLMの端縁58’−59’−50’(40)−49とでそれぞれ重ね合わされ、これら腹当てクロッチLUと前立てLMを左前身頃FL、右前身頃FRおよび後身頃Bに縫着することでパンツP1が完成する。尚、前立てLMの上端縁47−48−49は開口部LMAを構成するため腹当てクロッチLUには縫着されず、また腹当てクロッチLUの端縁25−24は前開きLHAを構成するため左前身頃FLに縫着されない。
図9はパンツP1の完成した状態を穿き口Wを広げて真上から見た上面図である。
図9に示すように、左前身頃FLと右前身頃FRと腹当てクロッチLUとから構成される前身頃F1は、後身頃Bに縫着されてパンツP1を構成するが、より具体的には、前身頃F1の左側端縁1−2が後身頃Bの左側端縁18−17と、前身頃F1の右側端縁1’−2’が後身頃Bの右側端縁10−11と、前身頃F1の端縁3−4−4’−3’が後身頃Bの端縁16−12にそれぞれ縫着されてパンツP1の穿き口W、左裾口HLおよび右裾口HRが形成される。
このように、第1実施例に係るパンツP1にあっては、前身頃F1を構成する布地(腹当て布Ad1、左前身頃FL)に穿設された前開きLHAの上から前立てLMを縫着し、前開きLHAを前立てLMで覆うようにすると共に、着用者の背丈方向における前立てLMの上辺(前立て布Ad1’の上端縁47−48−49)を斜めに開口(開口部LMA)させるように構成したので、前開きLHAが前立てLMで覆われて補強され、前開きLHAを左右方向によれにくくすることができる。また、着用を繰り返すことで仮に前開きLHAがよれてきたとしても、前開きLHAは前立てLMで覆われているため、前開きLHAが開いたままの状態になることはない。
さらに、前開きLHAがよれたとしても、よれた前開きLHAが前立てLMによって隠れて見えないので、着用者にとっては見た目も気にする必要がなくなる。さらに、前立てLMは上辺(上端縁47−48−49)を開口したポケット状になっているので、着用者は上辺の開口部LMAから手を挿入して局部を出し入れする必要があるが、開口部LMAを斜めに形成したことにより、開口部LMAに手を挿入し易く、また、局部の出し入れも容易に行える。よって使い勝手が向上する。また、局部の出し入れが容易に行えて使い勝手が向上するにもかかわらず、下腹部や局部はパンツP1の前身頃F1と前立てLMの両方で覆われるため、サポート性が損なわれることなく、着用感も向上する。
また、前立てLMの上辺(上端縁47−48−49)を前開きLHAに向けて開口させるように構成したので、前立てLMに手を挿入すると、その手は自然と前開きLHAに行き着くことになるため、排尿の際、局部を迅速かつ容易に出すことができる。
また、前立てLMの上辺(上端縁47−48−49)の背丈方向における下位側の端部(縁49−48)を凹状に湾曲させるように構成したので、上辺(上端縁47−48−49)の開口部LMAから手を挿入する際、湾曲部(縁48−49)がちょうど手の小指球の形や厚みに沿うようになり、手をより挿入しやすくなる。
また、前立てLMの上辺(上端縁47−48−49)の背丈方向における上位側の端部(縁47−48)を凸状に湾曲させるように構成(補正代LMAS)したので、着用(使用)を繰り返すことによって上辺(上端縁47−48−49)の開口部LMAが下方に伸びてしまうのを防止(予め補正)することができる。
次いで、この発明の第2実施例に係るパンツP2について説明する。
図10はこの発明の第2実施例に係るパンツP2の正面図である。
第2実施例に係るパンツP2は、第1実施例に係るパンツP1と同様、ブリーフ型のパンツであり、左前身頃FL、右前身頃FRおよび腹当てクロッチWUからなる前身頃F2と、後身頃B(図10では図示せず)と、腰ゴムWGとからなるが、前身頃F2に左右2つの前開き(図10では前立てLM等に隠れて見えない)が穿設されると共に、前立てLMの下側(着用者側)にもう1つの前立てRMが重なるように縫着される点でパンツP1と相違する。即ち、パンツP2は、2つの前開きと2つの前立てを備える。
尚、以下では、前身頃の左側に穿設される前開きを左側前開き、右側の穿設される前開きを右側前開き、開口部が左側前開きに向いている前立てを左開き口前立て、開口部が右側前開きに向いている前立てを右開き口前立てと称して説明する。また、パンツを示す符号Pnおよび前身頃を示す符号Fnの添え字nは実施例の番号を示す。
以下、第2実施例について、第1実施例と相違する部分に焦点をおいて説明し、第1実施例と共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図11はパンツP2の腹当てクロッチWUの腹当て布Ad2の裁断形状(図11−1)と右開き口前立てRMの前立て布Ad2’の裁断形状(図11−2)を示す平面図である。
パンツP2の腹当てクロッチWUは、図11−1に示す腹当て布Ad2と内股マチ布(内股マチ布については第1実施例のものと同じであるので、図示および説明は省略する)とからなる。
腹当て布Ad2は、後に内股マチ布と縫着される一端部E5dと、一端部E5dに連続して形成され、後に左前身頃FLと右前身頃FRに縫着される他端部E6dとからなる。
腹当て布Ad2の一端部E5dは、両側端(図11−1において左右の側端)において長さが略等しく設定された直線辺たる端縁33−21および端縁24−23と、端縁33−21と端縁24−23の間に連続して円弧状(凸弧状)に形成される端縁21−22−23と、他端部E6dと連続する線分33−24とで画された部位から構成される。
腹当て布Ad2の他端部E6dは、一端部E5dと連続する線分33−24と、後に腹当てクロッチWUの右側端縁となる端縁33−31−30−29と、後に穿き口Wに縫着される直線辺たる上端縁27−28−29と、後に腹当てクロッチWUの左側端縁となる端縁24−25−26−27とからなる。
他端部E6dの端縁33−31−30−29は、後に右前身頃FRに縫着される曲線辺たる端縁29−30−31と、右前身頃FRには縫着されずに後に右側前開きRHAを構成する曲線辺たる端縁31−33とからなる。また、端縁24−25−26−27は、後に左前身頃FLに縫着される曲線辺たる端縁25−26−27と、左前身頃FLには縫着されずに後に左側前開きLHAを構成する曲線辺たる端縁24−25とからなる。このように、腹当て布Ad2には、図中一点鎖線で示した中心線(線分28−22)に対して右側の位置に右側前開きRHA、左側の位置に左側前開きLHAが形成される。
また、右側前開きRHAおよび左側前開きLHAには、それぞれ第1実施例の場合と同様に、前開きのよれを補正するための補正代(図中格子状で示すRHASとLHAS)が形成される。具体的には、右側前開きRHAは、端縁31−33の左側に示した破線よりも、所定長さ(例えば1.5cm)分右方向に引き伸ばされて布の面積が増加するように構成され(補正代RHAS)、左側前開きLHAは、端縁24−25の右側に示した破線よりも所定長さ分左方向に引き伸ばされて布の面積が増加するように構成される(補正代LHAS)。
また、第1実施例と同様に、右側前開きRHAにも薄平ゴムがフラットな状態で同時に縫着されながら端かがりが施され、続いて折り返しステッチST3始末が施されて前開きRHAが形成される(図12−1参照)。
次に右開き口前立てRMについて説明すると、右開き口前立てRMは、図11−2に示す前立て布Ad2’と表股マチ布(股マチ布については第1実施例のものと同じであるので、図示および説明は省略する)とからなる。尚、左開き口前立てLMの前立て布については、第1実施例のものと同じであるので図示および説明は省略する。
前立て布Ad2’は、後に表股マチ布と縫着される一端部E3d’と、一端部E3d’に連続して形成され、後に左前身頃FLと右前身頃FRに縫着される他端部E4d’とからなる。
前立て布Ad2’の一端部E3d’は、両側端(図11−2において左右の側端)において長さが略等しく設定された直線辺たる端縁44’−43’および端縁40’−41’と、端縁44’−43’と端縁40’−41’の間に連続して円弧状(凸弧状)に形成される端縁43’−42’−41’と、他端部E4d’と連続する線分44’−40’とで画された部位から構成される。
また、前立て布Ad2’の他端部E4d’は、一端部E3d’に連続する線分44’−40’と、後に腹当てクロッチWUの右側端縁となる曲線辺たる端縁47’−46’−45’−44’と、後に開口部RMAを構成する上端縁47’−48’−49’と、後に腹当てクロッチWUの左側端縁となる端縁49’−40’とからなる。
前立て布Ad2’の上端縁47’−48’−49’は、斜めの曲線辺として構成されるが、具体的には、端縁47’−48’を結ぶ直線と略垂直に交わる垂線を下方に伸ばしたときに、この垂線が腹当てクロッチWUと前立てRMとを重ねて縫着したときの腹当てクロッチWUの右側端縁31−33に形成された右側前開きRHAを貫通(交差)するような向きになるように斜めに形成される。換言すると、右開き口前立てRMの開口部RMAが右側前開きRHAに向いて(面して)開口するように構成される。
従って、上端縁47’−48’−49’に形成された開口部RMAから着用者が手(具体的には左手)を挿入すると、開口部RMAは右側前開きRHAに向いて開口しているため、その手が自然に右側前開きRHAの方向に伸びるようになり、局部を出すのが容易となって排尿時の使い勝手が向上する。即ち、右側前開きRHAと右開き口前立てRMは、左利きの着用者にとって使い勝手が良いようになっている。
また、前立て布Ad2’の上端縁47’−48’−49’のうち、下方側端部49’付近、具体的には下方側端部49’から上方に所定長さ分(縁49’−48’)が湾曲状に形成される。即ち、右開き口前立てRMの開口部RMAの下位側の端部が凹状に湾曲される。これにより、着用者が開口部RMAに手(左手)を挿入したときに、手の小指球の形や厚みがこの凹状部に沿うようになり、開口部RMAに手がフィットして手をより挿入しやすくなる。
また、前立て布Ad2’の上端縁47’−48’−49’のうち、上方側端部47’から下方に所定長さ分(縁47’−48’)が凸状に湾曲され、図中格子状で示す補正代RMASが形成される。これにより、着用者が開口部RMAに対して手の出し入れを繰り返すことによって上端縁47’−48’−49’がよれてしまっても上端縁47’−48’−49’が下方に伸びきってしまうのを防止することができる。
また、第1実施例と同様に、上端縁47’−48’−49’にも薄平ゴムがフラットな状態で同時に縫着されながら端かがりが施され、続いて折り返しステッチST4始末が施されて開口部RMAが形成される(図12−2参照)。
図12は腹当てクロッチWU、左開き口前立てLMおよび右開き口前立てRMを表側右前方から見た斜視図である。
腹当てクロッチWUは、図12−1に示すように、右端に右側前開きRHA、左端に左側前開きLHAが形成される点を除き、第1実施例に示す腹当てクロッチLUと同様である。従って、この腹当てクロッチWUも腹当て布Ad2と内股マチ布Bd1との縫合部M’付近の頂点部分が丸みを帯びた凸形状(錐体形状)に形成され、第1実施例の場合と同様に、この部分で局部をサポートする。
また、パンツP2では、上記した通り、左開き口前立てLMと右開き口前立てRMが重なるようにして前身頃F2に縫着されるが、左開き口前立てLMと右開き口前立てRMが重なった状態を示したのが図12−2である。
右開き口前立てRMは、前立て布Ad2’ の一端部E3d’の端縁44’−43’−42’−41’−40’の上に左開き口前立てLMの前立て布Ad1’の一端部E3dの端縁40−41−42−43−44が重ねられ、表股マチ布Bd1’の一端部F1d’の端縁50’−51’−52’−53’−54’とが縫着されることで完成し、これを腹当てクロッチWUの上(前方向)から右側前開きRHAを覆うようにして前身頃F2に縫着する。
尚、右開き口前立てRMと左開き口前立てLMについても、第1実施例に示す前立てLMと同様、その縫合部M付近は頂点部分が丸みを帯びた凸形状(錐体形状)に形成され、この部分で局部をサポートするようになっている。
図13はパンツP2の完成した状態を穿き口Wを広げて真上から見た上面図である。
図13に示すように、パンツP2は、腹当てクロッチWUの左右端に右側前開きRHAと左側前開きLHAを有するが、この点を除き、第1実施例に係るパンツP1と同様である。従って、図13についての詳細な説明は省略する。
以上のように、第2実施例に係るパンツP2にあっては、前身頃F2を構成する布地の左右の一方に前開き(左側前開きLHA)を穿設し、他方に第2の前開き(右側前開きRHA)を穿設し、前身頃F2を構成する布地の上から第2の前立て(右開き口前立てRM)を縫着して第2の前開きを覆うと共に、背丈方向における第2の前立ての上辺を第2の前開きに向けて斜めに開口(開口部RMA)させるように構成したので、前立てに左右どちらの手を挿入しても、手は自然と前開きに行き着くことになり、着用者が右利きであっても左利きであっても局部の出し入れが容易になり、使い勝手が向上する。
また、第2の前立てRMの上辺(上端縁47’−48’−49’)の背丈方向における下位側の端部(縁49’−48’)を凹状に湾曲させるように構成したので、上辺の開口部RMAから手を挿入する際、湾曲部がちょうど手の小指球の形や厚みに沿うようになり、手をより挿入しやすくなる。
また、第2の前立てRMの上辺(上端縁47’−48’−49’)の背丈方向における上位側の端部(縁47’−48’)を凸状に湾曲させるように構成(補正代RMAS)したので、着用(使用)を繰り返すことによって上辺の開口部RMAが下方に伸びてしまうのを防止(予め補正)することができる。
尚、残余の構成および効果は第1実施例と同様であるので、説明を省略する。
図14はこの発明の第3実施例に係るパンツP3の正面図であり、図15はパンツP3の背面図である。また、図16はパンツP3の左前身頃TFLと右前身頃TFRと後身頃TBの裁断形状(生地片)を表側から見た平面図である。
パンツP3は、左前身頃TFL、右前身頃TFRおよび腹当てクロッチTWU1からなる前身頃F3と、後身頃TBと、穿き口TWに縫着される腰ゴムTWGとからなると共に、左前身頃TFLと後身頃TBによって形成される左裾口THLと、右前身頃TFRと後身頃TBによって形成される右裾口THRを有する。
また、パンツP3には、前身頃F3に、左右2つの前開きTLHA1,TRHA1(図14では左開き口前立てTLMと右開き口前立てTRMに隠れて見えない)が穿設されると共に、図14に示すように、開口部TLMAを有する左開き口前立てTLMと開口部TRMAを有する右開き口前立てTRMが重なるように縫着される。
パンツP3が、第1実施例に係るパンツP1や第2実施例に係るパンツP2と大きく相違する点は、パンツP3がブリーフ型のパンツではなく、いわゆるトランクス型のパンツであるという点である。従って、パンツP3は、図14から図16に示すように、ブリーフ型のパンツに比べて全体的にゆったりとした作りになっている。また、素材についても伸縮性のある素材が用いられるブリーフ型のものとは異なり、布帛(伸びない織物生地)が主として使用される。
また、パンツP3の腹当てクロッチTWU1はパンツP1の腹当てクロッチLUやパンツP2の腹当てクロッチWUと同様、局部のサポート機能を有するが、左開き口前立てTLMと右開き口前立てTRMにはサポート機能を有さず、頂点部分が凸形状(錐体形状)でなく平面状になるように形成される。従って、パンツP3は、腹当てクロッチTWU1で局部をサポートすることができる一方、外観上は通常のトランクス型パンツと何ら変わらなく見えるため、着用者などに外観上の違和感を与えない。
以下、第3実施例について、第2実施例との相違点に焦点をおいて説明する。
図17は、パンツP3の腹当てクロッチTWU1の腹当て布TAd1と内股マチ布TBd1の裁断形状を示す平面図であり、図18は、パンツP3の左開き口前立てTLMの前立て布TAd1’と表股マチ布TBd1’の裁断形状(図18−1)および右開き口前立てTRMの前立て布TAd2’の裁断形状(図18−2)を示す平面図である。
腹当てクロッチTWU1は、図17に示すように、腹当て布TAd1と内股マチ布TBd1とからなる。腹当て布TAd1は、後に内股マチ布TBd1と縫着される一端部TE5dと、一端部TE5dに連続して形成され、後に左前身頃TFLと右前身頃TFRに縫着される他端部TE6dとからなる。
腹当て布TAd1が第2実施例に係る腹当て布Ad2と相違する点は、腹当て布TAd1が腹当て布Ad2に比べてゆとりをもって形成される点である。
図17において、腹当て布TAd1の右側の端縁T29−T30−T31−T33よりもやや左側に示す破線29−31−33および腹当て布TAd1の左側の端縁T27−T26−T25−T24よりもやや右側に示す破線27−25−24は、第2実施例に係るパンツP2の腹当て布Ad2の外形の一部を示したものである。従って、破線29−31−33、破線27−25−24、腹当て布TAd1の端縁29−27および端縁24−23−22−21−33とで囲まれた部位がパンツP2の腹当て布Ad1の外形を表すことになるが、図示の通り、パンツP3の腹当て布TAd1は第2実施例に係るパンツP2の腹当て布Ad2よりも左右方向に所定幅(図中格子状で示すTWURS,TRHAS,TWULS,TLHAS)ゆとりをもって形成される。これにより、ブリーフ型のパンツのように伸縮性素材で構成されないトランクス型のパンツであっても、左右方向の張力等に対して十分対応することができるようになる。尚、腹当て布TAd1は、パンツP2の腹当て布Ad2と同様に補正代(図11−1の補正代RHAS,LHAS参照)を有する。
次いで内股マチ布TBd1について説明すると、内股マチ布TBd1は、後に腹当て布TAd1の一端部TE5dと縫着される一端部TF1dと、一端部TF1dに連続して形成されると共に、後に左前身頃TFL,右前身頃TFRおよび後身頃TBに縫着される他端部TF2dとからなる。
内股マチ布TBd1についても、上記した腹当て布TAd1と同じ理由により、第2実施例に係る内股マチ布Bd1(図示されているのは第1実施例に係るパンツP1の内股マチ布Bd1(図6−1))に比べてゆとりをもって形成される。
図17において、内股マチ布TBd1の右側の端縁T50−58よりもやや左側に示す破線50−58、内股マチ布TBd1の左側の端縁T54−56よりもやや右側に示す破線54−56および内股マチ布TBd1の下端縁T56−T58よりも上側に示す破線56−58は、第2実施例に係るパンツP2の内股マチ布Bd1の外形の一部を示したものである。従って、破線50−58−56−54と、内股マチ布TBd1の端縁54−53−52−51−50とで囲まれた部位がパンツP2の内股マチ布Bd1の外形を表すことになるが、内股マチ布TBd1も腹当て布TAd1と同じように、パンツP2の内股マチ布Bd1よりも左右方向と下方向にゆとり(図中格子状で示すTBdRS、TBdLSおよびTBdS)をもって形成される。
尚、内股マチ布TBd1の下端縁T56−T58の中点V1と端縁T50−T58上の点V2を結ぶ線分(破線)および中点V1と端縁T54−T56上の点V3を結ぶ線分(破線)は内股マチ布TBd1の変形例の外形を示したものであり、中点V1にて1点止めしたV型サポータの想定形状線である。このように、内股マチ布TBd1の下方部(TBdS)は矩形状のみならず、V3−V1−V2に示すような1点止めのV型形状としても良い。
以上のように構成された腹当て布TAd1と内股マチ布TBd1を、それぞれの一端部TE5dとTF1dで縫着することで、図19−1に示すような形状の腹当てクロッチTWU1が完成する。
図19−1に示す如く、腹当てクロッチTWU1においても、縫合部TM’付近の頂点部が丸みを帯びた凸形状を構成し、ここで局部をサポートする。従って、布帛などの伸びない織物生地が使用される前身頃F3や後身頃TBに対して、腹当てクロッチTWU1については、例えば内股マチ布TBd1のみ、または腹当て布TAd1を含めニットなどの伸縮性素材が用いられる。
次に左開き口前立てTLMおよび右開き口前立てTRMについて説明すると、左開き口前立てTLMは、図18−1に示すように、前立て布TAd1’と表股マチ布TBd1’とからなり、右開き口前立てTRMは、図18−2に示すように、前立て布TAd2’と表股マチ布(表股マチ布TBd1’と形状が同一であるため図示しない)からなる。
前立て布TAd1’およびTAd2’には、第2実施例に係るパンツP2の前立て布Ad2’のように、一端部E3d’に相当する部位はなく、他端部E4dに相当する部位TE4dまたはTE4d’のみで構成される。また、表股マチ布TBd1’についても第2実施例に係るパンツP2の表股マチ布Bd1’の一端部(図示せず)に相当する部位はなく、部位TF2d’のみで構成される。
前立て布TAd1’は、後に表股マチ布TBd1’と縫着され、緩やかな曲線状に形成された端縁T40−T42−T44と、後に腹当てクロッチTWU1の右側端縁となる直線辺たる端縁T49−T40と、後に腹当てクロッチTWU1の左側端縁となる直線辺たる端縁T47−T46−T45−T44と、後に開口部TLMAを形成する端縁T47−T49とから構成される。
前立て布TAd1’の上端縁T47−T49は、斜めに形成されると共に、上端縁T47−T49と略垂直に交わる垂線を下方に伸ばしたときに、この垂線が腹当てクロッチTWU1と前立てTLMとを重ねて縫着したときの腹当てクロッチTWU1の左側端縁T25−T24−T54−T56に形成された前開きTLHA1を貫通(交差)するような向きになるように斜めに形成される。換言すると、前立てTLMの上辺にあたる開口部TLMAが前開きTLHA1に向いて(面して)開口するように構成される。
また、前立て布TAd2’の上端縁T47’−T49’も斜めに形成され、上端縁T47’−T49’と略垂直に交わる垂線を下方に伸ばしたときに、この垂線が腹当てクロッチTWU1と前立てTRMとを重ねて縫着したときの腹当てクロッチTWU1の右側端縁T31−T33−T50−T58に形成された前開きTRHA1を貫通(交差)するような向きになるように斜めに形成される。換言すると、前立てTRMの上辺にあたる開口部TRMAが前開きTRHA1に向いて(面して)開口するように構成される。
尚、前立て布TAd1’およびTAd2’には、パンツP1やパンツP2の前立て布Ad1’やAd2’のように、補正代LMAS,RMASは形成されない。これは、前立て布TAd1’が伸縮性素材ではない布帛を用いているため、予めゆとりをもって形成されるからである。
表股マチ布TBd1’は、後に前立て布TAd1’の端縁T40−T42−T44に縫着される曲線辺たる端縁T50’−T52’−T54’と、後に腹当てクロッチTWU1の左側端縁となる端縁T54’−T55’−T56’と、後にパンツP3の後股ぐり(後身頃TB)に縫着され、腹当てクロッチTWU1の後方端縁となる下端縁T58’−T57’−T56’と、後に腹当てクロッチTWU1の右側端縁となる端縁T50’−T59’−T58’とで画された部位から構成される。
尚、表股マチ布TBd1’の端縁T50’−T54’を結ぶ一点鎖線から、図面上下方向において表股マチ布TBd1’の略中央位置に示す破線58’−57’−56’までの寸法は、パンツP1やP2における表股マチ布Bd1’の線分50’−54’から下端縁58’−57’−56’までの寸法を表している。この図からも分かるように、表股マチ布TBd1’はパンツP1やP2における表股マチ布Bd1’よりも図面格子状で示すTBd’S分だけゆとりを持って作られている。これは、表股マチ布TBd1’の素材として布帛を使用しており、伸縮性素材による素材伸びを期待できないため、素材の分量不足が生じないようゆとりをもって製作されるためである。
以上のように構成された前立て布TAd1’やTAd2’と表股マチ布TBd1’を縫着することで、図19−2に示すような形状の左開き口前立てTLMと右開き口前立てTRMが完成する。図示の如く、左開き口前立てTLMと右開き口前立てTRMには、前立て布TAd1’やTAd2’と表股マチ布TBd1’との縫合部付近が平面状に形成され、パンツP1やP2の前立てLM,RMのように局部をサポートするための空間は形成されない。これにより、パンツP3は腹当てクロッチTWU1にサポート機能を有しているものの、外観上はこれまでのトランクス型のパンツと何ら変わらないように見せて、見る者に違和感を与えないようにしている。
図20はパンツP3の完成した状態を穿き口TWを広げて真上から見た上面図である。
図20に示すように、パンツP3は、腹当てクロッチTWU1の左右端に形成された右側前開きTRHA1と左側前開きTLHA1の形状が、パンツP1やパンツP2のものとは若干異なるが、これはトランクス型とブリーフ型による違いに起因するものである。またその他の構成についてはパンツP1やP2と略同様であるので、詳細な説明は省略する。
尚、残余の構成および効果は従前の実施例と同様であるので、説明を省略する。
図21はこの発明の第4実施例に係るパンツP4の正面図であり、図22はパンツP4の背面図である。
図21および図22に示すように、第4実施例に係るパンツP4は、第3実施例に係るパンツP3と同じくトランクス型のパンツであり、左前身頃TFL、右前身頃TFRおよび腹当てクロッチTWU2からなる前身頃F4と、後身頃TBと、腰ゴムTWGとからなると共に、2つの前開きTLHA2,TRHA2(左開き口前立てTLMと右開き口前立てTRMに隠れて見えない)と2つの前立て、詳しくは開口部TLMAを有する左開き口前立てTLMと開口部TRMAを有する右開き口前立てTRMを備える。
しかしながら、パンツP4は、腹当てクロッチTWU2に局部をサポートする機能が備わっていない点でパンツP3とは異なる。以下、第4実施例について、第3実施例との相違点に焦点をおいて説明する。
図23はパンツP4の腹当てクロッチTWU2の腹当て布TAd2の裁断形状を示す平面図である。
腹当て布TAd2は、パンツP3の腹当て布TAd1の一端部TE5dに相当する部位がなく、他端部TE6dに相当する部位TE7dのみで構成される。
具体的には、腹当て布TAd2は、後に内股マチ布と縫着され、緩やかな曲線状に形成された下側端縁T35−T36−T37と、後に腹当てクロッチTWU2の右側端縁となり、一部(端縁T31−T35)が前開きTRHA2を構成する端縁T29−T30−T31−T35と、後に穿き口TWに縫着される直線辺たる上端縁T29−T28−T27と、後に腹当てクロッチTWU2の左側端縁となり、一部(端縁T25−T37)が前開きTLHA2を構成する端縁T27−T26−T25−T37とからなる。
上記したように、腹当て布TAd2にはパンツP3の腹当て布TAd1の一端部TE5dに相当する部位がないため、局部をサポートするための空間は形成されない。従って、上方に向けて緩やかに曲線状に形成された腹当て布TAd2の下側端縁T35−T36−T37と内股マチ布とが縫着されると、縫合部付近は凸状ではなく平面状に形成される。
図24は腹当てクロッチTWU2、左開き口前立てTLMおよび右開き口前立てTRMが重なった状態を表側右側方から見た斜視図である。図示の通り、腹当てクロッチTWU2、左開き口前立てTLMおよび右開き口前立てTRMはすべて平面状に形成され、局部をサポートする機能を有しない。
以上のように構成されるパンツP4は局部のサポート機能を有さず、外観上も通常のトランクス型パンツと何ら変わらない。これによりサポート機能は有しないものの、トランクス型パンツの本来の特徴であるゆったり感を維持することができ、このような特徴を好むユーザに対しても対応することができる。尚、パンツP4についても前身頃に左右2つの前開き(TLHA2,TRHA2)が穿設されると共に、前身頃F4に左開き口前立てTLMと右開き口前立てTRMが重なるように縫着されるようにしたので、他の実施例のパンツと同様に使い勝手が非常に優れたものとなる。
図25はパンツP4の完成した状態を穿き口TWを広げて真上から見た上面図である。
図25に示すように、パンツP4は、腹当てクロッチTWU2に局部をサポートするための空間が形成されない点で第3実施例に係るパンツP3と異なるが、その他の構成についてはパンツP3と同様であるので、詳細な説明は省略する。
尚、残余の構成および効果は従前の実施例と同様であるので、説明を省略する。
図26はこの発明の第5実施例に係るパンツP5の正面図であり、図27はパンツP5の背面図である。
図26および図27に示すように、第5実施例に係るパンツP5は、例えばステテコや股引きなどのようないわゆるスラックス型のパンツであり、股下の脚部の一部または全部を覆うように構成される。よって素材についてもフィット性のある伸縮素材から布帛等のゆったりとした素材まで多岐にわたる。
また、パンツP5は、左前身頃SFLと右前身頃SFRと腹当てクロッチSWU1からなる前身頃F5、左後身頃SBLと右後身頃SBRからなる後身頃SBおよび穿き口SWに縫着される腰ゴムSWGからなる。また、パンツP5は、2つの前開き(左開き口前立てSLMと右開き口前立てSRMに隠れて見えない)と2つの前立て、詳しくは開口部SLMAを有する左開き口前立てSLMと開口部SRMAを有する右開き口前立てSRMを備える。
図28はパンツP5の腹当てクロッチSWU1の腹当て布SAd1の裁断形状を示す平面図であり、図29はパンツP5の左開き口前立てSLMの前立て布SAd1’と右開き口前立てSRMの前立て布SAd2’の裁断形状を示す平面図である。
図28に示すように、腹当てクロッチSWU1の腹当て布SAd1は、後に内股マチ布(図示せず)と縫着され、曲線状に形成された端縁S35−S36−S37と、後に腹当てクロッチSWU1の右側端縁となり、一部(端縁S31−S35)が前開きSRHA1を構成する端縁S29−S30−S31−S35と、後に穿き口SWに縫着される直線辺たる上端縁S29−S28−S27と、後に腹当てクロッチSWU1の左側端縁となり、一部(端縁S25−S37)が前開きSLHA1を構成する端縁S27−S26−S25−S37とからなる。
左開き口前立てSLMの前立て布SAd1’は、図29に示すように、後に表股マチ布(図示せず)と縫着され、曲線状に形成された端縁S40−S42−S44と、後に腹当てクロッチSWU1の右側端縁となる直線辺たる端縁S49−S40と、後に腹当てクロッチSWU1の左側端縁となる直線辺たる端縁S47−S46−S45−S44と、後に開口部SLMAを形成する端縁S47−S49から構成される。
また、前立て布SAd1’の上端縁S47−S49は、斜めに形成されると共に、上端縁S47−S49と略垂直に交わる垂線を下方に伸ばしたときに、この垂線が腹当てクロッチSWU1と前立てSLMとを重ねて縫着したときの腹当てクロッチSWU1の左側端縁S25−S37に形成された前開きSLHA1を貫通(交差)するような向きになるように斜めに形成される。換言すると、前立てSLMの上辺にあたる開口部SLMAが前開きSLHA1に向いて(面して)開口するように構成される。
左開き口前立てSRMの前立て布SAd2’は、図29に示すように、後に表股マチ布(図示せず)と縫着され、曲線状に形成された端縁S40’−S42’−S44’と、後に腹当てクロッチSWU1の左側端縁となる直線辺たる端縁S49’−S40’と、後に腹当てクロッチSWU1の右側端縁となる直線辺たる端縁S47’−S46’−S45’−S44’と、後に開口部SRMAを形成する端縁S47’−S49’から構成される。
また、前立て布SAd2’の上端縁S47’−S49’も斜めに形成され、上端縁S47’−S49’と略垂直に交わる垂線を下方に伸ばしたときに、この垂線が腹当てクロッチSWU1と前立てSRMとを重ねて縫着したときの腹当てクロッチSWU1の右側端縁S31−S35に形成された前開きSRHA1を貫通(交差)するような向きになるように斜めに形成される。換言すると、前立てSRMの上辺にあたる開口部SRMAが前開きSRHA1に向いて(面して)開口するように構成される。
尚、前立て布SAd1’およびSAd2’には、パンツP1やパンツP2の前立て布Ad1’やAd2’のように、補正代LMAS,RMASは形成されない。
以上のように構成された前立て布SAd1’やSAd2’を表股マチ布に縫着することで、図26に示すような形状の左開き口前立てSLMと右開き口前立てSRMが完成する。図示の如く、左開き口前立てSLMと右開き口前立てSRMには局部をサポートするための空間は形成されない。
図30はパンツP5の左前身頃SFL、右前身頃SFR、腹当てクロッチSWU1の裁断形状(生地片)、左開き口前立てSLMおよび右開き口前立てSRMの開口部折り返しステッチ始末が施され、重ね合わされた形状(生地片)を表側から見た平面図であり、図31はパンツP5の左後身頃SBLと右後身頃SBRの裁断形状(生地片)を表側から見た平面図である。また、図32はパンツP5の完成した状態を穿き口SWを広げて真上から見た上面図である。
図30から図32に示すように、左前身頃SFLと右前身頃SFRおよび左後身頃SBLと右後身頃SBRは、それぞれ一対の身頃であって左右対称形状に裁断される。
左前身頃SFLは、図30および図32に示す如く、後に穿き口SWの一部となる上端縁S7’−S8’、後に左後身頃SBLと縫着される側端縁S8’−S9’、股下と連続する線分S9’−S1’、後に右前身頃SFRと縫着されて前股ぐりとなる端縁S1’−S2’、後に腹当てクロッチSWU1と縫着される曲線辺たる端縁S2’−S7’からなる。
また、右前身頃SFRは、後に穿き口SWの一部となる上端縁S7−S8、後に右後身頃SBRと縫着される端縁S8−S9、股下と連続する線分S9−S1、後に左前身頃SFLと縫着されて前股ぐりとなる端縁S1−S2、後に腹当てクロッチSWU1と縫着される曲線辺たる端縁S2−S7からなる。
左後身頃SBLは、図31および図32に示す如く、後に穿き口SWの一部となる上端縁S12’−S13’、後に左前身頃SFLと縫着される側端縁S13’−S14’、股下と連続する線分S14’−S10’、後に後身頃SBの中心線を構成するS12’−S11’−S10’からなり、右後身頃SBRは、後に穿き口SWの一部となる上端縁S12−S13、後に右前身頃SFRと縫着される側端縁S13−S14、股下と連続する線分S14−S10、後に後身頃SBの中心線を構成するS12−S11−S10からなる。
尚、残余の構成および効果は従前の実施例と同様であるので、説明を省略する。
図33はこの発明の第6実施例に係るパンツP6の正面図であり、図34はパンツP6の腹当てクロッチTWU1(第3実施例に係るパンツP3の腹当てクロッチTWU1(下端縁がV型形状のもの)と同形状)と左開き口前立てSLMと右開き口前立てSRMを表側右前方から見た斜視図である。また、図35はパンツP6の完成した状態を真上から見た上面図である。
パンツP6は第5実施例に係るパンツP5と同様、スラックス型のパンツであり、左前身頃SFL、右前身頃SFRおよび腹当てクロッチTWU1からなる前身頃F6と、後身頃SBと、腰ゴムSWGとからなると共に、2つの前開き(左開き口前立てSLMと右開き口前立てSRMに隠れて見えない)と2つの前立て、詳しくは開口部SLMAを有する左開き口前立てSLMと開口部SRMAを有する右開き口前立てSRMを備えるが、腹当てクロッチTWU1にサポート機能を持たせている点でパンツP5とは相違する。従って、図34や図35に示すように、腹当て布TAd1と内股マチ布TBd1との縫合部TM’の裏側には、局部をサポートするための空間が形成される。
また、パンツP5の腹当てクロッチTWU1は、上記の通り、第3実施例に係るパンツP3の腹当てクロッチTWU1と同じであるが、第6実施例では、図34や図35に示す如く(図17や図19も参照のこと)、腹当てクロッチTWU1(内股マチ布TBd1)の下端縁を、中点V1を頂点としたV型(V3−V1−V2)に形成されるV型クロッチとしている。ただし、腹当てクロッチTWU1の下端縁の形状はこのようにV型に限定されるものではなく、他の実施例に示すように矩形状に形成しても良いことは勿論である。
尚、残余の構成および効果は従前の実施例と同様であるので、説明を省略する。
以上の如く、この発明の第1から第6実施例にあっては、前身頃(F1〜F6)と後身頃(B,TB,SB)を備え、前記前身頃を構成する布地に前開き(左側前開きLHA,TLHA1,TLHA2,SLHA1または右側前開きRHA,TRHA1,TRHA2,SRHA1)を穿設すると共に、その上から前立て(左開き口前立てLM,TLM,SLMまたは右開き口前立てRM,TRM,SRM)を縫着して前記前開きを覆うようにしたパンツ(P1〜P6)において、着用者の背丈方向における前記前立ての上辺を斜めに開口(左開き口前立ての開口部LMA,TLMA,SLMAまたは右開き口前立ての開口部RMA,TRMA,SRMA)させるように構成した。
また、前記前立ての上辺を前記前開きに向けて開口させるように構成した。
また、この発明の第1および第2実施例にあっては、前記前立ての上辺の前記背丈方向における下位側の端部(縁49−48,49’−48’)を凹状に湾曲させるように構成した。
また、前記前立ての上辺の前記背丈方向における上位側の端部(縁47−48,47’−48’)を凸状に湾曲させるように構成した。
また、この発明の第2から第6実施例にあっては、前記前身頃を構成する布地の左右の一方に前記前開き(左側前開きLHA,TLHA1,TLHA2,SLHA1)を穿設し、他方に第2の前開き(右側前開きRHA,TRHA1,TRHA2,SRHA1)を穿設し、前記前身頃を構成する布地の上から第2の前立て(右開き口前立てRM,TRM,SRM)を縫着して前記第2の前開きを覆うと共に、前記背丈方向における前記第2の前立ての上辺を前記第2の前開きに向けて斜めに開口(開口部RMA,TRMA,SRMA)させるように構成した。
また、この発明の第2実施例にあっては、前記第2の前立ての上辺の前記背丈方向における下位側の端部(縁49’−48’)を凹状に湾曲させるように構成した。
また、前記第2の前立ての上辺の前記背丈方向における上位側の端部(縁47’−48’)を凸状に湾曲させるように構成した。
また、この発明の第1および第2実施例にあっては、前記パンツ(P1,P2)はブリーフ型からなるように構成した。
また、この発明の第3および第4実施例にあっては、前記パンツ(P3,P4)はトランクス型からなるように構成した。
また、この発明の第5および第6実施例にあっては、前記パンツ(P5,P6)はスラックス型からなるように構成した。
また、この発明の第1から第6実施例にあっては、前記前身頃(腹当てクロッチLU,WU,TWU1)に着用者の男性局部を支持可能な錐体形状のサポート空間(N,N’)を形成するように構成した。
尚、第1実施例や第2実施例では、ブリーフ型のパンツを例に説明したが、例えば図36に示すように、パンツP1やパンツP2の左右の裾口HL,HRから丈を伸ばして、膝上ハーフ丈(左裾口HHL、右裾口HHR)や踝ロング丈(左裾口LHL、右裾口LHR)のパンツとしても良い。尚、図36−1に示すパンツは布地が脚にフィットするタイプのもの(膝上ハーフ丈または踝ロング丈タイツ)であり、図36−2に示すパンツは腿から膝にかけて除々にゆとりを持たせたものであって、膝下がストレートパンツのシルエットになるように形成されたものである。
また、第2実施例から第6実施例では、右開き口前立て(RM,TRM,SRM)の上から左開き口前立て(LM,TLM,SLM)を重ねるように構成したが、これに限定されるものではなく、左開き口前立て(LM,TLM,SLM)の上に右開き口前立て(RM,TRM,SRM)を重ねるようにしても良い。
また、パンツの各部寸法は、着用者が標準体型である場合を例に定めたが、着用者が他の体型(他サイズ)であるときはそれに応じて各部寸法は適宜に変更される。
また、前身頃、後身頃、クロッチなどの素材を具体的に示したが、それらは例示であって限定されるものではない。
また、第5実施例に係るパンツP5としてステテコや股引きを例として挙げたが、これに限定されるものではなく、例えばルームウェア(部屋着)であっても良い。
また、第1実施例から第6実施例に係るパンツ(P1〜P6)の穿き口(W,TW,SW)に縫着される腰ゴム(WG,TWG,SWG)はすべて同様の腰ゴムとして説明したが、これに限定されるものではなく、どのような形態のゴム縫着構成であっても良い。
また、第1実施例から第6実施例に係るパンツ(P1〜P6)の左開き口前立て(LM,TLM,SLM)および右開き口前立て(RM,TRM,SRM)の開口部(LMA,RMA,TLAM,TRMA,SLMA,SRMA)はすべて折り返しステッチ始末が施されているように説明したが、これに限定されるものではなく、同等以上の効果または品質であれば開口部の端縁を包み布で包み込む始末や密度を高めた端かがり等であっても良い。