JP5040001B2 - 植物系繊維材料の糖化分離方法 - Google Patents

植物系繊維材料の糖化分離方法 Download PDF

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Description

本発明は、植物系繊維材料の糖化によりグルコースを主とする糖を生成し、得られた糖を分離する、植物系繊維材料の糖化分離方法に関する。
バイオマスである植物繊維、例えば、サトウキビの絞りかす(バガス)や木材片等を分解してセルロースやヘミロースからグルコースやキシロースを主とする糖を生成し、得られた糖を食料又は燃料として有効利用することが提案され、実用化されている。特に、植物繊維を分解することにより得られた単糖を発酵させ、燃料となるエタノール等のアルコールを生成させる技術が注目されている。
従来、セルロースやヘミセルロースを分解してグルコース等の糖を生成する種々の方法が提案されており(例えば、特許文献1〜5等)、一般的な方法としては、希硫酸や濃硫酸等の硫酸、塩酸を用いてセルロースを加水分解する方法(特許文献1等)が挙げられる。また、セルラーゼ酵素を用いる方法(特許文献2等)、活性炭やゼオライト等の固体触媒を用いる方法(特許文献3等)、加圧熱水を用いる方法(特許文献4等)もある。さらに、原料である植物性資源に、触媒存在下で連続的に超音波を照射して加水分解する方法も提案されている(特許文献5)。
特開平8−299000号公報 特開2006−149343号公報 特開2006−129735号公報 特開2002−59118号公報 特開2005−341924号公報
しかしながら、硫酸等の酸を用いてセルロースを加水分解する方法は、加水分解によって得られる加水分解反応混合物から、触媒である酸と生成した糖とを分離することが難しいという問題がある。セルロースの加水分解生成物の主成分であるグルコースと加水分解の触媒である酸が共に水溶性であるためである。中和やイオン交換などによる加水分解反応混合物からの酸除去は、手間とコストがかかるだけでなく、完全に酸を除去することが難しく、エタノール発酵工程にも酸が残留してしまうことが多い。その結果、エタノール発酵工程において、酵母の活性に最適なpHに調整しても、塩の濃度が高くなることで酵母の活性が低下し、発酵効率の低下を招いていた。
特に濃硫酸を用いる場合には、エタノール発酵工程において酵母を失活させない程度まで硫酸を除去するのが非常に困難であり、多大なエネルギーを要する。これに対して、希硫酸を用いる場合には、比較的容易に硫酸を除去することができるが、高温条件下でセルロースを分解させなければならず、エネルギーを要する。
さらに、硫酸や塩酸等の酸は、分離、回収して再利用することが非常に困難である。そのため、これら酸をグルコース生成の触媒として用いることは、バイオエタノールのコストを引き上げる原因の一つとなっている。
また、加圧熱水を用いた方法では、条件調整が難しく、安定した収率でグルコースを生成することが困難である。グルコースまでも分解し、グルコース収率が低下するだけでなく、分解成分により酵母の働きが低下し、発酵が抑制されることも懸念されている。しかも、反応装置(超臨界装置)が高価であり、且つ、耐久性も低いため、コスト面での問題もある。
本発明者らは、セルロースの糖化について鋭意検討した結果、擬融解状態のクラスター酸が、セルロースの加水分解に対して優れた触媒活性を有すると共に、生成した糖との分離が容易であることを見出し、既に特許出願を行っている(特願2007−115407、特願2007−230711)。本方法によれば、従来の濃硫酸法や希硫酸法と異なり、加水分解触媒を回収、再利用することが可能であると共に、セルロースの加水分解から糖水溶液の回収、加水分解触媒の回収に至るプロセスのエネルギー効率を向上させることができる。
また、本発明者らは、クラスター酸触媒が可溶な有機溶媒を、植物系繊維材料の加水分解反応溶媒として用いることが可能であることを見出し、特許出願している。
植物系繊維材料を加水分解し、糖を生成させる際、原料である植物系繊維材料の粒子径を小さくすることで、反応率は向上する。植物系繊維材料には、セルロースやヘミセルロースのほか、リグニンが含有されており、これらが複雑に混在している。ゆえに、粒子径が大きい植物系繊維材料は、その内部に存在するセルロースやヘミセルロースが加水分解されにくく、反応率の低下が生じ易い。例えば、粒径が50μm以下の植物系繊維材料では反応率85%程度であるのに対して、粒径が150μm以下の植物系繊維材料では反応率40%程度であるという知見が得られている。
しかしながら、植物系繊維材料を粉砕し、その粒径を小さくするには、エネルギーを要する。例えば、おおよそ150μm以下に木材を粉砕するエネルギーは、高位発熱量の5%程度であるが、20μm以下に木材を粉砕するエネルギーは、高位発熱量の200%程度まで跳ね上がる。すなわち、植物系繊維材料の原料によっては、この粉砕に要するエネルギーによってエネルギー収支が悪化する場合がある。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、クラスター酸触媒と植物系繊維材料に含まれるセルロースやヘミセルロースとの接触機会が高く、植物系繊維材料の反応率の高い糖化分離方法を提供することを目的とする。
本発明の植物系繊維材料の糖化分離方法は、植物系繊維材料を加水分解し、グルコースを主とする糖を生成し、分離する植物系繊維材料の糖化分離方法であって、擬融解状態のクラスター酸触媒を用いて、前記植物系繊維材料に含まれるセルロースを加水分解し、グルコースを生成させる加水分解工程を備えており、該加水分解工程において、擬融解状態の前記クラスター酸触媒以外に反応溶媒が含まれなくても反応系が流動状態を呈する量の前記クラスター酸触媒、及び、前記植物系繊維材料を含む反応溶液に、超音波振動を印加することを特徴とする。
本発明においては、加水分解工程における上記クラスター酸触媒浸透促進処理によって、植物系繊維材料内部へのクラスター酸触媒の浸透が促進されるため、クラスター酸触媒と植物系繊維材料に含まれるセルロースやヘミセルロースとの接触機会が向上し、加水分解反応を促進することができる。また、本発明によれば、植物系繊維材料を小径化するのに要するエネルギーを削減することが可能である。
前記加水分解工程において、前記クラスター酸触媒と前記植物系繊維材料の重量比は、1:1〜4:1の範囲とすることができる。
本発明によれば、クラスター酸触媒を用いる植物系繊維材料の糖化分離において、クラスター酸触媒と植物系繊維材料に含まれるセルロースやヘミセルロースとの接触機会を高め、植物系繊維材料の反応率を高くすることができる。ゆえに、本発明においては、植物系繊維材料の粉砕に要するエネルギーを削減することが可能であり、植物系繊維材料の糖化分離におけるエネルギー効率を向上させることができる。
本発明の植物系繊維材料の糖化分離方法は、植物系繊維材料を加水分解し、グルコースを主とする糖を生成し、分離する植物系繊維材料の糖化分離方法であって、クラスター酸触媒を用いて、前記植物系繊維材料に含まれるセルロースを加水分解し、グルコースを生成させる加水分解工程を備えており、該加水分解工程において、前記植物系繊維材料及び擬融解状態のクラスター酸触媒を含む反応溶液、或いは、前記植物系繊維材料、クラスター酸触媒及び該クラスター酸触媒を可溶な溶媒を含む反応溶液に、前記植物系繊維材料内部への前記クラスター酸触媒の浸透を促進する、クラスター酸触媒浸透促進処理を施すことを特徴とする。
代表的なクラスター酸触媒であるヘテロポリ酸は、径が1〜2nm程度、典型的には1nm強であり、植物系繊維材料内を拡散可能な分子サイズを有しているが、植物系繊維材料には、セルロースやヘミセルロース、リグニンが複雑に混在しており、これらによりクラスター酸触媒の拡散が妨げられている。
本発明は、加水分解工程において、植物系繊維材料とクラスター酸触媒を含有する反応溶液、具体的には、植物系繊維材料及び擬融解状態のクラスター酸触媒を含む反応溶液、或いは、植物系繊維材料、クラスター酸触媒及び該クラスター酸触媒を可溶な溶媒を含む反応溶液に、該クラスター酸触媒が植物系繊維材料内部の細孔内に浸透するのを促進する、クラスター酸触媒浸透促進処理を施すことによって、植物系繊維材料に含まれるセルロースやヘミセルロースとクラスター酸触媒との接触機会を向上させるものである。クラスター酸触媒は、1nm強とそのサイズが小さいため、結晶化したセルロースの中へもある程度侵入し、反応を大きく促進することができる。植物系繊維材料のセルロースやヘミセルロースと、クラスター酸触媒との接触機会が向上することによって、セルロースやヘミセルロースの加水分解反応を促進し、反応率を向上させることができる。
また、本発明によれば、植物系繊維材料の内部に存在するセルロースやヘミセルロースと、クラスター酸触媒との接触機会が高いことから、従来と比較して径の大きな植物系繊維材料を用いた場合でも、高い反応率を維持することができる。つまり、植物系繊維材料の粉砕に要するエネルギーを削減することが可能であり、植物系繊維材料の糖化分離におけるエネルギー効率の向上も達成することができる。
以下、本発明の植物系繊維材料の糖化分離方法について詳しく説明していく。
まず、植物系繊維材料に含まれるセルロースを加水分解し、グルコースを主とする糖を生成させる加水分解工程について説明する。
尚、ここでは、主としてセルロースからグルコースを生成させる工程を中心に説明しているが、植物系繊維材料にはセルロース以外にヘミセルロースも含まれ、また、生成物もグルコース以外にキシロース等のその他の単糖もあり、これらの場合も本発明の範囲に含まれる。
植物系繊維材料としては、セルロースやヘミセルロースを含むものであれば特に限定されず、例えば、広葉樹、竹、針葉樹、ケナフ、家具の廃材、稲わら、麦わら、籾殻、バガス、サトウキビの絞りかす等のセルロース系バイオマスが挙げられる。また、上記バイオマスから分離されたセルロースやヘミセルロース或いは人工的に合成されたセルロースやヘミセルロースそのものでもよい。
これら繊維材料は、反応系における分散性の観点から、通常、粉末状のものを用いる。粉末状にする方法としては、一般的な方法に準じればよい。本発明においては、充填液体により、加水分解工程におけるクラスター酸触媒と植物系繊維材料の反応機会が向上しているため、50μm以上の直径を有する植物系繊維材料であっても、高い反応率を確保することができる。充填液体の充填効率、クラスター酸触媒との混合性、反応機会向上の観点から、特に数μm〜200μm程度の直径を有する粉末状であることが好ましい。
また、繊維材料は必要に応じて、予め蒸解処理を施すことによって、含有されるリグニンを溶解しておいてもよい。リグニンを溶解除去しておくことによって、加水分解工程におけるクラスター酸触媒とセルロースとの接触機会の向上が可能である同時に、加水分解反応混合物に含まれる残渣量を低減することができ、残渣中に生成した糖やクラスター酸が混入することによる、糖収率低下やクラスター酸回収率低下の抑制が可能である。蒸解処理を施す場合には、植物系繊維材料の粉砕度を比較的小さくする(粉砕が荒い)ことができるため、繊維材料を粉末状にするための手間、コスト、エネルギーを削減できるという効果もある。
蒸解処理としては、例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Na2SO3、NaHCO3、NaHSO3、Mg(HSO32、Ca(HSO32などのアルカリや塩及びその水溶液、これらにさらにSO2溶液を混合したもの、NH3等のガスと、植物系繊維材料(例えば、数cm〜数mm)を、水蒸気下で接触させる方法が挙げられる。具体的な条件として、反応温度は120〜160℃、反応時間は数十分から1時間程度でよい。
本発明において、植物系繊維材料の加水分解の触媒として用いられるクラスター酸とは、複数のオキソ酸が縮合したもの、すなわち、いわゆるポリ酸である。ポリ酸の多くは、中心元素が複数の酸素原子が結合しているため最高酸化数まで酸化された状態であることが多く、酸化触媒として優れた特性を示し、また、強酸であることが知られている。例えば、ヘテロポリ酸であるリンタングステン酸の酸強度(pKa=−13.16)は、硫酸の酸強度(pKa=−11.93)より強い。すなわち、例えば、50℃のような温和な条件でも、セルロースやヘミセルロースを、グルコース、キシロースなどの単糖までに分解することができる。
本発明において用いるクラスター酸としては、ホモポリ酸でも、ヘテロポリ酸でもよいが、酸化力及び酸強度が強いことからヘテロポリ酸が好ましい。ヘテロポリ酸としては特に限定されず、HwAxByOz(A:ヘテロ原子、B:ポリ酸の骨格となるポリ原子、w:水素原子の組成比、x:ヘテロ原子の組成比、y:ポリ原子の組成比、z:酸素原子の組成比)の一般式で表されるものが挙げられる。ポリ原子Bとしては、ポリ酸を形成することができるW、Mo、V、Nb等の原子が挙げられる。ヘテロ原子Aとしては、ヘテロポリ酸を形成することができるP、Si、Ge、As、B等の原子が挙げられる。ヘテロポリ酸一分子内に含有されるポリ原子及びヘテロ原子は1種でもあっても2種以上であってもよい。
酸強度の強さと、酸化力のバランスから、タングステン酸塩であるリンタングステン酸 H3[PW1240]、珪タングステン酸 H4[SiW1240]が好ましい。次いで、モリブデン酸塩であるリンモリブデン酸 H3[PMo1240]等を好適に用いることができる。
ここで、ケギン型[Xn+1240:X=P、Si、Ge、As等、M=Mo、W等]のヘテロポリ酸(リンタングステン酸)の構造を図1に示す。八面体MO6単位からなる多面体の中心に四面体XO4が存在し、この構造の周囲に結晶水を多くもつ。尚、クラスター酸の構造は特に限定されず、上記ケギン型の他、例えば、ドーソン型等でもよい。
尚、ここでは結晶状態のクラスター酸触媒、及び、数分子のクラスター酸触媒で構成されるクラスター状態のクラスター酸触媒と水和又は配位する水を、一般的に使用される「結晶水」という用語で代用する。この結晶水にはクラスター酸触媒を構成するアニオンと水素結合したアニオン水、カチオンに配位した配位水、カチオン及びアニオンと配位しない格子水の他、OH基の形で含まれているものも含まれる。
また、クラスター状態のクラスター酸触媒とは、1〜数分子程度のクラスター酸から構成される集合体であり、結晶とは異なる。固体状態、擬融解状態、溶媒中に溶解(コロイド状)した状態でもクラスター状態とすることができる。
上記したようなクラスター酸触媒は、常温では固体状であるが、加熱し、温度が上がると擬融解状態となり、セルロースやヘミセルロースの加水分解反応に対して触媒活性を発現する触媒として作用すると共に、反応溶媒としても作用する。ここで、擬融解状態とは、見かけ上、融解しているようであるが、完全に融解した液体状態ではなく、クラスター酸が液中に分散しているコロイド(ゾル)に近い状態であり、流動性を示している状態である。クラスター酸が擬融解状態であるかどうかは、目視により確認したり、或いは、均一系の場合、DTG(示差走査熱量計)等でも確認することができる。
クラスター酸の擬融解状態は、温度と、クラスター酸触媒が含有する結晶水の量によって変わってくる(図2参照)。具体的には、クラスター酸であるリンタングステン酸は、含有する結晶水が多くなると擬融解状態を発現する温度が低下する。すなわち、結晶水を多く含むクラスター酸触媒は、相対的に結晶水量が少ないクラスター酸触媒よりも低い温度でセルロースの加水分解反応に対する触媒作用を発現する。つまり、加水分解工程の反応系におけるクラスター酸触媒が含有する結晶水の量をコントロールすることで、目的とする加水分解反応温度においてクラスター酸触媒を擬融解状態とすることができる。例えば、リンタグステン酸をクラスター酸触媒として用いる場合は、クラスター酸の結晶水量によって加水分解反応温度を110℃〜40℃の範囲内で制御可能である(図2参照)。
尚、図2は、代表的なクラスター酸触媒であるヘテロポリ酸(リンタングステン酸)の結晶水率と、擬融解状態を発現し始める温度(見かけ上の融解温度)との関係を示すものであり、クラスター酸触媒は、曲線より下の領域では凝固状態であり、曲線より上の領域では擬融解状態である。また、図2において、結晶水率(%)とは、クラスター酸(リンタングステン酸)の標準結晶水量n(n=30)を100%とした値である。結晶水の量は、クラスター酸触媒が800℃のような高温であっても熱分解して揮発する成分がないため、熱分解法(TG測定)によって特定することができる。
ここで、標準結晶水量とは、室温で固体状態のクラスター酸1分子が含有する結晶水の量(分子数)であり、クラスター酸の種類によって異なる。例えば、リンタングステン酸は約30〔H3[PW1240]・nH2O(n≒30)〕、珪タングステン酸は約24〔H4[SiW1240]・nH2O(n≒24)〕、リンモリブデン酸は約30〔H3[PMo1240]・nH2O(n≒30)〕である。
クラスター酸触媒が含有する結晶水量は、加水分解反応系内に存在する水分量をコントロールすることで調節することができる。具体的には、クラスター酸触媒の結晶水量を多くしたい、つまり、反応温度を低くしたい場合には、例えば、植物系繊維材料とクラスター酸触媒を含む混合物に水を添加したり、反応系の雰囲気の相対湿度を高くする等して、加水分解の反応系に水を追加すればよい。その結果、クラスター酸が結晶水として追加された水を取り込み、クラスター酸触媒の見かけ上の融解温度は低下する。
一方、クラスター酸触媒の結晶水量を少なくしたい場合には、つまり、反応温度を高くしたい場合には、加水分解の反応系から水を除去、例えば、反応系を加熱して水を蒸発させたり、植物系繊維材料とクラスター酸触媒を含む混合物に乾燥剤を添加する等することで、クラスター酸触媒の結晶水を減少させることができる。その結果、クラスター酸触媒の見かけ上の融解温度は高くなる。
以上のように、クラスター酸の結晶水量は容易にコントロールが可能であり、結晶水量の制御によりセルロースの加水分解反応温度も容易に調整可能である。
クラスター酸触媒を擬融解状態で使用する場合、植物系繊維材料とクラスター酸触媒との比率は、用いる植物系繊維材料の性状(例えば、サイズ、空孔率等)や種類、加水分解工程における攪拌方法や混合方法等によって異なる。特に、本発明においては、クラスター酸触媒の植物系繊維材料内の空孔内への浸透を促進しているため、反応溶媒としてのクラスター酸触媒の量を確保した上で、植物系繊維材料の空孔内に浸透する分のクラスター酸の量を確保しなければならない。そのため、クラスター酸触媒の使用量は、加水分解工程の実施条件や使用する植物系繊維材料の性状等に応じて、適宜決定すればよいが、クラスター酸触媒:植物系繊維材料(重量比)=1:1〜4:1の範囲内であることが好ましく、通常は、2:1〜3:1程度でよい。但し、この割合は、混合方法によって変化するが、エネルギーコストを考慮すると、クラスター酸触媒はできるだけ少ない方がよい。
擬融解状態のクラスター酸触媒は、反応溶媒としても機能するため、植物系繊維材料の形態(大きさ、繊維の状態等)、クラスター酸触媒と植物系繊維材料の混合比及び体積比等にもよるが、加水分解工程において、反応溶媒としての水や有機溶剤等を用いなくてよい。
加水分解工程において、クラスター酸触媒は、擬融解状態に限らず、クラスター酸触媒を溶解可能な有機溶媒を反応溶媒とし、該有機溶媒に溶解して使用することもできる。有機溶媒を加水分解反応溶媒として用いる場合、クラスター酸触媒と植物系繊維材料の混合性、接触性が高いために、植物系繊維材料に含まれるセルロースの糖化反応性を保持しつつ、擬融解状態のクラスター酸触媒を用いる場合と比較して、クラスター酸触媒の使用量を低減できる。すなわち、生成する糖単位重量あたりのクラスター酸触媒使用量を低減することができ、糖の製造コスト削減が可能である。
加水分解反応溶媒として利用可能な、クラスター酸触媒を可溶な有機溶媒(以下、反応有機溶媒ということがある)としては、少なくとも加水分解の反応温度において、クラスター酸触媒を可溶であればよいが、通常は、加水分解の反応温度以下の温度、典型的には、室温においても、クラスター酸触媒を可溶であるものを用いる。具体的には、クラスター酸触媒の溶解度が、50g/100ml以上、特に250g/100ml以上、さらに500g/100ml以上のものが好ましい。
加水分解工程における反応有機溶媒の蒸発を抑制する観点からは、反応有機溶媒は、加水分解工程における反応温度よりも沸点が高いことが好ましい。具体的には、反応有機溶媒の沸点が、90℃以上、特に125℃以上、さらに150℃以上であることが好ましい。
また、加水分解工程の後工程である糖の分離工程において、糖の分離効率を高めるためには、反応有機溶媒は、グルコースなどの糖が難溶であることが好ましい。反応有機溶媒に対して糖が難溶である場合、加水分解工程において、生成した糖は反応有機溶媒中で析出するため、加水分解工程後に得られる加水分解反応混合物(生成した糖、クラスター酸触媒、反応有機溶媒、場合によっては残渣等を含む)を、濾過などにより固液分離することで、クラスター酸触媒及び反応有機溶媒を含有する液体分と、糖を含む固体分とに分離することができる。
ここで、糖が難溶な有機溶媒とは、有機溶媒に対する糖の溶解度が、1g/100ml以下である有機溶媒を指し、好ましくは、0.2g/100ml以下、さらに好ましくは0.1g/100ml以下である。最も好ましいのは、糖が反応有機溶媒に不溶(溶解度が0g/100ml)であることである。
上記のようなクラスター酸触媒可溶性及び糖難溶性を有する有機溶媒としては、例えば、極性有機溶媒、具体的には、比誘電率が8以上の極性有機溶媒、さらに具体的には比誘電率が8〜18の極性有機溶媒が挙げられる。
上記観点から、第一の有機溶媒としては、加水分解工程における反応温度よりも高い沸点を有し、且つ、糖が難溶である高沸点極性有機溶媒が好適である。具体的には、沸点が90℃以上、且つ、比誘電率が8〜18の高沸点極性有機溶媒が好適である。
反応有機溶媒として好適なものは、特に限定されないが、具体的には、炭素数6〜炭素数10のアルコール(直鎖状でも分岐構造を有していてもよい)が挙げられ、中でも引火性の観点から、炭素数8〜炭素数10のアルコールが好ましい。具体的には、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、1−デカノール、1−ノナノール等が挙げられ、中でも、1−オクタノール、2−オクタノール、1−デカノール、1−ノナノールが好ましく、特に1−オクタノール、2−オクタノールが好ましい。
加水分解工程において、クラスター酸触媒を反応有機溶媒に溶解して使用する場合、植物系繊維材料とクラスター酸触媒との好ましい比率は、用いる植物系繊維材料の性状(例えば、サイズ、繊維材料の種類等)、加水分解工程における攪拌方法、反応有機溶媒の使用量等によって異なる。特に、本発明においては、クラスター酸触媒が植物系繊維材料内の空孔内への浸透を促進しているため、反応溶媒としてのクラスター酸触媒の量を確保した上で、植物系繊維材料の空孔内に浸透する分のクラスター酸の量を確保しなければならない。そのため、クラスター酸触媒の使用量は、加水分解工程の実施条件や使用する植物系繊維材料の性状等に応じて、適宜決定すればよいが、例えば、具体的には、クラスター酸触媒:植物系繊維材料(重量比)=1:1〜4:1の範囲内であることが好ましく、通常は、2:1〜3:1程度でよい。但し、この割合は、混合方法によって変化するが、エネルギーコストを考慮すると、クラスター酸触媒はできるだけ少ない方がよい。
クラスター酸は、上記したように、その酸強度の強さから低温でもセルロースの加水分解反応に対して高い触媒活性を示す。また、クラスター酸分子の大きさは、径が1〜2nm程度であるため、原料である植物系繊維材料との混合性にも優れ、効率よくセルロースの加水分解を促進することができる。従って、温和な条件でのセルロースの加水分解が可能であり、エネルギー効率が高く、環境負荷が小さい。
さらに、硫酸等の酸を用いる従来のセルロースの加水分解法と異なり、クラスター酸を触媒として用いる本発明の方法は、糖と触媒の分離効率が高く、容易に分離可能である。クラスター酸は温度によっては固形状態となるため、生成物である糖類との分離が可能である。従って、分離したクラスター酸を回収し、再利用することも可能である。すなわち、クラスター酸をセルロースの加水分解触媒として利用する本発明は、植物系繊維材料の糖化分離におけるコスト削減が可能であり、且つ、環境負荷も小さい。
加水分解工程において、クラスター酸触媒と植物系繊維材料を投入する順序は特に限定されず、例えば、クラスター酸触媒を擬融解状態にして用いる場合には、まず、クラスター酸触媒を投入し、加熱して擬融解状態とした後、植物系繊維材料を投入してもよいし、或いは、クラスター酸触媒と植物系繊維材料を共に投入した後、これらを加熱してクラスター酸触媒を擬融解状態としてもよい。クラスター酸触媒と植物系繊維材料を投入した後、これらを加熱する場合には、加熱前に、クラスター酸触媒と植物系繊維材料を、予め混合攪拌しておくことが好ましい。クラスター酸触媒が擬融解状態となる前にある程度混合しておくことによってクラスター酸と植物系繊維材料との接触性を高めることができる。
一方、クラスター酸触媒を反応有機溶媒に溶解して用いる場合には、予め、クラスター酸触媒を反応有機溶媒に溶解し、クラスター酸触媒有機溶媒溶液を調製しておくことが好ましい。さらには、クラスター酸触媒有機溶媒溶液を予め、加水分解反応温度まで加熱し、この加熱されたクラスター酸触媒有機溶媒溶液中に、植物系繊維材料を投入し、加水分解工程を実施することが好ましい。
加水分解工程においては、セルロースが加水分解されるための水が必要である。具体的には、n個のグルコースが重合したセルロースをn個のグルコースに分解するためには、(n−1)個の水分子が必要である。従って、反応系内には、少なくとも、植物系繊維材料に含まれるセルロース全量がグルコースに加水分解されるのに必要な水分を添加する。好ましくは、植物系繊維材料として仕込まれたセルロース全量がグルコースに加水分解されるのに必要最低限の水分を添加する。過度の水分を添加すると、生成した糖及びクラスター酸が余剰の水分に溶解し、糖分離工程が煩雑となるからである。
一方、クラスター酸触媒を擬融解状態で使用する場合には、反応系内に、クラスター酸触媒が反応温度において擬融解状態となるのに必要な結晶水量分の水分と、仕込まれたセルロース全量がグルコースに加水分解されるのに必要な水分の合計量が存在しない場合、クラスター酸触媒の結晶水がセルロースの加水分解に使用され、クラスター酸触媒の結晶水が減少し、クラスター酸が凝固状態となってしまう。すなわち、クラスター酸触媒と植物系繊維材料との接触性が低下するばかりか、植物系繊維材料とクラスター酸触媒の混合物の粘度が増加し、該混合物を充分に混合するのに時間がかかってしまう。
上記水分の添加時期は特に限定されない。尚、加水分解工程において、加熱により反応系の相対湿度が低下しても、グルコースの加水分解に要する水分が確保できるようにしておくことが好ましい。具体的には、予定の反応温度で反応系の雰囲気が飽和蒸気圧となるように、例えば、予め密閉された反応容器内で、加水分解反応温度で飽和蒸気圧状態を作り、密閉状態を保持したまま温度を下げて蒸気を凝縮させておく方法が挙げられる。
上記したように、加水分解工程において、クラスター酸触媒は、擬融解状態或いは反応有機溶媒に溶解した状態、つまり流動状態である。この流動状態のクラスター酸触媒を含有する反応溶液に対して、植物系繊維材料内部への浸透を促進するクラスター酸触媒浸透促進処理を施す点が、本発明の大きな特徴である。クラスター酸触媒浸透促進処理は、加水分解工程の反応溶液に含有されるクラスター酸触媒の植物系繊維材料内の空孔内への浸透を促進できるものであれば特に限定されない。
具体的なクラスター酸触媒浸透促進処理としては、例えば、超音波振動の印加、一時的な加圧等が挙げられる。中でも、コスト、容易性の観点から、超音波振動の印加が好ましい。
クラスター酸触媒浸透促進処理の実施時期は、加水分解工程中であればよいが、クラスター酸触媒の植物系繊維材料内への浸透促進効果が高いことから、流動状態のクラスター酸触媒と植物系繊維材料とをマクロ的に混合した後、特に物理的にクラスター酸触媒と植物系繊維材料が混合された直後に行うことが好ましい。また、クラスター酸触媒浸透促進処理は、加水分解反応初期においてのみ実施してもよいし、加水分解工程終了時まで実施し続けてもよい。
例えば、図3のような流通式反応装置の場合、加水分解反応槽100の内部には、連続的に、流動状態(擬融解状態又は反応有機溶媒に溶解)のクラスター酸触媒が投入口1から、植物系繊維材料が投入口2(1)〜2(2)から投入され、攪拌翼3によって混合される。反応槽100には、各投入口から投入された植物系繊維材料と流動状態のクラスター酸触媒との、攪拌翼3によるマクロ的混合がほぼ終了する位置に、超音波発生機4(1)〜4(2)が設置されており、クラスター酸触媒と植物系繊維材料を含む反応溶液に超音波振動が印加される。
尚、植物系繊維材料の投入口2(1)における投入量は、例えば、投入口2(2)よりも上流側に設置された粘度センサ5(1)による反応溶液の粘度をフィードバックすることで、最適な条件に維持することができる。同様に、投入口2(2)における投入量は、反応槽100の下流壁直前に設置された粘度センサ5(2)による反応溶液の粘度をフィードバックすることが好ましい。
加水分解工程における反応温度の低下は、エネルギー効率を向上させることができるという利点がある。また、加水分解工程の温度によって、植物系繊維材料に含まれるセルロースの加水分解のグルコース生成の選択性が変化する。反応温度が高くなると反応率が高くなることは一般的なことであり、例えば、特願2007−115407にて報告したように、結晶水率160%のリンタングステン酸を用いたセルロースの加水分解反応においても、50℃〜90℃における反応率Rは温度が高くになるにつれて上昇し、80℃位ではほぼ全てのセルロースが反応する。一方、グルコースの収率は、50℃〜60℃にかけてはセルロースの反応率と同様の増加傾向を示すが、70℃をピークに減少する。すなわち、50〜60℃において高選択的にグルコースが生成するのに対して、70〜90℃においてグルコース生成以外の反応、例えば、キシロース等のその他の糖生成や分解物生成等が進行する。
従って、加水分解の反応温度は、セルロースの反応率とグルコース生成の選択性を左右する重要な要素であり、エネルギー効率の観点から加水分解反応の温度は低いことが好ましい旨を述べたが、セルロースの反応率やグルコース生成の選択性等も考慮して加水分解反応の温度を決定することが好ましい。
加水分解工程における温度条件は、上記したようにいくつかの要素(例えば、反応選択率、エネルギー効率、セルロースの反応率、等)を考慮して適宜決定すればよいが、エネルギー効率、セルロースの反応率、グルコース収率のバランスから、通常、140℃以下、とすることが好ましく、特に120℃以下とすることが好ましい。植物系繊維材料の形態によっては、100℃以下のような低温でも可能であり、その場合には、特に高エネルギー効率でグルコースを生成させることができる。
また、加水分解工程における圧力は、特に限定されないが、クラスター酸触媒のセルロースの加水分解反応に対する触媒活性が高いことから、常圧(大気圧)〜1MPaのような温和な圧力条件下でも効率よくセルロースの加水分解を進行させることができる。
加水分解工程におけるクラスター酸触媒と植物系繊維材料を含む混合物は粘度が高いため、その攪拌方法は、例えば、加熱ボールミル等が有利であるが、一般的な攪拌器でもよい。
加水分解工程の時間は特に限定されず、用いる植物系繊維材料の形状、植物系繊維材料とクラスター酸触媒の比率、クラスター酸触媒の触媒能、反応温度、反応圧力等によって、適宜設定すればよい。
加水分解終了後、反応系の温度を下げると、加水分解工程において生成した糖は、加水分解反応混合物中、糖を溶解する水が存在する場合には糖水溶液として、溶解する水がない場合には析出して固体状態で含有される。生成した糖のうち一部は糖水溶液、残りは固体状態で加水分解反応混合物中に含有されることもある。一方、クラスター酸触媒も温度低下により固体状態(擬融解状態で使用した場合)となっているか、或いは、反応有機溶媒に溶解(反応有機溶媒に溶解して使用した場合)している。
尚、クラスター酸触媒もまた、水溶性を有するため、加水分解工程後の混合物の含水量によってはクラスター酸触媒も水に溶解している。また、加水分解工程の条件や使用する植物系繊維材料によっては、加水分解反応混合物には、残渣(未反応セルロース、リグニンなど)も固体分として含まれる。
次に、加水分解反応混合物を、加水分解工程において生成した糖(主にグルコース)と、クラスター酸触媒とを分離する糖分離工程について説明する。尚、ここでは、加水分解工程において、クラスター酸触媒を擬融解状態にして用いた場合と、反応有機溶媒に溶解して用いた場合とにわけて、糖分離工程を説明する。本発明の糖化分離方法において、糖とクラスター酸を分離する方法は、以下の方法に限定されない。
まず、擬融解状態にして用いた場合について説明する。クラスター酸触媒は、グルコースを主とする糖が難溶乃至不溶である有機溶媒に溶解性を示す。ゆえに、糖にとっては貧溶媒であり、且つ、クラスター酸触媒にとっては良溶媒である有機溶媒を、加水分解反応混合物に添加、攪拌し、クラスター酸触媒を該有機溶媒に選択的に溶解させた後、固液分離することによって、クラスター酸触媒を溶解含有する有機溶媒溶液(液体分)と、糖を含む固体分とに分離することができる。糖を含む固体分には、使用する植物系繊維材料によっては残渣等も含まれる。有機溶媒溶液と固体分とに分離する方法は、特に限定されず、デカンテーション、濾過等の一般的な固液分離方法を採用することができる。
上記有機溶媒としては、クラスター酸触媒にとっては良溶媒であるが、糖にとっては貧溶媒であるという溶解特性を有するものであれば特に限定されないが、糖の有機溶媒への溶解を抑えるためには、該有機溶媒に対する糖の溶解度が0.6g/100ml以下であることが好ましく、特に、0.06g/100ml以下であることが好ましい。このとき、クラスター酸触媒の回収率を高めるためには、該有機溶媒に対するクラスター酸の溶解度が20g/100ml以上、特に、40g/100ml以上であることが好ましい。
上記有機溶媒として、具体的には、例えば、エタノール、メタノール、n−プロパノール、オクタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類などが挙げられる。アルコール類及びエーテル類は好適に用いることができ、中でも、溶解性及び沸点の観点から、エタノール及びジエチルエーテルが好適である。ジエチルエーテルは、グルコース等の糖が不溶であり、且つ、クラスター酸の溶解性が高いため、糖とクラスター酸触媒を分離する溶媒として最適なものの一つである。一方、エタノールもグルコース等の糖が難溶であり、且つ、クラスター酸触媒の溶解性が高いため最適な溶媒の一つである。ジエチルエーテルはエタノールと比較して蒸留において有利であり、エタノールは、ジエチルエーテルよりも入手しやすいという利点を有している。
上記有機溶媒の使用量は、その有機溶媒の糖及びクラスター酸触媒に対する溶解特性や、加水分解反応混合物に含有される水分の量などによって異なってくるため、適宜適当な量を決定すればよい。
加水分解反応混合物と有機溶媒との攪拌は、該有機溶媒の沸点等にもよるが、通常は、室温〜60℃の範囲で行うことが好ましい。また、加水分解反応混合物と有機溶媒との攪拌方法等は特に限定されず、一般的な方法でよい。クラスター酸の回収効率の観点から、攪拌方法としては、ボールミル等による攪拌・粉砕が好適である。
固液分離により得られる固体分は、蒸留水等の水を添加し、攪拌することで、糖が水に溶解するため、さらに固液分離することによって、糖水溶液と、残渣等を含む固体分とを分離することができる。糖及びクラスター酸の回収率を向上させ、且つ、得られる糖の純度を高めるためには、さらに固体分に、上記有機溶媒(糖にとっては貧溶媒であり、且つ、クラスター酸触媒にとっては良溶媒である有機溶媒)を添加、攪拌し、有機溶媒による洗浄を行うことが好ましい(図4参照)。固体分に混入したクラスター酸触媒を除去、回収することができるためである。固体分に有機溶媒を添加した混合物は、加水分解反応混合物同様、固液分離することにより固体分とクラスター酸有機溶媒溶液とに分離することができる。有機溶媒による固体分の洗浄は、必要に応じて、複数回行うことができる(図4参照)。
一方、上記固液分離により得られる液体分(クラスター酸触媒を溶解含有するクラスター酸有機溶媒溶液)は、有機溶媒を除去することによって、クラスター酸触媒と有機溶媒を分離し、クラスター酸触媒を回収することができる。有機溶媒の除去方法としては、特に限定されず、減圧蒸留、凍結乾燥等が挙げられ、中でも減圧蒸留が好ましい。回収されたクラスター酸触媒は、再び、植物系繊維材料の加水分解触媒として利用することができる。固体分の洗浄後、回収されたクラスター酸有機溶媒溶液は、再び、固体分の洗浄に使用することもできる。
尚、加水分解工程における水分量によっては、加水分解反応混合物中に、糖やクラスター酸を溶解含有する水溶液が含まれる場合がある。この場合、例えば、加水分解反応混合物から水分を除去することで溶解している糖及びクラスター酸を析出させた後、上記有機溶媒を添加、攪拌し、固液分離することで、糖を含む固体分と、クラスター酸触媒を溶解含有する有機溶媒とに分離することができる。
特に好ましくは、加水分解反応混合物中に含まれる全てのクラスター酸触媒の結晶水率が100%未満となるように、加水分解反応混合物の水分量を調節することが好ましい。クラスター酸触媒が多くの結晶水、典型的には、標準結晶水量以上の結晶水を有する場合、過剰な水分に生成物である糖が溶解し、クラスター酸有機溶媒溶液側に糖が混入することによって糖の回収率が低下してしまう。クラスター酸触媒の結晶水率を100%未満とすることで、このようにクラスター酸触媒に糖が混入することを抑制することができる。
加水分解反応混合物に含まれるクラスター酸触媒の結晶水率を低下させる方法としては、加水分解反応混合物の水分量を低下させることが可能な方法であればよく、例えば、反応系の密閉状態を解放し、加熱することで、加水分解混合物中の水分を蒸発させる方法や、加水分解混合物中に、乾燥剤等を添加し、加水分解混合物中の水分を除去する方法等が挙げられる。
次に、クラスター酸触媒を反応有機溶媒に溶解して用いる場合について、説明する。
反応有機溶媒として、糖を難溶な有機溶媒を用いることによって、生成した糖は加水分解反応混合物中において析出する。一方、クラスター酸触媒は、反応有機溶媒に溶解しているため、加水分解反応混合物を固液分離することによって、生成した糖を含む固体分と、クラスター酸触媒と反応有機溶媒を含有する液体分とに分離することができる。生成した糖を含む固体分には、使用する植物系繊維材料によっては残渣等も含まれる。加水分解反応混合物を固体分と液体分とに分離する方法は、特に限定されず、デカンテーション、濾過等の一般的な固液分離方法を採用することができる。
固液分離により得られる固体分は、蒸留水等の水を添加し、攪拌することで、糖が水に溶解するため、さらに固液分離することによって、糖水溶液と、残渣等を含む固形分とを分離することができる。
一方、固液分離により得られる液体分は、クラスター酸触媒が反応有機溶媒に溶解したクラスター酸有機溶媒溶液として、再び、植物系繊維材料の加水分解の触媒及び反応溶媒として利用することができる。
糖分離工程において、加水分解反応混合物に、反応有機溶媒と相溶性があると共に、該反応有機溶媒と比較して、クラスター酸触媒の溶解性が高く、且つ、沸点が低い有機溶媒(以下、洗浄用有機溶媒という)を添加、攪拌し、濾過等の手段により、クラスター酸触媒、反応有機溶媒及び洗浄用有機溶媒を含む液体分と、糖を含む固体分と、に固液分離することで、クラスター酸触媒の回収率を高めると共に、得られる糖の純度を高めることができる。
まず、反応有機溶媒と相溶性があると共に、該反応有機溶媒よりもクラスター酸触媒の溶解性が高い、洗浄用有機溶媒を添加することで、より多くのクラスター酸触媒を反応有機溶媒と洗浄用有機溶媒を含む有機相(液相)に溶解させることができる。その結果、クラスター酸触媒の回収率及び糖の純度を向上させることができる。
また、洗浄用有機溶媒の沸点が、反応有機溶媒よりも低いことによって、加水分解反応混合物から分離回収した、クラスター酸触媒及び有機溶媒(反応有機溶媒及び洗浄用有機溶媒)を含有する液体分を蒸留することで、洗浄用有機溶媒と、反応有機溶媒にクラスター酸触媒が溶解したクラスター酸有機溶媒溶液とを分離することができる。このとき、蒸留方法としては、減圧蒸留、凍結乾燥等、一般的な方法を採用することができ、中でも減圧蒸留が好ましい。
洗浄用有機溶媒としては、上記特性を有するものであれば特に限定されないが、特に好ましく用いられるものとして、エタノールが挙げられる。エタノールは、代表的なクラスター酸触媒であるヘテロポリ酸の溶解性が非常に高く、ヘテロポリ酸の回収率向上及び糖の純度向上効果が高い。洗浄用有機溶媒としては、エタノールの他、メタノール、n−プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、等を用いることができる。
洗浄用有機溶媒を添加した加水分解反応混合物を、固液分離することにより得られる固体分は、再度、洗浄用有機溶媒を添加、混合して洗浄し、固液分離することにより、該固体分に含まれるクラスター酸触媒を溶解して含有する洗浄用有機溶媒と、糖を含む固体分とに分離することが好ましい。尚、洗浄用有機溶媒による固体分の洗浄は、必要に応じて、複数回行うことができる。固体分の洗浄後、回収された洗浄用有機溶媒は、再び、固体分の洗浄に使用することもできる。
反応有機溶媒にクラスター酸触媒を溶解して用いた場合においても、加水分解反応混合物中に含まれる全てのクラスター酸触媒の結晶水率が100%未満となるように、加水分解反応混合物の水分量を調節することが好ましい。具体的な方法は、擬融解状態で用いる場合と同様である。
以下、D−(+)−グルコース及びD−(+)−キシロースの定量は、高速液体クロマトグラフ(HPCL)ポストラベル蛍光検出法により行った。また、クラスター酸はICP(Inductively Coupled Plasma)により同定、定量を行った。
[実施例1]
擬融解状態としたヘテロポリ酸の主流路に対して、加熱ライン(温度一定70℃)中で攪拌が可能な流通式反応装置(図3参照)を使用した。尚、ライン中の攪拌翼3は、反応槽100の内容物の搬送にはほとんど寄与せず、攪拌のみに有効な構造となっている。ゆえに、内容物の速度は、各成分(ヘテロポリ酸、植物系繊維材料)の投入速度の和となる。
反応槽100は、擬融解状態のヘテロポリ酸の投入口1を最も上流側に備えており、該ヘテロポリ酸投入口1よりも下流側に、植物系繊維材料の投入口2を複数(2(1)、2(2)備えている。各植物系繊維材料の投入口2は、下流側(該投入口の下流側に設けられた投入口の直前又は反応器の下流壁直前)に粘度センサ5(5(1)、5(2))が備えられており、該粘度センサ5による反応槽100内の反応溶液の粘度が、各植物系繊維材料の投入口2からの繊維材料の投入量にフィードバックされるようになっている。
擬融解状態のヘテロポリ酸(70℃)を上記反応槽100に投入しながら、各投入口2から植物繊維(150μm以下に粉砕)及び水(投入する植物繊維がグルコースに加水分解されるのに必要な分)を投入した。ヘテロポリ酸と各投入口から投入された植物繊維とのマクロ的な混合が終了する位置に設けられた超音波発生機4により、反応溶液に超音波振動を印加した。加水分解反応時間は3時間、加水分解温度は70℃とした。尚、本実施例において、使用したヘテロポリ酸と植物繊維の重量比は2:1(ヘテロポリ酸:植物繊維)だった。
反応槽の下流から排出された加水分解反応混合物は、余分な水蒸気を除きながら、室温まで冷却した。
次に、図4に示すように、容器内の加水分解反応混合物に500mlの2回洗浄に使用したエタノールを添加して30分間攪拌した後、濾過し、濾液1及び濾過物1を得た。濾液1(ヘテロポリ酸エタノール溶液)は回収した。一方、濾過物1には、さらに、500mlの1回洗浄に使用したエタノールを添加し、30分間攪拌した後、濾過し、濾液2及び濾過物2を得た。濾過物2に、500mlの新品エタノールを添加し、30分間攪拌した後、濾過し、濾液3及び濾過物3を得た。得られた濾過物3には蒸留水を添加し、10分攪拌した。得られた水溶液を濾過し、糖水溶液と残渣を得た。
残渣を電磁誘導加熱及び酸素導入により完全に酸化し、生成したCOをNDIR(NonDispersive InfraRed)分析装置を用いて定量し、残渣中の炭素量を求めた。残渣の炭素量から反応率を算出したところ、91%だった。
尚、ここで、反応率は、以下のようにして算出した。
まず、ホロセルロース(セルロース+ヘミセルロース)中の炭素含有率が44.5wt%、リグニンその他の炭素含有率が71.0wt%であると想定し、植物系繊維材料(原料)中の炭素含有率から、該植物系繊維材料中のホロセルロースとリグニンその他の比率を求め、該植物系繊維材料(原料)に含まれるホロセルロースとリグニンその他の重量を算出した。尚、原料中の炭素含有率は、上記残渣同様、NDIRを用いて算出した。次に、反応後の残渣の重量及び上記にて求めた炭素量から、残渣中に残っているホロセルロース量を計算し、(残渣中のホロセルロース量)/(原料中のホロセルロース量)×100%(反応率)を求めた。
[比較例1]
実施例1において、反応槽内の反応溶液に超音波振動を印加しないこと以外は、同様にして、植物繊維を糖化分離した。反応率は45%であった。
[結果]
比較例1(反応率45%)と比べて、実施例1(反応率91%)は、反応率が大幅に向上した。これは、加水分解工程において、反応溶液に超音波振動を印加することにより、植物系繊維材料内部へのヘテロポリ酸の浸透が促進され、植物系繊維材料内部のセルロースの加水分解が効率よく進行したためと考えられる。
ヘテロポリ酸のケギン構造を示す図である。 クラスター酸触媒の結晶水率と見かけの融解温度の関係を示すグラフである。 本発明において使用可能な流通式反応装置の一構成例を示す図である。 本発明の糖化分離方法における糖分離工程のフローチャートの一例である。
符号の説明
1…流動状態のクラスター酸触媒の投入口
2…植物系繊維材料の投入口
3…攪拌翼
4…超音波発生機
5…粘度センサ
6…攪拌翼
100…反応槽

Claims (2)

  1. 植物系繊維材料を加水分解し、グルコースを主とする糖を生成し、分離する植物系繊維材料の糖化分離方法であって、
    擬融解状態のクラスター酸触媒を用いて、前記植物系繊維材料に含まれるセルロースを加水分解し、グルコースを生成させる加水分解工程を備えており、
    該加水分解工程において、擬融解状態の前記クラスター酸触媒以外に反応溶媒が含まれなくても反応系が流動状態を呈する量の前記クラスター酸触媒、及び、前記植物系繊維材料を含む反応溶液に、超音波振動を印加することを特徴とする、植物系繊維材料の糖化分離方法。
  2. 前記加水分解工程において、前記クラスター酸触媒と前記植物系繊維材料の重量比が、1:1〜4:1の範囲である、請求項1に記載の糖化分離方法。
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