JP5039907B2 - 非平面状基体のためのプラズマ被覆装置 - Google Patents

非平面状基体のためのプラズマ被覆装置 Download PDF

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Description

関連出願
本願は、2004年3月9日に出願された米国特許仮出願No.60/551,931の利権を主張するものであり、その全内容を参考のためここに組み入れる。
本発明は、一般に物品及び基体を被覆するための方法に関する。詳しくは、本発明は、プラズマ蒸着耐摩耗性被覆を有する非平面状物品及び非平面状プラスチック基体をプラズマ被覆するための方法に関する。
機能性被覆で基体を被覆するために種々の技術が存在する。慣用的な化学蒸着(CVD)及びスパッタリング及び蒸着のような物理的蒸着技術が用いられてきた。しかし、これらの技術は高い蒸着温度を必要とし、そのため被覆できる基体が限定され、更にそれに含まれる蒸着速度が非常に低い。最近これらの短所の幾つかを克服するためにプラズマ促進化学蒸着(PECVD)法が開発されてきた。PECVDは、一般にCVDでは使用できないプラスチックのガラス転移温度よりも低い温度でポリカーボネートのようなプラスチック基体に材料を蒸着するのに用いることができる。PECVDでは、適用した電場がイオン化物質の形成を促進し、遥かに大きな%でイオン化物質を与え、それにより、低い蒸着温度、例えば室温のような低い温度を使用することが出来る。しかし、PECVDは、UV吸収性及び耐摩耗性層を被覆したポリカーボネートを含めた多くの用途で商業的に実施することができるような充分大きな蒸着速度を依然として一般に与えてはいない。更に、PECVDは、大きくて複雑な形をしたものに対しては実証されておらず、むしろ平面状基体、又は眼科用レンズのような非常に穏やかな曲率を有する非平面状基体に限定されてきた。
非平面状プラスチック基体上に均一な性質を有する被覆を形成する試みとして、或る装置では基体に対しプラズマ源を移動させ、且つ/又は基体がプラズマ源を通って移動する間に処理パラメーターを変化させる。これらの方法は、均一な厚さの被覆を生ずることを示してはいるが、それらは均一な摩耗抵抗及び接着性を有する被覆は与えていない。これらの方法は、面倒で高価であり、夫々の部品設計について異なった処理パラメーターを必要とする欠点も有する。被覆基体が外の天候に曝される自動車窓のような多くの用途では、被覆が長い期間UV放射線に曝されても均一な摩耗抵抗を維持することも必須条件である。しかし、多くのプラズマ蒸着した有機珪素被覆は、UVに曝されると劣化し、耐摩耗性が悪くなる結果になることが明らかになっている。
(要約)
一般に、本発明は、実質的に均一な厚さを有し、平均値の約±0.25の範囲にある△曇り(%)を有する実質的に均一な摩耗抵抗を有するプラズマ蒸着耐摩耗性被覆を有する非平面状物品に関する。
本発明は、更に、非平面状基体を被覆するための方法に関する。その方法は、一つ以上の静止した膨張熱プラズマ(ETP)源[stationary expanding thermal plasma(ETP)source]からプラズマを発生させ、第一組の気化試薬をプラズマ中に注入し、基体上に第一層を形成し、そして第二組の気化試薬をプラズマ中に注入し、前記第一層を覆って二つ以上の被覆層を形成することを含む。プラズマのイオンフラックスは、プラズマ源から基体までの作用距離(working distance)(WD)の範囲に亙って実質的に均一な性質を与えるように調節する。作用距離は、アノードと基体との間の距離として定義される。
本発明の態様により、次の利点の一つ以上を与えることができる。或る実施では、被覆処理中、又は物品が異なった形を有する場合、夫々の物品について処理パラメーターを変化させる必要がない。被覆処理中、特に基体を連続的やり方でプラズマ源を通って移動させる場合、プラズマ源を調節する必要もなく、それによりその処理の設定費用が低くなる。本発明の種々の実施法は、直接ETP源の方へ向いていない基体の表面の被覆も行うことができる。
本発明の更に別の特徴及び利点が、次の記載及び特許請求の範囲から容易に明らかになるであろう。
詳細な記述
先ず図1に関し、そこには被覆場所10が示されており、そこでは基体12が、矢印13で示されているように、被覆場所を通って一定の直線経路に従って移動する。基体12は自動車乗り物のための部品でもよい。例えば、基体はプラスチックから作られた後部窓又は屋根のパネルでもよい。基体12はポリカーボネートを含んでいてもよい。
基体12を形成するのに適したポリカーボネートは、一般に次の式の反復単位を含む:
式中、Rは、重合体生成反応で用いられた二価フェノールの二価芳香族ラジカル(例えば、ビスフェノールAとしても知られている2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンのラジカル)であるか;又は有機ポリカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等)である。これらのポリカーボネート樹脂は、一種類以上の二価フェノールと、ホスゲン、ハロホルメート、又はカーボネートエステルのようなカーボネート前駆物質との反応により製造することができる芳香族カーボネート重合体である。用いることができるポリカーボネートの一つの例は、コネチカット州フェアフィールドのゼネラル・エレクトリック社(General Electric Company)(GE)により製造されているレキシアン(LEXAN)(登録商標名)である。
芳香族カーボネート重合体は、例えば、米国特許第3,161,615号、第3,220,973号、第3,312,659号、第3,312,660号、第3,313,777号、第3,666,614号、第3,989,672号、第4,200,681号、第4,842,941号、及び第4,210,699号明細書(それら全ては参考のため全体的にここに入れてある)に記載されているような方法により製造することができる。
基体12には、カーボネート前駆物質、二価フェノール、及び二カルボン酸又はそれのエステル形成誘導体を反応させることにより製造することができるポリエステルカーボネートが含まれていてもよい。ポリエステルカーボネートは、例えば、米国特許第4,454,275号、第5,510,448号、第4,194,038号、及び第5,463,013号明細書(それらは参考のため全体的にここに入れてある)に記載されている。
基体は、熱可塑性又は熱硬化性材料を含んでいてもよい。適当な熱可塑性材料の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリメタクリレートエステル、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、フッ素含有樹脂、及びポリスルホンが含まれる。適当な熱硬化性材料の例には、エポキシ及び尿素メラミンが含まれる。
アクリル重合体は、基体12を形成することができる別の材料である。アクリル重合体は、メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のような単量体から製造することができる。ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、及びn−ブチルアクリレートのような置換アクリレート及びメタクリレートも用いることができる。
ポリエステルも基体12を形成するのに用いることができる。ポリエステルは、有機ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、ドデカン二酸等)又はそれらの無水物を、第一級又は第二級ヒドロキシル基を含む有機ポリオール(例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノール)でポリエステル化することにより製造することができる。
ポリウレタンは、基体を形成するのに用いることができる別の種類の材料である。ポリウレタンは当分野でよく知られており、ポリイソシアネートとポリオールとの反応により製造される。有用なポリイソシアネートの例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、MDI、イソホロンジイソシアネート、及びビウレット、及びこれらジイソシアネートのトリイソシアヌレートが含まれる。有用なポリオールの例には、低分子量脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、脂肪アルコール等が含まれる。
基体12を形成することができる他の材料の例には、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ガラス、バロックス(VALOX)(登録商標名)(ゼネラル・エレクトリック社から入手することができるポリブチレンフタレート)、キセノイ(XENOY)(登録商標名)〔ゼネラル・エレクトリック社から入手できるレキサン(LEXAN)(登録商標名)とバロックスとの混合物〕等が含まれる。
基体12は、慣用的やり方で、例えば、射出成形、押出し、冷間形成、真空形成、吹き込み成形、圧縮成形、転写成形、熱形成等により形成することができる。物品はどのような形をしていてもよく、完成した市販物品である必要はない。即ち、それはシート材料又はフイルムでもよく、それを最終物品へ切削又は寸法合わせをするか、或は機械的に成形する。基体は透明でも、透明でなくてもよい。基体は堅くても可撓性でもよい。基体は他の機能性被覆を含んでいてもよい。例えば、基体は、シリコーン硬質被覆(hardcoat)及び下塗り剤を含んでいてもよく、それらの機能は、接着性、UV濾波性、及び幾らかの耐摩耗性を与えることにある。硬質被覆として用いることができる有機珪素組成物の例は、一般式:
SiZ(4−n)
(式中、Rは、一価炭化水素ラジカル、又は一価ハロゲン化炭化水素ラジカルを表し、Zは加水分解可能な基を表し、nは0〜2の間で変化させることができる)
により表される化合物である。特にZは、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、又はアリールオキシのようなものであるのが典型的である。そのような化合物は、例えば、シュレーテル(Schroeter)その他による米国特許第4,224,378号明細書(それらの全内容は参考のためここに入れてある)に記載されている。
用いることができる有機珪素の別の例には、式:
Si(OH)
(式中、Rは、約1〜約3個の炭素原子を有するアルキルラジカル、ビニルラジカル、3,3,3−トリフルオロプロピルラジカル、γ−グリシドキシプロピルラジカル、γ−メタクリロキシプロピルラジカルを含む群から選択される)
を有するシラノールが含まれ、そのシラノールの少なくとも約70重量%はCHSi(OH)である。そのような化合物は、米国特許第4,242,381号明細書(これは参考のため全体的にここに入れてある)に記載されている。
他の機能性被覆には、無機UVフィルター、湿分及び酸素障壁、赤外線(IR)反射性被覆、反射防止用(AR)被覆、透明伝導性酸化物被覆(TCO)、平面化層、曇り防止剤、ブラックアウトインク(black out ink)等が含まれる。典型的なUVフィルターには、ZnO、ZnS、TiO、CeO、SnO、及びこれらの材料の組合せが含まれる。それらは、UV吸収性、水浸漬安定性、及び電気伝導性を改良するため、例えば、Al、In、F、B、及びNがドープされていてもよい。典型的な湿分及び酸素障壁には、SiO、Si、TiO、Al、AlN、及びこれらの材料の組合せが含まれる。典型的なIR反射性被覆には、SiO、Si、TiO、ZnO等のような屈折率の大きな及び小さな誘電体材料の多層積層体が含まれる。別のIR反射性被覆には、これら誘電体材料と、Al及びAgのような金属との多層積層体が含まれる。TCOの例には、アルミニウムドープZnO(AZO)、インジウムドープZnO(IZO)、インジウム錫酸化物(ITO)等が含まれる。
基体は、もし望むならば、例えば、種々の水性石鹸及びクリーナー、或はイソプロピルアルコールのような溶媒で洗浄し、場合により約80℃で一晩真空乾燥した後、プラズマ蒸着にかけてもよい。基体は、プラズマ前処理クリーニング工程(「エッチング」とも呼ばれている)によりその場でクリーニングすることもでき、その場合、蒸着する前に基体の表面にある汚染物を除去するか又は酸化するため、アルゴン又はアルゴンと酸素を用いてプラズマを発生させる。
被覆場所10は、その被覆場所10の両側上にETP源14の配列体のみならず、付随する試薬マニホルド、酸素マニホルドを含む。ETP源14の配列体と基体12の表面との間の、対称面15(又は被覆場所10の両側に位置する一対のETP源を通る対称線)に沿って測定した距離を、作用距離(WD)と定義し、対称面15と基体の局部表面との角度を、入射角(AOI)として定義する。被覆場所10には、基体が被覆場所に入る前にそれを加熱するため、被覆場所の上流に位置する一つ以上のヒーターを伴っていてもよい。更にプラズマ被覆能力を与えるように、被覆場所10の下流に追加の被覆場所を配置してもよく、その場合付加的ヒーターを、それらの場所の間に配置していてもよい。
被覆場所10を作動させている間、ETP源14に、アルゴンのような不活性ガスを供給するのが典型的である。ETP源のカソードに電圧を印加し、アルゴンを部分的にイオン化し、それが(夫々の源から)基体12の方へ向けられたプラズマジェットとして真空室中に放射される。
イオン化されるアルゴンの量は、ラングミュアープローブにより測定することができ、今後アンペア(A)で測定した全イオンフラックスとして言及する。プラズマ源からのイオンフラックスを測定するためにラングミュアープローブを使用することは、例えば、リーベルマン(Lieberman)及びライテンバーグ(Lightenberg)による「プラズマ放電及び材料処理の原理」(Principles of plasma discharge and materials process)、ワイルリー・インターサイエンス(Wilely Interscience)(1994)、及びスイフト(Swift)による「プラズマ診断のための電気的プローブ」(Electrical Probes for Plasma Diagnostics)、アメリカン・エルセビア(American Elsevier)(1969)に記載されている。
下に記載するように、サイエンティフィック・システムズ社(Scientific Systems,Ltd)からスマートプローブ(martProbe)(商標名)のような市販プローブを用いた。これは、オート・リニアー・ドライブ(auto linear drive)を含む自動化ラングミュアー・プローブ装置で、それは広い範囲のプラズマパラメーターについての空間的或は時間的に解析された測定値を与えた。プローブは、プラズマジェットを横切って走査することができるリニアー・ドライブ上、アークに対し垂直に配置された。イオンフラックスは、プラズマ源から約25cmの所、即ち、平均WDと同じ位置で測定した。ラングミュアー・プローブの活性部分は、1本のタングステンワイヤーであり、それをプラズマ中へ挿入し、DCバイアスを掛けてプラズマからの電流を引き出す。プローブ先端の電圧(バイアス電圧)を変化させ、プラズマから引き出された電流を測定することにより、特性電流・電圧(I−V)曲線を得る。このI−V曲線から、種々のプラズマパラメーターを誘導することができる。後の計算で用いられるI−V曲線から得られる重要な測定パラメーターは、mA/cmで測定された不正確なイオンフラックスPiである。アークを特徴付けるため、未調整イオンフラックスを、与えられたWDで膨張熱プラズマを横切る半径方向の距離の関数として測定する。得られたデーターをガウス分布に適合させ、曲線の下の面積(Ar)と、この適合から得られた幅(Wr)から、
として全イオンフラックスを計算することができる。全イオンフラックスは、この与えられたWDの所にある無限大平面を通過するアルゴンイオン及び電子の数を表し、アンペア[A]の単位で表されるであろう。この全イオンフラックスを、このガウス分布の幅と一緒にして、膨張熱プラズマ処理条件を記述し、比較するのに用いることにする。
被覆用試薬及び酸素は、夫々のマニホルドに分布したオリフィスにより蒸気状態にして室中に注入する。接着性耐摩耗性層を形成するためにプラズマ中に注入することができる材料の例には、有機珪素の外、エチルベンゼンのような炭化水素及びブタンのような直鎖炭化水素が含まれる。ここで用いられる「有機珪素(organosilicon)」とは、少なくとも一つの炭素原子に少なくとも一つの珪素原子が結合した有機化合物を包含していることを意味し、シリコーン材料のみならず、一般にシラン、シロキサン、シラザン、及び有機シリコーンと呼ばれている材料が含まれる。本発明の方法及び物品に適した有機珪素の多くは、K.サウンダーズ(Saunders)による「有機重合体の化学」(Organic Polymer Chemistry)〔チャップマン・アンド・ホール(Chapman and Hall Ltd.)、1973〕に記載されている。
接着性層及び/又は耐摩耗性層を形成するための有機珪素前駆物質の例には、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン(V−D4)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)、及びヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、及びビニルトリメチルシラン(VTMS)が含まれる。
機能性被覆及びプラズマ中に注入することができる付随前駆物質の例には次の物が含まれる:ジメチル亜鉛(DMZ)、ジエチル亜鉛(DEZ)、亜鉛蒸気、四塩化チタン、チタンアルコキシド、セリウムアルコキシド及びジケトネートからの無機UVフィルター;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、アルミニウムアルコキシド、アルミニウム蒸気、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、インジウムジケトネートからのドーパント及び誘電体;ビニルトリメチルシラン(VTMS)、シラン、錫アルコキシド及びジケトネートからのTCO。有用な酸化剤には、酸素、水、アンモニア、硫化水素、ヘキサメチルジシルチアン、フッ化物、CF、及びNFが含まれる。
非平面状三次元的部品の耐摩耗性を改良するため、基体の表面の全領域を、充分な量の耐摩耗性材料で被覆することが望ましい。耐摩耗性及び被覆の厚さは、夫々イオンフラックスに関係している。更に、プラズマ中のイオン密度は、ガウス分布の形になっているのが典型的であり、その幅は室中の圧力に依存する。従って、これらの因子全てが充分な耐摩耗性を与えるのに適切な厚さ及び被覆特性を有する被覆を得るために考慮されなければならない。このことは、ETP源14を具えた被覆場所10で達成することができる。もし酸素流量及びETP源14のイオンフラックスが充分大きく、ETP源間に適切な間隔が用いられているならば、被覆場所10は、処理パラメーターを変化させる必要なく、作用距離及び角度の両方の広い範囲に亙って、均一な性質を有する被覆を生成させることができる。耐摩耗性は、ASTM D1044テーバー(Taber)摩耗試験のような充分容認された方法を用いて非平面状三次元的表面で測定することは困難なので、基体に沿った異なる点が、ETP源から異なった作用距離の所にあるように、プラズマ源に対し種々の角度で配置した平らなシートについて耐摩耗性を測定した。この傾斜させた部品と、異なる作用距離との組合せを用いて、次に非平面状三次元的形態のものを表すことができる。
被覆場所10では、最初にSiOxCyHz層を蒸着し、それは基体12及び次の耐摩耗性層によく接着する。次に被覆場所10又は別の同様な場所で、SiOxCyHzの第二層を蒸着し、希望の硬度及び厚さの表面被覆を与え、均一な耐摩耗性を達成する。
第一層の酸素含有量は、第二層のそれよりも低いのが典型的である。耐摩耗性試験は、擦り傷及び衝撃損傷の両方を与える。従って、一層堅い表面被覆は一層よい擦り傷抵抗を与える結果になる場合でも、表面被覆は衝撃による破損を回避するのに適切な厚さを有する。従って、装置10は、希望の耐摩耗性を有する丈夫な被覆を達成するのに充分な硬度及び厚さを有する被覆を蒸着する。
更に、接着層又は表面被覆のいずれかが厚過ぎるならば、二つの層の間の接着性は、それら層の間の界面で誘発される歪みのために低下することがある。もし蒸着温度が低過ぎるか又は高過ぎると、接着問題が起きることもある。
特別な実施として、被覆場所10又は一対の被覆場所10により、先ず約1μの厚さの接着性層を蒸着し、次に約1〜3μの範囲の厚さを有する耐摩耗性層を蒸着する。
本発明の種々の特徴を、次の実施例により例示するが、それらの実施例は本発明の範囲に対する限定として見做されるべきではない。
例1
この例では、ゼネラル・エレクトリックからのレキサンMR10シートを、プラズマ重合及び酸化D4で被覆した。被覆処理では、二つの静止ETP源14を、それらの中心線が平行に約16cm離れて配置されるように配列した。この構成を用いて、基体の約64inを被覆した。4つの4in×4in試料39を、図2に示したように、アルミニウム保持器上に取付けた。それら試料を1T(右上)、1B(右下)、2T(左上)、及び2B(左下)として記号を付けた。基体を約2.3cm/秒の走査速度でETP源14に対し垂直に移動させた。四角形40は、珪素チップの典型的な位置を示している。これらのチップの上の被覆厚さを、偏光法により測定した。珪素チップは、被覆厚さのプロファイルを生じさせる実験中、垂直及び水平の両方の直線上で基体に沿って1in毎に配置した。陰影42は、65℃の水に3日間浸漬する前及び後で被覆の接着性を測定した場所である。リング44は、ASTM D1044摩耗試験後のテーバー輪の軌跡を示している。テーバー摩耗試験は、CS10F輪を用い1000サイクル行なわれた。リング44中の90°の角度で4つの場所で△曇りを測定した。垂直の点線は、基体を移動させた時の夫々のETP源14の中心線の通路を示している。
4つの4in×4in試料39の各々を、表1に示したように、蒸着前に約118℃に予熱した。予熱中各試料の温度及び被覆処理を、K型熱電対を用いて監視した。被覆は2工程で適用した。第一層についてのプラズマ条件は次の通りであった:1.65標準リットル/分(slm)のアルゴン、0.3slmの酸素、0.19slmのD4、及び70A、得られたイオンフラックス41.7A。第二層については、酸素流を1.0slmに増大した以外には条件は同じであった。WDは約25.5cmであった。被覆の間の時間は約1分であり、それにより両方の層の蒸着温度を本質的に同じにした。これらの条件での三つの実験は、表1中で例1a、1b、及び1cとして示してある。
表1には、例番号、試料の位置、WD、各ETP源へのアルゴン流、第一及び第二層の指定、基体を横切る3つの位置で測定した予熱温度、各ETP源への酸素流、各ETP源へのD4流、二つのETP源への電流、平均初期温度(予熱温度)、被覆処理中の最高温度、被覆処理中の温度変化(△T)、被覆の厚さ、テーバー摩耗試験(ASTM D1044)中の曇りの変化、初期接着性、ASTM D3359クロスハッチ・テープ試験(cross hatch tape test)により測定した65℃の水に3日間浸漬した後の接着性が示されている。この場合も、基体上のテーバー摩耗輪軌跡及び水浸漬クロスハッチの位置が図2に示されている。テーバー摩耗試験で測定された△曇りが低い程、耐摩耗性が大きいことに相当する。自動車嵌込み窓ガラスについての全国輸送高速道路交通局(National transportation Highway Traffic Administration)(NHTSA)基準はテーバー△曇りは2%未満である。全ての試料は約2.1μの被覆厚さを有し、テーバー△曇りは約1.7%で、水浸漬前の接着性は5Bで、浸漬後は4Bであった。
例2
処理条件は例1の場合と同様であった。但しWDを31cmに増大した。最終被覆厚さは2.1μで、例1と同じであったが、平均テーバー△曇りは約3%に増大し、二つの実験については約4%に増大した。このように、希望の被覆厚さを得ることは、必ずしも良好な耐摩耗性を有する被覆を確実に与えるものとは限らず、特にWDを大きくして製造した被覆の場合にはそうである。従って、閾値WDを越えるWDを用いた非平面状部品は、被覆厚さが均一であったとしても、均一な耐摩耗性を持たないことがある。
例3
処理条件は例1の場合と同様であった。但し基体保持器を約20°に傾斜させ(図3に示したように)、基体の上端の所でのWDが31cm、下端で24cmであった。約2.1μの均一な被覆厚さが得られたが、テーバー△曇りは下端(即ち、作用距離が一層短い所)での約4%から上端での10%まで増大した。このように、例1〜3を比較すると、これらの処理条件で被覆したフラットな又は傾斜した部品の両方で、作用距離が比較的長くなるとテーバーは悪くなることを示している。
例4
処理条件は例2のものと同様であったが、基体上に4つの層を蒸着し、全被覆厚さを約4μとした。層2〜4についての条件は、例2の層2の場合と同じであった。従って、耐摩耗性層の組成は同じままであったが、被覆厚さだけが変化した。テーバー△曇りは、2.4%〜3.1%であった。このように、厚さを増大しただけでは、2%未満のテーバー△曇りを与える結果にはならなかった。
例5
この例では、耐摩耗性層2〜4についてアルゴン流を2.5slmに増大し、それはイオンフラックスを52.5Aに増大した。予熱温度を約75℃に低下し、第2〜第4層の時の酸素流量は2slmであった。他の条件は例4の場合と同じであった。3つの異なった試料について夫々31、20、及び25cmのWDを用いて3つの異なった実験を行なった。得られた被覆厚さは、例4の場合と同様であり、夫々4.5、4.7、及び5.4μであった。テーバー△曇りは、夫々1.2%、1.1%、及び1.2%に改善した。
例6
処理条件は例5のものと同様であった。基体の配列は図4に示してある。12aT、12aB、12bT、12bB、12c、及び12dの6つの傾斜した基体、即ち、試料が存在する。4つの基体12aT、12aB、12bT、12bBは20°の角度にしてあり、24〜31cmのWDを有する。他の二つの基体12c及び12dは、基体12aT、12aB、12bT、12bBの両側に立ててある。基体12c、12dは、4in×6inであり、21〜31cmのWDでETP中心線に平行に置かれている。図4Aでは、設定は移動方向に沿って見たものであり、従って、走査方向はその頁を出入るする方向である。図4Bでは、走査方向を上下にしてETP源から見たように基体が示されている。20°に傾斜した基体12aT、12aB、12bT、12bBについては、被覆厚さは約4.6〜4.9μであり、テーバー摩耗は約1.4%〜2.0%であった。ETP中心線に平行な2つの基体12c及び12dは、前面(即ち、基体12aT、12aB、12bT、12bBの方向に向いた側)では、夫々約2.8μm及び2.5%の平均厚さ及びテーバーを有し、後面(即ち、基体12aT、12aB、12bT、12bBから離れる方向を向いた側)では、夫々約3.1μm及び3.5%の平均厚さ及びテーバーを持っていた。
例7
処理条件は例6のものと同様であった。図5に示したように、6つの4in×4in試料、即ち、基体12e、12f、12g、12h、12i、及び12jを、試料保持器50の前面及び後面の上に種々の角度で取付けた。2つの基体、12f、12hは、基体保持器に対し夫々50°及び60°の角度にし、「前面」の上にあるものとして標識を付け、ETP14の方に向けてある。2つの基体12g、12eは夫々120°及び130°の入射角度をもち、「後面」の上にあるものとして標識を付け、プラズマから離れて行く方向に向けてある。2つの基体12i、12jは、夫々前面試料12h、12fの夫々の基底の所にフラットに横たえてある。基体12e〜12jについてのWDは19.8cm〜27.8cmの範囲にあった。走査方向は上下であり、実験は2度行われたことに注意されたい。
フラット基体12i、12j、前面基体12f、12h、及び後面基体12e、12gについての平均厚さは、夫々4.8μm、4.7μm、及び3.9μmであった。フラット基体12i、12j、前面基体12f、12h、及び後面基体12e、12gについての平均テーバー△曇りは、夫々2.2%、2.1%、及び7.9%であった。このように、これらの処理条件を用いて、大きな範囲のWD及び入射角について、優れたテーバー耐摩耗性が得られ、後面基体12e、12gでさえも良好な耐摩耗性を持っていた。
例8
この場合には、例1の被覆条件を用いて、ゼネラル・エレクトリックにより製造されたレキサンMR7シート及び石英スライドを、約2μのD4で被覆した。プラズマ被覆したMR7のUV照射前の耐摩耗性は2%より低かった。吸光度(absorbance)を厚さ(μ)で割ったものとして定義されている被覆のUV吸収性(absorbency)は、石英スライドで測定して300nm(UVB)で0.012μm−1、350nm(UVA)で0.007μm−1であった。被覆をQUVA及びQUVB強制耐候試験にかけた。テーバー摩耗を約1000時間毎に測定した。4000時間のQUVB及び2500時間のQUVA試験後に、性能の劣化は観察されなかった。
例9
この例では、例8の条件を用いた。但し、有機珪素はTMDSOであった。被覆厚さは約1.5μであり、初期テーバー摩耗は約4%であった。被覆吸光度は300nmで0.057、350nmで0.031であった。QUVBに露出した後の耐摩耗性は、1000、2000、4000、及び5000時間で、夫々約6%、7%、9%、及び17%であった。
例10
この例では、慣用的PVCVD反応器で適用したTMDSOで被覆した基体を評価した。被覆厚さは約4μであり、初期テーバー摩耗は約2%であった。被覆吸光度は300nmで0.37、350nmで0.1であった。QUVBに露出した後の耐摩耗性は、1000及び2000時間で、夫々約12%及び20%であった。2550時間のQUVA試験後、耐摩耗性は12%へ劣化した。
例8〜10を比較すると、耐候性試験で被覆のテーバー耐摩耗性の劣化は、被覆のUV吸光度に関係していることが実証される。それらは、更に、被覆のこの性質が、蒸着した被覆前駆物質のみならず、その材料を蒸着する方法にも関係していることを実証している。最後に、例8は、本発明によるETP処理により、強制耐候性試験に対し長期安定性を有する被覆を蒸着することができることを実証している。
他の態様も次の特許請求の範囲内に入る。
図1は、膨張熱プラズマ源を具えた被覆場所の上面図である。 図2は、基体設定の前面図である。 図3は、同じ入射角にした2つの基体の側面図である。 図4において、図4Aは、2つの異なった入射角度で取付けた4つの基体の上面図であり、図4Bは、図4Aの4つの基体の前面図である。 図5は、膨張熱プラズマ源に対し異なった角度で取付けた6つの基体の側面図である。

Claims (10)

  1. 非平面状基体を被覆する方法であって、該方法が、
    一つ以上の静止した膨張熱プラズマ源からプラズマを発生させる工程と、
    前記プラズマ中に第一組の気化した試薬を注入して基体上に第一被覆を形成する工程と、
    前記プラズマ中に第二組の気化した試薬を注入して前記第一被覆上に一つ以上の被覆を形成する工程とを有しており、
    前記プラズマがイオンフラックスを決定するアルゴン流れとアーク電流を有しており、
    均一な被覆特性を与えるように前記イオンフラックスを調節する工程をさらに有している、方法。
  2. 前記均一な被覆特性が被覆の厚さである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記均一な被覆特性が被覆の耐摩耗性である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記耐摩耗性被覆がプラズマ重合した有機珪素である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記有機珪素は、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ビニルトリメチルシラン及びジメチルジメトキシシランからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記耐摩耗性被覆が二つ以上の層として蒸着される、請求項3に記載の方法。
  7. 第一層が他の層の酸素含有量よりも低い酸素含有量を有する、請求項6に記載の方法。
  8. 第一層以外の層が同じ組成を有する、請求項7に記載の方法。
  9. 前記耐摩耗性被覆の層が300nmで約0.02μm−1の有機UV吸収剤を含む、請求項6に記載の方法。
  10. 前記プラズマを発生させる工程及び気化試薬を注入する工程が、1.65〜2.5slmのアルゴン流、0.3〜2slmの酸素流、0.19slm以下のオクタメチルシクロテトラシロキサン流、70アンペア以下のアーク電流と共に行われる、請求項1に記載の方法。
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