JP5039801B2 - 搭状構造物及び接合方法 - Google Patents
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Description
煙突は、地上に立設された筒身1を鉄塔2及び水平材3で支持した構成を有し、筒身1と水平支持部材4との間には筒身1の振動を抑制するための複数の鋼材ダンパ6aが設けられている。
図21の(c)にその要部詳細(図21の(b)のC部)を示すように、筒身1に設けた一対の保持体6−6の間に、基端を水平支持部材4に固定された鋼材ダンパ6aの下端が挿入された構成で、筒身1の振動をこの鋼材ダンパ6aの変形によって吸収し減衰させるようになっている。つまり、この鋼材ダンパ6aは、地震や風などの外力により、筒身1と鋼材ダンパ6aが固定されている水平支持部材4との間に相対変位が発生する構造物に適用できる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、筒身1への溶接を少なくしつつ、補強リング7自体の荷重による鉛直荷重を支持するとともに、筒身1からの水平力による水平荷重を補強リング7を介して鋼材ダンパ6aあるいは後述する実施形態のストッパ部材5等の制振部材に伝達できる搭状構造物を提供することを目的とする。
本発明の塔状構造物は、複数の鉛直荷重支持部材と複数の水平荷重伝達部材とをさらに備えている。
鉛直荷重支持部材は、塔状構造物本体の外周壁に間隔を空け、かつ外周壁から外側に向けて突出して設けられ、補強部材を載せることにより補強部材の鉛直方向の荷重を支持する。
また、水平荷重伝達部材は、塔状構造物本体と補強部材を繋ぎ、塔状構造物の揺れによる水平力を補強部材に伝達する。
また、本発明の塔状構造物は、鉛直荷重支持部材と水平荷重伝達部材を個別に設けているので、前者については補強部材による鉛直荷重のみを考慮した設計をすればよく、また、後者については塔状構造物本体の揺れによる水平荷重のみを考慮した設計をすればよい。したがって、前述した従来の溶接部のように、鉛直方向の負荷と水平方向の負荷の両方の複合外力を考慮するのに比べて、設計が容易になる。
塔状構造物本体の揺れによる水平力がこの水平荷重伝達部材を介して補強部材に伝達されると、補強塔と補強部材の間に介在する制振部材により揺れが抑制される。
以上の水平荷重伝達部材を取り囲むとともに、塔状構造物本体と補強部材の間に介在される充填伝達体を備えることが好ましい。この充填伝達体も水平荷重伝達部材を構成する。この充填伝達体は、水平荷重伝達部材の変形を拘束し、さらに水平荷重を伝達する機能を奏する。したがって、充填伝達体を設けると、水平荷重伝達部材の数量を低減できる。充填伝達体は例えばコンクリート、モルタルから構成される。
つまりこの水平荷重伝達部材は、塔状構造物本体と補強部材の間に介在される充填伝達体と、塔状構造物本体に接続端で接続され、当該接続端より先端側が充填伝達体内に係止される第1係止体と、補強部材に接続端で接続され、当該接続端より先端側が充填伝達体内に係止される第2係止体と、を備える形態とすることもできる。この形態は、充填伝達体、第1係止体及び第2係止体の3つの要素で本発明の水平荷重伝達部材を構成する。
この形態において、第1繊維強化シートが補強部材を覆う部分を、第2繊維強化シートで包むことが好ましい。第1繊維強化シートと第2繊維強化シートとの間、第2繊維強化シートと塔状構造物との間も接着剤で接合できるので、塔状構造物本体を強固に支持できる。
この第2発明は、繊維強化シートを接着剤で接合すればよいので、補強部材を支持するのに溶接を行う必要がない。
また、本願の第2発明によれば、溶接することなく補強部材の塔状構造物本体への支持ができる。したがって、筒身内周壁の塗装、ライニングに損傷を与えない。
<第1−1実施形態>
本実施形態は、図21に示した従来の煙突に設けられるものであり、従来の煙突と同じ構成部分については、図21と同じ符号を付している。すなわち、本実施形態による煙突10は、図1,2に示すように、地上に立設された筒身(筒状構造物本体)1を鉄塔2及び水平材3で支持した構成を有し、筒身1と水平支持部材4との間には筒身1の振動を抑制するための複数のストッパ部材5が設けられている。ストッパ部材5は、より具体的には、筒身1の径方向における一端が補強リング7に接合され、また、他端が補強塔を構成する水平支持部材4に接合されている。なお、鉄塔2、水平材3及び水平支持部材4により、本発明の補強塔が構成される。
筒身1とストッパ部材5の間には、筒身1を補強する目的の補強リング(補強部材)7が設けられている。補強リング7は、断面がH型の鋼材を溶接その他の接合方法によりリング状に形成したものである。補強リング7は、ストッパ部材5と接する外側フランジ部7aと、筒身1側に配置される内側フランジ部7bと、外側フランジ部7aと内側フランジ部7bとを繋ぐウェブ部7cとから構成される。補強リング7は、2分割、あるいは4分割としたものを搭上でリング状に組付けしてもよいし、予めリング状とされたものを用いてもよい。
補強リング7は、内側フランジ部7bが鉛直荷重支持部材8に載せられて、鉛直方向の荷重が支持される。内側フランジ部7bが鉛直荷重支持部材8に載せられていれば足り、内側フランジ部7bの下面を鉛直荷重支持部材8の上面に溶接などにより接合しない。つまり、補強リング7は、鉛直荷重支持部材8に摺動可能に支持されている。これにより、鉛直荷重支持部材8は、補強リング7から鉛直方向の荷重のみを支持する。
長手方向の長さが補強リング7の円周長に比べて十分に短い鉛直荷重支持部材8は、筒身1の外周壁の同一円周上に均等間隔で放射状に設置される。この例では12個の鉛直荷重支持部材8が筒身1の外周壁に設置されているが、設置個数は任意であるとともに、鉛直荷重支持部材8相互間の間隔も均等に限らない。
補強リング7の内側フランジ部7bを貫通して水平荷重伝達部材9が設けられる。水平荷重伝達部材9は、内側フランジ部7bよりも筒身1側の一端が筒身1の外周壁に溶接により接合される。なお、水平荷重伝達部材9を筒身1の外周壁に溶接する好ましい方法は後述する。また、水平荷重伝達部材9は、一端から離間する位置で内側フランジ部7bに溶接により接合される。このように、筒身1と水平荷重伝達部材9が接合され、かつ水平荷重伝達部材9と補強リング7が接合されることにより、筒身1と補強リング7の間の水平方向荷重の伝達が確実に行われる。水平荷重伝達部材9は、揺れにともなう筒身1からの水平荷重のみをストッパ部材5に伝達する。
また、この例では、ウェブ部7cを挟んで、上下に1本ずつの水平荷重伝達部材9が設けられているが、本数、配置の形態はこれに限らない。
なお、水平荷重伝達部材9は、容易に変形するとその機能を発揮することが困難である。したがって、荷重伝達にとって剛体とみなしうるものであることが前提となる。
補強リング7に加え、鉛直荷重支持部材8と水平荷重伝達部材9を備えた本実施形態による補剛構造を設ける手順を以下説明する。
(1)鉛直荷重支持部材8の設置
はじめに、筒身1の外周壁に鉛直荷重支持部材8を溶接により設置する。複数の鉛直荷重支持部材8は、同一円周上に均等間隔に配置されることが好ましい。そうすることにより、各鉛直荷重支持部材8が補強リング7から受ける荷重を均一にできる。鉛直荷重支持部材8の設置は、例えば筒身1の外周壁に矩形状の溝を形成し、その中に鉛直荷重支持部材8を嵌合して溶接することもできる。接合強度の向上にとって有利である。
鉛直荷重支持部材8は、溶接により筒身1に接合されるが、溶接の量は従来の全周溶接に比べると極めて少ないので、筒身1の内周壁に形成された塗装、ライニングに与える損傷を著しく軽減できる。
次に、先端を筒身1の外周壁に溶接することにより、水平荷重伝達部材9を筒身1に設置する。水平荷重伝達部材9は、筒身1の外周壁に均等間隔で放射状に設置される。水平荷重伝達部材9は、先行して設置された鉛直荷重支持部材8に対応して、その上方に設置される例をここでは示しているが、隣接する鉛直荷重支持部材8の間に水平荷重伝達部材9を設けることもできる。
水平荷重伝達部材9も溶接により筒身1に接合されるが、溶接の量は少ないので、筒身1の内周壁に形成された塗装、ライニングに与える損傷を著しく軽減できる。
次に、補強リング7を設置する。補強リング7には水平荷重伝達部材9が貫通される位置に貫通孔が空けられており、この貫通孔に水平荷重伝達部材9を貫通させると、補強リング7は鉛直荷重支持部材8に載せられるようになっている。
補強リング7は、2又はそれ以上の複数に分割した形態のセグメント部材を作製しておき、このセグメント部材を鉛直荷重支持部材8に載せ、その後にセグメント部材同士を溶接して接合することが好ましい。
本実施形態では、補強リング7に貫通孔を空けておき、ここに水平荷重伝達部材9を貫通させることで、補強リング7の位置決めを容易にしている。
補強リング7が鉛直荷重支持部材8に載せられ、補強リング7、鉛直荷重支持部材8及び水平荷重伝達部材9が互いに正規の位置に設置された後、補強リング7と水平荷重伝達部材9を溶接して接合する。これで、補強リング7、鉛直荷重支持部材8及び水平荷重伝達部材9は、筒身1の補剛構造を構成する。なお、補強リング7と鉛直荷重支持部材8の間は接合されていないので、補強リング7は鉛直荷重支持部材8に対して、水平方向への荷重は伝達されない。
本実施形態の補剛構造に、図3の白抜き矢印に示す向きに水平荷重が作用すると、水平荷重伝達部材9は図示の実線矢印に示す向きに抵抗しながら水平荷重を補強リング7に伝達する。また、この荷重はストッパ部材5を介して、黒塗り矢印に示す向きに水平支持部材4に伝達される。
以上では、補強リング7を鉛直荷重支持部材8に載せるだけで補強リング7の高さ(鉛直)方向の位置を決めることにしているが、鉛直荷重支持部材8からの高さが周方向でばらつくのを避けたい。そのためには、鉛直荷重支持部材8を設置する鉛直方向の位置を周方向で一致させればよいが、実際の作業で精度よく鉛直荷重支持部材8を揃えて設置することが困難な場合もある。そこで本実施形態は、補強リング7に高さ調節機構を持たせることが好ましい。
以上の説明から明らかなように、高さ調整機構(高さ調整ボルトB)は、鉛直荷重支持部材8上に設置される一方、高さ調整作業のし易さを考慮すれば、水平荷重伝達部材9と干渉しない位置に設置されるのが好ましい。例えば、図5に示すように、鉛直荷重支持部材8と水平荷重伝達部材9が交互に配置される場合には、鉛直荷重支持部材8上に高さ調整ボルトBを設ければ、高さ調整ボルトBの調整時に、水平荷重伝達部材9が邪魔になることはない。
以上の第1−1実施形態によれば、鉛直荷重支持部材8、水平荷重伝達部材9は各々筒身1に溶接して接合されるが、溶接される量は従来の全周に比べて極めて少ない。したがって、筒身1の内周壁に設けられている塗装、ライニングの損傷を防止又は抑制(以下、防止と総称)できる。
全周を溶接する従来の補強リングは、溶接部が鉛直方向と水平方向の複合外力を支持、伝達することから、溶接部の強度設計が複雑になっていた。これに対して本実施形態は、鉛直荷重支持部材8が鉛直方向荷重のみを支持、水平荷重伝達部材が水平方向荷重のみを支持(伝達)するものであるから、鉛直荷重支持部材8及び水平荷重伝達部材9の各々について単独で強度設計を行えばよいので、複雑な強度設計を行う必要がない。
以上説明した実施形態は変更を加えることができる。
補強リング7は、以上説明したものに限らず、図6に示す種々の形態にできる。
図6(a)に示す補強リング17はH型鋼を用いている点では図2の補強リング7と同じであるが、設置の向きが90°異なる。補強リング17は、開口部が水平方向を向いており雨水などに対する配慮が必要ない。
図6(b)に示す補強リング27は、断面がコ字状の型鋼を用いている。補強リング27は開口を筒身1と逆に向けて配置されている。補強リング27は、水平荷重伝達部材9を短くすることが可能であり、剛性を確保しやすいという利点がある。
図6(c)に示す補強リング37は、断面がロ字状の型鋼を用いている。補強リング37は、閉断面として構成されており補強リング7,17,27に比べて剛性が高い。
図8、図9を参照して第1−2実施形態を説明する。なお、第1−1実施形態と同じ構成部分には、同じ符号を付している。
第1実施形態は、筒身1と補強リング7〜37の間を空隙にしているのに対して、第1−2実施形態は、この空隙に水平荷重を伝達する充填伝達体Cを介在させるところに特徴がある。コンクリート、モルタル、その他の硬化される充填伝達体Cは、水平荷重伝達部材9の変形を拘束し、さらに水平荷重を伝達する機能を奏する。
なお、鉛直荷重支持部材8と充填伝達体Cの界面の接合強度は極めて弱いので、水平荷重が作用すると鉛直荷重支持部材8と充填伝達体Cの接合は解かれる。したがって、充填伝達体Cを介して鉛直荷重支持部材8に水平荷重が伝達することはないと解されるが、図8に示すように、鉛直荷重支持部材8と充填伝達体Cの間にアンボンド剤(ゴムシートなど)Rを介在させることで、より確実に水平荷重が鉛直荷重支持部材8に伝達されるのを避けることができる。
図10を参照して第2実施形態を説明する。なお、第1−1、第1−2実施形態と同じ構成部分には、同じ符号を付している。
第1−2実施形態は、水平荷重伝達部材9の一端が筒身1に接合され、一端から離間した位置が補強リング7に接合され、筒身1と補強リング7とを水平荷重伝達部材9が直接繋いでいる。これに対して、第2実施形態は、筒身1と補強リング7とを直接繋ぐ部材を設ける代わりに、補強リング7に向けて突出するスタッド(第1係止体)11を筒身1の外周壁に設け、また、筒身1に向けて突出するスタッド(第2係止体)12を補強リング7の筒身1に対向する面に設ける。筒身1と補強リング7の間には、スタッド11,12を包含するように充填伝達体Cが介在している。このようにスタッド11,12は充填伝達体C内に係止されるので、筒身1から補強リング7に向けて、スタッド11、充填伝達体C及びスタッド12の経路で、水平方向(特に、図10の紙面に垂直な方向)に荷重が伝達される。つまり、第2実施形態は、スタッド11、充填伝達体C及びスタッド12の組み合わせが、本発明の水平荷重伝達部材を構成する。
この形態は、筒身1にスタッド41をCD溶接法により溶接し、このスタッド41により鉛直荷重支持部材38を支持する。鉛直荷重支持部材38は、ともに平板状のリブ39と基部40とがT字状に一体化された構造を有し、基部40には4本のスタッド41が貫通する貫通孔が空けられている。基部40を貫通したスタッド41のねじが切られている先端にナット42をねじ込んで、鉛直荷重支持部材38を固定する。なお、ナット42による固定は、一例であり、他の手段でスタッド41と基部40を固定することもできる。スタッド11は、スタッドの形態を有しているので、もちろんCD溶接法により筒身1に溶接できる。
このように、図14(c)に示す形態も、鉛直荷重支持部材38及びスタッド11の両方を筒身1に接合できるので、溶接に用いる設備、機材が一種類で足り工事コストを低減できる。特に、CD溶接法は作業能率が良いため、工期短縮が図れるという利点も期待できる。
また、第2実施形態は、水平荷重伝達部材9を補強リング7に貫通させるという施工上の調整作業の必要がないという第1−1,1−2実施形態では得られない特有の効果を奏する。
図11,12を参照して第3−1実施形態を説明する。
第3−1実施形態は、鉛直荷重支持部材8により専ら鉛直方向の荷重を支持するところは第1,第2実施形態と同様であるが、補強リング7(〜37)を覆うとともに、筒身1に対して固定する繊維強化プラスチックからなるシート材(本願では、繊維強化シートという)13で水平方向荷重を伝達するところに特徴がある。
隣接する鉛直荷重支持部材8,8の間において、補強リング7〜37は繊維強化シート(第1繊維強化シート)13に支持される。つまり、筒身1の外周壁に対向する面を除いて補強リング7〜37は繊維強化シート13に覆われる。補強リング7〜37を覆った繊維強化シート13の余剰部分は、補強リング7〜37の上方及び下方において、筒身1の外周壁に接着剤により接合される。これにより、繊維強化シート13は、水平荷重伝達部材として機能する。なお、繊維強化シート13は、筒身1に接合されるのに加え、補強リング7〜37との接触面が接着剤により接合される。
フェノール樹脂を使用できる。
また、繊維強化シート13を筒身1に接合する接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤等公知の接着剤を用いることができる。
第3−2実施形態は、図13に示すように、補強リング7〜37の周囲を繊維強化シート(第2繊維強化シート)14で包み、この繊維強化シート(第2繊維強化シート)14で包まれた部分を、繊維強化シート(第1繊維強化シート)13で覆い、かつその余剰部分を、補強リング7〜37の上方及び下方おいて、筒身1の外周壁に接着剤により接合する。この際、補強リング7〜37を包んだ繊維強化シート14とこれを覆う繊維強化シート13との接触面は接着剤で接合し、また、補強リング7〜37を包んだ繊維強化シート14と筒身1との接触面も接着剤で接合する。そうすることにより、補強リング7〜37の筒身1に対する接着強度を増加できるので、第3−2実施形態は第3−1実施形態よりも水平荷重伝達効果が向上する。
第3−1,第3−2実施形態は、鉛直荷重支持部材8(〜28)を設けることを前提とするが、繊維強化シート13だけで補強リング7を支持することもできる。この場合、繊維強化シート13は鉛直荷重支持部材と水平荷重伝達部材の両者の機能を併せ持つ。この形態を、本発明の第4実施形態として提案する。
第4実施形態は、鉛直荷重支持部材8(〜28)を設けないので、補強リング7〜37の周方向の全域を繊維強化シート13で覆い、かつ筒身1に接合することもできる。もちろん、周方向に間隔を空けて繊維強化シート13で覆い、かつ接合することもできる。
第4実施形態においても、第3−2実施形態のように繊維強化シート14で補強リング7を包むこともできる。
次に、鉛直荷重支持部材8(〜28)を筒身1に接合するのに好適な溶接方法について説明する。
溶接を行う際に連続的に被溶接部材に入熱するのに比べて、断続的に被溶接部材に入熱する方が当該被溶接部材の温度上昇を抑えることができる。そこで、本発明者らは、二つの被溶接部材に交互に溶接ビードを施工することで、一方の被溶接部材M1又は他方の被溶接部材M2に対して溶接により直接的に加えられる入熱量を低減できる。つまり、溶接による全入熱量をQとし、一方の被溶接部材M1への直接的な入熱量をQ1、他方の被溶接部材M2への直接的な入熱量をQ2(=Q1の場合を含む)とすると、Q=Q1+Q2というように入熱量を分配することで、溶接施工部周囲の温度上昇を抑えることができる。この際、被溶接部材M1と被溶接部材M2は接触しており、被溶接部材M1側から被溶接部材M2側へ、また、被溶接部材M2側から被溶接部材M1側への熱伝導はあるものの、被溶接部材M1と被溶接部材M2の接触面を介して伝導する熱量は同一部材内の熱伝導に比べて極めて小さい。
この溶接部材100の溶接ビード103は、以下に示す特徴を有している。
はじめに、溶接ビード103は図15(a)に示すように蛇行している。図15(b)に示すように溶接トーチ104の移動軌跡を蛇行させることで、蛇行する溶接ビード103を形成することができる。溶接トーチ104の移動軌跡を蛇行させることは、ウィービングビード溶接として知られている。しかし、従来技術としてのウィービングビード溶接は溶接トーチの移動軌跡は蛇行しているものの、外観上は溶接ビードが蛇行していない。つまり、ウィービングビード溶接は折り返し点105前後のビード同士が接触するように溶接されるのに対して、本実施形態による溶接は図15(a)に示すように折返し点105前後の溶接ビード103間に隙間106がある。
図15の例は、溶接ビード103が溶接線107を跨いで第1被溶接部材101と第2被溶接部材102に均等に施工されている。しかし、本実施形態はこれに限定されず、溶接ビード103が溶接線107を跨いで第1被溶接部材101と第2被溶接部材102に不均等に施工されることを許容する。
(1)アーク発生時、溶接ワイヤは溶融プールに向かって前進する。
(2)溶接ワイヤが溶融プールに浸かると、アークは消える。これに伴って溶接電流は一気に下がる。
(3)溶接ワイヤを引き戻すことによって、短絡中の溶滴切断を支援する。
(4)溶接ワイヤの動きが逆転し、プロセス(1)に戻る。
本実施形態は、CMT工法を適用することにより温度上昇を著しく低減できるが、CO2アーク溶接法(以下、CO2工法)等の他の工法を用いても温度上昇が抑えられるという効果を享受できることは言うまでもない。
図16に示すベースプレート108上にリブ板109を垂直に立てて形成される角部を下向きで隅肉溶接するものである。比較のために平板上に同条件で溶接ビードを蛇行する施工も行った。なお、ベースプレート108、リブ板109ともに炭素鋼からなる。
また、ビード形状としては、溶接トーチ104を蛇行させて図15(a)に示すように蛇行させるもの(蛇行ビード)、溶接トーチ104を直進させることで真直ぐなもの(ストレートビード)の2種類で行った。蛇行ビードの場合、ビード幅Wb(図15参照)は3mmとし、また、溶接ビード103の蛇行の振幅Wm(図15参照)は4mmとした。また、溶接ビード103の蛇行回数(周期)は、20回/minである。
図17、図18より以下のことが判明した。
(1)平板上、つまり単一の部材上に溶接施工する(図17、図18 「平板」)のに比べて、2つの被溶接部材を溶接施工(図17、図18 「リブ板」)すると温度上昇が小さくなる。
(2)ストレートビードに比べて蛇行ビードの温度上昇が小さい。
(3)2つの被溶接部材を蛇行ビードで施工すると、温度上昇を100℃以下に抑えることができる。
具体的に言及すると、CMT工法の場合には、入熱が0.24KJ/mm(溶接電流:50A,溶接電圧:12.6V,溶接速度:21cpm)の場合、平板を蛇行ビードとして溶接した場合には裏面の温度が154℃に達したのに対して、リブ板を蛇行ビードとして溶接した場合には裏面の温度が66℃である。また、入熱が0.27KJ/mm(溶接電流:55A,溶接電圧:12.9V,溶接速度:16cpm)の場合、平板を蛇行ビードとして溶接した場合には裏面の温度が175℃に達したのに対して、リブ板を蛇行ビードとして溶接した場合には裏面の温度が98℃である。また、CO2工法の場合には、入熱が0.32KJ/mm(溶接電流:70A,溶接電圧:16V,溶接速度:21cpm)の場合、平板を蛇行ビードとして溶接した場合には裏面の温度が141℃に達したのに対して、リブ板を蛇行ビードとして溶接した場合には裏面の温度が80℃である。
次に、水平荷重伝達部材9、15、スタッド11(以下、スタッドピンと総称することがある)を筒身1に接合するのに好適な溶接方法について説明する。
スタッドピンの端面を溶接するには、CD(Capacitor Discharge)溶接法が温度上昇を抑制するのに適している。CD溶接法はスタッドピンの端面を溶接相手に圧接した状態で、コンデンサに蓄電してスタッドに放電する溶接方式で、通電時間が短いために入熱が抑えられる特徴を有している。
以上説明した溶接方法を適用すると、温度上昇を抑えることができるが、夏季には筒身1自体の温度が上昇しており、この初期温度に溶接による昇温量が加算されると、限界温度(約100℃)を超える恐れがある。これを防ぐために、本実施形態では、鉛直荷重支持部材、水平加重支持部材の溶接予定箇所を予め周囲よりも低い温度に冷却しておく(例えば、0℃)ことを提案する。
冷却媒体CMを収容する収容容器51と、収容容器51を筒身1に固定する固定具55とからなる。
収容容器51は、容器本体52と容器本体52の周縁に連なり容器本体52を取り囲む枠部53とから構成される。
収容される冷却媒体CMの冷却能力の多くが筒身1の冷却に費やされるようにするために、容器本体52の内周面に断熱材54が貼り付けられている。
また、冷却器具50は、永久磁石58の磁力を利用して収容容器51を筒身1に固定させているので、冷却器具50を装着するのに筒身1に機械加工を施す必要がない。ただし、永久磁石58による冷却器具50の固定は一例であり、他の固定手段を用いてもよいことは言うまでもない。
例えば上記実施形態は搭状構造物として煙突を例にしたが、本発明はこれに限らず、排気塔、その他の塔状構造物に広く適用できる。
また、ストッパ部材5は本発明における制振部材に対応するものであるが、補強部材(補強リング)から伝達される揺れを抑制できるものであれば、構造を問わない。例えば、特許文献1に記載されているように保持体6とダンパ6aとを組み合わせたもの、ダンパ単体等を本発明における制振部材として用いることができる。
1…筒身(搭状構造物本体)、2…鉄塔、3…水平材、4…水平支持部材
5…ストッパ部材(制振部材)
7,17,27,37…補強リング(補強部材)
8,18,28,38…鉛直荷重支持部材、9,15…水平荷重伝達部材
11,12…スタッド(第1,2係止体)
13,14…繊維強化シート(第1,2繊維強化シート)、C…充填伝達体
50…冷却器具、51…収容容器、55…固定具
CM…冷却媒体
Claims (9)
- 被減衰体である塔状構造物本体と、
前記塔状構造物本体に付設される補強塔と、
前記塔状構造物本体の周囲を取り囲むリング状の補強部材と、
前記補強塔と前記補強部材の間に介在する制振部材と、
前記塔状構造物本体の外周壁に間隔を空け、かつ前記外周壁から外側に向けて突出して設けられ、前記補強部材を載せることにより前記補強部材の鉛直方向の荷重を支持する複数の鉛直荷重支持部材と、
前記塔状構造物本体と各々の前記補強部材を繋ぎ、前記塔状構造物の揺れによる水平力を前記補強部材に伝達する水平荷重伝達部材と、
を備えることを特徴とする塔状構造物。 - 前記水平荷重伝達部材は、
一端が前記塔状構造物本体に接続され、前記一端から離間する位置が前記補強部材に接続される請求項1に記載の塔状構造物。 - 前記水平荷重伝達部材を取り囲むとともに、前記塔状構造物本体と前記補強部材の間に介在される充填伝達体を備える請求項2に記載の塔状構造物。
- 前記水平荷重伝達部材は、
前記塔状構造物本体と前記補強部材の間に介在される充填伝達体と、
前記塔状構造物本体に接続端で接続され、当該接続端より先端側が前記充填伝達体内に係止される第1係止体と、
前記補強部材に接続端で接続され、当該接続端より先端側が前記充填伝達体内に係止される第2係止体と、
を備える請求項1に記載の塔状構造物。 - 前記水平荷重伝達部材は、
前記補強部材を覆い、かつ前記塔状構造物本体に接合されることにより、前記補強部材を支持する第1繊維強化シートである請求項1に記載の塔状構造物。 - 前記第1繊維強化シートが前記補強部材を覆う部分を第2繊維強化シートで包む請求項5に記載の塔状構造物。
- 被減衰体である塔状構造物本体と、
前記塔状構造物本体に付設される補強塔と、
前記塔状構造物本体の周囲を取り囲むリング状の補強部材と、
前記補強塔と前記補強部材の間に介在する制振部材と、
前記補強部材を覆い、かつ前記塔状構造物本体に接合されることにより、前記補強部材を支持する繊維強化シートからなる鉛直支持・水平伝達部材と、
を備えることを特徴とする塔状構造物。 - 前記鉛直荷重支持部材及び前記水平荷重伝達部材の一方又は双方が溶接により前記外周壁に接合され、
前記溶接による溶接ビードが蛇行しており、
蛇行する前記溶接ビードは、溶接線を跨いで前記鉛直荷重支持部材及び前記水平荷重伝達部材の一方又は双方と前記外周壁に交互に施工されている、
請求項1、請求項2及び請求項3のいずれか一項に記載の搭状構造物。 - 請求項1、請求項2、請求項3及び請求項8のいずれか一項に記載の搭状構造物において、前記鉛直荷重支持部材及び前記水平荷重伝達部材の一方又は双方を溶接により前記外周壁に接合する方法であって、
前記鉛直荷重支持部材及び前記水平荷重伝達部材の一方又は双方の溶接が予定される領域を、冷却媒体により冷却した後に、前記溶接を行うことを特徴とする接合方法。
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