JP3825193B2 - 構造物のダンパー構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、煙突などの構造物の振動を減衰するダンパー構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8および図9は煙突の構成例を示したもので、地上に立設された筒身1を鉄塔2及び水平材3で支持した構成で、筒身1と水平材3との間には筒身1の振動を抑制するための複数の鋼材ダンパー5が挿設されている。
図10はその要部詳細(C部)を示し、筒身1に設けた一対のストッパ6−6の間に、基端を水平支持部材4に固定された鋼材ダンパー5の下端が挿入された構成で、筒身1の振動をこの鋼材ダンパー5の変形によって吸収し減衰させるようになっている。
すなわち、この鋼材ダンパーは地震や風などの外力により、筒身1と鋼材ダンパー5が固定されている水平支持部材4との間に、相対変位が発生する構造物に適用することが出来る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記した従来の鋼材ダンパー5は一般に断面がH型、I型または矩形を成す型鋼が使用されており、従って例えば図11に示すように矩形断面の場合、x−x方向(筒身中心方向y−yの直角方向)の振動sに対してのみ容量100パーセントの効果を発揮するが、それ以外の方向の振動s′またはs″に対しては効果がない、あるいは効果が大きく減少する。
このため、従来は図9に示すように筒身1周りに多数の(図では4組の)鋼材ダンパー5を配置する必要があり、設置工事に多くの費用と時間を要するという課題があった。
本発明は上記問題に鑑み、構造物の振動の減衰に方向性がなく低コストで有効な減衰をおこなうことのできるダンパー構造を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明によれば、被減衰体である構造物の振動を減衰するためのダンパー構造であって、断面円形の丸棒材でダンパー部材を形成し、ダンパー部材の長手方向の一方の端部を、構造物から横方向に突設された固定用取り付け材に固定し、ダンパー部材の長手方向の前記一方の端部とは離間した部分を構造物とは別個に構築された基台から横方向に突設された負荷部材に、長手方向への移動は許容し、長手方向に直角な、どの方向への移動拘束するように係合させて、ダンパー部材の長手方向軸線が構造物の長手方向軸線に平行になるようにダンパー部材を配設したことを特徴とする構造物のダンパー構造が提供される。
【0005】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、ダンパー部材を鋼製としたダンパー構造が提供される。
請求項3の発明によれば、請求項1の発明において、負荷部材に係合せしめられる部分がダンパー部材の長手方向の他方の端部とされたダンパー構造が提供される。
【0006】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明において、ダンパー部材が、長手方向に幅を有する取り付けリングを介して、固定用側方部材に固定されたダンパー構造が提供される。
請求項5の発明によれば、請求項4の発明において、取り付けリングのダンパー部材に接する内面の負荷部材に近い側の端部に外側に開く曲面を形成したダンパー構造が提供される。
【0007】
請求項6の発明によれば、請求項1の発明において、ダンパー部材の負荷部材に係合される部分とは離間した部分が、構造物から横方向に突設された支持用側方部材に横方向移動不能、長手方向移動自在に係合されるようにしたダンパー構造が提供される。
請求項7の発明によれば、請求項6の発明において、ダンパー部材の支持用側方部材に支持される部分が固定用取り付け材に固定される端部とは反対の端部であって、ダンパー部材はこれら両端部の中間の部分で負荷部材に係合されるようにしたダンパー構造が提供される。
請求項8の発明によれば、請求項6の発明において、支持用側方部材のダンパー部材との係合部分が曲面に形成され、支持用側方部材はダンパー部材を周囲する外接線でダンパー部材を支持するようにしたダンパー構造が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のダンパー構造の各実施の形態を図面を用いて説明する。
図1〜図2は第1の実施の形態のダンパー構造を前記図8に示す煙突に適用した際の設置例を示す。本ダンパー構造は、地震や風などの外力により相対変位が発生する筒身1と水平支持部材4の間に設置される。
【0009】
図示するように、筒身1の外周に取り付けた補強リング12に取り付けたリブ13を介して固定用側方部材7を水平方向に突設し、この固定用側方部材7に形成した取り付け穴7a、7bに断面円形の棒鋼で作られた棒鋼ダンパー10の上端部分を嵌合して固定すると共に、棒鋼ダンパー10の下端部分は、鉄塔2の水平支持部材4から横方向に突設された負荷部材11に形成された穴11aに嵌合させて、軸方向の移動は許容し、水平方向への移動は拘束するように係合する。ここで、棒鋼ダンパー10の長手方向軸線Z2が筒身1の長手方向の軸線Z1に平行になるように固定用側方部材7、負荷部材11の寸法が選択されている。なお、この第1の実施の形態では、棒鋼ダンパー10は図3に示すように筒身1に対して2組を配置しているが、1組あるいは3組でもよい。
【0010】
筒身1に振動sが発生すると、この振動sはリブ13から固定用側方部材7に伝達され、これによって負荷部材11による支持中心Oを作用点として棒鋼
ダンパー10を強制的に変形させ、この変形エネルギーによって筒身1の振動エネルギーが吸収されて筒身1の振動は減衰する。
【0011】
図4は、この際の棒鋼ダンパー10の特性を示し、本ダンパー10は断面が円形状を成しているので、筒身中心方向y−yの直角方向x−xの振動sはもとより、y−y方向を含む任意方向の振動s′,s″に対しても同じ能力のの減衰効果を発揮することができる。
このように減衰効果に方向性がないので従来のように筒身1周りに多数のダンパーを配置する必要はなく、必要最小限のダンパー構造の配置で所定の減衰効果を得ることができるようになり、設備費が大幅に削減される。
【0012】
次に、本発明の第2の実施の形態のダンパー構造について図5を参照して説明する。
この第2の実施の形態では棒鋼ダンパー10の周りに取り付けリング9を配設し、棒鋼ダンパー10をこの取り付けリング9を介して固定用側方部材7の穴7a’,7b’に嵌合している点が第1の実施の形態と異なるが、その他の部分は同じである。そして、取り付けリング9の棒鋼ダンパー10に接する内面の下端部は外側に拡がる曲面9aとされている。
【0013】
この第2の実施の形態でも第1の実施の形態と同様な作用により筒身1の振動を減衰することができるが、棒鋼ダンパー10が下端部が外側に拡がる曲面とされた取り付けリング9を介して固定用側方部材7の穴に嵌合されているので、振動が発生した時に第1の実施の形態の場合のように固定用側方部材7の下端部に接する部分が急に曲げられて応力集中が発生することがなく耐久性が向上する。
【0014】
次に、本発明の第3の実施の形態のダンパー構造について図6を参照して説明する。
この第3の実施の形態では、固定用側方部材7および、固定用側方部材7に対する棒鋼ダンパー10の取り付け方法は第1の実施の形態と同様である。
しかしながら、固定用側方部材7の他にさらに支持用側方部材8が補強リング12に取付けたリブ13を介して突設されている。
【0015】
そして、この側方部材8には支持リング14が取り付けられていて、棒鋼ダンパー10の下端部分がこの支持リング14に嵌合され、棒鋼ダンパー10はこの支持リング14を介して側方部材8により長手方向移動自在、横方向移動不能に支持されている。ここで、支持用側方部材8に設けた支持リング14は、支持面が曲面状に形成されていて、棒鋼ダンパー10を周囲するように外接する線で棒鋼ダンパー10を支持するようになっている。
【0016】
一方、棒鋼ダンパー10の長手方向の中間部分は第1、第2の実施の形態と同様に、鉄塔2の水平支持部材4から横方向に突設された負荷部材11に形成された穴11aに嵌合され、軸方向の移動は許容し、水平方向への移動は拘束するように係合されている。
【0017】
第1、第2の実施の形態では棒鋼ダンパー10は固定用側方部材7で片持ち支持されているので振動発生時に大きな曲げ応力がかかるが、この第3の実施の形態は上記のように上端部と下端部の2か所で横方向不動に支持されており振動発生時に大きな曲げ応力がかかることはない。したがって、第1、第2の実施の形態に比べると、固定用側方部材7、および、棒鋼ダンパー10に要求される強度が低くなり、その結果、全体を小型、軽量に形成することができる。
【0018】
図7に示すのは第4の実施の形態の構造であって、この第4の実施の形態は第3の実施の形態に第2の実施の形態を組み合わせたものである。すなわち、第3の実施の形態に対して、棒鋼ダンパー10を取り付けリング9を介して固定用側方部材7に嵌合して取り付けている点が異なる。
このように構成することによりこの第4の実施の形態は第3の実施の形態に比較してさらに応力集中が抑制され耐久性が向上する。
【0019】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、ダンパー部材は断面円形の丸棒で作られており、ダンパー部材の長手方向軸線が構造物の長手方向軸線に平行になるようにダンパー部材が配設され、ダンパー部材が負荷部材に、長手方向への移動は許容され、長手方向に直角な、どの方向への移動も拘束されるように係合させられているので、構造物の長手方向に直角などのような方向の振動も減衰することができる。請求項4、5のようにすれば、ダンパー部材が、長手方向に幅を有する取り付けリングを介して固定用側方部材に取り付けられダンパー部材の急激な曲げが防止されダンパー部材の耐久性が向上する。特に、請求項5のようにすれば、取り付けリングのダンパー部材に接する内面の負荷部材に近い側の端部に外側に開く曲面が形成されているので、一層、急激な曲げが防止されダンパー部材の耐久性がさらに向上する。請求項6の発明によれば、ダンパー部材が2ヶ所で支持されるので固定用側方部材、および、ダンパー部材に要求される強度が低くなり、その結果、全体を小型、軽量に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】第1の実施の形態における棒鋼ダンパーの配置を示す図である。
【図4】棒鋼ダンパーの特性を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態の構成を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態の構成を示す図である。
【図8】煙突の構成例を横から見た図である。
【図9】図8の煙突のある中間部分の断面図である。
【図10】図9のC部の詳細を示す図である。
【図11】鋼材ダンパー5に作用する力を説明する図である。
【符号の説明】
1…筒身
2…鉄塔
3…水平材
4…水平支持材
7…固定用側方部材
7a,7b,7a’,7b’…穴
8…支持用側方部材
9…取り付けリング
10…棒鋼ダンパー
11…負荷部材
12…補強リング
13…リブ
14…支持リング

Claims (8)

  1. 被減衰体である構造物(1)の振動を減衰するためのダンパー構造であって、断面円形の丸棒材でダンパー部材(10)を形成し、ダンパー部材(10)の長手方向の一方の端部を、構造物(1)から横方向に突設された固定用側方部材(7)に固定し、ダンパー部材(10)の長手方向の前記一方の端部とは離間した部分を構造物(1)とは別個に構築された基台(4)から横方向に突設された負荷部材(11)に、長手方向への移動は許容し、長手方向に直角な、どの方向への移動拘束するように係合させて、ダンパー部材(10)の長手方向軸線が構造物の長手方向軸線に平行になるようにダンパー部材(10)を配設したことを特徴とする構造物のダンパー構造。
  2. ダンパー部材(10)が鋼製であることを特徴とする請求項1に記載のダンパー構造。
  3. 負荷部材(11)に係合せしめられる部分がダンパー部材(10)の長手方向の他方の端部であることを特徴とする請求項1に記載のダンパー構造。
  4. ダンパー部材(10)が、長手方向に幅を有する取り付けリング(9)を介して、固定用側方部材(7)に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のダンパー構造。
  5. 取り付けリング(9)のダンパー部材(10)に接する内面の負荷部材に近い側の端部に外側に開く曲面(9a)を形成したことを特徴とする請求項4に記載のダンパー構造。
  6. ダンパー部材(10)の負荷部材(11)に係合される部分とは離間した部分が、構造物(1)から横方向に突設された支持用側方部材(8)に横方向移動不能、長手方向移動自在に係合されていることを特徴とする請求項1に記載のダンパー構造。
  7. ダンパー部材(10)の支持用側方部材(8)に支持される部分が固定用側方部材(7)に固定される端部とは反対の端部であって、ダンパー部材(10)はこれら両端部の中間の部分で負荷部材(11)に係合されることを特徴とする請求項6に記載のダンパー構造。
  8. 支持用側方部材(8)のダンパー部材(10)との係合部分が曲面に形成され、支持用側方部材(8)はダンパー部材(10)を周囲する外接線でダンパー部材(10)を支持することを特徴とする請求項6に記載のダンパー構造。
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