JP5038168B2 - 助手席用エアバック装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インフレータから供給される膨脹用ガスにより、インストルメントパネルの上部からエアバックが前後向きに膨脹展開するように構成してある助手席用エアバック装置に関する。
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、インストルメントパネル(特許文献1の図1の12)の上部から前後向きに膨脹展開するエアバック(特許文献1の図1の18)を備えた助手席用エアバック装置が知られている。
特開平7−125591号公報(図1及び図4参照)
特許文献1の助手席用エアバック装置のように、インストルメントパネルの上部から前後向きにエアバックが膨脹展開するように構成すると、膨脹展開した状態でのエアバックの前後長さが長くなって、エアバックがインストルメントパネルの上部に片持ち状に支持された状態になる。
ところで、車両が被衝突物に衝突し、助手席用エアバック装置が作動するような状況になると、衝突による車両の減速に伴って、エアバックに前向きの加速度(車体減速度)が作用する。従って、特許文献1の助手席用エアバック装置のように、膨脹展開した状態でのエアバックがインストルメントパネルの上部に片持ち状に支持されるように構成すると、この片持ち状に支持されたエアバックに、エアバックを上方に移動させようとする前向きの慣性力が作用する。そのため、例えば慣性力によりエアバックの後部が上方に揺れて跳ね上がりエアバックにより乗員を受け止める高さが安定しないといった問題や、例えば慣性力によりエアバックの上部が折れるような格好になってエアバックが潰れ易くなりエアバックの衝撃吸収性能が低下するといった問題があった。
上記のような問題点を解消するため、特許文献1のような助手席用エアバック装置を採用する場合には、一つのエアバックに対して容量の異なる複数のインフレータを装着して、実際に車両の衝突実験等を繰り返すことにより、上述したエアバックの後部の揺れやエアバックの上部の折れが生じ難い、エアバックに適合するインフレータを選定していた。このように、車両の衝突実験等を繰り返すことによりエアバックに適合するインフレータを選定すると、車両の衝突実験等に時間やコストが掛かって、助手席エアバック装置の開発期間が長期化するといった問題や、助手席エアバック装置の開発コストが高騰するといった問題があった。
本発明は、エアバックに適合するインフレータの選定が容易で、開発期間を短縮でき、開発コストを削減できる助手席用エアバック装置を実現することを目的とする。
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、助手席用エアバック装置を次のように構成することにある。
インフレータから供給される膨脹用ガスにより、インストルメントパネルの上部からエアバックが前後向きに膨脹展開するように構成し、膨脹展開した前記エアバックの重心位置を、前記インフレータより後方に設定すると共に、前記エアバックの前部に、膨脹展開した状態で前記インフレータより前側の前記インストルメントパネルの上面側に支持される支持部と、前記エアバックの前記インフレータより後方の下部に、膨張展開した状態で前記インストルメントパネルの上面に接当しないように上方に凹入する凹入部と、を備え、前記エアバックの内圧によって前記エアバックの支持部に上向きに作用する反力により前記エアバックに作用する支持モーメントと、衝突によって前記エアバックの重心位置を上方に移動させようとする前向きの慣性力により前記エアバックに作用する慣性モーメントとの関係式に基づいて、前記エアバックの内圧を設定する。
(作用)
本発明の第1特徴によると、例えば図5に示すように、エアバックの内圧によってエアバックの支持部(例えば図5の2a)に上向きの反力(例えば図5のR)が働くと、エアバックには支持モーメント(例えば図5のMb)が作用し、衝突によってエアバックの重心位置(例えば図5のa)を上方に移動させようとする前向きの慣性力(例えば図5のG・m)が働くと、エアバックには慣性モーメント(例えば図5のMa)が作用するので、エアバックに作用するモーメントのつり合いより、支持モーメントと慣性モーメントとの関係式を導くことができる。ここで、慣性モーメントは、例えば車両の衝突条件及びエアバックの仕様により定まり、支持モーメントは、例えばエアバックの内圧を未知数とすると、エアバックの仕様により定まるため、支持モーメントと慣性モーメントとの関係式に基づいて未知数としたエアバックの内圧を算出できる(例えば式(1)〜式(3)参照)。
この場合、例えば支持モーメントにより慣性モーメントが打ち消されるようにエアバックの内圧を設定することで、エアバックの後部が衝突による慣性力によって上方に揺れて跳ね上がることを防止でき、エアバックにより乗員を受け止める高さを安定させることができる。これにより、設定したエアバックの内圧に合わせてインフレータの容量を選定することで、例えば衝突実験等を繰り返さなくても、エアバックに適合するインフレータを容易に選定できる。
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、助手席エアバック装置の開発期間を短縮できると共に、助手席エアバック装置の開発コストを削減できる。
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、助手席用エアバック装置を次のように構成することにある。
インフレータから供給される膨脹用ガスにより、インストルメントパネルの上部からエアバックが前後向きに膨脹展開するように構成し、膨脹展開した前記エアバックの重心位置を、前記インフレータより後方に設定すると共に、前記エアバックの前部に、膨脹展開した状態で前記インフレータより前側の前記インストルメントパネルの上面側に支持される支持部を備え、前記エアバックの内圧によって前記インフレータ上方近傍に位置する前記エアバックに作用する引張応力と、衝突によって前記エアバックの重心位置を上方に移動させようとする前向きの慣性力により前記インフレータ上方近傍に位置する前記エアバックに作用する曲げ応力との関係式に基づいて、前記エアバックの内圧を設定する。
(作用)
本発明の第2特徴によると、例えば図6に示すように、エアバックに内圧が働くと、インフレータ(例えば図6の4)上方近傍に位置するエアバックには引張応力(例えば図6のσa,σb)が作用し、衝突によってエアバックの重心位置(例えば図6のa)を上方に移動させようとする前向きの慣性力(例えば図6のG・m)が働くと、インフレータ上方近傍に位置するエアバックには曲げ応力が作用するので、インフレータの上方近傍に位置するエアバックに作用する応力に着目して引張応力と曲げ応力との関係式を導くことができる。曲げ応力は、例えば車両の衝突条件及びエアバックの仕様により定まり、引張応力は、例えばエアバックの内圧を未知数とすると、エアバックの仕様により定まるため、引張応力と曲げ応力との関係式に基づいて未知数としたエアバックの内圧を算出できる(例えば式(4)〜式(8)参照)。
この場合、例えば引張応力が曲げ応力に打ち勝つようにエアバックの内圧を設定することで、インフレータ上方近傍でのエアバックの上部が衝突による慣性力によって折れ難くなり、エアバックが潰れ難くなって、エアバックの衝撃吸収性能が低下することを防止できる。これにより、設定したエアバックの内圧に合わせてインフレータの容量を選定することで、例えば衝突実験等を繰り返さなくても、エアバックに適合するインフレータを容易に選定できる。
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、助手席エアバック装置の開発期間を短縮できると共に、助手席エアバック装置の開発コストを削減できる。
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、助手席用エアバック装置を次のように構成することにある。
インフレータから供給される膨脹用ガスにより、インストルメントパネルの上部からエアバックが前後向きに膨脹展開するように構成し、膨脹展開した前記エアバックの重心位置を、前記インフレータより後方に設定すると共に、前記エアバックの前部に、膨脹展開した状態で前記インフレータより前側の前記インストルメントパネルの上面側に支持される支持部を備え、前記エアバックの内圧によって前記エアバックの支持部に上向きに作用する反力により前記エアバックに作用する支持モーメントと、衝突によって前記エアバックの重心位置を上方に移動させようとする前向きの慣性力により前記エアバックに作用する慣性モーメントとの関係式に基づいて、前記エアバックの第1内圧を算出すると共に、前記エアバックの内圧によって前記インフレータ上方近傍に位置する前記エアバックに作用する引張応力と、衝突によって前記エアバックの重心位置を上方に移動させようとする前向きの慣性力により前記インフレータ上方近傍に位置する前記エアバックに作用する曲げ応力との関係式に基づいて、前記エアバックの第2内圧を算出し、前記第1及び第2内圧のうちの大きい値を基準として前記エアバックの内圧を設定する。
(作用)
本発明の第3特徴によると、例えば図5に示すように、エアバックの内圧によってエアバックの支持部(例えば図5の2a)に上向きの反力(例えば図5のR)が働くと、エアバックには支持モーメント(例えば図5のMb)が作用し、衝突によってエアバックの重心位置(例えば図5のa)を上方に移動させようとする前向きの慣性力(例えば図5のG・m)が働くと、エアバックには慣性モーメント(例えば図5のMa)が作用するので、エアバックに作用するモーメントのつり合いより、支持モーメントと慣性モーメントとの関係式を導くことができる。慣性モーメントは、例えば車両の衝突条件及びエアバックの仕様により定まり、支持モーメントは、例えばエアバックの第1内圧を未知数とするとエアバックの仕様により定まるため、支持モーメントと慣性モーメントとの関係式に基づいて未知数としたエアバックの第1内圧を算出できる(例えば式(1)〜式(3)参照)。
本発明の第3特徴によると、例えば図6に示すように、エアバックに内圧が働くと、インフレータ(例えば図6の4)上方近傍に位置するエアバックには引張応力(例えば図6のσa,σb)が作用し、衝突によってエアバックの重心位置(例えば図6のa)を上方に移動させようとする前向きの慣性力(例えば図6のG・m)が働くと、インフレータ上方近傍に位置するエアバックには曲げ応力が作用するので、インフレータの上方近傍に位置するエアバックに作用する応力に着目して引張応力と曲げ応力との関係式を導くことができる。曲げ応力は、例えば車両の衝突条件及びエアバックの仕様により定まり、引張応力は、例えばエアバックの第2内圧を未知数とすると、エアバックの仕様等により定まるため、引張応力と曲げ応力との関係式に基づいて未知数としたエアバックの第2内圧を算出できる(例えば式(4)〜式(8)参照)。
本発明の第3特徴によると、例えば、支持モーメントにより慣性モーメントが打ち消され、かつ、引張応力が曲げ応力に打ち勝つように、第1及び第2内圧のうちの大きい値を基準としてエアバックの内圧を設定することで、エアバックの後部が衝突による慣性力によって上方に揺れて跳ね上がることを防止できると共に、インフレータ上方近傍でのエアバックの上部が衝突による慣性力によって折れ難くなる。これにより、エアバックにより乗員を受け止める高さを安定させることができると共に、エアバックが潰れ難くなって、エアバックの衝撃吸収性能が低下することを防止できる。その結果、設定したエアバックの内圧に合わせてインフレータの容量を選定することで、例えば衝突実験等を繰り返さなくても、エアバックに適合するインフレータを容易に選定できる。
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、助手席エアバック装置の開発期間を短縮できると共に、助手席エアバック装置の開発コストを削減できる。
[助手席用エアバック装置の全体構成]
図1〜図3に基づいて車両に装備された助手席用エアバック装置1の全体構成について説明する。図1は、インストルメントパネル3内に収容されている状態での助手席用エアバック装置1付近の側面図である。図2は、膨張展開した状態での助手席用エアバック装置1付近の側面図であり、図3は、膨脹展開した状態での助手席用エアバック装置1付近の平面図である。
図1に示すように、助手席用エアバック装置1の装備された車両は、軽車両であり、車両のフロントガラス5は、インストルメントパネル3(以下、インパネ3と称す)の前端部から直立に近い状態で斜め上方後方に立設されている。
助手席用エアバック装置1は、助手席9の前方で、フロントガラス5の後方に位置するインパネ3の上部の内側に配設され、折り畳まれたエアバック2と、エアバック2に供給する膨張用ガスを発生させるインフレータ4と、エアバック2及びインフレータ4を収容するケース6とを備えて構成されている。
インパネ3の上面には、開口部3aが形成されており(図2参照)、この開口部3aからインパネ3の内部に収納されたエアバック2が、インフレータ4から供給される膨張用ガスにより後方上方に膨出するように構成されている。
ケース6は、箱形に成形されており、その上部に上方に開口された長方形状の開口が形成されている。開口の周縁は、外方側に折り曲げられた形状に成形されており、この外方側に折り曲げ成形された部分がインパネ3の開口部3aの周縁部に内面側から固定されている。ケース6底部の中央部には、インフレータ4を固定するためのインフレータ取付穴が形成されており、このインフレータ取付穴に上方からインフレータ4が固定されている。ケース6の底部にインフレータ4を固定した状態で、ケース6の内部に、折り畳まれたエアバック2が収容されている。
インパネ3の開口部3aには、開口部3aを上方から覆う開閉式の蓋7が、開口部3aの前部の左右方向の軸心周りに揺動開閉可能に取り付けられており、インフレータ4からの膨張用ガスがエアバック2に供給されると、この蓋7が前方へ揺動してインパネ3の開口部3aが開放すると共に、蓋7がインパネ3の前部上面側に接当して、エアバック2がインパネ3の外部に膨出し、エアバック2が前後向きに膨脹展開するように構成されている。
図2及び図3に示すように、エアバック2は、可撓性を有する複数の帯体を縫合又は溶着することよって袋体形状に構成されている。エアバック2の前部における下部には、インフレータ4を装着して膨張用ガスを導入するための開口が形成されており、インフレータ4をケース6に締め付け固定することで、エアバック2の開口の周縁部がケース6の底部に固定されるように構成されている。
エアバック2は、複数の帯体を縫合又は溶着することによって前後に長い横長形状に形成されている。膨脹展開した状態におけるエアバック3の形状は、左右方向での縦断面積が前部から後部に亘って徐々に大きくなるように構成されており、インパネ3の開口部3aより前側に膨出するエアバック2の容積が、インパネ3の開口部3aより後側に膨出する容積より小さくなるように設定されている。
図2に示すように、膨脹展開した状態におけるエアバック2の前部の形状は、側面視で、その下部が半円形に湾曲した形状に形成され、その上部がフロントガラス5に沿った形状に形成されている。膨脹展開した状態におけるエアバック2の後部の形状は、側面視で、大きく湾曲した形状に形成され、その上下中央部が助手席9に着座した乗員の胸部の直前方付近に位置するように形成されている。
インフレータ4からエアバック2に膨脹用ガスが供給されると、エアバック2の前部下部の支持部2aが揺動開閉した蓋7を介してインパネ3前部の上面側に接当し、エアバック2の前部における上部がフロントガラス5に接当しないで展開して、図2に示すエアバック2が膨脹展開した状態で、エアバック2がフロントガラス5と接当しないでフロントガラス5とエアバック2との間に所定の隙間が形成されるように構成されている。これにより、例えばエアバック2の容積を小さく抑えながら、効率よくエアバック2を膨脹展開することができる。なお、エアバック2の支持部2aが直接インパネ3前部の上面側に接当するように構成してもよい。
膨脹展開したエアバック2の前後中央部における下部には、上方に凹入した凹入部2bが形成されるように、エアバック2の袋体形状が設定されており、インフレータ4からエアバック2に膨脹用ガスが供給されると、エアバック2の凹入部2bが、開口部3aの後側に位置するインパネ3の上面側に接当しないで展開し、図2に示すエアバック2が膨脹展開した状態で、エアバック2の凹入部2bがインパネ3の上面側に接当しないように構成されている。これにより、凹入部2bの位置においてインパネ3からの反力がエアバック2に作用することを防止できる。
図3に示すように、膨脹展開した状態におけるエアバック2の前部の形状は、平面視で、左右中央部が少し前方に突出した形状に成形されている。膨脹展開した状態におけるエアバック2の後部の形状は、平面視で、左右両端部が湾曲した形状に成形されており、その左右中央部が助手席9に着座した乗員の胸部の左右中央部の直前方付近に位置するように形成されている。
図示しないが、エアバック2には、所定の位置にベントホールが配設されており、車両の衝突によって乗員が前のめりになって膨張展開したエアバック2に突っ込んだとき、このベントホールからエアバック2内の膨張用ガスを流出させてその衝撃をより効率良く吸収するように構成されている。
[衝突時に車両に作用する車体減速度について]
図4に基づいて、後述するエアバック2の内圧Pの設定に用いる衝突時に車両に作用する前向きの加速度(衝突による車両の減速に伴って作用する、車体、乗員等を前方に移動させようとする前向きの加速度,以下車体減速度Gと称する)、及びエアバック2の内圧Pの変化状況について説明する。図4は、衝突時に車両に作用する車体減速度G及びエアバック2の内圧Pの変化状況を説明するグラフである。図4(a)は、壁に車両を時速55キロ(km/h)で正面衝突させた場合の車体減速度Gの変化状況の一例を示すグラフであり、図4(b)は、壁に車両を時速64キロ(km/h)でオフセット衝突(壁に対して40%オフセット(60%ラップ))させた場合の車体減速度Gの変化状況の一例を示すグラフであり、横軸が時間tの経過(ms:ミリ秒)を示し、縦軸が車両に作用する車体減速度G(m/s)を示す。図4(c)は、衝突時におけるエアバック2の内圧Pの変化状況の概略を説明するグラフであり、横軸が時間tの経過(ms:ミリ秒)を示し、縦軸がエアバック2の内圧P(kPa:キロパスカル)を示す。
図4(a)に示すように、車両が壁に正面衝突すると(t0)、バンパー(図示せず)の変形等により車体減速度Gが上昇し(t1)、サイドメンバ(図示せず)の変形等により衝突エネルギが吸収されて車体減速度Gが減少する(t2)。そして、エンジンがエンジン後部のボディパネル(図示せず)と接触し始めて車体減速度Gが再び上昇し、ボディパネルが変形する。その後、車両は停止して車体減速度Gは、ゼロになる。
ここで、車両が壁に正面衝突した場合における車体減速度Gのピーク値は、時間t3において、GA≒500m/sである。
図4(b)に示すように、車両が壁にオフセット衝突すると(t0)、バンパー(図示せず)の変形等により車体減速度Gが上昇し(t1’)、サイドメンバ(図示せず)の変形等により衝突エネルギが吸収されて車体減速度Gが減少する(t2’)。そして、エンジンがエンジン後部のボディパネル(図示せず)と接触し始めて車体減速度Gが再び上昇し、ボディパネルが変形する。その後、車両は停止して車体減速度Gは、ゼロになる。
ここで、車両が壁にオフセット衝突した場合における車体減速度Gのピーク値は、時間t6(≒70ms)において、GB≒250m/sである。
図4(a)及び(b)に示すように、車両が壁にオフセット衝突した場合における車体減速度Gのピーク値GBは、車両が壁に正面衝突した場合における車体減速度Gのピーク値GAよりも低く、また、車両が壁にオフセット衝突した場合における車両が停止するまでの時間は、車両が壁に正面衝突した場合における車両が停止するまでの時間より長くなる。
図4(c)に示すように、車両が衝突すると(t0)、インフレータ4からの膨脹用ガスがエアバック2に供給されてエアバック2が展開し始め、車両が衝突してからしばらくの間は(t0〜t4)、インフレータ4からの膨脹用ガスがエアバック2の展開に用いられて、エアバック2の内圧Pは、複雑に変化する(図4(c)では、この間のエアバック2の内圧Pをゼロで示す)。エアバック2が図2に示すような状態に膨脹展開すると、インフレータ4からの膨脹用ガスがエアバック2の内圧Pの上昇に用いられて、エアバック2の内圧Pが上昇する(t4)。そして、エアバック2の内圧Pがピーク圧力P1に上昇してインフレータ4からエアバック2への膨脹用ガスの供給が終了し(t5(≒40ms))、その後、膨脹用ガスの温度変化等によりエアバック2の内圧Pが時間の経過に伴って徐々に下降する。
[慣性モーメントと支持モーメントとの関係式に基づいたエアバック内圧の算出方法]
図4及び図5に基づいて、慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいたエアバック2の内圧Pの算出方法について説明する。
図5は、衝突によってエアバック2の重心位置aを上方に移動させようとする前向きの車体減速度Gによりエアバック2に作用する慣性モーメントMaと、内圧Pによってエアバック2の支持部2aに上向きに作用する反力Rによりエアバック2に作用する支持モーメントMbとの関係を図示した助手席用エアバック装置1の概略側面図であり、図5に示す記号及び後述する式に用いる記号は、
m:エアバック2の質量
a:エアバック2の重心位置
b:慣性モーメントMa及び支持モーメントMbの支点
La:慣性モーメントMaのモーメントアーム
Lb:支持モーメントMbのモーメントアーム
S:エアバック2の支持部2aと蓋7(インパネ3)との接触面積(図3参照)
θ:重心位置aと支点bを結ぶ直線と、車体減速度Gの方向により形成される角度
R:エアバック2の内圧Pにより支持部2aに作用する反力
Gy:車体減速度Gの支点bまわりの成分
である。なお、図5においては、慣性モーメントMa及び支持モーメントMbの支点bの位置を、計算の簡略化等のため、インフレータ4の上方近傍におけるケース6上部の前後中間部の同じ位置に設定している。
ここで、車体減速度Gによりエアバック2に作用する慣性力は、G・mであるので、衝突時の車体減速度Gによりエアバック2に作用する支点bまわりの慣性モーメントをMaは、図5から、以下のように表すことができる。
Figure 0005038168
また、支点bまわりの支持モーメントをMbは、図5から、以下のように表すことができる。
Figure 0005038168
次に、支点bまわりのエアバック2に作用するモーメントのつり合いを考えると、支持モーメントMbが慣性モーメントMaより大きくなる場合(Mb>Ma)、式(1)及び式(2)より、以下の関係式を導くことができる。
Figure 0005038168
ここで、例えばエアバック2の仕様を、m=0.26kg,θ=25deg,La=0.32m,Lb=0.05m,S=0.02mとすると、G=GA=500m/sである場合、式(3)にこれらの値を代入すると、
P=PA>17.6kPa
が得られる。
図4(a)に示すように、G=GA=500m/sは、車両が壁に正面衝突した場合における車体減速度Gのピーク値であり、この車体減速度Gによってエアバック2に作用する慣性モーメントMaより支持モーメントMbが大きくなるように、エアバック2の内圧Pを設定することで、支持モーメントMbにより慣性モーメントMaが打ち消されて(慣性モーメントMaと支持モーメントMbとがつり合って)、車両が壁に正面衝突して車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の後部の上下方向への揺れを防止できる。
図4(c)に示すように、エアバック2の内圧Pは、膨脹展開した後に、ピーク圧力P1に上昇するため(t5(≒40ms))、この時間t5(≒40ms)において、エアバック2の内圧P1がP1=PA>17.6kPaとなるように設定すればよい。具体的には、例えば、時間t5(≒40ms)におけるエアバック2の内圧P1を18kPaに設定することで、車両が壁に正面衝突して車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の後部の上下方向への揺れ等を効果的に防止できる。
また、例えばエアバック2の仕様を、m=0.26kg,θ=25deg,La=0.32m,Lb=0.05m,S=0.02mとすると、G=GB=250m/sである場合、式(3)にこれらの値を代入すると、
P=PB>8.8kPa
が得られる。
図4(b)に示すように、G=GB=250m/sは、車両が壁にオフセット衝突した場合における車体減速度Gのピーク値であり、この車体減速度Gによってエアバック2に作用する慣性モーメントMaより支持モーメントMbが大きくなるように、エアバック2の内圧Pを設定することで、支持モーメントMbにより慣性モーメントMaが打ち消されて(慣性モーメントMaと支持モーメントMbとがつり合って)、車両が壁にオフセット衝突して車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の後部の上下方向への揺れ等を防止できる。
図4(c)に示すように、エアバック2の内圧Pは、膨脹展開しピーク圧力P1に上昇した後、時間の経過に伴って徐々に下降するため、車両が壁にオフセット衝突し車体減速度Gがピーク値に達する時間t6(≒70ms)において、エアバック2の内圧P2がP2=PB>8.8kPaとなるように設定すればよい。具体的には、例えば、時間t6(≒70ms)におけるエアバック2の内圧P2を9kPaに設定することで、車両が壁にオフセット衝突して車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の後部の上下方向への揺れ等を効果的に防止できる。
従って、図4(c)に示すように、時間t5(≒40ms)におけるエアバック2の内圧P1を18kPaに設定すると共に、時間t6(≒70ms)におけるエアバック2の内圧P2を9kPaに設定することで、車両が壁に正面衝突した場合及び車両が壁にオフセット衝突した場合のいずれの場合においても、車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の後部の上下方向の揺れ等を効果的に防止でき、エアバック2の膨脹展開時の挙動を安定させることができる。
[引張応力と曲げ応力との関係式に基づいたエアバック内圧の算出方法]
図4及び図6に基づいて、内圧Pによりエアバック2に作用する引張応力σaと、慣性モーメントMaによりエアバック2に作用する曲げ応力σmとの関係式に基づいたエアバック2の内圧Pの算出方法について説明する。
図6は、エアバック2を剛体の薄肉円筒に仮定(モデリング)し、衝突によってエアバック2の重心位置aを上方に移動させようとする前向きの車体減速度Gによりエアバック2に作用する慣性モーメントMaと、内圧Pによってエアバック2に作用する引張応力σa,σbとを図示した概略図であり、図6(a)は、薄肉円筒に仮定したエアバック2の縦断側面図であり、図6(b)は、薄肉円筒に仮定したエアバック2の縦断背面図である。ここで、図6における記号及び後述する式に用いる記号は、
m:エアバック2の質量
a:エアバック2の重心位置
b:慣性モーメントMaの支点
La:慣性モーメントMaのモーメントアーム
θ:重心位置aと支点bを結ぶ直線と、車体減速度Gの方向により形成される角度
t:エアバック2の厚み
D:エアバック2の外径
Gy:車体減速度Gの支点bまわりの成分
である。なお、図6においては、慣性モーメントMaの支点bの位置を、計算の簡略化等のため、インフレータ4の上方近傍におけるケース6上部の前後中間部に設定している。また、エアバック2の外径Dは、例えばインフレータ4の上方近傍における膨脹展開時のエアバック2の周長から算出したものであってもよく、例えばインフレータ4の上方近傍における膨脹展開時のエアバック2の幅と高さから平均値を算出したものであってもよい。
ここで、薄肉円筒に仮定したエアバック2に内圧Pが作用した場合におけるエアバック2に作用する長手方向(前後方向)での引張応力σaは、図6から力のつり合いの式を立てて解くと、以下のように表すことができる。
Figure 0005038168
また、薄肉円筒に仮定したエアバック2に内圧Pが作用した場合におけるエアバック2に作用する円周方向での引張応力σbは、図6から力のつり合いの式を立てて解くと、以下のように表すことができる。
Figure 0005038168
この実施形態では、エアバック2の形状を薄肉円筒に仮定(モデリング)した例を示したが、異なる形状にエアバック2の形状を仮定(モデリング)してもよく、例えば薄肉楕円筒や薄肉角筒等に仮定(モデリング)してもよい。この場合、引張応力σa,σbは、周知の材料力学等における計算式により、式(4)及び式(5)と異なる式で表わされる。
また、慣性モーメント(曲げモーメント)Maによりエアバック2に作用する曲げ応力σmは、衝突時の車体減速度Gによりエアバック2に作用する支点bまわりの慣性モーメント(曲げモーメント)をMaとし、薄肉円筒に仮定したエアバック2の断面係数をZとすると、以下のように表すことができる。
Figure 0005038168
ここで、衝突時の車体減速度Gによりエアバック2に作用する支点bまわりの慣性モーメント(曲げモーメント)Maは、式(1)と同様であるため、式(1)のMaを式(6)に代入すると、以下のように表すことができる。
Figure 0005038168
すなわち、インフレータ4の上方近傍における薄肉円筒に仮定されたエアバック2には、引張応力σa,σbと曲げ応力σmとが作用する。ここで、エアバック2の上部の折れに関連性が強いエアバック2の前後方向に作用する応力についてのみ着目すると、インフレータ4の上方近傍における薄肉円筒に仮定されたエアバック2には、引張応力σaと曲げ応力σmが作用する。
つまり、エアバック2には、内圧Pにより引張応力σaが作用し前後方向に引っ張られるが、衝突による車体減速度Gによって慣性モーメントMaが作用すると、エアバック2は、インフレータ4の上方近傍における図6(a)のAの位置において下方(側面視でV字状)に折れ曲がろうとする。従って、曲げ応力σmに対して引張応力σaが大きくなるように設定することで、慣性モーメントMaによる曲げ応力σmに引張応力σaが打ち勝って、衝突時の車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の上部の折れ等を防止できる。
例えば、引張応力σaが曲げ応力σmより大きくなるように設定した場合(σa>σm)、式(4)及び式(7)より、以下の関係式を導くことができる。
Figure 0005038168
なお、この実施形態では、引張応力σaと曲げ応力σmとにより、式(8)の関係式を導出した例を示したが、引張応力σbを加味して関係式を導出してもよい。この場合、例えば引張応力σa及び引張応力σbの和と、曲げ応力σmとにより関係式を導出してもよい。
例えばエアバック2の仕様を、m=0.26kg,θ=25deg,La=0.32m,t=0.0005m,Z=1.96E−04m,D=0.2mとすると、G=GA=500m/sである場合、式(8)にこれらの値を代入すると、
P=PA’>0.9kPa
が得られる。なお、エアバック2の仕様(m,θ,La等)は、上述した慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいたエアバック2の内圧Pの算出方法の場合と同様である。
ここで、図4(a)に示すように、G=GA=500m/sは、車両が壁に正面衝突した場合における車体減速度Gのピーク値であり、この車体減速度Gによってエアバック2に作用する曲げ応力σmより引張応力σaが大きくなるように設定することで、慣性モーメントMaによる曲げ応力σmに引張応力σaが打ち勝って、車両が壁に正面衝突した場合におけるエアバック2の上部の折れ等を効果的に防止できる。
図4(c)に示すように、エアバック2の内圧Pは、膨脹展開した後に、ピーク圧力P1に上昇するため(t5(≒40ms))、この車体減速度Gがピーク値に達する時間t5(≒40ms)において、エアバック2の内圧P1がP1=PA’>0.9kPaとなるように設定すればよい。具体的には、例えば、時間t5(≒40ms)におけるエアバック2の内圧P1を1kPaに設定することで、車両が壁に正面衝突して車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の上部の折れ等を効果的に防止できる。
また、例えばエアバック2の仕様を、m=0.26kg,θ=25deg,La=0.32m,t=0.0005m,Z=1.96E−04m,D=0.2mとすると、G=GB=250m/sである場合、式(8)にこれらの値を代入すると、
P=PB’>0.45kPa
が得られる。なお、エアバック2の仕様(m,θ,La等)は、上述した慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいたエアバック2の内圧Pの算出方法の場合と同様である。
図4(b)に示すように、G=GB=250m/sは、車両が壁にオフセット衝突した場合における車体減速度Gのピーク値であり、この車体減速度Gによってエアバック2に作用する曲げ応力σmより引張応力σaが大きくなるように設定することで、慣性モーメントMaによる曲げ応力σmに引張応力σaが打ち勝って、車両が壁にオフセット衝突した場合におけるエアバック2の上部の折れ等を効果的に防止できる。
図4(c)に示すように、エアバック2の内圧Pは、膨脹展開しピーク内圧P1に上昇した後、時間の経過に伴って徐々に下降するため、車両が壁にオフセット衝突し車体減速度Gがピーク値に達する時間t6(≒70ms)において、エアバック2の内圧P2がP2=PB’>0.45kPaとなるように設定すればよい。具体的には、例えば、時間t6(≒70ms)におけるエアバック2の内圧P2を0.5kPaに設定することで、車両が壁にオフセット衝突して車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の上部の折れ等を効果的に防止できる。
従って、図4(c)に示すように、時間t5(≒40ms)におけるエアバック2の内圧P1を1kPaに設定すると共に、時間t6(≒70ms)におけるエアバック2の内圧P2を0.5kPaに設定することで、車両が壁に正面衝突した場合及び車両が壁にオフセット衝突した場合のいずれの場合においても、車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の上部の折れを効果的に防止でき、乗員を効果的に保護できる。
[エアバック内圧の設定方法]
上述した慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係に基づいて算出したエアバック2の内圧PA,PB(第1内圧に相当)、及び、引張応力σaと曲げ応力σmとの関係に基づいて算出したエアバック2の内圧PA’,PB’(第2内圧に相当)のうちの大きい値を基準としたエアバック2の内圧Pの設定方法について説明する。
慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PAは、PA>17.6kPaであり、引張応力σaと曲げ応力σmとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA’は、PA’>0.9kPaであるため、慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA>17.6kPaを満たすように、車体減速度Gがピーク値に達する時間t5(≒40ms)におけるエアバック2の内圧P1を設定することで、両条件を満たすことになる。
従って、例えば、時間t5(≒40ms)におけるエアバック2の内圧P1を18kPaに設定することで、車両が壁に正面衝突した場合において、車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の後部の揺れ及びエアバック2の上部の折れの双方を効果的に防止できる。
慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PBは、PB>8.8kPaであり、引張応力σaと曲げ応力σmとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PB’は、PB’>0.45kPaであるため、慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PB>8.8kPaを満たすように、車体減速度Gがピーク値に達する時間t6(≒70ms)におけるエアバック2の内圧P2を設定することで、両条件を満たすことになる。
従って、例えば、時間t6(≒70ms)におけるエアバック2の内圧P2を9kPaに設定することで、車両が壁にオフセット衝突した場合において、車体減速度Gがエアバック2に作用することによるエアバック2の後部の揺れ及びエアバック2の上部の折れの双方を効果的に防止できる。
なお、上述した車両の衝突条件及びエアバック2の仕様では、慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA,PBが、引張応力σaと曲げ応力σmとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA’,PB’より大きくなった場合を例に示したが、車両の衝突条件又はエアバック2の仕様が異なる場合において、曲げ応力σmと引張応力σaとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA’,PB’が、慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA,PBより大きくなる場合は、時間t5(≒40ms)におけるエアバック2の内圧P1を、PA’を基準に設定し、時間t6(≒70ms)におけるエアバック2の内圧P2を、PB’を基準に設定してもよい。
上記のようにエアバック2の内圧Pを設定することで、設定したエアバック2の内圧Pに合わせてインフレータ4の容量を選定でき、エアバック2の性能を確認するための車両の衝突実験(上記の方法で設定した内圧Pによりエアバック2の後部の揺れ及びエアバック2の上部の折れが生じ難くなることを確認するための車両の衝突実験)を行うことで、エアバック2に適合したインフレータ4を決定できる。これにより、エアバック2の内圧を設定するための衝突実験等を繰り返さなくても、エアバック2に適合するインフレータ4を容易に選定できる。
また、この実施形態での助手席用エアバック装置1のように、エアバック2の容積及びインフレータ4の容量を小さく抑えてエアバック2の前部をフロントガラス5に接当させないで膨脹展開させるように構成すると、フロントガラス5に接当させてエアバック2の挙動を安定させることができず、エアバック2の挙動が不安定になり易い。換言すれば、エアバック2をフロントガラス5に接当させて安定させようとすると、エアバック2の容積及びインフレータ4の容量が大きくなる。しかし、上記のようにエアバック2の内圧Pを設定することで、エアバック2の容積を小さく抑えてインフレータ4の容量を小さく設定しながら、エアバック2の後部の揺れやエアバック2の上部の折れを防止でき、エアバック2の膨脹展開時の挙動を安定させることができる。これにより、乗員を効果的に保護できる助手席用エアバック装置1を低コストで実現できるのである。
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、エアバック2の前部における上部がフロントガラス5に接当しないで展開し、エアバック2が膨脹展開した状態で、フロントガラス5とエアバック2との間に所定の隙間が形成されるように構成した例を示したが、例えば図7に示すような助手席用エアバック装置1を構成してもよい。
図7に示すように、エアバック2の前部における上部がフロントガラス5に接当しながら展開し、エアバック2が膨脹展開した状態で、フロントガラス5とエアバック2が接当するように構成してもよい。この場合、内圧Pによりフロントガラス5から受ける反力Fを加味して、エアバック2の内圧Pを設定してもよい。具体的には、例えば反力Fにより支点bまわりに作用するモーメントと支持モーメントMbとの和が、慣性モーメントMaより大きくなるように、エアバック2の内圧Pを設定してもよい。
また、図示しないが、エアバック2の前部における上部がフロントガラス5に接当しながら展開し、エアバック2が膨脹展開した状態で、エアバック2がフロントガラス5と接当しないでフロントガラス5とエアバック2との間に所定の隙間が形成されるように構成してもよい。
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、支持モーメントMbが慣性モーメントMaより大きくなるように(Mb>Ma)、式(3)によりエアバック2の内圧Pを設定した例を示したが、支持モーメントMbが慣性モーメントMaに定数Xを乗じた値より大きくなるように(Mb>Ma×X)、エアバック2の内圧Pを設定してもよい。この場合の内圧Pは、式(1)及び式(2)により、以下のように表わすことができる。
Figure 0005038168
ここで、定数Xは、1より大きい実数、及び、1より小さい実数のいずれをも含み、例えば式(9)に表れないエアバック2の仕様やエアバック2の使用条件等の差異によって、定数Xの値を変更してエアバック2の内圧Pを設定する。
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、引張応力σaが曲げ応力σmより大きくなるように(σa>σm)、式(8)によりエアバック2の内圧Pを設定した例を示したが、引張応力σaが曲げ応力σmに定数Yを乗じた値より大きくなるように(σa>σm×Y)、エアバック2の内圧Pを設定してもよい。この場合の内圧Pは、式(4)及び式(7)により、以下のように表わすことができる。
Figure 0005038168
ここで、定数Xは、1より大きい実数、及び、1より小さい実数のいずれをも含み、例えば式(10)に表れないエアバック2の仕様やエアバック2の使用条件等の差異によって、定数Yの値を変更してエアバック2の内圧Pを設定する。
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA,PB、及び、引張応力σaと曲げ応力σmとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA’,PB’のうちの大きい値を基準として、エアバック2の内圧Pを設定した例を示したが、慣性モーメントMaと支持モーメントMbとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA,PBのみによって、エアバック2の内圧Pを設定してもよく、引張応力σaと曲げ応力σmとの関係式に基づいて算出したエアバック2の内圧PA’,PB’のみによって、エアバック2の内圧Pを設定してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、及び[発明の実施の第2別形態]においては、車両が壁に正面衝突した場合及び車両が壁にオフセット衝突した場合のいずれの場合においても、式(3)又は式(8)の関係式を満たすように、エアバック2の内圧Pを設定した例を示したが、車両が壁に正面衝突した場合又は車両が壁にオフセット衝突した場合のいずれか一方の場合において、式(3)又は式(8)の関係式を満たすように、エアバック2の内圧Pを設定してもよい。
また、エアバック2の内圧Pの算出に用いる車体減速度Gの数値として異なる車体減速度Gの数値を採用してもよく、例えば図4(a)において、車体減速度Gのピーク値GAではなく、図4(a)の時間t5における車体減速度Gの数値を、エアバック2の内圧Pの算出に用いてもよい。更には、例えば壁に車両を異なる速度で正面衝突又はオフセット衝突させた場合の車体減速度Gを、エアバック2の内圧Pの算出に用いてもよい。
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、及び[発明の実施の第3別形態]においては、エアバック2の内圧Pを未知数とし、式(3)又は式(9)にエアバック2の仕様等を代入してエアバック2の内圧Pを算出した例を示したが、エアバック2の内圧Pを予め設定し、エアバック2の仕様等(G,m,θ,La,Lb,S)のいずれか一以上を未知数として、この未知数としたエアバック2の仕様を算出することで、エアバック2の内圧Pに適合するエアバック2の仕様を設定するように構成してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、及び[発明の実施の第3別形態]においては、エアバック2の内圧Pを未知数とし、式(8)又は式(10)にエアバック2の仕様等を代入してエアバック2の内圧Pを算出した例を示したが、エアバック2の内圧Pを予め設定し、エアバック2の仕様等(t,G,m,θ,La,Z,D)のいずれか一以上を未知数として、この未知数としたエアバック2の仕様を算出することで、エアバック2の内圧Pに適合したエアバック2の仕様を設定するように構成してもよい。
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、及び[発明の実施の第4別形態]においては、フロントガラス5が直立に近い状態で立設されている軽車両に助手席用エアバック装置1を採用した例を示したが、フロントガラス5の形状等が異なる車両においても同様に適用でき、例えばフロントガラス5が斜め後方に大きく傾斜しているセダンタイプの車両においても同様に適用できる。
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、及び[発明の実施の第4別形態]においては、助手席用エアバック装置1を乗用車に装備した例を示したが、乗用車に限らず商用車(例えばトラック等)に装備する助手席用エアバック装置(図示せず)においても同様に適用できる。
インパネ内に収容されている状態での助手席用エアバック装置付近の側面図 膨張展開した状態での助手席用エアバック装置付近の側面図 膨脹展開した状態での助手席用エアバック装置付近の平面図 衝突時に車両に作用する車体減速度及びエアバック内圧の変化状況を説明するグラフ 慣性モーメントと支持モーメントとの関係を図示した助手席用エアバック装置の概略側面図 薄肉円筒に仮定したエアバックに慣性モーメントと引張応力を図示した概略図 発明の実施の第1別形態における助手席用エアバック装置の概略側面図
符号の説明
1 助手席用エアバック装置
2 エアバック
2a 支持部
3 インストルメントパネル
4 インフレータ
G・m 慣性力
Ma 慣性モーメント
Mb 支持モーメント
P エアバックの内圧
R 反力
a エアバックの重心位置
σa 引張応力
σm 曲げ応力

Claims (3)

  1. インフレータから供給される膨脹用ガスにより、インストルメントパネルの上部からエアバックが前後向きに膨脹展開するように構成し、
    膨脹展開した前記エアバックの重心位置を、前記インフレータより後方に設定すると共に、前記エアバックの前部に、膨脹展開した状態で前記インフレータより前側の前記インストルメントパネルの上面側に支持される支持部と、前記エアバックの前記インフレータより後方の下部に、膨張展開した状態で前記インストルメントパネルの上面に接当しないように上方に凹入する凹入部と、を備え、
    前記エアバックの内圧によって前記エアバックの支持部に上向きに作用する反力により前記エアバックに作用する支持モーメントと、衝突によって前記エアバックの重心位置を上方に移動させようとする前向きの慣性力により前記エアバックに作用する慣性モーメントとの関係式に基づいて、前記エアバックの内圧を設定した助手席用エアバック装置。
  2. インフレータから供給される膨脹用ガスにより、インストルメントパネルの上部からエアバックが前後向きに膨脹展開するように構成し、
    膨脹展開した前記エアバックの重心位置を、前記インフレータより後方に設定すると共に、前記エアバックの前部に、膨脹展開した状態で前記インフレータより前側の前記インストルメントパネルの上面側に支持される支持部を備え、
    前記エアバックの内圧によって前記インフレータ上方近傍に位置する前記エアバックに作用する引張応力と、衝突によって前記エアバックの重心位置を上方に移動させようとする前向きの慣性力により前記インフレータ上方近傍に位置する前記エアバックに作用する曲げ応力との関係式に基づいて、前記エアバックの内圧を設定した助手席用エアバック装置。
  3. インフレータから供給される膨脹用ガスにより、インストルメントパネルの上部からエアバックが前後向きに膨脹展開するように構成し、
    膨脹展開した前記エアバックの重心位置を、前記インフレータより後方に設定すると共に、前記エアバックの前部に、膨脹展開した状態で前記インフレータより前側の前記インストルメントパネルの上面側に支持される支持部を備え、
    前記エアバックの内圧によって前記エアバックの支持部に上向きに作用する反力により前記エアバックに作用する支持モーメントと、衝突によって前記エアバックの重心位置を上方に移動させようとする前向きの慣性力により前記エアバックに作用する慣性モーメントとの関係式に基づいて、前記エアバックの第1内圧を算出すると共に、
    前記エアバックの内圧によって前記インフレータ上方近傍に位置する前記エアバックに作用する引張応力と、衝突によって前記エアバックの重心位置を上方に移動させようとする前向きの慣性力により前記インフレータ上方近傍に位置する前記エアバックに作用する曲げ応力との関係式に基づいて、前記エアバックの第2内圧を算出し、
    前記第1及び第2内圧のうちの大きい値を基準として前記エアバックの内圧を設定した助手席用エアバック装置。
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