以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのカラーのプリンタについて説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
図において、10Bk、10Y、10M、10Cはブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成ユニット、13は図示されない媒体収容部としての用紙カセットから供給された媒体としての用紙pを搬送するためのレジストローラ、14は該レジストローラ13と対向させて配設され、用紙pを加圧して搬送する加圧ローラ、u1は、前記各画像形成ユニット10Bk、10Y、10M、10Cと対向させて配設された転写ユニットである。
該転写ユニットu1は、第1のローラとしての駆動ローラr1、第2のローラとしての従動ローラr2、前記駆動ローラr1及び従動ローラr2によって張設され、走行自在に配設され、所定の走行速度で走行させられるのに伴って、前記レジストローラ13から送られた用紙pを、前記所定の走行速度(搬送速度)で搬送する第1の転写部材としての、かつ、ベルト部材としての転写ベルト12、及び該転写ベルト12を介して(挟んで)各画像形成ユニット10Bk、10Y、10M、10Cと対向させて配設された第2の転写部材としての転写ローラ19を備える。前記駆動ローラr1は、媒体搬送用の駆動部としてのベルト走行用モータ(M)16を駆動することによって、回転させられ、転写ベルト12を走行させる。
前記各画像形成ユニット10Bk、10Y、10M、10Cは、現像剤像としてのトナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17C、帯電装置としての図示されない帯電ローラ、現像剤担持体としての現像ローラ22等を備える。また、前記各画像形成ユニット10Bk、10Y、10M、10Cに隣接させて露光装置としてのLEDヘッド21が配設される。
前記各画像形成ユニット10Bk、10Y、10M、10Cにおいて、帯電ローラは各感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cの表面を一様に帯電させ、前記各LEDヘッド21は各感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cの表面を露光して潜像としての静電潜像を形成する。続いて、前記各現像ローラ22が現像剤としての図示されないトナーを前記静電潜像に付着させて現像し、トナー像を形成する。そして、前記各転写ローラ19は、転写ベルト12が各感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cに沿って走行させられ、それに伴って用紙pが搬送されると、前記各トナー像を用紙pに順次重ねて転写し、カラーのトナー像を形成する。なお、前記各感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cと各転写ローラ19との間に、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各転写部が形成される。
続いて、用紙pは、定着装置としての定着器18に送られ、該定着器18においてカラーのトナー像が用紙pに定着され、カラーの画像が形成される。
次に、前記構成のプリンタの制御装置について説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの制御装置を示すブロック図である。
図に示されるように、機構制御部48は、前記ベルト走行用モータ(M)16、感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17C等を回転させるための画像形成用の駆動部としてのID駆動用モータ(M)39等の回転速度を制御するモータ制御部50、前記現像ローラ22及び転写ローラ19に印加する電圧を制御する高圧制御部49、前記LEDヘッド21の駆動を制御する露光制御部としてのLEDヘッド制御部47、画像処理部51等が接続され、プリンタの全体の制御を行う。前記ID駆動用モータ39は、感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cに共通に配設される。
また、前記機構制御部48は、記憶装置56、演算装置としてのCPU55、計時部としてのタイマ57及び計数部としてのカウンタ58を備える。
なお、52は高圧電源、10Bk、10Y、10M、10Cは画像形成ユニットである。
次に、前記感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cの駆動系について説明する。
図4は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの駆動系を示す斜視図、図5は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの駆動系を示す正面図である。
図において、17Bk、17Y、17M、17Cは感光体ドラムであり、該各感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cの一端に、被駆動ギヤ31Bk、31Y、31M、31Cが圧入によって取り付けられる。
また、33Bk、33Y、33M、33Cは、感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cに回転を伝達するために、前記被駆動ギヤ31Bk、31Y、31M、31Cと連結され、かつ、噛合させられた第1のアイドルギヤであり、該第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cは、小径のギヤ34Bk、34Y、34M、34C及び大径のギヤ35Bk、35Y、35M、35Cを備える。
そして、40はID駆動用モータ39の回転を出力するためのギヤであり、該ギヤ40とギヤ35Bkとが噛合させられる。前記ID駆動用モータ39を駆動することによって発生させられた回転は、ギヤ40によって減速させられてギヤ35Bkに伝達される。また、44〜46は第2のアイドルギヤであり、ギヤ35Bkと35Yとが第2のアイドルギヤ44を介して、ギヤ35Yと35Mとが第2のアイドルギヤ45を介して、ギヤ35Mと35Cとが第2のアイドルギヤ46を介してそれぞれ噛合させられ、ギヤ35Bkに伝達された回転はギヤ35Y、35M、35Cに伝達される。
また、前記ギヤ34Bk、34Y、34M、34Cと被駆動ギヤ31Bk、31Y、31M、31Cとがそれぞれ噛合させられ、前記各ギヤ35Bk、35Y、35M、35Cに伝達された回転は、被駆動ギヤ31Bk、31Y、31M、31Cに伝達され、感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cを回転させる。なお、第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cは、減速ギヤとして機能し、ギヤ34Bk、34Y、34M、34Cからの回転を減速させ、被駆動ギヤ31Bk、31Y、31M、31Cに伝達する。そのために、ギヤ34Bk、34Y、34M、34Cの歯数Z1は24に、被駆動ギヤ31Bk、31Y、31M、31Cの歯数Z3は38にされる。
ところで、前記構成のプリンタにおいては、前記ID駆動用モータ39の回転を減速させる各第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cが偏心している場合、前記感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cの周速度に速度変動が生じると、各転写部における前記感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cに位置ずれが発生してしまう。その結果、各転写部で転写されるトナー像にずれが生じ、色ずれが発生してしまう。また、各感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cの速度変動が、用紙pの搬送速度に伝達され、搬送速度に速度変動が生じてしまう。その結果、転写される各トナー像にずれが生じ、各色間で色ずれが発生してしまう。
そこで、本実施の形態においては、前記各第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cにおける隣接する第1のアイドルギヤ間に位相差を設定することによって、各色間で色ずれが発生するのを防止するようにしている。
次に、各色間で色ずれが発生するメカニズムについて説明する。この場合、隣接する各画像形成ユニット間の関係は同じであるので、画像形成ユニット10Bkと画像形成ユニット10Yとの関係について説明する。
図6は本発明の第1の実施の形態における隣接する画像形成ユニットの関係を示す図である。
この場合、感光体ドラム17Bk、17Yの直径d1を30〔mm〕とし、感光体ドラム17Bk及び転写ローラ19によって形成される転写部と、感光体ドラム17Y及び転写ローラ19によって形成される転写部との間隔Lbyを72〔mm〕とし、各LEDヘッド21及び対応する各転写部が感光体ドラム17Bk、17Y上で成す角度を180〔°〕とする。なお、12は転写ベルト、pは用紙である。
次に、隣接する画像形成ユニット間の駆動系について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における隣接する画像形成ユニット間の駆動系の要部を示す図、図7は本発明の第1の実施の形態におけるマーキングの第1の説明図、図8は本発明の第1の実施の形態におけるマーキングの第2の説明図である。
本実施の形態においては、前記各第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cは、同じ成形型を使用して成形されるので、偏心している場合、同じ偏心特性(回転特性)を有することになる。そこで、本実施の形態においては、成形時に、図7に示されるように、各第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cの円周方向における回転特性上の同じ位置、すなわち、同じ偏心位相に識別部としてのマーク53を形成することによって、マーキングを行うようにしている(図7においては、第1のアイドルギヤ33Bkについてだけ示す。)。なお、本実施の形態において、マーク53は、ギヤ35Bk、35Y、35M、35Cの外周縁上に形成される。
この場合、第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cが偏心していると、第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cを回転させたときに、偏心量は、図8に示されるように変化する。前記マーク53は、各第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cにおいて共通の位置であるかぎり、円周方向における任意の位置に形成することができるので、例えば、図8に示されるように、第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cを一周させたときの偏心量がピークになる位置に形成することができる。
本実施の形態においては、図1に示されるように、第1のアイドルギヤ33Bkに対して第1のアイドルギヤ33Yが位相差θだけ進められる。この場合、位相差θは負の値を採る。すなわち、ギヤ35Bkに形成されたマーク53の位置と、ギヤ35Yに形成されたマーク53の位置とが、前記位相差θの角度だけずらされ、ギヤ35Yに形成されたマーク53は、ギヤ35Bkに形成されたマーク53より回転方向において下流側に位置させられる。
次に、前記構成のプリンタにおいてブラックのトナー像を転写する際の動作について説明する。
図9は本発明の第1の実施の形態における用紙の速度変動を説明する図、図10は本発明の第1の実施の形態における速度変動の伝達率の概念を示す図である。なお、図10において、横軸に時間を、縦軸に速度変動及び伝達率を採ってある。
図9において、12は転写ベルト、17Bk、17Yは感光体ドラム、19は転写ローラ、r1は駆動ローラ、pは用紙である。
また、図10において、L1は感光体ドラム17Bkの周速度に生じる速度変動を、L2は用紙pの搬送速度に生じる速度変動を、L3は伝達率Kを示す。
この場合、感光体ドラム17Bkのある周期における速度変動に対する用紙pの同じ周期における速度変動の割合を、伝達率Kとして計測した。なお、本実施の形態において、感光体ドラム17Bkの直径d1は30〔mm〕に、ギヤ34Bkの歯数Z1は24に、被駆動ギヤ31Bkの歯数Z3は38にされるので、ギヤ34Bkが1回転すると、感光体ドラム17Bkは1周期において、
30×π×24/38≒59〔mm〕
の長さだけ移動する。
このとき、図10に示されるように、ギヤ34Bkの周期の速度変動は用紙pに伝達率K
K=40〔%〕
で伝達され、用紙pに同じ周期の速度変動が生じた。
また、感光体ドラム17Bkの平均の周速度、及び転写ベルト12の平均の走行速度を、いずれも、
V=155〔mm/s〕
とし、第1のアイドルギヤ33Bkの偏心による感光体ドラム17Bkの速度変動ΔV0を0.075〔mm/s〕とすると、速度変動の周期T1は0.384〔s〕となる。
そして、前記LEDヘッド21によって感光体ドラム17Bkの露光を開始してから時間sが経過した後の感光体ドラム17Bkの速度変動ΔV(s)〔mm/s〕は、
ΔV(s)=ΔV0・sin(2π・s/T1) ……(1)
で表される。
したがって、画像形成ユニット10Bk(図2)において、露光が行われてから転写が行われるまでの、感光体ドラム17Bkが180〔°〕回転する時間をα〔s〕としたとき、用紙pに速度変動が生じていない場合の、転写部における感光体ドラム17Bkの位置ずれD1は、前記速度変動ΔV(s)〔mm/s〕を時間s
s=t
から
s=t+α
まで積分した値になる。すなわち、前記位置ずれD1〔mm〕は、
となる。
また、画像形成ユニット10Yにおいて、転写部における感光体ドラム17Yの位置ずれD2は、転写ベルト12がブラックの転写部とイエローの転写部との間隔Lbyを走行させられる時間をβとし、第1のアイドルギヤ33Yが位相差θの角度だけ回転するのに必要な時間をγとすると、前記速度変動ΔV(s)〔mm/s〕を時間s
s=t+β+γ
から
s=t+α+β+γ
まで積分した値になる。すなわち、前記位置ずれD2〔mm〕は、
となる。
次に、隣接する画像形成ユニット10Bk、10Y間における用紙pの速度変動が生じている場合について説明する。
図11は本発明の第1の実施の形態における隣接する感光体ドラムの動作を示す図、図12は本発明の第1の実施の形態における隣接する感光体ドラムを同位相で回転させたときの用紙の速度変動を表す図、図13は本発明の第1の実施の形態における隣接する感光体ドラムを逆位相で回転させたときの用紙の速度変動を表す図である。なお、図12及び13において、横軸に時間を、縦軸に速度変動を採ってある。
図11において、17Bk、17Cは感光体ドラム、12は転写ベルト、19は転写ローラ、pは用紙である。
図12及び13において、L11は感光体ドラム17Bkの速度変動を、L12は用紙pの速度変動を、L13は感光体ドラム17Yの速度変動を示す。
この場合、用紙pの速度変動をΔV2〔mm/s〕とし、感光体ドラム17Bkの速度変動の用紙pへの伝達率をA〔%〕とする。
そして、第1のアイドルギヤ33Bk、33Y間の位相差θを零(0)〔°〕にすると、感光体ドラム17Bk、17Yが同位相で回転させられ、図12に示されるように、用紙pにおいても同位相で速度変動ΔV2が生じる。これに対して、第1のアイドルギヤ33Bk、33Y間の位相差θを180〔°〕にすると、感光体ドラム17Bk、17Yが逆位相で回転させられ、図13に示されるように、用紙pに生じる速度変動ΔV2〔mm/s〕はほぼ零になる。
すなわち、用紙pの速度変動ΔV2〔mm/s〕が生じている場合の、前記LEDヘッド21によって感光体ドラム17Bkの露光を開始してから時間sが経過した後の感光体ドラム17Bkの速度変動ΔV2(s)は、
で表すことができる。
したがって、画像形成ユニット10Bkにおいて、露光が行われてから転写が行われるまでの、感光体ドラム17Bkが180〔°〕回転する時間をα〔s〕としたとき、用紙pに速度変動が生じている場合の、転写部における感光体ドラム17Bkの位置ずれD3〔mm〕は、前記速度変動ΔV2(s)〔mm/s〕を時間s〔s〕
s=t
から
s=t+α
まで積分した値になる。
また、用紙pに速度変動が生じている場合の、転写部における感光体ドラム17Yの位置ずれD4〔mm〕は、前記式(4)の積分に対して
s=t+α+βとして、
となる。
最終的に、感光体ドラム17Bk、17Yによって転写ベルト12に転写後のブラック及びイエローの各トナー像のずれ、すなわち、2色間の色ずれZは、
Z=(D2−D4)−(D1−D3) ……(7)
となる。
図14は本発明の第1の実施の形態における隣接する感光体ドラムを同位相で回転させたときの色ずれを表す図、図15は本発明の第1の実施の形態における隣接する感光体ドラムを逆位相で回転させたときの色ずれを表す図である。なお、図14及び15において、横軸に時間を、縦軸に位置ずれ及び色ずれを採ってある。
図において、L21は転写部における感光体ドラム17Bkの位置ずれを、L22は転写部における感光体ドラム17Yの位置ずれを、L23はブラックとイエローとの間の色ずれを示す。
図に示されるように、感光体ドラム17Bk、17Yを同位相で回転させても、逆位相で回転させても、色ずれは周期的に発生する。
図16は用紙の速度変動が生じていない場合に位相を合わせる方法を示す第1の比較図、図17は用紙の速度変動が発生した場合に位相を合わせる方法を示す第2の比較図、図18は本発明の第1の実施の形態における用紙の速度変動が発生した場合に位相を合わせる方法を示す第1の図、図19は本発明の第1の実施の形態における用紙の速度変動が発生した場合に位相を合わせる方法を示す第2の図である。なお、図16及び18において、横軸に時間を、縦軸に速度変動を採ってある。また、図17及び19において、横軸に時間を、縦軸に位置ずれ及び色ずれを採ってある。
図16及び18において、L11は感光体ドラム17Bkの速度変動を、L12は用紙pの速度変動を、L13は感光体ドラム17Yの速度変動を示す。
また、図17及び19において、L21は転写部における感光体ドラム17Bkの位置ずれを、L22は転写部における感光体ドラム17Yの位置ずれを、L23はブラックとイエローとの間の色ずれを示す。
前記転写ベルト12の速度変動が生じていない場合においては、第1のアイドルギヤ33Bk、33Yの位相差θを設定することにより、図17に示されるように、色ずれを少なくすることができる。
ところが、実際は、用紙pに、感光体ドラム17Bk、17Yの速度変動に伝達率Kを乗算した値の速度変動が伝達されるので、図19に示されるように、用紙pの速度変動に応じてブラックとイエローとの間で色ずれが発生する。
次に、伝達率Kを40〔%〕としたときの第1のアイドルギヤ33Bk、33Yの位相差θに対する色ずれについて説明する。
図20は本発明の第1の実施の形態における第1のアイドルギヤの位相差と色ずれとの関係を示す図である。なお、図において、横軸に位相差を、縦軸に色ずれを採ってある。この場合、位相差は負の値で表される。
図において、L30は伝達率Kが0〔%〕であるときの、第1のアイドルギヤ33Bk、33Yの位相差θに対する色ずれを、L31は伝達率Kが40〔%〕のときの第1のアイドルギヤ33Bk、33Yの位相差θに対する色ずれを示す。
なお、この場合、色ずれは、前記式(7)の1周期における色ずれのばらつき(分散値)を表す。
図に示されるように、色ずれが最も少なくなるように第1のアイドルギヤ33Bk、33Yの位相差θを設定し、本実施の形態においては、点eにおける約−56〔°〕とした。
次に、伝達率Kを40〔%〕とし、第1のアイドルギヤ33Bk、33Yの位相差θを−56〔°〕とした場合の感光体ドラム17及び用紙pの速度変動と色ずれとの関係について説明する。
図21は本発明の第1の実施の形態における位相差を設定したときの用紙の速度変動を表す第1の図、図22は本発明の第1の実施の形態における位相差を設定したときの色ずれを表す第1の図である。なお、図21において、横軸に時間を、縦軸に速度変動を採ってあり、図22において、横軸に時間を、縦軸に位置ずれ及び色ずれを採ってある。
図21において、L11は感光体ドラム17Bkの速度変動を、L12は用紙pの速度変動を、L13は感光体ドラム17Yの速度変動を示す。
また、図22において、L21は転写部における感光体ドラム17Bkの位置ずれを、L22は転写部における感光体ドラム17Yの位置ずれを、L23はブラックとイエローとの間の色ずれを示す。
図に示されるように、各速度変動の位相は従来のように合わせてはいないが、最終的な2色間の色ずれを少なくすることができる。
次に、伝達率Kが20〔%〕であり、前記式(7)から算出した、第1のアイドルギヤ33Bk、33Yの位相差θを−65〔°〕とした場合の感光体ドラム17及び用紙pの速度変動と色ずれとの関係について説明する。
図23は本発明の第1の実施の形態における位相差を設定したときの用紙の速度変動を表す第2の図、図24は本発明の第1の実施の形態における位相差を設定したときの色ずれを表す第2の図である。なお、図23において、横軸に時間を、縦軸に速度変動を採ってあり、図24において、横軸に時間を縦軸に位置ずれ及び色ずれを採ってある。
図23において、L11は感光体ドラム17Bkの速度変動を、L12は用紙pの速度変動を、L13は感光体ドラム17Yの速度変動を示す。
また、図24において、L21は転写部における感光体ドラム17Bkの位置ずれを、L22は転写部における感光体ドラム17Yの位置ずれを、L23はブラックとイエローとの間の色ずれを示す。
図に示されるように、各速度変動の位相は従来のように合わせてはいないが、最終的な2色間の色ずれを少なくすることができる。
前述されたように、本実施の形態においては、転写ベルト12上の用紙pの2色間の色ずれについて説明したが、転写ベルト12上に一旦転写し、その後、用紙pに2次的に転写を行うプリンタにおいては、図10に示される用紙pのない状態における転写ベルト12への伝達率を測定するとともに、第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cの各位相関係を設定することによって、図21及び22と同様に、各2色間の周期的な色ずれを最も少なくすることができる。
例えば、第1のアイドルギヤ33Bkに対する第1のアイドルギヤ33Yの位相差をθ1とし、第1のアイドルギヤ33Yが位相差θ1の角度だけ回転するのに必要な時間をγ1とし、第1のアイドルギヤ33Yに対する第1のアイドルギヤ33Mの位相差をθ2とし、第1のアイドルギヤ33Mが位相差θ2の角度だけ回転するのに必要な時間をγ2とし、第1のアイドルギヤ33Mに対する第1のアイドルギヤ33Cの角度差をθ3とし、第1のアイドルギヤ33Cが位相差θ3の角度だけ回転するのに必要な時間をγ3とすると、転写部における感光体ドラム17Mの位置ずれD11〔mm〕は、
となり、転写部における感光体ドラム17Cの位置ずれD12〔mm〕は、
となる。
そして、このときの転写ベルト12の速度変動ΔV3(s)〔mm/s〕は
になり、また、時間tにおける転写ベルト12の位置ずれD13〔mm〕は式(10)を積分することによって、
となり、各転写部における転写ベルト12の位置ずれD14〔mm〕はそれぞれ式(11)において、時間sを、
s=t+α
s=t+α+β
s=t+α+β+β
s=t+α+β+β+β
とした値になる。
したがって、2色の場合と同様に各色間の色ずれを認識することができる。
そして、4色のうちの2色間の色ずれの値を一つの母集団とし、その分散値を小さくするような時間γ1〜γ3を算出して設定すると、色ずれが最も少ない状態にすることができる。
図25は本発明の第1の実施の形態における位相差の最適値を示す図である。なお、図において、横軸に伝達率を、縦軸に位相差を採ってある。
図において、γ1は第1のアイドルギヤ33Yが位相差θ1の角度だけ回転するのに必要な時間、γ2は第1のアイドルギヤ33Mが位相差θ2の角度だけ回転するのに必要な時間、γ3は第1のアイドルギヤ33Cが位相差θ3の角度だけ回転するのに必要な時間である。
この場合、感光体ドラム17Bkの速度変動の用紙pへの伝達率A〔%〕に基づいて、色ずれが最も少なくなる位相差θ1〜θ3が最適値として設定される。
このように、本実施の形態において、各第1のアイドルギヤ33Bk、34Y、34M、34Cは、第1のアイドルギヤ33Bk、34Y、34M、34Cの偏心によって生じる前記感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cの速度変動、及び該速度変動によって生じる前記転写ベルト12又は用紙pの速度変動に基づいて設定された位相差θ、θ1〜θ3を形成して配設されるので、周期的に発生する色ずれを最も少なくすることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図26は本発明の第2の実施の形態におけるプリンタの概略図、図27は本発明の第2の実施の形態におけるプリンタの制御装置を示すブロック図である。
この場合、モータ制御部50に、像担持体としての感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cを回転させるための駆動モータ61Bk、61Y、61M、61Cが接続され、該各駆動モータ61Bk、61Y、61M、61Cを駆動することによって、感光体ドラム17Bk、17Y、17M、17Cがそれぞれ回転させられる。
また、第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cに、それぞれ対向させて、マーク検出部としてのマーク検出センサ65Bk、65Y、65M、65Cが配設され、該各マーク検出センサ65Bk、65Y、65M、65Cによって、第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33Cに形成された識別部としての各マーク53の位相を検出することができる。
また、機構制御部48に媒体種類設定部66が接続され、操作者は、媒体種類設定部66を操作して媒体としての用紙pの種類を設定することができる。そして、記憶装置56には、二つ以上の用紙pの種類と対応させて伝達率が記録される。
図28は本発明の第2の実施の形態における感光体ドラムの駆動系の要部を示す図である。この場合、感光体ドラム17Bk、17Yの駆動系について説明する。
前記第1の実施の形態と同様に、第1のアイドルギヤ33Bk、33Yは、小径のギヤ34Bk、34Y及び大径のギヤ35Bk、35Yを備え、ギヤ34Bk、34Yと感光体ドラム17Bk、17Yの被駆動ギヤ31Bk、31Yとが噛合させられ、ギヤ35Bk、35Yにマーク53が形成される。
また、各駆動モータ61Bk、61Yの出力軸に配設されたギヤ62Bk、62Yとギヤ35Bk、35Yとが噛合させられる。
そして、マーク検出センサ65Bk、65Yはギヤ35Bk、35Y上のマーク53の位相をそれぞれ検出する。
次に、前記構成のプリンタの動作について説明する。
図29は本発明の第2の実施の形態における用紙の種類ごとの伝達率及び位相差の設定例を示す図、図30は本発明の第2の実施の形態におけるプリンタの動作を示すフローチャートである。
この場合、記憶装置56に記録される用紙pの種類ごとの伝達率K〔%〕の例を示す。該伝達率K〔%〕は、第1の実施の形態と同様に、図10に示されるような感光体ドラム17Bkの速度変動L1及び用紙pの速度変動L2に基づいて、用紙pの種類ごとに算出することができる。
例えば、普通紙の場合、前記第1の実施の形態と同様に伝達率Kは40〔%〕であり、光沢紙の場合、光沢紙に発生する速度変動の感光体ドラム17Bk、17Yの速度変動に対する割合は小さく、伝達率Kは10〔%〕になる。
そして、操作者が媒体種類設定部66を操作して用紙pの種類を設定すると、CPU55の図示されない伝達率取得処理手段は、伝達率取得処理を行い、記憶装置56から用紙pの種類に対応する伝達率K〔%〕を読み出す。例えば、操作者が用紙pの種類を普通紙に設定した場合、40〔%〕の伝達率Kが読み出される。
続いて、CPU55の図示されない駆動処理手段は、駆動処理を行い、各駆動モータ61Bk、61Yを駆動し、CPU55の図示されない位相差取得処理手段は、位相差取得処理を行い、マーク検出センサ65Bk、65Yによって検出されたマーク53の各位相を読み込み、隣接する第1のアイドルギヤ33Bk、33Y間の位相差を検出位相差として算出する。
次に、前記駆動処理手段は、前記伝達率K〔%〕及び位相差θに基づいて、駆動モータ61Bk、61Y、61M、61Cの駆動を制御し、位相差θを調整する。
そのために、前記第1の実施の形態と同様に、前記駆動処理手段は、前記式(7)によって得られる色ずれZが最も少なくなる第1のアイドルギヤ33Bk、33Yの位相差θを算出する。伝達率Kが40〔%〕である場合、色ずれZが最も少なくなる位相差θは−56〔°〕であるので、前記駆動処理手段は、前記検出位相差が−56〔°〕になるように、駆動モータ61Bk、61Yを駆動している間に、駆動モータ61Bk又は駆動モータ61Yの回転速度を変更するか、駆動モータ61Bk、61Yの駆動開始タイミングをずらすかする。なお、駆動開始タイミングをずらす場合、駆動モータ61Bk、61Yを一旦停止させ、駆動開始タイミングをずらして再び起動する。
なお、本実施の形態においては、前記式(7)によって得られる色ずれZが最も少なくなる第1のアイドルギヤ33Bk、33Yの位相差θを算出するようになっているが、あらかじめ位相差θを算出し、記憶装置56に記録しておくこともできる。
このように、本実施の形態においては、用紙pの種類に応じて、最適な位相差θを設定することができるので、用紙p上に発生する周期的な色ずれを少なくすることができ、画像品位を向上させることができる。
本実施の形態においては、操作者が媒体種類設定部66を操作して用紙pの種類を設定し、伝達率取得処理手段によって、記憶装置56から用紙pの種類に対応する伝達率K〔%〕を読み出すようになっているが、伝達率取得処理手段によって、図示されない上位装置から送られた用紙pの種類を読み込み、用紙pの種類に対応する伝達率K〔%〕を読み出すこともできる。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 用紙pの種類を入力する。
ステップS2 伝達率Kを取得する。
ステップS3 駆動モータ61Bk、61Yの駆動を開始する。
ステップS4 マーク53を検出する。
ステップS5 位相差θを調整し、処理を終了する。
次に、用紙pの種類が普通紙に設定されている場合に、光沢紙を使用して印刷を行った場合について説明する。
図31は用紙の種類が普通紙に設定されている場合に光沢紙を使用したときの用紙の速度変動を表す図、図32は用紙の種類が普通紙に設定されている場合に光沢紙を使用したときの位置ずれ及び色ずれを表す図である。なお、図31において、横軸に時間を、縦軸に速度変動を採ってあり、図32において、横軸に時間を、縦軸に位置ずれ及び色ずれを採ってある。
図31において、L11は感光体ドラム17Bkの速度変動を、L13は感光体ドラム17Yの速度変動を、L14は光沢紙の速度変動を示す。
また、図32において、L21は転写部における感光体ドラム17Bkの位置ずれを、L22は転写部における感光体ドラム17Yの位置ずれを、L23はブラックとイエローとの間の色ずれを示す。
この場合、用紙pの種類が普通紙に設定され、第1のアイドルギヤ31Bk、31Yの位相差θが−56〔°〕にされているときに、伝達率Kが10〔%〕の光沢紙が使用されるので、色ずれが多くなってしまう。
次に、用紙pの種類が光沢紙に設定されている場合に、光沢紙を使用して印刷を行った場合について説明する。
図33は本発明の第2の実施の形態における用紙の種類が光沢紙に設定されている場合に光沢紙を使用したときの用紙の速度変動を表す図、図34は本発明の第2の実施の形態における用紙の種類が光沢紙に設定されている場合に光沢紙を使用したときの位置ずれ及び色ずれを表す図である。なお、図33において、横軸に時間を、縦軸に速度変動を採ってあり、図34において、横軸に時間を、縦軸に位置ずれ及び色ずれを採ってある。
図33において、L11は感光体ドラム17Bkの速度変動を、L13は感光体ドラム17Yの速度変動を、L14は光沢紙の速度変動を示す。
また、図34において、L21は転写部における感光体ドラム17Bkの位置ずれを、L22は転写部における感光体ドラム17Yの位置ずれを、L23はブラックとイエローとの間の色ずれを示す。
この場合、用紙pの種類が光沢紙に設定され、第1のアイドルギヤ31Bk、31Yの位相差θが−70〔°〕にされているときに、伝達率Kが10〔%〕の光沢紙が使用されるので、色ずれを少なくすることができる。
このように、本実施の形態においては、駆動モータ61Bk、61Y、61M、61Cをそれぞれ個別に駆動し、用紙pの種類に応じて、各第1のアイドルギヤ33Bk、33Y、33M、33C間の各位相差θを変更することによって、用紙pの種類に関わらず、周期的な色ずれを少なくすることができる。
前記各実施の形態においては、画像形成装置としてのカラーのプリンタに適用した例について説明したが、本発明を、2色以上を重ねて画像を形成する複写機、ファクシミリ装置、複合機等に適用することができる。
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。