JP5031281B2 - コンクリートの診断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート建造物の健全性を光学的に診断するためのコンクリートの診断方法に関するものである。
トンネルや橋梁などのコンクリート建造物の劣化の原因は、施工不良の他に、中性化、塩害、アルカリ骨材反応などが挙げられる。中性化は、コンクリートが大気中の二酸化炭素(炭酸ガス)と化学反応を起こして、水酸化カルシウムが減少し炭酸カルシウムが増加することによって起こる。この中性化が鉄筋のある部分まで進むと、鉄筋の表面の保護被膜が失われて鉄筋腐食が生じてしまう。また塩害による鉄筋の腐食は、海水などによりコンクリートの表面から塩化物が浸透する等、コンクリート内に多量の塩化物を含み、塩化物イオンの作用により鉄筋の保護被膜が破壊され、鉄筋腐食が生じてしまう。アルカリ骨材反応は、骨材中のある種反応性成分がセメント中に含まれているアルカリ分と反応し、生成物がコンクリート中の水分で吸収膨張することで、コンクリートにひび割れを発生させるものである。
また、コンクリートは、上記の単独の劣化要因によって、劣化するのみでなく、複数の劣化要因によって、複合劣化がおこり、中性化した先端部分に塩化物イオンが集中して、鉄筋の腐食が早まること等がある。通常、コンクリートの診断は、ひび割れの目視調査を行った後、躯体コンクリートから試験体を切り取り、その試験片の圧縮強度試験を行ったり、コンクリートの表面を打撲、反発度を測定し強度を推定する等の手法が行われている。これら手法は、コンクリートから試験体を切り取ったり、コンクリートに直接ダメージを与えるものであり、構造物に損傷を与える。構造物に損傷を与えること無く、構造物を適切に診断する方法として、繰り返し行える非破壊検査は有効である。
コンクリート建造物の劣化を光学的に検出するには、特許文献1に見られるように、コンクリート表面に近赤外線を照射し、コンクリート表面から反射した近赤外線を分光分析することにより、コンクリートの劣化の過程で減少する水酸化カルシウムや、コンクリートの劣化の過程で生じる塩化物の吸収スペクトルを検出することで、劣化度を診断するようにしている。
すなわち、水酸化カルシウムは1.42μmに、塩化物は2.26μmに吸収ピークがあり、この波長ピークを差スペクトルを用いて解析することで、その吸光度差から劣化度を診断するものである。
特開2005−291881号公報 特開2001−188039号公報
しかしながら、コンクリートの劣化要因として、特に複数の劣化要因によって、コンクリートが複合劣化した場合、単波長のみの分析では、どの影響因子(水分量、凹凸等)により、劣化しているのか検査できない。それは、単波長では、目的とする一つの劣化因子の波長ピークを正確に取ることができず、劣化因子の波長ピークが取れない場合があり、それを、差スペクトルのみで解析すると、取ったデータにより誤った傾向を示し、正確に診断できない。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決しコンクリート表面を損傷させず、コンクリート面の劣化を光学的に検出する方法のみでコンクリートの劣化診断を行うに際して、必要としている劣化因子に、影響因子の影響を除いて劣化を診断できるコンクリートの診断方法を提供することにある。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、コンクリート面に近赤外線を照射し、そのコンクリート面から反射される光を所定の波長域で分光分析してコンクリートの劣化を診断する方法において、中性化については採取した吸収スペクトルにおける0.9〜1.7μmの波長域から水酸化カルシウムの濃度を検出し、塩害については採取した吸収スペクトルにおける1.7〜2.5μmの波長域からPLS回帰分析法を用いたケモメトリックス手法を用いて塩化物イオンの濃度を検出し、これら水酸化カルシウムの濃度と塩化物イオンの濃度から中性化と塩害による劣化を診断することを特徴とするコンクリートの診断方法である。
本発明によれば、吸収スペクトルをケモメトリックス手法を用いて解析することで、コンクリートの劣化を正確に診断できるという優れた効果を発揮するものである。
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明のコンクリートの診断方法に用いる光学系を示したもので、ハロゲンランプなど波長域0.9〜2.5μmの近赤外線光源10をコンクリート面11に照射し、その反射光を集光レンズ12を介して光ファイバ13に入射し、その光ファイバ13から反射光を固定グレーティング14に出射して分光し、これをミラー15で反射させてMEMS(Micro−Electro Mechanical System)16により分光してスキャンし、これを特定波長毎に光検出器17により検出して吸収スペクトルを得るようになし、その吸収スペクトルから水酸化カルシウムや塩化物イオンの濃度を検出してコンクリート面11の劣化を診断するものである。
このコンクリートの吸収スペクトルからの劣化度の検出は、ケモメトリックス手法を用いて行う。
先ず、MEMS16としては、PCX(Polychromix)社製分光器を用い、コンクリート面11として、粉砕および未粉砕のセメントペースト,モルタル,コンクリートの中性化および塩害を模擬した試験体の劣化度を計測した。
すなわち、コンクリート表面にハロゲンランプを当て,その反射光をMEMS16により分光してスキャンした。
この場合、主に中性化のピーク(1.42μm)を検出するため波長域:0.9〜1.7μmの分光分析と、主に塩化物イオンのピーク(2.26μm)を検出するため、波長域:1.7〜2.5μmに分けて測定を行った。
試験体概要:
a)中性化および塩害測定用試験体
試験体種類:セメントペースト,モルタル,コンクリート
水セメント比:48.5%
形状:4×4×16cm(セメントペースト,モルタル),10×10×40cm(コンクリート)それぞれ粉砕および未粉砕で使用
塩化物イオン濃度:0,1,3,5,10,20kg/m3
中性化促進期間:0,1,3ヶ月(二酸化炭素濃度:7%,温度40℃,湿度50%) b) 実構造物模擬試験体
配合強度:30N/mm2
スランプ:10cm
空気量:3.9%
形状:0.5×0.5×0.1m 4体,1×1×0.1m 1体
塩化物イオン濃度:0,1,5,10kg/m3
(形状:0.5×0.5×0.1mに混入)
試験項目:
a)中性化計測
セメントペースト,モルタル,コンクリートの中性化度を測定した。さらに中性化度は,フェノールフタレンを用いて中性化深さ,水酸化カルシウムの量をTG/DTAにて定量化して評価も行った。中性化に関しては、主に試験体を未粉砕で行った。
b) 塩害計測
セメントペースト,モルタル,コンクリートにある塩化物イオン濃度の計測を実施した。
実構造物模擬試験体に関しては,コンクリート中に含まれる全塩分量を電位差滴定法(JCI−SC4)にて測定を行い,吸光度との関係を調べた。
図12は、塩化物イオン濃度を0(cp0)、5(cp5)、10(cp10)、20(cp20)kg/m3 と変えたセメントペーストのはつり面の吸収スペクトルを示し、図13は、同じくセメントペースト粉の吸収スペクトルを示したものである。
解析方法:
解析方法は、従来の差スペクトルと本発明のケモメトリックス手法を用いた解析の双方で行い、その測定結果から評価を行った。
a) 差スペクトル解析
中性化および塩化物イオンの吸光ピークは既知の値であるので、吸収帯のあるピークの裾を通る直線をベースラインとして、図12の塩化物イオン濃度のピークを求めるのであれば,吸収ピークの吸光度が0となるようにスペクトルを書き直し、その裾の部分を通るベースラインと吸収ピークの差分から2265nmの吸光度を求めた。
b) ケモメトリックス解析
本発明の手法であり、スペクトルを統計的に解析する技法(ツール)で,吸収スペクトルの解析を実施した。
試験結果
中性化測定結果
コンクリートが中性化すると,以下の反応が起こることが知られている。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2
中性化が進むと,水酸化カルシウムは減少し炭酸カルシウムは増加する。FTIR(Fourier Transform Infrared Spectrometer)にて測定した結果、中性化が進むに従い,水酸化カルシウムの特性を示す1.42μmの吸光度は減少して炭酸カルシウムの特性を示す3.98μmが増大することが確認できた。
図14に測定結果を示す。
水酸化カルシウムが多い,つまりコンクリートの中性化が進んでいなければ1.42μmの吸光度が大きいことが分かる。これらの結果から,中性化に関してはコンクリートを破壊することなくPCX分光器により測定可能であることが確認された。
塩害測定結果;
塩害測定用試験体
a)差スペクトルで求めたセメントペースとモルタルの測定結果を図17、図18に示した。
図17,図18に示すように差スペクトルでは、影響因子により、塩化物イオン濃度と吸光度が比例関係にならず、特に塩化物イオン濃度が高くなると吸光度が低くなり測定不能であることが分かる。
b)ケモメトリックスによる解析
図15、図16に,セメントペースト粉,セメントペーストはつり面におけるケモメトリックスによる出力結果を示す。
セメントペースト粉、セメントペーストはつり面とも波長2.27μmで相関スペクトルが高くなる結果を示した。
以上の結果より、従来の差スペクトルでは、塩化物イオンの劣化度測定は困難であるが、本発明のケモメトリックス手法を用いることで、精度よく劣化度が測定できる。
このコンクリートの中性化と塩害と劣化の関係を説明する。
中性化に関して;
中性化は、水酸化カルシウム中の水酸化イオン(OH- )が失われる反応である。コンクリートのpHが下がると言うことは,鉄筋の表面に保護被膜が形成されにくくなるために鉄筋腐食が起こりやすくなる。1.42μmの吸光ピークは、−OH基の伸縮振動の第1倍音に帰属し,中性化する事によりこの波長域の吸光ピークが低下することが分かっている。言い換えれば,中性化の測定をすることは水酸化カルシウムの量を分光器により直接測ることが可能であると言える。
塩害に関して;
塩化物イオンに起因する吸収のピークは,中性化の場合とは異なりセメント中のC3 A(アルミン酸三カルシウム)に依存していると考えられる。このために,C3 A水和物が塩化物イオンを固定化し2.26μmにピークが現れると考えられる。また,コンクリート中に塩化物イオンがあると固定化されフリーデル氏塩(3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2O )として存在する。しかし,二酸化炭素と介在することにより,以下のような化学反応が起こる。
3CaO・Al23・CaCl2・10H2O + 3CO2
3CaCO3 + 2Al(OH)3 + CaCl2 + 7H2
この反応は,中性化する事によりコンクリート表面付近にあったフリーデル氏塩が二酸化炭素と反応して溶解するメカニズムである。
次に、本発明のPLS回帰分析法を用いたケモメトリックス手法を説明する。
PLS回帰分析法の概略;
PLS回帰分析法は、partial least squaresの略語で 日本語では、「部分最小二乗法」と約されている。
PLS回帰分析法は、モデル作成(検量線作成、キャリブレーション、トレーニングともいう)が重要であり、目的物質とノイズとなる成分の濃度で組み合わせをかえた多数の標準スペクトルデータが必要となる。
これら大量のスペクトルデータを使って最適なモデルを作成するために、かなりの計算量が必要になるが、近年のコンピュータの進歩により小型のコンピュータでも短時間で計算が出来るようになった。現在は多くの解析に使用されている。
PLS法は、目的変数が一つの場合だけでなく複数のものを同時に求める方法(PLS2法)、二次元に拡張したもの、非線型PLS法など、いろいろと改良型が発表されている。吸光度スペクトルだけでなく、経済学、生物学などのいろいろな分野の回帰分析に応用が可能である。
PLS回帰分析の基本原理;
PLS回帰分析法は、採取した吸収スペクトルをベクトル表示に変換したほうがわかりやすい。ベクトル表示とは、採取した波長(200nm、201nm・・・等)をそれぞれ軸にとった点で示すことである。つまり、波長分解能が100個のデータなら100次元の空間に1ポイント出来る。しかし、4次元以上の空間はとても理解しがたいので3つの波長データで3次元で表したのが、図2である。
図2−アには、濃度が異なる4点のデータをプロットしてある。
アは、横軸波長、縦軸吸光度の通常のスペクトルの表示法であるが、これはイのようにベクトル表示にすることができる。イはわかりやすくするために3次元の表示であるが、波長をたくさんとれば、波長の数だけ次元が増える。
この4点に対し、濃度に対して最も大きく変化し(分散が最大になるようにする)、かつ残差が最小になる直線Nをもとめる。これは、図2−イをぐるぐる回して、ちょうど濃度にそってポイントが並んで見える軸をみつけることと同じである。
このようにすることで、図2−ウのような軸が見つかり、軸Nを基準としてグラフを書き直すと、図2−エのように濃度の軸Nとノイズの軸E(正確にいうと、ここでは二次元の平面)に成分を分離することが出来る。
つまり、N軸を先に求めておけば、未知の濃度スペクトルをN軸に換算することによってノイズ成分に影響されずに目的物質の濃度が計算できることになる。
以上がPLS回帰分析法の基本原理である。
ここで、濃度の軸Nについて考える。
計測したデータXをN軸に変換させるためには、XとN軸の単位ベクトル(本当はベクトルの大きさは0以外なら何でもよいのだが、計算の都合上1にする)を掛け合わせれ(内積をとれ)ばよい。N軸の単位ベクトルをwとして、計測データをN軸に変換する。
t = Xw
tは、N軸に変換したあとのxの座標である。このtのことをPLS回帰分析では潜在定数と呼んでいる。tはNに比例するので、
y = tq
qは比例定数、yは目的物質の濃度である。
このことから、PLS回帰分析は 「潜在定数tを介した回帰分析」と呼ばれている。
wは重みベクトルとも呼ばれている。スペクトルXにwを掛け合わせることは、信号処理分野の重みづけと同等のことを行なっている。
実際には一回の変換だけでなく、残差成分のなかから、もう一度同じ計算を繰り返して、濃度に比例する成分を抜き取っていく。最初にとったtを第一成分(t1)といい、この時の重みベクトルを(w1)という。次にとったtを第二成分(t2)とよび、この時の重みベクトルを(w2)と呼ぶ。
図3にPLS回帰分析の構造図を示す。
PLS回帰分析では、目的変数を直接説明変数で回帰分析するのではなく、いったんN軸に変換(その座標がt1、t2・・・)して、それを元にもう一度回帰分析を行なっている構造となっている。
クロスバリデーション:
PLS回帰分析ではt成分の数aをたくさんとればとるほど、回帰直線にのり、予測誤差が小さくなる。しかし、必要量以上成分を多くとって作成した検量線は、再現性が悪くなる。このことをオーバーフィッティングと呼ぶ。オーバーフィッティングは検量線作成時のみに生じた特殊な条件ノイズ成分まで回帰の説明に使われてしまうためである。
そのため、図4に示すように予測誤差が最小になる最適な成分数を決定する必要がある。
クロスバリデーションの方法は大きく分けて二つある。
(1)外部バリデーション:
サンプル集団を、二つわけ、一方を検量線作成用、もう一方をチェック用とする方法である。
検量線の標準誤差はSEC(standard error of calibration)といい、チェック用の標準誤差はSEP(standard error of prediction)と呼ぶ。
図5は外部バリデーションを実施の模式図である。
(1)〜(16)のサンプルデータがあった場合、(1)〜 (8)のデータを使用して検量線を作成し、この検量線を用いて(9)〜 (16)のデータを計算して、予測誤差(計算値と実測値の差)を計算する。
(2)内部バリデーション:
サンプルデータを有効に使った方法である。
この方法で求めた標準誤差はSEV(standard error of validation)と呼ばれる。
内部バリデーションはサンプル数が少なくてもよいので便利である。
図6は内部バリデーションの模式図である。
(1)〜(8)のサンプルデータがあった場合、まず(1) を検量線データから外し、(2)〜(8)で検量線を作成して(1)を計算し、(1)の予測誤差を計算する。次に(2) を外し、同様に予測誤差を計算、これを全てのデータで繰り返す。
最適な成分数は、二つの方法とも、成分数を1から増やしていき、標準誤差が最小の成分数とする。
NIPALS法;
PLS回帰分析法の計算アルゴリズムは、大きくわけて3つある。NIPALS法、固値法、BIDIAGONALIZATION法である。
一般的な方法はNIPALS法であるが、インフォメトリックス社の汎用ソフトウェアーであるピロエットはBIDIAGONALIZATION法を用いている。
ここでは、最もわかりやすく、一般的なNIPALS法による計算方法を記す。
PLSモデル:
Xを説明変数、yを目的変数とすると、スペクトルは、数1で表される(数1では、マトリックス中にスペクトルもあわせて示してある。)
Figure 0005031281
吸光度スペクトル波形解析による濃度推定モデルの場合、x(n,d)は、波長d、計測番号nの時の吸光度である。y(n)は計測番号nの時の濃度である。Nは計測数(サンプル数)、Dは波長の分割数(説明変数の数)である。
PLS法では、以下の数2,3の二つの基本式を考える。
Figure 0005031281
Figure 0005031281
但し、上添え字のTは転置行列の意である。
このとき、Tは潜在変数、Pはローディング、qは係数、EはXの残差、fはyの残差、である。また、taはa成分目の潜在変数ベクトル、paはa成分目のローディングベクトルであり、それぞれ数4〜6であらわされる。
Figure 0005031281
Figure 0005031281
Figure 0005031281
t(n,a)は、a成分目の計測番号nの潜在変数である。Aは成分数で1〜Nの範囲内を選択できる。モデルの特徴を表すのは、上位6番目くらいまでの成分であり、それ以上は予測誤差を低下させる。最適な成分数Aの決定は、クロスバリデーションを行うことで決定する。p(a,d)は、a成分目の波長dのローディングである。また、q(a)はa成分目の係数である。
PLS法では、Xの情報をyのモデリングに直接用いるのではなく、Xの情報の一部を潜在定数tに変換して、tを用いてyをモデリングする。
潜在定数t:
taはXの線形結合であるとすれば、数7であらわされる。
Figure 0005031281
ここでwaは重みベクトルと呼ばれる。
Figure 0005031281
w(d,a)は、a成分目の波長dの重み係数である。
第一成分の計算:
まず、成分が一つの場合(a=1)を計算する。
成分aが一つの場合数2、数3は以下の数9、数10になる。
Figure 0005031281
Figure 0005031281
数7より数11となる。
Figure 0005031281
wのノルムは1になるようにすると数12となる。
Figure 0005031281
PLSのモデルは、yとtとの相関を大きくすると同時にtの分散を大きくすることである。これを満たす条件は、数13のyとtの共分散Sが最大になるポイントである。
Figure 0005031281
ここで、wのノルムを1とする制約条件でSが最大になる条件をLagrangeの未定乗数法を用いて求める。
Figure 0005031281
Figure 0005031281
関数Gは変数wの関数なので、Gをw(d,1)について偏微分して次の関係を得る。
Figure 0005031281
Figure 0005031281
数17の両辺にw(d,1)を掛ける。
Figure 0005031281
さらにdについての総和をとる。
Figure 0005031281
ここで、‖w1‖=0の制約条件より、
Figure 0005031281
数16の左辺は、S=yTtの定義なので、2μはyTtの値となる。したがってS= yTt が最大になる最大のwの値は数21で与えられる。
Figure 0005031281
w1のノルムは1なのでwは数22となる。
Figure 0005031281
潜在変数tは、数23によって求まる。
Figure 0005031281
数9のローディングベクトルp1は、Xの残差Eの要素の二乗和が最小になるように求める。
Figure 0005031281
数10の係数qaは、yの残差ベクトルfの要素の二乗和が最小になるように条件から数25のように求める。
Figure 0005031281
第二成分以降の計算:
第二成分のモデル式は以下のように書ける。
Figure 0005031281
Figure 0005031281
ここで、成分数1のモデリングでXのうちt1p1Tが使われ、yのうちt1q1が説明に使われたので、残っている情報を数28,29とおきかえることができる。
Figure 0005031281
Figure 0005031281
Xnewとynewを用いると、数26,27は
Figure 0005031281
Figure 0005031281
となる。
これは、成分番号が一つ増えた以外は数9、数10と同じ式である。
したがって、第一成分と同様にt2、p2、q2を求めることができる。このループを繰り返すことで、第三成分以降の算出ができる。
回帰ベクトルbの算出
必要な成分数A回繰り返し計算をしたモデル式は以下のように書ける。
Figure 0005031281
Figure 0005031281
数33の潜在変数tに数7を代入すると推定するモデル式は
Figure 0005031281
上式にt1=Xw1を代入してXでまとめると
Figure 0005031281
ここで、数36のように、ある説明ベクトルxに対して、目的変数yを推定するモデル式に変換する。
Figure 0005031281
ここで、bは回帰ベクトルと呼ばれるもので、数37であらわされる。
Figure 0005031281
bは数35から、以下のように求められる。
Figure 0005031281
一般的なアルゴリズム:
以上、PLS1法のアルゴリズムは図7のようにまとめられる。
図7は最適な成分数の決定のためのフローを簡単に記述したものである。
図7において、先ずPLS法による計算開始30から、成分をa=1に設定して第1成分を求め、次に数22で説明した第1成分の重みベクトルwaを演算32した後、そのwaを基に潜在変数tを演算33し、数24のローディングベクトルPaを演算34し、数25から係数qaを演算子、次に、数28,数29で説明した第2成分のモデルを設定36し、成分aをa=a+1とインクリメントし、step1で、次の成分の演算があるかどうかを判断し、あれば(yes)、すなわち第2成分の重みベクトルwaの演算に戻して、上述の演算32〜35を行った後、次の成分の設定36を行うと共に順次インクリメント37し、step1、成分の演算が必要数行った後(no)、数38で説明した回帰ベクトルbを演算して終了39する。
図8〜図11は、図7のフローチャートの詳細を示したもので、図8は開始時の設定フローチャート、図9はスペクトルデータを計算用配列に移すフローチャートとPSL重み関数w(a,d)の算出フローチャート、図10は潜在変数tの算出フローチャートと係数qの算出フローチャートとローディングベクトルPの算出フローチャート、図11は、回帰ベクトルの算出フローチャートを示す。
以上のフローチャートにより求めた回帰ベクトルbより、未知のスペクトルとの積をとることにより塩化物イオンの濃度を測定することができる。
本発明のコンクリート診断方法に使用する光学系の一実施の形態を示す図である。 本発明において、PLSの原理を示す図である。 本発明において、PLS回帰分析の構造図を示す図である。 本発明において、PLS回帰分析での予測誤差と成分数の関係のプロットを示す図である。 本発明において、PLS回帰分析における外部バリデーションの説明図である。 本発明において、PLS回帰分析における内部バリデーションの説明図である。 本発明において、PLS1法のアルゴリズムのフロチャートを示す図である。 本発明において、PLS1法のアルゴリズムの開始時の設定フローチャートを示す図である。 本発明において、PLS1法のアルゴリズムのスペクトルデータを計算用配列に移すフローチャートとPSL重み関数w(a,d)の算出フローチャートを示す図である。 本発明において、PLS1法のアルゴリズムの潜在変数tの算出フローチャートと係数qの算出フローチャートを示す図である。 本発明において、PLS1法のアルゴリズムの回帰ベクトルの算出フローチャートを示す図である。 本発明において、塩化物イオン濃度を0〜20kg/m3と変えたセメントペーストのはつり面の吸収スペクトルを示す図である。 本発明において、塩化物イオン濃度を0〜20kg/m3と変えたセメントペースト粉の吸収スペクトルを示す図である。 本発明において、1.42μmの水酸化カルシウム濃度と吸光度の関係を示す図である。 本発明において、塩化物イオン濃度を0〜20kg/m3と変えたセメントースト粉の吸収スペクトルをケモメトリックス手法で解析した塩化物イオン濃度の解析結果を示す図である。 本発明において、塩化物イオン濃度を0〜20kg/m3と変えたセメントーストはつり面の吸収スペクトルをケモメトリックス手法で解析した塩化物イオン濃度の解析結果を示す図である。 従来において、塩化物イオン濃度を0〜20kg/m3と変えたセメントースト粉の吸収スペクトルを差スペクトル手法で解析した塩化物イオン濃度の解析結果を示す図である。 従来において、塩化物濃度を0〜20kg/m3と変えたセメントーストはつり面の吸収スペクトルを差スペクトル手法で解析した塩化物イオン濃度の解析結果を示す図である。
符号の説明
10 光源
11 コンクリート面
13 光ファイバ
16 MEMS
17 光検出器

Claims (1)

  1. コンクリート面に近赤外線を照射し、そのコンクリート面から反射される光を所定の波長域で分光分析してコンクリートの劣化を診断する方法において、中性化については採取した吸収スペクトルにおける0.9〜1.7μmの波長域から水酸化カルシウムの濃度を検出し、塩害については採取した吸収スペクトルにおける1.7〜2.5μmの波長域からPLS回帰分析法を用いたケモメトリックス手法を用いて塩化物イオンの濃度を検出し、これら水酸化カルシウムの濃度と塩化物イオンの濃度から中性化と塩害による劣化を診断することを特徴とするコンクリートの診断方法。
JP2006185962A 2006-07-05 2006-07-05 コンクリートの診断方法 Active JP5031281B2 (ja)

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