JP6403857B2 - コンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法、推定装置及び推定プログラム - Google Patents

コンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法、推定装置及び推定プログラム Download PDF

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Description

本発明は、コンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法、推定装置及び推定プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、硬化コンクリートの深さ方向における拡散係数の評価に用いて好適な拡散係数の推定技術に関する。
1)炭酸化
鉄筋コンクリートの主な劣化要因の一つとして、炭酸化が挙げられる。コンクリートにおける炭酸化とは、コンクリートに二酸化炭素が吸収されることにより、コンクリート内で炭酸カルシウムが増加する現象である。炭酸化によってコンクリートのpH値がアルカリ性から中性を呈するようになり、アルカリ性が無くなると中性化と呼ばれる状態になる。したがって、中性化が生じる場合には、必ず炭酸化が伴う。そして、中性化を起こしたコンクリートは鉄筋腐食が生じ、耐力低下が生じる。
中性化の指標は、フェノールフタレイン液を噴霧する方法が一般的である。この方法は、中性化の箇所ではフェノールフタレイン液は赤色の発色を呈さないという性質を利用するために視認性が高い検査方法であるものの、pH値そのものを知ることはできない。実際には、炭酸化による炭酸カルシウムの増加によって中性化が徐々に進行し、コンクリート表面から深さ方向においてpH値が連続的に変化していると推定される。
上述のような中性化の指標の他に、炭酸化の程度を評価する従来の方法として、粉砕したコンクリートを酸素を支援ガスとして用いて燃焼させ、燃焼で生じた二酸化炭素の量から炭酸化の割合を測定するものがある(特許文献1)。
炭酸化の程度を評価する従来の方法として、また、ドリルを用いてコンクリート表面を徐々に掘削し、その都度フェノールフタレイン液を噴霧することで掘削表面の中性化範囲を求め、掘削面積に占める中性化の範囲の割合を以て中性化深さを求めるものがある(特許文献2)。
また、レーザー誘起ブレイクダウン分光法(LIBS(Laser−Induced Breakdown Spectroscopy の略)とも表記される)を用いた、セメントペーストに含まれる炭素を計測する実験が行われ、炭素の含有量が多いセメントペーストほど炭素の発光強度が高くなっていることが明らかにされており(非特許文献1)、この知見を利用した炭酸化の程度を評価する従来の方法として、LIBSを用いてコンクリート中の炭素の発光強度とケイ素の発光強度との比率を計測し、この比率が高いほど炭酸化が生じていると判断するものがある(特許文献3)。
2)拡散係数
鉄筋コンクリートの主な劣化要因の一つとして、また、海水中の塩分の浸透による鉄筋腐食が挙げられる。鉄筋コンクリートにおける塩分浸透を定量的に評価する指標として、見かけの拡散係数が挙げられる。見かけの拡散係数を得ることにより、鉄筋コンクリート内を塩分が浸透する速度を知ることができ、当該速度に基づいて、塩分が鉄筋に到達して鉄筋腐食が生じるまでの時間を予測することによって塩害の評価を行うことが可能である。
見かけの拡散係数について、水セメント比を用いて計算する推定式が土木学会の技術標準において提案されている。また、電位差滴定法や電子線マイクロアナライザーによって塩化物イオン濃度の深さ方向分布を測定し(非特許文献2)、その測定結果に数式1で表される拡散方程式をフィッティングすることによって拡散係数を実験的に算出する方法がある。
ここで、C :元素濃度[kg/m3],
Co:コンクリート表面での元素濃度[kg/m3],
erf:誤差関数,
z :コンクリート表面からの深さ[m],
Da:見かけの拡散係数[m2/s],
t :塩害環境に暴露された期間[s] をそれぞれ表す。
そして、数式1の拡散方程式を用いる方法を改良して拡散係数を測定する方法として、骨材とモルタルとを分別した上で拡散係数を算出するものがある(特許文献4)
特開平3−100460号 特開2011−226961号 特開2002−296183号 特開2004−301628号
露木健一郎・三浦悟・香川喜一郎・和田崇秀:「レーザー分光法によるコンクリート中性化の計測」,日本建築学会大会学術講演梗概集,2003年 日本工業規格 JIS A 1154:硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法
しかしながら、特許文献1の炭酸化度の測定方法では、粉砕と燃焼とに多くの手間と時間とが必要とされるという問題がある。また、燃焼時の設定によって結果が変化する可能性があり、このため、再現性が高いとは言い難く、したがって性状評価の手法として信頼性が高いとは言い難い。
また、特許文献2の中性化深さの測定方法では、中性化深さを求めることはできるものの、中性化の原因である炭酸化の評価を行うことはできず、さらに、徐々に進行する炭酸化・中性化を定量的に評価することができないという問題がある。
また、特許文献3の炭酸化の測定方法では、対象物がセメントペーストであるために骨材の存在などを考慮することができず、このために硬化コンクリートにそのまま適用することはできず、硬化コンクリートに適用するためには工夫が必要である。また、炭素の発光強度や炭素の発光強度とケイ素の発光強度との比率だけでは、コンクリートコア中の炭酸化の度合いを定性的に評価することはできるものの、実際に炭酸化した割合を定量的且つ直接的に評価することはできないという問題がある。
また、特許文献4の拡散係数の測定方法では、電子線マイクロアナライザーを用いるため、正確に計測するためにはコンクリートを正確に平らに切断するという前処理に多くの手間と時間とが必要とされるという問題がある。また、真空装置を用いるため、多くの試験体を計測することができないという問題がある。さらに、炭酸化(言い換えると、炭酸化を原因とする中性化)が生じたコンクリートでは炭酸化した箇所で塩化物イオン濃度が低下することが知られているため、炭酸化が生じたコンクリートに対して得られた塩化物イオン濃度の深さ方向分布のデータを全て用いると、適切な拡散係数が算出されないという問題がある。
そこで、本発明は、硬化コンクリート中の炭酸化の進行状況を定量的且つ直接的に推定することができるコンクリートの炭酸化範囲の推定方法で得られた結果を活用して、硬化コンクリート中の塩分浸透に関連する拡散係数を適切に推定することができるコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法、推定装置及び推定プログラムを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明に関連するコンクリートの炭酸化範囲の推定方法は、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置における発光スペクトルが計測され、この発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式が算定されると共に回帰直線の信頼帯が算出され、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定され、当該判定の結果を用いて供試体軸心方向位置別の炭酸化が生じている割合が算出されるようにしている。
そして、上記推定方法で得られた結果を活用して、本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法は、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置における発光スペクトルが計測され、この発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて数式2に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daが算定されるようにしている。
また、本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定装置は、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段と、組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて数式2に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daを算定する手段とを有するようにしている。
また、本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定プログラムは、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段、組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて数式2に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daを算定する手段としてコンピュータを機能させるようにしている。
ここで、I :塩素若しくはナトリウムの発光強度[任意単位],
Io:コンクリート表面での塩素若しくはナトリウムの発光強度から
Ibを差し引いた発光強度[任意単位],
erf:誤差関数,
z :供試体軸心方向位置[m],
Da:見かけの拡散係数[m2/s],
t :塩害環境に暴露された期間[s],
Ib:塩素若しくはナトリウム濃度が一定となる(ゼロを含む)
供試体軸心方向位置における発光強度[任意単位] をそれぞれ表す。
したがって、中性化した箇所では塩化物イオン濃度が低下するので中性化箇所を含む塩化物イオン濃度のデータを用いると適切な拡散係数を算出することができないのに対し、これらのコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法、推定装置及び推定プログラムによると、コンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いるようにしているので、拡散係数の算定誤差の要因が排除される。
発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法、推定装置及び推定プログラムによれば、コンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いるようにしているので、拡散係数の算定誤差の要因を排除して拡散係数を適切に推定することが可能になり、コンクリートの性能評価の手法としての信頼性の向上が可能になる。
本発明のコンクリートの炭酸化範囲の推定方法の実施形態の一例を説明するフローチャートである。 実施形態のコンクリートの炭酸化範囲の推定方法をコンクリートの炭酸化範囲の推定プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現されるコンクリートの炭酸化範囲の推定装置の機能ブロック図である。 コンクリート供試体に対する発光強度の計測の仕方を説明する図である。(A)は円柱状の供試体を軸心方向に二等分して計測を行う例を説明する図である。(B)は円柱状の供試体の外周面に対して計測を行う例を説明する図である。 本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法の実施形態の一例を説明するフローチャートである。 実施形態のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法をコンクリートの目的元素の拡散係数の推定プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現されるコンクリートの目的元素の拡散係数の推定装置の機能ブロック図である。 実施例1におけるLIBSを用いたコンクリート供試体の計測によって得られた発光スペクトルの例を示す図である。 実施例1における組み合わせ発光強度データのプロット及び回帰直線の信頼帯の算出結果を示す図である。 実施例1におけるコンクリート躯体表面からの深さ別の炭酸化の割合の算出結果を示す図である。 実施例2におけるLIBSによって求めた塩素の発光強度と電位差滴定法によって求めた塩化物イオン濃度との比較結果を示す図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
(1)コンクリートの炭酸化範囲の推定
図1から図3に、本発明のコンクリートの炭酸化有無の判定方法、判定装置及び判定プログラム、並びに、コンクリートの炭酸化範囲の推定方法、推定装置及び推定プログラムの実施形態の一例を示す。
コンクリートの炭酸化有無の判定方法は、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置における発光スペクトルが計測され、この発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式が算定されると共に回帰直線の信頼帯が算出され、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定されるようにしている。
コンクリートの炭酸化有無の判定装置は、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度及びカルシウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段と、組み合わせデータを用いて炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式を算定する手段と、回帰直線の信頼帯を算出する手段と、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定する手段とを有する。
コンクリートの炭酸化有無の判定プログラムは、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度及びカルシウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段、組み合わせデータを用いて炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式を算定する手段、回帰直線の信頼帯を算出する手段、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定する手段としてコンピュータを機能させる。
また、コンクリートの炭酸化範囲の推定方法は、図1に示すように、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置における発光スペクトルが計測され(S1)、この発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式が算定される(S2)と共に回帰直線の信頼帯が算出され(S3)、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定され(S4)、当該判定の結果を用いて供試体軸心方向位置別の炭酸化が生じている割合が算出される(S5)ようにしている。
コンクリートの炭酸化範囲の推定装置は、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度及びカルシウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段と、組み合わせデータを用いて炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式を算定する手段と、回帰直線の信頼帯を算出する手段と、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定する手段と、判定の結果を用いて供試体軸心方向位置別の炭酸化が生じている割合を算出する手段とを有する。
コンクリートの炭酸化範囲の推定プログラムは、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度及びカルシウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段、組み合わせデータを用いて炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式を算定する手段、回帰直線の信頼帯を算出する手段、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定する手段、判定の結果を用いて供試体軸心方向位置別の炭酸化が生じている割合を算出する手段としてコンピュータを機能させる。
コンクリートの炭酸化有無の判定方法並びにコンクリートの炭酸化範囲の推定方法の実行にあたっては、まず、レーザー誘起ブレイクダウン分光法(以下、LIBSと表記する)を用いてコンクリート供試体の発光強度の計測が行われる(S1)。
本発明では、評価対象のコンクリート躯体などから採取されたコンクリート供試体が用いられる。コンクリート供試体の形状や大きさは、コンクリート躯体表面から分析対象とされた深さに相当する深さ方向の寸法を有する形状・大きさであれば特定の形状や寸法に限定されるものではなく、例えば評価対象のコンクリート躯体などから採取可能な形状や大きさなどを考慮して適宜調整され得る。具体的には例えば、日本工業規格 JIS A 1107「コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法」における供試体の寸法などの考え方に従って採取されたコアが、本発明におけるコンクリート供試体として用いられ得る。なお、以下においては、コンクリート供試体が採取された評価対象のコンクリート躯体におけるコンクリート表面からの深さ方向を供試体の軸心方向と呼ぶ。
そして、LIBSを用いてコンクリート供試体の炭素の発光強度とカルシウムの発光強度とが同時に(言い換えると、同一の計測点において)計測される。すなわち、パルス状のレーザ光がコンクリート供試体に照射され、コンクリートがアブレーションし、プラズマ化された物質からの発光スペクトルが計測され、この発光スペクトルに基づいて炭素の発光強度とカルシウムの発光強度とが特定される。なお、LIBS自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する(例えば、特開2013−190411号,特許第3500139号を参照)。
なお、レーザ光の照射の仕方については、少なくとも一つのレーザ光がコンクリート供試体に対して照射されてプラズマが生じる態様であれば特定の態様に限定されるものではなく、例えば、単一のレーザ光を照射するようにしても良いし、或いは、二つのレーザ光を、同軸で照射するようにしたり、一つをコンクリート法線方向に対して斜めの方向や垂直の方向から照射するようにしたりしても良い。
発光強度の計測は、コンクリート供試体表面における発光強度の、供試体の軸心方向における分布、言い換えると、コンクリート躯体表面からの深さの違いによる発光強度の変化が取得されるようにするため、供試体の軸心方向に関して複数の位置(即ち、コンクリート躯体表面からの深さに関して複数の深さ)において、且つ、供試体の軸心方向の位置が同じである複数の位置(即ち、コンクリート躯体表面からの深さが同じである複数の位置)において行われる。
なお、供試体の軸心方向と直交する方向の所定の幅の帯状の範囲に入っている複数の位置を、当該帯状の範囲の例えば中央位置(深さ)における複数の位置としても良い。
また、発光強度の計測は、供試体を軸心方向に切断して当該切断面に対して行われるようにしても良いし、供試体の外周面に対して行われるようにしても良い。
具体的には例えば、図3(A)に示すように、評価対象のコンクリート躯体などから採取された円柱状のコンクリート供試体20を軸心方向に二分割したときの切断面20bに対し、コンクリート躯体表面20aからの深さd1,d2,d3,d4毎に、複数の位置(計測点21)において炭素の発光強度とカルシウムの発光強度とが計測される。あるいは、図3(B)に示すように、評価対象のコンクリート躯体などから採取された円柱状のコンクリート供試体20の外周面20cに対し、コンクリート躯体表面20aからの深さd1,d2,d3,d4毎に、複数の位置(計測点21)において炭素の発光強度とカルシウムの発光強度とが計測される。なお、図3はLIBSを用いた発光強度の計測の仕方を説明するためのあくまでもイメージ図であり、実際の計測点の設定の仕方などを厳密に表すものではない。
なお、一般的にはモルタル部でも骨材部でも炭素とカルシウムとは比例関係になっているので、計測の際に、計測点21がモルタル部と骨材部とのどちらであるのかを考慮する必要はない。
LIBSを用いての発光強度の計測により、計測点毎のコンクリート供試体の軸心方向における位置(即ち、コンクリート躯体表面からの深さ)と炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせデータが取得される。
次に、S1の処理によって取得された計測点毎の供試体軸心方向位置と炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせデータを用いて両者の間の関係を表す式の算定が行われる(S2)。
ここで、本発明のコンクリートの炭酸化範囲の推定方法(その一部分としてコンクリートの炭酸化有無の判定方法が含まれる。以下同じ)におけるS2以降の処理は本発明のコンクリートの炭酸化範囲の推定装置(その一部分としてコンクリートの炭酸化有無の判定装置が含まれる。以下同じ)によって実行され得る。
そして、本発明のコンクリートの炭酸化範囲の推定方法におけるS2以降の処理及びこれら処理を実行する炭酸化範囲の推定装置は、本発明のコンクリートの炭酸化範囲の推定プログラム(その一部分としてコンクリートの炭酸化有無の判定プログラムが含まれる。以下同じ)をコンピュータ上で実行することによっても実現され得る。本明細書では、コンクリートの炭酸化範囲の推定プログラムがコンピュータ上で実行されることによってS2以降の処理を実行する炭酸化範囲の推定装置が実現されると共に炭酸化範囲の推定方法におけるS2以降の処理が実行される場合を説明する。
炭酸化範囲の推定プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、炭酸化範囲の推定装置10でもある)の全体構成を図2に示す。このコンピュータ10(炭酸化範囲の推定装置10)は、制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,メモリ15を備え相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部11は、記憶部12に記憶されている炭酸化範囲の推定プログラム17によってコンピュータ10全体の制御並びにコンクリートの炭酸化有無の判定や炭酸化範囲の推定に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部13は、少なくとも作業者の命令を制御部11に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。
表示部14は、制御部11の制御によって文字や図形等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ15は、制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
そして、本実施形態では、上述のS1の処理において計測され取得された計測点毎の供試体軸心方向位置と炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせデータが組み合わせ発光強度データベース18として記憶部12に格納(保存)される。
そして、コンピュータ10(本実施形態では、炭酸化範囲の推定装置10でもある)の制御部11には、炭酸化範囲の推定プログラム17を実行することにより、S1の処理において計測され取得された計測点毎の炭素の発光強度及びカルシウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置としての記憶部12から読み込む処理を行うデータ読込部11a、組み合わせデータを用いて炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式を算定する処理を行う回帰式算定部11b、回帰直線の信頼帯を算出する処理を行う信頼帯算出部11c、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定する処理を行う炭酸化判定部11d、判定の結果を用いて供試体軸心方向位置別の炭酸化が生じている割合を算出する処理を行う炭酸化割合算出部11eが構成される。
炭酸化範囲の推定プログラム17が実行されることによる具体的な処理としては、まず、コンピュータ10(炭酸化範囲の推定装置10)の制御部11に構成されたデータ読込部11aにより、S1の処理において計測され取得されて記憶部12に格納されている組み合わせ発光強度データベース18に記録されている計測点毎の供試体軸心方向位置と炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせデータ(以下、組み合わせ発光強度データと呼ぶ)が読み込まれる。そして、データ読込部11aにより、読み込まれた組み合わせ発光強度データがメモリ15に記憶される。
続いて、制御部11に構成された回帰式算定部11bにより、計測点毎の組み合わせ発光強度データを用いて炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す式が算定される。
具体的には、回帰式算定部11bにより、メモリ15に記憶された計測点毎の組み合わせ発光強度データを用い、回帰分析により、炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式、言い換えると、炭素の発光強度に対するカルシウムの発光強度の依存性を表す近似式が算定される。なお、回帰分析では、供試体軸心方向位置の値によって区分されることなく、あらゆる供試体軸心方向位置における組み合わせ発光強度データを一体として回帰分析が行われる。
ここで、S2の処理では、S1の処理によって取得された組み合わせ発光強度データのうち、コンクリートの中性化が生じていないと考えられる、コンクリート躯体表面から深い位置で計測された組み合わせ発光強度データのみが用いられる。ここで、以下では、中性化が生じていないと考えられる深さ(実際には、或る深さよりも深い範囲として設定される)のことを非中性化深さ範囲と呼ぶ。
なお、中性化が生じていると考えられる深さ範囲と中性化が生じていないと考えられる深さ範囲とを区画する中性化発生有無の境界の深さは、特定の値に限定されるものではなく、同様の仕様や条件のコンクリートにおける中性化発生の実績などを参考にして適当な値に適宜設定される。非中性化深さ範囲(中性化発生有無の境界の深さの値)は、炭酸化範囲の推定プログラム17内に予め規定される。
回帰式算定部11bにより、組み合わせ発光強度データ毎に供試体軸心方向位置の値が参照され、当該供試体軸心方向位置の値が非中性化深さ範囲に入っているデータのみが抽出されてS2の処理が行われる。
回帰の仕方(言い換えると、回帰式の種類)は、特定のものに限定されるものではなく、直線回帰でも良いし、直線回帰でも良い。また、回帰分析の手法(言い換えると、回帰式の算定方法)も、特定の方法に限定されるものではなく、具体的には例えば最小二乗法が用いられ得る。
なお、回帰式の種類や回帰式の算定方法は、炭酸化範囲の推定プログラム17内に特定のものが予め規定されるようにしても良いし、S2の処理を行う段階で作業者が入力部13及び表示部14を用いて入力したり複数の中から選択したりするようにしても良い。
そして、回帰式算定部11bにより、算定された回帰式に関するパラメータがメモリ15に記憶される。
次に、S2の処理によって算定された回帰式で表現される回帰直線の信頼帯の算出が行われる(S3)。
具体的には、制御部11に構成された信頼帯算出部11cにより、S2の処理においてメモリ15に記憶された回帰式に関するパラメータを用い、当該回帰式で表現される回帰直線の信頼帯(即ち、回帰直線の信頼区間の下限と上限とによって区画される帯域)が算出される。
信頼帯を算出する際の信頼水準は、特定の値に限定されるものではなく、適宜調整され得る。具体的には例えば、80〜99%程度の範囲のいずれかの値で設定されることが考えられ、85〜95%の範囲のいずれかの値で設定されることが好ましく、85〜90%の範囲のいずれかの値で設定されることがより一層好ましく、90%に設定されることが最も好ましい。
信頼帯を求めることにより、中性化が生じていないときのカルシウムの発光強度に対する炭素の発光強度の相対強度が特定される。
そして、信頼帯算出部11cにより、回帰直線の信頼帯に関するパラメータがメモリ15に記憶される。
次に、S3の処理によって算出された回帰直線の信頼帯を用いて計測点毎の炭酸化の発生有無の判定が行われる(S4)。
具体的には、制御部11に構成された炭酸化判定部11dにより、S3の処理においてメモリ15に記憶された回帰直線の信頼帯に関するパラメータとS2の処理においてメモリ15に記憶された組み合わせ発光強度データとを用い、組み合わせ発光強度データ毎に、下記1)及び2)の条件が充足されているか否かが判断される。
1)炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きい。
2)炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせ(データの点)が回帰直線の信頼帯に入っていない。
そして、上記1)及び2)の条件が両方とも充足されている場合には当該組み合わせ発光強度データが計測された計測点では炭酸化が生じていると判定され、一方で、上記1)及び2)の条件のうちの少なくとも一方が充足されていない場合には当該組み合わせ発光強度データが計測された計測点では炭酸化が生じていないと判定される。
そして、炭酸化判定部11dにより、メモリ15に記憶されている組み合わせ発光強度データ毎に、当該データの計測点における炭酸化の発生有無の情報(フラグ)が追加されてメモリ15に記憶される。
ここで、以上のS1からS4までの処理が本発明のコンクリートの炭酸化有無の判定方法としての処理である。そして、データ読込部11a,回帰式算定部11b,信頼帯算出部11c,炭酸化判定部11dが本発明のコンクリートの炭酸化有無の判定装置に対応する構成であり、これら各部としてコンピュータを機能させるものが本発明のコンクリートの炭酸化有無の判定プログラムである。
次に、S4の処理によって判定されて追加された組み合わせ発光強度データ毎の炭酸化の発生有無の情報を用いてコンクリート躯体表面からの深さ別の炭酸化の割合の算出が行われる(S5)。
具体的には、制御部11に構成された炭酸化割合算出部11eにより、S2の処理においてメモリ15に記憶された組み合わせ発光強度データとS4の処理においてメモリ15に記憶された組み合わせ発光強度データ毎の炭酸化の発生有無の判定結果を用い、供試体軸心方向位置の値別に炭酸化が生じている割合が算出される。すなわち、供試体軸心方向位置の値が同じである組み合わせ発光強度データの集合毎に、当該集合に属する全データの個数(即ち、計測点の数)に対する炭酸化が生じているデータの個数(計測点の数)の割合が算出される。
以上の処理により、コンクリート躯体表面からの深さ別の炭酸化発生割合が定量的に得られる。
なお、必要に応じ、上述の処理によって得られた供試体軸心方向位置と炭酸化発生割合との組み合わせデータを用いて回帰分析によって両者の間の関係を表す回帰直線の式を算定するようにしても良い。この場合には、コンクリート躯体表面からの深さの変化に伴う炭酸化発生割合の変化が定量的且つ連続的に得られる。
そして、制御部11は、ここまで取り扱ってきたコンクリート供試体(組み合わせ発光強度データ)に関する処理を終了する(END)。
以上のように構成された本発明のコンクリートの炭酸化有無の判定方法、判定装置及び判定プログラム並びにコンクリートの炭酸化範囲の推定方法、推定装置及び推定プログラムによれば、炭素の発光強度は実験条件によって絶対値が変化するために炭素の発光強度のみに着目した場合には炭酸化の度合いを定性的に示すことしかできないのに対し、炭素の発光強度とカルシウムの発光強度とを比較することにより、実験条件による発光強度の変化を相殺することができる。
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態ではS1の処理において計測され取得された組み合わせ発光強度データ(組み合わせ発光強度データベース18)が記憶装置としての記憶部12に格納(保存)されて当該記憶部12から組み合わせ発光強度データが読み込まれるようにしているが、本発明における記憶装置は、これに限られるものではなく、炭酸化範囲の推定装置10と信号の送受信が可能であるように接続された種々の記憶機器でも良いし、或いは、炭酸化範囲の推定装置10のメモリ15でも良い。
また、上述の実施形態ではレーザー誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)によってコンクリート供試体の発光強度の計測が行われるようにしているが、発光スペクトルの計測方法は、LIBSに限定されるものではなく、火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS(Spark−Induced Breakdown Spectroscopy の略)とも表記される)でも良い。
(2)コンクリートの目的元素の拡散係数の算定
次に、図4及び図5に、本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法、推定装置及び推定プログラムの実施形態の一例を示す。
コンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法は、図4に示すように、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置における発光スペクトルが計測され(S1')、この発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて数式3に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daが算定される(S2')ようにしている。
また、コンクリートの目的元素の拡散係数の推定装置は、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段と、組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて数式3に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daを算定する手段とを有する。
また、コンクリートの目的元素の拡散係数の推定プログラムは、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段、組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて数式3に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daを算定する手段としてコンピュータを機能させる。
ここで、I :塩素若しくはナトリウムの発光強度[任意単位],
Io:コンクリート表面での塩素若しくはナトリウムの発光強度から
Ibを差し引いた発光強度[任意単位],
erf:誤差関数,
z :供試体軸心方向位置[m],
Da:見かけの拡散係数[m2/s],
t :塩害環境に暴露された期間[s],
Ib:塩素若しくはナトリウム濃度が一定となる(ゼロを含む)
供試体軸心方向位置における発光強度[任意単位] をそれぞれ表す。
コンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法の実行にあたっては、まず、レーザー誘起ブレイクダウン分光法(以下、LIBSと表記する)を用いてコンクリート供試体の発光強度の計測が行われる(S1')。
拡散係数の推定においても、評価対象のコンクリート躯体などから採取されたコンクリート供試体が用いられ、上記(1)におけるコンクリート供試体と同様のコンクリート供試体が用いられ得る。
そして、LIBSを用いてコンクリート供試体の塩素若しくはナトリウムの発光強度が計測される。発光強度の計測の仕方は、上記(1)で述べた発光強度の計測の仕方と同様である。
LIBSを用いての発光強度の計測により、計測点毎のコンクリート供試体の軸心方向における位置(即ち、コンクリート躯体表面からの深さ)と塩素若しくはナトリウムの発光強度との組み合わせデータが複数組取得される。
次に、S1の処理によって取得された計測点毎の供試体軸心方向位置と塩素若しくはナトリウムの発光強度との組み合わせデータを用いて塩素若しくはナトリウムの拡散係数の算定が行われる(S2')。
ここで、本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法におけるS2'の処理は本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定装置によって実行され得る。
そして、本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法におけるS2'の処理及びこれら処理を実行する拡散係数の推定装置は、本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現され得る。本明細書では、コンクリートの目的元素の拡散係数の推定プログラムがコンピュータ上で実行されることによってS2'の処理を実行する拡散係数の推定装置が実現されると共に拡散係数の推定方法におけるS2'の処理が実行される場合を説明する。
拡散係数の推定プログラム37を実行するためのコンピュータ30(本実施形態では、拡散係数の推定装置30でもある)の全体構成を図5に示す。このコンピュータ30(拡散係数の推定装置30)は、制御部31,記憶部32,入力部33,表示部34,メモリ35を備え相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部31,記憶部32,入力部33,表示部34,メモリ35は、上記(1)における制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,メモリ15とそれぞれ同様である。
そして、本実施形態では、上述のS1'の処理において計測され取得された計測点毎の供試体軸心方向位置と塩素若しくはナトリウムの発光強度との組み合わせデータが発光強度データベース38として記憶部32に格納(保存)される。
そして、コンピュータ30(本実施形態では、拡散係数の推定装置30でもある)の制御部31には、拡散係数の推定プログラム37を実行することにより、S1'の処理において計測され取得された計測点毎の供試体軸心方向位置と塩素若しくはナトリウムの発光強度との組み合わせデータを記憶装置としての記憶部32から読み込む処理を行うデータ読込部31a、組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて数式3に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daを算定する処理を行う拡散係数算定部31bが構成される。
拡散係数の推定プログラム37が実行されることによる具体的な処理としては、まず、コンピュータ30(拡散係数の推定装置30)の制御部31に構成されたデータ読込部31aにより、S1'の処理において計測され取得されて記憶部32に格納されている発光強度データベース38に記録されている計測点毎の供試体軸心方向位置と塩素若しくはナトリウムの発光強度との組み合わせデータ(以下、発光強度データと呼ぶ)が読み込まれる。そして、データ読込部31aにより、読み込まれた発光強度データがメモリ35に記憶される。
続いて、制御部31に構成された拡散係数算定部31bにより、計測点毎の発光強度データを用いて見かけの拡散係数が算定される。
具体的には、拡散係数算定部31bにより、メモリ35に記憶された計測点毎の発光強度データを用い、数式4に示す方程式のフィッティングを行い、見かけの拡散係数Daが算定される。なお、発光強度データのうち、供試体軸心方向位置が数式4のコンクリート表面からの深さzとして用いられ、塩素若しくはナトリウムの発光強度が数式4の元素の発光強度Iとして与えられる。
ここで、I :塩素若しくはナトリウムの発光強度[任意単位],
Io:コンクリート表面での塩素若しくはナトリウムの発光強度から
Ibを差し引いた発光強度[任意単位],
erf:誤差関数,
z :コンクリート表面からの深さ[m],
Da:見かけの拡散係数[m2/s],
t :塩害環境に暴露された期間[s],
Ib:塩素若しくはナトリウム濃度が一定となる(ゼロを含む)
供試体軸心方向位置における発光強度[任意単位] をそれぞれ表す。
ここで、S2'の処理では、S1'の処理によって取得された発光強度データのうち、コンクリートの中性化が生じていない計測点の発光強度データのみが用いられる。
このとき、計測点毎に中性化が生じているか否かを判定して中性化が生じている計測点のみを除くようにしても良いし、中性化が生じている深さ範囲の計測点を全て除くようにしても良い。
計測点毎の中性化(言い換えると、中性化の原因である炭酸化)の発生有無の判定や中性化(炭酸化)が生じている深さ範囲の特定は、上記(1)で説明したコンクリートの炭酸化有無の判定方法やコンクリートの炭酸化範囲の推定方法を用いるようにしても良いし、その他の方法を用いるようにしても良い。
なお、計測点毎の炭酸化発生有無の判定や炭酸化発生範囲(深さ)の特定を上記(1)で説明したコンクリートの炭酸化有無の判定方法やコンクリートの炭酸化範囲の推定方法を用いるようにした場合には、同一のコンクリート供試体を用いて、上述の(1)のS1並びにS1'の処理が同時に行われ(なお、コンクリート躯体表面(図3における符号20aの面)における塩素若しくはナトリウムの発光強度の計測が含まれる)、計測点毎の「供試体軸心方向位置,炭素の発光強度,カルシウムの発光強度,塩素若しくはナトリウムの発光強度」の組み合わせデータが取得される。
続いて、上述の(1)のS2からS4までの処理が行われて計測点毎の炭酸化の発生有無が判定され、炭酸化が生じていないと判定された計測点の供試体軸心方向位置と塩素若しくはナトリウムの発光強度との組み合わせデータを用いてS2'の処理が行われる。
或いは、上述の(1)のS1からS5までの処理が行われて炭酸化が生じている深さ範囲が推定され、炭酸化が生じていないと推定された範囲内の計測点の供試体軸心方向位置と塩素若しくはナトリウムの発光強度との組み合わせデータを用いてS2'の処理が行われる。
計測点毎の中性化(炭酸化)の発生有無の判定において上記(1)で説明したコンクリートの炭酸化有無の判定方法を用いるようにした場合のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法は、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置における発光スペクトルが計測され、この発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式が算定されると共に回帰直線の信頼帯が算出され、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定され、発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータのうち炭酸化が生じていると判定された計測点のデータが除かれた組み合わせデータを用いて数式3に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daが算定されるようにしている。
また、計測点毎の中性化(炭酸化)の発生有無の判定において上記(1)で説明したコンクリートの炭酸化有無の判定方法を用いるようにした場合のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定装置は、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度及びカルシウムの発光強度及び塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段と、組み合わせデータを用いて炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式を算定する手段と、回帰直線の信頼帯を算出する手段と、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定する手段と、組み合わせデータのうち炭酸化が生じていると判定された計測点のデータを除いた組み合わせデータの塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置とを用いて数式3に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daを算定する手段とを有するようにしている。
また、計測点毎の中性化(炭酸化)の発生有無の判定において上記(1)で説明したコンクリートの炭酸化有無の判定方法を用いるようにした場合のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定プログラムは、コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された炭素の発光強度及びカルシウムの発光強度及び塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段、組み合わせデータを用いて炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す回帰直線の式を算定する手段、回帰直線の信頼帯を算出する手段、炭素の発光強度がカルシウムの発光強度よりも大きく且つ炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせが回帰直線の信頼帯に入っていない計測点では炭酸化が生じていると判定する手段、組み合わせデータのうち炭酸化が生じていると判定された計測点のデータを除いた組み合わせデータの塩素若しくはナトリウムの発光強度と供試体軸心方向位置とを用いて数式3に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daを算定する手段としてコンピュータを機能させるようにしている。
以上の処理により、コンクリートにおける塩素若しくはナトリウムの拡散係数が得られる。
そして、制御部31は、ここまで取り扱ってきたコンクリート供試体(発光強度データ)に関する処理を終了する(END)。
以上のように構成された本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法、推定装置及び推定プログラムによれば、中性化した箇所では塩化物イオン濃度が低下するので中性化箇所を含む塩化物イオン濃度のデータを用いると適切な拡散係数を算出することができないのに対し、コンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いるようにしているので、拡散係数の算定誤差の要因を排除して拡散係数を適切に推定することができる。
また、計測点毎の中性化(炭酸化)の発生有無の判定や中性化(炭酸化)が生じている深さ範囲の特定において上記(1)で説明したコンクリートの炭酸化有無の判定方法やコンクリートの炭酸化範囲の推定方法を用いるようにした場合には、炭素の発光強度は実験条件によって絶対値が変化するために炭素の発光強度のみに着目した場合には炭酸化の度合いを定性的に示すことしかできないのに対し、炭素の発光強度とカルシウムの発光強度とを比較するようにしているので、実験条件による発光強度の変化を相殺することができる。
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態ではS1'の処理において計測され取得された発光強度データ(発光強度データベース38)が記憶装置としての記憶部32に格納(保存)されて当該記憶部32から発光強度データが読み込まれるようにしているが、本発明における記憶装置は、これに限られるものではなく、拡散係数の推定装置30と信号の送受信が可能であるように接続された種々の記憶機器でも良いし、或いは、拡散係数の推定装置30のメモリ35でも良い。
本発明のコンクリートの炭酸化有無の判定方法を一部分として含む本発明のコンクリートの炭酸化範囲の推定方法が、実際のコンクリート供試体における炭酸化有無の判定並びに炭酸化範囲の推定に適用された実施例を図6乃至図8を用いて説明する。
本実施例では、実際のコンクリート構造物から採取された直径75mm・高さ150mmの円柱状のコンクリート供試体が用いられた。
そして、上記円柱状のコンクリート供試体が図3(A)に示す例のように軸心方向に二分割され、二分割されたときの切断面(図中の符号20b)に対してレーザー誘起ブレイクダウン分光法(以下、LIBSと表記する)によって発光強度の計測が行われた(S1)。
本実施例では、コンクリート躯体表面からの深さが2.5〜25[mm]の範囲について2.5mmピッチで、一つの深さ毎に41箇所で計測が行われた。
LIBSによる計測により、或る計測点における発光スペクトルについて、図6に示す結果が得られた。
本実施例では、スペクトルの両脇を結ぶ直線(図6中の破線)からスペクトルピークまでが発光強度とされた(C:炭素,Ca:カルシウム)。
また、LIBSによる計測によって得られた、計測点毎のコンクリート供試体の軸心方向における位置(即ち、コンクリート躯体表面からの深さ)と炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせデータ(組み合わせ発光強度データ)を、炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との二次元直交座標系にプロットすると、図7に示すようになった。
次に、S1の処理によって取得された計測点毎の供試体軸心方向位置と炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせデータ(図7)を用いて両者の間の関係を表す式の算定が行われた(S2)。
本実施例では、中性化が生じていないと考えられる深さを、コンクリート躯体表面から10mmよりも深い範囲とされた。すなわち、S1の処理によって取得された組み合わせ発光強度データのうち供試体軸心方向位置の値が12.5以上であるデータのみが抽出された。
そして、上述によって抽出された組み合わせ発光強度データを用い、炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との間の関係を表す直線の回帰式が算定された。なお、回帰式の算定には最小二乗法が用いられた。
次に、S2の処理によって算定された回帰式で表現される回帰直線の信頼帯の算出が行われた(S3)。
本実施例では、信頼帯の信頼水準の値の大きさがコンクリートの炭酸化範囲の推定精度に与える影響を検証するため、信頼水準が85,90,95,99[%]に設定された。
信頼帯の信頼水準が90%の場合について、信頼帯の下限を表す直線及び上限を表す直線として図7に示す結果(図中の上下二つの破線)が得られた。
次に、S3の処理によって算出された回帰直線の信頼帯を用いて計測点毎の炭酸化の発生有無の判定が行われた(S4)。
具体的には、炭素の発光強度とカルシウムの発光強度との組み合わせのデータ点が図7に示す信頼帯の下限を表す直線(図中の下側の破線)よりも下側にある計測点では炭酸化が生じていると判定された。
次に、S4の処理によって判定されて追加された組み合わせ発光強度データ毎の炭酸化の発生有無の情報を用いてコンクリート躯体表面からの深さ別の炭酸化の割合の算出が行われた(S5)。
コンクリート躯体表面からの深さ別(本実施例では、2.5〜25[mm]の範囲について2.5mmピッチ)に、当該深さの全データの個数(即ち、計測点の数)に対する炭酸化が生じているデータの個数(計測点の数)の割合が算出された。
本実施例では、回帰直線の信頼帯の信頼水準別に、コンクリート躯体表面からの深さ別の炭酸化発生割合が算出され、図8に示す結果が得られた。
図8に示す結果から、いずれの信頼水準についても、コンクリート躯体表面からの深さが最も浅い2.5mmの深さの場合に炭酸化発生割合が最も高く、表面からの深さが深くなるに従って炭酸化割合が減少していく傾向が確認された。
ここで、同一のコンクリート供試体を用いて別の方法によって行われた中性化試験により、本実施例で用いられたコンクリート供試体においてはコンクリート躯体表面から約10mmの深さまで中性化及び炭酸化が生じていたことが確認された。図8に示す結果では、いずれの信頼水準についても、10〜25[mm]の範囲では炭酸化発生割合の値が低い値で概ね一定しており、10mm以深では炭酸化が発生していない実態が現れていることが確認された。
図8に示す結果から、また、本実施例においては、信頼帯の信頼水準が95%の場合及び99%の場合では、信頼帯が幅広になって信頼帯の下限の直線よりも下側にあるデータ点が少なくなるので炭酸化が生じていると判定される計測点が少なくなり、深さ5mm以深においては炭酸化が生じていないと判断され得ることが確認された。
一方、信頼帯の信頼水準が85%の場合及び90%の場合では、信頼帯の幅が適切になって信頼帯の下限の直線よりも下側にあるか否かによる炭酸化の発生有無の判定が適切に行われ、深さ2.5mmから10mmまでの範囲に亘って炭酸化発生割合が低減する傾向が良好に再現されること、及び、深さ10mm以深においては炭酸化が生じていないと判断され得ることが確認された。
さらに、深さ10mmよりも深い範囲における炭酸化発生割合の値がより一層小さくなっていることに鑑みて、信頼水準の値を90%とすることによって最も良好な結果が得られることが確認された。
なお、上述のように回帰直線の信頼帯の信頼水準の値を90%としたときに最も良好な結果が得られることが確認されたが、この結果はあくまでも本実施例における結果であり、上述のように信頼水準の値を90〜95[%]程度の範囲にすることによって良好な結果が得られることは言い得るものの、信頼水準の値が90〜95[%]の範囲に限定されることを示すものではない。
以上の結果から、本発明のコンクリートの炭酸化有無の判定方法並びにコンクリートの炭酸化範囲の推定方法は、炭酸化がコンクリート躯体表面から内部に向けて徐々に進行しているという実態を定量的に良好に判定できることが確認され、コンクリートの炭酸化の発生有無の判定手法としての信頼性が高いことが確認された。
以上の結果から、また、本発明のコンクリートの炭酸化範囲の推定方法は、コンクリート躯体表面からどの程度の深さまで炭酸化が進行しているという実態を定量的に良好に推定できることが確認され、コンクリート躯体表面からの深さの変化に伴う炭酸化発生割合の変化を含むコンクリートの炭酸化の発生範囲の推定手法としての信頼性が高いことが確認された。
本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法が実際のコンクリート供試体における塩素の拡散係数の推定に適用された実施例を図9を用いて説明する。
まず、レーザー誘起ブレイクダウン分光法(以下、LIBSと表記する)を用いてコンクリート供試体の発光強度の計測が行われる(S1')。
本実施例の発光強度の計測は、上述の実施例1における発光強度の計測(実施例1のS1の処理)と同時に行われた。そして、本実施例に対応するものとして塩素の発光強度が計測された。すなわち、同一のコンクリート供試体について、実施例1に対応するものも含めると、計測点毎の供試体軸心方向位置(即ち、コンクリート躯体表面からの深さ)と炭素の発光強度とカルシウムの発光強度と塩素の発光強度との組み合わせデータが取得された。なお、供試体軸心方向位置は、コンクリート躯体表面からの深さ2.5〜80[mm]の範囲について2.5mmピッチとされた。
LIBSによる計測により、コンクリート躯体表面からの深さ別の塩素の発光強度について、図9に示す結果が得られた(図中の黒丸)。なお、本実施例では、同一の深さの複数の計測点における塩素の発光強度の平均値が用いられた。
次に、S1の処理によって取得された計測点毎の供試体軸心方向位置と塩素の発光強度との組み合わせデータを用いて塩素の拡散係数の算定が行われた(S2')。
本実施例では、上述の実施例1における、本発明のコンクリートの炭酸化有無の判定方法,コンクリートの炭酸化範囲の推定方法による、コンクリート躯体表面からの深さ10mmまでの範囲において炭酸化が生じているという結果(信頼帯の信頼水準85%,90%)に基づき、供試体軸心方向位置が10以内の計測点におけるデータが除外された。なお、図9に示す結果から、深さ10mmまでの範囲の塩素の発光強度(図中の黒丸)の傾向とそれよりも深い範囲の塩素の発光強度の傾向とは明らかに異なることが確認された。
そして、供試体軸心方向位置が12.5以上の、供試体軸心方向位置と塩素の発光強度との組み合わせデータを用い、数式4に示す方程式のフィッティングを行い、見かけの拡散係数Daが算定された。
数式4に示す方程式のフィッティングの結果として、図9中の実線で示す直線が得られた。
ここで、同一のコンクリート供試体を用いて電位差滴定法によって求められた塩化物イオン濃度を図9にあわせて示す(図中の柱状グラフ)。この結果から、実施例1において炭酸化が生じていると推定されたコンクリート躯体表面から10mmまでの範囲においてそれよりも深い範囲の傾向と比べて塩化物イオン濃度が特異である(具体的には、不連続に低い)ことが確認された。
図9に示す結果から、数式4に示す方程式によってLIBSによる塩素の発光強度を良好にフィッティングできることが確認され(図中の黒丸と実線の直線)、さらに、フィッティングの結果は塩化物イオン濃度の実態と良好に対応していることが確認された(図中の実線の直線と柱状グラフ)。
以上の結果から、本発明のコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法は、コンクリート中における目的元素の拡散の実態に対応する拡散係数を良好に推定できることが確認され、コンクリートの目的元素の拡散係数の推定手法としての信頼性が高いことが確認された。
なお、図9に示す塩化物イオン濃度の結果からも、実施例1で用いられた本発明のコンクリートの炭酸化有無の判定方法,コンクリートの炭酸化範囲の推定方法によるコンクリートの炭酸化の発生有無の判定や炭酸化の発生範囲の推定手法としての信頼性が高いことが確認された。
10 炭酸化範囲の推定装置
17 炭酸化範囲の推定プログラム
30 拡散係数の推定装置
37 拡散係数の推定プログラム

Claims (3)

  1. コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置における発光スペクトルが計測され、この発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と前記供試体軸心方向位置との組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて以下の数式1
    ここで、I :塩素若しくはナトリウムの発光強度[任意単位],
    Io:コンクリート表面での塩素若しくはナトリウムの発光強度から
    Ibを差し引いた発光強度[任意単位],
    erf:誤差関数,
    z :供試体軸心方向位置[m],
    Da:見かけの拡散係数[m2/s],
    t :塩害環境に暴露された期間[s],
    Ib:塩素若しくはナトリウム濃度が一定となる(ゼロを含む)
    供試体軸心方向位置における発光強度[任意単位] をそれぞれ表す。
    に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daが算定されることを特徴とするコンクリートの目的元素の拡散係数の推定方法。
  2. コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と前記供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段と、前記組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて以下の数式2
    ここで、I :塩素若しくはナトリウムの発光強度[任意単位],
    Io:コンクリート表面での塩素若しくはナトリウムの発光強度から
    Ibを差し引いた発光強度[任意単位],
    erf:誤差関数,
    z :供試体軸心方向位置[m],
    Da:見かけの拡散係数[m2/s],
    t :塩害環境に暴露された期間[s],
    Ib:塩素若しくはナトリウム濃度が一定となる(ゼロを含む)
    供試体軸心方向位置における発光強度[任意単位] をそれぞれ表す。
    に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daを算定する手段とを有することを特徴とするコンクリートの目的元素の拡散係数の推定装置。
  3. コンクリート供試体の複数の供試体軸心方向位置において計測された発光スペクトルに基づいて特定された塩素若しくはナトリウムの発光強度と前記供試体軸心方向位置との組み合わせデータを記憶装置から読み込む手段、前記組み合わせデータのうちコンクリートの中性化が生じていない計測点の組み合わせデータのみを用いて以下の数式3
    ここで、I :塩素若しくはナトリウムの発光強度[任意単位],
    Io:コンクリート表面での塩素若しくはナトリウムの発光強度から
    Ibを差し引いた発光強度[任意単位],
    erf:誤差関数,
    z :供試体軸心方向位置[m],
    Da:見かけの拡散係数[m2/s],
    t :塩害環境に暴露された期間[s],
    Ib:塩素若しくはナトリウム濃度が一定となる(ゼロを含む)
    供試体軸心方向位置における発光強度[任意単位] をそれぞれ表す。
    に示す方程式のフィッティングを行うことによって見かけの拡散係数Daを算定する手段としてコンピュータを機能させるためのコンクリートの目的元素の拡散係数の推定プログラム。
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