JP7214316B2 - コンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法、定量装置、及び定量プログラム - Google Patents

コンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法、定量装置、及び定量プログラム Download PDF

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Description

本発明は、コンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法、定量装置、及び定量プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、鉄筋コンクリート構造物におけるコンクリートへの塩分浸透による鉄筋の腐食(即ち、塩害)状況の評価に用いて好適な塩化物イオン濃度の定量技術に関する。
鉄筋コンクリート構造物の表面にひび割れや錆垂れなどの変状が確認された場合は、鉄筋コンクリート構造物の健全性を確認するために、打音検査や円柱状のコンクリート試料(尚、「コア」とも呼ばれる)が採取されて物性試験が行われることがある。塩害の場合は、塩化物イオン濃度が計測されて、鉄筋腐食発生の有無が評価される。
硬化コンクリート中の塩化物イオン濃度を計測する従来の方法として、電位差滴定法がある(非特許文献1)。
日本工業規格 JIS A 1154 2011:硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法
しかしながら、非特許文献1の電位差滴定法では、構造物からのコンクリートコア抜き及び当該コアの粉砕並びに滴定を行う必要があるため、多大な手間や時間と費用とが必要とされるという問題がある。このため、汎用性が高いとは言い難い。
そこで、本発明は、硬化コンクリート中の塩化物イオンの濃度を従来の方法と比べて簡便且つ迅速に尚且つ低廉に定量することができるコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法、定量装置、及び定量プログラムを提供することを目的とする。
本発明者は、発光スペクトルの観測(具体的には、レーザ誘起ブレイクダウン分光法(「LIBS」とも呼ばれる)による計測)に基づいて硬化コンクリート中の塩化物イオンの濃度を計測する際、コンクリートに含まれる骨材のチタンの量が多い場合に、チタンの輝線のピーク波長(具体的には、837.720 nm)と塩素の輝線のピーク波長(具体的には、837.594 nm)とが近接していてスペクトル強度が相互に重畳するために各々のスペクトルに分離することができず、塩素の発光強度の算定に大きな影響を及ぼす(具体的には、塩素の発光強度が過大に算出される)ことを知見した。
本発明者は、また、同じく発光スペクトルの観測(具体的には、レーザ誘起ブレイクダウン分光法による計測)に基づいて硬化コンクリート中の塩化物イオンの濃度を計測する際、コンクリートに含まれる骨材の鉄の量が多い場合に、鉄の輝線のピーク波長(具体的には、837.661 nm)と塩素の輝線のピーク波長(具体的には、837.594 nm)とが近接していてスペクトル強度が相互に重畳するために各々のスペクトルに分離することができず、塩素の発光強度の算定に大きな影響を及ぼす(具体的には、塩素の発光強度が過大に算出される)ことを知見した。
そこで、本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法は、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に、評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみが用いられて算定される塩素の発光強度が当てはめられて評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度が算出されるようにしている。
本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法は、或いは、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に、評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみが用いられて算定される塩素の発光強度が当てはめられて評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度が算出されるようにしている。
また、本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置は、評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータを塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別する手段と、選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する手段と、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に前記算定された塩素の発光強度を当てはめて評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する手段とを有するようにしている。
本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置は、或いは、評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータを塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別する手段と、選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する手段と、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に前記算定された塩素の発光強度を当てはめて評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する手段とを有するようにしている。
また、本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムは、評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータを塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別する処理と、選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する処理と、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に前記算定された塩素の発光強度を当てはめて評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムは、或いは、評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータを塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別する処理と、選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する処理と、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に前記算定された塩素の発光強度を当てはめて評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
したがって、これらのコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムによると、チタンの輝線や鉄の輝線が強く観測されるデータが取り除かれることにより、発光スペクトルの観測に基づくコンクリートの塩化物イオン濃度の定量において、定量の阻害要因となる元素の影響が除去される。
また、本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムは、前記コンクリート試料についての前記組み合わせデータの選別及び前記評価対象のコンクリートサンプルについての前記波長別のスペクトル強度のデータの選別が発光強度に関する変動係数の値に基づいて行われるようにしても良い。この場合には、チタンの輝線や鉄の輝線に係る発光強度に関する変動係数に基づいてデータの選別が行われるようにしているので、データの選別が適切に行われる。
本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムによれば、発光スペクトルの観測に基づくコンクリートの塩化物イオン濃度の定量の阻害要因となる元素の影響を除去することができるので、塩化物イオン濃度の定量精度を向上させることが可能になり、延いては塩化物イオン濃度の定量手法としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムは、データの選別において発光強度に関する変動係数の値が用いられるようにした場合には、データの選別を適切に行うことができるので、塩化物イオン濃度の定量精度を一層確実に確保することが可能になり、延いては塩化物イオン濃度の定量手法としての信頼性の一層の向上を図ることが可能になる。
本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムは、レーザ誘起ブレイクダウン分光法が用いられるようにした場合には、波長別のスペクトル強度の計測を適切に行うことができるので、塩化物イオン濃度の定量精度を一層確実に確保することが可能になり、延いては塩化物イオン濃度の定量手法としての信頼性の一層の向上を図ることが可能になる。
本発明のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法の実施形態の一例を説明するフローチャートである。 実施形態のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法をコンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現されるコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置の機能ブロック図である。 (実施例1)コンクリートサンプルを計測して取得される全データの積算平均スペクトル強度と抽出されたデータのみの積算平均スペクトル強度との比較の一例を示す図である。 (実施例1)コンクリートサンプルを計測して取得される全データに基づく塩化物イオン濃度と抽出されたデータのみに基づく塩化物イオン濃度との比較の一例を示す図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に、本発明に係るコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置,及びコンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムの実施形態の一例を示す。
本実施形態のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法は、コンクリート試料の塩化物イオン濃度と波長別のスペクトル強度との組み合わせデータ(S1,S2)のうち、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度や、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された(S3,S4)組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式(S5,S6)に、評価対象のコンクリートサンプルについての波長別のスペクトル強度のデータ(S7)のうち、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度や、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された(S8,S9)波長別のスペクトル強度のデータのみが用いられて算定される塩素の発光強度(S10)が当てはめられて評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度が算出される(S11)ようにしている(図1参照)。
上記コンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法は、本発明に係るコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置によって実施され得る。本実施形態のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置は、評価対象のコンクリートサンプルについての波長別のスペクトル強度のデータを、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度や、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別する手段と、選別された波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する手段と、コンクリート試料の塩化物イオン濃度と波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度や、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に前記算定された塩素の発光強度を当てはめて評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する手段とを有するようにしている。
上記コンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法やコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置は、コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムがコンピュータ上で実行されることによっても実施されたり実現されたりし得る。本実施形態に係る説明では、コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムがコンピュータ上で実行されることによってコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法が実施されると共にコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置が実現される場合を取り上げて説明する。
本実施形態のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置10でもある)の全体構成を図2に示す。
このコンピュータ10(コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置10)は制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,及びメモリ15を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部11は、記憶部12に記憶されているコンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラム17に従ってコンピュータ10全体の制御並びにコンクリートの塩化物イオン濃度の定量に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部13は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部11に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウスである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部13として有するようにしても良い。
表示部14は、制御部11の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ15は、制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
また、コンピュータ10に、必要に応じ、当該コンピュータ10との間でデータや制御指令等の信号の送受信(即ち、出入力)が可能であるように、バスや広域ネットワーク回線等の信号回線により、データサーバ20が接続されるようにしても良い。また、コンピュータ10は、必要に応じ、インターネットなどのネットワークを介してクラウドサーバ(図示していない)にアクセス可能であるようにしても良い。
そして、コンピュータ10(以下、「コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置10」と表記する)の制御部11には、コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラム17が実行されることにより、評価対象のコンクリートサンプルについての波長別のスペクトル強度のデータを、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度や、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別する処理を行う第一の変動係数算出部11a及び第一のデータ選別部11bと、選別された波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する処理を行う第一の発光強度算定部11cと、コンクリート試料の塩化物イオン濃度と波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度や、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に前記算定された塩素の発光強度を当てはめて評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する処理を行う第二の変動係数算出部11e,第二のデータ選別部11f,第二の発光強度算定部11g,及び濃度算出部11hとが構成される。
本発明に係る手順は、大きくは、検量線の作成関連の処理(S1からS6まで)と塩化物イオン濃度の定量関連の処理(S7からS11まで)とからなる。
そして、コンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法が実施される際の手順として、検量線を作成するため、まず、コンクリート試料の塩化物イオン濃度の計測が行われる(S1)。
検量線の作成に際しては、塩化物イオン濃度が異なる複数のコンクリート試料が用いられる。
検量線作成用の試料としては、例えば、塩化ナトリウムが練り混ぜられて作成されるコンクリート試料が用いられる。
塩化ナトリウムが練り混ぜられたコンクリート試料は、例えば、モルタル練り混ぜ時に塩化ナトリウムが所定量投入され、塩化ナトリウムの濃度が異なる複数のフレッシュコンクリートが層状に打設され養生されて作製されたコンクリート供試体から作成される。複数の層に打ち継がれることにより、コンクリートが硬化するまでの間に塩化ナトリウムの濃度勾配による拡散が生じ、打設後に塩化ナトリウムの濃度勾配が発現される一体のコンクリート供試体が作製される。
上記によって作製されたコンクリート供試体が打設時における塩化ナトリウム濃度境界面と平行な面(言い変えると、打設後における塩化ナトリウムの濃度勾配と直交する面)に沿って切断され、塩化ナトリウムの濃度勾配に応じて塩化ナトリウムの濃度が異なる複数のコンクリート試料(「濃度計測用試料」と呼ぶ)が作成される。
濃度計測用試料のそれぞれに試料番号が付与される。試料番号は、濃度計測用試料を相互に区別して個別に識別し特定し得るように、濃度計測用試料のそれぞれに対してユニークで唯一のものとして付与される。
塩化ナトリウムの濃度勾配を有するコンクリート供試体が切断されて作成された濃度計測用試料のそれぞれについて、電位差滴定法が用いられて、具体的には例えば「日本工業規格 JIS A 1154 2011:硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法」に準拠して分析が行われて塩化物イオン濃度が計測される。
電位差滴定法が用いられての塩化物イオン濃度の計測により、濃度計測用試料それぞれの塩化物イオン濃度のデータが取得される。
S1の処理の結果として、試料番号と塩化物イオン濃度の値との組み合わせデータが取得される。
また、コンクリート試料のスペクトル強度の計測が行われる(S2)。
S1の処理において電位差滴定法が用いられて塩化物イオン濃度が計測される際に濃度計測用試料の粉砕によって得られる粉末が圧縮成型され、S1の処理において作成された塩化ナトリウムの濃度が異なる複数の濃度計測用試料のそれぞれに対応する複数の試料(「LIBS用試料」と呼ぶ)が作成される。
LIBS用試料のそれぞれに、当該のLIBS用試料が圧縮成型される際に使用された粉末の元の濃度計測用試料と同じ試料番号が付与される。
上述のようにしてコンクリート供試体から濃度計測用試料とLIBS用試料とが作成されることにより、少量のコンクリートから塩化物イオン濃度が異なる試料を多種類採取することが可能になる。
濃度計測用試料の粉末が圧縮成型されて作成されたLIBS用試料のそれぞれについて、LIBSが用いられて波長毎のスペクトル強度が計測される。すなわち、パルス状のレーザ光がLIBS用試料に対して照射され、コンクリートがアブレーションし、プラズマ化された物質からの発光スペクトルが計測され、この発光スペクトルに基づいて波長毎のスペクトル強度が特定される。なお、LIBS自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する(例えば、特開2013-190411号,特許第3500139号を参照)。
レーザ光の照射の仕方については、少なくとも一つのレーザ光がLIBS用試料に対して照射されてプラズマが生じる態様であれば特定の態様に限定されるものではなく、例えば、単一のレーザ光を照射するようにしても良く、或いは、二つのレーザ光を、同軸で照射するようにしたり、一つをコンクリート法線方向に対して斜めの方向や垂直の方向から照射するようにしたりしても良い。
一つのLIBS用試料について、本実施形態では、レーザの照射及び発光スペクトルの計測が複数回行われる。ただし、一つのLIBS用試料について、レーザの照射及び発光スペクトルの計測が一回のみ行われるようにしても良い。
LIBSが用いられての発光スペクトルの計測により、LIBS用試料それぞれのレーザ照射毎の(言い換えると、レーザ照射回数分の)波長別のスペクトル強度のデータが取得される。
S1及びS2の処理の結果として、コンクリート試料(即ち、濃度計測用試料,濃度計測用試料から作成されたLIBS用試料)それぞれの塩化物イオン濃度の値と波長別スペクトル強度との組み合わせデータが、レーザ照射毎のデータ(言い換えると、レーザ照射回数分のデータ)として得られる。
本実施形態では、濃度計測用試料/LIBS用試料に付与された試料番号,塩化物イオン濃度の値,及び波長別スペクトル強度の組み合わせデータがレーザ照射毎のデータとして複数蓄積されて記録されたデータファイルが、濃度強度組合せデータベース21としてデータサーバ20に格納(別言すると、保存)される。
次に、S2の処理によって取得された波長別のスペクトル強度に基づいて特定元素に係る発光強度に関する変動係数の算出が行われる(S3)。
本発明では、発光スペクトルの観測(例えばレーザ誘起ブレイクダウン分光法による計測)に基づいて塩化物イオン濃度を計測する際に塩素(Cl)の輝線(具体的には、ピーク波長が837.594 nm)とチタン(Ti)の輝線(具体的には、ピーク波長が837.720 nm)や鉄(Fe)の輝線(具体的には、ピーク波長が837.661 nm)とが重畳することによって計測精度が低下するという本発明者の知見に基づき、チタンの輝線や鉄の輝線に着目する。本発明の説明では、チタンや鉄のことを「特定元素」と呼ぶ。
具体的には、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線(言い換えると、チタン単独のものとして観測され得るチタンの輝線)に着目し、当該チタンの輝線が強く観測されているスペクトル強度のデータ(別言すると、チタンの輝線が強く観測されているレーザ照射回のデータ)が分析の対象から除外される。この操作は、S2の処理によって取得されたスペクトル強度のデータの中から、チタンの発光強度が弱い箇所、即ちチタンの含有量が相対的に少ない箇所を計測したデータのみが抽出されることに相当する。
これにより、チタン単独の輝線に着目して算定されるチタンの発光強度が強い場合には塩素の輝線と重畳する可能性があるチタンの輝線が塩素の発光強度に与える影響が大きい(具体的には、塩素の発光強度が過大に算出される)と考えられるところ、当該のデータが分析の対象から除外されることによってチタンの影響が取り除かれて塩素の発光強度がその分正確に算定されるようになる。
塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線(言い換えると、チタン単独のものとして観測され得るチタンの輝線)として具体的に以下の表1に整理したものが挙げられる(尚、厳密には、元素毎に原子線とイオン線との二種類の輝線があるが、これらを一括して各元素の輝線として取り扱う)。以下の表1に挙げられている輝線のことを「チタン着目輝線」と呼ぶ。
Figure 0007214316000001
また、塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線(言い換えると、鉄単独のものとして観測され得る鉄の輝線)に着目し、当該鉄の輝線が強く観測されているスペクトル強度のデータ(別言すると、鉄の輝線が強く観測されているレーザ照射回のデータ)が分析の対象から除外される。この操作は、S2の処理によって取得されたスペクトル強度のデータの中から、鉄の発光強度が弱い箇所、即ち鉄の含有量が相対的に少ない箇所を計測したデータのみが抽出されることに相当する。
これにより、鉄単独の輝線に着目して算定される鉄の発光強度が強い場合には塩素の輝線と重畳する可能性がある鉄の輝線が塩素の発光強度に与える影響が大きい(具体的には、塩素の発光強度が過大に算出される)と考えられるところ、当該のデータが分析の対象から除外されることによって鉄の影響が取り除かれて塩素の発光強度がその分正確に算定されるようになる。
塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線(言い換えると、鉄単独のものとして観測され得る鉄の輝線)として具体的に以下の表2に整理したものが挙げられる(尚、厳密には、元素毎に原子線とイオン線との二種類の輝線があるが、これらを一括して各元素の輝線として取り扱う)。以下の表2に挙げられている輝線のことを「鉄着目輝線」と呼ぶ。
Figure 0007214316000002
S1及びS2の処理によって取得された組み合わせデータを選別するため、レーザ照射毎に得られた波長別のスペクトル強度のそれぞれについて以下の数式1で定義される発光強度に関する変動係数CVが求められる。
Figure 0007214316000003
数式1において、CV:発光強度に関する変動係数,N:CVを求める際に用いたデータ点数(別言すると、波長の個数),λ:波長,I(λ):波長λにおけるスペクトル強度,IB(λ):波長λ1とλ2とに於ける又は波長λ3とλ4とに於けるスペクトル強度位置を通過する直線上の波長λに対応するスペクトル値をそれぞれ表す。
数式1の右辺の分母は、すなわち、波長λがλ1からλ2までの範囲における、波長λ毎のスペクトル強度I(λ)とベースライン上のスペクトル値IB(λ)との差分の最大値(記号:max)である。
波長λ1とλ2とは、変動係数CVの算出に係る特定元素の輝線の両裾(別言すると、特定元素に係る輝線の拡がりの両端であり、特定元素の輝線波長域の両端)に該当する波長である。
そして、数式1に関係する、波長λ1とλ2とに於けるスペクトル強度位置を通過する直線はスペクトルのベースラインに相当する。
また、数式1の右辺の分子は、すなわち、波長λがλ3からλ4までの範囲における波長λ毎のスペクトル強度I(λ)とベースライン上のスペクトル値IB(λ)との差分の二乗の合計を波長λ3からλ4までの範囲に含まれる波長λの個数Nで割った値の二乗根である。
波長λ3とλ4とは、特定元素の輝線に近い波長領域に於いて輝線が観測されない波長域の両端に該当する波長である。
そして、数式1に関係する、波長λ3とλ4とに於けるスペクトル強度位置を通過する直線はスペクトルのベースラインに相当する。
なお、数式1の右辺の分子は、特定元素(即ち、チタン,鉄)の含有量が零の試料を計測したときの特定元素の輝線波長域におけるスペクトル強度の標準偏差と定義すると、変動係数の元々の定義と対応することになる。しかしながら、例えば、骨材にはわずかにチタンが含まれており、コンクリートと同等の組成を持ち、且つチタンの含有量が零の試料を用意することは容易ではない。このため、数式1ではチタンの輝線に近い波長領域に於いて輝線が観測されない波長域(即ち、数式1では具体的にはλ3~λ4の範囲)のスペクトルを用いて発光強度の標準偏差を評価するようにしている。
ここで、統計学で定義される変動係数の定義、即ち或る信号強度の標準偏差をそれの算術平均で除した値であれば、数式1を変更しても良い。具体的には、数式1の分母は輝線のピークの強度に相当するが、輝線の平均値、即ち mean{I(λ)-IB(λ),λ=λ1~λ2} でも良い。また、チタンが全く含まれていないコンクリート試料を用意できる場合には、λ3及びλ4はλ1及びλ2としても良い。
さらに言えば、組み合わせデータを選別するための指標としての変動係数は、数式1によって定義される変動係数CVに限定されるものではなく、特定の波長域(上述の波長λ1からλ2までに相当する波長域)における発光強度が所定の波長域(上述の波長λ3からλ4までに相当する波長域)における発光強度に対して変動しているか否かを判断し得る指標であれば、どのように定義される(言い換えると、算出される)ものであっても良い。
変動係数CVは、チタン着目輝線のうちの少なくとも一つが選択された上で当該選択された輝線について算出され、また、鉄着目輝線のうちの少なくとも一つが選択された上で当該選択された輝線について算出される。
この際、チタン着目輝線(のうちの少なくとも一つ)のみが選択されるようにしたり鉄着目輝線(のうちの少なくとも一つ)のみが選択されるようにしたりしても良い。すなわち、チタン着目輝線と鉄着目輝線とのうちのどちらか一方のみが選択されて変動係数CVが算出されるようにしても良い。
本実施形態では、制御部11の第一の変動係数算出部11aにより、データサーバ20に格納されている濃度強度組合せデータベース21に記録されている組み合わせデータの波長別スペクトル強度のデータが読み込まれ、組み合わせデータ毎に(別言すると、レーザ照射毎に)、数式1によって変動係数CVの値が算出される。
そして、第一の変動係数算出部11aにより、濃度強度組合せデータベース21に記録されている組み合わせデータのそれぞれについて算出された変動係数CVの値が、前記組み合わせデータのそれぞれと対応づけられて、言い換えると前記組み合わせデータのそれぞれに追加されて、濃度強度組合せデータベース21に含められる。
S3の処理により、試料番号,塩化物イオン濃度の値,波長別スペクトル強度,及び変動係数CVの値の組み合わせデータが複数蓄積されて記録されたデータファイルとして、濃度強度組合せデータベース21がデータサーバ20に保存される。
次に、S3の処理によって算出された発光強度に関する変動係数に基づいて組み合わせデータの選別が行われる(S4)。
本実施形態では、制御部11の第一のデータ選別部11bにより、S3の処理において変動係数に関する情報が追加された濃度強度組合せデータベース21から組み合わせデータが読み込まれ、変動係数CVの値が確認される。
そして、第一のデータ選別部11bにより、変動係数CVの値が一定値以上である場合に、当該の組み合わせデータ(即ち、レーザ照射一回分のデータ)がデータファイルに記録され蓄積されて抽出組合せデータベース22としてデータサーバ20に格納(別言すると、保存)される。データの選別の基準(即ち、前記における「一定値」)として用いられる変動係数CVの値のことを「選別閾値」と呼ぶ。
すなわち、S3までの処理によって濃度強度組合せデータベース21に記録されている組み合わせデータのうち、変動係数CVの値が選別閾値以上である組み合わせデータは抽出組合せデータベース22に記録される一方で、変動係数CVの値が選別閾値よりも小さい組み合わせデータは抽出組合せデータベース22には記録されない。
選別閾値の値Tsは、特定の値に限定されるものではなく、チタン着目輝線における発光強度が強いためにピーク波長が837.720 nm のチタンの輝線が塩素の輝線(具体的には、ピーク波長が837.594 nm)と重畳することによる塩素の発光強度に与える影響を抑制することや、鉄着目輝線における発光強度が強いためにピーク波長が837.661 nm の鉄の輝線が塩素の輝線(具体的には、ピーク波長が837.594 nm)と重畳することによる塩素の発光強度に与える影響を抑制することが考慮されるなどした上で、適当な値に適宜設定される。
選別閾値の値Tsは、具体的には例えば、0~2程度の範囲(即ち、概ね0≦Ts≦2)のうちのいずれかの値に設定されることが考えられ、0より大きく1以下の範囲(即ち、0<Ts≦1)のうちのいずれかの値に設定されることが好ましく、1程度(即ち、Ts≒1、特にTs=1)に設定されることが最も好ましい。
選別閾値は、チタンが塩素の発光強度に与える影響を抑制することが考慮されて設定されたチタンに対応する閾値と、鉄が塩素の発光強度に与える影響を抑制することが考慮されて設定された鉄に対応する閾値とが準備されるようにしても良い。
次に、S4の処理によって選別された組み合わせデータのそれぞれについてS2の処理によって取得された波長別のスペクトル強度に基づいて塩素の発光強度の算定が行われる(S5)。
塩素の発光強度は、塩素の輝線(具体的には、ピーク波長が837.594 nm)の両裾を結ぶ直線が当該輝線のベースラインと定義された上で当該輝線のピークから前記ベースラインまでの信号強度が計算されることによって算定される。
本実施形態では、制御部11の第一の発光強度算定部11cにより、S4の処理においてデータサーバ20に格納された抽出組合せデータベース22に記録された組み合わせデータが読み込まれ、試料番号が同じである(即ち、塩化物イオン濃度も同じである)組み合わせデータの波長別スペクトル強度が波長毎に積算されて平均された上で塩素の発光強度が算定される。
そして、第一の発光強度算定部11cにより、塩化物イオン濃度の値と塩素の発光強度の値との組み合わせデータがメモリ15に記憶させられる。
次に、S5までの処理によって取得された塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との組み合わせデータが用いられて両者の間の関係を表す式の算定が行われる(S6)。
本実施形態では、制御部11の回帰式算定部11dにより、S5の処理においてメモリ15に記憶された塩化物イオン濃度の値と塩素の発光強度の値との組み合わせデータが読み込まれ、当該組み合わせデータが用いられて、回帰分析により、塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式、言い換えると、塩素の発光強度の塩化物イオン濃度依存性を表す近似式が算定される。
回帰の仕方(言い換えると、回帰式の種類)は、特定のものに限定されるものではなく、直線回帰でも良く、或いは、曲線回帰でも良い。また、回帰分析の手法(言い換えると、回帰式/回帰係数の算定方法)も、特定の方法に限定されるものではなく、具体的には例えば最小二乗法が用いられ得る。
そして、回帰式算定部11dにより、算定された回帰式に関するパラメータがデータファイルに記録されて回帰式パラメータファイル18として記憶部12に保存される。
S6の処理において算定される回帰式は、すなわち、塩化物イオン濃度が未知の試料に対する発光スペクトルの計測によって得られる塩素の輝線の発光強度から塩化物イオン濃度を求めるための検量線として機能する。
次に、評価対象物の塩化物イオン濃度を定量するため、コンクリートサンプルのスペクトル強度の計測が行われる(S7)。
S7の処理では、例えば鉄筋の腐食状況の評価の対象とされている種々のコンクリート躯体などから採取されたコンクリートサンプル(「評価対象試料」と呼ぶ)が用いられる。
評価対象試料の形状や大きさは、特定の形状や寸法に限定されるものではなく、例えばコンクリート躯体表面から分析対象とされた深さに相当する深さ方向の寸法を有する形状や大きさ或いは評価対象のコンクリート躯体などから採取可能な形状や大きさなどが考慮されるなどした上で適宜調整され得る。
具体的には例えば、「日本工業規格 JIS A 1107:コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法」における供試体の寸法などの考え方に準拠して採取されたコアが、S7の処理における評価対象試料として用いられ得る。
ここで、評価対象試料が採取された評価対象のコンクリート躯体におけるコンクリート表面からの深さ方向を「試料軸心方向」と呼ぶ。
そして、評価対象試料のそれぞれについて、LIBSが用いられて波長毎のスペクトル強度が計測される。スペクトル強度の計測は、上述のS2の処理と同様に行われる。
スペクトル強度の計測は、本実施形態では、評価対象試料の表面に於けるスペクトル強度の、試料軸心方向における分布、言い換えると、コンクリート躯体表面からの深さの違いによるスペクトル強度の変化が取得されるようにするため、試料軸心方向に関して複数の位置(即ち、コンクリート躯体表面からの深さに関して複数の深さ)に於いて、且つ、試料軸心方向に関して位置が同じである複数の位置(即ち、コンクリート躯体表面からの深さが同じである複数の位置)に於いて行われる。ただし、試料軸心方向に関する位置に着目することなくレーザの照射及び発光スペクトルの計測が行われるようにしても良く、また、試料軸心方向の或る位置に於いてレーザの照射及び発光スペクトルの計測が一回のみ行われるようにしても良い。
この際、試料軸心方向と直交する方向における所定の幅の帯状の範囲に入っている複数の位置を、当該帯状の範囲の例えば中央位置(別言すると、深さ)における複数の位置として括るようにしても良い。
評価対象試料に関するスペクトル強度の計測は、評価対象試料を試料軸心方向に切断して当該切断面に対して行われるようにしても良く、或いは、評価対象試料の外周面に対して行われるようにしても良い。
LIBSが用いられての発光スペクトルの計測により、評価対象試料についての、レーザ照射毎の(言い換えると、レーザ照射回数分の)試料軸心方向における位置(即ち、コンクリート躯体表面からの深さ)と波長別のスペクトル強度との組み合わせデータが取得される。
本実施形態では、評価対象試料についての、試料軸心方向における位置と波長別スペクトル強度との組み合わせデータがレーザ照射毎のデータとして複数蓄積されて記録されたデータファイルが、位置強度組合せデータベース23としてデータサーバ20に格納(別言すると、保存)される。
次に、S7の処理によって取得された波長別のスペクトル強度に基づいて特定元素に係る発光強度に関する変動係数の算出が行われる(S8)。
評価対象試料に関するスペクトル強度のデータについても、これらスペクトル強度データを選別するため、LIBS用試料についての上述のS3の処理と同様に、レーザ照射毎に得られた波長別のスペクトル強度のそれぞれについて特定元素に係る発光強度に関する変動係数CVが数式1によって算出される。
評価対象試料に関する変動係数CVの計算に纏わる特定元素の輝線は上述のS3の処理に係る説明における「チタン着目輝線」や「鉄着目輝線」と同じである。また、評価対象試料に関する変動係数CVは、チタン着目輝線や鉄着目輝線のうちS3の処理において選択された輝線と同一の輝線(尚、一つ若しくは複数)について算出されることを基本とするものの、S3の処理において選択された輝線とは異なる輝線(尚、一つ若しくは複数)について算出されるようにしても良い。
本実施形態では、制御部11の第二の変動係数算出部11eにより、データサーバ20に格納されている位置強度組合せデータベース23に記録されている組み合わせデータの波長別スペクトル強度のデータが読み込まれ、組み合わせデータ毎に(別言すると、レーザ照射毎に)、数式1によって変動係数CVの値が算出される。
そして、第二の変動係数算出部11eにより、位置強度組合せデータベース23に記録されている組み合わせデータのそれぞれについて算出された変動係数CVの値が、前記組み合わせデータのそれぞれと対応づけられた上で、言い換えると前記組み合わせデータのそれぞれに追加された上で、メモリ15に記憶させられる。
S8の処理により、試料軸心方向における位置,波長別スペクトル強度,及び変動係数CVの値の組み合わせデータがメモリ15に記憶される。
次に、S8の処理によって算出された発光強度に関する変動係数に基づいて組み合わせデータの選別が行われる(S9)。
評価対象試料に関するスペクトル強度のデータについても、LIBS用試料についての上述のS4の処理と同様に、レーザ照射毎に得られた波長別のスペクトル強度のそれぞれについて特定元素に係る発光強度に関する変動係数CVの値に基づいて選別が行われる。
本実施形態では、制御部11の第二のデータ選別部11fにより、S8の処理において変動係数に関する情報が追加された上でメモリ15に記憶された組み合わせデータが読み込まれ、変動係数CVの値が確認される。
そして、第二のデータ選別部11fにより、変動係数CVの値が選別閾値以上である場合に、当該の組み合わせデータ(即ち、レーザ照射一回分のデータ)がデータファイルに記録され蓄積されて選別組合せデータ(の集合)としてメモリ15に記憶させられる。
すなわち、S7及びS8の処理によってメモリ15に記憶されている組み合わせデータのうち、変動係数CVの値が選別閾値以上である組み合わせデータは選別組合せデータ(の集合)としてメモリ15に記憶される一方で、変動係数CVの値が選別閾値よりも小さい組み合わせデータは選別組合せデータ(の集合)としてはメモリ15に記憶されない。
S9の処理において用いられる選別閾値の値の設定に関する考え方は上述のS4の処理に係る説明における選別閾値の値Tsの設定の考え方と同様である。また、選別閾値の値は、S4の処理において設定された値と同一の値が用いられることを基本とするものの、S4処理において設定された値とは異なる値が用いられるようにしても良い。
次に、S9の処理によって選別された組み合わせデータのそれぞれについてS7の処理によって取得されたスペクトル強度に基づいて塩素の発光強度の算定が行われる(S10)。
塩素の発光強度は、S5の処理と同様の仕法によって計算されて算定される。
本実施形態では、制御部11の第二の発光強度算定部11gにより、S9の処理においてメモリ15に記憶された選別組合せデータ(の集合)が読み込まれ、試料軸心方向における位置が同じである組み合わせデータの波長別スペクトル強度が波長毎に積算されて平均された上で塩素の発光強度が算定される。
そして、第二の発光強度算定部11gにより、試料軸心方向における位置と塩素の発光強度の値との組み合わせデータがメモリ15に記憶させられる。
次に、S6の処理によって算定された回帰式とS10の処理によって算定された塩素の発光強度とが用いられて塩化物イオン濃度の算出が行われる(S11)。
本実施形態では、制御部11の濃度算出部11hにより、S6の処理において記憶部12に保存された回帰式パラメータファイル18から回帰式に関するパラメータが読み込まれ、また、S10の処理においてメモリ15に記憶された組み合わせデータが読み込まれる。
続いて、濃度算出部11hにより、読み込まれた組み合わせデータ毎に、当該の組み合わせデータのうちの塩素の発光強度の値が回帰式に当てはめられて(別言すると、代入されて)塩化物イオン濃度が算出される。この計算により、試料軸心方向における位置と塩化物イオン濃度との組み合わせデータが得られる。
以上の処理により、コンクリート躯体表面からの深さ別の塩化物イオン濃度が定量的に得られる。
そして、制御部11は、上述の処理によって算出されたコンクリート躯体表面からの深さ別の塩化物イオン濃度を例えば表示部14に表示したりデータファイルとして記憶部12に保存したりした上で、ここまで取り扱ってきたコンクリートサンプル(即ち、評価対象試料)に関する位置強度組合せデータベース23に係る処理を終了する(END)。
以上のように構成されたコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置,コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラムによれば、チタンの輝線や鉄の輝線が強く観測されるデータが取り除かれることにより、発光スペクトルの観測に基づくコンクリートの塩化物イオン濃度の定量において、定量の阻害要因となる元素の影響を除去することができる。このため、塩化物イオン濃度の定量精度を向上させることが可能になり、延いては塩化物イオン濃度の定量手法としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では検量線の作成の処理において塩化ナトリウムが練り混ぜられたコンクリート試料が用いられるようにしているが、検量線の作成の処理において用いられ得る試料は上述の実施形態におけるものに限定されるものではなく、塩化ナトリウムを含有するコンクリート試料であればどのようなものであっても良い。具体的には例えば、塩化ナトリウム溶液が噴霧されたコンクリート試料が用いられるようにしても良い。塩化ナトリウム溶液が噴霧されたコンクリート試料は、例えば、打設・養生後のコンクリート供試体を塩水噴霧環境に暴露することによって作製され得る。具体的には例えば、雰囲気温度が40℃,相対湿度が90%に保持される試験槽内部に供試体を設置し、24時間に一度の頻度でNaCl3%水溶液を3分間で45リットル噴霧される環境に140~150日間程度暴露させることによって濃度が既知のコンクリート試料が作製され得る。検量線の作成の処理において用いられる試料として、あるいは、実際のコンクリート構造物から採取されたコンクリート試料が用いられるようにしても良い。
また、上述の実施形態では検量線の作成の処理において打設後に塩化ナトリウムの濃度勾配が発現される一体のコンクリート供試体からコンクリート試料(即ち、濃度計測用試料,LIBS用試料)が作成されるようにしているが、検量線の作成の処理において用いられ得る試料の作成方法は上述の実施形態におけるものに限定されるものではなく、塩化ナトリウムの濃度が異なるコンクリート試料が作成され得る方法であればどのようなものであっても良い。具体的には例えば、練り混ぜられる塩化ナトリウムの量が異なるように調整されたり、噴霧される塩化ナトリウム溶液の濃度が異なるように調整されたりするようにしても良い。
また、上述の実施形態では検量線の作成の処理において電位差滴定法によってコンクリート試料の塩化物イオン濃度の計測が行われるようにしているが、塩化物イオン濃度の計測手法は電位差滴定法に限定されるものではなく、コンクリート試料の塩化物イオン濃度が計測され得る手法であればどのようなものであっても良い。
また、上述の実施形態ではレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)によってコンクリート試料の発光スペクトルの計測が行われるようにしているが、発光スペクトルの計測手法はLIBSに限定されるものではなく、コンクリート試料の発光スペクトルが計測され得る手法であればどのようなものであっても良い。具体的には例えば、火花誘起ブレイクダウン分光法(「SIBS」(Spark-Induced Breakdown Spectroscopy の略)とも表記される)でも良い。
また、上述の実施形態ではS3及びS4の処理におけるデータの選別やS8及びS9の処理におけるデータの選別が発光強度に関する変動係数CVに基づいて行われるようにしているが、データを選別する際に用いられて利用・参照される指標は上述の実施形態における変動係数CVに限定されるものではなく、チタンの輝線や鉄の輝線が強く観測されるデータを選別することができる指標であればどのようなものであっても良い。具体的には例えば、チタンの発光強度や鉄の発光強度そのものが指標として用いられるようにしても良い。
また、上述の実施形態ではチタンの輝線と鉄の輝線との両方に着目するようにしているが、チタンの輝線と鉄の輝線との両方に着目することは本発明において必須の構成では無い。例えばコンクリートに含まれる骨材の特にチタンの量が多い場合などにはチタンの輝線のみに着目するようにしても良く、或いは、コンクリートに含まれる骨材の特に鉄の量が多い場合などには鉄の輝線のみに着目するようにしても良い。
また、上述の実施形態ではS1からS6までの処理によって検量線を作成するようにしているが、評価対象物のコンクリートサンプル/評価対象試料の塩化物イオン濃度を定量しようとするたびに検量線が作成されることは本発明において必須の構成では無く、既に作成されている検量線が用いられるようにしても良い。
本発明に係るコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法の妥当性を検証した実施例を図3及び図4を用いて説明する。
コンクリートサンプルを計測して取得される全てのスペクトルデータを積算し平均して得られたスペクトル強度とチタンの輝線(具体的には、841.236 nm)についての発光強度に関する変動係数CVの値を1としたときに抽出されたスペクトルデータのみを積算し平均して得られたスペクトル強度とを比較し、図3に示す結果が得られた。
図3に示す結果から、抽出されたデータを積算して平均したスペクトルではチタンの発光強度がほとんど零になっていることが確認され、すなわち、チタンの輝線が強く観測されるスペクトル強度のデータが適切に取り除かれていることが確認された。
なお、図3中の波長λ1とλ2とは、数式1における波長λ1とλ2とにそれぞれ相当するものであり、変動係数CVの算出に係るチタンの輝線(具体的には、841.236 nm)の両裾に該当する波長である。
また、図3中の波長λ3とλ4とは、数式1における波長λ3とλ4とにそれぞれ相当するものであり、特定元素としてのチタンの輝線に近い波長領域に於いて輝線が観測されない波長域の両端に該当する波長である。
コンクリートサンプルを計測して取得される全てのスペクトルデータを用いて算出した塩化物イオン濃度の値とチタンの輝線(具体的には、841.236 nm)についての発光強度に関する変動係数CVの値を1としたときに抽出されたスペクトルデータのみを用いて算出した塩化物イオン濃度の値とを比較し、図4に示す結果が得られた。
データを抽出すること無く全てのスペクトルデータを積算し平均して検量線法によって塩化物イオン濃度を求めると、別途実施した電位差滴定法(具体的には、日本工業規格 JIS A 1154 2011:硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法)による塩化物イオン濃度の計測結果よりも高くなることが確認され、すなわち、塩素の輝線と重畳する特定元素の輝線の影響によって塩素の発光強度が過大に算出されてしまうことが確認された。
これに対し、抽出されたデータのみを用いて塩化物イオン濃度を求めると、電位差滴定法で求めた結果と良好に一致するようになり、CV=1で概ね一致した。
以上のことから、本発明に係るコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法によれば、塩化物イオン濃度が適切に算出されることが確認された。
10 コンピュータ/コンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置
11 制御部
11a 第一の変動係数算出部
11b 第一のデータ選別部
11c 第一の発光強度算定部
11d 回帰式算定部
11e 第二の変動係数算出部
11f 第二のデータ選別部
11g 第二の発光強度算定部
11h 濃度算出部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 メモリ
17 コンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラム
18 回帰式パラメータファイル
20 データサーバ
21 濃度強度組合せデータベース
22 抽出組合せデータベース
23 位置強度組合せデータベース

Claims (9)

  1. コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に、評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみが用いられて算定される塩素の発光強度が当てはめられて前記評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度が算出されることを特徴とするコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法。
  2. コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に、評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみが用いられて算定される塩素の発光強度が当てはめられて前記評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度が算出されることを特徴とするコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法。
  3. 前記コンクリート試料についての前記組み合わせデータの選別及び前記評価対象のコンクリートサンプルについての前記波長別のスペクトル強度のデータの選別が発光強度に関する変動係数の値に基づいて行われることを特徴とする請求項1または2記載のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量方法。
  4. 評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータを塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別する手段と、選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する手段と、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に算定された前記塩素の発光強度を当てはめて前記評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する手段とを有することを特徴とするコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置。
  5. 評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した発光スペクトルの強度波長別のスペクトル強度のデータを塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別する手段と、選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する手段と、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に算定された前記塩素の発光強度を当てはめて前記評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する手段とを有することを特徴とするコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置。
  6. 前記コンクリート試料についての前記組み合わせデータの選別及び前記評価対象のコンクリートサンプルについての前記波長別のスペクトル強度のデータの選別を発光強度に関する変動係数の値に基づいて行うことを特徴とする請求項または記載のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量装置。
  7. 評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータを塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別する処理と、選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する処理と、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれるチタン以外の元素の輝線と重畳しないチタンの輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に算定された前記塩素の発光強度を当てはめて前記評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する処理とをコンピュータに行わせることを特徴とするコンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラム。
  8. 評価対象のコンクリートサンプルについてのレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータを塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別する処理と、選別されたレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度のデータのみを用いて塩素の発光強度を算定する処理と、コンクリート試料の塩化物イオン濃度とレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)又は火花誘起ブレイクダウン分光法(SIBS)で取得した波長別のスペクトル強度との組み合わせデータのうち塩素の輝線と重畳せず且つコンクリートに含まれる鉄以外の元素の輝線と重畳しない鉄の輝線に係る発光強度に基づいて選別された組み合わせデータのみが用いられて算定される塩化物イオン濃度と塩素の発光強度との間の関係を表す回帰式に算定された前記塩素の発光強度を当てはめて前記評価対象のコンクリートサンプルの塩化物イオン濃度を算出する処理とをコンピュータに行わせることを特徴とするコンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラム。
  9. 前記コンクリート試料についての前記組み合わせデータの選別及び前記評価対象のコンクリートサンプルについての前記波長別のスペクトル強度のデータの選別を発光強度に関する変動係数の値に基づいて行うことを特徴とする請求項または記載のコンクリートの塩化物イオン濃度の定量プログラム。
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