JP2013205289A - コンクリート定量分析方法およびシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】蛍光X線分析法を利用して、骨材を含むコンクリートのセメント部に含まれる微量元素の濃度を分析する。
【解決手段】個別重量分率計算部13が、蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)と、個別濃度gi,pi,qiとに基づいて、個別試料Siごとに、セメント部以外の個別重量分率xiを計算し、目的濃度計算部14が、個別濃度gi,pi,qiと個別重量分率xiとに基づいて、コンクリート試料Sのセメント部にのみ含まれる微量元素Gの濃度gを計算する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、定量分析技術に関し、特に蛍光X線分析法を利用して、骨材を含むコンクリートに含まれる微量元素の濃度を分析するコンクリート定量分析技術に関する。
コンクリートの多くは、鉄筋との複合材料である鉄筋コンクリートに用いられる。特に、コンクリートと鉄筋の熱膨張率がほぼ等しいこと、圧縮に耐えるコンクリートと引張に耐える鉄筋との組合せが力学特性上有利なこと、ともに原材料が廉価であることなどの理由から、鉄筋コンクリートは建設材料や土木材料として広く用いられてきた。また、コンクリートは、自然環境下では錆びやすい鉄筋を、アルカリ性のコンクリートが防護する役割もある。
しかしながら、鉄筋コンクリートも恒久的に機能を持続する材料ではなく、長年の間に二酸化炭素などの酸性ガスなどによってコンクリートの中性化が進むと、中の鉄筋は錆びる恐れがある。また、コンクリートにひびが入り、ひびを経由して内部に、酸性ガスのほか、塩分が入ると、鉄筋は更に錆びやすくなる。古くは海砂をコンクリートの原料に用いたことで鉄筋の錆を引き起こした事例もあったように、塩分は少量であっても鉄筋の腐食を加速する。
コンクリートの原料は、セメント、水、骨材である。骨材は更に砕石などの粗骨材と、砂などの細骨材に分類される。いずれの原料についても、塩分含有量を極めて低濃度に制限している。
現在、構造物として供されている鉄筋コンクリートは、長いもので建設から30年以上経過しており、その中に塩分が含まれる場合、この塩分は周囲の環境に由来するものである。すなわち、海から飛来する海塩粒子などに含まれる塩分が長い間にコンクリート中に侵入する。したがって、構造物に影響しない範囲で一部コンクリートを試料として採取したり、構造物と同じ条件で曝露したコンクリートを試料としたりして、これらコンクリート試料中の塩分を測定することは構造物の維持管理にとって重要である。
従来、コンクリート中の微量の塩分を測定する方法としては、主に化学分析による方法と蛍光X線分析による方法がある(例えば、非特許文献1など参照)。このうち、化学分析による塩分測定方法は、コンクリート試料を十分に溶解し、得られた溶液中の塩化物イオン量をイオンクロマトグラフィなどで測定し、もとのコンクリート試料の採取重量や溶媒である水の量などから、もとの塩分濃度を算出するものである。また、蛍光X線分析による塩分測定方法は、採取したコンクリート試料を粉末にしてX線を照射し、例えば、塩素の蛍光X線強度を得て、蛍光X線強度に比例する塩分濃度を算出するものである。
JIS規格R5204、「セメントの蛍光X線分析方法」、2002/07/20制定
コンクリートは、セメント部と、セメント部以外の粗骨材および細骨材との混合物である。これらを分離することなく、そのまま分析した場合、得られる塩素の濃度は、これら混合物中の重量分率となる。環境中から空気または水分を介してコンクリートへ侵入した塩分は、粗骨材および細骨材には浸透しないから、セメント部に蓄積される。よって、真に知りたい塩素の濃度は、コンクリート試料のうちのセメント部に含まれる塩素の濃度である。
コンクリート中の粗骨材および細骨材の重量分率が何らかの方法で与えられる場合であっても、コンクリート内部の粗骨材および細骨材の分布は打設や締め固めの条件によってむらがある。このため、コンクリート試料としてコンクリートの一部を対象とする場合、平均値としての粗骨材および細骨材の重量分率によって、混合物中の塩素の濃度を補正して、セメント部に含まれる塩素の濃度を得ることはできない。
従来の化学分析による塩分測定方法では、コンクリート試料から粗骨材および細骨材を分離して、塩分の分析を行うことが可能である。但し、塩分をほとんど含まない蒸留水などの清浄な水が必要であり、溶解などの手間もかかる。よって、多くの試料を扱う場合の分析には不向きである。
また、従来の蛍光X線分析による塩分測定方法は、化学分析に比して、手間なく、数秒から数十秒で結果を得ることができるが、試料作製段階において、粒径の大きい粗骨材は分別できても、細骨材すなわち砂は分別できない。このため、蛍光X線法で得られるのは、セメント部と細骨材の混合物中の塩素の濃度(重量分率)である。
蛍光X線分析における定量分析の1つとして、濃度が規定の一連の標準試料を用いる検量線法がある。また、一次X線の吸収、蛍光X線の発生、共存元素による目的元素の蛍光X線の吸収、共存元素の蛍光X線による目的元素の電子励起と蛍光X線の発生は決まった効率で生じる物理的現象であることを利用して、標準試料がなくても目的元素の濃度を得る方法もある。ファンダメンタルパラメータ法などが後者の例である。いずれも、蛍光X線分析でコンクリート試料を精度よく測定するための前処理として、コンクリート試料を、ある一定以下の粒度の粉体としてプレス成形するか、溶融してビードを作製するか、のいずれかが必要である。
このように、検量線法とファンダメンタルパラメータ法のいずれを用いた場合でも、従来の蛍光X線分析による塩分測定方法で得られるのは、セメント部と細骨材の混合物中の塩素の濃度の分析値である。塩素の蛍光X線の強度は、一次X線の吸収、蛍光X線の発生、共存元素による目的元素の蛍光X線の吸収、共存元素の蛍光X線による目的元素の電子励起と蛍光X線の発生の効率による。このため、塩素の蛍光X線の強度は、共存元素により変化する。したがって、この変化は、セメント部と細骨材の重量分率の重み付けをほどこしたセメント部と細骨材それぞれからの蛍光X線強度の線形合成で、説明することができない。
すなわち、従来の蛍光X線分析による塩分測定方法による、蛍光X線分析でコンクリート試料中の塩素の濃度の分析値を得ることは可能であるものの、直ちに、セメント部に含まれる塩素の濃度の分析値を得ることはできない。
また、以上では、微量成分として塩分、微量元素として塩分中の塩素について記述したが、塩素以外の微量元素の分析でも同様の課題が生じえることは明白である。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、蛍光X線分析法を利用して、骨材を含むコンクリートのセメント部に含まれる微量元素の濃度を分析するコンクリート定量分析技術を提供することを目的としている。
このような目的を達成するために、本発明にかかるコンクリート定量分析方法は、蛍光X線分析装置が、1つのコンクリート試料からそれぞれサンプリングした、セメント部とセメント部以外との重量分率が異なる少なくとも3つの個別試料ごとに、これら個別試料のセメント部にのみ含まれる微量元素と、これら個別試料のセメント部またはセメント部以外のいずれか一方にのみ含まれる、当該微量元素以外の少なくとも1つの成分元素とについて、蛍光X線強度をそれぞれ測定する蛍光X線分析ステップと、個別濃度計算部が、前記蛍光X線分析ステップで測定された前記微量元素および前記成分元素に関する前記蛍光X線強度に基づいて、前記個別試料ごとに、前記微量元素および前記成分元素に関する個別濃度を計算する個別濃度計算ステップと、個別重量分率計算部が、前記蛍光X線分析ステップで測定された前記蛍光X線強度と、前記個別濃度計算ステップで計算された前記個別濃度とに基づいて、前記個別試料ごとに、当該個別試料に関するセメント部とセメント部以外との重量分率を示す個別重量分率を計算する個別重量分率計算ステップと、目的濃度計算部が、前記個別濃度計算ステップで計算した前記微量元素に関する前記個別濃度と、前記個別重量分率計算ステップで計算した前記個別重量分率とに基づいて、前記微量元素の濃度を計算する目的濃度計算ステップとを備えている。
また、上記コンクリート定量分析方法の一構成例は、前記個別重量分率計算ステップが、前記個別試料ごとに前記個別重量分率を計算する際、当該個別試料Siに関する、前記蛍光X線分析ステップで測定された前記蛍光X線強度I(xi)と前記個別重量分率xiとの関係を示す次の近似式
I(xi)=D・gi(1+E・xi
但し、giは当該個別試料Siに関する当該元素の個別濃度;
D,Eは当該一連の試料における当該元素に固有の定数;
を、前記各個別試料と前記微量元素および前記成分元素との組合せごとに生成し、これら近似式を連立方程式として解くことにより、前記個別試料に関する前記個別重量分率を計算するようにしたものである。
また、上記コンクリート定量分析方法の一構成例は、前記個別試料が、前記コンクリート試料を粉砕して得られた、細骨材を含む粉砕粒子を、目開きの異なる複数の篩を用いて粒径ごとに篩い分けし、得られた粒径の異なる粉砕粒子からなるものである。
また、本発明にかかるコンクリート定量分析システムは、1つのコンクリート試料からそれぞれサンプリングした、セメント部とセメント部以外との重量分率が異なる少なくとも3つの個別試料ごとに、これら個別試料のセメント部にのみ含まれる微量元素と、これら個別試料のセメント部またはセメント部以外のいずれか一方にのみ含まれる、当該微量元素以外の少なくとも1つの成分元素とについて、蛍光X線強度をそれぞれ測定する蛍光X線分析装置と、前記蛍光X線分析装置で測定された前記微量元素および前記成分元素に関する前記蛍光X線強度に基づいて、前記個別試料ごとに、前記微量元素および前記成分元素に関する個別濃度を計算する個別濃度計算部と、前記蛍光X線分析部で測定された前記蛍光X線強度と、前記個別濃度計算部で計算された前記個別濃度とに基づいて、前記個別試料ごとに、当該個別試料に関するセメント部とセメント部以外との重量分率を示す個別重量分率を計算する個別重量分率計算部と、前記個別濃度計算部で計算した前記微量元素に関する前記個別濃度と、前記個別重量分率計算部で計算した前記個別重量分率とに基づいて、前記微量元素の濃度を計算する目的濃度計算部とを備えている。
また、上記コンクリート定量分析システムの一構成例は、前記個別濃度計算部が、前記個別試料ごとに前記個別重量分率を計算する際、当該個別試料Siに関する、前記蛍光X線分析部で測定された前記蛍光X線強度I(xi)と前記個別重量分率xiとの関係を示す次の近似式
I(xi)=D・gi(1+E・xi
但し、giは当該個別試料Siに関する当該元素の個別濃度;
D,Eは当該一連の試料における当該元素に固有の定数;
を、前記各個別試料と前記微量元素および前記成分元素との組合せごとに生成し、これら近似式を連立方程式として解くことにより、前記個別試料に関する前記個別重量分率を計算するようにしたものである。
また、上記コンクリート定量分析システムの一構成例は、前記個別試料が、前記コンクリート試料を粉砕して得られた、細骨材を含む粉砕粒子を、目開きの異なる複数の篩を用いて粒径ごとに篩い分けし、得られた粒径の異なる粉砕粒子からなるものである。
本発明によれば、セメント部と骨材などのセメント部以外との重量分率が不明なコンクリート試料であっても、蛍光X線分析法を利用して、セメント部に含まれる塩素などの微量元素の濃度を得ることができる。したがって、セメント部に含まれる塩素などの微量元素の濃度を正確に得ることができ、一般的な腐食予測技術などを利用して、コンクリート構造物の適切な維持管理を行うことが可能となる。
本実施の形態にかかるコンクリート定量分析システムの構成を示すブロック図である。 コンクリート試料に含まれる内容物の粒径分布例を示す説明図である。 粒径分布に基づく個別試料の分離方法を示す説明図である。 重量分率と蛍光X線強度との関係を示す説明図である。 本実施の形態にかかるコンクリート定量分析方法を示すフローチャートである。 重量分率と蛍光X線強度との関係(特定後)を示す説明図である。 重量分率と微量元素濃度との関係を示す説明図である。
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[コンクリート定量分析システムの構成]
まず、図1を参照して、本実施の形態にかかるコンクリート定量分析システム10の構成について説明する。図1は、本実施の形態にかかるコンクリート定量分析システムの構成を示すブロック図である。
このコンクリート定量分析システム10は、セメント部と骨材からなるセメント部以外とを含むコンクリート試料について、蛍光X線分析法を利用して、セメント部に含まれる微量元素の濃度を分析する機能を有している。
コンクリート定量分析システム10には、主な機能部として、蛍光X線分析装置11、個別濃度計算部12、個別重量分率計算部13、および目的濃度計算部14が設けられている。
通常、コンクリート試料は、セメント部と骨材からなるセメント部以外から構成されている。本実施の形態においては、セメント部以外の平均組成が分析の都度変化することを避けるため、予め分析すべきコンクリート試料から粗骨材を分離しておく。この粗骨材は自然石や砕石であって、通常は代表的な大きさは数10mmであるので、この分離操作は数mm程度の目開きの篩を用いて行うことができる。このようにして粗骨材が分離されたコンクリート試料がコンクリート試料Sである。
図1に示すように、コンクリート試料Sも、セメント部とセメント部以外からなり、このうちセメント部以外は主に細骨材、すなわち砂よりなる。砂の粒子数は多いので、Sからその一部を3つサンプリングする。サンプリングにより得られた一部が、個別試料S1,S2,S3である。これにより、個別試料のセメント部以外の組成は、Sにおけるセメント部以外の組成を代表するものと見なせる。
このように、本実施の形態では、分析対象となる1つのコンクリート試料S1から、セメント部以外の重量分率が異なる、少なくとも3つの個別試料S1,S2,S3を、予めサンプリングしておく。
図2は、コンクリート試料に含まれる内容物の粒径分布例を示す説明図である。図3は、粒径分布に基づく個別試料の分離方法を示す説明図である。
セメント部の分布21は、コンクリート試料Sを、骨材よりも軟らかいハンマーなどで継続して砕くことによって、面積を変えることなく、小さい粒径側に移動させることができる。このとき、粗骨材の分布22や細骨材の分布23は変化しない。
粗骨材は、自然石や砕石であって、通常は代表的な大きさは数十mmであるので、手作業で分離することができるが、数mm程度の目開きの篩を用いて分離してもよい。
このようにして、コンクリート試料Sを粉砕して粗骨材を予め分離すれば、図3に示すような、セメント部の分布21と細骨材の分布23を持つことになる。したがって、粒径φ1,φ2,φ3を境にして、それより小さい粒径の粉砕試料を得れば、セメント部とセメント部以外の重量分率が異なる個別試料S1,S2,S3を得ることができる。
この際、粒径φ1を境にそれより小さい粒径の粉砕試料を得るには、粒径φ1に相当する目開きの篩を用いて篩い分けすればよい。また、粒径φ2,φ3についても同様の操作が可能である。実際には、任意の粒径φに相当する篩を準備するのは容易ではないので、適当な大きさの目開きの篩を選択して、粒径φ1,φ2,φ3を決めればよい。この場合、篩は精密なものがよい。例えば、JIS規格Z8801に準拠した試験用の篩を用いる。
この図3において、ある粒径φを境にそれより小さい粒径の個別試料を得た場合、セメント部の分布の面積とセメント部以外の分布の面積の比を1−x:xとすることで、セメント部以外の重量分率xを決めることができる。このようにして、境界線を与える粒径に相当する目開きの篩を用いて篩い分けすることで、セメント部以外の重量分率xの異なるコンクリート試料を用意することができる。
個別試料S1,S2,S3のうち、コンクリート試料Sに含まれるセメント部以外の重量分率をxとし、Sに含まれるセメント部の重量分率を1−xとする。また、S1に含まれるセメント部以外の重量分率をx1とし、S1に含まれるセメント部の重量分率を1−x1とする。同じく、S2に含まれるセメント部以外の重量分率をx2とし、S2に含まれるセメント部の重量分率を1−x2とする。同じく、S3に含まれるセメント部以外の重量分率をx3とし、S3に含まれるセメント部の重量分率を1−x3とする。
また、定量分析の対象となる微量元素Gは、S,S1,S2,S3のセメント部にのみ含まれており、S,S1,S2,S3に関する微量元素Gの濃度は、g,g1,g2,g3とする。これら濃度g,g1,g2,g3は重量濃度である。
本実施の形態では、目的とする微量元素Gが、セメント部以外には含まれない場合を扱う。濃度g,g1,g2,g3は不明であるが、他の成分元素の濃度に影響を与えるほどの濃度ではないものとする。目的とする微量元素Gは、例えば塩素である。また、濃度gは例えば数100ppmである。
本実施の形態では、微量元素Gのほかに、少なくとも1つの成分元素が必要となる。この成分元素は、S,S1,S2,S3のうち、セメント部またはセメント部以外のいずれか一方にのみ含まれているものとする。成分元素の例として、S,S1,S2,S3のセメント部にのみ含まれている成分元素をPとし、S,S1,S2,S3のセメント部以外にのみ含まれている成分元素をQとする。以下では、微量元素Gの濃度gを分析する際、成分元素P,Qの両方を用いる場合を例として説明する。
S,S1,S2,S3に関する成分元素Pの濃度は、p,p1,p2,p3とし、S,S1,S2,S3に関する成分元素Qの濃度は、q,q1,q2,q3とする。これら濃度p,p1,p2,p3,q,q1,q2,q3は重量濃度である。これら濃度p,p1,p2,p3,q,q1,q2,q3は不明であるが、他の成分元素の濃度に影響を与えるほどの濃度ではないものとする。
次に、図1に示したコンクリート定量分析システム10にかかる各機能部について説明する。
蛍光X線分析装置11は、一般的な蛍光X線分析装置からなり、セメント部以外の重量分率がxi(但し、i=1〜3)である個別試料Siごとに、微量元素Gおよび成分元素P,Qに関する蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)をそれぞれ測定する機能を有している。
個別濃度計算部12は、蛍光X線分析装置11で測定された蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)に基づいて、個別試料Siごとに、微量元素Gおよび成分元素P,Qに関する個別濃度gi,pi,qiを計算する機能を有している。
個別重量分率計算部13は、蛍光X線分析装置11で測定された蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)と、個別濃度計算部12で計算された個別濃度gi,pi,qiとに基づいて、個別試料Siごとに、当該個別試料Siに関するセメント部以外の個別重量分率xiを計算する機能を有している。
目的濃度計算部14は、個別濃度計算部12で計算した個別濃度giと、個別重量分率計算部13で計算した個別重量分率xiとに基づいて、目的とするコンクリート試料Sのセメント部にのみ含まれる当該微量元素Gの濃度gを計算する機能と、得られた濃度gを、画面表示装置や外部装置(ともに図示せず)へ出力し、あるいは記憶装置(図示せず)へ保存する機能を有している。
これら機能部のうち、個別濃度計算部12、個別重量分率計算部13、および目的濃度計算部14は、全体としてサーバ装置やPCなどの情報処理装置からなり、記憶部から読み込んだプログラムをCPUで実行することにより、各種処理部を実現する演算処理部から実現されている。また、コンクリート定量分析システムには、一般的な情報処理装置が有する、画面表示装置、操作入力装置、記憶装置などの各種装置が設けられているものとする。
[コンクリート定量分析方法の原理]
次に、本発明にかかるコンクリート定量分析方法の原理について説明する。
図4は、重量分率と蛍光X線強度との関係を示す説明図である。分析対象となるコンクリート試料Sにおいて、セメント部以外の重量分率xと微量元素Gおよび成分元素P,Qの蛍光X線強度IG(x),IP(x),IQ(x)との関係は、図4に表すことができる。
微量元素Gおよび成分元素P,Qから蛍光X線強度IG(x),IP(x),IQ(x)を測定して、ファンダメンタルパラメータ法を用いれば、それぞれの元素の濃度は算出できる。
しかしながら、この時点では、重量分率xの値は不明であるから、各測定点の横軸座標位置は不明である。よって、蛍光X線強度IG(x),IP(x),IQ(x)とセメント部以外の重量分率xとの関係を示す関数31,32,33を特定することができない。
本発明は、同一のコンクリート試料Sから、セメント部以外の個別重量分率xiが異なる3つ以上の個別試料Siをサンプリングし、これら個別試料Siから微量元素Gおよび成分元素P,Qに関する蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)を測定し、これら蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)と個別重量分率xiとが持つ関係から、目的とする微量元素Gの濃度gを計算するようにしたものである。以下、具体的に説明する。
コンクリート試料Sに含まれる微量元素G以外の元素をW1,W2,W3,…,Wnとする。これら元素は主要成分を通常構成する成分元素としてもよい。具体的な元素はカルシウム、ケイ素などである。
ここで、コンクリート試料Sのセメント部中の元素W1,W2,W3,…,Wnの濃度を、順にa1,a2,a3,…,anとする。含まれない場合の値は0をとる。濃度は重量濃度である。また、コンクリート試料Sのセメント部以外の中の元素W1,W2,W3,…,Wnの濃度を、順にb1,b2,b3,…,bnとする。含まれない場合の値は0をとる。濃度は重量濃度である。
コンクリート試料Sからその一部をサンプリングして得た個別試料Siのセメント部の重量分率が1−xで、セメント部以外の重量分率がxであったものとする。サンプリング方法によって、xは1より十分小さい値とすることができるが、0ではなく、かつ未知であるものとする。
コンクリート試料Sの全体に対して、微量元素Gの濃度gを無視すれば、次の式(1)が成立する。
Figure 2013205289
個別試料Siを、粉砕・圧縮成形あるいはビード化により、入射X線ビームの大きさに対し十分大きい面積と厚みdとを有する分析用試料に加工したとき、個別試料Siのうち、微量元素Gからの蛍光X線強度IG(x)は、入射X線が単色とみなせる場合、次の式(2)で表される。
Figure 2013205289
式(2)において、A、B、Cは定数である。
この式(2)の第1項は、入射X線により微量元素Gの原子の電子が励起された結果、発生した微量元素Gの特定の蛍光X線の強度を表す。また、第2項は、第1項と同じ微量元素Gの特定の蛍光X線であるが、セメント部の他の成分からの蛍光X線による二次励起で生じた蛍光X線の強度であり、セメント部の他の成分の重量分率1−xに比例する。さらに、第3項は、第1項と同じ微量元素Gの特定の蛍光X線であるが、セメント部以外の成分からの蛍光X線による二次励起で生じた蛍光X線の強度であり、セメント部以外の成分の重量分率xに比例する。
また、個別試料Siに関する線吸収係数μ(x)は、次の式(3)で表される。
Figure 2013205289
ここで、μ0,aは入射X線波長におけるセメント部の線吸収係数、μ0,bは入射X線波長におけるセメント部以外の線吸収係数、θは試料面から測った入射X線の入射角度、μaは微量元素Gの特定の蛍光X線の波長におけるセメント部の線吸収係数、μbは微量元素Gの特定の蛍光X線の波長におけるセメント部以外の線吸収係数、φは試料面から測った入射X線の入射角度である。
式(3)は、次の式(4),式(5),式(6)のように書き換えできる。
Figure 2013205289
Figure 2013205289
Figure 2013205289
一方、式(2)において、個別試料Siの厚みdが入射X線の侵入深さよりも十分厚ければ、式(2)は、次の式(7)で表される。
Figure 2013205289
式(7)のうち、第1項の分数式は、次の式(8)のように変形できる。
Figure 2013205289
ここで、セメント部も、セメント部以外を構成する細骨材も同じ造岩鉱物であることから、μ0,aとμ0,b、μaとμbは、それぞれ等しくはないものの近い値であるので、式(4)と式(5)からαとβも近い値となる。また、xも1より十分小さいので、式(9)が成立する。
Figure 2013205289
よって、式(8)は、よい近似で、次の式(10)に近似される。
Figure 2013205289
同じく、式(7)は、よい近似で、次の式(11)に近似される。
Figure 2013205289
式(11)において、D,Eは定数である。
次に、微量元素G以外の他の元素として、セメント部のみに含まれるある元素Pを例にとる。元素Pについての蛍光X線強度IP(x)も、前述した微量元素Gの場合と同様に、よい近似で、次の式(12)に近似される。
Figure 2013205289
式(12)において、DP、EPは定数である。
また、セメント部以外にのみ含まれるある元素Qを例にとる。元素Qについての蛍光X線強度IQ(x)も、前述した微量元素Gの場合と同様に、よい近似で、次の式(13)に近似される。
Figure 2013205289
式(13)において、DQ、EQは定数である。
次に、コンクリート試料Sからその一部をサンプリングして、個別試料Siを得る操作を少なくとも3回行うことで、異なる重量分率を有する個別試料S1,S2,S3を少なくとも3種類用意した場合を想定する。これら個別試料S1,S2,S3に関する、セメント部以外の重量分率は、x1,x2,x3であるものとする。
この際、コンクリート試料Sから異なる重量分率を有する個別試料Siを得る操作は、例えば、目開きの異なる複数の篩を用いた篩い分けによって行える。目開きの異なる複数の篩を用いた篩い分けによって、xを変化させることは、共存する他の元素の濃度を変化させることに相当する。
これら個別試料S1,S2,S3から測定される、微量元素Gおよび成分元素P,Qに関する蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)は、前述した式(11),式(12),式(13)より、次の式(14),式(15),式(16)で表される。
Figure 2013205289
Figure 2013205289
Figure 2013205289
ここで、式(14),式(15),式(16)の一部を、次の式(17),式(18),式(19)と定義する。
Figure 2013205289
Figure 2013205289
Figure 2013205289
これにより、式(14),式(15),式(16)は、式(20),式(21),式(22)と表される。
Figure 2013205289
Figure 2013205289
Figure 2013205289
ここで、式(20),式(21),式(22)のうち、それぞれの蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)については、蛍光X線分析装置11での測定によって得られる。このため、ファンダメンタルパラメータ法などの公知の算出手法を用いることによって、個別試料Siごとに、蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)から、微量元素Gおよび成分元素P,Qに関する個別濃度gi,pi,qiの値を計算することができる。
この後、式(20),式(21),式(22)に、蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)の値と、個別濃度gi,pi,qiの値とを当てはめた近似式を、3つの個別試料Siと微量元素Gおよび成分元素P,Qとの組合せごとに生成する。そして、これら9つの近似式について、x1,x2,x3,D,E,DP,EP,DQ,EQの9個を未知数とする9つの連立方程式として解くことによって、これら個別重量分率x1,x2,x3の値と定数D,E,DP,EP,DQ,EQの値とを得ることができる。連立方程式を解く具体的な方法は、解析的に解く方法、数値的に解く方法など、公知の解法を用いればよい。
したがって、個別重量分率x1,x2,あるいはx3を用いて、コンクリート試料Sのうちのセメント部に含まれる微量元素Gの濃度gは、式(17)を元にした次の式(23)で計算することができる。
Figure 2013205289
[コンクリート定量分析システムの動作]
次に、図5を参照して、本実施の形態にかかるコンクリート定量分析システム10の動作について説明する。図5は、本実施の形態にかかるコンクリート定量分析方法を示すフローチャートである。ここでは、微量元素Gの濃度gを分析する際、成分元素P,Qの両方を用いる場合を例として説明する。なお、図5の定量分析処理を実行する前に、コンクリート試料Sから前述した3つの個別試料Si(i=1〜3)が、すでにサンプリングされているものとする。
まず、蛍光X線分析装置11は、個別試料Siのそれぞれから、元素G,P,Qに関する蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)をそれぞれ測定する(ステップ100)。
次に、個別濃度計算部12は、蛍光X線分析装置11で測定された蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)に基づいて、個別試料Siごとに、元素G,P,Qに関する個別濃度gi,pi,qiを計算する(ステップ101)。
続いて、個別重量分率計算部13は、前述した式(20),式(21),式(22)に対して、蛍光X線分析装置11で測定された蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)と、個別濃度計算部12で計算された個別濃度gi,pi,qiとを代入して、個別試料Siと元素G,P,Qとの組合せごとに近似式を生成し、得られた9個の近似式を連立方程式として解くことにより、個別試料Siごとに、セメント部以外の個別重量分率xiを計算する(ステップ102)。
図6は、重量分率と蛍光X線強度との関係(特定後)を示す説明図である。個別重量分率計算部13での計算の結果、式(20),式(21),式(22)のx1,x2,x3,D,E,DP,EP,DQ,EQの値が得られる。このため、個別試料Siから測定した蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)をグラフ上にプロットすることができ、結果として、蛍光X線強度IG(x),IP(x),IQ(x)とセメント部以外の重量分率xとの関係を示す関数31,32,33を特定することができる。
この後、目的濃度計算部14は、前述した式(23)から、個別濃度計算部12で計算した個別濃度giと、個別重量分率計算部13で計算した個別重量分率xiとに基づいて、コンクリート試料Sのセメント部にのみ含まれる当該微量元素Gの濃度gを計算し(ステップ103)、一連の定量分析処理を終了する。
図7は、重量分率と微量元素濃度との関係を示す説明図である。微量元素Gの濃度g(x)は、コンクリート試料S中のセメント部の重量分率1−xに比例して増加する。このため、微量元素Gの濃度g(x)と、セメント部以外の重量分率xとの関係は、逆比例の関係となり、傾きが負の1次関数40(直線)で表される。この際、1次関数40は、個別重量分率計算部13で計算した個別重量分率xiと、個別重量分率計算部13で計算した濃度giとの交点からなる測定点を通過する。また、重量分率x=1の場合、コンクリート試料Sのうちセメント部がゼロであることを示しており、微量元素Gの濃度g(x)もゼロとなる。
一方、1次関数40は、重量分率x=0の場合、コンクリート試料Sのうちセメント部以外がゼロであることを示しており、このとき、微量元素Gの濃度g(x)が目的の濃度gを表すことになる。すなわち、1次関数40の切片が濃度gの値となる。
したがって、濃度gは、前述した式(23)から求めてもよく、1次関数40の通過点から1次関数40を特定し、その切片から濃度gを求めるようにしてもよい。
また、濃度gは、前述した式(23)から個別試料Siごとに計算できるため、これら濃度gのいずれか1つの値ではなく、これら濃度gの平均値などの統計値を計算し、目的の微量元素Gの濃度gとしてもよい。これにより、蛍光X線強度の測定などに起因する誤差の少ない濃度gを得ることができる。
また、個別濃度計算部12で計算した個別試料Siごとの個別濃度giと、個別重量分率計算部13で計算した個別試料Siごとの個別重量分率xiとから、個別試料Siごとに1次関数40が通過する測定点を計算できる。このため、これら通過点を最小誤差で近似した1次関数40を特定し、その切片から濃度gを求めるようにしてもよい。これにより、蛍光X線強度の測定などに起因する誤差の少ない濃度gを得ることができる。
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、蛍光X線分析装置11が、1つのコンクリート試料Sからそれぞれサンプリングした、セメント部以外の重量分率xi(i=1〜3)が異なる少なくとも3つの個別試料Siごとに、これら個別試料Siのセメント部にのみ含まれる微量元素Gと、これら個別試料Siのセメント部またはセメント部以外のいずれか一方にのみ含まれる、当該微量元素G以外の少なくとも1つの成分元素Pとについて、蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)をそれぞれ測定し、個別濃度計算部12が、これら蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)に基づいて、これら元素G,P,Qについて、各個別試料Siでの個別濃度gi,pi,qiを計算するようにしたものである。
そして、個別重量分率計算部13が、蛍光X線強度IG(xi),IP(xi),IQ(xi)と、個別濃度gi,pi,qiとに基づいて、個別試料Siごとに、セメント部以外の個別重量分率xiを計算し、目的濃度計算部14が、個別濃度gi,pi,qiと個別重量分率xiとに基づいて、コンクリート試料Sのセメント部にのみ含まれる微量元素Gの濃度gを計算するようにしたものである。
より具体的には、個別重量分率計算部13が、個別試料Siごとに重量分率xiを計算する際、当該個別試料Siに関する、蛍光X線分析ステップで測定された蛍光X線強度I(xi)と個別重量分率xiとの関係を示す次の近似式
I(xi)=D・gi(1+E・xi
但し、giは当該個別試料Siに関する当該元素の個別濃度;
D,Eは当該一連の試料における当該元素に固有の定数;
を、各個別試料Siと微量元素Gおよび成分元素Pとの組合せごとに生成し、これら近似式を連立方程式として解くことにより、個別試料Siに関する個別重量分率xiを計算するようにしたものである。
これにより、セメント部と骨材などのセメント部以外との重量分率が不明なコンクリート試料であっても、蛍光X線分析法を利用して、セメント部に含まれる塩素などの微量元素の濃度を得ることができる。
したがって、セメント部に含まれる塩素などの微量元素の濃度を正確に得ることができ、一般的な腐食予測技術などを利用して、コンクリート構造物の適切な維持管理を行うことが可能となる。
また、本実施の形態において、前処理として必要なのは、コンクリート試料から重量分率の異なる少なくとも3つの個別試料をサンプリングするという操作だけである。
これに対して、本実施の形態では、個別試料として、コンクリート試料を粉砕して得られた、細骨材を含む粉砕試料を、目開きの異なる複数の篩を用いて粒径ごとに篩い分けし、得られた粉砕試料のうち粒径の異なる粉砕試料を用いるようにしたので、特別な分離技術や加工装置を必要とすることなく、極めて容易に個別試料をサンプリングすることができる。
したがって、セメント部にのみ含まれている微量元素の濃度を測定するために、その前処理として、コンクリート試料について、実際には難しいとされている、セメント部とそれ以外との分離操作を行う必要がない。また、検量線法やファンダメンタルパラメータ法など、蛍光X線分析法を用いた従来の定量分析のように、コンクリート試料を、ある一定以下の粒度の粉体としてプレス成形したり、あるいは溶融してビードを作製したりする必要もない。
なお、本実施の形態では、微量元素Gと、セメント部のみに含まれる成分元素Pと、セメント部以外のみに含まれる成分元素Qとを用いて、コンクリート試料Sの定量分析を行う場合を例として説明したが、成分元素については、これに限定されるものではない。例えば、微量元素Gと成分元素Pの組合せでもよく、微量元素Gと成分元素Qの組合せでもよく、セメント部またはセメント部以外のいずれか一方にのみ含まれる他の成分元素を追加してもよい。
また、本実施の形態では、3つの個別試料S1,S2,S3を用いる場合を例として説明したが、個別試料Siの個数は3つに限定されるものではなく、4つ以上の個別試料Siを用いてもよい。
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
10…コンクリート定量分析システム、11…蛍光X線分析装置、12…個別濃度計算部、13…個別重量分率計算部、14…目的濃度計算部、S…コンクリート試料、S1,S2,S3,Si…個別試料、G…微量元素、P,Q…成分元素、x1,x2,x3,xi…個別重量分率(セメント部以外)、x…重量分率(セメント部以外)、g1,g2,g3,gi,p1,p2,p3,pi,q1,q2,q3,qi…個別濃度、g,p,q…濃度、IG(xi),IP(xi),IQ(xi)…蛍光X線強度。

Claims (6)

  1. 蛍光X線分析装置が、1つのコンクリート試料からそれぞれサンプリングした、セメント部とセメント部以外との重量分率が異なる少なくとも3つの個別試料ごとに、これら個別試料のセメント部にのみ含まれる微量元素と、これら個別試料のセメント部またはセメント部以外のいずれか一方にのみ含まれる、当該微量元素以外の少なくとも1つの成分元素とについて、蛍光X線強度をそれぞれ測定する蛍光X線分析ステップと、
    個別濃度計算部が、前記蛍光X線分析ステップで測定された前記微量元素および前記成分元素に関する前記蛍光X線強度に基づいて、前記個別試料ごとに、前記微量元素および前記成分元素に関する個別濃度を計算する個別濃度計算ステップと、
    個別重量分率計算部が、前記蛍光X線分析ステップで測定された前記蛍光X線強度と、前記個別濃度計算ステップで計算された前記個別濃度とに基づいて、前記個別試料ごとに、当該個別試料に関するセメント部とセメント部以外との重量分率を示す個別重量分率を計算する個別重量分率計算ステップと、
    目的濃度計算部が、前記個別濃度計算ステップで計算した前記微量元素に関する前記個別濃度と、前記個別重量分率計算ステップで計算した前記個別重量分率とに基づいて、前記微量元素の濃度を計算する目的濃度計算ステップと
    を備えることを特徴とするコンクリート定量分析方法。
  2. 請求項1に記載のコンクリート定量分析方法において、
    前記個別重量分率計算ステップは、前記個別試料ごとに前記個別重量分率を計算する際、当該個別試料Siに関する、前記蛍光X線分析ステップで測定された前記蛍光X線強度I(xi)と前記個別重量分率xiとの関係を示す次の近似式
    I(xi)=D・gi(1+E・xi
    但し、giは当該個別試料Siに関する当該元素の個別濃度;
    D,Eは当該元素に固有の定数;
    を、前記各個別試料と前記微量元素および前記成分元素との組合せごとに生成し、これら近似式を連立方程式として解くことにより、前記個別試料に関する前記個別重量分率を計算することを特徴とするコンクリート定量分析方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のコンクリート定量分析方法において、
    前記個別試料は、前記コンクリート試料を粉砕して得られた、細骨材を含む粉砕粒子を、目開きの異なる複数の篩を用いて粒径ごとに篩い分けし、得られた粒径の異なる粉砕粒子からなることを特徴とするコンクリート定量分析方法。
  4. 1つのコンクリート試料からそれぞれサンプリングした、セメント部とセメント部以外との重量分率が異なる少なくとも3つの個別試料ごとに、これら個別試料のセメント部にのみ含まれる微量元素と、これら個別試料のセメント部またはセメント部以外のいずれか一方にのみ含まれる、当該微量元素以外の少なくとも1つの成分元素とについて、蛍光X線強度をそれぞれ測定する蛍光X線分析装置と、
    前記蛍光X線分析装置で測定された前記微量元素および前記成分元素に関する前記蛍光X線強度に基づいて、前記個別試料ごとに、前記微量元素および前記成分元素に関する個別濃度を計算する個別濃度計算部と、
    前記蛍光X線分析部で測定された前記蛍光X線強度と、前記個別濃度計算部で計算された前記個別濃度とに基づいて、前記個別試料ごとに、当該個別試料に関するセメント部とセメント部以外との重量分率を示す個別重量分率を計算する個別重量分率計算部と、
    前記個別濃度計算部で計算した前記微量元素に関する前記個別濃度と、前記個別重量分率計算部で計算した前記個別重量分率とに基づいて、前記微量元素の濃度を計算する目的濃度計算部と
    を備えることを特徴とするコンクリート定量分析システム。
  5. 請求項4に記載のコンクリート定量分析システムにおいて、
    前記個別濃度計算部は、前記個別試料ごとに前記個別重量分率を計算する際、当該個別試料Siに関する、前記蛍光X線分析部で測定された前記蛍光X線強度I(xi)と前記個別重量分率xiとの関係を示す次の近似式
    I(xi)=D・gi(1+E・xi
    但し、giは当該個別試料Siに関する当該元素の個別濃度;
    D,Eは当該元素に固有の定数;
    を、前記各個別試料と前記微量元素および前記成分元素との組合せごとに生成し、これら近似式を連立方程式として解くことにより、前記個別試料に関する前記個別重量分率を計算することを特徴とするコンクリート定量分析システム。
  6. 請求項4または請求項5に記載のコンクリート定量分析システムにおいて、
    前記個別試料は、前記コンクリート試料を粉砕して得られた、細骨材を含む粉砕粒子を、目開きの異なる複数の篩を用いて粒径ごとに篩い分けし、得られた粒径の異なる粉砕粒子からなることを特徴とするコンクリート定量分析システム。
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