特許文献1及び2には、風速がカットイン風速よりも小さく、風がほぼ止んでいる状態において、ナセルの旋回をどのように行うのかについて記載はないが、一般的な風力発電装置では、風速がカットイン風速よりも小さい場合には、風向計により測定された風向にナセルを追従させることは行っていない。
しかし、風が強くなり始めたときに、ナセル方位が風向に沿っていなければ、カットイン風速以上における通常運転に速やかに移行することができない。特に、常に強い風が吹くとは限らない地域に設置された風力発電装置では、風が強くなり始めたときに、ナセル方位が風向に沿うようにしなければ効率的に発電を行うことが難しい。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、強風が常に吹くとは限らない場所に設置される場合であっても、発電効率の低下を抑制できる風力発電装置および風力発電装置の制御方法を提供することを目的とする。
本発明に係る風力発電装置は、風速計および風向計と、ナセルを旋回させるナセル旋回機構と、前記風速計の測定結果から得られた風速が、カットイン風速よりも小さい第1閾値を越える場合に、前記風向計の測定結果から得られた風向に基づいて前記ナセルが旋回する一方で、前記風速計の測定結果から得られた風速が前記第1閾値以下である場合に、前記ナセルの旋回が停止するように前記ナセル旋回機構を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
ここで、「風速計の測定結果から得られた風速」とは、風速計により計測された風速そのものであってもよいし、風速計により計測された風速に何らかの補正を行って求めた真の風速であってもよい。同様に、「風向計の測定結果から得られた風向」とは、風向計により計測された風向そのものであってもよいし、風向計により計測された風向に何らかの補正を行って求めた真の風向であってもよい。
上記風力発電装置では、風速計の測定結果から得られた風速が、カットイン風速よりも小さい場合であっても、第1閾値より大きければ、風向計の測定結果から得られた風向に基づいてナセルを旋回させるので、風が強くなり始めてカットイン風速を超える際、ナセル方位が概ね風向に沿っており、カットイン風速以上における通常運転に速やかに移行することが可能である。したがって、強風が常に吹くとは限らない場所に設置される場合であっても、発電効率の低下を抑制できる。
さらに、上記風力発電装置では、風速計の測定結果から得られた風速が第1閾値以下である場合には、ナセルの旋回を停止する。風がほぼ止んでいる状態では、風向が不安定であり、ナセル方位を風向に追従させようとすると、頻繁にナセルを旋回させることになってしまう。そこで、風速計の測定結果から得られた風速が第1閾値以下である場合にナセルの旋回を停止することによって、ナセルが頻繁に旋回してしまい、多大な電力を消費することがない。したがって、強風が常に吹くとは限らない場所に設置される場合であっても、発電効率の低下を抑制できる。
上記風力発電装置において、前記制御手段は、前記ナセルの旋回が停止されている状態で、前記風速計の測定結果から得られた風速が、前記第1閾値よりも大きく前記カットイン風速よりも小さい第2閾値以上になったときに、前記風向計の測定結果から得られた風向に基づく前記ナセルの旋回を再開するように前記ナセル旋回機構を制御することが好ましい。
このように、風速計の測定結果から得られた風速が、第1閾値よりも大きくカットイン風速よりも小さい第2閾値以上になったときに、ナセルの旋回を再開することで、風が強くなり始めてカットイン風速を超える際、ナセル方位が概ね風向に沿っているので、カットイン風速以上における通常運転に速やかに移行することが可能である。したがって、強風が常に吹くとは限らない場所に設置される場合であっても、発電効率の低下をより一層抑制できる。
上記風力発電装置において、回転翼をピッチ方向に開閉するピッチ駆動機構をさらに備え、前記制御手段は、前記風速計の測定結果から得られた風速が前記カットイン風速を下回るときに、前記回転翼のピッチ角に上限が設定された遊転モードとなる一方で、前記風速計の測定結果から得られた風速が前記カットイン風速以上であるときに、前記回転翼のピッチ角が全開状態まで許容される通常運転モードとなるように前記ピッチ駆動機構を制御することが好ましい。
このように、カットイン風速を下回る場合であっても、回転翼のピッチ角に上限が設定された遊転モードで回転翼のピッチ角を調節しておくことで、風が強くなり始めてカットイン風速を超える際、通常運転モードに速やかに移行することができる。
上記風力発電装置において、前記風力発電装置のパワーカーブが最大となる前記ナセルの方位と、前記風向計により測定された風向との偏差に基づいて、前記風向計により測定された風向を補正する風向補正手段をさらに備え、前記制御手段は、前記風速計の測定結果から得られた風速が前記第1閾値よりも大きい場合、前記風向補正手段によって補正された前記風向に前記ナセルが追従するように前記ナセル旋回機構を制御することが好ましい。
風力発電装置の風向計は、回転翼の後方に位置するナセルに取り付けられるのが一般的である。この場合、風向計の検出対象は、回転翼に当たった後の風であるため、風向計の測定結果は実際の風向からずれてしまうことがある。そこで、上述のように、風向補正手段を設け、パワーカーブが最大となるナセル方位と、風向計により測定された風向との偏差に基づいて風向を補正することで、ナセル方位を風向により正確に沿わせ、発電効率を高めることができる。
本発明に係る風力発電装置の制御方法は、風速計および風向計と、ナセルを旋回させるナセル旋回機構とを有する風力発電装置の制御方法であって、前記風速計の測定結果から得られた風速が、カットイン風速よりも小さい第1閾値を越える場合、前記風向計の測定結果から得られた風向に基づいて前記ナセルを前記ナセル旋回機構で旋回させる工程と、前記風速計の測定結果から得られた風速が前記第1閾値以下である場合、前記ナセル旋回機構による前記ナセルの旋回を停止する工程とを備えることを特徴とする。
この風力発電装置の制御方法では、風速計の測定結果から得られた風速が、カットイン風速よりも小さい場合であっても、第1閾値より大きければ、風向計の測定結果から得られた風向に基づいてナセルを旋回させるので、風が強くなり始めてカットイン風速を超える際、ナセル方位が概ね風向に沿っており、カットイン風速以上における通常運転に速やかに移行することが可能である。したがって、強風が常に吹くとは限らない場所に風力発電装置が設置される場合であっても、発電効率の低下を抑制できる。
さらに、上記風力発電装置の制御方法では、風速計の測定結果から得られた風速が第1閾値以下である場合には、ナセルの旋回を停止する。このため、ナセルが頻繁に旋回してしまい、多大な電力を消費することがないので、強風が常に吹くとは限らない場所に風力発電装置が設置される場合であっても、発電効率の低下を抑制できる。
上記風力発電装置の制御方法において、前記ナセルの旋回を停止する工程の後で、前記風速計の測定結果から得られた風速が、前記第1閾値よりも大きく前記カットイン風速よりも小さい第2閾値以上になったときに、前記風向計の測定結果から得られた風向に基づく前記ナセルの旋回を再開する工程をさらに備えることが好ましい。
このように、風速計の測定結果から得られた風速が、第1閾値よりも大きくカットイン風速よりも小さい第2閾値以上になったときに、ナセルの旋回を再開することで、風が強くなり始めてカットイン風速を超える際、ナセル方位が概ね風向に沿っているので、カットイン風速以上における通常運転に速やかに移行することが可能である。
上記風力発電装置の制御方法において、前記風力発電装置が、回転翼をピッチ方向に開閉するピッチ駆動機構をさらに有し、前記風速計の測定結果から得られた風速が前記カットイン風速を下回るときに、前記回転翼のピッチ角に上限が設定された遊転モードで、前記ピッチ駆動機構により前記回転翼のピッチ角を調節する工程と、前記風速計の測定結果から得られた風速が前記カットイン風速以上であるときに、前記回転翼のピッチ角が全開状態まで許容される通常運転モードで、前記ピッチ駆動機構により前記回転翼のピッチ角を調節する工程とをさらに備えることが好ましい。
このように、カットイン風速を下回る場合であっても、回転翼のピッチ角に上限が設定された遊転モードで回転翼のピッチ角を調節しておくことで、風が強くなり始めてカットイン風速を超える際、通常運転モードに速やかに移行することができる。
上記風力発電装置の制御方法において、前記風力発電装置のパワーカーブが最大となる前記ナセルの方位と、前記風向計により測定された風向との偏差に基づいて、前記風向計により測定された風向を補正する工程をさらに備え、前記ナセルを旋回させる工程では、前記風向を補正する工程で補正された前記風向に追従するように前記ナセルを旋回させることが好ましい。
このように、風向補正手段を設け、パワーカーブが最大となるナセル方位と、風向計により測定された風向との偏差に基づいて風向を補正することで、ナセル方位を風向により正確に沿わせ、発電効率を高めることができる。
本発明では、風速計の測定結果から得られた風速が、カットイン風速よりも小さい場合であっても、第1閾値より大きければ、風向計の測定結果から得られた風向に基づいてナセルを旋回させるので、風が強くなり始めてカットイン風速を超える際、ナセル方位が概ね風向に沿っており、カットイン風速以上における通常運転に速やかに移行することが可能である。さらに、本発明では、風速計の測定結果から得られた風速が第1閾値以下である場合には、ナセルの旋回を停止するので、ナセルが頻繁に旋回してしまい、多大な電力を消費することがない。
したがって、強風が常に吹くとは限らない場所に風力発電装置が設置される場合であっても、発電効率の低下を抑制できる。
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
図1は、本実施形態に係る風力発電装置の全体構成例を示す図である。同図に示すように、風力発電装置1は、主として、基礎B上に立設された支柱2と、支柱2の上端に設置されたナセル4と、ナセル4に取り付けられたロータヘッド6と、ロータヘッド6に取り付けられた複数枚の回転翼8とで構成されている。
支柱2は、図1に示すように、基礎Bから上方(図1の上方)に延びる柱状であり、例えば、一本の柱状部材で構成してもよいし、複数のユニットを上下方向に連結して柱状に構成してもよい。支柱2が複数のユニットから構成されている場合には、最上部に設けられたユニットの上にナセル4が設置される。
ナセル4は、ロータヘッド6を支持するとともに、その内部に増速機14を含むドライブトレイン10や発電機18を収納している。また、ナセル4には、周囲の風速を計測する風速計5と、周囲の風向を計測する風向計7とが取り付けられている。なお、風速計5と風向計7とで計測した風速および風向は、それぞれ、後述する風速補正部42および風向補正部44において補正されるようになっていることが好ましい。
また、ナセル4内には、風力発電装置1の各部を制御する制御装置40が設けられている。制御装置40は、風速補正部42および風向補正部44から出力された補正後の風速値および風向値を受け取って、ナセル旋回機構20やピッチ制御機構30に指令を送る。制御装置40の制御下における風力発電装置1の各部の動作については、後で詳述する。なお、図1には、制御装置40がナセル4内に設けられている例を示したが、制御装置40の位置は特に限定されず、例えば支柱2の下部に設けてもよい。
ここで、風力発電装置1の各部の詳細構造を説明する。図2は風力発電装置1の各部の詳細構造の一例を示す図である。
図2に示すように、ドライブトレイン10は、ロータヘッド6のロータハブ6Aに連結された主軸12と、主軸12に連結された増速機14と、増速機14を発電機18に連結するカップリング16とを有する。風力発電装置1では、回転翼8が風を受けると、ロータハブ6Aとともに主軸12が回転し、主軸12の回転が増速機14によって増速された後、カップリング16を介して発電機18に入力されるようになっている。
またナセル4の下部には、ナセル4をヨー方向に旋回させるナセル旋回機構20が設けられている。
図3は、ナセル旋回機構20の構成例を示す断面図である。ナセル旋回機構20は、図3に示すように、ヨーモータ22と、ヨーモータ22の駆動により回転するピニオン24と、ピニオン24と噛み合う内歯車26と、ブレーキディスク28A及びブレーキシュー28Bを有するヨーブレーキ機構28とで構成してもよい。このナセル旋回機構20では、ヨーモータ22、ピニオン24およびブレーキシュー28Bがナセル4側に固定されている一方で、内歯車26およびブレーキディスク28Aは支柱2側に固定されている。
これにより、ヨーモータ22を駆動すると、ピニオン24が回転し、ナセル4がヨー旋回する。また、ヨーブレーキ機構28のブレーキシュー28Bがブレーキディスク28Aを挟み込むと、ナセル4のヨー旋回が制動される。なお、ヨーモータ22およびヨーブレーキ機構28は、制御装置40によって制御されている。
図2に示すように、ロータヘッド6は、略水平な軸線周りに回転可能にナセル4に固定されるとともに、回転翼8が取り付けられたロータハブ6Aと、このロータハブ6Aを覆う頭部カプセル6Bとを含んで構成される。
またロータハブ6Aには、図2に示すように、回転翼8をその軸線周り(図2の矢印方向)に回転させて回転翼8のピッチ角を変更するピッチ駆動装置30が設けられている。
ピッチ駆動装置30は、図2に示すように、シリンダ32と、回転翼8に連結された軸部34とで構成される。なお回転翼8は、軸受36によりピッチ方向に回転可能に支持されている。このため回転翼8は、ピッチ駆動装置30のシリンダ32によって軸部34が回転すると、軸部34とともにピッチ方向に回転するようになっている。なお、各回転翼8ごとに設けられるピッチ駆動装置30は、不図示のリンク機構で互いに連結されており、各回転翼8のピッチ角制御を連動して行うようになっていてもよい。
次に、制御装置40の制御下における風力発電装置1の各部の動作について説明する。図4は、風力発電装置1の各部の動作の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、風力発電装置1では、周囲の風速V0および風向θ0が、風速計5と風向計7とによって計測される(ステップS2)。
ここで、風力発電装置1の風速計5および風向計7は、図1及び2に示すように、回転翼8の後方に位置するナセル4に取り付けられるのが一般的である。この場合、風速計5および風向計7の検出対象は、回転翼8に当たった後の風であるため、風速計5および風向計7の検出結果は実際の風速および風向からずれてしまうことがある。
そこで、風速計5と風向計7とで計測した風速V0および風向θ0を、風速補正部42および風向補正部44により補正し、実際の風速Vと実際の風向θを算出することが好ましい(ステップS4)。例えば、風速計5により計測される風速V0と実際の風速(生風速)との相関関係を予め取得しておき、この相関関係に基づいて、風速補正部42で風速V0を補正するようにしてもよい。同様に、風向計7により計測される風向θ0と実際の風向(生風向)との相関関係を予め取得しておき、この相関関係に基づいて、風向補正部44で風向θ0を補正するようにしてもよい。
ここで、風向補正部44で風向θ0を補正する際に用いる相関関係は、例えば、風力発電装置1のパワーカーブが最大となるナセル4の方位と、そのときに風向計7により測定された風向θ0との偏差として取得してもよい。なお、パワーカーブとは、所定のピッチ角における風速と出力との関係であり、ナセル4の方位が実際の風向と一致している場合に最大となり、ナセル4の方位と実際の風向とがずれている場合よりも大きな値になる性質を有する。言い換えると、風力発電装置1のパワーカーブが最大となるナセル4の方位は、実際の風向(生風向)と一致している。つまり、上述の偏差は、風向計7により計測される風向θ0と実際の風向(生風向)との相関関係を表している。
上述のように得られた風速Vおよび風向θは制御装置40に送られ、制御装置40によって、風速Vがカットイン風速Vcut_in以上であるかが判定される(ステップS6)。
風速Vがカットイン風速Vcut_in以上である場合(ステップS6のYES判定)、風力発電装置1は通常運転モードに移行する(ステップS8)。具体的には、制御装置40の制御下で、ナセル旋回機構20によって風向θに追従するようにナセル4を旋回させながら、ピッチ駆動機構30によって回転翼8を開いて(ピッチ角を大きくして)、発電を行う。なお、通常運転モードでは、回転翼8のピッチ角が全開状態まで許容されており、回転翼8のピッチ角に上限は設定されていない。
一方、風速Vがカットイン風速Vcut_inよりも小さい場合(ステップS6のNO判定)、風力発電装置1は遊転モードに移行する(ステップS10)。遊転モードでは、回転翼8のピッチ角に上限が設定されており、制御装置40の制御下で、ピッチ駆動機構30が上限を超えない範囲で回転翼8のピッチ角を調節する。
そして、ステップS12において、制御装置40の制御下で、ナセル旋回機構20によって風向θに追従するようにナセル4を旋回させる(すなわち、ヨー・トラッキングを行う)。
次に、ステップS14において、制御装置40によって、風速Vが第1閾値Vth1以下であるかが判定される。ここで、第1閾値Vth1は、カットイン風速Vcut_inよりも小さい値であり、言い換えると0<Vth1<Vcut_inの関係式を満たす。
そして、風速Vが第1閾値Vth1以下である場合(ステップS14のYES判定)、ステップS16に進み、制御装置40の制御下で、ナセル旋回機構20によるナセル4の旋回が停止される(すなわち、ヨー・トラッキングを停止する)。一方、風速Vが第1閾値Vth1よりも大きい場合(ステップS14のNO判定)、ステップS6に戻って、風速Vがカットイン風速Vcut_in以上であるかが再び判定されるようになっている。
ステップS16でナセル4の旋回が停止された後、風速Vが第2閾値Vth2以上であるかが判定される(ステップS18)。ここで、第2閾値Vth2は、カットイン風速Vcut_inよりも小さく、第1閾値Vth1よりも大きい値であり、言い換えるとVth1<Vth2<Vcut_inの関係式を満たす。
そして、風速VがVth2以上である場合(ステップS18のYES判定)、ステップS12に戻って、風向θにナセル4を追従させるヨー・トラッキングが再開される。一方、風速VがVth2を下回る場合(ステップS18のNO判定)、ステップS16に戻って、ナセル4の旋回を停止したままの状態を維持する。
なお、図4には、ステップS4において風速および風向を風速補正部42と風向補正部44とで補正する例について説明したが、ステップS4を省略し、風速計5と風向計7とにより計測された風速V0および風向θ0をそのまま用いてその後の処理を行ってもよい。この場合、ステップS6、ステップS14及びステップS18では、風速計5により測定された風速V0とカットイン風速Vcut_in、第1閾値Vth1または第2閾値Vth2との大小関係を判定すればよく、ステップS8及びステップS12では、風向計7により測定された風向θ0にナセル4を追従させるようヨー・トラッキングを行えばよい。
以上説明したように、本実施形態では、風速計5および風向計7と、ナセル4を旋回させるナセル旋回機構20と、風速計の測定結果V0から得られた風速(V又はV0)が、カットイン風速Vcut_inよりも小さい第1閾値Vth1を越える場合に、風向計7の測定結果θ0から得られた風向(θ又はθ0)に基づいてナセル4が旋回する一方で、風速計の測定結果V0から得られた風速(V又はV0)が第1閾値Vth1以下である場合に、ナセル4の旋回が停止するようにナセル旋回機構20を制御する制御手段40とを備えている。
本実施形態の風力発電装置1では、風速計5の測定結果から得られた風速(V又はV0)が、カットイン風速Vcut_inよりも小さい場合であっても、第1閾値Vth1より大きければ、風向計7の測定結果から得られた風向(θ又はθ0)に基づいてナセル4を旋回させるので、風が強くなり始めてカットイン風速Vcut_inを超える際、ナセル方位が概ね風向に沿っており、カットイン風速Vcut_in以上における通常運転に速やかに移行することが可能である。したがって、風力発電装置1は、強風が常に吹くとは限らない場所に設置される場合であっても、発電効率の低下を抑制できる。
さらに、風力発電装置1では、風速計5の測定結果から得られた風速(V又はV0)が第1閾値Vth1以下である場合には、ナセル4の旋回を停止する。風がほぼ止んでいる状態では、風向が不安定であり、ナセル方位を風向に追従させようとすると、頻繁にナセル4を旋回させることになってしまう。そこで、風速計5の測定結果から得られた風速(V又はV0)が第1閾値Vth1以下である場合にナセル4の旋回を停止することによって、ナセル4が頻繁に旋回してしまい、多大な電力を消費することがない。したがって、風力発電装置1は、強風が常に吹くとは限らない場所に設置される場合であっても、発電効率の低下を抑制できる。
また本実施形態において、制御手段40は、ナセル4の旋回が停止されている状態で、風速計5の測定結果から得られた風速(V又はV0)が、第1閾値Vth1よりも大きくカットイン風速Vcut_inよりも小さい第2閾値Vth2以上になったときに、風向計7の測定結果から得られた風向(θ又はθ0)に基づくナセル4の旋回を再開するようにナセル旋回機構20を制御することが好ましい。
このように、風速計の測定結果から得られた風速(V又はV0)が、第1閾値Vth1よりも大きくカットイン風速Vcut_inよりも小さい第2閾値Vth2以上になったときに、ナセル4の旋回を再開することで、風が強くなり始めてカットイン風速Vcut_inを超える際、ナセル方位が概ね風向に沿っているので、カットイン風速Vcut_in以上における通常運転に速やかに移行することが可能である。
また、本実施形態の風力発電装置1は、回転翼8をピッチ方向に開閉するピッチ駆動機構30をさらに備え、制御手段40は、風速計5の測定結果から得られた風速がカットイン風速Vcut_inを下回るときに、回転翼8のピッチ角に上限が設定された遊転モードとなる一方で、風速計5の測定結果から得られた風速がカットインVcut_in風速以上であるときに、回転翼8のピッチ角が全開状態まで許容される通常運転モードとなるようにピッチ駆動機構30を制御することが好ましい。
このように、カットイン風速Vcut_inを下回る場合であっても、回転翼8のピッチ角に上限が設定された遊転モードで回転翼8のピッチ角を調節しておくことで、風が強くなり始めてカットイン風速Vcut_inを超える際、通常運転モードに速やかに移行することができる。
さらに、本実施形態の風力発電装置1は、風力発電装置1のパワーカーブが最大となるナセル4の方位と、風向計7により測定された風向θ0との偏差に基づいて、風向計7により測定された風向V0を補正する風向補正手段44をさらに備え、制御手段40は、風速計5の測定結果から得られた風速(V又はV0)が第1閾値Vth1よりも大きい場合、風向補正手段44によって補正された風向θにナセル4が追従するようにナセル旋回機構20を制御することが好ましい。
このように、風向補正手段44を設け、パワーカーブが最大となるナセル方位と、風向計7により測定された風向V0との偏差に基づいて風向V0を補正することで、ナセル方位を実際の風向Vにより正確に沿わせ、発電効率を高めることができる。
以上、本発明の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。