JP5024111B2 - 電子ポテンシャル演算装置、電子ポテンシャル演算方法、電子ポテンシャル演算プログラム、及び物性予測値演算装置 - Google Patents

電子ポテンシャル演算装置、電子ポテンシャル演算方法、電子ポテンシャル演算プログラム、及び物性予測値演算装置 Download PDF

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本発明は、第一原理計算に基づいて電子ポテンシャルを演算するための電子ポテンシャル演算装置、電子ポテンシャルの演算方法、電子ポテンシャル演算プログラム、及びこれらを用いた、金属等の固体の物性予測値を演算するための物性予測値演算装置に関する。
従来、金属や無機物質等の固体における電子ポテンシャルを速やかに演算する方法として、Kerker法と呼ばれる方法が知られている。
電子ポテンシャルは、例えば、逐次代入法によって、フーリエ変換に基づいて離散化したKohn−Sham方程式及びPoisson方程式を反復演算し、その入力値(入力ポテンシャル)と出力値(出力ポテンシャル)との残差を収束させることで求められる。逐次代入される入力ポテンシャルは、その都度、前記残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルとして更新されて代入される。
Kerker法では、上記新たな入力ポテンシャルを、下記式(a)及び(b)に基づいて推定算出することで、速やかに前記残差を収束させ、電子ポテンシャルを得るまでの演算の反復回数を減らすことができると示されている(例えば、非特許文献1参照)。
なお、上記Kohn−Sham方程式等の第一原理計算を解くに当たっては、上述のように、フーリエ変換によって離散化して演算が行われる。このため、上記式(a)及び式(b)は、各フーリエ成分に対応して演算される。
ジー・ピー・カーカー(G.P.Kerker),「自己無撞着擬ポテンシャル計算における効率的な反復手法(Efficient iteration scheme for self−consistent pseudopotential calculations)」,フィジカル レビュー B(Physical Review B),アメリカ物理学会(American Physical Society),1981年3月15日,VOLUME23,NUMBER6,p.3082−3084
上記式(a)において、新たな入力ポテンシャルを算出する際に、計算に用いられた入力ポテンシャルに加えられる値は、前記残差に上記式(b)で示される収束パラメータA´を乗することで得られるが、この収束パラメータA´は、フィルタとしての機能を有しており、短波長側よりも長波長側の方が相対的に前記「加えられる値」を小さくするといったように、いわゆるハイパスフィルタとして作用する。残差にこのような収束パラメータA´を乗する理由は、以下の通りである。
すなわち、上記Poisson方程式においては、下記式(c)で示すように、Kohn−Sham方程式を解くことにより得られる電子密度ρから、電子ポテンシャルVを演算するが、波数ベクトルは、短波長側よりも長波長側でその値が小さくなるため、長波長側の波数ベクトルにおいては、電子密度ρの変化が相対的に大きく現れ、算出される電子ポテンシャルV(出力ポテンシャル)においても相対的に大きな影響を及ぼし、残差の収束を阻害する要因となる。
このため、推定される新たな入力ポテンシャルにおいては、長波長成分の大きな変化を抑える必要がある。
従って、上記Kerker法において、収束パラメータA´のフィルタ機能は、速やかに収束させうる最適な入力ポテンシャルを推定する上で、大きな影響を及ぼす。
さらに、上記式(b)中、収束パラメータA´に含まれるパラメータP及びQは、その値を調整することで、収束パラメータA´のフィルタ機能を調整する役割を担っている。このため、パラメータP及びQは、前記残差を収束させるに至るまでの反復回数に大きく影響を及ぼす。
一方、式(b)に示すように、パラメータPは無次元、Qは(長さ)-2であるとともに、両者は分母と分子に位置しているため、これらパラメータの好適な値を推定することは困難であるという問題がある。一方のパラメータを調整すると他方のパラメータの調整にも影響を及ぼすといったように相互に独立した調整を行えないからである。
このため、これらパラメータは、人為的に決定せざるを得ない場合があり、この点において演算の効率化を妨げる要因となっていると考えられていた。そこで、より効率よく速やかに電子ポテンシャルを演算しうる方策が嘱望されていた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、より効率よく速やかに電子ポテンシャルを演算することができる電子ポテンシャル演算装置、電子ポテンシャル演算方法、電子ポテンシャル演算プログラム、及び物性予測値演算装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、第一原理計算をフーリエ変換によって離散化して演算することで、入力ポテンシャルから出力ポテンシャルを算出し、前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルを演算するとともに、この新たな入力ポテンシャルに基づいて前記第一原理計算を反復することで前記残差を収束させ、電子ポテンシャルを得る電子ポテンシャル演算装置であって、初期値としての前記入力ポテンシャルを入力するための入力部と、前記入力ポテンシャルに基づいて第一原理計算により前記出力ポテンシャルを演算する出力ポテンシャル演算部と、前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を求める残差演算部と、前記残差が予め設定された目標値以下であるか否かを判定する判定部と、前記残差が前記目標値以下でないと判定された場合、前記新たな入力ポテンシャルを演算するための収束パラメータを調整するための調整パラメータを設定する調整パラメータ設定部と、前記調整パラメータ設定部により設定された調整パラメータから前記収束パラメータを演算するとともに、下記式(1)に基づいて、前記新たな入力ポテンシャルを演算する入力ポテンシャル演算部と、前記新たな入力ポテンシャルに基づいて、前記出力ポテンシャル演算部、前記残差演算部、前記判定部、前記調整パラメータ設定部、及び前記入力ポテンシャル演算部を繰り返し実行させて第一原理計算を反復する繰り返し制御部と、前記判定部によって前記残差が目標値以下であると判定された場合、前記繰り返し制御部による反復計算を停止させる制御部と、を備え、前記収束パラメータは、各フーリエ成分に対応する波数が大きい短波長側よりも前記波数が小さい長波長側において相対的に小さい値を採るフィルター項の逆数を、その分母の中の第一の項として含んでおり、前記調整パラメータは、前記第一の項に加えられる第二の項を構成する第一の調整パラメータと、前記第一の項に乗算される第二の調整パラメータと、を含んでいることを特徴としている。
上記のように構成された電子ポテンシャル演算装置において、入力ポテンシャル演算部は、入力ポテンシャルに対して、フィルタ機能を有するフィルタ項を含む収束パラメータと残差との積を加算して、新たな入力ポテンシャルを算出するので、前記収束パラメータは、残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルを算出する上で直接的に影響を及ぼす。
この点、本発明においては、調整パラメータ設定部が設定する収束パラメータを調整するための調整パラメータの内、第二の調整パラメータは、収束パラメータの分母を構成する第一の項に乗算されるものであり、また、第一の調整パラメータは、第一の項に加えられる第二の項を構成するものであるので、これら第一及び第二の調整パラメータは、共に収束パラメータの分母に位置している。さらに、第一及び第二の調整パラメータは、共に無次元の変数であり、かつ共に独立した変数である。
従って、本発明の収束パラメータは、上記第一及び第二の調整パラメータによって調整される際の調整の自由度が、上記従来例と比較して高いので、調整パラメータ設定部は、第一及び第二の調整パラメータについて、残差を収束させうる好適な値を容易に推定することができ、残差をより速やかに収束させるように、収束パラメータを好適に調整することができる。これにより、第一原理計算の反復回数を効果的に減らすことができ、より効率よく速やかに電子ポテンシャルを演算することができる。
また、前記フィルター項は、n番目のフーリエ成分に対応する波数ベクトルの絶対値の2乗値であることが好ましい。
具体的には、前記第一の調整パラメータをα、前記第二の調整パラメータをβとしたとき、前記収束パラメータは、下記式(2)によって示されるものであることが好ましい。
また、上記電子ポテンシャル演算装置において、前記調整パラメータ設定部は、反復回数が一つ前の前記入力ポテンシャルをVin k-1、反復回数が一つ前の前記残差をVres k-1とすると、下記式(3),(4)にそれぞれ示す入力変化ポテンシャルδVin k、及び残差変化ポテンシャルδVres k、を演算するとともに、さらに、これらに基づいて、下記式(5)中のSを最小化するα、及びβを演算し、得られたα、及びβをそれぞれ、前記第一の調整パラメータ、及び前記第二の調整パラメータに設定するものであることが好ましい。
この場合、調整パラメータ設定部は、入力変化ポテンシャル及び残差変化ポテンシャルを演算することで、第一の調整パラメータ及び第二の調整パラメータを演算し、設定することができる。
また、上記式(5)中、Sを最小化するにあたって、k´については、現在の反復回数であるk以下の値を採ることができるので、過去(現在の反復回数よりも少ない反復回数)における入力変化ポテンシャルδVin k、及び残差変化ポテンシャルδVres kを利用して第一の調整パラメータ、及び第二の調整パラメータを算出することができる。このため、調整パラメータ設定部は、より効果的に残差を収束させうる好適な値を算出し、第一及び第二の調整パラメータとして設定することができる。
また、本発明は、第一原理計算をフーリエ変換によって離散化して演算することで、入力ポテンシャルから出力ポテンシャルを算出し、前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルを演算するとともに、前記新たな入力ポテンシャルに基づいて前記第一原理計算を反復することで前記残差を収束させ、電子ポテンシャルを演算する電子ポテンシャル演算処理をコンピュータが実行する方法であって、初期値としての前記入力ポテンシャルを演算して得るための入力ステップと、前記入力ポテンシャルに基づいて第一原理計算により前記出力ポテンシャルを演算する出力ポテンシャル演算ステップと、前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を求める残差演算ステップと、前記残差が予め設定された目標値以下であるか否かを判定する判定ステップと、前記残差が前記目標値以下でないと判定された場合、前記新たな入力ポテンシャルを演算するための収束パラメータが、各フーリエ成分に対応する波数が大きい短波長側よりも前記波数が小さい長波長側において相対的に小さい値を採るフィルター項の逆数を含む第一の項を分母に有しており、この第一の項に加えられる第二の項を構成する第一の調整パラメータと、前記第一の項に乗算される第二の調整パラメータと、を設定する調整パラメータ設定ステップと、前記調整パラメータ設定ステップにより設定された両調整パラメータから前記収束パラメータを演算するとともに、上記式(1)基づいて、前記新たな入力ポテンシャルを演算する入力ポテンシャル演算ステップと、前記新たな入力ポテンシャルに基づいて、前記出力ポテンシャル演算ステップ、前記残差演算ステップ、前記判定ステップ、前記調整パラメータ設定ステップ、及び前記入力ポテンシャル演算ステップを繰り返し実行させて第一原理計算を反復する反復ステップと、を有することを特徴としている。
上記のように構成された電子ポテンシャル演算方法によれば、上述のように、第一原理計算の反復回数を効果的に減らすことができ、より効率よく速やかに電子ポテンシャルを演算することができる。
また、本発明は、第一原理計算をフーリエ変換によって離散化して演算することで、入力ポテンシャルから出力ポテンシャルを算出し、前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルを演算するとともに、前記新たな入力ポテンシャルに基づいて前記第一原理計算を反復することで前記残差を収束させ、電子ポテンシャルを演算する電子ポテンシャル演算プログラムであって、コンピュータに、初期値としての前記入力ポテンシャルを演算して得るための入力ステップと、前記入力ポテンシャルに基づいて第一原理計算により前記出力ポテンシャルを演算する出力ポテンシャル演算ステップと、前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を求める残差演算ステップと、前記残差が予め設定された目標値以下であるか否かを判定する判定ステップと、前記残差が前記目標値以下でないと判定された場合、前記新たな入力ポテンシャルを演算するための収束パラメータが、各フーリエ成分に対応する波数が大きい短波長側よりも前記波数が小さい長波長側において相対的に小さい値を採るフィルター項の逆数を含む第一の項を分母に有しており、この第一の項に加えられる第二の項を構成する第一の調整パラメータと、前記第一の項に乗算される第二の調整パラメータと、を設定する調整パラメータ設定ステップと、前記調整パラメータ設定ステップにより設定された両調整パラメータから前記収束パラメータを演算するとともに、上記式(1)基づいて、前記新たな入力ポテンシャルを演算する入力ポテンシャル演算ステップと、前記新たな入力ポテンシャルに基づいて、前記出力ポテンシャル演算ステップ、前記残差演算ステップ、前記判定ステップ、前記調整パラメータ設定ステップ、及び前記入力ポテンシャル演算ステップを繰り返し実行させて第一原理計算を反復する反復ステップと、を実行させるためのプログラムである。
また、本発明は、電子ポテンシャルに基づいて固体や分子の物性予測値の演算を行う物性予測値演算装置であって、前記固体や分子の電子ポテンシャルの演算を行うための上述の電子ポテンシャル演算装置と、これによって得られる電子ポテンシャルに基づいて、前記物性予測値の演算を行う物性演算部と、を有していることを特徴としている。
上記のように構成された物性予測値演算装置によれば、効率よく速やかに電子ポテンシャルを演算し、固体の物性予測値を演算することができる。
以上のように、本発明の電子ポテンシャル演算装置、電子ポテンシャル演算方法、及び電子ポテンシャル演算プログラムによれば、より効率よく速やかに電子ポテンシャルを演算することができる。また、本発明の物性予測値演算装置によれば、効率よく速やかに固体の電子ポテンシャルを演算し、当該固体の物性予測値を演算することができる。
〔装置の全体構成〕
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子ポテンシャル演算装置の構成を示す図である。この電子ポテンシャル演算装置10は、第一原理計算に基づいて、対象となる固体や分子の電子ポテンシャルを算出するものであり、キーボードやマウス等からなる入力デバイス11と、ディスプレイや、プリンタ等からなる出力デバイス12と、各種情報を記憶するためのハードディスク等からなる記憶部13と、入力デバイス11から入力される各種データに基づいて電子ポテンシャルを演算するための処理を行うデータ処理部20とを備えており、コンピュータ等によって構成されている。
電子ポテンシャル演算装置10は、例えば、電子ポテンシャルの演算を行うためのプログラム(電子ポテンシャル演算プログラム)が記憶部13にインストールされており、データ処理部20が有している、後述の電子ポテンシャルの演算処理を行うための各機能部を実現する。
データ処理部20は、上記第一原理計算を行うために必要な初期値としての電子ポテンシャルを算出するための初期ポテンシャル演算部21を有している。データ処理部20は、さらに、第一原理計算を反復するための機能部群として、出力ポテンシャル演算部22と、残差演算部23と、判定部24と、入力ポテンシャル演算部25と、調整パラメータ設定部26と、制御部27とを有している。また、データ処理部20はさらに、得られた電子ポテンシャルに基づいて前記対象となる固体や分子に関する物性を予測演算する物性演算部30を有している。
出力ポテンシャル演算部22は、入力値としての電子ポテンシャルが入力されると、この電子ポテンシャルに基づいて第一原理計算を行い、出力値としての電子ポテンシャルを出力する。入力値としての電子ポテンシャルは、上記初期ポテンシャル演算部21又は入力ポテンシャル演算部25から当該出力ポテンシャル演算部22に提供される。
この出力ポテンシャル演算部22は、入力値としての電子ポテンシャル(以下、入力ポテンシャルともいう)に基づいてKohn−Sham方程式を解くことで電子密度を求め、さらにこの求めた電子密度に基づいて、上記式(c)にて示したPoisson方程式を解くことで出力値としての電子ポテンシャル(以下、出力ポテンシャルともいう)を演算し算出する。
なお、出力ポテンシャル演算部22は、上記のように出力ポテンシャルを算出する際に、Poisson方程式を解くことで得られる電子ポテンシャルに、電子の交換相互作用等に関する交換相関ポテンシャルを示す補正項を加えたものを出力ポテンシャルとして算出するように構成してもよい。この場合、例えば、この交換相関ポテンシャルに関する情報を、記憶部13に予め格納しておき、出力ポテンシャル演算部22は、記憶部13に格納された前記情報を用いることで、前記交換相関ポテンシャルを示す補正項を求めることができる。
残差演算部23は、上記出力ポテンシャル演算部22によって算出された出力ポテンシャルと、この出力ポテンシャルを算出するために用いられた入力ポテンシャルとの残差を算出する機能を有している。
判定部24は、上記残差演算部23により算出される残差が予め設定された目標値以下であるか否かを判定する機能を有している。なお、この目標値とは、前記残差が収束したか否かを判断するための閾値であり、残差が目標値以下の場合、後述するように残差が収束したものと判断される。一方、残差が目標値よりも大きい場合、残差が未だ収束していないものと判断される。
入力ポテンシャル演算部25は、上記判定部24により前記残差が収束していないと判断された場合、さらに反復して出力ポテンシャル演算部22によって行われる際の新たな入力ポテンシャルを算出する機能を有している。この入力ポテンシャル演算部25は、算出した新たな入力ポテンシャルを、出力ポテンシャル演算部22に出力し、これによって、前記残差が収束したと判断されるまで、出力ポテンシャル演算部22による演算が反復される。
調整パラメータ設定部26は、入力ポテンシャル演算部25において、新たな入力ポテンシャルを演算する際に、必要となる後述する調整パラメータを演算し設定する機能を有している。算出設定された調整パラメータは、入力ポテンシャル演算部25に出力され、当該入力ポテンシャル演算部25が行う新たな入力ポテンシャルの演算に用いられる。
制御部27は、データ処理部20の各機能部を包括的に制御する。また、判定部24によって残差が目標値よりも大きいと判定されると、制御部27は、残差は未だ収束していないと判断し、各部に演算の反復を繰り返し実行する旨の命令を出力する。また、判定部24によって残差が目標値以下と判定されると、制御部27は、残差が収束したと判断し、演算の反復を停止する旨の命令を出力する。また、その時点での出力ポテンシャルを、電子ポテンシャルの演算結果として出力デバイス12に出力させる機能も有している。すなわち、制御部27は、判定部24によって残差が目標値以下であると判定された場合、上記各部に反復演算を停止させる機能を有するとともに、上記各部を繰り返し実行させて演算を反復する繰り返し制御部を兼ねている。
物性演算部30は、演算結果として得られる電子ポテンシャルを制御部27から受け取り、この電子ポテンシャルに基づいて、前記対象となる固体や分子に関する電子密度分布、前記固体や分子を構成する原子の結合状態、原子間の位置、導電性、及び熱伝導性等といった物性について、予測される物性予測値を演算し、出力デバイス12に出力させる機能を有している。すなわち、本実施形態の電子ポテンシャル演算装置10は、固体や分子の物性予測値の演算を行う物性予測値演算装置としての機能も有している。
また、データ処理部20は、上記演算の反復回数をカウントするためのカウンタ28を機能的に有している。
次に、上記構成の電子ポテンシャル演算装置の動作について説明する。
〔電子ポテンシャル演算装置の動作について〕
図2は、本実施形態の電子ポテンシャル演算装置の具体的な動作を示したフローチャートである。
本装置10において、電子ポテンシャルを算出しようとする金属又は分子等からなる固体を構成する原子の種類、位置、及び当該固体における一般的な電子密度といった数値情報が入力されると(ステップS101)、データ処理部20の制御部27は、これらデータに基づいて初期値としての平均的な入力ポテンシャルを、初期ポテンシャル演算部21に演算させる(ステップS102)。
図3は、上記ステップS101において、電子ポテンシャルを算出しようとする固体等の前記数値情報の入力を受け付けるためのディスプレイ表示の一例である。制御部27は、図3に示すように、数値情報を入力するための枠である入力枠部40を出力デバイス12であるディスプレイに表示する。この入力枠部40は、例えば、単位格子に含まれる各原子それぞれの3次元座標値が入力できるように設けられている。当該装置10の操作者は、マウス等で入力しようとする入力枠部40にカーソルを移動させた後、キーボード等を操作することで、数値情報を入力する。入力デバイス11、及び出力デバイス12は、この入力枠部40に入力された各数値情報を各原子の位置として受け付ける。つまり、入力デバイス11、出力デバイス、及び初期ポテンシャル演算部21は、初期値としての入力ポテンシャルを得るための入力部を構成している。また、ステップS101、及びステップS102は、初期値としての入力ポテンシャルを演算する入力ステップを構成している。
なお、ここでは、原子の位置の数値情報を入力する際の態様を示したが、他の情報(原子の種類、電子密度)についても、同様の入力画面が用意され、受け付けることができる。
初期ポテンシャル演算部21が入力ポテンシャルを算出すると、制御部27は、カウンタ28における反復回数kを「1」に設定する(ステップS103)。
次に、制御部27は、上記初期値としての入力ポテンシャル(Vin k)に基づいて、出力ポテンシャル(Vout k)を、出力ポテンシャル演算部22に演算させ(ステップS104(出力ポテンシャル演算ステップ))、さらに、残差演算部23に出力ポテンシャルと入力ポテンシャルとの残差(Vres k)を算出させる(ステップS105(残差演算ステップ))。なお、このステップS104において、出力ポテンシャル演算部22は、フーリエ変換によって離散化したKohn−Sham方程式、及びPoisson方程式を解くといった、いわゆる第一原理計算によって、入力ポテンシャルから出力ポテンシャルを演算する。
次に、制御部27は、ステップS105で得られた残差が所定の目標値T以下であるか否かを、判定部24に判定させる(ステップS106(判定ステップ))。判定部24によって残差が目標値T以下であると判定された場合、制御部27は、残差が収束したものと判断し、現状の出力ポテンシャルを電子ポテンシャルの演算結果として出力デバイス12に出力させる(ステップS107)。
さらに、制御部27は、演算結果としての電子ポテンシャルを物性演算部30に出力する。演算結果を受け取った物性演算部30は、前記対象となる固体や分子に関する物性についての物性予測値を演算し(ステップS108)、出力デバイス12に出力する。なお、この物性演算部30による処理については、後に詳述する。
一方、判定部24によって残差が目標値Tより大きいと判定された場合、制御部27は、残差が未だ収束していないと判断し、ステップS109に進み、調整パラメータ設定部26、及び入力ポテンシャル演算部25に新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)を算出させる。
図4は、図2中ステップS109における、新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)を算出する際の動作を示したフローチャートである。
まず、入力ポテンシャル演算部25は、カウンタ28の有する反復回数kの値が1でないか否かを判断する(ステップS201)。
反復回数kが1であると判断した場合、調整パラメータ設定部26は、第一の調整パラメータα及び第二の調整パラメータβの入力を操作者に要求する。そして、第一の調整パラメータα及び第二の調整パラメータβについて、それぞれ任意の値が、操作者によって入力デバイス11等を介して入力されると(ステップS202)、入力ポテンシャル演算部25は、ステップS203に進み、この入力された両調整パラメータに基づいて、収束パラメータAを算出する。
ここで、収束パラメータAとは、新たな入力ポテンシャルを演算するために用いられるパラメータであり、第一の調整パラメータα、及び第二の調整パラメータβは、収束パラメータAを好適に調整するためのパラメータであり、これらは、下記式(2)で示される。
次に、入力ポテンシャル演算部25は、上記式(2)で求めた収束パラメータAを用いて、新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)を、下記式(1)により算出する(ステップS204)。
図2中ステップS104における第一原理計算を解くに当たっては、上述のように、フーリエ変換によって離散化して演算が行われる。このため、上記式(1)及び式(2)は、各フーリエ成分に対応して演算される。なお、上記式(1)及び式(2)を演算する上において、離散化による各フーリエ成分は、正弦成分と、余弦成分とを含んでいるが、本実施形態では、これら正弦成分及び余弦成分を含んだフーリエ成分を一体と考え、そのフーリエ成分に対応する波数ベクトルに基づいて、正弦成分及び余弦成分を演算し、当該フーリエ成分に対応する新たな入力ポテンシャルを算出している。
なお、上記収束パラメータA、及び、新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)の内容については、後に詳述する。
入力ポテンシャル演算部25は、新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)を算出すると、図2に示すフローチャートに戻り、ステップS110に進む。
一方、反復回数kが1でないと判断した場合、調整パラメータ設定部26が、下記式(3)〜(5)に基づいて、第一の調整パラメータα及び第二の調整パラメータβを演算する(ステップS205)。
反復回数が一つ前の前記入力ポテンシャルをVin k-1、反復回数が一つ前の前記残差をVres k-1とすると、下記式(3),(4)にそれぞれ示す入力変化ポテンシャルδVin k、及び残差変化ポテンシャルδVres k、を演算し、これらに基づいて、下記式(5)中のSを最小化するα、及びβを演算し、得られたα、及びβをそれぞれ、前記第一の調整パラメータ、及び前記第二の調整パラメータに設定する。
以上のように、ステップS201,S202,S205は、残差が所定の目標値T以下でないと判定された場合、両調整パラメータα、βを設定する調整パラメータ設定ステップを構成している。
なお、調整パラメータ設定部26は、上記反復回数が現在の反復回数より小さいときの入力ポテンシャルや残差を、記憶部13に逐次格納しており、利用することができる。
このステップS205における両調整パラメータα、βの演算については、後に詳述する。
第一の調整パラメータα及び第二の調整パラメータβを演算した入力ポテンシャル演算部25は、ステップS203に進み、上記と同様、収束パラメータA、及び新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)を、上記式(1)及び式(2)により算出する(ステップS203、ステップS204(入力ポテンシャル演算ステップ))。そして、図2に示すフローチャートに戻り、ステップS110に進む。
以上のようにして、新たな入力ポテンシャルを算出した後、制御部27は、カウンタ28における反復回数kに「1」を加え(ステップS110)、ステップS104に戻る。
制御部27は、新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)に基づいて出力ポテンシャルを求め判定部24によって残差を判定する。これを繰り返すことで、判定部24によって残差が目標値T以下と判定されるまで、上記演算を反復する(反復ステップ)。
判定部24によって残差が目標値T以下であると判定された場合、上述したように、現状の出力ポテンシャルを電子ポテンシャルの演算結果として出力デバイス12に出力させ(ステップS107)、物性演算部30によって、前記対象となる固体や分子に関する物性についての予測値の演算がなされる(ステップS108)。
以上のようにして、本実施形態の電子ポテンシャル演算装置は、第一原理計算を反復演算することで、残差(Vres k)を収束させ、電子ポテンシャルを演算、算出することができる。
〔収束パラメータの内容について〕
次に、収束パラメータの内容について説明する。
上記式(2)で表される収束パラメータAは、波数ベクトルの絶対値の内の0でない最小値の2乗値をn番目のフーリエ成分に対応する波数ベクトルの絶対値の2乗値で除した第一の項(下記式(d)参照)を分母に有している。
また、第二の調整パラメータβは、上記第一の項に乗算されているとともに、第一の調整パラメータは、上記第一の項に加えられる第二の項を構成している。そして、これら両調整パラメータα、βは、共に収束パラメータAの分母に位置している。
ここで、この収束パラメータAの役割について説明する。収束パラメータAは、上記従来例において説明した収束パラメータA´と同様、いわゆるハイパスフィルタとして作用するものである。すなわち、例えば、第一の調整パラメータαが0であるとした場合、収束パラメータAは下記式(e)のように示される。
minは、波数ベクトルの絶対値の内の0でない最小値であるので、定数とみなすことができる。一方、上記式(e)において分子に位置する波数ベクトルの絶対値の2乗値は、各フーリエ成分に対応する波数が大きい短波長側よりも前記波数が小さい長波長側において相対的に小さい値を採る。このため、この波数ベクトルの絶対値の2乗値は、ハイパスフィルターとしての機能を有するフィルター項を構成している(下記式参照)。
上記式(2)において、この収束パラメータAは、このフィルター項の逆数を分母中の第一の項に含んでいるので(上記式(2)参照)、収束パラメータA全体として、ハイパスフィルタとしての作用を有するものであり、上記式(2)に示すように、この収束パラメータAと残差との積を入力ポテンシャルに加えるに当たっては、算出される新たな入力ポテンシャルに対して相対的に大きく影響を及ぼす長波長側では、加えられる値を相対的に小さくすることができる。
新たな入力ポテンシャルは、上記収束パラメータAと残差との積を現状の入力ポテンシャルに加算することで算出されるので(上記式(1)参照)、収束パラメータAのフィルタ作用は、残差を収束させる上で直接的に影響を及ぼす。
この点、本実施形態では、収束パラメータAの両調整パラメータα、βは、互いに独立した無次元の変数である。特に、第二の調整パラメータβは、フィルタ作用を有する前記フィルタ項に乗算されており、この第二の調整パラメータβを調整することで、ハイパスフィルタとしてのフィルタ作用の透過性を調整することができる。一方、第一の調整パラメータαは、フィルタ作用全体としての調整を行うことができる。
このように、本実施形態の収束パラメータAは、上記従来例と比較して、両調整パラメータによる調整の自由度が高いので、入力ポテンシャル演算部25は、残差をより速やかに収束させるように、収束パラメータAを好適に調整することができる。
また、本実施形態の入力ポテンシャル演算部25は、ステップS205において、残差を収束させうる(収束させることができる)新たな入力ポテンシャルを好適に推測できる両調整パラメータα、βを演算する機能を有している。以下に、この両調整パラメータα、βの演算について説明する。
〔調整パラメータの演算について〕
次に調整パラメータの演算の態様について説明する。
両調整パラメータα、βは、調整パラメータ設定部26が、上記式(5)中のSを最小化するα、及びβを求めることで得られる。
この上記式(5)により、残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルを好適に推測できる両調整パラメータα、βが求められる理由は以下の通りである。
例えば、入力ポテンシャルと、残差との間に、下記式(f)に示すような線形の関係が成立するとすれば、下記式(g)も成立する。なお、V0nは定数である。
例えば、上記式(h)中のRを最小化すれば、収束パラメータAを推定したことになり、上記式(i)すなわち、式(1)によって、新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)を好適に推定することができる。上記式(5)はこの式(h)に基づいている。
この上記式(5)は具体的には以下のようにして解くことができる。まず、調整パラメータ設定部26は、上記式(3)、(4)に基づいて、入力変化ポテンシャルδVin k、及び残差変化ポテンシャルδVres k、を演算する。
次に調整パラメータ設定部26、下記式(j)〜(n)に基づいて各値を求める。
ここで上記式(j)中の「a」は、入力変化ポテンシャルの大きさを示す値、上記式(k)中の「b」は、入力変化ポテンシャルにフィルター項の逆数を乗じた入力変化第二ポテンシャルと、入力変化ポテンシャルとの類似度を示す値、上記式(l)中の「c」は、残差変化ポテンシャルと入力変化第二ポテンシャルの類似度を示す値、上記式(m)中の「e」は、入力変化第二ポテンシャルの大きさを示す値、上記式(n)中の「f」は、残差変化ポテンシャルと、入力変化第二ポテンシャルの類似度を示す値である。
さらに、調整パラメータ設定部26は、下記式(o)、(p)に上記各式の値を代入することで、残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルを好適に推測できる第一の調整パラメータα、及び、第二の調整パラメータβを算出する。
なお、上記式(o)、(p)中の「ae−b2」は、入力変化ポテンシャルと入力変化第二ポテンシャルの実効的な距離を示す値、式(o)中の「bf−ce」は、残差変化ポテンシャルにおいて、入力変化ポテンシャルに類似し入力変化第二ポテンシャルには類似しない差分類似度を示す値、式(p)中の「−af+bc」は、残差変化ポテンシャルにおいて、入力変化ポテンシャルに類似せず入力変化第二ポテンシャルに類似する差分類似度を示す値を示している。
また、上記式(5)中のSを最小化するにあたって、k´については、現在の反復回数であるk以下の任意の値を採ることができる。従って、過去(現在の反復回数よりも少ない反復回数)における入力変化ポテンシャルδVin k、及び残差変化ポテンシャルδVres kを利用して第一の調整パラメータ、及び第二の調整パラメータを算出することができる。このため、調整パラメータ設定部26は、より効果的に残差を収束させうる好適な値を算出し、第一及び第二の調整パラメータとして設定することができる。
〔物性演算部について〕
物性演算部30は、上述のように、演算結果として得られる電子ポテンシャルを制御部27から受け取り、この電子ポテンシャルに基づいて、前記対象となる固体や分子に関する電子密度分布、前記固体や分子を構成する原子の結合状態、原子間間隔やその配置、導電性、及び熱伝導性等といった物性について、予測される物性予測値を演算し(図2中、ステップS108)、出力デバイス12に出力させることができる。
図5は、電子の状態密度分布を算出した一例を示す図であり、図6は、対象とした固体等の原子間間隔やその配置等から原子配列をモデル化して表示した一例を示す図である。
このように、本実施形態の電子ポテンシャル演算装置10によれば、金属等の固体や分子における電子の状態密度や、原子配列等といった、物性についての物性予測値を演算することができる。
上記のように構成された本実施形態の電子ポテンシャル演算装置10によれば、新たな入力ポテンシャルを算出する際に用いる収束パラメータは、自身に含まれる第一の調整パラメータα、及び第二の調整パラメータβによる調整の自由度が高いので、調整パラメータ設定部26は、第一及び第二の調整パラメータについて、残差を収束させうる好適な値を容易に推定することができ、残差をより速やかに収束させるように、収束パラメータを好適に調整することができる。これにより、第一原理計算の演算の反復回数を効果的に減らすことができ、より効率よく速やかに電子ポテンシャルを演算することができる。
〔効果の確認について〕
本発明者は、本実施形態による電子ポテンシャル演算装置10によって、実際に電子ポテンシャルの演算を行い、他の方法で演算を行った場合と比較してその効果の検証を行った。
演算の対象としては、AlGalnAs系合金、64原子分とし、実施例としては、上記実施形態による装置10を用いて演算し、比較例としては、Kerker法に基づいて演算を行い、その演算の反復回数を比較することで評価した。その結果を下記表1に示す。
なお、演算に際して、第一の調整パラメータαは、0.5とし、第二の調整パラメータβは、表1に記載されている8水準に設定した。また、Kerker法については、同法の収束パラメータを示した上記式(b)中のPにβの値、Qにαの値を代入して演算を行った。
上記表1のように、第二の調整パラメータβが0.125、0.25の場合において、反復回数は、実施例、比較例共にそれぞれ46回と同一の結果であったが、その他の条件においては、全て、実施例の方が、反復回数が少ない結果が得られていることが判る。
この結果より、本実施形態による電子ポテンシャル演算装置によれば、反復回数を効果的に減らすことができ、より効率よく速やかに電子ポテンシャルを演算することができることが明らかとなった。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記式(1)において残差を収束させうる新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)を算出する場合、下記式(q)に示すように、入力ポテンシャル及び残差のそれぞれに、収束を加速するための項を加算することもできる。
上記収束を加速させるための項は、以下のように求めることができる。すなわち、上記式(q)は、下記式(r)のように表すことができる。さらに、式(r)中の入力ポテンシャルと残差を下記式(s),(t)のように仮定し、さらに、仮定した残差の大きさ(式(u)参照)を最小化するγk´を演算する。そして、演算されたγk´を下記式(s),(t)に代入することで、式(r)における入力ポテンシャル、及び残差を求めることができ、式(q)における収束を加速するための項をそれぞれ算出できる。
上記各式(q)〜(u)は、線形最小二乗法を用いて、入力ポテンシャルと残差との関係示すγk´を算出するものであり、これを利用して、残差の収束を加速させるものである。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の一実施形態に係る電子ポテンシャル演算装置の構成を示す図である。 本実施形態の電子ポテンシャル演算装置の具体的な動作を示したフローチャートである。 原子の位置の数値情報の入力を受け付けるためのディスプレイ表示の一例である。 図2中ステップS109における、新たな入力ポテンシャル(Vin k+1)を算出する際の動作を示したフローチャートである。 電子の状態密度分布を算出した一例を示す図である。 固体等の原子配列をモデル化して表示した一例を示す図である。
符号の説明
10 電子ポテンシャル演算装置
11 入力デバイス
12 出力デバイス
22 出力ポテンシャル演算部
23 残差演算部
24 判定部
25 入力ポテンシャル演算部
26 調整パラメータ設定部
27 制御部(繰り返し制御部)
30 物性演算部

Claims (7)

  1. 第一原理計算をフーリエ変換によって離散化して演算することで、入力ポテンシャルから出力ポテンシャルを算出し、前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルを演算するとともに、この新たな入力ポテンシャルに基づいて前記第一原理計算を反復することで前記残差を収束させ、電子ポテンシャルを得る電子ポテンシャル演算装置であって、
    初期値としての前記入力ポテンシャルを入力するための入力部と、
    前記入力ポテンシャルに基づいて第一原理計算により前記出力ポテンシャルを演算する出力ポテンシャル演算部と、
    前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を求める残差演算部と、
    前記残差が予め設定された目標値以下であるか否かを判定する判定部と、
    前記残差が前記目標値以下でないと判定された場合、前記新たな入力ポテンシャルを演算するための収束パラメータを調整するための調整パラメータを設定する調整パラメータ設定部と、
    前記調整パラメータ設定部により設定された調整パラメータから前記収束パラメータを演算するとともに、下記式(1)に基づいて、前記新たな入力ポテンシャルを演算する入力ポテンシャル演算部と、
    前記新たな入力ポテンシャルに基づいて、前記出力ポテンシャル演算部、前記残差演算部、前記判定部、前記調整パラメータ設定部、及び前記入力ポテンシャル演算部を繰り返し実行させて第一原理計算を反復する繰り返し制御部と、
    前記判定部によって前記残差が目標値以下であると判定された場合、前記繰り返し制御部による反復計算を停止させる制御部と、を備え、
    前記収束パラメータは、各フーリエ成分に対応する波数が大きい短波長側よりも前記波数が小さい長波長側において相対的に小さい値を採るフィルター項の逆数を、その分母の中の第一の項として含んでおり、
    前記調整パラメータは、前記第一の項に加えられる第二の項を構成する第一の調整パラメータと、前記第一の項に乗算される第二の調整パラメータと、を含んでいることを特徴とする電子ポテンシャル演算装置。
  2. 前記フィルター項は、n番目のフーリエ成分に対応する波数ベクトルの絶対値の2乗値である請求項1に記載の電子ポテンシャル演算装置。
  3. 前記第一の調整パラメータをα、前記第二の調整パラメータをβとしたとき、前記収束パラメータは、下記式(2)によって示される請求項1又は2に記載の電子ポテンシャル演算装置。
  4. 前記調整パラメータ設定部は、反復回数が一つ前の前記入力ポテンシャルをVin k-1、反復回数が一つ前の前記残差をVres k-1とすると、下記式(3),(4)にそれぞれ示す入力変化ポテンシャルδVin k、及び残差変化ポテンシャルδVres k、を演算するとともに、
    さらに、これらに基づいて、下記式(5)中のSを最小化するα、及びβを演算し、得られたα、及びβをそれぞれ、前記第一の調整パラメータ、及び前記第二の調整パラメータに設定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子ポテンシャル演算装置。
  5. 電子ポテンシャルに基づいて固体や分子の物性予測値の演算を行う物性予測値演算装置であって、
    前記固体や分子の電子ポテンシャルの演算を行うための前記請求項1〜4に記載の電子ポテンシャル演算装置と、
    これによって得られる電子ポテンシャルに基づいて、前記物性予測値の演算を行う物性演算部と、を有していることを特徴とする物性予測値演算装置。
  6. 第一原理計算をフーリエ変換によって離散化して演算することで、入力ポテンシャルから出力ポテンシャルを算出し、前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルを演算するとともに、前記新たな入力ポテンシャルに基づいて前記第一原理計算を反復することで前記残差を収束させ、電子ポテンシャルを演算する電子ポテンシャル演算処理をコンピュータが実行する方法であって、
    初期値としての前記入力ポテンシャルを演算して得るための入力ステップと、
    前記入力ポテンシャルに基づいて第一原理計算により前記出力ポテンシャルを演算する出力ポテンシャル演算ステップと、
    前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を求める残差演算ステップと、
    前記残差が予め設定された目標値以下であるか否かを判定する判定ステップと、
    前記残差が前記目標値以下でないと判定された場合、前記新たな入力ポテンシャルを演算するための収束パラメータが、各フーリエ成分に対応する波数が大きい短波長側よりも前記波数が小さい長波長側において相対的に小さい値を採るフィルター項の逆数を含む第一の項を分母に有しており、この第一の項に加えられる第二の項を構成する第一の調整パラメータと、前記第一の項に乗算される第二の調整パラメータと、を設定する調整パラメータ設定ステップと、
    前記調整パラメータ設定ステップにより設定された両調整パラメータから前記収束パラメータを演算するとともに、上記式(1)基づいて、前記新たな入力ポテンシャルを演算する入力ポテンシャル演算ステップと、
    前記新たな入力ポテンシャルに基づいて、前記出力ポテンシャル演算ステップ、前記残差演算ステップ、前記判定ステップ、前記調整パラメータ設定ステップ、及び前記入力ポテンシャル演算ステップを繰り返し実行させて第一原理計算を反復する反復ステップと、を有することを特徴とする電子ポテンシャル演算処理をコンピュータが実行する方法。
  7. 第一原理計算をフーリエ変換によって離散化して演算することで、入力ポテンシャルから出力ポテンシャルを算出し、前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を収束させうる新たな入力ポテンシャルを演算するとともに、前記新たな入力ポテンシャルに基づいて前記第一原理計算を反復することで前記残差を収束させ、電子ポテンシャルを演算する電子ポテンシャル演算プログラムであって、
    コンピュータに、
    初期値としての前記入力ポテンシャルを演算して得るための入力ステップと、
    前記入力ポテンシャルに基づいて第一原理計算により前記出力ポテンシャルを演算する出力ポテンシャル演算ステップと、
    前記入力ポテンシャルと前記出力ポテンシャルとの残差を求める残差演算ステップと、
    前記残差が予め設定された目標値以下であるか否かを判定する判定ステップと、
    前記残差が前記目標値以下でないと判定された場合、前記新たな入力ポテンシャルを演算するための収束パラメータが、各フーリエ成分に対応する波数が大きい短波長側よりも前記波数が小さい長波長側において相対的に小さい値を採るフィルター項の逆数を含む第一の項を分母に有しており、この第一の項に加えられる第二の項を構成する第一の調整パラメータと、前記第一の項に乗算される第二の調整パラメータと、を設定する調整パラメータ設定ステップと、
    前記調整パラメータ設定ステップにより設定された両調整パラメータから前記収束パラメータを演算するとともに、上記式(1)基づいて、前記新たな入力ポテンシャルを演算する入力ポテンシャル演算ステップと、
    前記新たな入力ポテンシャルに基づいて、前記出力ポテンシャル演算ステップ、前記残差演算ステップ、前記判定ステップ、前記調整パラメータ設定ステップ、及び前記入力ポテンシャル演算ステップを繰り返し実行させて第一原理計算を反復する反復ステップと、を実行させるための電子ポテンシャル演算プログラム。
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