JP5023474B2 - カロテノイド合成微生物の作製方法およびカロテノイドの製造方法 - Google Patents

カロテノイド合成微生物の作製方法およびカロテノイドの製造方法 Download PDF

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本発明は、カロテノイド合成微生物の作製方法およびカロテノイドの製造方法に関するものである。
本発明は、タイ、エビ、サケ等の養殖魚介類、鶏卵等の色揚げに有用であるカロテノイド、また、着色料や抗酸化剤として食品に利用されるアスタキサンチン等のカロテノイドの合成に有用なDNA鎖、および、このDNA鎖を導入した微生物を利用したアスタキサンチン等のカロテノイドの製造法に関するものである。
自然界においては植物、微生物等から600以上の異なるカロテノイドが同定されてきた。産業上有用なカロテノイドは主に化学合成法によって製造されているが、化学合成法では合成副原料の混入等好ましくない作用の可能性が危惧されている。また、消費者の嗜好は天然物由来のカロテノイドに向く傾向がある。一方で、天然物である植物等からの抽出には限界があり、必ずしも、効率的な工業製造法を確立しているとはいい難い。天然物カロテノイドの製造法として、微生物による発酵法がいくつかの事例が報告されているが経済的工業規模の製造に十分な量のカロテノイドを生産していない。カロテノイドに限らず、一般に、微生物による機能性物質の生産を試みる場合、広範なスクリーニングを経て発酵主体となる微生物を選定する。その後、多くの場合、カロテノイドを産生する野生の微生物では産生量が少ないため、古典的な化学処理剤による変異育種を経て高生産株を分離し、製造研究等が行われる。
有用カロテノイドを産生する微生物として、横山らによってアグロバクテリウム属(後に、パラコッカス(Paracoccus) 属に属する細菌として再分類された)海洋細菌が報告された(非特許文献1)。同株は機能性カロテノイドであるアスタキサンチンを高含量で合成することが特徴である。上述した様に、変異処理によりパラコッカス(Paracoccus )属細菌のアスタキサンチン等の産生量を増加させることは可能であり、産生量が向上したTSN18E7株(特開2005−58216号公報参照)が、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P‐19746号として寄託されている。
カロテノイドの生合成経路は様々な酵素から構成され、多くの研究者により、それらをコードする遺伝子が解析されてきた。代表的な経路を例示すると、カロテノイドは基本代謝物であるメバロン酸を出発物質として、ステロイドやテルペノイドと途中まで共通なイソプレノイド生合成経路によって合成される。イソプレノイド基本生合成系によって生じた炭素数C15のファルネシルピロリン酸(FPP)は、C5のイソペンテニル2リン酸(IPP)と縮合することにより、C20のゲラニルゲラニル2リン酸(GGPP)が合成される。次に、2分子のGGPPが縮合して、最初のカロテノイドである無色のフィトエン(phytoene)が合成される。フィトエンは、一連の不飽和反応により、リコペン(lycopene)に変換され、さらに、このリコペンは環化反応によりβ-カロテン(β-carotene)に変換される。次いで、β-カロテンに水酸基やケト基が導入され種々のアスタキサンチンに代表されるキサントフィルが合成されると考えられている(図1)。
このような遺伝子レベルでの知見が得られたことから、遺伝子組換え技術を利用してカロテノイド合成の向上を企図した研究例がある。例えば、Chia-wei Wang et al., Biotechnol. Prog., 16: 922-926(2000); Claudia Schmidt-Dannert et al., Nat. Biotechnol., 18: 750-753(2000); Daisuke Umeno et al., Appl. Environ. Microbiol., 69: 3573-3579(2003)である。これらの研究は宿主にカロテノイドを合成しない大腸菌を利用しており、カロテノイドの生産が低く工業生産に利用することは困難であると考えられる。他方で、カロテノイドを産生する細菌にカロテノイド遺伝子を導入することにより、カロテノイド合成量の向上に成功したという報告がある(特許文献1)。しかしながら、依然として、作製された遺伝子組換え株のカロテノイド合成量は低く工業生産に利用することは困難と考えられる。
Yokoyama, A., H. Izumida, and W. Miki, Procuction of astaxanthin and 4-ketozeaxanthin by the marine bacterium, Agrobacaterium aurantiacum, Biosci. Biotechnol. Biochem., 58: 1842-1844(1994). Norihiko Misawa, Yoshiko Satomi, Keiji Kondo, Akihiro Yokoyama, Susumu Kajiwara, Tochiko Saito, Takeshi Ohtani, and Wataru Miki, Structure and functional analysis of a marine bectarial carotenoid biosynthesis gene cluster and astaxanthin biosynthetic pathway proposed at the gene level, J. Bacateriology, 177: 6575-6584(1995). Eric A. Johnson, and William A. Schroeder, Microbial Carotenoids, Advances in Biochemical Engineering Biotechnology, 53: 119-178(1995). P. C. Lee, and Schmidt-Dannert, Metabolic engineering towards biotechnological production of carotenoids in microorganism, 60: 1-11(2002). Kovach, M. E. et al., GENE166, 175-176(1995). R. Simon, U. Priefer, and A. Puhler, A broad host range mobilization system for in vivo genetic engineering: transposon mutagenesis in gram negative bacteria, BIO/TECHNOLOFY, 1: 784-791(1983). Cedric Y. Szpiper, Michel Faelen, and Martine Couturier, Mobilization function of the pBHR1 plasmid, a derivative of the broad-host-range plasmid pBBR1, J. Bacteriology, 183: 2101-2110(2001). 特表2004-527265号公報 特許第3403381号公報 特願2005-106045号明細書
本発明の目的は工業生産規模においてカロテノイド生産を行うことができる微生物を作製することである。さらには、新規カロテノイド生産株を利用してカロテノイド生産を行い、該カロテノイド類を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、カロテノイド合成細菌であるパラコッカス(Paracoccus)sp. MBIC1143株のカロテノイド合成遺伝子をクローニングし、適当なプラスミドベクターに組換え、接合伝達等の遺伝子導入技術により、パラコッカス(Paracoccus)sp. 野生株、あるいは変異処理によりカロテノイド合成能が向上した変異株若しくはカロテノイド合成寛容株に、カロテノイド合成遺伝子が挿入されたプラスミドベクターを導入し、カロテノイド合成遺伝子にコードされているカロテノイド合成酵素を発現させ、カロテノイド合成量を向上させることを見出した。
すなわち、本発明者らは、(a)β-イオノン環の4位のメチレン基をケト基に変換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtW)、(b)4−ケト−β−イオノン環の3位および/またはβ−イオノン環の3位の炭素に一つの水酸基を付加する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtZ)、(c)リコペンをβ−カロテンに転換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtY)、(d)フィトエンをリコペンに転換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtI)、(e)プレフィトエン合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtB)、(f)ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtE)からなる群より選択されるDNA鎖を、パラコッカス(Paracoccus)sp. MBIC1143株に導入すると、アスタキサンチン等のカロテノイド含量が飛躍的に増量することを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)の群から選択されるDNA鎖をパラコッカス(Paracoccus)sp.等のカロテノイド産生微生物に導入して該形質転換微生物を培地で培養することを特徴とする、カロテノイドの生成増大方法。
(2)カロテノイド合成活性を有するポリペプチドが以下の(i)または(ii)のポリペプチドである(1)のカロテノイド生成増大方法。
(i)配列番号2、3、4、5、6又は7に示したアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(ii)配列番号2、3、4、5、6又は7に示したアミノ酸配列において実質的に相同なアミノ酸配列を有するポリペプチド。
本発明はまた、下記(3)から(4)のカロテノイド製造方法。
(3)上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)の群から選択されるDNA鎖をパラコッカス(Paracoccus)sp.等のカロテノイド産生微生物に導入して該形質転換微生物を培地で培養することを特徴とする、カロテノイドの製造方法。
(4)カロテノイド合成活性を有するポリペプチドが以下の(i)または(ii)のポリペプチドである(1)のカロテノイド製造方法。
(i)配列番号2、3、4、5、6又は7に示したアミノ酸配列を有するポリペプチド
(ii)配列番号2、3、4、5、6又は7に示したアミノ酸配列において実質的に相同なアミノ酸配列を有するポリペプチド。
本発明はまた、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)の群から選択されるDNA鎖、若しくは、該DNA鎖が挿入されたプラスミドベクターをパラコッカス(Paracoccus)sp.等のカロテノイド産生微生物に導入する形質転換方法に関するものである。さらに、本発明はプラスミドベクターを導入することにより、細胞内で起こるプラスミドの複製、かつ/あるいは、プラスミドにコードされるカロテノイド合成遺伝子により生産されるカロテノイド類により、細胞増殖の影響を受けない細胞にプラスミドを導入することにより、カロテノイド生産が向上する微生物に関するものである。
本発明によれば、微生物によるカロテノイドの生合成において、その生産量を有意に向上させるDNA鎖、ならびに該DNA鎖をカロテノイド生産微生物に導入し、発現させることにより、その微生物のカロテノイド生産量を数倍上げることができる方法が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
「従来の技術」の項で詳しく述べたように、海洋細菌パラコッカス(Paracoccus)sp.等のカロテノイド産生細菌などのカロテノイド生合成遺伝子を導入することにより、大腸菌などの微生物は、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、β-カロテン、リコペンなどの有用カロテノイドを生産するようになる。一方、価格的に有機合成法に競合するためには、カロテノイドの生産量をできるだけ増大させる必要がある。本発明による(a)β-イオノン環の4位のメチレン基をケト基に変換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtW)、(b)4−ケト−β−イオノン環の3位および/またはβ−イオノン環の3位の炭素に一つの水酸基を付加する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtZ)、(c)リコペンをβ−カロテンに転換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtY)、(d)フィトエンをリコペンに転換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtI)、(e)プレフィトエン合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtB)、(f)ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtE)からなる群より選択されるDNA鎖は、このカロテノイド、特にアスタキサンチンの生産量の増量に極めて有用である。現在の進んだ遺伝子工学技術により、酵素等の遺伝子の発現レベルを上げることにより、その遺伝子がコードする蛋白質の生産量を上げることは比較的容易である。代謝概念上、カロテノイド合成系の上流に位置するIPPイソメラーゼ遺伝子の導入により発現細胞においてカロテノイド生産が有意に増大したという報告がある(特許文献2)。IPPイソメラーゼ遺伝子を導入することによりカロテノイド生産量の増大に成功したのは、そのことによりFPPまでの上流の代謝経路(図1)が太くなり、結果的にFPPの供給量が増えることによりカロテノイドの増量に結びついたとされている。
しかしながら、本発明の目的の一つであるカロテノイド、特に、アスタキサンチンの製造を念頭に置くと、上流遺伝子のみではその後の代謝反応が進まずβ-カロテン等の代謝中間体が蓄積し、充分な生産量を得られない。すなわち、アスタキサンチン合成の中間体であるリコペン、β-カロテン、エキネノン、β-クリプトキサンチン、3‘−ヒドロキシエキネノン、ゼアキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、カンタキサンチン、フェニコキサンチン、4−ケトゼアキサンチンおよびアスタキサンチン等の総カロテノイド量に占めるアスタキサンチン量を増加させることが肝要である。本発明者らは、アスタキサンチン代謝中間体に留まることなく、アスタキサンチンを充分に生産させるため、IPPイソメラーゼの利用とは異なり、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)の群から選択されるDNA鎖を導入することにより、発現細胞中で代謝中間体の蓄積なく、アスタキサンチンが充分量合成されることを見出した。さらに、本発明者らは、(f)のDNA鎖を導入することがカロテノイドの増大に効果的であると考察した。すなわち、IPPイソメラーゼの導入による発現量の増大と同様な思想で、代謝概念上の上流合成酵素と考えられるゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素をコードするDNA鎖を導入することにより、ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素の発現量が増大し、生産物であるゲラニルゲラニル2リン酸がカロテノイド代謝系に供給され、一連のカロテノイド合成酵素により総カロテノイド量が増大することを見出した。これにより(a)、(b)、(c)、(d)、(e)のDNA鎖と(f)のDNA鎖を組合わせることでアスタキサンチン合成量が飛躍的に向上する。さらには、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)のDNA鎖を組合わせることで所望のカロテノイドを選択的に合成しうることを見出した。例えば、β-カロテンを選択的に合成するためには(c)、(d)、(e)の組み合わせで行えばよく、さらに、生産量を増大させるには(f)を組合わせることで達成可能である。ゼアキサンチンを選択的に合成するためには(b)、(c)、(d)、(e)の組み合わせで行えばよく、さらに、生産量を増大させるには(f)を組合わせることで達成可能である。リコペンを選択的に合成するためには(d)、(e)の組み合わせで行えばよく、さらに、生産量を増大させるには(f)を組合わせることで達成可能である。(a)、(b)の組み合わせを用いることができれば、β-カロテンの酸化反応が選択的に進み、アスタキサンチンへの効率的な選択合成が可能である。さらに、アスタキサンチンの生産量を増大させるためには(d)、(e)、(f)の組合わせで達成可能である。
本発明においてDNA鎖の組合わせとは、それぞれのDNA鎖を独立に用いても良いが、遺伝子工学的に直列に連結させてもよい。連結させる組み合わせ数は、その組合わせにおいて、所望する機能が最大となる様に行えばよい。DNA鎖を独立に用いる場合は、適当なプラスミドベクターに挿入してもよい。プラスミドベクターは導入される宿主細胞内で機能すればよく、適当なプラスミドベクターを単独でも、和合性の制限を受けない限り複数種用いてもよい。
本発明において、「カロテノイド」には、フィトエン、リコペン、β-カロテン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、アドニキサンチン、クリプトキサンチン、エキネノン、アドニルビン、およびその組合わせである。好ましくは、アスタキサンチンである。
すなわち、本発明は、カロテノイド、特にアスタキサンチンの生産量を増大させる特性を有していてアミノ酸配列が実質的に、β-イオノン環の4位のメチレン基をケト基に変換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtW)、4−ケト−β−イオノン環の3位および/またはβ−イオノン環の3位の炭素に一つの水酸基を付加する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtZ)、リコペンをβ−カロテンに転換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtY)、フィトエンをリコペンに転換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtI)、プレフィトエン合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtB)、ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA鎖(crtE)からなる群より選択されるDNA鎖、およびこのDNA鎖をカロテノイド産生微生物に導入して該形質転換微生物を培地で培養し、培養物のカロテノイド含量を増量することを特徴とする、カロテノイドの製造法を提供するものである。
本発明のもう一つの態様は、カロテノイド産生細胞の作製方法である。この方法は細胞内で発現する一連のカロテノイド合成に関する酵素をコードするDNA鎖を細胞に導入する段階、および、DNA鎖導入前の細胞によって産生されるカロテノイドの産生レベルが約1.1から1,000倍でカロテノイドを産生する細胞を作製、選択する方法である。
本発明によるDNA鎖は、前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)に記載されるDNA鎖、またはそれらとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA鎖である。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとは、プローブが典型的には核酸の複雑な混合物中で、その標的配列にハイブリダイズするが、他の核酸にはハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる環境においては異なることになる。より長い配列では、特異的に、より高温でハイブリダイズする。一般に、高度にストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHで、特異的配列の熱融解温度よりも約5〜10℃低くなるように選択される。低ストリンジェントな条件は一般的には、融解温度よりも約15〜30℃低くなるように選択される。融解温度は、規定のイオン強度、pH、核酸配列で標的核酸に対して相補的なプローブにおいて50%が平衡状態で占有される温度である。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸でも、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが遺伝暗号によって許容される最大コドン縮重を用いて作製される場合に起こる。そのような場合、核酸は典型的に中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。
「実質的同一」とは、二つの核酸またはポリペプチドに関して、下記の配列比較アルゴリズムの一つを用いて、または手動整列および目視試験により測定し、比較ウインドウにおいて、最大対応で整列化させた場合に、少なくとも60%、好ましくは80%、より好ましくは90%を超えるヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する配列または部分配列を意味する。この定義は、その配列の相補体が試験配列にハイブリダイズする配列も意味する。
配列比較のために、典型的には一つの配列が基準配列として働き、それに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および基準配列をコンピューターに入力し、必要があれば部分座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。プログラムのデフォルト値を用いてもよく、または代わりのパラメータを指定することもできる。次いで、配列比較アルゴリズムが、プログラムのパラメータに基き、基準配列に対する試験配列の配列同一性の割合を計算する。比較のための配列整列化の方法は当該技術分野において公知である。比較のための、最適配列は、例えばSmithおよびWatreman,Adv. Appl. Math., 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol., 48:443(1970)の相同性整列化アルゴリズム、PersonおよびLipman、Proc. Natl. Acd. Sci. USA, 85:2444(1988)の類似性詮索法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実施、または手動整列および目視試験により実施することができる。
有用なアルゴリズムの一例はPILEUPである。PILEUPは連続性のペアワイズアライメントを用いて関連配列群から多重配列を作製し、関係と配列同一性の割合を示す。PILEUPはアライメントを作製するために用いるクラスター関係を示すツリーまたはデンドグラムもプロットする。配列同一性の割合および配列類似性を求めるのに適したアルゴリズムのもう一つの例はBLASTアルゴリズムである(Altschulら、J. Mol. Biol., 215: 403-410(1990))。このアルゴリズムではワード長は固定されており、蛋白質では3、核酸では11(配列が全6通りの読み枠で翻訳されるときは3)である。この長さは、充分有意なものに対して高いワードスコアーを与えることのできる最小値であり、短くて有意なパターンを見逃すほど長くない。また、BLASTアルゴリズムは二つの配列の類似性について統計学的解析も行う。
本発明によるDNA鎖がコードするポリペプチドは、アミノ酸配列が実質的に配列番号2、3、4、5、6および7の群から選択される配列を有するものである。本発明において、これらのDNA鎖によってコードされるポリペプチドは、前述のようなカロテノイド増量活性を有する限りアミノ酸のいくつかについて欠失、置換、付加等の変化があってもよい。このことは、「アミノ酸配列が実質的に配列番号2、3、4、5、6および7の群から選択される配列を有する」ということと対応している。例えば、これらの酵素の第一番目のアミノ酸(Met)が欠失しているものなどもこのアミノ酸配列の変化によるポリペプチドないしは酵素に包含される。なお、各ポリペプチドをコードする本発明DNA鎖は、配列番号2、3、4、5、6、7に示したアミノ酸配列をコードする塩基配列をもつものの他に、縮重コドンについてのみ異なる同一のポリペプチドをコードする縮重異性体を包含する。
前述の蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA鎖を取得する方法の一つの手段は核酸合成の方法に従って、その鎖長の少なくとも一部を化学合成することであるが、結合アミノ酸が多数であることを考慮すると、化学合成法よりもパラコッカス(Paracoccus)sp.などのゲノムDNAを調製し、適当な制限酵素、例えばSau3A Iにより制限酵素処理を行いランダムなフラグメントに断片化し、コスミド法による大腸菌からなるライブラリーを作製し、適当なプローブによるハイブリダーゼション法を用いることが好ましいと言える。さらに、適当なPCRプライマーを作製できる場合には、調製したゲノムDNAを鋳型とし、PCR法により所望のDNA鎖を増幅することができる。
DNA鎖はそのまま用いて適当な細胞に形質転換しても良いが、プラスミドベクターに挿入して利用することもできる。プラスミドベクターへの挿入は、そのプラスミドベクターの適当な位置に遺伝子工学的に挿入すればよい。適当な位置とはプラスミドベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、あるいは伝達性に関わる領域を破壊しなければよい。
プラスミドベクターに挿入する際は上述のDNA鎖をそのまま遺伝子工学的に挿入しても良いが、プロモータ機能を有するDNA鎖を付加させても良い。プロモータとは、蛋白質のコード領域または機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指し、大腸菌で機能するlacプロモータ、trcプロモータ等を例示することができる。DNA鎖を海洋細菌で発現させる場合において、細胞内において機能するプロモータ配列を含むDNA鎖であれば何ら制限されない。好ましくは、海洋細菌由来のプロモータが好ましい。さらに、好ましくは配列番号19、20または21のプロモータを利用することにより、挿入されるカロテノイド合成酵素をコードする遺伝子を発現させることができる。または、配列番号19,20または21のポリヌクレオチドの一部を利用してもよい。部分領域は知られているプロモータ配列を比較することにより特定することができる。さらには、これらの配列に塩基を挿入、置換してもよい。さらには、ランダムに変異を導入して、プロモータ活性が向上したポリヌクレオチドを利用してもよい。一般に、酵素蛋白質等のコード領域はプロモータ配列に対して3‘側に配置される。商業的なプラスミドベクターは予めプロモータ配列が導入されており、海洋細菌内でそのプロモータが機能するのであれば利用することもできる。また、DNA鎖を挿入する方向も挿入するDNA鎖が機能する方向であればよい。
プラスミドベクターとしては形質転換する細胞内で安定に存在し、複製することができる特性であれば良い。また、プラスミドベクターとしては大腸菌の形質転換に利用されるpUC系、pBR系等、あるいは対象細胞内で複製可能なプラスミドベクターとのシャトルベクターを挙げることができる。詳しくは成書(Barbara E. Funnell, PLASMID BIOLOGY, ASM press)に記載されている。本発明におけるパラコッカス(Paracoccus)sp. においては複製されるプラスミドベクターは特に知られていない。このように、確立された宿主ベクター系が存在しない場合には広宿主域(Broad-Host-Range)プラスミドベクターを用いることができる。該ベクターとしてはRK2、R751、RSF1010、R1162、pCU1、R46、pSA、R388、RA1がある(Barbara E. Funnell, PLASMID BIOLOGY, ASM press)。さらには、広宿主域ベクターの複製領域を利用して適当なプラスミドベクターに挿入し、シャトルベクターとして利用することもできる。例えば、RK2ヘ゛クターの複製領域をpUC系ベクターの適当な位置に挿入し、大腸菌を利用することができるシャトルベクターを例示できる。また、広い宿主で複製することができDNAサイズが比較的小さいpBBR系プラスミドを挙げることもできる。pBBR系プラスミドとしてはpBBR122、pBBR1MCS、pBBR1MCS2、pBBR1MCS3、pBBR1MCS4、pBBR1MCS5(非特許文献5)を挙げることができる。これらのプラスミドベクターは抗生物質マーカ等が異なっており、形質転換する細胞の抗生物質耐性を評価した後に適当に選択して利用すればよい。さらに、形質転換対象となる細胞が保有するプラスミドを利用しても良い。
上述の様な本発明DNA鎖、あるいは適当なプラスミドベクターに挿入したDNA鎖を、適当なカロテノイド産生微生物に導入することによりカロテノイド含量を増大させることができる。本発明においては、例えば、次の発現ベクターを含む。すなわち、pBBR1MCS2CRT、pBBR1MCS2CRTrv、pBBR1MCS2CRTWZ、pBBR1MCS2CRTWZrv、pBBR1MCS2PcrtE1crtE、pBBR1MCS2PcrtE2crtE、pBBR1MCS2PcrtE1crtECRT、およびその組合わせ。これらのベクターは後述の実施例により定義される。
好適な宿主細胞は、菌類または細菌ファミリー内において広範に見出すことができ、広範な範囲の温度、pH、および溶媒耐性で増殖する生物宿主である。例えば、細菌、酵母、および糸状菌のいずれかは、本発明のDNA鎖の発現に適切な宿主である。細胞の供給材料にかかわらずDNA鎖の転写、翻訳および蛋白質の生合成機構は同じであるため、培養物の培養に使用される炭素供給材料にかかわらず、機能的遺伝子は発現される。大量な大規模微生物の培養および機能的遺伝子発現は、広範な単純あるいは複雑な炭水化物、有機酸およびアルコール、メタンなどの飽和炭化水素または光合成若しくは化学合成独立栄養宿主は二酸化炭素を利用することができる。しかし、機能的遺伝子は、窒素、リン、硫黄、酸素、炭素または無機物を含む任意の微量栄養素の形態および量を含みうる特定の培養条件によって、調節、抑制または低下させることができる。さらに、機能的遺伝子の調節は、培養液に添加され、典型的には栄養またはエネルギー源とみなされない特定の調節物質によって達成することができる。
宿主の例としては、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ピキア(Pichia)、キャンディダ(Candida)、ハンセヌラ(Hansenula)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、サルモネラ(Salmonella)、バシラス(Bacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、エリスロバクター(Erythrobacter)、クロロビウム(Chlorobium)、クロマチウム(Chromatium)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、サイトファーガ(Cytophaga)、ロドバクター(Rhodobacter)、ロドコッカス(Rhocdococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、コリネバクテリア(Corynebacteria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、デイノコッカス(Deinococcus)、大腸菌(Escherichia)、エルビニア(Erwinia)、パントエア(Pantoea)、シュードモナス(Pseudomonas)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methylococcus)、メチロシヌス(Methylosinus)、メチロミクロビウム(Methylomicrobium)、メチロシスチス(Methylocystis)、アルカリジェネス(Alcaligenes)、シネコシスチス(Synechocystis)、シネココッカス(Synechococcus)、アナベナ(Anabaena)、ミクソコッカス(Myxococcus)、チオバシラス(Thiobacillus)、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、パラコッカス(Paracoccus)およびクレブシーラ(Klebsiella)などの微生物種が挙げられる。好ましくはParacoccus属に属する細菌であり、これらは16S rRNAをコードするDNA配列を指標にすれば当業者であれば簡便に同定することができる。より好ましくはカロテノイド産生量が報告されているパラコッカス(Paracoccus)sp.MBIC1143株である。パラコッカス(Paracoccus)sp.MBIC1143株の16S rRNAをコードするDNA塩基配列は公表されている。例えば、公的データベースであるNational Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のアクセション番号AB008114を参照すればよい。パラコッカス(Paracoccus)sp.MBIC1143株の16S rRNAをコードするDNA鎖の塩基配列を配列番号24に示す。さらに好ましくはパラコッカス(Paracoccus)sp.MBIC1143株から誘導した変異株であるTSN18E7株(特開2005−58216号公報参照)、TSTT001株(特願2005−314667号明細書参照)である。特に、カロテノイド類の細胞内蓄積により細胞増殖に関わる各種代謝系に調節を受けない変異誘導株である。すなわち、変異処理等により調節が解除された変異株である。細胞内においては、特定の代謝産物が蓄積された場合、その代謝産物によりフィードバック阻害等が起こり、引き続きその代謝産物の合成が停止することがある。「調節の解除」とは、細胞内における調節機構を分断することである。工業的にはアミノ酸のリジン発酵等に成功例がある。変異処理についてはニトロソグアニジン、エチルメタンスルホン酸、紫外線、放射線等の当業者では周知の変異処理剤を利用して行えばよい。調節が解除された株は自然突然変異でもよい。あるいは、変異処理後の変異株、自然突然変異株をカロテノイド類の代謝アナログを利用した選択培地を利用して分離取得してもよい。代謝アナログとは、カロテノイドに対して化学構造的に類似あるいは細胞内における各種反応系のおいてカロテノイドと同様な生理反応をしめす物質をいう。代謝アナログの一例として、β-ヨノン(ionone)、α-ヨノン(ionone)を例示することができる。さらには、宿主細胞の遺伝子発現チップを作製し、各種、培養条件下における発現プロファイルを詳細に解析し、カロテノイドが高濃度に蓄積した環境下における遺伝子発現プロファイルを基にして遺伝子ノックアウト、ノックイン株を作製、利用することもできる。
以下は、好ましい微生物への遺伝子導入法の概要について記載したものである。大腸菌等の微生物への外来遺伝子の導入および発現のための手順ないし方法は、本発明において下記したところ以外のものにおいても、遺伝子工学の分野により慣用されているものを含み、その手法ないし方法(たとえば、“Vectors for cloning genes”, Method in Enzymology, 216, p.469-631, 1992, Academic Press, および、”Other bacterial systems”, Method in Enzymology, 204, p.305-636, 1991, Academic Press)に準じて実施すればよい。具体的にはヒートショック法、エレクトロポレーション法等を挙げることができる。
本発明におけるパラコッカス(Paracoccus)sp.への遺伝子導入法については確立された技術は知られていない。こういった場合、温和な条件下で遺伝子を導入する方法として大腸菌接合伝達法を挙げることができる。接合伝達法は、菌同士の接合によってプラスミドを供与菌から受容菌へ導入する方法であり、受容菌が受けるダメージが少ないという利点がある。大腸菌接合伝達法には二親伝達法と三親伝達法の2種類があり、前者の二親伝達法では自己伝達能を担うtra領域が染色体に組み込まれた大腸菌S17-1株をプラスミド供与菌とし、受容菌と共培養することで、traの働きによりプラスミドを供与菌から受容菌に導入することができる(非特許文献6)。さらに、mob遺伝子(非特許文献7)を有するプラスミドベクター(例、上述のpBBR1MCS)を利用した場合、効率よく受容菌へプラスミドを導入することができる。三親伝達法はヘルパープラスミド(例、RK2)を保持させた大腸菌と適当なプラスミドベクターを保持させた大腸菌、遺伝子を導入する細菌を混合して接合する方法である。
いずれの方法においても、メンブランディスク上で、緩衝液等の媒質中に細胞を一定温度で混合した後、フィルター上で一定時間インキュベートするというものである。これらの接合条件は、限定的なものではないが、通常、温度は20〜30℃、好ましくは25℃である。また、インキュベートする時間は、一般に、数時間から数日間である。大腸菌と遺伝子を導入する細菌との混合比は特に限定されない。接合すべき大腸菌、酵母が存在していれば例え微量でも接合体が得られ、それを分離、培養すれば増殖できるからである。なお、効率的な接合を行うには、例えば、大腸菌と遺伝子を導入する細菌との割合は1:1あるいは0.1:1で行えばよい。
接合伝達後は伝達されたことに基く接合伝達体の特性を利用して、他の細胞と分離することができる。例えば、利用したプラスミドベクターに挿入された抗生物質耐性を利用して、プラスミドベクターが伝達された接合伝達体だけを増殖させることにより分離することもできる。これらの方法はいずれも当業者にとっては周知である。さらに、接合伝達の供与体である大腸菌の増殖を抑える抗生物質の組合わせ利用すれば、さらに、接合伝達体の効率的な選択が可能である。抗生物質はカルベニシリン(Carbenicillin)、アンピシリン(Ampicillin)、セファゾリン(Cefazollin)、ピペラシリン(Piperacillin)、ホスホマイシン(Fosfomycin)、ゲンタマイシン(Gentamicin)、ストレプトマイシン(Streptomycin)、ネオマイシン(Neomycin)、アミカシン(Amikacin)、テトラサイクリン(Tetracyclin)、エリスロマイシン(Erythromycin)、リンコマイシン(Lincomycin)、リファンピシリン(Rifampicin)、ナリジク酸(Nalidixic acid)、ノボビオシン(Novobiocin)を例示することができる。接合伝達体の分離の確認は、適当な培養液で培養後、プラスミド抽出、PCR等で確認することができる。
上述した微生物への遺伝子導入および発現のための手法ないし方法によって、カロテノイド合成遺伝子群を導入し、発現させることにより多量のカロテノイドを生産できる微生物を得ることが可能となる。
これらの形質転換株を用いて、適当な培養培地を使用することにより、各種カロテノイドが細胞内に蓄積させることができる。カロテノイドを回収するためには培養液からカロテノイド蓄積微生物を集菌し、適当な有機溶媒により抽出すればよい。有機溶媒はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、クロロフォルム、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド等がよい。好適にはアセトンである。さらには液体クロマトグラフィー等を利用して高純度に分離することも可能である。液体クロマトグラフィーの分離原理としてはイオン交換、疎水相互作用、分子篩い等をあげることができる。好ましくは逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィーである。
以下の実施例は、さらに本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。なお、ここで用いられた通常の遺伝子組換え実験は特に言及されていない場合は、標準的な方法に(Sambrook, J., Fritch, E. F., Maniatis, T., “Molecular cloning 3rd edition”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, )基いている。
パラコッカス属細菌(Paracoccus)MBIC1143株由来のゲノムDNAの調製とカロテノイド合成遺伝子クローニング
パラコッカス属細菌MBIC1143株をOEG培地(2 g/Lのトリプチケースペプトン、1 g/Lの酵母抽出液、8.8 g/LのNaCl、0.73 g/Lの硫酸マグネシウム・7水和物、3.6 g/Lのリン酸二カリウム・無水、1.4 g/Lのリン酸一カリウム、1 g/LのD-グルコース)を用いて25℃(回転振とう120 rpm)にて3日間培養した。パラコッカス属細菌MBIC1143株は株式会社海洋バイオテクノロジー研究所から分譲を受けた。
ゲノムDNAはGentra社製キット(Puregen Genomic DNA isolation kit)を使用して調製した(約50 ng/ml)。この調製DNAをテンプレートにし、PCRによりカロテノイド合成遺伝子を増幅した。なお、パラコッカス属細菌(Paracoccus)MBIC1143株のカロテノイド合成遺伝子群を構成している遺伝子(crtW, crtZ, crtY, crtI, crtB, crtE)の塩基配列は非特許文献2および特許文献3に記載されている。これらの公表データを参照し、上記遺伝子を含む塩基配列を作成した。配列番号1に、7,029塩基の配列を示す。また、図1に遺伝子クラスターの構成を示す。PCRプライマー(配列番号13:5’-gcggatccggcgaccttgcggcgctg-3’および配列番号14: 5’-cgggatcctgtcgcggtccctgggg-3’)は非特許文献2を参考に作製した。PCRは調製DNA 1.0 μLに、水13.5 μL、2×High GC緩衝液(タカラバイオ社製)を25 μLをそれぞれ添加し、94℃で10 分間加熱した。氷冷後、dNTP 8 μL、配列番号8の10 pmol/μLのフォワードプライマー 1.0 μL、配列番号9の10 pmol/μLリバースプライマー1.0 μLを添加し、最後にexTaqDNAポリメラーゼ (タカラバイオ社製)0.5 μLを加えた。反応は94℃、30秒のステップ、次いで60℃、30秒の第2のステップ、最後に72℃、4分の第3ステップを30サイクル行い、72℃、10 分間反応させた。得られたPCR産物をフェノールクロロホルム処理後、0.9%のアガロース電気泳動を行い、目的産物(約5.4 kbase)抽出精製(キアゲン社製QIAgen Gel Extraction Kit)した。塩基配列を配列番号8に示す。精製したDNA (PCRプライマーにて制限酵素BamHIサイトを導入)を制限酵素BamHIで処理し、フェノールクロロホルムおよびエタノール沈殿にて精製した。次いで、この制限酵素処理DNAをpUC19プラスミドベクター(タカラバイオ社製)のBamHIサイトにライゲーション挿入し、ヒートショック法による遺伝子導入を経て、100 μg/mlのカルベニシリンを含むLB(Luria-Bertani)寒天培地により大腸菌JM109株を形質転換した。
任意の形質転換株をLB培地で培養し(37℃、18時間)、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いてプラスミド抽出を行った。プラスミドを制限酵素BamHIで処理したところ、先のインサートを確認することができた。パラコッカス属細菌のカロテノイド合成遺伝子がクローニングされたプラスミドベクターをpUCCRTとした。作製したプラスミドの構造を図3に示す。
pUCCRTは開示した特願2005-106045の方法に従い、大腸菌内においてカロテノイド合成活性を示すことを確認した。
パラコッカス属細菌発現ベクターの作製
プラスミドベクターpUCCRTを制限酵素BamHIで処理し、カロテノイド合成遺伝子断片(約5.4 kbase)を得た。次いでこの断片を広宿主域ベクターpBBR1MCS2のBamHIサイトに挿入した。ヒートショック法により大腸菌JM109株に遺伝子導入を行い、50 μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地により形質転換を行った。カナマイシン耐性を獲得した任意の形質転換株をLB培地で培養し(37℃、18時間)、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いてプラスミド抽出を行った。プラスミドを制限酵素BamHIで処理したところ、先のインサートを確認することができた。インサート断片の挿入方向は2種類ある。すなわち、pBBR1MCS2ベクター中のlacプロモータとインサート断片の転写方向が正方向であるベクター(pBBR1MCS2CRT)および逆方向のベクター(pBBR1MCS2CRTrv)である。図4に作製したベクターの構造を示す。
カロテノイド合成遺伝子のパラコッカス属細菌内での同種発現
カロテノイド合成遺伝子断片がクローニングされたpBBR1MCS2CRTおよびpBBR1MCS2CRTrvのそれぞれのベクターをヒートショック法により大腸菌S17-1株に遺伝子導入を行い、50 μg/mlのカナマイシン、10 μg/mlのストレプトマイシンを含むLB寒天培地により形質転換を行った。カナマイシン耐性を獲得した任意の形質転換株を同LB培地で培養し(37℃、18時間)、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いてプラスミド抽出を行い、プラスミドが導入されたかどうか確認した。次いで、制限酵素BamH I処理を行い、大腸菌S17-1株内でプラスミドが正しく複製されたかどうか確認した。2種類のプラスミドベクターはそれぞれ大腸菌S17-1株にて組換え等起こることなく複製されていた。
カロテノイド合成遺伝子が挿入されたpBBR1MCS2CRTプラスミドベクターを保持する大腸菌S17-1株を50 μg/mlのカナマイシン、10 μg/mlのストレプトマイシンを含むLB培地で培養し(37℃)、対数増殖期の菌体を含む培養液を得た。濁度(OD660 nm)を測定し、0.1になるように同培地で希釈した。並行して、パラコッカス属細菌も実施例1のOEG培地で培養(25℃)し、対数増殖期の菌体を含む培養液を得た。同様に濁度を測定し、1.0になるようにOEG培地で希釈した。これらの溶液をそれぞれ1.0 mlずつ5ml容のシリンジにとり、シリンジ内の溶液をメンブランホルダー(アドバンテック社製)に装着されたメンブレン上に集菌した。集菌後、メンブレンをホルダーから外し、OEG寒天培地上にのせ(菌体側を上向き)、接合伝達を行わせるための培養を行った(25℃、4時間)。培養後、メンブレンを1.0 mlのOEG培地に入れ、激しく攪拌することにより接合伝達完了体をメンブレンフィルターから分離した。この溶液をOEG培地で適当な濃度になるように希釈し、50 μg/mlのカナマイシン、15μg/mlのアミカシン(シグマ社製)を含むOEG寒天培地にスプレッドし、25℃にて培養した。アミカシンの添加は大腸菌の増殖を抑えるために行った。
培養3日目に現れるコロニーをピックアップし、50 μg/mlのカナマイシンを含むOEG培地で培養(25℃)しプラスミドを抽出した。プラスミド抽出は大腸菌JM109株と同様にキアゲン社のプラスミド抽出キットを利用して行った。この抽出溶液を0.9%のアガロースによる電気泳動を行ったところ、大腸菌S17-1株に保持させたpBBR1MCS2CRTと同一であり、大腸菌からパラコッカス属細菌へのプラスミド転移が成功したことがわかった。なお、pBBR1MCS2CRTrvについても同様にして確認した。
形質転換されたパラコッカス属細菌のアスタキサンチン産生の定量
pBBR1MCS2CRT、pBBR1MCS2CRTrvのプラスミドを保持したパラコッカス属細菌をそれぞれ100μg/mlのカナマイシンを含むOEG培地で培養した(25℃)。培養は100 ml容のバッフル付三角フラスコに60mlの培地を入れ、120rpmの回転振とう培養器で行った。
適当な時間でサンプリングを行い、遠心操作により集菌し、さらに、アセトンによりカロテノイド類を抽出・定量した。カロテノイドの定量は逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより測定し、以下の操作手順で行なった。すなわち培養液の一部を遠心分離して菌体を回収し、適量の純水を加えチューブミキサーにて10分間懸濁させる。次いで純水に対して9倍量のアセトンを加えてチューブミキサーにて30分間攪拌後、14,000回転5分間遠心分離を行ない上清を回収しHPLCにより定量した。HPLCカラムはTSKgel ODS-80(東ソー社製)を使用し、流速1.0 ml/min、470 nmの検出波長で測定した。標準アスタキサンチン(シグマ社製)を用いて検量線を作成し、培養中の産生アスタキサンチン量を算出した。プラスミド導入株の対照としてカロテノイド合成遺伝子が挿入されていないpBBR1MCS2ベクターのみの株も作製した。表1の通り、遺伝子を保持したパラコッカス属細菌のアスタキサンチン産生量を有意に増加した。
また、パラコッカス属細菌の野性株であるMBIC1143株に変異処理を施し、アスタキサンチン合成量が向上したTSN18E7株に同様に接合伝達で遺伝子導入を行ったところMBIC1143株と同様にアスタキサンチン産生量が有意に増加した(表1)。
特に、遺伝子導入された変異株TSN18E7株においては、培養72時間において顕著である。カロテノイド合成の最終産物であるアスタキサンチンが短時間に合成されたことは、カロテノイド合成遺伝子を挿入して作製されたプラスミドベクターの効果を示すものである。パラコッカス属細菌TSN18E7株は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P-19746として寄託されている。
Figure 0005023474
挿入カロテノイド合成遺伝子のプロモータ配列解析
実施例4の通り、カロテノイド合成遺伝子断片をpBBR1MCS2ベクターに挿入し、パラコッカス属細菌で同種発現を試みたところ有意にカロテノイドの一種であるアスタキサンチンの産生量が増加した。さらに、ベクターに対する挿入方向は関係なく活性向上を確認することができた。すなわち、pBBR1MCS2ベクター中に挿入されていlacプロモータの機能を利用しないでカロテノイド合成遺伝子が発現したことを意味する。そこで、増幅したカロテノイド合成遺伝子の転写上流方向の配列(配列番号1記載の1から450 番目まで)についてプロモータ解析を実施した。解析は市販のソフトウェアーであるGENETYX(ゼネティクス社製)を利用した。解析結果、増幅DNA中のcrtW遺伝子の上流にプロモータとして機能する配列を見出すことができた(表2)。配列番号19記載の1番からcrtW遺伝子の直近までの塩基配列はパラコッカス(Paracoccus)sp.内でプロモータ活性を有する塩基配列であると推定できる。なお、表中のプロモータスコアー値はGENETYXソフトウェアーが算出した数値で、高い値ほどプロモータ機能があると考えることができる。
Figure 0005023474
β−カロテン酸化酵素発現ベクターの作製
実施例1と同様にパラコッカス(Paracoccus)sp.のゲノムDNAを調製した。次いで、β-カロテン酸化酵素である遺伝子crtWおよびcrtZを含む領域をPCRにより増幅した。塩基配列を配列番号9に示す。PCRは配列番号13と配列番号15(’5-cgggatccgcagggcgatcagcccgttggcaagg -3’)のプライマーを使用した。次いで、テンプレートとなる調製DNA 1.0 μLに、水16.5 μL、2×High GC緩衝液(タカラバイオ社製)を25 μLをそれぞれ添加し、94℃で10 分間加熱した。氷冷後、dNTP 5 μL、配列番号13 の10 pmol/μLのフォワードプライマー 2.0 μL、配列番号15の 10 pmol/μLのリバースプライマー2.0 μLを添加し、最後にexTaq DNAポリメラーゼ (タカラバイオ社製)0.5 μLを加えた。反応は94℃、30秒のステップ、次いで60℃、30秒の第2のステップ、最後に72℃、2分の第3ステップを30サイクル行い、最後に72℃、7 分間反応させた。増幅された断片をアガロース電気泳動で確認し、抽出精製(キアゲン社製QIAgen Gel Extraction Kit)した。プラスミドベクターpBBR1MCS2のBamHIサイトに挿入するため、この精製DNAを制限酵素BamHIで消化した。これらをライゲーション後、ヒートショック法により大腸菌JM109株に遺伝子導入を行い、50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地により形質転換を行った。カナマイシン耐性を獲得した任意の形質転換株をLB培地で培養し(37℃、18時間)、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いてプラスミド抽出を行った。プラスミドを制限酵素BamHIで処理したところ、先のインサートを確認することができた。インサート断片の挿入方向は2種類ある。すなわち、pBBR1MCS2ベクター中のlacプロモータとインサート断片の転写方向が正方向であるベクター(pBBR1MCS2CRTWZ)および逆方向のベクター(pBBR1MCS2CRTWZrv)である。図5にそれぞれの構造を示す。
β−カロテン酸化酵素発現ベクターのパラコッカス(Paracoccus)sp.内での発現
pBBR1MCS2CRTWZおよびpBBR1MCS2CRTWZrvを実施例3と同様に大腸菌S17-1株導入し、接合伝達によりパラコッカス(Paracoccus)sp.の変異株を形質転換した。3日間培養後、カロテノイドをHPLCにより定量した。表3に結果を示す。表中Axはアスタキサンチン、TCは総カロテノイドを表す。
Figure 0005023474
表3の通り、総カロテノイド量の増加効果はないものの、導入した遺伝子コンストラクトの効果、すなわち、β-カロテンの酸化酵素の発現量の増大により、アスタキサンチンへの合成が有意に増加した。
ゲラニルゲラニル2リン酸合成遺伝子発現ベクターの作製
実施例1と同様にパラコッカス(Paracoccus)sp.のゲノムDNAを調製した。次いで、ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素遺伝子(crtE)領域をPCRで増幅した。crtE遺伝子の上流域にあると考えられるプロモータ領域が不明のため、配列番号1記載の塩基配列を参考にし、ハイブリダイズ領域が異なる2組のPCRプライマーを設計・使用した。すなわち、配列番号16(5’- ctagtctagatgcttgacaatccgggtgacgcgg-3’)と配列番号17(5’-tgggagctcatcacgcctaggcgcgcgcggcgtag-3’)記載の組合わせ、もう一つは配列番号18(5’-ctagtctagagccggtccactgaccttgttggac-3’)と配列番号17記載の組合わせである。増幅される領域は前者が約1.2 kbase、後者が1.1 kbaseである。それぞれの塩基配列を配列番号10と配列番号11に示す。また、増幅領域が長いものをPcrtE1crtE、短いものをPcrtE2crtEとした。PcrtE1crtEについては、先ず、PCRはテンプレートとなる調製DNA 1.0 μLに、水16.5 μL、2×High GC緩衝液(タカラバイオ社製)を25 μLをそれぞれ添加し、94℃で10 分間加熱した。氷冷後、dNTP 5 μL、配列番号16 の10 pmol/μLのフォワードプライマー 2.0 μL、配列番号17の 10 pmol/μLのリバースプライマー2.0 μLを添加し、最後にexTaq DNAポリメラーゼ (タカラバイオ社製)0.5 μLを加えた。反応は94℃、30秒のステップ、次いで60℃、30秒の第2のステップ、最後に72℃、2分の第3ステップを30サイクル行い、最後に72℃、7 分間反応させた。増幅された断片をアガロース電気泳動で確認し、抽出精製(キアゲン社製QIAgen Gel Extraction Kit)した。さらに、制限酵素Xba Iおよび SacIによって消化し、プラスミドベクターへの挿入末端を揃えた。同様にして、PcrtE2については配列番号17と配列番号18記載のプライマーを使用して調製した。
次いで、インサートが挿入されるプラスミドベクターであるpBBR1MCS2は制限酵素BtsI およびBsu36Iにより消化し不要なDNA鎖を脱落させた。フェノールクロロホルム抽出後、エタノール沈殿を行い精製した。さらに、配列番号22(5’- tcatctagaggtaccatatgaagcttgagctcct-3’)および23(5’- gagctcaagcttcatatggtacctctaga-3’)に記載の一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールさせ、二本鎖として精製DNA断片にライゲーションした。この二本鎖には制限酵素SacIとXbaIのサイト設計・導入した。ライゲーション反応を行い、50 μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地により大腸菌JM109を形質転換し、二本鎖が挿入されたベクターを取得した。これをpBBR1MCS2oligoとした。
次いでpBBR1MCS2oligoを制限酵素SacIおよびXbaIにより消化し、インサート挿入末端を揃えた。それぞれライゲーションし、50 μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地により大腸菌JM109を形質転換した。任意のコロニーをピックアップし、培養後、プラスミド調製を行い、設計通りのコンストラクトであることを電気泳動により確認した。インサートが長い領域のコンストラクトをpBBR1MCS2PcrtE1crtE、短い領域のコンストラクトをpBBR1MCS2PcrtE2crtEとした。
図6にそれぞれの構造を示す。
ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素のパラコッカス(Paracoccus)属細菌内での発現
pBBR1MCS2PcrtE1crtEおよびpBBR1MCS2PcrtE2crtEを実施例3と同様に大腸菌S17-1株導入し、接合伝達によりパラコッカス(Paracoccus)sp.の変異株を形質転換した。実施例4と同様に5日間培養後、カロテノイドを定量した。表4に結果を示す。
Figure 0005023474
表4の通り、これらの遺伝子コンストラクトを導入した変異株TSN18E7株では溶菌が起こり、カロテノイド合成量の向上を確認することはできなかった。一方で、増殖能が向上した変異株TSTT001株においてはこれらのコンストラクトの効果、すなわち、ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素の発現量同大に伴い、生産物であるゲラニルゲラニル2リン酸の供給量が高まり、パラコッカス(Paracoccus)の染色体にコードされていた一連のカロテノイド合成酵素系によりカロテノイド合成量が向上した。なお、変異株TSTT001株は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P-20670として寄託されている。
ゲラニルゲラニル2リン酸合成遺伝子上流のプロモータ配列
実施例7の通り、ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素をコードしている領域882 baseに対して上流域の配列を付加することによりカロテノイド合成量が有意に増加することがわかった。すなわち、ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素ORFの上流域の約300 baseの塩基配列、あるいは約200 baseはプロモータ機能を有するDNA鎖であることが判明した。それぞれの塩基配列を配列番号20と配列番号21に記載する。
ゲラニルゲラニル2リン酸合成遺伝子とカロテノイド合成遺伝子を組合わせたプラスミドベクターの作製
実施例7記載のpBBR1MCS2PcrtE1crtEを制限酵素XbaIで消化した。切断末端をDNA Blunting Kit(タカラバイオ社製)により平滑化し、フェノールクロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。次いで、実施例2で調製した、制限酵素BamH Iで消化したカロテノイド合成遺伝子断片を同様に、平滑化、フェノールクロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。これらをライゲーションし、50 μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地により大腸菌JM109を形質転換した。任意のコロニーをピックアップし、培養後、プラスミド調製を行い、設計通りのコンストラクトであることを電気泳動により確認した。作製した装入断片の塩基配列を配列番号12に示す。また、このコンストラクトをpBBR1MCS2PcrtE1crtECRTとした。図7に構造を示す。
ゲラニルゲラニル2リン酸合成遺伝子とカロテノイド合成遺伝子を組合わせたプラスミドベクターの発現
pBBR1MCS2PcrtE1crtECRTを実施例3と同様に大腸菌S17-1株導入し、接合伝達によりパラコッカス(Paracoccus)sp.の変異株を形質転換した。実施例4と同様に5日間培養後、カロテノイドをHPLCにより定量した。定量結果を表5に結果を示す。表中Axはアスタキサンチン、TCは総カロテノイドを表す。また、培養3日目のTSTT001株のHPLCのパターンを図8に示す。
Figure 0005023474
表5の通り、コンストラクトpBBR1MCS2PcrtE1crtECRTによりアスタキサンチンおよびカロテノイド産生量が有意に増加した。すなわち、ゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素の発現によりカロテノイドの合成材料であるゲラニルゲラニル2リン酸が高濃度に合成され、次いで、一連のカロテノイド合成酵素が導入コンストラクトにより過剰に発現されアスタキサンチンへ効率よく合成された。また、図8の通り、培養3日目においてTSTT001株では導入遺伝子であるpBBR1MCS2PcrtE1crtECRTにより、アスタキサンチンの合成量が顕著に増大していることがわかる。
本発明において、カロテノイド生産量を増大させる遺伝子若しくは遺伝子群の機能を明らかにし、カロテノイド生産能を有する天然微生物の改良に成功した。従って、本発明により改良した微生物を利用することにより飼料若しくは食料として有用なカロテノイドの生産性を大幅に向上させることが可能となる。
カロテノイド生合成経路を示す図である。 カロテノイド合成遺伝子を示す図である。 pUCCRTプラスミドベクターの構造を示す図である。 pBBR1MCS2CRTおよびpBBR1MCS2CRTrvプラスミドベクターの構造を示す図である。 pBBR1MCS2CRTWZおよびpBBR1MCS2CRTWZrvプラスミドベクターの構造を示す図である。 pBBR1MCS2PcrtE1crtEおよびpBBR1MCS2PcrtE2crtEプラスミドベクターの構造を示す図である。 pBBR1MCS2PcrtE1crtECRTプラスミドベクターの構造を示す図である。 pBBR1MCS2PcrtE1crtECRTプラスミドベクターにより組換えられた細菌のカロテノイド合成量増大の効果を示す図である。

Claims (7)

  1. (a)および(b)に記載のDNA配列を含むDNA鎖と配列番号19に記載の海洋性細菌内でプロモータ活性を有するDNA鎖との組み合わせからなる、連続したオリゴヌクレオチド。
    (a)配列番号2記載の、パラコッカス(Paracoccus)sp. MBIC1143株のβ−イオノン環の4位のメチレン基をケト基に変換する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列。
    (b)配列番号3記載の、パラコッカス(Paracoccus)sp. MBIC1143株の4−ケト−β−イオノン環の3位および/またはβ−イオノン環の3位の炭素に一つの水酸基を付加する酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列。
  2. 請求項1記載のオリゴヌクレオチドを含むプラスミドベクター。
  3. 配列番号9記載のDNA配列であるDNA鎖を有する、請求項2記載のプラスミドベクター。
  4. 請求項2に記載のプラスミドベクターにより形質転換されたパラコッカス属(Paracoccus sp.)細菌。
  5. カロテノイドの調製方法であって、
    請求項2に記載のプラスミドベクターのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの発現を可能にする条件下で請求項4に記載のパラコッカス属(Paracoccus sp.)細菌を培養する段階、および
    カロテノイドを該細菌または該細菌の培地から単離する段階を含む方法。
  6. 前記形質転換されたパラコッカス属(Paracoccus sp.)細菌の16SrRNAをコードするDNA配列と配列番号24記載のDNA配列との相同性が97%以上である請求項4に記載の細菌。
  7. 請求項2に記載のプラスミドベクターによりパラコッカス(Paracoccus)sp. MBIC1143株を形質転換することにより得られる、請求項4に記載のパラコッカス属(Paracoccus sp.)細菌。
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