発明の概要
本発明は、匂い物質受容体細胞表面局在化および匂い物質受容体機能発現を促進する能力があるポリペプチドに関する。本発明はさらに、様々な匂い物質受容体に特異的なリガンドの検出のためのアッセイ法を提供する。さらに、本発明は、疾患状態に関連した匂い物質受容体アクセサリータンパク質多型および突然変異についてスクリーニングする方法、加えてそのようなタンパク質の治療剤、リガンドおよびモジュレーターについてスクリーニングする方法を提供する。
好ましい態様において、本発明は、a)i)匂い物質受容体およびレポーティング剤を含む細胞系またはその細胞膜、およびii)試験化合物を供給する段階;b)試験化合物を細胞系に曝す段階;ならびにc)レポーティング剤の活性を測定する段階を含む、匂い物質受容体リガンドを同定するための方法を提供する。いくつかの態様において、細胞系は、REEP1、RTP1、RTP2、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、およびRTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、およびRTP1-D3を発現させる。いくつかの態様において、細胞系は、異種細胞系または天然の細胞系である。いくつかの態様において、細胞系は293T細胞系である。好ましい態様において、匂い物質受容体は、ヒト匂い物質受容体である。他の好ましい態様において、試験化合物は、匂いのある分子である。なおさらなる態様において、レポーティング剤は、cAMP応答性要素により制御される。好ましい態様において、細胞系はさらに、Gαolfを含む。他の態様において、匂い物質受容体は、マウス匂い物質受容体である。他の態様において、匂い物質受容体は、合成匂い物質受容体である。好ましい態様において、匂い物質受容体は、S6/79、S18、S46、S50、MOR23-1、MOR31-4、MOR31-6、MOR32-5、および/またはMOR32-11を含む。他の態様において、レポーティング剤は、照射剤(illuminating agent)である。さらに他の態様において、照射剤はルシフェラーゼである。代替の態様において、方法はさらに、レポーティング剤活性に基づいた匂い物質受容体リガンドの存在または非存在を検出する段階を含む。
好ましい態様において、本発明は、匂い物質受容体を発現させる細胞系であって、発現が細胞表面上に局在している、細胞系を提供する。好ましい態様において、細胞系は、異種遺伝子を含む。好ましい態様において、異種遺伝子は、REEP1、RTP1およびRTP2の1つまたは複数を含む。他の好ましい態様において、細胞系は293T細胞系である。いくつかの態様において、匂い物質受容体は、ヒト匂い物質受容体である。好ましい態様において、匂い物質受容体は、レポーティング剤でタグを付けられている。いくつかの態様において、レポーティング剤は、照射レポーティング剤である。いくつかの態様において、照射レポーティング剤は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、c-myc、6-ヒスチジン(6X-His)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、インフルエンザAウイルス赤血球凝集素(HA)、β-ガラクトシダーゼ、またはGAL4を含む。好ましい態様において、細胞系はさらに、Gαolf発現を含む。好ましい態様において、匂い物質受容体は、マウス匂い物質受容体である。いくつかの態様において、匂い物質受容体は、合成匂い物質受容体である。好ましい態様において、匂い物質受容体は、S6/79、S18、S46、S50、MOR23-1、MOR31-4、MOR31-6、MOR32-5、およびMOR32-11を含む。
本発明はさらに、配列番号:21、27、33、34、37、38、および41〜50を含むタンパク質、ならびに配列番号:21、27、33、34、37、38、および41〜50と少なくとも80%同一であるそれらの変種をコードする配列を含む単離された核酸を提供する。好ましい態様において、配列は、異種プロモーターへ実施可能に連結されている。好ましい態様において、配列は、ベクター内に含まれる。好ましい態様において、ベクターは、宿主細胞内である。
本発明はまた、配列番号:1、7、13、14、17および/または18を含む核酸へ高ストリンジェント性の条件下でハイブリダイズする単離かつ精製された核酸配列を提供する。好ましい態様において、配列は、異種プロモーターへ実施可能に連結されている。好ましい態様において、配列は、ベクター内に含まれる。いくつかの態様において、宿主ベクターは、宿主細胞内である。さらなる好ましい態様において、宿主ベクターは、宿主細胞において発現される。好ましい態様において、宿主細胞は、生物体に位置しており、生物体は非ヒト動物である。好ましい態様において、本発明は、単離されたヌクレオチド配列へストリンジェントな条件下でハイブリダイズする能力がある少なくとも15(例えば、15、18、20、21、25、50、100、1000...)ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配列を提供する。
好ましい態様において、本発明は、配列番号:1、7、13、14、17および18、ならびに配列番号:1、7、13、14、17および18と少なくとも80%同一であるそれらの変種からなる群より選択される核酸によりコードされるポリペプチドを提供する。さらなる態様において、タンパク質は、配列番号:1、7、13、14、17および18と少なくとも90%同一である。なおさらなる態様において、タンパク質は、配列番号:1、7、13、14、17および18と少なくとも95%同一である。
好ましい態様において、本発明は、配列番号:1、7、13、14、17および18からなる群より選択される核酸の少なくとも一部のそれらの相補性配列への結合を阻害する核酸を含む組成物を提供する。
好ましい態様において、本発明は、被験体由来の生体試料を供給する段階であって、生体試料がREEPポリペプチドを含む、段階;および生体試料において変種REEPポリペプチドの存在または非存在を検出する段階を含む、被験体において変種REEPポリペプチドの検出のための方法を提供する。好ましい態様において、生体試料は、血液試料、組織試料、尿試料、および羊水試料からなる群より選択される。さらなる態様において、被験体は、胎芽、胎児、新生動物、および幼若動物からなる群より選択される。さらなる態様において、動物はヒトである。好ましい態様において、検出段階は、特異的抗体結合を含む。さらなる態様において、検出はウェスタンブロットを含む。いくつかの好ましい態様において、変種REEPポリペプチドは、変種REEP1ポリペプチドである。さらなる態様において、検出段階は、REEP1核酸配列を検出することを含む。
好ましい態様において、本発明は、被験体由来の生体試料を供給する段階であって、生体試料がRTPポリペプチドを含む、段階;および生体試料において変種RTPポリペプチドの存在または非存在を検出する段階を含む、被験体において変種RTPポリペプチドの検出のための方法を提供する。好ましい態様において、生体試料は、血液試料、組織試料、尿試料、および羊水試料からなる群より選択される。さらなる態様において、被験体は、胎芽、胎児、新生動物、および幼若動物からなる群より選択される。さらなる態様において、動物はヒトである。好ましい態様において、検出段階は、特異的抗体結合を含む。さらなる態様において、検出はウェスタンブロットを含む。いくつかの好ましい態様において、変種RTPポリペプチドは、変種RTP1および/またはRTP2ポリペプチドである。さらなる態様において、検出段階は、RTP1および/またはRTP2核酸配列を検出することを含む。好ましい態様において、RTP1変種は、RTP1-A1、RTP1-D1およびRTP1-D3からなる群より選択される。
好ましい態様において、本発明は、生体試料において変種REEPポリペプチドの存在または非存在を検出するための試薬を含むキットを提供する。いくつかの態様において、キットはさらに、生体試料において変種REEPポリペプチドの存在または非存在を検出するためのキットを用いることについての使用説明書を含む。好ましい態様において、REEPポリペプチドは、REEP1ポリペプチドである。他の態様において、REEPポリペプチドは、REEP1〜6からなる群より選択される。好ましい態様において、使用説明書は、インビトロ診断キットについて連邦食品医薬品局(U.S. Food and Drug Agency)により要求される使用説明書を含む。好ましい態様において、試薬は、1つまたは複数の抗体である。好ましい態様において、生体試料は、血液試料、組織試料、尿試料、および羊水試料からなる群より選択される。好ましい態様において、試薬は、REEP1核酸配列を検出するように設定される。
好ましい態様において、本発明は、生体試料において変種RTPポリペプチドの存在または非存在を検出するための試薬を含むキットを提供する。いくつかの態様において、キットはさらに、生体試料において変種RTPポリペプチドの存在または非存在を検出するためのキットを用いることについての使用説明書を含む。好ましい態様において、RTPポリペプチドは、RTP1および/またはRTP2ポリペプチドである。他の態様において、RTPポリペプチドは、RTP1〜4からなる群より選択される。好ましい態様において、使用説明書は、インビトロ診断キットについて連邦食品医薬品局により要求される使用説明書を含む。好ましい態様において、試薬は、1つまたは複数の抗体である。好ましい態様において、生体試料は、血液試料、組織試料、尿試料、および羊水試料からなる群より選択される。好ましい態様において、試薬は、RTP1および/またはRTP2核酸配列を検出するように設定される。好ましい態様において、RTP1ポリペプチドは、RTP1-A1、RTP1-D1およびRTP1-D3からなる群より選択される変種RTP1ポリペプチドである。
好ましい態様において、本発明は、異種REEPポリペプチドを発現させる試料および試験化合物を供給する段階;ならびに試料を試験化合物に曝し、生物学的効果を検出する段階を含む、化合物をスクリーニングするための方法を提供する。好ましい態様において、REEPポリペプチドは、REEP1〜6からなる群より選択される。好ましい態様において、試料は、細胞を含む。好ましい態様において、試料は、組織を含む。好ましい態様において、試料は、被験体に見出される。いくつかの態様において、生物学的効果は、REEPの活性における変化を含む。いくつかの態様において、生物学的効果は、REEPの発現における変化を含む。
好ましい態様において、本発明は、異種RTPポリペプチドを発現させる試料および試験化合物を供給する段階;ならびに試料を試験化合物に曝し、生物学的効果を検出する段階を含む、化合物をスクリーニングするための方法を提供する。好ましい態様において、RTPポリペプチドは、RTP1〜4ならびにRTP1-A1、RPP1-D1およびRTP1-D3からなる群より選択される。好ましい態様において、試料は、細胞を含む。好ましい態様において、試料は、組織を含む。好ましい態様において、試料は、被験体に見出される。いくつかの態様において、生物学的効果は、RTPの活性における変化を含む。いくつかの態様において、生物学的効果は、RTPの発現における変化を含む。
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語が下に定義されている。
本明細書に用いられる場合、タンパク質または核酸に関して用いられる時の用語「REEP」は、本発明のREEPタンパク質またはREEPタンパク質をコードする核酸を指す。用語REEPは、野生型REEPと同一であるタンパク質(例えば、REEP1、REEP2、REEP3、REEP4、REEP5およびREEP6)、および野生型REEP由来であるタンパク質(例えば、本発明のREEPポリペプチドの変種)の両方を含む。いくつかの態様において、「REEP」は、野生型マウスREEP核酸(mRNA)(例えば、配列番号:1〜6)または野生型マウスREEPアミノ酸配列(例えば、配列番号:21〜26)によりコードされるポリペプチドである。他の態様において、「REEP」は、野生型ヒトREEP核酸(mRNA)(例えば、配列番号:7〜12)または野生型ヒトREEPアミノ酸配列(例えば、配列番号:27〜32)によりコードされるポリペプチドである。REEPタンパク質または核酸の例は、限定されるわけではないが、REEP1、REEP2、REEP3、REEP4、REEP5およびREEP6を含む。
本明細書に用いられる場合、タンパク質または核酸に関して用いられる時の用語「RTP」は、本発明のRTPタンパク質またはRTPタンパク質をコードする核酸を指す。用語RTPは、野生型RTPと同一であるタンパク質(例えば、RTP1、RTP2、RTP3、およびRTP4)、および野生型RTP由来であるタンパク質(例えば、限定されるわけではないが、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、RTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3を含む本発明のRTPポリペプチドの変種)の両方、またはRTP1コード領域の部分で構築されたキメラ遺伝子(例えば、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6))を含む。いくつかの態様において、「RTP」は、野生型マウスRTP核酸(mRNA)(例えば、配列番号:13〜16)または野生型もしくは変種のマウスRTPアミノ酸配列(例えば、配列番号:33〜36、41〜50)によりコードされるポリペプチドである。他の態様において、「RTP」は、野生型ヒトRTP核酸(mRNA)(例えば、配列番号:17〜20)または野生型ヒトRTPアミノ酸配列(例えば、配列番号:37〜40)によりコードされるポリペプチドである。RTPタンパク質または核酸の例は、限定されるわけではないが、RTP1、RTP2、RTP3、RTP4、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、RTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6)を含む。
本明細書に用いられる場合、用語「匂い物質受容体」は、嗅覚性感覚ニューロンから発生した匂い物質受容体を指す。匂い物質受容体の例は、限定されるわけではないが、S6/79、S18、S46、S50、MOR23-1、MOR31-4、MOR31-6、MOR32-5、およびMOR32-11を含む。
本明細書に用いられる場合、用語「匂い物質受容体細胞表面局在化」または相当用語は、匂い物質受容体の細胞表面膜への分子輸送を指す。細胞表面局在化の例は、限定されるわけではないが、樹状突起の先端における繊毛への局在化、および軸索終末への局在化を含む。
本明細書に用いられる場合、用語「匂い物質受容体機能発現」または相当用語は、匂い物質受容体リガンド(例えば、匂いのある分子)と相互作用する匂い物質受容体の能力を指す。
本明細書に用いられる場合、用語「嗅覚障害」、「嗅覚機能障害」、「嗅覚疾患」または類似した用語は、結果として嗅覚の減弱(例えば、嗅覚異常)を生じる障害、機能障害、または疾患を指す。嗅覚障害、機能障害および/または疾患の例は、限定されるわけではないが、頭部外傷、上気道感染、前頭蓋窩の腫瘍、カルマン症候群、フォスター・ケネディ症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、および毒性化学物質または感染体への曝露を含む。嗅覚の減弱は、無嗅覚 − 臭覚の欠如;嗅覚減退 − 臭覚の減少;嗅覚不全 − 臭覚の歪み;異常嗅覚 − 嫌なまたは腐敗した匂いの感覚;嗅覚錯誤 − 適当な刺激物の非存在下における匂いの感覚として分類される。
本明細書に用いられる場合、タンパク質または核酸に関して用いられる時の用語「REEP1」は、本発明のREEP1タンパク質またはREEP1タンパク質をコードする核酸を指す。用語REEP1は、野生型REEP1と同一であるタンパク質および野生型REEP1由来であるタンパク質(例えば、本発明のREEP1ポリペプチドの変種、またはREEP1コード領域の部分で構築されたキメラ遺伝子)の両方を含む。いくつかの態様において、「REEP1」は、野生型マウスREEP1核酸(mRNA)(配列番号:1)または野生型マウスREEP1アミノ酸配列(配列番号:21)によりコードされるポリペプチドである。他の態様において、「REEP1」は、野生型ヒトREEP1核酸(mRNA)(配列番号:7)または野生型ヒトREEP1アミノ酸配列(配列番号:27)によりコードされるポリペプチドである。他の態様において、「REEP1」は、変種もしくは突然変異体の核酸またはアミノ酸である。
本明細書に用いられる場合、タンパク質または核酸に関して用いられる時の用語「RTP1」は、本発明のRTP1タンパク質またはRTP1タンパク質をコードする核酸を指す。用語RTP1は、野生型RTP1と同一であるタンパク質および野生型RTP1由来であるタンパク質(例えば、限定されるわけではないが、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、RTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3を含む本発明のRTP1ポリペプチドの変種)の両方、またはRTP1コード領域の部分で構築されたキメラ遺伝子(例えば、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6))を含む。いくつかの態様において、「RTP1」は、野生型マウスRTP1核酸(mRNA)(配列番号:13)または野生型マウスRTP1アミノ酸配列(配列番号:33)によりコードされるポリペプチドである。他の態様において、「RTP1」は、野生型ヒトRTP1核酸(mRNA)(配列番号:17)または野生型ヒトRTP1アミノ酸配列(配列番号:37)によりコードされるポリペプチドである。他の態様において、「RTP1」は、変種もしくは突然変異体の核酸またはアミノ酸である。
本明細書に用いられる場合、タンパク質または核酸に関して用いられる時の用語「RTP2」は、本発明のRTP2タンパク質またはRTP2タンパク質をコードする核酸を指す。用語RTP2は、野生型RTP2と同一であるタンパク質および野生型RTP2由来であるタンパク質(例えば、本発明のRTP2ポリペプチドの変種、またはRTP2コード領域の部分で構築されたキメラ遺伝子)の両方を含む。いくつかの態様において、「RTP2」は、野生型マウスRTP2核酸(mRNA)(配列番号:14)または野生型マウスアミノ酸配列(配列番号:34)によりコードされるポリペプチドである。他の態様において、「RTP2」は、野生型ヒトRTP2核酸(mRNA)(配列番号:18)または野生型ヒトREEP1アミノ酸配列(配列番号:38)によりコードされるポリペプチドである。他の態様において、「RTP2」は、変種もしくは突然変異体の核酸またはアミノ酸である。
本明細書に用いられる場合、用語「被験体」および「患者」は、任意の動物、例えば、イヌ、ネコ、トリ、家畜類、および好ましくはヒトのような哺乳動物、を指す。「被験体」および「患者」の特定の例は、限定されるわけではないが、嗅覚障害をもつ個体、および嗅覚障害関連の特徴または症状をもつ個体を含む。
本明細書に用いられる場合、句「嗅覚障害の症状」および「嗅覚障害の特徴」は、限定されるわけではないが、嗅覚の減弱(例えば、嗅覚異常)を含む。
句「症状が低減している状態下で」とは、限定されるわけではないが、疾患からの回復率への検出可能な影響、または嗅覚障害の少なくとも1つの症状の低減を含む、嗅覚障害の検出可能な症状における、任意の程度の定性的または定量的低減を指す。
用語「siRNA」は、短い干渉RNAを指す。siRNAの使用のための方法は、米国特許出願第20030148519/A1(参照により本明細書に組み入れられている)に記載されている。いくつかの態様において、siRNAは、二重鎖または約18〜25ヌクレオチド長の二本鎖領域を含む;しばしば、siRNAは、各鎖の3'末端に約2個から4個までの不対のヌクレオチドを含む。siRNAの二重鎖または二本鎖領域の少なくとも1つの鎖は、標的RNA分子と、実質的に相同的または実質的に相補的である。標的RNA分子と相補的な鎖は、「アンチセンス鎖」である;標的RNA分子と相同的な鎖は、「センス鎖」であり、siRNAアンチセンス鎖と相補的でもある。siRNAはまた、追加の配列を含みうる;そのような配列の非限定的例は、連結配列、ループ、加えてステムおよび他の折り畳まれた構造を含む。siRNAは、無脊椎動物および脊椎動物にRNA干渉を引き起こすにおいて、ならびに植物で転写後遺伝子サイレンシング中に配列特異的RNA分解を引き起こすにおいて、重要な媒介物として機能するように思われる。
用語「RNA干渉」または「RNAi」は、siRNAによる遺伝子発現のサイレンシングまたは減少を指す。それは、サイレンシングされる遺伝子の配列とそれの二重鎖領域において相同的であるsiRNAにより惹起される、動物および植物における配列特異的、転写後遺伝子サイレンシングの過程である。遺伝子は、染色体へ組み込まれて存在する、またはゲノムへ取り込まれずにトランスフェクションベクターに存在する、生物体に対して内因性または外因性でありうる。遺伝子の発現は、完全にかまたは部分的にかのいずれかで阻害される。RNAiはまた、標的RNAの機能を阻害すると考えられうる;標的RNAの機能は完全または部分的でありうる。
本明細書に用いられる場合、用語「該生体試料において変種REEP1核酸もしくはポリペプチドの存在または非存在を検出する該段階についての該キットを用いることについての使用説明書」、「該生体試料において変種RTP1核酸もしくはポリペプチドの存在または非存在を検出する該段階についての該キットを用いることについての使用説明書」、「該生体試料において変種RTP2核酸もしくはポリペプチドの存在または非存在を検出する該段階についての該キットを用いることについての使用説明書」は、変種および野生型のREEPならびに/もしくはRTPの核酸またはポリペプチドの検出のためのキットに含まれる試薬を用いることについての使用説明書を含む。
用語「遺伝子」は、ポリペプチド、RNA(例えば、限定されるわけではないが、mRNA、tRNAおよびrRNA)または前駆体(例えば、REEP1、RTP1またはRTP2)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を指す。ポリペプチド、RNAまたは前駆体は、完全長コード配列により、または完全長もしくは断片の所望の活性もしくは機能的性質(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限り、コード配列の任意の部分により、コードされうる。その用語はまた、構造遺伝子のコード領域、ならびに、遺伝子が完全長mRNAの長さに対応するように、5'末端および3'末端の両方においてコード領域に隣接した、どちらの末端上でも約1 kbの間の配列を含む。コード領域の5'に位置し、かつmRNA上に存在している配列は、5'非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3'または下流に位置し、かつmRNA上に存在している配列は、3'非翻訳配列と呼ばれる。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNAおよびゲノム型の両方を含む。遺伝子のゲノム型またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)へ転写される遺伝子のセグメントである;イントロンは、エンハンサーのような制御エレメントを含みうる。イントロンは、核または一次転写産物から除去される、または「スプライスされて出される」;イントロンは、それゆえに、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物に存在しない。mRNAは、新生ポリペプチドにおいてアミノ酸の配列または順序を特定するように翻訳中に機能する。
特に、用語「REEP1遺伝子」、「RTP1遺伝子(gene)」、「RTP1遺伝子(genes)」、「RTP2遺伝子(gene)」または「RTP2遺伝子(genes)」は、完全長のそれぞれのREEPおよび/またはRTPヌクレオチド配列(例えば、配列番号:1、2および3に含まれる)を指す。しかしながら、その用語が、REEPおよび/またはRTP配列の断片(例えば、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、およびRTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP1-D3)、RTP1コード領域の部分で構築されるキメラ遺伝子(例えば、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6))、REEPおよび/またはRTP配列の突然変異体、加えて完全長REEPおよび/またはRTPヌクレオチド配列内の他のドメインを含むことも意図される。なおさらに、用語「REEP1ヌクレオチド配列」、「REEP1ポリヌクレオチド配列」、「RTP1ヌクレオチド配列」、「RTP1ポリヌクレオチド配列」、「RTP2ヌクレオチド配列」、または「RTP2ポリヌクレオチド配列」は、DNA配列、cDNA配列、RNA(例えば、mRNA)配列、および関連した制御配列を含む。
「アミノ酸配列」が、天然に存在するタンパク質分子のアミノ酸配列を指すために本明細書に挙げられる場合、「アミノ酸配列」、および「ポリペプチド」または「タンパク質」のような同類用語は、挙げられたタンパク質分子と関連した完全な天然のアミノ酸配列にそのアミノ酸配列を限定することを意図されない。
イントロンを含むことに加えて、遺伝子のゲノム型はまた、RNA転写産物上に存在する配列の5'および3'末端の両方に位置している配列を含みうる。これらの配列は、「フランキング」配列または領域と呼ばれる(これらのフランキング配列は、mRNA転写産物上に存在する非翻訳配列の5'または3'末端に位置している)。5'フランキング領域は、遺伝子の転写を調節するまたは影響を及ぼすプロモーターおよびエンハンサーのような制御配列を含みうる。3'フランキング領域は、転写の終結、転写後切断およびポリアデニル化を指揮する配列を含みうる。
用語「野生型」は、天然に存在する源から単離された場合のその遺伝子または遺伝子産物の特徴をもつ遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に観察され、従って、適宜、遺伝子の「正常」または「野生型」形と呼ばれる。対照的に、用語「改変された」、「突然変異体」、「多型」、および「変種」は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合、配列および/または機能的性質において改変を示す(すなわち、変化した特性)遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に存在する突然変異体が単離されうることに留意する;これらは、それらが、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合、変化した特性をもつという事実により同定される。
本明細書に用いられる場合、用語「をコードする核酸分子」、「をコードするDNA配列」、および「をコードするDNA」は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。DNA配列は、従って、アミノ酸配列をコードする。
DNA分子は、1つのモノヌクレオチド五炭糖環の5'リン酸がそれの隣りの3'酸素へ一方向にリン酸ジエステル結合を介して付着しているような様式で、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを生成するようにモノヌクレオチドが反応させられるため、「5'末端」および「3'末端」を有すると言われる。それゆえに、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの末端は、それの5'リン酸がモノヌクレオチド五炭糖環の3'酸素に連結されていない場合には「5'末端」と、およびそれの3'酸素が次のモノヌクレオチド五炭糖環の5'リン酸に連結されていない場合には「3'末端」と呼ばれる。本明細書に用いられる場合、核酸配列は、たとえ、より大きなオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに対して内部であったとしても、また、5'および3'末端を有すると言われうる。線状または環状のいずれのDNA分子においても、別々のエレメントは、「下流」または3'エレメントの「上流」または5'にあると呼ばれる。この専門用語は、転写が、DNA鎖に沿って5'から3'への様式で進行するという事実を反映している。連結された遺伝子の転写を指揮するプロモーターおよびエンハンサーエレメントは、一般的に、コード領域の5'または上流に位置している。しかしながら、エンハンサーエレメントは、プロモーター領域およびコード領域の3'に位置している場合でさえもそれらの効果を発揮することができる。転写終結およびポリアデニル化シグナルは、コード領域の3'または下流に位置している。
本明細書に用いられる場合、用語「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」および「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」は、遺伝子のコード領域を含む核酸配列、換言すれば、遺伝子産物をコードする核酸配列、を意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAの型で存在しうる。DNA型で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、一本鎖(すなわち、センス鎖)または二本鎖でありうる。エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどのような適した調節エレメントは、適切な転写の開始および/または一次RNA転写産物の正しいプロセシングを可能にすることが必要とされる場合には、遺伝子のコード領域に近接して配置されうる。または、本発明の発現ベクターに利用されるコード領域は、内因性エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、または内因性および外因性調節エレメントの両方の組み合わせを含みうる。
本明細書に用いられる場合、用語「制御エレメント」は、核酸配列の発現のいくつかの局面を調節する遺伝要素を指す。例えば、プロモーターは、実施可能に連結されたコード領域の転写の開始を促進する制御エレメントである。他の制御エレメントは、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナルなどを含む。
本明細書に用いられる場合、用語「相補的な」または「相補性」は、塩基対形成ルールにより関係づけられたポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して用いられる。例えば、配列5'-「A-G-T-3'」について、配列3'-「T-C-A-5'」と相補的である。相補性は、核酸の塩基の一部のみが塩基対形成ルールに従ってマッチしている、「部分的」でありうる。または、核酸間の「完全な」または「全」相補性がありうる。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に有意な効果を生じる。これは、増幅反応、加えて核酸間の結合に依存する検出方法において特に重要である。相補性は、非天然の塩基、修飾塩基、合成塩基などを含むいずれの型のヌクレオチド間の塩基対の形成をも含みうる。
用語「相同性」は、相補性の程度を指す。部分的相同性または完全な相同性(すなわち、同一性)がありうる。部分的相補性配列は、完全相補性配列が標的核酸にハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻害するものであり、機能的用語「実質的に相同的な」を用いて言及される。核酸結合に関して用いられる場合の用語「結合の阻害」は、標的配列への結合に対して相同性配列の競合により引き起こされる結合の阻害を指す。完全相補性配列の標的配列へのハイブリダイゼーションの阻害は、低ストリンジェント性の条件下でハイブリダイゼーションアッセイ法(サザンまたはノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど)を用いて調べられうる。実質的に相同的な配列またはプローブは、低ストリンジェント性の条件下で完全に相同的な標的への結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)において競合し、かつ阻害する。これは、低ストリンジェント性の条件が、非特異的結合が許されているようなことであるということではない;低ストリンジェント性条件は、2つの配列のお互いとの結合が特異的(すなわち、選択的)相互作用であることを要求する。非特異的結合の非存在は、部分的程度の相補性さえも欠く(例えば、約30%未満の同一性)第二標的の使用により試験されうる;非特異的結合の非存在下において、プローブは第二の非相補性標的にハイブリダイズしない。
当技術分野は、多数の等価な条件が低ストリンジェント性条件を含むために用いられうることをよくわかっている;プローブの長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成物)、ならびに標的(溶液中に存在するまたは固定化されたDNA、RNA、塩基組成物など)の性質、ならびに塩および他の成分の濃度(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコールの存在または非存在)が考慮され、ハイブリダイゼーション溶液は、上で列挙された条件とは異なるが、等価である、低ストリンジェント性ハイブリダイゼーションの条件を作成するように変えられうる。さらに、当技術分野は、高ストリンジェント性の条件(例えば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄段階の温度を上昇させる、ハイブリダイゼーション溶液におけるホルムアミドの使用など)下でハイブリダイゼーションを促進する条件をわかっている。
cDNAまたはゲノムクローンのような二本鎖核酸配列に関して用いられる場合、用語「実質的に相同的な」は、上記のような低ストリンジェント性の条件下で二本鎖核酸配列の一方または両方の鎖にハイブリダイズすることができる任意のプローブを指す。
遺伝子は、一次RNA転写産物のスプライシングの差により生成される複数のRNA種を産生しうる。同じ遺伝子のスプライスバリアントであるcDNAは、配列同一性または完全相同性の領域(両方のcDNA上に同じエクソンまたは同じエクソンの部分の存在を表す)、および完全非同一性の領域(例えば、cDNA1上におけるエクソン「A」の存在であって、cDNA2が代わりとしてエクソン「B」を含むことを表す)を含む。2つのcDNAは配列同一性の領域を含むため、それらは両方とも、両方のcDNA上に見出される配列を含む遺伝子全体または遺伝子の部分由来のプローブにハイブリダイズする;2つのスプライスバリアントは、それゆえに、そのようなプローブと、およびお互いと、実質的に相同的である。
一本鎖核酸配列に関して用いられる場合、用語「実質的に相同的な」は、上記のような低ストリンジェント性の条件下で一本鎖核酸配列をハイブリダイズすることができる任意のプローブ(すなわち、それは相補体である)を指す。
本明細書に用いられる場合、用語「結合において競合する」は、活性をもつ第二ポリペプチドが結合するのと同じ基質に結合する活性をもつ第一ポリペプチドに関して用いられ、第二ポリペプチドが第一ポリペプチドの変種または関連したもしくは異なるポリペプチドである。第一ポリペプチドによる結合の効率(例えば、動力学または熱力学)は、第二ポリペプチドによる基質結合の効率と同じ、またはより高い、またはより低くくありうる。例えば、基質への結合についての平衡結合定数(KD)は、2つのポリペプチドについて異なりうる。本明細書に用いられる場合、用語「Km」は、酵素についてのミカエリス-メンテン定数を指し、所定の酵素が酵素触媒反応においてそれの最大速度の2分の1を生じる特異的な基質の濃度として定義される。
本明細書に用いられる場合、用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的な核酸の対形成に関して用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、含まれる条件のストリンジェント性、形成されるハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比のような因子により影響を及ぼされる。
本明細書に用いられる場合、用語「Tm」は、「融解温度」に関して用いられる。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が一本鎖へ半分、解離されている温度である。核酸のTmを計算するための方程式は、当技術分野において周知である。標準的参考文献により示されているように、Tm値の単純推定は、核酸が1 M NaClでの水溶液中にある場合、式:Tm=81.5+0.41(%G+C)により計算されうる(例えば、Anderson and Young, Quantitaive Filter Hybridization, in Nucleic Acid Hybridization [1985]参照)。他の参考文献は、Tmの計算について、配列だけでなく構造特性も考慮に入れる、より精巧な計算法を含む。
本明細書に用いられる場合、用語「ストリンジェント性」は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる、温度、イオン強度、および有機溶媒のような他の化合物の存在の条件に関して用いられる。「ストリンジェント性」条件は、個々にかまたは協調してかのいずれかで、今しがた記載されたパラメーターを変化させることにより変えられうることを当業者は認識していると思われる。「高ストリンジェント性」条件に関して、核酸塩基対形成は、高頻度の相補性塩基配列を有する核酸断片間のみに起こる(例えば、「高ストリンジェント性」条件下でのハイブリダイゼーションは、約85〜100%同一性、好ましくは約70〜100%同一性をもつ相同体間に起こりうる)。中位のストリンジェント性条件に関して、核酸塩基対形成は、中頻度の相補性塩基配列をもつ核酸間に起こる(例えば、「中位のストリンジェント性」条件下でのハイブリダイゼーションは、約50〜70%同一性をもつ相同体間に起こりうる)。従って、「弱い」または「低い」ストリンジェント性の条件は、しばしば、遺伝的に多様である生物体に由来する核酸に関して、相補性配列の頻度が通常、低いため、必要とされる。
核酸ハイブリダイゼーションに関して用いられる場合の「高ストリンジェント性条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブが用いられる場合、5X SSPE(43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHで7.4に調整されたpH)、0.5% SDS、5Xデンハルト試薬および100 μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液における42℃での結合またはハイブリダイゼーション、続いて0.1X SSPE、1.0% SDSを含む溶液における42℃での洗浄と等価の条件を含む。
核酸ハイブリダイゼーションに関して用いられる場合の「中位のストリンジェント性条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブが用いられる場合、5X SSPE(43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHで7.4に調整されたpH)、0.5% SDS、5Xデンハルト試薬および100 μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液における42℃での結合またはハイブリダイゼーション、続いて1.0X SSPE、1.0% SDSを含む溶液における42℃での洗浄と等価の条件を含む。
「低ストリンジェント性条件」は、約500ヌクレオチド長のプローブが用いられる場合、5X SSPE(43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOHで7.4に調整されたpH)、0.1% SDS、5Xデンハルト試薬[50Xデンハルトは500 mlあたり以下を含む:5 g Ficoll(Type 400, Pharmacia)、5 g BSA(Fraction V; Sigma)]および100 μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液における42℃での結合またはハイブリダイゼーション、続いて5X SSPE、0.1% SDSを含む溶液における42℃での洗浄と等価の条件を含む。
本発明は、約500ヌクレオチド長のプローブのハイブリダイゼーションに限定されない。本発明は、約10ヌクレオチド長から数千(例えば、少なくとも5000)ヌクレオチド長までの間のプローブの使用を企図する。ストリンジェント性条件が、他のサイズのプローブについて変化しうることを当業者は理解している(例えば、Anderson and Young, Quantitative Filter Hybridization, Nucleic Acid Hybridization [1985]およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, NY [1989]参照)。
以下の用語は、2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド間の配列関係を記載するために用いられる:「参照配列」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的同一性」。「参照配列」は、配列比較のための基準として用いられる定義済みの配列である;参照配列は、より大きな配列のサブセット、例えば、配列リストに与えられた完全長cDNA配列のセグメントのような、でありうる、または完全遺伝子配列を含みうる。一般的に、参照配列は、少なくとも20ヌクレオチド長、頻繁には少なくとも25ヌクレオチド長、およびしばしば、少なくとも50ヌクレオチド長である。2つのポリヌクレオチドは、それぞれ、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部)を含みうる、および(2)2つのポリヌクレオチド間で異なる配列をさらに含みうるため、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、配列類似性の局所的領域を同定かつ比較するための「比較ウィンドウ」に対して2つのポリヌクレオチドの配列を比較することにより行われる。本明細書に用いられる場合、「比較ウィンドウ」は、少なくとも20個の連続したヌクレオチド位置の概念的セグメントであって、ポリヌクレオチド配列が、少なくとも20個の連続したヌクレオチドの参照配列と比較されうり、かつ比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分が、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して20パーセントもしくはそれ未満の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる、セグメントを指す。比較ウィンドウを整列させるについての配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman[Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)]の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch[Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)]の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman[Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 85:2444 (1988)]の類似性方法についての検索により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により、または洞察により、行われうり、様々な方法により作成された最良アラインメント(すなわち、結果として、比較ウィンドウに対して最高パーセンテージの相同性を生じる)が選択される。用語「配列同一性」は、比較のウィンドウに対して2つのポリヌクレオチド配列が同一である(すなわち、ヌクレオチドごとを基本として)ことを意味する。用語「配列同一性のパーセンテージ」は、比較のウィンドウに対して2つの最適に整列された配列を比較する段階、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、UまたはI)が両方の配列において存在している位置の数を決定して、一致した位置の数を生じる段階、一致した位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割る段階、およびその結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを生じる段階により計算される。本明細書に用いられる場合、用語「実質的同一性」は、ポリヌクレオチド配列の特徴を示し、ポリヌクレオチドが、少なくとも20個のヌクレオチド位置の比較ウィンドウに対して、頻繁には少なくとも25〜50個のヌクレオチドのウィンドウに対して、参照配列と比較して、少なくとも85パーセント配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95パーセント配列同一性、より通常には少なくとも99パーセント配列同一性を有する配列を含み、配列同一性のパーセンテージが、比較のウィンドウに対して参照配列の合計20パーセント以下になる欠失または付加を含みうるポリヌクレオチド配列と参照配列を比較することにより計算される。参照配列は、より大きな配列のサブセット、例えば、本発明において主張された組成物の完全長配列のセグメント(例えば、REEP1、RTP1またはRTP2)のような、でありうる。
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的同一性」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップ重みを用いるプログラムGAPまたはBESTFITによるような最適に整列された場合、少なくとも80パーセント配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセント配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントまたはそれ以上の配列同一性(例えば、99パーセント配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。保存的アミノ酸置換は、類似した側鎖を有する残基の可換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンである;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンである;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンである;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンである;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンである;ならびに、イオウ含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は以下である:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミン。
本明細書に用いられる場合の用語「断片」は、天然のタンパク質と比較して、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失をもつポリペプチドであるが、残りのアミノ酸配列が、完全長cDNA配列から導き出されるアミノ酸配列における対応する位置と同一である、ポリペプチドを指す。断片は、典型的には、少なくとも4アミノ酸長、好ましくは少なくとも20アミノ酸長、通常には少なくとも50アミノ酸長またはそれ以上であり、組成物(本発明に主張された)のそれの様々なリガンドおよび/または基質との分子間結合に必要とされるポリペプチドの部分に及ぶ。
用語「多型座」は、集団のメンバー間で変異を示す集団に存在する座である(すなわち、最も一般的な対立遺伝子は0.95未満の頻度をもつ)。対照的に、「単形座」は、集団のメンバー間で見られる有るか無しかの変異での遺伝子座(最も一般的な対立遺伝子が集団の遺伝子プールにおいて0.95の頻度を超える、座であると一般的にとられた)である。
本明細書に用いられる場合、用語「遺伝的変異情報」または「遺伝的変種情報」は、特定の遺伝子(例えば、本発明のREEPおよび/またはRTP遺伝子)の所定の対立遺伝子における1つもしくは複数の変種核酸配列(例えば、多型または突然変異)の存在または非存在を指す。
本明細書に用いられる場合、用語「検出アッセイ」は、特定の遺伝子(例えば、REEPおよび/またはRTP遺伝子)の所定の対立遺伝子における変種核酸配列(例えば、多型または突然変異)の存在または非存在を検出するためのアッセイを指す。
物体に適用されるような本明細書に用いられる場合の用語「天然に存在する」は、物体が天然に見出されうるという事実を指す。例えば、天然での源から単離されうり、かつ実験室において人により意図的に改変されていない、生物体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列が、天然に存在する。
「増幅」は、鋳型特異性を含む核酸複製の特定の場合である。それは、非特異的鋳型複製(すなわち、鋳型依存性であるが、特定の鋳型に依存しない複製)と対比されうる。鋳型特異性は、ここでは、複製の忠実性(すなわち、正確なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボ-またはデオキシリボ-)特異性とは区別される。鋳型特異性は、しばしば、「標的」特異性の言葉で記載される。標的配列は、それらが他の核酸から選別されることが求められるという意味で「標的」である。増幅技術は、主としてこの選別のために設計されている。
本明細書に用いられる場合、用語「プライマー」は、精製された制限消化物においてのような天然に存在しようと、合成的に作製されようとに関わらず、核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下に(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘導剤の存在下で、かつ適した温度およびpHにおいて)置かれた場合、合成の開始点として作用する能力があるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、好ましくは、増幅における最大効率のために一本鎖であるが、または二本鎖でありうる。二本鎖の場合には、プライマーは、最初、伸長産物を調製するために用いられる前にそれの鎖を分離するように処理される。好ましくは、プライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成をプライムするのに十分長くなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源および方法の使用を含む多くの因子に依存するものである。
本明細書に用いられる場合、用語「プローブ」は、精製された制限消化物においてのような天然に存在しようと、または合成で、組換えで、もしくはPCR増幅により作製されようとに関わらず、対象となるもう一つのオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする能力があるオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。プローブは、一本鎖または二本鎖でありうる。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定および単離に有用である。本発明に用いられる任意のプローブは、限定されるわけではないが、酵素(例えば、ELISA、および酵素に基づいた組織化学的アッセイ)、蛍光、放射性およびルミネセンス系を含む任意の検出系において検出できるように、任意の「レポーター分子」で標識されることが企図される。本発明は何か特定の検出系または標識に限定されることは意図されない。
本明細書に用いられる場合、用語「標的」は、検出または特徴付けされるべき核酸配列または構造を指す。従って、「標的」は、他の核酸配列から選別されることが求められる。「セグメント」は、標的配列内の核酸の領域と定義される。
本明細書に用いられる場合、用語「増幅試薬」は、プライマー、核酸鋳型、および増幅酵素を除く増幅に必要とされる試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液など)を指す。典型的には、増幅試薬は、他の反応成分と共に置かれ、反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に含まれる。
本明細書に用いられる場合、用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」は、それぞれが特定のヌクレオチド配列において、またはの近くで、二本鎖DNAを切断する、細菌の酵素を指す。
本明細書に用いられる場合、用語「組換えDNA分子」は、分子生物学的技術によって合わせて結合されたDNAのセグメントから構成されるDNA分子を指す。
本明細書に用いられる場合、用語「アンチセンス」は、特定のRNA配列(例えば、mRNA)と相補的であるRNA配列に関して用いられる。この定義内には、細菌による遺伝子制御に関与するアンチセンスRNA(「asRNA」)分子が含まれる。アンチセンスRNAは、コード鎖の合成を可能にするウイルスプロモーターに対して逆配向での対象となる遺伝子をスプライスすることによる合成を含む、任意の方法により作製されうる。いったん、胚へ導入されたならば、この転写された鎖は、胚により産生された天然のmRNAと結合して、二重鎖を形成する。これらの二重鎖は、その後、mRNAのさらなる転写かまたはそれの翻訳かのいずれかを遮断する。この様式において、突然変異体多型が発生しうる。用語「アンチセンス鎖」は、「センス」鎖に相補的である核酸鎖に関して用いられる。記号表示(-)(すなわち、「負」)は、時々、アンチセンス鎖に関して用いられ、記号表示(+)は、時々、センス(すなわち、「正」)鎖に関して用いられる。
「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」においてのような、核酸に関して用いられる場合の用語「単離された」とは、同定され、かつそれの天然源において普通には付随している少なくとも1つの夾雑物核酸から分離されている核酸配列を指す。単離された核酸は、それが天然で見出されるのとは異なる形または設定で存在する。対照的に、単離されていない核酸は、それらが天然で存在する状態で見出されるDNAおよびRNAのような核酸である。例えば、所定のDNA配列(例えば、遺伝子)は、宿主細胞染色体上に、隣接する遺伝子の近くで見出される;特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列のようなRNA配列は、多数のタンパク質をコードする多数の他のmRNAとの混合物として細胞内に見出される。しかしながら、REEPおよび/またはRTPをコードする単離された核酸は、例として、核酸が、天然の細胞のとは異なる染色体位置にある、またはそうでなく、天然に見出されるのとは異なる核酸配列に隣接されている、REEPおよび/またはRTPを通常、発現させる細胞におけるそのような核酸を含む。単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖型で存在しうる。単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドがタンパク質を発現させるために利用されることになっている場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、最小限で、センスまたはコード鎖を含む(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖でありうる)が、センスおよびアンチセンス鎖の両方を含みうる(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは二本鎖でありうる)。
本明細書に用いられる場合、「染色体の部分」とは、染色体の別々のセクションを指す。染色体は、以下のように細胞遺伝学者により部位またはセクションに分けられる:染色体の短い(動原体に対して)腕は「p」腕と呼ばれる;長腕は「q」腕と呼ばれる。各腕は、その後、領域1および領域2と呼ばれる2つの領域に分けられる(領域1は動原体に最も近い)。各領域は、さらにバンドに分けられる。バンドは、サブバンドにさらに分けられうる。例えば、ヒト染色体11の11p15.5部分は、染色体11(11)の短腕(p)上の第1領域(1)の第5バンド(5)のサブバンド5(.5)に位置する部分である。染色体の一部は「変化」しうる;例えば、その部分全体が欠失により非存在でありうる、または再編成されうる(例えば、逆位、転位置、反復領域における変化による拡大または収縮)。欠失の場合、染色体の特定の部分と相同的なプローブをハイブリダイズさせ(すなわち、特異的に結合させ)ようとする試みは、結果として、陰性結果を生じうる(すなわち、プローブは、染色体の欠けている部分を含むのではないかと疑われる遺伝物質を含む試料に結合することができない)。従って、染色体の特定の部分と相同的なプローブのハイブリダイゼーションは、染色体の一部における変化を検出するために用いられうる。
用語「染色体に関連した配列」とは、染色体の調製物(例えば、分裂中期の染色体のスプレッド)、染色体DNAを含む試料から抽出される核酸(例えば、ゲノムDNAの調製物);染色体上に位置した遺伝子の転写により生じるRNA(例えば、hnRNAおよびmRNA)および染色体上に位置したDNAから転写されたRNAのcDNAコピーを意味する。染色体に関連した配列は、上で列挙された調製物における核酸と相同的な配列を含むプローブでの、サザンおよびノーザンブロットの探索、ならびにRNA、DNAまたは分裂中期染色体へのインサイチューハイブリダイゼーションを含む多数の技術により検出されうる。
本明細書に用いられる場合、構造遺伝子に関して用いられる時の用語「コード領域」は、mRNA分子の翻訳の結果としての新生ポリペプチドに見出されるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を指す。コード領域は、真核生物において、開始メチオニンをコードするヌクレオチドトリプレット「ATG」により5'側に、および終止コドンを特定する3つのトリプレット(すなわち、TAA、TAG、TGA)の1つにより3'側に、結合されている。
本明細書に用いられる場合、用語「精製された」または「精製するために」とは、試料からの夾雑物の除去を指す。例えば、REEPおよび/またはRTP抗体は、混入している非免疫グロブリンタンパク質の除去により精製される;それらはまた、REEPおよび/またはRTPポリペプチドを結合しない免疫グロブリンの除去により精製される。非免疫グロブリンタンパク質の除去ならびに/またはREEPおよび/もしくはRTPポリペプチドを結合しない免疫グロブリンの除去は、結果として、試料におけるREEP1、RTP1またはRTP2反応性免疫グロブリンのパーセントにおける増加を生じる。もう一つの例において、組換えREEPおよび/またはRTPポリペプチドは、細菌宿主細胞に発現され、ポリペプチドは、宿主細胞タンパク質の除去により精製される;組換えREEPおよび/またはRTPポリペプチドのパーセントは、それにより、試料において増加している。
本明細書に用いられる場合、用語「組換えDNA分子」は、分子生物学的技術によって合わせて結合されたDNAのセグメントから構成されるDNA分子を指す。
本明細書に用いられる場合、用語「組換えタンパク質」または「組換えポリペプチド」は、組換えDNA分子から発現されるタンパク質分子を指す。
本明細書に用いられる場合、用語「天然のタンパク質」は、ベクター配列によりコードされるアミノ酸残基を含まないタンパク質を示すために用いられる;すなわち、天然のタンパク質は、それが天然で発生する時のタンパク質に見出されるそれらのアミノ酸のみを含む。天然のタンパク質は、組換え手段により産生されうる、または天然に存在する源から単離されうる。
本明細書に用いられる場合、タンパク質に関しての時の用語「部分」(「所定のタンパク質の一部」においてのような)は、そのタンパク質の断片を指す。断片は、サイズが、4個の連続したアミノ酸残基から、全アミノ酸配列マイナス1アミノ酸までの範囲でありうる。
用語「サザンブロット」は、サイズによりDNAを分画しうるアガロースまたはアクリルアミドゲル上でのDNAの分析、続いてゲルからニトロセルロースのような固体支持体またはナイロン膜へのDNAの転写を指す。固定化されたDNAは、その後、用いられたプローブと相補的なDNA種を検出するように標識プローブで探索される。DNAは、電気泳動の前に制限酵素で切断されうる。電気泳動後、DNAは、固体支持体への転写の前または間に、部分的に脱プリンされ、変性されうる。サザンブロットは、分子生物学者の標準的ツールである(J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, NY, pp 9.31-9.58 [1989])。
本明細書に用いられる場合、用語「ノーザンブロット」は、サイズによりRNAを分画しうるアガロースゲル上でのRNAの電気泳動、続いてゲルからニトロセルロースのような固体支持体またはナイロン膜へのRNAの転写によるRNAの分析を指す。固定化されたRNAは、その後、用いられたプローブと相補的なRNA種を検出するように標識プローブで探索される。ノーザンブロットは、分子生物学者の標準的ツールである(J. Sambrook et al., 前記, pp 7.39-7.52 [1989])。
用語「ウェスタンブロット」は、ニトロセルロースのような支持体または膜上へ固定化されたタンパク質(またはポリペプチド)の分析を指す。タンパク質は、タンパク質を分離するためにアクリルアミドゲル上に流され、続いて、ゲルからニトロセルロースのような固体支持体またはナイロン膜へタンパク質を転写させる。固定化されたタンパク質は、その後、対象となる抗原に対する反応性をもつ抗体に曝される。抗体の結合は、放射標識された抗体の使用を含む様々な方法により検出されうる。
本明細書に用いられる場合、用語「抗原決定基」は、特定の抗体に接触する抗原のその部分(すなわち、エピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質の断片が宿主動物を免疫するために用いられる場合、タンパク質の多数の領域は、タンパク質上の所定の領域または3次元構造に特異的に結合する抗体の産生を誘導しうる;これらの領域または構造は、抗原決定基と呼ばれる。抗原決定基は、抗体への結合において、無傷の抗原(すなわち、免疫応答を誘発するために用いられる「免疫原」)と競合しうる。
本明細書に用いられる場合、用語「導入遺伝子」は、遺伝子を新しく受精した卵または初期胚へ導入することにより生物体へ置かれる外来の、異種のまたは自己の遺伝子を指す。用語「外来遺伝子」は、実験操作により動物のゲノムへ導入される任意の核酸(例えば、遺伝子配列)を指し、導入された遺伝子が天然に存在する遺伝子と同じ位置に存在しない限り、その動物に見出される遺伝子配列を含みうる。用語「自己遺伝子」は、天然に存在する遺伝子の変種(例えば、多型または突然変異体)を含むことを意図される。導入遺伝子という用語は、従って、天然に存在する遺伝子の、その遺伝子の変種型との置換を含む。
本明細書に用いられる場合、用語「ベクター」は、DNAセグメントを一つの細胞からもう一つへ移動させる核酸分子に関して用いられる。用語「媒体」は、時々、「ベクター」と交換可能に用いられる。
本明細書に用いられる場合、用語「発現ベクター」は、所望のコード配列、および特定の宿主生物体において実施可能に連結したコード配列の発現に必要である適切な核酸配列を含む、組換えDNA分子を指す。原核生物における発現に必要な核酸配列は、通常、プロモーター、オペレーター(任意の)、およびリボソーム結合部位を、しばしば他の配列と共に、含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結およびポリアデニル化のシグナルを利用することが知られている。
本明細書に用いられる場合、用語「宿主細胞」は、インビトロに位置するかまたはインビボに位置するかに関わらず、任意の真核細胞または原核細胞(例えば、大腸菌(E. coli)のような細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、トリ細胞、両生類細胞、植物細胞、魚細胞、および昆虫細胞)を指す。例えば、宿主細胞は、トランスジェニック動物に位置しうる。
用語「過剰発現」および「過剰に発現させること」ならびに文法的相当語句は、対照または非トランスジェニック動物における所定の組織に典型的に観察されるものより約3倍高い発現のレベルを示しうるmRNAのレベルに関して用いられる。mRNAのレベルは、限定されるわけではないが、ノーザンブロット分析を含む当業者に公知のいくつかの技術のいずれかを用いて測定される(ノーザンブロット分析を行うためのプロトコールについて、実施例10を参照)。
本明細書に用いられる場合、用語「トランスフェクション」は、外来DNAの真核細胞への導入を指す。トランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈法、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、ポリブレン媒介型トランスフェクション、電気穿孔法、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、および微粒子銃を含む、当技術分野に公知の様々な手段により達成されうる。
用語「安定なトランスフェクション」または「安定にトランスフェクションされた」とは、トランスフェクションされた細胞のゲノムへの外来DNAの導入および組み込みを指す。用語「安定なトランスフェクタント」は、ゲノムDNAへ安定に組み込まれた外来DNAを有する細胞を指す。
用語「一過性トランスフェクション」または「一過性にトランスフェクションされた」とは、外来DNAが、トランスフェクションされた細胞のゲノムへ統合されることができない場合の外来DNAの細胞への導入を指す。外来DNAは、トランスフェクションされた細胞の核に数日間、存続する。この期間中、外来DNAは、染色体における内因性遺伝子の発現を支配する制御管理下に置かれる。用語「一過性トランスフェクタント」は、外来DNAを取り込んだが、このDNAを統合することができなかった細胞を指す。
用語「リン酸カルシウム共沈法」とは、核酸の細胞への導入のための技術を指す。核酸の細胞による取り込みは、核酸がリン酸カルシウム-核酸共沈殿物として与えられる場合、増強される。Grahamおよびvan der Eb(Graham and van der Eb, Virol., 52:456 [1973])の最初の技術は、特定の型の細胞のために条件を最適化するためにいくつかのグループにより改変されている。当技術分野は、これらの多数の改変をよくわかっている。
本明細書に用いられる場合、「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」は、幅広く、所定のポリヌクレオチド配列を含む任意の組成物を指す。組成物は、水溶液を含みうる。REEP1、RTP1、またはRTP2をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号:1、2および3)またはそれらの断片を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして用いられうる。この場合、REEPおよび/またはRTPコードポリヌクレオチド配列は、典型的には、塩(例えば、NaCl)、界面活性剤(例えば、SDS)、および他の成分(例えば、デンハルト液、ドライミルク、サケ精子DNAなど)を含む水溶液中で用いられる。
用語「試験化合物」は、疾患(disease)、病気(illness)、疾病(sickness)、または身体の機能の障害(disorder)を処置または予防する、または別なふうに、試料の生理学的もしくは細胞性状態を変化させるために用いられうる、任意の化学的実体、医薬品、薬物などを指す。試験化合物は、既知および可能性のある治療用化合物の両方を含む。試験化合物は、本発明のスクリーニング方法を用いるスクリーニングにより治療に役立つことを決定されうる。「既知の治療用化合物」は、そのような処置または予防において有効であることが示されている(例えば、動物試験またはヒトへの投与に関する前の経験を通して)治療用化合物を指す。
本明細書に用いられる場合、用語「試料」は、それの最も広い意味で用いられる。ヒト染色体またはヒト染色体に関連した配列を含むのではないかと疑われる試料は、細胞、細胞から単離された染色体(例えば、分裂中期の染色体のスプレッド)、ゲノムDNA(溶液中またはサザンブロット分析のためのような固体支持体に結合した)、RNA(溶液中またはノーザンブロット分析のためのような固体支持体に結合した)、cDNA(溶液中または固体支持体に結合した)などを含みうる。タンパク質を含むのではないかと疑われる試料は、細胞、組織の一部、1つまたは複数のタンパク質を含む抽出物などを含みうる。
本明細書に用いられる場合、アッセイに関して用いられる時の用語「応答」は、検出可能なシグナルの発生(例えば、レポータータンパク質の蓄積、イオン濃度における増加、検出可能な化学的生成物の蓄積)を指す。
本発明に用いられる場合、用語「レポーター遺伝子」は、アッセイされうるタンパク質をコードする遺伝子を指す。レポーター遺伝子の例は、限定されるわけではないが、ルシフェラーゼ(例えば、deWet et al., Mol. Cell. Biol. 7:725 [1987]および米国特許第6,074,859号;第5,976,796号;第5,674,713号;および第5,618,682号を参照;すべては参照により本明細書に組み入れられている)、緑色蛍光タンパク質(例えば、GenBankアクセッション番号U43284;いくつかのGFP変種は、CLONTECH Laboratories, Palo Alto, CAから市販されている)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および西洋ワサビペルオキシダーゼを含む。
一般的説明
嗅覚の符号化を理解するにおける継続的な進歩は、同族のリガンドを同定するために異種細胞においてORを機能的に発現させることができないことにより著しく妨げられてきた。この問題を克服するために、本発明の過程において行われた実験は、ORの細胞表面発現に含まれる分子を探索した。293T細胞においてORの機能的細胞表面発現を促進する、3つの膜貫通タンパク質、REEP1、RTP1およびRTP2、加えてそれらの変種が、同定された。REEPおよび/またはRTPは、嗅覚上皮における嗅覚ニューロンにより特異的に発現される。REEP1およびRTP1はORタンパク質と相互作用する。REEP1ならびにRTP1およびRTP2を発現させる細胞を用いて、脂肪族匂い物質に応答する新しいORが同定された。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するのに必要ではない。それにもかかわらず、本発明の過程において行われた実験は、機能的細胞表面発現における、およびOR-リガンド特異性を解読するにおける、ORのアクセサリータンパク質の重要性を実証した。
ORの局在化に関与するタンパク質の同定および使用は、多数の研究、診断、薬物スクリーニング、および治療の適用を提供する。例えば、本発明の核酸およびタンパク質は、試験細胞上での選択的かつ制御可能なORの提示が、とりわけ、新しいORを同定する、ORを特徴付ける、ORリガンドを同定する、嗅覚応答をそのような応答の根底にある分子相互作用と関連づける、嗅覚応答および健康状態に関与するORおよびリガンドの群を同定および特徴付ける、ならびに、嗅覚応答を研究および調節するためにOR応答の制御因子を同定、選択および特徴付けることを可能にする。本発明はまた、従って、嗅覚応答を操作するための手段、ならびにインビトロおよびインビボでのそのような応答についての分子基盤を提供する。化合物をスクリーニングすること(例えば、高処理量スクリーニング)または合成的嗅覚系としての使用のための、所望の局在化されたORを発現させるインビトロまたはインビボ細胞アレイの製造、特徴付けおよび使用を含む、多数の商業的適用がこのように可能となる。多数ある中でも、食品産業、健康産業、化粧品産業、軍、衛生機関、捜索動物(例えば、薬物、爆発物、事故の犠牲者などについて)を含む任意の産業が、本発明の組成物および方法の使用を見出すものと思われる。
本発明の方法により同定されるOR/リガンド相互作用のインヒビター(例えば、抗体、低分子、アプタマーなど)は多くの使用を見出す。例えば、本発明は、どの受容体およびリガンドが特定の嗅覚(例えば、知覚される香気)に関与しているかを同定するための系統的方法を提供する。従って、例えば、特定の相互作用を遮断すること(例えば、インヒビターを有する鼻腔用スプレーによる)、または特定の相互作用を増強すること(例えば、特定のリガンドを供給する鼻腔用スプレー、または特定のリガンドを放射する物体の表面上のコーティングによる)により、知覚される香気を調節することができる。従って、望ましくない香気は、遮断されうる、覆われうる、または変化させられうり(例えば、捜索犬は、関心のある標的の匂いを嗅ぐのみで、注意をそらさせる他の匂いを嗅がないように処理されうる、清掃作業員は廃棄物の香気に対して免疫にさせられうる、など)、望ましい香気は増強されうる。
本発明はまた、新規な遺伝子およびタンパク質配列ならびにそれらの使用の方法を提供する。本発明の特定の好ましい態様および使用の詳細な説明は、下に記載されている。本発明は、これらの特定の例証的態様に限定されない。
発明の詳細な説明
本発明は、匂い物質受容体細胞表面局在化および匂い物質受容体機能発現を促進する能力があるポリペプチドに関する。本発明はさらに、治療剤の検出について、ならびに疾患状態に関連した匂い物質受容体アクセサリータンパク質多型および突然変異の検出についてのアッセイ法を提供する。本発明の例示的な態様は下に記載されている。
本発明の例示的な組成物および方法は、以下のセクションにおいてより詳細に記載されている:I. 嗅覚;II. REEPおよびRTPポリヌクレオチド;III. REEPおよびRTPポリペプチド;IV. REEPおよびRTP対立遺伝子の検出;V. REEPおよびRTP抗体の作製;VI. REEPおよびRTPを用いる遺伝子治療;VII. 外因性REEPおよびRTP遺伝子ならびにそれらの相同体、突然変異体および変種を発現させるトランスジェニック動物;VIII. REEPおよびRTPを用いる薬物スクリーニング;IX. REEPおよびRTP核酸、ペプチドならびに類似体を含む薬学的組成物;X. RNA干渉(RNAi);XI. REEPおよびRTPについてのRNAi;ならびに、XII. 匂い物質受容体リガンドの同定。
本発明の実施は、他に規定がない限り、当技術分野の技術範囲内である、有機化学、薬理学、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、および免疫学の通常の技術を用いる。そのような技術は、それぞれが全体として参照により本明細書に組み入れられている、「Molecular cloning: a laboratory manual」第2版(Sambrook et al., 1989);「Oligonucleotide synthesis」(M.J. Gait, ed., 1984);「Animal cell culture」(R.I. Freshney, ed., 1987);シリーズ「Methods in enzymology」(Academic Press, Inc.);「Handbook of experimental immunology」(D.M. Weir & C.C. Blackwell, eds.);「Gene transfer vectors for mammalian cells」(J.M. Miller & M.P. Calos, eds., 1987);「Current protocols in molecular biology」(F.M. Ausubel et al., eds, 1987および定期的更新);「PCR: the polymerase chain reaction」(Mullis et al., eds., 1994);および「Current protocols in immunology」(J.E. Coligan et al., eds. 1991)のような文献に完全に説明されている。
I. 嗅覚
嗅覚系は、哺乳動物の系統発生的歴史において最も古い感覚様式の一つを表す。嗅覚は、齧歯類のような他の哺乳動物よりヒトにおいてあまり発達していない。化学的センサーとして、嗅覚系は、食物を見つけ、社会的および性的行動に影響を及ぼす。特定された嗅覚上皮細胞は、再生能力があるニューロンの群のみを特徴付ける。匂いのある分子が、嗅覚胞として知られた、特定された突起と接触する場合、活性化が生じる。鼻腔内において、鼻甲介(nasal conchaおよびturbinate)は、吸気を上後部における嗅覚上皮へ方向づける働きをする。この領域(ほんの2、3センチメートル幅)は、1億個より多い嗅覚受容体細胞を含む。これらの特定された上皮細胞は、刺激伝達の部位としての役割を果たす運動毛を含む嗅覚胞を生じる。
ヒトにおいて鼻腔内に存在する3つの特定された神経系がある:1)主要な嗅覚系(脳神経(cranial nerve)I)、2)三叉神経体性感覚系(脳神経V)、3)神経終末(脳神経0)。CN Iは臭覚を媒介する。それは、香味を決定することに関与する。CN Vは、灼熱、冷却、刺激およびくすぐったい感じを含む体性感覚を媒介する。CN 0は、神経節のある神経叢である。それは、篩板を巡って嗅索の内側の前脳に入る前に、鼻粘膜の大部分に広がる。神経終末の正確な機能は、ヒトにおいて知られていない。
嗅覚神経上皮は、多列円柱上皮である。特定された嗅覚上皮細胞は、再生能力のある唯一のニューロン群である。嗅覚上皮は、篩板、上鼻甲介、上隔膜、および中鼻甲介の部分を含む、各鼻孔の上面に位置している。それは、主要な嗅覚系の感覚受容体およびいくつかのCN V自由神経終末を有する。嗅覚上皮は、出生後にそれの全体的な均一性を失い、早くも一生の最初の2、3週間で、呼吸器様上皮の化生領域(metaplastic islands)が現れる。化生は、一生を通じて大きさが増加する。この過程は、ウイルス、細菌および毒素のような環境からの侵襲の結果であると推定されている。
嗅覚神経上皮において6つの別個の細胞型がある:1)両極性感覚受容体ニューロン、2)微絨毛細胞、3)支持細胞、4)球状基底細胞、5)水平基底細胞、6)ボーマン腺を裏打ちしている細胞。成体嗅覚神経上皮において約6,000,000個の両極性ニューロンがある。それらは、嗅糸を形成する、一端に繊毛および他端に長中心突起を含む桿体をもつ薄い樹状細胞である。嗅覚受容体は、繊毛樹状末端に位置している。無髄軸索は、嗅糸と呼ばれる40個の束へ合体し、シュワン様細胞により鞘で覆われる。繊条組織は、篩板を横断して、前頭蓋窩へ入り、CN Iを構成する。微絨毛細胞は、神経上皮の表面近くにあるが、これらの細胞の正確な機能は知られていない。支持細胞もまた、上皮の表面にある。それらは、ニューロンおよび微絨毛細胞ときつく結合している。それらはまた、微絨毛を粘液へ突き出す。それらの機能は、受容体細胞をお互いから隔離すること、粘液の組成を制御すること、匂い物質を不活性化すること、および上皮を外来性作用物質から保護することを含む。基底細胞は、基底膜の近くに位置しており、他の細胞型が生じる前駆細胞である。ボーマン腺は、嗅覚上皮の領域内の粘液の主な源である。
匂い物質受容体は、受容体細胞の繊毛上に位置している。各受容体細胞は、単一の匂い物質受容体遺伝子を発現させる。現在のところ、受容体の約1,000個のクラスがある。嗅覚受容体は、刺激性グアニンヌクレオチド結合タンパク質Golfに連結している。刺激された場合、それは、アデニル酸シクラーゼを活性化して第2メッセンジャーcAMPを生成し、その後の事象は、細胞膜の脱分極およびシグナル伝播へ導く。各受容体細胞は、受容体の1つの型を発現させるのみであるが、各細胞は、広いが制限された範囲の刺激物に対して電気生理学的に応答する。これは、単一の受容体が一連の分子実体を受け入れることを暗示している。
嗅球は、前頭蓋窩における前頭葉の基底部の篩板の先端に位置している。それは、嗅覚受容体ニューロンから何千個という一次軸索を受ける。嗅球内で、これらの軸索は、嗅索を形成するずっと少数の二次ニューロンとシナプスを形成し、嗅覚皮質へ投射する。嗅覚皮質は、前頭葉および側頭葉、視床、ならびに視床下部を含む。
哺乳動物ORは10年よりも前に同定されたが、主として、異種細胞の細胞表面上にORを発現させ、それらのリガンド結合特異性をアッセイすることが困難であったため、化学的刺激物質に対する異なるORの選択性について、ほとんど知られていない(例えば、Mombaerts, P. (2004) Nat Rev Neurosci 5, 263-278参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。その理由は、ORタンパク質が、ERに保持され、その後、プロテオソームにおいて分解されることである(例えば、Lu, M., et al., (2003) Traffic 4, 416-433; McClintock, T.S., (1997) Brain Res Mol Brain Res 48, 270-278;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。これらの困難にもかかわらず、広範な努力により、約20個のORが、様々な程度の確信をもって、同族リガンドと適合した(例えば、Bozza, T., et al., (2002) J Neurosci 22, 3033-3043; Gaillard, I., et al., (2002) Eur J Neurosci 15, 409-418; Hatt, H., et al., (1999) Cell Mol Biol 45, 285-291; Kajiya, K., et al., (2001) J Neurosci 21, 6018-6025; Krautwurst, D., et al., (1998) Cell 95, 917-926; Malnic, B., et al., (1999) Cell 96, 713-723; Raming, K., et al., (1993) Nature 361, 353-356; Spehr, M., et al., (2003) Science 299, 2054-2058; Touhara, K., et al., (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96, 4040-4045; Zhao, H., et al., (1998) Science 279, 237-242を参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。ロドプシンの20個のN末端アミノ酸(例えば、Rhoタグ)または外来シグナルペプチドをN末端へ付加することは、異種細胞においていくつかのORの表面発現を促進する(例えば、Hatt, H., et al., (1999) Cell Mol Biol 45, 285-291; Krautwurst, D., et al., (1998) Cell 95, 917-926参照;それぞれ、全体として本明細書に組み入れられている)。しかしながら、たいていのORについて、改変は、細胞表面発現を確実には促進しない。例えば、線虫(C. elegans)において化学感受性受容体の適切な局在化に必要とされるODR-4は、一つのラットORの細胞表面発現を促進することに小さな効果を生じるが、別のORへは生じない(例えば、Gimelbrant, A.A., et al., (2001) J Biol Chem 276, 7285-7290参照;参照により本明細書に組み入れられている)。これらの発見は、嗅覚ニューロンが、ORタンパク質の細胞表面への適切なターゲティングを促進する選択的分子機構をもつことを示しているが、この機構の成分は同定されていない(例えば、Gimelbrant, A.A., et al., (2001) J Biol Chem 276, 7285-7290; McClintock, T.S., and Sammeta, N. (2003) Neuroreport 14, 1547-1552参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。
いくつかのGPCRについて、アクセサリータンパク質が、細胞表面膜への正しいターゲティングに必要とされる(例えば、Brady, A.E., and Limbird, L.E. (2002) Cell Signal 14, 297-309参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。これらのタンパク質は、ショウジョウバエ(Drosophila)のロドプシンについてNinaA(例えば、Baker, E.K., et al., (1994) Embo J 13, 4886-4895; Shieh, B.H., et al., (1989) Nature 338, 67-70参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)、哺乳動物の錐体オプシンについてRanBP2(例えば、Ferreira, P.A., et al., (1996) Nature 383, 637-640参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)、哺乳動物のカルシトニン受容体様受容体(CRLR)についてRAMP(例えば、McLatchie, L.M., et al., (1998) Nature 393, 333-339参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)、および最後に、V2R、推定上の哺乳動物のフェロモン受容体、についてMHCクラスIタンパク質およびβ2ミクログロブリンのM10ファミリー(例えば、Loconto, J., et al., (2003) Cell 112, 607-618参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)を含む。NinaAおよびRanBP2を例外として、これらのアクセサリータンパク質のいずれも、お互いとの少しの配列相同性も共有しない;それらの唯一の共通した特徴は、それらの膜との結合である。
本発明は、OR細胞表面局在化およびOR機能発現を促進する、新規なタンパク質(例えば、REEP1、RTP1、RTP2、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、RTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6))、ならびにこれらの発見に関連した多数の組成物および方法を提供する。
II. REEPおよびRTPポリヌクレオチド
上記のように、本発明は、匂い物質受容体細胞表面局在化および匂い物質受容体機能発現を促進する新規なタンパク質を提供する。特に、本発明は、REEP遺伝子およびポリペプチド(例えば、REEP1、REEP2、REEP3、REEP4、REEP5およびREEP6)、ならびにRTP遺伝子およびポリペプチド(例えば、RTP1、RTP2、RTP3、RTP4、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、RTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6))を提供する。好ましい態様において、REEP1、RTP1、RTP2およびRTP1の変種(例えば、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、およびRTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6))は、匂い物質受容体細胞表面局在化および匂い物質受容体機能発現を促進する。
従って、本発明は、限定されるわけではないが、配列番号:1〜12に記載されたものを含む、REEP遺伝子、相同体、変種(例えば、多型および突然変異体)をコードする核酸を提供する。本発明は、限定されるわけではないが、配列番号:13〜20に記載されたものを含む、RTP遺伝子、相同体、変種(例えば、多型および突然変異体)をコードする核酸を提供する。表1は、本発明の例示的なREEPおよびRTP遺伝子を記載する。いくつかの態様において、本発明は、ハイブリダイズする能力があるポリヌクレオチド配列が、天然に存在するREEPおよび/またはRTPタンパク質の生物活性を保持するタンパク質をコードする限り、低〜高ストリンジェント性の条件下で配列番号:1〜20にハイブリダイズする能力があるポリヌクレオチド配列を提供する。いくつかの態様において、天然に存在するREEPおよび/またはRTPの生物活性を保持するタンパク質は、野生型REEPおよび/またはRTPと70%相同性、好ましくは野生型REEPおよび/またはRTPと80%相同性、より好ましくは野生型REEPおよび/またはRTPと90%相同性、ならびに最も好ましくは野生型REEPおよび/またはRTPと95%相同性である。好ましい態様において、ハイブリダイゼーション条件は、核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基づいており、上で説明されているように、定義された「ストリンジェント性」を与える(例えば、参照により本明細書に組み入れられている、Wahl, et al., Meth. Enzymol., 152:399-407 (1987)を参照)。
本発明の他の態様において、REEPおよび/またはRTP遺伝子の追加の対立遺伝子が提供される。好ましい態様において、対立遺伝子は、多型または突然変異(すなわち、核酸配列における変化)に起因し、一般的に、構造または機能が変化している場合もあるし、していない場合もある、変化したmRNAまたはポリペプチドを産生する。任意の所定の遺伝子は、対立遺伝子型を、全くもたない、1つもつ、または多くもつ場合がある。対立遺伝子を生じさせるよくある突然変異的変化は、一般的に、核酸の欠失、付加または置換に帰せられる。これらの型の変化のそれぞれは、単独でまたは他のものと組み合わせて、かつ所定の配列において1回または複数回の割合で、起こりうる。追加の例は、切り詰め突然変異(例えば、コードされたmRNAが完全なタンパク質を産生しないような)を含む。
本発明のさらに他の態様において、本発明のヌクレオチド配列は、遺伝子産物のクローニング、プロセシングおよび/または発現を改変する変化を含む、様々な理由で、REEPおよび/またはRTPコード配列を変化させるために操作されうる。例えば、突然変異は、当技術分野において周知である技術(例えば、新しい制限部位を挿入するための、グリコシル化パターンを変化させるための、コドン優先を変化させるための、部位特異的突然変異誘発など)を用いて導入されうる。RTP1の変種は、限定されるわけではないが、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、およびRTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6)を含む。
本発明のいくつかの態様において、REEPおよび/またはRTPのポリヌクレオチド配列は、プロモーターおよび制御エレメントのような上流配列を検出するための当技術分野において公知の様々な方法にそのヌクレオチド配列を利用して、伸長されうる。例えば、制限部位ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は本発明での使用を見出すことが企図される。これは、既知の座に隣接した未知の配列を回収するようにユニバーサルプライマーを用いる直接的方法である(Gobinda et al., PCR Methods Applic., 2:318-22 (1993);全体として参照により本明細書に組み入れられている)。まず、ゲノムDNAは、リンカー配列へのプライマーおよび既知の領域に特異的なプライマーの存在下において、増幅される。増幅された配列は、その後、同じリンカープライマー、および最初のものの内部のもう一つの特異的プライマーでのPCRの第2ラウンドにかけられる。PCRの各ラウンドの産物は、適切なRNAポリメラーゼで転写され、逆転写酵素を用いてシーケンシングされる。
もう一つの態様において、インバースPCRが、既知の領域に基づいた多岐にわたるプライマーを用いて配列を増幅または伸長するために用いられる(Triglia et al., Nucleic Acids Res., 16:8186 [1988])。プライマーは、長さが22〜30ヌクレオチドであるように、50%以上のGC含有量を有するように、および約68〜72℃の温度で標的配列にアニールするように、Oligo 4.0(National Biosciences Inc, Plymouth Minn.)、またはもう一つの適切なプログラムを用いて設計されうる。方法は、遺伝子の既知の領域において適した断片を生じるようにいくつかの制限酵素を用いる。断片は、その後、分子内ライゲーションにより環状化され、PCR鋳型として用いられる。さらに他の態様において、ウォーキングPCRが利用される。ウォーキングPCRは、未知の配列の回収を可能にする、標的にされる遺伝子のウォーキングについての方法である(Parker et al., Nucleic Acids Res., 19:3055-60 [1991])。PROMOTERFINDERキット(Clontech)は、ゲノムDNAの「中を歩く」ように、PCR、ネステッド(nested)プライマー、および特殊なライブラリーを用いる。この過程は、ライブラリーをスクリーニングする必要性を避け、イントロン/エクソン接合部を見出すにおいて有用である。
完全長cDNAについてスクリーニングするための好ましいライブラリーは、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択された哺乳動物ライブラリーを含む。また、ランダムプライムされたライブラリーは、それらが5'および上流遺伝子領域を含むより多くの配列を含む点で、好ましい。ランダムにプライムされたライブラリーは、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを生じない場合、特に有用でありうる。ゲノム哺乳動物ライブラリーは、イントロンを得ることおよび5'配列を伸長することのために有用である。
本発明の他の態様において、開示されたREEPおよび/またはRTP配列の変種が提供される。好ましい態様において、変種は、多型または突然変異(すなわち、核酸配列における変化)に起因し、一般的に、構造または機能が変化している場合もあるし、していない場合もある、変化したmRNAまたはポリペプチドを産生する。任意の所定の遺伝子は、変種型を、全くもたない、1つもつ、または多くもつ場合がある。変種を生じさせるよくある突然変異的変化は、一般的に、核酸の欠失、付加または置換に帰せられる。これらの型の変化のそれぞれは、単独でまたは他のものと組み合わせて、かつ所定の配列において1回または複数回の割合で、起こりうる。
生物活性(例えば、変化したREEPおよび/またはRTP機能)を変化させるような目的のために、機能(例えば、REEPおよび/またはRTP機能)を有するペプチドの構造を改変することが可能であることが、企図される。そのような改変されたペプチドは、本明細書に定義されているようなREEPおよび/またはRTPペプチドの活性を有するペプチドの機能的等価物とみなされる。ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、置換、欠失または付加によるように変化している改変されたペプチドが、作製されうる。特に好ましい態様において、これらの改変は、改変されたREEPおよび/またはRTP遺伝子の生物活性を有意には低下させない。換言すれば、構築物「X」は、構造的よりもむしろ、機能的に定義されているような本発明の改変されたもしくは変種REEPおよび/またはRTPの部類のメンバーであるかどうかを決定するために評価されうる。好ましい態様において、変種REEPおよび/またはRTPポリペプチドの活性は、本明細書に記載された方法により評価される(例えば、トランスジェニック動物の作製またはシグナル伝達アッセイ法の使用)。
さらに、上記のように、REEPおよび/またはRTP遺伝子の変種型はまた、本明細書でより詳細に示されているそれらのペプチドおよびDNA分子と等価であるとして企図される。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンとの、アスパラギン酸のグルタミン酸との、トレオニンのセリンとの単独の置換、またはアミノ酸の構造的に関連したアミノ酸との類似した置換(すなわち、保存的突然変異)が、その結果として生じる分子の生物活性へ重大な影響を及ぼさないであろうことが、企図される。従って、本発明のいくつかの態様は、保存的置換を含むREEPおよび/またはRTPの変種を提供する。保存的置換は、それらの側鎖において関連しているアミノ酸のファミリー内で起こるものである。遺伝子コードされるアミノ酸は、4つのファミリーへ分けられうる:(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2)塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン);(3)非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);および(4)非荷電性極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、時々、芳香族アミノ酸としていっしょに分類される。類似した様式において、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2)塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、(3)脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン)、セリンおよびトレオニンは、脂肪族-ヒドロキシルとして分かれて分類されてもよい;(4)芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);(5)アミド(アスパラギン、グルタミン);および(6)イオウ含有(システインおよびメチオニン)として分類されうる(例えば、Stryer ed., Biochemistry, pg. 17-21, 第2版, WH Freeman and Co., 1981)。ペプチドのアミノ酸配列における変化が結果として、機能的ポリペプチドを生じるかどうかは、野生型タンパク質と類似した様式で機能する変種ペプチドの能力を評価することにより容易に決定されうる。1つより多い置換を有するペプチドは、同じ様式で容易に試験されうる。
よりまれには、変種は、「非保存的」変化(例えば、グリシンのトリプトファンとの置換)を含む。類似の軽微な変異もまた、アミノ酸欠失もしくは挿入、または両方を含みうる。生物活性を消失させることなく、どのアミノ酸残基が置換、挿入または欠失されうるかを決定するにおける案内は、コンピュータプログラム(例えば、LASERGENEソフトウェア, DNASTAR Inc., Madison, Wis.)を用いて見出されうる。
下でより詳細に記載されているように、変種は、下でより詳細に記載された、変種のコンビナトリアルライブラリーを作製するための方向をもった進化または他の技術のような方法により作製されうる。本発明のさらに他の態様において、本発明のヌクレオチド配列は、限定されるわけではないが、遺伝子産物のクローニング、プロセシング、局在化、分泌、および/または発現を改変する変化を含む、REEPおよび/またはRTPコード配列を変化させるために操作されうる。例えば、突然変異が、当技術分野において周知である技術(例えば、新しい制限部位を挿入する、グリコシル化パターンを変化させる、またはコドン優先を変化させるための、部位特異的突然変異誘発など)を用いて導入されうる。
RTP1の変種は、限定されるわけではないが、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、およびRTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6)を含む。
III. REEPおよびRTPポリペプチド
他の態様において、本発明は、REEPおよび/またはRTPポリペプチド配列(例えば、それぞれ、配列番号:21〜40、41〜50のポリペプチド)をコードするREEPおよび/またはRTPポリヌクレオチド配列を提供する。好ましい態様において、本発明は、配列番号:1、7、13、14、17および18、ならびに配列番号:1、7、13、14、17および18と少なくとも80%同一であるそれらの変種からなる群より選択される核酸によりコードされるポリペプチドを提供する。さらなる態様において、タンパク質は、配列番号:1、7、13、14、17および18と少なくとも90%同一である。なおさらなる態様において、タンパク質は、配列番号:1、7、13、14、17および18と少なくとも95%同一である。本発明の他の態様は、REEPおよび/もしくはRTPタンパク質の断片、融合タンパク質、または機能的等価物を提供する(例えば、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、およびRTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6))。いくつかの態様において、本発明は、REEPおよび/またはRTPポリペプチドの突然変異体を提供する。本発明のさらに他の態様において、REEPおよび/またはRTP変種、相同体、ならびに突然変異体に対応する核酸配列は、適切な宿主細胞においてREEPおよび/またはRTP変種、相同体、ならびに突然変異体の発現を指揮する組換えDNA分子を作製するために用いられうる。本発明のいくつかの態様において、ポリペプチドは、自然に精製された産物でありうり、他の態様において、それは、化学合成的手順の産物でありうり、さらに他の態様において、それは、原核生物または真核生物の宿主を用いる(例えば、培養中の細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞により)組換え技術により産生されうる。いくつかの態様において、組換え産生手順に用いられる宿主に依存して、本発明のポリペプチドは、グリコシル化されうる、またはグリコシル化されえない。他の態様において、本発明のポリペプチドはまた、最初のメチオニンアミノ酸残基を含みうる。
本発明の一つの態様において、遺伝暗号の内在的縮重のために、配列番号:21〜50のポリヌクレオチド配列以外の、実質的に同じの、または機能的に等価のアミノ酸配列をコードするDNA配列が、REEPおよび/またはRTPタンパク質をクローニングして発現させるために用いられうる。一般的に、そのようなポリヌクレオチド配列は、上記のような高〜中位のストリンジェント性の条件下で配列番号:21〜50の1つにハイブリダイズする。当業者により理解されているように、天然に存在しないコドンを有するREEPおよび/またはRTPコード化ヌクレオチド配列を作製することは、有利でありうる。それゆえに、いくつかの好ましい態様において、特定の原核生物または真核生物の宿主により好まれるコドン(Murray et al., Nucl. Acids Res., 17 [1989])が、例えば、REEPおよび/もしくはRTP発現の割合を増加させるように、または天然に存在する配列から産生される転写産物より、より長い半減期のような望ましい性質をもつ組換えRNA転写産物を産生するように、選択される。
好ましい態様において、REEP1、RTP1およびRTP2ポリペプチドは、匂い物質受容体細胞表面局在化および匂い物質受容体機能発現を促進する。
1. REEPおよびRTPの産生のためのベクター
本発明のポリヌクレオチドは、組換え技術によりポリペプチドを産生するために用いられうる。従って、例えば、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発現させるための様々な発現ベクターのいずれか1つに含まれうる。本発明のいくつかの態様において、ベクターは、限定されるわけではないが、染色体性、非染色体性および合成のDNA配列を含む(例えば、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA;バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせ由来のベクター、ならびにワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルスおよび仮性狂犬病のようなウイルスDNA)。宿主において複製可能かつ生存可能である限り、任意のベクターが用いられうることが、企図される。
特に、本発明のいくつかの態様は、広く上で記載されているような配列(例えば、配列番号:1〜20)の1つまたは複数を含む組換え構築物を提供する。本発明のいくつかの態様において、構築物は、本発明の配列が正または逆の配向で挿入されている、プラスミドまたはウイルスベクターのようなベクターを含む。さらに他の態様において、異種構造配列(例えば、配列番号:1〜20)は、翻訳開始および終結配列と適切な相で集合されている。本発明の好ましい態様において、適切なDNA配列は、様々な手順のいずれかを用いてベクターへ挿入される。一般的に、DNA配列は、当技術分野において公知の手順により適切な制限エンドヌクレアーゼ部位へ挿入される。
多数の適したベクターは、当業者に公知であり、市販されている。そのようなベクターは、限定されるわけではないが、以下のベクターを含む:1)細菌--pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen)、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pbluescript SK、pBSKS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene);ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia);2)真核生物--pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、PXT1、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia);ならびに3)バキュロウイルス--pPbacおよびpMbac(Stratagene)。宿主において複製可能かつ生存可能である限り、任意の他のプラスミドまたはベクターが用いられうる。本発明のいくつかの好ましい態様において、哺乳動物発現ベクターは、複製開始点、適したプロモーターおよびエンハンサー、ならびにまた、任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与体および受容体部位、転写終結配列、ならびに5'フランキング非転写配列も含む。他の態様において、SV40スプライスおよびポリアデニル化部位由来のDNA配列は、必要とされる非転写遺伝要素を供給するために用いられうる。
本発明の特定の態様において、発現ベクターにおけるDNA配列は、mRNA合成を指揮しうる適切な発現制御配列(プロモーター)へ実施可能に連結されている。本発明において有用なプロモーターは、限定されるわけではないが、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lacまたはtrp、ファージλPLおよびPR、T3およびT7プロモーター、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)最初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、およびマウスメタロチオネイン-Iプロモーター、ならびに原核もしくは真核細胞またはそれらのウイルスにおいて遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーターを含む。本発明の他の態様において、組換え発現ベクターは、複製開始点、および宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー(例えば、真核細胞培養についてジヒドロ葉酸レダクターゼもしくはネオマイシン耐性、または大腸菌におけるテトラサイクリンもしくはアンピシリン耐性)を含む。
本発明のいくつかの態様において、高等真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクターへエンハンサー配列を挿入することにより増加する。エンハンサーは、転写を増加させるようにプロモーターに作用する、通常、約10〜300 bpの、DNAのシス作用性エレメントである。本発明において有用なエンハンサーは、限定されるわけではないが、複製開始点の後期側上のbp 100〜270のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側上のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含む。
他の態様において、発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写ターミネーターを含む。本発明のさらに他の態様において、ベクターはまた、発現を増幅するための適切な配列を含みうる。
2. REEPおよびRTPポリペプチドの産生のための宿主細胞
さらなる態様において、本発明は、上記の構築物を含む宿主細胞を提供する。本発明のいくつかの態様において、宿主細胞は、高等真核細胞(例えば、哺乳動物または昆虫細胞)である。本発明の他の態様において、宿主細胞は、下等真核細胞(例えば、酵母細胞)である。本発明のさらに他の態様において、宿主細胞は、原核細胞(例えば、細菌細胞)でありうる。宿主細胞の特定の例は、限定されるわけではないが、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属内の様々な種、加えてサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞、ヨトウガ(Spodoptera)Sf9細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル腎臓線維芽細胞のCOS-7系(Gluzman, Cell 23:175 [1981])、C127、3T3、293、293T、HeLaおよびBHK細胞系を含む。
宿主細胞における構築物は、組換え配列によりコードされる遺伝子産物を産生するために通常の様式で用いられうる。いくつかの態様において、構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、または電気穿孔法により達成されうる(例えば、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, [1986])。または、本発明のいくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、通常のペプチド合成機により合成的に作製されうる。
タンパク質は、哺乳動物細胞、酵母、細菌または他の細胞において、適切なプロモーターの制御下で発現されうる。無細胞翻訳系もまた、本発明のDNA構築物由来のRNAを用いてそのようなタンパク質を産生するために用いられうる。原核生物および真核生物の宿主と共に使用するための適切なクローニングならびに発現ベクターは、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor, N.Y., [1989]により記載されている。
本発明のいくつかの態様において、適した宿主系統の形質転換および宿主系統の適切な細胞密度への増殖後、選択されたプロモーターは、適切な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘導)により誘導され、細胞は追付加期間、培養される。本発明の他の態様において、細胞は、典型的には、遠心分離により収集され、物理的または化学的手段により破壊され、その結果として生じた粗抽出物は、さらなる精製のために保持される。本発明のさらに他の態様において、タンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクリング、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む任意の通常の方法により破壊されうる。
好ましい態様において、本発明は、細胞表面、REEP1、RTP1、RTP2およびGαolf、に局在した匂い物質受容体(例えば、ヒト匂い物質受容体、マウス匂い物質受容体、合成匂い物質受容体)の発現を含む細胞系(例えば、異種293T細胞系)を提供する。いくつかの態様において、匂い物質受容体は、レポーティング剤(例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、c-myc、6-ヒスチジン(6X-His)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、インフルエンザAウイルス赤血球凝集素(HA)、b-ガラクトシダーゼ、およびGAL4)でタグを付けられる。この態様において記載された細胞系は、特定の匂い物質受容体に限定されない。いくつかの態様において、細胞系に発現された匂い物質受容体は、限定されるわけではないが、S6/79、S18、S46、S50、MOR23-1、MOR31-4、MOR31-6、MOR32-5、およびMOR32-11を含む。好ましい態様において、匂い物質受容体を発現させる細胞系は、匂い物質受容体の機能発現(例えば、リガンド特異性)の分類に用いられる。いっそうさらなる態様において、匂い物質受容体を発現させる細胞系は、動物の嗅覚の分類に用いられる。
3. REEPおよびRTPポリペプチドの精製
本発明はまた、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む、組換え細胞培養物からREEPおよび/またはRTPポリペプチドを回収ならびに精製するための方法を提供する。本発明の他の態様において、タンパク質再折り畳み段階は、成熟タンパク質の立体配置を完成するにおいて、必要に応じて用いられうる。本発明のさらに他の態様において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が、最終精製段階のために用いられうる。
本発明はさらに、本発明のポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列にインフレームで融合したREEPおよび/またはRTP遺伝子のコード配列(例えば、配列番号:1〜20)を有するポリヌクレオチドを提供する。マーカー配列の非限定的例は、細菌宿主の場合、マーカーに融合したポリペプチドの精製を提供する、ベクター、好ましくはpQE-9ベクター、により供給されうるヒキサヒスチジンタグである、または、例えば、マーカー配列は、哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞)が用いられる場合、赤血球凝集素(HA)タグでありうる。HAタグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する(Wilson et al., Cell, 37:767 [1984])。
4. REEPおよびRTPポリペプチドの切り詰め突然変異体
さらに、本発明は、REEPおよび/またはRTPポリペプチドの断片(すなわち、切り詰め突然変異体)を提供する。本発明のいくつかの態様において、REEPおよび/またはRTPタンパク質の一部の発現が望まれる場合、開始コドン(ATG)を、発現されるべき所望の配列を含むオリゴヌクレオチド断片へ付加することが必要である場合がある。N末端位におけるメチオニンは、酵素メチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)の使用により酵素的に切断されうる。MAPは、大腸菌(E. coli)(Ben-Bassat et al., J. Bacteriol., 169:751 [1987])およびサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)からクローニングされており、それのインビトロ活性は、組換えタンパク質に関して実証されている(Miller et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:2718 [1990])。それゆえに、必要に応じて、N末端メチオニンの除去が、インビボで、MAPを産生する宿主(例えば、大腸菌またはCM89またはS. セレビシエ(S. cerevisiae)においてそのような組換えポリペプチドを発現させることによるか、またはインビトロで、精製されたMAPの使用によるかのいずれかで達成されうる。
5. REEPおよびRTPを含む融合タンパク質
本発明はまた、本発明のREEPおよび/またはRTPポリペプチドの全部または部分を組み入れた融合タンパク質を提供する。従って、本発明のいくつかの態様において、ポリペプチドについてのコード配列は、異なるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む融合遺伝子の一部として組み入れられうる。発現系のこの型は、REEPおよび/またはRTPタンパク質の免疫原性断片を産生することが望ましい条件下で、使用を見出すことが、企図される。本発明のいくつかの態様において、ロタウイルスのVP6キャプシドタンパク質は、単量体形かまたはウイルス粒子の形をとるかのいずれかで、REEPおよび/またはRTPポリペプチドの部分のための免疫学的担体タンパク質として用いられる。本発明の他の態様において、抗体が産生されることになっているREEPおよび/またはRTPポリペプチドの部分に対応する核酸配列は、ビリオンの部分としてREEPおよび/またはRTPの一部を含む融合タンパク質を発現させる組換えウイルスのセットを作製するために、後期ワクシニアウイルス構造タンパク質についてのコード配列を含む融合遺伝子構築物へ組み入れられうる。組換えB型肝炎ビリオンが同様にこの役割に利用されうることは、B型肝炎表面抗原融合タンパク質を利用する免疫原性融合タンパク質の使用で実証されている。同様に、本発明の他の態様において、REEPおよび/またはRTPポリペプチドの一部ならびにポリオウイルスキャプシドタンパク質を含む融合タンパク質をコードするキメラ構築物は、ポリペプチド抗原のセットの免疫原性を増強するために作製される(例えば、欧州公開特許第025949号;およびEvans et al., Nature 339:385 [1989]; Huang et al., J. Virol., 62:3855 [1988]; およびSchilienger et al., J. Virol., 66:2 [1992]を参照)。
本発明のさらに他の態様において、ペプチドに基づいた免疫化のための多重抗原ペプチド系が利用されうる。この系において、REEPおよび/またはRTPの所望の部分は、オリゴマー分枝リシンコア上へのペプチドの有機化学的合成から直接的に得られる(例えば、Posnett et al., J. Biol. Chem., 263:1719 [1988];およびNardelli et al., J. Immunol., 148:914 [1992]参照)。本発明の他の態様において、REEPおよび/またはRTPタンパク質の抗原決定基もまた、細菌細胞により発現および提示されうる。
免疫原性を増強するために融合タンパク質を利用することに加えて、融合タンパク質はまた、本発明のREEPおよび/またはRTPタンパク質のようなタンパク質の発現を促進することができることは、広く認識されている。従って、本発明のいくつかの態様において、REEPおよび/またはRTPポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼとして作製されうる(すなわち、GST融合タンパク質)。そのようなGST融合タンパク質は、グルタチオン誘導体化マトリックスの使用によるような、REEPおよび/またはRTPポリペプチドの容易な精製を可能にすることが企図される(例えば、Ausabel et al.(eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY [1991]参照)。本発明のもう一つの態様において、REEPおよび/またはRTPポリペプチドの所望の部分のN末端におけるポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列のような精製リーダー配列をコードする融合遺伝子は、発現されたREEPおよび/またはRTP融合タンパク質の精製を、Ni2+金属樹脂を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより可能にすることができる。本発明のさらにもう一つの態様において、精製リーダー配列は、その後、続いて、エンテロキナーゼでの処理により除去されうる(例えば、Hochuli et al., J. Chromatogr., 411:177 [1987];およびJanknecht et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972参照)。
融合遺伝子を作製するための技術は周知である。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の連結は、ライゲーションのための平滑末端化された、またはねじれ型末端化された終端、適切な終端を供給するための制限酵素消化、必要に応じて付着末端の穴埋め、望ましくない連結を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを用いる、通常の技術に従って行われる。本発明のもう一つの態様において、融合遺伝子は、自動化DNA合成機を含む通常の技術により合成されうる。または、本発明の他の態様において、遺伝子断片のPCR増幅は、その後キメラ遺伝子配列を生じるようにアニールされうる2つの連続した遺伝子断片間に相補的なオーバーハングを生じるアンカープライマーを用いて行われうる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, 前記を参照)。
6. REEPおよびRTPの変種
本発明のさらに他の態様は、REEPおよび/もしくはRTPポリペプチドの突然変異体または変種型(すなわち、突然変異タンパク質(mutein))を提供する。治療的もしくは予防的効力を増強させること、タンパク質を無能にすること、または安定性(例えば、エクスビボでの有効期間、および/またはインビボでのタンパク分解性分解に対する抵抗性)のような目的のために、本発明のREEPおよび/またはRTPポリペプチドの活性を有するペプチドの構造を改変することが可能である。そのような改変されたペプチドは、本明細書に定義されているような本REEPおよび/またはRTPタンパク質の活性を有するペプチドの機能的等価物とみなされる。アミノ酸置換、欠失または付加によるような、アミノ酸配列が変化している改変されたペプチドが作製されうる。
RTP1の変種型は、限定されるわけではないが、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、およびRTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6)を含む。
さらに、上記のように、本REEPおよび/またはRTPタンパク質の変種型(例えば、突然変異体または多型配列)はまた、より詳細に示されているそれらのペプチドおよびDNA分子と等価であるとして企図される。例えば、上記のように、本発明は、保存的または非保存的アミノ酸置換を含む突然変異体および変種タンパク質を含む。
本発明はさらに、本REEPおよび/またはRTPタンパク質の組み合わせの突然変異体、加えて切り詰め突然変異体のセットを作製する方法を企図し、神経学的障害(例えば、嗅覚障害)または神経学的障害に対する抵抗性に関与する可能性のある変種配列(すなわち、突然変異体または多型の配列)を同定するために特に有用である。そのようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、アゴニストもしくはアンタゴニストのいずれかとして作用できる、または代わりとして、ひとまとめにして新規な活性を有する、新規なREEPおよび/またはRTP変種を作製することである。
それゆえに、本発明のいくつかの態様において、REEPおよび/またはRTP変種は、変化した(例えば、増加したまたは減少した)生物活性を供給するように本方法により操作される。本発明の他の態様において、天然に存在するREEPおよび/またはRTPと比較して選択的効力をもつ、組み合わせ的に導かれる変種が、作製される。そのようなタンパク質は、組換えDNA構築物から発現される場合、遺伝子治療プロトコールにおいて用いられうる。
本発明のさらに他の態様は、対応する野生型タンパク質と劇的に異なる細胞内半減期を有するREEPおよび/またはRTP変種を提供する。例えば、変化したタンパク質は、REEPおよび/またはRTPポリペプチドの破壊を結果として生じる、または別なふうに不活性化するタンパク分解性分解または他の細胞過程に対してより安定かまたはより不安定かのいずれかにしうる。そのような変種、およびそれらをコードする遺伝子は、タンパク質の半減期を調節することによりREEPおよび/またはRTP発現の位置を変化させるために利用されうる。例えば、短い半減期は、より一時的なREEPおよび/またはRTP生物学的効果を生じうり、誘導性発現系の一部である場合、細胞内のREEPおよび/またはRTPレベルのより厳格な制御を可能にすることができる。上のように、そのようなタンパク質、および特にそれらの組換え核酸構築物は、遺伝子治療プロトコールに用いられうる。
本発明のさらに他の態様において、REEPおよび/またはRTP変種は、細胞機能を制御する対応する野生型タンパク質の能力に干渉することができる点において、アンタゴニストとして作用するように組み合わせアプローチにより作製される。
本発明の組み合わせ突然変異誘発アプローチのいくつかの態様において、REEPおよび/もしくはRTP相同体、変種または関連したタンパク質の集団についてのアミノ酸配列は、好ましくは最も高い相同性の可能性を促進するように、整列される。そのような変種の集団は、例えば、1つまたは複数の種由来のREEPおよび/もしくはRTP相同体、または同じ種由来であるが、突然変異もしくは多型により異なるREEPおよび/もしくはRTP変種を含みうる。整列された配列の各位置に現れるアミノ酸は、組み合わせ配列の縮重セットを作製するために選択される。
本発明の好ましい態様において、組み合わせREEPおよび/またはRTPライブラリーは、それぞれ、可能性のあるREEPおよび/またはRTPタンパク質配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーとして作製される。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物は、可能性のあるREEPおよび/またはRTP配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、または代わりに、その中にREEPおよび/もしくはRTP配列のセットを含むより大きな融合タンパク質のセット(例えば、ファージディスプレイのための)として、発現されるように、遺伝子配列へ酵素的にライゲーションされうる。
可能性のあるREEPおよび/またはRTP相同体ならびに変種のライブラリーが縮重オリゴヌクレオチド配列から作製されうる多数の方法がある。いくつかの態様において、縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成機において行われ、合成遺伝子は、発現のために適切な遺伝子へライゲーションされる。遺伝子の縮重セットの目的は、可能性のあるREEPおよび/またはRTP配列の所望のセットをコードする配列の全部を1つの混合物において提供することである。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野において周知である(例えば、Narang, Tetrahedron Lett., 39:39 [1983]; Itakura et al., Recombinant DNA, Walton(ed.), Proceedings of the 3rd Cleveland Symposium on Macromolecules, Elsevier, Amsterdam, pp 273-289 [1981]; Itakura et al., Annu. Rev. Biochem., 53:323 [1984]; Itakura et al., Science 198:1056 [1984]; Ike et al., Nucl. Acid Res., 11:477 [1983]参照)。そのような技術は、他のタンパク質の定方向進化に用いられている(例えば、Scott et al., Science 249:386 [1980]; Roberts et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:2429 [1992]; Devlin et al., Science 249:404 [1990]; Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378 [1990]参照;それぞれは参照により本明細書に組み入れられている;加えて、米国特許第5,223,409号、第5,198,346号、および第5,096,815号参照;それぞれは参照により本明細書に組み入れられている)。
本発明のREEPおよび/またはRTP核酸(例えば、配列番号:1〜20、ならびにそれらの断片および変種)は、定方向進化のための出発核酸として利用されうる。これらの技術は、増加または減少した生物活性のような望ましい性質をもつREEPおよび/またはRTP変種を開発するために利用されうる。
いくつかの態様において、人工的進化は、ランダム突然変異誘発により(例えば、所定のコード配列へランダムな突然変異を導入するためにエラーを起こしやすいPCRを利用することにより)行われる。この方法は、突然変異の頻度が微調整されることを必要とする。一般的な法則として、有益な突然変異はまれで、一方、有害な突然変異がよく起こる。これは、有害な突然変異および有益な突然変異の組み合わせが、しばしば、結果として、不活性酵素を生じるからである。標的にされた遺伝子について塩基置換の理想的な数は、通常、1.5と5の間である(Moore and Arnold, Nat. Biotech., 14, 458 [1996]; Leung et al., Technique, 1:11 [1989]; Eckert and Kunkel, PCR Methods Appl., 1:17-24 [1991]; Caldwell and Joyce, PCR Methods Appl., 2:28 [1992];およびZhao and Arnold, Nuc. Acids. Res., 25:1307 [1997])。突然変異誘発後、その結果として生じたクローンは、望ましい活性について選択される(例えば、REEPおよび/またはRTP活性についてスクリーニングされる)。突然変異誘発および選択の連続ラウンドは、しばしば、望ましい性質をもつ酵素を開発するために必要である。有用な突然変異のみが突然変異誘発の次のラウンドに繰り越されることは、留意されるべきである。
本発明の他の態様において、本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子シャッフリングまたはセクシャルPCR手順に用いられる(例えば、Smith, Nature, 370:324 [1994]; 米国特許第5,837,458号;第5,830,721号;第5,811,238号;第5,733,731号;すべては参照により本明細書に組み入れられている)。遺伝子シャッフリングは、数個の突然変異体DNAのランダム断片化、それに続くPCRによる完全長分子へのそれらの再組み立てを含む。様々な遺伝子シャッフリング手順の例は、限定されるわけではないが、デオキシリボヌクレアーゼ処理後の組み立て、付着伸長プロセス(staggered extension process)(STEP)、およびランダムプライミングインビトロ組換えを含む。デオキシリボヌクレアーゼ媒介型方法において、陽性突然変異体のプールから単離されたDNAセグメントは、デオキシリボヌクレアーゼIでランダム断片へ切断され、プライマーの追加なしでPCRの複数ラウンドにかけられる。PCRサイクルが進行するにつれて、ランダム断片の長さは、切断されていないセグメントのそれに近づき、結果として、混合されている異なるクローンに存在する突然変異を生じ、結果として生じた配列の一部の内に蓄積する。選択およびシャッフリングの複数サイクルは、いくつかの酵素の機能的増強へと導いている(Stemmer, Nature, 370:398 [1994]; Stemmer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:10747 [1994]; Crameri et al., Nat. Biotech., 14:315 [1996]; Zhang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:4504 [1997];およびCrameri et al., Nat. Biotech., 15:436 [1997])。定方向進化により作製された変種は、本明細書に記載された方法によりREEPおよび/またはRTP活性についてスクリーニングされうる。
点突然変異により作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、および特定の性質をもつ遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための幅広い範囲の技術は、当技術分野において公知である。そのような技術は、一般的に、REEPおよび/もしくはRTP相同体または変種の組み合わせ突然変異誘発または組換えにより作製された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適応できると思われる。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための最も広く用いられる技術は、典型的には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターへクローニングする段階、その結果として生じたベクターのライブラリーで適切な細胞を形質転換する段階、および所望の活性の検出が、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を促進する条件下で、組み合わせ遺伝子を発現させる段階を含む。
7. REEPおよび/またはRTPポリペプチドの化学合成
本発明の代替の態様において、REEPおよび/またはRTPのコード配列が、当技術分野において周知の化学的方法を用いて、全体としてまたは一部、合成される(例えば、Caruthers et al., Nucl. Acids Res. Symp. Ser., 7:215 [1980]; Crea and Horn, Nucl. Acids Res., 9:2331 [1980]; Matteucci and Caruthers, Tetrahedron Lett., 21:719 [1980];およびChow and Kempe, Nucl. Acids Res., 9:2807 [1981]参照)。本発明の他の態様において、タンパク質自身は、REEPおよび/またはRTP全アミノ酸配列かまたはその一部かのいずれかを合成するための化学的方法を用いて作製される。例えば、ペプチドは、固相技術により合成され、樹脂から切断され、調製用高速液体クロマトグラフィーにより精製されうる(例えば、Creighton, Proteins Structures And Molecular Principles, W H Freeman and Co, New York N.Y. [1983]参照)。本発明の他の態様において、合成ペプチドの組成物は、アミノ酸分析またはシーケンシングにより確認される(例えば、Creighton, 前記、参照)。
直接的ペプチド合成は、様々な固相技術を用いて行われうり(Roberge et al., Science 269:202 [1995])、自動化合成は、例えば、ABI 431A ペプチド・シンセサイザ(Perkin Elmer)を用いて、製造会社により提供された使用説明書に従って、達成されうる。さらに、REEPおよび/もしくはRTPポリペプチドのアミノ酸配列、またはその任意の部分は、変種ポリペプチドを作製するために、直接的合成中に変化させられうる、および/または化学的方法を用いて他の配列と結合させられうる。
IV. REEPおよびRTP対立遺伝子の検出
いくつかの態様において、本発明は、野生型または変種(例えば、突然変異体または多型)REEPおよび/もしくはRTP核酸またはポリペプチドの存在を検出する方法を提供する。突然変異体REEPおよび/またはRTPポリペプチドの検出は、疾患(例えば、嗅覚障害)の診断において使用を見出す。
A. 変種REEPおよび/またはRTP対立遺伝子の検出
いくつかの態様において、本発明は、嗅覚障害(例えば、上気道感染、前頭蓋窩の腫瘍、カルマン症候群、フォスター・ケネディ症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン舞踏病)に対する患者の感受性を増加させるREEPおよび/またはRTPの対立遺伝子を提供する。結果として変化した表現型(例えば、減弱した嗅覚能力)を生じる任意の突然変異は、本発明の範囲内である。
従って、本発明は、個体が変種REEPおよび/またはRTP対立遺伝子を有するかどうかを直接的にまたは間接的に測定することにより、患者が嗅覚障害(例えば、上気道感染、前頭蓋窩の腫瘍、およびカルマン症候群、フォスター・ケネディ症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病)に対する感受性の増加をもつかどうかを決定するための方法を提供する。他の態様において、本発明は、1つもしくは複数の変種REEPおよび/またはRTP対立遺伝子の存在または非存在に基づいて、嗅覚障害についてのリスクの増加の予後を個体へ提供するための方法を提供する。
いくつかの方法は、変種(例えば、突然変異体または多型)核酸またはポリペプチド配列の分析に有効である。核酸分析による変種(例えば、突然変異体または多型)の検出のためのアッセイ法は、限定されるわけではないが、直接的シーケンシングアッセイ法、断片多型アッセイ法、ハイブリダイゼーションアッセイ法、およびコンピュータに基づいたデータ解析を含む、数個のカテゴリーへ分類される。これらのアッセイ法の多重バリエーションを行うためのプロトコールおよび市販されているキットまたはサービスが利用できる。いくつかの態様において、アッセイ法は、組み合わせて、または混成して(例えば、いくつかのアッセイ法からの異なる試薬または技術が、1つのアッセイ法を生じるように組み合わせられる)、行われる。以下の例示的なアッセイ法は、本発明に有用である:直接的シーケンシングアッセイ法、PCRアッセイ法、dHPLC(例えば、Transgenomic, Omaha, NEまたはVarian, Palo Alto, CAから入手できる)による突然変異の分析、断片長多型アッセイ法(例えば、RFLPまたはCFLP(例えば、米国特許第5,843,654号;第5,843,669号;第5,719,208号;および第5,888,780号参照;それぞれは、参照により本明細書に組み入れられている))、ハイブリダイゼーションアッセイ法(例えば、ハイブリダイゼーションの直接的検出、DNAチップアッセイ法を用いるハイブリダイゼーションの検出(例えば、米国特許第6,045,996号;第5,925,525号;第5,858,659号;第6,017,696号;第6,068,818号;第6,051,380号;第6,001,311号;第5,985,551号;第5,474,796号;PCT公開公報WO 99/67641号およびWO 00/39587号を参照、それぞれは参照により本明細書に組み入れられている)、ハイブリダイゼーションの酵素的検出(例えば、米国特許第5,846,717号、第6,090,543号;第6,001,567号;第5,985,557号;第5,994,069号;第5,962,233号;第5,538,848号;第5,952,174号および第5,919,626号参照、それぞれは参照により本明細書に組み入れられている))、直接的にまたは間接的に(例えば、同定されるべき多型と連鎖不平衡にある配列(他の多型)を検出すること;例えば、SPG-6座における他の配列が用いられうる;この方法は、米国特許第5,612,179号(参照により本明細書に組み入れられている)に記載されている)検出される多型、および質量分析アッセイ法。
さらに、変種REEPおよび/またはRTPタンパク質の検出のためのアッセイ法は、本発明に使用を見出す、例えば、無細胞翻訳方法(例えば、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,303,337号参照)および抗体結合アッセイ法。野生型タンパク質に対して突然変異体を特異的に認識する抗体の産生は下に考察されている。
B. 嗅覚障害のリスクを分析するためのキット
本発明はまた、個体がREEPおよび/もしくはRTPの野生型もしくは変種(例えば、突然変異体または多型)対立遺伝子またはポリペプチドを含むかどうかを測定するためのキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、被験体が嗅覚障害(例えば、上気道感染、前頭蓋窩の腫瘍、およびカルマン症候群、フォスター・ケネディ症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病)を発症するリスクがあるかどうかを測定するために有用である。診断キットは、様々な方法で作製される。いくつかの態様において、キットは、突然変異体REEPおよび/もしくはRTP対立遺伝子またはタンパク質を特異的に検出するための少なくとも1つの試薬を含む。好ましい態様において、試薬は、突然変異を含む核酸にハイブリダイズし、かつ突然変異を含まない核酸に結合しない、核酸である。他の態様において、試薬は、突然変異を含むDNAの領域を増幅するためのプライマーである。さらに他の態様において、試薬は、野生型かまたは突然変異体かのいずれかのREEPおよび/またはRTPタンパク質を優先的に結合する抗体である。
いくつかの態様において、キットは、被験体が嗅覚障害(例えば、上気道感染、前頭蓋窩の腫瘍、およびカルマン症候群、フォスター・ケネディ症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病)についてのリスクがあるかどうかを測定することについての使用説明書を含む。好ましい態様において、使用説明書は、嗅覚障害を発症するリスクが、被験体において突然変異体REEPおよび/もしくはRTP対立遺伝子の存在または非存在を検出することにより決定され、突然変異対立遺伝子を有する被験体が、嗅覚障害を発症するより大きなリスクがあることを明記する。
REEPおよび/またはRTP遺伝子における疾患関連突然変異の存在または非存在は、治療的または他の医学的決定を下すために用いられうる。例えば、匂い物質受容体関連疾患の家族歴をもつ夫婦は、体外受精および着床前遺伝学的スクリーニングを経由して子どもをもうけることを選択しうる。この場合、受精胚は、REEPおよび/またはRTP遺伝子の突然変異(例えば、疾患関連)対立遺伝子についてスクリーニングされ、野生型対立遺伝子をもつ胚のみが子宮に移植される。
他の態様において、子宮内スクリーニングは、発育している胎児において行われる(例えば、羊水穿刺または絨毛膜スクリーニング)。さらに他の態様において、新生児または年端もいかぬ子どもの遺伝学的スクリーニングが行われる。嗅覚障害と関連していることが知られているREEPおよび/またはRTP対立遺伝子の早期検出は、初期介入(例えば、遺伝学的または薬学的治療)を可能にする。
いくつかの態様において、キットは、緩衝剤、核酸安定化試薬、タンパク質安定化試薬、およびシグナル発生システム(例えば、Fretシステムのような蛍光発生システム)のような補助的試薬を含む。検査キットは、任意の適した様式で、典型的には、単一の容器または様々な容器における構成要素を、必要に応じて検査を行うことについての使用説明書のシートと共に含んで、パッケージされうる。いくつかの態様において、キットはまた、好ましくは、陽性対照試料を含む。
C. バイオインフォマティクス
いくつかの態様において、本発明は、REEPおよび/もしくはRTP遺伝子の1つまたは複数の変種対立遺伝子の存在に基づいて、嗅覚障害(例えば、上気道感染、前頭蓋窩の腫瘍、およびカルマン症候群、フォスター・ケネディ症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病)を発症する個体のリスクを測定する方法を提供する。いくつかの態様において、変種データの解析は、コンピュータに保存された情報(例えば、データベースにおける)を用いてコンピュータにより処理される。例えば、いくつかの態様において、本発明は、マルチプラットフォームオブジェクト指向プログラミング言語(例えば、米国特許第6,125,383号参照;参照により本明細書に組み入れられている)を実行する複数のコンピュータを含むバイオインフォマティクス検索システムを提供する。いくつかの態様において、コンピュータの1つは、遺伝学データ(例えば、所定の多型、加えてその配列と関連したREEPおよび/またはRTP関係嗅覚障害と接するリスク)を保存する。いくつかの態様において、コンピュータの1つは、アプリケーションプログラム(例えば、検出アッセイの結果を解析するための)を保存する。結果は、その後、ユーザーへ届けられる(例えば、コンピュータの1つを通して、またはインターネット経由で)。
例えば、いくつかの態様において、コンピュータに基づいた解析プログラムは、臨床医のために、検出アッセイにより生じた生データ(例えば、所定のREEPおよび/もしくはRTP対立遺伝子またはポリペプチドの存在、非存在または量)を予測値のデータへ翻訳するために用いられる。臨床医は、任意の適した手段を用いて予測データを評価することができる。従って、いくつかの好ましい態様において、本発明は、遺伝学または分子生物学において教育されている可能性が低い臨床医が、生データを理解する必要がないというさらなる利益を提供する。データは、それの最も有用な形で臨床医へ直接、提示される。臨床医は、その後、被験体のケアを最適化するためにすぐに情報を利用することができる。
本発明は、アッセイを行う実験室、情報提供業者、医療関係者、および被験体へ往復して、情報を受ける、処理する、送る能力がある任意の方法を企図する。例えば、本発明のいくつかの態様において、試料(例えば、生検または血清もしくは尿試料)が、被験体から得られ、生データを作成するために、世界のどこに位置していようと(例えば、被験体が住むまたは情報が最終的に用いられる国とは異なる国において)、プロファイリングサービス(例えば、医療施設における臨床検査室、ゲノムプロファイリング企業など)に提出される。試料が組織または他の生体試料を含む場合、被験体は、試料を採取してプロファイリングセンターへ送ってもらうために医療センターを訪れうる、または被験体は、彼ら自身で試料を収集し(例えば、尿試料)、それをプロファイリングセンターへ直接、送りうる。試料が、以前測定された生物学的情報を含む場合、その情報は、被験体によりプロファイリングサービスへ直接、送られうる(例えば、その情報を含む情報カードが、コンピュータによりスキャンされ、データは、電子通信システムを用いてプロファイリングセンターのコンピュータへ送信されうる)。プロファイリングサービスにより受け入れられるとすぐに、試料は処理され、被験体について望まれる診断または予後情報に特異的なプロファイルが作成される(すなわち、野生型もしくは突然変異体REEPおよび/もしくはRTP遺伝子またはポリペプチドの存在)。
プロファイルデータは、その後、処置する臨床医による解釈に適したフォーマットで調製される。例えば、生データを提供するよりむしろ、調製されたフォーマットは、被験体についての診断またはリスク評価(例えば、REEPおよび/またはRTP関連嗅覚障害を発症する可能性)を、特定の処置の選択肢の推薦と共に、提示しうる。データは、任意の適した方法により臨床医に示されうる。例えば、いくつかの態様において、プロファイリングサービスは、臨床医のために印刷されうる(例えば、ケアの間際に)またはコンピュータモニター上で臨床医へ示されうる報告書を作成する。
いくつかの態様において、情報は、最初、ケアの間際に、または地域設備において解析される。生データは、その後、さらなる解析のために、および/または臨床医もしくは患者に有用な情報へ生データを変換するために、中央処理設備へ送られる。中央処理設備は、データ解析のプライバシー(全データは、統一セキュリティープロトコールで中央設備に保存される)、速度および統一性の利点を提供する。中央処理設備は、その後、被験体の処置後、データの運命を統制することができる。例えば、電子伝達システムを用いて、中央設備は、データを臨床医、被験体、または研究員へ提供できる。
いくつかの態様において、被験体は、電子伝達システムを用いてそのデータを直接、アクセスすることができる。被験体は、その結果に基づいて、さらなる介入またはカウンセリングを選択しうる。いくつかの態様において、データは、研究使用のために用いられる。例えば、データは、所定のREEPおよび/またはRTP対立遺伝子の嗅覚障害との関連をさらに最適化するために用いられうる。
V. REEPおよびRTP抗体の作製
本発明は、単離された抗体または抗体断片(例えば、FAB断片)を提供する。抗体は、本発明のREEPおよび/またはRTPタンパク質(例えば、野生型または突然変異体)の検出を可能にするように作製されうる。抗体は、様々な免疫原を用いて調製されうる。一つの態様において、免疫原は、ヒトREEPおよび/またはRTPを認識する抗体を産生しうるヒトREEPおよび/またはRTPペプチドである。そのような抗体は、限定されるわけではないが、それがそのタンパク質を認識できる限り、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab断片、Fab発現ライブラリー、または組換え(例えば、キメラ、ヒト化など)抗体を含む。抗体は、抗原として本発明のタンパク質を用いることにより、通常の抗体または抗血清調製過程に従って、産生されうる。
当技術分野において公知の様々な手順は、REEPおよび/またはRTPポリペプチドに対して方向づけられたポリクローナル抗体の産生のために用いられうる。抗体の産生について、限定されるわけではないが、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含む様々な宿主動物は、REEPおよび/またはRTPエピトープに対応するペプチドの注射により免疫されうる。好ましい態様において、ペプチドは、免疫原性担体(例えば、ジフテリアトキソイド、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH))に結合される。様々なアジュバントは、宿主種に依存して免疫応答を増加させるために用いられうり、限定されるわけではないが、フロイント(完全および不完全)、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、表面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(Bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)のような潜在的に有用性のあるヒトアジュバント)を含む。
REEPおよび/またはRTPへ方向づけられたモノクローナル抗体の調製について、培養中の連続継代細胞系による抗体分子の産生を与える任意の技術が本発明との使用を見出すことが、企図される(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY参照)。これらは、限定されるわけではないが、もともとKohlerおよびMilstein(Kohler and Milstein, Nature 256:495-497 [1975])により開発されたハイブリドーマ技術、加えてトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozbor et al., Immunol. Tod., 4:72 [1983]参照)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 [1985])を含む。
本発明の追加の態様において、モノクローナル抗体は、PCT/US90/02545に記載されたもののようなテクノロジーを利用する無菌動物において産生される。さらになお、ヒト抗体はヒトハイブリドーマにより(Cote et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030 [1983])、またはインビトロでEBVウイルスでヒトB細胞を形質転換することにより(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp. 77-96 [1985])、産生されることが企図される。
さらに、一本鎖抗体の作製について記載された技術(米国特許第4,946,778号;参照により本明細書に組み入れられている)は、REEPおよび/またはRTP特異的一本鎖抗体を作製するにおいて使用を見出すことが企図される。本発明の追加の態様は、REEPおよび/またはRTPポリペプチドに対する所望の特異性をもつモノクローナルFab断片の迅速かつ簡単な同定を可能にするFab発現ライブラリーの構築について記載された技術(Huse et al., Science 246:1275-1281 [1989])を利用する。
他の態様において、本発明は、本発明のタンパク質に対する組換え抗体またはその断片を企図する。組換え抗体は、限定されるわけではないが、ヒト化およびキメラ抗体を含む。組換え抗体を産生するための方法は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第6,180,370号および第6,277,969号、ならびに「Monoclonal Antibodies」H. Zola, BIOS Scientific Publishers Limited 2000 Springer-Verlay New York, Inc., New York;参照により本明細書に組み入れられている)。
抗体断片を作製するのに適した任意の技術は、抗体分子のイディオタイプ(抗原結合領域)を含む抗体断片を作製するにおいて使用を見出すことが企図される。例えば、そのような断片は、限定されるわけではないが、以下を含む:抗体分子のペプシン消化により生成されうるF(ab')2断片;F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成されうるFab'断片、ならびに、抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することにより生成されうるFab断片。
抗体の作製において、所望の抗体についてのスクリーニングは、当技術分野において公知の技術(例えば、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射線測定法、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散アッセイ、インサイチューイムノアッセイ(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位元素標識を用いる)、ウェスタンブロット法、沈降反応、凝集反応(例えば、ゲル凝集アッセイ、赤血球凝集素アッセイなど)、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイなど)により達成されることが企図される。
一つの態様において、抗体結合は、一次抗体上の標識を検出することにより検出される。もう一つの態様において、一次抗体は、一次抗体への二次抗体または試薬の結合を検出することにより検出される。さらなる態様において、二次抗体が標識される。イムノアッセイにおいて結合を検出するための多くの手段が、当技術分野において公知であり、本発明の範囲内である。当技術分野において周知であるように、免疫原性ペプチドは、任意の免疫化プロトコールに用いられる担体分子を含まないで供給されるべきである。例えば、ペプチドがKLHに結合された場合には、それは、スクリーニングアッセイにおいて、BSAに結合されうる、または直接的に用いられうる。
前述の抗体は、REEPおよび/またはRTPの局在化ならびに構造に関する当技術分野において公知の方法(例えば、ウェスタンブロッティングについて)、適切な生体試料においてそのレベルを測定するなど、に用いられうる。抗体は、個体由来の生体試料においてREEPおよび/またはRTPを検出するために用いられうる。生体試料は、限定されるわけではないが、細胞を含む、血液、血清、血漿、間質液、尿、脳脊髄液などのような生体液でありうる。
生体試料は、その後、適切なストラテジー(例えば、ELISAまたはラジオイムノアッセイ)および形式(例えば、マイクロウェル、ディップスティック(例えば、国際特許公開WO 93/03367に記載されているような)など)を用いて、ヒトREEPおよび/またはRTPの存在について直接的に検査されうる。または、試料におけるタンパク質は、サイズ分離され(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在下または非存在下におけるポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により)、REEPおよび/またはRTPの存在は、免疫ブロッティング(ウェスタンブロッティング)により検出されうる。免疫ブロッティング技術は、一般的に、タンパク質のエピトープに対応するペプチドに対して産生された抗体で、より効果的であり、これゆえに、本発明に特に適している。
もう一つの方法は、シグナル伝達を変化させうる作用物質として抗体を用いる。細胞内シグナル伝達に関与するREEPおよび/もしくはRTPまたは他のタンパク質の結合ドメインに結合する特異的抗体は、様々なタンパク質間の相互作用および他のリガンドとのそれらの相互作用を阻害するために用いられうる。複合体に結合する抗体はまた、REEPおよび/またはRTPの様々な生理学的ならびに細胞性効果へ導くシグナル伝達経路においてタンパク質複合体の相互作用を阻害するように、治療的に用いられうる。そのような抗体はまた、疾患状態を示している可能性がある、REEP1および/もしくはRTPの異常発現、またはタンパク質複合体の異常形成を測定するように、診断的に用いられうる。
VI. REEPおよびRTPを用いる遺伝子治療
本発明はまた、研究、トランスジェニック動物の作製、および/または治療的適用のために、REEPおよび/もしくはRTP発現、産生、または機能を変化させうる遺伝子治療に適した方法および組成物を提供する。上記のように、本発明は、ヒトREEPおよび/またはRTP遺伝子を提供し、他の種からREEPおよび/またはRTP遺伝子を得る方法を提供する。従って、下記の方法は、一般的に、多くの種に渡って適用可能である。いくつかの態様において、遺伝子治療は、REEPおよび/またはRTP遺伝子の野生型対立遺伝子(すなわち、REEPおよび/またはRTP疾患対立遺伝子を含まない対立遺伝子(例えば、病原性多型または突然変異を含まない))を被験体に供給することにより行われることが企図される。そのような治療を必要としている被験体は、上記の方法により同定される。いくつかの態様において、一過性または安定な治療用核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA)が、突然変異体タンパク質の発現を低下させるまたは防ぐために用いられる。他の態様において、遺伝子は、望ましい嗅覚を低下または遮断するために除去される。
インビボまたはエクスビボのターゲティングおよび治療手順のために一般的に用いられるウイルスベクターは、DNAに基づいたベクターおよびレトロウイルスベクターである。ウイルスベクターを構築し、用いるための方法は、当技術分野において公知である(例えば、Miller and Rosman, BioTech., 7:980-990 [1992]参照)。好ましくは、ウイルスベクターは、複製欠損である、すなわち、それらは、標的細胞において自律的に複製することができない。一般的に、本発明の範囲内で用いられる複製欠損ウイルスベクターのゲノムは、感染した細胞におけるウイルスの複製に必要である少なくとも1つの領域を欠く。これらの領域は、当業者に公知の任意の技術により、除去されうる(全部または一部)か、または非機能的にされうるかのいずれかである。これらの技術は、全除去、置換(他の配列による、特に、挿入される核酸による)、部分的欠失または必須(複製について)領域への1つもしくは複数の塩基の付加を含む。そのような技術は、遺伝子操作の技術を用いて、または突然変異誘発剤での処理により、インビトロ(すなわち、単離されたDNA上で)またはインサイチューで行われうる。
好ましくは、複製欠損ウイルスは、ウイルス粒子をキャプシド形成するために必要であるそれのゲノムの配列を保持する。DNAウイルスベクターは、限定されるわけではないが、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)などを含む、弱毒または欠陥DNAウイルスを含む。ウイルス遺伝子を完全にまたはほとんど完全に欠く欠陥ウイルスは、欠陥ウイルスが細胞への導入後、感染を起こさないため、好まれる。欠陥ウイルスベクターの使用は、ベクターが他の細胞に感染することができるという心配なしに、特定の局部的領域における細胞への投与を可能にする。従って、特定の組織は、特異的にターゲットされうる。特定のベクターの例は、限定されるわけではないが、欠陥ヘルペスウイルス1(HSV1)ベクター(Kaplitt et al., Mol. Cell. Neurosci., 2:320-330 [1991])、糖タンパク質L遺伝子を欠損する欠陥ヘルペスウイルスベクター(例えば、特許公開RD 371005 A参照)、または他の欠陥ヘルペスウイルスベクター(例えば、WO 94/21807;およびWO 92/05263参照);Stratford-Perricaudet et al.(J. Clin. Invest., 90:626-630 [1992];La Salle et al., Science 259:988-990 [1993]も参照)により記載されたベクターのような弱毒アデノウイルスベクター;および欠陥アデノ随伴ウイルスベクター(Samulski et al., J. Virol., 61:3096-3101 [1987]; Samulski et al., J. Virol., 63:3822-3828 [1989];およびLebkowski et al., Mol. Cell. Biol., 8:3988-3996 [1988])を含む。
好ましくは、インビボ投与について、適切な免疫抑制処置は、ウイルスベクターおよびトランスフェクションされた細胞の免疫不活性化を避けるために、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター)と共に用いられる。例えば、インターロイキン-12(IL-12)、インターフェロン-γ(IFN-γ)のような免疫抑制性サイトカインまたは抗CD4抗体は、ウイルスベクターに対する体液性または細胞性免疫応答を遮断するために投与されうる。さらに、最小数の抗原を発現させるように操作されているウイルスベクターを用いることは有利である。
好ましい態様において、ベクターはアデノウイルスである。アデノウイルスは、本発明の核酸を様々な細胞型へ効率的に送達するように改変されうる真核生物のDNAウイルスである。アデノウイルスの様々な血清型が存在する。これらの血清型のうち、優先は、本発明の範囲内において、2型もしくは5型ヒトアデノウイルス(Ad 2またはAd 5)、または動物起源のアデノウイルスに与えられる(例えば、WO 94/26914参照)。本発明の範囲内で用いられうる動物起源のそれらのアデノウイルスは、イヌ、ウシ、マウス(例えば、Mav1, Beard et al., Virol., 75-81 [1990])、ヒツジ、ブタ、トリおよびサル(例えば、SAV)起源のアデノウイルスを含む。好ましくは、動物起源のアデノウイルスは、イヌのアデノウイルス、より好ましくは、CAV2アデノウイルス(例えば、ManhattanまたはA26/61株(ATCC VR-800))である。
好ましくは、本発明の複製欠損アデノウイルスベクターは、ITR、キャプシド形成配列および対象となる核酸を含む。なおより好ましくは、少なくともアデノウイルスベクターのE1領域は非機能的である。E1領域における欠失は、好ましくは、Ad5アデノウイルスの配列におけるヌクレオチド455位から3329位まで(PvuII-BglII断片)、または382位〜3446位(HinfII-Sau3A断片)に渡る。他の領域、特にE3領域(例えば、WO 95/02697)、E2領域(例えば、WO 94/28938)、E4領域(例えば、WO 94/28152、WO 94/12649およびWO 95/02697)、または後期遺伝子L1〜L5のいずれかにおいて、もまた改変されうる。
好ましい態様において、アデノウイルスベクターは、E1領域において欠失をもつ(Ad 1.0)。E1欠失アデノウイルスの例は、EP 185,573に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられている。もう一つの好ましい態様において、アデノウイルスベクターは、E1およびE4領域において欠失をもつ(Ad 3.0)。E1/E4欠失アデノウイルスの例は、WO 95/02697およびWO 96/22378に開示されている。さらにもう一つの好ましい態様において、アデノウイルスベクターは、E4領域および核酸配列が挿入される、E1領域における欠失をもつ。
本発明による複製欠損組換えアデノウイルスは、当業者に公知の任意の技術により調製されうる(例えば、Levrero et al., Gene 101:195 [1991]; EP 185 573;およびGraham, EMBO J., 3:2917 [1984]参照)。特に、それらは、アデノウイルスと、とりわけ、対象となるDNA配列を有するプラスミドとの間の相同組換えにより調製されうる。相同組換えは、アデノウイルスおよびプラスミドの適切な細胞系へのコトランスフェクション後に達成される。用いられる細胞系は、好ましくは、(i)用いられるべきエレメントにより形質転換可能である、および(ii)複製欠損アデノウイルスのゲノムの部分を補うことができる配列を、好ましくは組換えのリスクを避けるために組み込まれた形で、含むべきである。用いられうる細胞系の例は、ゲノムへ組み込まれたAd5アデノウイルスのゲノムの左側部分(12%)を含むヒト胚性腎臓細胞系293(Graham et al., J. Gen. Virol., 36:59 [1977])、ならびに出願WO 94/26914およびWO 95/02697に記載されているように、E1およびE4機能を補うことができる細胞系である。組換えアデノウイルスは、当業者に周知である標準分子生物学的技術を用いて回収および精製される。
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、それらが感染した細胞のゲノムへ、安定かつ部位特異的様式で、統合されうる比較的小さなサイズのDNAウイルスである。それらは、細胞の増殖、形態、または分化へ少しの効果も引き起こすことなく、幅広い範囲の細胞を感染させることができ、それらは、ヒト病態には関与しないと思われる。AAVゲノムは、クローニングされ、シーケンシングされ、特徴付けられている。それは、約4700塩基を含み、ウイルスの複製開始点としての役割を果たす、各末端に約145塩基の逆方向末端反復(ITR)領域を含む。ゲノムの残りは、キャプシド形成機能をもつ2つの必須領域へ分けられる:ウイルス複製およびウイルス遺伝子の発現に関与するrep遺伝子を含む、ゲノムの左側部分;ならびに、ウイルスのキャプシドタンパク質をコードするcap遺伝子を含む、ゲノムの右側部分。
インビトロおよびインビボで遺伝子を移入するためのAAV由来のベクターの使用は記載されている(例えば、WO 91/18088; WO 93/09239;米国特許第4,797,368号;米国特許第5,139,941号;およびEP 488 528を参照、それらのすべては参照により本明細書に組み入れられている)。これらの刊行物は、repおよび/またはcap遺伝子が除去され、対象となる遺伝子に置換されている様々なAAV由来構築物、およびインビトロ(培養細胞へ)またはインビボ(直接的に生物体へ)で対象となる遺伝子を移入するためのこれらの構築物の使用を記載する。本発明による複製欠損組換えAAVは、2つのAAV逆方向末端反復(ITR)領域に隣接された対象となる核酸配列を含むプラスミド、およびAAVキャプシド形成遺伝子(repおよびcap遺伝子)を有するプラスミドを、ヒトヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス)に感染している細胞系へコトランスフェクションすることにより、調製されうる。作製されるAAV組換え体は、その後、標準技術により精製される。
もう一つの態様において、遺伝子は、レトロウイルスベクターに導入されうる(例えば、米国特許第5,399,346号、第4,650,764号、第4,980,289号および第5,124,263号;それらのすべては参照により本明細書に組み入れられている;Mann et al., Cell 33:153 [1983]; Markowitz et al., J. Virol., 62:1120 [1988]; PCT/US95/14575; EP 453242; EP 178220; Bernstein et al., Genet. Eng., 7:235 [1985]; McCormick, BioTechnol., 3:689 [1985]; WO 95/07358;およびKuo et al., Blood 82:845 [1993]に記載されているように)。レトロウイルスは、分裂中細胞を感染させる組み込み型ウイルスである。レトロウイルスゲノムは、2つのLTR、キャプシド形成配列、および3つのコード領域(gag、polおよびenv)を含む。組換えレトロウイルスベクターにおいて、gag、polおよびenv遺伝子は、一般的に、全部または一部、除去され、対象となる異種核酸配列で置換される。これらのベクターは、HIV、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」)、MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)およびフレンド(Friend)・ウイルスのような異なる型のレトロウイルスから構築されうる。欠陥レトロウイルスベクターはまた、WO 95/02697に開示されている。
一般的に、核酸配列を含む組換えレトロウイルスを構築するために、LTR、キャプシド形成配列およびコード配列を含むプラスミドが、構築される。この構築物は、パッケージング細胞系をトランスフェクションするために用いられ、その細胞系は、プラスミドにおいて欠損しているレトロウイルス機能をトランスで供給することができる。一般的に、パッケージング細胞系は、従って、gag、polおよびenv遺伝子を発現させることができる。そのようなパッケージング細胞系は、先行文献に記載されている、特に、細胞系PA317(参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第4,861,719号)、PsiCRIP細胞系(WO 90/02806参照)、およびGP+envAm-12細胞系(WO 89/07150参照)。さらに、組換えレトロウイルスベクターは、gag遺伝子の一部を含みうる広範なキャプシド形成配列(Bender et al., J. Virol., 61:1639 [1987])だけでなく、転写活性を抑制することについてのLTR内に改変を含みうる。組換えレトロウイルスベクターは、当業者に公知の標準技術により精製される。
または、ベクターは、リポフェクションによりインビボで導入されうる。過去10年間、インビトロでの核酸の封入およびトランスフェクションのためにリポソームの使用の増加があった。リポソーム媒介型トランスフェクションで遭遇される困難おおび危険を制限するように設計された合成カチオン性脂質は、マーカーをコードする遺伝子のインビボトランスフェクションのためのリポソームを調製するために用いられうる(Felgner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7417 [1987]; Mackey, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-8031 [1988]; Ulmer et al., Science 259:1745-1748 [1993]も参照)。カチオン性脂質の使用は、負に帯電した核酸の封入を促進し、また、負に帯電した細胞膜との融合を促進する(Felgner and Ringold, Science 337:387-388 [1989])。核酸の移入に特に有用な脂質化合物および組成物は、参照により本明細書に組み入れられている、WO 95/18863およびWO 96/17823、ならびに米国特許第5,459,127号に記載されている。
カチオン性オリゴペプチド(例えば、WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば、WO 96/25508)、またはカチオン性ポリマー(例えば、WO 95/21931)のような他の分子もまた、インビボで核酸のトランスフェクションを促進するために有用である。
裸のDNAプラスミドのようにインビボでベクターを導入することも可能である。裸のDNAを製剤化し、哺乳動物の筋肉組織へ投与するための方法は、米国特許第5,580,859号および第5,589,466号に開示されており、それらの両方とも参照により本明細書に組み入れられている。
遺伝子治療のためのDNAベクターは、限定されるわけではないが、トランスフェクション、電気穿孔法、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体の使用を含む、当技術分野において公知の方法により所望の宿主細胞へ導入されうる(例えば、Wu et al., J. Biol. Chem., 267:963 [1992]; Wu and Wu, J. Biol. Chem., 263:14621 [1988];およびWilliams et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726 [1991]参照)。受容体媒介型DNA送達アプローチもまた用いられうる(Curiel et al., Hum. Gene Ther., 3:147 [1992];およびWu and Wu, J. Biol. Chem., 262:4429 [1987])。
VII. 外因性REEPおよびRTP遺伝子ならびにそれらの相同体、突然変異体および変種を発現させるトランスジェニック動物
本発明は、外因性REEPおよび/もしくはRTP遺伝子、またはそれらの相同体、突然変異体もしくは変種を含むトランスジェニック動物の作製を企図する。好ましい態様において、トランスジェニック動物は、野生型動物と比較して、変化した表現型を示す。いくつかの態様において、変化した表現型は、REEPおよび/またはRTP発現の野生型レベルと比較してREEPおよび/またはRTP遺伝子についてのmRNAの過剰発現である。他の態様において、変化した表現型は、内因性REEPおよび/またはRTP発現の野生型レベルと比較して、内因性REEPおよび/またはRTP遺伝子についてのmRNAの発現の減少である。いくつかの好ましい態様において、トランスジェニック動物は、REEPおよび/またはRTPの突然変異対立遺伝子を含む。そのような表現型の存在または非存在を分析するための方法は、ノーザンブロッティング、mRNAプロテクションアッセイ法、およびRT-PCRを含む。他の態様において、トランスジェニックマウスは、REEPおよび/またはRTP遺伝子のノックアウト突然変異を有する。好ましい態様において、トランスジェニック動物は、嗅覚障害(例えば、上気道感染、前頭蓋窩の腫瘍、およびカルマン症候群、フォスター・ケネディ症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病)に対する変化した感受性を示す。
そのような動物は、研究適用(例えば、REEPおよび/またはRTPタンパク質が関与するシグナル伝達経路を同定すること)、および薬物スクリーニング適用(例えば、嗅覚障害を予防または処置する薬物についてスクリーニングするための)において使用を見出す。例えば、いくつかの態様において、試験化合物(例えば、嗅覚障害を処置するのに有用ではないかと疑われる薬物)は、トランスジェニック動物ならびに野生型REEPおよび/またはRTP対立遺伝子をもつ対照動物へ投与され、効果が評価される。試験および対照化合物の疾患症状への効果は、その後、評価される。
トランスジェニック動物は、様々な方法により作製されうる。いくつかの態様において、様々な発生段階における胚性細胞が、トランスジェニック動物の作製のために導入遺伝子を導入するために用いられる。胚性細胞の発生の段階に依存して、異なる方法が用いられる。接合体は、マイクロインジェクションのための最良の標的である。マウスにおいて、雄性前核は、直径約20マイクロメーターのサイズに達し、1〜2ピコリットル(pl)のDNA溶液の再現性のある注入を可能にする。遺伝子移入のための標的としての接合体の使用は、たいていの場合、注入されたDNAが最初の卵割の前に宿主ゲノムへ組み入れられるという点において、主要な利点をもつ(Brinster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4438-4442 [1985])。結果として、トランスジェニック非ヒト動物のすべての細胞は、組み入れられた導入遺伝子を有する。これはまた、一般的に、生殖細胞の50%が導入遺伝子を有するため、創始者の子孫への導入遺伝子の効率的な伝達に反映されるだろう。米国特許第4,873,191号は、接合体のマイクロインジェクションのための方法を記載する;この特許の開示は全体として本明細書に組み入れられている。
他の態様において、レトロウイルス感染は、非ヒト動物へ導入遺伝子を導入するために用いられる。いくつかの態様において、レトロウイルスベクターは、レトロウイルスベクターを卵母細胞の卵黄周囲腔へ注入することにより卵母細胞をトランスフェクションするために利用される(参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,080,912号)。他の態様において、発生中の非ヒト胚は、胚盤胞段階へインビトロで培養されうる。この時間中、割球は、レトロウイルス感染のための標的でありうる(Janenich, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 73:1260 [1976])。割球の効率的感染は、透明帯を除去するための酵素処理により得られる(Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. [1986])。導入遺伝子を導入するために用いられるウイルスベクター系は、典型的には、導入遺伝子を有する複製欠損レトロウイルスである(Jahner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6927 [1985])。トランスフェクションは、ウイルス産生細胞の単層上で割球を培養することにより簡単かつ効率的に得られる(Van der Putten, 前記; Stewart, et al., EMBO J., 6:383 [1987])。または、感染は、後期で行われうる。ウイルスまたはウイルス産生細胞は、割腔へ注入されうる(Jahner et al., Nature 298:623 [1982])。創始者の大部分は、取り込みが、トランスジェニック動物を形成する細胞のサブセットにおいてのみ起こるため、導入遺伝子についてモザイクである。さらに、創始者は、一般的に子孫において分離するゲノムにおける異なる位置での導入遺伝子の様々なレトロウイルス挿入を含みうる。さらに、妊娠中期胚の子宮内レトロウイルス感染により、たとえ低効率であるとしても、生殖系列へ導入遺伝子を導入することも可能である(Jahner et al., 前記 [1982])。当技術分野において公知のトランスジェニック動物を作製するためのレトロウイルスまたはレトロウイルスベクターを用いる追加の手段は、受精卵または初期胚の卵黄周囲腔への、レトロウイルス粒子またはレトロウイルスを産生するマイトマイシンC処理細胞のマイクロインジェクションを含む(PCT国際出願WO 90/08832 [1990]およびHaskell and Bowen, Mol. Reprod. Dev., 40:386 [1995])。
他の態様において、導入遺伝子は、胚性幹細胞へ導入され、トランスフェクションされた幹細胞は、胚を形成するために利用される。ES細胞は、適切な条件下でインビトロで着床前胚を培養することにより得られる(Evans et al., Nature 292:154 [1981]; Bradley et al., Nature 309:255 [1984]; Gossler et al., Proc. Acad. Sci. USA 83:9065 [1986];およびRobertson et al., Nature 322:445 [1986])。導入遺伝子は、リン酸カルシウム共沈法、プロトプラストまたはスフェロプラスト融合、リポフェクションおよびDEAE-デキストラン媒介型トランスフェクションを含む当技術分野に公知の様々な方法によるDNAトランスフェクションによりES細胞へ効率的に導入されうる。導入遺伝子はまた、レトロウイルス媒介型形質導入によりまたはマイクロインジェクションにより、ES細胞へ導入されうる。その後、そのようなトランスフェクションされたES細胞は、胚盤胞段階の胚の割腔へのそれらの導入後、胚にコロニーを形成し、その結果として生じるキメラ動物の生殖系列に寄与することができる(概説として、Jaenisch, Science 240:1468 [1988]参照)。トランスフェクションされたES細胞の割腔への導入の前に、トランスフェクションされたES細胞は、導入遺伝子が選択のための手段を提供すると仮定して、導入遺伝子を組み込んでいるES細胞について濃縮するための様々な選択プロトコールにかけられうる。または、ポリメラーゼ連鎖反応が、導入遺伝子を組み込んでいるES細胞についてスクリーニングするために用いられうる。この技術は、割腔への移入前の適切な選択条件下でのトランスフェクションされたES細胞の増殖の必要性を除く。
さらに他の態様において、相同組換えが、遺伝子機能をノックアウトする、または欠失突然変異体(例えば、REEPおよび/またはRTPの特定のドメインが除去されている突然変異体)を作製するために利用される。相同組換えのための方法は、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第5,614,396号に記載されている。
VIII. REEPおよびRTPを用いる化合物スクリーニング
いくつかの態様において、本発明のREEPおよび/またはRTP遺伝子の単離された核酸およびポリペプチド(例えば、配列番号:1〜50)、ならびに関連したタンパク質および核酸は、REEPおよび/またはRTP活性ならびにシグナル伝達を変化させる(例えば、増強するまたは抑制する)化合物についての薬物スクリーニング適用において用いられる。本発明はさらに、本発明のREEPおよび/またはRTPタンパク質のリガンドならびにシグナル伝達経路を同定する方法を提供する。
本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するのに必要ではない。とはいえ、本発明の過程で行われたOR発現分析実験に基づいて、REEPおよび/またはRTPファミリータンパク質が、匂い物質受容体細胞表面局在化および機能発現を促進するにおいて機能することが企図される。
いくつかの態様において、本発明は、本来のリガンド(例えば、上記の方法を用いて同定された)により媒介されるREEPおよび/またはRTP活性を変化させる能力について化合物をスクリーニングする方法を提供する。そのような化合物は、REEPおよび/またはRTPにより媒介される疾患(例えば、嗅覚障害)の処置、嗅覚応答の変化などにおいて使用を見出す。
いくつかの態様において、本発明は、突然変異体REEPおよび/もしくはRTP核酸ならびに/または突然変異体REEPおよび/もしくはRTPポリペプチドと相互作用するが、同時に、野生型REEPおよび/もしくはRTP核酸(例えば、配列番号:1〜20)ならびに/または野生型REEPおよび/もしくはRTPポリペプチド(例えば、配列番号:21〜50)と相互作用しない、能力について化合物をスクリーニングする方法を提供する。そのような化合物は、REEPおよび/もしくはRTP核酸ならびに/またはタンパク質の突然変異型の存在により促進される嗅覚障害の処置において使用を見出す。
いくつかの態様において、外因性REEPまたはRTPポリペプチドを発現させる細胞における細胞表面局在化ORの活性は、化合物(例えば、候補、リガンドまたはインヒビター)に応答して評価される。
一つの技術は、上記のように作製された、REEP、RTPまたはOR抗体を用いる。そのような抗体は、REEP、RTPまたはORペプチドへ特異的に結合する能力があり、REEP、RTPまたはORペプチドへの結合において試験化合物と競合する。同様のスクリーニングは、低分子ライブラリー、アプタマーなどに関して行われうる。
本発明は、REEPおよび/またはRTP遺伝子ならびにそれらの変種をトランスフェクションされた細胞系の、化合物を活性についてスクリーニングするための、および特に、コンビナトリアルライブラリー(例えば、104個より多い化合物を含むライブラリー)からの化合物の高処理量スクリーニングへの使用を企図する。本発明の細胞系は、様々なスクリーニング方法において用いられうる。いくつかの態様において、細胞は、細胞表面受容体の活性化後、シグナル伝達をモニターする二次メッセンジャーアッセイ法に用いられうる。他の態様において、細胞は、転写/翻訳レベルで細胞応答をモニターするレポーター遺伝子アッセイ法に用いられうる。
二次メッセンジャーアッセイ法において、宿主細胞は、好ましくは、REEPおよび/もしくはRTPまたはその変種もしくは突然変異体をコードするベクターを上記のようにトランスフェクションされる。宿主細胞は、その後、化合物または複数の化合物(コンビナトリアルライブラリーからの)で処理され、応答の存在または非存在についてアッセイされる。コンビナトリアルライブラリーにおける化合物の少なくとも一部が、ベクターによりコードされたタンパク質の、または細胞膜に局在したORのアゴニスト、アンタゴニスト、アクチベーターまたはインヒビターとしての役割を果たしうることが企図される。コンビナトリアルライブラリーにおける化合物の少なくとも一部が、シグナル伝達経路においてベクターによりコードされたタンパク質の上流または下流で作用するタンパク質のアゴニスト、アンタゴニスト、アクチベーターまたはインヒビターとしての役割を果たしうることも企図される。
いくつかの態様において、二次メッセンジャーアッセイ法は、膜受容体およびイオンチャネル(例えば、リガンド依存性イオンチャネル;Denyer et al., Drug Discov. Today 3:323 [1998];およびGonzales et al., Drug Discov. Today 4:431-39 [1999])の刺激による細胞内変化(例えば、Ca2+濃度、膜電位、pH、IP3、cAMP、アラキドン酸放出)に応答するレポーター分子からの蛍光シグナルを測定する。レポーター分子の例は、限定されるわけではないが、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)システム(例えば、Cuo-脂質およびオキソノール、EDAN/DABCYL)、カルシウム感受性指示薬(例えば、Fluo-3、FURA 2、INDO 1、およびFLUO3/AM、BAPTA AM)、塩素イオン感受性指示薬(例えば、SPQ、SPA)、カリウム感受性指示薬(例えば、PBFI)、ナトリウム感受性指示薬(例えば、SBFI)、およびpH感受性指示薬(例えば、BCECF)を含む。
一般的に、宿主細胞は、化合物への曝露の前に指示薬を添加される。化合物での処理に対する宿主細胞の応答は、限定されるわけではないが、蛍光顕微鏡法、共焦点顕微鏡法(例えば、FCSシステム)、フローサイトメトリー、微量流体装置、FLIPRシステム(例えば、Schroeder and Neagle, J. Biomol. Screening 1:75 [1996]参照)、およびプレート読み取りシステムを含む、当技術分野において公知の方法により検出されうる。いくつかの好ましい態様において、未知の活性の化合物により引き起こされた応答は、既知のアゴニストにより生じた応答と比較され、既知のアゴニストの最大応答のパーセンテージとして表される。既知のアゴニストにより引き起こされた最大応答は、100%応答と定義される。同様に、既知または試験アンタゴニストを含む試料へのアゴニストの添加後記録される最大応答は、100%応答より検出可能的に低い。
細胞はまた、レポーター遺伝子アッセイ法において有用である。レポーター遺伝子アッセイ法は、レポーター遺伝子としてコード配列へスプライスされた標的遺伝子(すなわち、疾患標的の生物学的発現および機能を制御する遺伝子)の転写制御エレメントを含む核酸をコードするベクターをトランスフェクションされた宿主細胞の使用を含む。それゆえに、標的遺伝子の活性化は、結果として、レポーター遺伝子産物の活性化を生じる。
本発明の試験化合物は、生物学的ライブラリー;ペプトイドライブラリー(酵素分解に抵抗性であり、それでもなお生物活性のあるままである、新規な非ペプチドバックボーンをもつがペプチドの機能性を有する分子のライブラリー;例えば、Zuckennann et al., J. Med. Chem. 37:2678-85 [1994]参照));空間的にアドレス可能な並列固相または液相ライブラリー;逆重畳積分を必要とする合成ライブラリー方法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー方法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法を含む、当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー方法における多数のアプローチのいずれかを用いて得られうる。生物学的ライブラリーおよびペプトイドライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーとの使用について好ましいが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の低分子ライブラリーに適用できる(Lam (1997) Anticancer Drug Des. 12:145)。
REEPおよび/またはRTPの化合物、例えば、匂い物質受容体、への結合を調節する試験化合物の能力もまた、評価されうる。これは、例えば、化合物、例えば基質、のREEPおよび/またはRTPへの結合が、複合体において標識された化合物、例えば基質、を検出することにより測定されうるように、放射性同位元素または酵素標識を化合物、例えば基質、に連結することにより、達成されうる。
または、REEPおよび/またはRTPは、複合体におけるREEPおよび/またはRTPのREEPおよび/またはRTP基質への結合を調節する試験化合物の能力をモニターするために、放射性同位元素または酵素標識を連結される。例えば、化合物(例えば、基質)は、直接的かまたは間接的かのいずれかで、125I、35S、14Cまたは3Hで標識されうり、放射性同位元素は、放射能放出の直接的計数により、またはシンチレーション計数により検出される。または、化合物は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素的に標識されうり、酵素標識は、適切な基質の生成物への変換の測定により検出される。
反応体のいずれかの標識の有無にかかわらず、REEPおよび/またはRTPと相互作用する化合物(例えば、匂い物質受容体)の能力が評価されうる。例えば、微量生理機能測定器が、化合物またはREEPおよび/もしくはRTPのどちらの標識も無しで、化合物のREEPおよび/またはRTPとの相互作用を検出するために用いられうる(McConnell et al. Science 257:1906-1912 [1992])。本明細書に用いられる場合、「微量生理機能測定器」(例えば、細胞センサー)は、光アドレス可能電位差センサー(light-addressable potentiometric sensor)(LAPS)を用いて細胞がそれの環境を酸性化する率を測定する分析装置である。この酸性化率における変化は、化合物とREEPおよび/またはRTPポリペプチドの間の相互作用の指標として用いられうる。
さらにもう一つの態様において、REEPおよび/もしくはRTPタンパク質またはその生物活性部分が、試験化合物と接触させられ、REEPおよび/もしくはRTPタンパク質またはその生物活性のある部分に結合する試験化合物の能力が評価される、無細胞アッセイ法が提供される。本発明のアッセイ法に用いられうる、REEPおよび/またはRTPタンパク質の好ましい生物活性部分は、基質または他のタンパク質との相互作用に関与する断片、例えば、高い表面確率スコアをもつ断片、を含む。
無細胞アッセイ法は、標的遺伝子タンパク質および試験化合物の反応混合物を、その2つの成分が相互作用して結合し、それに従って、除去および/または検出されうる複合体を形成するのを可能にしうる、条件下および十分な時間、調製する段階を含む。
2つの分子間の相互作用はまた、例えば、蛍光エネルギー移動(FRET)を用いて、検出されうる(例えば、Lakowicz et al., 米国特許第5,631,169号; Stavrianopoulos et al., 米国特許第4,968,103号参照;それぞれ、参照により本明細書に組み入れられている)。フルオロフォア標識は、第一ドナー分子の放出した蛍光エネルギーが、次に、吸収されたエネルギーにより蛍光を発生することができる、第二「アクセプター」分子上の蛍光標識により吸収される。
または、「ドナー」タンパク質分子は、単に、トリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用しうる。「アクセプター」分子標識が「ドナー」のそれから区別されうるように、異なる光の波長を放射する標識が選択される。標識間のエネルギー移動の効率は、分子を分離する距離に関連しているため、分子間の空間的関係が評価されうる。結合が分子間に生じる状況において、15のアッセイにおける「アクセプター」分子標識の蛍光放射が最大であるはずである。FRET結合事象は、当技術分野において周知の標準蛍光検出手段を通して(例えば、蛍光計を用いて)、便利に測定されうる。
REEPおよび/またはRTP発現のモジュレーターもまた、同定されうる。例えば、細胞または無細胞混合物は、候補化合物と接触させられ、REEPおよび/もしくはRTP mRNAまたはタンパク質の発現が、候補化合物の非存在下におけるREEPおよび/もしくはRTP mRNAまたはタンパク質の発現のレベルと比較して評価される。REEPおよび/もしくはRTP mRNAまたはタンパク質の発現は、候補化合物の存在下において、それの非存在下においてより多い場合、候補化合物は、REEPおよび/もしくはRTP mRNAまたはタンパク質発現のスティミュレーターとして同定される。または、REEPおよび/もしくはRTP mRNAまたはタンパク質の発現は、候補化合物の存在下において、それの非存在下においてより少ない(すなわち、統計学的に有意に少ない)場合、候補化合物は、REEPおよび/もしくはRTP mRNAまたはタンパク質発現のインヒビターとして同定される。REEPおよび/もしくはRTP mRNAまたはタンパク質発現のレベルは、REEPおよび/もしくはRTP mRNAまたはタンパク質を検出するための本明細書に記載された方法により測定されうる。
調節作用物質は、細胞に基づいた、または無細胞のアッセイ法を用いて同定されうり、REEPおよび/またはRTPタンパク質の活性を調節する作用物質の能力は、インビボで、例えば、疾患についての動物モデル(例えば、REEPおよび/またはRTP関連嗅覚障害をもつ動物)のような動物において、確認されうる。
B. 治療剤
本発明はさらに、上記のスクリーニングアッセイ法により同定される新規な作用物質に関係する。従って、そのような作用物質での処置の、効力、毒性、副作用、または作用機構を測定するために、適切な動物モデルにおいて本明細書に記載されているように同定された作用物質(例えば、REEPおよび/もしくはRTP調節作用物質または模倣体、REEPおよび/もしくはRTP特異的抗体、REEPおよび/もしくはRTP結合パートナー、またはORアゴニストもしくはインヒビター)をさらに用いることは、本発明の範囲内である。さらになお、上記のように、上記のスクリーニングアッセイ法により同定される新規な作用物質は、例えば、嗅覚障害(例えば、限定されるわけではないが、嗅覚障害を含む)の処置のために用いられうる。
IX. REEPおよびRTP核酸、ペプチド、ならびに類似体を含む薬学的組成物
本発明はさらに、REEPおよび/もしくはRTPポリヌクレオチド配列の全部または一部、REEPおよび/またはRTPポリペプチド、抗体を含むREEPおよび/もしくはRTP生物活性のインヒビターまたはアンタゴニストを、単独で、または安定化化合物のような少なくとも1つの他の作用物質と組み合わせて、含みうり、かつ限定されるわけではないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロースおよび水を含む任意の滅菌した生体適合性薬学的担体において投与されうる、薬学的組成物を提供する。
本発明の方法は、疾患を処置する、または突然変異体REEPおよび/もしくはRTP対立遺伝子により特徴付けられる生理学的状態(例えば、上気道感染、前頭蓋窩の腫瘍、およびカルマン症候群、フォスター・ケネディ症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病)を変化させるにおいて使用を見出す。ペプチドは、生理的食塩水のような薬学的に許容される担体において静脈内に患者へ投与されうる。ペプチドの細胞内送達のための標準的方法が用いられうる(例えば、リポソームによる送達)。そのような方法は、当業者に周知である。本発明の製剤は、静脈内、皮下、筋肉内、および腹腔内のような非経口投与に有用である。ポリペプチドの細胞内への治療的投与はまた、上記のような遺伝子治療を用いて達成されうる。
医学的分野において周知であるように、任意の1人の患者についての用量は、患者のサイズ、身体表面積、投与されるべき特定の化合物、性別、投与の時間および経路、一般的健康状態、および同時に投与されることになっている他の薬物との相互作用を含む多くの因子に依存する。
従って、本発明のいくつかの態様において、REEPおよび/またはRTPヌクレオチドならびにREEPおよび/またはRTPアミノ酸配列は、単独で、または他のヌクレオチド配列、薬物もしくはホルモンと組み合わせて、またはそれが賦形剤もしくは他の薬学的に許容される担体と混合されている薬学的組成物において、患者へ投与されうる。本発明の一つの態様において、薬学的に許容される担体は、薬学的不活性である。本発明のもう一つの態様において、REEPおよび/もしくはRTPポリヌクレオチド配列またはREEPおよび/もしくはRTPアミノ酸配列は、疾患に罹りやすいまたは罹っている個体へ単独で投与されうる。
処置されることになっている状態に依存して、これらの薬学的組成物は、製剤化され、全身的にまたは局所的に投与されうる。製剤および投与についての技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co, Easton Pa.)の最新版に見出されうる。適した経路は、例えば、経口または経粘膜的投与;および、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または鼻腔内投与を含む非経口送達を含みうる。
注射について、本発明の薬学的組成物は、水溶液において、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理的緩衝食塩水のような生理的適合性の緩衝液において、製剤化されうる。組織または細胞投与について、浸透されるべき特定のバリアに適切な浸透剤が製剤において用いられる。そのような浸透剤は、一般的に、当技術分野において公知である。
他の態様において、本発明の薬学的組成物は、経口投与に適した用量で、当技術分野において周知の薬学的に許容される担体を用いて製剤化されうる。そのような担体は、薬学的組成物が、処置されるべき患者による経口または鼻摂取のために、錠剤、丸薬、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化されることを可能にする。
本発明に用いるのに適した薬学的組成物は、活性成分が、意図された目的を達成しうる有効量で含まれる、組成物を含む。例えば、REEPおよび/またはRTPの有効量は、嗅覚障害関連症状を抑制するその量でありうる。有効量の決定は、特に本明細書に提供された開示を鑑みれば、十分、当業者の能力の範囲内である。
活性成分に加えて、これらの薬学的組成物は、薬学的に用いられうる調製物への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および助剤を含む適した薬学的に許容される担体を含みうる。経口投与のために製剤化される調製物は、錠剤、糖衣錠、カプセルまたは溶液の形をとりうる。
本発明の薬学的組成物は、それ自身公知である様式で(例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル化、閉じ込め、または凍結乾燥過程を用いて)製造されうる。
非経口投与のための薬学的製剤は、水溶性型での活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液が、適切な油性注射懸濁液として調製されうる。適した親油性溶媒または媒体は、ゴマ油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランのような、懸濁液の粘性を増加させる物質を含みうる。任意で、懸濁液はまた、適した安定剤、または高く濃縮された溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる作用物質を含みうる。
経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、任意で、錠剤または糖衣錠コアを得るために、結果として生じた混合物を粉砕し、必要に応じて、適した助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工することにより、得られうる。適した賦形剤は、乳糖、ショ糖、マンニトール、もしくはソルビトールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモなどからのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース;ならびにアラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質のような、炭水化物またはタンパク質増量剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムのようなそれらの塩のような、崩壊剤または可溶化剤が添加されうる。
糖衣錠コアは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適した有機溶媒もしくは溶媒混合物も含みうる、濃縮された糖溶液のような適したコーティング剤で供給される。染料または色素が、製品識別のために、または活性化合物の量(すなわち、用量)を特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティング剤へ添加されうる。
経口で用いられうる薬学的調製物は、ゼラチンでできている押し込み型カプセル、加えてゼラチンでできている軟カプセル、密閉カプセル、およびグリセロールまたはソルビトールのようなコーティング剤を含む。押し込み型カプセルは、乳糖もしくはデンプンのような増量剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および任意で、安定剤と混合された活性成分を含みうる。軟カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールのような適した液体において、安定剤有りまたは無しで、溶解または懸濁されうる。
薬学的に許容される担体において製剤化された本発明の化合物を含む組成物は、調製され、適当な容器に入れられ、指示される状態の処置についてラベルを貼られる。REEPおよび/もしくはRTPのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列について、ラベル上に指示された状態は、嗅覚障害に関する状態の処置を含みうる。
薬学的組成物は、塩として供給されうり、限定されるわけではないが、塩酸の、硫酸の、酢酸の、乳酸の、酒石酸の、リンゴ酸の、コハク酸のなどを含む、多くの酸と形成されうる。塩は、対応する遊離塩基型である水性または他のプロトン性溶媒に、より溶けやすい傾向にある。他の場合では、好ましい調製物は、使用前に緩衝液と混合される、4.5〜5.5のpH範囲での、1 mM〜50 mMヒスチジン、0.1%〜2%ショ糖、2%〜7%マンニトールにおける凍結乾燥された粉末でありうる。
本発明の方法に用いられる任意の化合物について、治療的有効量は、最初は、細胞培養アッセイ法から推定されうる。その後、好ましくは、用量は、REEPおよび/またはRTPレベルを調整する望ましい循環濃度範囲を達成するように動物モデル(特にマウスモデル)において処方されうる。
治療的有効量は、疾患状態の症状を改善するREEPおよび/またはRTPのその量を指す。そのような化合物の毒性および治療効力は、細胞培養物または実験動物における、例えば、LD50(集団の50%に対して致死の用量)およびED50(集団の50%において治療的有効な用量)を測定することについての、標準的薬学的手順により測定されうる。毒性効果と治療的効果の間の用量比は、治療指数であり、それは、比LD50/ED50として表される。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ法および追加の動物研究から得られたデータは、ヒト使用についての用量範囲を処方するにおいて用いられうる。そのような化合物の用量は、好ましくは、有るか無しかの毒性をもつED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、用いられる剤形、患者の感受性、および投与経路に依存してこの範囲内を変動する。
正確な用量は、処置されるべき患者を考慮して個々の医師により選択される。用量および投与は、活性部分の十分なレベルを供給するように、または所望の効果を維持するように、調整される。考慮に入れられうる追加の因子は、疾患状態の重症度;患者の年齢、体重、および性別;食事、投与の時間および頻度、複合薬、反応感度、ならびに治療に対する耐性/応答を含む。長時間作用性薬学的組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に依存して3〜4日間ごと、毎週、または2週間に1回、投与されうる。
通常の用量は、投与経路に依存して、0.01〜100,000マイクログラムから約1 gの総用量まで変動しうる。特定の用量および送達の方法に関する手引きは、文献に提供されている(米国特許第4,657,760号;第5,206,344号;または第5,225,212号参照、すべては参照により本明細書に組み入れられている)。当業者は、REEPおよび/またはRTPのインヒビターについてとは異なるREEPおよび/またはRTPについての製剤を用いる。骨髄への投与は、静脈注射とは異なる様式での送達を必要としうる。
X. RNA干渉(RNAi)
RNAiは、ヒトを含むたいていの真核生物において外来遺伝子の発現を制御するための進化的に保存された細胞防御を表す。RNAiは、二本鎖RNA(dsRNA)により引き起こされ、dsRNAに応答して一本鎖標的RNA相同体の配列特異的mRNA分解をもたらす。mRNA分解の媒介物は、小さな干渉RNA二重鎖(siRNA)であり、通常、細胞において酵素的切断により長いdsRNAから生成される。siRNAは、一般的に、約21ヌクレオチド長(例えば、21〜23ヌクレオチド長)であり、2つのヌクレオチド3'-オーバーハングにより特徴付けられる塩基対形成された構造をもつ。細胞への小さなRNA、すなわちRNAi、の導入後、配列は、RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)と呼ばれる酵素複合体へ送達されると考えられている。RISCは、標的を認識し、それをエンドヌクレアーゼで切断する。より大きなRNA配列が細胞へ送達される場合には、リボヌクレアーゼIII酵素(ダイサー(Dicer))がより長いdsRNAを21〜23 nt ds siRNA断片へ変換することは注目される。
化学的に合成されたsiRNAは、培養された体細胞において哺乳動物の遺伝子機能のゲノムワイドの分析についての強力な試薬になっている。遺伝子機能の確証についてのそれらの価値を超えて、siRNAはまた、遺伝子特異的治療剤として大きな可能性をもっている(参照により本明細書に組み入れられている、Tuschl and Borkhardt, Molecular Intervent. 2002;2(3):158-67)。
siRNAの動物細胞へのトランスフェクションは、結果として、特定の遺伝子の強力な、長く続く転写後サイレンシングを生じる(Caplen et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A. 2001;98:9742-7; Elbashir et al., Nature. 2001;411:494-8; Elbashir et al., Genes Dev. 2001;15:188-200; およびElbashir et al., EMBO J. 2001;20:6877-88、すべては参照により本明細書に組み入れられている)。siRNAでRNAiを行うための方法および組成物は、例えば、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,506,559号に記載されている。
siRNAは、標的にされるRNAの量、および拡大解釈すれば、タンパク質を、しばしば、検出不可能なレベルへ、低下させるにおいて並はずれて効果的である。サイレンシング効果は、数ヶ月間持続しうり、標的RNAとsiRNAの中央領域の間の1ヌクレオチドのミスマッチが、しばしば、サイレンシングを阻止するのに十分であるため、並はずれて特異的である(Brummelkamp et al, Science 2002;296:550-3;およびHolen et al, Nucleic Acids Res. 2002;30:1757-66、両方とも参照により本明細書に組み入れられている)。
XI. REEPおよびRTPについてのRNAi
上で考察されているように、本発明は、細胞におけるREEPおよび/もしくはRTPポリペプチドの発現、OR、またはそのような成分の発現または活性に関与する経路を阻害するためのRNAiを提供する。
A. REEPおよび/またはRTPについてのRNAiの設計ならびに試験
REEPおよび/またはRTPについてのsiRNA(例えば、標的REEPおよび/またはRTP mRNAを標的にする)を設計するために、ソフトウェア設計ツールが当技術分野において利用できる(例えば、インターネット上で)。例えば、Oligoengineのウェブページは、Elbashir(参照により本明細書に組み入れられている、Elbashir et al, Methods 2002;26:199-213)の基準に基づいてRNAi候補を見出す1つのそのような設計ツールを有する。Ambionにより提供されるCenix Bioscience設計ツールのような他の設計ツールもまた用いられうる。さらに、Oligoengineにより提供されるSi2サイレンシング二重鎖もある。
mRNAが、自分で折り畳まり「ヘアピン」(dsRNAiの場合、一つの目的は、RNAiを自分自身ではなく、mRNAに付着させることであるから、それほど望ましくはない)を形成する傾向をもつかどうかを決定することを可能にする利用可能なRNA折り畳みソフトウェアプログラムもある。一つの好ましい立体配置は、3つ以下の結合をもつ開いた立体配置である。一般的に、正のΔGは、自発的にそれ自身上で折り畳む傾向にないことを示すのに望ましい。
作製されるsiRNA候補分子は、例えば、上記のように類似した技術を用いてインビボでのREEPおよび/またはRTP発現の量的評価について嗅覚障害の動物モデルにおいてスクリーニングされうる。
B. 発現カセット
本発明のREEPおよび/またはRTP特異的siRNAは、化学的に合成されうる。化学合成は、当技術分野において公知または発見された任意の方法により達成されうる。または、本発明のREEPおよび/またはRTP特異的siRNAは、転写による合成を含む方法により合成されうる。いくつかの態様において、DNA鋳型およびバクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーターからとしてインビトロで、他の態様において、合成は、遺伝子およびプロモーターからとしてインビボである。2つの鎖が別々に合成されてアニールされる場合の別々に鎖形成された二重鎖siRNAもまた、当技術分野において公知または発見された任意の方法により化学的に合成されうる。または、ds siRNAは、転写による合成を含む方法により合成される。いくつかの態様において、siRNAの二本鎖領域の2つの鎖は、インビトロ(例えば、転写系において)かまたは宿主細胞におけるインビボかのいずれかで、2つの異なる発現カセットにより別々に発現され、その後、いっしょにされて、二重鎖を形成する。
従って、もう一つの局面において、本発明は、プロモーターならびにREEPおよび/またはRTPに特異的なsiRNAをコードする遺伝子を含む発現カセットを含む組成物を提供する。いくつかの態様において、転写されたsiRNAは、長さが約18〜25塩基対の別々に鎖形成される二重鎖(または二本鎖、またはds)siRNAの一本鎖を形成する;従って、ds siRNAの形成は、ds siRNAの2つの異なる鎖のそれぞれの転写を必要とする。発現カセットにおける用語「遺伝子」は、siRNAの産生に必要なコード配列を含む核酸配列を指す。従って、遺伝子は、限定されるわけではないが、ds siRNAの鎖についてのコード配列を含む。
一般的に、DNA発現カセットは、ds siRNAの一本鎖についての少なくとも1つの遺伝子もしくは所望のコード配列、および、インビトロかもしくはインビボのいずれかでの実施可能に連結したコード配列の発現に必要な適切な核酸配列を含む、化学合成された、または組換えDNA分子を含む。インビトロでの発現は、転写系における、および転写/翻訳系における発現を含みうる。インビボでの発現は、特定の宿主細胞および/または生物体における発現を含みうる。原核細胞におけるまたは原核生物のインビトロ発現系における発現に必要な核酸配列は、周知であり、通常、プロモーター、オペレーター、およびリボソーム結合部位を、しばしば、他の配列と共に、含む。真核生物のインビトロ転写系および細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結およびポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。当技術分野において転写鋳型と呼ばれている、細菌RNAポリメラーゼ(T3、T7およびSP6のような)による発現に必要な核酸配列は、ポリメラーゼプロモーター領域、続いて望まれるRNA配列(またはsiRNAについてのコード配列もしくは遺伝子)の相補体を有する鋳型DNA鎖を含む。転写鋳型を作製するために、相補鎖は、鋳型鎖のプロモーター部分にアニールされる。
上記の発現カセットのいずれかにおいて、遺伝子は、切断された時、結果として少なくとも2つの切断生成物を生じるように、少なくとも1つの切断部位を含む転写産物をコードしうる。そのような生成物は、ds siRNAの2つの反対の鎖を含みうる。真核細胞における発現のための発現系において、プロモーターは、恒常的または誘導性でありうる;プロモーターはまた、組織もしくは器官特異的(例えば、眼に特異的)、または発育相に特異的でありうる。好ましくは、プロモーターは、転写される領域の5'側に位置する。他のプロモーターもまた企図される;そのようなプロモーターは、他のポリメラーゼIIIプロモーターおよびマイクロRNAプロモーターを含む。
好ましくは、真核生物発現カセットはさらに、そのプロモーターとの使用に適した転写終結シグナルを含む;例えば、プロモーターがRNAポリメラーゼIIIにより認識される場合、終結シグナルは、RNAポリメラーゼIII終結シグナルである。カセットはまた、宿主細胞ゲノムへの安定な組み込みのための部位を含みうる。
C. ベクター
本発明の他の局面において、組成物は、REEPおよび/もしくはRTPに特異的なsiRNAをコードする遺伝子を含むベクター、または好ましくは、プロモーター、ならびにREEPおよび/もしくはRTPに特異的なsiRNA(siRNA遺伝子)の産生に必要な配列をコードする遺伝子を含む少なくとも1つの発現カセットを含む。ベクターはさらに、マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、選択遺伝子、または実験遺伝子のような対象となる遺伝子を含みうる。本発明のベクターは、クローニングベクターおよび発現ベクターを含む。発現ベクターは、宿主細胞におけるインビボにおいてだけでなく、インビトロの転写/翻訳系にも用いられうる。宿主細胞におけるインビボで用いられる発現ベクターは、一過性かまたは安定的にかのいずれかで、宿主細胞へトランスフェクションされうる。従って、ベクターはまた、宿主細胞ゲノムへの安定な組み込みのための部位を含みうる。
いくつかの態様において、多コピープラスミドへバクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーターの下流にsiRNA遺伝子をクローニングすることは有用である。バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター(T7プロモーターのような)を含む様々な転写ベクターが利用できる。または、DNA合成が、バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーターをsiRNAコード配列の上流に付加するように用いられうる。制限酵素で直線化される、クローニングされたプラスミドDNAは、その後、転写鋳型として用いられうる(例えば、Milligan, JF and Uhlenbeck, OC (1989) Methods in Enzymology 180:51-64参照)。
本発明の他の態様において、ベクターは、限定されるわけではないが、染色体、非染色体および合成のDNA配列を含む(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルスおよび仮性狂犬病のようなウイルスDNAの誘導体)。適切な系(インビトロまたはインビボのいずれでも)において発現される、およびインビボで用いられる場合、宿主において生存可能である限り、任意のベクターが用いられうることが企図される;これらの2つの基準は一過性トランスフェクションにとって十分である。安定なトランスフェクションについて、ベクターはまた宿主において複製可能である。
多数の適したベクターは、当業者に公知であり、市販されている。本発明のいくつかの態様において、哺乳動物の発現ベクターは、複製開始点、適したプロモーターおよびエンハンサー、ならびにまた、任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与体および受容体部位、転写終結配列、ならびに5'フランキング非転写配列を含む。他の態様において、SV40スプライスおよびポリアデニル化部位由来のDNA配列が、必要とされる非転写遺伝要素を供給するために用いられうる。
本発明の特定の態様において、siRNA遺伝子(REEP1、RTP1、RTP2、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、およびRTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6)に特異的な)を含む発現カセットの部分ではない発現ベクターにおける遺伝子配列は、mRNA合成を指揮しうる適切な発現制御配列(プロモーター)へ実施可能に連結されている。いくつかの態様において、遺伝子配列は、マーカー遺伝子または選択遺伝子である。本発明に有用なプロモーターは、限定されるわけではないが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、およびマウスメタロチオネインプロモーター、ならびに哺乳動物細胞またはそれらのウイルスにおいて遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーターを含む。本発明の他の態様において、組換え発現ベクターは、複製開始点、および宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー(例えば、真核細胞培養についてジヒドロ葉酸レダクターゼもしくはネオマイシン耐性)を含む。
本発明のいくつかの態様において、遺伝子をコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターへ挿入することにより増加する。エンハンサーは、それの転写を増加させるようにプロモーターに作用する、通常、約10 bpから300 bpまでの、DNAのシス作用性エレメントである。本発明において有用なエンハンサーは、限定されるわけではないが、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側上のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含む。
好ましくは、ベクターの設計は、より永続する阻害のためにRNAiを送達するように設定される。例えば、Ambionにより提供されるpSilencer siRNA発現ベクター、Oligoengineにより提供されるpSuper RNAi系、およびIMGENEXにより提供されるGneSilencer System。これらは、すべて、プラスミドベクターに基づいたRNAiである。BD Biosciencesは、プラスミドに基づいたベクターおよびアデノウイルスまたはレトロウイルス送達形式の両方を可能にする、RNAi-Ready pSIREN Vectorを提供している。Ambionは、siRNAについてのアデノウイルスベクターをすぐに、放出することが予想される。ベクターの設計について、ヘアピンの形成に関する心配がない、またはmRNA折り畳みパターンに関する実行において少しの違いでも見出した研究はないことから、折り畳みパターンに関する制限はない。それゆえに、例えば、配列番号:1〜20は、ベクター(プラスミドおよびウイルスの)送達系において用いられうる。
Ambionは、彼らのウェブページ上でベクターについての設計ツールを提供し、BD Biosciencesは、ベクターの設計のためのマニュアルを提供しており、両方ともsiRNAについてのベクターを設計するために有用であることは、注目される。
D. 細胞のトランスフェクション
さらに他の局面において、本発明は、上記のような本発明の発現カセットにより、または本発明のベクターであって、ベクターが上記のような本発明の発現カセット(または単にsiRNA遺伝子)を含む、ベクターにより、トランスフェクションされる細胞を含む組成物を提供する。本発明のいくつかの態様において、宿主細胞は哺乳動物細胞である。トランスフェクションされる細胞は、培養細胞、または組織、器官、もしくは生物体細胞でありうる。培養宿主細胞の特定の例は、限定されるわけではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル腎臓線維芽細胞のCOS-7系、293T、C127、3T3、HeLaおよびBHK細胞系を含む。インビボでの宿主細胞の特定の例は、腫瘍組織および眼組織を含む。
細胞は、一過性にまたは安定的にトランスフェクションされうる(例えば、siRNAを発現させるDNAは、安定的に組み込まれ、宿主細胞のゲノムにより発現される)。細胞はまた、本発明の発現カセットでトランスフェクションされうる、またはそれらは、本発明の発現ベクターでトランスフェクションされる。いくつかの態様において、トランスフェクションされた細胞は、培養された哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、である。他の態様において、それらは、組織、器官、または生物体の細胞である。
本発明において、インビトロでトランスフェクションされうる細胞は、典型的には、例えば、American Tissue Culture Collectionにより定義されているような好ましい方法によるように、当技術分野において周知である方法に従って、トランスフェクション前に培養される。本発明の特定の態様において、細胞は、外因的に(または化学的方法もしくはインビトロ転写方法によるような、インビトロで)合成されるsiRNAでトランスフェクションされる、またはそれらは、トランスフェクションされた細胞内でsiRNAを発現させる発現カセットまたはベクターでトランスフェクションされる。
いくつかの態様において、細胞は、細胞が外因性RNAを取り込み、かつ生存可能なままであるのを可能にする、当技術分野において公知または発見された任意の方法によりsiRNAでトランスフェクションされる。非限定的例は、電気穿孔法、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用、浸透圧衝撃、温度衝撃、ならびに電気穿孔および圧力処理を含む。代替の態様において、siRNAは、報告されているように(例えば、参照により本明細書に組み入れられている、Elbashir et al. (2001) Nature 411:494-498により)、インビボでリポフェクションにより導入される。
他の態様において、発現カセットまたは少なくとも1つの発現カセットを含むベクターは、トランスフェクション、電気穿孔法、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体の使用を含む、当技術分野において公知の方法により所望の宿主細胞へ導入されうる(例えば、Wu et al. (1992) J. Biol. Chem., 267:963; Wu and Wu (1988) J. Biol. Chem., 263:14621;およびWilliams et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:272参照)。受容体媒介型DNA送達アプローチもまた用いられうる(Curiel et al. (1992) Hum. Gene Ther., 3:147;およびWu and Wu (1987) J. Biol. Chem., 262:4429)。いくつかの態様において、様々な方法は、細胞のトランスフェクションを増強するために用いられる。これらの方法は、限定されるわけではないが、浸透圧衝撃、温度衝撃、ならびに電気穿孔および圧力処理を含む。
または、ベクターは、インビボでリポフェクションにより導入されうる。過去10年間、インビトロでの核酸のカプセル化およびトランスフェクションのためのリポソームの使用の増加があった。リポソーム媒介型トランスフェクションで遭遇される困難および危険を制限するために設計された合成カチオン性脂質は、マーカーをコードする遺伝子のインビボトランスフェクションのためのリポソームを調製するために用いられうる。カチオン性脂質の使用は、負に帯電した核酸のカプセル化を促進し、かつまた、負に帯電した細胞膜との融合を促進しうる。核酸の移入のために特に有用な脂質化合物は、参照により本明細書に組み入れられている、WO 95/18863およびWO 96/17823に、ならびに米国特許第5,459,127号に記載されている。カチオン性オリゴペプチド(例えば、WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば、WO 96/25508)、またはカチオン性ポリマー(例えば、WO 95/21931)のような他の分子もまた、インビボでの核酸のトランスフェクションを促進するために有用である。
発現カセットとしてかまたはベクターとしてかのいずれかで、裸のDNAのようなインビボでsiRNAをコードする配列を導入することも可能である。裸のDNAを製剤化して、哺乳動物の筋肉組織へ投与するための方法は、米国特許第5,580,859号および第5,589,466号に開示されており、それらの両方は、参照により本明細書に組み入れられている。
安定なトランスフェクションは、典型的には、トランスフェクションのために用いられるベクターにおいて選択マーカーの存在を必要とする。トランスフェクションされた細胞は、その後、選択手順にかけられる。一般的に、選択は、G418またはハイグロマイシンBのような毒性物質において、トランスフェクションされた細胞上に毒性物質に対する耐性を与えるトランスフェクションされたマーカー遺伝子を発現させるそれらの細胞のみが生存しかつ増殖するように、細胞を増殖させる段階を含む。そのような選択技術は当技術分野において周知である。典型的な選択マーカーは周知であり、G418またはハイグロマイシンBに対する耐性をコードする遺伝子を含む。
好ましい態様において、トランスフェクション剤は、OLIGOFECTAMINEである。OLIGOFECTAMINEは、脂質に基づいたトランスフェクション試薬である。dsRNAのトランスフェクションのために設計された脂質に基づいたトランスフェクション試薬の追加の例は、Mirus(Madison, WI)により提供されているTransit-TKO試薬、およびPolyplus-transfection SASにより導入されたjetSIである。さらに、Ambionにより提供されるSilencer siRNA Transfection Kitは、siPORT AmineおよびsiPORT Lipidトランスフェクション剤を含む。Rocheは、また脂質に基づいているFugene 6トランスフェクション試薬を提供する。細胞培養において電気穿孔法を用いる選択肢がある。好ましくは、プラスミドベクター送達系は、Invitrogenにより提供されるOLIGOFECTAMINEで、またはAmbionにより提供されるsiPORT XP-1トランスフェクション剤で、細胞へトランスフェクションされる。
特定の態様において、分子の親油性を変化させるようなdsRNAiの特定の化学的改変が用いられうる(例えば、dsRNAの3'末端における親油性残基の付着)。dsRNAの生物体への送達もまた、リポソームカプセル化分子の注入のようなアンチセンスオリゴヌクレオチドの適用として前に開発された方法で達成されうる。
E. キット
本発明はまた、REEPおよび/またはRTPに特異的なsiRNA遺伝子を含む少なくとも1つの発現カセットを含むキットを提供する。いくつかの局面において、発現カセットからの転写産物は、長さが約18〜25塩基対の二本鎖siRNAを形成する。他の態様において、発現カセットは、上記のように、ベクター内に含まれ、ベクターは、インビトロで転写もしくは転写/翻訳系に用いられうる、またはインビボで、一過性にかもしくは安定的にかのいずれでも細胞をトランスフェクションするために用いられうる。
他の局面において、キットは、少なくとも2つの発現カセットを含み、それぞれは、少なくとも1つの遺伝子が、ds siRNAを形成するように第二カセットによりコードされた鎖と結合するsiRNAの1つの鎖をコードするように、siRNA遺伝子を含む;そのように生成されたds siRNAは上記の態様のいずれかである。これらのカセットは、プロモーターおよびds siRNAの1つの鎖をコードする配列を含みうる。いくつかのさらなる態様において、2つの発現カセットは、単一のベクターに存在する;他の態様において、2つの発現カセットは、2つの異なるベクターに存在する。少なくとも1つの発現カセットを含むベクター、またはそれぞれが単一の発現カセットを含む2つの異なるベクターは、インビトロで転写もしくは転写/翻訳系に用いられうる、またはインビボで、一過性にかもしくは安定的にかのいずれでも細胞をトランスフェクションするために用いられうる。
さらに他の局面において、キットは、ds siRNAの2つの別々の鎖をコードする遺伝子、および、遺伝子が転写された時、転写産物が結果として上記のようにds siRNAを形成するように結合できる2つの別々の鎖を生じるために、例えば切断により処理されるように、各鎖をコードする配列間にプロセシング部位を含む、少なくとも1つの発現カセットを含む。
いくつかの態様において、本発明は、以下を含むキットを提供する;a)REEPおよび/またはRTPタンパク質の発現を阻害するように設定された小さな干渉RNA二重鎖(siRNA)を含む組成物、ならびにb)REEPおよび/またはRTP mRNAが切断されるまたは別なふうに無能にされるような条件下でのREEPおよび/またはRTP mRNAの発現を介して、REEPおよび/またはRTPタンパク質を発現させる標的細胞を処置するための組成物を用いることについての指示を含む印刷物。特定の態様において、印刷物は、眼疾患を処置するための組成物を用いることについての指示を含む。
F. REEPおよび/またはRTP特異的siRNAの作製
本発明はまた、REEPおよび/もしくはRTP(例えば、ヒトREEPおよび/もしくはRTP)に特異的な、またはREEPおよび/もしくはRTPの突然変異体型または野生型に特異的なsiRNAを合成する方法を提供する。siRNAは、インビトロまたはインビボで合成されうる。インビトロ合成は、化学合成およびインビトロ転写による合成を含む。インビトロ転写は、バクテリオファージRNAポリメラーゼからのような転写系において、または真核生物RNAポリメラーゼからのような転写/翻訳系において、達成される。インビボ合成は、トランスフェクションされた宿主細胞において生じる。
化学的にかまたは転写によるかのいずれかでの、インビトロで合成されるsiRNAは、細胞をトランスフェクションするために用いられる。それゆえに、本発明はまた、インビトロで合成されたsiRNAで宿主細胞をトランスフェクションする方法を提供する;特定の態様において、siRNAはインビトロ転写により合成される。本発明はさらに、インビトロで合成されたsiRNAで細胞をトランスフェクションすることによりインビボでREEPおよび/またはRTP遺伝子をサイレンシングする方法を提供する。他の方法において、siRNAは、レポーター遺伝子をコードしかつ発現させる発現ベクターと共の、発現カセットまたは発現ベクターからの転写/翻訳系においてインビトロで発現される。
本発明はまた、インビボでsiRNAの合成を指揮する発現カセットまたはベクターで細胞をトランスフェクションすることによりインビボでsiRNAを発現させる方法を提供する。本発明はまた、インビボでsiRNAの合成を指揮する発現カセットまたはベクターで細胞をトランスフェクションすることによりインビボで遺伝子をサイレンシングする方法を提供する。
XII. 匂い物質受容体リガンドの同定
本発明は、匂い物質受容体に特異的なリガンドを同定するための方法を提供する。本発明は、匂い物質受容体に特異的なリガンドを同定するための特定の方法に限定されない。好ましい態様において、本発明は、細胞表面、REEP1、RTP1、またはそれらの変種、RTP2およびGαolfに局在した対象となる匂い物質受容体(例えば、任意のヒト匂い物質受容体)を発現させる細胞系(例えば、異種293T細胞系)を提供する。匂い物質受容体の活性化は、結果として、cAMPにおける増加を生じる。それとして、いくつかの態様において、細胞系はさらに、匂い物質受容体活性化を検出するためにレポーティング剤(例えば、ルシフェラーゼ)と連結されたcAMP応答配列を含む。匂いのある分子(例えば、オイゲノール)は細胞系に曝される。匂いのある分子が匂い物質受容体に特異的なリガンドである場合には、ルシフェラーゼ発現またはルシフェラーゼ発現における変化が検出できる(例えば、実施例7参照)。
実施例
ORを細胞表面へターゲットすることに関与するアクセサリータンパク質を同定するために、遺伝子は、HEK293T(293T)細胞においてORの機能的細胞表面発現を誘導することについてスクリーニングされた。ORの細胞表面発現を促進する、REEP1、RTP1、RTP2、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、およびRTP1-E、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP-D2、RTP-D3、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP4-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6)が発見された。これらのタンパク質は、嗅覚神経により発現され、ORタンパク質と相互作用し、293T細胞においてORと同時発現される場合、匂い物質への応答を増強する。さらになお、これは、脂肪族匂い物質に応答する新しいORを同定するための異種発現系の構築を可能にした。
実施例1. 匂い物質受容体アクセサリータンパク質の同定
哺乳動物のORが機能的細胞表面発現にアクセサリータンパク質を必要とするという仮説を立てた後で、探索は、そのような分子を検出することについて始められた。Long-SAGE(遺伝子発現の連続分析(serial analysis of gene expression))ライブラリー(例えば、Saha, S., et al., (2002) Nat Biotechnol 20, 508-512;全体として参照により本明細書に組み入れられている)が、単一嗅覚ニューロン、および鼻鋤骨器官由来のニューロンから構築され、これらのニューロンにより発現される遺伝子が収集された。嗅覚ニューロンにより発現される候補遺伝子を同定するために、デジタルディファレンシャルディスプレイ(Digital Differential Display)(例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/info_ddd.shtml参照)も用いられた。候補遺伝子は、膜結合型タンパク質をコードするORFについて調べられた。遺伝子は、既知のシャペロンとの類似性に関して選択され、嗅覚上皮cDNAからcDNAをクローニングされた。各遺伝子のmRNA発現は、インサイチューハイブリダイゼーションにより検証された。単離し、哺乳動物の発現ベクターへサブクローニングした後に、ロドプシンの20個のN末端アミノ酸(Rhoタグ)でタグを付けられたマウスOR(MOR203-1)と共に各cDNAは、293T細胞へトランスフェクションされた。Rhoタグに対する抗体を用いて生細胞を染色することにより、これらのクローンがORの細胞表面発現に何か効果を生じたかどうかを評価する測定が行われた(例えば、Laird, D.W., and Molday, R.S. (1988) Invest Ophthalmol Vis Sci 29, 419-428参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。MOR203-1が単独でトランスフェクションされた場合、抗体染色は、細胞の1%未満においてほんのかすかな細胞表面発現を検出した。本発明で利用されたスクリーニング手順の概要を示す概略図は、図1に提供されている。
実施例2. REEPおよび/またはRTPはORの細胞表面発現を増強する
2つの関係のないクローン(試験された61個のうちの)は、MOR203-1の細胞表面発現の数および染色強度の両方を増強した(図2A参照)。これらのクローンによりコードされるタンパク質は、受容体発現増強タンパク質1(Receptor Expression Enhancing Protein 1)としてREEP1、および受容体輸送タンパク質1(Receptor Transporting Protein 1)としてRTP1と名付けられた。その後、RTP1の近い類縁体、RTP2が見出された。RTP2もまた、MOR203-1の細胞表面発現を増強した。次に、REEP1、RTP1およびRTP2は、他のORの細胞表面発現を促進することにおいて類似した効果を検出するために試験された。4つの異なるOR(マウスOREG、マウスolfr62、マウスOR-S46、およびラットI7)が、REEP1、RTP1またはRTP2と共にまたは無しで、293T細胞に発現された。BFPまたはGFPのコトランスフェクションは、トランスフェクション効率が一貫する(〜70%)ことを実証した。さらに、REEPおよび/またはRTPと共にトランスフェクションされたORは、REEPおよび/またはRTP無しでのORと比較して、陽性細胞においてより多い免疫蛍光細胞およびより強いシグナルを発生した(図2A参照)。免疫陽性細胞のシグナル強度および数は、異なるORを各条件で用いる場合、変動した。例えば、ラットI7の場合、表面発現は、試験された他のORのそれよりも有意に低かった。それでもなお、アクセサリータンパク質が同時発現された場合のみ、時々発生する免疫陽性細胞が観察された。RTP1またはRTP2の効果は、REEP1のそれよりも一貫してより頑強であった。細胞表面発現の増強は、ORに特異的であり、他のGPCRには特異的ではなかった;REEPおよび/またはRTPのどちらも、β2アドレナリン受容体、mT2R5(マウス苦味受容体)(例えば、Chandrashekar, J., et al. (2000) Cell 100, 703-711参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)、またはV2Rフェロモン受容体(VR4)(例えば、Matsunami, H., and Buck, L.B. (1997) Cell 90, 775-784参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)の発現を増強しなかった(図2Aおよび図3参照)。最後に、MOR203-1の細胞表面発現の増強は、REEPおよびRTPファミリーの他のメンバー(REEP2およびRTP4)が同時発現された場合、観察されなかった。
免疫陽性細胞の数および強度を定量するために、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析が行われた。トランスフェクションおよび染色効率をモニターするために、HAタグ付きβ2アドレナリン受容体が、対照として用いられた。より多くの細胞が標識され、蛍光シグナルは、ORがアクセサリータンパク質と発現された場合、より高かった(図2Bおよび2Cならびに図4参照)。
実施例3. REEPおよび/またはRTP遺伝子は膜貫通タンパク質をコードする
REEP1遺伝子は、2つの推定上の膜貫通ドメインを含む201アミノ酸のタンパク質をコードする(図5A参照)。C末端タグ付きREEP1タンパク質の免疫染色は、C末端が細胞外であることを示している。BLAST検索は、多様な真核生物種において相同遺伝子を同定した。REEP1は、酵母YOP1、オオムギHVA22、およびヒトDP1/TB2と限られた類似性を示した(図5B参照)。YOP1は、小胞輸送に関係している(例えば、Brands, A., and Ho, T.H. (2002) Plant Physiol 130, 1121-1131参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。HVA22の発現は、アブシジン酸により誘導され、極度の温度または脱水のような様々な環境的ストレスにより制御される(例えば、Chen, C.N., et al. (2002) Plant Mol Biol 49, 633-644; Shen, Q., et al. (1993) J Biol Chem 268, 236522-23660参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。DP1/TB2は、大腸癌において欠失した遺伝子によりコードされ(例えば、Kinzler, K.W., et al. (1991) Science 253, 661-665参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)、DP1(REEP5)のマウス相同体は、肥満細胞がIgEプラス抗原により引き起こされる場合、下方制御される(例えば、Prieschl, E., et al. (1996) Gene 169, 215-218参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。マウスゲノムにおいて、REEP1は、少なくとも5つの追加の相同遺伝子(REEP2〜6と名付けられた)を有する(図5B参照)。
RTP1およびRTP2遺伝子は、それぞれ、263アミノ酸および223アミノ酸を有するタンパク質をコードし、アミノ酸レベルにおいて73%配列同一性を共有する(図5C参照)。どちらのタンパク質もシグナル配列を有しないように思われるが、両方ともC末端近くに位置する単一の推定上の膜貫通ドメインを有する。C末端タグ付きRTP1の免疫染色は、C末端が細胞外であることを示唆している。マウスゲノムのBLAST検索は、2つの追加のメンバー、RTP3およびRTP4を同定した。脊椎動物種以外に明らかなRTP相同体はなかった。とはいえ、線虫(C. elegans)ODR-4(例えば、Dwyer, N.D., et al. (1998) Cell 93, 455-466参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)は、RTPと同じ膜位相幾何学をもつように思われる。
実施例4. REEPおよび/またはRTPは嗅覚ニューロンにおいて特異的に発現される
様々なマウス組織から抽出されたRNAに関するノーザンブロット分析により、REEP1ならびに特にRTP1およびRTP2は、嗅覚および鼻鋤骨器官において最も著しく発現されていることが明らかにされた。REEP1 RNAはまた、脳において有意なレベルで検出された(図6A参照)。長時間曝露により、脳におけるRTP1およびRTP2についてのかすかなシグナルが明らかにされた。睾丸における発現は観察されなかったが、ORのサブセットは発現されている(例えば、Parmentier, M., et al. (1992) Nature 355, 453-455; Spehr, M., et al. (2003) Science 299, 2054-2058参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。
嗅覚上皮において、REEPおよび/またはRTPは、嗅覚ニューロンにおいて特異的に発現されたが、OMP発現、成熟嗅覚性感覚ニューロンについてのマーカー、との比較から明らかである(図6B参照)。コード配列に渡ってヌクレオチドレベルで87%同一性である、RTP1 RNAとRTP2 RNAの間のクロスハイブリダイゼーションを避けるために、プローブとして非相同性3'UTR領域が、オープンリーディングフレームに対応するプローブに加えて用いられた。シグナルは同一であった。他のREEPまたはRTP遺伝子の発現は、より低いレベルで発現されたRTP4を例外として、嗅覚ニューロンにおいて検出されなかった(図6B参照)。最後に、REEP1は、脳細胞のサブセットにより発現された(図6C参照)。
実施例5. REEP1およびRTP1はORと相互作用できる
ORの細胞表面発現を促進するREEPおよび/またはRTPの能力を仮定すれば、それらはまたORタンパク質と相互作用しうるという仮説が立てられた。これは、共免疫沈降アッセイ法を用いて評価された。HAタグ付きMOR203-1およびFlagタグ付きREEP1、RTP1またはICAP-1、陰性対照(例えば、Zawistowski, J.S., et al. (2002) Hum Mol Genet 11, 389-396参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)、が293T細胞においてトランスフェクションされた。細胞抽出物が抗Flag抗体で沈降された後、タンパク質は、室温でSDS試料緩衝液に溶出され、その後、ウェスタンブロッティング分析が、ORタンパク質を検出するために行われた。ORタンパク質は、REEP1またはRTP1の沈降後、高分子量バンドとして検出された(図7B、レーン1および2参照)。対照GPCR、β2アドレナリン受容体、の大部分は、これらの溶出条件を用いて高分子量オリゴマーを形成しなかった。同様に、HA-MOR203-1タンパク質が沈降した場合、REEP1またはRTP1タンパク質は共沈降したが、ICAP-1は検出できなかった(図7C、レーン1、2および3参照)。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これらの結果は、REEP1およびRTP1がORと複合体形成することを示している。
タンパク質相互作用に基づいて、アクセサリータンパク質の機能発現はORタンパク質により制御されうるという仮説が立てられた。C末端Flagタグ付きRTP1のみが293T細胞へトランスフェクションされた場合、細胞表面シグナルはほとんど検出されず、RTPタンパク質の大部分が細胞の内側にあることを示した。対照的に、RTP1およびORのコトランスフェクションは、細胞表面RTP1を大いに増強した(図7D参照)。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これらの結果は、細胞表面発現についてのORおよびRTP1の相互依存を実証し、ORおよびRTP1の両方の効果的な細胞表面発現が、その2つの間に比較的安定な受容体複合体の形成を必要とすることを示した。C末端タグ付きREEP1が発現された場合、少量の細胞表面REEP1が観察された。RTP1とは違って、ORタンパク質の同時発現は、REEP1の細胞表面発現を促進しなかった(図7E参照)。
実施例6. REEPおよび/またはRTPはOR機能を増強する
ORを発現させる異種細胞培養系における弱い匂い物質誘起性シグナル伝達活性は、ORの乏しい細胞表面発現に起因した。REEPおよび/またはRTPの同定は、この問題の直接的評価を可能にした。cAMP応答配列(CRE)がルシフェラーゼ遺伝子発現を媒介する、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ法が用いられた(図8A参照)。OR活性化はcAMPにおける増加へと導くので、マウス匂い物質受容体OREGの、それのリガンドオイゲノールによる活性化は、REEPおよび/またはRTPの存在および非存在下で測定された(例えば、Kajiya, K., et al. (2001) J Neurosci 21, 6018-6025; Touhara, K., et al., (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96, 4040-4045参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。以前に報告されているように、オイゲノールは、OREG依存性ルシフェラーゼ活性のレベルを増加させた(例えば、Katada, S., et al. (2003) Biochem Biophys Res Commun 305, 964-969参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。OREGのREEPおよび/またはRTPとの同時発現は、匂い物質依存性ルシフェラーゼ活性を顕著に増強した(図8B)。バニリンまたはエチルバニリン、2つの他のOREGリガンドが適用された場合、同様の結果が得られた。RTP4もまた嗅覚上皮において低レベルで発現されているため、このタンパク質はOREGと同時発現されたが、これは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性における有意な増加を生じなかった。
他のGPCRは、アクセサリータンパク質に依存してリガンド特異性における変化を示しうる(例えば、McLatchie, L.M., et al. (1998) Nature 393, 333-339参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)(McLatchie et al., 1998)。REEP1、RTP1、またはRTP2が、OR、OREGおよびOR-S46のそれらのアゴニストとのリガンド選択性を変化させるかどうかを調べるために、関連した化学物質が試験された。受容体がアクセサリータンパク質と同時発現された場合、関連性のある化学物質選択性における実質的変化は観察されなかった(図8C参照)。
実施例7. 匂い物質受容体相互作用を同定するための機能アッセイ法の構築
匂い物質-OR相互作用の分析を容易にするために、REEP1、RTP1、RTP2およびGαolf、ORと共役するGタンパク質αサブユニット、を安定的に発現させる293T細胞系が確立された(例えば、Belluscio, L., et al. (1998) Neuron 20, 69-81; Jones, D.T., and Reed, R.R. (1989) Science 244, 790-795参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。そのような細胞を確立するために、マウスREEP1、RTP1、RTP2、およびGαolf ORFを含む線形化(linearized)発現ベクターがPGK-Pac(ピューロマイシン耐性遺伝子)を含む293T細胞へトランスフェクションされた(例えば、Watanabe, S., et al. (1995) Biochem Biophys Res Commun 213, 130-137参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。ピューロマイシン耐性クローンの中で、クローン3Aは、OREGがトランスフェクションされた時、オイゲノールに対する大きな応答を示し、Hana3Aと名付けられた。RT-PCR分析は、Hana3A細胞が外因性REEP1、RTP1、RTP2、およびGαolfを発現させることを示した(図9参照)。OREGまたは他のORがHana3A細胞へトランスフェクションされ、免疫染色された時、細胞表面発現の増強が観察された(図10参照)。Hana3A細胞はまたルシフェラーゼアッセイ法においてリガンド応答を増加させるかどうかを試験するために、CRE-ルシフェラーゼレポーター遺伝子は、OREG(HAタグ付き)、OR-S46またはOR-S50のいずれかと共に、コトランスフェクションされ、それぞれ、それらのリガンド、オイゲノール、ノナン酸およびノナンニ酸で細胞を刺激された(例えば、Malnic, B., et al. (1999) Cell 96, 713-723; Touhara, K., et al. (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96, 4040-4045参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。HA-OREGが293T細胞に発現された場合、ほとんどルシフェラーゼ誘導は観察されなかった。対照的に、Hana3A細胞が用いられた場合、オイゲノール刺激後、ルシフェラーゼ活性における増強が観察された(図8D参照)。同様の結果は、2つの追加のOR、OR-S46およびOR-S50を用いて得られた。OR-S50遺伝子は、293T細胞においてルシフェラーゼ応答を生じなかったが、Hana3A細胞へトランスフェクションされた同じ受容体は、頑強なルシフェラーゼ活性を生じた(図8D参照)。293T細胞における単独でのGαolfの発現は、このアッセイ法を用いてOR活性化へ有るか無しかの効果を生じた。
REEP1、RTP1およびRTP2の存在下におけるOR機能の増加を確認するために、リガンド刺激におけるcAMPの量が、Gαolfを発現させる293T細胞およびHana3A細胞を用いて測定された。OREGがトランスフェクションされ、オイゲノールがORを刺激するために添加された場合、Hana3A細胞においてより多くのcAMPが生成された。対照的に、β2アドレナリン受容体が発現され、イソプロテレノールが用いられた場合、cAMP生成における有意な差は観察されなかった(図8E参照)。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これは、機能的OR発現におけるアクセサリータンパク質の特定の役割をさらに支持している。
以前の研究は、脂肪族アルコールおよび酸により活性化される単一の嗅覚ニューロンが、特定のOR、主としてクラスI(魚様(fish-like))OR、を発現させることを実証した(例えば、Malnic, B., et al. (1999) Cell 96, 713-723; Zhang, X., and Firestein, S. (2002) Nat Neurosci 5,124-133参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。以前に他の技術を用いてアッセイされた4つのOR(S6/79、S18、S46およびS50)(例えば、Malnic, B., et al. (1999) Cell 96, 713-723参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)は、脂肪族アルコール、アルデヒドおよび酸ならびにいくつかの他の匂い物質のアッセイパネルに対して試験された。さらに、同族リガンドが知られていない5つの「オーファン」クラスI OR(MOR23-1、MOR31-4、MOR31-6、MOR32-5、およびMOR32-11)が試験された。100 uMの閾値上濃度において、すべてのこれらのORは、試験された匂い物質のほんの小さなサブセットに応答する、匂い物質選択性であった(図11A参照)。この特異性は、より低く、より生理学的に関連した濃度において保持された。これらのORの多くは、マイクロモル濃度で存在する匂い物質に応答した。生細胞免疫蛍光によるこれらのORの細胞表面発現が評価された。いくつかのOR(S18、MOR31-4、MOR31-6およびMOR32-5)は強く発現されたが、他のOR(S6、S50、MOR23-1、MOR32-11)は弱く発現された(図12参照)。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これらの結果は、弱い発現が、生理学的関連濃度における匂い物質に対して有意な応答を生じるのに十分であったことを示唆している。最後に、2つの追加のオーファンクラスII OR、MOR203-1およびolfr62が、139個の匂い物質のパネルに対して試験された。MOR203-1は、高濃度のノナン酸に応答した(図11B参照)。olfr62は、クマリンおよびピペロナールに応答した(図11C参照)。数個の関連芳香族化合物が次に試験され、2-クマラノンが、olfr62についての好ましいリガンドとして同定された(図11C参照)。これらのORについての親の293T細胞がこのルシフェラーゼアッセイ法に用いられた場合、匂い物質に対する有るか無しかの応答が観察された。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これらの結果は、機能的OR発現におけるREEPおよび/またはRTPの重要性をさらに実証している。
実施例8. 受容体折り畳み、輸送、および/もしくは匂い物質認識中のREEPならびに/またはRTP機能
GPCRの発現は、タンパク質折り畳み、翻訳後修飾、ならびにERおよびゴルジ体を含む細胞区画を通っての輸送を含む複雑な過程である。さらに、GPCRの原形質膜への適切なターゲティングがホモまたはヘテロ二量体化を含みうることを証拠が示している(例えば、angers, S., et al. (2002) Annu Rev Pharmacol Toxicol 42, 409-435参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、REEPおよび/またはRTPがOR発現のこれらの段階のいずれかにおいて機能することができるが、それらの可能性のある相互作用に関して3つの可能性が図13に示されている。
第一に、REEPおよび/またはRTPは、ERにおいてORの正しい折り畳みを促進する。NinaA、ショウジョウバエ(Drosophila)のサイクロフィリンはロドプシンについてのシャペロンタンパク質として同定され、正しい折り畳みを促進すると考えられた(例えば、Baker, E.K., et al. (1994) Embo J 13, 4886-4895; Shieh, B.H., et al. (1989) Nature 338, 67-70参照;それぞれ、全体として参照より本明細書に組み入れられている)。REEP1の植物相同体、HVA22sは、ストレス誘導性遺伝子であり、植物が悪条件に耐えることを可能にしうる(例えば、Chen, C.N., et al. (2002) Plant Mol Biol 49, 633-644; Shen, Q., et al. (1993) J Biol Chem 268, 23652-23660参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、HVA22sの正確な役割は知られていないが、熱ショックタンパク質のようなストレス誘導性タンパク質のいくつかが、シャペロンとして機能するため、HVA22s、および類推により、たぶんREEP1が、折り畳みを促進するようにシャペロンとして働くことが想像できる。
第二に、REEP1、RTP1およびRTP2は、ORを含む特定の小胞/カーゴの輸送を促進する。この考えと一致して、酵母におけるREEP1相同体、YOP1Pは、Rab媒介型小胞輸送に関係している(例えば、Brands, A., and Ho, T.H. (2002) Plant Physiol 130, 1121-1131; Calero, M. (2001) J Biol Chem 276, 12100-12112参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。線虫(C. elegans)において、クラスリンアダプターサブユニット、UNC-101は、化学感受性受容体の嗅毛への輸送を媒介する(例えば、Dwyer, N.D., et al., (2001) Neuron 31, 277-287参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。
第三に、REEP1、RTP1およびRTP2は、ORとの補助受容体として働く。図7Dにおいて示されているように、RTP1細胞表面発現は、ORの同時発現により増強された。ORは、RTP(またはREEP1)との会合によりマスクされるER保持シグナルを含みうる、GABA(B)R2の会合によるGABA(B)R1の細胞表面発現の制御に類似した機構(例えば、Jones, K.A., et al. (1998) Nature 396, 674-679; Kaupmann, K., et al. (1998) Nature 396, 683-687; White, J.H., et al. (1998) Nature 396, 679-682参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。REEPおよびRTPは、異なるまたは相補的な役割をもつ可能性がある、任意のアミノ酸配列類似性または特定の配列モチーフの非存在と一致している仮説。
本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、上で概要を示された3つの役割は、REEP1、RTP1およびRTP2について理にかなっている;しかしながら、他の可能性のある機能は排除されない。OREGまたはOR-S46のリガンド特異性における変化は、REEP1、RTP1またはRTP2と共に発現された場合、観察されなかったにしても、それらが、いくつかのORの認識プロファイルを調整するにおいて役割を果たしている可能性がある。例えば、異なるRAMPメンバーは、カルシトニン受容体様受容体(CRLR)、GPCRのメンバーのリガンド特異性を変化させる。RAMP1と発現されたCRLRは、CGRP受容体として機能するが、RAMP2と発現されたCRLRは、アドレノメデュリン受容体として機能する(例えば、McLatchie, L.M., et al. (1998) Nature 393, 333-339参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。
本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、V1Rフェロモン受容体(例えば、Dualc, C., and Axel, R. (1995) Cell 83, 195-206参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)、T2R味覚受容体(例えば、Adler et al. (2000) Cell 100, 693-702; Matsunami, H., Montmayeur, J.P., and Buck, L.B. (2000) Nature 404, 601-604参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)、α2Cアドレナリン受容体(例えば、Hurt, C.M., et al. (2000) J Biol Chem 275, 35424-35431参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)、および甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(例えば、Yu, R., and Hinkle, P.M. (1997) Mol Pharmacol 51, 785-793参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)を含む多くのGPCRは、それらの細胞表面発現に補助因子を必要とするように思われる。従って、REEPおよびRTPメンバーは、そのようなGPCRの輸送を制御する可能性がある。インサイチューハイブリダイゼーション分析は、REEP3、REEP5、RTP1およびRTP2が、すべて、VNOニューロンにより発現されることを示した。さらに、REEPメンバーは、脳細胞のサブセットにおいて異なって発現される(M.M. and H.M., 未発表の観察)。SAGEおよび/またはデジタルディファレンシャルディスプレイ(Digital Differntial Display)を用いて特定の細胞型において発現される遺伝子のリストを作成し、受容体の細胞表面発現を促進する遺伝子をスクリーニングするためのストラテジーは、そのような場合に適用されうる。
実施例9. REEPおよび/またはRTPは匂い物質受容体-匂い物質相互作用の調査を可能にする
ORについてのリガンドの迅速な同定を可能にする発現系が確立された。この系は、12個のORに関して試験された。試験されたORのうちの4つ(S6/S79、S18、S46およびS50)は、脂肪族匂い物質に応答する単一の嗅覚ニューロンにおいて発現された(例えば、Malnic, B., et al. (1999) Cell 96, 713-723参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。OR-S50の応答プロファイルは以前の報告と一致したが、OR-S18のそれは一致しなかった(例えば、Malnic, B., et al. (1999) Cell 96, 713-723参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。以前の研究において、嗅覚ニューロンS6およびS79は、同じOR(OR-S6/S79)を発現させ、両方ともノナンニ酸に応答したが、嗅覚ニューロンS79のみが2つの匂い物質、ヘプタン酸およびオクタン酸に応答した(例えば、Malnic, B., et al. (1999) Cell 96, 713-723参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。本発明の過程中に行われた実験において、OR-S6/S79は、ノナンニ酸に応答したが、ヘプタン酸またはオクタン酸には応答しなかった。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これらの結果は、嗅覚ニューロンS6応答プロファイルを支持している。違いは、単一の嗅覚ニューロンから記録する場合の応答の変動による可能性がある。同じORを発現させる複数の単一嗅覚ニューロンが、カルシウム画像化を用いて匂い物質の同じセットに対して記録された場合、それらの応答プロファイルは類似していたが、異なった(例えば、Bozza, T., et al. (2002) J Neurosci 22, 3033-3043参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。
試験パネルにおける異なる匂い物質に応答する数個の新しいORが同定された。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これらの結果は、ORのリガンド特異性を解読しうるこの系の適用を実証している。様々な匂い物質に応答するORのプロファイルは、1つのORが複数の関連した匂い物質に応答し、1つの匂い物質が複数の受容体を活性化する、「組み合わせ受容体コード」の考えと一致している(例えば、Kajiya, K., et al. (2001) J Neurosci 21, 6018-6025; Malnic, B., et al. Cell 96, 713-723参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。
本発明の過程中に行われた実験において、3つのクラスI OR(S46、MOR23-1、MOR31-4)だけでなくMOR203-1、クラスII ORもまたノナン酸に応答した。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これらの結果は、MOR203-1および他のノナン酸OR(MOR23-1、MOR31-4およびS46)がたった29〜32%同一であるので、非常に異なるORが同じ化学物質に応答することができることを示している。olfr62は、イソ吉草酸知覚に関係するIVA座の近くまたはIVA座に位置する密接に関連したORの1つである(例えば、Griff, I.C., and Reed, R.R. (1995) Cell 83, 407-414; Zhang, X., and Firestein, S. (2002) Nat Neurosci 5, 124-133参照;それぞれ、全体として参照により組み入れられている)。本発明の過程中に行われた実験において、olfr62は、イソ吉草酸に応答しなかったが、クマリンおよび他の関連した芳香族化合物に応答した(図11C参照)。IVA座の近くに位置する8つの他のORもまた試験されたが、それらのどれもイソ吉草酸に応答しなかった。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これらの結果は、これらのORがイソ吉草酸検出に関与していないことを示唆している。
本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、マウスおよびヒトゲノムにおける事実上すべてのORの注釈(例えば、Glusman, G., et al. (2001) Genome Res 11, 685-702; Young, J.M., et al. (2002) Hum Mol Genet 11, 535-546; Zhang, X., and Firestein, S. (2002) Nat Neurosci 5, 124-133; Zozulya, S., et al. (2001) Genome Biol 2,18参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)と共に機能的OR発現系は、総合的に哺乳動物OR-匂い物質相互作用を調べるためのプラットフォームを提供する。
実施例10. 単細胞LongSAGE分析
単細胞RT-PCRは、記載されているように(例えば、Brady, G., and Iscove, N.N. (1993) Methods Enzymol 225, 611-623; Dulac, C., and Axel, R. (1995) Cell 83, 195-206; Matsunami, H., and Buck, L.B. (1997) Cell 90, 775-784参照;全体として参照のより本明細書に組み入れられている)、改変を加えて行われた。簡単には、成体マウス嗅覚組織がジスパーゼ(Invitrogen)およびコラゲナーゼ(Invitrogen)で分離された。単細胞は、倒立顕微鏡下で極微操作装置を用いて採取され、4.75 ulの溶解混合物(1xPCR)緩衝液(Roche)、1.5 mM MgCl2、50 uM dNTP、200 ng/mgアンカープライマー(
)、0.3 U/ul Prime RNase Inhibitor(Eppendorf)、および0.4 U/ul rRNasin(Promega))へ移動された。溶解された細胞を含むPCRチューブは、65℃まで、1分間、加熱され、4℃で冷却され、0.25 ulのRT混合物(170 U/ul Superscript II(Invitrogen)、35 U/ul Prime RNase Inhibitorおよび45 U/ul rRNasin)が加えられ、37℃で10分間、その後、65℃で10分間、インキュベートされた。5 ulのTdT混合物(1x PCR緩衝液(Roche)、1.5 mM MgCl2、3 mM dATP、1.25 U/ul TdT(Roche)、0.05 U RNase H(Roche))が各チューブへ加えられ、37℃で20分間、その後、65℃で10分間、インキュベートされた。5 ulの生成物が、50 ulのPCR混合物(1xEX Taq緩衝液(Takara)、0.25 mM dNTP、20 ng/ulアンカープライマー、2.5 U EX Taq HSポリメラーゼ(Takara))へ加えられ、95℃で2分間、37℃で5分間、72℃で20分間、その後、95℃で30秒間、67℃で1分間、72℃で6分間プラス1サイクルごとに6秒間延長の28サイクル、その後、72℃で10分間、インキュベートされた。増幅されたPCR産物の内容は、ロングSAGEプロトコールを用いて分析された(例えば、Saha, S., et al. (2002) Nat Biotechnol 20, 508-512参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)。簡単には、単細胞PCR産物は、NlaIII(NEB)で切断された。ビオチン化DNAがストレプトアビジン磁気ビーズ(Dynal)に結合された後、リンカーがライゲーションされた。ライゲーションされたDNAは、MmeI(NEB)により切断された。切断されたタグは、二タグを形成するようにライゲーションされ、PCRにより増幅された。PCR産物は、NlaIIIで切断され、二タグは、コンカテマーを形成するようにライゲーションされた。それらはpZero-1ベクター(Invitrogen)へライゲーションされ、形質転換された。単一コロニーが採取され、シーケンシングされた。タグ配列は、SAGE2002ソフトウェアおよびNCBI Blast検索を用いて分析された。
実施例11. ベクター構築
cDNAは、HotstarTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)またはKOD DNAポリメラーゼ(Toyobo/Novagen)を用いて嗅覚上皮cDNAから増幅され、pCI発現ベクター(Promega)へサブクローニングされた。ORオープンリーディングフレームは、C57BL6(MOR203-1およびS46)、129(S18)、またはDBA2(olfr62、S6/S79、S50、MOR23-1、MOR31-4、MOR31-6、MOR32-5、およびMOR32-11)のゲノムDNAから増幅され、Rhoタグを含むpCIへサブクローニングされた。
実施例12. 細胞培養および免疫組織化学
293T細胞は、10%ウシ胎児血清を含む最小基本培地(M10)に維持された。Lipofectamine 2000(Invitrogen)がトランスフェクションのために用いられた。生細胞染色において、トランスフェクションから16時間後、細胞は、抗ロドプシン抗体、4D2(例えば、Laird, D.W., and Molday, R.S. (1988) Invest Ophthalmol Vis Sci 29, 419-428参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)および15 mM NaN3を含むM10において、4℃で1時間、インキュベートされた。洗浄後、細胞は、Cy3結合抗マウスIgG(Jackson Immunologicals)とインキュベートされ、洗浄され、標本にされた。FACS分析について、4D2およびPE結合抗マウスIgG(Jackson Immunologicals)が、Rhoタグ付き受容体発現をモニターするために用いられた。抗HAウサギ抗体(Sigma)およびAlexa 488結合抗ウサギIgG(Molecular Probes)が、HA-β2アドレナリン受容体を染色するために用いられた。Hana3a細胞を確立するために、1 ug/mlのピューロマイシンが選択のために用いられた。96個のコロニーが採取され、OREGを用いるルシフェラーゼアッセイ法を用いてアッセイされた。
実施例13. REEPおよびRTPの分析
REEPおよびRTPのシグナルペプチドならびに膜貫通領域の予測について、それぞれ、SignalP(例えば、Nielsen, H., et al. (1997) Protein Eng 10, 1-6参照;全体として参照により本明細書に組み入れられている)およびTMHMMが用いられた。系統樹を作成するために、ClustalWが用いられた。
実施例14. ノーザンおよびインサイチューハイブリダイゼーション
様々な組織由来の全RNAは、Trizol試薬(Invitrogen)またはAurum Total RNA(Biorad)を用いて抽出された。RNAは、ホルムアミド-アガロースゲル上で電気泳動され、HybondN膜(Amersham)上へ転写された。Dig標識プローブを、Dig easyhyb溶液(Roche)において膜へ65℃でハイブリダイズさせた。洗浄後、抗Dig AP(Roche)が添加され、膜は洗浄された。シグナルはCDP-Star(Roche)で検出された。すべて3つのプローブについて同じ膜が用いられた。インサイチューハイブリダイゼーションは、記載されているように行われた(例えば、Matsunami, H., and Buck, L.B. (1997) Cell 90, 775-784; Matsunami, H., et al. (2000) Nature 404, 601-604; Schaeren-Wiemers, N., and Gerfin-Moser, A. (1993) Histochemistry 100, 431-440参照;それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている)。簡単には、Dig標識RNAプローブを、週齢3週間のCD-1マウスの新鮮な凍結切片とハイブリダイズさせた。洗浄後、Digプローブを、抗Dig APと反応させ、シグナルをNBT-BCIPを用いて検出した。
実施例15. 免疫沈降
100 mm皿における293T細胞は、OR cDNA、REEP1 cDNAおよび/またはRTP1 cDNAでトランスフェクションされた。トランスフェクションから16時間後、細胞は、溶解緩衝液(50 mM Tris(7.4)、150 mM NaCl、1%NP-40、0.5 mM PMSF、2 mM Benzamidene、0.5 ug/ml Leupeptin、1.4 ug/mlペプスタチンA、2.4 ug/mlクロマスタチン、15 ug/mlアプロチニン、1 mMオルトバナジウム酸ナトリウム)に溶解された。溶解物は、抗Flag M2アフィニティーゲル(Sigma)または抗HAアフィニティーマトリックス(Roche)と4℃で2時間、インキュベートされ、溶解緩衝液で洗浄された。その後、結合したタンパク質は、SDS試料緩衝液との室温で2時間のインキュベーションにより溶出された。SDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングは、Mini-Protean 3 Cell(Bio-Rad)使用説明書に従って行われた。ECL(Amersham)は、膜上でタンパク質を検出するために用いられた。
実施例16. ルシフェラーゼアッセイ
ルシフェラーゼアッセイ法についてのDual-Glo系(Promega)が用いられた。CRE-Luciferase(Stratagene)は、受容体活性を測定するために用いられた。恒常的に活性のあるSV40プロモーターにより指揮されるウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ(pRL-SV40:Promega)が、内部対照として用いられた。細胞は、ポリ-D-リシンコーティング化96ウェルプレート(BIOCOAT, Beckton Dickinson)上に蒔かれた。トランスフェクションから8時間後(図8Bおよび8Cに示された実験について)または12時間後(図8Dおよび図11に示された実験について)、培地は、CD293化学的組成既知培地(Invitrogen)と交換され、プレートは37℃で1時間、インキュベートされた。培地は、CD293に溶解された50 ulの匂い物質溶液と交換され、37℃で10時間(図8Bおよび8Cに示された実験について)または4時間(図8Dおよび図11に示された実験について)、インキュベートされた。ルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定することについての製造会社のプロトコールに従った。ルミネセンスは、Wallac Victor 1420(Perkin-Elmer)を用いて測定された。標準化されたルシフェラーゼ活性は、[Luc(N)-Luc(0)]/RL(N)、Luc(N)=特定のウェルのルミネセンスカウント、Luc(0)=各ORについての匂い物質無しでのルミネセンスカウント、およびRL(N)=各ウェルのウミシイタケルシフェラーゼのルミネセンスカウント、として計算された。cAMPアッセイ法について、細胞は24ウェルプレート上へ蒔かれた。OREG cDNAまたはOREG/Golf cDNAが、それぞれ、Hana3a細胞またはHEK293-T細胞へトランスフェクションされた。トランスフェクションから14時間後、細胞はCD293において2時間、インキュベートされ、10 mM Hepesおよび500 uM IBMXを含むMEMにおいてオイゲノールまたはイソプロテレノールへ、5分間、曝された。cAMP-Screen Direct System(Applied Biosystems)が、cAMPレベルを測定するために用いられた。Prismソフトウェア(Graphpad)は、データ解析のために用いられた。
実施例17. 化学物質
すべての匂い物質は、Calbiochemからのオクタン酸を除いて、Sigmaから購入された。MOR203-1およびolfr62についての同族リガンドを見出すにおいて用いられた化学物質は、実施例19に提供されている。
実施例18. Genbankアクセッション番号
マウスおよびヒトのREEP1〜6およびRTP1〜4のGenbankアクセッション番号:AY562225〜AY562244。
実施例19. 追加材料
MOR203-1およびolfr62についての最初のリガンドスクリーニングに用いられる化学物質は以下である:1 (+)-カルボン、2 L-カルボン、3 (-)-フェンコン、4 シトラール、5 (1R)-(-)-フェンコン、6 (+)-フェンコン、7 ローズマリー油、8 (-)-ローズオキサイド、9 (+)-ローズオキサイド、10 (-)-樟脳、11 (S)-(-)-リモネン、12 (R)-(+)-1-フェニルエタノール、13 (S)-(+)-2-フェニル酪酸、14 (R)-(-)-2-フェニル酪酸、15 2-ヘキサノン、16 1-ペンタノール、17 1-ヘプタノール、18 (±)-2-ブタノール、19 1-プロパノール、20 1-ヘキサノール、21 (-)-メントール、22 (R)-(-)-2-ヘプタノール、23 (-)-α-テルピンネオール、24 (+)-メントール、25 2-メチル-2-ヘプタノール、26 (S)-(+)-2-オクタノール、27 (S)-(+)-2-ブタノール、28 (S)-(+)-2-ヘプタノール、29 (R)-(-)-2-オクタノールまたはP(+)-2-オクタノール、30 1-デカノール、31 (-)-β-シトロネロール、32 (S)-(-)-1-フェニルエタノール、33 プロピオンアルデヒド、34 ウンデカナール、35 オクタナール(カプリル酸アルデヒド)、36 トランス-桂皮アルデヒド、37 ノナナール(ペラルゴンアルデヒド)、38 ヘプタアルデヒド、39 デカナール、40 ヘキサン酸、41 ヘキサン酸、42 ヘプタン酸(オエナント酸)、43 ペンタン酸、44 プロピオン酸、45 酪酸、46 ノナン酸、47 プロピオン酸メチル、48 酪酸エチル、49 酪酸ブチル、50 t-ブチルプロピオネート、51 酪酸メチル、52 酪酸プロピル、53 酢酸ペンチル、54 ジメチルピラジン、55 イソブチルアミン、56 ゲラニトール、57 2-ペンタノン、58 2-ブタノン、59 (1S)-(-)-α-ピネン、60 1,4-シネオール、61 フェネトール、62 ブチルメチルエーテル、63 (R)-(+)-プレゴン、64 ベンゼン、65 ベンジルアルコール、66 グアイアコール、67 イソペンチルアミン、68 g-カプロラクトン、69 g-カプロラクトン、70 オクテン、71 ヘプタン酸アリル、72 a-アミル桂皮アルデヒド、73 ヘキサン酸アミル、74 酪酸アミル、75 アネトール、76 アニスアルデヒド、77 ベンゾフェノン、78 酢酸ベンジル、79 サリチル酸ベンジル、80 ヘプタン酸ブチル、81 樟脳((+)-樟脳)、82 酢酸セドリル、83 桂皮アルコール、84 桂皮アルデヒド、85 (R)-(+)-シトロネラル、86 (S)-(-)-シトロネラル、87 シトロネロール、88 クマリン、89 シクロヘキサノン、90 p-シメン、91 5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン(ジメドン)、92 エチルアミルケトン(3-オクタノン)、93 オイカリプトール、94 イソ酪酸ヘプチル、95 酢酸ヘキシル、96 a-ヘキシル桂皮アルデヒド、97 酢酸イソボルニル、98 リナロール、99 リラル(a-アミル桂皮アルデヒドジメチルアセタール)、100 ヒドロキシシトロネラル、101 イソ酪酸p-トリル、102 イソ酪酸o-トリル、103 フェニル酢酸p-トリル、104 2-メトキシ-3-メチル-ピラジン、105 2-メトキシプラジン、106 サリチル酸メチル、107 ミルセン、108 w-ペンタデカラクトン、109 酢酸プレニル、110 2-フェニルエタノール、111 酢酸2-フェネチル、112 ピペロナール、113 ピラジン、114 サッサフラス油、115 チモール、116 トリエチルアミン、117 2-ヘプタノン、118 メチルオイゲノール、119 オイゲノール、120 オイゲノールメチルエーテル、121 ブチルアルデヒド、122 ヘキサナール、123 1-ペンタノール、124 バレルアルデヒド、125 アゼライン酸二塩化物、126 アゼライン酸、127 イソ吉草酸、128 デカン酸、129 バニリン酸、130 1-オクタノール、131 4-エチルフェノール、132 ヘプタアルデヒド、133 1-ノナノール、134 ノナナール、135 エチルバニリン、136 バニリン、137 アセトフェノン、138 2-エチルフェノール、139 オクタナール。
クマリンおよびピペロナールに関連した化学物質(olfr62について用いられる)は、以下である:140 ベンズアルデヒド、141 ピペロニルアルコール、142 4-ヒドロキシクマリン、143 4-クロマノン、144 2-クマラノン。
実施例20. ヒト匂い物質受容体の活性化パターン
Hana3A細胞(マウスREEP1、RTP1、RTP2およびGαolfを発現させる293T細胞)が用いられた。CRE-Luciferase(Stratagene)は、匂い物質受容体活性を測定するために用いられた。以下のヒト匂い物質受容体は、様々な匂いのある作用物質に応答しての発現パターンについて試験された:36、35、11、57、58、9、3、42、81、82、66、13、87、33、44、43、77、75、64、59、12、62、60、120、90、95、160および106。以下の匂いのある作用物質が、ヒト匂い物質受容体発現パターンを試験するために用いられた:ピリジン、2,2'-(ジチオジメチレン)ジフラン、1-デカノール、1-ヘキサノール、(-)-フェンコン、(+)-フェンコン、ゲラニオール、2-ペンタノン、サリチル酸ベンジル、(+)-メントール、(-)-メントール、ベンゼン、ウンデカナール、酪酸メチル、イソ酪酸ヘプチル、イソ酪酸p-トリル、酪酸アミル、酪酸エチル、酢酸ヘキシル、酢酸ペンチル、酢酸ピペロニル、(-)-b-シトロネロール、シトロネロール、オイゲノールメチルエーテル、メチルオイゲノール、a-アミル桂皮アルデヒド、a-アミル桂皮アルデヒドジメチルアセタール、桂皮アルデヒド、a-ヘキシル桂皮アルデヒド、ヒドロキシシトロネラル、シトラール、(R)-(+)-シトネラル、(S)-(-)-シトネラル、フェニル酢酸p-トリル、フェニル酢酸アリル、プロピオン酸、アゼライン酸二塩化物、イソ吉草酸、(R)-(-)-2-フェニル酪酸、(S)-(+)-2-フェニル酪酸、ヘプタン酸、オクタン酸、吉草酸、ヘキサン酸、および酪酸ブチル。恒常的に活性のあるSV40プロモーターにより指揮されるウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ(pRL-SV40:Promega)が、内部対照として用いられた。Dual-Glo系(Promega)がルシフェラーゼアッセイのために用いられた。細胞は、ポリ-D-リシンコーティング化96ウェルプレート(BIOCOAT, Beckton Dickinson)上に蒔かれた。トランスフェクションから12〜16時間後、培地は、CD293化学的組成既知培地(Invitrogen)と交換され、プレートは37℃で1時間、インキュベートされた。培地は、CD293に溶解された50 ulの匂い物質溶液と交換され、37℃で4時間、インキュベートされた。ルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定することについて、製造会社のプロトコールに従った。ルミネセンスは、Wallac Victor 1420(Perkin-Elmer)を用いて測定された。標準化されたルシフェラーゼ活性は、[Luc(N)-Luc(0)]/RL(N)、Luc(N)=特定のウェルのルミネセンスカウント、Luc(0)=各ORについての匂い物質無しでのルミネセンスカウント、およびRL(N)=各ウェルのウミシイタケルシフェラーゼのルミネセンスカウント、として計算された。図34は、匂いのある作用物質曝露に応答したヒト匂い物質受容体の活性化パターンを示す。
実施例21. Hana3A細胞および293T細胞におけるV1RE11の細胞表面発現
推定上のフェロモン受容体(V1RE11)をコードするcDNAは、Hana3A細胞(REEP1、RTP1、RTP2およびGαolfを発現させるHEK293T細胞)または293T細胞へトランスフェクションされた。V1RE11は、マウスにおける推定上のフェロモン受容体であり、匂い物質受容体とはアミノ酸配列において完全に異なる。Hana3A細胞は、V1RE11の細胞表面発現を支援した。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、機構の理解は、本発明を実施するために必要ではない。とはいえ、これらの結果は、REEP1、RTP1およびRTP2が匂い物質受容体以外の受容体の機能発現を支援することができることを示している。
実施例22. OLFR62細胞表面発現および活性を増強するRTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-DおよびRTP1-Eの能力
この実施例は、RTP1変種、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-DおよびRTP1-Eの作製ならびにOLFR62細胞表面発現および活性を増強するそれらの能力を記載する。RTP1の変種は、RTP1の部分を除去することにより作製された。図35は、RPT1と比較した、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-DおよびRTP1-Eのアミノ酸セグメントを概略的に示す。pCIは対照ベクターであった。図36は、RTP1-Aについてのマウスアミノ酸配列(配列番号:41)を示し、図37は、RTP1-Bについてのマウスアミノ酸配列(配列番号:42)を示し、図38は、RTP1-Cについてのマウスアミノ酸配列(配列番号:43)を示し、図39は、RTP1-Dについてのマウスアミノ酸配列(配列番号:44)を示し、図40は、RTP1-Eについてのマウスアミノ酸配列(配列番号:45)を示す。
図41は、Hana3A細胞および293T細胞におけるOLFR62の細胞表面発現を示す。RTP1、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、RTP1-EをコードするcDNAおよび対照pCIが、Hana3A細胞または293T細胞へトランスフェクションされた。細胞表面染色の増加が、RTP1-Dを発現させるHana3A細胞および293T細胞に見られた。
図42は、OLFR62活性をモニターするために用いられたルシフェラーゼアッセイを概略的に示す。cAMP応答配列(CRE)およびルシフェラーゼが、OLFR62の活性をモニターするために用いられた。OLFR62の活性化はcAMPを増加させ、それは、CREを通してルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を増強する。
図43は、RTP1、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-D、RTP1-E、および対照pCIを発現させるHana3A細胞ならびに293T細胞におけるルシフェラーゼ発現により示される場合のOLFR62活性を示す。OLFR62活性の増強の増加は、RTP1-Dを発現させる293T細胞およびHana3A細胞に見られた。
実施例23. OLFR62細胞表面発現および活性を増強するRTP1-A1、RTP1-D1、RTP1-D2およびRTP1-D3の能力
この実施例は、RTP1変種、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP1-D2およびRTP1-D3の作製ならびにOLFR62細胞表面発現および活性を増強するそれらの能力を記載する。RTP1の変種は、RTP1-AおよびRTP1-Dの部分を除去することにより作製された。特に、プライマー対は、所望の欠失セグメントに対応する特定の位置に置かれ、KODポリメラーゼでのPCRにより増幅された。図44は、それぞれ、RTP1-AおよびRTP1-Dと比較した、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP1-D2およびRTP1-D3のアミノ酸セグメントを示す。図45は、RTP1-A1についてのマウスアミノ酸配列(配列番号:46)およびRTP1-A1についてのヒトアミノ酸配列(配列番号:47)を示す。図46は、RTP1-D1についてのマウスアミノ酸配列(配列番号:48)を示す。図47は、RTP-D2についてのマウスアミノ酸配列(配列番号:49)を示す。図48は、RTP-D3についてのマウスアミノ酸配列(配列番号:50)を示す。
図49は、293T細胞におけるOLFR62の細胞表面発現を示す。RTP1、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP1-D2およびRTP1-D3をコードするcDNAならびに対照pCIが、293T細胞へトランスフェクションされた。細胞表面染色の増加が、RTP1-A1、RTP1-D1、およびRTP1-D3を発現させる293T細胞に見られた。
図50は、RTP1、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP1-D2およびRTP1-D3、ならびに対照pCIを発現させる293T細胞におけるルシフェラーゼ発現により示される場合のOLFR62、OREG、S6および23-1活性を示す。OLFR62、OREG、S6および23-1活性の増強の増加は、RTP1-A1を発現させる293T細胞に見られた。
図51は、RTP1、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP1-D2およびRTP1-D3、ならびに対照pCIを発現させるHana3A細胞におけるルシフェラーゼ発現により示される場合のOLFR62、OREG、S6および23-1活性を示す。
図52は、RTP1、RTP1-A1、または対照pCIのいずれかでコトランスフェクションされた293T細胞におけるOLFR62、OREG、MOR203-1、S6および23-1の細胞表面発現を示す。RTP1、RTP1-A1をコードするcDNA、および対照pCIが、細胞へトランスフェクションされた。細胞表面染色の増加が、RTP1-A1を発現させる細胞に見られた。
実施例24. RTP1およびRTP4キメラ
この実施例は、キメラPCRで作製されるRTP1およびRTP4キメラを記載する。特に、複合体キメラプライマーは、RTP1およびRTP4配列の接続点に設計された。各キメラについて、2対のプライマーが、まず、増幅された(例えば、フォワードプライマーおよび複合体プライマー、複合体プライマーおよびリバースプライマー)。次に、その2つのPCR産物は、所望のキメラを得るため、最初のフォワードおよびリバースプライマーと共にその後のメガプライマーPCRにおける鋳型として用いられた。図53は、RTP1-A1-A(キメラ1)、RTP1-A1-D2(キメラ2)、RTP1-A1-D1(キメラ3)、RTP4-A1-A(キメラ4)、RTP14-A1-D2(キメラ5)、およびRTP4-A1-D1(キメラ6)のアミノ酸セグメントを概略的に示す。
図54は、RTP1、RTP4、キメラ1、キメラ2、キメラ3、キメラ4、キメラ5、キメラ6、および対照pCIを発現させる細胞におけるORの細胞表面発現を示す。RTP1、RTP4、RTP1-A1、キメラ1、キメラ2、キメラ3、キメラ4、キメラ5、キメラ6をコードするcDNA、および対照pCIが、293T細胞へトランスフェクションされた。
図55は、RTP1、RTP4、RTP1-A1、RTP1-D1、RTP1-D2、キメラ1、キメラ2、キメラ3、キメラ4、キメラ5、キメラ6、および対照pCIを発現させる293T細胞におけるルシフェラーゼ発現により示される場合のOLFR62、OREG、S6および23-1活性を示す。
図56は、抗RTP1を用いる、RTP1、RTP1-A、RTP1-B、RTP1-C、RTP1-A1、RTP1-D、キメラ4、キメラ5、RTP1-D3、RTP1-D1、キメラ6、およびRTP4の検出を示す。
上の明細書に挙げられたすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み入れられている。本発明は、特定の好ましい態様に関して記載されているが、主張される場合の本発明は、そのような特定の態様に不当に限定されるべきではないことは、理解されるべきである。実際、当業者に明らかである、本発明を行うための望ましい様式の様々な改変は、特許請求の範囲の範囲内であることを意図される。