JP4848276B2 - 神経学的状態の検出および治療のための組成物および方法 - Google Patents
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Description
【0001】
発明の分野
本発明は、NIPA-1タンパク質およびNIPA-1タンパク質をコードする核酸に関する。本発明は更に、病態に関連したNIPA-1多型および変異を検出するアッセイに加え、NIPA-1タンパク質の治療的物質、リガンド、およびモジュレーターのスクリーニング法を提供する。
【0002】
本出願は、2003年8月19日に出願された、米国特許仮出願第60/496,317号の優先権を主張するものであり、その全体が本明細書に参照として組入れられる。
【0003】
本発明は、ペンシルベニア大学からのDr. Robert Nicholls博士の研究室への未だ確定していないグラント、および米国立衛生研究所により付与されたグラントNS33645およびNS38713で、米国政府の支援により成されたものである。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
遺伝性痙性対麻痺(HSP)(家族性痙性不全対麻痺およびシュトリュンペル-ロラン症候群としても知られる)は、単独の疾病単位ではなく、むしろ進行性で、一般に重症で、下肢の痙縮という主な特徴を共有する臨床的および遺伝的に多様な障害群である。HSPは、「非合併型」(下肢の衰弱、膀胱障害、およびより少ない程度に、脚の位置覚の欠陥に限定された症状);および、追加の神経学的欠損が存在する場合の「合併型」に分類される。
【0005】
正常な妊娠、分娩、および幼児期の初期発達の後、非合併型の常染色体優性HSPを伴う被検体は、足の背屈困難および股関節屈曲の衰弱のために、脚の硬直および歩行障害(例えばよろめきおよびつまずき)を発症する。患者の大部分は20代から40代にかけて発症を経験するが、発症年齢には幅がある(幼児から85歳まで)(Cooley et al., Clin Gen, 38:57-68(1990);Durr et al, Neurology, 44:1274-7(1994);Hazan et al, Nat Genet, 5:163-7(1993))。歩行障害は知らぬ間に進行し、再燃、寛解、または段階的悪化を伴うことはない。膝下の感覚異常は一般的である。失禁に進行する尿意逼迫は、ありがちな、しかし不定の後期の症状発現である。
【0006】
非合併型HSP被検体の神経学的試験は、正常な顔面運動および眼外運動、ならびに正常な眼底を明らかにしている。下顎反射はより高齢な被検体において活発であるが、言語障害、嚥下困難またはあからさまな皮質延髄路機能障害の証拠はない。上肢の筋緊張および強度は正常である。下肢において、膝窩腱、四頭筋およびくるぶしの筋緊張は増大する。腸腰筋、前脛骨筋の衰弱が最も注目され、膝窩腱筋でより少ない。筋肉疲労は、非合併型HSPにおいて生じることがある(Harding AE, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 44:871-83(1981);Silver JR, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 29:135-44(1996);Cross et al, Arch Neurol, 16:473-85(1967);Refsum and Skillicorn, Neurology, 4:40-7(1954))。末梢神経は、非合併型HSPでは正常であるが、膝下の鋭い刺激の認知減退が時には認められる。振動覚は、下肢遠位部において軽度に消失することが多い。振動覚が存在する場合、これはHSPを他の障害から区別する助けとなる有用な診断徴候である。高齢の罹患患者の指鼻試験において、場合によってはわずかな末端測定異常が観察される。深部腱反射は、上肢では活発であるが、下肢では病的に増大する。股関節屈曲およびくるぶしの背屈困難のために、分回し歩行が示される。交差した内転筋反射、足クローヌス、および伸展性足底反応も不均一に存在する。Hoffman徴候およびTromner徴候も認められることがある。高い弓状足(凹足)が一般に存在し、通常高齢の罹患被検体に顕著である。
【0007】
発症年齢、症状の進行速度、および障害の程度は、HSP家系内および家系間で異なる(Durr et al, Neurology, 44:1274-7(1994);Schady and Scheard, Brain, 113:709-20(1990);Polo et al, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 56:175-81(1993);Holmes and Shaywitz, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 40:1003-8(1977))。発症年齢および障害の程度の変動とは対照的に、非合併型HSPにおける神経学的欠損の分布は変動がなく、脚の痙性衰弱;足の振動覚の変動性の欠陥;および、変動性の膀胱障害からなる。非合併型HSP家系の被検体における視覚障害、顕著な筋肉疲労、線維束収縮、痴呆、発作、または末梢神経疾患などの追加の欠損は、非合併型HSPの変形の提示の性にするべきではない。むしろこのような被検体は、併存するまたは代わりの神経障害を通じて評価されなければならない。常染色体優性非合併型HSP家系の一部は、小児期(6歳以前)に進行性痙性対麻痺を発症し、青年期を過ぎて比較的穏やかな症状進行を示す。これらの患者は、膀胱障害を経験しないことが多く、概して歩行可能(補助付き)である。
【0008】
電気生理学的試験は、HSPに関連した末梢神経、筋肉、脊柱、および皮質脊髄路を評価するために有用である(Harding AE, Semin Neurol, 13:333-6(1993))。生検は頻繁に行えないので、これらの試験は関与の程度を特徴付けるために特に有用である。これらの試験結果は変動が多いが、多くの総括が成されている。ほとんどの試験は、神経伝導試験は正常であることを認めた(フリートライヒ運動失調およびいくつかの他の脊髄小脳性運動失調とは対照的)(Rosenberg RN, Arch Neurol, 50:1123-8(1993))。しかし1つの試験は、末梢神経、脊髄路、または両方が関与した不顕性感覚不全がHSPにおいて一般的であることを示した(Schady and Scheard, Brain, 113:709-20(1990))。下肢体性感覚誘発電位(SSEP)は、脊柱線維における伝導の遅延を示している(Pelosi et al, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 54:1099-102(1991))。皮質脊髄路の神経伝達を測定するために使用される皮質誘発電位は、皮質脊髄路伝導速度および誘起電位の振幅の大幅な減少を示している(Claus et al, Ann Neurol, 28:43-9(1990);Polo et al, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 56:175-81(1993);Schady et al, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 54:775-9(1991);Pelosi et al, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 54:1099-102(1991))。腰椎分節により神経感応された筋肉において誘起された皮質誘発電位は存在しないが、腕の皮質誘発電位は、正常であるか、または伝導速度のわずかな低下のみを示す。これらの知見は、腰髄に達する皮質脊髄路軸索の数が減少すること、および残存する軸索は伝導速度が低下していることを示している。上肢の中枢運動神経伝導速度は、反応がかなり遅延された1つのHSP家系の5名(罹患)全員を除き、正常であった。中枢運動神経伝導速度の測定は、HSPの臨床的亜群の同定に有用な方法であり得る。
【0009】
現在、HSPの進行性障害を予防、遅延、または逆行する具体的な治療は存在しない。HSP症状の軽減および予防を目的とした治療が必要である。加えてHSPの分子病理は余りわかっていない。従って、HSPおよび類似障害を取り巻く分子病因の理解も必要である。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、NIPA-1タンパク質およびNIPA-1タンパク質をコードする核酸に関する。本発明は更に、病態に関連したNIPA-1多型および変異の検出に加え、治療薬剤、NIPA-1タンパク質のリガンドおよびモジュレーターのスクリーニング法を提供する。
【0011】
従っていくつかの態様において、本発明は、SEQ ID NO:3および4からなる群より選択されるタンパク質をコードする単離および精製された核酸配列を含有する組成物を提供する。いくつかの態様においてこの配列は、異種プロモーターと機能的に連結されている。別の態様においてこの配列は、ベクター内に含まれる。更なる態様において、ベクターは宿主細胞内にある。
【0012】
更なる他の態様において、核酸は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2と少なくとも80%同一であるその変種からなる群より選択される。いくつかの態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:1および2からなる群より選択される。
【0013】
本発明は、SEQ ID NO:3および4、ならびにSEQ ID NO:3および4と少なくとも80%同一であるそれらの変種からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含有する組成物も提供する。いくつかの態様において、このポリペプチドは、SEQ ID NO:3および4と少なくとも90%同一である。別の態様において、このポリペプチドは、SEQ ID NO:3および4と少なくとも95%同一である。更に別の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:3および4からなる群より選択される。
【0014】
本発明は、NIPA-1タンパク質を発現する標的細胞、およびNIPA-1を阻害する物質の提供、ならびに標的細胞をこの組成物と接触させ、これによりNIPA-1活性を低下させることを含む、NIPA-1活性を低下させる方法も提供する。いくつかの態様において、接触はインビトロで行われる。いくつかの態様においてこの物質は、NIPA-1 mRNAを標的化する低分子干渉RNA二重鎖(siRNA)、または該siRNAをコードするベクターを含有する組成物を含む。別の態様において、標的細胞は神経細胞である。更なる態様において、接触は、ベクターが標的細胞内でsiRNAを発現する条件下で行われる。更に別の態様において、この組成物は更に核酸トランスフェクション物質を含有する。
【0015】
本発明は、遺伝性痙性対麻痺の症状を伴う被検体、および遺伝性痙性対麻痺の症状を軽減する物質を提供すること、ならびに遺伝性痙性対麻痺の1つまたは複数の症状が軽減されるような条件下でこの物質を被検体へ投与することを含む方法を提供する。好ましい態様において、この物質は、NIPA-1タンパク質の発現を阻害するように構成された、低分子干渉RNA二重鎖(siRNA)、または該siRNAをコードするベクターを含有する組成物を含む。更なる態様において、遺伝性痙性対麻痺は、常染色体優性遺伝性痙性対麻痺である。別の態様において、この物質は、静脈内、局所、および経口投与される。更に別の態様において、この組成物は更に、核酸トランスフェクション物質を含有する。より更なる態様において、この組成物は更に、局所投与に適した試薬を含有する。
【0016】
本発明は、遺伝性痙性対麻痺のリスクのある被検体、および遺伝性痙性対麻痺の症状を軽減する物質を提供すること、ならびに遺伝性痙性対麻痺の1つまたは複数の症状が予防されるような条件下でこの物質を被検体へ投与することを含む方法も提供する。好ましい態様において、この物質は、NIPA-1タンパク質の発現を阻害するように構成された、低分子干渉RNA二重鎖(siRNA)、または該siRNAをコードするベクターを含有する組成物を含む。いくつかの態様において、遺伝性痙性対麻痺は、常染色体優性遺伝性痙性対麻痺である。別の態様において、この物質は、静脈内、局所、および経口投与される。より更なる態様において、この組成物は更に、核酸トランスフェクション物質を含有する。より更なる態様において、この組成物は更に、局所投与に適した試薬を含有する。
【0017】
本発明は更に、NIPA-1タンパク質の発現を阻害するように構成された、低分子干渉RNA二重鎖(siRNA)、または該siRNAをコードするベクターを含有する組成物、ならびに核酸トランスフェクション物質を含有する組成物を提供する。
【0018】
本発明は、NIPA-1タンパク質の発現を阻害する組成物、ならびにNIPA-1 mRNAが切断されるような条件下での、NIPA-1 mRNAの発現による、NIPA-1タンパク質を発現する標的細胞の治療のための該組成物の使用に関する指示を記した印刷物を備えるキットも提供する。更なる態様においてこの組成物は、NIPA-1タンパク質の発現を阻害するように構成された、低分子干渉RNA二重鎖(siRNA)、または該siRNAをコードするベクターを含有する。
【0019】
本発明は、SEQ ID NO:1および2からなる群より選択される核酸配列を提供すること、この核酸配列の変異を誘発すること、およびこの変種をNIPA-1活性についてスクリーニングすることを含む、NIPA-1の変種を作製する方法も提供する。
【0020】
本発明は更に、NIPA-1の少なくとも一部を含むポリペプチド配列、1つまたは複数の被験化合物を提供すること、ならびにNIPA-1の少なくとも一部を含むポリペプチド配列、および1つまたは複数の被験化合物を任意の順番で、ポリペプチド配列および被験化合物が相互作用するような条件下で組み合わせること、ならびにNIPA-1活性を測定することを含む、化合物をNIPA-1活性を変更する能力についてスクリーニングする方法を提供する。
【0021】
本発明は更に、NIPA-1ポリペプチドを含む標的細胞、および候補薬剤を提供すること、ならびに標的細胞を候補薬剤に曝すこと、該標的細胞の該NIPA-1ポリペプチドの活性を測定すること、ならびにNIPA-1ポリペプチドの活性を阻害する候補医薬品を選択することを含む、遺伝性痙性対麻痺の治療に有用な薬剤を同定する方法を提供する。別の態様においてこの方法は、遺伝性痙性対麻痺、ならびに筋萎縮側索硬化症および原発性側索硬化症を含むが、これらに限定されない他の運動神経疾患、ならびに脊髄損傷、末梢神経障害、および脳性麻痺を含むがこれらに限定されない他の神経障害を同定するために使用される。
【0022】
本発明は、試料中のNIPA-1遺伝子に関連する多型の存在または非存在を検出することを含む、遺伝性痙性対麻痺を診断する方法も提供する。いくつかの態様において、多型は該NIPA-1遺伝子のコード領域に存在する。更なる態様において、多型はSEQ ID NO:5の159位のCからGへの変化である。より更なる態様において、多型はSEQ ID NO:5の159位でのCからGへの変化を伴う連鎖不均衡である。別の態様において、多型タンパク質は追加のNIPA-1核酸変化を含む。
【0023】
別の態様において、多型はNIPA-1 mRNAの組成または安定性を妨げる。別の好ましい態様において、多型はアミノ酸置換、未熟なタンパク質終結、および変更されたNIPA-1タンパク質配列につながる異常なNIPA-1 mRNAスプライシングなどを含む、NIPA-1タンパク質配列を変更する。
【0024】
別の態様において、検出は試料由来の核酸中の多型の検出を含む。更なる態様において、試料はDNAである。別の態様において、試料はRNAである。
【0025】
更なる態様において、検出は多型タンパク質の検出を含む。より更なる態様において、多型タンパク質の検出は抗体により生じる。更に別の態様において、多型タンパク質はSEQ ID NO:1の45位(またはSEQ ID NO:5の52位)のトレオニンのアルギニンへのアミノ酸変化を含む。
【0026】
本発明は、試料中のNIPA-1遺伝子配列変異の存在または非存在を検出することを含む、遺伝性痙性対麻痺を診断する方法も提供する。いくつかの態様において、NIPA-1遺伝子配列変異は、該NIPA-1遺伝子のコード領域内にある。更なる態様において、NIPA-1遺伝子配列変異は、159位のCからGへの変化である。より更なる態様において、NIPA-1遺伝子配列変異は、159位のCからGへの変化との連鎖不均衡である。
【0027】
他の態様において、NIPA-1遺伝子配列変異は、NIPA-1 mRNAの組成または安定性を妨げる。他の好ましい態様において、NIPA-1遺伝子配列変異は、アミノ酸置換、未熟なタンパク質終結、および変更されたNIPA-1タンパク質配列につながる異常なNIPA-1 mRNAスプライシングを含むように、NIPA-1タンパク質配列を変更する。
【0028】
別の態様において、検出は試料由来の核酸中のNIPA-1遺伝子配列変異の検出を含む。更なる態様において、試料はDNAである。別の態様において、試料はRNAである。
【0029】
更なる態様において、検出は多型タンパク質の検出を含む。より更なる態様において、多型タンパク質の検出は抗体により生じる。更に別の態様において、多型タンパク質は、SEQ ID NO:1の45位(またはSEQ ID NO:5の52位)のトレオニンのアルギニンへのアミノ酸変化を含む。別の態様において、多型タンパク質は追加のNIPA-1アミノ酸変化を含む。
【0030】
定義
本発明の理解を促進するために、多くの用語を以下に定義する。
【0031】
本明細書において使用される「NIPA-1」という用語は、タンパク質または核酸について言及する場合、本発明のNIPA-1タンパク質またはNIPA-1タンパク質をコードする核酸を意味する。NIPA-1という用語は、野生型NIPA-1と同一であるものおよび野生型NIPA-1に由来するもの(例えば本発明のNIPA-1ポリペプチドの変種)またはNIPA-1コード領域の一部により構築されたキメラ遺伝子の両タンパク質を包含する。いくつかの態様において、「NIPA-1」は、野生型NIPA-1の核酸配列(SEQ ID NO:1)またはアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)である。別の態様において、「NIPA-1」は、変種または変異体の核酸(SEQ ID NO:2)またはアミノ酸(SEQ ID NO:4)である。
【0032】
本明細書において使用される「被検体」および「患者」という用語は、哺乳動物などの任意の動物を意味し、例えばイヌ、ネコ、トリ、家畜、および好ましくはヒトである。「被検体」および「患者」の具体例は、遺伝性痙性対麻痺(HSP)を伴う個体、およびHSPに関連した特徴または症状を伴う個体を含むがこれらに限定されない。
【0033】
本明細書において使用される「HSPの症状」および「HSPの特徴」という表現は、下肢衰弱、膀胱障害、脚の位置覚の欠陥、および神経欠損を含むがこれらに限定されない。
【0034】
「症状が軽減される条件下」という表現は、疾患からの回復率、または少なくとも1つのHSP症状の軽減への検出可能な影響を含むがこれらに限定されない、HSPの検出可能な症状の定性的または定量的低下の度合いを意味する。
【0035】
「siRNA」という用語は、低分子干渉RNAを意味する。siRNAを使用する方法は、米国特許出願第20030148519/A1号(本明細書に参照として組入れられる)に開示されている。いくつかの態様において、siRNAは、約18〜25ヌクレオチド長の二重鎖または2本鎖の領域を含み;時にはsiRNAは、各鎖の3'末端に約2〜4個の不対ヌクレオチドを含む。siRNAの二重鎖または2本鎖の領域の少なくとも1本の鎖は、標的RNA分子と実質的に相同であるか、または実質的に相補的である。標的RNA分子に相補的な鎖は「アンチセンス鎖」であり、標的RNA分子と相同な鎖は「センス鎖」であり、同じくsiRNAアンチセンス鎖と相補的である。siRNAは、追加の配列を含むこともでき、このような配列の非限定的な例は、リンキング配列、またはループに加え、ステムおよび他の折畳み構造を含む。siRNAは、無脊椎動物および脊椎動物においてRNA干渉を引き起こし、植物における転写後遺伝子サイレンシング時の配列特異的RNA分解を引き起こす重要な中間体として機能するように見える。
【0036】
「RNA干渉」または「RNAi」という用語は、siRNAによる遺伝子発現のサイレンシングまたは減少を意味する。これは、その二重鎖領域がサイレントにされた遺伝子配列と相同であるsiRNAにより開始される、動物および植物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。この遺伝子は、生物に対し内在性または外来性であってよく、染色体に組込まれて存在するかまたはゲノムへ組込まれないトランスフェクションベクター内に存在してよい。この遺伝子の発現は、完全にまたは部分的のいずれかで阻害される。RNAiは、標的RNAの機能を阻害するとみなすこともでき、この標的RNAの機能は、完全または部分的であることができる。
【0037】
本明細書において使用される「生物学的試料中の変種NIPA-1核酸またはポリペプチドの存在または非存在の検出にキットを使用するための指示」という用語は、変種および野生型NIPA-1核酸またはポリペプチドを検出するためのキットに含まれた試薬を使用するための指示を含む。いくつかの態様において、この指示は更に、インビトロ診断製品のラベリングにおいて米国食品医薬品局(FDA)により求められた、意図された用途に関する陳述を含む。FDAは、インビトロ診断薬を医療用装置として分類し、かつ510(k)手続きにより承認されることを要求している。510(k)申請(市販前申請)に必要な情報は以下を含む:1)装置の商用名または商標名、一般名または通称、および分類名を含むインビトロ診断用製品の名称;2)製品の意図された用途;3)入手可能であるならば、510(k)申請を提出する所有者または操業者の確定された登録番号;わかっているならば、連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)513条の下での、当該インビトロ診断用製品の属するクラス、その適切なパネル、または所有者もしくは操業者がそのような条項下で当該装置が分類されないと決定付けた場合には、その決定に関する陳述およびインビトロ診断用製品がそのように分類されないという決定の根拠;4)当該インビトロ診断用製品、その意図された用途、および用法の指示を説明するのに十分な、提唱されたラベル、ラベリングおよび広告。使用可能であるならば、写真および技術的図面が供給されるべきである;5)当該装置が、米国において流通している同等の型の、他のインビトロ診断用製品と類似しているおよび/または異なることを示す陳述と、その陳述を裏付けるデータの添付;6)実質的に同等であるという決定の基になった、安全性および有効性のデータの510(k)要約;または、実質的に同等であるというFDAの見解を裏付ける、510(k)安全性および有効性情報が、書面による請求の30日以内に誰もが入手可能であることの陳述;7)申請者が、自身の最善の知識において、市販前通知において申請された全てのデータおよび情報が信頼できかつ正確であるとみなすこと、および重要事実の省略がないことに関する陳述;8)実質的同等性の決定を下すうえで、FDAが要求するインビトロ診断用製品に関する追加情報。追加情報は、米国FDAのインターネットウェブページ上で入手可能である。
【0038】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドの生成に必要なコード配列を含む核酸(例えばDNA)配列、RNA(例えばmRNA、tRNAおよびrRNAを含むが、これらに限定されるものではない)または前駆体(例えばNIPA-1)を意味する。このポリペプチド、RNA、または前駆体は、完全長コード配列により、または完全長もしくは断片の望ましい活性もしくは機能特性(例えば酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が維持される限りは、コード配列の任意の部分によりコードされる。この用語は、構造遺伝子のコード領域、ならびにこの遺伝子が完全長mRNAの長さに相当するように、5'および3'両末端の任意の末端から約1kbの距離でコード領域に隣接して位置した配列も包含する。コード領域の5'側に位置した配列、およびmRNA上に存在する配列は、5'非翻訳配列と称される。コード領域の3'側または下流に位置する配列およびmRNA上に存在する配列は、3'非翻訳配列と称される。「遺伝子」という用語は、cDNAおよび遺伝子のゲノム形の両方を包含する。遺伝子のゲノム形またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と称される非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)へ転写される遺伝子のセグメントであり、イントロンは、エンハンサーなどの調節エレメントを含む。イントロンは、核または一次転写産物から「スプライシング」により除去される。従ってイントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物には存在しない。mRNAは、翻訳時に、発生時のポリペプチドにおける配列およびアミノ酸の順番を特定するように機能する。
【0039】
特に「NIPA-1遺伝子」という用語は、完全長NIPA-1ヌクレオチド配列(例えばSEQ ID NO:1および2に含まれる)を意味する。しかしこの用語は、NIPA-1配列の断片、NIPA-1配列の変異体に加え、完全長NIPA-1ヌクレオチド配列内の他のドメインを包含することも意図される。更に「NIPA-1ヌクレオチド配列」または「NIPA-1ポリヌクレオチド配列」という用語は、DNA配列、cDNA配列、RNA(例えば、mRNA)配列、および関連した調節配列を包含する。
【0040】
「アミノ酸配列」は、天然由来タンパク質分子のアミノ酸配列を意味するように本明細書においては列挙され、「アミノ酸配列」などの用語、例えば「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸配列を列挙されたタンパク質分子に関連した完全な未変性のアミノ酸配列に限定することを意味しない。
【0041】
遺伝子のゲノム形は、イントロンを含むことに加え、RNA転写産物上に存在する配列の5'および3'両末端に位置した配列も含んでよい。これらの配列は、「フランキング」配列または領域と称される(これらのフランキング配列は、mRNA転写産物に存在する非翻訳配列の5'または3'側に位置する)。5'フランキング領域は、遺伝子の転写を制御するかまたはこれに影響を及ぼすプロモーターおよびエンハンサーのような調節配列を含む。3'フランキング領域は、転写終結、転写後切断およびポリアデニル化を指示する配列を含んでも良い。
【0042】
「野生型」という用語は、天然の供給源から単離された場合に、その遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を意味する。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に認められるものであり、その結果その遺伝子の「正常」または「野生型」形として任意にデザインされる。対照的に、「修飾された」、「変異体」、「多型」および「変種」という用語は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、配列および/または機能特性の修飾(すなわち変更された特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物を意味する。天然由来の変異体を単離することができ、これらは野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、変更された特徴を有するという事実により同定されることに注目されたい。
【0043】
本明細書において使用される「コードする核酸分子」、「コードするDNA配列」、および「コードするDNA」という用語は、デオキシリボ核酸鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順番または配列を意味する。これらのデオキシリボヌクレオチドの順番は、そのポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順番を決定する。従ってDNA配列は、アミノ酸配列をコードする。
【0044】
DNA分子は、1つのモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸が、それに隣接する3'酸素に一方向でホスホジエステル結合を介して付着するような様式でモノヌクレオチドが反応し、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを形成するので、「5'末端」および「3'末端」を有すると称される。従ってオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの末端は、その5'リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3'酸素に連結していない場合に、「5'末端」と称され、その3'酸素が次のモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸に連結していない場合に、「3'末端」と称される。本明細書において使用される核酸配列は、例え比較的大きいオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの内部であったとしても、同じく5'および3'末端を有すると称される。直鎖状または環状のいずれかのDNA分子において、分散したエレメントは、「上流」または「下流」の5'側または5'エレメントであると称される。この技術用語は、転写が5'から3'への様式でDNA鎖に沿って進行するという事実を反映している。連結された遺伝子の転写を指示するプロモーターおよびエンハンサーエレメントは一般に、コード領域の5'側または上流に位置する。しかしエンハンサーエレメントは、プロモーターエレメントおよびコード領域の3'側に位置したとしても、それらの作用を発揮することができる。転写終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルは、コード領域の3'側または下流に位置する。
【0045】
本明細書において使用される「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」および「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」という用語は、遺伝子のコード領域を含む核酸配列、または別の表現をすると、遺伝子産物をコードする核酸配列を意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAの形で存在することができる。DNA形で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、1本鎖(すなわちセンス鎖)または2本鎖であることができる。エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどの適当な制御エレメントは、一次RNA転写産物の転写および/または正確なプロセッシングの適切な開始が可能であることが必要な場合は、遺伝子のコード領域の近傍に配置されてもよい。あるいは、本発明の発現ベクターにおいて利用されるコード領域は、内在性エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、または内在性および外来性の両制御エレメントの組合せを含んでもよい。
【0046】
本明細書において使用される「調節エレメント」という用語は、核酸配列の発現のいくつかの局面を制御する遺伝的エレメントを意味する。例えばプロモーターは、機能的に連結されたコード領域の転写開始を促進する調節エレメントである。他の調節エレメントは、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終結シグナル等を含む。
【0047】
本明細書において使用される「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対形成の法則(base-pairing rule)により関係づけられたポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチド配列)を意味するように使用される。例えば配列5'-「A-G-T-3'」は、配列3'-「T-C-A-5'」に相補的である。相補性とは、核酸塩基の一部のみが塩基対形成の法則に従ってマッチしている「部分」である。または核酸間の「完全な」または「全体の」相補性であってもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーション効率および強度に著しく作用する。これは、増幅反応に加え、核酸間の結合に左右される検出法において特に重要である。相補性は、非天然の塩基、修飾された塩基、合成塩基などを含む、あらゆる種類のヌクレオチド間の塩基対形成を含むことができる。
【0048】
「相同性」という用語は、相補性の程度を意味する。部分的相同性または完全な相同性(すなわち同一性)であることができる。部分的に相補的な配列は、完全に相補的な配列と標的核酸とのハイブリダイゼーションを少なくとも部分的に阻害し、かつ機能的な「実質的に相同」という用語を用いることを意味するものである。「結合の阻害」という用語は、核酸結合に関して使用される場合、標的配列への結合に関して相同な配列との競合により引き起こされる結合の阻害を意味する。完全に相補的な配列と標的配列とのハイブリダイゼーションの阻害は、低ストリンジェンシー条件下で、ハイブリダイゼーションアッセイ(サザンまたはノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど)を用い、試験することができる。実質的に相同な配列またはプローブは、低ストリンジェンシーの条件下で、完全な相同体と標的との結合(すなわちハイブリダイゼーション)に競合し、かつ阻害する。このことは、低ストリンジェンシー条件は非特異的結合を可能にするものであると言うわけではなく、低ストリンジェンシー条件は、2つの配列の互いへの結合が特異的な(すなわち選択的な)相互作用であることを必要とする。非特異的結合の非存在は、部分的程度であっても相補性を欠く(例えば約30%未満の同一性)第二の標的の使用により試験してもよく、プローブへの非特異的結合が存在しない場合、第二の非相補的標的にはハイブリダイズしないであろう。
【0049】
当該技術分野においては、低ストリンジェンシー条件を含むために、多くの同等の条件を使用できることは周知である。プローブの長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成)、ならびに標的の性質(溶液中に存在するかまたは固定されたDNA、RNA、塩基組成など)、ならびに塩および他の成分の濃度(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコールの存在または非存在)などの要因が考慮され、ならびにハイブリダイゼーション溶液は、前述の条件と異なるが同等である、低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件を生じるために変動させることができる。加えて当該技術分野は、高ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションを促進する条件を知っている(例えば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄工程の温度の上昇、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの使用など)。
【0050】
「実質的に相同」という用語は、cDNAまたはゲノムクローンなどの2本鎖核酸配列に関して使用される場合、前述の低ストリンジェンシー条件下で、2本鎖核酸配列のいずれかまたは両方の鎖にハイブリダイズすることができるプローブを意味する。
【0051】
遺伝子は、一次RNA転写産物の示差的スプライシングにより作製される複数のRNA種を作製すことができる。同じ遺伝子の変種をスプライシングするcDNAは、配列同一性または完全な相同性領域(両方のcDNA上に同じエキソンまたは同じエキソンの一部が存在することを示す)、ならびに完全に非同一性の領域(例えば、cDNA1上のエキソン「A」の存在に対し、cDNA2は代わりにエキソン「B」を含むことを示す)を含むであろう。これら2種のcDNAは配列同一性領域を含むので、これらは両方共が、両cDNAで認められる配列を含む全遺伝子または遺伝子の一部に由来するプローブへハイブリダイズし、従って2つのスプライスバリアントは、そのようなプローブと、および互いに実質的に相同である。
【0052】
「実質的に相同」という用語は、1本鎖核酸配列に関して使用される場合、先に説明した低ストリンジェンシー条件下で、その1本鎖核酸配列とハイブリダイズすることができる(すなわち相補的である)プローブを意味する。
【0053】
本明細書において使用される「結合に競合する」という用語は、活性を有する第二のポリペプチドと同じ基質へ結合する活性を有する第一のポリペプチドに関して使用され、ここで第二のポリペプチドは、第一のポリペプチドの変種または関連したもしくは類似しないポリペプチドである。第一のポリペプチドによる結合の効率(例えば、化学量論的または熱力学的)は、第二のポリペプチドにより結合する基質の効率と同じまたはより大きいもしくはより小さいことができる。例えば基質への結合に関する平衡結合定数(KD)は、これら2つのポリペプチド間で異なってよい。本明細書において使用される「Km」という用語は、酵素に関するミカエリス-メンテン定数を意味し、所定の酵素による、酵素触媒反応の最大速度の半分を生じる特異的基質濃度として定義される。
【0054】
本明細書において使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的な核酸の対形成に関して使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション強度(すなわち核酸間の会合の強度)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、形成されたハイブリッドのTm、ならびに核酸内のG:C比などの要因により影響を受ける。
【0055】
本明細書において使用される「Tm」という用語は、「融解温度」に関して使用される。融解温度は、2本鎖核酸分子の集団が、1本鎖へ半分解離し始める温度である。核酸Tmの計算式は、当該技術分野において周知である。標準の参考文献により示されるように、核酸が1M NaClの水溶液中に存在する場合、Tm値の簡単な概算は、下記式により算出される:Tm=81.5+0.41(%G+C)(例えばAnderson and Young, Quantitative Filter Hybridization, Nucleic Acid Hybridization [1985]参照)。他の参考文献は、Tmの計算を説明するために、構造に加え配列の特徴を採用する、より洗練されたコンピュータ計算を含む。
【0056】
本明細書において使用される「ストリンジェンシー」という用語は、その下で核酸ハイブリダイゼーションが実行される、温度、イオン強度、および有機溶媒などの他の化合物の存在条件に関して使用される。当業者は、「ストリンジェンシー」条件は、説明されたパラメータを個別にまたは共調して変動させることにより変更することができることを認めるであろう。「高ストリンジェンシー」条件では、核酸塩基対形成は、高頻度の相補性塩基配列を有する核酸断片の間でのみ生じる(例えば、「高ストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは、約85〜100%の同一性、好ましくは約70〜100%の同一性を有する相同体間で生じ得る)。中間のストリンジェンシー条件では、核酸塩基対形成は、中頻度の相補性塩基配列を有する核酸の間で生じる(例えば、「中ストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは、約50〜70%同一性の相同体間で生じ得る。)。従って「弱い」または「低」 ストリンジェンシーは、相補的な配列の頻度が通常より低いので、遺伝的に多様である生物に由来した核酸を必要とすることが多い。
【0057】
「高ストリンジェンシー条件」は、核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合、長さ約500ヌクレオチドのプローブが使用される場合に、5X SSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaH2PO4H2O、および1.85g/l EDTA、pHをNaOHで7.4に調節)、0.5%SDS、5Xデンハルト試薬および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃での結合またはハイブリダイゼーション、それに続く0.1X SSPE、1.0%SDSを含有する溶液中、42℃での洗浄と同等の条件を含む。
【0058】
「中ストリンジェンシー条件」は、核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合、長さ約500ヌクレオチドのプローブが使用される場合に、5X SSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaH2PO4H2O、および1.85g/l EDTA、pHをNaOHで7.4に調節)、0.5%SDS、5Xデンハルト試薬および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃での結合またはハイブリダイゼーション、それに続く1.0X SSPE、1.0%SDSを含有する溶液中、42℃での洗浄と同等の条件を含む。
【0059】
「低ストリンジェンシー条件」は、長さ約500ヌクレオチドのプローブが使用される場合に、5X SSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaH2PO4H2O、および1.85g/l EDTA、pHをNaOHで7.4に調節)、0.1%SDS、5Xデンハルト試薬[50Xデンハルトは、500mlにつき:5g Ficoll(Type400、Pharamcia)、5g BSA(フラクションV;Sigma)を含む]および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃での結合またはハイブリダイゼーション、それに続く5X SSPE、0.1%SDSを含有する溶液中、42℃での洗浄と同等の条件を含む。
【0060】
本発明は、長さが約500ヌクレオチドのプローブのハイブリダイゼーションに制限されない。本発明は、長さが約10ヌクレオチドから最大数千の(例えば少なくとも5000)ヌクレオチドの間のプローブの使用を企図している。当業者は、他のサイズのプローブに関してストリンジェンシー条件を変更することができることを理解している(例えば、AndersonおよびYoung、Quantitative Filter Hybridization, Nucleic Acid Hybridization [1985]、ならびに、Sambrook et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, NY[1989])。
【0061】
「参照配列」、「配列同一性」、「配列同一性の割合」、および「実質的同一性」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド間の配列関係を説明するために使用される。「参照配列」は、配列比較の基礎として使用される定義付された配列であり、参照配列は、例えば配列表に示された全長cDNA配列のセグメントのような、より大きな配列のサブセットであるか、または完全な遺伝子配列を含むことができる。一般に参照配列は、長さが少なくとも20ヌクレオチドであり、頻繁には長さが少なくとも25ヌクレオチドであり、多くは長さが少なくとも50ヌクレオチドである。2つのポリヌクレオチドは、各々、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部)を含み、および(2)更に2つのポリヌクレオチド間で互いに異なる(divergent)配列を含むことができるので、2つの(またはそれよりも多い)ポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、配列類似性の局所的領域を同定および比較するために、「比較ウィンドウ」について2つのポリヌクレオチドの配列を比較することにより実行される。本明細書において使用される「比較ウィンドウ」は、ポリヌクレオチド配列と少なくとも20の近接ヌクレオチドの参照配列とが比較され、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列の一部が、2つの配列の最適なアラインメントのために参照配列(付加または欠失を含まない)と比べ20%未満の付加または欠失(すなわちギャップ)を含むような、少なくとも20の近接ヌクレオチド位置の概念的セグメントを意味する。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適アラインメントは、SmithおよびWatermanのローカルホモロジーアルゴリズム[Smith and Waterman, Adv. Appl. Math., 2:482(1981)] 、NeedlemanおよびWunschのホモロジーアラインメントアルゴリズム[Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol., 48:443(1970)]、PearsonおよびLipmanの類似性検索法[Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci.(USA), 85:2444(1988)]、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis)またはインスペクションによりおこなうことができ、ならびに様々な方法により作製されたベストアラインメント(すなわち、比較ウィンドウ上で最良の相同性の割合を生じる)が選択される。「配列同一性」という用語は、比較ウィンドウ上で、2つのポリヌクレオチド配列が同一(すなわちヌクレオチド毎を基本に)であることを意味する。「配列同一性の割合」という用語は、比較ウィンドウ上で、2つの最適に整列させた配列を比較し、マッチする位置の数を得るために、両方の配列で同一である核酸塩基(例えばA、T、C、G、U、またはI)が生じる位置の数を決定し、マッチする位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)によって除算し、この結果を100倍して配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。本明細書において使用される「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特徴を意味し、ここでポリヌクレオチドは、参照配列と比較して、少なくとも20ヌクレオチド位置の比較ウィンドウ上で、頻繁には少なくとも25〜50ヌクレオチドのウィンドウ上で、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、より一般的には少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含み、ここで配列同一性の割合は、比較ウィンドウ上で、参照配列の合計20%またはそれ未満の欠失または付加を含むことができるポリヌクレオチド配列と、参照配列を比較することにより算出される。参照配列は、例えば、本発明で請求される組成物の完全長配列のセグメント(例えばNIPA-1)のような、比較的大きい配列のサブセットであってよい。
【0062】
ポリペプチドに適用される「実質的同一性」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップウェイト(gap weight)を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどにより最適に整列された場合に、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性またはより多く(例えば99%の配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。保存的アミノ酸置換は、同様の側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リシン、アルギニン、およびヒスチジンであり;ならびに、イオウ含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換の群は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0063】
本明細書において使用される「断片」という用語は、未変性のタンパク質と比べアミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失を有するが、ここで残りのアミノ酸配列は、完全長cDNA配列から推定されるアミノ酸配列の対応する位置と同一であるポリペプチドを意味する。断片は典型的には、少なくとも4個のアミノ酸長であり、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸長、通常少なくとも50個のアミノ酸長またはそれよりも長く、この組成物(本発明で請求される)のその様々なリガンドおよび/または基質との分子間結合に必要なポリペプチド部分に及ぶ。
【0064】
「多型遺伝子座」という用語は、集団のメンバー間で多様性を示す集団において存在する遺伝子座である(すなわち最も一般的なアレルは、0.95未満の頻度を有する)。対照的に、「単型遺伝子座」は、集団のメンバー間で多様性がほとんどまたは全く認められない遺伝的遺伝子座である(一般に、最も一般的なアレルは、集団の遺伝子プールにおいて頻度0.95を超えるような遺伝子座であるとされる)。
【0065】
本明細書において使用される「遺伝子の変異情報」または「遺伝子変種情報」という用語は、特定の遺伝子(例えば、本発明のNIPA-1遺伝子)の所定のアレルにおける、1つまたは複数の変種核酸配列(例えば、多型または変異)の存在または非存在を意味する。
【0066】
本明細書において使用される「検出アッセイ」という用語は、特定の遺伝子(例えば、本発明のNIPA-1遺伝子)の所定のアレルにおける、変種核酸配列(例えば、多型または変異)の存在または非存在を検出するアッセイを意味する。適当な検出アッセイの例は、下記「セクションIIIB」に記されるものを含むが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書において使用され被検体に適用される「天然由来」という用語は、被検体が天然に認められ得るという事実を意味する。例えば、天然の供給源から単離され、実験室において人によって意図的に修飾されない生物(ウイルスを含む)に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然由来である。
【0068】
「増幅」は、鋳型特異性が関与する特別な核酸複製である。これは、非特異的鋳型複製(すなわち、鋳型依存的であるが特異的な鋳型には依存しない複製)とは対照的である。鋳型特異性はここでは、複製の忠実性(すなわち適当なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボ-またはデオキシリボ-)特異性とは区別される。鋳型特異性は、「標的」特異性に関して頻繁に説明される。標的配列は、他の核酸から選別されることが求められるという意味での「標的」である。増幅技術は、この選別のために主にデザインされる。
【0069】
鋳型特異性は、ほとんどの増幅技術において、酵素の選択により実現される。増幅酵素は、それらが使用される条件下で、核酸の異種混合物中の核酸の特異的配列のみをプロセッシングする酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAは、このレプリカーゼの特異的鋳型である(D. L. Kacian et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69:3038[1972])。他の核酸は、この増幅酵素によっては複製されない。同様にT7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素は、それ自身のプロモーターに対しストリンジェントな特異性を有する(Chamberlin et al., Nature, 228:227[1970])。T4 DNAリガーゼの場合、この酵素は、2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを連結せず、ここでこのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質とこの鋳型との間にライゲーション接合点でミスマッチが存在する(D. Y. Wu and R. B. Wallace, Genomics, 4:560[1989])。最後にTaqおよびPfuポリメラーゼは、それらの高温で機能する能力に関して、結合した配列に高い特異性を発揮し、その結果プライマーにより定義されることがわかっており、高温によって、標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションには好ましいが、非標的配列とはハイブリダイズしない、熱力学的条件が生じる(H. A. Erlich(ed.), PCR Technology, Stockton Press[1989])。
【0070】
本明細書において使用される「増幅可能な核酸」という用語は、任意の増幅法により増幅することができる核酸に関して使用される。「増幅可能な核酸」は、通常「試料鋳型」を含むことが企図される。
【0071】
本明細書において使用される「試料鋳型」という用語は、「標的」(以下に定義する)の存在について分析される試料を起源とする核酸を意味する。対照的に「バックグラウンド鋳型」は、試料中に存在するかまたは存在しない、試料鋳型以外の核酸に関して使用される。バックグラウンド鋳型は最も頻繁には、不注意による。これは、キャリーオーバーの結果であるか、または試料から精製除去されることが求められた核酸夾雑物の存在に起因し得る。例えば検出されるべきもの以外の生物由来の核酸は、被験試料中にバックグラウンドとして存在することがある。
【0072】
本明細書において使用される「プライマー」という用語は、核酸鎖と相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導されるような条件下(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘導物質の存在下、ならびに適当な温度およびpH)に配置された場合に合成開始点として作用することが可能である、精製された制限消化産物中でのように天然に生じるか、または合成により作製されたかのいずれかのオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは好ましくは、最大効率の増幅のために1本鎖とされるが、代わりに2本鎖であることもできる。2本鎖である場合、そのプライマーは、最初にその鎖が分離するように処理され、その後伸長産物を調製するために使用される。好ましくはプライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導物質の存在下で、伸長産物の合成をプライミングするのに十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマー供給源および使用される方法を含む、多くの要因により決まる。本発明で有用なプライマーの具体例は、SEQ ID NO:1または2由来の少なくとも5ヌクレオチドのプライマー、SEQ ID NO:1または2由来の少なくとも10ヌクレオチドのプライマー、SEQ ID NO:1または2由来の少なくとも20ヌクレオチドのプライマー、SEQ ID NO:1または2由来の長さが少なくとも30ヌクレオチドのプライマー、SEQ ID NO:1または2由来の長さが少なくとも40ヌクレオチドのプライマー、SEQ ID NO:1または2由来の長さが少なくとも55ヌクレオチドのプライマー、およびSEQ ID NO:1または2由来の長さが少なくとも50ヌクレオチドのプライマーを含むがこれらに限定されない。
【0073】
本明細書において使用される「プローブ」という用語は、対象となる別のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることが可能である、精製された制限消化産物中に天然に、または合成、組換え、もしくはPCR増幅によって作製されたオリゴヌクレオチド(すなわちヌクレオチド配列)を意味する。プローブは、1本鎖または2本鎖であってよい。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定、および単離に有用である。本発明で使用されるプローブは、酵素(例えばELISAに加え、酵素に基づく組織化学アッセイ)、蛍光、放射性、および発光システムを含むがこれらに限定されない、任意の検出システムで検出可能となるように「レポーター分子」により標識されることが企図される。本発明が特定の検出システムまたは標識物に限定されることは意図されていない。
【0074】
本明細書において使用される「標的」という用語は、検出または特徴付けされるべき核酸配列または構造を意味する。従って「標的」は、他の核酸配列から選別されることが求められる。「セグメント」は、標的配列内の核酸領域として定義される。
【0075】
本明細書において使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)という用語は、K. B. Mullisの米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,965,188号の方法を意味し、これらの特許は全て本明細書に参照として組入れられるが、これらはゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメント濃度を、クローニングまたは精製することなく、増加する方法を説明している。標的配列を増幅するためのこのプロセスは、2種のオリゴヌクレオチドプライマーの所望の標的配列を含むDNA混合物への非常に過剰な導入、それに続くDNAポリメラーゼの存在下でのサーマルサイクリングの正確な手順からなる。この2種のプライマーは、2本鎖化された標的配列の各鎖に相補的である。増幅を実行するために、この混合物は変性され、その後プライマーが標的分子内のそれらの相補的配列へアニーリングされる。アニーリング後、プライマーはポリメラーゼにより伸長され、その結果相補鎖の新たな対を形成する。変性、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼ伸長の工程は、何回も反復され(すなわち、変性、アニーリング、および伸長は、1つの「サイクル」を構成する。多数回の「サイクル」が存在することができる。)、高濃度の所望の標的配列の増幅されたセグメントを得る。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、互いのプライマーの相対位置により決定するため、この長さは制御可能なパラメータである。プロセスの反復の局面に基づき、この方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」(以後「PCR」)と称される。標的配列の望ましい増幅セグメントが混合物中の支配的配列となる場合(濃度に関して)、これらは、「PCR増幅された」と称される。
【0076】
PCRにより、ゲノムDNA中の特異的標的配列の単一コピーを、多種多様な方法(例えば、標識プローブによるハイブリダイゼーション;ビオチン化されたプライマーの組込み、それに続くアビジン-酵素複合体の検出;dCTPまたはdATPのような、32P-標識したデオキシヌクレオチド三リン酸の、増幅セグメントへの組込み)により検出可能なレベルへ増幅することが可能である。ゲノムDNAに加えて、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列をプライマー分子の適当なセットにより増幅することができる。特にPCRプロセスそれ自身により作製された増幅セグメントは、それら自身引き続きのPCR増幅のための有効な鋳型となる。
【0077】
本明細書において使用される「PCR産物」、「PCR断片」、および「増幅産物」という用語は、変性、アニーリング、および伸長というPCR工程の2回以上のサイクル完了後に得られる化合物の混合物を意味する。これらの用語は、1つまたは複数の標的配列の1つまたは複数のセグメントが増幅される場合を包含する。
【0078】
本明細書において使用される「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型、および増幅酵素以外の、増幅に必要なそのような試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液など)を意味する。典型的には増幅試薬は、他の反応成分と共に、反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に配置され、かつ含まれる。
【0079】
本明細書において使用される「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、細菌酵素を意味し、各々は特異的ヌクレオチド配列で、またはその近傍で、2本鎖DNAを切断する。
【0080】
本明細書において使用される「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的技術により互いに連結されたDNAセグメントで構成されるDNA分子を意味する。
【0081】
本明細書において使用される用語「アンチセンス」は、特定のRNA配列(例えばmRNA)に相補的であるRNA配列に関して使用される。細菌による遺伝子調節に関連したアンチセンスRNA(「asRNA」)分子は、この定義に含まれる。アンチセンスRNAは、コード鎖の合成を可能にするウイルスプロモーターに対し逆方向で対象となる遺伝子をスプライシングすることによる合成を含む、任意の方法により作製することができる。この転写された鎖は、一旦胚へ導入されると、胚により作製された天然のmRNAと組合わされ、二重鎖を形成する。これらの二重鎖は次に、mRNAの更なる転写またはその翻訳のいずれかを妨害する。この様式で、変異体表現型が作製される。「アンチセンス鎖」という用語は、「センス」鎖に相補的である核酸鎖に関して使用される。記号(-)(すなわち「陰性」)がアンチセンス鎖に関して時々使用され、記号(+)(すなわち「陽性」)がセンス鎖に関して時々使用される。
【0082】
「単離された」という用語は、「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」のように、核酸に関連して使用される場合、同定され、かつその天然の供給源において通常それと会合している少なくとも1つの夾雑核酸から分離された核酸配列を意味する。単離された核酸は、それが天然に認められるものとは異なる形または状況で存在する。対照的に、単離されない核酸は、天然に存在する状態で認められるDNAおよびRNAなどの核酸である。例えば、所定のDNA配列(例えば遺伝子)は、隣接遺伝子に近接して宿主細胞染色体上に認められ、特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列などのRNA配列は、多数のタンパク質をコードする多くの他のmRNAとの混合物として細胞内に認められる。しかしNIPA-1をコードする単離された核酸は、例として、核酸が天然の細胞のそれとは異なる染色体位置にあるか、またはそうでなければ天然に認められるものとは異なる核酸配列が側方に位置しているような、NIPA-1を通常発現する細胞内の核酸を含む。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは、1本鎖または2本鎖の形で存在することができる。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドが、タンパク質、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドを発現させるために利用される場合、これは最小のセンス鎖またはコード鎖を含む(すなわちオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは1本鎖である)が、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含んでも良い(すなわちオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは2本鎖であることができる)。
【0083】
本明細書において使用される「染色体の一部」は、染色体の離散したセクションを意味する。染色体は、以下のように細胞遺伝学者により部位またはセクションに分けられている:染色体の短腕(動原体に対して)は、「p」腕と称され、長腕は、「q」腕と称される。次に各腕は、領域1および領域2(領域1は動原体に一番近い)と称される、2つの領域に分割される。各領域は更に、バンドに分割される。これらのバンドは更に、小バンドに分割される。例えば、ヒト染色体11の11p15.5部分は、染色体第11(11)の短腕(p)上の第一領域(1)の5番目のバンド(5)の5番目の小バンド(.5)上に位置する部分である。染色体の一部は、「変更」することができ、例えば全体部分は、欠失のために存在しないか、または再構成することができる(例えば逆位、転座、反復配列領域の変化に起因した伸長、または収縮)。欠失の場合、染色体の特定部分に相同なプローブをハイブリダイズ(すなわち特異的に結合)させる試みは、負の結果を生じる(すなわちこのプローブは、染色体の失われた部分を含むことが疑われる遺伝的材料を含有する試料には結合しない)。従って染色体の特定部分に相同なプローブのハイブリダイゼーションを、染色体の一部の変更の検出に使用することができる。
【0084】
「染色体に関連した配列」と言う用語は、染色体の調製物(例えば中期染色体のスプレッド)、染色体DNAを含有する試料から抽出された核酸(例えばゲノムDNA調製物)、染色体上に位置する遺伝子の転写で作製されたRNA(例えばhnRNAおよびmRNA)、ならびに染色体上に位置するDNAから転写されたRNAのcDNAコピーを意味する。染色体に関連した配列は、サザンブロットおよびノーザンブロットのプロービング、ならびに前記調製物中の核酸に相同な配列を含むプローブによるRNA、DNA、または中期染色体へのインサイチュハイブリダイゼーションを含む、多くの技術により検出される。
【0085】
本明細書において使用される「部分」という用語は、ヌクレオチド配列に関して(「所定のヌクレオチド配列の部分」のように)、その配列の断片を意味する。これら断片のサイズは、4個のヌクレオチドから、全ヌクレオチド配列から1つのヌクレオチドを差し引いたもの(10ヌクレオチド、20、30、40、50、100、200など)までの範囲であることができる。
【0086】
本明細書において使用される「コード領域」という用語は、構造遺伝子に関して使用される場合、mRNA分子の翻訳結果としての、発生期のポリペプチドにおいて認められるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を意味する。コード領域は真核生物において、5'側では開始メチオニンをコードする三文字のヌクレオチド「ATG」に、および3'側では停止コドンと特定される3種の三文字(すなわち、TAA、TAG、TGA)に結合する。
【0087】
本明細書において使用される「精製された」または「精製する」という用語は、試料から夾雑物を除去することを意味する。例えばNIPA-1抗体は、夾雑している非免疫グロブリンタンパク質を除去することにより精製され、これらは同じく、NIPA-1ポリペプチドに結合しない免疫グロブリンを除去することにより精製される。非免疫グロブリンタンパク質の除去および/またはNIPA-1ポリペプチドに結合しない免疫グロブリンの除去は、試料中のNIPA-1反応性免疫グロブリンの割合の増加を生じる。別の例において、組換えNIPA-1ポリペプチドは、細菌宿主細胞において発現し、このポリペプチドは、宿主細胞タンパク質を除去することにより精製され、これにより試料中の組換えNIPA-1ポリペプチドの割合が増加する。
【0088】
本明細書において使用される「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的技術により互いに組合せられたDNAセグメントで構成されるDNA分子を意味する。
【0089】
本明細書において使用される「組換えタンパク質」または「組換えポリペプチド」という用語は、組換えDNA分子により発現するタンパク質分子を意味する。
【0090】
本明細書において使用される「未変性のタンパク質」という用語は、ベクター配列によりコードされたアミノ酸残基を含まないタンパク質を示すために使用される。すなわち未変性のタンパク質は、自然に生じるようなタンパク質中に認められるそれらのアミノ酸のみを含む。未変性のタンパク質は、組換え手法により作製するか、または天然の供給源から単離することができる。
【0091】
本明細書において使用される「部分」という用語は、タンパク質に関して(「所定のタンパク質の部分」のように)は、タンパク質断片を意味する。これら断片サイズは、4個の連続するアミノ酸残基から、全体のアミノ酸配列から1つのアミノ酸を差し引いたものまでの範囲である。
【0092】
「サザンブロット」という用語は、アガロースまたはアクリルアミドゲル上でサイズに従いDNAを分画し、その後DNAをゲルから固相支持体、例えばニトロセルロースまたはナイロン膜へ移すDNA分析を意味する。固定されたDNAは次に、標識されたプローブによりプロービングされ、使用されたプローブに相補的なDNA種を検出する。DNAは電気泳動前に、制限酵素により切断されても良い。電気泳動後、DNAは、固相支持体に移される前または移される間に、部分的に脱プリン化(depurinate)および変性されてもよい。サザンブロットは、分子生物学者の標準的ツールである(J. Sambrook et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, NY, pp9.31-9.58[1989])。
【0093】
本明細書において使用される「ノーザンブロット」という用語は、サイズに従いRNAを分画するアガロースゲル上のRNA電気泳動、その後RNAをゲルから固相支持体、例えばニトロセルロースまたはナイロン膜へ移すRNA分析を意味する。固定されたRNAは次に、標識されたプローブによりプロービングされ、使用されたプローブに相補的なRNA種を検出する。ノーザンブロットは、分子生物学者の標準的ツールである(J. Sambrook, et al., 前記, pp7.39-7.52[1989])。
【0094】
「ウェスタンブロット」という用語は、ニトロセルロースまたは膜などの支持体上に固定されたタンパク質(またはポリペプチド)の分析を意味する。これらのタンパク質はタンパク質を分離するためにアクリルアミドゲル上を流され、その後ゲルからタンパク質をニトロセルロースまたはナイロン膜などの固相支持体に移される。固定されたタンパク質はその後、対象となる抗原に対して反応性のある抗体に曝される。抗体の結合は、放射標識された抗体の使用を含む様々な方法により検出することができる。
【0095】
本明細書において使用される「抗原決定基」という用語は、特定の抗体との接触を生じる抗原の一部(すなわちエピトープ)を意味する。タンパク質またはタンパク質断片が宿主動物の免疫処置に使用される場合、このタンパク質の多くの領域が、タンパク質上の所定の領域または三次元構造へ特異的に結合する抗体産生を誘導することができ、これらの領域または構造は、抗原決定基と称される。抗原決定基は、抗体結合に関して、完全な抗原(すなわち免疫応答を誘起するために使用される「免疫原」)と競合することができる。
【0096】
本明細書において使用される「導入遺伝子」という用語は、新たな受精卵または初期胚への遺伝子導入により生物へと配置された、外来、異種、または自家の遺伝子を意味する。「外来遺伝子」という用語は、実験的操作により動物のゲノムへ導入された任意の核酸(例えば遺伝子配列)を意味し、導入された遺伝子が天然由来遺伝子が存在する位置と同じ位置に存在しない限りは、その動物中で認められる遺伝子配列を含んでよい。「自家遺伝子」という用語は、天然由来遺伝子の変種(例えば多型または変異体)を包含することが意図される。従って「導入遺伝子」という用語は、遺伝子の変種型を伴う天然由来遺伝子の代替を包含する。
【0097】
本明細書において使用される「ベクター」という用語は、DNAセグメントを1つの細胞から別の細胞へと移す核酸分子に関して使用される。「ビヒクル」という用語は、時に「ベクター」と互換的に使用されることがある。
【0098】
本明細書において使用される「発現ベクター」という用語は、所望のコード配列、および特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の発現に必要な適当な核酸配列を含む組換えDNA分子を意味する。原核生物における発現に必要な核酸配列は通常、プロモーター、オペレーター(任意)、およびリボソーム結合部位を、時には他の配列と共に含む。真核細胞においては、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルの使用が知られている。
【0099】
本明細書において使用される「宿主細胞」という用語は、インビトロまたはインビボのいずれかで配置された、真核細胞または原核細胞のいずれか(例えば大腸菌などの細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞、および昆虫細胞)を意味する。例えば宿主細胞は、トランスジェニック動物内に位置することができる。
【0100】
「過剰発現」および「過剰発現する」という用語および文法的な同等物は、mRNAのレベルに関して、対照または非トランスジェニック動物の所定の組織において典型的に観察されるものよりも約3倍高い発現レベルを示すように使用される。mRNAレベルは、ノーザンブロット分析(ノーザンブロット分析を実行するプロトコールに関しては実施例10参照)を含むが、これらに限定されるものではない、当業者に公知の任意の多くの技術を用いて測定される。分析される各組織から負荷されたRNA量の差異を管理するために、適当な対照がノーザンブロットに含まれる(例えば、全ての組織に本質的に同量存在する豊富なRNA転写産物である、各試料中に存在する28S rRNAの量は、ノーザンブロットで認められるRAD50 mRNA特異的シグナルの正規化または標準化の手段として使用することができる。)。正確にスプライシングされたNIPA-1導入遺伝子RNAとサイズが対応するバンド中に存在するmRNA量は定量され、導入遺伝子プローブにハイブリダイズする他のRNAの少量種は、このトランスジェニックmRNAの発現の定量においては考慮されない。
【0101】
本明細書において使用される「トランスフェクション」という用語は、外来DNAの真核細胞への導入を意味する。トランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、ポリブレン媒介型トランスフェクション、電気穿孔、微量注入、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、および遺伝子銃を含む、当該技術分野において公知の様々な手段により実現することができる。
【0102】
「安定したトランスフェクション」または「安定してトランスフェクトされた」という用語は、トランスフェクトされた細胞における外来DNAのゲノムへの導入および組込みをを意味する。「安定したトランスフェクタント」という用語は、外来DNAがゲノムDNAへ安定して組込まれた細胞を意味する。
【0103】
「一過性トランスフェクション」または「一過性にトランスフェクトされる」との用語は、外来DNAがトランスフェクトされた細胞のゲノムへは組込まれない、細胞への外来DNAの導入を意味する。この外来DNAは数日間、トランスフェクトされた細胞の核に存続する。この期間、外来DNAは、染色体内の内在性遺伝子の発現を支配する調節制御を受ける。「一過性トランスフェクタント」という用語は、外来DNAを取込んでいるが、このDNAの組込みには失敗した細胞を意味する。
【0104】
「リン酸カルシウム共沈」という用語は、細胞への核酸の導入技術を意味する。細胞による核酸の取込みは、核酸がリン酸カルシウム-核酸共沈物として存在する場合に増強される。Grahamおよびvan der Ebの最初の技術(Graham and van der Eb, Virol., 52:456[1973])は、いくつかのグループにより、細胞の具体的種類について条件を最適化するように改変されている。当該技術分野では、これらの多くの改変が周知である。
【0105】
本明細書において使用される「所定のポリヌクレオチド配列を含有する組成物」とは、所定のポリヌクレオチド配列を含む任意の組成物を広く意味する。この組成物は、水溶液を含んでよい。NIPA-1をコードするポリヌクレオチド配列(例えばSEQ ID NO:1および2)またはそれらの断片を含有する組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。この場合NIPA-1をコードするポリヌクレオチド配列は、典型的には塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばSDS)、および他の成分(例えばデンハルト液、乾燥ミルク、サケ精子DNAなど)を含有する水性溶液中で使用される。
【0106】
「被験化合物」という用語は、疾患、疾病、病気、もしくは体の機能障害などを治療もしくは予防するために、またはそうでなければ試料の生理的状態もしくは細胞の状態を変更するために使用することができる、化学的実体、医薬、薬剤などを意味する。被験化合物は、公知のおよび潜在的な治療的化合物を両方とも含む。被験化合物は、本発明のスクリーニング法を用いるスクリーニングにより、治療的であると決定することができる。「公知の治療的化合物」は、そのような治療または予防において有効であることが(例えば、動物試験またはヒトへの投与を伴う先の経験により)示された治療的化合物を意味する。
【0107】
本明細書において使用される「試料」という用語は、その最も広範な意味で使用される。ヒト染色体またはヒト染色体に関連した配列を含むと疑われる試料は、細胞、細胞から単離された染色体(例えば、中期染色体スプレッド)、ゲノムDNA(溶液中またはサザンブロット分析用などの固相支持体に結合した)、RNA(溶液中またはノーザンブロット分析用などの固相支持体に結合した)、cDNA(溶液中または固相支持体に結合した)などを含むことができる。タンパク質を含有すると疑われる試料は、細胞、組織の一部、1つまたは複数のタンパク質を含有する抽出物などを含むことができる。
【0108】
本明細書において使用される「反応」という用語は、アッセイに関して使用される場合、検出可能なシグナル(例えばレポータータンパク質の蓄積、イオン濃度の増加、検出可能な化学生成物の蓄積)を生じることを意味する。
【0109】
本明細書において使用される用語「レポーター遺伝子」は、アッセイされ得るタンパク質をコードする遺伝子を意味する。レポーター遺伝子の例は、ルシフェラーゼ(例えばdeWet et al., Mol. Cell. Biol., 7:725[1987]および米国特許第6,074,859号;第5,976,796号;第5,674,713号;および、第5,618,682号参照;これらは全て本明細書に参照として組入れられる)、緑色蛍光タンパク質(例えば、GenBank寄託番号U43284;多くのGFP変種が、CLONTECH Laboratories, Palo Alto, CAから市販されている)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および西洋ワサビペルオキシダーゼを含むがこれらに限定されない。
【0110】
本明細書において使用される「コンピュータメモリ」および「コンピュータ記憶装置」という用語は、コンピュータプロセッサにより読取り可能な記憶媒体を意味する。コンピュータメモリの例は、RAM、ROM、コンピュータチップ、デジタルビデオディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、ハードディスクドライブ(HDD)、および磁気テープを含むがこれらに限定されない。
【0111】
本明細書において使用される「コンピュータで読取り可能な媒体」という用語は、コンピュータプロセッサに情報(例えばデータおよび使用説明)を保存または提供するための任意の装置またはシステムを意味する。コンピュータで読取り可能な媒体の例は、DVD、CD、ハードディスクドライブ、磁気テープ、およびネットワーク上のストリーミングメディアであるサーバーを含むがこれらに限定されない。
【0112】
本明細書において使用される「プロセッサ」および「中央演算装置」または「CPU」という用語は、互換的に使用され、コンピュータメモリ(例えばROMまたは他のコンピュータメモリ)からプログラムを読み込み、かつそのプログラムに従い一連の工程を実行することができる装置を意味する。
【0113】
本明細書において使用される「コンピュータで履行される方法」という用語は、「CPU」および「コンピュータで読取り可能な媒体」を用いる方法を意味する。
【0114】
発明の詳細な説明
本発明は、NIPA-1タンパク質およびNIPA-1タンパク質をコードする核酸に関する。本発明は更に、治療的物質を検出するための、ならびに病態に関連したNIPA-1多型および変異を検出するためのアッセイを提供する。本発明の例示的態様を、以下に説明する。
【0115】
I. NIPA-1 ポリヌクレオチド
先に説明したように、本発明は新規NIPA-1ファミリーの遺伝子を提供する。従って本発明は、SEQ ID NO:1および2に記載されたものを含むがこれらに限定されない、NIPA-1遺伝子をコードする核酸、相同体、変種(例えば多型および変異体)を提供する。表1は、本発明のNIPA-1遺伝子を例示する。いくつかの態様において、本発明は、ハイブリダイズすることが可能であるポリヌクレオチド配列が、天然のNIPA-1の生物学的活性を維持するタンパク質をコードする限りは、低から高ストリンジェンシーな条件下で、SEQ ID NO:1および2にハイブリダイズすることが可能であるポリヌクレオチド配列を提供する。いくつかの態様において、天然のNIPA-1の生物学的活性を維持するタンパク質は、野生型NIPA-1と70%相同であり、好ましくは野生型NIPA-1と80%相同であり、より好ましくは野生型NIPA-1と90%相同であり、最も好ましくは野生型NIPA-1と95%相同である。好ましい態様において、ハイブリダイゼーション条件は、核酸結合複合体の融解温度(Tm)を基にし、先に説明されたように規定された「ストリンジェンシー」を付与する(例えば、Wahl, et al., Meth. Enzymol., 152:399-407[1987]参照、これは本明細書に参照として組入れられる)。
【0116】
本発明の別の態様において、NIPA-1遺伝子の追加のアレルが提供される。好ましい態様において、アレルは、多型または変異(すなわち核酸配列の変化)から生じ、一般にそれらの構造または機能は変更されてもされなくてもよい、変更されたmRNAまたはポリペプチドを生じる。任意の所定の遺伝子は、アレル型を有さないか、または1つもしくは多くを有する。アレルを生じる共通の変異性変化は、一般に核酸の欠失、付加、または置換に起因する。これらの変化の種類は各々、単独でまたは他のものと組合せて、ならびに所定の配列で1回または複数回の度合いで生じることができる。本発明のアレルの例は、SEQ ID NO:1(野生型)によりコードされたものおよびそれらの疾患アレル(例えばSEQ ID NO:2)を含む。追加例は、切断型変異(例えばコードされたmRNAが完全なタンパク質を生じない)を含む。
【0117】
更に本発明の別の態様において、本発明のヌクレオチド配列は、様々な理由のために、NIPA-1コード配列を変更することを目的として操作することができ、遺伝子産物のクローニング、プロセッシング、および/または発現を修飾する変更を含むが、これらに限定されるものではない。例えば変異は、当該技術分野において周知の技術を用いて導入することができる(例えば、新規制限部位を挿入するため、グリコシル化パターンを変更するため、コドン優先性を変更するためなどの位置指定変異誘発)。
【0118】
本発明のいくつかの態様において、プロモーターおよび調節エレメントなどの上流配列を検出するために、当該技術分野において公知の様々な方法でこのヌクレオチド配列を用いて、NIPA-1のポリヌクレオチド配列を伸長させることができる。例えば、制限部位ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、本発明における用途を認めることが企図される。これは、既知の遺伝子座に隣接した未知の配列を検索するために、ユニバーサルプライマーを使用する直接法である(Gobinda et al., PCR Methods Applic., 2:318-22[1993])。最初にゲノムDNAが、リンカー配列に対するプライマーおよび既知の領域に特異的なプライマーの存在下で増幅される。増幅された配列は次に、同じリンカープライマーおよび初回の特異的プライマーの内部の別の特異的プライマーにより、PCRの第2ラウンドが施される。各PCRラウンドの産物は、適当なRNAポリメラーゼにより転写され、かつ逆転写酵素を用いて配列決定される。
【0119】
別の態様において、逆PCRを用い、既知の領域を基にした多岐にわたるプライマーを使用して、配列を増幅または伸長することができる(Triglia et al., Nucleic Acids Res., 16:8186[1988])。これらのプライマーは、長さが22〜30ヌクレオチドであり、GC含量が50%以上、ならびに標的配列を温度約68〜72℃でアニーリングするように、Oligo 4.0(National Biosciences Inc, Plymouth Minn.)、または別の適当なプログラムを用いてデザインされてもよい。この方法はいくつかの制限酵素を使用し、既知の遺伝子領域の適当な断片を作製する。その後断片が、分子内ライゲーションにより環化され、PCR鋳型として使用される。更に別の態様において、ウォーキングPCRが利用される。ウォーキングPCRは、未知の配列の検索を可能にする、標的化された遺伝子歩行に関する方法である(Parker et al., Nucleic Acids Res., 19:3055-60[1991])。PROMOTERFINDERキット(Clontech)は、PCR、入れ子式プライマーおよびゲノムDNAを「歩行(walk in)」するための特別なライブラリーを使用する。このプロセスは、ライブラリーをスクリーニングする必要性を回避し、イントロン/エキソン接合点の発見に有用である。
【0120】
完全長cDNAをスクリーニングするための好ましいライブラリーは、より大きいcDNAを含むようにサイズ選択された哺乳動物ライブラリーを含む。また、5'側および上流遺伝子領域を含むより多くの配列を含むため、ランダムプライミングされたライブラリーが好ましい。ランダムプライミングされたライブラリーは、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを生じない場合に特に有用である。哺乳動物ゲノムライブラリーは、イントロンを得、かつ5'側配列を伸長するために有用である。
【0121】
本発明の別の態様において、明らかにされたNIPA-1配列の変種が提供される。好ましい態様において、変種は、多型または変異(すなわち核酸配列の変化)から生じ、一般的にはその構造または機能は、変更されてもされなくてもよい、変更されたmRNAまたはポリペプチドを生じる。任意の所定の遺伝子は、変種型を有さないか、1つもしくは多くを有する。変種を生じる共通の変異性変化は、一般に核酸の欠失、付加、または置換に起因する。これらの変化の種類は各々、単独でまたは他のものと組合せて、ならびに所定の配列で1回または複数回の度合いで生じることができる。
【0122】
生物学的活性を変更する目的のために、機能(例えばNIPA-1機能)を有するペプチドの構造を修飾することが可能であること(例えば変更されたNIPA-1機能)が企図される。このような修飾されたペプチドは、本明細書に定義されるNIPA-1ペプチド活性を有するペプチドの機能的同等物であると考えられる。置換、欠失、または付加などにより、このポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が変更されるように、修飾されたペプチドを作製することができる。特に好ましい態様において、これらの修飾は、修飾されたNIPA-1遺伝子の生物学的活性を著しく低下することはない。すなわち構築体「X」は、構造よりもむしろ、機能的に定義される本発明の修飾された、または変種のNIPA-1属の一員であるかどうかを決定するために、評価することができる。好ましい態様において、変種NIPA-1ポリペプチドの活性は、本明細書に説明される方法(例えば、トランスジェニック動物の産生またはシグナリングアッセイの使用)により評価される。
【0123】
更に先に説明したように、NIPA-1遺伝子の変種型は、本明細書においてより詳細に説明されるそのようなペプチドおよびDNA分子と同等であることも企図される。例えば、ロイシンとイソロイシンもしくはバリンとの、アスパラギン酸とグルタミン酸との、トレオニンとセリンとの独立した交換、またはあるアミノ酸の構造的に関連したアミノ酸との同様の交換(すなわち保存的変異)は、得られる分子の生物学的活性に大きく影響しないことが企図される。従って本発明のいくつかの態様は、保存的交換を含む本明細書に開示されるNIPA-1の変種を提供する。保存的交換は、それらの側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で生じるものである。遺伝的にコードされたアミノ酸は、4種のファミリーに分類される:(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2)塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン);(3)非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);ならびに、(4)無電荷極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時にはまとめて芳香族アミノ酸として分類される。同様に、アミノ酸のレパートリーは、(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸);(2)塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン);(3)脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン)、セリンとトレオニンは任意に脂肪族-ヒドロキシルとして群別される;(4)芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);(5)アミド(アスパラギン、グルタミン);ならびに、(6)イオウ含有(システインおよびメチオニン)に群別される(例えば、Stryer ed., Biochemistry, pg.17-21, 2nd ed, WH Freeman and Co., 1981)。ペプチドのアミノ酸配列の変化が機能的ポリペプチドを生じるかどうかは、変種ペプチドの、野生型タンパク質に類似した様式で機能する能力を評価することにより、容易に決定することができる。1つよりも多い交換を有するペプチドは、同様の様式で容易に試験することができる。
【0124】
変種は稀に、「非保存的」変化(例えばグリシンとトリプトファンとの交換)を含む。同様の小さな多様性は、アミノ酸欠失もしくは挿入、またはそれら両方を含むことができる。どのアミノ酸残基が生物学的活性を損なうことなく置換、挿入、または欠失され得るかを決定するための指標は、コンピュータプログラム(例えば、LASERGENEソフトウェア、DNASTAR Inc., Madison, Wis)を使用して見つけることができる。
【0125】
より詳細に以下に説明されるように、変種は、以下により詳細に説明された変種のコンビナトリアルライブラリーを作製するための定方向進化、または他の技術などの方法により作製することができる。更に本発明の別の態様において、本発明のヌクレオチド配列は、NIPA-1コード配列を変更するために操作されてもよく、これは遺伝子産物のクローニング、プロセッシング、局在化、分泌、および/または発現を修飾する変更を含むが、これらに限定されるものではない。例えば変異は、当該技術分野において周知の技術を用いて導入されてもよい(例えば、新規制限部位を挿入するための位置指定変異誘発、グリコシル化パターンの変更、またはコドン優先性の変化など)。
【0126】
【表1】
【0127】
II. NIPA-1ポリペプチド
別の態様において本発明は、NIPA-1ポリペプチド配列をコードするNIPA-1ポリヌクレオチド配列(例えば、SEQ ID NO:3および4のポリペプチド)を提供する。本発明の他の態様は、これらのNIPA-1タンパク質の断片、融合タンパク質、または機能的同等物を提供する。いくつかの態様において本発明は、NIPA-1ポリペプチドの変異体を提供する。更に本発明の別の態様において、NIPA-1変種、相同体、および変異体に対応する核酸配列を使用し、適当な宿主細胞において、NIPA-1変種、相同体、および変異体の発現を指示する組換えDNA分子を作製することができる。本発明のいくつかの態様において、ポリペプチドは、自然に精製された産物であり、別の態様において、化学合成的手法の産物であり、更に別の態様において、原核または真核宿主(例えば、培養物中の細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物の細胞による)を用いる組換え技術により作製することができる。いくつかの態様において、組換え体の作製過程において使用される宿主に応じて、本発明のポリペプチドは、グリコシル化されるか、またはグリコシル化されないでよい。別の態様において、本発明のポリペプチドは、最初のメチオニンアミノ酸残基を含むこともできる。
【0128】
本発明の1つの態様において、遺伝暗号の本質的な縮重のために、実質的に同じまたは機能的に同等なアミノ酸配列をコードするSEQ ID NO:1および2のポリヌクレオチド配列以外のDNA配列を用いて、NIPA-1をクローニングおよび発現することができる。一般にこのようなポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1および2と、前述のような高から中ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。当業者には理解されるように、天然に生じないコドンを有するNIPA-1をコードするヌクレオチド配列を作製することは有利である。従っていくつかの好ましい態様においては、例えばNIPA-1の発現度合いを増大するかまたは天然由来の配列から生じる転写産物よりもより長い半減期のような所望の特性を有する組換えRNA転写産物を作製するために、特定の原核または真核宿主により好ましいコドン(Murray et al., Nucl. Acids Res., 17[1989])が選択される。
【0129】
1. NIPA-1作製のためのベクター
本発明のポリヌクレオチドは、組換え技術によりポリペプチドを作製するために使用することができる。従って、例えばポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発現するために、様々な発現ベクターのいずれか1つに含まれてよい。本発明のいくつかの態様において、ベクターは、染色体性、非染色体性および合成のDNA配列(例えば、SV40誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA;バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAの組合せに由来するベクター、ならびにワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルスおよび仮性狂犬病などのウイルスDNA)を含むがこれらに限定されない。宿主において複製可能かつ生存可能である限りは、任意のベクターを使用できることが企図される。
【0130】
特に本発明のいくつかの態様は、先に広範に説明された配列(例えばSEQ ID NO:1および2)を1つまたは複数含む組換え構築体を提供する。本発明のいくつかの態様において、これらの構築体は、本発明の配列がフォワードまたはリバースの方向で挿入されている、プラスミドまたはウイルスベクターなどのベクターを含む。更に別の態様において、異種構造配列(例えばSEQ ID NO:1および2)は、翻訳開始配列および終結配列と共に適当な時期(phase)に集合する。本発明の好ましい態様において、適当なDNA配列は、様々な手法を用いてベクターへ挿入される。一般にDNA配列は、当該技術分野において公知の手法により、適当な制限エンドヌクレアーゼ部位へ挿入される。
【0131】
多数の適当なベクターが当業者に公知であり、市販されている。このようなベクターは以下のベクターを含むが、これらに限定されない:1)細菌−pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen)、pBS、pD10、ファージスクリプト、psiX174、pbluescript SK、pBSKS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene);ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia);2)真核細胞−pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、PXT1、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia);ならびに、3)バキュロウイルス−pPbacおよびpMbac(Stratagene)。他のプラスミドまたはベクターが宿主において複製可能かつ生存可能である限りは、それらを使用することができる。本発明のいくつかの好ましい態様において、哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適当なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに同じく必要ならばリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシングドナーおよびアクセプター部位、転写終結配列、ならびに5'フランキング非転写配列を含む。別の態様において、SV40スプライス由来のDNA配列、およびポリアデニル化部位を用い、必要な非転写遺伝子エレメントを提供することができる。
【0132】
本発明のある態様において、発現ベクター中のDNA配列は、mRNA合成を指示するために、適当な発現制御配列(プロモーター)へ機能的に連結される。本発明において有用なプロモーターは、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lacまたはtrp、ファージλPLおよびPR、T3およびT7プロモーター、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)極初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、およびマウスメタロチオネイン-Iプロモーター、ならびに原核もしくは真核細胞またはそれらのウイルスにおいて遺伝子の発現を制御することが公知の他のプロモーターを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の別の態様において、組換え発現ベクターは、宿主細胞の形質転換を可能にする複製起点および選択可能マーカーを含む(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素または真核細胞培養のためのネオマイシン耐性、または大腸菌におけるテトラサイクリンもしくはアンピシリン耐性)。
【0133】
本発明のいくつかの態様において、より高等な真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列のベクターへの挿入により増強される。エンハンサーは、DNAのシス作用エレメントであり、通常約10〜300bpであり、プロモーターに作用してその転写を増大させる。本発明において有用なエンハンサーは、複製起点の後期側(late side)100〜270bp上のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0134】
他の態様において、発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写終結配列も含む。更に本発明の別の態様において、ベクターは、発現を増幅するための適当な配列も含む。
【0135】
2. NIPA-1ポリペプチド作製のための宿主細胞
更なる態様において、本発明は、前述の構築体を含む宿主細胞を提供する。本発明のいくつかの態様において、宿主細胞は、高等真核細胞(例えば、哺乳動物または昆虫細胞)である。本発明の別の態様において、宿主細胞は、下等真核細胞(例えば酵母細胞)である。更に本発明の別の態様において、宿主細胞は、原核細胞(例えば細菌細胞)であることができる。宿主細胞の具体例は、大腸菌(Escherichia coli)、鼠チフス菌(Salmonella typhimurium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ならびにシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、およびブドウ球菌属(Staphylococcus)の様々な種に加え、酵母菌(Saccharomycees cerivisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomycees pombe)、ショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞、ヨトウガ(Spodoptera)Sf9細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル腎線維芽細胞COS-7株(Gluzman, Cell, 23:175[1981])、C127、3T3、293、293T、HeLaおよびBHK細胞株を含むが、これらに限定されるものではない。
【0136】
宿主細胞における構築体は、組換え配列によりコードされた遺伝子産物を作製するために、従来の方法で使用することができる。いくつかの態様において、構築体の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、または電気穿孔により実現することができる(例えば, Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, [1986]参照)。あるいは本発明のいくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、従来のペプチド合成装置によって合成により作製することができる。
【0137】
哺乳動物細胞、酵母、細菌、または他の細胞において、適当なプロモーター制御下でタンパク質を発現させることができる。本発明のDNA構築体由来のRNAを使用し、このようなタンパク質を作製するために、無細胞翻訳システムも使用することができる。原核および真核宿主における使用のための適当なクローニングおよび発現ベクターは、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., [1989]に記載されている。
【0138】
本発明のいくつかの態様において、適当な宿主株の形質転換および適当な細胞密度への宿主株の増殖後に、選択されたプロモーターが適当な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘導)で誘導され、細胞が更なる期間培養される。本発明の別の態様において、細胞は、典型的には遠心分離により回収され、物理的または化学的手段により破壊され、得られた粗抽出物は更なる精製のために維持される。更に本発明の別の態様において、タンパク質の発現に使用される微生物細胞は、凍結−解凍サイクル、音波処理、機械的破壊、または細胞溶解物質の使用を含む、簡便な方法により破壊することができる。
【0139】
3. NIPA-1ポリペプチドの精製
本発明は、NIPA-1ポリペプチドを組換え細胞培養物から回収および精製する方法も提供し、これは硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の別の態様において、成熟タンパク質の立体配置を完成させるために、必要ならば、タンパク質の再折りたたみ工程を使用することができる。更に本発明の別の態様において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終精製工程に使用することができる。
【0140】
本発明は更に、本発明のポリペプチドの精製が可能なマーカー配列にインフレームで融合された、NIPA-1遺伝子のコード配列(例えばSEQ ID NO:1および2)を有するポリヌクレオチドを提供する。マーカー配列の非限定的な例は、ベクター、好ましくはpQE-9ベクターにより供給されるヘキサヒスチジンタグであり、細菌宿主の場合このマーカーに融合されたポリペプチドの精製を提供するか、例えばこのマーカー配列は、哺乳動物宿主(例えばCOS-7細胞)が使用される場合は、ヘマグルチニン(HA)タグであることができる。HAタグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質由来のエピトープに相当する(Wilson et al., Cell, 37:767[1984])。
【0141】
4. NIPA-1ポリペプチドの切断型変異体
加えて本発明は、NIPA-1ポリペプチド断片(すなわち切断型変異体)を提供する。本発明のいくつかの態様において、NIPA-1タンパク質の一部の発現が望ましい場合、開始コドン(ATG)を、発現されるべき所望の配列を含むオリゴヌクレオチド断片へ追加することが必要である。N末端位置のメチオニンは、酵素メチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)の使用により、酵素的に切断することができることは、当該技術分野において周知である。MAPは、大腸菌(Ben-Bassat et al., J. Bacteriol., 169:751[1987])および鼠チフス菌からクローニングされており、そのインビトロ活性が、組換えタンパク質について明らかにされている(Miller et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:2718[1990])。従って所望であれば、N末端メチオニンの除去は、このような組換えポリペプチドをMAPを生成する宿主(例えば大腸菌またはCM89または酵母菌)において発現することによりインビボにおいて、または精製MAPの使用によりインビトロにおいてのいずれかで実現することができる。
【0142】
5. NIPA-1を含む融合タンパク質
本発明は、本発明のNIPA-1ポリペプチドの全てまたは一部を取込んでいる融合タンパク質も提供する。従って本発明のいくつかの態様において、ポリペプチドのコード配列は、異なるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む融合遺伝子の一部として取込むことができる。この種の発現システムは、NIPA-1タンパク質の免疫原性断片を作製することが望ましい条件下での用途を認めることが企図される。本発明のいくつかの態様において、ロタウイルスのVP6キャプシドタンパク質が、単量体型またはウイルス粒子型のいずれかで、NIPA-1ポリペプチドの一部の免疫学的担体タンパク質として使用される。本発明の別の態様において、それに対して抗体が生じるNIPA-1ポリペプチドの一部に相当する核酸配列を、後期ワクシニアウイルス構造タンパク質のためのコード配列を含む融合遺伝子構築体へ取込み、ビリオン部分としてNIPA-1の一部を含む融合タンパク質を発現する組換えウイルスセットを作製することができる。B型肝炎表面抗原融合タンパク質を利用する免疫原性融合タンパク質の使用により、組換えB型肝炎ビリオンは更にこの役割で使用することができることが明らかにされている。同様に本発明の別の態様において、NIPA-1ポリペプチドの一部およびポリオウイルスキャプシドタンパク質を含む融合タンパク質をコードするキメラ構築体を作製し、ポリペプチド抗原セットの免疫原性を増強することができる(例えば、欧州特許公開第025949号;および、Evans et al., Nature, 339:385[1989];Huang et al., J. Virol., 62:3855[1988];および、Schlienger et al., J. Virol., 66:2[1992]参照)。
【0143】
更に本発明の他の態様において、ペプチドに基づく免疫処置のために複数の抗原ペプチドシステムを使用することができる。このシステムにおいて、NIPA-1の所望の部分は、分枝したオリゴマーのリシンコアへのペプチドの有機化学合成から直接得られる(例えば、Posnett et al., J. Biol. Chem., 263:1719[1988] ;および、Nardelli et al., J. Immunol., 148:914[1992]参照)。本発明の別の態様において、NIPA-1タンパク質の抗原決定基も、細菌細胞により発現および提示することができる。
【0144】
免疫原性を増強するための融合タンパク質の利用に加え、融合タンパク質は、本発明のNIPA-1タンパク質などの、タンパク質の発現を促進できることも広く理解されている。従って本発明のいくつかの態様において、NIPA-1ポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(すなわち、GST融合タンパク質)として作製することができる。このようなGST融合タンパク質は、例えばグルタチオンで誘導体化されたマトリクスの使用により、NIPA-1ポリペプチドの容易な精製を可能にすることが企図される(例えば、Ausabel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY[1991]参照)。本発明の別の態様において、NIPA-1ポリペプチドの望ましい部分のN末端に、ポリ(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列のような精製リーダー配列をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を使用するアフィニティークロマトグラフィーによる、発現されたNIPA-1融合タンパク質の精製が可能である。更に本発明の別の態様において、この精製リーダー配列は、次にエンテロキナーゼによる処理により除去することができる(例えば、Hochuli et al., J. Chromatogr., 411:177[1987];および、Janknecht et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8972参照)。
【0145】
融合遺伝子を作製する技術は周知である。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の結合は、ライゲーションのための平滑末端またはスタッガー末端、適当な末端を提供するための制限酵素消化、適当な粘着末端の充填(filling-in)、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを利用する従来の技術に従い行われる。本発明の別の態様において、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術により合成することができる。あるいは、本発明の別の態様において、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的な突き出しを生じるアンカープライマーを用いて実行することができ、これは次にアニーリングされ、キメラ遺伝子配列を生じる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、前記参照)。
【0146】
6. NIPA-1の変種
更に本発明の別の態様は、NIPA-1ポリペプチドの変異体または変種型(すなわちムテインを提供する。治療効果および予防効果、タンパク質の無力化、または安定性(例えば、エクスビボ貯蔵寿命、および/またはインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)の増強を目的として、本発明のNIPA-1ポリペプチドの活性を有するペプチドの構造を修飾することが可能である。このような修飾されたペプチドは、本明細書において定義された対象NIPA-1タンパク質の活性を有するペプチドの機能的同等物であるとみなされる。アミノ酸の置換、欠失、または付加などによりアミノ酸配列が変更された修飾されたペプチドを作製することができる。
【0147】
更に先に説明されたように、対象NIPA-1タンパク質の変種型(例えば、変異体または多型の配列)は、より詳細に説明される、そのようなペプチドおよびDNA分子と同等物であることも企図される。例えば先に説明したように、本発明は、保存的または非保存的アミノ酸置換を含む、変異体および変種タンパク質を包含する。
【0148】
本発明は更に、本NIPA-1タンパク質のコンビナトリアルな変異体に加え、切断型変異体のセットを作製する方法を企図しており、特に神経障害(例えばHSP)または神経障害耐性に関連している可能性のある変種配列(すなわち、変異体または多型の配列)を同定するために有用である。このようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば作用薬または拮抗薬として作用することができる、あるいは、全体で新規活性を有する新規NIPA-1変種を作製することである。
【0149】
従って本発明のいくつかの態様において、NIPA-1変種は、変更された(例えば、増加または減少した)生物学的活性を提供するために、本方法により操作される。本発明の別の態様において、天然のNIPA-1に対して選択的効能を有するコンビナトリアルに誘導された変種が作製される。このようなタンパク質は、組換えDNA構築体から発現される場合、遺伝子治療プロトコールにおいて使用することができる。
【0150】
更に本発明の別の態様は、対応する野生型タンパク質とは劇的に異なる細胞内半減期を有するNIPA-1変種を提供する。例えば変更されたタンパク質は、NIPA-1ポリペプチドの破壊、そうでなければ失活を生じるタンパク質分解性の破壊または他の細胞プロセスに対し、より安定または不安定にすることができる。このような変種、およびそれらをコードする遺伝子は、タンパク質の半減期を変調することにより、NIPA-1の発現場所を変更するために利用することができる。例えば短い半減期は、より一過性のNIPA-1生物学的作用を生じ、誘導性発現システムの一部である場合、細胞内のNIPA-1レベルのより厳密な制御を可能にする。前述のように、このようなタンパク質およびそれらの組換え核酸構築体は、遺伝子治療プロトコールにおいて使用することができる。
【0151】
更に本発明の別の態様において、NIPA-1変種は、細胞機能を調節する、対応する野生型タンパク質の能力と干渉することができる点で、拮抗薬として作用するためにコンビナトリアルなアプローチにより作製することができる。
【0152】
本発明のコンビナトリアルな変異誘発法のいくつかの態様において、NIPA-1相同体、変種、または他の関連タンパク質集団のアミノ酸配列が、好ましくは潜在的に最高の相同性を促進するように、整列される。このような変種の集団は、例えば1つまたは複数の種に由来するNIPA-1相同体、または同じ種由来であるが変異または多型のために異なるNIPA-1変種を含む。整列させた配列の各位置に現れるアミノ酸は、コンビナトリアル配列の縮重セットを生じるように選択される。
【0153】
本発明の好ましい態様において、コンビナトリアルNIPA-1ライブラリーは、各々が潜在的NIPA-1タンパク質配列の少なくとも一部を含む、ポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーにより作製される。例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物は、酵素により遺伝子配列へ連結され、その結果潜在的NIPA-1配列の縮重セットは、個々のポリペプチドとして、あるいはその中にNIPA-1配列のセットを含むより大きい融合タンパク質のセット(例えばファージディスプレイのため)として、発現可能になる。
【0154】
潜在的NIPA-1相同体および変種のライブラリーを、縮重オリゴヌクレオチド配列から作製する多くの方法がある。いくつかの態様において、縮重遺伝子配列の化学合成が、自動DNA合成装置において実行され、合成遺伝子は発現に適した遺伝子に連結される。遺伝子の縮重セットの目的は、1つの混合物において、潜在的NIPA-1配列の望ましいセットをコードする配列全てを提供することである。縮重オリゴヌクレオチドの合成は当該技術分野において周知である(例えば、Narang, Tetrahedron Lett., 39:39[1983];Itakura et al., Recombinant DNA, Walton (ed.), Proceedings of the 3rd Cleveland Symposium on Macromolecules, Elsevier, Amsterdam, pp273-289[1981];Itakura et al., Annu. Rev. Biochem. , 53:323[1984];Itakura et al., Science, 198:1056[1984];Ike et al., Nucl. Acid Res., 11:477[1983]参照)。このような技術は、他のタンパク質の定方向進化において使用される(例えば、Scott et al., Science, 249:386[1980];Roberts et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:2429[1992];Devlin et al., Science, 249:404[1990];Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378[1990];これらは各々本明細書に参照として組入れられる;更に、米国特許第5,223,409号、第5,198,346号、および第5,096,815号を参照;これらは各々本明細書に参照として組入れられる)。
【0155】
本発明のNIPA-1核酸(例えばSEQ ID NO:1および2、ならびにそれらの断片および変種)は、定方向進化の出発核酸として利用することができる。これらの技術は、増加または減少した生物学的活性のような、望ましい特性を有するNIPA-1変種を開発するために利用できることが企図される。
【0156】
いくつかの態様において、ランダム変異誘発(例えば、所定のコード配列へランダム変異を導入するための、誤差傾向のある(error-prone)PCRの利用により)により人工的進化が行われる。この方法は、変異頻度の微細な調節を必要とする。通則として、有益な変異は稀であり、有害な変異が一般的である。このことは、有害な変異と有益な変異の組合せが、不活性酵素を生じることが多いことが理由である。標的化された遺伝子の塩基置換の理想的な数は、通常1.5〜5である(Moore and Arnold, Nat. Biotech., 14:458[1996];Leung et al., Technique, 1:11[1989];Eckert and Kunkel, PCR Methods Appl., 1:17-24[1991];Caldwell and Joyce, PCR Methods Appl., 2:28[1992];および、Zhao and Arnold, Nuc. Acids. Res., 25:1307[1997])。変異誘発後、得られるクローンは、望ましい活性(例えばNIPA-1活性に関するスクリーニング)について選択される。望ましい特性を有する酵素の開発には、変異誘発および選択の連続するラウンドが必要であることが多い。有用な変異のみが、変異誘発の次のラウンドに持ち越されることに注目されたい。
【0157】
本発明の別の態様において、本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子シャッフリングまたはセクシャルPCR手法において使用される(例えば、Smith, Nature, 370:324[1994];米国特許第5,837,458号;第5,830,721号;第5,811,238号;第5,733,731号;全て本明細書に参照として組入れられる)。遺伝子シャッフリングは、いくつかの変異体DNAのランダム断片化、それに続くPCRによる完全長分子への再集合に関連している。様々な遺伝子シャッフリング法の例は、DNase処理後の集合、スタッガー伸長プロセス(STEP)、およびランダムプライミング-インビトロ組換えを含むが、これらに限定されるものではない。DNase媒介型法において、陽性変異体のプールから分離されたDNAセグメントは、DNaseIによりランダム断片へと切断され、プライマーを添加せずに複数ラウンドのPCRが施される。ランダム断片の長さは、PCRサイクルが進むにつれ未切断セグメントのそれに近づき、混合される異なるクローンにおける変異の存在につながり、これは、得られる配列の一部では蓄積する。選択およびシャッフリングの複数サイクルは、いくつかの酵素の機能増強につながる(Stemmer, Nature, 370:398[1994];Stemmer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:10747[1994];Crameri et al., Nat. Biotech., 14:315[1996];Zhang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:4504[1997];および、Crameri et al., Nat. Biotech., 15:436[1997])。定方向進化により作製された変種は、本明細書に記載される方法により、NIPA-1活性についてスクリーニングすることができる。
【0158】
点変異により作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物のスクリーニング、およびある特性を持つ遺伝子産物に関するcDNAライブラリーのスクリーニングに関する広範な技術が、当該技術分野において公知である。このような技術は一般に、NIPA-1相同体または変種のコンビナトリアル変異誘発または組換えにより作製された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適合可能である。大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニングに最も広範に使用される技術は、典型的には遺伝子ライブラリーの複製可能な発現ベクターへのクローニング、得られるベクターのライブラリーによる適当な細胞の形質転換、および所望の活性の検出がその産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を促進するような条件下での、コンビナトリアル遺伝子の発現を含む。
【0159】
7. NIPA-1ポリペプチドの化学合成
本発明の別の態様において、NIPA-1のコード配列は、当該技術分野において周知の化学的方法を用い、全体または一部が合成される(例えば、Caruthers et al., Nucl. Acids Res. Symp. Ser., 7:215[1980];Crea and Horn, Nucl. Acids Res., 9:2331[1980];Matteucci and Caruthers, Tetrahedron Lett., 21:719[1980];および、Chow and Kempe, Nucl. Acids Res., 9:2807[1981]参照)。本発明の別の態様において、タンパク質それ自身は、NIPA-1アミノ酸配列全体またはそれらの一部のいずれかを合成するように、化学的方法を用いて作製される。例えばペプチドは、固相技術により合成され、樹脂から切断され、および分取高速液体クロマトグラフィーにより精製されてもよい(例えば、Creighton, Proteins Structures And Molecular Principles, W H Freeman and Co, New York, N.Y., [1983]参照)。本発明の別の態様において、合成ペプチド組成物は、アミノ酸分析または配列決定により確認される(例えば、Creighton、前記)。
【0160】
ペプチドの直接合成は、様々な固相技術を用いて行うことができ(Roberge et al., Science, 269:202[1995])、例えばABI 431Aペプチドシンセサイザー(Perkin Elmer)を製造業者から提供された指示に従い使用して、自動合成を行うことができる。加えて変種ポリペプチドを作製するために、NIPA-1ポリペプチドのアミノ酸配列、またはその任意の一部は、直接合成中に変更するか、または化学的方法を用いて多の配列と組み合わせることができる。
【0161】
III. NIPA-1アレルの検出
いくつかの態様において、本発明は、野生型または変種(例えば変異体または多型)NIPA-1核酸またはポリペプチドの存在を検出する方法を提供する。変異体NIPA-1ポリペプチドの検出は、疾患(例えば、炎症疾患)の診断において利用できる。
【0162】
A. 変種NIPA-1アレルの検出
いくつかの態様において、本発明は、患者の神経障害(例えば、遺伝性痙性対麻痺)の易罹患性を増大させるNIPA-1アレルを提供する。変更された表現型(例えば痙性対麻痺疾患の増加または痙性対麻痺疾患に対する抵抗性)を生じる任意の変異が、本発明の範囲内である。
【0163】
従って本発明は、個体が変種NIPA-1アレルを有するかどうかを直接または間接的に決定することにより、患者が、神経障害(例えばADHSP)への増大した易罹患性を有するかどうかを決定する方法を提供する。別の態様において、本発明は、1つまたは複数のNIPA-1変種アレルの存在または非存在を基に、個体に痙性対麻痺疾患の増大したリスクの予後判定を提供する方法を提供する。
【0164】
多くの方法が、変種(例えば変異体または多型)核酸またはポリペプチド配列の分析に利用可能である。核酸分析により変種(例えば多型または変異)を検出するアッセイは、直接配列決定アッセイ、断片多型アッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイ、およびコンピュータに基づくデータ解析を含むがこれらに限定されないいくつかのカテゴリーに収まる。これらのアッセイの複数の変形を実行するためのプロトコールおよび市販のキットまたはサービスが利用可能である。いくつかの態様において、アッセイは、組合せまたは混合(hybrid)(例えば、いくつかのアッセイの異なる試薬または技術を組合せて、1つのアッセイを生じる)で行われる。下記の例示的アッセイが、本発明において有用である:直接配列決定アッセイ、PCRアッセイ、dHPLCによる変異分析(例えばTransgenomic, Omaha, NEまたはVarian, Palo Alto, CAから入手可能)、断片長多型アッセイ(例えば、RFLPまたはCFLP(例えば米国特許第5,843,654号;第5,843,669号;第5,719,208号;および、第5,888,780号参照;各々本明細書に参照として組入れられる))、ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ハイブリダイゼーションの直接検出、DNAチップアッセイを用いるハイブリダイゼーションの検出(例えば、米国特許第6,045,996号;第5,925,525号;第5,858,659号;第6,017,696号;第6,068,818号;第6,051,380号;第6,001,311号;第5,985,551号;第5,474,796号;PCT国際公開公報第99/67641号および第00/39587号、各々本明細書に参照として組入れられるものを参照)、ハイブリダイゼーションの酵素的検出(例えば、米国特許第5,846,717号、第6,090,543号;第6,001,567号;第5,985,557号;第5,994,069号;第5,962,233号;第5,538,848号;第5,952,174号、および第5,919,626号参照、各々本明細書に参照として組入れられる))、直接または間接的に検出された多型(例えば、同定されるべき多型により連鎖不均衡である配列(他の多型)の検出;例えばSPG-6遺伝子座の他の配列が使用される;この方法は米国特許第5,612,179号に開示されている(これは本明細書に参照として組入れられる))、ならびに質量分析。
【0165】
加えて、変種NIPA-1タンパク質の検出アッセイは、本発明(例えば、無細胞翻訳法、例えば米国特許第6,303,337号参照、これは本明細書に参照として組入れられる)および抗体結合アッセイにおいて利用できる。変異体 対 野生型タンパク質を特異的に認識する抗体の産生が、以下に考察される。
【0166】
B. 神経障害のリスクを分析するためのキット
本発明は、個体がNIPA-1の野生型または変種(例えば変異体または多型性)アレルまたはポリペプチドを含むかどうかを決定するためのキットも提供する。いくつかの態様において、キットは、被検体が神経障害(例えばHSP)を発症するリスクがあるかどうかの決定において有用である。診断キットは、様々な方法で作製される。いくつかの態様において、キットは、変異体NIPA-1アレルまたはタンパク質を特異的に検出する少なくとも1つの試薬を備える。好ましい態様において、この試薬は、変異を含む核酸にハイブリダイズするが、変異を含まない核酸には結合しない核酸である。別の態様においてこれらの試薬は、変位を含むDNA領域を増幅するためのプライマーである。更に別の態様において、試薬は、野生型または変異体NIPA-1タンパク質のいずれかに優先的に結合する抗体である。
【0167】
いくつかの態様において、キットは、被検体が神経障害(例えばADHSP)のリスクがあるかどうかを決定するための説明書を備える。好ましい態様において、この説明書は、痙性対麻痺疾患発症のリスクは、被検体における変異体NIPA-1アレルの存在または非存在の検出により決定されることを明記し、ここで変異体アレルを有する被検体は、痙性対麻痺疾患発症のリスクがより大きい。
【0168】
NIPA-1遺伝子における疾患関連変異の存在または非存在は、治療上または他の医学的決断において使用することができる。例えば痙性対麻痺疾患の家族歴のある夫婦は、子供を体外受精で妊娠し、着床前に遺伝子スクリーニングすることを選択することができる。この場合、受精した胚は、NIPA-1遺伝子の変異体(例えば疾患関連した)アレルについてスクリーニングされ、野生型アレルの胚のみが子宮に着床される。
【0169】
別の態様において、子宮内スクリーニングが発達中の胎児に行われる(例えば羊水穿刺または絨毛膜絨毛スクリーニング)。更に別の態様において、新生児または非常に幼い幼児の遺伝子スクリーニングが行われる。痙性対麻痺疾患との関連が公知のNIPA-1アレルの早期検出は、早期の介入を可能にする(例えば遺伝子治療または薬学的治療)。
【0170】
いくつかの態様において、キットは、緩衝剤、核酸安定化試薬、タンパク質安定化試薬、およびシグナル産生システム(例えばFretシステムのような蛍光発生システム)などの、補助的試薬を備える。この試験キットは、適当な方法で包装することができ、必要ならば試験の実行に関する説明書と共に、典型的には1つの容器または様々な容器内にこれらの構成要素が包装される。いくつかの態様においてキットは、陽性対照試料も備えることが好ましい。
【0171】
C. バイオインフォマティクス
いくつかの態様において、本発明は、NIPA-1遺伝子の1つまたは複数の変種アレルの存在を基に、神経障害(例えばHSP)発症の個体リスクを決定する方法を提供する。いくつかの態様において、変種データの解析は、コンピュータ上に保存された情報(例えばデータベース内)を用いてコンピュータ処理される。例えばいくつかの態様において、本発明は、マルチプラットフォーム式オブジェクト指向プログラミング言語で走らせる複数のコンピュータで構成される、バイオインフォマティクス検索システムを提供する(例えば米国特許第6,125,383号参照;これは本明細書に参照として組入れられる)。いくつかの態様において、コンピュータのうち1台は、遺伝子データ(例えば、所定の多型に関連する痙性対麻痺疾患と接触するリスク、および配列)を保存する。いくつかの態様において、コンピュータのうち1台は、アプリケーションプログラム(例えば、検出アッセイの結果を解析するため)を保存する。その後結果はユーザーに送信される(例えば、コンピュータのうち1台を介して、またはインターネット経由で)。
【0172】
例えばいくつかの態様において、コンピュータに基づく解析プログラムを使用し、検出アッセイにより作製された生データ(例えば、所定のNIPA-1アレルまたはポリペプチドの存在、非存在、または量)を、臨床医のための予測値のデータへと翻訳する。臨床医は、適当な手段を用いて、この予測データにアクセスすることができる。従っていくつかの好ましい態様において、本発明は、遺伝子または分子生物学においておそらく経験の浅い臨床医が生データを理解する必要がないという更なる恩恵を提供する。データは、その最も有用な形で、臨床医に直接提示される。その結果臨床医は、被検体の治療を最適化するために、情報を即座に利用することができる。
【0173】
本発明は、アッセイを実行する実験室、情報提供者、医療関係者、および被検体へ、またはそこから、情報を受取り、処理し、および伝達することが可能である任意の方法が企図される。例えば本発明のいくつかの態様において、試料(例えば生検または血清または尿の試料)が被検体から採取され、世界中の任意の地域(例えば、被検体が居住する国またはその情報が最終的に利用される国とは異なる国)に位置するプロファイリングサービス(例えば、医療施設の臨床検査室、ゲノムプロファイリング会社など)へ提出され、生データが作製される。試料が組織または他の生体試料を含む場合、被検体は医療施設に来院して、試料採取を行い、プロファイリングセンターに送付するか、被検体が自分で試料を採取し(例えば尿試料)、これを直接プロファイリングセンターに送付することができる。試料が予め決定された生物学的情報を含む場合、この情報は、被検体によりプロファイリングサービスに直接送付されてもよい(例えば、情報を含む情報カードは、コンピュータにより走査され、そのデータは、電気通信システムを用いてプロファイリングセンターのコンピュータへ伝送される)。プロファイリングサービスにより一旦受け取られた試料は処理され、被検体に関する望ましい診断または予後判定の情報に特異的なプロファイルが作製される(すなわち、野生型または変異体NIPA-1遺伝子またはポリペプチドの存在)。
【0174】
その後このプロファイルデータは、治療を担当する臨床医による解釈に適したフォーマットに変換される。例えば生データを提供するのではなく、変換されたフォーマットは、被検体に関する診断またはリスク評価(例えば、痙性対麻痺疾患発症の尤度)を、特定の治療選択肢の推奨と共に提示する。このデータは、適当な方法で臨床医に提示される。例えばいくつかの態様において、プロファイリングサービスによって、臨床医のために印刷される(例えば治療現場で)またはコンピュータのモニタ上で臨床医に提示される報告書を作成する。
【0175】
いくつかの態様において、この情報は、治療現場または地域の施設において、最初に解析される。その後生データは、更なる解析および/または生データの臨床医もしくは患者に有用な情報への変換のために中央処理施設に送付される。中央処理施設は、プライバシー(全てのデータは、同一のセキュリティプロトコールを持つ中央施設に保存される)、データ解析の速度、および均一性において利点をもたらす。中央処理施設は、被検体の治療後のデータの行方(fate)を管理することができる。中央施設は、例えば電気通信システムを用いて、データを臨床医、被検体、または研究者に提供することができる。
【0176】
いくつかの態様において、被検体は電気通信システムを用いて、データへ直接アクセスすることができる。被検体は結果を基に、更なる介入またはカウンセリングを選択してもよい。いくつかの態様において、データは研究用途に使用される。例えばデータは、所定のNIPA-1アレルの痙性対麻痺疾患との関係を更に最適化するために使用される。
【0177】
IV. NIPA-1抗体の作製
本発明は、単離された抗体または抗体断片(例えばFAB断片)を提供する。本発明のNIPA-1タンパク質(例えば野生型または変異体)の検出を可能にする抗体を作製することができる。これらの抗体は、様々な免疫原を用いて調製することができる。1つの態様において、免疫原は、ヒトNIPA-1を認識する抗体を作製するためのヒトNIPA-1ペプチドである。このような抗体は、タンパク質を認識できる限りは、ポリクローナル性、モノクローナル性、キメラ、1本鎖、Fab断片、Fab発現ライブラリー、または組換え(例えば、キメラ、ヒト化など)の抗体を含むが、これらに限定されるものではない。抗体は、通常の抗体または抗血清調製法に従い、本発明のタンパク質を抗原として用いて作製することができる。
【0178】
当該技術分野において公知の様々な手法を用い、NIPA-1ポリペプチドに対するポリクローナル抗体を作製することができる。抗体を作製するために、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含むが、これらに限定されない様々な宿主動物を、NIPA-1エピトープに対応するペプチドを注射することにより免疫処置することができる。好ましい態様において、ペプチドは、免疫原性の担体(例えば、ジフテリア毒素、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはキーホールリムペットヘモシアニン(KLH))に結合される。フロイント(完全および不完全)アジュバント、無機ゲル(例えば水酸化アルミニウム)、表面活性化物質(例えば、リゾレシチン、プルロニック(Pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルション、キーホールリムペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット-ゲラン杆菌)およびコリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むがこれらに限定されない様々なアジュバントを、宿主種に応じて用いることで免疫応答を増強できる。
【0179】
NIPA-1に対するモノクローナル抗体の調製のために、培養物中の連続する細胞株により抗体分子の作製を提供する技術は、本発明で利用できることが企図される(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY参照)。これらは、KohlerおよびMilsteinにより最初に開発されたハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein, Nature, 256:495-497[1975])に加え、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えばKozbor et al., Immunol. Tod., 4:72[1983]参照)、ならびにヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96[1985])を含むが、これらに限定されるものではない。
【0180】
本発明の追加の態様において、モノクローナル抗体が、PCT/US90/02545に開示されるような技術を用い、無菌の動物において作製される。更にヒト抗体は、ヒトハイブリドーマ(Cote et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:2026-2030[1983])またはヒトB細胞のEBVウイルスによるインビトロ形質転換(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp.77-96[1985])により作製されることが企図される.
【0181】
加えて、1本鎖抗体の作製について記載された技術(米国特許第4,946,778号;本明細書に参照として組入れられる)は、NIPA-1に特異的な1本鎖抗体の作製において利用できることが企図される。本発明の追加の態様は、NIPA-1ポリペプチドに対する所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にするための、Fab発現ライブラリーの構築に関して記載された技術を使用する(Huse et al., Science, 246:1275-1281[1989])。
【0182】
別の態様において本発明は、本発明のタンパク質に対する組換え抗体またはそれらの断片を企図する。組換え抗体は、ヒト化抗体およびキメラ抗体を含むが、これらに限定されるものではない。組換え抗体を作製する方法は、当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第6,180,370号および第6,277,969号、ならびに「Monoclonal Antibodies」、H. Zola, BIOS Scientific Publishers Limited 2000. Springer-Verlay New York, Inc., New York参照;各々本明細書に参照として組入れられる)。
【0183】
抗体断片の作製に適した技術は、抗体分子のイディオタイプ(抗原結合領域)を含む抗体断片の作製において利用できることが企図される。例えばこのような断片は以下を含むが、これらに限定されるものではない:抗体分子のペプシン消化により作製されるF(ab')2断片;F(ab')2断片のジスルフィド橋の還元により作製されるFab'断片、ならびに抗体分子のパパインおよび還元剤による処理により作製されるFab断片。
【0184】
抗体作製において、所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野において公知の技術により実現されることが企図される(例えば、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル拡散沈降反応、immuNIPA-liffusionアッセイ、インサイチューイムノアッセイ(例えば、コロイド状金、酵素、または放射性同位元素標識を使用する)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、赤血球凝集アッセイなど)、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイなど)。
【0185】
1つの態様において、抗体結合は、一次抗体上の標識を検出することにより検出される。別の態様において一次抗体は、二次抗体または試薬の一次抗体への結合を検出することにより検出される。更なる態様において二次抗体が標識される。イムノアッセイにおいて結合を検出する多くの手段が当該技術分野において公知であり、本発明の範囲内である。当該技術分野において周知であるように、免疫原性ペプチドは、任意の免疫処置プロトコールにおいて使用される担体分子を含まずに提供される。例えば、ペプチドがKLHに結合される場合、スクリーニングアッセイにおいてBSAに結合されるか、直接使用されてよい。
【0186】
前記の抗体を、NIPA-1の局在化および構造(例えばウェスタンブロット)、適当な生物学的試料中のそれらのレベル測定などに関連する当該技術分野において公知の方法に使用することができる。抗体を使用し、個体からの生物学的試料中のNIPA-1を検出することができる。生物学的試料は、細胞を含む血液、血清、血漿、間質液、尿、髄液などの生物学的液体であるが、これらに限定されるものではない。
【0187】
生物学的試料は次に、適当な戦略(例えばELISAまたはラジオイムノアッセイ)およびフォーマット(例えばマイクロウェル、ディップスティック(dipstick)(例えば国際公開公報第93/03367号に開示されるものなど)を用い、ヒトNIPA-1の存在について直接試験することができる。あるいは試料中のタンパク質は、サイズにより分離される(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在又は非存在下での、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、およびイムノブロッティング(ウェスタンブロット)により検出されたNIPA-1の存在)。イムノブロッティング技術は一般に、タンパク質のエピトープに対応するペプチドに対して作製された抗体においてより効果的であり、その結果本発明に特に適している。
【0188】
別の方法は、シグナル伝達を変更する物質として抗体を使用する。NIPA-1または細胞内シグナル伝達に関連する他のタンパク質の結合ドメインに結合する特異的抗体を用いて、様々なタンパク質間の相互作用および他のリガンドとの相互作用を阻害することができる。複合体に結合する抗体は、NIPA-1の様々な生理作用および細胞作用につながる、シグナル伝達経路におけるタンパク質複合体の相互作用を治療的に阻害するために使用することもできる。このような抗体は、病態の指標であるNIPA-1の異常な発現、またはタンパク質複合体の異常な形成を測定するために、診断的に使用することもできる。
【0189】
V. NIPA-1を使用する遺伝子治療
本発明は、NIPA-1の発現、作製、または機能を変更するための遺伝子治療に適した方法および組成物も提供する。前述のように、本発明はヒトNIPA-1遺伝子を提供し、NIPA-1遺伝子を他の種から得る方法を提供する。従って以下に記載される方法は一般に、多くの種を超えて適用可能である。いくつかの態様において遺伝子治療は、NIPA-1遺伝子の野生型アレル(すなわち、NIPA-1疾患アレルを含まないアレル(例えば疾患を引き起こす多型または変異が存在しない))を提供することにより行われることが企図される。このような治療が必要な被検体は、先に説明された方法により同定される。いくつかの態様において、変異体タンパク質の発現を低下させる、または防止するために、一過性または安定した治療用核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA)が使用される。
【0190】
インビボまたはエクスビボ標的化および治療手技に通常使用されるウイルスベクターは、DNAに基づくベクターおよびレトロウイルスベクターである。ウイルスベクターを構築および使用する方法は、当該技術分野において公知である(例えば、Miller and Rosman, BioTech., 7:980-990[1992]参照)。好ましくはウイルスベクターは複製欠陥対であり、すなわち標的細胞において自律的に複製することができない。一般に本発明の範囲内で使用される複製欠陥ウイルスベクターのゲノムは、感染細胞におけるウイルスの複製に必要である少なくとも1つの領域を欠いている。これらの領域は、当業者に公知の技術により除去されるか(全体または一部が)、または非機能性とされるかのいずれかである。これらの技術は、必須(複製に)の領域の全体の除去、この領域に対する1つまたは複数の塩基の置換(他の配列による、特に挿入された核酸による)、部分的欠失または付加を含む。このような技術は、遺伝子操作の技術を用いるか変異誘発性物質による処理により、インビトロ(すなわち単離されたDNAに対し)またはインサイチューで行うことができる。
【0191】
好ましくは複製欠陥ウイルスは、ウイルス粒子のキャプシド形成に必要であるそのゲノム配列を保持している。DNAウイルスベクターは、減弱されたまたは不完全なDNAウイルスを含み、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピロマウイルス、エプスタインバーウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)などを含むが、これらに限定されるものではない。全体的またはほぼ全体的にウイルス遺伝子を欠損している欠陥ウイルスが好ましく、その理由は欠陥ウイルスは細胞への導入後感染性ではないからである。欠陥ウイルスベクターの使用は、このベクターが他の細胞を感染するという懸念なしに、特異的な局在化された領域における細胞への投与を可能にする。従って特定の組織を特異的に標的化することができる。特定のベクターの例は、1型欠陥ヘルペスウイルス(HSV1)ベクター(Kaplitt et al., Mol. Cell. Neurosci., 2:320-330[1991])、糖タンパク質L遺伝子を欠いている欠陥ヘルペスウイルスベクター(例えば、特許公開RD 371005 A参照)、または他の欠陥ヘルペスウイルスベクター(例えば国際公開公報第94/21807号;および第92/05263号参照);減弱されたアデノウイルスベクター、例えばStratford-Perricaudet et al.の論文に記されたベクター(J. Clin. Invest., 90:626-630[1992];同じく、La Salle et al., Science, 259:988-990[1993]参照);ならびに、欠陥アデノ随伴ウイルスベクター(Samulski et al., J. Virol., 61:3096-3101[1987];Samulski et al., J. Virol., 63:3822-3828[1989];および、Lebkowski et al., Mol. Cell. Biol., 8:3988-3996[1988]参照)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0192】
好ましくはインビボ投与に関して、ウイルスベクターおよびトランスフェクトされた細胞の免疫失活を避けるために、適当な免疫抑制療法をウイルスベクター(例えばアデノウイルスベクター)と組合せて使用する。例えばインターロイキン-12(IL-12)、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、または抗-CD4抗体などの免疫抑制性サイトカインを、ウイルスベクターに対する体液性または細胞性免疫応答を阻止するために投与することができる。加えて、最低数の抗原を発現するように操作されたウイルスベクターを使用することは有利である。
【0193】
好ましい態様において、ベクターはアデノウイルスベクターである。アデノウイルスは、様々な細胞型へ本発明の核酸を効率的に送達するように修飾することができる真核DNAウイルスである。様々な血清型のアデノウイルスが存在する。本発明の範囲内では、これらの血清型のうち、2型もしくは5型ヒトアデノウイルス(Ad2もしくはAd5)、または動物起源のアデノウイルス(例えば国際公開公報第94/26914号参照)が好ましい。本発明の範囲内で使用することができるこのような動物起源のアデノウイルスは、イヌ、ウシ、マウス(例えば、Mavl, Beard et al., Virol., 75-81[1990])、ヒツジ、ブタ、トリ、およびサル(例えばSAV)起源のアデノウイルスを含む。好ましくは動物起源のアデノウイルスは、イヌアデノウイルスであり、より好ましくはCAV2アデノウイルス(例えば、ManhattanまたはA26/61株(ATCC VR-800))である。
【0194】
好ましくは本発明の複製欠陥アデノウイルスベクターは、ITR、キャプシド形成配列および関心対象の核酸を含む。更により好ましくは、少なくともアデノウイルスベクターのE1領域は、非機能性である。E1領域の欠失は、好ましくはAd5アデノウイルスの配列においてヌクレオチド455から3329(PvuII-BglII断片)または382から3446(HinfII-Sau3A断片)へ伸びている。他の領域が修飾されてもよく、特にE3領域(例えば国際公開公報第95/02697号)、E2領域(例えば国際公開公報第94/28938号)、E4領域(例えば国際公開公報第94/28152号、第94/12649号および第95/02697号)、または後期遺伝子L1-L5のいずれかが修飾される。
【0195】
好ましい態様において、アデノウイルスベクターは、E1領域に欠失を有する(Ad 1.0)。E1欠失アデノウイルスの例は、欧州特許第185,573号に開示されており、その内容は本明細書に参照として組入れられる。別の好ましい態様においてアデノウイルスベクターは、E1およびE4領域に欠失を有する(Ad 3.0)。E1/E4欠失アデノウイルスの例は、国際公開公報第95/02697号および国際公開公報第96/22378号に開示されている。更に別の好ましい態様において、アデノウイルスベクターは、E4領域および核酸配列が挿入されたE1領域において欠失を有する。
【0196】
本発明の複製欠陥組換えアデノウイルスは、当業者に公知の任意の技術により調製することができる(例えば、Levrero et al., Gene, 101:195[1991];欧州特許第185 573号;および、Graham, EMBO J., 3:2917[1984]参照)。特にこれらは、アデノウイルスとプラスミド、とりわけ関心対象のDNA配列を保持するプラスミドとの間の相同組換えにより調製することができる。この相同組換えは、アデノウイルスおよびプラスミドの、適当な細胞株への同時トランスフェクション後に実現される。使用される細胞株は、好ましくは、(i)使用されるエレメントにより形質転換可能であり、かつ(ii)組換えのリスクを避けるために、好ましくは組込まれた形で、複製欠陥アデノウイルスのゲノムの一部を補完することができる配列を含まなければならない。使用することができる細胞株の例は、そのゲノムにAd5アデノウイルスのゲノムの左側部分(12%)を組込まれたヒト胚性腎細胞株293(Graham et al., J. Gen. Virol., 36:59[1977])、ならびに国際公開公報第94/26914号および第95/02697号の出願において開示される、E1およびE4機能を補完することができる細胞株である。組換えアデノウイルスは、当業者に周知の標準的な分子生物学技術を用いて回収および精製される。
【0197】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、安定した位置特異的様式で、それらが感染した細胞のゲノムへ組込まれ得る比較的小型のDNAウイルスである。これらは、細胞の増殖、形態、または分化に対する作用を誘導することなく、広いスペクトルの細胞に感染することができ、ヒト病理に関与しているとは思われない。AAVゲノムは、クローニングされ、配列決定され、かつ特徴付けされている。AAVゲノムは、およそ4700塩基を包含し、各末端におよそ145塩基の逆方向末端反復(ITR)領域を含み、これはウイルスの複製起点として役立つ。ゲノムの残りは、キャプシド形成機能を保持する二つの必須領域に分割され:ゲノムの左側部分は、ウイルスの複製およびウイルス遺伝子の発現に関与するrep遺伝子を含み、ゲノムの右側部分は、ウイルスのキャプシドタンパク質をコードするcap遺伝子を含む。
【0198】
インビトロおよびインビボでの遺伝子導入のためのAAV由来ベクターの使用は、記載されている(例えば、国際公開公報第91/18088号;国際公開公報第93/09239号;米国特許第4,797,368号、米国特許第5,139,941号;および、欧州特許第488 528号を参照、これらは全て本明細書に参照として組入れられる)。これらの刊行物は、repおよび/またはcap遺伝子が欠失し、関心対象の遺伝子により交換されている様々なAAV由来の構築体、ならびにインビトロ(培養された細胞へ)またはインビボ(直接生物へ)で関心対象の遺伝子を導入するための、これらの構築体の使用を記載している。本発明の複製欠陥組換えAAVは、2つのAAV逆方向末端反復(ITR)領域が側方に位置した、関心対象の核酸配列を含むプラスミド、ならびにAAVキャプシド形成遺伝子(repおよびcap遺伝子)を保持するプラスミドの、ヒトヘルパーウイルス(例えばアデノウイルス)で感染させた細胞株への同時トランスフェクションにより調製することができる。作製されたAAV組換え体は、その後標準技術により精製される。
【0199】
別の態様において、遺伝子は、レトロウイルスベクター内に導入することができる(例えば、米国特許第5,399,346号、第4,650,764号、第4,980,289号および第5,124,263号;これらは全て本明細書に参照として組入れられる;Mann et al., Cell, 33:153[1983];Markowitz et al., J. Virol., 62:1120[1988];PCT/US95/14575;欧州特許第453242号;第178220号;Bernstein et al. Genet. Eng., 7:235[1985];McCormick, BioTechnol., 3:689[1985];国際公開公報第95/07358号;および、Kuo et al., Blood, 82:845[1993]に開示されたもの)。レトロウイルスは、分裂細胞を感染する組込みウイルスである。レトロウイルスゲノムは、2つのLTR、キャプシド形成配列、および3種のコード領域(gag、pol、およびenv)を含む。組換えレトロウイルスベクターにおいて、gag、pol、およびenv遺伝子は一般に、全体または一部が欠失され、関心対象の異種核酸配列と交換される。これらのベクターは、様々な種類のレトロウイルス、例えばHIV、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」)、MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)およびフレンドウイルスなどから構築することができる。欠陥レトロウイルスベクターは、国際公開公報第95/02697号にも開示されている。
【0200】
一般に、核酸配列を含む組換えレトロウイルスを構築するために、LTR、キャプシド形成配列、およびコード配列を含むプラスミドが構築される。この構築体を使用し、パッケージング細胞株をトランスフェクトし、この細胞株は、このプラスミドにおいて欠失しているレトロウイルス機能をトランス型で供給することができる。従って一般に、パッケージング細胞株は、gag、pol、およびenv遺伝子を発現することができる。このようなパッケージング細胞株は先行技術において説明されており、特に細胞株PA317(米国特許第4,861,719号、本明細書に参照として組入れられる)、PsiCRIP細胞株(国際公開公報第90/02806号参照)、およびGP+envAm-12細胞株(国際公開公報第89/07150号参照)がある。加えて組換えレトロウイルスベクターは、LTR内に転写活性を抑制するための修飾に加え、gag遺伝子の一部を含むことがある過剰なキャプシド形成配列を含むことができる(Bender et al., J. Virol., 61:1639[1987])。組換えレトロウイルスベクターは、当業者に公知の標準技術により精製される。
【0201】
あるいはこのベクターは、リポフェクションによりインビボ導入することができる。過去10年間で、インビトロにおける核酸の封入およびトランスフェクションのためのリポソームの使用は増加している。リポソームを媒介したトランスフェクションが遭遇する難点および危険性を制限するようにデザインされた合成カチオン性脂質を用い、マーカーをコードする遺伝子のインビボトランスフェクションのためのリポソームを調製することができる(Felgner et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:7413-7417[1987];同じくMackey, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:8027-8031[1988];Ulmer et al., Science, 259:1745-1748 [1993]参照)。カチオン性脂質の使用は、負帯電した核酸の封入を促進し、かつ負帯電した細胞膜との融合も促進する(Felgner and Ringold, Science, 337:387-388[1989])。核酸を導入するために特に有用な脂質化合物および組成物は、国際公開公報第95/18863号および第96/17823号、ならびに米国特許第5,459,127号に開示されており、これらは本明細書に参照として組入れられる。
【0202】
カチオン性オリゴペプチド(例えば国際公開公報第95/21931号)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば国際公開公報第96/25508号)、またはカチオン性ポリマー(例えば国際公開公報第95/21931号)などの他の分子も、インビボにおける核酸のトランスフェクションを促進するために有用である。
【0203】
インビボにおいて裸のDNAプラスミドとしてベクターを導入することも可能である。裸のDNAを製剤し哺乳動物の筋組織に投与する方法は、米国特許第5,580,859号および第5,589,466号に開示されており、両方とも本明細書に参照として組入れられる。
【0204】
遺伝子治療のためのDNAベクターは、当該技術分野において公知の方法により、所望の宿主細胞へ導入することができ、トランスフェクション、電気穿孔、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈降、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体の使用を含むが、これらに限定されるものではない(例えば、Wu et al., J. Biol. Chem., 267:963[1992];Wu and Wu, J. Biol. Chem., 263:14621[1988];および、Williams et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:2726[1991]参照)。受容体-媒介型DNA送達法も使用される(Curiel et al., Hum. Gene Ther., 3:147[1992];および、Wu and Wu, J. Biol. Chem., 262:4429[1987])。
【0205】
VI. 外来性NIPA-1遺伝子ならびにそれらの相同体、変異体、および変種を発現するトランスジェニック動物
本発明は、外来性NIPA-1遺伝子またはそれらの相同体、変異体もしくは変種を含む、トランスジェニック動物の産生を企図する。好ましい態様において、トランスジェニック動物は、野生型動物と比べ変更された表現型を示す。いくつかの態様において、変更された表現型は、NIPA-1発現の野生型レベルと比べた、NIPA-1遺伝子のmRNAの過剰発現である。別の態様において、変更された表現型は、内在性NIPA-1発現の野生型レベルと比べた、内在性NIPA-1遺伝子のmRNAの減少した発現である。いくつかの好ましい態様において、トランスジェニック動物は、NIPA-1の変異体アレルを含む。このような表現型の存在または非存在を分析する方法は、ノーザンブロット、mRNA保護アッセイ、およびRT-PCRを含む。他の態様において、トランスジェニックマウスは、NIPA-1遺伝子のノックアウト変異を有する。好ましい態様において、トランスジェニック動物は、神経障害(例えばHSP)に対する変更された易罹患性を示す。
【0206】
このような動物は、研究用途(例えばNIPA-1タンパク質が関与するシグナル伝達経路の同定)に加え、薬物スクリーニングの適用(例えば、神経障害を予防または治療する薬物をスクリーニングするため)において利用できる。例えばいくつかの態様において、被験化合物(例えば痙性対麻痺疾患の治療に有用であることが推測される薬物)が、トランスジェニック動物および対照動物へ、野生型 NIPA-1アレルと共に投与され、その作用が評価される。その後被験および対照化合物の疾患症状に対する作用が評価される。
【0207】
トランスジェニック動物は、様々な方法により産生される。いくつかの態様において、様々な発達段階の胚細胞が使用され、導入遺伝子がトランスジェニック動物の産生のために導入される。胚細胞の発達の段階に応じて、様々な方法が使用される。接合子は、微量注入の最良の標的である。マウスにおいて、雄性前核は、直径約20μmに達し、これはDNA溶液の1〜2ピコリットル(pl)の再現可能な注入(reproducible injection)を可能にする。遺伝子導入の標的としての接合子の使用は、注入されたDNAがほとんどの場合、最初の卵割の前に宿主ゲノムへ取込まれる点が大きな利点である(Brinster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:4438-4442[1985])。結果的にトランスジェニック非ヒト動物の全ての細胞は、取込まれた導入遺伝子を保持する。このことは一般に、生殖細胞の50%はこの導入遺伝子を抱えているので、創始者の子孫へのこの導入遺伝子の効率的伝達も反映している。米国特許第4,873,191号は、接合子の微量注入法を開示しており、この特許の開示は本明細書に参照として組入れられる。
【0208】
他の態様においては、レトロウイルス感染を使用して導入遺伝子が非ヒト動物へ導入される。いくつかの態様においては、レトロウイルスベクターの卵母細胞の囲卵腔への注入による卵母細胞のトランスフェクションに、レトロウイルスベクターが利用される(米国特許第6,080,912号、これは本明細書に参照として組入れられる)。別の態様において、発達中の非ヒト胚は、胚盤胞期までインビトロ培養することができる。この期間には、割球がレトロウイルス感染の標的となり得る(Janenich, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 73:1260[1976])。割球の効果的感染は、透明帯を除去するための酵素処理により得られる(Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., [1986])。導入遺伝子の導入に使用されるウイルスベクターシステムは典型的には、導入遺伝子を保持する複製欠陥レトロウイルスである(Jahner et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA, 82:6927[1985])。トランスフェクションは、単層のウイルス産生細胞上での割球の培養により、容易かつ効率的に得られる(Van der Putten, 前記;Stewart, et al., EMBO J., 6:383[1987])。あるいは感染は、より後期において行うことができる。ウイルスまたはウイルス産生細胞は、胞胚腔へ注入することができる(Jahner et al., Nature, 298:623[1982])。取込みは、トランスジェニック動物を形成する細胞のサブセットにおいてのみ生じるので、ほとんどの創始者(founder)は、導入遺伝子についてモザイクであろう。更にこの創始者は、一般に子孫においては分離する、ゲノム内の異なる位置での、導入遺伝子の様々なレトロウイルス挿入断片を含み得る。加えて妊娠中期の胚の、子宮内レトロウイルス感染により、導入遺伝子を生殖系列へ、低効率ではあるが導入することが可能である(Jahner et al., 前記[1982])。当該技術分野において公知のトランスジェニック動物を産生するためのレトロウイルスまたはレトロウイルスベクターを使用する追加の手段は、レトロウイルス粒子またはレトロウイルスを作製するマイトマイシンC処理した細胞の、受精卵の囲卵腔または初期胚への微量注入に関連している(PCT出願国際公開公報第90/08832号[1990]、およびHaskell and Bowen, Mol. Reprod. Dev., 40:386[1995])。
【0209】
別の態様において、導入遺伝子は、胚性幹細胞へ導入され、このトランスフェクトされた幹細胞を利用して、胚が形成される。ES細胞は、適当な条件下でのインビトロにおける着床前の胚培養により得られる(Evans et al., Nature, 292:154[1981];Bradley et al., Nature, 309:255[1984];Gossler et al., Proc. Acad. Sci. USA, 83:9065[1986];および、Robertson et al., Nature 322:445[1986])。導入遺伝子は、リン酸カルシウム共沈、プロトプラストまたはスフェロプラスト融合、リポフェクションおよびDEAE-デキストラン媒介型トランスフェクションを含む、当該技術分野において公知の様々な方法によるDNAトランスフェクションにより、ES細胞へ効率的に導入される。導入遺伝子は、レトロウイルス媒介型導入または微量注入により、ES細胞へ導入することもできる。このようなトランスフェクトされたES細胞はその後、胚盤胞期の胚の胞胚腔への導入後に胚のコロニーを形成し、得られるキメラ動物の生殖系列に寄与することができる(総説については、Jaenisch, Science, 240:1468[1988]を参照のこと)。導入遺伝子がこのような選択のための手段を提供すると仮定して、トランスフェクトしたES細胞の胞胚腔への導入に先駆け、トランスフェクトしたES細胞は、導入遺伝子が組込まれたES細胞を濃縮するために様々な選択プロトコールに供される。あるいはポリメラーゼ連鎖反応を用い、導入遺伝子が組込まれたES細胞をスクリーニングすることができる。この技術は、胞胚腔への導入前に、適当な選択条件下でトランスフェクトしたES細胞を増殖する必要性を省く。
【0210】
更に別の態様において、相同組換えを使用し、遺伝子機能をノックアウトするか、欠失変異体(例えばNIPA-1の特定ドメインが欠失した変異体)を作製する。相同組換えの方法は、米国特許第5,614,396号に開示されており、これは本明細書に参照として組入れられる。
【0211】
VIII. NIPA-1を用いた薬剤スクリーニング
いくつかの態様において、本発明のNIPA-1遺伝子の単離された核酸およびポリペプチド(例えばSEQ ID NO:1〜4)ならびに関連するタンパク質および核酸は、NIPA-1活性およびシグナル伝達を変更(例えば、増強または阻害)する化合物の薬剤スクリーニングにおいて使用される。本発明は更に、本発明のNIPA-1タンパク質のリガンドおよびシグナル伝達経路を同定する方法を提供する。
【0212】
本発明は特定の機構に限定されるものではない。実際この機構の理解は、本発明の実践には不要である。しかしながら、NIPA-1ファミリータンパク質の疎水性の分析(Chai et al, Am J Hum Genet(2003年印刷中)参照)に基づき、NIPA-1ファミリータンパク質は、受容体または輸送体として機能することが企図される。
【0213】
いくつかの態様において本発明は、化合物を、天然のリガンド(例えば先に説明された方法を用いて同定された)により媒介されるNIPA-1活性を変更する能力についてスクリーニングする方法を提供する。このような化合物は、NIPA-1ファミリーの一員により媒介された疾患(例えばHSP)の治療における利用が認められる。
【0214】
いくつかの態様において本発明は、化合物を、変異体NIPA-1核酸(例えばSEQ ID NO:2)および/または変異体NIPA-1ポリペプチド(例えばSEQ ID NO:4)とは相互作用するが、同時に野生型NIPA-1核酸(例えばSEQ ID NO:1)および/または野生型NIPA-1ポリペプチド(例えばSEQ ID NO:3)とは相互作用しない能力についてスクリーニングする方法を提供する。このような化合物は、NIPA-1核酸および/またはタンパク質の変異体型の存在により促進される、神経障害の治療において利用できる。
【0215】
1つのスクリーニング法において、ツーハイブリッドシステムを使用し、インビトロまたはインビボにおいてNIPA-1機能を変更する(例えば、結合パートナーとの相互作用)ことが可能な化合物(例えばタンパク質)がスクリーニングされる。1つの態様において、lacZのようなレポーター遺伝子に連結されたGAL4結合部位が、候補化合物の存在および非存在下で、NIPA-1断片に連結されたGAL4結合ドメインおよび結合パートナー断片に連結されたGAL4トランス活性化ドメインIIと接触される。このレポーター遺伝子の発現はモニタリングされ、発現の減少は、候補化合物がNIPA-1の結合パートナーとの相互作用を阻害することの指標である。あるいは、NIPA-1と他のタンパク質(例えば結合パートナーと直接または間接的に相互作用することが公知のタンパク質)との相互作用に対する候補化合物の作用を、同様の方法で試験することができる。
【0216】
いくつかの態様において本発明は、免疫沈降を利用する、NIPA-1の結合パートナーまたはリガンドを同定する方法を提供する。いくつかの態様において、NIPA-1タンパク質に対する抗体を利用し、NIPA-lおよび任意の結合タンパク質を沈降する。別の態様において、タグを伴うNIPA-1融合タンパク質が作製され、タグに対する抗体が免疫沈降に利用される。NIPA-1と免疫沈降する可能性のある結合パートナーは、適当な方法を用いて同定することができる。
【0217】
別のスクリーニング法において、候補化合物は、NIPA-1、結合パートナー、結合パートナーと会合したタンパク質、またはそれらの断片を、候補化合物と接触し、候補化合物とそのペプチドとの結合を決定することにより、NIPA-1活性を変更する候補化合物の能力について評価される。このタンパク質またはタンパク質断片は、GST-NIPA-1融合タンパク質とグルタチオン含有ポリマービーズとの結合のような、当該技術分野において公知の方法を用いて固定される。GST融合タンパク質をコードするキメラ遺伝子は、関心対象のポリペプチドまたはポリペプチド断片をコードするDNAと、GSTカルボキシ末端をコードするDNAとの融合により構築される(例えばSmith et al., Gene, 67:31[1988]参照)。この融合構築体は次に、適当な発現システム(例えば大腸菌XA90)へ形質転換され、そこでのGST融合タンパク質の発現は、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)により誘導することができる。IPTGによる誘導は、可溶性細胞タンパク質の主な構成要素として、この融合タンパク質を生じるはずである。この融合タンパク質は、グルタチオンアフィニティークロマトグラフィーによる精製を含む、当業者に公知の方法により精製することができる。候補化合物とタンパク質またはタンパク質断片との結合は、シグナル伝達経路を破壊する化合物の能力と相関し、その結果NIPA-1の生理的作用(例えば痙性対麻痺)を調節する。
【0218】
別のスクリーニング法において、NIPA-1/結合パートナーシグナル伝達システムの1つの構成要素は固定されている。ポリペプチドは、プラスチック製マイクロタイタープレート上の吸着または GST融合タンパク質とグルタチオン含有ポリマービーズとの特異的結合などの、当該技術分野において公知の方法を用いて、固定することができる。例えばいくつかの態様において、GST-NIPA-1は、グルタチオンセファロースビーズに結合される。固定されたペプチドは次に、候補化合物の存在および非存在下で結合が可能である別のペプチドと接触される。未結合のペプチドはその後除去され、この複合体は可溶化され、分析され、結合した標識されたペプチドの量が決定される。結合の減少は、候補化合物がNIPA-1と他のペプチドとの相互作用を阻害したことの指標である。この方法の変形は、予め形成されたタンパク質/タンパク質複合体の破壊を可能にする化合物のスクリーニングを可能にする。例えばいくつかの態様において、別のペプチドに結合したNIPA-1またはNIPA-1断片を含む複合体が、先に説明されたように固定され、候補化合物と接触される。候補化合物によるこの複合体の解離は、化合物がNIPA-1と他のペプチドとの間の相互作用を破壊または阻害する能力と相関する。
【0219】
別の薬剤スクリーニング技術は、NIPA-1ペプチドへの適当な結合親和性を有する化合物のハイスループットスクリーニングを提供し、これは国際公開公報第84/03564号に詳細に説明されており、これは本明細書に参照として組入れられる。簡単に述べると、多数の異なる小型ペプチド被験化合物が、プラスチック製ピンまたはいくつかの他の表面などの固形基板上で合成される。次にこのペプチド被験化合物を、NIPA-1ペプチドと反応させ、洗浄する。結合したNIPA-1ペプチドはその後、当該技術分野において周知の方法により検出される。
【0220】
別の技術は、上記のように作製されたNIPA-1抗体を使用する。このような抗体は、NIPA-1ペプチドと特異的に結合することが可能であり、NIPA-1との結合に関して被験化合物と競合する。この様式で、抗体を用い、1つまたは複数のNIPA-1ペプチドの抗原決定基を共有するペプチドを決定することができる。
【0221】
本発明は、化合物をスクリーニングするその他の多くの手段を企図する。先に提供された例は、利用可能な技術の範囲を単に例証するために示されている。当業者は、他の多くのスクリーニング法を利用することができることを理解するであろう。
【0222】
特に本発明は、特にコンビナトリアルライブラリー(例えば、104種よりも多い化合物を含むライブラリー)からの化合物のハイスループットスクリーニングにおいて化合物を活性についてスクリーニングするための、NIPA-1遺伝子およびそれらの変種でトランスフェクトされた細胞株の使用を企図する。本発明の細胞株は、様々なスクリーニング法において使用することができる。いくつかの態様において細胞を、細胞表面受容体の活性化後のシグナル伝達をモニタリングする、セカンドメッセンジャーアッセイにおいて使用することができる。別の態様において細胞を、転写/翻訳レベルで細胞反応をモニタリングする、レポーター遺伝子アッセイにおいて使用することができる。更に別の態様において細胞を、外部刺激に対する細胞の、全般的な増殖/非増殖反応をモニタリングする、細胞増殖アッセイにおいて使用することができる。
【0223】
セカンドメッセンジャーアッセイにおいて、宿主細胞は好ましくは、先に説明されたように、NIPA-1またはそれらの変種もしくは変異体をコードするベクターによりトランスフェクトされる。その後宿主細胞は、1つの化合物または複数の化合物(例えばコンビナトリアルライブラリー由来のもの)で処理され、反応の存在または非存在についてアッセイされる。コンビナトリアルライブラリー中の少なくとも一部の化合物は、このベクターによりコードされた1つ又は複数のタンパク質の、作用薬、拮抗薬、アクチベーター、またはインヒビターとして役立つことが企図される。コンビナトリアルライブラリー中の少なくとも一部の化合物は、シグナル伝達経路においてベクターによりコードされたタンパク質の上流または下流に作用するタンパク質の、作用薬、拮抗薬、アクチベーター、またはインヒビターとして役立つことも企図される。
【0224】
いくつかの態様において、セカンドメッセンジャーアッセイは、膜受容体およびイオンチャンネルの刺激に起因する、細胞内変化(例えば、Ca2+濃度、膜電位、pH、IP3、cAMP、アラキドン酸放出)に反応するレポーター分子からの蛍光シグナルを測定する(例えば、リガンドゲートイオンチャンネル;Denyer et al., Drug Discov. Today, 3:323[1998];および、Gonzales et al., Drug. Discov. Today, 4:431-39[1999]参照)。レポーター分子の例は、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)システム(例えば、Cuo脂質とオキソノール、EDAN/DABCYL)、カルシウム感受性インジケーター(例えば、Fluo-3、FURA 2、INDO 1、およびFLU03/AM、BAPTA AM)、塩素感受性インジケーター(例えば、SPQ、SPA)、カリウム感受性インジケーター(例えば、PBFI)、ナトリウム感受性インジケーター(例えば、SBFI)、ならびにpH感受性インジケーター(例えば、BCECF)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0225】
一般に宿主細胞は、化合物への曝露前に、インジケーターと共に負荷される。宿主細胞の化合物による処理に対する反応は、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡(例えばFCSシステム)、フローサイトメトリー、マイクロフルイド装置、FLIPRシステム(例えばSchroeder and Neagle, J. Biomol. Screening, 1:75[1996]参照)、およびプレートリーディングシステムを含むが、これらに限定されるものではない当該技術分野において公知の方法により検出することができる。いくつかの好ましい態様において、未知の活性の化合物により引き起こされた反応(例えば蛍光強度の増加)が、公知の作用薬により生じた反応と比較され、公知の作用薬の最大反応の割合として表される。公知の作用薬により引き起こされた最大反応は、100%反応と定義される。同様に公知のまたは被験拮抗薬を含有する試料への作用薬の添加後に記録された最大反応は、100%反応よりも低く検出される。
【0226】
これらの細胞は、レポーター遺伝子アッセイにおいても有用である。レポーター遺伝子アッセイは、レポーター遺伝子のコード配列にスプライスされた標的遺伝子(すなわち、疾患標的の生物学的発現および機能を制御する遺伝子)の、転写制御エレメントを含む核酸をコードするベクターでトランスフェクトされた宿主細胞の使用に関連する。従って標的遺伝子の活性化は、レポーター遺伝子産物の活性化を生じる。いくつかの態様において、レポーター遺伝子構築体は、その発現がレポーター遺伝子に機能的に連結されたNIPA-1により制御されるタンパク質の5'調節領域(例えばプロモーターおよび/またはエンハンサー)を含む。本発明において利用できるレポーター遺伝子の例は、クロラムフェニコールトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、ホタルおよび細菌のルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-ラクタマーゼ、および緑色蛍光タンパク質を含むが、これらに限定されるものではない。これらのタンパク質の生成は、緑色蛍光タンパク質を除き、特定の基質(例えばX-galおよびルシフェリン)の化学発光、比色、または生物発光生成物の使用により検出される。活性が既知および未知の化合物間との比較は、先に説明したように行うことができる。
【0227】
具体的には本発明は、本発明のNIPA-1と結合するか、例えばNIPA-1発現もしくはNIPA-1活性を阻害(もしくは刺激)する作用を有するか、または例えばNIPA-1基質の発現もしくは活性を刺激もしくは阻害する作用を有するようなモジュレーター、すなわち候補または被験化合物または物質(例えばタンパク質、ペプチド、ペプチド擬態、ペプトイド、小分子または他の薬剤)を同定するためのスクリーニング法を提供する。こうして同定された化合物は、治療的プロトコールにおいて直接または間接のいずれかで標的遺伝子産物(例えばNIPA-1遺伝子)の活性を調節するため、標的遺伝子産物の生物学的機能を詳しく説明するため、または通常の標的遺伝子相互作用を破壊する化合物を同定するために使用することができる。変種NIPA-1の活性を刺激するか、非機能的変種の活性を模倣する化合物は、神経障害(例えばHSP)の治療において特に有用である。
【0228】
1つの態様において、本発明は、NIPA-1タンパク質もしくはポリペプチドまたはそれらの生物学的活性部分の基質である候補もしくは被験化合物をスクリーニングするアッセイを提供する。別の態様において本発明は、NIPA-1タンパク質もしくはポリペプチド、またはそれらの生物学的活性部分に結合するかもしくはその活性を調節する、候補もしくは被験化合物をスクリーニングするアッセイを提供する。
【0229】
本発明の被験化合物は、当該技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多くの方法のうち任意のものを用いて得ることができ、生物学的ライブラリー;ペプトイドライブラリー(ペプチドの機能を有するが、新規の非ペプチド骨格を持つ分子のライブラリーで、酵素分解耐性であるにもかかわらず生体活性を維持する;例えば、Zuckennann et al., J. Med. Chem., 37:2678-85[1994]参照);空間的にアドレス可能な平行固相または液相ライブラリー;デコンボルーションを要する合成ライブラリー法;「1ビーズ、1化合物」ライブラリー法;ならびに、アフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含む。ペプチドライブラリーとの使用には生物学的ライブラリー法およびペプトイドライブラリー法が好ましく、他の4種の方法は、化合物の、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または小分子ライブラリーに利用可能である(Lam, Anticancer Drug Des., 12:145(1997))。
【0230】
分子ライブラリー合成法の例は、当該技術分野において、例えば以下の論文に認められる:DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6909[1993];Erb et al., Proc. Nad. Acad. Sci. USA, 91:11422[1994];Zuckermann et al., J. Med. Chem., 37:2678[1994];Cho et al., Science, 261:1303[1993];Carrell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 33:2059[1994];Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 33:2061[1994];および、Gallop et al., J. Med. Chem., 37:1233[1994]。
【0231】
化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten, Biotechniques, 13:412-421[1992])、またはビーズ上(Lam, Nature, 354:82-84[1991])、チップ(Fodor, Nature, 364:555-556[1993])、細菌または胞子(米国特許第5,223,409号;これは本明細書に参照として組入れられる)、プラスミド(Cull et al., Proc. Nad. Acad. Sci. USA, 89:1865-1869[1992])またはファージ上(Scott and Smith, Science, 249:386-390[1990];Devlin, Science, 249:404-406[1990];Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87:6378-6382[1990];Felici, J. Mol. Biol., 222:301[1991])において提示される。
【0232】
1つの態様において、アッセイは、NIPA-1タンパク質またはそれらの生物学的活性部分を発現する細胞が、被験化合物と接触され、ならびに被験化合物のNIPA-1活性を調節する能力が決定されるような、細胞に基づくアッセイである。被験化合物のNIPA-1活性を調節する能力の決定は、例えば酵素活性の変化をモニタリングすることにより実現することができる。この細胞は、例えば哺乳動物由来であることができる。
【0233】
化合物、例えばNIPA-1基質へのNIPA-1結合を調節する、被験化合物の能力も評価される。これは例えば、基質などの化合物を、放射性同位元素または酵素標識物と結合することにより、実現することができ、その結果NIPA-1への基質などの化合物の結合が、複合体中の基質などの標識された化合物を検出することにより決定される。
【0234】
あるいは、NIPA-1が放射性同位元素または酵素標識物と結合され、複合体中のNIPA-1基質へのNIPA-1結合を変調する被験化合物の能力がモニタリングされる。例えば、化合物(例えば基質)は、直接または間接的のいずれかで125I、35S、14Cまたは3Hにより標識され、放射性同位元素は直接、放射線放出計数(radioemmission)のカウント、またはシンチレーション計数により検出される。あるいは化合物は、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼにより酵素標識することができ、酵素標識を適当な基質の生成物への転換を同定することで検出する。
【0235】
相互作用物質で標識された、またはされていない化合物(例えばNIPA-1基質)の、NIPA-1と相互作用する能力が評価される。例えば、マイクロフィジオメーターは、化合物またはNIPA-1のいずれかを標識することなく、化合物とNIPA-1との相互作用を検出するために使用することができる(McConnell et al. Science, 257:1906-1912[1992])。本明細書において使用される「マイクロフィジオメーター」(例えばCytosensor)は、光アドレス可能な電位差測定センサー(Light-Addressable Potentiometric Sensor; LAPS)を使用し、細胞がその周囲を酸性化する速度を測定する分析装置である。この酸性化速度の変化は、化合物とNIPA-1ポリペプチドとの間の相互作用の指標として使用することができる。
【0236】
更に別の態様において、NIPA-1タンパク質またはその生理活性部分と被験化合物とを接触させ、被験化合物がNIPA-1タンパク質またはその生理活性部分に結合する能力を評価する、無細胞アッセイが提供される。本発明のアッセイにおいて使用される好ましいNIPA-1タンパク質の生理活性部分は、基質または他のタンパク質との相互作用に参加する断片、例えば高い表面可能性(surface probability)スコアを持つ断片を含む。
【0237】
無細胞アッセイは、標的遺伝子タンパク質および被験化合物の2つの成分が相互作用し、かつ結合するような条件下およびそれに十分な時間での、標的遺伝子タンパク質および被験化合物の反応混合物の調製が関与しており、その結果、除去および/または検出することができる複合体が形成される。
【0238】
これら2つの分子間の相互作用も同じく、例えば蛍光エネルギー転移(FRET)(例えば、Lakowicz et al., 米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulos et al., 米国特許第4,968,103号参照;いずれも本明細書に参照として組入れられる)を用いて検出することができる。第一の「ドナー」分子の放出した蛍光エネルギーが、第二の「アクセプター」分子上の蛍光標識により吸収され、入れ替わりに吸収されたエネルギーによって蛍光を発することができるように、フルオロフォア標識が選択される。
【0239】
あるいは、「ドナー」タンパク質分子は単純に、トリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用することができる。異なる波長の光を放出する標識が選択され、その結果「アクセプター」分子標識を「ドナー」の分子標識から識別することができる。これら標識間のエネルギー転移効率は、これらの分子が離れている距離に関連するので、これら分子間の空間的関係を評価することができる。分子間に結合が生じる状況において、15の「アクセプター」分子標識の蛍光放出は、アッセイが最大であるはずである。FRET結合事象は、当該技術分野において周知の、標準的蛍光検出手段(例えば蛍光光度計を使用する)により都合良く測定される。
【0240】
別の態様において、NIPA-1タンパク質が標的分子へ結合する能力の決定は、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)を用いて実現することができる(例えばSjolander and Urbaniczky, Anal. Chem., 63:2338-2345[1991]、およびSzabo et al. Curr. Opin. Struct. Biol., 5:699-705[1995]参照)。「表面プラスモン共鳴」または「BIA」は、相互作用物(例えばBIAcore)を標識することなく、生体特異的な相互作用を、リアルタイムで検出する。結合表面での質量の変化(結合事象の指標)は、表面近傍での光の屈折率の変化(表面プラスモン共鳴(SPR)の光学的現象)を生じ、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用することができる、検出可能なシグナルを生じる。
【0241】
1つの態様において、標的遺伝子産物または被験物質は、固相上に係留される。固相上に係留された標的遺伝子産物/被験化合物の複合体は、反応の最後に検出することができる。標的遺伝子産物は、固体表面に係留され、被験化合物(これは係留されない)は、以下に考察する検出可能な標識により、直接または間接のいずれかで、標識されることが好ましい。
【0242】
NIPA-1タンパク質、抗NIPA-1抗体、またはその標的分子を、一方または両方のタンパク質の、非複合型からの複合型の分離を促進するために加え、アッセイの自動化に適応させるために固定化することが望ましい。候補化合物の存在および非存在下での、NIPA-1タンパク質と被験化合物との結合、またはNIPA-1タンパク質と標的分子との相互作用は、これらの反応物を含有するのに適した任意の容器において実現することができる。このような容器の例はマイクロタイタープレート、試験管、および微量遠心管を含む。1つの態様において、一方または両方のタンパク質のマトリックスへの結合を可能にするドメインを追加する融合タンパク質が提供される。例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ-NIPA-1融合タンパク質またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン誘導体化されたマイクロタイタープレート上に吸着させることができ、これらは次に、被験化合物とまたは被験化合物および非吸着標的タンパク質もしくはNIPA-1タンパク質のいずれかと一緒にされ、この混合物は、複合体形成を実行可能にする条件下でインキュベートされる(例えば、塩およびpHについて生理的条件で)。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルは洗浄され、未結合の成分が除去され、ビーズの場合はマトリックスが固定され、複合体は例えば先に説明されたように直接または間接のいずれかで決定される。
【0243】
あるいはこれらの複合体は、マトリックスから解離させることができ、およびNIPA-1の結合または活性のレベルが、標準技術を用いて決定される。NIPA-1タンパク質または標的分子のいずれかをマトリックス上に固定する別の技術は、ビオチンおよびストレプトアビジンの複合体の使用を含む。ビオチン化されたNIPA-1タンパク質または標的分子は、ビオチン-NHS(N-ヒドロキシル-スクシンイミド)から当該技術分野において公知の技術(例えばビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, EL)を用いて調製し、ストレプトアビジンで被覆した96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定することができる。
【0244】
このアッセイを実行するために、固定されていない成分が、係留された成分を含有する被覆された表面へ添加される。反応が完了した後、形成された複合体は固体表面上に固定され続けるような条件下で、未反応の成分が除去される(例えば洗浄により)。これらの固体表面上に係留された複合体の検出は、多くの方法で実現することができる。予め固定されない成分が予備標識される場合、表面上に固定された標識の検出は、複合体が形成されたことの指標である。予め固定されない成分が予備標識されない場合、表面上に係留された複合体を検出するために間接的標識物を使用し、例えば、固定された成分に特異的な標識された抗体が使用される(この抗体は次に、直接標識されるか、または例えば標識された抗IgG抗体により間接的に標識される)。
【0245】
このアッセイは、NIPA-1タンパク質または標的分子と反応性であるが、NIPA-1タンパク質のその標的分子への結合とは相互作用しない抗体を利用して実行する。このような抗体は、プレートのウェルへ誘導体化することができ、未結合の標的またはNIPA-1タンパク質は、抗体の結合によりウェル中に捕獲される。このような複合体を検出する方法は、GSTで固定された複合体に関する先に説明されたものに加え、NIPA-1タンパク質または標的分子と反応性の抗体を使用する、複合体のimmuNIPA-letection、またNIPA-1タンパク質または標的分子に関連した酵素活性の検出に依存する酵素結合アッセイを含む。
【0246】
あるいは無細胞アッセイは、液相で実行することができる。このようなアッセイにおいて、以下を含むがこれらに限定されない多くの標準技術のいずれかにより、反応生成物が未反応の成分から分離される:分画遠心法(例えば、Rivas and Minton, Trends Biochem Sci, 18:284-7[1993]参照);クロマトグラフィー(ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー);電気泳動(例えば、Ausubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology, 1999, J. Wiley:New York参照);および、免疫沈降(例えば、Ausubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology, 1999, J. Wiley:New York参照)。このような樹脂およびクロマトグラフィー技術は、当業者に公知である(例えば、Heegaard J. Mol. Recognit, 11:141-8[1998];Hageand Tweed, J. Chromatogr. Biomed. Sci. Appl, 699:499-525[1997]参照)。更に蛍光エネルギー転移も、複合体の溶液からの更なる精製を伴わずに結合を検出するために、本明細書に説明されるように都合良く利用される。
【0247】
このアッセイは、NIPA-1タンパク質またはそれらの生理活性部分と、NIPA-1に結合しアッセイ混合物を形成することが公知の化合物との接触、アッセイ混合物と被験化合物との接触、ならびに被験化合物とNIPA-1タンパク質との相互作用能力の決定を含むことができ、ここで被験化合物とNIPA-1タンパク質との相互作用能力の決定は、既知の化合物と比べ、被験化合物のNIPA-1またはそれらの生理活性部分と優先的に結合するか、または標的分子の活性を調節する能力の決定を含む。
【0248】
NIPA-1がインビボにおいて、1つまたは複数の細胞内または細胞外巨大分子、例えばタンパク質と相互作用することができる程度まで、このような相互作用のインヒビターが有用である。同種アッセイを用い、インヒビターを同定することができる。
【0249】
例えば、標的遺伝子産物および相互作用性の細胞内または細胞外結合パートナー生成物の予め形成された複合体は、標的遺伝子産物またはそれらの結合パートナーのいずれかが標識されるが、この標識物から発生したシグナルは、複合体形成のために消光されるように調製される(例えばイムノアッセイにこの方法を利用している、米国特許第4,109,496号を参照、これは本明細書に参照として組入れられる)。予め形成された複合体から、種の1つと競合または代替する被験物質の添加は、バックグラウンドを上回るシグナルを発生させるであろう。このようにして、標的遺伝子産物結合パートナー相互作用を破壊する被験物質を同定することができる。あるいはNIPA-1タンパク質は、NIPA-1と結合または相互作用し(「NIPA-1結合タンパク質」または「NIPA-1 bp」)、NIPA-1活性に関連した他のタンパク質を同定するために、ツーハイブリッドアッセイまたはスリーハイブリッドアッセイにおいて、「ベイトタンパク質」として使用することができる(例えば米国特許第5,283,317号;Zervos et al., Cell, 72:223-232[1993];Madura et al., J. Biol. Chem., 268:12046-12054[1993];Bartel et al., Biotechniques, 14:920-924[1993];Iwabuchi et al., Oncogene, 8:1693-1696[1993];および、Brentの国際公開公報第94/10300号を参照;これらは各々本明細書に参照として組入れられる)。このようなNIPA-1 bpは、例えば、NIPA-1媒介型シグナル伝達経路の下流エレメントとして、NIPA-1タンパク質または標的によるシグナルのアクチベーターまたはインヒビターであることができる。
【0250】
NIPA-1発現モジュレーターも同定することができる。例えば、細胞混合物または無細胞混合物と、候補化合物とを接触させ、NIPA-1 mRNAまたはタンパク質の発現を、候補化合物非存在下でのNIPA-1 mRNAまたはタンパク質の発現レベルと比較して評価する。NIPA-1 mRNAまたはタンパク質の発現が候補化合物の存在下において非存在下よりも大きい場合、候補化合物は、NIPA-1 mRNAまたはタンパク質発現の刺激剤として同定される。あるいは、NIPA-1 mRNAまたはタンパク質の発現が候補化合物の存在下において非存在下よりも少ない(すなわち統計学的に有意に少ない)場合、候補化合物は、NIPA-1 mRNAまたはタンパク質発現の阻害剤として同定される。NIPA-1 mRNAまたはタンパク質の発現レベルは、NIPA-1 mRNAまたはタンパク質を検出するための、本明細書に記載される方法により決定することができる。
【0251】
調節物質は、細胞に基づくまたは無細胞アッセイを用いて同定することができ、この物質のNIPA-1タンパク質の活性を調節する能力は、インビボにおいて、例えば疾患の動物モデル(例えばHSPに罹った動物)などの動物において確認することができる。
【0252】
B. 治療剤
本発明は更に、前述のスクリーニングアッセイにより同定された新規物質に関連する。従って本明細書に記載されるように、同定された物質(例えば、NIPA-1調節物質もしくは擬態、NIPA-1特異的抗体、またはNIPA-1結合パートナー)を、このような物質による治療の有効性、毒性、副作用、または作用機序を決定するために、適当な動物モデル(例えば本明細書に記載されるものなど)において更に使用することは、本発明の範囲内である。更に先に説明したように、先に説明されたスクリーニングアッセイにより同定された新規物質は、例えば神経障害(例えばHSPを含むがこれらに限定されない)を治療するために使用することができる。いくつかの態様において、これらの物質は、NIPA-1リガンドまたはリガンドアナログである(例えば、先に説明された薬剤のスクリーニング法を用いて同定される)。
【0253】
IX. NIPA-1核酸、ペプチド、およびアナログを含む薬学的組成物
本発明は更に、NIPA-1ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部、NIPA-1ポリペプチド、抗体を含むNIPA-1生体活性の阻害剤または拮抗薬を、単独で、または少なくとも1つの安定化化合物のような他の物質と組合せて含有し、かつ生理食塩水、緩衝された生理食塩水、デキストロースまたは水を含むがこれらに限定されない、無菌の生体適合性の薬学的担体の中で投与することができる薬学的組成物を提供する。
【0254】
本発明の方法は、変異体NIPA-1アレルにより特徴付けられる疾患(例えば、痙性対麻痺疾患)の治療または生理的状態の変更において利用できる。ペプチドは、生理食塩水などの薬学的に許容される担体中で、患者へ静脈内投与することができる。ペプチドの細胞内送達の標準的方法を使用することができる(例えばリポソームを介した送達)。このような方法は、当業者に周知である。本発明の製剤は、静脈内、皮下、筋肉内および腹腔内などの非経口投与に有用である。ポリペプチドの細胞内への治療的投与は、先に説明されたような遺伝子治療を用いて実現することもできる。
【0255】
医療技術分野において周知であるように、任意の一人の患者のための用量は、その患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される具体的化合物、性別、投与時刻および経路、全身の健康状態、ならびに同時投与される他の薬物との相互作用を含む多くの要因により変動する。
【0256】
従って本発明のいくつかの態様において、NIPA-1ヌクレオチドおよびNIPA-1アミノ酸配列は、単独で、または他のヌクレオチド配列、薬物またはホルモンと組合せて、または賦形剤もしくは他の薬学的に許容される担体と混合されている薬学的組成物中で、患者へ投与することができる。本発明の1つの態様において、薬学的に許容される担体は、薬学的に不活性である。本発明の別の態様において、NIPA-1ポリヌクレオチド配列またはNIPA-1アミノ酸配列は、単独で個体被検体、または疾患に罹患した個人へ投与することができる。
【0257】
治療される状態に応じて、これらの薬学的組成物は製剤され、全身または局所的に投与される。製剤および投与の技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co, Easton Pa.)最新版に見ることができる。適当な経路は、例えば経口または経粘膜投与;更には、筋肉内、皮下、髄内、鞘内、心室内、静脈内、腹腔内、または鼻腔内投与を含む、非経口送達を含む。
【0258】
注射に関して、本発明の薬学的組成物は、水性溶液中、好ましくは生理的に適合可能な緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液、または生理的に緩衝した食塩水などの中に製剤される。組織または細胞投与に関して、浸透されるべき特定の障壁に適した浸透剤が、製剤において使用される。このような浸透剤は一般に当該技術分野において公知である。
【0259】
他の態様において、本発明の薬学的組成物は、当該技術分野において周知の薬学的に許容される担体を経口投与に適した用量で用いて製剤することができる。このような担体は、治療されるべき患者により経口または経鼻的に摂取されるために、薬学的組成物が錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして製剤されることを可能にする。
【0260】
本発明における使用に適した薬学的組成物は、活性成分が、意図された目的を実現するための有効量で含まれる組成物を含む。例えばNIPA-1の有効量は、痙性対麻痺関連の症状を抑制する量であってよい。有効量の決定は、特に本明細書に提供された開示を考慮に入れると、十分当業者の能力の範囲内である。
【0261】
これらの薬学的組成物は活性成分に加え、薬学的に使用できる調製物への活性化合物の加工処理を促進する賦形剤および助剤を含む、適当な薬学的に許容される担体を含有することができる。経口投与のために製剤された調製物は、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、または液剤であることができる。
【0262】
本発明の薬学的組成物は、それ自身公知の様式(例えば、通常の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研磨、乳化、カプセル封入、捕獲、または凍結乾燥のプロセス)で作製することができる。
【0263】
非経口投与のための薬学的製剤は、水溶性型の活性化合物の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁液は、適当な油状注射用懸濁剤として調製されてもよい。適当な親油性溶媒またはビヒクルは、ゴマ油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁剤の粘度を増大する物質を含んでも良い。任意で懸濁剤は、高濃度の溶液の調製を可能にするために、適当な安定剤および化合物の溶解度を増加する物質も含有することができる。
【0264】
経口用途のための薬学的調製物は、望ましいならば錠剤または糖衣錠コアを得るために、活性化合物を固形賦形剤と一緒にし、任意に得られる混合物を粉砕し、かつ適当な助剤を添加した後、顆粒混合物を加工処理することにより得ることができる。適当な賦形剤は、炭水化物またはタンパク質充填剤、例えば乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモなどからのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;ならびに、アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム類;ならびに、ゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質を含む。望ましいならば、架橋したポリビニルピロリドン、アガー、アルギン酸またはそれらの塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの、崩壊剤または可溶化剤を添加することができる。
【0265】
糖衣錠コアは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー液、ならびに適当な有機溶媒または溶媒混合物も含有することができる、濃縮された糖溶液などの、適当なコーティングと提供される。製品の識別または活性化合物の量(すなわち用量)の特徴付けのために、染料または顔料を、錠剤または糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0266】
経口使用することができる薬学的調製物は、ゼラチンで作製された押し込み型の(push-fit)カプセル剤に加え、ゼラチンならびにグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングで作製された密封された軟カプセル剤を含む。押し込み型のカプセル剤は、乳糖またはデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、任意で安定化剤と混合された活性成分を含有することができる。軟カプセル剤において、活性化合物は、安定化剤と共にまたは安定化剤なしで、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体中に溶解または懸濁することができる。
【0267】
薬学的に許容される担体中に製剤された本発明の化合物を含有する組成物は、調製され、適当な容器に入れられ、かつ表示される状態の治療に関するラベルが付けられる。NIPA-1のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列に関して、ラベルに表示される状態は、痙性対麻痺疾患に関連した状態の治療を含むことができる。
【0268】
この薬学的組成物は、塩として提供することができ、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されない多くの酸により形成することができる。対応する遊離塩基型である塩は、水性溶媒または他のプロトン性溶媒中で、より溶解する傾向がある。別の場合、好ましい調製物は、使用前に緩衝液と一緒にされる、1mM〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%ショ糖、2%〜7%マンニトール中にpH4.5〜5.5の範囲で凍結乾燥された散剤であることができる。
【0269】
本発明の方法において使用される任意の化合物に関して、治療的に有効な投与量を、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。その後好ましくは、投与量は、NIPA-1レベルを調節する望ましい循環血中濃度範囲を達成するように、動物モデル(特にマウスモデル)において処方される。
【0270】
治療的に有効な投与量は、その病態の症状を緩和するNIPA-1の量を意味する。このような化合物の毒性および治療的効能は、細胞培養または実験動物における標準的薬学手法により決定することができ、例えばLD50(集団の50%致死量)およびED50(集団の50%の治療的有効量)が決定される。毒性作用と治療作用との間の投与量比は治療指数であり、これはLD50/ED50の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび追加の動物試験において得られたデータを用い、ヒトでの使用のための用量範囲を処方することができる。このような化合物の用量は、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む、循環血中濃度の範囲内であることが好ましい。用量はこの範囲内で、使用される剤形、患者の感受性、および投与経路に応じて変動する。
【0271】
正確な用量は、治療される患者を考慮し個々の医師により選択される。用量および投与は、十分なレベルの活性部分を提供するか、または所望の作用を維持するように調節される。考慮され得る追加の要因は、病態の重症度;患者の年齢、体重、および性別;食事、投与の時間および頻度、併用薬、反応の感度、および治療に対する耐性/反応性を含む。持続作用する薬学的組成物は、具体的な製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、3〜4日毎、毎週、または2週間毎に投与することができる。
【0272】
通常の用量は、0.01〜100,000μgで変動し、総用量は約1gまでであり、これは投与経路に応じて左右される。特定の用量および送達方法に関する指針は、文献に提供されている(米国特許第4,657,760号;第5,206,344号;または第5,225,212号参照、全て本明細書に参照として組入れられる)。当業者は、NIPA-1の阻害剤に関してよりも、NIPA-1に関して様々な製剤を使用するであろう。骨髄への投与は、静脈内注射とは異なる方法での送達を必要とすることがある。
【0273】
X. RNA干渉(RNAi)
RNAiは、ヒトを含むほとんどの真核生物における、外来遺伝子の発現を制御するための進化において保存された細胞防御を表している。RNAiは、2本鎖RNA(dsRNA)により引金をひかれ、dsRNAに対する反応が相同な1本鎖標的RNAの配列特異的mRNA分解を引き起こす。mRNA分解のメディエーターは、低分子干渉RNA二重鎖(siRNA)であり、これは通常長いdsRNAから、細胞内の酵素による切断により作製される。siRNAは長さが一般に約21ヌクレオチド(例えば長さが21〜23ヌクレオチド)であり、2個のヌクレオチドの3'側の突出により特徴付けられる塩基対構造を有する。小型のRNAまたはRNAiの細胞への導入後、この配列は、RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)と称される酵素複合体へ送達されると考えられる。RISCは、標的を認識し、これをエンドヌクレアーゼにより切断する。より大きなRNA配列が細胞へ送達される場合は、RNaseIII酵素(ダイサー)が、より長いdsRNAを21〜23nt ds siRNA断片へ転換することは注目される。
【0274】
化学合成されたsiRNAは、培養された体細胞における哺乳動物遺伝子機能のゲノムワイドな分析のための強力な試薬となってきている。siRNAは、遺伝子機能のバリデーションに関するそれらの価値にも増して、遺伝子特異的治療物質としての大きな可能性も有する(Tuschl and Borkhardt, Molecular Intervent., 2(3):158-67(2002)、これは本明細書に参照として組入れられる)。
【0275】
siRNAの動物細胞へのトランスフェクションは、特異的遺伝子の強力な長期持続性の転写後サイレンシングを生じる(Caplen et al, Proc Natl Acad Sci USA 2001,98:9742-7;Elbashir et al., Nature 2000, 411:494-8;Elbashir et al., Genes Dev. 2000, 15:188-200;および、Elbashir et al., EMBO J. 2000, 20:6877-88、これらは全て本明細書に参照として組入れられる)。siRNAによるRNAiを行う方法および組成物は、例えば米国特許第6,506,559号に開示されており、これは本明細書に参照として組入れられる。
【0276】
siRNAは、標的化されたRNAの量を低下させる点、およびタンパク質伸長により、頻繁に検出不可能なレベルにまでさせる点で非常に効果的である。標的RNAとsiRNAの中心領域との間の、1つのヌクレオチドのミスマッチは、サイレンシングを妨げるのに十分であることが多いので、このサイレンシング作用は数ヶ月持続することができ、非常に特異的である。Brummelkamp et al, Science, 2002, 296:550-3;および、Holen et al, Nucleic Acids Res. 2002, 30:1757-66、両方とも本明細書に参照として組入れられる。
【0277】
XI. NIPA-1のRNAi
先に考察したように、本発明は、細胞内におけるNIPA-1ポリペプチドの発現を阻害するためのRNAiを提供する。細胞内でのNIPA-1発現レベルの阻害は、HSPの症状を防止および/または軽減することが好ましい。
【0278】
A. NIPA-1のRNAiのデザインおよび試験
NIPA-1のsiRNAをデザインする(例えばNIPA-1 mRNAを標的化する)ためのソフトウェアデザインツールが、当該技術分野において利用可能である(例えばインターネット上で)。例えばOligoengineのウェブページは、Elbashirの判定基準(Elbashir et al, Methods, 2002, 26:199-213、本明細書に参照として組入れられる)を基に、RNAi候補を発見するようなデザインツールの1つを有する。Ambionにより提供されるCenix Bioscienceデザインツールのような他のデザインツールも使用することができる。加えて、Oligoengineにより提供されたSi2サイレンシング二重鎖も存在する。
【0279】
mRNAが独りでに折畳み、「ヘアピン」(これはdsRNAiの場合、1つの目的はRNAiがそれ自身ではなくmRNAに結合することであるため、望ましくない)を形成する傾向を有するかどうかを決定することが可能である、RNAフォールディングソフトウェアプログラムも存在する。1つの好ましい立体配置は、3個未満の結合を伴うオープン立体配置(open configuration)である。それ自身自発的に折畳む傾向がないことを示すためには、一般に正のデルタGが望ましい。
【0280】
作製されたsiRNA候補分子は、例えば先に説明したものと同様の技術を用い、インビボにおけるNIPA-1発現の定量的評価について、HSP動物モデル中でスクリーニングすることができる。
【0281】
B. 発現カセット
本発明のNIPA-1特異的siRNAは、化学的に合成することができる。化学合成は、当該技術分野において公知または発見された方法により実現することができる。あるいは本発明のNIPA-1特異的siRNAは、転写による合成を含む方法により合成されてもよい。いくつかの態様において、DNA鋳型およびバクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーターから、インビトロ転写が行われ、別の態様においては、遺伝子およびプロモーターからインビボにおいて合成が行われる。2本の鎖が個別に合成され、かつアニーリングされる、分離された鎖の二重鎖siRNAも、当該技術分野において公知または発見された方法により化学的に合成することができる。あるいは、ds siRNAは、転写による合成を含む方法により合成される。いくつかの態様において、siRNAの2本鎖領域の2本の鎖は、インビトロ(例えば転写システムにおいて)または宿主細胞においてインビボのいずれかで、2つの異なる発現カセットにより個別に発現され、その後互いに一緒にされ、二重鎖を形成する。
【0282】
従って別の局面において本発明は、プロモーターおよびNIPA-1に特異的なsiRNAをコードする遺伝子を含む発現カセットを含有する組成物を提供する。いくつかの態様において、転写されたsiRNAは、長さが約18〜25塩基対の分離された鎖の二重鎖(または2本鎖、またはds)siRNAの1本の鎖を形成する。従ってds siRNAの形成には、ds siRNAの2つの異なる鎖の各々の転写が必要である。発現カセット中の「遺伝子」という用語は、siRNAの作製に必要なコード配列を含む核酸配列を意味する。従って遺伝子は、ds siRNA鎖のコード配列を含むが、これらに限定されるものではない。
【0283】
一般にDNA発現カセットは、少なくとも1つの遺伝子を含む化学的に合成されたまたは組換えDNA分子、またはds siRNAの1本鎖のための所望のコード配列、およびインビトロまたはインビボのいずれかにおける機能的に連結されたコード配列の発現に必要な適当な核酸配列を含む。インビトロでの発現は、転写システムおよび転写/翻訳システムにおける発現を含むことができる。インビボ発現は、特定の宿主細胞および/または生物における発現を含むことができる。原核細胞における発現または原核細胞インビトロ発現システムに必要な核酸配列は周知であり、通常プロモーター、オペレーター、およびリボソーム結合部位を、多くは他の配列と共に含む。真核生物のインビトロ転写システムおよび細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルを利用することが公知である。細菌のRNAポリメラーゼ(例えばT3、T7、およびSP6)による発現に必要な核酸配列は、当該技術分野において転写鋳型と称され、ポリメラーゼプロモーター領域、それに続く望ましいRNA配列の相補体(またはコード配列もしくはsiRNAの遺伝子)を有する鋳型DNA鎖を含む。転写鋳型を作製するために、相補鎖が、鋳型鎖のプロモーター部分にアニールされる。
【0284】
前述の発現カセットのいずれかにおいて、遺伝子は、切断された場合に少なくとも2個の切断産物を生じるような、少なくとも1つの切断部位を含む転写産物をコードする。このような産物は、ds siRNAの2つの逆方向鎖を含む。真核細胞における発現のための発現システムにおいて、プロモーターは、構成的または誘導的であることができる。プロモーターは、組織または臓器特異性(例えば目に特異的)であるか、または発生段階に特異的であることができる。好ましくはプロモーターは、転写領域の5'側に配置される。他のプロモーターも企図されており、このようなプロモーターは、他のポリメラーゼIIIプロモーターおよびマイクロRNAプロモーターを含む。
【0285】
好ましくは真核発現カセットは更に、プロモーターとの使用に適した転写終結シグナルを含み、例えばプロモーターがRNAポリメラーゼIIIに認識される場合、この終結シグナルは、RNAポリメラーゼIII終結シグナルである。このカセットは、宿主細胞ゲノムへの安定した組込みのための部位を含むこともできる。
【0286】
C. ベクター
本発明のその他の局面において、組成物は、NIPA-1に特異的なsiRNAをコードする遺伝子、または好ましくはプロモーターおよびNIPA-1に特異的なsiRNAの作製に必要な配列をコードする遺伝子(siRNA遺伝子)を含む、少なくとも1つの発現カセットを含むベクターを含有する。これらのベクターは更に、マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、選択遺伝子、または実験遺伝子のような関心対象の遺伝子を含む。本発明のベクターは、クローニングベクターおよび発現ベクターを含む。発現ベクターは、インビトロでの転写/翻訳システムに加え、インビボで宿主細胞において使用することができる。インビボで宿主細胞において使用される発現ベクターは、一過性または安定して、宿主細胞にトランスフェクトされる。従ってベクターは、宿主細胞ゲノムへ安定して組込むための部位を含むこともできる。
【0287】
いくつかの態様において、siRNA遺伝子を多コピープラスミドへバクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーターの下流にクローニングすることは有用である。バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター(T7プロモーターなど)を含む様々な転写ベクターが利用可能である。あるいはDNA合成を使用し、バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーターをsiRNAコード配列の上流に追加することができる。このクローニングされたプラスミドDNAは、制限酵素により直線状とされ、次に転写鋳型として使用することができる(例えばMilligan, JF and Uhlenbeck, OC (1989), Methods in Enzymology, 180:51-64参照)。
【0288】
本発明の別の態様においてベクターは、染色体性、非染色体性、および合成DNA配列(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病などのウイルスDNAの誘導体)を含むが、これらに限定されるものではない。ベクターは、それが適当なシステムにおいて発現され(インビトロまたはインビボのいずれかで)、ならびにインビボにおいて使用される場合、宿主において生存可能である限りは使用することができることが企図され、これら2つの判定基準は、一過性トランスフェクションに十分である。安定したトランスフェクションのためには、ベクターは宿主においても複製可能である。
【0289】
多数の適当なベクターが当業者に公知であり、市販されている。本発明のいくつかの態様において、哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適当なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに同じく必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシングドナーおよびアクセプター部位、転写終結配列、ならびに5'フランキング非転写配列を含む。別の態様において、SV40スプライシング由来のDNA配列、およびポリアデニル化部位を使用し、必要な非転写遺伝子エレメントを提供することができる。
【0290】
本発明のある態様において、siRNA遺伝子(NIPA-1に特異的)を含む発現カセットの一部ではない発現ベクター中の遺伝子配列が、mRNA合成を指示するために、適当な発現制御配列(プロモーター)に機能的に連結される。いくつかの態様においてこの遺伝子配列は、マーカー遺伝子または選択遺伝子である。本発明に有用なプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)極初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、およびマウスメタロチオネインプロモーター、および哺乳動物細胞またはそれらのウイルスにおいて、遺伝子発現を制御することが公知の他のプロモーターを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の別の態様において、組換え発現ベクターは、宿主細胞の形質転換を可能にする複製起点および選択可能マーカー(例えば、真核細胞培養に関してジヒドロ葉酸還元酵素またはネオマイシン耐性)を含む。
【0291】
本発明のいくつかの態様において、遺伝子をコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することで増強される。エンハンサーは、プロモーターの転写を増大するように作用する、通常約10〜300bpの、DNAのシス作用性エレメントである。本発明において有用なエンハンサーは、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0292】
好ましくはベクターのデザインは、より永久的な阻害のためにRNAiを送達するように構成される。例えば、Ambionにより提供されるpSilencer siRNA発現ベクター、Oligoengineにより提供されるpSuper RNAiシステム、およびIMGENEXにより提供されるGneSilencerシステムがある。これらは全て、RNAiに基づくプラスミドベクターである。BD Biosciencesは、RNAi-Ready pSIRENベクターを提供するが、これはプラスミドに基づくベクター、およびアデノウイルスもしくはレトロウイルス送達型の両方をもたらす。Ambionは、siRNAのための短期間アデノウイルスベクターを市場に出すことが予想される。ベクターのデザインに関して、ヘアピンの形成に関する懸念はないか、または少なくともmRNA折畳みパターンに関連した性能に差異を認める試験はないので、折畳みパターンに関する制限はない。従って例えばSEQ ID NO:1および2は、ベクター(プラスミドおよびウイルスの両方)送達システムにおいて使用することができる。
【0293】
Ambionは、そのウェブページ上に、ベクターのデザインツールを提供し、BD Biosciencesは、ベクターのデザインに関するマニュアルを提供し、両方ともsiRNAのベクターをデザインするために有用であることも注目される。
【0294】
D. 細胞のトランスフェクション
更に別の局面において本発明は、先に説明されたような本発明の発現カセットにより、または先に説明されたような、本発明の発現カセット(もしくは単純にsiRNA遺伝子)を含む本発明のベクターにより、トランスフェクトされた細胞を含有する組成物を提供する。本発明のいくつかの態様において、宿主細胞は哺乳動物細胞である。トランスフェクトされた細胞は、培養された細胞または組織、臓器または生物細胞であることができる。培養された宿主細胞の具体例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル腎臓線維芽細胞のCOS-7株、293T、C127、3T3、HeLa、およびBHK細胞株を含むが、これらに限定されるものではない。インビボにおける宿主細胞の具体例は、腫瘍組織および目組織を含む。
【0295】
これらの細胞は、一過性にまたは安定してトランスフェクトされる(例えばsiRNAを発現するDNAは、安定して組込まれ、かつ宿主細胞ゲノムにより発現される)。これらの細胞も、本発明の発現カセットによりトランスフェクトされるか、本発明の発現ベクターによりトランスフェクトされる。いくつかの態様において、トランスフェクトされた細胞は、培養された哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。他の態様においてこれらは、組織、臓器、または生物細胞である。
【0296】
本発明において、インビトロでトランスフェクトされる細胞は、典型的には例えば、米国培養組織コレクション(American Tissue Culture Collection; ATCC)により規定された好ましい方法のような、当該技術分野において公知の方法に従い、トランスフェクトされる前に培養される。本発明のある態様において、細胞は、外因的に(または化学的方法によりインビトロ、またはインビトロ転写法で)合成された、トランスフェクトした細胞内でsiRNAを発現するsiRNAによりトランスフェクトされるか、発現カセットもしくはベクターによりトランスフェクトされる。
【0297】
いくつかの態様において細胞は、細胞が外来性RNAを取込みかつ生存し続けることができるような当該技術分野において公知または発見された方法により、siRNAでトランスフェクトされる。非限定的な例は、電気穿孔、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈降、遺伝子銃の使用、浸透圧ショック、温度ショック、および電気穿孔、ならびに圧力処理である。別の態様においてsiRNAは、先に報告されたように、リポフェクションによりインビボで導入される(例えば、Elbashir et al. (2001)Nature, 411:494-498、これは本明細書に参照として組入れられる)。
【0298】
別の態様において、発現カセットまたは少なくとも1つの発現カセットを含むベクターは、当該技術分野において公知の方法により、所望の宿主細胞へ導入され、この方法はトランスフェクション、電気穿孔、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈降、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体の使用を含むが、これらに限定されるものではない(例えば、Wu et al., (1992) J. Biol. Chem., 267:963;Wu and Wu, (1988) J. Biol. Chem., 263:14621;および、Williams et al., (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:272参照)。受容体媒介型DNA送達法も使用される(Curiel et al., (1992) Hum. Gene Ther., 3:147;および、Wu and Wu, (1987) J. Biol. Chem., 262:4429)。いくつかの態様において、細胞のトランスフェクションを増大させるために、様々な方法が使用される。これらの方法は、浸透圧ショック、温度ショック、および電気穿孔、ならびに圧力処理を含むが、これらに限定されるものではない。
【0299】
あるいはベクターを、リポフェクションによりインビボにおいて導入することができる。過去10年間で、インビトロにおける核酸の封入およびトランスフェクションのためのリポソームの使用が増加している。リポソーム媒介型トランスフェクションにより遭遇する難点および危険性を制限するようにデザインされた合成カチオン性脂質を使用し、マーカーをコードする遺伝子のインビボトランスフェクションのためのリポソームを調製することができる。このカチオン性脂質の使用は、負に荷電した核酸の封入を促進し、同じく負に荷電した細胞膜との融合を促進することができる。核酸輸送に特に有用な脂質化合物および組成物は、国際公開公報第95/18863号および第96/17823号、ならびに米国特許第5,459,127号に開示されており、これらは本明細書に参照として組入れられる。インビボトランスフェクションを促進するために、カチオン性オリゴペプチド(例えば国際公開公報第95/21931号)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば国際公開公報第96/25508号)、またはカチオン性ポリマー(例えば国際公開公報第95/21931号)などの、他の分子も有用である。
【0300】
発現カセットまたはベクターのいずれかとして、裸のDNAとしてインビボでsiRNAをコードする配列を導入することも可能である。裸のDNAを製剤し、哺乳動物筋肉組織へ投与する方法は、米国特許第5,580,859号および第5,589,466号に開示されており、これらは両方とも本明細書に参照として組入れられる。
【0301】
適当なトランスフェクションは、典型的には、トランスフェクションに使用されるベクター内に選択可能マーカーの存在を必要とする。トランスフェクトされた細胞はその後、選択手順に供される。一般に選択は、G418またはヒグロマイシンBなどの毒性物質中での細胞の増殖が関与し、その結果トランスフェクトされた細胞上でその毒性物質に対する耐性を付与するようにトランスフェクトされたマーカー遺伝子を発現する細胞のみが、生存および増殖する。このような選択技術は、当該技術分野において周知である。典型的な選択可能マーカーが周知であり、G418またはヒグロマイシンBに対する耐性をコードする遺伝子を含む。
【0302】
好ましい態様において、トランスフェクション剤は、OLIGOFECTAMINEである。OLIGOFECTAMINEは、脂質に基づくトランスフェクション試薬である。dsRNAiのトランスフェクションのためにデザインされた脂質に基づくトランスフェクション試薬の追加の例は、Mirus(Madison, WI)により提供されるTransit-TKO試薬、およびPolyplus-trasfection SASにより導入されるjetSIである。加えてAmbionにより提供されるSilencer siRNAトランスフェクションキットは、siPORT AmineおよびsiPORT Lipidトランスフェクション物質を含む。Rocheは、同じく脂質に基づくFugene 6トランスフェクション剤を提供している。細胞培養において電気穿孔を使用する選択肢が存在する。好ましくはプラスミドベクター送達システムは、Invitrogenにより提供されるOLIGOFECTAMINE、またはAmbionにより提供されるsiPORT XP-1トランスフェクション物質により細胞へトランスフェクトされる。
【0303】
ある態様において、分子の親油性の変化(例えば親油基のdsRNAの3'末端への結合)などの、ある種のdsRNAiの化学修飾が使用される。dsRNAの生物への送達は、リポソーム封入分子の注入などの、アンチセンスオリゴヌクレオチドの適用のために先に開発された方法により実現することもできる。
【0304】
E. キット
本発明は、NIPA-1に特異的なsiRNA遺伝子を含む少なくとも1つの発現カセットを備えるキットも提供する。一部の局面において、発現カセット由来の転写産物は、長さ約18〜25塩基対の2本鎖siRNAを形成する。別の態様において、発現カセットは、先に説明されたように、ベクター内に含まれ、ここでこのベクターは、インビトロ転写または転写/翻訳システムにおいて使用されるか、またはインビボで細胞を一過性または安定してトランスフェクトするために使用される。
【0305】
他の局面において、キットは少なくとも2種の発現カセットを備え、各々がsiRNA遺伝子を含み、その結果少なくとも1つの遺伝子は、siRNAの1本の鎖をコードし、これは第二のカセットによりコードされた鎖と一緒にされ、ds siRNAを形成する。このように作製されたds siRNAは、前述の態様のいずれかである。これらのカセットは、プロモーターおよびds siRNAの1本の鎖をコードする配列を含む。いくつかの更なる態様においてこれら2つの発現カセットは、単独のベクター内に存在し、別の態様においてこれら2つの発現カセットは、2つの異なるベクター内に存在する。少なくとも1つの発現カセットを伴うベクター、または各々単独の発現カセットを含む2つの異なるベクターは、インビトロ転写または転写/翻訳システムに使用されるか、またはインビボで細胞を一過性または安定してトランスフェクトするために使用される。
【0306】
更に別の局面において、キットは、ds siRNAの2つの個別の鎖、ならびに各鎖をコードする配列間のプロセッシング部位をコードする遺伝子を含む少なくとも1つの発現カセットを備え、その結果この遺伝子が転写された場合、 転写産物は、切断などにより処理され、2つの個別の鎖を生じ、これらは前述のように一緒になり、ds siRNAを形成する。
【0307】
いくつかの態様において、本発明は以下を備えるキットを提供する;a)NIPA-1タンパク質の発現を阻害するように構成された低分子干渉RNA二重鎖(siRNAs)を含有する組成物、およびb)NIPA-1 mRNAが切断されるかまたは不能とされるような条件下での、NIPA-1 mRNAの発現により、NIPA-1タンパク質を発現する標的細胞を治療するための、組成物の使用に関する説明書の印刷物。ある態様においてこの印刷物は、眼疾患の治療のための本組成物の使用に関する説明書を含む。
【0308】
F. NIPA-1特異的siRNAの作製
本発明は、NIPA-1(例えばヒトNIPA-1)に特異的な、またはNIPA-1の変異体もしくは野生型に特異的なsiRNAを合成する方法も提供する。siRNAは、インビトロまたはインビボにおいて合成することができる。インビトロ合成は、化学合成およびインビトロ転写による合成を含む。インビトロ転写は、バクテリオファージRNAポリメラーゼからの転写システム、または真核生物RNAポリメラーゼからの転写/翻訳システムにおいて実現される。インビボ合成は、トランスフェクトされた宿主細胞において生じる。
【0309】
化学的に、または転写のいずれかでインビトロ合成されたsiRNAを用い、細胞がトランスフェクトされる。従って本発明は、インビトロ合成されたsiRNAによる宿主細胞のトランスフェクション方法も提供しする。特定の態様においてsiRNAは、インビトロ転写により合成される。本発明は更に、インビトロ合成されたsiRNAで細胞をトランスフェクトすることにより、NIPA-1遺伝子のインビボでのサイレンシング方法を提供する。別の方法においてsiRNAは、レポーター遺伝子をコードおよび発現する発現ベクターと共に、発現カセットまたは発現ベクターからの転写/翻訳システムにおいてインビトロ発現される。
【0310】
本発明は、siRNAのインビボ合成を指示する発現カセットまたはベクターによる細胞のトランスフェクションにより、siRNAをインビボにおいて発現する方法も提供する。本発明は、siRNAのインビボ合成を指示する発現カセットまたはベクターによる細胞のトランスフェクションによる、インビボでの遺伝子のサイレンシング方法も提供する。
【0311】
実施例
下記実施例は、本発明のある好ましい態様および局面を明らかにし、かつ更に例証するために提供されるが、それらの範囲を限定するようには構成されていない。
【0312】
ADHSPは染色体15q11-13(SPG-6遺伝子座)における遺伝子インプリンティングを生じない
10種のADHSP遺伝子座がマッピングされ、4種のADHSP遺伝子が同定された−SPG4/spastin、SPG3A/atlastin、SPG13/chaperonin 60およびSPG10/KIF5A(Hazan et al, Nat Genet, 23:296-303(1999);Zhao et al, Nat Genet, 29:326-331(2001);Hansen et al, Am J Hum Genet, 70:1328-1332(2002);Reid et al, Am J Hum Genet, 71:1189-1194(2002))。これらの進展にもかかわらず、ADHSPの分子病態生理は不明である。非合併型ADHSPに関する遺伝子座は、染色体15q(SPG6)に位置している(Fink et al, Am J Hum Genet, 56:188-92(1995);Fink et al, Neurology, 45:325-31(1995))。
【0313】
SPG6遺伝子座は、D15S128と動原体との間に6.1cM伸びている(Rainier et al, Am J Hum Genet, 67:91(2000)(図2a)。この間隔は、プラダー-ヴィリ症候群(PWS)またはアンゲルマン症候群(AS)を生じる欠失に関連している。PWSおよびASは、遺伝子インプリンティングにより特徴付けられる(Nicholls and Knepper, Ann Rev Genomics Hum Genet, 2:153-175(2001))。本発明の過程において実行された試験には、巨大な家系ADHSP-ARK1の分析が関与し(図1b)、ここでADHSPは、SPG6遺伝子座に連関されている。ADHSP-ARK1家系の分析は、遺伝子インプリンティングの証拠を示さなかった(Fink et al, Neurology, 45:325-31(1995))。本発明は、特定の機構に限定されない。実際、本発明の実践に、この機構の理解は不要である。しかしながら、SPG-6遺伝子座を伴うADHSPは、遺伝子インプリンティングを受けないことが企図される。
【0314】
NIPA-1遺伝子内の変異はADHSPを引き起こす
ADHSPを取り巻く分子病理を理解するために、4種の独自のインプリントされていない高度に進化した保存された遺伝子を解析した。これらの遺伝子は、インプリントされたドメインの近傍および染色体15qの動原体周囲領域内にマッピングされた(Chai et al, Am J Hum Genet, (2003年印刷中))。これらの候補遺伝子は、「非インプリンティングプラダー-ヴィリ/アンゲルマン遺伝子座1(non-imprinted in Prader-Willi/Angleman locus 1)(NIPA-1)(SEQ ID NO:1)(NCBI-BK001020)およびNIPA2(NCBI-BK001120)(Chai et al, Am J Hum Genet, (2003年印刷中))、GCP5(NCBI-AF272884)(Murphy et al, Mol. Biol Cell, 12:3340-3352(2001))およびCYFIP1(NCBI-NM_014608)(Koybayashi et al, J Biol Chem, 273:291-295(1998));Schenk et al, Proc Natl Acad Sci(USA), 98:8844-8849(2001))を含む。
【0315】
ADHSP-ARK1の各罹患した被検体(n=29)において(図1b)、NIPA-1 cDNAの159位でのヌクレオチド置換(159C>G;図1a)は、NIPA-1タンパク質の45位でのアミノ酸置換を生じる(T45R)ことを同定した。対照的に、各罹患していない被検体(n=29)は、この位置にCのみを有し(図1b)、これは公知のヒトゲノム配列(NCBI-NT 024668)と一致した。対照の105名の被検体(University of Michigan Institute of Gerontologyの高齢者対象プログラムを通じて確定された)も試験した。対照の各被検体は、NIPA1 cDNAの159位にCのみを有した。
【0316】
ADHSP-ARK1に罹患した2名のメンバーにおける他の3種の非インプリンティング遺伝子(GCP5、CYFIP1、およびNIPA2)のコード配列を分析し、疾患特異的変異がないことを同定した。
【0317】
62名のADHSP家系からの罹患した被験者、6名の恐らく常染色体劣性HSP家系、ならびに全ての徴候および症状を伴うが家族歴のない13名の被検体(「見かけ上散発性」の痙性対麻痺)におけるNIPA-1コード配列を分析した。無関係な一家系の罹患被検体(ADHSP-IRQ1;図1b)は、ADHSP-ARK1家系の罹患した被検体と正確に同じNIPA1変異(159C>G;図1b)を有した。ADHSP-IRQ1家系の罹患していない被検体は、正常なヌクレオチド(159C)のみを示した。ADHSP-ARK1家系はSPG6遺伝子座に連関しているが(Fink et al, Am J Hum Genet, 56:188-92(1995))、ADHSP-IRQ1家系は、有意な連関解析を行うには余りにも小さかった。ADHSP-ARK1罹患した個体の臨床的特徴は、10代後半から20代前半において発症する非合併型HSPの典型である(Fink et al, Neurology, 45:325-31(1995))。ADHSP-IRQ1の臨床特徴も同様であり:両脚の、知らぬ間に進行する痙攣性の衰弱の発症は、10代後半で始まり、尿意逼迫および爪先の軽度の振動覚不全に関連していた。
【0318】
ADHSP-ARK1家系およびADHSP-IRQ1家系は各々、アイルランド人およびイラク人の先祖を有する。この遺伝子座に連関された多型性マーカーのハプロタイプ(D15S541、D15S542、D15S646、D15S817、D15S1021)の分析は、ADHSP-ARK1およびADHSP-IRQ1家系の間で共有されるハプロタイプの証拠を示さなかった。このことは、これら2つのADHSP家系が密に関連していないことを示し、同じNIPA1変異が独立してこれらのADHSP家系において生じたことを示唆している。
【0319】
本発明は、特定の機構に限定されるものではない。実際、機構の理解は本発明の実践には必要ではない。しかしながら、SPG-6遺伝子座内のADHSPは、NIPA-1遺伝子内の変異により引き起こされることが企図される。
【0320】
ADHSPはNIPA-1ポリペプチド内の変異により作動する
ADHSP-ARK1およびADHSP-IRQ1における疾患特異的NIPA1変異は、NIPA1エキソン1において、および、トレオニンのアルギニンへの変化はアミノ酸位置45(T45R)において生じる(図2b)。このアミノ酸は、マウス、ニワトリ、およびサカナ(ゼブラフィッシュおよびフグ)において転換されている(Chai et al, Am J Hum Genet, (2003、印刷中))。本発明は、特定の機構に限定されるものではない。実際、機構の理解は本発明の実践には必要ではない。しかしながら、アミノ酸位置45でトレオニンからアルギニンへ変化(T45R)する疾患特異的NIPA1変異は、NIPA-1ポリペプチドの9個の膜貫通ドメインの第一の末端で生じることが企図される(図2b)。NIPA-1は、AAAドメイン(スパスチン(spastin)に存在するように(Hazan et al, Nat Genet, 23:296-303(1999))またはGTPaseドメイン(アトラスチン(atlastin)において存在するように(Zhao et al, Nat Genet, 29:326-331(2001))を含まないか、または他の形のHSPを引き起こす遺伝子と相同な他のものを生じる。本発明は、特定の機構に限定されるものではない。実際、機構の理解は本発明の実践には必要ではない。しかしながら、NIPA-1は、受容体または輸送体として機能することが企図される。多くのPWSまたはAS個体は、NIPA1を含む染色体15qクラスI欠失を有する(図2a;(Chai et al, Am J Hum Genet, (2003年、印刷中))。このような個体は進行性の痙性対麻痺を示さないという事実は、NIPA1ハプロ不全は、進行性の痙性対麻痺を引き起こさないことを示している。本発明は、特定の機構に限定されるものではない。実際、機構の理解は本発明の実践には必要ではない。しかしながら、これらのADHSP家系において同定されたNIPA1 T45Rミスセンス変異は、ドミナントネガティブな機能獲得機構により、病因性であることが企図される。
【0321】
NIPA1 mRNAは、全てのヒト組織において2.2kbおよび7.5kb転写産物として、構成的に低レベルで発現しているが、脳において著しい濃縮を示す(図2c)。後者の発現パターンは、中枢神経系を通じて認められるが、脊髄は、2種のNIPA1 mRNAの同等の発現を示す(図2c)。選択的mRNAアイソフォームは、NIPA1エキソン5内の選択的ポリアデニル化から生じ、同等の発現パターンがマウスについて認められた(Chai et al, Am J Hum Genet, (2003年、印刷中))。
【0322】
考察
種間で保存された、アミノ酸を破壊し、かつ対照の被検体(N=105)には存在しない、無関係な2つのADHSP家系における同一NIPA-1遺伝子変異(159 C>G(SEQ ID NO:6);T52R(SEQ ID NO:9))(134 C<G(SEQ ID NO:2);T45R(SEQ ID NO:4))に関する知見は、NIPA T52R(SEQ ID NO:9)/T45R(SEQ ID NO:4)ミスセンス変異の病原性の重要性を示している。SPG6に連関した、HSPの原因としてのNIPA1変異の発見は、HSPを診断しおよび遺伝子カウンセリングを提供する能力を示している。本発明は、特定の機構に限定されるものではない。実際、機構の理解は本発明の実践には必要ではない。しかしながら、SPG6は、変更されたシグナル伝達および/または膜を通る小分子輸送から生じることが企図される。NIPA-1およびそのリガンドは、SPG6および他の痙性対麻痺における治療的介入の魅力的な標的である。NIPA-1細胞および亜細胞の局在、機能およびリガンドの同定は、HSPにおける軸索変性の理解を助け、重要な治療的意味合いを有するであろう。
【0323】
前記明細書中の全ての刊行物および特許は、本明細書に参照として組入れられる。本発明の範囲および精神から逸脱することのない、説明された本発明の方法およびシステムの様々な修飾および変動は、当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい態様に関連して説明されているが、請求される本発明がこのような具体的態様に過度に制限されないことは理解されなければならない。実際、当業者に明らかである本発明を実行するために説明された様式の様々な修飾は、「特許請求の範囲」内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0324】
【図1】代表的NIPA1エキソン1配列(SEQ ID NO:5(ADHSP罹患被検体);SEQ ID NO:6(対照被検体))を示す。
【図2】cDNA SEQ ID NO:5の159位にNIPA1配列を示す、ADHSP家系を示す。
【図3】プラダー-ヴィリ(PWS)およびアンゲルマン症候群(AS)において欠失した領域におけるSPG6発生を示す。
【図4】NIPA1の二次構造を示す。
【図5】ノーザンブロット分析によるNIPA1の発現を示す。
【図6】開始コドンで始まるNIPA-1の核酸配列(SEQ ID NO:1)を示す。
【図7】開始コドンで始まるNIPA-1の変種核酸配列(SEQ ID NO:2)を示す。
【図8】NIPA-1のアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を示す。
【図9】NIPA-1の変種アミノ酸配列(SEQ ID NO:4)を示す。
【図10】NIPA-1の核酸配列(SEQ ID NO:5)を示す。
【図11】NIPA-1の変種核酸配列(SEQ ID NO:6)を示す。
【図12】野生型NIPA-1のアミノ酸配列(SEQ ID NO:7)を示す。
【図13】変異体NIPA-1の変種アミノ酸配列(SEQ ID NO:8)を示す。
Claims (31)
- 以下の工程を含む、核酸被験試料におけるNIPA-1遺伝子における多型の存在または非存在を検出する方法:
a)該被験試料の該NIPA-1遺伝子のヌクレオチド配列を決定するために、該被験試料から単離したポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を分析する工程;
b)工程a)の被験試料における該NIPA-1遺伝子の該ヌクレオチド配列分析の結果と、対照核酸試料のヌクレオチド配列分析の結果とを比較する工程であって、該対照試料がSEQ ID NO:5を含むNIPA-1遺伝子を含む、工程;および
c)該被験試料におけるNIPA-1遺伝子の該ヌクレオチド配列と、SEQ ID NO:5を含むNIPA-1対照遺伝子の該ヌクレオチド配列との間の差異があれば、その差異を決定する工程であって、該被験試料におけるNIPA-1遺伝子ヌクレオチド配列と、SEQ ID NO:5との間の差異の非存在が、該被験試料におけるNIPA-1遺伝子ヌクレオチド配列多型の非存在を示すものであり、該被験試料における該NIPA-1遺伝子ヌクレオチド配列と、SEQ ID NO:5との間の差異の存在が、該被験試料における該NIPA-1遺伝子ヌクレオチド配列における多型を示すものである、工程。 - 核酸被験試料がDNAおよびRNAからなる群より選択される核酸を含む、請求項1記載の方法。
- 核酸被験試料が分析前に増幅される、請求項1記載の方法。
- 核酸被験試料におけるNIPA-1ヌクレオチド配列と、SEQ ID NO:5との間の差異が、SEQ ID NO:5の159位のCからGへの変化である、請求項1記載の方法。
- 分析が、配列分析、ハイブリダイゼーションアッセイおよびコンピュータに基づくデータ解析からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 被験試料がヒトから得られたものである、請求項1記載の方法。
- 被験試料のヌクレオチド配列と対照試料のヌクレオチド配列との間の、SEQ ID NO:5の159位のCからGへの変化の検出が、ヒトが遺伝性痙性対麻痺であるか、または発症するリスクがあることを示す、請求項6記載の方法。
- ヌクレオチド配列を決定する方法が、PCR、定量的PCR、RT-PCR、FISHまたはポリヌクレオチドの直接配列決定を含む、請求項1記載の方法。
- 以下の工程を含む、核酸被験試料におけるNIPA-1遺伝子における多型の存在または非存在を検出する方法:
a)該被験試料の該NIPA-1遺伝子のヌクレオチド配列を決定するために、該被験試料から単離したポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を分析する工程;
b)工程a)の被験試料における該NIPA-1遺伝子の該ヌクレオチド配列分析の結果と、対照核酸試料のヌクレオチド配列分析の結果とを比較する工程であって、該対照試料がSEQ ID NO:1を含むNIPA-1遺伝子を含む、工程;および
c)該被験試料におけるNIPA-1遺伝子の該ヌクレオチド配列と、SEQ ID NO:1を含むNIPA-1対照遺伝子の該ヌクレオチド配列との間の差異があれば、その差異を決定する工程であって、該被験試料における該NIPA-1遺伝子ヌクレオチド配列と、SEQ ID NO:1との間の差異の非存在が、該被験試料におけるNIPA-1遺伝子ヌクレオチド配列多型の非存在を示すものであり、該被験試料における該NIPA-1遺伝子ヌクレオチド配列と、SEQ ID NO:1との間の差異の存在が、該被験試料における該NIPA-1遺伝子ヌクレオチド配列における多型を示すものである、工程。 - 核酸被験試料がDNAおよびRNAからなる群より選択される核酸を含む、請求項9記載の方法。
- 核酸被験試料が分析前に増幅される、請求項9記載の方法。
- 核酸被験試料におけるNIPA-1ヌクレオチド配列と、SEQ ID NO:1との間の差異が、SEQ ID NO:1の134位のCからGへの変化である、請求項9記載の方法。
- 分析が、配列分析、ハイブリダイゼーションアッセイおよびコンピュータに基づくデータ解析からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
- 被験試料がヒトから得られたものである、請求項9記載の方法。
- 被験試料のヌクレオチド配列と対照試料のヌクレオチド配列との間の、SEQ ID NO:1の134位のCからGへの変化の検出が、ヒトが遺伝性痙性対麻痺であるか、または発症するリスクがあることを示す、請求項14記載の方法。
- ヌクレオチド配列を決定する方法が、PCR、定量的PCR、RT-PCR、FISHまたはポリヌクレオチドの直接配列決定を含む、請求項9記載の方法。
- 以下の工程を含む、特異的なハイブリダイゼーションを評価する方法:
a)ヒトから得られた生物学的試料から、ポリヌクレオチドを単離する工程;
b)特異的なハイブリダイゼーションに適した条件下で、試料中のポリヌクレオチドを、SEQ ID NO:6の全て、または一部を含むポリヌクレオチドプローブと接触させる工程であって、該プローブがSEQ ID NO:6の159位におけるGを含む、工程;および
c)特異的なハイブリダイゼーションが試料中のポリヌクレオチド、およびポリヌクレオチドプローブの間で生じたかどうかを評価する段階であって、
特異的なハイブリダイゼーションが生じた場合には、該ヒトが遺伝性痙性対麻痺であるか、または発症するリスクがあることを示す、工程。 - 以下の工程を含む、ポリヌクレオチドの増幅を評価する方法:
a)ヒトから得られた生物学的試料から単離したポリヌクレオチドを、SEQ ID NO:5の全て、または一部を含むプライマーによって増幅する工程であって、該プライマーは、134位でのCからGへの置換を有するSEQ ID NO:1、または159位でのCからGへの置換を有するSEQ ID NO:5の全て、または一部を特異的に増幅するものである、工程;ならびに
b)ポリヌクレオチドの増幅を評価する工程、および増幅されたポリヌクレオチドにおける、SEQ ID NO:1の134位またはSEQ ID NO:5の159位におけるCからGへの置換の存在または非存在を決定する工程であって、該増幅されたポリヌクレオチドにおける該置換の存在が、該ヒトが遺伝性痙性対麻痺であるか、または発症するリスクがあることを示す、工程。 - 以下の工程を含む、ヌクレオチド配列を分析する方法:
a)ヒトから得られた核酸被験試料からポリヌクレオチドを単離する工程であって、該試料がNIPA-1遺伝子を含む、工程;および
b)試料中のNIPA-1遺伝子のヌクレオチド配列を、SEQ ID NO:3の45位のTからRへの置換をもたらす変異について分析する工程であって、NIPA-1遺伝子における該置換変異の存在が、該ヒトが遺伝性痙性対麻痺であるか、または発症するリスクがあることを示す、工程。 - 被験試料におけるNIPA-1遺伝子がSEQ ID NO:1を含み、かつ置換変異がSEQ ID NO:1の134位におけるCからGへの置換である、請求項19記載の方法。
- ヒトから得られた核酸被験試料が分析前に増幅される、請求項19記載の方法。
- ヌクレオチド配列の分析が、試料中のポリヌクレオチドの直接配列決定によるものである、請求項19記載の方法。
- 被験試料におけるNIPA-1遺伝子がSEQ ID NO:5を含み、かつ該置換変異がSEQ ID NO:5の159位のCからGへの置換である、請求項19記載の方法。
- 134位のヌクレオチドがグアニンであるSEQ ID NO:2を含む、または159位のヌクレオチドがグアニンであるSEQ ID NO:6を含む、単離された核酸。
- 核酸が異種のプロモーターに機能的に連結されている、請求項24記載の核酸。
- 核酸およびプロモーターがベクター内に含まれている、請求項24記載の核酸。
- ベクターが宿主細胞内に含まれている、請求項26記載の核酸。
- 45位のアミノ酸がアルギニンであるSEQ ID NO:4を含む、または53位のアミノ酸がアルギニンであるSEQ ID NO:8の1〜337位を含む、単離されたポリペプチド。
- 45位のアミノ酸がアルギニンであるSEQ ID NO:4を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸。
- 53位のアミノ酸がアルギニンであるSEQ ID NO:8の1〜337位を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸。
- 請求項28のポリペプチドのいずれかを検出する抗体。
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