JP5019550B2 - 硝酸アンモニウムの複塩、その製造方法およびこれを用いたガス発生剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエアバッグ装置等の自動車安全装置用ガス発生装置、ガス利用推進装置および高圧装置等に用いられる新規な複塩からなる酸化剤に関し、さらに該酸化剤を利用した、生体に有害なガスが少なく、安定で、ガス発生効率が良好、かつ、ガスを高速で発生させることができるように改良されたガス発生組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体のガス発生剤はエアバッグ装置等の自動車安全装置用ガス発生装置、ロケットなどの推進装置(ロケット用のガス発生剤は推進薬と言われている)、自動制御用圧力発生装置などに多く用いられている。これらに用いるガス発生剤では、▲1▼生体に対して有害ガス発生が少ないこと、▲2▼単位重量あたり、または単位体積あたりのガス発生量が多い、いわゆるガス発生効率のよいガス発生剤を用いて装置を小型軽量化すること、▲3▼十分な速度でガス供給ができること、換言すればガス発生速度が大きいこと、▲4▼熱や衝撃に対して安定で、したがって取り扱いが容易で長期保存に耐えること、などが重要である。生体に対して好ましくないガスとして一般的には、たとえば窒素酸化物、ハロゲン化ガス、一酸化炭素、高濃度の二酸化炭素などがあるが、固体ガス発生剤では燃焼反応を利用するため、これらのガスを多く発生する。この欠点を改良するためにエアバッグ用ガス発生器ではアジ化ナトリウムを含むガス発生剤が用いられてきたが、アジ化ナトリウムはそれ自体が有害で取り扱いが難しく、また、ガス発生効率が低く、近年これを用いないガス発生剤が使用されるようになってきている。またロケットなどの推進装置では、酸化剤として過塩素酸アンモニウムを主成分とする推進薬が利用されているが、この推進薬は燃焼時多量の塩化水素ガスを発生し、強い酸性雨を降らせる可能性を持ち、環境破壊が起こる点が懸念されている。この点を改良するために、ハロゲンを含まない無機酸化剤、有機のニトロ化合物やニトラミン化合物などを用いる研究がなされている。特にハロゲンを含まず安定で、好ましくないガス発生が少なく、かつガス発生効率がよい無機酸化剤として硝酸アンモニウムが注目されている。しかし硝酸アンモニウムを酸化剤とするガス発生剤は、ガス発生速度が遅く、高速で多量のガス発生を行う場合には、改良が必要である。このような目的でWO95/19944には、カチオン性遷移金属、窒素含有配位子、酸素含有アニオンからなる例えば式(2)で表されるような反応によりガスを発生する化合物をエアバッグ装置のガス発生剤に用いることを開示している。なおこれらの化合物の合成はHargelらの文献(Inorganic ChemisTry 第9巻 番号6 1970年発行1496ページ)等に基づいているとしている。
Co(NH3)2(NO2)3→CoO+3H2O+2N2 (2)
【0003】
このような錯塩の合成は上記文献によれば、相当長い合成工程と有機溶剤などを要している。また、ガス発生効率は約60%であり、したがって残渣が40%も発生する。さらに発生ガス中に水を重量比では約50%、モル比で60%も含有している。水が多いガスをエアバッグに用いた場合、特に−40℃のような低温の作動時には水蒸気として発生されたH2Oの多くが液体の水に変わるため、ガスの容積減少がおこりやすく、衝突時に展開したエアバッグによる乗員拘束特性の低下がおこるので、これを改良して好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下とすることが望まれる。
【0004】
またWO96/20147には1分子中にガス発生成分、酸化剤成分、および反応促進成分を含む例えば式(3)で表されるような化合物を開示している。
Mg・3(H3NCONH3)・2(NO3) (3)
【0005】
式(3)を酸化剤KNO3で燃焼させる場合反応式は次のようになる。
5{Mg・3(H3NCONH3)・2(NO3)}+14KNO3
=45H2O+27N2+15CO2+5MgO+7K2O
【0006】
この反応式に従うとすれば、ガス成分(ガス発生効率)は72%、したがって残渣は28%であり、ガス中の水分は36%であり、式(2)に比較するとガス発生効率が改善され、ガス中の水の量は減少する方向にあるが、まだ不十分である。前記公報に開示された多くの例示物質は、その分子内酸素では燃料成分が多いため酸化剤を必要とするいわゆる燃料成分として働く成分である。一方自動車用のエアバッグ装置では非常に高温にさらされ、一般には110〜120℃に100〜1000時間も加熱後−40〜100℃において正常に作動することが求められ、このような高温にも耐えなければならない。このような要求を満たすために、硝酸アンモニウムを酸化剤とするガス発生組成物が数多く研究されているが、この組成物は燃焼速度が遅いためまだ実用化されていない。また、多くの金属硝酸塩は結晶水を持ち、硝酸マンガンの場合が最低温度で26℃、硝酸銅の場合が最高で115℃、多くは70℃以下で溶融するが、これは自己の持つ結晶水に溶解するためとされている。このような低温で液体になると、固体状で使用するガス発生剤などには利用できないし、エアバッグ装置用のガス発生剤のように水は少ない方が好ましい場合には結晶水がない方が良い。結晶水を持たず安定な金属硝酸塩はリチウム、カリウム、ナトリウム、銀、ストロンチウム、バリウム、カドミウム、チタン、鉛の硝酸塩などがあるが、この中で吸湿性が少なく、金属毒性が比較的少ないカリウム、ナトリウム、ストロンチウム、等の金属硝酸塩が固体ガス発生剤などに多く用いられてきた。しかし、これらを酸化剤とした場合には、ガス発生効率が70%以下でありまだ十分とはいえない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、生体に好ましくないガスの発生が少なく、高温で形状的に、および化学的に安定で、ガス発生効率は85%以上、水分含有率は35%以下で、かつガス発生速度を改良した固体ガス発生剤が望まれているが、こうした要求を十分に満たすガス発生剤はこれまで開発されていない。
【0008】
本発明の目的は、これらの特性を兼ね備えたガス発生剤組成物を提供すること、およびそのための酸化剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討した結果、この目的を達成できる新規酸化剤を発明し、これを用いたガス発生剤組成物を発明した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)下記式(1)で表される金属硝酸塩と硝酸アンモニウムからなる複塩、
M(NO3)i・nNH4NO3 (1)
式中、Mは通常結晶水をもつ硝酸塩を生成する金属元素であって、銅、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト、亜鉛からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属である、iは金属元素Mの原子価に相当する数値、nは1〜20であり硝酸アンモニウムのモル数を表す
(2)nが2〜16である前記(1)記載の複塩、
(3)前記(1)または(2)記載の複塩からなるガス発生剤用酸化剤、
(4)結晶水を持つ金属硝酸塩と硝酸アンモニウムを混合したのち乾燥することを特徴とする前記(1)または(2)記載の複塩の製造方法、
(5)結晶水を持つ金属硝酸塩と硝酸アンモニウムを混合し、その際に水を放出して粘稠ないしはスラリー状になったり、吸湿が激しく取り扱いにくい場合に水を加えて溶液として混合したのち乾燥することを特徴とする請求項1または2記載の複塩の製造方法、
(6)燃料、および酸化剤からなるガス発生剤において、酸化剤が前記(3)記載の酸化剤であるガス発生剤、
(7)燃料が窒素含有有機物である前記(6)記載のガス発生剤、
(8)窒素含有有機物がテトラゾール誘導体であり、酸化剤が硝酸銅と硝酸アンモニウムの複塩である前記(7)記載のガス発生剤、
である。
【0011】
本発明を詳しく説明する。本発明に用いる硝酸アンモニウムは特に制限はないが、一般的にはたとえば工業用硝酸アンモニウム、微結晶粒状硝酸アンモニウム、試薬グレード硝酸アンモニウム等が一般的である。
【0012】
通常結晶水をもち安定な金属硝酸塩は、例えば銅、ベリリウム、マグネシウム、水銀、ジルコニウム、ビスマス、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト等の金属の硝酸塩があげられる。この中で金属毒性がなく比較的安価な銅、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト、亜鉛の硝酸塩が好ましく、さらに、マグネシウムと銅の硝酸塩を用いると、毒性も緩やかで非常に安定な酸化剤となることを発見した。これらの金属を2種以上用いた複塩については例えばD.N.Jackmanら(J.Chem.Soc.121.694,1922)は硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、水の3成分系で、またA.,Massink(ZeiT.Phys.Chem.92.351、1917)は硝酸銅、硝酸ナトリウム、水の3成分系で複塩や錯塩の作成を試みているが、複塩や錯塩の生成はみられなかったと報告している。結晶水をもつ金属硝酸塩1モルに対して1〜20モル、好ましくは2〜16モル、さらに好ましくは2〜9モルの硝酸アンモニウムを混合させて複塩とする。硝酸アンモニウムが1モルよりも少ないとガス発生効率が低くなり、20モルを越えると硝酸アンモニウムの持つ短所である燃焼速度が遅い酸化剤となる。これらの混合を始めると結晶水を遊離し始め、乾燥するとほぼ理論量の水を放出し固体を生成する。この結晶水が硝酸アンモニウムに置き換わった酸化剤は、結晶水を持たず安定であり、かつ酸化性やガス発生効率も大きく増加するため、固体ガス発生剤に最適な酸化剤を提供できるようになった。特に結晶水を持つ硝酸マグネシウムから結晶水のない硝酸マグネシウムを作ることは困難で、無水硝酸マグネシウムは、酸化マグネシウムに酸化窒素を反応させて作るとされているが、このとれにくい結晶水も硝酸アンモニウムに置き換えることができ、しかも安定な固体酸化剤となる。本発明の複塩は、nが異なる2種以上を組み合わせて使用してもよく、またMが異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、結晶水をもつ硝酸銅単体は114℃で溶融し、170℃で分解するとされているが、硝酸アンモニウムとの複塩では200℃までは安定で120℃までは固体である。結晶水の量は金属の種類によって異なり、また同一金属の硝酸塩でも無水塩、2〜9水塩の複数種類の結晶水を持つことがあるが、これらの量については特に制限はない。取り扱う時の環境で安定な含水塩例えば硝酸銅では比較的低温(約26℃以下)では6水塩、比較的高温では3水塩が安定といわれておりこれらを使用できる。
【0013】
これらの金属硝酸塩と硝酸アンモニウムを混合すると、場合によっては水を放出して粘稠ないしはスラリー状になったり、吸湿が激しく取り扱いにくい場合には水を加えて溶液として混合しても良い。この混合物を乾燥するが乾燥条件はその種類によって決めることができる。例えば加熱のみで乾燥する場合には60〜150℃、好ましくは90〜130℃を用いると効率良く製作できる。なお、本発明の複塩は高温では不安定になることもあり、高温の乾燥条件を採用する場合には、熱分解特性を十分検討してから採用しなければならない。真空乾燥する場合にはこれらの温度条件より緩和できる。作製する複塩が安全で混合物に含まれる水がなくなるような乾燥条件を採用する。
【0014】
上記の複塩からなる酸化剤は、有機物および窒素含有有機物と混合することで自己燃焼性固体燃料や固体ガス発生剤を作製できる。有機物は一般に燃料等に用いられている炭素、水素、酸素などからなる化合物であり、不揮発性の石油成分、蔗糖、ソルビツル酸等、また高分子化合物は、末端水酸基ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、アザイドポリマ等のプレポリマと硬化剤を主成分とする熱硬化型高分子や酢酸セルロース、ニトロセルロースなど熱可塑性高分子等一般的に用いられている有機物や高分子化合物などを用いることが可能である。これらに金属粉例えばアルミニウム、マグナリウム、ホウ素、ジルコニウムの粉末やニトラミン化合物例えばRDX、HMXなどを加え発熱量を高め高エネルギー化することもできる。窒素ガスを多く含むことが好ましいガス発生剤を作製する場合に採用される窒素含有有機物は一般的にはトリアゾール、テトラゾール環を含む化合物、例えばビテトラゾール、5アミノテトラゾールなど、やグアニジン誘導体例えばアミノグアニジン、ニトログアニジン、ジシアンジアミド、硝酸グアニジン等が代表的である。
【0015】
上記有機物のうち特にテトラゾール誘導体は窒素を多く発生し、CO2やH2Oの発生量が少なく窒素を多く発生するので、エアバッグ用ガス発生剤に好適である。さらに5アミノテトラゾールは安定で取り扱いやすく現在硝酸ストロンチウムとの混合物を成形しインフレータに用いている例が知られている。しかしこの組成物はガス発生効率が60〜70%しかない。これらの改良のため、硝酸アンモニウムを酸化剤として5−アミノテトラゾールに加える試みがなされているが、これらの混合物は両者単体の融点より低い温度100〜110℃で溶融する。ところが本発明の硝酸銅と硝酸アンモニウムの複塩と5アミノテトラゾールとの混合物は、126℃でも溶融しないので、形状安定性及び熱安定性は良好である。さらに本発明の硝酸銅と硝酸アンモニウムの複塩は硝酸アンモニウムが硝酸銅1モルに対して1〜20モルであれば、硝酸アンモニウムの相転移点のうち84℃斜方晶系から正方晶系への相転移ならびに125℃正方晶系から等軸晶系への相転移による熱吸収がなくなる点も発見した。なお、硝酸アンモニウムが多く添加されると、この転移点が残るためこの相安定化が必要な場合には、別途または本発明の酸化剤を製造する工程で硝酸アンモニウムの相安定化剤例えば硝酸カリウム、酸化ニッケルなどを加えてもよい。前記硝酸アンモニウムの相転移点の消失は、硝酸銅との複塩だけでなく、本発明の複塩に共通して認められる特徴である。また、本発明の酸化剤と有機物、窒素含有有機物からなる組成物、特に本発明の硝酸銅と硝酸アンモニウムの複塩と5アミノテトラゾールの組成物の燃焼速度は硝酸アンモニウム単体との組成物より大きく、インフレータ用に好適に用いることができる。
【0016】
実施例1
表1の原料欄に示した7種類の金属硝酸塩水和物(和光製、試薬特級)を窒素ボックス中で開封し、めのう乳鉢に適量(1〜5g程度)入れ精秤しやすい程度に粉砕した。硝酸アンモニウム(和光製、試薬特級)は同様に約10g程度を同じくめのう乳鉢に入れ粉砕後100メッシュの篩をパスさせたのち70℃で1時間以上乾燥した。これらを金属硝酸塩1モルに対し、硝酸アンモニウム6モルを加えて混合した組成(合計1.1g)を作製し、このうち1gを秤量瓶に秤り取って130℃で1時間加熱した。加熱後数分大気中で冷却後重量を測定しさらに再度1時間追加加熱して再度秤量し重量減がないことを確かめた。この加熱前後の重量差を初期のサンプル重量で除し重量減量率を計算した。この結果を表1の加熱減量測定値の欄に示した。この重量減量率は、表1の結晶水理論値欄に示す結晶水の理論含有率によく一致していることが判明した。このことは、複塩形成過程で原料の金属硝酸塩から結晶水が遊離してその後の乾燥によって除去されたことを示している。生成物について元素分析を行った。金属の定量は堀場製作所製のエネルギ分散型蛍光X線分析装置MESA500によって原料に含まれる金属種類であることを確認し、理論値とした。窒素と水素は一般い用いられている差動法分析装置によって行った。酸素は前記元素の残余であるから100から金属、窒素、水素の合計を差しい引いて求めた。この分析結果を表2に示す。窒素、水素、酸素とも金属硝酸塩の硝酸アンモニウム複塩の理論量に一致した。
【0017】
実施例2
硝酸銅3水塩及び硝酸マグネシウム6水塩を用い、この金属硝酸塩1モルに対しそれぞれに硝酸アンモニウムを1〜60モルとして実施例1と同じ方法条件で複塩を作製した。このとき重量減少率(%)を測定し、生成物のDSC(METTLER社製TOLEDO STAR sysTem)のデータを得て硝酸アンモニウムの84℃相変化点の有無を観測した。表3には硝酸銅を用いた場合の、表4には硝酸マグネシウムを用いた場合の結果を示す。この結果、重量の減少率(表3及び4の実測値欄)は結晶水理論含有率(表3及び4の理論値欄)に一致した。また、DSCで84℃の吸熱ピークは、硝酸アンモニウムが1〜20モルの範囲(表3では記号Cu1〜Cu13、表4では記号Mg1〜Mg13)で消失し、相変化が起こらないことを示した。硝酸アンモニウムの添加モル数が20を越えると84℃の吸熱ピークを示すようになるのであまり好ましくない。なお、硝酸銅及び硝酸マグネシウム単体で加熱減量を測定した結果を表3及び4の比較例の欄に示す。加熱減量と結晶水の理論量は、硝酸銅3水塩については両者が実験誤差範囲で一致するが、硝酸マグネシウム6水塩では理論結晶水量の67%の減量が起こるが、33%は残っており、これは6水塩の内2水塩が残るという文献(化学大辞典)に記述に一致した。
【0018】
実施例3
表3の硝酸銅3水塩と硝酸アンモニウムの複塩の代表例10種と5アミノテトラゾールを組み合わせたガス発生剤の燃焼特性を測定した。表5の理論ガス発生効率の欄に記載されているが、本発明の酸化剤と5アミノテトラゾールが燃焼反応おこし、水素は水、窒素はN2、炭素はCO2、銅はCu2Oにそれぞれなると仮定した基本的な化学式からガス発生量を計算し、目標とするガス発生効率85%以上となる組成を主として選定した。実施例1と同一条件で複塩を作製し、5アミノテトラゾールは和光純製特級を乳鉢で粉砕し100メッシュパスとし、70℃で1時間以上乾燥した物を用意した。
【0019】
これらを原料として本発明ガス発生剤の燃焼状況を測定した。表5の酸化剤配合量(%)および5アミノテトラゾール配合量(%)欄に示すようなガス発生剤組成を混合し、加圧プレスによって直径約7mm(Doとする)、最大厚さ約1.5mm(Toとする)の円盤状錠剤を15個(nとする)作成したのちこれらの厚さ、直径および重量の測定を行った。また、着火薬として、ホウ素22%硝酸カリウム78%の混合物を加圧プレスによって1粒が150mg、直径7mmの円盤状錠剤を作成した。また、点火薬として、チタン粉末45%と硝酸カリウム55%の混合物を作成した。燃焼速度測定のため、安全弁、弁つきガス抜きパイプ、内圧測定センサおよび点火電流端子を有する内容積約52mlの圧力容器、および圧力測定器を用意した。さらに発生ガス中に含まれる好ましくない微量ガス、すなわち、NO、NO2、NH3、COが測定できるGASTECH社製検知管ガス測定器と検知管を用意した。また発生する主要ガスN2、CO2を測定するためガスクロマトグラフィー(カラム:UnibeaeDs C)を用意した。このガス発生剤からは、H2Oも発生するがサンプリング中に液体となってしまい、この実測は困難であるので理論値を採用した。100から水の理論値を差し引いた値がN2とCO2であると仮定して、この値とガスクロマトグラフィーで測定したN2とCO2の比率との積をそれぞれN2とCO2の測定値とした。これらを用意したのちガス発生剤の燃焼特性を測定した。圧力容器の点火電源端子に直径約0.4mmのニクロム線を、また、圧力センサ取り付け孔に圧力センサを取り付け、ニクロム線のまわりに前記のガス発生剤を充填した。(充填したガス発生剤重量をWとする)。これに前記着火薬錠剤1錠と点火薬粉末100mgを入れ圧力容器を密閉したのち、ガス抜きパイプの弁を閉じ、圧力センサを圧力測定器に接続して圧力を測定できるようにした。こののち点火電源端子に約30ボルトの交流電気を通電しガス発生剤を着火させ、圧力と時間の関係(圧力時間データという)を測定記録した。燃焼完了後、検知管ガス測定器をガス抜きパイプに取り付け、弁を開放して検知管によるガス濃度を測定するとともにサンプル採取器により採取したガスをガスクロマトグラフィーに入れ主要ガスN2とCO2を測定し前記のようにデータを整理、計算した。この結果を表5のN2測定値CO2測定値欄と微量ガスの欄に示す。圧力時間データは初期圧力(0.1MPa)から時間とともに徐々に上昇し最高圧力(Pmax)を示して平衡に達する。このデータから、密閉容器試験における燃焼速度の計算を行った。この原理は、圧力時間データの最高圧力(Pmax)で充填されたガス発生剤全量(W)が燃焼したと仮定する。各時間(Ti)の圧力(Pi)をPmaxで除した値(Pi/Pmax)は、各時間(Ti)までに燃焼したガス発生剤の量(Wi)と全量の比(Wi/W)に相当していると考える。すなわちPi/Pmax= Wi/Wが成立する。ここで実験値からPi、Pmax、Wは測定できているからWiを計算できる。各時間(Ti)で残存しているガス発生剤の量(Wr)とWiの和がW、従ってWr=W−WiであるからWrも求めることができる。初期ガス発生剤の直径をDo、厚さをTo各時間(Ti)までに燃焼した燃焼距離をhi、ガス発生剤の密度をD、ガス発生剤の粒数をnとすれば
W=(π/4)×n×d×Do2×To,
Wr=(π/4)×n×d×(Do−2×hi)2×(To−2×hi)
=W−Wiの関係がある。この関係から
Wi/W=1−(Wr/W)
=1−(Do−2×hi)2×(To−2×hi)/(Do2×To)
となり、hi以外は既知であるから、hiも計算でき、時間(Ti)ごとの燃焼距離(hi)を計算できる。例えば、圧力7MPaでの燃焼速度は、圧力6.8MPaの時間(Ti)とそのときの燃焼距離(hi)および圧力7.2MPaの時間(ti+1)とその時の燃焼距離(hi+1)を求めると、
(hi+1−hi)/(ti+1−ti)
となる。このようにして圧力7MPaの時の燃焼速度を求めた。この結果を表5の燃焼速度の欄に記載した。この結果、本発明ガス発生剤は、ガス発生効率が従来より良好で、かつ燃焼速度も比較例の2〜3倍に増加している。好ましくないガスのうちNOガスが多いような数値であるが、エアバッグでは車の中の空気で約100倍程度に薄められるので、この測定値の約1/100が実際上の評価値となり、これも極めて少ないレベルにある。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の金属硝酸塩と硝酸アンモニウムからなる複塩は、結晶水を持たずに安定であって、発生ガス中の水分含有率は低く、ガス発生効率が高く、かつガス発生速度も速いため、特にエアバッグ装置用などのガス発生剤として有用である。また、本発明の複塩は、84℃、および125℃の相転移がないので、その相転移に基づく体積変化に起因する粉化が生じることがなく、安全性も高い。
Claims (8)
- 下記式(1)で表される金属硝酸塩と硝酸アンモニウムから
なる複塩。
M(NO3)i・nNH4NO3 (1)
式中、Mは通常結晶水をもつ硝酸塩を生成する金属元素であって、銅、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト、亜鉛からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属である、iは金属元素Mの原子価に相当する数値、nは1〜20であり硝酸アンモニウムのモル数を表す。 - nが2〜16である請求項1記載の複塩。
- 請求項1または2記載の複塩からなるガス発生剤用酸化剤。
- 結晶水を持つ金属硝酸塩と硝酸アンモニウムを混合したのち乾燥することを特徴とする請求項1または2記載の複塩の製造方法。
- 結晶水を持つ金属硝酸塩と硝酸アンモニウムを混合し、その際に水を放出して粘稠ないしはスラリー状になったり、吸湿が激しく取り扱いにくい場合に水を加えて溶液として混合したのち乾燥することを特徴とする請求項1または2記載の複塩の製造方法。
- 燃料、および酸化剤からなるガス発生剤において、酸化剤が請求項3記載の酸化剤であるガス発生剤。
- 燃料が窒素含有有機物である請求項6記載のガス発生剤。
- 窒素含有有機物がテトラゾール誘導体であり、酸化剤が硝酸銅と硝酸アンモニウムの複塩である請求項7記載のガス発生剤。
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