JP2002338241A - 硝酸アンモニウムの複塩、その製造方法およびこれを用いたガス発生剤 - Google Patents

硝酸アンモニウムの複塩、その製造方法およびこれを用いたガス発生剤

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安定で、ガス発生効率が高く、かつガス
発生速度に優れたガス発生剤、およびそのための新規酸
化剤を提供すること。 【解決手段】 下記式(1)で表される金属硝酸塩と硝
酸アンモニウムからなる複塩。 M(NO3i・nNH4NO3 (1) 式中、Mは通常結晶水をもつ硝酸塩を生成する金属元
素、iは金属元素Mの原子価に相当する数値、nは1〜
20であり硝酸アンモニウムのモル数を表す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエアバッグ装置等の
自動車安全装置用ガス発生装置、ガス利用推進装置およ
び高圧装置等に用いられる新規な複塩からなる酸化剤に
関し、さらに該酸化剤を利用した、生体に有害なガスが
少なく、安定で、ガス発生効率が良好、かつ、ガスを高
速で発生させることができるように改良されたガス発生
組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】固体のガス発生剤はエアバッグ装置等の
自動車安全装置用ガス発生装置、ロケットなどの推進装
置(ロケット用のガス発生剤は推進薬と言われてい
る)、自動制御用圧力発生装置などに多く用いられてい
る。これらに用いるガス発生剤では、生体に対して有
害ガス発生が少ないこと、単位重量あたり、または単
位体積あたりのガス発生量が多い、いわゆるガス発生効
率のよいガス発生剤を用いて装置を小型軽量化するこ
と、十分な速度でガス供給ができること、換言すれば
ガス発生速度が大きいこと、熱や衝撃に対して安定
で、したがって取り扱いが容易で長期保存に耐えるこ
と、などが重要である。生体に対して好ましくないガス
として一般的には、たとえば窒素酸化物、ハロゲン化ガ
ス、一酸化炭素、高濃度の二酸化炭素などがあるが、固
体ガス発生剤では燃焼反応を利用するため、これらのガ
スを多く発生する。この欠点を改良するためにエアバッ
グ用ガス発生器ではアジ化ナトリウムを含むガス発生剤
が用いられてきたが、アジ化ナトリウムはそれ自体が有
害で取り扱いが難しく、また、ガス発生効率が低く、近
年これを用いないガス発生剤が使用されるようになって
きている。またロケットなどの推進装置では、酸化剤と
して過塩素酸アンモニウムを主成分とする推進薬が利用
されているが、この推進薬は燃焼時多量の塩化水素ガス
を発生し、強い酸性雨を降らせる可能性を持ち、環境破
壊が起こる点が懸念されている。この点を改良するため
に、ハロゲンを含まない無機酸化剤、有機のニトロ化合
物やニトラミン化合物などを用いる研究がなされてい
る。特にハロゲンを含まず安定で、好ましくないガス発
生が少なく、かつガス発生効率がよい無機酸化剤として
硝酸アンモニウムが注目されている。しかし硝酸アンモ
ニウムを酸化剤とするガス発生剤は、ガス発生速度が遅
く、高速で多量のガス発生を行う場合には、改良が必要
である。このような目的でWO95/19944には、
カチオン性遷移金属、窒素含有配位子、酸素含有アニオ
ンからなる例えば式(2)で表されるような反応により
ガスを発生する化合物をエアバッグ装置のガス発生剤に
用いることを開示している。なおこれらの化合物の合成
はHargelらの文献(Inorganic Chemis
Try 第9巻 番号6 1970年発行1496ペー
ジ)等に基づいているとしている。 Co(NH32(NO23→CoO+3H2O+2N2 (2)
【0003】このような錯塩の合成は上記文献によれ
ば、相当長い合成工程と有機溶剤などを要している。ま
た、ガス発生効率は約60%であり、したがって残渣が
40%も発生する。さらに発生ガス中に水を重量比では
約50%、モル比で60%も含有している。水が多いガ
スをエアバッグに用いた場合、特に−40℃のような低
温の作動時には水蒸気として発生されたH2Oの多くが
液体の水に変わるため、ガスの容積減少がおこりやす
く、衝突時に展開したエアバッグによる乗員拘束特性の
低下がおこるので、これを改良して好ましくは40%以
下、さらに好ましくは35%以下とすることが望まれ
る。
【0004】またWO96/20147には1分子中に
ガス発生成分、酸化剤成分、および反応促進成分を含む
例えば式(3)で表されるような化合物を開示してい
る。 Mg・3(H3NCONH3)・2(NO3) (3)
【0005】式(3)を酸化剤KNO3で燃焼させる場
合反応式は次のようになる。 5{Mg・3(H3NCONH3)・2(NO3)}+1
4KNO3=45H2O+27N2+15CO2+5MgO
+7K2
【0006】この反応式に従うとすれば、ガス成分(ガ
ス発生効率)は72%、したがって残渣は28%であ
り、ガス中の水分は36%であり、式(2)に比較する
とガス発生効率が改善され、ガス中の水の量は減少する
方向にあるが、まだ不十分である。前記公報に開示され
た多くの例示物質は、その分子内酸素では燃料成分が多
いため酸化剤を必要とするいわゆる燃料成分として働く
成分である。一方自動車用のエアバッグ装置では非常に
高温にさらされ、一般には110〜120℃に100〜
1000時間も加熱後−40〜100℃において正常に
作動することが求められ、このような高温にも耐えなけ
ればならない。このような要求を満たすために、硝酸ア
ンモニウムを酸化剤とするガス発生組成物が数多く研究
されているが、この組成物は燃焼速度が遅いためまだ実
用化されていない。また、多くの金属硝酸塩は結晶水を
持ち、硝酸マンガンの場合が最低温度で26℃、硝酸銅
の場合が最高で115℃、多くは70℃以下で溶融する
が、これは自己の持つ結晶水に溶解するためとされてい
る。このような低温で液体になると、固体状で使用する
ガス発生剤などには利用できないし、エアバッグ装置用
のガス発生剤のように水は少ない方が好ましい場合には
結晶水がない方が良い。結晶水を持たず安定な金属硝酸
塩はリチウム、カリウム、ナトリウム、銀、ストロンチ
ウム、バリウム、カドミウム、チタン、鉛の硝酸塩など
があるが、この中で吸湿性が少なく、金属毒性が比較的
少ないカリウム、ナトリウム、ストロンチウム、等の金
属硝酸塩が固体ガス発生剤などに多く用いられてきた。
しかし、これらを酸化剤とした場合には、ガス発生効率
が70%以下でありまだ十分とはいえない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、生体に
好ましくないガスの発生が少なく、高温で形状的に、お
よび化学的に安定で、ガス発生効率は85%以上、水分
含有率は35%以下で、かつガス発生速度を改良した固
体ガス発生剤が望まれているが、こうした要求を十分に
満たすガス発生剤はこれまで開発されていない。
【0008】本発明の目的は、これらの特性を兼ね備え
たガス発生剤組成物を提供すること、およびそのための
酸化剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意検討した
結果、この目的を達成できる新規酸化剤を発明し、これ
を用いたガス発生剤組成物を発明した。
【0010】すなわち本発明は、(1)下記式(1)で
表される金属硝酸塩と硝酸アンモニウムからなる複塩、 M(NO3i・nNH4NO3 (1) 式中、Mは通常結晶水をもつ硝酸塩を生成する金属元
素、iは金属元素Mの原子価に相当する数値、nは1〜
20であり硝酸アンモニウムのモル数を表す(2)Mが
銅、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケ
ル、コバルト、亜鉛からなる群より選ばれる1種又は2
種以上の金属である前記(1)記載の複塩、(3)nが
2〜16である前記(1)または(2)記載の複塩、
(4)前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の複塩
からなるガス発生剤用酸化剤、(5)結晶水を持つ金属
硝酸塩と硝酸アンモニウム、必要に応じて水を加え、こ
れらを混合したのち乾燥することを特徴とする前記
(1)〜(3)のいずれか一つに記載の複塩の製造方
法、(6)燃料、および酸化剤からなるガス発生剤にお
いて、酸化剤が前記(4)に記載の酸化剤であるガス発
生組成物、(7)燃料が窒素含有有機物である前記
(6)記載のガス発生剤、(8)窒素含有有機物がテト
ラゾール誘導体であり、酸化剤が硝酸銅と硝酸アンモニ
ウムの複塩である前記(7)記載のガス発生剤、であ
る。
【0011】本発明を詳しく説明する。本発明に用いる
硝酸アンモニウムは特に制限はないが、一般的にはたと
えば工業用硝酸アンモニウム、微結晶粒状硝酸アンモニ
ウム、試薬グレード硝酸アンモニウム等が一般的であ
る。
【0012】通常結晶水をもち安定な金属硝酸塩は、例
えば銅、ベリリウム、マグネシウム、水銀、ジルコニウ
ム、ビスマス、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバ
ルト等の金属の硝酸塩があげられる。この中で金属毒性
がなく比較的安価な銅、マグネシウム、カルシウム、ア
ルミニウム、ニッケル、コバルト、亜鉛の硝酸塩が好ま
しく、さらに、マグネシウムと銅の硝酸塩を用いると、
毒性も緩やかで非常に安定な酸化剤となることを発見し
た。これらの金属を2種以上用いた複塩については例え
ばD.N.Jackmanら(J.Chem.Soc.121.6
94,1922)は硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウ
ム、水の3成分系で、またA.,Massink(ZeiT.P
hys.Chem.92.351、1917)は硝酸銅、硝
酸ナトリウム、水の3成分系で複塩や錯塩の作成を試み
ているが、複塩や錯塩の生成はみられなかったと報告し
ている。結晶水をもつ金属硝酸塩1モルに対して1〜2
0モル、好ましくは2〜16モル、さらに好ましくは2
〜9モルの硝酸アンモニウムを混合させて複塩とする。
硝酸アンモニウムが1モルよりも少ないとガス発生効率
が低くなり、20モルを越えると硝酸アンモニウムの持
つ短所である燃焼速度が遅い酸化剤となる。これらの混
合を始めると結晶水を遊離し始め、乾燥するとほぼ理論
量の水を放出し固体を生成する。この結晶水が硝酸アン
モニウムに置き換わった酸化剤は、結晶水を持たず安定
であり、かつ酸化性やガス発生効率も大きく増加するた
め、固体ガス発生剤に最適な酸化剤を提供できるように
なった。特に結晶水を持つ硝酸マグネシウムから結晶水
のない硝酸マグネシウムを作ることは困難で、無水硝酸
マグネシウムは、酸化マグネシウムに酸化窒素を反応さ
せて作るとされているが、このとれにくい結晶水も硝酸
アンモニウムに置き換えることができ、しかも安定な固
体酸化剤となる。本発明の複塩は、nが異なる2種以上
を組み合わせて使用してもよく、またMが異なる2種以
上を組み合わせて使用してもよい。また、結晶水をもつ
硝酸銅単体は114℃で溶融し、170℃で分解すると
されているが、硝酸アンモニウムとの複塩では200℃
までは安定で120℃までは固体である。結晶水の量は
金属の種類によって異なり、また同一金属の硝酸塩でも
無水塩、2〜9水塩の複数種類の結晶水を持つことがあ
るが、これらの量については特に制限はない。取り扱う
時の環境で安定な含水塩例えば硝酸銅では比較的低温
(約26℃以下)では6水塩、比較的高温では3水塩が
安定といわれておりこれらを使用できる。
【0013】これらの金属硝酸塩と硝酸アンモニウムを
混合すると、場合によっては水を放出して粘稠ないしは
スラリー状になったり、吸湿が激しく取り扱いにくい場
合には水を加えて溶液として混合しても良い。この混合
物を乾燥するが乾燥条件はその種類によって決めること
ができる。例えば加熱のみで乾燥する場合には60〜1
50℃、好ましくは90〜130℃を用いると効率良く
製作できる。なお、本発明の複塩は高温では不安定にな
ることもあり、高温の乾燥条件を採用する場合には、熱
分解特性を十分検討してから採用しなければならない。
真空乾燥する場合にはこれらの温度条件より緩和でき
る。作製する複塩が安全で混合物に含まれる水がなくな
るような乾燥条件を採用する。
【0014】上記の複塩からなる酸化剤は、有機物およ
び窒素含有有機物と混合することで自己燃焼性固体燃料
や固体ガス発生剤を作製できる。有機物は一般に燃料等
に用いられている炭素、水素、酸素などからなる化合物
であり、不揮発性の石油成分、蔗糖、ソルビツル酸等、
また高分子化合物は、末端水酸基ポリブタジエン、ポリ
プロピレングリコール、アザイドポリマ等のプレポリマ
と硬化剤を主成分とする熱硬化型高分子や酢酸セルロー
ス、ニトロセルロースなど熱可塑性高分子等一般的に用
いられている有機物や高分子化合物などを用いることが
可能である。これらに金属粉例えばアルミニウム、マグ
ナリウム、ホウ素、ジルコニウムの粉末やニトラミン化
合物例えばRDX、HMXなどを加え発熱量を高め高エ
ネルギー化することもできる。窒素ガスを多く含むこと
が好ましいガス発生剤を作製する場合に採用される窒素
含有有機物は一般的にはトリアゾール、テトラゾール環
を含む化合物、例えばビテトラゾール、5アミノテトラ
ゾールなど、やグアニジン誘導体例えばアミノグアニジ
ン、ニトログアニジン、ジシアンジアミド、硝酸グアニ
ジン等が代表的である。
【0015】上記有機物のうち特にテトラゾール誘導体
は窒素を多く発生し、CO2やH2Oの発生量が少なく窒
素を多く発生するので、エアバッグ用ガス発生剤に好適
である。さらに5アミノテトラゾールは安定で取り扱い
やすく現在硝酸ストロンチウムとの混合物を成形しイン
フレータに用いている例が知られている。しかしこの組
成物はガス発生効率が60〜70%しかない。これらの
改良のため、硝酸アンモニウムを酸化剤として5−アミ
ノテトラゾールに加える試みがなされているが、これら
の混合物は両者単体の融点より低い温度100〜110
℃で溶融する。ところが本発明の硝酸銅と硝酸アンモニ
ウムの複塩と5アミノテトラゾールとの混合物は、12
6℃でも溶融しないので、形状安定性及び熱安定性は良
好である。さらに本発明の硝酸銅と硝酸アンモニウムの
複塩は硝酸アンモニウムが硝酸銅1モルに対して1〜2
0モルであれば、硝酸アンモニウムの相転移点のうち8
4℃斜方晶系から正方晶系への相転移ならびに125℃
正方晶系から等軸晶系への相転移による熱吸収がなくな
る点も発見した。なお、硝酸アンモニウムが多く添加さ
れると、この転移点が残るためこの相安定化が必要な場
合には、別途または本発明の酸化剤を製造する工程で硝
酸アンモニウムの相安定化剤例えば硝酸カリウム、酸化
ニッケルなどを加えてもよい。前記硝酸アンモニウムの
相転移点の消失は、硝酸銅との複塩だけでなく、本発明
の複塩に共通して認められる特徴である。また、本発明
の酸化剤と有機物、窒素含有有機物からなる組成物、特
に本発明の硝酸銅と硝酸アンモニウムの複塩と5アミノ
テトラゾールの組成物の燃焼速度は硝酸アンモニウム単
体との組成物より大きく、インフレータ用に好適に用い
ることができる。
【0016】実施例1 表1の原料欄に示した7種類の金属硝酸塩水和物(和光
製、試薬特級)を窒素ボックス中で開封し、めのう乳鉢
に適量(1〜5g程度)入れ精秤しやすい程度に粉砕し
た。硝酸アンモニウム(和光製、試薬特級)は同様に約
10g程度を同じくめのう乳鉢に入れ粉砕後100メッ
シュの篩をパスさせたのち70℃で1時間以上乾燥し
た。これらを金属硝酸塩1モルに対し、硝酸アンモニウ
ム6モルを加えて混合した組成(合計1.1g)を作製
し、このうち1gを秤量瓶に秤り取って130℃で1時
間加熱した。加熱後数分大気中で冷却後重量を測定しさ
らに再度1時間追加加熱して再度秤量し重量減がないこ
とを確かめた。この加熱前後の重量差を初期のサンプル
重量で除し重量減量率を計算した。この結果を表1の加
熱減量測定値の欄に示した。この重量減量率は、表1の
結晶水理論値欄に示す結晶水の理論含有率によく一致し
ていることが判明した。このことは、複塩形成過程で原
料の金属硝酸塩から結晶水が遊離してその後の乾燥によ
って除去されたことを示している。生成物について元素
分析を行った。金属の定量は堀場製作所製のエネルギ分
散型蛍光X線分析装置MESA500によって原料に含
まれる金属種類であることを確認し、理論値とした。窒
素と水素は一般い用いられている差動法分析装置によっ
て行った。酸素は前記元素の残余であるから100から
金属、窒素、水素の合計を差しい引いて求めた。この分
析結果を表2に示す。窒素、水素、酸素とも金属硝酸塩
の硝酸アンモニウム複塩の理論量に一致した。
【0017】実施例2 硝酸銅3水塩及び硝酸マグネシウム6水塩を用い、この
金属硝酸塩1モルに対しそれぞれに硝酸アンモニウムを
1〜60モルとして実施例1と同じ方法条件で複塩を作
製した。このとき重量減少率(%)を測定し、生成物の
DSC(METTLER社製TOLEDO STAR
sysTem)のデータを得て硝酸アンモニウムの84
℃相変化点の有無を観測した。表3には硝酸銅を用いた
場合の、表4には硝酸マグネシウムを用いた場合の結果
を示す。この結果、重量の減少率(表3及び4の実測値
欄)は結晶水理論含有率(表3及び4の理論値欄)に一
致した。また、DSCで84℃の吸熱ピークは、硝酸ア
ンモニウムが1〜20モルの範囲(表3では記号Cu1
〜Cu13、表4では記号Mg1〜Mg13)で消失
し、相変化が起こらないことを示した。硝酸アンモニウ
ムの添加モル数が20を越えると84℃の吸熱ピークを
示すようになるのであまり好ましくない。なお、硝酸銅
及び硝酸マグネシウム単体で加熱減量を測定した結果を
表3及び4の比較例の欄に示す。加熱減量と結晶水の理
論量は、硝酸銅3水塩については両者が実験誤差範囲で
一致するが、硝酸マグネシウム6水塩では理論結晶水量
の67%の減量が起こるが、33%は残っており、これ
は6水塩の内2水塩が残るという文献(化学大辞典)に
記述に一致した。
【0018】実施例3 表3の硝酸銅3水塩と硝酸アンモニウムの複塩の代表例
10種と5アミノテトラゾールを組み合わせたガス発生
剤の燃焼特性を測定した。表5の理論ガス発生効率の欄
に記載されているが、本発明の酸化剤と5アミノテトラ
ゾールが燃焼反応おこし、水素は水、窒素はN2、炭素
はCO2、銅はCu2Oにそれぞれなると仮定した基本的
な化学式からガス発生量を計算し、目標とするガス発生
効率85%以上となる組成を主として選定した。実施例
1と同一条件で複塩を作製し、5アミノテトラゾールは
和光純製特級を乳鉢で粉砕し100メッシュパスとし、
70℃で1時間以上乾燥した物を用意した。
【0019】これらを原料として本発明ガス発生剤の燃
焼状況を測定した。表5の酸化剤配合量(%)および5
アミノテトラゾール配合量(%)欄に示すようなガス発
生剤組成を混合し、加圧プレスによって直径約7mm
(Doとする)、最大厚さ約1.5mm(Toとする)
の円盤状錠剤を15個(nとする)作成したのちこれら
の厚さ、直径および重量の測定を行った。また、着火薬
として、ホウ素22%硝酸カリウム78%の混合物を加
圧プレスによって1粒が150mg、直径7mmの円盤
状錠剤を作成した。また、点火薬として、チタン粉末4
5%と硝酸カリウム55%の混合物を作成した。燃焼速
度測定のため、安全弁、弁つきガス抜きパイプ、内圧測
定センサおよび点火電流端子を有する内容積約52ml
の圧力容器、および圧力測定器を用意した。さらに発生
ガス中に含まれる好ましくない微量ガス、すなわち、N
O、NO2、NH3、COが測定できるGASTECH社
製検知管ガス測定器と検知管を用意した。また発生する
主要ガスN2、CO2を測定するためガスクロマトグラフ
ィー(カラム:UnibeaeDs C)を用意した。
このガス発生剤からは、H2Oも発生するがサンプリン
グ中に液体となってしまい、この実測は困難であるので
理論値を採用した。100から水の理論値を差し引いた
値がN2とCO2であると仮定して、この値とガスクロマ
トグラフィーで測定したN2とCO2の比率との積をそれ
ぞれN2とCO2の測定値とした。これらを用意したのち
ガス発生剤の燃焼特性を測定した。圧力容器の点火電源
端子に直径約0.4mmのニクロム線を、また、圧力セ
ンサ取り付け孔に圧力センサを取り付け、ニクロム線の
まわりに前記のガス発生剤を充填した。(充填したガス
発生剤重量をWとする)。これに前記着火薬錠剤1錠と
点火薬粉末100mgを入れ圧力容器を密閉したのち、
ガス抜きパイプの弁を閉じ、圧力センサを圧力測定器に
接続して圧力を測定できるようにした。こののち点火電
源端子に約30ボルトの交流電気を通電しガス発生剤を
着火させ、圧力と時間の関係(圧力時間データという)
を測定記録した。燃焼完了後、検知管ガス測定器をガス
抜きパイプに取り付け、弁を開放して検知管によるガス
濃度を測定するとともにサンプル採取器により採取した
ガスをガスクロマトグラフィーに入れ主要ガスN2とC
2を測定し前記のようにデータを整理、計算した。こ
の結果を表5のN2測定値CO2測定値欄と微量ガスの欄
に示す。圧力時間データは初期圧力(0.1MPa)か
ら時間とともに徐々に上昇し最高圧力(Pmax)を示し
て平衡に達する。このデータから、密閉容器試験におけ
る燃焼速度の計算を行った。この原理は、圧力時間デー
タの最高圧力(Pmax)で充填されたガス発生剤全量
(W)が燃焼したと仮定する。各時間(Ti)の圧力
(Pi)をPmaxで除した値(Pi/Pmax)は、各時
間(Ti)までに燃焼したガス発生剤の量(Wi)と全
量の比(Wi/W)に相当していると考える。すなわち
Pi/Pmax= Wi/Wが成立する。ここで実験値か
らPi、Pmax、Wは測定できているからWiを計算で
きる。各時間(Ti)で残存しているガス発生剤の量
(Wr)とWiの和がW、従ってWr=W−Wiである
からWrも求めることができる。初期ガス発生剤の直径
をDo、厚さをTo各時間(Ti)までに燃焼した燃焼
距離をhi、ガス発生剤の密度をD、ガス発生剤の粒数
をnとすれば W=(π/4)×n×d×Do2×To, Wr=(π/4)×n×d×(Do−2×hi)2×
(To−2×hi) =W−Wiの関係がある。この関係から Wi/W=1−(Wr/W)=1−(Do−2×hi)
2×(To−2×hi)/(Do2×To) となり、hi以外は既知であるから、hiも計算でき、
時間(Ti)ごとの燃焼距離(hi)を計算できる。例
えば、圧力7MPaでの燃焼速度は、圧力6.8MPa
の時間(Ti)とそのときの燃焼距離(hi)および圧
力7.2MPaの時間(ti+1)とその時の燃焼距離(h
i+1)を求めると、 (hi+1−hi)/(ti+1−ti) となる。このようにして圧力7MPaの時の燃焼速度を
求めた。この結果を表5の燃焼速度の欄に記載した。こ
の結果、本発明ガス発生剤は、ガス発生効率が従来より
良好で、かつ燃焼速度も比較例の2〜3倍に増加してい
る。好ましくないガスのうちNOガスが多いような数値
であるが、エアバッグでは車の中の空気で約100倍程
度に薄められるので、この測定値の約1/100が実際
上の評価値となり、これも極めて少ないレベルにある。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の金属硝酸
塩と硝酸アンモニウムからなる複塩は、結晶水を持たず
に安定であって、発生ガス中の水分含有率は低く、ガス
発生効率が高く、かつガス発生速度も速いため、特にエ
アバッグ装置用などのガス発生剤として有用である。ま
た、本発明の複塩は、84℃、および125℃の相転移
がないので、その相転移に基づく体積変化に起因する粉
化が生じることがなく、安全性も高い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C06B 31/28 C06B 31/28 C06D 5/00 C06D 5/00 Z

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)で表される金属硝酸塩と硝
    酸アンモニウムからなる複塩。 M(NO3i・nNH4NO3 (1) 式中、Mは通常結晶水をもつ硝酸塩を生成する金属元
    素、iは金属元素Mの原子価に相当する数値、nは1〜
    20であり硝酸アンモニウムのモル数を表す。
  2. 【請求項2】 Mが銅、マグネシウム、カルシウム、ア
    ルミニウム、ニッケル、コバルト、亜鉛からなる群より
    選ばれる1種又は2種以上の金属である請求項1記載の
    複塩。
  3. 【請求項3】 nが2〜16である請求項1または2記
    載の複塩。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一つに記載の複
    塩からなるガス発生剤用酸化剤。
  5. 【請求項5】 結晶水を持つ金属硝酸塩と硝酸アンモニ
    ウム、必要に応じて水を加え、これらを混合したのち乾
    燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに
    記載の複塩の製造方法。
  6. 【請求項6】 燃料、および酸化剤からなるガス発生剤
    において、酸化剤が請求項4に記載の酸化剤であるガス
    発生組成物。
  7. 【請求項7】 燃料が窒素含有有機物である請求項6記
    載のガス発生剤。
  8. 【請求項8】 窒素含有有機物がテトラゾール誘導体で
    あり、酸化剤が硝酸銅と硝酸アンモニウムの複塩である
    請求項7のガス発生剤。
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