JP5017883B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操舵系に対して操舵補助力を発生するブラシレスモータと、前記操舵系に発生する操舵トルクに基づいて操舵補助指令値を演算する操舵補助指令値演算手段と、前記操舵補助指令値と、前記ブラシレスモータのモータ電流検出値とからモータ電流制御値を演算して、前記ブラシレスモータをデューティ制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
この種の電動パワーステアリング装置としては、例えば本出願人が先に提案した、ブラシモータにおいて、モータの端子電圧の検出値とモータをPWMで駆動する場合のデューティ比から推定されるモータ端子電圧推定値との差が所定時間以上継続して所定値を超えたときにモータ駆動系の故障と判断してモータ出力を停止させる駆動手段を具備した電動パワーステアリング装置の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−263240号公報(第1頁、図1、図3)
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、通常のブラシモータをHブリッジ回路で駆動する際に、モータの端子電圧を検出すると共に、デューティ比に電源電圧を乗算してモータ端子電圧推定値を算出し、モータ端子電圧検出値とモータ端子電圧推定値との偏差が所定時間以上継続して所定値以上であるときにはモータ駆動系の故障と判断するようにしており、モータハーネスに天絡や地絡が発生したときにはこれらを確実に検出することができるものであるが、多相のブラシレスモータについては開示がないと共に、検出したモータ端子電圧検出値をローパスフィルタを通過させてノイズ除去を行うようにしており、このローパスフィルタでの一次の位相遅れが発生し、この位相遅れの影響で正確な故障検出を行うことができないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、多相のブラシレスモータで、モータ端子電圧検出値とモータ端子電圧推定値とに基づいて正確な異常検出を行うことができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1に係る電動パワーステアリング装置は、操舵系に対して操舵補助力を発生する3相以上のブラシレスモータと、前記操舵系に発生する操舵トルクに基づいて操舵補助指令値を演算する操舵補助指令値演算手段と、前記操舵補助指令値と前記ブラシレスモータのモータ電流検出値とからモータ電流制御値を演算して、前記ブラシレスモータをデューティ制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、前記ブラシレスモータの各相の端子電圧を検出する端子電圧検出手段と、電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、前記モータ制御手段から出力されるデューティ比に基づいてモータ端子電圧推定値を演算するモータ端子電圧推定手段と、前記端子電圧検出手段で検出したモータ端子電圧検出値がノイズ除去用のローパスフィルタを介して入力され、当該モータ端子電圧検出値のフィルタ出力値と前記モータ端子電圧推定値との偏差が所定時間以上継続して所定値を超えたときにモータ駆動系の異常と判断する異常診断を行い、診断結果が異常であるときにモータ出力を停止させる異常診断手段とを備え、前記モータ端子電圧推定手段は、前記電源電圧検出手段で検出した電源電圧をローパスフィルタでノイズ除去した値と前記デューティ比との積によってモータ端子電圧推定値を演算するように構成され、前記異常診断手段は、前記モータ端子電圧推定値のフィルタ出力及びモータ端子電圧検出値の少なくとも一方の位相を調整して両者の位相マッチングを行う位相調整手段を備えていることを特徴としている。
また、請求項2に係る電動パワーステアリング制御装置は、請求項1に係る発明において、前記異常診断手段は、前記電源電圧検出手段で検出した電源電圧検出値が所定値以下であるときに前記異常診断を中止するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記異常診断手段は、前記ブラシレスモータの回転速度を検出する回転速度検出手段を有し、該回転速度検出手段で検出したモータ回転速度が所定値以上であるときに前記異常診断を中止するように構成されていることを特徴としている。
本発明によれば、多相駆動されるブラシレスモータで、各相の端子電圧検出値及びモータ端子電圧推定値に基づいて異常診断を行う場合に、電源電圧検出値及び端子電圧検出値のローパスフィルタ処理による一次の位相遅れを位相調整手段で調整することにより、位相遅れの影響を除去した正確な異常診断を行うことができるという効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す全体構成図であって図中、1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が入力軸2aと出力軸2bとを有するステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ3を介して出力軸2bの一端に連結されている。
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント4を介してロアシャフト5に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ8を介してタイロッド9に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ8は、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8aとこのピニオン8aに噛合するラック8bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8aに伝達された回転運動をラック8bで直進運動に変換している。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速ギヤ11と、この減速ギヤ11に連結された操舵補助力を発生する例えば3相のブラシレスモータ12とを備えている。
操舵トルクセンサ3は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を例えばポテンショメータで検出するように構成されている。
このトルクセンサ3から出力されるトルク検出値Tは、コントローラ15に入力される。このコントローラ15には、トルク検出値Tの他に車速センサ16で検出した車速検出値V、モータ電流検出器17u、17v及び17wで検出したブラシレスモータ12の例えばスター結線された励磁コイルLu、Lv及びLwに流れるモータ駆動電流検出値Idu、Idv及びIdw、端子電圧検出部27u、27v及び27wで検出した励磁コイルLu,Lv及びLwのモータ端子電圧Vu、Vv及びVw及びロータ回転位置検出器18で検出したロータ回転位置を表すロータ位置信号RPも入力されている。
そして、コントローラ15は、図2に示すように、入力されるトルク検出値T及び車速検出値Vに基づいて図4に示す操舵補助指令値算出用マップを参照することにより、操舵トルクにT及び車速検出値Vに応じた操舵補助力をブラシレスモータ12で発生する操舵補助指令値IM *を算出する操舵補助指令値演算部21と、この操舵補助指令値演算部21から出力される操舵補助指令値IM *応じた振幅でロータ位置信号RPに基づく位相に制御された各相電流指令信号Itu,Itv及びItwを出力する電流指令値演算部22と、この電流指令値演算部22から出力される各相電流指令値Itu、Itv及びItwからモータ電流検出値Idu、Idv及びIdwを減算して電流偏差ΔIu、ΔIv及びΔIwを算出する減算器23u、23v及び23wと、これら減算器23u、23v及び23wから出力される電流偏差ΔIu、ΔIv及びΔIwを例えばPID制御してデューティ比Du、Dv及びDwを出力する電流制御部24と、この電流制御部24から出力されるデューティ比Du、Dv及びDwに基づいて6つのパルス幅変調信号を形成するゲートドライブ回路としてのパルス幅変調部25と、このパルス幅変調部25から出力されるパルス幅変調信号が入力されて、モータ駆動電流を形成するモータ駆動回路としてのインバータ回路26と、ブラシレスモータ12及びインバータ回路26間のモータハーネスのモータ端子電圧を検出する端子電圧検出部27u、27v及び27wと、電流制御部24から出力されるデーティ比Du、Dv及びDwとモータ端子電圧検出部27u、27v及び27wから出力されるモータ端子電圧検出値Vdu、Vdv及びVdwとに基づいて異常診断を行う異常診断手段としての異常診断部28とを備えている。
ここで、操舵補助指令値演算部21は、操舵トルクT及び車速検出値Vに基づいて図4に示す操舵補助指令値算出マップを参照して操舵補助指令値IM *を算出する。この操舵補助指令値算出マップは、図4に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助指令値IM *をとると共に、車速検出値Vをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成され、操舵トルクTが“0”からその近傍の設定値T1までの間は操舵補助指令値IM *が“0”を維持し、操舵トルクTが設定値T1を超えると最初は操舵補助指令値IM *が操舵トルクTの増加に対して比較的緩やかに増加するが、さらに操舵トルクTが増加すると、その増加に対して操舵補助指令値IM *が急峻に増加するように設定され、この特性曲線が車速が増加するに従って傾きが小さくなるように設定されている。
また、インバータ回路26は、バッテリ19からモータリレー回路20を介して電力が供給される電源供給側(上段側)に3個、アース側(下段側)に3個の計6個の電界効果トランジスタで構成されるパワートランジスタQua〜Qwbを有し、これら6個のパワートランジスタQua〜Qwbは、上段側と下段側とで対応するパワートランジスタが直列接続され、これら直列接続の各パワートランジスタ対(Qua−Qub、Qva−Qvb、Qwa−Qwb)の接続部が3相ブラシレスモータ12の各励磁コイルLu、Lv及びLwの外端と接続されている。そして、各パワートランジスタQua〜Qwbのゲートにパルス幅変調部25から出力されるゲート駆動信号GTua〜GTwbが供給されている。
また、端子電圧検出部27u〜27wは、電源と接地との間に直列に接続されたプルアップ抵抗R1及びプルダウン抵抗R2を有し、これらプルアップ抵抗R1及びプルダウン抵抗R2の接続点がブラシレスモータ12の励磁コイルLu、Lv及びLwの開放端とインバータ回路26との間のモータハーネスに接続されていると共に、プルアップ抵抗R1及びプルダウン抵抗R2の接続点から得られるモータ端子電圧検出値Vdu、Vdv及びVdwがノイズを除去するローパスフィルタ28u、28v及び28wを介して異常診断部28に入力される。
異常診断部28は、図3に示すように、ブラシレスモータ12の各相に対応する端子電圧を監視する端子電圧監視回路29u、29v及び29wと、これら端子電圧監視回路29u、29v及び29wから出力される端子電圧値の絶対値を所定値と比較して異常であるか否かを判定する異常判定部30とを有する。各端子電圧監視回路29u、29v及び29wには、電流制御部24から出力されるデューティ比Du、Dv及びDwが直接入力されると共に、電源電圧を検出する電源電圧検出回路31からノイズを除去するローパスフィルタ32を介して電源電圧検出値Vbが入力され、さらにモータ端子電圧検出値Vdu、Vdv及びVdwがローパスフィルタ28u、28v及び28wを介して入力されている。
端子電圧監視回路29uは、電流制御部24から出力される−0.5〜+0.5の範囲のデューティ比Duに0.5を加算して正値に変換する加算器33と、この加算器33から出力される正値のデューティ比にローパスフィルタ32から入力される電源電圧Vbを乗算してモータ端子電圧推定値Vpuを算出する乗算器34と、この乗算器34で算出されるモータ端子電圧推定値Vpuに対してローパスフィルタ28u及び32の位相遅れを調整する位相調整手段としてのモータ端子電圧検出回路モデルで構成される位相遅れ補償器35と、この位相遅れ補償器35で位相調整されたモータ端子電圧推定値Vpuからローパスフィルタ28uから出力されるモータ端子電圧検出値Vduを減算して電圧偏差ΔVuを算出する減算器36と、この減算器36から出力される電圧偏差ΔVを例えば移動平均して平均化する平均化回路37と、この平均化回路37から出力される電圧偏差ΔVの平均値を絶対値に変換する絶対値化回路38とを備えている。ここで、位相遅れ補償器35は、電源電圧検出値Vbをフィルタ処理するローパスフィルタ32の伝達関数を1/TVbs+1とし、モータ端子電圧検出値Vdiをフィルタ処理するローパスフィルタ28iの伝達関数を1/TVds+1とし、TVd>TVbであるものとすると、伝達関数GVp(s)はGVp(s)=(TVbs+1)/(TVds+1)に設定されている。
同様に、他の端子電圧監視回路29v及び29wも上記端子電圧監視回路29uと同様の構成を有する。
そして、各端子電圧監視回路29u、29v及び29wから出力される絶対値が異常判定部30に供給され、この異常判定部30で電圧偏差ΔVu〜ΔVwの絶対値|ΔVu|〜|ΔVw|が所定閾値ΔVthと比較して、|ΔVi|(i=u、v、w)<ΔVthであるときには正常と判断し、|ΔVi|(i=u、v、w)≧ΔVthであるときには異常と判断して、この異常状態が所定時間以上継続したときに、モータ駆動系が異常であることを表す異常信号を少なくともインバータ回路26に出力して、ブラシレスモータ12へのモータ電流の供給を停止する。
なお、異常判定部30は電源電圧検出回路31で検出された電源電圧Vbがローパスフィルタ32を介して入力されると共に、ロータ回転位置検出回路18から出力されるロータ位置に基づいてモータ回転角速度ωを算出するモータ回転角速度演算部40からのモータ回転角速度ωが入力され、電源電圧Vbが予め設定した設定電圧Vth以下に低下したとき及びモータ回転角速度ωが予め設定した設定角速度ωth以上に上昇したときに、異常判定を停止する異常判定停止機能を備えている。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、モータ駆動系が正常であるものとすると、図示しないキースイッチをオン状態とすることにより、コントローラ15にバッテリ19からの電源が投入されることにより、コントローラ15が作動状態となる。この状態で、例えば車両の停止時に、ステアリングホイール1を操舵していない状態では、操舵トルクセンサ3で検出される操舵トルクTが“0”であるので、操舵補助指令値演算部21で操舵補助指令値算出マップを参照して算出される操舵補助指令値IM *が“0”となり、ブラシレスモータ12を停止していてモータ駆動電流Imu〜Imwが“0”であることから、減算器23u〜23wから出力される電流偏差ΔIu〜ΔIwも“0”となり、電流制御部24u〜24wから出力されるデューティ比Du〜Dwも“0”となって、パルス幅変調部25から出力されるパルス幅変調信号のデューティ比が50%となり、且つ上アームの電界効果トランジスタに供給するパルス幅変調信号と下アームの電界効果トランジスタに供給するパルス幅変調信号とにはデッドタイムが設けられているので、上アームの電界効果トランジスタQua、Qva、Qwaと下アームの電界効果トランジスタQub、Qvb、Qwbとが導通することはなく、3相ブラシレスモータ12の各相コイルLu、Lv及びLwに供給されるモータ電流Imu、Imv及びImwは“0”となり、3相ブラシレスモータ12は停止状態を維持する。
このステアリングホイール1の非操舵状態から、車両の停止時にステアリングホイール1を操舵して所謂据え切り状態とすると、これに応じて操舵トルクセンサ3で検出される操舵トルクTが大きな値となると共に、車速Vsが“0”であるので、図4の操舵補助指令値算出マップで一番急峻な特性曲線が選択されることにより、操舵トルクTの増加に応じて大きな値の操舵補助指令値IM *が算出されることになり、これが電流指令値演算部22に供給されることにより、この電流指令値演算部22で、ロータ位置信号RPに基づく位相に制御された各相の電流指令値Itu〜Itwが出力される。
このとき、モータ電流検出器17u〜17wで検出されるモータ電流検出値Idu〜Idwは“0”を維持しているので、減算器23u〜23wから出力される電流偏差ΔIu〜ΔIwは、電流指令値Itu〜Itwそのものとなり、これらが電流制御部24u〜24wでPID制御されてデューティ比Du〜Dwが出力され、これらがパルス幅変調部25に供給されて、このパルス幅変調部25からデューティ比Du〜Dwに応じたパルス幅変調信号がインバータ回路26に出力される。このため、インバータ回路26の各パワートランジスタQua〜Qwbが制御されて、モータ駆動電流Imu〜Imwがブラシレスモータ12の励磁コイルLu〜Lwに供給されることにより、ブラシレスモータ12が回転駆動されて操舵補助指令値IM *に応じた操舵補助力を発生し、これが減速ギヤ11を介してステアリングシャフト2に伝達されることにより、ステアリングホイール1を軽い操舵力で操舵することができる。
その後、車両が走行を開始すると、これに応じて操舵補助指令値演算部21で算出される操舵補助指令値IM *が低下することにより、モータ電流指令値Itu〜Itwが減少し、これに応じてモータ駆動電流Imu、Imv及びImwが減少して、3相ブラシレスモータ12で発生する操舵補助力が減少される。
このとき、異常診断部28では、モータ駆動系が正常であるので、各相デューティ比Du〜Dwに0.5を加算した正値と電源電圧検出回路31で検出した電源電圧Vbとを乗算器34で乗算することにより、モータ端子電圧推定値Vpu〜Vpwを算出し、算出したモータ端子電圧推定値Vpuに対してモータ端子電圧検出回路モデルで構成される位相遅れ補償器35で、モータ端子電圧検出回路のローパスフィルタ28uによる位相遅れに併せた位相遅れとなるように位相調整して減算器36に出力する。この減算器36には、端子電圧検出部27uから出力されるモータ端子電圧検出値Vduがローパスフィルタ28uでノイズ除去されて供給されている。
このとき、モータ駆動系が正常であるので、モータ端子電圧推定値Vpuとモータ端子電圧検出値Vduとは略等しく、両者の電圧偏差ΔVuは略零であり、これを平均化回路37で平均化してから絶対値化回路38で絶対値に変換したときでも絶対値|ΔVu|が略“0”となり、これが異常判定部30に供給されることにより、この異常判定部30で所定値ΔVthと比較したときに、|ΔVu|<ΔVthとなって、正常と判断され、異常検出信号Saは出力されず、リレー回路20がオン状態を継続して、インバータ回路26にバッテリ19の電力が供給されて操舵補助制御が継続される。
このモータ駆動系の正常状態から、例えばU相のモータハーネスで断線が発生すると、このモータハーネスにはモータ電流が流れないので、モータ電流検出器17uで検出されるモータ電流検出値Iduが“0”となることから電流制御部24で算出されるデューティ比Dが直ちに最大値近傍まで増加する。よって、デューティ比Dと電源電圧Vbとの積で算出されるモータ端子電圧推定値Vpuが大きな値となり、モータ端子電圧検出値Vduは低い状態を維持するので、両者の電圧偏差ΔVuが大きな値となり、平均化回路37で算出される平均値も大きな値となり、これが絶対値化回路38で絶対値に変換されて異常判定部30に供給される。このため、|ΔVu|が所定値ΔVth以上の値となることにより、この状態が所定時間以上継続するとモータ駆動系の異常と判定されてモータリレー回路20がオフ状態に制御されて、インバータ回路26への電力供給が遮断されて、ブラシレスモータ12の駆動が停止される。
また、インバータ回路26とブラシレスモータ12の励磁コイルLi(i=u,v,w)との間のモータハーネスに地絡又は天絡が発生した場合には、パルス幅変調部25から出力されるパルス幅変調信号によってインバータ回路26のパワートランジスタQia又はQibがオン状態となる毎にモータハーネスに大電流が流れることにより、端子電圧検出部27u〜27wで検出したモータ端子電圧検出値Vdu〜Vdwと、デューティ比Du〜Dwと電源電圧Vbとの乗算値でなるモータ端子電圧推定値Vpu〜Vpwとが等しくならないことから、前述した断線の場合と同様に電圧偏差ΔViの平均値の絶対値|ΔVi|が所定値ΔVthより大きくなり、この状態が所定時間以上継続すると異常判定部30で異常と判断されて、異常検出信号が出力される。このため、モータリレー回路20がオフ状態に制御されて、インバータ回路26への電力の供給が遮断されることにより、インバータ回路26からのモータ駆動電流Imu〜Imwの出力が停止される。
さらに、インバータ回路26のパワートランジスタQia又はQibがゲート信号にかかわらずオン状態を継続するオン異常又はオフ状態を継続するオフ異常状態となったときにも、パワートランジスタQia又はQibのゲートに供給されるパルス幅変調信号のオン・オフにかかわりなくモータハーネスに電流が流れることになるので、端子電圧検出部27iで検出したモータ端子電圧検出値Vdiと、デューティ比Diと電源電圧Vbとの積でなるモータ端子電圧推定値Vpiとの電圧偏差ΔViが正又は負の大きな値となり、これを平均化回路37で平均化した後絶対値化回路38で変換した絶対値|ΔVi|が大きな値となり、所定値ΔVth以上となるので、この状態が所定時間以上継続すると異常状態であると判断されて、異常検出信号がモータリレー回路20に供給されて、このモータリレー回路20がオフ状態に制御され、インバータ回路26への電力の供給が遮断されて、ブラシレスモータ12へのモータ駆動電流Imu〜Imwの供給が停止される。
このように、上記第1の実施形態によると、モータ駆動系の異常即ち天絡、地絡、断線、インバータ回路26のパワートランジスタQua〜Qwbのオン異常又はオフ異常を正確に検出することができる。
しかも、端子電圧検出部27iで検出するモータ端子電圧検出値Vdiと、デューティ比Diと電源電圧Vbとを乗算して算出するモータ端子電圧推定値Vpiとは、夫々がノイズ除去のためのローパスフィルタ28i及び32を介して通過させることにより、こさらローパスフィルタ28i及び32の出力が一次遅れとなり、ローパスフィルタ28iがローパスフィルタ32より位相遅れが大きいものとすると、乗算器34で算出されたモータ端子電圧推定値Vpiが位相遅れ補償器35でローパスフィルタ28iの位相遅れに相当する位相遅れを生じさせて、モータ端子電圧検出値Vdiとモータ端子電圧推定値Vpiとが位相誤差の影響によって誤った異常判定を確実に防止することができる。
その上、モータ回転角速度ωが所定値ωth以上となるブラシレスモータ12の高速回転時には、モータ端子電圧検出値Vdiとモータ端子電圧推定値Vpiとの誤差が大きくなるので、異常判定を中止することにより、誤検出を防止することができる。さらに、電源電圧Vbが低い場合には、インバータ回路26のパワートランジスタQua〜Qwbを正確に駆動することが困難となるため、同様に異常判定を中止することにより、誤検出を防止することができる。
なお、上記実施形態においては、モータ端子電圧検出値Vdiのノイズ除去用のローパスフィルタ28iの位相遅れが電源電圧Vbのノイズ除去用のローパスフィルタ32の位相遅れより大きい場合について説明したが、これに限定されるものではなく、逆に電源電圧Vbのノイズ除去用のローパスフィルタ32の位相遅れがモータ端子電圧検出値Vdiのノイズ除去用ローパスフィルタ28iの位相遅れよりも大きいときには、図5に示すように、乗算器34の後段側の位相遅れ補償器35を省略し、これに代えてノイズフィルタ28iと減算器36との間に電源電圧検出回路モデルに相当する位相遅れ補償器50を介挿し、その伝達関数GV(s)をGV(s)=(TVds+1)/(TVbs+1)とすることにより、モータ端子電圧検出値Vdiに電源電圧Vbのノイズ除去用のローパスフィルタ32の位相遅れに相当する分だけ位相遅れを生じさせて、モータ端子電圧検出値Vdiとモータ端子電圧推定値Vpiとの位相マッチングを正確に行って、誤検出を確実に防止することができる。
また、上記実施形態においては、コントローラ15をハードウェアで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、コントローラ15をマイクロコンピュータで構成し、このマイクロコンピュータで図6に示す操舵補助制御処理と、図7に示す異常診断処理を実行するようにすればよい。
すなわち、操舵補助制御処理は、図6に示すように、先ず、ステップS41で電流検出回路27u、27v及び27wで検出したブラシレスモータ12へ出力する相電流Imu及びImwを読込み、次いでステップS42に移行して、操舵トルクセンサ3で検出された操舵トルクT及び車速センサ50で検出した車速Vを読込んでからステップS43に移行する。
このステップS43では、読込んだ操舵トルクTs及び車速Vをもとに前述した第1の実施形態における図4に示す操舵補助指令値算出マップを参照してモータ指令電流値で表される操舵補助指令値IM *を算出する。
次いで、ステップS44に移行して、ロータ回転位置検出回路18で検出したロータ回転角θM を読込み、次いでステップS45に移行して、ステップS43で算出した操舵補助指令値IM *とロータ回転角θM とに基づいてブラシレスモータ12のU相、V相及びW相の電流指令値Itu 、Itv 及びItw に変換する三相分相処理を行ってからステップS46に移行する。
このステップS46では、ステップS41で読込んだモータ相電流検出値Imu、Imv及びImwと上記ステップS45で変換した電流指令値Itu 、Itv 及びItw とに基づいて両者の偏差にPID処理を行って電流フィードバック処理を行って電流指令値となるデューティ比Du、Dv及びDwを算出し、次いでステップS49に移行して、デューティ比Du、Db及びDwに応じたパルス幅変調(PWM)信号を形成し、これをインバータ回路26へ出力し、次いでステップS48に移行して制御を終了するか否かを判定し、制御を継続する場合には前記ステップS1に戻り、制御を終了する場合には、処理を終了する。
この図6の処理で、ステップS41〜S43の処理が操舵補助指令値演算手段に対応し、ステップS44〜S47の処理がモータ制御手段に対応している。
また、異常診断処理は、図7に示すように、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS51で、操舵補助制御処理で算出したデューティ比Di(i=u,v,w)、モータ端子電圧検出値Vdi、電源電圧Vbを読込み、次いでステップS52に移行して、デューティ比Diに0.5を加算してデューティ比Diを正値Di′に変換してからステップS53に移行する。
このステップS53では、正値のデューティ比Diに電源電圧Vbを乗算してモータ端子電圧推定値Vpiを算出し、次いでステップS54に移行して、モータ端子電圧推定値Vpiについて伝達関数GVp(s)はGVp(s)=(TVbs+1)/(TVds+1)に設定された位相遅れ補償処理を行って位相補正モータ端子電圧推定値Vpi′を算出してからステップS55に移行する。
このステップS55では、位相補正モータ端子電圧推定値Vpi′からモータ端子電圧検出値Vdiを減算して電圧偏差ΔViを算出し、次いでステップS56に移行して、算出した電圧偏差ΔViを移動平均処理して平均値ΔViMを算出し、次いでステップS57に移行して、平均値ΔViMの絶対値|ΔViM|を算出する。
次いで、ステップS58に移行して、モータ角速度ωを読込み、次いでステップS59に移行して、モータ角速度ωが予め設定した所定値ωth以上であるか否かを判定し、ω≧ωthであるときには異常診断を中止するものとしてそのままタイマ割込処理を終了し、ω<ωthであるときには異常診断を継続するものと判断してステップS60に移行し、電源電圧Vbが所定値VL以下であるか否かを判定し、Vb≦VLであるときには異常診断を中止するものとしてそのままタイマ割込処理を終了し、Vb>VLであるときには異常診断を継続するものと判断してステップS61に移行する。
このステップS61では、電圧偏差の絶対値|ΔViM|が所定値Vth以上であるか否かを判定し、|ΔViM|<Vthであるときにはモータ駆動系が正常であると判断してステップS62に移行して、経過時間をカウントするタイマ値Nを“0”にクリしてからタイマ割込処理を終了し、|ΔViM|≧VthであるときにはステップS63に移行して、計時時間をカウントするタイマ値Nを“1”だけインクリメントしてからステップS64に移行する。
このステップS64ではカウント値Nが予め設定した所定値Ns以上であるか否かを判定し、N<Nsであるときにはそのままタイマ割込処理を終了し、N≧Nsであるときには、モータ駆動系に異常が発生したものと判断してステップS65に移行して、異常検出信号Saをモータリレー回路20に出力してからタイマ割込処理を終了する。
この図7の処理において、ステップS53の処理がモータ端子電圧推定手段に対応し、ステップS54の処理が位相調整手段に対応し、ステップS55〜S57及びS61〜S65の処理が異常診断手段に対応している。
この図7の処理では、ステップS52〜S57の電圧偏差ΔViの平均値算出処理については電源電圧検出値Vbが所定値VL以下であるか、又はモータ角速度ωが所定値ωth以上であるかの異常診断中止条件が整った場合でも常時行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ステップS58〜S60の処理をステップS51及びステップS52間に設けて、異常診断中止条件が整ったときに全ての異常診断処理を中止するようにしてもよく、さらには電源電圧Vbの読込み及びステップS58〜ステップS60の処理を異常診断中止監視処理として独立させ、この異常診断中止監視処理の判断結果が異常診断中止であるときに図7の処理の実行を停止させるようにしてもよい。
なお、上記実施形態においては、モータ端子電圧推定値Vpiに位相調整手段を設けるかモータ端子電圧検出値Vdiに位相調整手段を設ける場合について説明したが、これらに限定されるものではなく、モータ端子電圧推定値Vpi及びモータ端子電圧検出値Vdiの双方に位相調整手段を設けるようにしてもよく、さらには位相調整手段としては位相遅延手段に限らず、位相進み手段又は位相進み・遅れ手段を設けるようにしてもよく、要はモータ端子電圧推定値Vpiとモータ端子電圧検出値Vdiとの位相が揃う用に調整すれば良いものである。
また、上記実施形態においては、3相のブラシレスモータに本発明を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、4相以上のブラシレスモータに本発明を適用するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、本発明によるブラシレスモータを電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の車両用機器や動力発生装置等の回転駆動源を必要とする任意の装置に本発明のブラシレスモータを適用することができる。
また、モータ制御部としては上記構成に限定されるものではなく、ベクトル制御方式を適用するようにしてもよい。
本発明の一実施形態を示す概略構成図である。 図1のコントローラの具体的構成を示すブロック図である。 図2の異常診断部の具体的構成を示すブロック図である。 操舵補助指令値算出マップを示す特性線図である。 本発明の他の実施形態を示す異常診断部のブロック図である。 マイクロコンピュータで実行する操舵補助制御処理手順の一例を示すフローチャートである。 マイクロコンピュータで実行する異常診断処理手順の一例を示すフローチャートである。
符号の説明
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…操舵トルクセンサ、4…8…ステアリング機構、10…操舵補助機構、11…減速ギヤ、12…ブラシレスモータ、15…コントローラ、16…車速センサ、17u〜17w…モータ電流検出器、18…ロータ回転角検出器、19…バッテリ、20…モータリレー回路、21…操舵補助指令値演算部、22…電流指令値演算部、23u〜23w…減算器、24u〜24w…電流制御部、25…パルス幅変調部、26…インバータ回路、27u〜27w…モータ端子電圧検出部、28…異常診断部、29u〜29w…モータ端子電圧監視部、30…異常判定部、31…電源電圧検出回路、32…ローパスフィルタ、33…加算器、34…乗算器、35…位相遅延補償器、36…減算器、37…平均化回路、38…絶対値化回路、40…モータ回転角速度演算部、50…位相遅れ補償器

Claims (3)

  1. 操舵系に対して操舵補助力を発生する3相以上のブラシレスモータと、前記操舵系に発生する操舵トルクに基づいて操舵補助指令値を演算する操舵補助指令値演算手段と、前記操舵補助指令値と前記ブラシレスモータのモータ電流検出値とからモータ電流制御値を演算して、前記ブラシレスモータをデューティ制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
    前記ブラシレスモータの各相の端子電圧を検出する端子電圧検出手段と、電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、前記モータ制御手段から出力されるデューティ比に基づいてモータ端子電圧推定値を演算するモータ端子電圧推定手段と、前記端子電圧検出手段で検出したモータ端子電圧検出値がノイズ除去用のローパスフィルタを介して入力され、当該モータ端子電圧検出値のフィルタ出力値と前記モータ端子電圧推定値との偏差が所定時間以上継続して所定値を超えたときにモータ駆動系の異常と判断する異常診断を行い、診断結果が異常であるときにモータ出力を停止させる異常診断手段とを備え、
    前記モータ端子電圧推定手段は、前記電源電圧検出手段で検出した電源電圧をローパスフィルタでノイズ除去した値と前記デューティ比との積によってモータ端子電圧推定値を演算するように構成され、
    前記異常診断手段は、前記モータ端子電圧推定値のフィルタ出力及びモータ端子電圧検出値の少なくとも一方の位相を調整して両者の位相マッチングを行う位相調整手段を備えている
    ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記異常診断手段は、前記電源電圧検出手段で検出した電源電圧検出値が所定値以下であるときに前記異常診断を中止するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記異常診断手段は、前記ブラシレスモータの回転速度を検出する回転速度検出手段を有し、該回転速度検出手段で検出したモータ回転速度が所定値以上であるときに前記異常診断を中止するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
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