JP5016957B2 - 凹凸構造を有する型及び光学素子用型の製造方法並びに光学素子 - Google Patents

凹凸構造を有する型及び光学素子用型の製造方法並びに光学素子 Download PDF

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本発明は、凹凸構造を有する型及び光学素子用型の製造方法、及び光学素子に関する。
特に、本発明に係る光学素子用金型を用いて成形された光学素子は、光の入出射面での界面反射光量を抑制する機能を有する。例えばカメラやビデオカメラをはじめとする撮像機器、もしくは液晶プロジェクタや電子写真機器の光走査装置をはじめとする投影機器に好適である。
一般に表面反射光量を抑制する必要のある光学素子は、その表面に屈折率の異なる光学膜を数十乃至数百nmの厚みで単層あるいは複数層を積層して所望の反射特性を得ている。これら光学膜を形成するためには、蒸着、スパッタリング等の真空成膜法やディップコート、スピンコート等の湿式成膜法が用いられる。これらいずれの成膜手段をとるとしても、光学素子基体を加工した上で成膜しなければならないため製造が困難でコストを低減するにはそれぞれに制約がある。
一方、光学膜を用いずに光学素子の表面に設計波長と同等以下のピッチで微細形状を形成することで界面反射光量を抑制できることが知られている。この原理を利用し金型に該微細形状を形成し、基体の成形とともに光学素子を製造することができれば究極的に製造コストを低減することが可能となる。
従来よりSWS(Sub Wave−length Structure)と呼ばれる、微細形状を形成する手法として半導体プロセスが広く用いられているが、この方法は精密に設計されたSWSを形成できる利点がある。しかしながら、曲面上の大面積に形成する場合は制約が多く、安価(簡易)に製造するには非常に難しいという問題点があった。
一方、簡易にSWSを製造する手法の1つとして微粒子を利用して形成する手法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
特許文献1において、微粒子を利用する場合、大面積に一括してSWSを形成することが可能である。しかしながら、該微粒子を連続的に均等に並べてSWSを構成するため、反射特性を決める基材と雰囲気との体積比率やアスペクト比を制御することが難しく、理想的な反射防止効果を得ることが難しいという問題点があった。
他方、大面積に安価にSWSを形成しアスペクト比も任意に制御できる手法として、陽極酸化法が知られている。酸性電解液中でアルミニウム等の金属を陽極として通電し酸化させることで微細な孔が形成される。このことを利用して規則的に孔を並べる手法や孔に異種材料を充填する手法等が開発されてきている(例えば特許文献3、4参照)。
特開2000−071290号公報 特開2001−074919号公報 特開平2−254192号公報 特開平10−121292号公報
光学素子に光が入射すると該光学素子の入出射面で不要となる反射光が生じる。このとき光学素子の入出射面で発生する反射光による課題を従来のレーザービームプリンタ(LBP)を例に説明する。ただし、本発明が解決しようとする課題は光が入出射する界面で起こるフレネル反射による不具合であり、固体表面の反射に限ったものではない。
図10はLBP等に用いられる従来の光走査装置の主走査方向の要部断面図(主走査断面図)である。
同図において光源手段1から出射した発散光束はコリメーターレンズ8によって略平行光束もしくは収束光束とされ、開口絞り3によって該光束(光量)を整形して副走査方向のみに屈折力を有するシリンドリカルレンズ4に入射している。シリンドリカルレンズ4に入射した光束のうち主走査断面内においてはそのままの状態で出射し、副走査断面内においては収束して回転多面鏡(ポリゴンミラー)から成る光偏向器5の偏向面5a近傍にほぼ線像として結像している。
そして光偏向器5の偏向面5aで反射偏向された光束をfθ特性を有する2枚のfθレンズ6a、6bを有する結像光学手段(fθレンズ系)6を介して被走査面としての感光ドラム面7上へ導光する。そして、該光偏向器5を矢印A方向に回転させることによって該感光ドラム面7上を矢印B方向(主走査方向)に光走査して画像情報の記録を行っている。
近年、結像光学手段を構成するfθレンズ(光学素子)は自由曲面形状で構成することが多く、該形状を製造しやすいプラスチック材料で生産されることが一般的になってきている。
ところが、プラスチックレンズは技術的、コスト的な理由からレンズ面に反射防止膜を施すことが困難なため反射防止膜を省く場合があり、各光学面での表面反射が発生し、不具合が生じることがあった。つまり、反射防止膜を省略したfθレンズ面で生じる表面反射光が他の光学面で反射して最終的に被走査面の意図しない部位に到達し、ゴースト現象を引き起こすことがあった。
特に図10に示すように2枚のfθレンズのうち、比較的光偏向器5に近い光学面(fθレンズ面)6a1が凹面形状で入射光束が垂直に近い入射角を持つ場合、該光学面6a1での表面反射光が光偏向器5に戻る。そして、該光偏向器5の偏向面(反射面)5aで再反射して結像光学手段6を通過後、感光ドラム面7上の意図しない部位に到達してゴーストとなる不具合が生じることがあった。
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するためになされたものであり、有限の曲率を有する光学素子の光学面全面において、均一なる反射防止特性を得ることができる光学素子及びその光学素子用金型の製造方法の提供を目的とする。
上記の課題は、本発明による以下の手段により解決される。
すなわち、第1の発明の型の製造方法は、基板上に凹凸構造を有する型の製造方法であって、前記基板上に第1の材料と該第1の材料と相分離する第2の材料を同時に成膜する工程と、前記成膜工程により得られた前記第1の材料を成分とする複数のシリンダーと、前記複数のシリンダーを取り囲む前記第2の材料を成分としたマトリックス領域とを有し、該第1及び第2の材料の少なくともいずれか一方にニッケルを含有する混合膜から該マトリックス領域を除去する。そして、前記第1の材料からなる型を作製する工程とを含むことを特徴とする。
第2の発明の型の製造方法は、基板上に凹凸構造を有する型の製造方法であって、前記基板上に第1の材料と該第1の材料と相分離する第2の材料を同時に成膜する工程を有する。そして、前記成膜工程により得られた前記第1の材料を成分とするマトリックス領域と、前記マトリックス領域に取り囲まれた前記第2の材料を成分とする複数のシリンダーとを有し、該第1及び第2の材料の少なくともいずれか一方にニッケルを含有する混合膜から該シリンダー部分を除去する。こうして前記第1の材料からなる型を作製する工程とを含むことを特徴とする。
また、第3の発明の光学素子用型は、上記の光学素子用金型の製造方法により製造されたことを特徴とする。
さらに、第4の発明の光学素子は、第3の発明の光学素子用金型を用いて成形されたことを特徴とする。
第5の発明の型の製造方法は、基板上に凹凸構造を有する型の製造方法であって、前記基板上に第一の部材と該第一の部材と相分離する第二の部材を同時に成膜する工程と、前記成膜工程により得られた前記第一と第二の柱状部材で構成される2相分離構造を有する混合膜からいずれか一方の相で構成される柱状部材を溶解させて、もう一方の相で構成される柱状部材からなる金型を作製する工程とを含むことを特徴とする。
第6の発明の型の製造方法は、前記凹凸構造は、前記基板上に複数配置され、かつ前記第一と第二の柱状部材で構成される2相分離構造を有する混合膜のいずれか一方の相で構成され、かつ前記いずれか一方の相における長軸方向の平均直径Dlと短軸方向の平均直径Dsの比が5以上であり、かつ前記凹凸構造の周期が30nm以上500nm以下の範囲内であり、かつ前記凹凸構造の深さが100nm以上であることを特徴とする。
また、本発明は型の製造方法に関するものであるが、ここでいう型とは例えば金型である。但し、本発明には、必ずしも金属材料のみからなる型は勿論、金属以外の材料からなる、あるいは金属材料と当該金属以外の材料からなる型も含む。
本発明によれば、基板上に凹凸構造を有する型及び光学素子用型の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、円柱状あるいは円錐状のニッケルあるいはニッケル合金の凹凸構造からなる光学素子用型を用いて複数の細孔を簡便に光学素子表面に形成することができる光学素子の製造方法を提供することができる。
あるいは、本発明によれば、円柱状あるいは円錐状の凹凸構造を有するニッケルあるいはニッケル合金からなる光学素子用金型を用いて複数の突起を簡便に光学素子表面に形成することができる光学素子の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、有限の曲率を有する光学素子の面上に反射防止機能を有する複数の細孔を設けることにより、光学面全面に均一なる反射防止特性を得ることができる光学素子を提供することができる。
さらに、本発明によれば、上記光学素子を光学機器に搭載することにより、光学素子表面での反射光による不具合を解消することができ、また透過光量の増大により高輝度、省エネを実現することができる光学機器を提供することができる。
以下、本発明を実施の形態を挙げて詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
〔金型の製造方法〕
本発明の基板上に凸形状の凹凸構造を有する金型の製造方法について、アルミニウムニッケル混合膜を使用した場合の製造方法について説明する。
アルミニウムニッケル混合膜を非平衡状態で成膜すると、以下のようになる。
アルミニウムニッケル(Al3Ni)を主成分とする複数のシリンダーと、シリンダーを取り囲むアルミニウム(Al)を成分とするマトリックス領域が相分離した状態で成長する。そして、図1に示すようにシリンダー状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)12部分がアルミニウム(Al)のマトリックス領域13により分断された構造体が形成される。このとき、シリンダー状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)12の形状は、円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状等を含んでいる。
また、図1のような相分離した構造を有するアルミニウムニッケル混合膜11を得るためには、膜中のニッケルの割合は5atomic%以上60atomic%以下とする必要がある。ここに、atomic%とは、膜中に含有される原子の割合のことであり、例えばICP(誘導結合型プラズマ発光分析法)などで定量的に分析して求めることが可能である。
さらに、シリンダー状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)の直径及びシリンダーの間隔は、アルミニウムニッケル混合膜において相分離する膜厚全体の組成を変化させることにより直径5nm以上300nm以下で変化する。なお、中心間隔距離は20nm以上500nm以下の範囲で変化する。
上記のアルミニウムニッケル混合膜の成膜プロセスは、基板上に非平衡状態での成膜が可能なプロセスであれば特に限定されず、例えばスパッタリング法等で良い。スパッタリング法においては、アルミニウムターゲット及びニッケルターゲットの同時スパッタリングが適用できる。あるいはアルミニウムとニッケルを焼結して形成した混合ターゲットによるスパッタリング、またはアルミニウムターゲットにニッケルチップを配置したスパッタリングなど幾つかの手法も適用できる。なお、これらの方法に限定されるものではない。
さらに、図1で模式的に示した構造体をエッチングすることによって、マトリックス領域13のアルミニウム部分を選択的に溶解して、図2に示すような凸形状部(以降、突起と称すことにする)21を有した凹凸構造を形成することが可能となる。
つまり、基板上に凸形状の凹凸構造を有する金型の製造方法について、第一にニッケル基板上にアルミニウムニッケル混合膜を非平衡状態で成膜する。第二に、成膜により得られたアルミニウムニッケル(Al3Ni)を成分とする複数のシリンダーと、シリンダーを取り囲み、かつ、アルミニウム(Al)を成分としたマトリックス領域とを有する混合膜を得る。それからマトリックス領域のアルミニウム(Al)をりん酸あるいはアンモニア水等で選択的にエッチング除去する。こうして、ニッケル(Ni)あるいはアルミニウムニッケル(Al3Ni)からなる金型を作製することができる。
また、マグネシウムニッケル混合膜においても、アルミニウムニッケル混合膜と同様に、図1に示す構造体が得られる。
シリンダー状のマグネシウムニッケル(Mg2Ni)を成分とする複数のシリンダー12と、シリンダーを取り囲むマグネシウム(Mg)を成分としたマトリックス領域13に相分離した混合膜11が形成される。但し、この場合における膜中のニッケルの割合は、12atomic%以上70atomic%以下とする必要がある。このとき、形成されるシリンダー状のマグネシウムの直径及び間隔は、マグネシウムニッケル混合膜において相分離する膜厚全体の組成を変化させることにより直径10nm以上300nm以下、間隔は30nm以上500nm以下の範囲で変化する。アルミニウムニッケル混合膜の場合と同様に、ニッケル基板上にマグネシウムニッケル混合膜を非平衡状態で成膜する。そして、マトリックス領域のマグネシウム(Mg)を選択的にエッチング除去することによって、ニッケルあるいはニッケル合金からなる金型を作製することができる。チタニウムニッケル混合膜、イットリウムニッケル混合膜、ジルコニウムニッケル混合膜においても、アルミニウムニッケル混合膜やマグネシウムと同様にニッケルあるいはニッケル合金からなる金型を作製することができる。
上記のように、本発明の基板上に凸形状の凹凸構造を有する金型の製造方法においては、マトリックス領域をエッチング除去する。こうして、図2示すような凸形状の突起21を有した凹凸構造を形成させているが、シリンダー部分をエッチング除去して、凹形状の細孔を有した凹凸構造を形成させることも可能である。
次に、本発明の基板上に凹形状の凹凸構造を有する金型の製造方法について、アルミニウムニッケル混合膜を使用した場合の製造方法について説明する。
アルミニウムニッケル混合膜を非平衡状態で成膜すると、アルミニウム(Al)を主成分とする複数のシリンダーと、シリンダーを取り囲むアルミニウムニッケル(Al3Ni)を成分とするマトリックス領域が相分離する。
こうした状態で成長し、図1に示すようにシリンダー状のアルミニウム(Al)12部分がアルミニウムニッケル(Al3Ni)のマトリックス領域13により分断された構造体が形成される。このとき、シリンダー状のアルミニウム(Al)12の形状は、円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状等を含んでいる。
上記の基板上に凸形状の凹凸構造を有する金型の製造方法と同様に、シリンダー状のアルミニウム(Al)の直径及びシリンダーの間隔は、以下のようになる。
アルミニウムニッケル混合膜において相分離する膜厚全体の組成を変化させることにより直径5nm以上200nm以下、中心間隔距離は20nm以上500nm以下の範囲で変化する。
また、上記のアルミニウムニッケル混合膜の成膜プロセスにおいても、基板上に非平衡状態での成膜が可能なプロセスであれば特に限定されず、スパッタリング法等で良い。
さらに、図1で模式的に示した構造体をエッチングすることによって、アルミニウムを主成分とする複数のシリンダー部分12を選択的に溶解して、図3に示すような凹形状部(以降、細孔と称すことにする)31を有した凹凸構造を形成することが可能となる。
つまり、基板上に凹形状の凹凸構造を有する金型の製造方法について、第一にニッケル基板上にアルミニウムニッケル混合膜を非平衡状態で成膜する。すると第二に成膜により得られたアルミニウム(Al)を成分とする複数のシリンダーと、シリンダーを取り囲み、かつ、アルミニウムニッケル(Al3Ni)を成分としたマトリックス領域とを有する混合膜を得る。
これからシリンダー部分のアルミニウム(Al)をりん酸あるいはアンモニア水等で選択的にエッチング除去して、ニッケル(Ni)あるいはアルミニウムニッケル(Al3Ni)からなる金型を作製することができる。
ニッケルと相分離する材料としては、ニッケルと共晶型平衡状態図を有するアルミニウム、マグネシウム、チタニウム、イットリウム、ジルコニウムのいずれかを少なくとも1種類以上含有することができる。
ニッケルを含有する混合膜からマトリックス部分を除去して、凹凸構造が形成される。この凹凸構造は、基板上に複数配置される。
ニッケルあるいはニッケル合金からなる凹凸構造を含む型は、凸形状の複数の円柱状あるいは円錘状の凹凸構造にすることができる。
基板上に形成される2相分離構造を有する混合膜のいずれか一方の相における長軸方向の平均直径Dlと短軸方向の平均直径Dsの比が5以上とすることもできる。詳細は、後述する。
なお、ラメラ構造のように、前記第一と第二の柱状部材で構成される2相分離構造を有する混合膜において、一つの方向性、配向性を持って分離構造を形成するのも好ましい。詳細は、後述する。
〔光学素子用金型の製造方法1〕
本発明の光学素子用金型の製造方法について、ニッケルと共晶型平衡状態図を有する材料とニッケルとの混合膜を使用した場合の製造方法について説明する。ニッケルと共晶型平衡状態図を有する材料としては、以下の材料がある。
アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタニウム(Ti)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)等が挙げられるが、ここではアルミニウムとニッケルの混合膜を使用した場合について詳細を述べる。有限の曲率を有する光学素子の光学面全面において、反射防止機能を発現することができる光学素子を製造するためには、次のようにする。
その光学素子用金型においてアルミニウムニッケル(Al3Ni)を成分とするシリンダーの形状(突起を有する金型の場合)、あるいはアルミニウム(Al)を成分とするシリンダーの形状(細孔を有する金型の場合)を制御する。
上記したように、アルミニウムニッケル混合膜において相分離させる膜厚全体の組成を変化させる。そして、膜中のニッケルの割合を5atomic%以上60atomic%以下とする。これにより、シリンダーの直径は5nm以上300nm以下、中心間隔距離は20nm以上500nm以下の範囲で変化させることができる。前記アルミニウムニッケル混合膜において相分離させる膜厚全体の組成を変化させる方法としては、成膜レートを徐々に変化させながらアルミニウムニッケル混合膜を積層させる方法がある。あるいは、少なくとも2種類以上の組成比の異なるターゲットを用いてアルミニウムニッケル混合膜を積層させる方法が挙げられる。スパッタリング法の場合は、投入電力、スパッタリング圧力、基板バイアス、基板温度等の成膜条件を制御することにより成膜レートを変化させることが可能である。こうして図4(A)に示した円柱状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)の円柱状のシリンダー42を得る。さらに、図4(B)に示した膜厚方向に連続的に直径が変化する構造、すなわち円錐状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)のシリンダー42が形成される(突起を有する金型の場合)。
つまり、ニッケル基板上に上記の方法で円柱状あるいは円錐状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)のシリンダーを形成する。その後、前記シリンダー部分を取り囲むアルミニウム(Al)部分を選択的にエッチング除去する。これにより、図5に示したような円柱状あるいは円錐状の突起を有するアルミニウムニッケル(Al3Ni)の凹凸構造からなる光学素子用金型を作製することができる。
あるいは、ニッケル基板上に上記の方法で円柱状あるいは円錐状のアルミニウム(Al)のシリンダーを形成する。そして、前記シリンダー部分、すなわちアルミニウム(Al)部分を選択的にエッチング除去する。こうして、図3に示したような円柱状あるいは円錐状(不図示)の細孔を有するアルミニウムニッケル(Al3Ni)の凹凸構造からなる光学素子用金型を作製することができる。
さらに、反射防止特性を決定する要素である前記凹凸構造のアスペクト比や基材と雰囲気との体積比率に関しては、以下のようにする。
図5に示した円柱状あるいは円錐状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)の凹凸構造(突起)の深さが100nm以上500nm以下の範囲内がよい。ニッケル基板に対して該円柱状あるいは円錐状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)の凹凸構造(突起)の1/2深さにおける断面積比率が40%以上80%以下の範囲内であることが好ましい(突起を有する金型の場合)。あるいは、図3に示した円柱状あるいは円錐状(不図示)の凹凸構造(細孔)の深さが100nm以上500nm以下の範囲内がよい。そしてニッケル基板に対して該円柱状あるいは円錐状の凹凸構造(細孔)の1/2深さにおける断面積比率が30%以上70%以下の範囲内であることが好ましい(細孔を有する金型の場合)。
ここで、前記円柱状あるいは円錐状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)の凹凸構造(突起)及び前記円柱状あるいは円錐状の凹凸構造(細孔)の1/2深さにおける断面積比率は、制御できる。具体的には、アルミニウムニッケル混合膜において相分離させる膜厚全体の組成を変化させる方法によって制御することができ、また、上記の成膜レートを考慮してスパッタ時間を制御する。
また、本発明による凹凸構造は、図3及び図5に示した円柱状あるいは円錐状を有するものに限定されるものではなく、成膜条件や組成比の組み合わせにより実現するあらゆる形状のものが含まれる。
さらに、本発明の光学素子用金型は、ニッケル基板と上記アルミニウムニッケル(Al3Ni)のシリンダーとの間に接着層62を設けた図6のような構造のものであっても良い。該接着層としてはチタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、及びそれらを含んだ合金が好ましい。
〔光学素子用金型の製造方法2〕
本発明の光学素子用金型の製造方法について、ニッケルと化合物を形成しない材料とニッケルとの混合膜を使用した場合の製造方法について説明する。ニッケルと化合物を形成しない材料としては、銀(Ag)、金(Au)等が挙げられるが、ここでは金とニッケルの混合膜を使用した場合について詳細を述べる。金とニッケルを非平衡状態で同時にスパッタリングすると、ニッケル(Ni)(あるいは金(Au))を主成分とする複数のシリンダー部分と、シリンダーを取り囲む金(Au)(あるいはニッケル(Ni))を主成分としたマトリックス領域に分離する。このとき、ニッケル(Ni)(あるいは金(Au))を主成分とするシリンダー形状は、結晶化したニッケル及び金の結晶粒界によって形成されており、円柱形状、円錐形状よりも多角柱形状、多角錐形状等を多く含んでいる。
上記と同様に、有限の曲率を有する光学素子の光学面全面において、反射防止機能を発現することができる光学素子を製造するためには、その光学素子用金型においてニッケル(Ni)(あるいは金(Au))を成分とするシリンダーの形状を制御する必要がある。シリンダー形状は、金−ニッケル混合膜におけるニッケルと金の組成比を変化させることにより、直径は10nm以上100nm以下、間隔は30nm以上500nm以下の範囲で変化させることができる。金−ニッケル混合膜におけるニッケルと金の組成比を変化させる方法としては、成膜レートを徐々に変化させながら金−ニッケル混合膜を積層させる方法がある。あるいは、少なくとも2種類以上の組成比の異なるターゲットを用いて金−ニッケル混合膜を積層させる方法が挙げられる。スパッタリング法を用いる場合は、投入電力、スパッタリング圧力、基板バイアス、基板温度等の成膜条件を制御することにより成膜レートを変化させることが可能である。上記のような方法により、図4(A)に示したような円柱状のニッケル(Ni)のシリンダーのみならず、膜厚方向に連続的に直径が変化する構造が得られる。すなわち図4(B)に示したような円錐状のニッケル(Ni)のシリンダーが形成される(突起を有する金型の場合)。
つまり、ニッケル基板上に上記の方法で円柱状あるいは円錐状のニッケル(Ni)のシリンダーを形成する、そして前記シリンダー部分を取り囲む金(Au)部分を金エッチング液を用いて選択的にエッチング除去する。こうして、図5に示した円柱状あるいは円錐状のニッケル(Ni)の凹凸構造からなる光学素子用金型を作製することができる。
あるいは、ニッケル基板上に上記の方法で円柱状あるいは円錐状の金(Au)のシリンダーを形成する。前記シリンダー部分、すなわち金(Au)部分を選択的にエッチング除去する。こうして、図3に示したような円柱状あるいは円錐状(不図示)の細孔を有するニッケル(Ni)の凹凸構造からなる光学素子用金型を作製することができる。
さらに、反射防止特性を決定する要素である前記凹凸構造のアスペクト比や基材と雰囲気との体積比率に関しては、以下の範囲がよい。
図5に示した円柱状あるいは円錐状のニッケル(Ni)の凹凸構造(突起)の深さが100nm以上500nm以下の範囲内である。ニッケル基板に対して該円柱状あるいは円錐状の金ニッケル(Ni)の凹凸構造(突起)の1/2深さにおける断面積比率が40%以上80%以下の範囲内であることが好ましい(突起を有する金型の場合)。あるいは、図3に示した円柱状あるいは円錐状(不図示)の凹凸構造(細孔)の深さが100nm以上500nm以下の範囲内である。そして、ニッケル基板に対して該円柱状あるいは円錐状の凹凸構造(細孔)の1/2深さにおける断面積比率が30%以上70%以下の範囲内であることが好ましい(細孔を有する金型の場合)。
ここで、前記円柱状あるいは円錐状のニッケル(Ni)の凹凸構造(突起)及び前記円柱状あるいは円錐状の凹凸構造(細孔)の1/2深さにおける断面積比率は、以下のようにして制御できる。
上記したような金−ニッケル混合膜における金とニッケルの組成比を変化させる方法によって制御することができ、また、上記の成膜レートを考慮してスパッタ時間を制御することにより所望の該凹凸構造の深さが得られる。
また、本発明による凹凸構造は、図3及び図5に示した円柱状あるいは円錐状を有するものに限定されるものではなく、成膜条件や組成比の組み合わせにより実現する、あらゆる形状のものが含まれる。
さらに、本発明の光学素子用金型は、ニッケル基板と上記ニッケル(Ni)のシリンダーとの間に接着層63を設けた図6のような構造のものであっても良く、該接着層としてはチタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、及びそれらを含んだ合金が好ましい。
なお、上述の説明では、金とニッケルとの混合膜について説明しているが、本発明は、Niと酸化物との混合膜をも包含する。前記酸化物とは、MgOやSiO2などである。製造方法2で説明した方法において、銀や金に替えて、酸化物を用いるのである。基本的な製造方法は、前述の製造方法2と同様であるが、スパッタ時の基板温度は600℃程度にするのがよい。
以下に、Niと酸化物とからなる混合用いた場合について説明する。
〔光学素子用金型の製造方法3〕
本発明の光学素子用金型の製造方法について、ニッケルと酸化物との混合膜を使用した場合の製造方法について説明する。酸化物の材料としては、酸化シリコン(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられるが、ここでは酸化シリコン(SiO2)とニッケルの混合膜を使用した場合について詳細を述べる。
酸化シリコン(SiO2)とニッケルを非平衡状態で同時にスパッタリングすると以下のようになる。
即ち、ニッケル(あるいは酸化シリコン)を主成分とする複数のシリンダー部分と、シリンダーを取り囲む酸化シリコン(あるいはニッケル)を主成分としたマトリックス領域に分離する。このとき、ニッケル(Ni)(あるいは酸化シリコン(SiO2))を主成分とするシリンダー形状は、結晶化したニッケル及び金の結晶粒界によって形成されており、円柱形状、円錐形状よりも多角柱形状、多角錐形状等を多く含んでいる。
上記と同様に、有限の曲率を有する光学素子の光学面全面において、反射防止機能を発現することができる光学素子を製造するためには、形状の制御が必要である。つまり、その光学素子用金型においてニッケル(Ni)(あるいは酸化シリコン(SiO2))を成分とするシリンダーの形状を制御する必要がある。シリンダー形状は、酸化シリコン−ニッケル混合膜におけるニッケルと酸化シリコン(SiO2)の組成比を変化させることにより、直径は10nm以上100nm以下、間隔は30nm以上500nm以下の範囲で変化させることができる。酸化シリコン−ニッケル混合膜におけるニッケルと酸化シリコンの組成比を変化させる方法としては、以下の方法がある。
成膜レートを徐々に変化させながら酸化シリコン−ニッケル混合膜を積層させる方法、あるいは、少なくとも2種類以上の組成比の異なるターゲットを用いて酸化シリコン−ニッケル混合膜を積層させる方法が挙げられる。スパッタリング法を用いる場合は、投入電力、スパッタリング圧力、基板バイアス、基板温度等の成膜条件を制御することにより成膜レートを変化させることが可能である。上記のような方法により、図4(A)に示したような円柱状のニッケル(Ni)のシリンダーのみならず、膜厚方向に連続的に直径が変化する構造が形成される。すなわち図4(B)に示したような円錐状のニッケル(Ni)のシリンダーが形成される(突起を有する金型の場合)。
つまり、ニッケル基板上に上記の方法で円柱状あるいは円錐状のニッケル(Ni)のシリンダーを形成する。そして、前記シリンダー部分を取り囲む酸化シリコン(SiO2)部分をアルカリ性のエッチング液を用いて選択的にエッチング除去する。こうして、図5に示した円柱状あるいは円錐状のニッケル(Ni)の微細構造からなる光学素子用金型を作製することができる。
あるいは、ニッケル基板上に上記の方法で円柱状あるいは円錐状の酸化シリコン(SiO2)のシリンダーを形成し、かつ前記シリンダー部分、すなわち酸化シリコン(SiO2)部分を選択的にエッチング除去する。こうすることにより、図3に示したような円柱状あるいは円錐状(不図示)の細孔を有するニッケル(Ni)の微細構造からなる光学素子用金型を作製することができる。
さらに、反射防止特性を決定する要素である前記微細構造のアスペクト比や基材と雰囲気との体積比率に関しては、図5に示した円柱状あるいは円錐状のニッケル(Ni)の凹凸構造(突起)の深さが100nm以上500nm以下の範囲内である。ニッケル基板に対して該円柱状あるいは円錐状のニッケル(Ni)の凹凸構造(突起)の1/2深さにおける断面積比率が40%以上80%以下の範囲内であることが好ましい(突起を有する金型の場合)。あるいは、図3に示した円柱状あるいは円錐状(不図示)の微細構造(細孔)の深さが100nm以上500nm以下の範囲内にするのがよい。そして、ニッケル基板に対して該円柱状あるいは円錐状の微細構造(細孔)の1/2深さにおける断面積比率が30%以上70%以下の範囲内であることが好ましい(細孔を有する金型の場合)。
ここで、前記円柱状あるいは円錐状のニッケル(Ni)の微細構造(突起)及び前記円柱状あるいは円錐状の微細構造(細孔)の1/2深さにおける断面積比率は、制御できる。具体的には、上記したようなニッケル−酸化シリコン混合膜におけるニッケルと酸化シリコンの組成比を変化させる方法によって制御することができる。また、上記の成膜レートを考慮してスパッタ時間を制御することにより所望の該微細構造の深さが得られる。
また、本発明による微細構造は、図3及び図5に示した円柱状あるいは円錐状を有するものに限定されるものではなく、成膜条件や組成比の組み合わせにより実現する、あらゆる形状のものが含まれる。
さらに、本発明の光学素子用金型は、ニッケル基板と上記ニッケル(Ni)のシリンダーとの間に接着層62を設けた図6のような構造のものであっても良く、該接着層としてはチタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、及びそれらを含んだ合金が好ましい。
以下に本発明による実施例について述べる。
実施例1
本実施例1は、ニッケル基板上に凸形状(突起)のアルミニウムニッケルの凹凸構造を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
図7(A)及び(B)は、本発明の実施例の金型で得られる光学素子の断面を模式的に示した模式図である。同図7(A)は光学面のベース形状が凸面の場合を示しており、同図7(B)は光学面のベース形状が凹面の場合を示している。
同図7(A)及び(B)において71は有限の曲率(無限遠を除く有限の曲率)を有する光学素子(光学部材)であり、その光学面のベース形状が凸面、もしくは凹面で形成されている。本実施例における光学素子71の光学面は、例えば屈折面より成っている。
図8(A)は本発明の実施例の金型で得られる複数の細孔の断面を模式的に示した模式図である。
図中の82は微細な細孔(凹形状部)であり、反射防止機能を有し、有限な曲率を有する光学素子81の面(ベース形状が凹面もしくは凸面)上に、ランダムに複数設けられている。この複数の細孔82は各々略同一の凹形状より成り、かつ光学素子81の面の法線方向に独立して形成されている。
ここで反射防止機能とは鏡面の反射率に比較して前記細孔を配した面の反射率を低減させる機能、好ましくは反射率が1%以下とすることを称す。また凹形状とは、一部が陥没している形状を称し、例えば円柱形状、円錐形状、多角柱形状、多角錐形状等を含む。
尚、複数の細孔82は、独立した細孔が含まれているが、接合された細孔を含ませても良い。また複数の細孔82は、有限な曲率を有する光学素子の面上にモールド成形より形成されている。
図9(A)及び(B)は、本発明の実施例の金型で得られる複数の細孔の配列を模式的に示した模式図である。同図(A)は複数の細孔92を有限な曲率を有する光学素子の面上にランダムに配置した本実施例の場合を示しており、同図(B)は複数の細孔92が、有限な曲率を有する光学素子の面上に三角格子状に配置された場合を示している。
本実施例において、複数の細孔92のうち、隣接する細孔92の中心間隔距離をD、使用する波長をλとするとき、
Figure 0005016957
なる条件を満足するように設定している。
ここで、条件式(1)は隣接する細孔92の中心間隔距離Dの上限を規定するものである。すなわち、条件式(1)の上限を上回ると、光学面全面に均一に優れた反射防止特性を発現することが難しくなってくるので好ましくない。また、下限については機能上の制約はなく、後述する細孔と雰囲気との体積比率が適切であれば限りなく小さくても良い。
尚、隣接する細孔の中心間隔距離Dとは、三角格子状に近似配列した際の中心間距離を称す。つまり図9(A)に示すように測定領域内の全ての細孔に対して、直近6個の細孔に対する中心間距離の平均を各々求め、それらの平均値をその配列での細孔の中心間距離とする。
本実施例では、上記のような略同一凹形状の複数の細孔を有限の曲率を有する光学素子の面上に、該面の法線方向に独立して形成しており、これにより光学面全面に均一なる反射防止特性を発現している。
本実施例において反射防止機能が発現するためには、隣り合う細孔の間隔は0次回折光が発生しないと言われている光学素子の設計波長λの1/2以下であることが特に好適である。
そこで、本実施例では、隣接する細孔の中心間隔距離Dが上記条件式(1)を満たすように設定することにより、反射防止機能を発現している。
ここで設計波長とは光学素子を透過もしくは光学素子で反射させる光の波長を言い、反射光量の抑制を意図する波長を指す。例えば、可視光を光学素子に透過させて波長600nm以下の反射光量を抑制させたい場合、設計波長は600nmとみなし、細孔の隣り合う間隔は300nm以下であることが好ましい。または前記課題で例示したレーザービームプリンタにおいては780nm以下のレーザー光を用いており、細孔の隣り合う間隔は390nm以下であることが好ましい。
本実施例では、上記のように凹形状の複数の細孔を有限な曲率を有する光学素子の面上にランダムに配置している。すなわち、細孔を配置する際にある規則性を持たせた場合には、波長に対して鋭い反射防止特性を得る利点があるものの、光学特性に角度依存性が生まれる恐れがある。例えば、碁盤目状に規則的に直交配列した場合、細孔の間隔は配列に沿ったときが最も短く、配列に45度の向きに最も長い間隔となるため、光の入射方向によって光学特性がシフトすることになる。
そこで本実施例では、光の入射方向に依存せず安定した光学特性を得るために、凹形状の複数の細孔をランダムに配置している。
一般に、波長よりも短いピッチで屈折率の異なる2つの物質が混在しているとき、混在している領域の屈折率n12は、2つの物質の屈折率(n1、n2)と単位体積あたりに占める各々の体積(ff1、ff2)によって、次式(2)で表すことができる。
Figure 0005016957
このとき混在領域に2つの物質だけが存在しているとき、
Figure 0005016957
であり、物質1から物質2へ、あるいは物質2から物質1へ光が垂直に入射する場合、その混在領域の等価屈折率n12は
Figure 0005016957
であるときに最も反射防止効果が高くなる。
例えば、細孔に大気が充満している場合、該細孔の壁を構成する物質(本実施例ではアルミニウムニッケル)の屈折率をnとすると、最も反射防止効果が高くなる細孔の単位体積あたりに占める比率ffは次式(5)で表される。
Figure 0005016957
仮に細孔を形成した光学面が大気と接する最表面であり、該細孔の壁を構成する材料の屈折率nが1.56の場合、垂直入射に対して最大の反射防止効果を得るには、式(5)より細孔が占める体積比率はおよそ56%であることが特に好ましい。また、体積比率の最適値は、細孔の壁を構成する材料の屈折率ばかりでなく、光の入射角および偏光によって適宜設定されるが、経験的には35%以上62%以下の体積比率で細孔を構成することが所望の反射防止特性が得られる上で特に好ましい。
このように、本実施例では、上記のような有限の曲率を有する光学素子の面上に反射防止機能を有する凹形状の複数の細孔を設けることにより、光学面全面に均一なる反射防止特性を発現している。
実施例2
本実施例2は、ニッケル基板上に凹形状のアルミニウムニッケルの凹凸構造を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
図8(B)は本発明の実施例の金型で得られる複数の細孔の断面を模式的に示した模式図である。
図中の83は微細な突起(凸形状部)であり、反射防止機能を有し、有限な曲率を有する光学素子81の面(ベース形状が凹面もしくは凸面)上に、ランダムに複数設けられている。この複数の突起83は各々略同一の凸形状より成り、かつ光学素子81の面の法線方向に独立して形成されている。
ここで反射防止機能とは鏡面の反射率に比較して前記突起を配した面の反射率を低減させる機能、好ましくは反射率が1%以下とすることを称す。また凸形状とは、一部が突出している形状を称し、例えば円柱形状、円錐形状、多角柱形状、多角錐形状等を含む。
尚、複数の突起83は、独立した突起が含まれているが、接合された突起を含ませても良い。また複数の突起83は、有限な曲率を有する光学素子の面上にモールド成形より形成されている。
図9(A)及び(B)は、本発明の実施例の金型で得られる複数の細孔(実施例1)あるいは突起(実施例2)の配列を模式的に示した模式図である。実施例2において同図9(A)は複数の突起92を有限な曲率を有する光学素子の面上にランダムに配置した本実施例の場合を示しており、同図9(B)は複数の突起92が、有限な曲率を有する光学素子の面上に三角格子状に配置された場合を示している。
本実施例において、複数の突起92のうち、隣接する突起92の中心間隔距離をD、使用する波長をλとするとき、
Figure 0005016957
なる条件を満足するように設定している。
ここで、条件式(6)は隣接する突起92の中心間隔距離Dの上限を規定するものである。すなわち、条件式(6)の上限を上回ると、光学面全面に均一に優れた反射防止特性を発現することが難しくなってくるので好ましくない。また、下限については機能上の制約はなく、突起と雰囲気との体積比率が適切であれば限りなく小さくても良い。
尚、隣接する突起の中心間隔距離Dとは、三角格子状に近似配列した際の中心間距離を称す。つまり図9(A)に示すように測定領域内の全ての細孔に対して、直近6個の突起に対する中心間距離の平均を各々求め、それらの平均値をその配列での突起の中心間距離とする。
本実施例では、上記のような略同一凸形状の複数の突起を有限の曲率を有する光学素子の面上に、該面の法線方向に独立して形成しており、これにより光学面全面に均一なる反射防止特性を発現している。
本実施例において反射防止機能が発現するためには、隣り合う突起の間隔は0次回折光が発生しないと言われている光学素子の設計波長λの1/2以下であることが特に好適である。
そこで、本実施例では、隣接する突起の中心間隔距離Dが上記条件式(6)を満たすように設定することにより、反射防止機能を発現している。
ここで設計波長とは光学素子を透過もしくは光学素子で反射させる光の波長を言い、反射光量の抑制を意図する波長を指す。例えば、可視光を光学素子に透過させて波長600nm以下の反射光量を抑制させたい場合、設計波長は600nmとみなし、突起の隣り合う間隔は300nm以下であることが好ましい。または前記課題で例示したレーザービームプリンタにおいては780nm以下のレーザー光を用いており、突起の隣り合う間隔は390nm以下であることが好ましい。
本実施例では、上記のように凸形状の複数の突起を有限な曲率を有する光学素子の面上にランダムに配置している。すなわち、突起を配置する際にある規則性を持たせた場合には、波長に対して鋭い反射防止特性を得る利点があるものの、光学特性に角度依存性が生まれる恐れがある。例えば、碁盤目状に規則的に直交配列した場合、突起の間隔は配列に沿ったときが最も短く、配列に45度の向きに最も長い間隔となるため、光の入射方向によって光学特性がシフトすることになる。
そこで本実施例では、光の入射方向に依存せず安定した光学特性を得るために、凸形状の突起をランダムに配置している。
このとき、実施例1と同様に、反射防止特性に関して以下のように説明できる。
一般に、波長よりも短いピッチで屈折率の異なる2つの物質が混在しているとき、混在している領域の屈折率n12は、2つの物質の屈折率(n1、n2)と単位体積あたりに占める各々の体積(ff1、ff2)によって、次式(7)で表すことができる。
Figure 0005016957
このとき混在領域に2つの物質だけが存在しているとき、
Figure 0005016957
であり、物質1から物質2へ、あるいは物質2から物質1へ光が垂直に入射する場合、その混在領域の等価屈折率n12は
Figure 0005016957
であるときに最も反射防止効果が高くなる。
例えば、突起に大気が充満している場合、突起の壁を構成する物質(本実施例ではアルミニウムニッケル)の屈折率をnとすると、最も反射防止効果が高くなる突起の単位体積あたりに占める比率ffは次式(10)で表される。
Figure 0005016957
仮に突起を形成した光学面が大気と接する最表面であり、該突起の壁を構成する材料の屈折率nが1.56の場合、垂直入射に対して最大の反射防止効果を得るには、式(10)より突起が占める体積比率はおよそ44%であることが特に好ましい。また、体積比率の最適値は、突起の壁を構成する材料の屈折率ばかりでなく、光の入射角および偏光によって適宜設定されるが、経験的には38%以上65%以下の体積比率で突起を構成することが所望の反射防止特性が得られる上で特に好ましい。
このように、本実施例では、上記のような有限の曲率を有する光学素子の面上に反射防止機能を有する凸形状の複数の突起を設けることにより、光学面全面に均一なる反射防止特性を発現している。
次に、本発明の光学素子の製造方法について説明する。
尚、本発明の製造方法は以下に示す製造方法に限定されるものではない。また、本発明では780nmのP偏光レーザーの反射防止を対象としているが、本発明により得られる光学素子の反射防止特性は単波長レーザーに限られるものではなく、可視光、紫外光、赤外光に対しても適用可能である。
本発明では、ニッケルと相分離する材料とニッケルの成膜工程により得られた構造体から形成される、円柱状あるいは円錐状の突起を有するニッケルあるいはニッケル合金の凹凸構造からなる光学素子用金型の製造工程を行う。その後、該金型を用いて該突起を転写させることで細孔を形成する素子形成工程とを用いて光学素子を形成している。
または、ニッケルと相分離する材料とニッケルの成膜工程により得られた構造体から形成される、円柱状あるいは円錐状の細孔を有するニッケルあるいはニッケル合金の凹凸構造からなる光学素子用金型の製造工程を行う。そして、該金型を用いて該細孔を転写させることで突起を形成する素子形成工程とを用いて光学素子を形成している。
前記〔光学素子用金型の製造方法〕しているように、円柱状あるいは円錐状の突起(あるいは細孔)の周期および孔径は、適宜条件を選択することで制御することが可能である。
つまり、スパッタリング法によって成膜条件を適宜選択することにより、金型表面全面に一括して所望の突起(あるいは細孔)を形成することができ、短時間にかつ安価にSWSを形成することが可能である。
また、金型に形成した突起(あるいは細孔)を転写させる手段としては、インジェクション、レプリカ、プレス、注型などいずれの成形手段でも構わないが、基体と共にSWSを効率良く転写成形できるインジェクションおよびプレス成形が特に好適である。また、金型から離型する際、突起(あるいは細孔)の向きと離型方向は必ずしも平行でない。しかし、突起(あるいは細孔)が転写されて形成された細孔(あるいは突起)がある程度の変形を許容できるうちに、例えば細孔が完全に凝固する前に離型することで容易に離型することできる。
[光学素子の製造方法1]
本実施例1に関わる光学素子の製造方法1は、ニッケル基板上に円柱状のアルミニウムニッケルの凹凸構造(突起)を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
光学素子の製造方法1について説明する。
まずfθレンズ(光学素子)成形用の自由曲面を有する金型を用意し、スパッタリングにより自由曲面上にプライマー層、アルミニウムニッケル層の順に均一に成膜して、アルミニウムニッケル混合膜で覆われた自由曲面を有する金型を得た。ここで、アルミニウムニッケル混合膜は、RF電源を用いたマグネトロンスパッタリング法により成膜した。ターゲットは、直径4インチ(50.8mm)のアルミニウムターゲットにニッケルチップ(1.5cm角)を配置したものを使用した。成膜条件は、投入電力RF40W、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度300℃として、所望の膜厚になるまで成膜を行った。図4(A)は、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)で観察したアルミニウムニッケル混合膜の断面像を模式的に示した図である。成膜されたアルミニウムニッケル混合膜41において、アルミニウムニッケル(Al3Ni)部分42がニッケル基板40に対して垂直にシリンダー状に形成される。そして、該アルミニウムニッケル(Al3Ni)部分42を取り囲むアルミニウムマトリックス領域43が形成されていることが確認された。そして前記自由曲面だけを露出するように金型全体をマスキングテープで被覆し、該自由曲面以外を被覆により絶縁防水状態にし、常温のリン酸水溶液に浸漬する。こうしてアルミニウムニッケル(Al3Ni)部分を取り囲むアルミニウムを溶解させ、アルミニウムニッケル(Al3Ni)の突起を金型表面に有するfθ用金型を得た。
このようにして得られたfθレンズ用の金型をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、ランダムな配列の無数の突起が金型表面に垂直に立っている。画像処理にて突起の中心座標位置を求め、隣接6個の細孔との中心間距離Dを求めていったところ、隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ300nmの周期であった。上記手順により製作した金型を射出成形機(住友重機工業株式会社製:SS180)に入射面側および出射面側に配し、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製)を射出成形してfθレンズを得た。このとき溶融樹脂温を270℃、樹脂注入時の保圧を700kg/cm2とした。
このようにして得られたfθレンズをFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、曲面全域にランダムに配列した柱状の細孔が観察され、個々の柱状の細孔は面の法線方向に向かって形成されていることが確認された。
また画像処理にて細孔の中心位置を求め、隣接6個の柱状の細孔との中心間距離Dの平均を求めていったところ、隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ300nmであり、金型の突起を転写していることが確認された。
更に原子間力顕微鏡により柱状の細孔の高さを測定したところ、細孔の太さは先端に向かってほぼ一様で、平均深さがおよそ160nmであり、細孔の体積比率はおよそ44%であった。そこで分光光度計を用いて波長780nm、P偏光の垂直入射時の反射率を測定したところ0.7%であった。
[光学素子の製造方法2]
本実施例に関わる光学素子の製造方法2は、ニッケル基板上に円錐状のアルミニウムニッケルの凹凸構造(突起)を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
光学素子の製造方法2について説明する。
光学素子の製造方法1と同様に、まずfθレンズ(光学素子)成形用の自由曲面を有する金型を用意し、スパッタリングによりアルミニウムニッケル混合膜で覆われた自由曲面を有する金型を得た。ここで、光学素子の製造方法1と同様に、アルミニウムニッケル混合膜は、RF電源を用いたマグネトロンスパッタリング法により成膜した。使用したターゲットは、直径4インチ(101.6mm)のアルミニウムターゲットにニッケルチップ(1.5cm角)を配置したものである。該アルミニウムターゲット上に配置する該ニッケルチップの数量が異なるものを三種類(ターゲットA、ターゲットB、ターゲットC)用意した。膜中のニッケルの割合はA>B>Cとした。はじめに、ターゲットAを用いて投入電力RF40W、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度300℃にて10分間成膜を行った。次に、ターゲットAへの投入電力を遮断後、引き続きターゲットBを用いて投入電力RF40W、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度300℃にて10分間成膜を行った。ターゲットBへの投入電力を遮断後、最後にターゲットCを用いて投入電力RF40W、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度300℃にて10分間成膜を行った。成膜終了後、アルミニウムニッケル混合膜の表面および断面形状をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察した。図4(B)は、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)で観察したアルミニウムニッケル混合膜の断面像を模式的に示した図である。成膜されたアルミニウムニッケル混合膜41において、アルミニウムニッケル(Al3Ni)部分42がニッケル基板40に対して垂直にシリンダー状に形成される。そして、該アルミニウムニッケル(Al3Ni)部分42を取り囲むアルミニウムマトリックス領域43が形成されていることが確認された。また、アルミニウムニッケルの組成比が異なるターゲットによってアルミニウムニッケル(Al3Ni)シリンダー部分42の直径を連続的に変化させた。その結果、基板から離れるほど徐々に直径が小さくなる、すなわち円錐状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)シリンダー部分42が形成されることが確認された。
そして、前記自由曲面だけを露出するように金型全体をマスキングテープで被覆し、該自由曲面以外を被覆により絶縁防水状態にし、常温のリン酸水溶液に浸漬した。これによりアルミニウムニッケル(Al3Ni)部分を取り囲むアルミニウムを溶解させ、アルミニウムニッケル(Al3Ni)の突起を金型表面に有するfθ用金型を得た。
このようにして得られたfθレンズ用の金型をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、ランダムな配列の無数の突起が金型表面に垂直に立っていた。画像処理にて突起の中心座標位置を求め、隣接6個の細孔との中心間距離Dを求めていったところ、隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ240nmの周期であった。
上記手順により製作した金型を射出成形機(住友重機工業株式会社製:SS180)に入射面側および出射面側に配し、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製)を射出成形してfθレンズを得た。このとき溶融樹脂温を270℃、樹脂注入時の保圧を700kg/cm2とした。
このようにして得られたfθレンズをFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、曲面全域にランダムに配列した柱状の細孔が観察され、個々の柱状の細孔は面の法線方向に向かって形成されていることが確認された。
また画像処理にて細孔の中心位置を求め、隣接6個の柱状の細孔との中心間距離Dの平均を求めていったところ、隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ240nmであり、金型の突起を転写していることが確認された。
更に原子間力顕微鏡により柱状の細孔の高さを測定したところ、細孔の太さは先端に向かってほぼ一様で、平均深さがおよそ180nmであり、細孔の体積比率はおよそ46%であった。そこで分光光度計を用いて波長780nm、P偏光の垂直入射時の反射率を測定したところ0.6%であった。
[光学素子の製造方法3]
本実施例2に関わる光学素子の製造方法3は、ニッケル基板上に円柱状の凹凸構造(細孔)を有するアルミニウムニッケルからなる光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
光学素子の製造方法3について説明する。
まずfθレンズ(光学素子)成形用の自由曲面を有する金型を用意し、スパッタリングにより自由曲面上にプライマー層、アルミニウムニッケル層の順に均一に成膜して、アルミニウムニッケル混合膜で覆われた自由曲面を有する金型を得た。ここで、アルミニウムニッケル混合膜は、RF電源を用いたマグネトロンスパッタリング法により成膜した。ターゲットは、直径4インチ(101.6mm)のアルミニウムターゲットにニッケルチップ(1.5cm角)を配置したものを使用した。成膜条件は、投入電力RF40W、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度300℃として、所望の膜厚になるまで成膜を行った。図4(A)は、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)で観察したアルミニウムニッケル混合膜の断面像を模式的に示した図である。成膜されたアルミニウムニッケル混合膜41において、アルミニウム(Al)部分42がニッケル基板40に対して垂直にシリンダー状に形成される。該アルミニウム(Al3)部分42を取り囲むアルミニウムニッケル(Al3Ni)マトリックス領域43が形成されていることが確認された。そして前記自由曲面だけを露出するように金型全体をマスキングテープで被覆し、該自由曲面以外を被覆により絶縁防水状態にし、常温のリン酸水溶液に浸漬した。こうしてアルミニウムニッケル(Al3Ni)部分に取り囲まれたアルミニウムのシリンダーを溶解させ、円柱状の細孔を金型表面に有するアルミニウムニッケル(Al3Ni)からなるfθ用金型を得た。
このようにして得られたfθレンズ用の金型をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、ランダムな配列の無数の細孔が金型表面に垂直に立っている。画像処理にて細孔の中心座標位置を求め、隣接6個の細孔との中心間距離Dを求めていったところ、隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ300nmの周期であった。上記手順により製作した金型を射出成形機(住友重機工業株式会社製:SS180)に入射面側および出射面側に配し、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製)を射出成形してfθレンズを得た。このとき溶融樹脂温を270℃、樹脂注入時の保圧を700kg/cm2とした。
このようにして得られたfθレンズをFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、曲面全域にランダムに配列した柱状の突起が観察され、個々の柱状の突起は面の法線方向に向かって形成されていることが確認された。
また画像処理にて突起の中心位置を求め、隣接6個の柱状の突起との中心間距離Dの平均を求めていったところ、隣り合った突起の中心間距離Dはおよそ300nmであり、金型の細孔を転写していることが確認された。
更に原子間力顕微鏡により柱状の突起の高さを測定したところ、突起の太さは先端に向かってほぼ一様で、平均深さがおよそ160nmであり、細孔の体積比率はおよそ54%であった。そこで分光光度計を用いて波長780nm、P偏光の垂直入射時の反射率を測定したところ1.4%であった。
[光学素子の製造方法4]
本実施例2に関わる光学素子の製造方法4は、ニッケル基板上に円錐状の凹凸構造(突起)を有するアルミニウムニッケルからなる光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
光学素子の製造方法4について説明する。
光学素子の製造方法3と同様に、まずfθレンズ(光学素子)成形用の自由曲面を有する金型を用意し、スパッタリングによりアルミニウムニッケル混合膜で覆われた自由曲面を有する金型を得た。ここで、光学素子の製造方法3と同様に、アルミニウムニッケル混合膜は、RF電源を用いたマグネトロンスパッタリング法により成膜した。使用したターゲットは、直径4インチ(101.6mm)のアルミニウムターゲットにニッケルチップ(1.5cm角)を配置したものである。該アルミニウムターゲット上に配置する該ニッケルチップの数量が異なるものを三種類(ターゲットA、ターゲットB、ターゲットC)用意した。膜中のニッケルの割合はA>B>Cとした。はじめに、ターゲットAを用いて投入電力RF40W、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度300℃にて10分間成膜を行った。次に、ターゲットAへの投入電力を遮断後、引き続きターゲットBを用いて投入電力RF40W、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度300℃にて10分間成膜を行った。ターゲットBへの投入電力を遮断後、最後にターゲットCを用いて投入電力RF40W、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度300℃にて10分間成膜を行った。成膜終了後、アルミニウムニッケル混合膜の表面および断面形状をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察した。図4(B)は、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)で観察したアルミニウムニッケル混合膜の断面像を模式的に示した図である。成膜されたアルミニウムニッケル混合膜41において、アルミニウム(Al)部分42がニッケル基板40に対して垂直にシリンダー状に形成される。該アルミニウム(Al)部分42を取り囲むアルミニウムニッケル(Al3Ni)マトリックス領域43が形成されていることが確認された。また、アルミニウムニッケルの組成比が異なるターゲットによってアルミニウム(Al)シリンダー部分42の直径を連続的に変化させて成膜した結果、基板から離れるほど徐々に直径が小さくなる。すなわち円錐状のアルミニウム(Al)シリンダー部分42が形成されることが確認された。
そして、前記自由曲面だけを露出するように金型全体をマスキングテープで被覆し、該自由曲面以外を被覆により絶縁防水状態にし、常温のリン酸水溶液に浸漬する。こうしてアルミニウムニッケル(Al3Ni)部分に取り囲まれたアルミニウムのシリンダーを溶解させ、円錐状の細孔を金型表面に有するアルミニウムニッケル(Al3Ni)からなるfθ用金型を得た。
このようにして得られたfθレンズ用の金型をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察した。ランダムな配列の無数の細孔が金型表面に垂直に立っており、画像処理にて細孔の中心座標位置を求め、隣接6個の細孔との中心間距離Dを求めていったところ、隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ240nmの周期であった。
上記手順により製作した金型を射出成形機(住友重機工業株式会社製:SS180)に入射面側および出射面側に配し、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製)を射出成形してfθレンズを得た。このとき溶融樹脂温を270℃、樹脂注入時の保圧を700kg/cm2とした。
このようにして得られたfθレンズをFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、曲面全域にランダムに配列した柱状の突起が観察され、個々の柱状の突起は面の法線方向に向かって形成されていることが確認された。
また画像処理にて突起の中心位置を求め、隣接6個の柱状の突起との中心間距離Dの平均を求めていったところ、隣り合った突起の中心間距離Dはおよそ240nmであり、金型の細孔を転写していることが確認された。
更に原子間力顕微鏡により柱状の細孔の高さを測定したところ、細孔の太さは先端に向かってほぼ一様で、平均深さがおよそ180nmであり、細孔の体積比率はおよそ52%であった。そこで分光光度計を用いて波長780nm、P偏光の垂直入射時の反射率を測定したところ1.2%であった。
比較例1
次に製造方法1および製造方法2に対しての比較例を説明する。
fθレンズ(光学素子)成形用の自由曲面を有する金型を用意し、製造方法1および製造方法2と同様に射出成形を行ったところ、自由曲面鏡面を有するfθレンズが得られた。
このようにして得られた光学素子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、平滑な面だけが観察され、分光光度計により波長780nm、P偏光の垂直入射時の反射率を測定したところ4.3%であった。
[光学機器]
本発明の光学素子はカメラやビデオカメラをはじめとする撮像機器、あるいは液晶プロジェクタやディスプレイ、電子写真機器の光走査装置をはじめとする投影機器などに適用できる。例えば電子写真機器の光走査装置において、結象光学手段を構成するfθレンズの入射面あるいは入出射面の両面に複数の細孔を形成したfθレンズを搭載すれば良好なる反射特性が得られる。
[光走査装置]
図10は上記の製造方法1で製造された光学素子を含むfθレンズを電子写真機器等の光走査装置の結像光学手段に適用したときの要部概略図である。
同図において1は光源手段(半導体レーザー)であり、例えばシングルビームレーザもしくはマルチビームレーザ等より成っている。2はコリメーターレンズであり、光源手段1から放射された光束を略平行光束に変換している。3は開口絞りであり、通過光束を制限してビーム形状を整形している。4はシリンドリカルレンズであり、副走査方向にのみ所定のパワーを有しており、開口絞り3を通過した光束を副走査断面内で後述する光偏向器5の偏向面(反射面)5aにほぼ線像として結像させている。
5は偏向手段としての光偏向器であり、例えば4面構成のポリゴンミラー(回転多面鏡)より成っており、モーター等の駆動手段(不図示)により図中矢印A方向に一定速度で回転している。
6は集光機能とfθ特性とを有する結像光学手段としてのfθレンズ系であり、前述した製造方法1〜4のいずれかで製造された第1、第2の2枚のfθレンズ6a、6bより成る。該第1、第2の2枚のfθレンズ6a、6bの入射面及び射出面6a1、6a2・6b1、6b2に複数の細孔12を形成している。光偏向器5によって反射偏向された画像情報に基づく光束を被走査面としての感光ドラム面7上に結像させ、かつ副走査断面内において光偏向器5の偏向面5aと感光ドラム面7との間を共役関係にする。これにより、倒れ補正機能を有している。
7は被走査面としての感光ドラム面である。
本実施形態において半導体レーザー1から出射した光束はコリメーターレンズ2により略平行光束に変換され、開口絞り3によって該光束(光量)が制限され、シリンドリカルレンズ4に入射している。シリンドリカルレンズ4に入射した略平行光束のうち主走査断面においてはそのままの状態で射出する。また副走査断面内においては収束して光偏向器5の偏向面5aにほぼ線像(主走査方向に長手の線像)として結像している。そして光偏向器5の偏向面5aで反射偏向された光束は第1、第2のfθレンズ6a、6bを介して感光ドラム面7上にスポット状に結像される。該光偏向器5を矢印A方向に回転させることによって、該感光ドラム面7上を矢印B方向(主走査方向)に等速度で光走査している。これにより記録媒体としての感光ドラム面7上に画像記録を行なっている。
上記構成によりfθレンズ(光学素子)の入射面での反射光量を抑えてゴースト等の不具合を防ぎ、あるいは出射面の透過光量を高めることで高輝度、省エネを実現することができる。更に上記構成により反射防止機能を有する安価なfθレンズを用いることが可能となり、特に複数の同素子を搭載する光学機器においては個数に応じたコスト削減が可能となる。
尚、上記の光走査装置においては、第1、第2のfθレンズ6a、6bの入射面及び射出面6a1、6a2・6b1、6b2に複数の細孔12を形成した。これに限らず、一方のfθレンズでもよく、また入射面及び射出面の両面に限らず、一方の面であっても良い。
[画像形成装置]
図11は、図10に示した構成を有する光走査装置を用いた本発明の画像形成装置の実施形態を示す副走査方向の要部断面図である。図11において、符号104は画像形成装置を示す。この画像形成装置104には、パーソナルコンピュータ等の外部機器117からコードデータDcが入力する。このコードデータDcは、装置内のプリンタコントローラ111によって、画像データ(ドットデータ)Diに変換される。この画像データDiは、図5に示した構成を有する光走査装置100に入力される。そして、この光走査装置100からは、画像データDiに応じて変調された光ビーム103が出射され、この光ビーム103によって感光ドラム101の感光面が主走査方向に走査される。
静電潜像担持体(感光体)たる感光ドラム101は、モータ115によって時計廻りに回転させられる。そして、この回転に伴って、感光ドラム101の感光面が光ビーム103に対して、主走査方向と直交する副走査方向に移動する。感光ドラム101の上方には、感光ドラム101の表面を一様に帯電せしめる帯電ローラ102が表面に当接するように設けられている。そして、帯電ローラ102によって帯電された感光ドラム101の表面に、前記光走査装置100によって走査される光ビーム103が照射されるようになっている。
先に説明したように、光ビーム103は、画像データDiに基づいて変調されており、この光ビーム103を照射することによって感光ドラム101の表面に静電潜像を形成せしめる。この静電潜像は、上記光ビーム103の照射位置よりもさらに感光ドラム101の回転方向の下流側で感光ドラム101に当接するように配設された現像器107によってトナー像として現像される。
現像器107によって現像されたトナー像は、感光ドラム101の下方で、感光ドラム101に対向するように配設された転写ローラ108によって被転写材たる用紙112上に転写される。用紙112は感光ドラム101の前方(図5において右側)の用紙カセット109内に収納されているが、手差しでも給紙が可能である。用紙カセット109端部には、給紙ローラ110が配設されており、用紙カセット109内の用紙112を搬送路へ送り込む。
以上のようにして、未定着トナー像を転写された用紙112はさらに感光ドラム101後方(図11において左側)の定着器へと搬送される。定着器は内部に定着ヒータ(図示せず)を有する定着ローラ113とこの定着ローラ113に圧接するように配設された加圧ローラ114とで構成されている。転写部から搬送されてきた用紙112を定着ローラ113と加圧ローラ114の圧接部にて加圧しながら加熱することにより用紙112上の未定着トナー像を定着せしめる。更に定着ローラ113の後方には排紙ローラ116が配設されており、定着された用紙112を画像形成装置の外に排出せしめる。
図5においては図示していないが、プリントコントローラ111は、先に説明したデータの変換だけでなく、モータ115を始め画像形成装置内の各部や、後述する光走査装置内のポリゴンモータなどの制御を行う。
この画像形成装置を用いて、繰り返し、パターン画像及び写真画像を出力したところ、ゴースト現象は発生せず、耐久性においても何ら問題点はなかった。
[カラー画像形成装置]
図12は図10に示した構成を有する光走査装置を複数用いた本発明の実施形態のカラー画像形成装置の要部概略図である。本実施形態は、光走査装置を4個並べ各々並行して像担持体である感光ドラム面上に画像情報を記録するタンデムタイプのカラー画像形成装置である。図12において、160はカラー画像形成装置、161、162、163、164は各々図4に示した構成を有する光走査装置である。121、122、123、124は各々像担持体としての感光ドラム、131、132、133、134は各々現像器、151は搬送ベルトである。
図12において、カラー画像形成装置160には、パーソナルコンピュータ等の外部機器152からR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色信号が入力する。これらの色信号は、装置内のプリンタコントローラ153によって、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、B(ブラック)の各画像データ(ドットデータ)に変換される。これらの画像データは、それぞれ光走査装置161、162、163、164に入力される。そして、これらの光走査装置からは、各画像データに応じて変調された光ビーム141、142、143、144が出射され、これらの光ビームによって感光ドラム121、122、123、124の感光面が主走査方向に走査される。
本実施形態におけるカラー画像形成装置は光走査装置(161、162、163、64)を4個並べる。各々がC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、B(ブラック)の各色に対応し、各々平行して感光ドラム121、122、123、124面上に画像信号(画像情報)を記録し、カラー画像を高速に印字するものである。
本実施形態におけるカラー画像形成装置は上述の如く4つの光走査装置161、162、163、164により各々の画像データに基づいた光ビームを用いて各色の潜像を各々対応する感光ドラム121、122、123、124面上に形成している。その後、記録材に多重転写して1枚のフルカラー画像を形成している。
前記外部機器152としては、例えばCCDセンサを備えたカラー画像読取装置が用いられても良い。この場合には、このカラー画像読取装置と、カラー画像形成装置160とで、カラーデジタル複写機が構成される。
実施例3
本実施例3は、ニッケル基板上に凸形状(突起)のニッケルの凹凸構造を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
本実施例3では、実施例1と同様に有限の曲率を有する光学素子の面上に反射防止機能を有する凹形状の複数の細孔を設けることにより、光学面全面に均一なる反射防止特性を発現している。
〔光学素子の製造方法3〕
本実施例3に関わる光学素子の製造方法3は、ニッケル基板上に円柱状のニッケルの凹凸構造(突起)を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
光学素子の製造方法3について説明する。
光学素子の製造方法1および2と同様に、まずfθレンズ(光学素子)成形用の自由曲面を有する金型を用意し、スパッタリングによりニッケル−酸化シリコン混合膜で覆われた自由曲面を有する金型を得た。ここで、ニッケル−酸化シリコン混合膜は、RF電源を用いたマグネトロンスパッタリング法により成膜した。使用したターゲットは、直径2インチ(50.8mm)のニッケルターゲットと酸化シリコンターゲットの二つのターゲットとした。成膜条件は、ニッケルターゲットの投入電力をRF30W、かつ、酸化シリコンターゲットの投入電力をRF70Wとし、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度600℃として、所望の膜厚になるまで2つのターゲットによる同時成膜を行った。図4(A)は、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)で観察したニッケル−酸化シリコン混合膜の断面像を模式的に示した図である。成膜されたニッケル−酸化シリコン混合膜41において、ニッケル(Ni)部分42がニッケル基板40に対して垂直にシリンダー状に形成される。該ニッケル(Ni)部分42を取り囲む酸化シリコン(SiO2)マトリックス領域43が形成されていることが確認された。そして前記自由曲面だけを露出するように金型全体をマスキングテープで被覆する。該自由曲面以外を被覆により絶縁防水状態にし、常温の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬してニッケル(Ni)部分を取り囲む酸化シリコン(SiO2)を溶解させ、ニッケル(Ni)の突起を金型表面に有するfθ用金型を得た。
このようにして得られたfθレンズ用の金型をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、ランダムな配列の無数の突起が金型表面に垂直に立っているのがわかる。画像処理にて突起の中心座標位置を求め、隣接6個の細孔との中心間距離Dを求めていったところ、隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ300nmの周期であった。上記手順により製作した金型を射出成形機(住友重機工業株式会社製:SS180)に入射面側および出射面側に配し、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製)を射出成形してfθレンズを得た。このとき溶融樹脂温を270℃、樹脂注入時の保圧を700kg/cm2とした。
このようにして得られたfθレンズをFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、曲面全域にランダムに配列した柱状の細孔が観察される。個々の柱状の細孔は面の法線方向に向かって形成されていることが確認された。
また画像処理にて細孔の中心位置を求め、隣接6個の柱状の細孔との中心間距離Dの平均を求めていったところ、隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ300nmであり、金型の突起を転写していることが確認された。
更に原子間力顕微鏡により柱状の細孔の高さを測定したところ、細孔の太さは先端に向かってほぼ一様で、平均深さがおよそ160nmであり、細孔の体積比率はおよそ46%であった。そこで分光光度計を用いて波長780nm、P偏光の垂直入射時の反射率を測定したところ0.6%であった。
[光学素子の製造方法4]
本実施例3に関わる光学素子の製造方法4は、ニッケル基板上に円錐状のニッケルの凹凸構造(突起)を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
光学素子の製造方法4について説明する。
光学素子の製造方法3と同様に、まずfθレンズ(光学素子)成形用の自由曲面を有する金型を用意し、スパッタリングによりニッケル−酸化シリコン混合膜で覆われた自由曲面を有する金型を得た。ここで、光学素子の製造方法3と同様に、ニッケル−酸化シリコン混合膜は、RF電源を用いたマグネトロンスパッタリング法により成膜した。使用したターゲットは、直径2インチ(50.8mm)のニッケルターゲットと酸化シリコンターゲットの二つのターゲットとした。成膜条件は、2つのターゲットへの投入電力を段階的に切り替える方法を採用した。まず第1段階として、ニッケルターゲットの投入電力をRF58W、かつ、酸化シリコンターゲットの投入電力をRF0Wとし、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度600℃にて5分間同時成膜を行った。次に、第2段階として、ニッケルターゲットへの投入電力をRF46W、かつ、酸化シリコンターゲットの投入電力をRF28Wとし、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度600℃にて5分間同時成膜を行った。引き続き、第3段階として、ニッケルターゲットへの投入電力をRF35W、かつ、酸化シリコンターゲットの投入電力をRF55Wとする。第4段階として、ニッケルターゲットへの投入電力をRF23W、かつ、酸化シリコンターゲットの投入電力をRF83Wとする。第5段階として、ニッケルターゲットへの投入電力をRF12W、かつ、酸化シリコンターゲットの投入電力をRF110Wとする。各段階においてアルゴンガス圧0.11Pa、基板温度600℃にて5分間同時成膜を行った。以上、5段階の投入電力の切り替えによる成膜終了後、ニッケル−酸化シリコン混合膜の表面および断面形状をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察した。図4(B)は、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)で観察したニッケル−酸化シリコン混合膜の断面像を模式的に示した図である。成膜されたニッケル−酸化シリコン混合膜41において、ニッケル(Ni)部分42がニッケル基板40に対して垂直にシリンダー状に形成され、該ニッケル(Ni)部分42を取り囲む酸化シリコンマトリックス領域43が形成されていることが確認された。また、投入電力を切り替えてニッケル−酸化シリコンの組成比を変化させることによってニッケル(Ni)シリンダー部分42の直径を連続的に変化させて成膜できる。その結果、基板から離れるほど徐々に直径が小さくなる、すなわち円錐状のニッケル(Ni)シリンダー部分42が形成されることが確認された。
そして、前記自由曲面だけを露出するように金型全体をマスキングテープで被覆する。該自由曲面以外を被覆により絶縁防水状態にし、常温のリン酸水溶液に浸漬してニッケルムニッケル(Ni)部分を取り囲む酸化シリコンを溶解させ、ニッケル(Ni)の突起を金型表面に有するfθ用金型を得た。
このようにして得られたfθレンズ用の金型をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察した。ランダムな配列の無数の突起が金型表面に垂直に立っており、画像処理にて突起の中心座標位置を求め、隣接6個の細孔との中心間距離Dを求めていった。隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ240nmの周期であった。
上記手順により製作した金型を射出成形機(住友重機工業株式会社製:SS180)に入射面側および出射面側に配し、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製)を射出成形してfθレンズを得た。このとき溶融樹脂温を270℃、樹脂注入時の保圧を700kg/cm2とした。
このようにして得られたfθレンズをFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、曲面全域にランダムに配列した柱状の細孔が観察され、個々の柱状の細孔は面の法線方向に向かって形成されていることが確認された。
また画像処理にて細孔の中心位置を求め、隣接6個の柱状の細孔との中心間距離Dの平均を求めていったところ、隣り合った細孔の中心間距離Dはおよそ240nmであり、金型の突起を転写していることが確認された。
更に原子間力顕微鏡により柱状の細孔の高さを測定したところ、細孔の太さは先端に向かってほぼ一様で、平均深さがおよそ180nmであり、細孔の体積比率はおよそ40%であった。そこで分光光度計を用いて波長780nm、P偏光の垂直入射時の反射率を測定したところ0.6%であった。
実施例4
本実施例4は、基板上に凸形状のラメラ形状の凹凸構造を有する金型の製造方法に関する。本実施例については、アルミニウムニッケル混合膜を使用した場合の金型の製造方法について説明する。
アルミニウムニッケル混合膜を非平衡状態で成膜すると、アルミニウムニッケル(Al3Ni)を主成分とする複数の柱状部材と、アルミニウム(Al)を主成分とする複数の柱状部材の2つの領域が相分離した状態で成長する。図13に示すように柱状部材のアルミニウムニッケル(Al3Ni)212部分がアルミニウム(Al)の柱状部材213により分断された構造体が形成される。
このとき、図13のような相分離したアルミニウムニッケル混合膜を得るためには、膜中のニッケルの割合は20atomic%から60atomic%とする必要がある。
また、柱状部材の長軸方向の直径の平均値Dlと短軸方向の直径の平均値Dsの比(Dl/Ds)が5以上、かつ短軸方向の平均直径が5nm以上300nm以下である構造体を形成する場合は以下のようにするのがよい。基板上でアルミニウムとニッケルのエネルギーが急速に失われる状態であり、かつアルミニウムとニッケルの相分離が起こる時間スケールで表面拡散が起こる状態にすることが好ましい。
さらに、柱状部材の直径(短軸方向)及び柱状部材の間隔は、アルミニウムニッケル混合膜において相分離する膜厚全体の組成を変化させることにより直径が5nm以上300nm以下、柱状部材の中心間隔距離が30nm以上500nm以下の範囲内で変化する。
上記のアルミニウムニッケル混合膜の成膜プロセスは、基板上に非平衡状態での成膜が可能であれば特に限定されない。非平衡状態における成膜方法としては、スパッタリング法、電子線蒸着法等気相中・真空中で行うものが好ましく、特にスパッタリング法が好適である。スパッタリング法においては、アルミニウムターゲットとニッケルターゲットの同時スパッタリングが適用できる。あるいはアルミニウムターゲットとニッケルターゲットを焼結して形成した混合ターゲットによるスパッタリング、または、アルミニウムターゲットにニッケルチップを配置したスパッタリングなど幾つかの手法がある。本発明は、特にこれらに限定されるものではない。また、スパッタリング法におけるスパッタリングターゲットと基板間距離、投入電力、プロセスガスの種類、プロセスガスの圧力、基板温度、基板に印加するバイアス等により高度に構造体の形成を制御することが可能である。従って、上記の成膜条件を最適化することによって、本発明の柱状部材のアルミニウムニッケル(Al3Ni)212部分がアルミニウム(Al)の柱状部材213により分断された構造体が形成される。
本実施例においては、アルミニウムターゲットにニッケルチップ(1.5cm角)を配置したものと、ニッケル基板を選択する。前記ニッケル基板に対して、構成したい相分離構造の周期の整数倍に相当する凹凸構造をある一方向に形成させる。この基板に対してアルミニウムニッケル混合膜を成膜すると、図15の模式図に示されるように、凹凸構造に沿って本発明の構造体、すなわちアルミニウムニッケル(Al3Ni)とアルミニウム(Al)の相分離構造を配列させることが可能となる。上記凹凸構造は構造体を形成するアルミニウムおよびニッケルの拡散に対して異方性を持たせるために好適であるが、これに限定するものではない。例えば、成膜時のアルミニウムおよびニッケルの堆積を基板に対して斜め方向から行うことにより、基板へ入射される原料自体の運動方向に異方性を持たせることによって実施することも可能である。
さらに、図13で模式的に示した構造体をエッチングすることによって、アルミニウムの柱状部材213を選択的に溶解する。それにより図15(A)に示すような凸形状部(以降、突起と称することにする)232を有したラメラ形状の凹凸構造を形成することが可能となる。
つまり、基板上に凸形状のラメラ形状の凹凸構造を有する金型の製造方法について、第一に異方性を持たせたニッケル基板上にアルミニウムニッケル混合膜を非平衡状態で成膜する。第二に成膜により得られたアルミニウムニッケル(Al3Ni)を主成分とする複数の柱状部材と、アルミニウム(Al)を主成分とする複数の柱状部材とを有する混合膜から柱状部材のアルミニウム(Al)部分をりん酸あるいはアンモニア水等で選択的にエッチング除去する。そして、ニッケル(Ni)あるいはアルミニウムニッケル(Al3Ni)からなる金型を作製することができる。
さらに、前記凹凸構造のアスペクト比や基材と雰囲気との体積比率に関しては、図15(A)に示した柱状部材のラメラ形状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)の凹凸構造(突起)の深さが100nm以上であるのがよい。更に、ニッケル基板に対して該ラメラ形状のアルミニウムニッケル(Al3Ni)の凹凸構造の断面積率が40%以上80%以下の範囲であることが好ましい。ここで、前記ラメラ形状の凹凸構造の断面積率は、アルミニウムニッケル混合膜におけるアルミニウムとニッケルの組成比を変化させる方法によって制御することができる。また、アルミニウムとニッケルの成膜レートを考慮してスパッタ時間を制御することにより所望の該凹凸構造の深さが得られる。
また、本発明による凹凸構造は、図15(A)に示したラメラ形状を有するものに限定されるものではなく、成膜条件や組成比の組み合わせにより実現する、あらゆる形状のものが含まれる。
さらに、本発明の基板上にラメラ形状の凹凸構造を有する金型は、ニッケル基板と上記アルミニウムニッケル(Al3Ni)あるいはニッケル(Ni)の柱状部材との間に接着層231を設けた図15(B)の構造でもよい。該接着層としてはチタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、及びそれらを含んだ合金が好ましい。
実施例5
本実施例5は、実施例3と同様に凸形状のラメラ形状の凹凸構造を有する金型の製造方法に関する。本実施例については、ニッケルと化合物を形成しない材料として挙げられる金(Au)とニッケル(Ni)の混合膜を使用した場合の金型の製造方法について説明する。金とニッケルを非平衡状態で同時にスパッタリングすると、ニッケル(Ni)を主成分とする複数の柱状部材と、金(Au)を主成分とする複数の柱状部材との2つの領域に分離する。このとき、ニッケル(Ni)(あるいは金(Au))を主成分とする柱状部材の形状は、結晶化したニッケル及び金の結晶粒界によって形成されており、多角柱形状、多角錐形状等を含んでいる。
実施例3と同様に、柱状部材の直径(短軸方向)および柱状部材の間隔は、金−ニッケル混合膜におけるニッケルと金の組成比を変化させることにより、直径(短軸方向)は10nm以上200nm以下にできる。そして、間隔は30nm以上500nm以下の範囲で変化させることができる。金−ニッケル混合膜におけるニッケルと金の組成比を変化させる方法としては、成膜レートを徐々に変化させながら金−ニッケル混合膜を積層させる方法がある。あるいは、少なくとも2種類以上の組成比の異なるターゲットを用いて金−ニッケル混合膜を積層させる方法が挙げられる。スパッタリング法を用いる場合は、投入電力、スパッタリング圧力、基板バイアス、基板温度等の成膜条件を制御することにより成膜レートを変化させることが可能である。
さらに、実施例3と同様の方法で異方性を持たせた基板上に金−ニッケル混合膜を成膜する。そして、成膜により得られたニッケル(Ni)を主成分とする複数の柱状部材と、金(Au)を主成分とする複数の柱状部材を有する混合膜から柱状部材の金(Au)部分を金エッチング液で選択的に溶解する。こうして、ニッケル(Ni)からなる金型を作製することができる。
実施例6
本実施例6は、ニッケル基板上に凸形状(突起)のラメラ形状のアルミニウムニッケルの凹凸構造を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
図16(A)は本発明の実施例の金型で得られる複数の溝の断面を模式的に示した模式図である。図中の242は微細な溝(凹形状部)であり、反射防止機能を有し、有限な曲率を有する光学素子241の面(ベース形状が凹面もしくは凸面)上に、ランダムに複数設けられている。前記微細な溝(凹形状部)は、凸形状の柱状構造と凹形状の柱状構造の2つの部分が一次元方向に配列した周期構造より形成されており、溝断面が矩形であるラメラ形状を成している。この複数の溝242は各々略同一の凹形状より成り、かつ光学素子241の面の法線方向に独立して形成されている。
ここで反射防止機能とは鏡面の反射率に比較して前記溝を配した面の反射率を低減させる機能、好ましくは反射率が1%以下とすることを称す。また複数の溝242は、有限な曲率を有する光学素子の面上にモールド成形により形成されている。
本実施例において、複数の溝242のうち、隣接する溝242の短軸方向における中心間隔距離D(短軸方向における矩形のラメラ形状一周期分の長さに相当)とし、使用する波長をλとするとき、
Figure 0005016957
なる条件を満足するように設定している。
ここで、条件式(1)は隣接する溝242の短軸方向における中心間距離Dの上限を規定するものである。すなわち、条件式(1)の上限を上回ると、光学面全面に均一に優れた反射防止特性を発現することが難しくなってくるので好ましくない。また、下限については機能上の制約はなく、後述する溝と雰囲気との体積比率が適切であれば限りなく小さくても良い。
尚、隣接する溝242の短軸方向における中心間距離Dとは、ある一方向に配列している断面矩形状のラメラ形状を成している溝において、短軸方向における溝の中心間距離を称す。つまり測定領域内の全ての溝に対して、隣接の溝に対する短軸方向における中心間距離の平均を各々求め、それらの平均値をその配列での溝の中心間距離とする。
本実施例では、上記のような略同一凹形状の複数の溝を有限の曲率を有する光学素子の面上に、該面の法線方向に独立して形成している。該複数の溝の配列方向と直交する方向に反射防止機能を発現することにより、光学面全面に均一なる反射防止特性が得られている。
本実施例において反射防止機能が発現するためには、隣り合う溝の間隔は0次回折光が発生しないと言われている光学素子の設計波長λの1/2以下であることが特に好適である。
そこで、本実施例では、隣接する溝の中心間隔距離Dが上記条件式(1)を満たすように設定することにより、反射防止機能を発現している。
ここで設計波長とは光学素子を透過もしくは光学素子で反射させる光の波長を言い、反射光量の抑制を意図する波長を指す。例えば、可視光を光学素子に透過させて波長600nm以下の反射光量を抑制させたい場合、設計波長は600nmとみなし、細孔の隣り合う間隔は300nm以下であることが好ましい。または前記課題で例示したレーザービームプリンタにおいては780nm以下のレーザー光を用いており、溝の隣り合う間隔は390nm以下であることが好ましい。
本実施例においては凸形状(突起)のラメラ形状のアルミニウムニッケルの凹凸構造を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関して述べている。この点に関しては、凹形状(溝)のラメラ形状のアルミニウムニッケルの凹凸構造を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形させることも可能である。
次に、本発明の光学素子の製造方法について説明する。
尚、本発明の製造方法は以下に示す製造方法に限定されるものではない。また、本発明では780nmのP偏光レーザーの反射防止を対象としているが、本発明により得られる光学素子の反射防止特性は単波長レーザーに限られるものではなく、可視光、紫外光、赤外光に対しても適用可能である。
本発明では、ニッケルとニッケルと相分離する材料との成膜工程により得られた構造体から形成される、ラメラ形状の突起を有するニッケルあるいはニッケル合金の凹凸構造からなる光学素子用金型の製造工程を用いる。更に、該金型を用いて該突起を転写させることでラメラ形状の溝を形成する素子形成工程とを用いて光学素子を形成している。
あるいは、本発明では、ニッケルとニッケルと相分離する材料との成膜工程により得られた構造体から形成される、ラメラ形状の溝を有するニッケルあるいはニッケル合金の凹凸構造からなる光学素子用金型の製造工程を用いる。更に、該金型を用いて該溝を転写させることでラメラ形状の突起を形成する素子形成工程とを用いて光学素子を形成している。
ここで、ラメラ形状の突起(あるいは溝)の周期およびサイズ(幅と高さ)は、適宜条件を選択することで制御することが可能である。
つまり、スパッタリング法によって成膜条件を適宜選択することにより、金型表面全面に一括して所望の突起(あるいは溝)を形成することができ、短時間にかつ安価にSWSを形成することが可能である。
また、金型に形成した突起(あるいは溝)を転写させる手段としては、インジェクション、レプリカ、プレス、注型などいずれの成形手段でも構わないが、基体と共にSWSを効率良く転写成形できるインジェクションおよびプレス成形が特に好適である。また、金型から離型する際、突起(あるいは溝)の向きと離型方向は必ずしも平行でない。但し、突起(あるいは溝)が転写されて形成された溝(あるいは突起)がある程度の変形を許容できるうちに、例えば溝が完全に凝固する前に離型することで、容易に離型することできる。
特に、本発明のラメラ形状の突起(あるいは溝)を有する金型においては、突起の長軸方向の直径Dlと短軸方向の直径Dsの比(Dl/Ds)が5以上であり突起の形状が離型する方向に対して垂直方向にも長さを有している。そのため、円柱状あるいは円錐状の突起(あるいは細孔)を有する金型よりも耐久性が良好でかつ、離型性に優れており、SWSを破壊することなく金型を容易に離型することできる。
[光学素子の製造方法]
本実施例6に関わる光学素子の製造方法は、ニッケル基板上にラメラ形状のアルミニウムニッケルの凹凸構造(突起)を有する光学素子用金型を用いて光学素子を成形することに関する。
光学素子の製造方法について説明する。
まずfθレンズ(光学素子)成形用の自由曲面を有する金型を用意し、スパッタリングにより自由曲面上にプライマー層、アルミニウムニッケル層の順に均一に成膜して、アルミニウムニッケル混合膜で覆われた自由曲面を有する金型を得た。ここで、予めアルミニウムニッケル層を成膜する金型に対して200nmの周期にて凹凸構造をある方向に形成させた。これは、ダイヤモンドスラリー等を染み込ませた研磨テープによるテープバーニッシュにより形成し、この金型に対してアルミニウムニッケル混合膜は、RF電源を用いたマグネトロンスパッタリング法により成膜した。ターゲットは、直径4インチ(101.6mm)のアルミニウムターゲットにニッケルチップ(1.5cm角)を配置したものを使用した。成膜条件は、投入電力RF120W、アルゴンガス圧0.11Pa、基板温度400℃として、所望の膜厚になるまで成膜を行った。
図13は、FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)で観察したアルミニウムニッケル混合膜の断面像を模式的に示した図である。成膜されたアルミニウムニッケル混合膜211において、アルミニウムニッケル(Al3Ni)部分212がニッケル基板210に対して垂直に膜の体積方向に柱状構造が形成される。そして、該アルミニウムニッケル(Al3Ni)部分212を取り囲むアルミニウムの柱状構造が形成されていることが確認された。そして前記自由曲面だけを露出するように金型全体をマスキングテープで被覆し、該自由曲面以外を被覆により絶縁防水状態にする。そして、常温のリン酸水溶液に浸漬してアルミニウムニッケル(Al3Ni)部分を取り囲むアルミニウムを溶解させる。こうして、アルミニウムニッケル(Al3Ni)の突起を金型表面に有するfθ用金型を得た。
このようにして得られたfθレンズ用の金型をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、テクスチャーの凹凸構造に沿った配列のラメラ形状の突起が金型表面に垂直に立っているのが分かる。画像処理にて突起の短軸方向における中心位置を求め、突起の短軸方向における隣接の突起との中心間距離Dを求めていった。隣り合った突起の短軸方向における中心間距離Dはおよそ200nmの周期であった。上記手順により製作した金型を射出成形機(住友重機工業株式会社製:SS180)に入射面側および出射面側に配している。そして、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン株式会社製)を射出成形してfθレンズを得た。このとき溶融樹脂温を270℃、樹脂注入時の保圧を700kg/cm2とした。
なお、型から樹脂を抜きとる際に、基板が邪魔になる場合は、当該基板を予め除去してから、細孔の両側から樹脂を充填、離型できる。上述の実施例においても同様である。
このようにして得られたfθレンズをFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)により観察したところ、曲面全域にランダムに配列したラメラ形状の断面矩形状の溝が観察され、個々の断面矩形状の溝は面の法線方向に向かって形成されていることが確認された。
また画像処理にて断面矩形状の溝の中心位置を求め、隣接の溝との中心間距離D(溝の短軸方向)の平均を求めていったところ、隣り合った溝の短軸方向における中心間距離Dはおよそ200nmであり、金型の突起を転写していることが確認された。
更に原子間力顕微鏡によりラメラ形状の溝の形状を測定したところ、溝の幅は先端に向かってほぼ一様で、平均深さがおよそ160nmであり、溝の体積比率はおよそ60%であった。そこで分光光度計を用いて波長780nm、P偏光の垂直入射時の反射率を測定したところ0.6%であった。
本発明の光学素子用金型を用いて成形された光学素子は、光の入出射面での界面反射光量を抑制する機能を有する。例えばカメラやビデオカメラをはじめとする撮像機器、液晶プロジェクタや電子写真機器の光走査装置をはじめとする投影機器に好適に利用することができる。
本発明の金型の製造方法を説明するニッケルとニッケルと相分離する材料の混合膜を模式的に表した模式図である。 本発明の金型の製造方法を説明するアルミニウムニッケル混合膜の模式的に表した模式図である。 本発明の金型の製造方法を説明するアルミニウムニッケル混合膜の模式的に表した模式図である。 本発明の光学素子用金型の製造方法を説明するアルミニウムニッケル混合膜の断面を模式的に表した模式図である。 本発明の光学素子用金型の断面を模式的に表した模式図である。 本発明の光学素子用金型の断面を模式的に表した模式図である。 本発明の実施例の光学素子の断面を模式的に表した模式図である。 本発明の実施例に係る細孔あるいは突起の断面を模式的に表した模式図である。 本発明の実施例に係る細孔あるいは突起の配列を模式的に表した模式図である。 本発明の光学素子を搭載した光走査装置の要部の断面図である。 本発明の画像形成装置の要部の断面図である。 本発明のカラー画像形成装置の要部の断面図である。 本発明の金型の製造方法を説明するアルミニウムニッケル混合膜の模式的に表した模式図である。 本発明の金型の製造方法を説明するアルミニウムニッケル混合膜の模式的に表した模式図である。 本発明の金型の断面を模式的に表した模式図である。 本発明の実施例に係る溝の断面を模式的に表した模式図である。
符号の説明
1 光源手段(半導体レーザー)
2 コリメータレンズ
3 開口絞り
4 シリンドリカルレンズ
5 光偏向器
5a 偏向面
6 結像光学手段
6a、6b fθレンズ
6a1、6b1 入射面
6a2、6b2 出射面
7 被走査面
10、20、30、40、50、60、230 基板
11、41 混合膜
12、42 シリンダー
13、32、43 マトリックス
21、51、61、232 凸形状部
22、52、62、233 凹形状部
31 細孔
63、231 接着層
71、81 光学素子
72、82、92 細孔
100 光走査装置
101 感光ドラム
102 帯電ローラ
103 光ビーム
104 画像形成装置
107 現像装置
108 転写ローラ
109 用紙カセット
110 給紙ローラ
111 プリンタコントローラ
112 転写材(用紙)
113 定着ローラ
114 加圧ローラ
115 モータ
116 排紙ローラ
117 外部機器
121、122、123、124 像担持体(感光ドラム)
131、132、133、134 現像器
141、142、143、144 光ビーム
151 用紙搬送路
152 外部機器
153 プリンタコントローラ
160 カラー画像形成装置
161、162、163、164 光走査装置
210 基板
211 混合膜
212 第一の柱状部材(アルミニウムニッケル)
213 第二の柱状部材(アルミニウム)
241 光学素子
242 溝

Claims (18)

  1. 基板上に凹凸構造を有する型の製造方法であって、前記基板上に第1の材料と該第1の材料と相分離する第2の材料を同時に成膜する工程と、前記成膜工程により得られた前記第1の材料を成分とする複数のシリンダーと、前記複数のシリンダーを取り囲む前記第2の材料を成分とするマトリックス領域とを有し、該第1及び第2の材料の少なくともいずれか一方にニッケルを含有する混合膜から、該マトリックス部分を除去して前記第1の材料からなる凹凸構造を有する型を作製する工程、とを含むことを特徴とする型の製造方法。
  2. 基板上に凹凸構造を有する型の製造方法であって、前記基板上に第1の材料と該第1の材料と相分離する第2の材料を同時に成膜する工程と、前記成膜工程により得られた前記第1の材料を成分とするマトリックス領域と、前記マトリックス領域に取り囲まれた前記第2の材料を成分とする複数のシリンダーとを有し、該第1及び第2の材料の少なくともいずれか一方にニッケルを含有する混合膜から、該シリンダー部分を除去して前記第1の材料からなる凹凸構造を有する型を作製する工程、とを含むことを特徴とする型の製造方法。
  3. 凹凸構造は、前記基板上に複数配置され、かつ前記第1の材料から構成され、前記凹凸構造の周期が30nm以上500nm以下の範囲内であり、かつ前記凹凸構造の深さが100nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の型の製造方法。
  4. ニッケル基板上にニッケルとニッケルと相分離する材料を同時に成膜する工程と、前記成膜工程により得られたニッケルを成分とする複数のシリンダーと、前記複数のシリンダーを取り囲み、かつ、ニッケルと相分離する材料を成分とするマトリックス領域とを有する混合膜から該マトリックス部分をエッチング除去してニッケルあるいはニッケル合金からなる型を作製する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の型の製造方法。
  5. ニッケル基板上にニッケルとニッケルと相分離する材料を同時に成膜する工程と、前記成膜工程により得られたニッケルを成分とするマトリックス領域と、前記マトリックス領域に取り囲まれ、かつ、ニッケルと相分離する材料を成分とする複数のシリンダーとを有する混合膜から該シリンダー部分をエッチング除去してニッケルあるいはニッケル合金からなる型を作製する工程とを含むことを特徴とする請求項2に記載の型の製造方法。
  6. ニッケルあるいはニッケル合金からなる型は、前記混合膜におけるニッケルとニッケルと相分離する材料の組成比を変化させることによってシリンダーの形状を制御することを特徴とする請求項4に記載の型の製造方法。
  7. ニッケルと相分離する材料は、ニッケルと共晶型平衡状態図を有するアルミニウム、マグネシウム、チタニウム、イットリウム、ジルコニウムのいずれかを少なくとも1種類以上含有していることを特徴とする請求項4に記載の型の製造方法。
  8. ニッケルと相分離する材料は、ニッケルと化合物を形成しない銀、金のいずれかを少なくとも1種類以上含有していることを特徴とする請求項4に記載の型の製造方法。
  9. ニッケルあるいはニッケル合金からなる型は、凸形状の複数の円柱状あるいは円錘状の凹凸構造によって形成されていることを特徴とする請求項4に記載の型の製造方法。
  10. ニッケルあるいはニッケル合金からなる型は、凹形状の複数の円柱状あるいは円錘状の凹凸構造によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載の型の製造方法。
  11. 請求項1に記載の光学素子用型の製造方法により製造されたことを特徴とする光学素子用型。
  12. 基板上に凹凸構造を有する型の製造方法であって、前記基板上に第一の柱状部材と該第一の柱状部材と相分離する第二の柱状部材を同時に成膜する工程と、前記成膜工程により得られた前記第一と第二の柱状部材で構成される2相分離構造を有する混合膜からいずれか一方の相で構成される柱状部材を溶解させて、もう一方の相で構成される柱状部材からなる金型を作製する工程とを含むことを特徴とする型の製造方法。
  13. 前記凹凸構造は、前記基板上に複数配置され、かつ前記第一と第二の柱状部材で構成される2相分離構造を有する混合膜のいずれか一方の相で構成され、かつ前記いずれか一方の相における長軸方向の平均直径Dlと短軸方向の平均直径Dsの比が5以上であり、かつ前記凹凸構造の周期が30nm以上500nm以下の範囲内であり、かつ前記凹凸構造の深さが100nm以上であることを特徴とする請求項12に記載の型の製造方法。
  14. 前記第一の柱状部材又は第二の柱状部材の短軸方向の平均直径が5nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項12に記載の型の製造方法。
  15. 前記第一と第二の柱状部材で構成される2相分離構造を有する混合膜において、一つの方向性を持って分離構造が形成されていることを特徴とする請求項12に記載の型の製造方法。
  16. ニッケル基板上にニッケルとニッケルと相分離する材料を同時に成膜する工程と、前記成膜工程により得られた2相分離構造を有する混合膜からニッケルと相分離する部材を含み一方の相で構成される柱状部材をエッチング除去してニッケルあるいはニッケル合金からなる金型を作製する工程とを含むことを特徴とする請求項12に記載の型の製造方法。
  17. 前記ニッケルあるいはニッケル合金からなる金型は、前記混合膜におけるニッケルとニッケルと相分離する材料の組成比を変化させることによって前記柱状部材の形状を制御することを特徴とする請求項16に記載の型の製造方法。
  18. 前記ニッケルあるいはニッケル合金からなる金型は、凸形状あるいは凹形状の複数のラメラ形状の凹凸構造によって形成されていることを特徴とする請求項16に記載の型の製造方法。
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