JP5013237B2 - カップリングレンズ、光ピックアップ装置、記録装置及び再生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源からの光束を対物レンズに入射させるためのカップリングレンズ、集光光学系、光学素子、光ピックアップ装置、記録装置及び再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、短波長赤色半導体レーザの実用化に伴い、従来の光ディスク(「光情報記録媒体」ともいう)である、CD(コンパクトディスク)と同程度の大きさで大容量化させた高密度の光ディスクであるDVD(デジタルバーサタイルディスク)が開発・製品化されているが、近い将来には、より高密度な次世代の光ディスクが登場することが予想される。このような次世代の光ディスクを媒体とした光情報記録再生装置の集光光学系では、記録信号の高密度化を図るため、或いは高密度記録信号を再生するため、対物レンズを介して情報記録面上に集光するスポットの径を小さくすることが要求される。そのため、対物レンズの高開口数化に加え、光源であるレーザの短波長化が図られている。短波長レーザ光源としてその実用化が期待されているのは、発振波長400nm程度の青紫色半導体レーザである。
【0003】
ところで、レーザ光源の短波長化が図られてくると、レーザ光源の微少な発振波長の変動により対物レンズで生じる軸上色収差が問題となる。光ピックアップ装置において光源として用いられる半導体レーザから出射される光束の波長は一般に単色であるので、対物レンズでは軸上色収差は発生しないと思われているが、出力の変化により瞬時的に波長が数nmほど変化するモードホップ現象を起こす場合がある。対物レンズの軸上色収差が補正されていない場合には、モードホップ現象によって集光位置が変化し、情報の記録および/または再生に誤りが生じる可能性がある。光源の波長が短くなるに従い集光位置の変化量は大きくなるで、光ピックアップ装置の光源として発振波長600nm以下の短波長半導体レーザ、特に発振波長400nm程度の青紫色半導体レーザを用いた場合は、対物レンズで発生する軸上色収差の補正が必要となる。
【0004】
また、現在、回折光学素子は光ピックアップ装置において高性能な収差補正素子として利用されているが、かかる回折光学素子では回折効率の低下を防ぐために回折構造を設計値に限りなく近い形状で形成することが重要となる。しかし、上述のように近い将来実用化が予想される青紫色半導体レーザのような短波長光源や高開口数の対物レンズを使用する光ピックアップ装置に回折光学素子を用いた場合、色収差等の補正のために必要な回折のパワーが大きくなるので、回折構造の周期、たとえばブレーズ構造のブレーズの間隔は使用波長の数倍程度、すなわち数μm程度となる。現在、一般に回折光学素子の金型の作製方法として利用されているダイヤモンド超精密切削技術(SPDT)では、バイト先端の形状がブレーズ構造の段差に転写されるため位相不整合部分が必ず生じてしまう。そのため、使用波長の数倍程度のような周期の小さい回折構造の場合は、位相不整合部分の影響が大きく現れるので、十分な回折効率が得られないという問題がある。
【0005】
数μm程度の周期の小さい回折構造を形成する公知の方法として、電子ビーム描画方式があるが、この方法による回折構造の形成の流れは以下のようである。まず、基板上ににフォトレジストを塗布し、次いで電子ビーム露光装置によりこのフォトレジスト上を走査しながら回折構造の形状分布に対応する電子ビーム露光量分布を与える。次ぎに、エッチング工程とメッキ工程を経ることによりフォトレジストを除去して基板上に回折構造の凹凸パターンを形成する。このような電子ビーム描画方式により微少なブレーズ構造を平板の基板上に形成した回折素子としてOptics Japan 99',23a A2(1999)による回折レンズが知られている。
【0006】
しかし、光ピックアップ装置に用いられる回折光学素子では回折構造による回折作用と屈折面における屈折作用とを適切に組み合わせて収差補正を行うので、屈折パワーを持たない平板の基板上に回折構造が形成された上記の回折レンズは収差補正素子として光ピックアップ装置に用いることができないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、レーザ光源のモードホップ現象等に起因して対物レンズで発生する軸上色収差を効果的に補正できるカップリングレンズ、光ピックアップ装置、記録装置及び再生装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によるカップリングレンズは、光源から射出された発散光の発散角を変え、対物レンズに入射させるためのカップリングレンズであって、前記カップリングレンズは、少なくとも1つの面が輪帯状の回折構造を有する回折面とされ、前記光源の基準波長よりも10nm短い波長に対し焦点距離が長くなるように軸上色収差が過剰補正され、次式(1)を満たし、下記の式(3)を満たすことを特徴とする。
【0010】
0.05≦NA≦0.50 (1)
ただし、NA:カップリングレンズの開口数
【0011】
なお、カップリングレンズの開口数NACOLは、カップリングレンズに入射する発散光の傾角をθとした場合、NACOL=sinθ
で定義でき、対物レンズの像側開口数NAOBJとは以下のような関係がある。
NACOL=NAOBJ×(f1/f2)
ただし、f1:対物レンズの焦点距離(mm)
f2:カップリングレンズの焦点距離(mm)
【0012】
このカップリングレンズによれば、光情報記録媒体への記録および/または再生時に光源からの発散光の発散角を変え対物レンズに入射させるためのカップリングレンズを、少なくとも1つの面に設けた輪帯状の回折構造の回折作用により10nm程度の波長変動で軸上色収差が過剰に補正された回折レンズとすることで、対物レンズなどのその他の光学素子で発生する軸上色収差と相殺して補正することができるカップリングレンズを得ることができる。カップリングレンズに入射する光源からの射出光の発散度は小さいので、一般に、カップリングレンズは対物レンズに比べ屈折力が小さくてすみ、製造時の要求精度が対物レンズほど厳しくなく、またワーキングディスタンスなどの制約が少ないため、収差補正に余裕がある。軸上色収差をカップリングレンズレンズで補正するようにすれば、軸上色収差を厳しく補正していない対物レンズでも、このカップリングレンズと組み合わせて用いることで、波長変動による結像性能への影響が顕著に出る高密度光情報記録再生用の集光光学系の対物レンズとして使用可能となる。このとき、カップリングレンズの開口数が式(1)を満たすことが好ましい。式(1)において下限以上であると、カップリングレンズの焦点距離が大きくなり過ぎないので対物レンズと組み合わせたときの合成系の全長が大きくなりすぎず、コンパクトな集光光学系とすることができる。また、上限以下であると、カップリングレンズの開口数が大きくなりすぎないので、カップリングレンズで発生する収差を小さく押さえることができる。
【0013】
上述のカップリングレンズでは、次式(2)を満たすことが好ましい。
【0014】
0.3<PD/PTOTAL ≦1.1 (2)
ただし、PD:前記回折面を光源側から順に第1回折面、第2回折面、・・・、第N回折面と呼ぶとき、前記第i回折面に形成された回折構造により透過波面に付加される光路差を、Φbi=ni・(b2i・hi2+b4i・hi4+b6i・hi6+・・・)により定義される光路差関数(A)で表す場合に(ここで、niは、前記第i回折面に形成された回折構造で発生する回折光のうち最大の回折光量を有する回折光の回折次数、hiは光軸からの高さ(mm)、b2i、b4i、b6i、・・・、はそれぞれ2次、4次、6次、・・・、の光路差関数係数(回折面係数ともいう)である)、次の数3に示す式により定義される回折構造のみのパワー(mm-1)
【0015】
【数3】
【0016】
PTOTAL:屈折パワーと前記回折構造による回折パワーとを合わせたカップリングレンズ全系のパワー(mm-1)
【0017】
上述のように、回折構造のみのパワーが式(2)を満たすようにカップリングレンズの回折構造を決定することで、カップリングレンズで発生する軸上色収差によって、対物レンズなどのその他の光学素子で発生する軸上色収差を良好に相殺補正することができる。式(2)の下限以上でカップリングレンズと対物レンズを介して光情報記録媒体の情報記録面上にスポットを結んだときの波面の軸上色収差が補正不足になり過ぎず、上限以下でカップリングレンズと対物レンズを介して光情報記録媒体の情報記録面上にスポットを結んだときの波面の軸上色収差が補正過剰になり過ぎない。
【0018】
また、前記基準波長をλ(mm),基準波長における焦点距離をf(mm),前記第i面に形成された回折構造で発生する回折光のうち最大の回折光量をもつ回折光の次数をni,第i面の有効径内の回折構造の輪帯数をMi,第i面の有効径内の回折構造の輪帯間隔の最小値をPi(mm)としたとき、次の数4に示す式(3)を満たす。
【0019】
【数4】
【0020】
条件式(3)を満足するようにカップリングレンズの回折構造を構成すると、カップリングレンズで発生する軸上色収差によって対物レンズなどのその他の光学素子で発生する軸上色収差を良好に相殺補正することができる。式(3)の下限以上でカップリングレンズと対物レンズを介して光情報記録媒体の情報記録面上にスポットを結んだときの波面の軸上色収差が補正不足になり過ぎず、上限以下でカップリングレンズと対物レンズを介して光情報記録媒体の情報記録面上にスポットを結んだときの波面の軸上色収差が補正過剰になり過ぎない。
また、次の数5に示す式を満たすことが好ましい。
【数5】
【0021】
また、前記基準波長をλ(mm)、前記基準波長からの微少な波長の変化をΔλ(mm)、前記基準波長における焦点距離をf(mm)、前記光源の波長が前記基準波長からΔλ(mm)だけ変化したときの焦点距離の変化をΔf(mm)としたとき、次式(4)を満たすことが好ましい。
【0022】
−0.12≦(Δf/f)・NA・(λ/Δλ)≦−0.01 (4)
【0023】
上述のように、10nm程度の微少な波長変動に対するカップリングレンズの焦点距離の変化量が式(4)を満たすことが好ましい。式(4)において下限以上であると、カップリングレンズと対物レンズとを介して光情報記録媒体の情報記録面にスポットを結んだときの波面の軸上色収差が補正過剰になり過ぎず、上限以下であると、カップリングレンズと対物レンズとを介して光情報記録媒体の情報記録面にスポットを結んだときの波面の軸上色収差が補正不足になり過ぎない。
【0024】
また、上述のカップリングレンズの2つ以上の面が輪帯状の回折構造を有する回折面とされることにより、回折パワーを2つ以上の面に分配することで、回折輪帯の間隔を大きくすることができるので、製造しやすく、それでいて回折効率の良いカップリングレンズとすることができる。
【0025】
また、上述のカップリングレンズの回折面のうち、少なくとも1つの回折面の輪帯構造の光軸方向の段差量を、nを0、±1以外の整数として、n次の高次回折光が最大の回折光量を有するように決定すると(以下、このように輪帯構造が決定された回折面を「高次回折面」と呼ぶ)、±1次回折光を利用する場合に比して、輪帯間隔の最小値を緩和できるので、輪帯構造の形状誤差による回折効率低下の影響を小さくできる。このとき、カップリングレンズに形成された回折面のうちすべての回折面を高次回折面としてもよいし、±1次回折光を利用する場合の輪帯間隔の最小値が特に小さくなる回折面のみを高次回折面としてもよい。また、回折光量が最大となる回折次数の値が回折面毎に異なるようにしてもよい。
【0026】
なお、nを整数として、n次回折光量が他のいずれの次数の回折光の回折光量よりも大きくなるように回折輪帯の光軸方向の段差量Δ(mm)が決定される場合、段差量Δは、λ0を光源が発生する光の波長(mm)、Nを波長λ0における対物レンズの屈折率としたとき、
Δ≒n・λ0/(N−1)
が成立する。
【0027】
また、上述のカップリングレンズは、少なくとも最も光源側の面を含む1つの面が輪帯状の回折構造を有する回折面とされることが次の点で好ましい。即ち、カップリングレンズの設計においては、最も光源側の面での反射光が光検出器の受光面上に入射することにより、光検出器が不要な信号を検出するのを防ぐために、入射光のマージナル光線が最も光源側の面に対して垂直入射とならないように考慮する必要がある。ところが、最も光源側の面を、nを整数として、透過光に対してn次回折光の強度が他のいずれの次数の回折光の強度よりも大きくなるように光軸方向の段差量が最適化された回折輪帯構造を有する回折面とすると、最も光源側の面での反射光は回折構造により回折された回折光であって、そのうち、最大の強度を有するのは、mをnとは異なる整数として、m次回折光であるので、最も光源側の面での入射光のマージナル光線の入射角と、上記m次反射回折光のマージナル光線の反射角は、その絶対値を必ず異とする。そのため、最も光源側の面での反射光は、入射光のマージナル光線が垂直入射に近い場合であっても、光検出器の受光面上にスポットを結ばないので、最も光源側の面に対する入射光のマージナル光線の入射角を自由に選択できるようになり、より精緻に球面収差およびコマ収差が補正された高性能なカップリングレンズとすることができる。
【0028】
また、少なくとも1つの面が非球面とされ、次式(5)を満たすことが好ましい。
【0029】
0.10≦NA≦0.50 (5)
【0030】
このように、カップリングレンズの開口数が0.10以上となる場合は、少なくとも1つの面を非球面とすることが好ましい。これにより、カップリングレンズで発生する収差を良好に補正することができる。
【0031】
上述のカップリングレンズをプラスチック材料から形成することで、回折構造や非球面を容易に付加することができ、かつ安価に大量生産することができる。製造方法としては、金型を用いた射出成形法が好ましい。カップリングレンズをプラスチック材料から形成する場合、使用波長領域における厚さ3mmの内部透過率が85%以上である材料から形成されていることが好ましく、また、飽和吸水率が0.5%以下である材料から形成されていることが好ましい。なお、プラスチック材料としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフイン系のノルボルネン系樹脂がより好ましい。
【0032】
なお、参考例による集光光学系は、600nm以下の波長の光を発生する光源と、前記光源から出射された発散光の発散角を変えるカップリングレンズと、前記カップリングレンズを介した光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させる対物レンズと、を含む、光情報記録媒体の記録および/または再生用の集光光学系であって、前記カップリングレンズは上述のカップリングレンズであって、前記光源が±10nm以下の波長変化を発生したときの波長変化に伴って前記対物レンズで生じる軸上色収差と、前記カップリングレンズの回折構造で生じる軸上色収差とが相殺することを特徴とする。
【0033】
この集光光学系によれば、600nm以下の発振波長を発生する光源を用いることで従来の光情報記録媒体よりも高密度に記録および/または高密度記録された情報の再生が光情報記録媒体に対して可能となるが、前述したように集光光学系、特に対物レンズで発生する軸上色収差が問題となるが、対物レンズで発生する軸上色収差と逆極性の軸上色収差をカップリングレンズに設けた回折構造で発生させることで、集光光学系を介して光情報記録媒体の情報記録面にスポットを結んだときの波面は軸上色収差が相殺された状態であり、集光光学系全体として光源の波長変動の範囲内で良好に軸上色収差が補正された系とすることができる。
【0034】
また、像側開口数が0.7以上であり、アッベ数が65以下の光学材料から形成されている対物レンズを600nm以下の短波長光源を利用する光ピックアップ装置に使用した場合,対物レンズで軸上色収差が比較的大きく発生してしまい、安定した情報の記録および/または再生ができなくなる恐れがある。しかし、上述のように対物レンズで発生する軸上色収差と逆極性の軸上色収差をカップリングレンズで発生させるので、軸上色収差を厳しく補正していない対物レンズでも本発明によるカップリングレンズと組み合わせて使うことで600nm以下の短波長光源を利用する光ピックアップ装置に適用可能となる。
【0035】
また、前記対物レンズと前記カップリングレンズとを合わせた合成系は、前記光源の波長が長波長側にシフトした場合にバックフォーカスが短くなる方向に変化するような軸上色収差特性を有し、波長の変化に対するマージナル光線の球面収差の変化量をΔSA、軸上色収差の変化量をΔCAとして、次式(6)を満たすことが好ましい。
【0036】
−1<ΔCA/ΔSA<0 (6)
【0037】
このように、対物レンズと軸上色収差が過剰補正されたカップリングレンズとを合わせた合成系は、前記光源の波長が長波長側にシフトした場合に、バックフォーカスが短くなる方向に変化するような軸上色収差特性を有し、式(6)を満たすことで、カップリングレンズの回折構造の作用により合成系の軸上色収差を補正過剰とすることにより基準波長の球面収差カーブと長・短波長側の球面収差カーブを交差させることが好ましい。これにより、光源の波長がシフトした際の最適書き込み位置の移動を小さく抑えることが可能となり、光源のモードホップ現象や高周波重畳時の波面収差の劣化の小さい合成系とすることができる。
【0038】
更に、カップリングレンズの回折の作用により、合成系の長・短波長側の球面収差と軸上色収差との両方をほぼ完全に補正するよりも、上記のように長・短波長側の球面収差は補正せずに、合成系の軸上色収差を補正過剰とすることで基準波長の球面収差カーブと長・短波長側の球面収差カーブを交差させた方が、収差補正に必要な回折のパワーが少なくてすむので、回折輪帯の間隔を大きくかつ輪帯数を少なくすることができ、金型加工の時間の短縮および回折効率の向上を達成できる。レーザ光源にはその発振波長に±10nm程の個体差があるが、上述のように基準波長の球面収差カーブと長・短波長側の球面収差カーブが交差するように球面収差が補正された合成系の光源として基準波長から発振波長がずれたレーザ光源を使用する場合は、カップリングレンズを光軸方向に沿って変移させて対物レンズに入射する光束の発散度を変化させることで、その波長における球面収差を補正することができるので、この合成系を搭載した光ピックアップ装置ははレーザ光源の選択の必要がない。
【0039】
また、前記光源の波長が+10nm変化したときの前記カップリングレンズと前記対物レンズとの合成系の焦点位置の変化をΔfB(μm)とし、前記光情報記録媒体の記録または再生を行うのに必要な前記対物レンズの所定の像側開口数をNAOBJとしたとき、前記合成系の軸上色収差が次式(7)を満たすことが好ましい。
【0040】
|ΔfB・(NAOBJ)2|≦2.5μm (7)
このように、集光光学系の軸上色収差、すなわちカップリングレンズと対物レンズとの合成系の軸上色収差が式(7)を満たすことが好ましい。
【0041】
また、本発明によるカップリングレンズは、入射した発散光を光軸に対して実質的に平行な平行光に変換するコリメートレンズ、入射した発散光を発散角がより小さな発散光に変換するカップリングレンズ、入射した発散光を収束光に変換するカップリングレンズのいずれでもよい。
また、本発明のカップリングレンズにおいて前記光源が600nm以下の波長の光を発生することが好ましい。
【0042】
また、本発明による光ピックアップ装置は、光源と、前記光源から出射された発散光の発散角を変えるカップリングレンズと、前記カップリングレンズを介した光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させる対物レンズを含む集光光学系と、を備え、前記情報記録面からの反射光を検出することで前記光情報記録媒体に対する情報の記録および/または再生を行う光ピックアップ装置であって、前記カップリングレンズは上述のカップリングレンズであって、前記光源が±10nm以下の波長変化を発生したときの波長変化に伴って前記対物レンズで生じる軸上色収差と、前記カップリングレンズの回折構造で生じる軸上色収差とが相殺することを特徴とする。
【0043】
この光ピックアップ装置は、DVDよりも高密度・大容量の次世代の光情報記録媒体に対する記録および/または再生を行うための光ピックアップ装置に関する。上述したような軸上色収差の良好に補正された集光光学系を搭載することで、600nm以下の発振波長を発生する光源を用いた場合でも安定した情報の記録または再生を行うことができる。
【0044】
また、本発明による音声・画像の記録装置・再生装置は、上述の光ピックアップ装置を搭載したことにより、DVDよりも高密度・大容量の次世代の光情報記録媒体に対して音声・画像の記録または再生を良好に行うことができる。
【0045】
また、光ピックアップ装置に用いられる回折光学素子における上述の従来技術の問題点を解決するために、本発明者は、ある光学素子について片側の光学面を平面、他方の光学面を球面/または非球面とし、さらに平面とされた光学面上に輪帯状の回折構造を形成した形状を提案した。
【0046】
即ち、光学素子の平面側に回折構造を付加したので、その回折構造の形成に電子ビーム描画方式を比較的容易に用いることができる。また、金型を用いた成形方によりこの光学素子を作製する場合は、上記の平面側に対応する金型の光学面は当然に平面状であるので、その金型の回折構造の形成にも電子ビーム描画方式を比較的容易に用いることができる。
【0047】
また、上述の光学素子において、使用波長をλ(mm)、前記平面上に形成された回折構造の有効径内における輪帯間隔の最小値をP(mm)としたとき、次式(8)、好ましくは次式(9)を満たすようにし、回折構造の周期の小さな回折面を平面の光学面上に設けることにより、電子ビーム描画方式による高精度な輪帯構造の形成が可能となる。
【0048】
P/λ<30 (8)
【0049】
P/λ<20 (9)
【0050】
また、球面および/または非球面である他方の光学面を屈折面とすることにより、回折作用と屈折作用とを適切に組み合わせて収差補正を精緻に行うことができる。
【0051】
また、球面および/または非球面とされた光学面上に輪帯状の回折構造を付加することで両面を回折面としても良く、両面を回折面とすることにより、回折面の収差補正機能に余裕ができるので、本発明による光学素子をより高性能な収差補正素子として利用することができる。
【0052】
また、球面および/または非球面とされた光学面上に輪帯状の回折構造を付加する場合、その回折構造を次式(10)を満たすように構成すると、従来の回折構造の創成技術であるSPDT(ダイヤモンド超精密切削技術)による金型加工が可能である。
【0053】
P/λ>20 (10)
【0054】
また、上述の光学素子から構成されたカップリングレンズとすることができる。
また、本発明のカップリングレンズは、平面上に前記輪帯状の回折構造が形成された一方の光学面と、その反対側の面に球面および/または非球面からなる光学面とを有することで、電子ビーム描画方式により回折構造を形成可能である。
【0055】
なお、本発明において、回折面とは、光学素子の表面、例えばレンズの表面に、レリーフを設けて、入射光束を回折させる作用を持たせる面のことをいい、同一光学面に回折を生じる領域と生じない領域がある場合は、回折を生じる領域をいう。レリーフの形状としては、例えば、光学素子の表面に、光軸を中心として略同心円状の輪帯として形成され、光軸を含む平面でその断面をみれば、各輪帯は鋸歯状(ブレーズ構造)、あるいは階段状のような形状が知られているが、そのような形状を含むものである。
【0056】
また、本発明において、光情報記録媒体としては、例えば、CD、CD−R、CD−RW、CD−Video、CD−ROM等の各種CD、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW等の各種DVD、あるいはMD等のディスク状の現在の光情報記録媒体のみならず、次世代の高密度記録媒体なども含まれる。
【0057】
また、本発明において、情報の記録および再生とは、上記のような光情報記録媒体の情報記録面上に情報を記録すること、情報記録面上に記録された情報を再生することをいう。本発明の集光光学系は、記録だけあるいは再生だけを行うために用いられるものであってもよいし、記録および再生の両方を行うために用いられるものであってもよい。また、ある光情報記録媒体に対しては記録を行い、別の光情報記録媒体に対しては再生を行うために用いられるものであってもよいし、ある光情報記録媒体に対しては記録または再生を行い、別の光情報記録媒体に対しては記録および再生を行うために用いられるものであってもよい。なお、ここでいう再生とは、単に情報を読み取ることを含むものである。
【0058】
また、本発明による光ピックアップ装置は、例えば、CD、CD−R、CD−RW、CD−Video、CD−ROM、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、MD等の光情報記録媒体に対してコンパチブルなプレーヤーまたはドライブ等、あるいはそれらを組み込んだAV機器、パソコン、その他の情報端末等の音声および/または画像の記録および/または再生装置に搭載することができる。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態について図面を用いて説明する。
【0060】
〈第1の実施の形態〉
【0061】
図1は本発明の第1の実施の形態による光ピックアップ装置を概略的に示す図である。
【0062】
図1の光ピックアップ装置は、1群1枚構成の対物レンズ1と、光源である半導体レーザ3と、光源3から射出される発散光の発散角を変換する1群1枚構成のカップリングレンズ2と、光情報記録媒体の情報記録面5からの反射光を受光する光検出器4とを備える。半導体レーザ3は、600nm以下の波長のレーザ光を発生させ、従来の光情報記録媒体よりも高密度に情報記録面5に記録された情報の再生および/または従来の光ディスクよりも高密度に情報記録面5への情報の記録が可能である。
【0063】
図1の光ピックアップ装置は、更に、情報記録面5からの反射光を光検出器4に向けて分離する偏光ビームスプリッタ6と、カップリングレンズ2と対物レンズ1との間に配置された1/4波長板7と、対物レンズ1に前置された絞り8と、集光レンズ9と、フオーカス及びトラッキング用の2軸アクチュエータ10とを備える。本実施の形態において集光光学系は、光源と、偏光ビームスプリッタと、カップリングレンズと、1/4波長板と、対物レンズと、絞りとを有するものである。なお、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタは集光光学系に含まれないものと見なしてもよい。
【0064】
また、対物レンズ1は、光軸に対し垂直方向に延びた面を持つフランジ部1eを有する。このフランジ部1eにより、対物レンズ1を光ピックアップ装置に精度よく取付ることができる。また、カップリングレンズ2は、対物レンズ1で発生する軸上色収差と逆極性の軸上色収差を発生させるような回折構造を有する。
【0065】
光情報記録媒体の情報記録面5からの情報の再生について説明する。半導体レーザ3から出射した発散光が偏光ビームスプリッタ6を通過しカップリングレンズ2で発散角を変えて1/4波長板7、絞り8を介して対物レンズ1により光情報記録媒体の情報記録面5に集光され、この情報記録面5で情報ピットにより変調されて反射した光束が対物レンズ1、絞り8,1/4波長板7,カップリングレンズ2,偏光ビームスプリッタ6,集光レンズ9を介して、光検出器4ヘ入射し、これにより生じた出力信号で光情報記録媒体の情報記録面に記録された情報を再生することができる。
【0066】
以上のような情報の再生時に、半導体レーザ3にモードホップ現象が生じると、半導体レーザ3は600nm以下の短波長のレーザ光を発生させるので、対物レンズ1において集光位置の変化量が大きくなり軸上色収差が発生するが、この対物レンズ1で発生する軸上色収差と逆極性の軸上色収差がカップリングレンズ2の回折構造で発生するので、カップリングレンズ2及び対物レンズ1を含む集光光学系を介して光情報記録媒体の情報記録面5にスポットを結んだときの波面は軸上色収差が相殺された状態であり、集光光学系全体として光源の波長変動の範囲内で軸上色収差が良好に補正されるのである。また、光情報記録媒体の情報記録面5への情報の記録の場合も,上述の説明と同様に,半導体レーザ3にモードホップ現象が生じても,カップリングレンズ2及び対物レンズ1を含む集光光学系を介して光情報記録媒体の情報記録面5にスポットを結んだときの波面は軸上色収差が相殺された状態であるので、安定した情報の記録が可能である。
【0067】
次に、図2により別の光ピックアップ装置について説明する。図2の光ピックアップ装置は、図1と比べて対物レンズ1が2群2枚構成となっている点が異なる。図2では対物レンズ1が第1レンズ1aと第2レンズ1bとから構成され、第1レンズ1aと第2レンズ1bとが保持部材1cにより一体化される。保持部材1cのフランジ部1dにより対物レンズ1を光ピックアップ装置に精度よく取付ることができる。図2の光ピックアップ装置によれば、図1と同様に、対物レンズ1で発生する軸上色収差と逆極性の軸上色収差がカップリングレンズ2の回折構造で発生するので、集光光学系全体として光源の波長変動の範囲内で軸上色収差が良好に補正される。
【0068】
〈第2の実施の形態〉
【0069】
次に、本発明による第2の実施の形態の光学素子について説明する。この光学素子は、輪帯状の回折構造を設けた回折光学素子であり、例えば上述の図1,図2のカップリングレンズを構成することができる。
【0070】
図11は、一方の光学面(S1)を平面として、その上に輪帯状の回折構造を形成し、さらに他方の光学面(S2)を非球面の屈折面とした光学素子の断面図(a)及びA方向からみた正面図(b)である。図11ではS1面の輪帯構造を強調して描いているが、実際の輪帯構造は、光軸に垂直な方向の輪帯間隔が数μm程度、光軸方向の輪帯の高さは1μm程度の微少な構造である。S2面は非球面の屈折面としたが、球面の屈折面でもよく、さらに図1(c)のS2面の拡大図に示すように非球面及び/または非球面の屈折面の上に輪帯状の回折構造を形成しても良い。この場合は、上述の式(9)、P/λ>20を満たすように輪帯構造を決定することにより、SPDTによる切削金型加工が可能となる。
【0071】
図12は、切削加工において先端部の半径(Rb)がそれぞれ1.0μm,0.7μm,0.5μmのバイトをそれぞれ使用し、平板の基板上にブレーズ構造を形成した際のブレーズ構造の周期(P/λ)と1次回折光の回折効率の理論値との関係を示す図である。ただし、基板の屈折率を1.5、波長(λ)を405nmとした。
【0072】
図12から分かるように、先端部の半径Rbが0.5μmのバイトを用いたとしても、ブレーズ構造の周期P/λが10以下となった場合、回折効率は80%以下になってしまい、十分な光利用効率が得られない。したがって、ブレーズ構造の周期P/λが20以下、特に10以下となるような場合には、位相不整合部分が生じる恐れのない電子ビーム描画方式による回折光学素子の作製方法が非常に有効である。
【0073】
【実施例】
【0074】
次に、本発明による実施例1〜7について説明する。各実施例におけるカップリングレンズ、対物レンズ及びこれらの合成系に関するデータの一覧表を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
各実施例のカップリングレンズに設けられる回折面は、回折レリーフをはずしたマクロ的な形状を示す母非球面と、光路差函数とで表す。光路差関数は基準波長の回折光に対し回折面によって付加される光路差をあらわすものとし、光路差関数の値がmλ(mは回折次数)変わるごとに回折輪帯を設けている。光路差関数は上述の式(A)により表す。
また、実施例1,5における有効径内の回折構造の輪帯数Miは次のとおりである。
実施例1 Mi:光源側 150
実施例5 Mi:光源側 287
【0077】
また、各実施例のカップリングレンズ、対物レンズにおける非球面は、次の式(B)で表す。
【0078】
x=(h2/r)/{1+√(1−(1+k)(h2/r2)}+A4h4+A6h6+・・・ (B)
但し、A4,A6,・・・:非球面係数、k:円錐係数、r:近軸曲率半径であり、r、d、n、はレンズの曲率半径、面間隔、屈折率を表す。
【0079】
〈実施例1〉
【0080】
本実施例は光源に発振波長405nmの青紫色半導体レーザを用い、対物レンズとして1群1枚構成で開口数0.85のレンズを用いたものである。1群l枚構成のカップリングレンズの光源側の面を回折面とすることで、対物レンズで発生する軸上色収差を補正した。また、カップリングレンズの光情報記録媒体側の面を非球面とすることでカップリングレンズの収差を精緻に補正した。なお、レンズデータ中の回折面係数は、回折面で発生する回折光のうち、1次回折光が最大の回折光量を有するように決定した。また、本実施例のカップリングレンズは、オレフィン系樹脂から形成した。実施例1のレンズデータを表2に示す。また、実施例1の光路図を図3に、球面収差図を図4に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
〈実施例2〉
【0083】
本実施例は光源に発振波長405nmの青紫色半導体レーザを用い、対物レンズとして1群1枚構成で開口数0.85のレンズを用いたものである。1群1枚構成のカップリングレンズの両面を回折レンズとすることで、対物レンズで発生する軸上色収差を補正した。また、回折のパワーを2つの面に分配したことでそれぞれの面の回折輪帯の間隔は約10μmと大きく確保されており、製造誤差等による回折効率の低下の少ないカップリングレンズとなっている。なお、レンズデータ中の回折面係数は、回折面で発生する回折光のうち、1次回折光が最大の回折光量を有するように決定した。また、本実施例のカップリングレンズは、オレフィン系樹脂から形成した。実施例2のレンズデータを表3に示す。また、実施例2の光路図を図5に、球面収差図を図6に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
また、実施例1および2に用いた対物レンズでは、短波長側で補正不足、長波長側で補正過剰の球面収差が発生する。実施例1および2においては、カップリングレンズの回折構造の作用により、集光光学系全系の軸上色収差を補正過剰とすることで基準波長(405nm)の球面収差カーブと長・短波長側の球面収差カーブを交差させている。これにより、光源の波長がシフトした際の最適書き込み位置の移動を小さく抑えることが可能となり、光源のモードホップ現象や高周波重畳時の波面収差の劣化の小さい光学系とすることができた。
【0086】
さらに、回折の作用により、対物レンズで発生する長・短波長側の球面収差カーブを基準波長の球面収差カーブとほぼ平行になるように補正し、かつ集光光学系全系の軸上色収差を補正するよりも上記のように、長・短波長側の球面収差カーブは補正せずに、集光光学系全系の軸上色収差を補正過剰とすることで基準波長(405nm)の球面収差カーブと長・短波長側の球面収差カーブを交差させた方が、回折のパワーが少なくてすむので、輪帯の間隔を大きくすることができる。
【0087】
また、軸上色収差の変化量ΔCAは、図4および図6の球面収差図において405nm,415nmの球面収差カーブの下端の移動幅で示され、移動方向は光源の波長の長波長側へのシフトにより、バックフォーカスが短くなる方向となる。なお、マージナル光線の球面収差の変化量ΔSAは405nmの球面収差カーブをその下端が415nmの球面収差カーブの下端に重なる位置まで平行移動させた際の球面収差カーブの上端と415nmの球面収差カーブの上端との幅により示される。
【0088】
実施例1および実施例2のカップリングレンズにより軸上色収差が補正される対物レンズの例を説明する。図17は、かかる対物レンズ(焦点距離1.76mm、像側開口数0.85)の波長405±10nmにおける球面収差および軸上色収差を示すグラフであり、波長が10nm長波長側に変化すると、焦点がオーバー側に約3μm変化することを示している。この対物レンズは、1群1枚構成の単レンズであり、d線のアッベ数が56.5であるオレフィン系樹脂から形成されている。この対物レンズのレンズデータは、表2に記載されている通りである。
【0089】
〈実施例3〉
【0090】
本実施例は光源に発振波長405nmの青紫色半導体レーザを用い、対物レンズとして2群2枚構成で開口数0.85のレンズを用いたものである。1群1枚構成のカップリングレンズの両面を回折レンズとすることで、対物レンズで発生する軸上色収差を補正した。また、カップリングレンズの光情報記録媒体側の面を非球面とすることでカップリングレンズの収差を精緻に補正した。回折のパワーを2つの面に分配したことでそれぞれの面の回折輪帯の間隔は約13μmと大きく確保されており、製造誤差等による回折効率の低下の少ないカップリングレンズとなっている。なお、レンズデータ中の回折面係数は、回折面で発生する回折光のうち、1次回折光が最大の回折光量を有するように決定した。また、本実施例のカップリングレンズは、オレフィン系樹脂から形成した。実施例3のレンズデータを表4に示す。また、実施例3の光路図を図7に、球面収差図を図8に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
〈実施例4〉
【0093】
本実施例は光源に発振波長405nmの青紫色半導体レーザを用い、対物レンズとして2群2枚構成で開口数0.85のレンズを用いたものである。1群1枚構成のカップリングレンズの両面を回折レンズとすることで、対物レンズで発生する軸上色収差を補正した。回折のパワーを2つの面に分配したことでそれぞれの面の回折輪帯の間隔は約13μmと大きく確保されており、製造誤差等による回折効率の低下の少ないカップリングレンズとなっている。なお、レンズデータ中の回折面係数は、回折面で発生する回折光のうち、1次回折光が最大の回折光量を有するように決定した。また、本実施例のカップリングレンズは、オレフィン系樹脂から形成した。実施例4のレンズデータを表5に示す。また、実施例4の光路図を図9に、球面収差図を図10に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
実施例3、実施例4および後述の実施例7のカップリングレンズにより軸上色収差が補正される対物レンズの例を説明する。図18は、かかる対物レンズ(焦点距離1.76mm、像側開口数0.85)の波長405±10nmにおける球面収差および軸上色収差を示すグラフであり、波長が10nm長波長側に変化すると、焦点がオーバー側に約2.5μm変化することを示している。この対物レンズは、2群2枚構成のレンズであり、d線のアッベ数が56.5であるオレフィン系樹脂から形成されている。この対物レンズのレンズデータは、表4に記載されている通りである。
【0096】
〈実施例5〉
【0097】
本実施例は光源に発振波長405nmの青紫色半導体レーザを用い、対物レンズとして1群1枚構成で開口数0.85のレンズを用いたものである。1群1枚構成のカップリングレンズの光源側の面を輪帯状の回折構造を形成した回折面とすることにより、対物レンズで発生する軸上色収差を補正した。
【0098】
この輪帯構造の輪帯の最小間隔は、有効径内で3.1μm(P/λ=7.7)であるので、SPDT(ダイヤモンド超精密切削技術)による金型加工では不要光が多く発生してしまい、十分な回折効率は得られない。そこで、回折構造を形成するベースとなる面を平面とすることで電子ビーム描画方式による高精度な金型加工を可能とした。また、カップリングレンズの光情報記録媒体側の面を非球面の屈折面とすることでカップリングレンズの収差を精緻に補正した。なお、レンズデータ中の回折面係数は、回折面で発生する回折光のうち、1次回折光が最大の回折光量を有するように決定した。また、本実施例のカップリングレンズは、オレフィン系樹脂から形成した。実施例5のレンズデータを表6に示す。また、実施例5の光路図を図13に、球面収差図を図14に示す。
【0099】
【表6】
【0100】
〈実施例6〉
【0101】
本実施例は光源に発振波長405nmの青紫色半導体レーザを用い、対物レンズとして1群1枚構成で開口数0.85のレンズを用いたものである。1群1枚構成のカップリングレンズの光源側の面を輪帯状の回折構造を形成した回折面とすることにより、対物レンズで発生する軸上色収差及び光源の発振波長が変化した際の球面収差を補正した。
【0102】
この輪帯構造の輪帯の最小間隔は、有効径内で3.0μm(P/λ=7.4)であるので、回折構造を形成するベースとなる面を平面とすることで電子ビーム描画方式による高精度な金型加工を可能とした。また、カップリングレンズの光情報記録媒体側の面を非球面の上に輪帯状の回折構造を形成した回折面とすることにより、カップリングレンズの収差及び光学系全系の収差をより精緻に補正した。この光情報記録媒体側の面に形成された輪帯回折構造の最小輪帯間隔は有効径内で14.7μm(P/λ=36.3)であるので、SPDTによる金型加工で十分な回折効率を得ることができる。なお、レンズデータ中の回折面係数は、回折面で発生する回折光のうち、1次回折光が最大の回折光量を有するように決定した。また、本実施例のカップリングレンズは、オレフィン系樹脂から形成した。実施例6のレンズデータを表7に示す。また、実施例6の光路図を図15に、球面収差図を図16に示す。
【0103】
【表7】
【0104】
実施例5および実施例6のカップリングレンズにより軸上色収差が補正される対物レンズの例を説明する。図19は、かかる対物レンズ(焦点距離2.20mm、像側開口数0.85)の波長405±10nmにおける球面収差および軸上色収差を示すグラフであり、波長が10nm長波長側に変化すると、焦点がオーバー側に約4μm変化することを示している。この対物レンズは、1群1枚構成の単レンズであり、d線のアッベ数が56.5であるオレフィン系樹脂から形成されている。この対物レンズのレンズデータは、表6に記載されている通りである。
【0105】
なお、レンズデータ中の回折面係数は、回折面で発生する回折光のうち、1次回折光が最大の回折光量を有するように決定した。また、本実施例のカップリングレンズは、オレフィン系樹脂から形成した。
【0106】
〈実施例7〉
【0107】
本実施例は光源に405nmの短波長光源を用い、対物レンズとして2群2枚構成で開口数0.85のレンズを用いたものである。1群1枚構成のカップリングレンズの両面を回折面とすることで、対物レンズで発生する軸上色収差を補正した。色収差の補正に必要な回折のパワーを2つの面に分配し、さらに、回折面係数を2次回折光が最大の回折光量を有するように決定したので、それぞれの面の回折輪帯の間隔は約20μmと大きく確保されており、製造誤差等による回折効率の低下の少ないカップリングレンズとなっている。また、光源側の面が回折面であるので、設計の際に入射光のマージナル光線の入射角を自由に選択することができたので、球面収差の他にコマ収差も精緻に補正された高性能なカップリングレンズとなっている。なお、本実施例のカップリングレンズは、オレフィン系樹脂から形成した。実施例7のレンズデータを表8に示す。また、実施例7の光路図を図20に、球面収差図を図21に示す。球面収差図は、波長に関わらず、焦点がほとんど移動しないことを示している。
【0108】
【表8】
【0109】
なお、実施例1乃至7における集光光学系の光学素子の材料はすべてプラスチック材料としたので、軽量で、かつ安価に大量生産が可能である。また、表2〜表8では、10のべき乗の表現にE(またはe)を用いて、例えば、E−02(=10-2)のように表している。
【0110】
【発明の効果】
本発明によれば、レーザ光源のモードホップ現象等に起因して対物レンズで発生する軸上色収差を効果的に補正できるカップリングレンズ、光ピックアップ装置、記録装置及び再生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による光ピックアップ装置の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態による別の光ピックアップ装置の概略図である。
【図3】実施例1における集光光学系の光路図である。
【図4】実施例1の球面収差図である。
【図5】実施例2における集光光学系の光路図である。
【図6】実施例2の球面収差図である。
【図7】実施例3における集光光学系の光路図である。
【図8】実施例3の球面収差図である。
【図9】実施例4における集光光学系の光路図である。
【図10】実施例4の球面収差図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態による光学素子の断面図(a)、A方向からみた正面図(b)、及びS2面の拡大図(c)である。
【図12】図11の光学素子の効果を説明するための図であって、切削加工において先端部の半径(Rb)がそれぞれ1.0μm,0.7μm,0.5μmのバイトをそれぞれ使用し、平板の基板上にブレーズ構造を形成した際のブレーズ構造の周期(P/λ)と1次回折効率の理論値との関係を示す図である。
【図13】実施例5における集光光学系の光路図である。
【図14】実施例5の球面収差図である。
【図15】実施例6における集光光学系の光路図である。
【図16】実施例6の球面収差図である。
【図17】実施例1および実施例2のカップリングレンズにより軸上色収差が補正される対物レンズ(焦点距離1.76mm、像側開口数0.85)の波長405±10nmにおける球面収差および軸上色収差を示す図である。
【図18】実施例3、実施例4および実施例7のカップリングレンズにより軸上色収差が補正される対物レンズ(焦点距離1.76mm、像側開口数0.85)の波長405±10nmにおける球面収差および軸上色収差を示す図である。
【図19】実施例5および実施例6のカップリングレンズにより軸上色収差が補正される対物レンズ(焦点距離2.20mm、像側開口数0.85)の波長405±10nmにおける球面収差および軸上色収差を示す図である。
【図20】実施例7における集光光学系の光路図である。
【図21】実施例7の球面収差図である。
【符号の説明】
1 対物レンズ
2 カップリングレンズ
3 半導体レーザ(光源)
5 情報記録面
S1 光学素子の一方の光学面
S2 光学素子の他方の光学面
Claims (16)
- 光源から射出された発散光の発散角を変え、対物レンズに入射させるためのカップリングレンズであって、前記カップリングレンズは、少なくとも1つの面が輪帯状の回折構造を有する回折面とされ、前記光源が発生する光の基準波長より10nm短い波長に対し焦点距離が長くなるように軸上色収差が過剰補正され、次式を満たし、
0.05≦NA≦0.50(ただし、NA:前記カップリングレンズの開口数)
前記基準波長をλ(mm)、前記基準波長における焦点距離をf(mm)、前記第i回折面に形成された回折構造で発生する回折光のうち最大の回折光量をもつ回折光の次数をni、前記第i回折面の有効径内の回折構造の輪帯数をMi、及び前記第i回折面の有効径内の回折構造の輪帯間隔の最小値をPi(mm)としたとき、次の数2に示す式を満たすことを特徴とするカップリングレンズ。
- 次式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のカップリングレンズ。
0.3<PD/PTOTAL ≦1.1
ただし、PD:前記回折面を光源側から順に第1回折面、第2回折面、・・・、第N回折面と呼ぶとき、前記第i回折面に形成された回折構造により透過波面に付加される光路差を、Φbi=ni・(b2i・hi2+b4i・hi4+b6i・hi6+・・・)により定義される光路差関数で表す場合に(ここで、niは、前記第i回折面に形成された回折構造で発生する回折光のうち最大の回折光量を有する回折光の回折次数、hiは光軸からの高さ(mm)、b2i、b4i、b6i、・・・、はそれぞれ2次、4次、6次、・・・、の光路差関数係数(回折面係数ともいう)である)、次の数1に示す式により定義される回折構造のみのパワー(mm-1)
- 次の数5に示す式を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のカップリングレンズ。
- 前記基準波長をλ(mm)、前記基準波長からの微少な波長の変化をΔλ(mm)、前記基準波長における焦点距離をf(mm)、及び波長が前記基準波長からΔλ(mm)変化したときの焦点距離の変化をΔf(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項1、2または3に記載のカップリングレンズ。
−0.12≦(Δf/f)・NA・(λ/Δλ)≦−0.01 - 2つ以上の面が輪帯状の回折構造を有する回折面とされたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカップリングレンズ。
- 前記回折面のうち少なくとも1つの回折面は、nを0、±1以外の整数としたとき、該回折面で発生する回折光のうち、n次回折光の回折光量が他のいずれの次数の回折光の回折光量よりも大きくなるように各回折輪帯の光軸方向の段差量が決定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカップリングレンズ。
- 平面上に前記輪帯状の回折構造が形成された一方の光学面と、その反対側の面に球面および/または非球面からなる光学面とを有する請求項1に記載のカップリングレンズ。
- 前記平面上に形成された回折構造はブレーズ構造であることを特徴とする請求項7に記載のカップリングレンズ。
- 使用波長をλ(mm)、前記平面上に形成された回折構造の有効径内における輪帯間隔の最小値をP(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項7または8に記載のカップリングレンズ。
P/λ<30 - 次式を満たすことを特徴とする請求項9に記載のカップリングレンズ。
P/λ<20 - 前記球面および/または非球面からなる光学面は屈折面であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載のカップリングレンズ。
- 前記球面および/または非球面からなる光学面は輪帯状の回折構造が付加されていることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載のカップリングレンズ。
- 使用波長をλ(mm)、前記球面および/または非球面からなる光学面上に形成された回折構造の有効径内における輪帯間隔の最小値をP(mm)としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項12に記載のカップリングレンズ。
P/λ>20 - 600nm以下の波長の光を発生する光源から射出された発散光の発散角を変えることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のカップリングレンズ。
- 光源と、前記光源から出射された発散光の発散角を変えるカップリングレンズと、前記カップリングレンズを介した光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させる対物レンズを含む集光光学系と、を備え、前記情報記録面からの反射光を検出することで前記光情報記録媒体に対する情報の記録および/または再生を行う光ピックアップ装置であって、
前記カップリングレンズは請求項1乃至14のいずれか1項に記載のカップリングレンズであって、前記光源が±10nm以下の波長変化を発生したときの波長変化に伴って前記対物レンズで生じる軸上色収差と、前記カップリングレンズの回折構造で生じる軸上色収差とが相殺することを特徴とする光ピックアップ装置。 - 請求項15に記載の光ピックアップ装置を搭載したことを特徴とする、音声および/または画像の記録装置、および/または、音声および/または画像の再生装置。
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