JP5011646B2 - 硫酸化酸化鉄を含む新規な構造体、およびその製造方法。 - Google Patents

硫酸化酸化鉄を含む新規な構造体、およびその製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、硫酸化酸化鉄を含む新規な構造体、およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、構造体表層部に硫酸化酸化鉄が存在し、表層部を除く構造体内部は硫酸化酸化鉄を含まない不活性担体成分で構成される構造体、およびその製造方法に関する。ここで言う硫酸化酸化鉄とは、化学量論の組成を持つ鉄の硫酸塩を示すのではなく、化学量論よりも少ない硫酸根を含有した酸化鉄のことを言う。
硫酸化酸化鉄は、鉄の水酸化物もしくは酸化物に、硫酸もしくは硫酸根含有化合物を添加し、それを高温で焼成することによって得られる固体酸材料で、100%硫酸よりも強い酸強度を示す固体超強酸材料として知られている(非特許文献1参照。)。硫酸化酸化鉄は、硫酸鉄(II)(FeSO)、硫酸鉄(III)(Fe(SO)のように化学量論組成をもつ化合物ではなく、多くの場合SとFeの原子比はS/Fe<1であり、酸化鉄上にSOが配位した構造が提案されている(非特許文献1参照)。
硫酸化酸化鉄は、強い酸強度を持つ材料であることから、化学工業における酸触媒として利用することが注目されている。すなわち、炭化水素の化学的変換反応であるアルキル化反応、エステル化反応、異性化反応等の触媒としての利用である。
従来、酸触媒を用いるこの種の反応には、塩化アルミニウム、リン酸、硫酸、フッ化水素酸、パラトルエンスルホン酸等が使用されている。しかしながら、これらの酸触媒は、極めて腐食性の高い物質であることから、反応装置に用いられる金属を腐食させる。そのために、腐食を防止するための高価な耐腐食材料を用いたり、腐食防止処理を施さなければならいという問題点があった。
また、硫酸等の均一系触媒では、触媒の蒸留分離等の分離工程が必要なため設備、分離エネルギーの面で経済的でなく、触媒の分離が困難な場合には、アルカリ洗浄などの煩雑な操作が必要になることに加え、廃水処理が必要となるために環境保全の面でも問題があった。そのために、塩化アルミニウムをアルミナ担体に担持した固体触媒が用いられるが、塩化アルミニウムは極めて不安定な物質で、水によって容易に分解し触媒活性が低下すると共に塩酸を生成する。そのために、反応原料から水を完全に除去する必要がある。また、一旦活性を失った触媒の活性を復活させることは困難なため、触媒を失活させないために塩酸等の塩素含有化合物を供給しなければならない等の問題があった。
これらの欠点を克服する方法として、周期律表第IV族金属水酸化物もしくは酸化物を硫酸根含有水溶液と接触させ、350℃〜800℃で焼成することによって調製される硫酸根含有固体酸を触媒材料として使用する方法が提案された(特許文献1参照。)。この方法で用いられる金属は、スズ、チタン、ジルコニウム等で、これらの酸化物上に硫酸が担持されていることで、100%硫酸よりも酸強度が強い固体酸が得られている。そのため、酸触媒反応に対し高い活性を有すると共に、反応原料および生成物と触媒の分離が容易であるという長所がある。
炭化水素の異性化反応およびアルキル化反応の活性を向上させる方法として、硫酸化ジルコニウムに少量の白金またはパラジウムを添加した触媒材料(特許文献2参照。)。が開示されている。他の酸化物触媒を含む例として、ヘテロポリ酸を含む硫酸化ジルコニア、硫酸化チタニア、硫酸化酸化鉄等の超強酸触媒を用いたイソパラフィン類とオレフィンをアルキル化する方法が開示されている(特許文献3参照。)。
また、クメンヒドロペルオキシドを硫酸化遷移金属酸化物が含有される固体酸触媒と接触させ、フェノールとアセトンを製造する方法が開示されている。この方法で使用される遷移金属酸化物は、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化マンガンおよび酸化鉄で、均一系の硫酸触媒の分離を必要とせずにフェノールを製造できることが示されている(特許文献4参照。)。
特許文献1から4に示した酸触媒材料は、酸化物の原料となる金属塩水溶液にアンモニア等の塩基性化合物を加え、ジルコニアや鉄等の水酸化物を沈殿させ、その沈殿に硫酸を添加したのちに焼成することによって調製されるため、通常は粉体状で得られる。工業的な反応器で固体触媒を使用する場合、粉末の状態では使用不可能であり、例えば1mm〜10mm程度の大きさに成形するか、成形されている担体上に担持される必要がある。
成形された硫酸化酸化物触媒の調製方法として、固体酸前駆体である水酸化ジルコニウムにバインダーとして擬ベーマイトを添加し、さらに硫酸アンモニウムを添加して成形した後に焼成することで触媒活性を有する成形触媒が得られることが開示されている(特許文献5および特許文献6参照。)。
また、アルミナ担体上に硫酸化した酸化物を担持させる方法が開示されている(特許文献7参照。)。この方法では、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化ニオブ等の原料となる金属塩溶液をアルミナ担体に含浸させ、高温で焼成した後に硫酸水溶液によって硫酸化することで、担体に担持された硫酸化酸化物を調製している。
さらに、硫酸化酸化物触媒の触媒活性を高めるために、触媒の活性部位である固体酸点に反応原料が良好に接触するための構造を規定した方法が開示されている(特許文献8参照。)。この方法では、触媒の表面積、細孔容積、細孔分布に注目し、実質的な量の担持されたまたは塊状の結晶化した硫酸化酸化鉄が、135m/g以上の表面積、0.16cm/g以上の細孔容積、20オングストローム以上の平均細孔径を持つことを特徴としている。
表面、19巻、2号、75頁(1981年) 特公昭59−6181号公報 米国特許3,032,599号明細書 特開平7−233098号公報 特表2002−543052号公報 国際公開第98/09727号パンフレット 特許第3553878号公報 米国特許4,406,821号明細書 特開平11−197510号公報
非特許文献1および特許文献1〜4の方法では、酸化鉄等の金属塩水溶液にアンモニア等の塩基性化合物を加え、鉄等の水酸化物を沈殿させ、その沈殿に硫酸を添加したのちに焼成することによって調製されるため、硫酸化酸化鉄は粉体状で得られる。工業的な反応器で固体触媒を使用する場合、粉末の状態では使用不可能であり、例えば1mm〜6mm程度の大きさに成形するか、成形されている担体上に担持される必要がある。
特許文献5〜8の方法では、成形された前駆体を用いて硫酸化酸化物を調製したり、アルミナ等の成形された担体上硫酸化酸化物を堆積させることができる。しかしながら、特許文献5〜8の硫酸化酸化物触媒は、成形剤あるいは担体を含む構造体の内部を含む構造体全体に硫酸化酸化物が存在する。そのために、固体酸点が構造体全体に存在することになる。
固体触媒を用いた反応では、反応原料および反応生成物が成形剤あるいは担体を含む構造体全体の細孔を通り、構造体の内部まで進入する。反応原料が触媒活性点に接触して生成した生成物が、触媒活性点に再度接触することなくそのまま触媒から脱離すれば、逐次反応を起こすことなく目的の生成物が得られる。しかし、担体を含む構造体の内部まで侵入した反応原料および反応生成物は、構造体内部で長い時間滞留することになるため、構造体内部の触媒活性点で逐次的な反応が進行し、目的とする生成物が更に別の物質に変化してしまい選択性が低下してしまう。また、目的生成物の逐次反応で生成した高沸点物質やコークが触媒の活性点および細孔部に析出し、活性点の被毒や細孔の閉塞を生じ、結果的に触媒活性を低下させ、さらに触媒寿命の低下を招く等の問題が発生する。
また、構造体内部の触媒活性点で副反応が進行しコーク等の炭素質が析出すると触媒を再生する際にも問題を生ずる。すなわち、炭素質の析出によって触媒活性が低下した触媒を再生させる際には酸化雰囲気で加熱処理を行って炭素質を燃焼除去する必要があるが、担体を含む触媒の構造体の内部に生成した炭素質は燃焼しにくく、また、急激に炭素質の酸化を行うと燃焼で生成するガスや高温による構造体の破壊や触媒活性点の分解によって触媒活性が低下するという問題がある。そのため、特許文献6に示されるように酸素濃度を、例えば、空気中の酸素濃度より極めて低い0.2〜5容量%まで低下させた雰囲気で再生処理をする必要があり、再生処理の操作が煩雑になると共に長い時間を要することになるという問題が発生する。
これらの問題点を解決するためには、反応生成物が触媒活性点、すなわち、硫酸化酸化鉄の固体酸点のある場所から即座に離脱する触媒構造、および担体を含む構造体の内部でコーク生成等の副反応が進行しないことが必要となる。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は固体酸触媒として有効な構造体表層部のみに硫酸化酸化鉄が存在し、構造体内部には触媒活性点が存在しない構造体、およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、硫酸化酸化鉄を含有する新規な構造体を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は構造体の外表面から1〜1000μmの深さまでの構造体表層部のみに硫酸化酸化鉄が存在し、構造体表層部を除く内部の層には硫酸化酸化鉄が存在せず、担体が、シリカ、チタニア、ジルコニア、活性炭、シリカジルコニア、リン酸ジルコニウム、アセチレンブラック、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリコンカーバイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、サポナイト、シリカチタニア、マグネシアからなる群より選択される担体である構造体、およびその製造方法に関するものである。
本発明の硫酸化酸化鉄を含有する新規な構造体は、構造体表層部に硫酸化酸化鉄が存在し、構造体表層部を除く内部の層には硫酸化酸化鉄が存在しない構造を有することを特徴とする。
ここで、本発明における構造体とは、自重や外力などの荷重に抵抗できるように成形された物体のことをいう。
本発明の硫酸化酸化鉄は、鉄の水酸化物もしくは酸化物に、硫酸もしくは硫酸根含有化合物を添加し、それを高温で焼成することによって得られる固体酸材料である。
本発明の構造体では、構造体表層部の硫酸化酸化鉄が存在する層の厚さは、好ましくは構造体外表面から1〜1000μm、さらに好ましくは1〜500μmである。また、構造体表層部を除く内部には、実質的に硫酸化酸化鉄を含まない。
本発明の構造体では、構造体表層部の酸化鉄は部分的に硫酸化され、硫酸根の形態の硫黄含有量は鉄に対して0.1〜50モル%、強度の強い酸を得られることから、好ましくは0.2〜30モル%である。
本発明の構造体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、図1〜4で示されるような球状、円柱状、中空円柱状、板状、楕円状、シート状、ハニカム状等が挙げられ、十分な反応活性があり、副反応、および、コーキングを抑制することができることから、好ましくは球状、楕円状、円柱状、中空円柱状、更に好ましくは球状が挙げられる。
また、本発明の構造体の大きさは、特に制限されるものではなく、例えば、酸触媒として使用する場合に十分な反応活性があり、副反応およびコーキングを抑制することができることから、好ましくは10μm〜10cmの範囲、さらに好ましくは100μm〜5cmの範囲の構造体が挙げられる。
本発明の構造体において、バインダーの有無に特に制限はない。
本発明の構造体を製造する方法は特に規定されず、例えば、(1)不活性担体の表層部に水酸化鉄および/または酸化鉄を担持させた後に、硫酸または硫酸根を含有する化合物を添加し、350℃乃至800℃で焼成する方法、(2)水酸化鉄および/または酸化鉄の原料となる塩を不活性担体に担持させた後に、塩基性物質等を添加して加水分解を行うことで水酸化鉄および/または酸化鉄を不活性担体の表層部に析出させ、硫酸または硫酸根を含有する化合物を添加し、350〜800℃で焼成する方法、(3)水酸化鉄および/または酸化鉄の原料塩を含む溶液を不活性担体の表層に噴霧し、構造体の表層部に原料塩を担持させた後に塩基性物質等を添加して加水分解することで水酸化鉄および/または酸化鉄を不活性担体の表層に担持させた後に、硫酸または硫酸根を含有する化合物を添加し、350〜800℃で焼成する方法、(4)構造体の内部となる不活性担体の外表面に水酸化鉄および/または酸化鉄を塗布し、硫酸または硫酸根を含有する化合物を添加した後に、350〜800℃で焼成する方法により構造体を製造することができる。構造体の表層部に担持される鉄原料が内部に拡散しにくいこと、および表層に存在する硫酸化酸化鉄が剥離することがないことから、(1)の方法が好ましく用いられ、水酸化鉄および/または酸化鉄は、塩基性物質を不活性担体に含浸担持させた後、鉄原料塩を含浸させることにより、不活性担体の表層部に担持させることができる。
本発明において、(1)の方法を更に詳しく説明する。まず、塩基性物質を不活性担体に含浸担持させる。この担体を、鉄原料塩を溶解した溶液に浸すことで、溶液中の鉄原料塩が不活性担体に含浸されている塩基性物質と接触し、加水分解反応によって水酸化鉄および/または酸化鉄になり不活性担体の表層部に沈殿する。この表層に水酸化鉄および/または酸化鉄が担持された担体に、硫酸または硫酸根含有化合物の溶液を含浸させ、乾燥する。その後、空気中350〜800℃で焼成し、表層部分に硫酸化酸化鉄が存在し、表層以外の内部には硫酸化酸化鉄が存在しない構造体が製造できる。
本発明の方法で使用される塩基性物質は、特に限定されるものではなく無機物、有機物を問わず使用できるが、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムセシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、シクロブチルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、ブチルベンジルアミン、フェニレンアミン、ジシクロヘキシルアミン、デシルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、フェニルエタノールアミン等のアミン類、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム化合物、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、エチルピリジン、ジエチルピリジン、フェニルピリジン、アミノピリジン、ニトロピリン、ブロモピリジン、クロロピリジン等のピリジン類、キノリン、メチルキノリン、ジメチルキノリン、ヒドロキシメチルキノリン、ビニルキノリン、フェニルキノリン、ヒドロキシキノリン、テトラヒドロキノリン、アミノキノリン、クロロキノリン、ブロモキノリン、ニトロキノリン、メトキシキノリン等のキノリン類が使用できる。構造体の表層部に担持される鉄源が内部に拡散しにくいことから、アルカリ金属、アルカリ土類金属、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム化合物、ピリジン類およびキノリン類が好ましい。さらに、焼成後に塩基性物質を残留させないことから、テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム化合物、ピリジン類およびキノリン類が好ましい。
本発明で使用できる水酸化鉄または酸化鉄の原料は、特に限定されるものではないが、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硫酸鉄(II)アンモニウム、硫酸アンモニウム鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、過塩素酸鉄(II)、過塩素酸鉄(III)、酸化鉄(III)、四三酸化鉄、くえん酸鉄(III)、くえん酸鉄(III)アンモニウム、りん酸鉄(III)、しゅう酸鉄(II)、三しゅう酸三アンモニウム鉄(III)三水和物 、乳酸鉄(II)、フマル酸鉄(II)、2−エチルヘキサン酸鉄(III)、ナフテン酸鉄、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸ナトリウム、ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム、ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム、ペンタシアノアンミン鉄(II)酸ナトリウム等が使用できる。構造体の表層部に担持される鉄原料が内部に拡散しにくいことから、塩化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄が好ましい。
本発明の方法では、使用する担体は特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、活性炭、シリカジルコニア、リン酸ジルコニウム、アセチレンブラック、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリコンカーバイド、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、サポナイト、シリカチタニア、ジルコニア、マグネシア等、通常用いられる担体でよいが、好ましくはシリカ、アルミナがよい。
本発明の方法では、不活性担体への水酸化鉄および/または酸化鉄の担持は、担体外表面から1〜1000μm、さらに好ましくは1〜500μmの位置に担持されることが好ましい。
本発明の方法では、硫酸または硫酸根含有化合物が使用される。硫酸根含有化合物は特に限定されるものではないが、硫酸アンモニウム、亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、塩化チオニル等が使用できる。添加する硫酸または硫酸根含有化合物の量は、最終的に得られる構造体中の硫黄の量が鉄に対して0.1〜50モル%、好ましくは0.2〜30モル%になるように添加することが望ましい。
本発明の方法で行われる焼成の温度は、350〜800℃でよく。硫酸化酸化鉄が存在する表層以外の内部に硫黄分が残存しないことから、好ましくは400〜700℃がよい。さらに、強い固体酸点を多く生成することから450〜600℃が好ましい。焼成時間は0.5〜20時間で良い。
本発明の構造体は、固体酸触媒で反応する系で触媒として使用することができる。例えば、軽油および重質油などの接触分解反応;重質油の水素化分解反応;シクロヘキサンの脱水素、シクロペンテンの異性化脱水素、パラフィンの環化脱水素、パラフィンの異性化、パラフィンの水素化分解などの石油ナフサの重質留分の接触改質反応;ブタン、ペンタン、ヘキサン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、キシレンなどのアルカン、アルケンの骨格異性化反応およびアルケンの水素異性化反応;ベンゼン、アルキルベンゼン、ナフタレン、フェノール、チオフェン、ピリジン等とエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチルクロリド、プロピルプロリド、ブチルクロリド等のオレフィン、アルコールハロゲン化アルキル等の芳香族のアルキル化反応;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリプロピルベンゼン、トリブチルベンゼン等のアルキル芳香族の異性化、不均化、トランスアルキル化、脱アルキル化反応;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等のオレフィン重合反応等に使用することができる。
また、本発明の構造体は、触媒の担体としても使用することができ、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1属元素;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの2属元素;スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、アクチノイド等の3属元素;チタニウム、鉄等の4属元素;バナジウム、ニオブ、タンタル等の5属元素;クロム、モリブデン、タングステン等の6属元素;マンガン、レニウム等の7属元素;鉄、ルテニウム、オスニウム等の8属元素;コバルト、ロジウム、イリジウム等の9属元素;ニッケル、パラジウム、白金などの10属元素;銅、銀、金等の11属元素、亜鉛、カドミウムなどの12属元素;ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の13属元素;ゲルマニウム、スズ、鉛等の14属元素;アンチモン、ビスマス等の15属元素、硫黄、テルル等の16属元素に挙げられる一種類以上の元素を担持し触媒として使用できる。
本発明の構造体は、構造体表層部に固体酸触媒として有効な硫酸化酸化鉄が存在し、表層部以外の内部には実質的に硫酸化酸化鉄が存在しない。したがって、反応原料および反応生成物が、副反応が起こりやすい構造体の内部で固体酸点と接触することがないので、目的物の選択性が高く、また活性点の被毒や細孔の閉塞を生じにくいため触媒活性が低下しにくく、さらに触媒寿命の長いという効果を有する。また、固体酸点が構造体内部に存在しないため、構造体内部に炭素質が析出しないことから、炭素質の燃焼による触媒の再生が容易に行えるという効果を有する。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例に用いた測定法を示す。
(鉄および硫黄の深さ方向の担持分布を求めるためのライン分析)
得られた構造体を樹脂に包埋し、ウルトラミクロトームで切削して得られた試料を、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)(島津製作所製、商品名EPM−810)を用い電圧20kV、電流10nAにて粒子断面の深さ方向の線分析を行い、鉄および硫黄の分布を測定した。
(鉄および硫黄の定量)
鉄量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)(京都光研製、商品名ICP−AES UOP−1 markII)にて定量分析した。また、硫黄量はイオンクロマトグラフ(DIONEX製、商品名:SERIES 2000i/SP、カラム:IC−ANION−PWXL)を用いSO 2−の量を測定して算出した。
実施例1
1.0モル/リッターのテトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液10.0gにシリカビーズ(富士シリシア化学社製 「キャリアクトQ−50」、粒子形状:球状、粒子径:1.7〜4.0mm、表面積:80m/g、平均細孔径50nm)10gを添加し、シリカビ−ズに水溶液を含浸した後、50℃、2時間、20hPaで減圧乾燥した。
つぎに、硝酸鉄・9水和物2.7gを水10mlに溶解させ、先のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを含浸担持したシリカビーズを添加し、30分攪拌した。撹拌後、50℃、20hPaで2時間減圧乾燥し、さらに100℃で一昼夜乾燥した。
得られた試料に0.2規定硫酸水溶液10mlを加え70℃、20hPaで2時間減圧乾燥した。得られた試料を、空気気流中500℃で3時間焼成した。
得られた硫酸化酸化鉄構造体の鉄および硫黄のライン分析を行った結果を図5に示す。担持された鉄および硫黄はシリカビーズ外表面から450μm以内に存在していることがわかった。
組成分析の結果、得られた構造体中の鉄、硫黄の組成は、それぞれ3.6重量%、0.15重量%で、硫黄/鉄の比率は7.3モル%であった。
実施例2
0.5規定硫酸水溶液10mLを用いたこと以外は、実施例1と同様にして硫酸化酸化鉄構造体を調製した。
得られた硫酸化酸化鉄構造体の鉄および硫黄のライン分析を行った結果を図6に示す。担持された鉄および硫黄はシリカビーズ外表面から450μm以内に存在していることがわかった。
組成分析の結果、得られた構造体中の鉄、硫黄の組成は、それぞれ3.5重量%、0.41重量%で、硫黄/鉄の比率は20.4モル%であった。
比較例1
硝酸鉄・9水和物2.7gを水10mlに溶解させた。この溶液にシリカビーズ(富士シリシア化学社製 「キャリアクトQ−50」、粒子形状:球状、粒子径:1.7〜4.0mm、表面積:80m/g、平均細孔径50nm)10gを添加し、シリカビ−ズに水溶液を含浸した後、50℃、2時間、20hPaで減圧乾燥した。この試料に28%アンモニア水13gを添加した後、50℃、2時間、20hPaで減圧乾燥し、さらに100℃で一昼夜乾燥した。
その後、乾燥した試料に0.2規定硫酸水溶液10mlを加え70℃、20hPaで2時間減圧乾燥した。得られた試料を、空気気流中500℃で3時間焼成した。
得られた硫酸化酸化鉄構造体の鉄および硫黄のライン分析を行った結果を図7に示す。担持された鉄および硫黄はシリカビーズ内にほぼ均一に存在していた。
組成分析の結果、得られた構造体中の酸化鉄、硫黄の組成は、それぞれ3.5重量%、0.20重量%で、硫黄/鉄の比率は10.0モル%であった。
本発明の球状の構造体の断面図 本発明の円柱状の構造体の断面図 本発明の中空円柱状の構造体の断面図 本発明の板状の構造体の断面図 実施例1の構造体の鉄および硫黄のライン分析の結果 実施例2の構造体の鉄および硫黄のライン分析の結果 比較例1の構造体の鉄および硫黄のライン分析の結果
符号の説明
1 硫酸化酸化鉄
2 不活性担体

Claims (4)

  1. 構造体の外表面から1〜1000μmの深さまでの表面部である構造体表層部に硫酸化酸化鉄が存在し、構造体表層部を除く内部は実質的に硫酸化酸化鉄が存在しない不活性担体であり、担体が、シリカ、チタニア、ジルコニア、活性炭、シリカジルコニア、リン酸ジルコニウム、アセチレンブラック、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリコンカーバイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、サポナイト、シリカチタニア、マグネシアからなる群より選択される担体であることを特徴とする構造体。
  2. 構造体が球状であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
  3. 不活性担体の表層部に水酸化鉄および/または酸化鉄を担持させた後に、硫酸または硫酸根を含有する化合物を添加し、350℃乃至800℃で焼成することを特徴とする請求項1または2に記載の構造体の製造方法
  4. 塩基性物質を不活性担体に含浸担持させた後、鉄原料塩を含浸させ、不活性担体の表層部に水酸化鉄および/または酸化鉄を担持させることを特徴とする請求項3に記載の構造体の製造方法。
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