上記のような短絡部材を製造する際には、一方の短絡構成部材群に設けられた全ての外周側端末と、他方の短絡構成部材群に設けられた全ての外周側端末とをそれぞれ重ね合わせて接合する。更に、一方の短絡構成部材群に設けられた全ての内周側端末と、他方の短絡構成部材群に設けられた全ての内周側端末とをそれぞれ重ね合わせて接合する。そのため、積層された2組の短絡構成部材群において接合する箇所が多く、短絡構成部材群同士を接合する接合工程が煩雑となっていた。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、積層された短絡構成部材群同士を接合する接合工程を簡略化することができる短絡部材、該短絡部材を備えた整流子、該整流子を備えた電機子、及び該短絡部材の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、外周側端末と、前記外周側端末よりも内周側で前記外周側端末に対し周方向に所定角度ずれた位置に配置される内周側端末とを連結部にて連結してなる複数の短絡片が周方向にそれぞれ並設されてなる2組の短絡構成部材群を、前記外周側端末と前記内周側端末とのずれる方向が互いに逆方向となるように積層してなり、周方向に配置される2n個(nは正の整数)のセグメントのうち2個ずつの前記セグメント同士をそれぞれ短絡して同電位とすべく、前記外周側端末が前記セグメントにそれぞれ接続される短絡部材であって、前記「n」は奇数であり、前記各短絡構成部材群は、前記外周側端末と前記内周側端末とのなす角度が90°となる前記短絡片をn個ずつ備え、2組の前記短絡構成部材群は、互いの前記内周側端末がそれぞれ積層されて接合されるように、且つ互いの前記外周側端末が周方向にずれるように積層されたことをその要旨としている。
同構成によれば、2n個のセグメントのうち2個ずつのセグメント同士を、一方の短絡構成部材群の1個の短絡片と他方の短絡構成部材群の1個の短絡片とによって短絡するため、各短絡構成部材群は、それぞれn個ずつの短絡片から構成されている。そのため、従来の短絡構成部材群に比べて、各短絡構成部材群を構成する短絡片の数が少ない。また、2組の短絡構成部材群は、互いの内周側端末がそれぞれ積層されるように、且つ互いの外周側端末が周方向にずれるように積層されている。そのため、互いに積層された2組の短絡構成部材群においては、外周側端末同士が積層される部分が無いことから、互いに積層されたn組の内周側端末のみ互いに接合されることになる。即ち、互いに積層された2組の短絡構成部材群における接合箇所はn箇所となる。従って、積層された2組の短絡構成部材群における接合箇所の数が従来に比べて減少されるため、積層された2組の短絡構成部材群同士を接合する接合工程を簡略化することができる。また、各短絡構成部材群を構成する短絡片の数が従来に比べて少ないことから、各連結部の幅を太くすることが可能となる。そして、各連結部の長手方向と直交する方向の断面の断面積を一定としつつ各連結部の幅を太くした場合には、各短絡片の板厚を薄くすることができる。また、板厚を薄くすることなく各連結部の幅を太くした場合には、各連結部の長手方向と直交する方向の断面の断面積が大きくなることから、連結部における電気抵抗を小さくすることができる。更に、「n」が奇数である場合において、各短絡片は、外周側端末と内周側端末とのなす角度が90°であることから、一方の短絡構成部材群の短絡片と、他方の短絡構成部材群の短絡片とによって、周方向に180°間隔を空けて配置されたセグメント同士を容易に短絡することが可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の短絡部材において、各前記短絡構成部材群におけるn個の前記内周側端末は、周方向に等角度間隔に配置されていることをその要旨としている。
同構成によれば、各短絡構成部材群において、n個の内周側端末は、周方向に等角度間隔に配置されているため、周方向に隣り合う内周側端末の間隔が均一となり、周方向に隣り合う内周側端末の間隔が極端に狭い部分が無くなる。その結果、互いに積層された内周側端末同士の接合をより容易に行うことができる。また、各短絡片は、外周側端末と内周側端末とのなす角度が90°となっているため、内周側端末が周方向に等角度間隔となるように配置されたn個の短絡片よりなる2組の短絡構成部材群を、互いの内周側端末が積層されるように積層すると、合計2n個の外周側端末を、周方向に等角度間隔に配置することができる。そして、内周側端末が互いに積層された一対の短絡片において、互いの外周側端末を、周方向に180°間隔を空けて配置することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の短絡部材において、2組の前記短絡構成部材群は、互いに同形状をなし、各前記短絡構成部材群におけるn個の前記内周側端末は、n個の前記内周側端末のうち1つの前記内周側端末が前記短絡構成部材群の径方向の中央を通る反転軸上に配置されるように配置されるとともに、各前記短絡構成部材群におけるn個の前記外周側端末は、n個の前記外周側端末のうち1つの前記外周側端末が前記短絡構成部材群の径方向の中央を通り前記反転軸と直交する直交軸上に配置されるように配置され、一方の前記短絡構成部材群は、前記反転軸にて反転された状態で他方の前記短絡構成部材群に対して積層されていることをその要旨としている。
同構成によれば、互いに積層される2組の短絡構成部材群は互いに同形状をなすため、1種類の短絡構成部材群を製造すればよい。そして、一方の短絡構成部材群を、反転軸にて反転させて他方の短絡構成部材群に対して積層することにより、一方の短絡構成部材群の内周側端末と他方の短絡構成部材群の内周側端末とがそれぞれ積層されるとともに、一方の短絡構成部材群の外周側端末と他方の短絡構成部材群の外周側端末とが周方向にずれて配置される。従って、2組の短絡構成部材群の積層を容易に行うことができ、ひいては短絡部材の生産性を向上させることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の短絡部材において、少なくとも1組の前記短絡構成部材群は、積層された相手方の前記短絡構成部材群から遠ざかるように前記連結部が湾曲されていることをその要旨としている。
同構成によれば、少なくとも1組の短絡構成部材群は、積層された相手方の短絡構成部材群から遠ざかるように連結部が湾曲されており、連結部が立体的な形状とされている。このように、連結部が湾曲されて立体的な形状とされると、連結部の幅を小さくしたり、周方向に隣り合う外周側端末間の間隔及び周方向に隣り合う内周側端末間の間隔を変更したり、また短絡構成部材群の外径及び内径を変更したりすることなく、周方向に隣り合う連結部間の隙間の幅を広くすることができる。従って、周方向に隣り合う連結部同士が接触して短絡されることをより抑制することができる。また、連結部は、積層された相手方の短絡構成部材群から遠ざかるように湾曲されるため、相手方の短絡構成部材群の連結部に接触して短絡されることがより抑制される。尚、本発明において、「湾曲」とは、弓状曲がっていることだけでなく、角部を有するように屈曲しているものも含む。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の短絡部材において、少なくとも1組の前記短絡構成部材群の各前記連結部は、積層された相手方の前記短絡構成部材群から遠ざかるように湾曲されることにより周方向に隣り合う前記連結部と離間されたことをその要旨としている。
同構成によれば、少なくとも1組の短絡構成部材群の各連結部は、積層された相手方の短絡構成部材群から遠ざかるように湾曲されることにより、周方向に隣り合う連結部と離間されている。即ち、連結部は、湾曲される前の状態においては、隣り合う連結部と少なくとも一部が当接しており、該連結部を有する短絡構成部材群に積層される相手方の短絡構成部材群から遠ざかるように湾曲されることによって始めて、周方向に隣り合う連結部が完全に離間される。従って、湾曲される前の状態において、周方向に隣り合う連結部間に、周方向に隣り合う連結部同士を完全に離間させるような隙間が無くてもよいことから、短絡構成部材群の内径及び外径を変更することなく連結部の幅を太くすることができる。その結果、この連結部における長手方向と直交する方向の断面の断面積を大きくすることができ、連結部における電気抵抗をより小さくすることができる。
請求項6に記載の発明は、周方向に並設される2n個(nは正の整数)のセグメントと、前記セグメントに接続される外周側端末と、前記外周側端末よりも内周側で前記外周側端末に対し周方向に所定角度ずれた位置に配置される内周側端末とを連結部にて連結してなる複数の短絡片が周方向にそれぞれ並設されてなる2組の短絡構成部材群を、前記外周側端末と前記内周側端末とのずれる方向が互いに逆方向となるように積層してなり、2個ずつの前記セグメント同士を同電位とするための短絡部材と、を備えた整流子であって、前記「n」は奇数であり、前記各短絡構成部材群は、前記外周側端末と前記内周側端末とのなす角度が90°となる前記短絡片をn個ずつ備え、2組の前記短絡構成部材群は、互いの前記内周側端末がそれぞれ積層されて接合されるように、且つ互いの前記外周側端末が周方向にずれるように積層されたことをその要旨としている。
同構成によれば、2n個のセグメントのうち2個ずつのセグメント同士を、一方の短絡構成部材群の1個の短絡片と他方の短絡構成部材群の1個の短絡片とによって短絡するため、各短絡構成部材群は、それぞれn個ずつの短絡片から構成されている。そのため、従来の短絡構成部材群に比べて、各短絡構成部材群を構成する短絡片の数が少ない。また、2組の短絡構成部材群は、互いの内周側端末がそれぞれ積層されるように、且つ互いの外周側端末が周方向にずれるように積層されている。そのため、互いに積層された2組の短絡構成部材群においては、外周側端末同士が積層される部分が無いことから、互いに積層されたn組の内周側端末のみ互いに接合されることになる。即ち、互いに積層された2組の短絡構成部材群における接合箇所はn箇所となる。従って、積層された2組の短絡構成部材群における接合箇所の数が従来に比べて減少されるため、積層された2組の短絡構成部材群同士を接合する接合工程を簡略化することができ、ひいては整流子の生産性を向上させることができる。また、各短絡構成部材群を構成する短絡片の数が従来に比べて少ないことから、各連結部の幅を太くすることが可能となる。そして、各連結部の長手方向と直交する方向の断面の断面積を一定としつつ各連結部の幅を太くした場合には、各短絡片の板厚を薄くすることができる。また、板厚を薄くすることなく各連結部の幅を太くした場合には、各連結部の長手方向と直交する方向の断面の断面積が大きくなることから、連結部における電気抵抗を小さくすることができる。更に、「n」が奇数である場合において、各短絡片は、外周側端末と内周側端末とのなす角度が90°であることから、一方の短絡構成部材群の短絡片と、他方の短絡構成部材群の短絡片とによって、周方向に180°間隔を空けて配置されたセグメント同士を容易に短絡することが可能となる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の整流子において、各前記短絡構成部材群におけるn個の前記内周側端末は、周方向に等角度間隔に配置されていることをその要旨としている。
同構成によれば、各短絡構成部材群において、n個の内周側端末は、周方向に等角度間隔に配置されているため、周方向に隣り合う内周側端末の間隔が均一となり、周方向に隣り合う内周側端末の間隔が極端に狭い部分が無くなる。その結果、互いに積層された内周側端末同士の接合をより容易に行うことができる。また、各短絡片は、外周側端末と内周側端末とのなす角度が90°となっているため、内周側端末が周方向に等角度間隔となるように配置されたn個の短絡片よりなる2組の短絡構成部材群を、互いの内周側端末が積層されるように積層すると、合計2n個の外周側端末を、周方向に等角度間隔に配置することができる。そして、内周側端末が互いに積層された一対の短絡片において、互いの外周側端末を、周方向に180°間隔を空けて配置することができる。その結果、周方向に等角度間隔に配置されたセグメントに対し、外周側端末を容易に接続することができるとともに、短絡部材により周方向に180°間隔を空けて配置されたセグメント同士が短絡される。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の整流子において、2組の前記短絡構成部材群は、互いに同形状をなし、各前記短絡構成部材群におけるn個の前記内周側端末は、n個の前記内周側端末のうち1つの前記内周側端末が前記短絡構成部材群の径方向の中央を通る反転軸上に配置されるように配置されるとともに、各前記短絡構成部材群におけるn個の前記外周側端末は、n個の前記外周側端末のうち1つの前記外周側端末が前記短絡構成部材群の径方向の中央を通り前記反転軸と直交する直交軸上に配置されるように配置され、一方の前記短絡構成部材群は、前記反転軸にて反転された状態で他方の前記短絡構成部材群に対して積層されていることをその要旨としている。
同構成によれば、互いに積層される2組の短絡構成部材群は互いに同形状をなすため、1種類の短絡構成部材群を製造すればよい。そして、一方の短絡構成部材群を、反転軸にて反転させて他方の短絡構成部材群に対して積層することにより、一方の短絡構成部材群の内周側端末と他方の短絡構成部材群の内周側端末とがそれぞれ積層されるとともに、一方の短絡構成部材群の外周側端末と他方の短絡構成部材群の外周側端末とが周方向にずれて配置される。従って、2組の短絡構成部材群の積層を容易に行うことができ、ひいては短絡部材の生産性を向上させることができる。
請求項9に記載の発明は、請求項6乃至請求項8の何れか1項に記載の整流子において、少なくとも1組の前記短絡構成部材群は、積層された相手方の前記短絡構成部材群から遠ざかるように前記連結部が湾曲されていることをその要旨としている。
同構成によれば、少なくとも1組の短絡構成部材群は、積層された相手方の短絡構成部材群から遠ざかるように連結部が湾曲されており、連結部が立体的な形状とされている。このように、連結部が湾曲されて立体的な形状とされると、連結部の幅を小さくしたり、周方向に隣り合う外周側端末間の間隔及び周方向に隣り合う内周側端末間の間隔を変更したり、また短絡構成部材群の外径及び内径を変更したりすることなく、周方向に隣り合う連結部間の隙間の幅を広くすることができる。従って、周方向に隣り合う連結部同士が接触して短絡されることをより抑制することができる。また、連結部は、積層された相手方の短絡構成部材群から遠ざかるように湾曲されるため、相手方の短絡構成部材群の連結部に接触して短絡されることがより抑制される。尚、本発明において、「湾曲」とは、弓状曲にがっていることだけでなく、角部を有するように屈曲されたものも含む。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の整流子において、少なくとも1組の前記短絡構成部材群の各前記連結部は、積層された相手方の前記短絡構成部材群から遠ざかるように湾曲されることにより周方向に隣り合う前記連結部と離間されたことをその要旨としている。
同構成によれば、少なくとも1組の短絡構成部材群の各連結部は、積層された相手方の短絡構成部材群から遠ざかるように湾曲されることにより、周方向に隣り合う連結部と離間されている。即ち、連結部は、湾曲される前の状態においては、隣り合う連結部と少なくとも一部が当接しており、該連結部を有する短絡構成部材群に積層される相手方の短絡構成部材群から遠ざかるように湾曲されることによって始めて、周方向に隣り合う連結部が完全に離間される。従って、湾曲される前の状態において、周方向に隣り合う連結部間に、周方向に隣り合う連結部同士を完全に離間させるような隙間が無くてもよいことから、短絡構成部材群の内径及び外径を変更することなく連結部の幅を太くすることができる。その結果、この連結部における長手方向と直交する方向の断面の断面積を大きくすることができ、連結部における電気抵抗をより小さくすることができる。
請求項11に記載の発明は、回転軸と、巻線が巻装され前記回転軸に固定された電機子コアと、前記回転軸に固定され、所定の前記セグメントに前記巻線の端部が電気的に接続される請求項6乃至請求項10の何れか1項に記載の整流子とを備えたことをその要旨としている。
同構成によれば、積層された2組の短絡構成部材群における接合箇所の数が従来に比べて減少されるため、積層された2組の短絡構成部材群同士を接合する接合工程を簡略化することができ、ひいては電機子の生産性を向上させることができる。そして、積層された2組の短絡構成部材群における接合箇所の数が従来に比べて減少されることにより、短絡部材における接合不良が減少されるため、短絡部材を介して短絡されるセグメント間の通電状態が良好となるとともに、整流子を介して巻線に良好に電流を供給することができる。
請求項12に記載の発明は、請求項5に記載の短絡部材の製造方法において、平板状の金属板材に、周方向に並ぶ複数の外周側離間孔と、前記外周側離間孔の内側で周方向に並ぶ前記外周側離間孔と同数の内周側離間孔と、複数の前記外周側離間孔から複数の前記内周側離間孔にそれぞれ延び前記金属板材における前記外周側離間孔と前記内周側離間孔との間の前記連結部となる部位を周方向に分割する、前記外周側離間孔と同数の線状の切込みとをプレス加工により形成し、外周側の端部が外周側連結部にて周方向に連結されるとともに内周側の端部が内周側連結部にて周方向に連結された複数の前記短絡片よりなる前記短絡構成部材群を形成する打ち抜き工程と、前記打ち抜き工程にて形成された前記短絡構成部材群の前記連結部を前記短絡片の板厚方向に沿った一方向に突出するように湾曲させることにより、周方向に隣り合う前記連結部を周方向に離間させる湾曲工程と、前記湾曲工程の後に、2組の前記短絡構成部材群を、互いの前記連結部が積層方向に離間するように、且つ互いの前記内周側端末がそれぞれ積層されるとともに互いの前記外周側端末が周方向にずれるように積層する積層工程と、前記積層工程の後に、前記外周側連結部及び前記内周側連結部を除去する除去工程とを備えたことをその要旨としている。
同方法によれば、打ち抜き工程において、外周側離間孔と内周側離間孔との間の連結部となる部位は、複数の外周側離間孔から複数の内周側離間孔にそれぞれ延びる線状の切込みによって周方向に複数(外周側離間孔と同数)に分割される。切込みが線状をなすことから、打ち抜き工程の終了後であって湾曲工程の前の状態においては、周方向に隣り合う連結部は、その幅方向の端部が互いに当接した状態となっている。そして、湾曲工程において、打ち抜き工程にて形成された短絡構成部材群は、短絡片の板厚方向の一方向に突出するように連結部が湾曲されることにより、周方向に隣り合う連結部が周方向に離間する。従って、短絡構成部材群において、周方向に隣り合う連結部同士を離間させるために金属板材に周方向に幅を有する隙間を形成するわけではないことから、幅の太い連結部を有する短絡部材を形成することができる。その結果、連結部における長手方向と直交する方向の断面の断面積を大きくすることができ、連結部における電気抵抗をより小さくすることができる。更に、金属板材を打ち抜くことにより発生する廃材の量を減少させることができる。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の短絡部材の製造方法において、前記打ち抜き工程では、前記金属板材に対し、前記外周側離間孔及び前記内周側離間孔を形成した後に、前記切込みを形成することをその要旨としている。
同方法によれば、金属板材に外周側離間孔及び内周側離間孔を形成した後に、同金属板材に線状の切込みを形成する。従って、外周側離間孔、内周側離間孔及び切込みを金属板材に同時に形成する場合に比べて、一回のプレス加工で切断する長さを短くすることができる。その結果、プレス型と金属板材との間の摩擦力を小さくすることができるため、プレス加工に伴って各短絡片が変形することを抑制することができる。
本発明によれば、積層された短絡構成部材群同士を接合する接合工程を簡略化することが可能な短絡部材、該短絡部材を備えた整流子、該整流子を備えた電機子、及び該短絡部材の製造方法を提供することができる。
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
モータは、周方向に配置された複数の永久磁石を有する固定子(図示略)の内側に、図1に示す電機子1を配置して構成されている。尚、図1では、電機子1をその軸中心に対して片側のみ図示している。
電機子1は、金属製の回転軸2と、該回転軸2に固定された電機子コア3と、同じく回転軸2に固定された整流子4と、電機子コア3に巻装された巻線5とから構成されるとともに、回転軸2の両端部が前記固定子に対して回転可能に支持されている。
前記電機子コア3は、回転軸2が貫通される環状の固定部3aと、該固定部3aの外周部から放射状に延びる複数のティース3b(図1中、1つのみ図示)とから構成されるとともに、各ティース3bには、前記巻線5がそれぞれ巻装されている。
前記整流子4は、回転軸2に固定される整流子本体11と、該整流子本体11の軸方向の片側端部に配置される短絡部材12とから構成されている。整流子本体11は、回転軸2に直接固定される絶縁固定体13と、該絶縁固定体13にて保持される14個のセグメント14とから構成されている。絶縁固定体13は、例えば絶縁性を有する熱硬化性樹脂材料よりなり、略円筒状をなすとともに、その軸方向の一端部(図1における下端)の中央に、円筒状の固着部13aが一体に形成されている。そして、絶縁固定体13は、この固着部13a内に回転軸2が圧入されることにより、回転軸2に対して一体回転可能に固定されている。
図2に示すように、前記セグメント14は、絶縁固定体13の外周面に周方向に等角度間隔に並設されている。各セグメント14は、軸方向に延びる略短冊形状をなすとともに、その径方向内側の面に、径方向内側に突出する一対の保持爪14aが形成されている。一対の保持爪14aは、その先端が互いに近づくように湾曲されており、この保持爪14aが絶縁固定体13内に埋設されることにより、各セグメント14は、絶縁固定体13にて保持されている。また、各セグメント14の軸方向の一端(図2における下端)には、前記巻線5の端部が係止されるライザ14bが形成されている。各ライザ14bは、各ライザ14bが形成されているセグメント14の一端側から他端側へ折り返された形状をなすとともに、基端から先端に向かうに連れてセグメント14から遠ざかる形状をなしている。そして、各ライザ14bには、巻線5の端部が係止されている。上記のように構成された整流子本体11には、径方向外側から複数の給電用ブラシ(図示略)が摺接可能に押圧接触される。
前記短絡部材12は、周方向に180°間隔を空けて配置された前記セグメント14同士を短絡する短絡導体21と、該短絡導体21を保持する保持部22とから構成されている。
図3に示すように、短絡導体21は、2組の短絡構成部材群23を積層して形成されている。2組の短絡構成部材群23は、軸方向(板厚方向に同じ)から見た形状が互いに同じ形状をなすとともに、一方の短絡構成部材群23は、他方の短絡構成部材群23に対し反転して積層されている。
図4に示すように、各短絡構成部材群23は、周方向に並設された7個の短絡片25から構成されている。各短絡片25の径方向外側の端部には、略四角形の板状をなす外周側端末26が設けられるとともに、径方向内側の端部には、略四角形の板状をなす内周側端末27が設けられている。そして、各短絡片25においては、外周側端末26に対して、内周側端末27が時計方向に90°ずれた位置に配置されており、この外周側端末26と内周側端末27とが連結部28によって連結されるとともに、各連結部28は、インボリュート曲線に沿った湾曲形状をなしている。尚、各短絡片25において、外周側端末26と内周側端末27とがなす角度を角度θ1とするとともに、連結部28にて連結された外周側端末26と内周側端末27とのなす角度は、外周側端末26に対して内周側端末27が周方向にずれた分の角度である。
そして、各短絡構成部材群23を構成する7個ずつの短絡片25は、内周側端末27が周方向に等角度間隔となるように周方向に配置されるとともに、周方向に隣り合う連結部28間の隙間は、内周側の端部から外周側の端部までほぼ一定の幅となっている。
ここで、上記のような各短絡構成部材群23における外周側端末26及び内周側端末27の配置位置の設定方法について詳述する。
図4において、内周側の円C1は、内周側端末27が配置される円であり、外周側の円C2は、外周側端末26が配置される円である。そして、円C1,C2の中心O1を通り上下方向に延びる直線は、短絡構成部材群23を反転させる際の反転軸L1となる直線である。
整流子4(図2参照)に備えられるセグメント14の個数を「2n」とすると、本実施形態の整流子4は14個のセグメント14を備えるため、「n」が「7」となる。従って、本実施形態における「n」は奇数である。そこで、まず、円C1上に、(360/n)°ごとに、即ち周方向に等角度間隔にn個(本実施形態では7個)の内周側端末27の配置位置を設定する。この時、n個の内周側端末27のうち1つの内周側端末27の配置位置が、反転軸L1上に設定されるようにする。このようにすると、反転軸L1上に設定された1つの内周側端末27の配置位置を除く(n−1)個の内周側端末27の配置位置は、反転軸L1を対称軸として線対称となる。
次に、円C2上に、(360/n)°ごとに、即ち周方向に等角度間隔にn個(本実施形態では7個)の外周側端末26の配置位置を設定する。この時、n個の外周側端末26のうち1つの外周側端末26の配置位置が、中心O1を通り反転軸L1と直交する直交軸L2上に設定されるようにする。このようにすると、直交軸L2上に設定された1つの外周側端末26の配置位置を除く(n−1)個の内周側端末27の配置位置は、直交軸L2を対称軸として線対称となる。
次に、直交軸L2上に設定された外周側端末26の配置位置に配置された外周側端末26と、反転軸L1上に設定された内周側端末27の配置位置に配置された内周側端末27とを連結部28にて連結する。以後、直前に連結部28にて連結された外周側端末26及び内周側端末27の隣の外周側端末26及び内周側端末27を連結部28にて連結していく。このようにすると、短絡構成部材群23を構成する各短絡片25において、外周側端末26と内周側端末27とがなす角度θ1が90°となる。
そして、図3に示すように、2組の短絡構成部材群23は、一方の短絡構成部材群23に対し、他方の短絡構成部材群23を反転軸L1で反転させた状態で積層される。詳述すると、2組の短絡構成部材群23は、軸方向から見て互いの反転軸L1が一致するように、且つ、互いの内周側端末27がそれぞれ積層されるとともに互いの外周側端末26が周方向にずれるように積層される。図3では、紙面奥側の短絡構成部材群23が、図4に示す短絡構成部材群23を反転軸L1にて反転させたものであり、当該短絡構成部材群23に対し、図4に示す短絡構成部材群23を反転させることなく積層している。互いに積層された2組の短絡構成部材群23、即ち短絡導体21においては、合計14個の外周側端末26が、周方向に等角度間隔に配置されている。また、一方の短絡構成部材群23が、他方の短絡構成部材群23に対して反転して積層されたことにより、一方の短絡構成部材群23における各連結部28にて連結される外周側端末26と内周側端末27とのずれる方向と、他方の短絡構成部材群23における各連結部28にて連結される外周側端末26と内周側端末27とのずれる方向とが逆方向となっている。
また、図2に示すように、2組の短絡構成部材群23のうち一方の短絡構成部材群23の連結部28は、外周側端末26及び内周側端末27に対して軸方向の一方に突出するように湾曲されている。即ち、当該一方の短絡構成部材群23は、積層された相手方の短絡構成部材群23から遠ざかるように連結部28が円弧状に湾曲されており、連結部28が立体的な形状とされている。このように連結部28が立体的な形状とされることにより、当該一方の短絡構成部材群23において周方向に隣り合う連結部28巻の幅がより広くなっている。また、他方の短絡構成部材群23の連結部28は、一方の短絡構成部材群23の連結部28に接触しない程度に内周側端末27に対して軸方向の一方に若干突出するように湾曲されている。
そして、互いに積層された2組の短絡構成部材群23において、互いに積層された7組の内周側端末27同士は、溶接が施されてそれぞれ接合されている。一方、14個の外周側端末26は、互いに積層されないことから、外周側端末26には溶接箇所は設けられない。従って、本実施形態の短絡導体21においては、接合箇所は、内周側端末27を接合する7箇所のみとなる。そして、図3に示すように、互いに積層された2組の短絡構成部材群23において、内周側端末27が互いに積層された一方の短絡構成部材群23の短絡片25と他方の短絡構成部材群23の短絡片25とがそれぞれ対をなすとともに、対をなす短絡片25の互いの外周側端末26は、周方向に180°間隔を空けて配置される。従って、互いに積層された内周側端末27同士が接合されることにより、周方向に180°間隔となる外周側端末26同士が同電位とされる。
図2に示すように、前記保持部22は、前記絶縁固定体13と異なる材質にて形成され、例えば絶縁性を有する熱可塑性樹脂材料にて形成されている。保持部22は、略円環状をなすとともに、その内部に前記短絡導体21における外周側端末26を除く部分を埋設させることにより当該短絡導体21を保持している。そして、保持部22を構成する樹脂材料は、短絡導体21において積層方向(軸方向)に対向する連結部28間に介在されるとともに、周方向に隣り合う短絡片25(図3参照)間にも介在されている。また、保持部22の径方向の中央部には、円筒状のボス部22aが軸方向に突出するように一体に形成されるとともに、該ボス部22aの内径は、前記絶縁固定体13の固着部13aの外径と等しいか若干小さく形成されている。そして、短絡部材12は、このボス部22a内に固着部13aが圧入されることにより、整流子本体11に対して固着されている。短絡部材12が整流子本体11に固着された状態においては、各外周側端末26が各セグメント14の軸方向の一端に当接されるとともに、各外周側端末26は、溶接により各セグメント14の軸方向の一端部に電気的に接続される。各外周側端末26が各セグメント14にそれぞれ電気的に接続されることにより、短絡部材12によって、周方向に180°間隔に配置された2つのセグメント14同士がそれぞれ短絡される。
そして、図1に示すように、上記のように構成された電機子コア3及び整流子4は、固定部3a及び固着部13aを貫通する回転軸2に対して軸方向に並んで固定されている。また、本実施形態では、整流子4は、ボス部22aの先端面が電機子コア3の先端に当接されるとともに、ボス部22aは、セグメント14のライザ14bから電機子コア3の所定のティース3bに取り回される巻線5の端部(所謂渡り線5a)を支持するガイドとされている。即ち、ボス部22aは、巻線5が回転軸2と直接接触することを防止するように渡り線5aを支持したり、渡り線5aが小さい半径で(急激に)曲げられるのを防止したりする。
次に、上記のように構成された電機子1に備えられる短絡部材12の製造方法について説明する。短絡部材12は、打ち抜き工程、積層工程、接合工程、保持部形成工程及び除去工程を経て形成される。
まず、図5(a)に示すように、打ち抜き工程において、導電性の板材(例えば銅板)31にプレス加工が施され、当該板材31に、周方向に7個のスリット32が打ち抜き形成される。これにより、スリット32間に7個の短絡片25が形成される。尚、打ち抜き工程後の板材31においては、7個の外周側端末26はその外周側に設けられる外周側連結部33によって連結されるとともに、7個の内周側端末27はその内周側に設けられる内周側連結部34によって連結されている。また、本実施形態の打ち抜き工程では、プレス加工により板材31に7個のスリット32が形成されるのと同時に、連結部28が軸方向の一方側に突出するように湾曲される。
次に、図5(c)に示すように、積層工程が行われ、スリット32が形成された2つの板材31が互いに積層される。この積層工程では、一方の板材31に対し、他方の板材31を反転軸L1にて反転して積層する。尚、図5(b)に示す板材31は、図5(a)に示す板材31を反転軸L1にて反転させたものであり、図5(c)に示す2枚の板材31は、図5(b)に示す板材31に図5(a)に示す板材31を積層したものである。積層工程において、一方の板材31と他方の板材31とは、互いの連結部28が逆向きとなるように(連結部28にて連結される外周側端末26と内周側端末27とをずらす方向が逆方向となるように)積層される。また、一方の板材31と他方の板材31とは、互いの内周側端末27同士が積層されるように、且つ、互いの外周側端末26が周方向にずれるように(即ち外周側端末26同士が積層されないように)積層される。
次に、接合工程が行われ、互いに積層された2枚の板材31において、互いに積層された7組の内周側端末27がそれぞれ溶接により接合される。
次に、保持部形成工程が行われ、短絡導体21を保持する保持部22が形成される。この保持部形成工程では、互いに積層された2枚の板材31を保持部22形成用の成形型(図示略)内に配置した後に、当該成形型内に、溶融した絶縁性を有する熱可塑性樹脂材料を充填する。そして、熱可塑性樹脂材料が冷却されて固化されることにより、保持部22が完成する。保持部22が固化された後に、当該保持部22を有し互いに積層された2枚の板材31は成形型から取り出される。
次に、除去工程が行われ、図5(c)に示す二点鎖線に沿って板材31が切断されることにより、外周側連結部33及び内周側連結部34が除去される。これにより、短絡導体21が完成し、短絡部材12が完成する。
上記したように、本第1実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)14個のセグメント14のうち180°間隔を空けて配置された2個ずつのセグメント14同士を、一方の短絡構成部材群23の1個の短絡片25と他方の短絡構成部材群23の1個の短絡片25とによって短絡するために、各短絡構成部材群23は、それぞれ7個ずつの短絡片25から構成されている。そのため、従来の短絡構成部材群に比べて、各短絡構成部材群23を構成する短絡片25の数が少ない。また、2組の短絡構成部材群23は、互いの内周側端末27がそれぞれ積層されるように、且つ互いの外周側端末26が周方向にずれるように積層されている。そのため、互いに積層された2組の短絡構成部材群23においては、外周側端末26同士が積層される部分が無いことから、互いに積層された7組の内周側端末27のみ互いに接合されることになる。即ち、互いに積層された2組の短絡構成部材群23における接合箇所は7箇所となる。従って、積層された2組の短絡構成部材群23における接合箇所の数が従来に比べて減少されるため、積層された2組の短絡構成部材群23同士を接合する接合工程を簡略化することができ、ひいては整流子4及び電機子1の生産性を向上させることができる。また、接合箇所が減少されたことにより、接合不良の発生率を低減させることができ、短絡部材12の信頼性を向上させることができる。その結果、短絡部材12を介して短絡されるセグメント14間の通電状態が良好となるとともに、整流子4を介して巻線5に良好に電流を供給することができる。更に、各短絡構成部材群23を構成する短絡片25の数が従来に比べて少ないことから、各連結部28の幅を太くすることが可能となる。そして、各連結部28における電気抵抗の値を一定としつつ(即ち、各連結部28の長手方向と直交する方向の断面積を一定としつつ)、各連結部28の幅を太くした場合には、短絡構成部材群23の板厚を薄くすることができる。その結果、短絡構成部材群23を形成するための板材31の厚さを薄くすることができるため、板材31を打ち抜く工程が容易となるとともに、打ち抜き精度を向上させることができる。一方、板厚を薄くすることなく各連結部28の幅を太くした場合には、各連結部28の長手方向と直交する方向の断面積が大きくなることから、各連結部28における電気抵抗を小さく抑えることができる。この場合には、短絡導体21を介して短絡されたセグメント14間の通電状態をより良好に保つことができる。
(2)各短絡構成部材群23において、7個の内周側端末27は周方向に等角度間隔に配置されているため、周方向に隣り合う内周側端末27の間隔が均一となり、周方向に隣り合う内周側端末27の間隔が極端に狭い部分が無くなる。その結果、互いに積層された内周側端末27同士の接合をより容易に行うことができる。また、各短絡片25は、外周側端末26と内周側端末27とのなす角度が90°となっているため、内周側端末27が周方向に等角度間隔となるように配置された7個の短絡片25よりなる2組の短絡構成部材群23を、互いの内周側端末27が積層されるように積層すると、合計14個の外周側端末26を、周方向に等角度間隔に配置することができる。そして、内周側端末27が互いに積層された一対の短絡片25において、互いの外周側端末26を、周方向に180°間隔を空けて配置することができる。その結果、周方向に等角度間隔に配置されたセグメント14に対し、外周側端末26を容易に接続することができるとともに、短絡部材12により周方向に180°間隔を空けて配置されたセグメント14同士が短絡される。
(3)互いに積層される2組の短絡構成部材群23は、軸方向から見た形状が互いに同形状をなしている。そして、各短絡構成部材群23における7個の内周側端末27は、1つの内周側端末27が短絡構成部材群23の径方向の中央(即ち中心O1)を通る反転軸L1上に配置されるように周方向に等角度間隔に配置されるとともに、7個の外周側端末26は、1つの外周側端末26が短絡構成部材群23の径方向の中央を通り反転軸L1と直交する直交軸L2上に配置されるように配置されている。そのため、反転軸L1上に配置された1つの内周側端末27の配置位置を除く6個の内周側端末27は、反転軸L1を対称軸として線対称となる一方、7個の外周側端末26は、反転軸L1を対称軸として線対称とならない。従って、一方の短絡構成部材群23を、反転軸L1にて反転させて他方の短絡構成部材群23に対して積層することにより、一方の短絡構成部材群23の内周側端末27と他方の短絡構成部材群23の内周側端末27とがそれぞれ積層されるとともに、一方の短絡構成部材群23の外周側端末26と他方の短絡構成部材群23の外周側端末26とが周方向にずれて配置される。よって、2組の短絡構成部材群23の積層を容易に行うことができ、ひいては短絡部材12の生産性を向上させることができる。
(4)従来の短絡構成部材群に比べて、各短絡構成部材群23を構成する短絡片25の数が少ないため、周方向に隣り合う短絡片25間の間隔を従来よりも広くすることが可能となる。即ち、板材31にプレス加工を施して形成されるスリット32の幅(スリット32の短手方向の幅)を広くすることができる。そして、スリット32の幅が広くなると、スリット32の形成がより容易となるとともに、スリット32間に形成される短絡片25が、スリット32の形成時に変形することが抑制される。また、スリット32が狭い場合に比べて、プレス加工に用いる型(パンチ、ダイ等)の製作が容易となるとともに、これらの型の寿命を長くすることができる。
(5)2組の短絡構成部材群23のうち1組の短絡構成部材群23は、積層された相手方の短絡構成部材群23から遠ざかるように連結部28が湾曲されており、連結部28が立体的な形状とされている。このように、連結部28が湾曲されて立体的な形状とされると、連結部28の幅を小さくしたり、周方向に隣り合う外周側端末26間の間隔及び周方向に隣り合う内周側端末27間の間隔を変更したり、また短絡構成部材群23の外径及び内径を変更したりすることなく、周方向に隣り合う連結部28間の隙間の幅を広くすることができる。従って、周方向に隣り合う連結部28同士が接触して短絡されることをより抑制することができる。また、連結部28は、積層された相手方の短絡構成部材群23から遠ざかるように湾曲されるため、相手方の短絡構成部材群23の連結部28に接触して短絡されることがより抑制される。
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。尚、上記第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
図6に示す短絡導体61は、上記第1実施形態の短絡導体21(図2参照)に替えて短絡部材12に備えられるものである。短絡導体61は、上記第1実施形態の短絡導体21と同様に、2組の短絡構成部材群62を積層して形成されている。2組の短絡構成部材群62は、軸方向(板厚方向に同じ)から見た形状が互いに同じ形状をなすとともに、一方の短絡構成部材群62は、他方の短絡構成部材群62に対し反転して積層されている。そして、短絡構成部材群62は、上記第1実施形態の短絡構成部材群23(図3参照)と比較すると、外周側端末26と内周側端末27とを連結する連結部の形状が異なっている。
各短絡構成部材群62は、周方向に並設された7個の短絡片64からそれぞれ構成されている。短絡構成部材群62について、図6中紙面手前側に図示された短絡構成部材群62を例に説明すると、上記第1実施形態と同様に、各短絡片64においては、外周側端末26に対して、内周側端末27が反時計方向に90°ずれた位置に配置されており、この外周側端末26と内周側端末27とが連結部65によって連結されている。そして、短絡構成部材群62を軸方向から見ると、連結部65は、インボリュート曲線に沿った湾曲形状をなしている。尚、本実施形態の各短絡構成部材群62における外周側端末26及び内周側端末27の配置位置は、上記第1実施形態と同じ設定方法で設定されている。
図7に示すように、各短絡構成部材群62において外周側端末26及び内周側端末27は同一平面内に配置されるとともに、各短絡構成部材群62は、積層された相手方の短絡構成部材群62から遠ざかるように連結部65がそれぞれ湾曲されている。各連結部65は、外周側の端部(外周側端末26との境界部分)が外周側端末26に対して略垂直に屈曲されるとともに、内周側の端部(内周側端末27との境界部分)が内周側端末27に対して略垂直に屈曲されている。更に、各連結部65は、その両端部よりも中央寄りの2箇所が屈曲されている。これにより、各連結部65は、その長手方向の中央部が短絡片64の板厚方向に沿った一方向に突出した形状をなすとともに、周方向から見た形状が略コ字状をなしている。
このような連結部65は、湾曲される前の状態、即ち外周側端末26及び内周側端末27と同一平面内にあるときには、連結部65の周方向にそれぞれ対向する幅方向の端面65aがそれぞれ当接しており、湾曲されて立体的な形状とされることにより周方向に離間されたものである。従って、本第2実施形態の連結部65は、周方向に隣り合う連結部65を周方向に離間させるために予め隙間を形成するわけではないため、上記第1実施形態の連結部28(図3参照)に比べて、前記隙間を形成しない分だけその幅(外周側端末26から内周側端末26に向けて延びる方向と直交する方向の幅)が広くなっている。
図6に示すように、上記のように構成された2組の短絡構成部材群62は、上記第1実施形態と同様に、一方の短絡構成部材群62に対し、他方の短絡構成部材群62を反転軸L1で反転させた状態で積層される。この時、2組の短絡構成部材群62は、軸方向から見て互いの反転軸L1が一致するように、且つ互いの内周側端末27がそれぞれ積層されるとともに互いの外周側端末26が周方向にずれるように積層される。また、2組の短絡構成部材群62は、一方の短絡構成部材群62の連結部65と他方の短絡構成部材群62の連結部65とが積層方向に離間するように積層される。
次に、上記のように構成された短絡導体61を備えた短絡部材の製造方法について説明する。この短絡部材は、打ち抜き工程、湾曲工程、積層工程、接合工程、保持部形成工程及び除去工程を経て形成される。
まず、図8に示すように、打ち抜き工程において、導電性の板材71(例えば銅板)にプレス加工を施して、周方向に並ぶ7個の短絡片64を備えた短絡構成部材群62を形成する。この打ち抜き工程では、まず、板材71にプレス加工を施して、7個の外周側離間孔72及び7個の内周側離間孔73を形成する。7個の外周側離間孔72は、周方向に並んで形成されるとともに、周方向に隣り合う外周側離間孔72間に外周側端末26が形成されるように周方向に隣り合う外周側離間孔72同士が繋がらないように形成される。また、7個の内周側離間孔73は、7個の外周側離間孔72よりも内側で周方向に並んで形成されるとともに、周方向に隣り合う内周側離間孔73間に内周側端末27が形成されるように周方向に隣り合う内周側離間孔73同士が繋がらないように形成される。そして、外周側離間孔72及び内周側離間孔73が形成された板材71においては、7個の外周側端末26は、その外周側に設けられる外周側連結部33によって連結されるとともに、7個の内周側端末27は、その内周側に設けられる内周側連結部34によって連結されている。
次に、同打ち抜き工程において、7個の外周側端末26の内側の部位であって7個の内周側端末の外側の部位である、連結部65となる円環状の部位に、7個の切込み74をプレス加工により形成する。尚、図8には、切込み74(切断線)を二点差線にて図示している。切込み74は、各外周側離間孔72から各内周側離間孔73にそれぞれ延びる線状をなすとともに、連結部65となる部位を周方向に7個に分割するように形成される。そして、板材71に切込み74が形成されることにより、周方向に7個の連結部65が形成され、7個の短絡片64を有する短絡構成部材群62が形成される。切込み74は線状をなすため、切込み74が形成された後の板材71においては、周方向に隣り合う連結部65は、互いに対向する幅方向の端面65aの一部が当接した状態となっている。
次いで、図9に示すように、湾曲工程において、連結部65を、短絡片64の板厚方向に沿った一方向に湾曲する。湾曲工程は、円環状に突出した屈曲凸部81aを有する第1金型81と、屈曲凸部81aに対応するように円環状に凹設された屈曲凹部82aを有する第2金型82とを用いて行われる。屈曲凸部81a及び屈曲凹部82aは、板材71における連結部65に対応した大きさに形成されている。そして、外周側端末26及び内周側端末27と連結部65とが同一平面内にある板材71(図8に示す板材71)を、第1金型81と第2金型82との間に配置した後に、第1金型81及び第2金型82が近づくように相対移動させて板材71を挟み込む。これにより、連結部65は、屈曲凸部81a及び屈曲凹部82aによって、外周側端末26及び内周側端末27に対して屈曲される。同時に、連結部65は、短絡片64の板厚方向の一方向(図9において上側に向かう方向)に突出するように湾曲されて、屈曲凸部81a及び屈曲凹部82a応じた形状、即ち、その長手方向の中央部が短絡片64の板厚方向に沿った一方向に突出した立体的な形状とされる。そして、このように立体的な形状とされることにより、図10に示すように、周方向に隣り合う連結部65は周方向に離間された状態となる。
次いで、上記第1実施形態と同様の積層工程を行い、湾曲工程において連結部65が屈曲された2つの板材71を互いに積層する。但し、本第2実施形態の積層工程においては、2つの板材71は、一方の板材71の連結部65と他方の板材71の連結部65とが互いに軸方向(積層方向に同じ)に離間するように積層される。
積層工程終了後、上記第1実施形態と同様に接合工程、保持部形成工程及び除去工程が行われて、短絡導体61を備えた短絡部材が完成する。尚、図11には、外周側連結部33及び内周側連結部34を除去すべく除去工程において切断される箇所を二点鎖線にて図示している。
上記したように、本第2実施形態によれば、前記第1実施形態の(1)乃至(4)と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を有する。
(1)2組の短絡構成部材群62の各連結部65は、積層された相手方の短絡構成部材群62から遠ざかるように湾曲されることにより、周方向に隣り合う連結部65と離間されている。即ち、連結部65は、湾曲される前の状態においては、隣り合う連結部65と少なくとも一部が当接しており、短絡片64の板厚方向に沿った一方向に突出するように(積層される相手方の短絡構成部材群62から遠ざかるように)湾曲されることによって始めて、周方向に隣り合う連結部65が完全に離間される。従って、湾曲される前の状態において、周方向に隣り合う連結部65間に、周方向に隣り合う連結部65同士を完全に離間させるような隙間が無くてもよいことから、短絡構成部材群62の内径及び外径を変更したり、周方向に隣り合う外周側端末26間の間隔及び周方向に隣り合う内周側端末27間の間隔を変更したりすることなく連結部65の幅を太くすることができる。その結果、この連結部65における長手方向と直交する方向の断面の断面積を大きくすることができ、連結部65における電気抵抗をより小さくすることができる。
(2)打ち抜き工程において、外周側離間孔72と内周側離間孔73との間の連結部65となる部位は、7個の外周側離間孔72から7個の内周側離間孔73にそれぞれ延びる線状の切込み74によって周方向に7個に分割される。切込み74が線状をなすことから、打ち抜き工程の終了後であって湾曲工程の前の状態においては、周方向に隣り合う連結部65は、その幅方向の端部が互いに当接した状態となっている。そして、湾曲工程において、各短絡構成部材群62は、短絡片64の板厚方向の一方向に突出するように連結部65が湾曲されることにより、周方向に隣り合う連結部65が周方向に離間する。従って、各短絡構成部材群62において、周方向に隣り合う連結部65同士を離間させるために板材71に周方向に幅を有する隙間(例えば上記第1実施形態のスリット32)を形成するわけではないことから、板材71を打ち抜くことにより発生する廃材の量を減少させることができる。
(3)打ち抜き工程では、板材71に外周側離間孔72及び内周側離間孔73を形成した後に、同板材71に線状の切込み74を形成する。従って、外周側離間孔72、内周側離間孔73及び切込み74を板材71に同時に形成する場合に比べて、一回のプレス加工で切断する長さを短くすることができる。その結果、プレス型と板材71との間の摩擦力を小さくすることができるため、プレス加工に伴って各短絡片64が変形することを抑制することができる。
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第2実施形態の打ち抜き工程では、板材71に外周側離間孔72及び内周側離間孔73を形成した後に、同板材71に切込み74を形成する。しかしながら、外周側離間孔72、内周側離間孔73及び切込み74を板材71に同時に形成してもよい。
・上記第2実施形態では、互いに積層される2組の短絡構成部材群62は、何れも、積層される相手方の短絡構成部材群62に対して離間するように連結部65が湾曲されている。しかしながら、互いに積層される2組の短絡構成部材群62のうち、何れか1組の短絡構成部材群62のみの連結部65が、短絡片64の板厚方向に沿った一方向に突出するように湾曲された構成としてもよい。
・上記第2実施形態では、連結部65は、周方向から見た形状が略コ字状をなしているが、その長手方向の中央部が短絡片64の板厚方向に沿った一方向に突出するように湾曲された形状をなしていればよい。従って、例えば、連結部65は、周方向から見た形状が円弧状、若しくは三角形状等をなすものであってもよい。
・上記第1実施形態では、打ち抜き工程において、プレス加工により板材31に7個のスリット32が形成されるのと同時に、連結部28が軸方向の一方側に突出するように湾曲される。しかしながら、板材31にスリット32を形成するプレス加工と、連結部28を軸方向に突出するように湾曲させるプレス加工とは、別々に行われるものであってもよい。この場合、板材31にスリット32を形成するプレス加工に用いる型の種類を1種類とすることができる。
・上記各実施形態では、保持部形成工程の後に除去工程が行われるが、除去工程の後に保持部形成工程が行われてもよい。
・上記第1実施形態では、互いに積層された2組の短絡構成部材群23において、互いの連結部28同士が積層方向に短絡することを防止するために、一方の短絡構成部材群23の連結部28が、外周側端末26及び内周側端末27に対して軸方向の一方に突出するように湾曲されるとともに、他方の短絡構成部材群23の連結部28が、一方の短絡構成部材群23の連結部28に接触しない程度に内周側端末27に対して軸方向の一方に若干突出するように湾曲されている。しかしながら、連結部28同士が積層方向に短絡することを防止するための構成はこれに限らない。例えば、打ち抜き工程において、連結部28が軸方向に湾曲した1種類の形状の短絡構成部材群23を2組形成し、互いの連結部28が板厚方向(軸方向)に遠ざかるように、一方の短絡構成部材群23に対して他方の短絡構成部材群23を裏返して積層してもよい。また例えば、連結部28に段差部(凹部)を形成することにより外周側端末26及び内周側端末27よりも板厚を薄くして、2組の短絡構成部材群23を、互いの段差部が対向するように積層してもよい。また、連結部28を湾曲させたり、連結部28に段差部を設けたりすることなく、互いに積層される2組の短絡構成部材群23において、一方の短絡構成部材群23の連結部28と他方の短絡構成部材群23の連結部28との間に絶縁性の絶縁紙を介在させることにより、連結部28同士が積層方向に短絡することを防止してもよい。これらの場合、互いに積層される2組の短絡構成部材群23の形状を同じ形状とすることができる。従って、プレス加工に用いる型は1種類でよいことから、型にかかるコストを低減させることができる。
・上記第1実施形態では、互いに積層される2組の短絡構成部材群23は、軸方向から見た形状が同じ形状をなしている。しかしながら、各短絡構成部材群23は、2n個のセグメント14を有する整流子4に備えられる場合、外周側端末26と内周側端末27とのなす角度が90°となるn個の短絡片が周方向に配置されてなるものであればよく、外周側端末26、内周側端末27及び連結部28の形状は任意に設定してもよい。上記第2実施形態の互いに積層される2組の短絡構成部材群62についても同様である。
・上記各実施形態では、整流子4は14個のセグメント14を備え、14個のセグメント14のうち180°間隔を空けて配置された2個ずつのセグメント14同士が短絡部材12にて短絡されている。しかしながら、整流子4は、2n個(nは正の奇数)のセグメント14を備え、180°間隔を空けて配置される2つのセグメント14同士が短絡部材12にて短絡される構成であればよい。この場合、1つの短絡構成部材群23(若しくは短絡構成部材群62)は、周方向に配置されるn個の短絡片から構成される。
例えば、整流子4に6個のセグメント14が備えられる場合には、図12に示すような短絡導体41が短絡部材12に備えられる。また例えば、整流子4に10個のセグメント14が備えられる場合には、図13に示すような短絡導体51が備えられる。図12及び図13に示す短絡導体41,51は、何れも、上記第1実施形態の短絡導体21を構成する各短絡構成部材群23における外周側端末26及び内周側端末27の配置位置の設定方法と同じ方法で、外周側端末26及び内周側端末27の配置位置が設定されている。詳述すると、まず、円C1上に、(360/n)°ごとに、即ち周方向に等角度間隔にn個の内周側端末27の配置位置を設定する。この時、n個の内周側端末27のうち1つの内周側端末27の配置位置が、反転軸L1上に設定されるようにする。次に、円C2上に、(360/n)°ごとに、即ち周方向に等角度間隔にn個の外周側端末26の配置位置を設定する。この時、n個の外周側端末26のうち1つの外周側端末26の配置位置が、中心O1を通り反転軸L1と直交する直交軸L2上に設定されるようにする。次に、直交軸L2上に設定された外周側端末26の配置位置に配置された外周側端末26と、反転軸L1上に設定された内周側端末27の配置位置に配置された内周側端末27とを連結部28にて連結する。以後、直前に連結部28にて連結された外周側端末26及び内周側端末27の隣の外周側端末26及び内周側端末27を連結部28にて連結していく。このようにすると、短絡構成部材群23を構成する各短絡片25において、外周側端末26と内周側端末27とがなす角度θ1が90°となる。そして、2組の短絡構成部材群23における内周側端末27及び外周側端末26をそれぞれ周方向に等角度間隔に配置することができるとともに、形成された短絡導体21における外周側端末26を周方向に等角度間隔に配置することができる。その結果、上記第1実施形態の(1)乃至(4)と同様の作用効果が得られる。
・絶縁固定体13の形状及び保持部22の形状は、上記各実施形態のものに限らない。例えば、絶縁固定体13において固着部13aを省略するとともに、保持部22においてボス部22aを省略し、絶縁固定体13の軸方向の一端部に短絡部材12を配置する構成としてもよい。また、短絡部材12は、保持部22を備えず、短絡導体21(若しくは短絡導体61)のみから構成されるものであってもよい。
2…回転軸、3…電機子コア、4…整流子、5…巻線、12…短絡部材、14…セグメント、23,62…短絡構成部材群、25,64…短絡片、26…外周側端末、27…内周側端末、28,65…連結部、33…外周側連結部、34…内周側連結部、71…金属板材としての板材、72…外周側離間孔、73…内周側離間孔、74…切込み、L1…反転軸、L2…直交軸、O1…短絡部材構成群の径方向の中央としての中心、角度…θ1。