JP5006825B2 - 樹脂製便器 - Google Patents

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本発明は、樹脂製便器に関するものである。
樹脂製便器として、ボウル部と、ボウル部の上端部に配されるリム部、ボウル部の外側を覆うスカート部のそれぞれを独立した合成樹脂製の分割体とし、これら3つの合成樹脂製の分割体が接着一体化されて便器本体を構成する樹脂製便器(例えば特許文献1参照)や、合成樹脂製のスカート部と、このスカート部の内部に配置され、上端部にスカート部の上部に接合される便座載置面部が一体形成されている合成樹脂製のボウル部との2つの分割体からなる便器本体を構成する樹脂製便器(例えば特許文献2参照)が知られている。これらは、いずれも分割体同士をぴったりと強固に接着できて便器からの水漏れを防止でき、しかも低コストで製造することができる。
ところで、従来より、便器本体と組み合わせて使用する便座について、その起立位置から閉じるときの便器本体との衝撃音や損傷を防止したり、使用者の着座時の衝撃を吸収し、座り心地のよい着座状態を実現することが課題としてあった。そこで、陶器製便器においては、主に便座に緩衝材等を配設して応力集中を防ぐ工夫がなされてきた。
特開2006−328827号公報 特開2008−25176号公報
しかしながら、上記課題を解決するためには、便座の上面に発泡層を配設し、便座の下面に足ゴムを配設する等、便座の上面と下面のそれぞれに緩衝材等を配設する必要があり、部品点数が多くコスト高になるという問題があった。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、便座がその起立位置から閉じた時の衝撃音や損傷を防止するとともに使用者に快適な使用感を与えることができ、かつ低コストで製造可能な樹脂製便器を提供することを課題としている。
本発明の樹脂製便器は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
第1に、2以上の合成樹脂製の分割体から構成される便器本体におけるボウル部の上端縁部に形成されるリム部上面に、弾力性を有する樹脂部材がインサート成形によって接合されて固定一体化されており、前記樹脂部材は、前記ボウル部の前記リム部を挟持するように断面コ字状に形成されているとともに、前記樹脂部材の後端には、便器本体におけるスカート部の上部と接合する板状の受け部が形成されていることを特徴とする。
第2に、上記第1の樹脂製便器において、合成樹脂製の便器本体におけるボウル部のリム部と弾力性を有する樹脂部材との間に着座センサが介在されていることを特徴とする。
上記第1の発明によれば、合成樹脂製の便器本体におけるボウル部の上端縁部に形成されるリム部上面に弾力性を有する樹脂部材が接合されて固定一体化されていることにより、便座がその起立位置から閉じた際には便器本体のリム部上面に接合された樹脂部材で受けるため、その衝撃音や便座の損傷を防止するとともに、使用者の着座時の衝撃をやわらげることができる。また、使用者が便座に着座した状態においては、便座にかかる荷重を便座と接する樹脂部材全体で受けて応力集中を緩和することができるため、良好な座り心地が実現され、使用者に快適な使用感を与えることができる。さらに、本発明は、合成樹脂製の便器本体のリム部上面に樹脂部材を接合するのみであり、便座の上面と下面のそれぞれに緩衝材等を配設した場合と比べて、部品点数が削減され、低コストで製造することができる。
さらに、弾力性を有する樹脂部材が分割体の少なくとも一部に接着化されて固定一体化されていることにより、簡便な方法で樹脂部材を確実にかつ強固に固定することができる。便器本体が分割体であるため、便器本体の組み立て前後において樹脂部材を接合することができ、施工状況に合わせた樹脂部材の接合作業をすることができる。また、分割体に樹脂部材を接合する場合には、組み立てられた便器本体への接合よりも、より容易に接合することができる。
さらに、弾力性を有する樹脂部材がインサート成形されて分割体の少なくとも一部に固定一体化されていることにより、簡便な方法で樹脂部材をより一層確実にかつ強固に固定することができる。この方法によれば、接着の手間を省くことができるため低コストでの製造が可能になる。
上記第の発明によれば、合成樹脂製の便器本体におけるボウル部のリム部と弾力性を有する樹脂部材との間に着座センサが介在されていることにより、使用者の着座を直接センシングするとができ、使用上の誤検知をなくすことができる。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る樹脂製便器の斜視図であり、図2は、本実施形態に係る樹脂製便器の便器本体の分解斜視図であり、図3は、図2の便器本体の要部断面図である。
本実施形態に係る樹脂製便器は、図1に示すように、合成樹脂製の便器本体1に便座7、便蓋8及び内部に乾燥ユニット、洗浄ノズル、脱臭ユニット等を収納した本体ケース9を備えている。便座7や便蓋8は本体ケース9に回動自在に枢着されており、図1は便座7及び便蓋8が起立した状態を表している。便器本体1は、合成樹脂製のスカート部2と、このスカート部2の内部に配置される合成樹脂製のボウル部3の2つの分割体から構成され、図2に示すように、ボウル部3の上端縁部31には、スカート部2の上部21に接合されるリム部4が一体に形成されている。このボウル部3のリム部上面41には、弾力性を有する樹脂部材5が接合されて厚み1.0mm〜20mm程度の樹脂層51が形成され、リム部4に固定一体化されている。樹脂層51は、便座7が載置されるリム部4の略全面にわたって形成されており、便座7がその起立位置から閉じた際には樹脂層51と当接して便座7を樹脂層51で受け止めるようになっている。樹脂層51の樹脂部材5は弾力性を有しているため、便座7を起立位置から勢いよく閉じたり、使用者が便座7に着座して便座7に荷重をかける等、便座7から樹脂層51に衝撃を与えた場合には、樹脂層51が変形してこの変形に抗する弾性力が発生する。このような樹脂層51の変形及び弾性力によって、便座7の樹脂層51に対する衝撃を吸収することができる。したがって、便座7の衝撃音や損傷を防止することができるとともに、使用者の着座時の衝撃をやわらげることができる。また、使用者が便座7に着座した状態においては、便座7にかかる荷重を便座7と接する樹脂層51全体で受けて応力集中を緩和することができ、よって臀部にかかる負担を軽減することができるため、良好な座り心地が実現され、使用者に快適な使用感を与えることができる。
便器本体1を構成する2つの分割体は、いずれも射出成形、圧縮成形、真空成形等で成形されたABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、ポリプロピレン樹脂、アクリル系樹脂等の合成樹脂の成形品で形成されている。成形品は肉厚3〜10mmを有する大型品であるため、残留応力緩和のためにアニール処理を施すことが好ましい。また表面品質を向上させるためにハードコート材をコーティングしてもよい。これら分割体は溶着により接着一体化されて便器本体1を形成する。
弾力性を有する樹脂部材5は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、発泡ポリウレタン樹脂、あるいはポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系等の熱可塑性エラストマーやこれらの熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂と種々組み合わせた熱可塑性エラストマー樹脂組成物、例えばイソブチレン系ブロック共重合体、ポリオレフィン系重合体を含有する熱可塑性エラストマー樹脂組成物等を例示することができるが、特に限定されるものではなく、従来よりパッキン材等として知られている各種材料を使用することができる。
弾力性を有する樹脂部材5を便器本体1におけるボウル部3のリム部上面41に接合して固定一体化する方法としては特に制限はなく、溶着、接着、ビス留め等の任意の方法を採用することができる。特に確実にかつ強固に固定し、良好な外観を実現する観点からは溶着による方法や接着による方法が望ましい。具体例として、熱板溶着、超音波溶着、レーザー溶着、振動溶着等の溶着方法や接着剤塗布による接着方法を挙げることができる。
以上、本実施形態の樹脂製便器によれば、合成樹脂製の便器本体1のリム部上面41に樹脂部材5を接合するのみであり、従来の便座7の上面と下面のそれぞれに緩衝材等を配設した場合と比べて、部品点数が削減され、低コストで製造することができる。また便器本体1が分割体で構成されているため、便器本体1の組み立て前あるいは組み立て後のいずれの場合においても樹脂部材5を接合することができ、施工状況に合わせた樹脂部材5の接合作業をすることができる。
図4は、別の実施形態に係る樹脂製便器の便器本体の要部断面図である。なお、図1〜図3に示した部分と同一の部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態では、弾力性を有する樹脂部材5がインサート成形されて固定一体化される。例えば、便器本体1を構成する分割体としてのボウル部3を金型内にセットし、弾力性を有する樹脂部材5の原料となる溶融樹脂を注入してボウル部3の一部を溶融樹脂で包んで固化させ、弾力性を有する樹脂部材5をボウル部3に固定一体化させる。したがって、本実施形態によれば、溶着、接着等の手間を省くことができるため低コストでの製造が可能になる。
弾力性を有する樹脂部材5は、図4に示すように、ボウル部3のリム部4を挟持するように断面コ字状に形成されてボウル部3のリム部4に固定されている。この樹脂部材5の後端には、もう一方の分割体であるスカート部2の上部21を接合するための板状の受け部52が形成されており、溶着、接着等により受け部52とスカート部2を接合一体化して便器本体1を形成するようにしている。
図5は、さらに別の実施形態に係る樹脂製便器の便器本体の要部断面図である。なお、図1〜図3に示した部分と同一の部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態では、合成樹脂製の便器本体1におけるボウル部3のリム部4と弾力性を有する樹脂部材5との間に着座センサ6が介在されている。この着座センサ6は、例えば、圧力センサ61が用いられ、使用者が着座した際に発生する荷重を、図5に図示しない便座を介して便器本体1におけるボウル部3のリム部4の樹脂層51で受け、このときに樹脂層51が受けた荷重を前記圧力センサ61で検知されるようになっている。そして、図5に図示しない本体ケースに収納された制御部にて着座していない状態のときの圧力の変化から、使用者の着座が検知される。なお、圧力センサ61は制御部と配線62を介して電気的に接続されている。このような圧力センサ61で使用者の着座が検知されることによって、例えば、使用者の着座に合わせて、本体ケースに収納された脱臭ユニットを制御部にて作動させることができる。また使用者が便座から離れた場合には、着座時に樹脂層51が受ける荷重が解放されて圧力が変化するため、その圧力変化を検知して制御部にて自動で排水操作を行うこともできる。
圧力センサ61は、便器本体1におけるボウル部3のリム部上面41の複数箇所に埋め込んで配設されており、弾力性を有する樹脂部材5は、これら圧力センサ61を覆うように熱板溶着、超音波溶着、レーザー溶着、振動溶着等の溶着や接着剤塗布によってリム部上面41に固定されている。圧力センサ61の配線62は、ボウル部3のリム部4の下方の中空部42を通じて本体ケースの制御部に接続されるようになっている。本実施形態によれば、圧力センサ61がボウル部3のリム部上面41に配設されているため、使用者の着座を直接センシングするとができ、使用上の誤検知をなくすことができる。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。図2〜図5の実施形態では、便器本体1は、合成樹脂製のスカート部2と、このスカート部2の内部に配置され、スカート部2の上部21に接合されるリム部4が上端縁部31に一体に形成されている合成樹脂製のボウル部3の2つの分割体から構成されているが、図6に示すように、ボウル部3と、ボウル部3の上端縁部31に配されるリム部4、ボウル部3の外側を覆うスカート部2のそれぞれを独立した合成樹脂製の分割体とし、これら3つの合成樹脂製の分割体から便器本体1が構成されていてもよいし、あるいは、便器本体を分割体で構成せずに合成樹脂で一体に成形した成形品であってもよい。
本実施形態に係る樹脂製便器の斜視図である。 本実施形態に係る樹脂製便器の便器本体の分解斜視図である。 図2の便器本体の要部断面図である。 別の実施形態に係る樹脂製便器の便器本体の要部断面図である。 さらに別の実施形態に係る樹脂製便器の便器本体の要部断面図である。 別の実施形態に係る樹脂製便器の便器本体の分解斜視図である。
符号の説明
1 便器本体
2 スカート部
21 上部
3 ボウル部
31 上端縁部
4 リム部
41 リム部上面
42 中空部
5 樹脂部材
51 樹脂層
52 受け部
6 着座センサ
61 圧力センサ
62 配線

Claims (2)

  1. 2以上の合成樹脂製の分割体から構成される便器本体におけるボウル部の上端縁部に形成されるリム部上面に、弾力性を有する樹脂部材がインサート成形によって接合されて固定一体化されており、
    前記樹脂部材は、前記ボウル部の前記リム部を挟持するように断面コ字状に形成されているとともに、前記樹脂部材の後端には、便器本体におけるスカート部の上部と接合する板状の受け部が形成されていることを特徴とする樹脂製便器。
  2. 合成樹脂製の便器本体におけるボウル部のリム部と弾力性を有する樹脂部材との間に着座センサが介在されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製便器。
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