JP5006502B2 - ヒトおよび動物におけるコルチゾールおよび他の副腎ホルモンの異常濃度に伴う臨床状態の処置としてのこれらのホルモン濃度の間歇的低下 - Google Patents
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Description
式(I):
R1、R2、R5およびR6は、同一または異なり、それぞれが水素またはC1−4アルキルであり;
R3は、水素、C1−4アルキル、C1−4アルケニルまたはC1−4アルキニルであり;
R4は、水素、C1−4アルカノイルオキシ、式(II)もしくは(III):
R7は、(CH2)n(ここで、nは0〜4の整数である)、R8は、水素、C1−4アルキル、ヒドロキシまたはNH2であり、R9およびR10は、同一または異なり、それぞれが水素またはC1−4アルキルである)
で示される基であるか、
あるいはR3およびR4は、一緒になってオキソ、エチレンジオキシまたはプロピレンジオキシである]
で示される化合物またはその3−エノールC1−4アルカノエートエステルの、ヒトまたは非ヒト哺乳類が異常に高い副腎ホルモンの血清中濃度を有するヒトまたは非ヒト哺乳類の状態の間歇的処置のための医薬の製造における使用、を提供する。
本発明において具体化された新規概念は、ACTH依存性であるかACTH非依存性であるかに関わらず、クッシング症候群の症状の軽減を、コルチゾール濃度の間歇的低下により成し遂げることができることである。このアプローチは、コルチゾールおよび他の関連ホルモンの産生を、コルチゾール産生の長期間または永続的なブロックではなく、むしろ1日あたり数時間のみの期間ブロックすることが可能であるとの点において、確立されている治療法とは著しく異なる。これは、副腎過剰分泌の医学的制御の巧妙な方法を提供し、副腎の手術による除去および長期間のホルモン補充の必要性を回避するという点において、患者に対し具体的な効果を有する。
本発明は、主として、一般構造2α−シアノ−4α,5α−エポキシアンドロスタン−17β−オール−3−オンを有する化合物に関する。上式の化合物は、総称「トリロスタン」を有し、英国特許明細書第1,123,770号および米国特許明細書第3,296,295号に記載されている。本発明に記載されている化合物は、おおよそトリロスタン分子に基づいているが、特許請求の範囲では、トリロスタンの第一代謝物であるケトトリロスタン、およびエポスタンなどの他の類似関連化合物にも言及している。初期明細書は、トリロスタンおよび関連化合物の副腎皮質阻害性を記載している。英国特許明細書第2,130,588号には、トリロスタンおよび関連化合物の改善された製造方法が記載されている。これにより、平均等価球体容量径5〜12μmを有し、少なくとも95%の粒子が50μm未満の粒径を有する粒子に、化合物を微細化することを可能にした。粒径サイズ特異度が上がると、トリロスタンのバイオアベイラビリティが改善され、形成される活性代謝物の量を制御され、それにより臨床応答が改善され、初期製剤の変動が減少された。トリロスタンは、末期乳がんの処置として、広く研究されている。29%(Williams C. J. et al, Brit. J. Cancer (1993) 68, 1210-1215)〜38%(Ingle J. N. et al, Am. J. Clin. Oncol., 1990, 13 (2), 93-97)の奏効率を有するトリロスタンの有効性が、発表されたいくつかの研究で確認されている。トリロスタンを用いた以前の研究のいずれにおいても、作用機序は、3β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ酵素系の拮抗阻害によると考えられていた。その作用は、アンドロゲン枯渇によるものと考えられ、あらゆるフィードバックメカニズムを克服するために、ヒドロコルチゾンがトリロスタンとともに与えられた。化合物が、当時公知のエストロゲン、アンドロゲンまたはプロゲステロン受容体には何ら直接作用を及ぼさないことが明らかにされた。
R1、R2、R5およびR6は、同一または異なり、それぞれ、水素またはC1−4アルキルであり;
R3は、水素、C1−4アルキル、C1−4アルケニルまたはC1−4アルキニルであり;
R4は、ヒドロキシ、C1−4アルカノイルオキシ、式(II)もしくは(III):
R7は、(CH2)n(ここで、nは、0〜4の整数である)、R8は、水素、C1−4アルキル、ヒドロキシまたはNH2であり、R9およびR10は、同一または異なり、それぞれが、水素またはC1−4アルキルである)
で示される基であるか;
あるいは
R3およびR4は、一緒になって、オキソ、エチレンジオキシまたはプロピレンジオキシである]
を有するか、またはそれらの3−エノールC1−4アルカノエートエステルである。
R1、R2およびR3が水素であり、R4が、ヒドロキシであり、R5およびR6がメチルであるトリロスタン;R1およびR2が水素であり、R3およびR4が一緒になってオキソであり、R5およびR6がメチルである、ケトトリロスタン;およびR1、R3、R5およびR6がメチルであり、R2が水素であり、そしてR4がヒドロキシである、エポスタンである。
全般的特性:
本発明に記載の特許請求の範囲は、トリロスタンおよび関連化合物の特異的な作用機序に限定されず、持続的コルチゾール低下という一般的に受け入れられている慣用の方法よりも、むしろこれらの化合物を使用して、血清中コルチゾールおよび他の関連ホルモン濃度の間歇的低下を惹起することにも言及する。これは、予期せぬ知見であり、トリロスタンおよび関連化合物を動物および患者に投与する方法を変えるものである。
更に、Kalmijin S, et al(J Clin Endocrinol Metab 1998 Oct; 83 (19): 3487-92)は、前向き研究を実施し、副腎ステロイドホルモンであるコルチゾールおよび硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)の末梢濃度と認知の障害および低下との関係を検討した。試験母集団は、母集団に基づくロッテルダム試験からの、55〜80歳の健常参加者189名の検体から構成された。デキサメタゾン投与前のDHEASおよびコルチゾール、ならびにデキサメタゾン1mgの投与前および投与一晩後のコルチコステロイド結合グロブリンの絶食時血中濃度を測定した。30点の小精神状態試験(MMSE)を用いて、認知を評価した。この試験は、デキサメタゾン1mg(SD=0.68)投与後にコルチゾールの自然対数で表した1標準偏差(SD)の上昇が、認知低下のオッズ比(OR)1.5に関連した(95% CI、1.0〜2.3)。DHEASの1SD上昇(SD=2.10μM/L)は、認知障害(OR=0.5;95% CI,0.2〜1.1)および認知低下(OR=0.6;95%CI、0.4〜1.1)に逆相関するが、しかし有意ではなかった。遊離コルチゾールのDHEASに対する濃度比は、認知障害に有意に相関した(OR=1.8;95%CI、1.0〜3.2)。健常高齢被験者によるこの前向き試験は、遊離コルチゾールの基底濃度が認知障害に正に相関し、デキサメタゾン処置後のコルチゾール濃度が認知低下に相関することを示唆した。DHEASと認知の障害および低下との間には、逆関連が見られたが、有意ではなかった。
一実施態様において(例えば、実施例2参照)、本発明は、1種またはそれ以上の副腎ホルモンの濃度を低下させる手段を提供する。好ましくは、そのホルモン、またはそのホルモンの1種が、コルチゾールである。この実施態様によれば、本発明の処置は、好ましくは、コルチゾールおよび/または他の副腎ホルモンの産生を低下させることにより作用する。
本発明は、ヒトでの医学的適用およびヒトではない哺乳動物における獣医学的適用の両方を有する。好ましいヒトではない被験体として、ウマおよびイヌなどがあげられる。
適切な期間、所望のレベルにまでホルモン濃度を低下させるため、またはたとえホルモン濃度が有意に変化しない場合でも、間歇的投与が、症状の継続的軽減をもらすように、投薬計画を選択する。当業者は、例えば処置すべき状態、被験体の種、被験体のサイズおよび状態の重症度に応じて、適切な投薬計画を選択することができるであろう。
本発明の化合物を、いかなる適切な方法で投与してもよい。例えば、錠剤、カプセル、または懸濁製剤の経口投与が好ましい。注射、特に静脈内投与も、好ましい投与経路である。
実施例1−トリロスタン間歇的投与の副腎ステロイド産生ブロック能
トリロスタン間歇的投与の副腎ステロイド産生ブロック能を、ウマクッシング病のウマ20頭(平均年齢21、SD5.7歳)で評価した。組み合わされたデキサメタゾン抑制サイロトロピン放出ホルモン(TRH)刺激試験(ウマ17頭)またはTRH刺激試験(ウマ3頭)を、視床下部−下垂体−副腎軸の機能の標準試験として使用した。コルチゾール分析の血清検体を、試験期間のそれぞれの24時間にわたり4時間間隔で留置カテーテルにより採取した。これらは、処置前、その後210分(TRH1mgを静注後30分)およびデキサメタゾン40mg/kg筋注後22時間である。罹患したウマに、餌中0.4〜1mg/kg(平均0.5mg/kg)トリロスタンを1日1回投与し、30日にわたり処置した。30日後、内分泌試験を繰り返した。処置の前後の血清中コルチゾールを、対応のあるt検定により比較した。
自然発症副腎皮質機能亢進症(HAC)の処置のためのトリロスタンの使用を、11頭のイヌにおいて評価した。イヌにおける副腎皮質機能亢進症(HAC)、即ちクッシング症候群の発生率は、約0.1%と推定されており、したがって、この疾患は、獣医学医薬においても周知のものである(Chastain et al. 1986)。下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)は、下垂体の向副腎皮質アデノーマによる過剰な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生によるものであり、ACTH過剰を除去することにより処置されるべきである。ときに下垂体切除術が、PDHのイヌにおいて実施されるが(Meji et al. 1998)、この手術は、その微妙な性質のため、広く利用可能なものではない。イヌのPDHは、抗副腎皮質薬(adrenoconicolytic drug)である、o,p‘−DDD(ミトタン;mitotane)の誘導および維持用量で最もたびたび処置され、ミトタンに対しては、他の種に比較してイヌがはるかに敏感である(Rijinbeck, 1996)。ごく最近になって、大用量o,p’−DDDによる副腎皮質の完全な破壊およびその後の鉱質および糖質コルチコイド補充を目的とした新しいプロトコルが、提唱されている(Den Hertog et al.)。しかし、殺虫剤DDTに関連する化合物の一種であるo,p’−DDDには、イヌにおいて、治療中高頻度に再発する副作用がいくつかあり、飼い主にリスクがないわけではない。近年、中枢または末梢作用を有する多数の物質の効力を、PDHの処置について検討している(Bruyette, 1996; Rijbberk et al, 1988; Peterson and Drucker 1978; Stolp et al, 1984, Feldman et al 1990)。主として17,20−デスモラーゼを、そしてそれよりは低い程度で17α−ヒドロキシラーゼおよび11β−ヒドロキシラーゼを阻害するケトコナゾールを例外として、効力は低かった。さらに、ドパミン濃度を増加させることによりACTHを下方制御すると推定されているL-デプレニル(L-Deprenyl)が、最近、米国FDAによりイヌPDHの処置用に承認された。しかし、前向き研究は、試験をしたイヌ10頭のうち2頭のみが、臨床徴候の改善を示した(Reusch et al. 1999)。
脱毛症Xの処置におけるトリロスタンの効果を検討するために、そのような状態のイヌ合計11頭を、罹患していないイヌ10頭とともに試験した。ホルモン異常は、コルチゾールおよび17OHP濃度の上昇により確認された。トリロスタンを、1日1回投与で罹患動物に与えた。ポメラニアン6頭のうち5頭(83%)およびミニチュアプードル4頭すべてが、トリロスタンに応答し、罹患領域において体毛の再増殖を示した。
クッシング病のイヌに、トリロスタン5〜20mg/kgを1日1回投与する処置の経過中、12、35および81日(平均)にACTH刺激試験を行った。結果を表3に示す。コルチゾール再放出は、無処置対照に比べ、処置群で、著しく低下した。したがって、トリロスタンは、副腎皮質のACTH刺激を弱めている。
クッシング病のイヌにおいて、血清中コルチゾール濃度は、トリロスタンの毎日の投与4時間後に有意に低下し、数頭では、8時間でもかなりの低下がみられたが、その後正常レベルに回復した。こうした濃度低下に伴い、クッシング病の症状の緩和が見られた。結果を表4に示す。
さらに、クッシング病のウマにおいて、表6は、トリロスタンの1日1回処置前および後の血清中コルチゾール濃度を示す。結果は、コルチゾール濃度のわずかな降下を示すが、臨床応答が観察された。
表1:ウマクッシング病のウマにおける間歇的経口投与トリロスタン処置の前後の血清中コルチゾール濃度の平均値。各値は、24時間にわたり4時間間隔で採取した6検体の平均である。処置後の検体は、トリロスタン治療の30日後に採取した。
ウマ
24時間にわたる平均コルチゾール濃度
Claims (18)
- 異常に高い副腎ホルモンの血清中濃度を有するイヌまたはウマの状態(該状態は、ウマにおける蹄葉炎、クッシング症候群及びクッシング病から選択される)の間歇的処置のための医薬組成物であって、下記式(I):
R1、R2、R5およびR6は、同一または異なり、それぞれが水素またはC1−4アルキルであり;
R3は、水素、C1−4アルキル、C1−4アルケニルまたはC1−4アルキニルであり;
R4は、ヒドロキシ、C1−4アルカノイルオキシ、または式(II)もしくは(III):
R7は、(CH2)n(式中、nは、0〜4の整数である)であり、R8は、水素、C1−4アルキル、ヒドロキシまたはNH2であり、R9およびR10は、同一または異なり、それぞれが、水素またはC1−4アルキルである)
で示される基であるか;
あるいはR3およびR4は、一緒になって、オキソ、エチレンジオキシまたはプロピレンジオキシである]
で示される化合物またはその3−エノールC1−4アルカノエートエステルを含む、医薬組成物(該間歇的処置は、式(I)で示される前記化合物またはその3−エノールC1−4アルカノエートエステルを20mg/kgまでの用量で1日1回投与することを含む)。 - 間歇的処置が、式(I)で示される前記化合物またはその3−エノールC1−4アルカノエートエステルを10mg/kgまでの用量で1日1回投与することを含む、請求項1記載の医薬組成物。
- 式(I)において、R1が水素もしくはメチルであり、および/またはR2が水素もしくはメチルであり、および/またはR4がヒドロキシであるか、またはR3およびR4が、一緒になってオキソであり、および/またはR5およびR6がメチルである、請求項1または2記載の医薬組成物。
- R1、R2およびR3が水素であり、R4がヒドロキシであり、R5およびR6がメチルであるか、またはR1、R3、R5およびR6がメチルであり、R2が水素であり、R4がヒドロキシであるか、またはR1およびR2が水素であり、R3およびR4が一緒になってオキソであり、R5およびR6がメチルである、請求項3記載の医薬組成物。
- 式(I)で示される前記化合物がトリロスタンである、請求項1記載の医薬組成物。
- 式(I)で示される前記化合物がケトトリロスタンまたはエポスタンである、請求項1記載の医薬組成物。
- 請求項1〜6いずれか一項定義の化合物を微粒子組成物の形態で含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の医薬組成物。
- 粒子が、0〜12μmの平均粒子径を有し、95%以上の粒子が、0〜50μmの粒子径を有する、請求項7記載の医薬組成物。
- 粒子が、5〜12μm、または5μm未満の平均粒子径を有する、請求項8記載の医薬組成物。
- 前記微粒子組成物において、オーバーサイズ累積パーセント対サイズ特性曲線が、1.5〜2.5μmの標準偏差を示す、請求項7記載の医薬組成物。
- 前記微粒子組成物が、2m2g-1以上または5m2g-1以上の比表面積を有する、請求項7〜10のいずれか一項記載の医薬組成物。
- クッシング症候群の処置用である、請求項1〜11のいずれか一項記載の医薬組成物。
- クッシング病の処置用である、請求項12記載の医薬組成物。
- イヌの処置用である、請求項1〜13のいずれか一項記載の医薬組成物。
- イヌにおけるクッシング症候群の処置用である、請求項14記載の医薬組成物。
- イヌにおけるクッシング病の処置用である、請求項14記載の医薬組成物。
- 間歇的処置が、5kg未満のイヌに30mg、5〜15kgのイヌに60mg、または15kgを超えるイヌに120mgの用量で、1日1回投与することを含む、請求項14〜16のいずれか一項記載の医薬組成物。
- ウマの処置用であり、間歇的処置が0.4〜1mg/kgの用量で1日1回投与することを含む、請求項1〜13のいずれか一項記載の医薬組成物。
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