以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。以下に述べる実施形態は、この発明による熱交換器を、フロン系冷媒を使用するカーエアコンのエバポレータに適用したものである。
なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図1および図2はエバポレータの全体構成を示し、図3〜図14はエバポレータの要部の構成を示す。
図1〜図3に示すように、エバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置されたアルミニウム製冷媒入出用ヘッダタンク(2)とアルミニウム製冷媒ターン用ヘッダタンク(3)との間に熱交換コア部(4)が設けられたものである。
冷媒入出用ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置する冷媒入口ヘッダ部(5)と、後側(通風方向上流側)に位置する冷媒出口ヘッダ部(6)と、両ヘッダ部(5)(6)を相互に連結一体化する連結部(7)とを備えている(図3参照)。冷媒入出用ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(5)にアルミニウム製冷媒入口管(8)が接続され、同じく冷媒出口ヘッダ部(6)にアルミニウム製冷媒出口管(9)が接続されている。
冷媒ターン用ヘッダタンク(3)は、前側に位置する第1中間ヘッダ部(11)と、後側に位置する第2中間ヘッダ部(12)と、両ヘッダ部(11)(12)を相互に連結一体化する連結部(13)とを備えており、両ヘッダ部(11)(12)と連結部(13)とにより排水樋(14)が形成されている(図3参照)。
熱交換コア部(4)は、左右方向に間隔をおいて並列状に配置された複数の熱交換管(15)からなる熱交換管群(16)が、前後方向に並んで複数列、ここでは2列配置され、各熱交換管群(16)の隣接する熱交換管(15)どうしの間の通風間隙、および各熱交換管群(16)の左右両端の熱交換管(15)の外側にそれぞれコルゲートフィン(17)が配置されて熱交換管(15)にろう付され、さらに左右両端のコルゲートフィン(17)の外側にそれぞれアルミニウム製サイドプレート(18)が配置されてコルゲートフィン(17)にろう付されることにより構成されている。そして、前側熱交換管群(16)の熱交換管(15)の上下両端は冷媒入口ヘッダ部(5)および第1中間ヘッダ部(11)に接続され、往き側冷媒流通部となっている。後側熱交換管群(16)の熱交換管(15)の上下両端部は冷媒出口ヘッダ部(6)および第2中間ヘッダ部(12)に接続され、戻り側冷媒流通部となっている。ここで、冷媒入口ヘッダ部(5)および第2中間ヘッダ部(12)が、熱交換管(15)に冷媒が流入する側のヘッダ部である。そして、第1中間ヘッダ部(11)、第2中間ヘッダ部(12)および前後の熱交換管群(16)の熱交換管(15)により、冷媒入口ヘッダ部(5)と冷媒出口ヘッダ部(6)とを通じさせる冷媒循環経路が形成されている。
熱交換管(15)はアルミニウム押出形材で形成されたベア材からなり、幅方向を前後方向に向けて配置されるとともに幅方向に並んだ複数の冷媒通路を有する扁平状である。コルゲートフィン(17)は両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを用いて波状に形成されたものであり、波頂部、波底部および波頂部と波底部とを連結する水平状連結部よりなり、連結部に複数のルーバが前後方向に並んで形成されている。コルゲートフィン(17)は、前後の熱交換管群(16)を構成する前後両熱交換管(15)に共有されており、その前後方向の幅は前側熱交換管(15)の前側縁と後側熱交換管(15)の後側縁との間隔とほぼ等しくなっている。そして、コルゲートフィン(17)の波頂部および波底部は、前後の熱交換管にろう付されている。コルゲートフィン(17)の前側縁は前側熱交換管(15)の前側縁よりも若干前方に突出している。なお、1つのコルゲートフィンが前後両熱交換管群(16)に共有される代わりに、両熱交換管群(16)の隣り合う熱交換管(15)どうしの間にそれぞれコルゲートフィンが配置されていてもよい。
なお、熱交換管(15)としては、アルミニウム押出形材製のものに代えて、アルミニウム製電縫管の内部にインナーフィンを挿入することにより複数の冷媒通路を形成したものを用いてもよい。また、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートに圧延加工を施すことにより形成され、かつ連結部を介して連なった2つの平坦壁形成部と、各平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁より隆起状に一体成形された側壁形成部と、平坦壁形成部の幅方向に所定間隔をおいて両平坦壁形成部よりそれぞれ隆起状に一体成形された複数の仕切壁形成部とを備えた板を、連結部においてヘアピン状に曲げて側壁形成部どうしを突き合わせて相互にろう付し、仕切壁形成部により仕切壁を形成したものを用いてもよい。この場合、コルゲートフィンはベア材からなるものを用いる。
図2〜図5に示すように、冷媒入出用ヘッダタンク(2)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されかつすべての熱交換管(15)が接続されたプレート状の第1部材(21)と、アルミニウム押出形材から形成されたベア材よりなりかつ第1部材(21)の上側を覆う第2部材(22)と、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されかつ両部材(21)(22)の左右両端にろう付されたアルミニウム製左右両端部材(23)(24)とよりなり、右端部材(24)の外面に、冷媒入口ヘッダ部(5)および冷媒出口ヘッダ部(6)に跨るように、前後方向に長いアルミニウム製のジョイントプレート(25)がろう付されている。ジョイントプレート(25)に、冷媒入口管(8)および冷媒出口管(9)が接続されている。
第1部材(21)は、冷媒入口ヘッダ部(5)の下部を形成する下方膨出状の第1ヘッダ形成部(26)と、冷媒出口ヘッダ部(6)の下部を形成する下方膨出状の第2ヘッダ形成部(27)と、第1ヘッダ形成部(26)の後側縁部と第2ヘッダ形成部(27)の前側縁部とを連結しかつ連結部(13)の下部を形成する連結壁(28)とよりなる。第1ヘッダ形成部(26)は、水平平坦状の底壁(29)と、底壁(29)の前後両側縁部に一体に形成された前後両側壁(31)(32)とからなる。前側壁(31)は、底壁(29)の前縁に連なりかつ上方に向かって前方に傾斜した傾斜部(31a)と、傾斜部(31a)の上縁に連なって上方に伸びた垂直部(31b)とよりなる。後側壁(32)は、底壁(29)の後縁に連なりかつ上方に向かって後方に傾斜している。前側壁(31)の上端は後側壁(32)の上端よりも上方に位置している。第2ヘッダ形成部(27)は、第1ヘッダ形成部(26)とは左右対称形であって、水平平坦状の底壁(33)と、底壁(33)の後側縁部および前側縁部に一体に形成された後側壁(34)および前側壁(35)とからなる。後側壁(34)は、底壁(33)の後縁に連なりかつ上方に向かって後方に傾斜した傾斜部(34a)と、傾斜部(34a)の上縁に連なった垂直部(34b)とよりなる。前側壁(35)は、底壁(33)の前縁に連なりかつ上方に向かって前方に傾斜している。後側壁(34)の上端は前側壁(35)の上端よりも上方に位置している。そして、第1ヘッダ形成部(26)の後側壁(32)上縁と第2ヘッダ形成部(27)の前側壁(35)上縁とが連結壁(28)により一体に連結されている。
第1部材(21)の両ヘッダ形成部(26)(27)に、それぞれ前後方向に長い複数の管挿通穴(36)が、左右方向に間隔をおきかつ左右方向に関して同一位置に来るように形成されている。第1ヘッダ形成部(26)の管挿通穴(36)は前側壁(31)の傾斜部(31a)から後側壁(32)にかけて形成され、第2ヘッダ形成部(27)の管挿通穴(36)は後側壁(34)の傾斜部(34a)から前側壁(35)にかけて形成されている。両ヘッダ形成部(26)(27)の管挿通穴(36)に、熱交換コア部(4)の前後両熱交換管群(16)の熱交換管(15)の上端部が挿入され、第1部材(21)のろう材層を利用して第1部材(21)にろう付されており、これにより前側熱交換管群(16)の熱交換管(15)の上端部が冷媒入口ヘッダ部(5)に、後側熱交換管群(16)の熱交換管(15)の上端部が冷媒出口ヘッダ部(6)にそれぞれ連通状に接続されている。第1部材(21)の連結壁(28)に、左右方向に長い複数の排水用貫通穴(37)が左右方向に間隔をおいて形成されている。また、第1部材(21)の連結壁(28)に、複数の固定用貫通穴(38)が、排水用貫通穴(37)からずれた位置に来るように左右方向に間隔をおいて形成されている。ここでは、排水用貫通穴(37)と固定用貫通穴(38)とが交互に形成されている。
第2部材(22)は、冷媒入口ヘッダ部(5)の上部を形成する上方膨出状の第1ヘッダ形成部(41)と、冷媒出口ヘッダ部(6)の上部を形成する上方膨出状の第2ヘッダ形成部(42)と、第1ヘッダ形成部(41)の後側縁部と第2ヘッダ形成部(42)の前側縁部とを連結しかつ第1部材(21)の連結壁(28)にろう付されて連結部(7)の上部を形成する連結壁(43)とよりなる。第1ヘッダ形成部(41)および第2ヘッダ形成部(42)の横断面形状は、それぞれ下方に開口するとともに、前後方向中央部が上方に突出した横断面略U字状である。第1ヘッダ形成部(41)は、その前後両壁(41a)の下端部どうしを一体に連結しかつ冷媒入口ヘッダ部(5)内を上下2つの空間(5a)(5b)に区画する水平な入口ヘッダ部内分流制御壁(41b)を有している。第2ヘッダ形成部(42)は、入口ヘッダ部内分流制御壁(41b)と同一高さ位置においてその前後両壁(42a)の下端部どうしを一体に連結しかつ冷媒出口ヘッダ部(6)内を上下2つの空間(6a)(6b)に区画する水平な出口ヘッダ部内分流制御壁(42b)を有している。
第1部材(22)の入口ヘッダ部内分流制御壁(41b)にはその左端から切り欠き(44)が形成されている。また、入口ヘッダ部内分流制御壁(41b)における切り欠き(44)寄りの部分および右端寄りの部分にはそれぞれ分流調整穴(45)が貫通状に形成されている。第1部材(22)の出口ヘッダ部内分流制御壁(42b)の後側部分における左右両端部を除いた部分には、左右方向に長い複数の長円形冷媒通過穴(46A)(46B)が左右方向に間隔をおいて貫通状に形成されている。中央部の長円形冷媒貫通穴(46A)の長さは他の長円形冷媒貫通穴(46B)の長さよりも短く、隣り合う熱交換管(15)間に位置している。
第2部材(22)の連結壁(43)における第1部材(21)の排水用貫通穴(37)と合致した位置にそれぞれ左右方向に長い排水用貫通穴(47)が形成され、同じく連結壁(43)下面における第1部材(21)の固定用貫通穴(38)と合致した位置にそれぞれ固定用貫通穴(38)に嵌め入れられた複数の突起(48)が形成されている。第1部材(21)と第2部材(22)とは、突起(48)が固定用貫通穴(38)に挿通させられてかしめられることにより両部材(21)(22)が仮止めされた状態で、第1部材(21)のろう材層を利用して、両部材(21)(22)の第1ヘッダ形成部(26)(41)の前側壁(31)(41a)どうし、第2ヘッダ形成部(27)(42)の後側壁(34)(42a)どうし、および連結壁(28)(43)どうしがそれぞれろう付されている。
そして、第1部材(21)の第1ヘッダ形成部(26)と第2部材(22)の第1ヘッダ形成部(41)とによって、両端が開口した中空状の入口ヘッダ部本体(50)が形成され、第1部材(21)の第2ヘッダ形成部(27)と第2部材(22)の第2ヘッダ形成部(42)とによって、両端が開口した中空状の出口ヘッダ部本体(51)が形成されている。
左端部材(23)は、入口ヘッダ部本体(50)の左端開口を閉鎖する前キャップ(23a)と、出口ヘッダ部本体(51)の左端開口を閉鎖する後キャップ(23b)とが連結部(23c)を介して一体化されたものである。左端部材(23)の前キャップ(23a)には、入口ヘッダ部本体(50)内に嵌め入れられる右方突出部(52)が一体に形成され、同じく後キャップ(23b)には、出口ヘッダ部本体(51)の分流制御壁(42b)よりも上側の空間(6a)内に嵌め入れられる上側右方突出部(53)と、分流制御壁(42b)よりも下側の空間(6b)内に嵌め入れられる下側右方突出部(54)とが上下に間隔をおいて一体に形成されている。また、左端部材(23)の前後両側縁と上縁および下縁との間の連接部に、それぞれ右方に突出して両部材(21)(22)に係合する係合爪(55)が一体に形成されている。左端部材(23)は、自身のろう材層を利用して両部材(21)(22)にろう付されている。そして、入口ヘッダ部内分流制御壁(41b)の切り欠き(44)の左端開口が左端部材(23)の前キャップ(23a)により閉じられ、これにより入口ヘッダ部(5)の上下両空間(5a)(5b)を左端部において相互に連通させる連通穴(56)が形成されている。なお、ここでは連通穴(56)は、切り欠き(44)の左端開口を左端部材(23)の前キャップ(23a)により閉じることによって形成されているが、これに代えて、切り欠きを形成せず、入口ヘッダ部内分流制御壁(41b)の左端部に貫通穴を形成することにより連通穴が設けられていてもよい。
右端部材(24)は、入口ヘッダ部本体(50)の右端開口を閉鎖する前キャップ(24a)と、出口ヘッダ部本体(51)の右端開口を閉鎖する後キャップ(24b)とが連結部(24c)を介して一体化されたものである。右端部材(24)の前キャップ(24a)には、入口ヘッダ部本体(50)の分流制御壁(41b)よりも上側の空間(5a)内に嵌め入れられる上側左方突出部(57)と、分流制御壁(41b)よりも下側の空間(5b)内に嵌め入れられる下側左方突出部(58)とが上下に間隔をおいて一体に形成され、同じく後キャップ(24b)には、出口ヘッダ部本体(51)の分流制御壁(42b)よりも上側の空間(6a)内に嵌め入れられる上側左方突出部(59)と、分流制御壁(42b)よりも下側の空間(6b)内に嵌め入れられる下側左方突出部(61)とが上下に間隔をおいて一体に形成されている。右端部材(24)の前キャップ(24a)の上側左方突出部(57)の突出端壁に冷媒入口(62)が形成され、同じく後キャップ(24b)の上側左方突出部(59)の突出端壁に冷媒出口(63)が形成されている。右端部材(24)の前後両側縁と上縁との間の連接部、前キャップ(24a)の前側部分および後キャップ(24b)の下縁の後側部分に、それぞれ左方に突出して両部材(21)(22)に係合する係合爪(64)が一体に形成されている。
図6〜図8に示すように、右端部材(24)の前キャップ(24a)には、右方(左右方向外方)から見た際に、冷媒入出用ヘッダタンク(2)の第1部材(21)の第1ヘッダ形成部(26)における底壁(29)の前端部および前側壁(31)の傾斜部(31a)よりも下方に突出した下方突出片(65)が一体に形成され、同じく後キャップ(24b)には、右方(左右方向外方)から見た際に、冷媒入出用ヘッダタンク(2)の第1部材(21)の第2ヘッダ形成部(27)における底壁(33)の後端部および後側壁(34)の傾斜部(34a)よりも下方に突出した下方突出片(66)が一体に形成されている。両キャップ(24a)(24b)の下方突出片(65)(66)の下縁部に、それぞれ切り欠き(67)が形成されている。各切り欠き(67)は、右端部材(24)の前後両端部、すなわち前キャップ(24a)の係合爪(64)の前側および後キャップ(24b)の係合爪(64)の後側に位置している。また、右端部材(24)の連結部(24c)の上端における前後方向の中央部に上方に突出した係合雄部(68)が一体に形成されている。右端部材(24)は、自身のろう材層を利用して両部材(21)(22)にろう付されている。
図7〜図9に示すように、ジョイントプレート(25)は、右端部材(24)の冷媒入口(62)に通じる短円筒状冷媒流入口(71)(冷媒流入部)と、同じく冷媒出口(63)に通じる短円筒状冷媒流出口(72)(冷媒流出部)とを備えている。冷媒流入口(71)および冷媒流出口(72)は、それぞれ円形貫通穴と、貫通穴の周囲に右方突出状に一体に形成された短円筒状部とよりなる。ジョイントプレート(25)の冷媒流入口(71)に、冷媒入口管(8)の一端部に形成された縮径部が差し込まれてろう付され、同じく冷媒流出口(72)に、冷媒出口管(9)の一端部に形成された縮径部が差し込まれてろう付されている。図示は省略したが、冷媒入口管(8)および冷媒出口管(9)の他端部には、両管(8)(9)に跨るように膨張弁取付部材が接合されている。
ジョイントプレート(25)における冷媒流入口(71)と冷媒流出口(72)との間の部分には、上下方向に伸びる短絡防止用のスリット(73)が形成されるとともに、スリット(73)の上下両端に連なって略台形状の貫通穴(74)(75)が形成されている。スリット(73)の前後方向の幅は1mm以下であることが好ましい。また、ジョイントプレート(25)の下縁部の前後両端部に、それぞれ左方(左右方向内側)にのびるとともに右端部材(24)の両下方突出片(65)(66)の切り欠き(67)内を通って両キャップ(24a)(24b)の左方に突出した突出部(76)が一体に形成され、突出部(76)の先端部に、前後両側にのびかつ右端部材(24)の両下方突出片(65)(66)の左右方向内側を向いた面における切り欠き(67)の前後両側に係合する係合爪(77)が形成されている。これにより、ジョイントプレート(25)の上方、前後方向および左右方向への移動が阻止されている。なお、図9に示すように、エバポレータ(1)を製造するにあたって、右端部材(24)とジョイントプレート(25)とを組み合わせる前の状態においては、突出部(76)は左斜め下方に突出している。左斜め下方に突出した突出部を(76A)で示す。
また、ジョイントプレート(25)における上側貫通穴(74)の上方部分および下側貫通穴(75)の下方部分は、それぞれ左方(右端部材(24)側)に突出するようにU字状に屈曲されており、上側のU字状屈曲部が、右端部材(24)の係合雄部(68)が下方から挿通させられる係合雌部(78)となっている。そして、ジョイントプレート(25)の係合雌部(78)に右端部材(24)の係合雄部(68)が下方から挿通させられて係合雌部(78)に係合させられており、これによりジョイントプレート(25)の左右方向および前後方向の移動が阻止されている。また、係合雌部(78)は、右端部材(24)の連結部(24c)における係合雄部(68)の前後両側部分に係合しており、これによりジョイントプレート(25)の下方への移動が阻止されている。このように、ジョイントプレート(25)は、左右方向、上下方向および前後方向の移動が阻止されるように右端部材(24)に係合させられた状態で、右端部材(24)のろう材層を利用して右端部材(24)にろう付されている。
図2、図3、図10および図11に示すように、冷媒ターン用ヘッダタンク(3)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートから形成されかつすべての熱交換管(15)が接続されたプレート状の第1部材(81)と、アルミニウム押出形材から形成されたベア材よりなりかつ第1部材(81)の下側を覆う第2部材(82)と、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートから形成されかつ両部材(81)(82)の左右両端にろう付されたアルミニウム製左右両端部材(83)(84)と、右端部材(84)の外面に、第1中間ヘッダ部(11)および第2中間ヘッダ部(12)にまたがるようにろう付された前後方向に長いアルミニウムベア材製の連通部材(85)とよりなり、連通部材(85)を介して第1中間ヘッダ部(11)と第2中間ヘッダ部(12)とが右端部で連通させられている。
第1部材(81)は、第1中間ヘッダ部(11)の上部を形成する上方膨出状の第1ヘッダ形成部(86)と、第2中間ヘッダ部(12)の上部を形成する上方膨出状の第2ヘッダ形成部(87)と、第1ヘッダ形成部(86)の後側縁部と第2ヘッダ形成部(87)の前側縁部とを連結しかつ連結部(13)の上部を形成する連結壁(88)とよりなる。第1ヘッダ形成部(86)は、水平平坦状の頂壁(89)と、頂壁(89)の前後両側縁部に一体に形成された前後両側壁(91)(92)とからなる。前側壁(91)は、頂壁(89)の前縁に連なりかつ下方に向かって前方に傾斜した傾斜部(91a)と、傾斜部(91a)の下縁に連なって下方に伸びた垂直部(91b)とよりなる。後側壁(92)は、頂壁(89)の後縁に連なりかつ下方に向かって後方に傾斜している。前側壁(91)の下端は後側壁(92)の下端よりも下方に位置している。第2ヘッダ形成部(87)は、第1ヘッダ形成部(86)とは左右対称形であって、水平平坦状頂壁(93)と、頂壁(93)の後側縁部および前側縁部に一体に形成された後側壁(94)および前側壁(95)とからなる。後側壁(94)は、頂壁(93)の後縁に連なりかつ下方に向かって後方に傾斜した傾斜部(94a)と、傾斜部(94a)の下縁に連なった垂直部(94b)とよりなる。前側壁(95)は、頂壁(93)の前縁に連なりかつ下方に向かって前方に傾斜している。後側壁(94)の下端は前側壁(95)の上端よりも下方に位置している。そして、第1ヘッダ形成部(86)の後側壁(92)下縁と第2ヘッダ形成部(87)の前側壁(95)上縁とが連結壁(88)により一体に連結されている。また、第1ヘッダ形成部(86)の後側壁(92)と第2ヘッダ形成部(87)の前側壁(95)と連結壁(88)とによって、両側面が上方に向かって前後方向外方に傾斜した排水樋(14)が形成されている。
第1部材(81)の両ヘッダ形成部(86)(87)に、それぞれ前後方向に長い複数の管挿通穴(96)が左右方向に間隔をおいて形成されている。両ヘッダ形成部(86)(87)の管挿通穴(96)は左右方向に関して同一位置にある。前後の管挿通穴(96)の連結部(13)側端部、すなわち第1ヘッダ形成部(86)の管挿通穴(96)の後端部は後側壁(92)に、第2ヘッダ形成部(87)の管挿通穴(96)の前端部は前側壁(95)にそれぞれ位置しており、これにより管挿通穴(96)の連結部(13)側端部が排水樋(14)の側面に位置している。また、第1ヘッダ形成部(86)の管挿通穴(96)の前端部は前側壁(91)の傾斜部(91a)に、第2ヘッダ形成部(87)の管挿通穴(96)の後端部は後側壁(94)の傾斜部(94a)にそれぞれ位置している。第1ヘッダ形成部(86)の前側壁(91)外面の傾斜部(91a)の中間部から垂直部(91b)の下端、および第2ヘッダ形成部(87)の後側壁(94)外面の傾斜部(94a)の中間部から垂直部(94b)の下端にかけて、それぞれ管挿通穴(96)の前後方向外端部に連なりかつ管挿通穴(96)から遠ざかるにつれて徐々に下方に向かう排水溝(97)が形成されている。両ヘッダ形成部(86)(87)の管挿通穴(96)に、熱交換コア部(4)の前後両熱交換管群(16)の熱交換管(15)の下端部が挿入され、第1部材(81)のろう材層を利用して第1部材(81)にろう付されており、これにより前側熱交換管群(16)の熱交換管(15)の下端部が第1中間ヘッダ部(11)に、後側熱交換管群(16)の熱交換管(15)の下端部が第2中間ヘッダ部(12)にそれぞれ連通状に接続されている。また、第1部材(81)の連結壁(88)に、左右方向に長い複数の排水用貫通穴(98)が左右方向に間隔をおいて形成されている。また、第1部材(81)の連結壁(88)に、複数の固定用貫通穴(99)が、排水用貫通穴(98)からずれた位置に来るように左右方向に間隔をおいて形成されている。ここでは、排水用貫通穴(98)と固定用貫通穴(99)とは交互に形成されている。第1部材(81)は、冷媒入出用ヘッダタンク(2)の第1部材(21)と同形状であり、両部材(21)(81)は上下逆向きに配置されている。
第2部材(82)は、第1中間ヘッダ部(11)の下部を形成する下方膨出状の第1ヘッダ形成部(101)と、第2中間ヘッダ部(12)の下部を形成する下方膨出状の第2ヘッダ形成部(102)と、両ヘッダ形成部(101)(102)を連結しかつ第1部材(81)の連結壁(88)にろう付されて連結部(13)の下部を形成する連結壁(103)とよりなる。第1ヘッダ形成部(101)および第2ヘッダ形成部(102)の横断面形状は、それぞれ上方に開口するとともに、前後方向中央部が下方に突出した横断面U字状である。第2ヘッダ形成部(102)は、その前後両壁(102a)の上端部どうしを一体に連結しかつ第2中間ヘッダ部(12)内を上下2つの空間(12a)(12b)に区画する水平な分流制御壁(102b)を有している。分流制御壁(102b)における前後方向の中心部よりも後側の部分には、複数の円形冷媒通過穴(104)が左右方向に間隔をおいて貫通状に形成されている。隣り合う円形冷媒通過穴(104)間の間隔は、右端部から遠ざかるにつれて徐々に大きくなっている。なお、隣り合う円形冷媒通過穴(104)間の間隔は、すべて等しくなっていてもよい。
第2部材(82)の連結壁(88)における第1部材(81)の排水用貫通穴(98)と合致した位置にそれぞれ左右方向に長い排水用貫通穴(105)が形成され、同じく連結壁(88)の上面における第1部材(81)の固定用貫通穴(99)と合致した位置に、それぞれ上方に突出しかつ固定用貫通穴(99)に挿通される突起(106)が形成されている。第1部材(81)と第2部材(82)とは、突起(106)が固定用貫通穴(99)に挿通させられてかしめられることにより両部材(81)(82)が仮止めされた状態で、第1部材(81)のろう材層を利用して、両部材(81)(82)の第1ヘッダ形成部(86)(101)の前側縁部どうし、第2ヘッダ形成部(87)(102)の後側縁部どうし、および連結壁(88)(103)どうしがそれぞれろう付されている。第2部材(82)は、冷媒通過穴(104)(46A)(46B)の形状および位置、ならびに分流制御壁(42b)の有無を除いては、冷媒入出用ヘッダタンク(2)の第2部材(22)と同形状であって同一の押出形材から形成されており、両部材(82)(22)は上下逆向きに配置されている。
そして、第1部材(81)の第1ヘッダ形成部(86)と第2部材(82)の第1ヘッダ形成部(101)とによって、両端が開口した中空状の第1中間ヘッダ部本体(107)が形成され、第2部材(82)の第2ヘッダ形成部(87)と第2部材(93)の第2ヘッダ形成部(102)とによって、両端が開口した中空状の第2中間ヘッダ部本体(108)が形成されている。
左端部材(83)は、第1中間ヘッダ部本体(107)の左端開口を閉鎖する前キャップ(83a)と、第2中間ヘッダ部本体(108)の左端開口を閉鎖する後キャップ(83b)とが連結部(83c)を介して一体化されたものであり、前キャップ(83a)には、第1中間ヘッダ部本体(107)内に嵌め入れられる右方突出部(109)が一体に形成され、同じく後キャップ(83b)には、第2中間ヘッダ部本体(108)の分流制御壁(102b)よりも上側の空間(12a)内に嵌め入れられる上側右方突出部(111)と、分流制御壁(102b)よりも下側の空間(12b)内に嵌め入れられる下側右方突出部(112)とが上下に間隔をおいて一体に形成されている。また、左端部材(83)の前後両側縁と上縁および下縁との間の連接部に、それぞれ右方に突出して両部材(81)(82)に係合する係合爪(113)が一体に形成されている。左端部材(83)は、自身のろう材層を利用して両部材(81)(82)にろう付されている。
右端部材(84)は、第1中間ヘッダ部本体(107)の右端開口を閉鎖する前キャップ(84a)と、第2中間ヘッダ部本体(108)の右端開口を閉鎖する後キャップ(84b)とが連結部(84c)を介して一体化されたものであり、前キャップ(84a)には、第1中間ヘッダ部本体(107)内に嵌め入れられる左方突出部(114)が一体に形成され、同じく後キャップ(84b)には、第2中間ヘッダ部本体(108)の分流制御壁(102b)よりも上側の空間(12a)内に嵌め入れられる上側左方突出部(115)と、分流制御壁(102b)よりも下側の空間(12b)内に嵌め入れられる下側左方突出部(116)とが上下に間隔をおいて一体に形成されている。また、右端部材(84)の前後両側縁と上縁および下縁との間の連接部に、それぞれ左方に突出して両部材(81)(82)に係合する係合爪(117)が一体に形成されている。また、右端部材(84)の上縁の前後両端部に、それぞれ右方に突出しかつ下方に屈曲させられて連通部材(85)の上縁部に係合させられた係合爪(118)が一体に形成されるとともに、右端部材(84)の下縁の前後方向中央部に、右方に突出しかつ上方に屈曲させられて連通部材(85)の下縁部に係合させられた係合爪(118)が一体に形成されている。なお、図10においては、係合爪(118)は、曲げられる前の右方に真っ直ぐな状態で示されている。右端部材(84)の前キャップ(84a)の左方突出部(114)の突出端壁に、第1中間ヘッダ部(11)から冷媒を流出させる冷媒流出口(119)が形成され、同じく後キャップ(84b)の下側左方突出部(116)の突出端壁に、第2中間ヘッダ部(12)の分流制御壁(102b)よりも下側の空間(12b)内に冷媒を流入させる冷媒流入口(121)が形成されている。また、後キャップ(84b)の下側左方突出部(116)における冷媒流入口(121)の周縁部の下側部分に、第2中間ヘッダ部(12)内方に向かって上方に傾斜または湾曲、ここでは湾曲したガイド部(122)が一体に形成されている。ガイド部(122)は、第2中間ヘッダ部(12)の分流制御壁(102b)よりも下側の空間(12b)内に流入する冷媒を、上側(分流制御壁(102b)側)に案内する。右端部材(84)は、自身のろう材層を利用して両部材(81)(82)にろう付されている。
連通部材(85)はアルミニウムベア材にプレス加工を施すことにより形成されたものであり、右方から見て右端部材(84)と同形同大のプレート状であって、その周縁部が右端部材(84)の外面に、右端部材(84)のろう材層を利用してろう付されている。連通部材(85)には、右端部材(84)の冷媒流出口(119)と冷媒流入口(121)とを通じさせるように外方膨出部(123)が形成されている。外方膨出部(123)の内部が、右端部材(84)の冷媒流出口(119)と冷媒流入口(121)とを通じさせる連通路となっている。また、連通部材(85)の上縁の前後両端部および下縁の前後方向の中央部には、それぞれ右端部材(84)の係合爪(118)が嵌る切り欠き(124)が形成されている。
上述したエバポレータ(1)は、入口管(8)および出口管(9)を除いたすべての部品が組み合わされて一括ろう付されることにより製造される。
以下、エバポレータ(1)を製造する際の冷媒入出用ヘッダタンク(2)の右端部材(24)とジョイントプレート(25)との組み合わせ方法について、図12〜図14を参照して説明する。
まず、図12に示すように、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを用いて、冷媒入口(62)が形成された上側左方突出部(57)、下側左方突出部(58)および下方突出片(65)を有する前キャップ(24a)と、冷媒出口(63)が形成された上側左方突出部(59)、下側左方突出部(61)および下方突出片(66)を有する後キャップ(24b)と、両キャップ(24a)(42b)を連結一体化する連結部(24c)と、係合爪(64)とを備えた右端部材(24)を製造する。ここで、両キャップ(24a)(24b)の下方突出片(65)(66)にそれぞれ切り欠き(67)を形成しておくとともに、連結部(24c)の上端における前後方向の中央部に上方に突出した係合雄部(68)を一体に形成しておく。
一方、アルミニウムベア材を使用し、冷媒流入口(71)、冷媒流出口(72)、短絡防止用スリット(73)、上下のスリット幅調整用貫通穴(74)(75)、係合雌部(78)、ならびに左斜め下方に傾斜した突出部(76A)および係合爪(77)を有するジョイントプレート(25)を製造する。
ついで、図13(a)に示すように、ジョイントプレート(25)を垂直状態としておき、右端部材(24)の係合雄部(68)を、左斜め下方からジョイントプレート(25)の上の貫通穴(74)に通す。なお、右端部材(24)の係合雄部(68)をジョイントプレート(25)の上の貫通穴(74)に通す際には、両者の相対的位置関係が図13(a)に示す通りであればよく、たとえば右端部材(24)を垂直状態としておいてもよい。
ついで、右端部材(24)を図13(a)の反時計方向に回動させて垂直状態とし、ジョイントプレート(25)の左斜め下方に突出した前後両突出部(76A)を、右端部材(24)の前キャップ(24a)および後キャップ(24b)の下方突出片(65)(66)の切り欠き(67)内に嵌め入れる(図13(b)参照)。これにより、右端部材(24)の係合雄部(68)をジョイントプレート(25)の係合雌部(78)に下方から挿通させた状態で係合雌部(78)に係合させるとともに、ジョイントプレート(25)の係合雌部(78)を右端部材(24)の連結部(24c)の上端における係合雄部(68)の前後両側部分に係合させる。
その後、突出部(76A)を図13(b)の時計方向に曲げて水平状態とし、左右方向にのびる突出部(76)を形成するとともに、突出部(76)の左端部を両キャップ(24a)(24b)の下方突出片(65)(66)よりも左方に突出させ、さらに係合爪(77)を、右端部材(24)の下方突出片(65)(66)の左右方向内側を向いた面における切り欠き(67)の前後両側に係合させる。こうして、ジョイントプレート(25)を右端部材(24)に対して左右方向、上下方向および前後方向に移動しないように、右端部材(24)に係合させる(図13(c)および図14参照)。
エバポレータ(1)の製造にあたっては、右端部材(24)とジョイントプレート(25)とを組み合わせた後、右端部材(24)の前キャップ(24a)の上下両左方突出部(57)(58)を、入口ヘッダ部(5)の上側の冷媒入出用タンク(2)を形成する両部材(21)(22)の第1ヘッダ形成部(26)(41)間における入口ヘッダ部内分流制御壁(41b)の上下両側の空間内に嵌め入れるとともに、後キャップ(24b)の上下両左方突出部(59)(61)を両部材(21)(22)の第2ヘッダ形成部(27)(42)間における出口ヘッダ部内分流制御壁(42b)の上下両側の空間内に嵌め入れ、さらに右端部材(24)の上側の係合爪(64)を第1部材(22)の両ヘッダ形成部(41)(42)に係合させるとともに、下側の係合爪(64)を第1部材(21)の両ヘッダ形成部(26)(27)に係合させることにより、右端部材(24)およびジョイントプレート(25)が両部材(21)(22)に仮止めされる。
これに代えて、右端部材(24)を、先に冷媒入出用タンク(2)を形成する両部材(21)(22)に仮止めしておき、その後上述した方法で右端部材(24)にジョイントプレート(25)を組み合わせてもよい。
エバポレータ(1)は、圧縮機および冷媒冷却器としてのコンデンサとともにフロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。
上述したエバポレータ(1)においては、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した気液混相の2相冷媒が、冷媒入口管(8)からジョイントプレート(25)の冷媒流入口(71)および右端部材(24)の前キャップ(24a)の冷媒入口(62)を通って冷媒入出用ヘッダタンク(2)の冷媒入口ヘッダ部(5)の上部空間(5a)内に入る。冷媒入口ヘッダ部(5)の上部空間(5a)内に入った冷媒は左方に流れ、連通穴(56)を通って下部空間(5b)内に入るとともに、分流調整穴(45)を通って下部空間(5b)内に入る。
下部空間(5b)内に入った冷媒は、分流して前側熱交換管群(16)の熱交換管(15)の冷媒通路内に流入する。熱交換管(15)の冷媒通路内に流入した冷媒は、冷媒通路内を下方に流れて冷媒ターン用ヘッダタンク(3)の第1中間ヘッダ部(11)内に入る。第1中間ヘッダ部(11)内に入った冷媒は右方に流れ、右端部材(84)の前キャップ(84a)の冷媒流出口(119)、連通部材(85)の外方膨出部(123)内の連通路および後キャップ(84b)の冷媒流入口(121)を通ることにより、流れ方向を変えるようにターンして第2中間ヘッダ部(12)の下部空間(12b)内に入る。
下部空間(12b)内に入った冷媒は左方に流れ、冷媒通過穴(104)を通って上部空間(12a)内に入る。上部空間(12a)内に入った冷媒は、分流して後側熱交換管(16)の熱交換管(15)の冷媒通路内に流入する。
熱交換管(15)の冷媒通路内に流入した冷媒は、流れ方向を変えて冷媒通路内を上方に流れて冷媒出口ヘッダ部(6)の下部空間(6b)内に入り、分流制御壁(42b)の長円形冷媒通過穴(46A)(46B)を通って上部空間(6a)内に入る。
ついで、冷媒出口ヘッダ部(6)の上部空間(6a)内に入った冷媒は、右端部材(24)の後キャップ(24b)の冷媒出口(63)およびジョイントプレート(25)の冷媒流出口(72)を通り、冷媒出口管(9)に流出する。
そして、冷媒が前側の熱交換管(15)の冷媒通路、および後側の熱交換管(15)の冷媒通路を流れる間に、熱交換コア部(4)の通風間隙を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
図15は、ジョイントプレートの第1の変形例を示す。
図15において、ジョイントプレート(130)は、右端部材と組み合わせる前の状態においては、垂直下方に突出した突出部(76B)を有している。突出部(76B)の先端に前後両側にのびた係合爪(77)が形成されている。その他の構成は、上述した実施形態のジョイントプレート(25)と同様である。
エバポレータ(1)を製造する際の右端部材(24)とジョイントプレート(25)とを組み合わせる方法は、右端部材(24)を図13(a)の反時計方向に回動させて垂直状態とした時点では、前後両突出部(76B)は、右端部材(24)の前キャップ(24a)および後キャップ(24b)の下方突出片(65)(66)の切り欠き(67)内に嵌まっていない点が、上述した実施形態の方法と異なっているだけである。
図16は、ジョイントプレートの第2の変形例を示す。
図16において、ジョイントプレート(135)は、右端部材と組み合わせる前の状態においては、左斜め下方に突出した2つの突出部(76A)を有しているが、両突出部(76A)の先端部には前後いずれか一方、ここでは前後方向外側にのびかつ右端部材(24)の下方突出片(65)(66)の左右方向内側を向いた面における切り欠き(67)の前後方向外側に係合する係合爪(136)が形成されている。その他の構成は、上述した実施形態のジョイントプレート(25)と同様である。
エバポレータ(1)を製造する際の右端部材(24)とジョイントプレート(25)とを組み合わせる方法は、上述した実施形態の方法と同じである。
なお、第2の変形例において、図15に示す第1の変形例の場合と同様に、両突出部が垂直下方を向いていてもよい。
図17および図18は、ジョイントプレートの第3の変形例を示す。
図17および図18において、ジョイントプレート(140)における冷媒流入口(71)と冷媒流出口(72)との間の部分の上端部には、略台形状の切り欠き(141)が形成されている。ジョイントプレート(140)における切り欠き(141)の前側縁部の上部に、右端部材(24)の係合雄部(68)が挿通させられる係合雌部(142)が一体に形成されている。
係合雌部(142)は、ジョイントプレート(140)の上部に貫通穴を形成するとともに、ジョイントプレート(140)の上縁から下方に伸びる第1部分および第1部分の下端に連なりかつ前方に伸びる第2部分からなるスリットを入れ、ジョイントプレート(140)におけるスリットの第2部分よりも上方の部分を右端部材(24)側に屈曲させるとともに後方に屈曲させることにより形成されている。スリットの第2部分の一部は、貫通穴の上縁部の一部分と合致するようにしておく。
なお、ジョイントプレート(140)における冷媒流入口(71)と冷媒流出口(72)との間の部分には短絡防止用のスリット(73)は形成されていない。
ジョイントプレート(140)のその他の構成は、上述した実施形態のジョイントプレート(140)と同様である。
エバポレータ(1)を製造する際の右端部材(24)とジョイントプレート(140)との組み合わせ方法は、図12〜図14に示す方法と同様である。
図19および図20は、右端部材の変形例およびジョイントプレートの第4の変形例を示す。
図19および図20において、右端部材(145)の入口ヘッダ部本体(50)の右端開口を閉鎖する前キャップ(145a)と、出口ヘッダ部本体(51)の右端開口を閉鎖する後キャップ(145b)およびこれらを連結する連結部(145c)の上下両縁部はそれぞれ一直線状に連なっており、連結部(145c)の前後方向中央部には上下方向に伸びるスリット(146)が形成されるとともに、スリット(146)の上下両端に連なって略台形状の貫通穴(147)(148)が形成されている。また、右端部材(145)における上側貫通穴(147)の上方部分および下側貫通穴(148)の下方部分は、それぞれ右方(ジョイントプレート(150)側)に突出するようにU字状に屈曲されており、上側のU字状屈曲部が、後述するジョイントプレート(150)の係合雄部(152)が下方から挿通させられる係合雌部(149)となっている。前キャップ(145a)および後キャップ(145b)には、それぞれ切り欠き(67)を有する下方突出片(65)(66)が形成されていることは上述した実施形態と同じである。
ジョイントプレート(150)の上縁の前後方向中間部分に下縁部が水平状となった切り欠き(151)が形成されるとともに、切り欠き(151)の下縁部における前後方向の中央部に上方に突出しかつ右端部材の係合雌部(149)に下方から通される係合雄部(152)が一体に形成されている。
そして、右端部材の係合雌部(149)に、ジョイントプレート(150)の係合雄部(152)が下方から挿通させられて係合雌部(149)に係合させられており、これによりジョイントプレート(150)の左右方向および前後方向への移動が阻止されている。また、係合雌部(149)は、ジョイントプレート(150)の切り欠き(151)の水平下縁部における係合雄部(152)の前後両側部分に係合しており、これによりジョイントプレート(150)は上方への移動が阻止されている。
右端部材(145)およびジョイントプレート(150)のその他の構成は、上述した実施形態の右端部材(24)およびジョイントプレート(25)と同様である。
エバポレータ(1)を製造する際の右端部材(145)とジョイントプレート(150)との組み合わせ方法は、次の通りである。すなわち、右端部材(145)を垂直状態としておき、ジョイントプレート(150)の係合雄部(152)を、右斜め下方から右端部材(145)の上の貫通穴(147)に通す。なお、ジョイントプレート(150)の係合雄部(152)を右端部材(145)の上の貫通穴(147)に通す際には、両者の相対的位置関係が上述した通りであればよく、たとえばジョイントプレート(150)を垂直状態としておいてもよい。ついで、ジョイントプレート(150)を回動させて垂直状態とし、ジョイントプレート(150)の左斜め下方に突出した前後両突出部(76A)を、右端部材(145)の前キャップ(145a)および後キャップ(145b)の下方突出片(65)(66)の切り欠き(67)内に嵌め入れる。これにより、ジョイントプレート(150)の係合雄部(152)を右端部材(145)の係合雌部(149)に下方から挿通させた状態で係合雌部(149)に係合させるとともに、右端部材(145)の係合雌部(149)をジョイントプレート(150)の切り欠き(151)の下縁部における係合雄部(152)の前後両側部分に係合させる。
その後は、上述した実施形態の場合と同様にして、ジョイントプレート(150)を右端部材(145)に対して左右方向、上下方向および前後方向に移動しないように、右端部材(145)に係合させる。
この場合も、右端部材(145)とジョイントプレート(150)との組み合わせは、右端部材(145)を冷媒入出用タンク(2)を形成する両部材(21)(22)に仮止めする前後のいずれに行ってもよい。
上記実施形態においては、ジョイントプレートの冷媒流入口に冷媒入口管が、冷媒流出口に冷媒出口管がそれぞれ接合されているが、これに限定されるものではない。たとえば、ジョイントプレートに、冷媒流入口の短円筒状部および冷媒流出口の短円筒状部を利用して継手部材を接合しておき、継手部材に対して着脱自在とされた取付部材を利用して、冷媒入口管および冷媒出口管を着脱自在に継手部材に取り付けるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、この発明による熱交換器が、フロン系冷媒を使用するカーエアコンのエバポレータに適用されているが、これに限定されるものではなく、圧縮機、冷媒冷却器としてのガスクーラ、中間熱交換器、膨張弁およびエバポレータを有しかつCO2冷媒のような超臨界冷媒を使用するカーエアコンを備えた車両、たとえば自動車において、カーエアコンのエバポレータに適用されることがある。