JP5001515B2 - 還元型ビタミンkの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、還元型ビタミンKの製造方法に関する。還元型ビタミンKはビタミンKが生理活性を示すための活性本体であることが知られており、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
ビタミンKは基本骨格に2−メチル−1,4−ナフトキノンを有する化合物の誘導体である。例えば、ビタミンK1(フィロキノン)は、2−メチル−1,4−ナフトキノンの3位にフィチル側鎖をもつ化合物である。ビタミンK1は、植物にみられる唯一のビタミンK同族化合物として知られており、植物の葉緑体で太陽の光エネルギーを化学エネルギーに変換する過程において、電子受容体として働くと考えられている。
また、ビタミンK2は2−メチル−1,4−ナフトキノンの3位に4から13のイソプレン単位を含むイソプレニル側鎖を持ち、一般にメナキノンと呼ばれている。ビタミンK2は、主に微生物の代謝産物として生産されており、微生物において化学エネルギー(ATP)の産生、電解質の輸送、微生物固有の運動性の支持などの役割を果たすと考えられている。
また、ビタミンK3は2−メチル−1,4−ナフトキノンそのものを言い、メナジオンとも呼ばれる。ビタミンK4は、ビタミンK3の還元型であり、メナジオールとも呼ばれる。ビタミンK3、ビタミンK4は合成ビタミンKとして知られている。
動物組織からは種々のビタミンKが分離されているが、これらは、腸管内の細菌や食餌に由来するものであると考えられている。ヒトにおいては、イソプレニル側鎖の繰り返し構造を4個持つメナキノン−4(メナテトレノン)が腸管内の細菌によって合成され、ビタミンKの必要量の一部を供給している。
ヒトなどの哺乳動物でのビタミンKの生理的に最も重要な役割は、血液凝固因子の活性化にある。血液凝固反応を起こす酵素(トロンビン等)の前駆体であるプロトロンビン等の血液凝固因子は、その構成アミノ酸の一つであるグルタミン酸残基のγ位がカルボキシル化されることにより活性化するが、当該γ−カルボキシル化を触媒する酵素であるγ−カルボキシラーゼの補酵素としてビタミンKが必要である。そのため、ビタミンKが欠乏した場合には、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化が不十分となり、血液凝固に関する機能が十分に発現されず、出血傾向あるいは血液凝固の遅延といった症状が現れる。
さらに、骨芽細胞によって作られるビタミンK依存性タンパクであるオステオカルシンは、先述した血液凝固因子と同様にグルタミン酸残基のγ−カルボキシル化によって活性化される。この活性化されたオステオカルシンが骨のヒドロキシアパタイトと結合して骨基質中に蓄積され、骨形成に関与し、さらに骨吸収を抑制する。ビタミンKが不足した場合には、オステオカルシンの活性化が不十分となり、骨からのカルシウムの溶出が進み、骨密度の低下といった症状が表れる。
このようなことから、ビタミンK1やビタミンK2の一つであるメナテトレノンは、出産や外科手術の際の出血予防薬、新生児や乳児のビタミンK欠乏性出血症の予防薬、骨粗鬆症の治療薬として用いられてきている。さらに、最近、ビタミンKは、医薬品、治療用途以外でも栄養剤、栄養補助剤等のサプリメントとしても用いられている。
一方、上述したようにグルタミン酸残基がγ−カルボキシ化されるためには、生体内にてビタミンKが還元型に変換される必要があること、すなわち、生体内でのビタミンKの活性本体は還元型のビタミンKであることが知られている。しかし、還元型ビタミンKは非常に不安定で、空気中の酸素により容易に酸化されるためか、これまで、還元型ビタミンKの簡便な製造方法は存在せず、ビタミンKを含有する既存の製品もすべて酸化型ビタミンKを有効成分とするものであった。
このようなことから、ビタミンKとして還元型ビタミンKを含有するビタミンK製品を提供するために、還元型ビタミンKの簡便な製造方法の開発が望まれていた。しかしながら、還元型ビタミンKの取得方法についてはこれまでほとんど報告されておらず、特開平5−4951(特許文献1)において還元型ビタミンKの取得方法が記載されているのみである。
上記公報においては、還元型ビタミンKを含む溶液を濃縮させ、残渣にヘキサンを加えることにより、還元型ビタミンKの結晶を取得している。しかし、本発明者らが還元型ビタミンK2の1つであるメナキノール−4を用いて予備的に検討した結果、ヘキサン等の非水溶性有機溶媒に対するメナキノール−4の溶解度は高いため、収率良く結晶を得るには、過剰な冷却が必要であり、結晶化溶媒としては適当でないことがわかった。また、得られた結晶のメナキノール−4/メナキノン−4の重量比は40%程度であり、必ずしも高品質のメナキノール−4の結晶を取得できるわけではないこともわかった。
特開平5−4951
本発明は、上記に鑑み、医薬品、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、飲料、飼料、化粧品として有用な還元型ビタミンKの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、還元型ビタミンKの晶析において、水溶性有機溶媒を含有する溶液から還元型ビタミンKを晶出させることにより、還元型ビタミンKが容易に結晶化し、高品質の還元型ビタミンKを高収率で取得できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、還元型ビタミンKを水溶性有機溶媒を含有する溶液から晶析させることを特徴とする還元型ビタミンKの製造方法である。
本発明によれば、還元型ビタミンKを製造する方法において、結晶分離を含む単離プロセス、あるいは、その単離プロセスを含む全プロセスが最短化かつ簡便化でき、高純度の還元型ビタミンKを高収率で得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、酸化型、還元型を問わず、ビタミンKとのみ記載されているものは、ビタミンK1、ビタミンK2、ビタミンK4を問わない。これらが混在する場合には、混合物全体をあらわす。また、還元型、酸化型の明記がない場合は、還元型、酸化型を問わず、両者が混在する場合には、混合物全体を表す。
まず、還元型ビタミンK結晶の製造方法、すなわち、還元型ビタミンKの晶析方法について説明する。
本発明で使用する還元型ビタミンKは、一般にビタミンKと呼ばれている化合物の還元型であれば特に制限されず、例えば、還元型ビタミンK1(フィロキノール)、還元型ビタミンK2(メナキノール)、ビタミンK4(メナジオール)等を挙げることができる。
還元型ビタミンK2としては、特に制限されないが、2−メチル−1,4−ナフトキノールの3位のイソプレニル側鎖の繰り返し単位を4〜13持つものが好ましい。好ましくは、イソプレン単位を4つ持つメナキノール−4、イソプレン単位を7つ持つメナキノール−7であり、特に好ましくは、メナキノール−4である。
本発明の晶析に用いる還元型ビタミンKは、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、還元型ビタミンK中に含まれる酸化型ビタミンK、或いは、酸化型ビタミンKを還元することにより得られたものであり、より好ましくは、後述する本発明の還元反応を用いて得られたものである。本発明の晶析法は、酸化型ビタミンKを比較的多く含有するものについても適用できるが、後述する還元方法等により調製された高純度の還元型ビタミンKに対して特に有効である。本発明においては、従来公知の方法により得られた、あるいは、後述する還元方法等により製造された還元型ビタミンKを含有する反応液や抽出液に含有される不純物の除去も兼ねて精製晶析するのが特に効果的である。言うまでもなく、上記精製晶析は還元型ビタミンK結晶を再精製するための、再結晶法としても非常に有効である。
本発明において、還元型ビタミンKは、水溶性有機溶媒の溶液中で晶析される。好ましくは、アルコール類、ケトン類、ニトリル類、エーテル類、脂肪酸類等であり、より好ましくは、アルコール類、ケトン類、脂肪酸類等であり、最も好ましくはアルコール類である。
本発明で用いるアルコール類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。例えば、炭素数1〜20、普通炭素数1〜12、特に炭素数1〜6、とりわけ炭素数1〜5、なかでも炭素数1〜4、なかんずく炭素数1〜3、更には炭素数2〜3の1価アルコールが好ましく、又、炭素数2〜5の2価アルコールが好ましく、又、炭素数3の3価アルコールが好ましい。上記の炭素数1〜5の1価アルコールは、水と相溶性の高いアルコールであり、水との混合溶媒として使用する場合に好適に用いられる。
1価のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、シクロヘキサノールであり、より好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコールであり、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコールであり、とりわけ、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが好ましく、更に、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが好ましく、最も好ましくは、エタノールである。
2価のアルコールとしては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等を挙げることができる。好ましくは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールであり、最も好ましくは、1,2−エタンジオールである。
3価のアルコールとしてはグリセリン等を好適に用いることができる。
ケトン類としては、特に制限されず、普通炭素数3〜6のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができ、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトンであり、最も好ましくは、アセトンである。
ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数2〜20、特に炭素数2〜12、とりわけ炭素数2〜8のものが好適に用いられる。
具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、マロノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプチルシアニド、オクチルシアニド、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、トリデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ステアロニトリル、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、クロロプロピオニトリル、ブロモプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリル、クロロベンゾニトリル、ブロモベンゾニトリル、シアノ安息香酸、ニトロベンゾニトリル、アニソニトリル、フタロニトリル、ブロモトルニトリル、メチルシアノベンゾエート、メトキシベンゾニトリル、アセチルベンゾニトリル、ナフトニトリル、ビフェニルカルボニトリル、フェニルプロピオニトリル、フェニルブチロニトリル、メチルフェニルアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、ナフチルアセトニトリル、ニトロフェニルアセトニトリル、クロロベンジルシアニド、シクロプロパンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、シクロヘプタンカルボニトリル、フェニルシクロヘキサンカルボニトリル、トリルシクロヘキサンカルボニトリル等を挙げることができる。好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、ベンゾニトリル、トルニトリル、クロロプロピオニトリルであり、より好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルであり、最も好ましくは、アセトニトリルである。
エーテル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数3〜20、特に炭素数4〜12、とりわけ炭素数4〜8のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等を挙げることができる。ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が好ましく、特に、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が好ましい。最も好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等であり、とりわけ、ジオキサン、テトラヒドロフランが好ましい。
脂肪酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等を挙げることができるが、ギ酸、酢酸が好ましく、最も好ましくは酢酸である。
言うまでもなく、上記水溶性有機溶媒は2種以上を併用して使用してもよい。
本発明の晶析方法としては、特に制限されず、冷却晶析、濃縮晶析、溶媒置換晶析、貧溶媒添加晶析等のうちの少なくとも一つを用いて実施することができる。上記水溶性有機溶媒中での還元型ビタミンKの溶解度は極めて好適な温度依存性を示し、これは還元型ビタミンKの溶解量を好適に減じて結晶状態へ高収率で移行させる上で好適に寄与するので、この特性を最大限に発揮するためには、冷却晶析、もしくは、冷却晶析と他の晶析方法を組み合わせて行うのが特に好ましく、冷却晶析と貧溶媒添加晶析を組み合わせて行うのが最も好ましい。上記貧溶媒は、還元型ビタミンKを含有する水溶性有機溶媒の溶液に添加しても良いし、貧溶媒に還元型ビタミンKを含有する水溶性有機溶媒の溶液を添加しても良い。
貧溶媒としては、実質的に還元型ビタミンKの溶解性を好適に減じる溶媒であれば特に制限されないが、還元型ビタミンKの溶解性を好適に減じて高い収率を得る、スラリー性状を改善するという観点から、水を用いるのが最も好ましい。
水の使用量は、水溶性有機溶媒の種類によっても異なるので一律に規定できず、特に制限されない。好ましくは、結晶化終了時の溶媒中の水の割合が、約1w/w%以上であり、より好ましくは約5w/w%以上であり、特に好ましくは約10w/w%以上、とりわけ約20w/w%以上である。上限は特に制限されないが、好適なスラリー性状を得るという観点から、普通約95w/w%以下、好ましくは約90w/w%以下、より好ましくは約80w/w%以下、特に好ましくは約70w/w%以下である。通常、約1〜約95w/w%で好適に実施でき、約20〜約70w/w%で最も好適に実施できる。
本発明の晶析方法においては、上記水溶性有機溶媒又は上記水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を主成分とする溶媒を用いるのが好ましいが、スラリー性状や結晶性状に悪影響を与えない範囲で、他の溶媒を共存させることを妨げないし、添加することも妨げない。これらの他の溶媒としては、特に制限されないが、例えば、炭化水素類、脂肪酸エステル類、ニトリル類を除く窒素化合物類、硫黄化合物類等を挙げることができる。
炭化水素類としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。特に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、とりわけ、脂肪族炭化水素が好ましい。
脂肪族炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、通常、炭素数3〜20、好ましくは、炭素数5〜12のものが用いられる。
具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、2−ペンテン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2、3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ヘプテン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ノネン、デカン、1−デセン、p−メンタン、ウンデカン、ドデカン等を挙げることができる。
中でも、炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素が好ましく、炭素数5のペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン(ペンタン類と称す);炭素数6のヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン(ヘキサン類と称す);炭素数7のヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン(ヘプタン類と称す);炭素数8のオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン(オクタン類と称す)、及びこれらの混合物が好ましく用いられる。とりわけ、上記ヘプタン類は酸化からの防護効果が特に高い傾向があり、さらに好ましく、ヘプタンが最も好ましい。
芳香族炭化水素としては、特に制限されないが、普通、炭素数6〜20、特に炭素数6〜12、とりわけ炭素数7〜10のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン等を挙げることができる。好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼンであり、より好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、テトラリンであり、最も好ましくは、クメンである。
ハロゲン化炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、非環状のものが好ましく用いられる。普通、塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素が好ましく、特に塩素化炭化水素が好ましい。炭素数1〜6、特に炭素数1〜4、とりわけ炭素数1〜2のものが好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等を挙げることができる。
好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンであり、より好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。
脂肪酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、プロピオン酸エステル、酢酸エステル、ギ酸エステル等を挙げることができる。特に、酢酸エステル、ギ酸エステルが好ましく、とりわけ、酢酸エステルが好ましい。特に制限されないが、一般に、エステル基としては、炭素数1〜8のアルキルエステル又はアラルキルエステル、好ましくは炭素数1〜6のアルキルエステル、より好ましくは炭素数1〜4のアルキルエステルが好ましく用いられる。
プロピオン酸エステルとしては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチルを挙げることができる。
酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル等を挙げることができる。好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシルであり、より好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルであり、最も好ましくは、酢酸エチルである。
ギ酸エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec−ブチル、ギ酸ペンチル等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチルであり、最も好ましくは、ギ酸エチルである。
ニトリル類を除く窒素化合物類としては、例えば、ニトロメタン、トリエチルアミン、ピリジン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。
これらの他の溶媒と、上記水溶性有機溶媒又は水溶性有機溶媒と水との混合溶媒との割合は、溶媒の種類によっても異なるので一律に規定できず、実質的に上記水溶性有機溶媒又は水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を主成分とする溶媒であれば特に制限されないが、好ましくは、全溶媒中の上記水溶性有機溶媒又は水溶性有機溶媒と水との混合溶媒の割合が、約80w/w%以上であり、より好ましくは約90w/w%以上であり、特に好ましくは約95w/w%以上であり、とりわけ約98w/w%以上である。
晶析濃度は、一つの重要な因子であり、晶析終了時の濃度、一般に、晶析終了時の晶析溶媒の重量に対する還元型ビタミンKの重量として、普通約20w/w%以下、好ましくは約15w/w%以下、より好ましくは約13w/w %以下であり、特に好ましくは約10w/w%以下である。上記濃度を維持することによって、工業的規模での操作性に耐えうる好適な晶析が可能となる。生産性の観点から、普通、濃度の下限は約1w/w%であり、好ましくは約2w/w%である。
上記晶析は、強制流動下に実施するのが好ましい。過飽和の形成を抑制し、スムースに核化・結晶成長を行うため、或いは、高品質化の観点から、単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m3以上、好ましくは約0.1kW/m3以上、より好ましくは約0.3kW/m3以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法などを利用しても良い。
晶析に際しては、過飽和の形成を抑制し、スムースに核化・結晶成長を行うために、種晶を添加することも好ましく行われる。
還元型ビタミンKの晶析温度(晶析時の最終冷却温度)は、特に制限されないが、収率等の観点より、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、特に好ましくは15℃以下、とりわけ10℃以下で実施される。下限は、系の固化温度である。通常、0〜25℃程度で好適に実施できる。
晶析時には、単位時間当たりの結晶の晶出量を制御して、過飽和の形成を制御するのが好ましい。好ましい単位時間当たりの晶出量は、例えば、単位時間当たり全晶出量の約50%量が晶出する速度以下(即ち、最大で50%量/時間)であり、好ましくは、単位時間当たり全晶出量の約25%量が晶出する速度以下(即ち、最大で25%量/時間)である。冷却晶析の場合、冷却速度として、普通、約40℃/時間以下、好ましくは約20℃/時間以下である。
尚、還元型ビタミンKは分子酸素により還元型ビタミンKから酸化型ビタミンKへと容易に酸化されるが、本発明者らは、還元型ビタミンKと強酸とを接触させることにより、還元型ビタミンKの分子酸素からの酸化を防護できることも見出した。すなわち、還元型ビタミンKを、強酸の共存下に水溶性有機溶媒の溶液中で晶析することにより、高品質の還元型ビタミンK結晶を得ることができる。
上記強酸としては、特に制限されないが、例えば、水溶液中におけるpKaが2.5以下のものが好ましく、より好ましくは2.0以下であり、特に好ましくは1.5以下であり、とりわけ1.0以下である。なお、強酸が硫酸のような多塩基酸である場合には、上記pKaは、その値が最も小さくなる第1段での値をいう。
強酸の具体例としては、硫酸、塩化水素(塩酸も含む)、燐酸等の無機酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸やトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等のカルボン酸等の有機酸などを挙げることができる。なかでも、硫酸、塩化水素、燐酸等の無機酸が好ましく、晶析後に該強酸を蒸発させるという観点等からは塩化水素が最も好ましい。
強酸の使用量としては、強酸の種類にもよるが、普通、触媒量以上であれば良く、還元型ビタミンKの1モルに対して、例えば、0.1モル%量以上、好ましくは1モル%量以上であれば充分である。上限は特に制限されないが、経済性等も考慮すると、上限は100モル%量である。
また、溶媒中の強酸濃度は、強酸の種類にもよるが、溶媒重量に対する強酸のモル量として、通常、0.1mmol/kg以上、好ましくは1mmol/kg以上であれば充分である。上限は特に制限されないが、経済性等を考慮すると、上限は100mmol/kgである。尚、上記強酸は、酸化防護の目的を達した後には、必要に応じて、中和、蒸発、分液、洗浄等により除去する場合もあり、その点を考慮すると、言うまでもなく、使用目的と得られる効果をもとに、必要最小量を用いるのが好ましい。
上記強酸は、還元型ビタミンK結晶が析出する前に添加してもよく、結晶析出中に添加してもよく、結晶析出量が安定してから添加してもよい。還元型ビタミンK結晶が析出する前に添加しておくのが好ましい。
上記の還元型ビタミンKの、強酸を含有する溶媒中での結晶化に際して、系は均一であっても良く、又、不均一であっても良い。上記系を具体的に例示すると、還元型ビタミンK、強酸及び溶媒からなる均一液相;還元型ビタミンKを含有する有機溶媒相と強酸を含有する水相との不均一液相等々を挙げることができる。言うまでもなく、還元型ビタミンKと強酸との接触効率の高い系が、酸化防護に好適である。
尚、上記の還元型ビタミンKの晶析において、晶析時に用いた強酸を晶析後に除去するためには、晶析後に強酸を塩基(例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物や炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩等)で中和する方法、或いは、強酸として塩化水素等の揮発性の強酸を用いて、該強酸を蒸発させる方法等を採用することができる。
晶析後に強酸を塩基(例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩等)で中和する場合、中和により副生する塩類を母液に溶解、除去するために、結晶の分離に際して、上記塩類を溶解、除去するための水が系中に共存するようにするのも好ましい。これは、一般に、水共存下に結晶化させる、或いは、結晶の分離に際して水を添加する等により達せられる。
また、還元型ビタミンKを酸化から防護するために、抗酸化剤の共存下に晶析を行うのが好ましい。このような抗酸化剤としては、特に制限されないが、例えば、クエン酸類、アスコルビン酸類等を挙げることができる。
クエン酸類としては、特に制限されないが、クエン酸や、クエン酸イソプロピル、クエン酸エチル、クエン酸ブチル等のクエン酸エステル、さらに、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等の塩を挙げることができる。特に、クエン酸、クエン酸イソプロピルが好ましい。
アスコルビン酸類としては、特に制限されず、例えば、アスコルビン酸のみならず、rhamno−アスコルビン酸、arabo−アスコルビン酸、gluco−アスコルビン酸、fuco−アスコルビン酸、glucohepto−アスコルビン酸、xylo−アスコルビン酸、galacto−アスコルビン酸、gulo−アスコルビン酸、allo−アスコルビン酸、erythro−アスコルビン酸、6−デスオキシアスコルビン酸等のアスコルビン酸に類するものを含み、更に、それらのエステル体や塩であってもかまわない。これらは、L体、D体、或いは、ラセミ体であっても良い。具体的には、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビルステアレート、D−arabo−アスコルビン酸等を挙げることができる。還元型ビタミンKの製造において、上記のアスコルビン酸類をいずれも好適に使用しうるが、生成した還元型ビタミンKとの分離のしやすさ等を考慮すると、上記のアスコルビン酸類のうち、特に水溶性のものが好適に用いられ、最も好ましくは、入手容易性、価格等の観点から、L−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸等のフリー体である。
本発明に使用するクエン酸類及び/又はアスコルビン酸類の使用量は、例えば、期待すべき好適な効果や能力を生じうる量(すなわち、有効量)であればよく、具体的には、還元型ビタミンKが酸化型ビタミンKに酸化されるのを防護しうる有効量であればよい。一般的に、クエン酸類及び/又はアスコルビン酸類の種類にもより、特に制限されないが、普通、還元型ビタミンK100重量部に対して0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは10重量部以上である。または、溶媒100重量部に対して0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上あればよい。上限は特に制限されないが、経済性も考慮して、還元型ビタミンK100重量部に対して、普通約1000重量部以下、好ましくは約100重量部以下、または、溶媒100重量部に対して、普通10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは1重量部以下で良い。
言うまでもなく、上記のアスコルビン酸類とクエン酸類の両方を共存させることもでき、この場合、アスコルビン酸類及びクエン酸類の総量として、上記の量であればよい。
このようにして得られる還元型ビタミンKの結晶は、好ましくは、例えば、遠心分離、加圧濾過、減圧濾過等による固液分離、更に、必要に応じて上記アルコール類又はケトン類をはじめとする本発明に記載される溶媒を用いてケーキ洗浄を行って湿体として取得し、更に、内部を不活性ガスに置換した減圧乾燥器(真空乾燥器)に湿体を仕込み、減圧下、乾燥し、乾体として取得することができるし、乾体として取得するのが好ましい。
本発明は、脱酸素雰囲気下で実施することが、酸化防護の上で効果的である。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
次に、本発明に使用するに好適な還元型ビタミンKの合成法、すなわち、酸化型ビタミンKから還元型ビタミンKに還元する反応について述べる。
還元反応は、水素化金属化合物、鉄(金属又は塩としての鉄)、亜鉛(金属としての亜鉛)、次亜硫酸類等を還元剤として用いて実施することができる。
水素化金属化合物としては、特に制限されないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等を挙げることができる。好ましくは水素化ホウ素ナトリウム等である。上記水素化金属化合物の使用量は、水素化金属化合物の種類により異なり、一律に規定できないが、普通、理論水素当量の1〜3倍量で好適に実施できる。
鉄または亜鉛を用いる還元は、普通、酸を使用して実施される。酸としては、特に制限されないが、例えば、酢酸等の脂肪酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸、塩酸や硫酸等の無機酸等を挙げることができる。好ましくは無機酸であり、より好ましくは、硫酸である。
鉄の使用量は、特に制限されないが、酸化型ビタミンKの仕込み重量に対して、例えば、約1/5重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。なお、鉄は金属のみならず、硫酸鉄(II)等の塩の形態でも使用できる。
また、亜鉛の使用量は、特に制限されないが、酸化型ビタミンKの仕込み重量に対して、例えば、約1/10重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。
次亜硫酸類としては、特に制限されず、普通、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が用いられるが、好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。上記次亜硫酸類の使用量は、特に制限されないが、普通、酸化型ビタミンKの仕込み重量に対して、約1/5重量以上、好ましくは約2/5重量以上、より好ましくは約3/5重量以上である。多くても特に支障はないが、経済的に不利であるため、普通、約2倍重量以下、好ましくは同重量以下で用いられる。普通、約2/5重量〜約同重量の範囲で好適に実施できる。
アスコルビン酸類としては、前述したアスコルビン酸類を挙げることができる。
上記のアスコルビン酸類の使用量は、特に制限されず、酸化型ビタミンKを還元型ビタミンKに変換しうる有効量であればよく、一般的に、酸化型ビタミンKに対して、普通1倍モル量以上、好ましくは1.2倍モル量以上である。上限は特に制限されないが、経済性も考慮して、普通10倍モル量、好ましくは5倍モル量、より好ましくは3倍モル量である。
上記還元剤のうち、還元能力、収率、品質といった観点から、水素化金属化合物、亜鉛、次亜硫酸類が好ましく、特に水素化金属化合物、次亜硫酸類(具体的には、次亜硫酸塩)が好ましい。
以下に好ましい還元方法についてより詳細に述べる。
上記水素化金属化合物を用いる還元は、アルコール類を使用するのが好ましいが、還元反応後の水素化金属化合物の処理、還元型ビタミンKの抽出等を考慮した場合、アルコール類と水と2層を形成する有機溶媒を併用するのがより好ましい。アルコール類と水と2層を形成する有機溶媒の割合は特に制限されないが、溶媒の総量に対するアルコール類の割合は普通約1w/w%以上、好ましくは約3w/w%以上、より好ましくは約5w/w%以上、特に好ましくは約10w/w%以上である。
上記水素化金属化合物を用いた還元は、反応終了後、残存する水素化金属化合物を酸で処理した後、後工程に供するのが好ましい。酸としては特に制限されないが、上述した強酸の他、ギ酸、酢酸等のカルボン酸等も使用できる。好ましくは、上記強酸であり、より好ましくは塩酸、硫酸等の無機酸である。
上記次亜硫酸類を用いる還元は、水を併用して、水と2層を形成する有機溶媒(好ましくは炭化水素類、より好ましくは脂肪族炭化水素、なかでもヘプタン類、特にヘプタン)との混合溶媒系で実施するのが好ましい。その際、反応時のpHは、収率等の観点から、普通pH7以下、好ましくはpH3〜7、より好ましくはpH3〜6で実施される。上記pHは、酸(例えば、塩酸や硫酸等の鉱酸)や塩基(例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物)を用いて、調整することができる。
上記次亜硫酸類を用いる還元において、水の使用量は、特に制限されず、還元剤である次亜硫酸類を適度に溶解する量であれば良く、例えば、一般的には、上記次亜硫酸類の水に対する重量が、普通、30w/w%以下、好ましくは20w/w%以下になるように調整するのが良い。又、生産性等の観点から、普通、1w/w%以上、好ましくは5w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上であるのが良い。
本発明において記載される還元反応は、強制流動下に実施するのが好ましい。単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m3以上、好ましくは約0.1kW/m3以上、より好ましくは約0.3kW/m3以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法などを利用しても良い。
還元温度は、還元剤の種類や量によって異なり、一律に規定できない。例えば、次亜硫酸類を用いる還元においては、普通100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下で実施される。下限は、系の固化温度である。通常、0〜100℃程度、好ましくは0〜80℃程度、より好ましくは0〜60℃程度で好適に実施できる。アスコルビン酸類を用いる還元においては、普通30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上で実施される。上限は系の沸点である。通常、30〜150℃程度、好ましくは40〜120℃程度、より好ましくは50〜100℃程度で好適に実施できる。
反応濃度は、特に制限はないが、一般に、溶媒の重量に対する酸化型ビタミンKの重量として、普通約1w/w%以上、好ましくは3w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上、とりわけ15w/w%以上である。上限は、特に制限されないが、普通約60w/w%、好ましくは50w/w%、より好ましくは40w/w%、とりわけ30w/w%である。一般に、約2〜30w/w%、好ましくは約5〜30w/w%、より好ましくは約10〜30w/w%で好適に実施できる。
還元反応は、還元剤の種類や量によって異なり、一律に規定できないが、通常、48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは10時間以内、とりわけ5時間以内に完了させることができる。
このようにして得られた還元反応液は、該反応液から生成した還元型ビタミンKを含有する有機相を採取し、必要に応じ(好ましくは)、該有機相を更に繰り返し水や食塩水、希塩酸等を用いて水洗して夾雑物を完全に除去し、所望の水溶性有機溶媒へと置換した後、上述の晶析法に用いることができる。特に、還元剤として、次亜硫酸ナトリウム等の上記の次亜硫酸類や水素化ホウ素ナトリウム等の水素化金属化合物を用いた場合には、還元剤由来の夾雑物を完全に除去する、或いは水相のpHを安定させるために、繰り返し水洗することが望ましい。
なお、還元反応や引き続き行われる後処理(還元剤の処理やビタミンKを含む有機層の水洗等)は、脱酸素雰囲気下で実施するのが極めて好ましい。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
本発明により、高品質の還元型ビタミンK結晶を作業性、経済性良く得ることができる。本発明により得られる還元型ビタミンK結晶は、還元型ビタミンK/酸化型ビタミンKの重量比は、50%超、好ましくは60/40以上、より好ましくは70/30以上、特に好ましくは80/20以上、さらに好ましくは約90/10以上、中でも約95/5以上、とりわけ約98/2以上、最も好ましくは約99/1以上が期待できる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中の還元型ビタミンKの純度、並びに還元型ビタミンKと酸化型ビタミンKの重量比は下記HPLC分析により求めたが、得られた還元型ビタミンKの純度は、本発明における純度の限界値を示すものではなく、また、同様に、還元型ビタミンKと酸化型ビタミンKの重量比も本発明における上限値を示すものではない。
(HPLC分析条件)
カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)、移動相;CH3OH、検出波長;254nm、流速;1ml/min、メナキノール−4の保持時間;4.2min、メナキノン−4の保持時間;11.5min、フィロキノールの保持時間;5.9min、フィロキノンの保持時間;20.5min。
(実施例1)
5gのメナキノン−4を25℃で50gの酢酸エチルに溶解させた。攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム0.83gに10gのメタノールを加えて溶解させた液を、徐々に添加し、25℃にて還元反応を行った。1時間後、反応液に50g水を添加し、さらに塩酸を添加して中和した。さらに水相を除去し、希塩酸50gで1回、脱気した水50gで2回水洗し、メナキノール−4を5g含む有機相を得た。この有機相を減圧下にて溶媒置換し、5gのメナキノール−4及び37.5gのエタノールからなる溶液を得た。この溶液を35℃にし、攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら濃塩酸0.05gを添加した後、水22.5gを1時間かけて添加し、白色のスラリーを得た。さらに、同温にてさらに1時間保持した後、2℃まで冷却した。なお、減圧下での溶媒置換を除くすべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を2℃のエタノール/水=1/1の混合溶媒10gを用いて洗浄し、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜30℃、1〜30mmHg)することにより、白色のメナキノール−4の結晶4.8gを得た(有姿収率96モル%)。得られた結晶のメナキノール−4/メナキノン−4の重量比は94/6、ビタミンKとしての純度は99%であった。
(実施例2)
実施例1と同様にして還元反応、溶媒置換を行い、5gのメナキノール−4及び60gのエタノールからなる溶液を得た。この溶液を25℃にし、攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら濃塩酸0.05gを添加し、ゆっくりと冷却した。0℃まで冷却した後、種晶を加え、白色のスラリーを得た。さらに、同温にてさらに1時間保持した後、−15℃まで冷却した。なお、減圧下での溶媒置換を除くすべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を2℃のエタノール/水=1/1の混合溶媒10gを用いて洗浄し、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜30℃、1〜30mmHg)することにより、白色のメナキノール−4の結晶3.4gを得た(有姿収率68モル%)。得られた結晶のメナキノール−4/メナキノン−4の重量比は92/8、ビタミンKとしての純度は98%であった。
(実施例3)
実施例1と同様にして還元反応、溶媒置換を行い、5gのメナキノール−4及び30gのイソプロパノールからなる溶液を得た。この溶液を35℃にし、攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら濃塩酸0.05gを添加した後、水45gを1時間かけて添加し、白色のスラリーを得た。さらに、同温にてさらに1時間保持した後、2℃まで冷却した。なお、減圧下での溶媒置換を除くすべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を2℃のエタノール/水=1/1の混合溶媒10gを用いて洗浄し、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜30℃、1〜30mmHg)することにより、白色のメナキノール−4の結晶4.8gを得た(有姿収率96モル%)。得られた結晶のメナキノール−4/メナキノン−4の重量比は94/6、ビタミンKとしての純度は99%であった。
(実施例4)
実施例1と同様にして還元反応、溶媒置換を行い、5gのメナキノール−4及び50gのアセトニトリルからなる溶液を得た。この溶液を35℃にし、攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら濃塩酸0.05gを添加した後、水25gを1時間かけて添加し、白色のスラリーを得た。さらに、同温にてさらに1時間保持した後、2℃まで冷却した。なお、減圧下での溶媒置換を除くすべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を2℃のエタノール/水=1/1の混合溶媒10gを用いて洗浄し、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜30℃、1〜30mmHg)することにより、白色のメナキノール−4の結晶4.8gを得た(有姿収率96モル%)。得られた結晶のメナキノール−4/メナキノン−4の重量比は94/6、ビタミンKとしての純度は99%であった。
(実施例5)
実施例1と同様にして還元反応、溶媒置換を行い、5gのメナキノール−4及び15gのアセトンからなる溶液を得た。この溶液を25℃にし、攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら濃塩酸0.05gを添加した後、水60gを1時間かけて添加し、白色のスラリーを得た。さらに、同温にてさらに1時間保持した後、2℃まで冷却した。なお、減圧下での溶媒置換を除くすべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を2℃のエタノール/水=1/1の混合溶媒10gを用いて洗浄し、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜30℃、1〜30mmHg)することにより、白色のメナキノール−4の結晶4.8gを得た(有姿収率96モル%)。得られた結晶のメナキノール−4/メナキノン−4の重量比は92/8、ビタミンKとしての純度は98%であった。
(実施例6)
ビタミンKとしてフィロキノンを用いる以外実施例1とまったく同様に還元反応、溶媒置換を行い、5gのフィロキノール及び37.5gのエタノールからなる溶液を得た。この溶液を35℃にし、攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら濃塩酸0.05gを添加した後、水37.5gを1時間かけて添加し、白色のスラリーを得た。さらに、同温にてさらに1時間保持した後、2℃まで冷却した。なお、減圧下での溶媒置換を除くすべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を2℃のエタノール/水=1/1の混合溶媒10gを用いて洗浄し、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜30℃、1〜30mmHg)することにより、白色のフィロキノールの結晶4.8gを得た(有姿収率96モル%)。得られた結晶のフィロキノール/フィロキノンの重量比は94/6、ビタミンKとしての純度は99%であった。
(比較例1)
実施例1と同様にして還元反応、溶媒置換を行い、5gのメナキノール−4及び15gのノルマルヘキサンからなる溶液を得た。この溶液を25℃にし、攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m3)しながら−15℃まで冷却した。なお、減圧下での溶媒置換を除くすべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を2℃のエタノール/水=1/1の混合溶媒10gを用いて洗浄し、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜30℃、1〜30mmHg)することにより、白色のメナキノール−4の結晶1.4gを得た(有姿収率38モル%)。得られた結晶のメナキノール−4/メナキノン−4の重量比は41/59、ビタミンKとしての純度は97%であった。

Claims (13)

  1. 還元型ビタミンKを水溶性有機溶媒の溶液から晶析する還元型ビタミンKの製造方法であって、
    水溶性有機溶媒がメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのいずれかであることを特徴とする製造方法。
  2. 還元型ビタミンKがフィロキノール、メナキノール、又はメナジオールである請求項1記載の製造方法。
  3. 還元型ビタミンKがメナキノール−4、又はメナキノール−7である請求項1記載の製造方法。
  4. 晶析に供する還元型ビタミンKは、酸化型ビタミンKを還元することにより得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 貧溶媒として水を使用する請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  6. 結晶化終了時の溶媒中の水の割合が1〜95w/w%である請求項記載の製造方法。
  7. 強酸の共存下に晶析を行う請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  8. アスコルビン酸類及び/又はクエン酸類の共存下に晶析を行う請求項1〜のいずれかに記載の製造方法であって、
    アスコルビン酸類が、アスコルビン酸、rhamno−アスコルビン酸、arabo−アスコルビン酸、gluco−アスコルビン酸、fuco−アスコルビン酸、glucohepto−アスコルビン酸、xylo−アスコルビン酸、galacto−アスコルビン酸、gulo−アスコルビン酸、allo−アスコルビン酸、erythro−アスコルビン酸、6−デスオキシアスコルビン酸、それらのエステル、又はそれらの塩のうち少なくとも一種であり、
    クエン酸類がクエン酸、クエン酸のエステル、又はクエン酸の塩のうち少なくとも一種である製造方法
  9. 還元型ビタミンK100重量部に対し、アスコルビン酸類及び/又はクエン酸類を、その総量として0.1重量部以上共存させることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  10. 溶媒100重量部に対し、アスコルビン酸類及び/又はクエン酸類を、その総量として0.01重量部以上共存させることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  11. 晶析は、単位容積当たりの撹拌所要動力として0.01kW/m3以上の強制流動下に実施する請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 脱酸素雰囲気下で実施する請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 還元型ビタミンK/酸化型ビタミンKの重量比が90/10以上である還元型ビタミンKの結晶であって、
    還元型ビタミンKが、フィロキノールまたはメナキノールである結晶。
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