JP5001080B2 - クリーンルーム用成形品および容器 - Google Patents

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Description

本発明は、所定の樹脂組成物から得られるクリーンルーム用成形品および容器に関する。
半導体製造プロセスにおけるシリコンウェーハ、液晶パネル製造プロセスにおけるガラス基板、ハードディスク製造プロセスにおける金属ディスクなどは汚染を防止するためクリーンルーム中で取り扱われる。これらの製造プロセスにおいては、これらの基板を効率良くハンドリングするための容器、トレー、ピンセットなど、各種の樹脂成形品が使用されている。例えば、複数枚の基板を同時に収容して、クリーンルーム内で特定のプロセスから次のプロセスに輸送する場合の容器、各種の処理を施すための容器、枚葉ウェーハを持ち運ぶピンセットなどの治工具が使用されている。
クリーンルーム内で使用される容器や治工具となる樹脂成形品には、それ自身が汚染源とならないように、高度の耐汚染性が要求される。例えば、樹脂成形品から空気中に揮発する成分が少ないことや、水や薬品に対して溶出する成分が少ないことが重要である。また、他の部材と接触することによって発塵しないことも重要である。
ウェーハキャリアを例に取れば、シリコンウェーハの出し入れや、ロボットによるキャリアの搬送など、ウェーハキャリアが硬い部材と接触することを避けることができない。したがって、このような場合においてもパーティクルの発生を抑制できるように、耐摩耗性に優れた樹脂成形品が強く求められている。
また、樹脂成形品に帯電防止性を付与して、電子デバイスの電気的破壊を防止するとともに、パーティクルの付着を防止することも多い。近年は、デバイスの微細化に伴いパーティクルの管理対象粒径が小さくなってきているので、以上のようなパーティクルの発生抑制の要求は一段と厳しくなっている。
環状オレフィン系重合体は、耐薬品性、耐熱性、耐候性などに優れ、成形品の寸法精度や剛性も良好であることから、様々な用途の成形品として使用されている。例えば、特許文献1には、環状ポリオレフィンに特定の炭素繊維を配合した樹脂組成物が記載されている。
当該樹脂組成物は、帯電防止性を有していて、しかも不純物の溶出が少ないので、ICキャリアやウェーハキャリアなどの電子部品キャリアの材料に使用することができるとされている。しかしながら、この樹脂組成物の耐衝撃性や耐摩耗性は不十分である。
これに対し、特許文献2には、環状オレフィン系重合体にゴム及び導電性炭素繊維を配合した樹脂組成物が記載され、電子機器やIC等の搬送用治具あるいは包装材料に使用できるとされている。この樹脂組成物からなる成形品は、ゴムの配合によって耐衝撃性が改善されているが、耐摩耗性は未だ不十分である。また、単純に樹脂同士を混合しているため、透明性が損なわれる欠点を持っており、さらに炭素繊維などを配合すると黒色化してしまう。
特許文献3には、表面抵抗値を減少させるために炭素繊維を含む樹脂組成物を用いたクリーンルーム用成形品が記載されている。しかしながら、炭素繊維を樹脂組成物に添加すると樹脂組成物から得られる成形品の外観が黒色化し、成形品を任意の色相、例えば、赤色や青色に着色すること不可能となる。また、炭素繊維を含む成形品は、硬度が高く耐摩耗性に優れるものの、成形体内に収容されるシリコンウェーハなどを摩耗してしまうことがあった。そのため、収容物由来のパーティクルが発生することがあった。
特許文献4には、エチレン成分と環状オレフィン成分とからなり軟化温度が70℃以上である環状オレフィン系ランダム共重合体、ガラス転移温度が0℃以下である軟質共重合体、及び有機過酸化物の反応生成物からなる架橋された耐衝撃性環状オレフィン系樹脂組成物が記載されている。特許文献4には、当該樹脂組成物が衝撃強度、特に、低温衝撃性に優れていることが記載されているが、耐摩耗性に関する記載はなく、耐汚染性に関する記載もない。
特許文献5には、環状オレフィン系ランダム共重合体と芳香族ビニル重合体の樹脂組成物が記載されている。しかしながら、耐摩耗性に関する記載はなく、またクリーンルーム用成形品に関する記載もない。
特開平7−126434号公報(特許請求の範囲、段落0016) 特開平7−109396号公報(特許請求の範囲、段落0001〜0003) 国際公開2006/025294号パンフレット 特開平2−167318号公報(特許請求の範囲、発明の効果) 特開2007−154074号公報
本発明は、透明性、耐摩耗性、および耐熱性に優れたクリーンルーム用成形品、およびそれより得られる容器を提供する。
本発明は、具体的には、以下の[1]〜[7]より提供される。
[1] ガラス転移温度が60〜200℃である環状オレフィン系重合体(A)30〜97重量部、
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)3〜70重量部、
これらの合計量100重量部に対して、
ラジカル開始剤(C)0.001〜1重量部、
ラジカル重合性の官能基を分子内に2個以上有する多官能化合物(D)0〜1重量部、
帯電防止剤(E)0.5〜10重量部含む樹脂組成物から得られるクリーンルーム用成形品であって、
環状オレフィン系重合体(A)が、テトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンおよびエチレンからなる共重合体、または下記一般式(1)で表される一種又は二種以上の構造を有する環状オレフィンの開環重合体またはその水素添加物であり
Figure 0005001080
(式中、xとyは共重合比を示し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。x,yはモル基準である。nは、置換基Qの置換数を示し、0≦n≦2の整数である。R は、炭素原子数2〜20の炭化水素基よりなる群から選ばれる2+n価の基であり、複数存在するR は同一でも異なっていてもよい。R は、水素原子、又は、炭素と水素とからなる炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基であり、複数存在するR は同一でも異なっていてもよい。R は、炭素原子数2〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる4価の基であり、複数存在するR は同一でも異なっていてもよい。Qは、COOR で表され、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。R は、水素原子、又は、炭素と水素とからなる炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。R とR を結ぶ円弧は、R とR との間の結合を表わす。)、
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)が、スチレン・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物であって、該重合体(B)中におけるスチレン由来の構成単位の含量が40重量%以上80重量%以下であり、
ASTM D542に準拠して測定された環状オレフィン系重合体(A)および芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の屈折率をそれぞれnD(A)およびnD(B)とした場合において、屈折率の差|nD(A)−nD(B)|が0.015以下である、クリーンルーム用成形品。
[2] 環状オレフィンの開環重合体が、下記一般式(4)
Figure 0005001080
(式中、xとyは共重合比を示し、0/100≦y/x≦80/20を満たす実数である。R は、下記例示のいずれかであり、R は、水素原子である。
Figure 0005001080
(式中、1または2の番号が附された炭素原子は、一般式(4)における炭素原子に結合する炭素原子を示す。))
で表される[1]に記載のクリーンルーム用成形品。
[3] 環状オレフィンの開環重合体が、トリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]デカ−3,7−ジエンの開環重合体である[2]に記載のクリーンルーム用成形品。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載のクリーンルーム用成形品が、半導体基板、ディスプレイ基板及び記録媒体基板から選択された板状体を収納する容器であるクリーンルーム用容器。
[5] 前記板状体と該クリーンルーム用容器とが直接接触する容器である[4]記載のクリーンルーム用容器。
[6] 前記クリーンルーム用容器をさらに収容する容器である[5]記載のクリーンルーム用容器。
[7] [1]〜[3]のいずれかに記載のクリーンルーム用成形品が、クリーンルーム内で使用される、原料、中間製品または完成品を取り扱う治工具であるクリーンルーム用治工具。
本発明によれば、透明性、耐摩耗性、および耐熱性に優れたクリーンルーム用成形品、および容器を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<(A)環状オレフィン系重合体>
環状オレフィン系重合体(A)は、特に限定されるものではないが、具体的には、下記一般式(1)で表される一種又は二種以上の構造を有する環状オレフィン系重合体を用いることができる。
Figure 0005001080
(但し、式中、x,yは共重合比を示し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。x,yはモル基準である。
nは、置換基Qの置換数を示し、0≦n≦2の整数である。
は、炭素原子数2〜20の炭化水素基よりなる群から選ばれる2+n価の基であり、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
は、水素原子、又は、炭素と水素とからなる炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基であり、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
は、炭素原子数2〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる4価の基であり、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
Qは、COOR(Rは、水素原子、又は、炭素と水素とからなる炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。)で表され、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。)
一般式(1)中の各記号については、次のような好ましい条件を挙げることができ、これらの条件は必要に応じ組み合わせて用いられる。
[1]Rは、構造中に少なくとも1箇所の環構造を持つ基である。
[2]Rは、このRを含む構造単位の例示(n=0の場合)として、例示構造(a)、(b)、(c);
Figure 0005001080
(式中、Rは、炭素原子数2〜20の炭化水素基よりなる群から選ばれる2+n価の基である。)である。
[3]nが0である。
[4]y/xが、それぞれモル基準で、5/95≦y/x≦95/5、さらに好ましくは20/80≦y/x≦65/35を満たす実数である。
[5]Rは、水素原子または−CHであり、複数存在するRは、同一でも異なっていてもよい。
[6]Qが、−COOHまたは、−COOCH基である。
環状オレフィン系重合体(A)として、好ましくは、下記一般式(2)で表される一種または二種以上の構造からなり、上記のような好ましい条件を必要に応じ組み合わせて用いられる。
Figure 0005001080
前記一般式(2)中の各記号については、次のような最も好ましい条件をさらに挙げることができ、これらの条件は必要に応じ組み合わせて用いられる。
[1]R基が、一般式(3);
Figure 0005001080
(式中、pは、0乃至2の整数である。)で表される二価の基である。さらに、好ましくは、前記一般式(3)においてpが1である二価の基である。
[2]Rは、水素原子である。
これらの中でも、これらを組み合わせた態様として、環状オレフィン系重合体(A)が、エチレンと、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(以下、TDと略す)とのランダム付加重合によって得られる重合体であることが好ましい。
環状オレフィン系重合体(A)が、環状オレフィンの開環重合体である場合には、上記一般式(1)中の各記号については、次のような好ましい条件を挙げることができ、これらの条件は必要に応じ組み合わせて用いられる。
[1]Rは、構造中に少なくとも1箇所の環構造を持つ基である。
[2]Rは、このRを含む構造単位の例示(n=0の場合)として、少なくとも上記例示構造(b)を含む。
[3]nが0である。
[4]y/xが、それぞれモル基準で、0/100≦y/x≦80/20、さらに好ましくは0/100≦y/x≦50/50を満たす実数である。
[5]Rは、水素原子または−CHであり、複数存在するRは、同一でも異なっていてもよい。
[6]Qは、COOR(Rは、水素原子、又は、炭素と水素とからなる炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。)で表され、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。
環状オレフィン系重合体(A)である環状オレフィンの開環重合体として、好ましくは、下記一般式(4)で表される一種または二種以上の構造からなり、上記のような好ましい条件を必要に応じ組み合わせて用いられる。
Figure 0005001080
なお、x回繰り返される単量体由来の構成単位同士が結合する場合は、これらの構成単位同士は二重結合を介して結合する。
前記一般式(4)中の各記号については、次のような最も好ましい条件をさらに挙げることができ、これらの条件は必要に応じ組み合わせて用いられる。
[1]R基は、下記例示のいずれかである。
[2]R基は、水素原子である。
Figure 0005001080
上記例示において、1または2の番号が附された炭素原子は、一般式(4)における炭素原子に結合する炭素原子を示している。また、これらの例示構造の一部に、アルキリデン基を有していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基を挙げることができる。
これらの中でも、これらを組み合わせた態様として、環状オレフィンの開環重合体が、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン:DCPD)の開環重合によって得られる重合体であることが好ましい。
環状オレフィン系重合体(A)が、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物である場合には、上記開環重合体の二重結合の一部または全部を飽和させることにより水素添加物を得ることができる。
(重合のタイプ)
環状オレフィン系重合体の重合のタイプは、本発明において全く制限されるものではなく、ランダム共重合、ブロック共重合、交互共重合、開環重合等の公知の様々な重合タイプを適用することができる。
(主鎖の一部として用いることのできるその他の構造)
環状オレフィン系重合体は、本発明の樹脂組成物から得られる基板の良好な物性を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し構造単位を有していてもよい。その共重合比は限定されないが、好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。上記数値以下であると、耐熱性を損なうことなく、耐熱性に優れた基板を得ることができる。また、共重合の種類は限定されないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
(重合体の分子量)
環状オレフィン系重合体の分子量は、特に限定されるものではないが、分子量の代替指標としてメルトフロレート(以下「MFR」という)を用いた場合、ASTM D1238に準じて、温度260℃、荷重2.16kgの条件下で測定した場合、0.5〜100g/10分、さらに好ましくは1〜60g/10分あり、最も好ましくは5〜40g/10分である。
この範囲よりMFRが低い場合、成形性が悪くなり、また、この範囲よりMFRが高い場合、成形品は脆くなる。つまりMFRが上記範囲内にあれば、これらのバランスに優れる。
(ガラス転移温度)
環状オレフィン系重合体のガラス転移温度は、60℃〜200℃の範囲のものが用いられる。中でも、100℃〜180℃の範囲のものが好ましい。
ガラス転移温度が下限値以上であれば、成形品の使用環境が高温となる状況下においても信頼性に優れた成形品を提供することができる。ガラス転移温度が上限値以下であれば、溶融成形性に優れる。つまり、上記範囲のガラス転移温度を有する環状オレフィン系重合体を用いることにより、これらの特性のバランスに優れる。
(環状オレフィン系重合体(A)の製造方法)
環状オレフィン系重合体(A)の製造方法を、ランダム共重合体、開環重合体、開環重合体の水素添加物の製造方法により説明する。
(ランダム共重合体の製造方法)
環状オレフィン系重合体が、エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体の場合は、エチレンと後述する式[I]または[II]で表される環状オレフィンとを用いて特開平7−145213号公報に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、この共重合を炭化水素系溶媒中で行い、触媒として該炭化水素系溶媒に可溶性のバナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いてエチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体を製造することが好ましい。
また、この共重合反応では固体状第4族メタロセン系触媒を用いることもできる。ここで固体状第4族メタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要により配合される有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。
ここで4族の遷移金属としては、ジルコニウム、チタン又はハフニウムであり、これらの遷移金属は少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有している。ここで、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子の例としてはアルキル基が置換していてもよいシクロペンタジエニル基又はインデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基を挙げることができる。これらの基は、アルキレン基など他の基を介して結合していてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等である。
さらに有機アルミニウムオキシ化合物及び有機アルミニウム化合物は、通常オレフィン系樹脂の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状第4族メタロセン系触媒については、例えば特開昭61−221206号、特開昭64−106号及び特開平2−173112号公報等に記載されている。
環状オレフィン単量体とともに用いることができる他の単量体としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ブテン、2−ペンテン、1,4−ヘキサジエン、シクロペンテンなどが挙げられる。これらの他の単量体を用いることにより、環状オレフィン系重合体の分子量や物性を調節することができる。
以下、下記式[I]または[II]で示される環状オレフィン単量体について説明する。
Figure 0005001080
Figure 0005001080
上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1である。なおqが1の場合には、RおよびRは、それぞれ独立に、下記の原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
より具体的に、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。これらの炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
上記式[I]において、R15〜R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかもこのようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。ここで形成される単環または多環の具体例を下記に示す。
Figure 0005001080
上記例示において、1または2の番号が附された炭素原子は、式[I]において、それぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を示している。またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基を挙げることができる。
上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2である。またR〜R19は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基である。
ハロゲン原子は、上記式[I]におけるハロゲン原子と同じ意味である。また炭化水素基としては、それぞれ独立に炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、アリール基およびアラルキル基、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などを挙げることができる。これらの炭化水素基およびアルコキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されていてもよい。
ここで、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R およびR13で示される基が、またはR10およびR11で示される基が互いに共同して、メチレン基(−CH−)、エチレン基(−CHCH−) またはプロピレン基(−CHCHCH−)のうちのいずれかのアルキレン基を形成している。さらに、n=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環または多環の芳香族環として、例えば下記のようなn=m=0のときR15とR12がさらに芳香族環を形成している基が挙げられる。
Figure 0005001080
ここでqは、式[II]におけるqと同じ意味である。
上記のような式[I]または[II]で示される環状オレフィン単量体を、より具体的に下記に例示する。
一例として、
Figure 0005001080
で示されるビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(別名ノルボルネン。上記式中、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)および該化合物に、炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
この炭化水素基としては、たとえば、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルなどを例示することができる。
さらに他の誘導体として、
シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、
1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、
1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン誘導体などを例示することができる。
この他、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセンなどのトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン誘導体、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセンなどのトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン誘導体、
Figure 0005001080
で示されるテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(単にテトラシクロドデセンともいう。上記式中、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)およびこれに、炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
この炭化水素基としては、たとえば、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルなどを例示することができる。
さらに他の誘導体として、アセナフチレンとシクロペンタジエンとの付加物などが挙げられる。
また、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、およびその誘導体、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、およびその誘導体、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4,10−ペンタデカジエンなどのペンタシクロペンタデカジエン化合物、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、およびその誘導体、
ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、およびその誘導体、
ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、およびその誘導体、
ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、およびその誘導体、
ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、およびその誘導体、
オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン、およびその誘導体、
ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]−5−ペンタコセン、およびその誘導体、
ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]−6−ヘキサコセン、およびその誘導体などが挙げられる。
一般式[I]または[II]で示される環状オレフィン単量体の具体例を上記に示したが、これら化合物のより具体的な構造例としては、特開平7−145213号当初明細書の段落番号[0032]〜[0054]に示された環状オレフィン単量体の構造例を挙げることができる。本発明で用いられる環状オレフィン系重合体は、上記環状オレフィン単量体から導かれる単位を2種以上含有していてもよい。
上記のような一般式[I]または[II]で示される環状オレフィン単量体は、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とを、ディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。また重合に使用する環状オレフィン単量体の純度は高い方が好ましい。通常99%以上、好ましくは99.6%以上、更に好ましくは99.9%以上である。
(開環重合体の製造方法)
環状オレフィン系重合体が開環重合体の場合は、例えば、上述する式[I]で表される環状オレフィン単量体を開環重合触媒の存在下に、重合又は共重合させることにより製造することができる。
式[I]で表される環状オレフィン単量体としては、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエンを用いることが好ましい。
環状オレフィン単量体とともに用いることができる他の単量体としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ブテン、2−ペンテン、1,4−ヘキサジエン、シクロペンテンなどが挙げられる。これらの他の単量体を用いることにより、環状オレフィン系重合体の分子量や物性を調節することができる。
開環重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、インジウム又は白金などから選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、パラジウム、ジルコニウム又はモリブテンなどから選ばれる金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
本発明において、開環重合体は、溶媒を用いなくても製造することができるが、通常、不活性有機溶媒中で製造することが好ましい。有機溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;メチレンジクロリド、ジクロルエタン、ジクロルエチレン、テトラクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;等が挙げられる。
(開環重合体の水素添加物)
開環重合体の水素添加物を製造するには、通常の方法により、上記の開環重合体の炭素−炭素間の二重結合の少なくとも一部を水素添加することにより行われる。開環重合体を水素添加処理する方法は特に限定されるものではなく、有機溶媒中において、水素添加触媒の存在下に、開環重合体を水素添加処理することで行うことができる。
水素添加反応は、常法に従って、水素添加触媒の存在下に溶液状態の開環重合体を含む樹脂組成物を水素と接触させて行うことができる。水素添加触媒としては、均一系触媒や不均一系触媒を使用することができる。不均一系触媒は、高温高圧にすることで高活性となり、短時間で水添することができ、さらに除去が容易であるなどの生産効率に優れる。
不均一系触媒としては、例えば、ニッケル、ルテニウム、レニウム、白金、パラジウムおよびロジウムからなる群より選ばれる金属を担体に担持してなる触媒が挙げられる。担体は格別限定されることはなく、従来から水素添加触媒金属の担持に用いられているアルミナ、珪藻土などの吸着剤を用いることができる。
ニッケルの担持量は、20〜80重量%、好ましくは30〜60重量%である。パラジウム、白金の担持量は、0.1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%である。形状は、粉末、固体など特に限定なく、使用する装置等に合わせて用いれば良い。
本発明において水素化反応は任意の反応容器を用いることができるが、連続運転性の点で固定床式反応器を用いるのが好ましい。固定床式反応器としては、(a)充填塔または棚段塔式反応器、(b)固定触媒反応器、および(c)金網または薄層触媒反応器などが挙げられる。
充填塔または棚段塔式反応器(a)では、触媒粒子を充填した塔中で、溶液状態の開環重合体を含む樹脂組成物と水素ガスとが十字流接触、向流接触または並流接触する。
固定触媒反応器(b)は、等温層式、断熱層式、多段断熱層式、自己熱交換式、外部熱交換式などに分けられるが、本発明の水素化反応にはいずれのタイプも使用できる。固定触媒反応器(b)の代表的な例としては、J. H. Gary およびG. E. Handwerk:ペトロリウム・リファイニング・テクノロジー・アンド・エコノミクス(1975)p74に記載されるようなタイプの反応器、すなわち、底部にセラミックボールが充填され、その上の反応器中心部に触媒粒子が充填され、反応器の頂端から溶液状態の開環重合体を含む樹脂組成物とガスとの混合物が供給され、反応器の下端から反応生成物が排出されるように構成された反応器が挙げられる。
金網または薄層触媒反応器(c)は、触媒として数枚〜数十枚の金網または粒状触媒を薄層として装着した反応器である。溶液状態の開環重合体を含む樹脂組成物の流し方によってラジアルフロー式とパラレルフロー式とに区分されるが、いずれの方式であってもよい。
本発明における水素添加方法において、溶液状態の開環重合体を含む樹脂組成物を、固定床を通過させるとき、該樹脂組成物が触媒粒子表面を膜状に流れるようにすることが好ましい。溶液状態の開環重合体を含む樹脂組成物と水素ガスの流れ方向は、並流でも向流でもよいが、操作条件の変更が容易である点で並流方式が好ましい。
本発明における水素添加方法において、用いる反応器は、水素化触媒を充填した固定層が装着された反応器を用いる。この反応器は、該反応器内に溶液状態の開環重合体を含む樹脂組成物を充填し、該樹脂組成物に触媒充填固定層を浸漬した状態で水素を吹き込むように構成されている。通常、反応はバッチ式で行われる。代表的な反応器の例は、ジャーナル・オブ・ケミカル・エンジニアリング・オブ・ジャパン、27巻、3号(1994)p310に記載されるような反応器、すなわち、回転軸に装着されたフレームに触媒粒子を充填したステンレス製円筒状網製バスケットが固定層として取り付けられ、さらに撹拌機を備えた反応器である。この反応器内に溶液状態の開環重合体を含む樹脂組成物を充填し、該樹脂組成物に触媒充填バスケットが浸漬した状態で、触媒充填バスケットを回転軸の周りに回転せしめ、かつ該樹脂組成物を攪拌しつつ、反応器下部に水素ガスを圧入する。また、別の例は、固定層として二重円筒状網製バスケットの二重円筒内に触媒を充填したケージを反応器内壁と若干の隙間をあけて配置し、かつ二重円筒の中心の回転軸に攪拌翼を取り付けた反応器も使用される。
本発明における水素添加方法において、水素添加方法に供される開環重合体を含む樹脂組成物は、有機溶媒に開環重合体等が溶解した溶液である。この樹脂組成物は溶液状態で反応器に供給され、開環重合体等が水素添加処理される。開環重合体を含む樹脂組成物は、開環重合体を製造した後の反応溶液として得られ、有機溶媒を特に添加する必要はないが、以下の有機溶媒を添加することもできる。そのような有機溶媒としては、触媒に不活性なものであれば格別な限定はないが、生成する水素添加物の溶解性に優れていることから、通常は炭化水素系溶媒が用いられる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナンなどの脂環族炭化水素類;などを挙げることができ、これらの中でも、環状の脂環族炭化水素類が好ましい。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。通常は、重合反応溶媒と同じでよい。
水素添加反応は、常法に従って行うことができるが、水素添加触媒の種類や反応温度によって水素添加率が変わり、芳香族環の残存率も変化させることができ、上記の水素添加触媒を用いた場合、芳香族環の不飽和結合をある程度以上残存させるためには、反応温度を低くしたり、水素圧力を下げたり、反応時間を短くするなどの制御を行えばよい。
開環重合体を水素添加する際の操作温度は、0〜150℃である。好ましくは、60〜130℃、更に好ましくは80〜120℃である。
また圧力は、1〜50kg/cm、好ましくは1〜30kg/cm、更に好ましくは1〜20kg/cmである。また反応時間は使用する水素添加触媒にもよるが、1時間以下、好ましくは30分以下である。
水添反応におけるLHSVは通常1〜10、好ましくは3〜5である。ここでLHSVとは滞留時間の逆数のことであり、環状オレフィン単量体を炭化水素系溶媒中で重合して得られる未反応の環状オレフィン系単量体を含む環状オレフィン樹脂組成物のフィード流量を触媒充填体積で割って算出することができる。
固定床反応器から排出された、水素添加された開環重合体を含む樹脂組成物は、フラッシュセパレーターのようなセパレーターに導入され、該樹脂組成物と未反応水素とを分離する。分離された水素は水素化反応器に循環させることができる。
<芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)>
本発明に用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)は、芳香族ビニル化合物および共役ジエンを原料モノマーとして、それをブロック共重合して得られた重合体およびその水素添加物であればよい。それらは、JISAで規定されるゴム硬度が98以下のエラストマーが、更に好適である。
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)が、それ自身またはその水素添加物である場合、環状オレフィン系重合体(A)との屈折率の差が、特定範囲となるように選択されたものが好ましい。
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)は、環状オレフィン系重合体(A)30〜97重量部に対し、3〜70重量部の量で用いる。これら環状オレフィン系重合体(A)および芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)は、その合計量が100重量部となるように用い、以下に説明する他の成分の重量部における基準となる。
重合体(A)および(B)の合計量が100重量部である場合において、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)は、3〜70重量部、好ましくは4〜60重量部、更に好ましくは5〜50重量部となるように用いることができる。
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の含有量が3重量部未満では、耐摩耗性が発現せず、クリーンルーム用成形品としては使用できる性能を有さない。逆に、70重量部を超えると、成形性が低下し、成形品の寸法安定性が低下する。つまり、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の含有量が上記範囲であることにより、耐摩耗性および成形性のいずれにも優れる。
ASTM D542に準拠して測定した芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の屈折率をnD(B)とし、前記環状オレフィン系重合体(A)の屈折率nD(A)としたとき、屈折率の差|nD(B)−nD(A)|は、0〜0.015、より好ましくは0〜0.012、さらに好ましくは0〜0.010である。環状オレフィン樹脂組成物は、このようなエラストマーを含有していることによって、高温高湿雰囲気下から常温常湿雰囲気下へと環境変化した場合などにおいても優れた透明性を保持することができる。
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の芳香族ビニル成分の原料モノマーとしては、具体的に、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどが挙げられる。特に、スチレンが好ましく、それを用いたスチレン・共役ジエンブロック共重合体が、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の中で特に好ましい。また、共役ジエン成分の原料モノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエンなどが挙げられる。
本発明で用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)が、上記のような芳香族ビニルから導かれる単位を、40重量%以上80重量%以下、好ましくは45重量%以上75重量%以下、さらに好ましくは55重量%以上70重量%以下で含有していることが望ましい。原料モノマーがスチレンの場合、それらの含有量(重量%)が顕著に好適となる。芳香族ビニルから導かれる単位が、40重量%未満の場合、80重量%を超える場合のいずれの場合においても、環状オレフィン系重合体(A)および芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を含む樹脂組成物が、白化(濁化)し、該樹脂組成物の無色透明性が得られない。
芳香族ビニルから導かれる単位を上記範囲の量で含有する芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を用いることにより、透明性に優れた環状オレフィン樹脂組成物を形成することができる。なお芳香族ビニルから導かれる単位の含有量は、赤外線分光法、NMR分光法などの常法によって測定される値である。
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の具体的例としては、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)およびその水素添加物(SEB)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)およびその水素添加物(SEBS;スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)およびその水素添加物(SEP)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)およびその水素添加物(SEPS;スチレン・エチレン/プロピレン・スチレンブロック共重合体)などが挙げられる。本発明では、これら化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記の具体例は、たとえば、SEBSとして、さらに具体的には、クレイトン(Kraton)G1650、G1652、G1657、G1701(シェル化学株式会社製、商品名)、タフテック(旭化成株式会社製、商品名)、SEPSとしてはセプトン2104などが挙げられる。
本発明で用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)として、SEBS(水添SBS)、SEPS(水添SIS)が特に好ましく用いられる。本発明で用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)は、芳香族ビニルブロック単位と共役ジエンゴムブロック単位(あるいはその水素添加ゴムブロック単位)とからなる熱可塑性エラストマーである。このようなブロック共重合体では、ハードセグメントである芳香族ビニルブロック単位がソフトセグメントであるゴムブロック単位の橋かけ点として存在して物理架橋(ドメイン)を形成している。
本発明で用いられる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の数平均分子量は、500〜2000000、好ましくは10000〜1000000である。この数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC;o−ジクロルベンゼン、140℃)を測定することにより求めることができる。
<ラジカル開始剤(C)>
ラジカル開始剤(C)は、溶融混練時の加熱によって熱分解してラジカルを発生することのできるものであればよく、その種類は特に限定されない。具体的には、過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤などが挙げられる。しかしながら、金属を含有するものは、成形品中に金属残渣が混入するため、クリーンルーム用成形品としては必ずしも好ましくない。また、アゾ化合物のように窒素元素を含有するものは、成形品から含窒素化合物が揮発するおそれがあり、好ましくない場合がある。したがって、有機過酸化物が好適に採用される。ラジカル開始剤(C)は、溶融混練時に適度な速度で分解することが好ましく、その1分間半減期温度は30〜250℃であることが好適である。1分間半減期温度は、より好適には50℃以上であり、200℃以下である。
ラジカル開始剤(C)として使用される有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類;
ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキシド類;
ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;
t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類等を挙げることができる。
ラジカル開始剤(C)の量は、環状オレフィン系重合体(A)と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)との合計が100重量部に対し、0.001〜1重量部である。好ましくは0.005〜0.8重量部、更に好ましくは0.01〜0.5重量部である。0.001重量部未満では、ラジカルの発生効果が小さく、架橋反応が進まない。また1重量部を超えると、ラジカルの発生効果が大きく、架橋反応の制御が難しい。また、架橋反応が進行しすぎてしまい、成形性、耐摩耗性が低下する。つまり、ラジカル開始剤(C)の量が上記範囲内であれば、架橋反応が適度に進行することとなり、成形性および耐摩耗性が向上する。
<多官能化合物(D)>
ラジカル重合性の官能基を分子内に2個以上有する多官能化合物(D)としては、たとえばジビニルベンゼン、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、トリアリールイソシアヌレート、ジアリールフタレート、エチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを挙げることができる。
本発明のクリーンルーム用成形品に用いられる樹脂組成物は、環状オレフィン系重合体(A)と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)とを含んでなり、必要に応じて、ラジカル開始剤(C)及び帯電防止剤(E)を含んでなる。このとき、これらの原料に対して、ラジカル重合性の官能基を分子内に2個以上有する多官能化合物(D)をさらに加えることで、より効率的に架橋させることができる。それによって、成形品の耐摩耗性を改善することができる。
多官能化合物(D)は、環状オレフィン系重合体(A)および芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の合計100重量部に対し、0〜1重量部、好ましくは0〜0.8重量部、さらに好ましくは0〜0.5重量部で用いることができる。1重量部を超えると、架橋反応の制御が難しい。また、架橋反応が進行しすぎてしまい、成形性、耐摩耗性が低下する。
多官能化合物(D)の配合は任意であり、配合しなくても良いが、効率的に架橋反応を進行させるためには配合させるほうが好ましい。その場合の好適な配合量は0.001重量部以上であり、より好適には0.01重量部以上である。この場合、多官能化合物(D)は、環状オレフィン系重合体(A)および芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の合計100重量部に対し、好ましくは0.001〜0.8重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部で用いることができる。
多官能化合物(D)の配合量が上記範囲であることにより、成形性、耐摩耗性が向上する。
<帯電防止剤(E)>
本発明に用いられる帯電防止剤(E)は、非イオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤に分類される4グループの帯電防止剤など、一般的に使用されている帯電防止剤を用いることができる。
非イオン系帯電防止剤は、構造中にエーテル結合を有する化合物を挙げることができ、さらに窒素を含むもの、または含まないものを挙げることができる。非イオン系帯電防止剤は、耐熱性に優れ、樹脂との相溶性に優れる。
非イオン系帯電防止剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミド類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類などが挙げられる。本発明においては、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、グリセリン脂肪酸エステル類を用いることが好ましい。
アニオン系帯電防止剤は、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルジフェニルスルホン酸塩等のスルホン酸塩系帯電防止剤、アルキルリン酸エステル、アルキル亜リン酸塩、アルキルホスホン酸、アルキルホスホン酸エステル等の含リン系帯電防止剤、などが挙げられる。本発明においては、アルキルスルホン酸塩を用いることが好ましい。
カチオン系帯電防止剤は、脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、スルホニウム塩、アルキルピリジウム塩類などが挙げられる。
両性系帯電防止剤は、ベンダイン型、スルホベタイン型、イミダゾリン誘導体などが挙げられる。
本発明においては、帯電防止剤(E)として、特に、非イオン系帯電防止剤とアニオン系帯電防止剤を用いることが好ましい。
本発明に用いられる帯電防止剤(E)は、単独でも、あるいは必要に応じて2種以上を混合して用いることができる。2種以上を混合して用いる場合、上記の4グループの帯電防止剤の中のある1グループの中で2種以上を選択すること、あるいは4グループのグループ間を跨いで、すなわちグループに関係なく、全ての帯電防止剤の中から任意に2種以上を選択すること、のいずれでも可能である。
本発明に用いられる帯電防止剤(E)の量は、環状オレフィン系重合体(A)および芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の合計100重量部に対し、0.5〜10重量部である。好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。0.5重量部未満では、導電性の付与ができず、抵抗値の低下が認められない。また10重量部を超えると、耐熱性の低下が起こる。また、樹脂への練りこみが不十分となり、ブリードアウトを起こし易くなる。つまり、帯電防止剤(E)の量が上記範囲にあると、導電性および耐熱性に優れるとともに、ブリードアウトを抑制することができる。
本発明のクリーンルーム用成形体は、環状オレフィン系重合体(A)と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)との合計量が100重量部となるように含む樹脂組成物から得られる。
樹脂組成物は、環状オレフィン系重合体(A)を97〜30重量部、好ましくは96〜40重量部、更に好ましくは50〜5重量部となる量で含み、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)を3〜70重量部、好ましくは4〜60重量部、更に好ましくは5〜50重量部となる量で含む樹脂組成物から得ることができる。
このような組成である樹脂組成物を用いることにより、本発明のクリーンルーム用成形体は、透明性、耐摩耗性、および耐熱性に優れる。
また、環状オレフィン系重合体(A)の屈折率nD(A)とし、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の屈折率nD(B)とした場合において、屈折率の差|nD(B)−nD(A)|は、0〜0.015、より好ましくは0〜0.012、さらに好ましくは0〜0.010である。
環状オレフィン樹脂組成物は、このような屈折率差を有するエラストマーを含有していることによって、高温高湿雰囲気下から常温常湿雰囲気下へと環境変化した場合などにおいても優れた透明性を保持することができる。
また、樹脂組成物は、環状オレフィン系重合体(A)と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の合計100重量部に対して、ラジカル開始剤(C)、多官能化合物(D)、および帯電防止剤(E)を以下の量で含んでいてもよい。
ラジカル開始剤(C):0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.8重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部
多官能化合物(D):0〜1重量部、好ましくは0〜0.8重量部、さらに好ましくは0〜0.5重量部
帯電防止剤(E):0.5〜10重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは2〜10重量部
また、多官能化合物(D)の配合は任意であり、配合しなくても良いが、効率的に架橋反応を進行させるためには配合させるほうが好ましい。その場合の好適な配合量は0.001〜0.8重量部であり、より好適には0.01〜0.5重量部である。
なお、これらの数値範囲は任意に組み合わせることができる。
さらに、その他の成分として、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、有機又は無機の充填剤などを配合することができる。しかしながら、クリーンルーム用成形品が、揮発成分や溶出成分の放出や、パーティクルの発生を嫌うことを考慮すれば、これらの添加剤の配合は最小限にとどめることが望ましい。
上記の組成を有する樹脂組成物から得られるクリーンルーム用成形品は、透明性、耐摩耗性、および耐熱性に優れるとともに、耐薬品性、耐強酸性、耐強アルカリ性、耐衝撃性および寸法安定性において優れた特性を有すると同時に、帯電防止性に優れ、さらに任意の色相に着色が可能である。さらに、本発明のクリーンルーム用成形品によれば、耐摩耗性と収容物の摩耗を抑制する効果とのバランスに優れ、パーティクル(粉塵)の発生を効果的に抑制することができる。本発明のクリーンルーム用成形品は、このような特性に優れているので、特に容器と治工具に好適に使用することができる。
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。当該樹脂組成物は、環状オレフィン系重合体(A)、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)、ラジカル開始剤(C)及び帯電防止剤(E)を溶融混練して得られる。ラジカル開始剤(C)が分解する温度で、環状オレフィン系重合体(A)と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)とを溶融混練することによって両者の間で架橋反応を進行させ、耐摩耗性に優れた成形品を得ることができると考えられる。このとき、ラジカル開始剤(C)とともに、多官能化合物(D)を添加することが好ましく、これによってより効果的に架橋反応を進行させることができる。
これらの成分を配合するに際しては、全ての原料を一度に混合することもできるが、環状オレフィン系重合体(A)と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)とを予め溶融混練してから、ラジカル開始剤(C)を添加してさらに溶融混練する方法が好適である。環状オレフィン系重合体(A)と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)とが十分にブレンドされた状態で架橋反応を開始させるほうが、分散性の良好な樹脂組成物を得ることができるからである。
環状オレフィン系重合体(A)、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)及びラジカル開始剤(C)を溶融混練した場合には、架橋反応の進行によって、得られる樹脂組成物の溶融粘度が高くなる。そのため、高度な溶融流動性が要求される成形方法を採用する場合には、問題が生じる場合がある。例えば、高速で射出成形する場合、大型成形品を射出成形する場合、寸法精度の要求性能の厳しい成形品を射出成形する場合などには、良好な成形品が得られない場合がある。
このような場合には、環状オレフィン系重合体(A)の配合を二度に分けて行うことが好適である。すなわち、環状オレフィン系重合体(A)の一部と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)とを予め溶融混練してから、ラジカル開始剤(C)を添加して溶融混練し、引き続き残りの環状オレフィン系重合体(A)を添加して溶融混練する方法が好適である。これによって、架橋構造を有する環状オレフィン系重合体(A)と芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)との混合物を、架橋構造を有さない環状オレフィン系重合体(A)で希釈することができ、溶融粘度の上昇を抑制することができる。この方法によっても、耐摩耗性を十分に向上させることができる。環状オレフィン系重合体(A)のうち、先に配合する量と、後から配合する量の比(先/後)は特に限定されないが、1/99〜70/30であることが好適である。比(先/後)が1/99未満の場合には、耐摩耗性が低下するおそれがあり、より好適には5/95以上である。一方、比(先/後)が70/30を超える場合には、溶融粘度の上昇を抑制する効果が低下するので、より好適には50/50以下である。
本発明においては、上記原料に加えて、帯電防止剤(E)を溶融混練する。この場合に、帯電防止剤(E)を配合する時期はいつであっても構わない。環状オレフィン系重合体(A)、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)及びラジカル開始剤(C)を混合する際に、帯電防止剤(E)を同時に混合してもよい。しかしながら、環状オレフィン系重合体(A)、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)及びラジカル開始剤(C)の3成分を予め溶融混練してから添加するほうが、各成分の分散性が向上して、成形性、耐摩耗性、力学強度などの諸物性が良好になるので好ましい。このとき、前述のように環状オレフィン系重合体(A)を二度に分けて配合する場合には、後から配合する環状オレフィン系重合体(A)とともに配合しても良いし、さらにその後に配合しても良い。帯電防止剤(E)以外の他のフィラーを加える場合も同様である。
環状オレフィン系重合体(A)、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)、ラジカル開始剤(C)及び帯電防止剤(E)を溶融混練する際の温度は、環状オレフィン系重合体(A)及び芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)が溶融し、ラジカル開始剤(C)が分解することの可能な温度であればよい。具体的には、150〜350℃であることが好適である。効率的に架橋反応を進行させるためには、混練温度が200℃以上であることがより好ましい。また、樹脂の過剰な熱分解を抑制するためには混練温度が300℃以下であることがより好ましい。そして、このような混練温度において、半減期が1分以下であるようなラジカル開始剤(C)を使用することが好ましい。
溶融混練する際に使用する装置は特に限定されず、各種混練装置、例えば単軸押出機、2軸押出機、ロール、バンバリーミキサー等によって溶融混練することができる。なかでも、十分な混練が可能な押出機、特に二軸押出機などの多軸押出機を使用することが好ましい。押出機を使用する場合には、順ネジスクリューのみならず、ニーディングディスク、逆ネジスクリューなどを配置して混練性を向上させることが好ましい。こうして溶融混練された樹脂組成物は、そのまま成形に供しても良いし、一旦ペレット化してから溶融成形に供しても良い。
環状オレフィン系重合体(A)、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)及びラジカル開始剤(C)が反応する際には、ラジカル開始剤や樹脂に由来する分解物が発生することが避けられない。これらの分解物の中には揮発性のものも含まれており、成形品の耐汚染性を考慮すればそれを効果的に除去することが好ましい。したがって、環状オレフィン系重合体(A)、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)及びラジカル開始剤(C)を溶融混練する際に、ベントを備えた押出機を使用することが好適である。こうすることによって揮発成分をベントから除去することが可能である。ベントの種類は特に限定されず、大気に開放されたベントであっても構わないが、減圧ベントを使用するほうが効率的に揮発成分を除去することができて好ましい。このとき、二軸押出機などの多軸押出機を使用すれば、十分な混練が可能となって、揮発成分の除去効率も向上する。
このとき、ラジカル開始剤(C)が加えられた後の溶融物が前記押出機内に滞留する時間が30〜1800秒であることが好ましい。この時間は、ラジカル開始剤(C)が加えられたとき以降で、成形品が得られるまでの間で、ベントを備えた押出機の中に滞留する時間の合計の時間のことである。したがって、2台の押出機を使用した場合には、その滞留時間の合計であるし、1台の押出機の途中でラジカル開始剤(C)が加えられた場合には、それよりも下流の部分を通過するのに要する滞留時間である。滞留時間は、押出機内の容量を、吐出速度で割ることによって算出される。滞留時間が短すぎる場合には揮発成分の除去が不十分になるおそれがあり、より好適には60秒以上であり、さらに好適には120秒以上である。一方、滞留時間が長すぎる場合には、生産効率が低下するので、より好適には1500秒以下であり、さらに好適には1200秒以下である。
こうして得られた樹脂組成物のMFR(ASTM D1238に基づいて、230℃、2.16kg荷重で測定)が0.01〜100g/10分であることが好適である。MFRが0.01g/10分未満の場合には、溶融成形、特に射出成形が困難になる場合があり、より好適には0.02g/10分以上であり、さらに好適には0.05g/10分以上である。一方、MFRが100g/10分を超える場合には、成形品の強度や耐摩耗性が低下するおそれがあり、より好適には80g/10分以下であり、さらに好適には60g/10分以下である。
得られた樹脂組成物を溶融成形して、本発明の成形品が製造される。成形方法は特に限定されないが、射出成形することが好適である。射出成形の条件は特に限定されないが、以下のような条件が好適な条件として示される。
・シリンダーの設定温度:
180〜340℃、より好適には200〜320℃。
・最大射出スピード:
100〜240ml/秒、より好適には120〜180ml/秒。
・射出設定圧力:
100〜250MPa、より好適には150〜220MPa。
・金型温度:
30〜140℃、より好適には30〜80℃。
射出スピード(ml/秒)は、スクリューの射出設定スピードにスクリューの断面積を掛けて得られる値である。射出操作中に射出スピードを変化させる場合も多く、本発明では、1回の射出操作中の射出スピードの最大値を最大射出スピード(ml/秒)とする。クリーンルーム用成形品は、複雑な立体形状を有し、寸法精度が要求され、しかも比較的寸法の大きいものが多いので、一定以上の最大射出スピードで射出成形することが好ましい。一方、最大射出スピードが速すぎると、剪断発熱によって樹脂が分解するおそれがあるので注意が必要である。
こうして得られた本発明のクリーンルーム用成形品は、150℃で30分間加熱した時の脱ガス総量が、ヘキサデカン換算で20μg/g以下であることが好ましい。このように少ない脱ガス量とすることによって、クリーンルーム内の汚染を防止できる。脱ガス総量は、より好適には15μg/g以下であり、さらに好適には10μg/g以下である。
また、本発明の樹脂組成物から得られるクリーンルーム用成形品は、その表面抵抗率が10〜1011Ω/cmである。表面抵抗率が1011Ω/cm以下であることによって、パーティクルの付着を防止できることができ、より好適には1010Ω/cm以下である。
本発明の成形品は、上述のような特性を有するためクリーンルーム用途に好適に用いることができる。クリーンルーム用成形品は、クリーンルーム内で使用される成形品であればよく、特に限定されない。クリーンルーム内において、原料、中間製品あるいは製品を取り扱うための容器、トレー、治工具などが例示される。
クリーンルーム用成形品の好適な実施態様としては、半導体基板、ディスプレイ基板及び記録媒体基板から選択される板状体が収納される容器が例示される。ここでいう板状体は、大寸法のものばかりでなく、それを切断して得られるチップも含むものである。板状体のなかでも、特に、管理レベルの厳しい半導体基板用容器が好適な実施態様である。このとき、前記板状体が直接接触する容器であっても良いし、前記板状体が直接接触する容器をさらに収容する容器であっても良い。
また、別の好適な実施態様としては、原料、中間製品又は完成品を取り扱う治工具が挙げられる。このような治工具は、原料、中間製品又は完成品に直接接触することが多いので、本発明の成形品を適用する利益が大きい。このような治工具としては、ピンセットなどが例示される。当該治工具が取り扱うものは特に限定されず、板状体、ブロック、容器など各種の形態のものを取り扱うことができる。なかでも、半導体基板、ディスプレイ基板及び記録媒体基板から選択される板状体を取り扱う治工具が好適である。そして、特に管理レベルの厳しい半導体基板を取り扱う治工具が最も好適である。
半導体基板としては、集積回路製造用の基板、太陽電池製造用の基板などが例示される。その材料はシリコンに代表されるが特に限定されるものではない。また、その形態もシリコンウェーハのような円形であっても良いし、太陽電池セルのような四角形であっても良い。また、シリコンウェーハを切断したチップの形態であっても構わない。
中でも代表的な実施態様がシリコンウェーハ用の容器である。脱ガスやパーティクルの発生が少ない本発明のクリーンルーム用容器はシリコンウェーハ収納用に好適である。近年では、シリコンウェーハの大口径化が進行しており、それに対応してシリコンウェーハ用容器の寸法も大きくなってきている。したがって、寸法が大きくなるにしたがって、成形品全体としての寸法精度の要求レベルも厳しくなることから、寸法精度良く成形できる本発明のクリーンルーム容器が好適である。
このとき、シリコンウェーハが直接配列されるキャリアと称される容器である場合には、シリコンウェーハが直接キャリアに接触するので、特に汚染が問題になりやすいし、処理液等を介してクロスコンタミネーションを生じやすい。したがって、このようなキャリアに対して本発明のクリーンルーム用成形品を使用することが好ましい。また、前記キャリアが内部に収容される、ケースやボックスと称される容器や、キャリアとケースの役割を同時に果たす一体型の容器に対しても、本発明のクリーンルーム用成形品は好適に使用される。
ディスプレイ基板としては、液晶ディスプレイ製造用の基板、プラズマディスプレイ製造用の基板、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ製造用の基板などが例示される。これらの基板の材料は代表的にはガラスであるが、その他のもの、例えば透明樹脂などであっても構わない。これらのディスプレイ基板の場合にも、汚染防止は重要であるから、本発明のクリーンルーム用成形品を採用することが好適である。また、ディスプレイ基板は特に大型のものが多いことから、寸法精度に優れた本発明のクリーンルーム用成形品を使用することが好ましい。
また、記録媒体基板としては、ハードディスク基板や光ディスク基板が例示される。ハードディスク基板の場合の素材は、金属やガラスなどが代表的に使用されるが、それに限定されるものではない。また、光ディスク基板の場合の素材はポリカーボネートに代表される透明プラスチックが代表的であるが、それに限定されるものではない。これらの記録媒体については、その記録形式によって記録膜の組成は異なるが、近年では記録密度の飛躍的向上によって、僅かな汚染物質がその性能に与える影響が大きくなってきており、本発明のクリーンルーム用成形品が好適に使用される。
本発明を以下に実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。本発明によって、各物性は以下の方法で測定した。
(1)屈折率差
屈折率は、ASTM D542に準拠して測定した。環状オレフィン系重合体(A)の屈折率をnD(A)、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の屈折率をnD(B)として屈折率差を算出した。
・屈折率差=|nD(A)−nD(B)|
(2)メルトフローレート(MFR)
ASTM D1238に準拠して、環状オレフィン系重合体は、温度260℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。環状オレフィン開環重合体であるゼオノアは、280℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。プロピレン重合体は、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。樹脂組成物については、温度260℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
SEIKO電子工業株式会社製DSC−20を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
(4)テーバー摩耗
JIS K7204に準じて摩耗量を測定した。射出成形して得られた120mm×130mmの角盤状の成形品を室温で24時間放置した後、試験に供した。摩耗試験機は、テーバー摩耗試験装置T410(東洋精機株式会社製)を使用した。摩耗輪はCS17、荷重は1000g(片腕500g)、回転数は1000回である。
(5)シリコンウェーハスクラッチ摩耗性(ウェーハ摩耗)
射出成形して得られた120mm×130mmの角盤状の成形品を室温で24時間放置した後、試験に供した。試料の成形品を200mm径のシリコンウェーハの外周部に当接させ、500gの荷重を付加した状態で、30mmの距離を摺動サイクル5000回往復させて摺動させた。摺動方向はウェーハ面と垂直な方向であり、ウェーハ面と成形品の評価面とを垂直に保って約2時間摺動させた。シリコンウェーハとして、ワッカー・エヌエスシーイー株式会社製8インチウェーハ(厚み:725±25μm)を使用した。試験装置として、往復摩耗試験機TYPE−30S(新東化学株式会社製)を使用した。試験後、その摩耗の程度をグロス変化率、摩耗幅にて評価した。
・グロス変化率=|摩耗前のグロス−摩耗後のグロス|
・摩耗幅;往復摺動部分(30mm)での摩耗幅の最小幅から最大幅の幅を測定した。
(6)表面抵抗率
射出成形して得られた120mm×130mm、厚み2mmの角盤状の成形品を室温で24時間放置した後、23℃、湿度50%RH下で6時間以上状態調整してから測定に供した。測定は、JIS K6911に従って、500Vの印加電圧を与えて測定した。装置は、超高抵抗微少電流計(R8340A、株式会社アドバンテスト社製)を用いた。
(7)HDT(荷重たわみ温度)
ASTM D648に準じて、昇温速度2℃/分、試験応力1.814MPaの条件下で測定した。HDT測定は、全自動HDT試験機6A2型(東洋精機株式会社製)を使用した。
(8)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準じて、23℃、ハンマー40kgf、ノッチ有りの条件下で測定した。アイゾット衝撃用度は、アイゾット衝撃試験機DG−UB(東洋精機株式会社製)を使用した。
(9)HAZE
JIS K7105に準じて、射出成形で成形した厚み2mmの角板を用いて、23℃、50%RH条件下で測定した。
(10)耐薬品性試験
射出成形で成形した厚み2mm、縦120mm、横130mmの角板、アイゾット衝撃強度試験片を用いて、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、IPA(イソプロパノール)の薬品に、23℃、50%RH条件下で浸漬させ、168hr後に取り出して、HAZE変化率、重量変化率、アイゾット衝撃強度変化率を測定した。
・HAZE変化率=|薬品浸漬前のHAZE−薬品浸漬後のHAZE|
・重量変化率=|薬品浸漬前の重量−薬品浸漬後の重量|
・アイゾット衝撃強度変化率=|薬品浸漬前のアイゾット衝撃強度−薬品浸漬後のアイゾット衝撃強度|
(11)外観
透明性の有無を確認するために、射出成形で成形した厚み2mm、縦120mm、横130mmの角板を用いて、外観を確認した。実用上目視で透明感があって、内容物が確認できる程度の透明性であれば問題ないと判断した。
・基準
レベル1:外観上、透明性があり、内容物が確認できる。
レベル2:外観上、透明性はあるが、内容物が確認しがたい。
レベル3:外観上、不透明であり、内容物が全く確認できない。
[実施例1]
ガラス転移温度145℃、MFRが10g/10分の(A)エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとのランダム共重合体(エチレン・テトラシクロドデセンランダム共重合体)を50重量部、MFRが0.76g/10分、スチレン含量65wt%の(B)SEPS(クラレ社製、SEPTON2104)50重量部を充分混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44」)を用いてシリンダー温度250℃で溶融混練し、ペレタイザーにてペレット化して「ペレットa」を得た。
ここで使用した二軸押出機のL/Dは42であり、シリンダー先端にベントが設けられている。当該ベントはいずれも大気に開放されたベントである。スクリュー構成は順ネジスクリューが中心であるが、前記中央付近のベントの前後にニーディングディスクが配置されている。
上記「ペレットa」100重量部に対し、ラジカル開始剤(C)に、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3を主成分(90%以上)(日本油脂株式会社製「パーヘキシン25B」)を0.1重量部、多官能化合物(D)に、ジビニルベンゼン(和光純薬工業株式会社製)0.1重量部を添加し、充分混合した。この混合物を前記二軸押出機「TEX−44」(シリンダー温度250℃)に投入して溶融混練して反応させ、ペレタイザーにてペレット化して「ペレットb」を得た。
上記「ペレットb」40重量部と、ガラス転移温度145℃、MFRが10g/10分の(A)エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン60重量部を充分混合した後、前記二軸押出機「TEX−44」を用いて、シリンダー温度250℃で溶融混練して、ペレタイザーにてペレット化して「ペレットc」を得た。
上記「ペレットc」100重量部に対して、帯電防止剤(E)に、非イオン系のN,N−ビス(2−ヒドロオキシエチレン)ステアリルアミン(ライオン株式会社製「アーモスタット310」)を5重量部添加し、充分混合した。この混合物を前記二軸押出機「TEX−44」に投入して溶融混練して、ペレタイザーにてペレット化して「ペレットd」を得た。ペレットdの組成は、環状オレフィン系重合体(A)80重量部、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)20重量部、ラジカル開始剤(C)0.04重量部、多官能化合物(D)0.04重量部、帯電防止剤(E)5重量部であった。なお、表1および2に記載された「ペレットb」および「再度加える(A)」は工程を説明するためのものであり、表に記載の組成比には影響を及ぼすものではない。
得られた「ペレットd」の、温度260℃で測定したMFR(ASTM D1238に基づいて、2.16kg荷重で測定)は12.5g/10分であった。
得られた「ペレットd」を用いて、射出成形機(株式会社東芝機械プラスチックエンジニアリング社製「IS55EPN」)を用いて、各物性測定用の各板、及び試験片を射出成形して、調製した。
各物性は、テーバー摩耗の摩耗損失量8.5mg、ウェーハ摩耗時のグロス変化量が4、摩耗幅が2.27〜2.40mm、表面抵抗値が1.98E+10Ω/cm、HDTが115℃、アイゾット衝撃強度が35J/m、HAZEは12.5%、耐薬品性において、PGMEではHAZE変化0.38、重量変化0.01、アイゾット衝撃強度保持率98%、IPAではHAZE変化0.81、重量変化0.01、アイゾット衝撃保持率96%、成形品外観はレベル1であった。また、30日後の表面抵抗値は3.69E+09Ω/cmであり、経時変化もなく安定していた。これらの結果を表1に示す。
「ペレットd」を用いて、射出成形機(株式会社日本製鋼所製「J450E−C5」)にて200mmウェーハキャリアを成形した。当該射出成形機のスクリューの直径は76mmであり、成形条件は、シリンダー設定温度が260℃、金型設定温度が30℃、スクリューの最大射出設定スピードが31mm/sec(樹脂組成物の最大射出スピード:141ml/sec)、射出設定圧力が200MPaであった。得られたウェーハキャリアは良好であった。
[実施例2]
帯電防止剤(E)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
ラジカル開始剤(C)、多官能化合物(D)、帯電防止剤(E)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
芳香族ビニルを含む重合体(B)にスチレン含量60wt%のSEBS(クラレ社製、SEPTON8104)を使用し、帯電防止剤(E)を2重量部使用し、ラジカル開始剤(C)および多官能化合物(D)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
ガラス転移温度105℃、MFRが26g/10分の(A)エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとのランダム共重合体を90重量部、芳香族ビニルを含む重合体(B)にスチレン含量60wt%のSEBS(クラレ社製、SEPTON8104)を10重量部、パーヘキシン25Bを0.02重量部、ジビニルベンゼン0.02重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
ガラス転移温度105℃、MFRが26g/10分の(A)エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとのランダム共重合体を90重量部、芳香族ビニルを含む重合体(B)にスチレン含量30wt%のSEPS(クラレ社製、SEPTON4033)を10重量部、パーヘキシン25Bを0.02重量部、ジビニルベンゼン0.02重量部使用し、帯電防止剤(E)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
ガラス転移温度105℃、MFRが26g/10分の(A)エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとのランダム共重合体を80重量部使用し、
ラジカル開始剤(C)、多官能化合物(D)、帯電防止剤(E)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
ラジカル開始剤(C)、帯電防止剤(E)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表1に示す。
[実施例9]
ガラス転移温度162℃、MFRが7g/10分の(A)開環重合で得られた環状オレフィン重合体(ゼオノア1600、日本ゼオン株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表1に示す。
[実施例10]
芳香族ビニルを含む重合体(B)にスチレン含量40wt%のSEBS(旭化成社製、タフテックH1051)を20重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
ガラス転移温度145℃、MFRが10g/10分の(A)エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとのランダム共重合体を100重量部とし、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)、ラジカル開始剤(C)、多官能化合物(D)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表2に示す。
[比較例2]
MFRが0.76g/10分、スチレン含量65wt%の(B)SEPS(クラレ社製、SEPTON2104)のみを使用した以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表2に示す。
[比較例3]
ガラス転移温度162℃、MFRが7g/10分の(A)開環重合で得られた環状オレフィン重合体(ゼオノア1600、日本ゼオン株式会社製)を使用して、芳香族ビニルを含む重合体(B)の代わりにエチレン系エラストマー(タフマーP−0680、三井化学株式会社製)を使用し、帯電防止剤(E)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表2に示す。
[比較例4]
環状オレフィン系重合体(A)の代わりにブロックポリマーのポリプロピレン(PP J705UG、株式会社プライムポリマー社製)を100重量部使用して、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)、ラジカル開始剤(C)、及び多官能化合物(D)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表2に示す。
[比較例5]
(A)にポリブチレンテレフタレート(PBT310、日本ジーイープラスチック株式会社製)を100重量部使用して、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)、ラジカル開始剤(C)、及び多官能化合物(D)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表2に示す。
[比較例6]
(A)エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとのランダム共重合体を100重量部とし、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)、ラジカル開始剤(C)、多官能化合物(D)、及び帯電防止剤(E)を使用しない以外は、実施例1と同様にしてペレットを得て評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005001080
Figure 0005001080

Claims (7)

  1. ガラス転移温度が60〜200℃である環状オレフィン系重合体(A)30〜97重量部、
    芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)3〜70重量部、
    これらの合計量100重量部に対して、
    ラジカル開始剤(C)0.001〜1重量部、
    ラジカル重合性の官能基を分子内に2個以上有する多官能化合物(D)0〜1重量部、
    帯電防止剤(E)0.5〜10重量部含む樹脂組成物から得られるクリーンルーム用成形品であって、
    環状オレフィン系重合体(A)が、テトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンおよびエチレンからなる共重合体、または下記一般式(1)で表される一種又は二種以上の構造を有する環状オレフィンの開環重合体またはその水素添加物であり
    Figure 0005001080
    (式中、xとyは共重合比を示し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。x,yはモル基準である。nは、置換基Qの置換数を示し、0≦n≦2の整数である。R は、炭素原子数2〜20の炭化水素基よりなる群から選ばれる2+n価の基であり、複数存在するR は同一でも異なっていてもよい。R は、水素原子、又は、炭素と水素とからなる炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基であり、複数存在するR は同一でも異なっていてもよい。R は、炭素原子数2〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる4価の基であり、複数存在するR は同一でも異なっていてもよい。Qは、COOR で表され、複数存在するQは同一でも異なっていてもよい。R は、水素原子、又は、炭素と水素とからなる炭素原子数1〜10の炭化水素基よりなる群から選ばれる1価の基である。R とR を結ぶ円弧は、R とR との間の結合を表わす。)、
    芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)が、スチレン・共役ジエンブロック共重合体またはその水素添加物であって、該重合体(B)中におけるスチレン由来の構成単位の含量が40重量%以上80重量%以下であり、
    ASTM D542に準拠して測定された環状オレフィン系重合体(A)および芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B)の屈折率をそれぞれnD(A)およびnD(B)とした場合において、屈折率の差|nD(A)−nD(B)|が0.015以下である、クリーンルーム用成形品。
  2. 環状オレフィンの開環重合体が、下記一般式(4)
    Figure 0005001080
    (式中、xとyは共重合比を示し、0/100≦y/x≦80/20を満たす実数である。R は、下記例示のいずれかであり、R は、水素原子である。
    Figure 0005001080
    (式中、1または2の番号が附された炭素原子は、一般式(4)における炭素原子に結合する炭素原子を示す。))
    で表される請求項1に記載のクリーンルーム用成形品。
  3. 環状オレフィンの開環重合体が、トリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]デカ−3,7−ジエンの開環重合体である請求項2に記載のクリーンルーム用成形品。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のクリーンルーム用成形品が、半導体基板、ディスプレイ基板及び記録媒体基板から選択された板状体を収納する容器であるクリーンルーム用容器。
  5. 前記板状体と該クリーンルーム用容器とが直接接触する容器である請求項4記載のクリーンルーム用容器。
  6. 前記クリーンルーム用容器をさらに収容する容器である請求項4に記載のクリーンルーム用容器。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のクリーンルーム用成形品が、クリーンルーム内で使用される、原料、中間製品または完成品を取り扱う治工具であるクリーンルーム用治工具。
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