JP4996407B2 - 単一光子発生装置、量子ビット読出装置および方法 - Google Patents
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Description
本実施形態では、強度、角周波数(ωl)とも一定の励起光と、励起光の角周波数と異なる共振器モードの共鳴角周波数(ωc)を持つ光共振器を用意し、共振器の空間モードと空間的に重なる位置に置いた2状態系に対して励起光を照射する。この2状態系に対しては、外場(例えば、電場、磁場)が印加できるようになっており、外場により2状態系の遷移角周波数(ωa)を変化させることができる。このωaの変化のみで2状態系の励起と2状態系から共振器モードへの光子放出を行うことで、光子放出後に単一物質系の状態を戻すプロセスを必要とせず、かつ励起光と異なる角周波数(波長)の光子を発生させることができる。
本実施形態の単一光子発生装置は、光共振器101、物質102、レーザー発生装置103、電場発生装置104、電極105、光子検出器106、制御部107、ミラー108を含む。
図2に2状態系の遷移角周波数(ωa)とレーザーの光子角周波数(ωl)と光共振器の共振器モードの角周波数(ωc)との関係を示す。ωlとωcは異なる値に設定され、ωaは外場の印加により可変となっている。
アディアバティック・パッセージを第1段階に用いる場合、2状態系のエネルギーの高い状態|e>の寿命(|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間)をT1とし、励起光のスペクトル幅(角周波数)が1/T1より小さい場合、印加する外場の変化によりスペクトル幅1/T1を持つ2状態系の遷移角周波数ωaを連続的に変化させ、励起光の角周波数ωlを1/Ωより長く、T1より短い時間をかけて横切らせる。こうすることで、2状態系と1つの光によるアディアバティック・パッセージにより、2状態系の状態は|g>から状態|e>に励起される(図4の第1の状態)。より詳細には、均一幅をΔとした場合、ωaを変化させ、1/Ωより長くT1より短い時間でωl−Δ/2とωl+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にする。
外場に磁場を使用する場合の単一光子発生装置は、光共振器101、物質102、レーザー発生装置103、磁場発生装置501、コイル502、光子検出器106、制御部503、ミラー108を含んでいる。
磁場発生装置501は、2つのコイル502に電流を流し特定の向きの磁場を発生させる。この磁場は光共振器101内の物質102に印加される。
制御部503は、磁場発生装置501を制御して2つのコイル502に流す電流の大きさを調整して磁場の大きさを制御する。制御部503は、光共振器101内に印加される磁場の強さを制御することによって、2状態系の遷移角周波数(ωa)を所定の値に変化させる。制御部503は、制御部107と同様に、レーザー発生装置103を制御し、レーザーを発生させたりレーザの発生を停止する。制御部503は、制御部107と同様に、光子検出器106が光子を検出したかどうかの情報を受け取る。
本実施形態の量子ビット読出装置は、図6にしめすように、光共振器101、レーザー発生装置103、電場発生装置104、電極105、光子検出器106、ミラー108、強度変調用音響光学効果素子601、周波数設定用音響光学効果素子602、レーザー周波数狭窄化システム603、制御部604、物質605を含む。
物質605が元々|0>の状態にあり、制御部604の制御によるアディアバティック・パッセージ後も状態|0>に留まっている場合には、制御部604が電場発生装置104によって電場を変化させ光共振器のωcにωaを励起光の角周波数ωcに一致させても物質605から光子が放出されず、光共振器101から光共振器101の外部にも光子が放出されない。
外場として磁場を使用する場合には、図6での電場発生装置104および電極105を、それぞれ磁場発生装置501およびコイル502に取り替える。図5を参照して説明したように、光共振器101内に印加される磁場の強さを制御することによって、2状態系の遷移角周波数(ωa)を所定の値に変化させることができる。
図9に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例は、第1段階にラビ振動を用い、第2段階に真空ラビ振動を用いる場合である。
本実施例の単一光子発生装置および方法では、2状態系として、Y2SiO5結晶の10−5%のY3+イオンをPr3+イオンに置換したPr3+:Y2SiO5結晶中のPr3+イオンを利用する。Pr3+:Y2SiO5結晶が物質102に対応する。結晶は2mm×2mm×2mm程度の大きさで、対向する表面に超高反射率のミラーが形成され、共振器構造になっている。片側のミラーの反射率はほぼ100%(99.998%以上)、もう片方は99.924%の片側共振器(光共振器101に対応)とし、またその共振器モードは、Pr3+イオンの電子基底状態3H4の核スピンの状態±|5/2>と、電子励起状態1D2の核スピンの状態±|5/2>との間の4f電子のf−f遷移(以降では単にPr3+イオンの光遷移と呼ぶ)の周波数νa(約494.7THz(周波数))より約4MHz高い周波数に共鳴するように作られ、モードウエスト半径が約1μmとなっている。また共振器の減衰定数(κ)(エネルギーの減衰定数)は約5MHz(周波数)とする。結晶901は、クライオスタット905の中に設置され1.5Kに保たれる。
図9に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例は、第1段階にアディアバティック・パッセージを用い、第2段階にもアディアバティック・パッセージを用いる場合である。
この実施例では、制御部903が、第1実施例においてPr3+イオンを含む結晶に電場を印加する際に、電場を印加しない状態からE(1)にまず増大させ、E(1)からE(3)に一定の増加率で10μsかけて電場増大を行い、次いでE(3)からE(4)に電場増大を行い、さらにE(4)からE(6)に一定の増加率で40μsかけて電場増大を行う。次に、制御部903が、電場を印加しない状態に戻して、再び上記方法による印加電場増大を行う。この操作を繰り返すことにより、片側共振器である光共振器101の反射率の低いミラーの側に光子が約50μsごとに放出される。この様子は、光子検出器106で観測することができる。
図9に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例は、第1段階にラビ振動を用い、第2段階にアディアバティック・パッセージを用いる場合である。
この実施例では、制御部903が、第1実施例においてPr3+イオンを含む結晶に電場を印加する際に、電場を印加しない状態から、E(2)の電場を印加しその状態にπ/Ωに相当する1μs留め、次いで、制御部903が、E(4)に電場を増大し、さらにE(4)からE(6)に一定の増加率で40μsかけて電場増大を行う。次に、制御部903が、電場を印加しない状態に戻して、再び上記方法による印加電場増大を行う。この操作を繰り返すことにより、片側共振器である光共振器101の反射率の低いミラーの側に光子が約40μsごとに放出される。この様子は、光子検出器106で観測することができる。
図9に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例は、第1段階にアディアバティック・パッセージを用い、第2段階に真空ラビ振動を用いる場合である。
この実施例では、制御部903が、第1実施例においてPr3+イオンを含む結晶に電場を印加する際に、電場を印加しない状態からE(1)にまず増大させ、E(1)からE(3)に一定の増加率で10μsかけて電場増大を行い、次いでE(3)からE(5)に電場を増大し、π/gに相当する5μsその状態に留める。次に電場を印加しない状態に戻して、再び上記方法による印加電場増大を行う。この操作を繰り返すことにより、片側共振器の反射率の低いミラーの側に光子が約15μsごとに放出される。この様子は、光子検出器で観測することができる。
図10に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例では、結晶901に記録された量子ビットを読み出す場合の一例を示す。
この実施例では、第1実施例におけるPr3+イオンの電子基底状態3H4の核スピンの状態±|3/2>を状態|0>、状態±|1/2>を状態|1>、状態±|5/2>を状態|g>とする。また、電子励起状態1D2の核スピンの状態±|5/2>を状態|e>とする。
Claims (16)
- 共鳴角周波数ωcの共振器モードを有する光共振器を用意し、
前記光共振器の中に含まれ、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>を有し、外場によって変化する|g>−|e>間の遷移角周波数ωaを有する物質を用意し、
前記物質に、ωcと異なる角周波数ωlの光を照射する光源を用意し、
前記光源により前記物質に角周波数ωlの光を照射させ、前記物質に外場を印加しωaを変化させ、遷移角周波数ωaをωlと共鳴させて前記物質を状態|e>にし、次に前記物質に外場を印加しωaを変化させ、遷移角周波数ωaをωcと共鳴させて前記物質を状態|g>に戻すことを特徴とする単一光子発生方法。 - 前記物質を状態|e>にし次に状態|g>に戻すことは、角周波数ωlの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をgとした場合に、前記外場発生部によりπ/Ωの時間だけωaをωlに一致させて物質を状態|e>にし、次に前記外場発生部によりπ/gの時間だけωaをωcに一致させることで物質を|g>に戻すことであることを特徴とする請求項1に記載の単一光子発生方法。
- 前記物質を状態|e>にし次に状態|g>に戻すことは、角周波数ωlの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりωaを変化させ、1/Ωより長くTより短い時間でωl−Δ/2とωl+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にし、次に1/gより長くTより短い時間でωc−Δ/2とωc+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|g>に戻すことであることを特徴とする請求項1に記載の単一光子発生方法。
- 前記物質を状態|e>にし次に状態|g>に戻すことは、角周波数ωlの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりπ/Ωの時間だけωaをωlに一致させて物質を状態|e>にし、次に1/gより長くTより短い時間でωc−Δ/2とωc+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|g>に戻すことであることを特徴とする請求項1に記載の単一光子発生方法。
- 前記物質を状態|e>にし次に状態|g>に戻すことは、角周波数ωlの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりωaを変化させ、1/Ωより長くTより短い時間でωl−Δ/2とωl+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にし、次に前記外場発生部によりπ/gの時間だけωaをωcに一致させることで物質を状態|g>に戻すことであることを特徴とする請求項1に記載の単一光子発生方法。
- 前記光共振器は、ファブリペロー型の片側共振器であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の単一光子発生方法。
- 前記物質は結晶中の希土類イオンであり、前記状態|g>と前記状態|e>が希土類イオンのf−f遷移で結ばれていて、前記外場は、電場または磁場であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の単一光子発生方法。
- 共鳴角周波数ωcの共振器モードを有する光共振器を用意し、
前記光共振器の中に含まれ、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>および状態|g>と状態|e>以外に2つの状態|0>と状態|1>を有し、外場によって変化する|g>−|e>間の遷移角周波数ωaを有する物質を用意し、
|g>−|e>間遷移、|1>−|e>間遷移にそれぞれ共鳴する第1パルス光、第2パルス光を生成し、
前記第1パルス光の強度が前記第2パルス光に対して強い状態から前記第2パルス光の強度が前記第1パルス光に対して強い状態に移行するように前記第1パルス光と前記第2パルス光とが時間的に重なるように制御して第3の光を生成し、
前記第3の光を前記物質に照射し、
前記第3の光を照射した後に、前記物質に外場を印加しωaを変化させ、遷移角周波数ωaをω c と異なる角周波数ωlと共鳴させて、次に前記物質に外場を印加しωaを変化させ、遷移角周波数ωaをωcと共鳴させた場合に、前記光共振器から放出される光子を検出するか否かにより量子ビットを読み取ることを特徴とする量子ビット読出方法。 - 共鳴角周波数ωcの共振器モードを有する光共振器と、
前記光共振器の中に含まれ、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>を有し、外場によって変化する|g>−|e>間の遷移角周波数ωaを有する物質と、
前記物質に、ωcと異なる角周波数ωlの光を照射する光源と、
前記物質に外場を印加しωaを変化させて、ωaをωlと共鳴させたりωcと共鳴さたりする外場発生部と、
前記光源により前記物質に角周波数ωlの光を照射させ、前記外場発生部により遷移角周波数ωaをωlと共鳴させて前記物質を状態|e>にし、次に遷移角周波数ωaをωcと共鳴させて前記物質を状態|g>に戻す制御部と、を具備することを特徴とする単一光子発生装置。 - 前記制御部は、角周波数ωlの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をgとした場合に、前記外場発生部によりπ/Ωの時間だけωaをωlに一致させて物質を状態|e>にし、次に前記外場発生部によりπ/gの時間だけωaをωcに一致させることで物質を|g>に戻すことを特徴とする請求項9に記載の単一光子発生装置。
- 前記制御部は、角周波数ωlの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりωaを変化させ、1/Ωより長くTより短い時間でωl−Δ/2とωl+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にし、次に1/gより長くTより短い時間でωc−Δ/2とωc+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|g>に戻すことを特徴とする請求項9に記載の単一光子発生装置。
- 前記制御部は、角周波数ωlの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりπ/Ωの時間だけωaをωlに一致させて物質を状態|e>にし、次に1/gより長くTより短い時間でωc−Δ/2とωc+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|g>に戻すことを特徴とする請求項9に記載の単一光子発生装置。
- 前記制御部は、角周波数ωlの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりωaを変化させ、1/Ωより長くTより短い時間でωl−Δ/2とωl+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にし、次に前記外場発生部によりπ/gの時間だけωaをωcに一致させることで物質を状態|g>に戻すことを特徴とする請求項9に記載の単一光子発生装置。
- 前記光共振器は、ファブリペロー型の片側共振器であることを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の単一光子発生装置。
- 前記物質は結晶中の希土類イオンであり、前記状態|g>と前記状態|e>が希土類イオンのf−f遷移で結ばれていて、
前記外場発生部は、前記物質に外場として電場または磁場を印加することを特徴とする請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の単一光子発生装置。 - 物質は、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>以外に2つの状態|0>と状態|1>を有している請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の単一光子発生装置と、
|g>−|e>間遷移、|1>−|e>間遷移にそれぞれ共鳴する第1パルス光、第2パルス光を生成する生成手段と、
前記第1パルス光の強度が前記第2パルス光に対して強い状態から前記第2パルス光の強度が前記第1パルス光に対して強い状態に移行するように前記第1パルス光と前記第2パルス光とが時間的に重なるように制御して第3の光を生成する制御手段と、
前記第3の光を前記物質に照射する照射手段と、
前記照射手段が前記第3の光を照射した後に、前記制御部が前記外場発生部により遷移角周波数ωaをωlと共鳴させて、次に遷移角周波数ωaをωcと共鳴させた場合に、前記光共振器から放出される光子を検出するか否かにより量子ビットを読み取る読取手段と、を具備することを特徴とする量子ビット読出装置。
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