JP4993718B2 - オフセット印刷装置およびオフセット印刷方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明の目的は、インキの溶剤によって膨潤した印刷用ブランケットの膨潤度を、簡易な構成により的確に検知し、印刷精度の低下を抑制することのできるオフセット印刷装置と、そのオフセット印刷装置を用いたオフセット印刷方法と、を提供することにある。
本発明のオフセット印刷装置においては、前記導電性測定手段が、前記弾性体層の体積抵抗率を測定するための体積抵抗率測定手段であることが好適である。
シリコーンゴムは、耐熱性、耐候性、インキの転移性などに優れた材料であるため、インキ受理面を有する弾性体層の形成材料として好適である。また、シリコーンゴムは、インキの溶剤による膨潤と溶剤の乾燥とを繰返した後においても、その形状の復元性に優れている。しかも、シリコーンゴムは、それ自体が絶縁性であることから、導電性粉末の分散により導電性を付与した場合に、その導電性の変化の幅が極めて大きくとることができる。それゆえ、本発明において、弾性体層を形成する絶縁性ゴムは、シリコーンゴムであることが好ましい。
本発明のオフセット印刷装置においては、前記弾性体層の導電性を、前記インキ受理面の非印刷領域で測定することが好適である。
本発明のオフセット印刷方法は、本発明のオフセット印刷装置を用いて、前記インキ受理面に担持されたインキを被印刷体へ転写する印刷工程と、前記印刷工程後の前記弾性体層の導電性を、前記導電性測定手段で測定する導電性測定工程と、前記導電性測定工程で測定された前記弾性体層の導電性に基づいて、前記弾性体層に浸透したインキの溶剤を前記弾性体層から除去する溶剤除去工程と、を有していることを特徴としている。
図1を参照して、このオフセット印刷装置1は、印刷用ブランケット2と、ブランケット胴3と、キャリッジ4と、フレーム5と、インキローラ6と、ドクター7と、版定盤8と、ワーク定盤9と、プローブ10と、溶剤吸収手段11と、を備えている。
絶縁性ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、などが挙げられ、なかでも好ましくは、シリコーンゴムが挙げられる。これら絶縁性ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、導電性粉末の導電率は、絶縁性ゴムの導電性、導電性粉末の配合量などに合わせて適宜設定されるため、特に限定されないが、好ましくは、10〜1×107S/cmであり、さらに好ましくは、1×103〜1×107S/cmであり、特に好ましくは、1×105〜1×107S/cmである。導電性粉末の導電率が上記範囲を下回ると、弾性体層12に導電性を付与するために、多量の導電性粉末を配合する必要が生じ、弾性体層12の加工性の低下、硬度の上昇、インキ受理面13の平滑さの低下などの不具合を生じるおそれがある。逆に、導電性粉末の導電率が上記範囲を上回ると、インキの溶剤による弾性体層12の膨潤時と非膨潤時とで、弾性体層12中での導電性粉末同士の距離の変化に伴う弾性体層12の導電性の変化の幅が小さくなり、膨潤度を検知する精度が低下するおそれが生じる。
弾性体層12中での導電性粉末の充填密度は、インキの溶剤による絶縁性ゴムの膨潤の程度、絶縁性ゴムの抵抗率、導電性粉末の導電率などに合わせて適宜設定される。それゆえ、これに限定されないが、例えば、弾性体層1cm3あたりの導電性粉末の含有量として、好ましくは、0.1〜3g/cm3であり、さらに好ましくは、0.3〜2g/cm3であり、特に好ましくは、0.5〜1.5g/cm3である。または、弾性体層12中での導電性粉末同士の平均距離として、好ましくは、0.01〜10μmであり、さらに好ましくは、0.01〜5μmであり、特に好ましくは、0.1〜1μmである。
Δlog ρvB=(log ρv10)−(log ρv0) …(2)
(上記式(1)および式(2)中、log ρv0は、膨潤率が0%であるときの弾性体層の体積抵抗率ρv0[Ω・cm]の対数値を示し、log ρv5は、膨潤率が5%であるときの弾性体層の体積抵抗率ρv5[Ω・cm]の対数値を示し、log ρv10は、膨潤率が10%であるときの弾性体層の体積抵抗率ρv10[Ω・cm]の対数値を示す。)
弾性体層12の膨潤率の増加に対する体積抵抗率の上昇割合を、上記範囲に設定するには、絶縁性ゴムの性状(特に、その導電性)、導電性粉末の性状(特に、その導電率)、弾性体層12中での導電性粉末の配合量や充填密度などの条件を、それぞれ上述の範囲にて適宜設定すればよい。
支持体層14としては、特に限定されず、印刷用ブランケットの支持体層(基材)として使用可能な各種の材料が挙げられる。具体的に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン、脂肪族ポリアミドなどの合成樹脂からなるフィルム、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属からなるシート、例えば、綿、ポリエステル、レーヨンなどの織布または不織布からなる基布に、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴムなどのゴムをゴム糊として含浸させたもの、などが挙げられる。
導線18は、その一方側端部が、電極17に接続され、他方側端部が、後述する抵抗率計に接続される。
インキローラ6およびドクター7は、いずれも、凹版19や被印刷体20の表面に対して離接可能なように、キャリッジ4によって支持されており、フレーム5に沿って移動する。
プローブ10は、待機位置22で待機されている印刷用ブランケット2のインキ受理面13と接触して、弾性体層12の抵抗率を測定する。このプローブ10としては、例えば、四端子法による体積抵抗率の測定が可能な四探針プローブ、二端子法による体積抵抗率の測定が可能な二探針プローブなどが挙げられるが、接触抵抗の影響による測定誤差を解消する観点より、好ましくは、四探針プローブが挙げられる。
図4を参照して、吸引ノズル23は、インキ受理面13と間隔L1を隔てて対向配置されている。また、吸引ノズル23には、吸引ライン24を介して、図示しない真空ポンプが接続されている。この吸引ノズル23でインキ受理面13近傍の空気を連続的に吸引することにより、インキ受理面13近傍が負圧状態となり、インキの溶剤が弾性体層12から吸引ノズル23へと引き抜かれる。その結果、インキ受理面13と直接に接触することなく、かつ、インキ受理面13を加熱することなく、弾性体層12の膨潤率を調節することができる。
印刷工程では、まず、キャリッジ4に支持されたインキローラ6とドクター7とが、フレーム5に沿って凹版19上を移動する。このとき、印刷用ブランケット2は、その外周面と凹版19の表面とが接触しないように、キャリッジ4で保持し、インキローラ6とドクター7とは、インキローラ6の外周面およびドクター7の刃先と、凹版19の表面とが、凹版19上において互いに接触するように、キャリッジ4で保持する。これにより、インキローラ6が、凹版19の凹部にインキを充填し、さらに、ドクター7が、凹部より溢れたインキを凹版19から取り除く。
次いで、ブランケット胴3が回転しながら、フレーム5に沿って被印刷体20上を移動する。このとき、印刷用ブランケット2は、その外周面と被印刷体20の表面とが互いに接触するように、キャリッジ4で保持する。これにより、インキ受理面13に担持されたインキが、被印刷体20上に転写し、被印刷体20上において所望のインキパターンが形成される。
弾性体層12の膨潤率Q(%)は、測定温度を23℃とし、インキの溶剤が浸透していない状態(膨潤前)の弾性体層12の体積V1と、測定時の弾性体層12の体積V2とにより、下記式で定義される。
具体的に、体積抵抗率の測定値に基づいて、弾性体層12の膨潤率Q(%)を算出するには、予め、弾性体層12を23℃で、インキの溶剤に浸漬して、膨潤率Qが既知のサンプルを調製することにより、弾性体層12の膨潤率Qと、体積抵抗率との関係を示す検量線を作成する。こうして、この検量線に基づいて、体積抵抗率の測定値より、弾性体層12の膨潤率Q(%)を算出する。
溶剤吸引工程後、印刷回数Tのカウンタを初期化する(ステップS8)。こうして、上記オフセット印刷方法における一連の工程が終了する。
図6を参照して、このオフセット印刷装置28は、印刷用ブランケット2と、ブランケット胴3と、キャリッジ4と、フレーム5と、インキローラ6と、ドクター7と、版定盤8と、ワーク定盤9と、プローブ10と、溶剤吸収手段29と、を備えている。
溶剤吸収層を形成するゴムおよびエラストマーとしては、印刷に用いられるインキの溶剤に応じて適宜選択されるものであって、特に限定されないが、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどが挙げられる。また、溶剤吸収層を形成するゴムおよびエラストマーは、接触汚染性の低い材料であることが好ましい。具体的には、可塑剤および老化防止剤(より好ましくは、可塑剤、老化防止剤および軟化剤)を含有しない、いわゆる無可塑配合のゴムまたはエラストマー組成物が好適である。
溶剤蒸発手段33は、弾性体層12に浸透したインキの溶剤を弾性体層12から除去するための溶剤除去手段であって、待機位置22で待機されている印刷用ブランケット2のインキ受理面13に近接して配置される送風機34と、ヒータ35とを備えている。
送風機34は、インキ受理面13に対し、5〜15℃の冷風を吹き付けてもよく、あるいは、30〜150℃の温風を吹き付けてもよい。冷風として吹き付ければ、インキ受理面13近傍のインキ溶剤から気化熱を奪うことができ、インキ溶剤を蒸発し易くできる。温風として吹き付ければ、インキ受理面13近傍のインキ溶剤の温度を高めることができ、インキ溶剤を蒸発し易くできる。すなわち、いずれの場合も、吸引効率の向上を図ることができる。
上記オフセット印刷装置32を用いたオフセット印刷方法では、弾性体層12に浸透したインキの溶剤を弾性体層12から除去する溶剤除去工程として、送風機34および/またはヒータ35を用いた溶剤蒸発工程が実行される。
また、上記の説明においては、オフセット印刷装置の溶剤除去手段として、溶剤吸引手段11(図1参照)、溶剤吸収手段29(図6参照)、および溶剤蒸発手段33(図7参照)を、それぞれ択一的に用いた例を挙げて説明したが、これら溶剤除去手段は、2以上備えられていてもよい。この場合において、かかるオフセット印刷装置を用いたオフセット印刷方法では、溶剤吸引工程、溶剤吸収工程、および溶剤蒸発工程を、同時に、または順次実行してもよい。
反転印刷によるオフセット印刷方法を採用する場合には、図5に示す印刷工程(ステップS1)として、例えば、下記(a)〜(d)の各工程を実行すればよい。
(a) 印刷用ブランケット2の表面の印刷領域15において、印刷用ブランケット2の軸線方向のすべての領域にわたってインキの塗布面が形成されるように、印刷用ブランケット2の表面にインキを塗布する塗布工程、
(b) 印刷用ブランケット2の表面に塗布されたインキを乾燥させる乾燥工程、
(c) 印刷用ブランケット2の表面に形成されたインキの塗布面を、所定のパターンを有する印刷版(凹凸版)に押圧することにより、上記印刷版の凸部と接触したインキを、上記印刷用ブランケット2の表面から除去する除去工程、および、
(d) 印刷用ブランケット2の表面において、除去されずに残存したインキを、被印刷体20に転写する転写工程。
上述のオフセット印刷装置およびオフセット印刷方法によれば、インキの溶剤によって膨潤した印刷用ブランケットの膨潤度を、簡易な構成からなる導電性測定手段によって的確に検知することができ、さらに、その検知結果に基づいて、溶剤除去手段を作動させることで、印刷用ブランケットの膨潤度を適切な範囲に調整することができ、ひいては、印刷精度の低下を抑制することができる。それゆえ、上述のオフセット印刷装置およびオフセット印刷方法は、例えば、PDP用電極基板やEL素子用電極基板における電極パターンの形成や、液晶ディスプレイ(LCD)用カラーフィルタのカラーパターンの形成に好適である。
実施例1
凹版オフセット印刷法により、対角42型(42インチ)のPDP用前面板に対し、極微細パターンの印刷形成を実施した。
印刷用ブランケットには、PETフィルムからなる支持体層14上に、シリコーンゴムからなる厚さ300μmの弾性体層12を備えるものを使用した(図2および3参照)。この印刷用ブランケット2において、弾性体層12のゴム硬度は40(デュロメータ硬さ、タイプA、JIS−A型硬度計で測定)、表面粗さは0.1μm(10点平均粗さ)であった。また、この印刷用ブランケット2には、さらに、弾性体層12と支持体層14との間であって、印刷用ブランケット2の厚み方向で非印刷領域16に属する領域に、厚さ18μm、縦10mm、横10mmの銅箔からなる電極17を設けた(図2および3参照)。
オフセット印刷装置には、溶剤吸引手段11を備えるオフセット印刷装置1を用いた(図1参照)。
このため、弾性体層12の膨潤率の上昇の程度に応じて、適宜、溶剤吸引手段11による溶剤吸収工程を実行することで、インキ受理面13の濡れ性を適宜調節することができた。また、これにより、PDP用前面板を1万枚印刷した後においても、前面板の面内(42インチ)における印刷精度を±10μm以内とすることができた。
反転印刷によるオフセット印刷法により、対角32型(32インチ)の液晶カラーフィルタ用基板に対し、極微細パターンの印刷形成を実施した。
印刷版には、液晶カラーフィルタのストライプパターンに相当する凹部と、このストライプパターン以外の部分に相当する凸部と、が設けられているガラス製の凹凸版を使用した。印刷用ブランケットには、実施例1で使用したのと同じものを使用した。インキには、レッド(R)、グリーン(G)およびブルー(B)の3色について、それぞれ、ポリエステル−メラミン樹脂と、有機顔料と、分散剤と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)とを含有するペースト状カラーインキを使用した。
印刷用ブランケットの弾性体層12が、ニッケル微粉末を含有しない常温硬化型付加型シリコーンゴムからなり、乾燥状態の導電性が1×1014Ω・cmであるものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、凹版オフセット印刷法により、対角42型(42インチ)のPDP用前面板に対し、極微細パターンの印刷形成を実施した。
また、溶剤吸引手段11による溶剤吸収工程の実行は、PDP用前面板を10枚印刷する毎に実行したが、印刷ごとに線幅のばらつきや印刷形状の乱れが多発し、不良率が高く、安定した印刷を行うことができなかった。
Claims (7)
- インキ受理面を有し、導電性粉末が分散された絶縁性ゴムからなる弾性体層を含む印刷用ブランケットと、
前記弾性体層の導電性を測定するための導電性測定手段と、
前記導電性測定手段で測定された前記弾性体層の導電性に基づいて、前記弾性体層に浸透したインキの溶剤を前記弾性体層から除去するための溶剤除去手段と、
を備えていることを特徴とする、オフセット印刷装置。 - 前記導電性測定手段が、前記弾性体層の体積抵抗率を測定するための体積抵抗率測定手段であることを特徴とする、請求項1に記載のオフセット印刷装置。
- 前記弾性体層は、
前記膨潤率が0%から5%に上昇したときに、前記弾性体層の体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値の増分Δlog ρvAが、0.903以上であり、
前記膨潤率が0%から10%に上昇したときに、前記弾性体層の体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値の増分Δlog ρvBが、1.903以上であることを特徴とする、請求項2に記載のオフセット印刷装置。 - 前記絶縁性ゴムが、シリコーンゴムであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のオフセット印刷装置。
- 前記溶剤除去手段が、
前記インキ受理面の近傍を負圧下にさせ、前記弾性体層に含まれるインキの溶剤を、前記インキ受理面と非接触状態で吸引するための溶剤吸引手段、
前記インキ受理面に接触されて、前記弾性体層に含まれるインキの溶剤を吸収するための溶剤吸収手段、および、
前記弾性体層を加熱し、前記弾性体層に含まれるインキの溶剤を蒸発させるための溶剤蒸発手段、
からなる群より選ばれる少なくとも1の手段であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のオフセット印刷装置。 - 前記弾性体層の導電性を、前記インキ受理面の非印刷領域で測定することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のオフセット印刷装置。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のオフセット印刷装置を用いて、前記インキ受理面に担持されたインキを被印刷体へ転写する印刷工程と、
前記印刷工程後の前記弾性体層の導電性を、前記導電性測定手段で測定する導電性測定工程と、
前記導電性測定工程で測定された前記弾性体層の導電性に基づいて、前記弾性体層に浸透したインキの溶剤を前記弾性体層から除去する溶剤除去工程と、を有していることを特徴とする、オフセット印刷方法。
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