しかし、従来の方法では、蓄電池の放電した電力を総て試験用負荷により消費し、消費した電力を別途用意した充電器で充電することとしているため、電力が無駄になってしまう。また、試験用負荷の接続により、負荷変動を生じさせることから測定した容量の値が正確ではなくなるという問題も生じる。
また、試験中に停電し、蓄電池群から負荷に電力を供給する必要が生じた場合には、試験中の蓄電池は、容量試験中に放電した分だけその容量が少なくなっているため放電時間が短い。また、容量試験中の停電対策としてダイオードを蓄電池に並列に挿入するため、停電後に試験中の蓄電池の電圧が放電の途中でゼロボルトとなって放電できなくなったときには、試験中の蓄電池を除く蓄電池群からの電力はダイオードを介して負荷に供給されることになり、試験中の蓄電池の分の電力が負荷に供給されず、蓄電池群から負荷への電力の供給時間が短くなる。
そこで、本発明では、蓄電池の電力を有効に使用し且つ試験中に停電しても蓄電池群の電力を効率よく使用できる蓄電池放電制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者は、蓄電池に放電させるときに蓄電池が放電した電力を負荷により消費するのではなく、蓄積することとした。また、試験中に停電しても蓄電池群の電力を効率よく使用するために、蓄積した電力を蓄電池群に接続された負荷に対して供給するようにした。
具体的には、本願第一発明に係る蓄電池放電制御装置は、複数の蓄電池が直列に接続された蓄電池群のうちいずれか1の蓄電池を選択する蓄電池選択手段と、前記蓄電池選択手段の選択した前記1の蓄電池に一定電流で放電させた電力を蓄積し、蓄積した前記電力を前記1の蓄電池に戻すように充電し、及び蓄積した前記電力を前記蓄電池群に接続された負荷に供給する充放電手段と、前記1の蓄電池の電圧が低下して前記1の蓄電池の放電の限界である放電限界電圧となったときに前記1の蓄電池の電圧を略ゼロボルトに維持するように前記蓄電池群のうち前記1の蓄電池を除く他の蓄電池から前記1の蓄電池に流れ込む電流をバイパスさせる電流バイパス手段と、前記充放電手段における前記放電の開始、前記充電の開始、及び前記負荷への電力の供給の開始、並びに前記電流バイパス手段における前記バイパスの動作を制御する動作制御手段と、を備える蓄電池放電制御装置である。
本願第一発明では、充放電手段により蓄電池に放電させた電力を蓄積する。また、この蓄積した電力を戻すように蓄電池に充電する。また、電力を蓄積するため、蓄積した電力は動作制御手段等の他の手段への供給電力としても利用できる。そのため、本発明では、従来のように蓄電池が放電した電力を試験用負荷により消費することがないので、電力を有効に活用することができる。また、充放電手段に蓄積された電力を蓄電池群に接続された負荷に供給できるため、例えば停電時には、他の蓄電池に悪影響を与えることなく試験中の蓄電池の残存量及び充放電手段に蓄積された電力の蓄積分を含めて使用して蓄電池群に接続された負荷への電力供給を継続することがきる。そのため、蓄電池群に接続された負荷への電力供給時間を増加させることができ、負荷に対する信頼性を向上させることができる。また、電流バイパス手段により電流をバイパスさせて試験中の蓄電池の電圧を略ゼロボルトに維持するため、試験中の蓄電池が破壊するほどの過度な逆電圧が試験中の蓄電池に印加されることを防止することができると共に、逆バイアスされる電圧を低く抑えて、蓄電池群への影響を小さくすることができる。
上記第一発明に係る蓄電池放電制御装置において、前記充放電手段は、蓄積した前記電力の一部を前記動作制御手段への駆動電力として供給することが望ましい。
本発明では、充放電手段において蓄積した電力の一部を動作制御手段への駆動電力として供給することにより、蓄電池が放電した電力を有効活用できると共に、試験中の停電の際にも蓄電池放電制御装置を停止させることなく駆動することもできるので蓄電池放電制御装置に対する信頼性を向上させることができる。
また、上記第一発明に係る蓄電池放電制御装置において、前記充放電手段は、前記放電により前記1の蓄電池から出力される前記電力を蓄積する蓄電回路と、前記1の蓄電池に放電させるときに前記1の蓄電池と前記蓄電回路との間で前記蓄電回路の電圧に応じて前記一定電流となるように前記1の蓄電池からの電圧を昇圧して前記1の蓄電池からの前記電力を前記蓄電回路に出力する昇圧回路と、を備えることが望ましい。
本発明では、昇圧回路により蓄電回路に適合した電圧まで蓄電池の電圧を昇圧して蓄電池からの電力を蓄電回路に出力するため、一定電流に維持したまま蓄電池に十分放電させることができる。
また、上記第一発明に係る蓄電池放電制御装置において、前記充放電手段は、前記1の蓄電池に充電するときに前記昇圧回路を導通させて前記蓄電回路に蓄積された前記電力を前記1の蓄電池に移動させる導通回路をさらに備えることが望ましい。
本発明では、昇圧回路を導通させて蓄電回路に蓄積された電力を蓄電池に移動させるため、複雑な回路構成を採ることなく、蓄電回路に蓄積された電力を効率的に蓄電池に充電することができる。
また、上記第一発明に係る蓄電池放電制御装置において、前記充放電手段は、前記放電により前記1の蓄電池から出力される前記電力を蓄積する蓄電回路と、前記1の蓄電池に放電させるときに前記1の蓄電池から放電される前記電力のうち前記蓄電回路の許容する蓄積量を超えた分を前記一定電流に維持しつつ放電させる放電回路と、を備えることが望ましい。
本発明では、放電回路により蓄電回路の許容する蓄積量を超えた分を一定電流に維持しつつ蓄電池に放電させるため、蓄電池の容量が蓄電回路の容量より大きくても蓄電回路や他の回路を破壊させることなく蓄電池に放電させることができる。
また、上記第一発明に係る蓄電池放電制御装置において、前記充放電手段は、前記放電又は前記充電により前記充放電手段と前記1の蓄電池との間で授受する前記電力を蓄積する複数の蓄電部と、前記1の蓄電池に放電させるときに前記1の蓄電池の電圧が前記複数の蓄電部に共通して印加されるように前記複数の蓄電部のそれぞれを並列接続とし且つ前記1の蓄電池に充電するときに前記複数の蓄電部のそれぞれの電圧が加算されて前記1の蓄電池に印加されるように前記複数の蓄電部のそれぞれを直列接続として前記複数の蓄電部同士の接続を切替える接続切替手段と、を備えることが望ましい。
本発明では、接続切替手段により蓄電池の放電時には複数の蓄電部を並列接続とするため、各蓄電部への印加電圧を共通にして蓄電池が放電する電力を複数の蓄電部においてなるべく多く蓄積することができる。一方、接続切替手段により蓄電池の充電時には複数の蓄電部を直列接続とするため、蓄電部に蓄積された電力を高電圧で放電させ蓄電池を初期充電できるため短時間で回復充電をすることができる。
また、上記第一発明に係る蓄電池放電制御装置において、前記充放電手段は、前記1の蓄電池への前記充電の不足分を補充するように前記1の蓄電池に充電する充電回路をさらに備えることが望ましい。
本発明では、充電回路により蓄電池への充電の不足分を補充するように充電するため、蓄電池の放電により充放電手段に蓄積された電力を他の回路へ利用したとしても、蓄電池の容量を回復させることができる。
また、上記第一発明に係る蓄電池放電制御装置において、前記1の蓄電池から前記充放電手段に放電される前記電力の移動量を積算して前記1の蓄電池の容量を測定する容量測定手段をさらに備え、前記動作制御手段は、前記容量測定手段における前記測定の動作を制御することが望ましい。
本発明では、容量測定手段により蓄電池の放電する電力を積算して蓄電池の容量を測定するため、蓄電池の容量試験を実行することができる。
本発明では、蓄電池の電力を有効に使用し且つ試験中に停電しても蓄電池群の電力を効率よく使用できる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
図1に、本実施形態に係る蓄電池放電制御装置の概略構成図を示す。
本実施形態に係る蓄電池放電制御装置100は、蓄電池41cを選択する蓄電池選択手段20と、蓄電池41cに一定電流で放電させた電力を蓄積し、及び蓄積した電力を蓄電池41cに戻すように充電する充放電手段21と、蓄電池41cの電圧を略ゼロボルトに維持するように蓄電池41cに流れ込む電流をバイパスさせる電流バイパス手段としての半導体スイッチ22と、充放電手段21及び半導体スイッチ22の動作を制御する動作制御手段としての制御回路23と、を備える。また、本実施形態では、蓄電池41cと充放電手段21との間で授受される電力量を検出する容量測定手段としての充放電量検出回路38を備える。
蓄電池選択手段20は、複数の蓄電池41a、41b、41c、41d、41eが直列に接続された蓄電池群40のうちいずれか1の蓄電池を選択する。図1では、蓄電池選択手段20が蓄電池41cを選択している形態を示している。ここで、蓄電池群40は、例えば各出力電圧が2Vの蓄電池を24個直列に接続したものが考えられる。蓄電池群40は、負荷42としての交換機等の装置のバックアップ用に使用できる。通常、蓄電池群40は、商用電源10の稼動時には充電回路43により充電された状態を保っており、商用電源10の停電時には蓄電池群40からの電力により負荷42を駆動させる。
蓄電池選択手段20として、例えば、蓄電池の容量試験者が蓄電池群40からいずれか1の蓄電池41cを選択して蓄電池41cの陽極電極及び陰極電極にプローブを挟むようにして選択することとしてもよい。或いは、蓄電池群40に接続された総ての蓄電池41a、41b、41c、41d、41eの陽極電極及び陰極電極に予めプローブを接続しておき蓄電池選択手段20内に備えたスイッチ(不図示)により電気的な接続を切替えて1の蓄電池41cを選択することとしてもよい。いずれの場合でも、蓄電池放電制御装置100は、蓄電池選択手段20により蓄電池群40から1の蓄電池41cを別途取り出すことなく容量試験を行うことができる。
充放電手段21は、後述の制御回路23からの放電開始信号の入力により、蓄電池選択手段20の選択した蓄電池41cに一定電流で放電させた電力を蓄積する。また、蓄電池41cの容量測定後には、後述の制御回路23からの充電開始信号の入力により、蓄積した電力を蓄電池41cに戻すようにして蓄電池41cを充電する。具体的には、充放電手段21は、蓄電部としてのコンデンサ35、36を備える蓄電回路31を備え、蓄電池41cの放電又は蓄電池41cへの充電により充放電手段21と蓄電池41cとの間で授受する電力を蓄電回路31において蓄積する。本実施形態では、蓄電回路31は、2つのコンデンサ35、36を備えているが、コンデンサの接続数はいくつあってもよい。例えば、蓄電池41cの最大容量に併せて蓄電池41cの電力を総て蓄積できる分のコンデンサを備えるとよい。また、本実施形態では、蓄電回路31としてコンデンサ35、36を備えているが、蓄電回路31として蓄電池41cの放電した電力を蓄積する蓄電池を適用してもよい。
このように、蓄電池放電制御装置100は、充放電手段21により蓄電池41cに放電させた電力を蓄電回路31に蓄積する。また、この蓄積した電力を戻すように蓄電池41cに充電する。また、電力を蓄積するため、蓄積した電力は後述の制御回路23等の他の手段や回路への供給電力としても利用できる。そのため、従来のように蓄電池41cが放電した電力を試験用負荷により消費することがないので、電力を有効に活用することができる。本実施形態では、充放電手段21は、蓄電回路31に蓄積した電力の一部を後述の制御回路23への駆動電力として供給することとした。詳細は、後述する。
また、充放電手段21は、蓄電池41cに放電させるときに蓄電池41cからの電流が一定となるように蓄電池41cからの電圧を昇圧して蓄電池41cからの電力を出力する昇圧回路32を備える。昇圧回路32は、例えば、蓄電池41cからの電力を後述の制御回路23からの放電開始信号の入力に応じてトランジスタによりスイッチングして、インダクタの誘導起電力を発生させることにより昇圧することができる。そして、昇圧量を可変することにより蓄電池41cからの電流を一定に維持することができる。
蓄電池41cは、放電が進行すると蓄電池41cの残存容量に応じて電圧が低下する。その場合、蓄電池41cの電圧が蓄電回路31内のコンデンサ35、36の電圧と平衡状態となり、蓄電池41cの放電が停止してしまう。そうすると、蓄電池放電制御装置100は、正確な放電量を算出することができない。そのため、昇圧回路32は、蓄電池41cに放電させるときに蓄電池41cからの電流を一定電流とするように蓄電池41cからの電圧を昇圧して蓄電池41cからの電力を出力する。このように、蓄電池放電制御装置100は、昇圧回路32により蓄電回路31に適合した電圧まで蓄電池41cの電圧を昇圧して蓄電池41cからの電力を蓄電回路31に出力するため、一定電流に維持したまま蓄電池41cから十分放電させることができる。
また、充放電手段21は、蓄電池41cに充電するときに昇圧回路32を導通させて蓄電回路31に蓄積された電力を蓄電池41cに移動させる導通回路としてのスイッチ33を備える。スイッチ33は、例えば、トランジスタ等の半導体により電気的に導通と遮断を切替えるスイッチや、配線を開閉することにより機械的に導通と遮断を切替えるスイッチを適用することができる。スイッチ33は、後述の制御回路23からの切替信号の入力に応じて導通と遮断を切替える。このように、蓄電池放電制御装置100は、昇圧回路32を導通させて蓄電回路31に蓄積された電力を蓄電池41cに移動させるため、複雑な回路構成を採ることなく、蓄電回路31に蓄積された電力を効率的に蓄電池41cに充電することができる。
また、充放電手段21は、蓄電池41cに放電させるときに蓄電池41cから放電される電力のうち蓄電回路31の許容する蓄積量を超えた分を一定電流に維持しつつ放電させる放電回路としての定電圧回路34を備える。本実施形態では、定電圧回路34は、半導体スイッチ54と、蓄電池41cから放電された電力を消費するダミー抵抗55と、を備える。半導体スイッチ54は、例えば、FET(Field Effect Transistor)のゲートへの信号入力によりソース−ドレイン間を導通又は遮断させることのできる半導体素子である。蓄電池41cの内部抵抗がコンデンサ35、36の内部抵抗よりも大きい場合には、蓄電池41cが放電した電力を蓄積しきれない場合がある。この場合、定電圧回路34により蓄電回路31の許容する蓄積量を超えた分を一定電流に維持しつつ放電させる。例えば、後述の制御回路23により蓄電回路31の両端電圧を検出し、蓄電回路31の定格電圧となったときに、半導体スイッチ54を導通させ、蓄電池41cからの電流をダミー抵抗55により消費させる。また、本実施形態では、定電圧回路34として半導体スイッチ54及びダミー抵抗55からなるものを適用しているため、100Aの大電流を流して消費させることができる。一方、1A程度の電流を流して消費させる場合には、定電圧回路34としてツェナーダイオードを適用してもよい。このように蓄電池放電制御装置100は、定電圧回路34により蓄電回路31の許容する蓄積量を超えた分を一定電流に維持しつつ蓄電池41cから放電させるため、蓄電池41cの容量が蓄電回路31の容量より大きくても蓄電回路31や他の回路を破壊させることなく蓄電池から放電させることができる。
また、充放電手段21は、蓄電部としてのコンデンサ35、36の接続を切替える接続切替手段としてのスイッチ51、52、53を備える。スイッチ51、52、53は、例えば、トランジスタ等の半導体により電気的に導通と遮断を切替えるスイッチや、配線を開閉することにより機械的に導通と遮断を切替えるスイッチを適用することができる。ここで、充放電手段21は、後述の制御回路23からの切替信号の入力に応じて蓄電池41cに放電させるときは、スイッチ51及びスイッチ53を導通させ且つスイッチ52を遮断する。一方、蓄電池41cに充電するときは、制御回路23からの切替信号の入力に応じてスイッチ51及びスイッチ53を遮断し且つスイッチ52を導通させる。このようにしてスイッチ51、52、53は、蓄電池41cに放電させるときに蓄電池41cの電圧が複数のコンデンサ35、36に共通して印加されるように複数のコンデンサ35、36のそれぞれを並列接続とする。また、蓄電池41cに充電するときに複数のコンデンサ35、36のそれぞれの電圧が加算されて蓄電池41cに印加されるように複数のコンデンサ35、36のそれぞれを直列接続として複数のコンデンサ35、36同士の接続を切替える。なお、本実施形態では、制御手段23からの切替信号の入力に応じて自動でスイッチ51、52、53の切替を行うこととしているが、放電時又は充電時において試験者が手動で行うこととしてもよい。
このように蓄電池放電制御装置100は、スイッチ51、52、53によりコンデンサ35、36の接続を切替えることで、蓄電池41cの放電時には複数のコンデンサ35、36を並列接続とするため、各コンデンサ35、36への印加電圧を共通にして蓄電池41cが放電する電力を複数のコンデンサ35、36においてなるべく多く蓄積することができる。一方、スイッチ51、52、53により蓄電池41cの充電時には複数のコンデンサ35、36を直列接続とするため、コンデンサ35、36に蓄積された電力を高電圧で放電させ蓄電池を初期充電するため短時間で回復充電をすることができる。但し、初期充電量は、蓄電池41cが破壊されないように蓄電池41cの電圧を後述の制御回路23により監視し、蓄電池41cが過電圧値に達するまでとする。
なお、本実施形態では、図1において蓄電部としてのコンデンサが2つの形態を示したため、コンデンサの数に併せてスイッチを3つ備えているが、蓄電部としてのコンデンサの数に合わせてスイッチの数を増やして各コンデンサの接続を蓄電池41cの放電の際に並列とし、充電の際に直列とするように接続することができる。
また、本実施形態では、充放電手段21は、蓄電池41cへの充電の不足分を補充するように蓄電池41cに充電する充電回路25を備える。充放電手段21は、蓄電池41cを充電するときに、まず蓄電池41cの放電により蓄積した蓄電回路31からの電力を蓄電池41cに充電する。そして、蓄電回路31からの電力では蓄電池41cの充電が不足するときに充電回路25により不足分を補充するように蓄電池41cに充電する。このように蓄電池放電制御装置100は、充電回路25により蓄電池41cへの充電の不足分を補充するように充電するため、蓄電池41cの放電により蓄電回路31に蓄積された電力を他の回路へ利用したとしても、蓄電池41cを回復させることができる。
半導体スイッチ22は、図1に示すように、半導体スイッチ22の内部ダイオード56のカソード側が蓄電池41cの陽極側に接続され、ゲート(G)への信号入力によりソース(S)−ドレイン(D)間を導通又は遮断させる。本実施形態では、半導体スイッチ22は、FET(Nチャンネル)が適用されている。ここで、例えば、商用電源10が停電すると、充電回路43からの充電が停止するため、負荷42は、蓄電池群40からの電力により駆動することになる。仮に半導体スイッチ22を設けない場合、蓄電池41cの放電の状況により蓄電池41cの容量が他の蓄電池41a、41b、41d、41eの容量より低下していると蓄電池41cは、放電の途中でゼロボルトとなって放電できなくなる。そして、蓄電池41cは、これに起因して他の蓄電池41a、41b、41d、41eからの逆充電を受ける場合があり劣化するおそれがある。また、蓄電池群40は、蓄電池41cが他の蓄電池41a、41b、41d、41eから逆充電されると一気に電圧が低下し負荷42に悪影響を与える。そのため、これを防止しなくてはならない。
そこで、本実施形態では、電流バイパス手段としての半導体スイッチ22を蓄電池41cに並列に接続することにした。本実施形態では、半導体スイッチ22は、後述の制御回路23からのバイパス開始信号により導通状態となり蓄電池41cに流れ込む電流をバイパスさせる。これにより、半導体スイッチ22は、蓄電池41cの電圧が低下して蓄電池41cの放電限界電圧となったときに蓄電池41cの電圧を略ゼロボルトに維持するように蓄電池群40のうち蓄電池41cを除く他の蓄電池41a、41b、41d、41eから蓄電池41cに流れ込む電流をバイパスさせる。この場合、制御回路23が蓄電池41cの電圧を検出することにより実現できる。ここで、「放電限界電圧」は、蓄電池41cの容量が少なくなって蓄電池41cの電圧がゼロボルト程度となったときの電圧をいう。実施形態では、蓄電池41cの電圧が低下してゼロボルトになると蓄電池41cが他の蓄電池41a、41b、41d、41eから逆充電を受け始め、蓄電池41cの電圧は、半導体スイッチ22の内部ダイオード56の順方向電圧となるまで低下する。そのため、本実施形態では、放電限界電圧は、ゼロボルトとなってから半導体スイッチ22の内部ダイオード56の順方向電圧となるまでの間に設定するとよい。なお、放電限界電圧は、ゼロボルト程度であれば、ゼロボルト以上であってもよい。また、「略ゼロボルト」は、ゼロボルト以下でゼロボルトに近く、他の蓄電池41a、41b、41d、41eへの影響が小さい電圧をいい、本実施形態では、半導体スイッチ22を導通させたときの両端電圧程度となる。また、本実施形態では、電流バイパス手段として半導体スイッチ22を適用するが、半導体スイッチ22であるFETは、両端電圧が低いため、蓄電池41cを略ゼロボルトで導通させた状態にすることができる。そのため、蓄電池41cへの逆充電を防止するか、又はたとえ逆充電が生じたとしても蓄電池41cの許容範囲にとどめることができると共に、逆バイアスされる電圧を低く抑えて、蓄電池群40への影響を小さくすることができる。
また、蓄電池41cの電圧を略ゼロボルトに維持するだけでは蓄電池群40から負荷42への印加電圧は蓄電池41cの電圧分だけ減少してしまうので、蓄電池群40から負荷42への電力の供給時間が短くなってしまう。そこで、本実施形態では、蓄電池放電制御装置100は、蓄電池41cが放電限界電圧になるまでの間に、スイッチ33を導通させることにより、蓄電池41cの放電により蓄電回路31に蓄積された電力を負荷42に供給して、蓄電池群40における蓄電池41cの電圧低下分を補うことができる。
このように、蓄電池放電制御装置100は、商用電源10の停電時においても半導体スイッチ22により電流をバイパスさせて蓄電池41cの電圧を略ゼロボルトに維持するので、停電の際に、蓄電池41cが破壊するほどの過度な逆電圧が試験中の蓄電池に印加されることを防止することができると共に、逆バイアスされる電圧を低く抑えて、蓄電池群への影響を小さくすることができる。さらに、蓄電池41cが放電限界電圧になるまでの間に、充放電手段21に蓄積された電力を蓄電池群40に接続された負荷42に供給できるため、停電時には、他の蓄電池41a、41b、41d、41eに悪影響を与えることなく蓄電池41cの残存量及び充放電手段21に蓄積された電力の蓄積分を含めて使用して蓄電池群40に接続された負荷42への電力供給を継続することがきる。そのため、蓄電池放電制御装置100は、蓄電池群40に接続された負荷42への電力供給時間を増加させることができ、負荷42に対する信頼性を向上させることができる。
充放電量検出回路38は、蓄電池41cと充放電手段21との間で授受される電力の移動量を検出し積算することにより、蓄電池41cから充放電手段21への電力の移動量及び充放電手段21から蓄電池41cへの電力の移動量を算出する。そして、その算出した結果を制御回路23に出力する。これにより蓄電池放電制御装置100は、充放電量検出回路38により制御回路23に制御情報を与えて装置全体の動作制御を可能とすると共に、蓄電池41cの放電量を測定できるため、蓄電池の容量を測定する容量試験を実行することができる。また、充放電量検出回路38は、蓄電池41cと充放電手段21との間で授受される電流を検出して制御回路23に制御情報を与えることもできる。
制御回路23は、電源回路11からの直流電力により駆動する。ここで、電源回路11は、商用電源10からの交流電力を直流電力に変換して制御回路23に出力する。制御回路23は、電源回路11からの直流電力を充放電手段21の動作電力として供給すると共に、充放電手段21による放電の開始、充電の開始の動作及び負荷42への電力の供給の動作、半導体スイッチ22によるバイパスの動作、並びに充電回路25による蓄電池41cへの充電の動作を制御する。また、本実施形態では、制御回路23は、充放電手段21の蓄電回路31に接続されており、蓄電回路31に蓄積された電力の一部を駆動電力として使用する。例えば、制御回路23は、電源回路11からの電力供給を監視し、商用電源10の停電を検出したときに蓄電回路31からの電力を動作電力として使用することができる。或いは、制御回路23は、電源回路11からの電力供給の有無に関わらず蓄電回路31からの電力供給を常に受けるように蓄電回路31と接続されることとしてもよい。このように蓄電池放電制御装置100は、充放電手段21において蓄積した電力の一部を制御回路23への駆動電力として供給することにより、蓄電池41cが放電した電力を有効活用できると共に、試験中の停電の際にも蓄電池放電制御装置100を停止させることなく駆動することもできるので蓄電池放電制御装置100に対する信頼性を向上させることができる。
ここで、蓄電池放電制御装置100の動作方法について説明する。
蓄電池放電制御装置100は、蓄電池選択手段20により蓄電池群40の中からいずれか1の蓄電池41cを選択し、これと接続する。この際、前述したように蓄電池選択手段20として試験者が自らプローブを蓄電池41cに接続することとしてもよいし、予め蓄電池群40に接続されたプローブから制御回路23からの入力信号(不図示)に応じていずれか1の蓄電池41cを選択することとしてもよい。
蓄電池放電制御装置100は、蓄電池選択手段20と蓄電池41cとを接続した状態で、制御回路23から充放電手段21に放電開始信号を出力する。充放電手段21は、制御回路23からの放電開始信号の入力に応じて蓄電池41cに放電させる。この場合、充放電手段21は、接続切替手段37のスイッチ51、52、53の導通/遮断を切替えてコンデンサ35、36を蓄電池41cに対してそれぞれ並列となるように接続する。また、スイッチ33を遮断状態とし、昇圧回路32を駆動させて蓄電池41cからの電流が一定電流となるように蓄電池41cからの電圧を昇圧する。これにより、充放電手段21は、蓄電池41cの放電する電力を蓄電回路31のコンデンサ35、36に蓄積する。
この際、定電圧回路34は、蓄電池41cからの電力により蓄電回路31が飽和し両端電圧が蓄電回路31の定格電圧となったときに半導体スイッチ54を導通させて蓄電池41cからの電流をダミー抵抗55に消費させる。本実施形態では、制御回路23により検出した蓄電回路31の両端電圧を基に制御回路23が半導体スイッチ54を導通させる。
また、蓄電池41cに放電させているときに、充放電量検出回路38は、蓄電池41cが放出した電力量を検出し積算して、積算結果に応じた信号を制御回路23に出力する。また、蓄電池41cが放出する電流を検出して制御回路23に出力する。
制御回路23は、充放電量検出回路38から入力される信号及び蓄電池41cの電圧を検出して昇圧回路32での昇圧量を制御する。具体的には、蓄電池41cの放電が進行すると蓄電池41cの電圧及び電流が変動する。制御回路23は、この変動量を充放電量検出回路38から入力される信号及び蓄電池41cの電圧から読み取り蓄電池41cからの電流が一定となるように昇圧回路32での昇圧量を調整する。例えば、昇圧回路32として前述のようにトランジスタによりスイッチングして、インダクタの誘導起電力を発生させることにより昇圧する回路を適用した場合には、スイッチングのパルス幅を可変することで昇圧量を調整することができる。
このようにして、制御回路23は、蓄電池41cの電圧を検出して蓄電池41cの電圧が終止電圧となるまで充放電手段21に放電の動作を制御する。
ここで、蓄電池41cに放電させているときに、商用電源10が停止する等の場合において蓄電池41cの電圧が低下するときには、制御回路23は、蓄電池41cから検出した電圧が蓄電池41cの放電限界電圧となったときに半導体スイッチ22にバイパス開始信号を出力する。半導体スイッチ22は、バイパス開始信号の入力に応じて、蓄電池群40のうち蓄電池41cを除く他の蓄電池41a、41b、41d、41eから蓄電池41cに流れ込む電流をバイパスさせる。これにより、半導体スイッチ22が導通している間、蓄電池41cの両端電圧を半導体スイッチ22の両端電圧程度、つまり蓄電池41cを略ゼロボルトに維持することができる。また、制御回路23は、蓄電池41cが放電限界電圧になるまでの間に、昇圧回路32をストップさせると共に、スイッチ33に導通開始信号を入力して蓄電回路31に蓄積された電力を負荷42に供給させることにより、蓄電池群40に対する蓄電池41cの電圧降下分を補うことができる。
本実施形態では、制御回路23は、蓄電回路31からの電力の一部を駆動電力として使用しているため、商用電源10の停止時にも充放電手段21や半導体スイッチ22への電力の供給や制御信号の出力を維持でき、蓄電池放電制御装置100の完全停止を防止することができる。なお、蓄電池41cの放電の初期の状態で商用電源10が停止した場合には、蓄電回路31の電力の蓄積量があまり多くないため、蓄電回路31からの電力では蓄電池放電制御装置100を駆動させることができない場合も考えられる。しかし、この場合、蓄電池41cの容量が十分にあるので他の蓄電池41a、41b、41d、41eから蓄電池41cへの逆充電が生じるおそれもなく、また、他の蓄電池41a、41b、41d、41eへの悪影響がなく負荷42に電力を供給できるので問題とならないと考えられる。
制御回路23は、蓄電池41cの電圧を検出して蓄電池41cの電圧が終止電圧となったときに充放電手段21に放電の動作停止信号を出力する。充放電手段21は、制御回路23からの放電停止信号の入力に応じて蓄電池41cの放電を停止させる。蓄電池41cの放電が停止すると充放電量検出回路38は、積算した電力量に基づいて蓄電池41cの容量を算出することができる。
次に、蓄電池放電制御装置100は、蓄電池選択手段20と蓄電池41cとを接続した状態で、制御回路23から充放電手段21に充電開始信号を出力する。なお、蓄電池41cの放電から充電への切替は、制御手段23が判断して自動で行うこととしてもよいし、試験者が手動で行うこととしてもよい。充放電手段21は、制御回路23からの充電開始信号の入力に応じて蓄電池41cに充電する。この場合、充放電手段21は、接続切替手段37のスイッチ51、52、53の導通/遮断を切替えてコンデンサ35、36を蓄電池41cに対してそれぞれ直列となるように接続する。また、スイッチ33を導通状態とし、昇圧回路32を導通させる。これにより、充放電手段21は、蓄電回路31のコンデンサ35、36に蓄積された電力を蓄電池41cに戻すように充電する。この際、制御回路23は、蓄電池41cが破壊されないように蓄電池41cの電圧を監視し、蓄電池41cが過電圧値に達した場合には、蓄電池41cへの印加電圧を下げるようにスイッチ51、52、53を例えば並列接続に切替える。
充放電量検出回路38は、蓄電池41cに充電した電力量を検出し積算して、積算結果に応じた信号を制御回路23に出力する。
制御回路23は、充放電量検出回路38から入力される信号及び蓄電池41cの電圧を検出して蓄電回路31に蓄積された電力を総て蓄電池41cに充電し終わると充電回路25に充電開始信号を出力する。この場合、制御回路23は、充放電手段21内に備えた不図示のスイッチに信号を出力し、昇圧回路32、スイッチ33、定電圧回路34及び蓄電回路31から充電回路25を遮断することとしてもよい。このようにすることで、充電回路25からの電力を効率的に蓄電池41cに充電することができる。なお、蓄電回路31に蓄積された電力は、放電させる前に蓄電池41cに残存していた容量を超えることはないので蓄電回路31に蓄積された電力を総て蓄電池41cに充電し終わった時点で充電回路25に充電開始信号を出力することとしてもよいが、蓄電池41cへの電力の移動量から蓄電池41cへの充電量を判断した後に蓄電池41cへの充電が不十分の場合に充電回路25に充電開始信号を出力することとしてもよい。これにより、蓄電池41cの破壊を防ぐことができる。
充電回路25は、制御回路23からの充電開始信号の入力に応じて電力を出力する。この際、充放電量検出回路38は、蓄電池41cに充電した電力量を検出し積算して、積算結果に応じた信号を制御回路23に出力する。そして、制御回路23は、蓄電池41cへの充電量を判断して蓄電池41cの充電が完了したときに充電回路25に充電停止信号を出力する。充電回路25は、制御回路23からの充電停止信号の入力に応じて蓄電池41cへの電力の出力を停止する。これにより、充電回路25は、蓄電池41cへの充電の不足分を補充するように充電することができる。
このようにして、制御回路23は、充放電手段21に充電の動作を制御する。
ここで、蓄電池41cに充電しているときに、商用電源10が停止する等の場合において蓄電池41cの電圧が低下するときには、制御回路23は、蓄電池41cから検出した電圧が蓄電池41cの放電限界電圧となったときに半導体スイッチ22にバイパス開始信号を出力する。半導体スイッチ22は、バイパス開始信号の入力に応じて、蓄電池群40のうち蓄電池41cを除く他の蓄電池41a、41b、41d、41eから蓄電池41cに流れ込む電流をバイパスさせる。これにより、半導体スイッチ22が導通している間、蓄電池41cの両端電圧を半導体スイッチ22の両端電圧程度、つまり蓄電池41cを略ゼロボルトに維持することができる。また、蓄電回路31に蓄積した電力が残っている場合には、蓄電池41cが放電限界電圧になるまでの間、スイッチ33の導通状態を維持したまま、蓄電回路31に蓄積された分の電力を負荷42に供給して、蓄電池群40に対する蓄電池41cの電圧降下分を補うことができる。一方、蓄電回路31に蓄積した電力が残っておらず、蓄電池41cが充電回路25から充電されている場合には、蓄電池41cは停電により充電回路25からの充電は受けられないが、すでに蓄電池41cはある程度充電されている。そのため、蓄電池41cは、他の蓄電池41a、41b、41d、41eと同様に電力を負荷42に供給することになる。この場合でも、制御回路23は、蓄電池41cから検出した電圧が蓄電池41cの放電限界電圧となったときに半導体スイッチ22にバイパス開始信号を出力して蓄電池41cへの電流をバイパスさせる。
本実施形態では、制御回路23は、蓄電回路31からの電力の一部を駆動電力として使用しているため、商用電源10の停止時にも充放電手段21や半導体スイッチ22への電力の供給や制御信号の出力を維持でき、蓄電池放電制御装置100の完全停止を防止することができる。なお、蓄電池41cの充電の終期の状態で商用電源10が停止した場合には、蓄電回路31の電力の蓄積量が残りわずかであるため、蓄電回路31からの電力では蓄電池放電制御装置100を駆動させることができない場合も考えられる。しかし、この場合、蓄電池41cの容量が既に十分にあるので他の蓄電池41a、41b、41d、41eから蓄電池41cへの逆充電が生じるおそれもなく、また、他の蓄電池41a、41b、41d、41eへの悪影響がなく負荷42に電力を供給できるので問題とならないと考えられる。