JP4992344B2 - 熱疲労特性に優れた金型用鋼 - Google Patents

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Description

この発明はプラスチックやゴムの射出成形,ダイカスト,鍛造等の金型に適用して好適な金型用鋼に関し、特に熱疲労特性に優れた金型用鋼に関する。
従来、プラスチックやゴムの射出成形品,ダイカスト品,鍛造品等の製品コストに占める金型コストの比率は大きく、それら製品のコスト低減を図る上で金型コストの低減は必須である。
而して金型に要するコストは、金型寿命の長短によって左右される。即ち金型寿命が長ければ、1つの金型にて製造できる製品の個数が多くなり、必然的に製品1個あたりに占める金型コストの比率は小となる。
逆に金型寿命が短ければ、製品1個あたりに占める金型コストの比率は大となる。
また金型の長寿命化は、省資源や環境負荷軽減の観点からも強く望まれている。
ところで近年、生産性向上と短納期化の観点から製品成形のハイサイクル化が進んできており、ダイカストを例にとると、ハイサイクル対応の鋳造機も開発されるようになってきた。
ところがこのハイサイクル化は、金型寿命を短寿命化する大きな要因となる。
この点をダイカストを例にとって以下説明する。
ダイカストとは、金型に形成されたキャビティ(成形空間)内に金属溶湯を充填し、凝固させて取り出す鋳造方法であり、キャビティの形状によって鋳造品の形状を自由に制御でき、生産性が高い特長を有する。特にAl合金のダイカストは、自動車産業の発展に呼応して大きく成長してきた。
このダイカストの製造工程は、給湯→射出→凝固→型開き→製品取出し→離型剤塗布→型締め→給湯の順で行われ、この場合において離型剤塗布は、高温の金属との接触によって上昇した金型表面温度を低下させると同時に鋳造製品の取出しを容易にするための皮膜処理の意味を持つ重要な工程である。
このようなダイカストにおいて、製品製造のハイサイクル化のためには金型の冷却速度を高めることが重要である。
ダイカスト製品の製造を単純にハイサイクル化した場合、金型の冷却時間が十分に確保されないまま(型の温度が下がりきらないうちに)、次の鋳造サイクルを迎えることとなり、必然的に金型の表面温度が高温度化する。
金型表面の高温度化は、鋳造品の凝固速度の低下を招くため、鋳造品質の劣化に直結する重大な問題である。
またより高温で金型から取り出された鋳造品はその後の冷却による熱収縮が大きく、寸法精度に悪影響が及ぶ。更に高温で取り出された製品は、その後の冷却中に変形を生じ易い。
そこでこのような不具合を是正するため、ハイサイクル化においては金型の冷却速度を速めることが非常に重要となってくるのである。
その手法としては水冷孔の本数を増やす,水冷孔を金型の成形表面即ちキャビティに近づける、といった金型の内部冷却の強化がある。
また離型剤の高圧塗布による金型表面冷却の強化も用いられる。
しかしながらこれらは金型寿命を低下させる大きな要因となる。
金型の寿命を決定する寿命要因としては、金型の表面(成形面:意匠面)に発生するヒートチェック,金型を冷却するための水冷孔での割れ(水冷孔割れ)及び金型の大割れがある。
ここでヒートチェックは摩耗,溶損,腐食等によって発生した表面の微小な切欠部に熱応力(特に溶湯充填により高温度化した金型表面に対するその後の強制冷却による引張応力)が作用して亀裂が発生及び進展する現象で、加熱・冷却に伴う熱疲労現象である。
このようなヒートチェックが生ずると製品表面にこれが転写されてしまい、製品によっては品質が著しく損なわれるか又はゼロとなってしまう。
またこの亀裂が後述する水冷孔割れの亀裂と合体して、水冷孔と金型表面(成形面)とを貫通する割れに発展する場合も多々生じる。
特にハイサイクル化においては、金型冷却を強化する目的で離型剤塗布の強度を増すため、金型表面の引張応力が増大し、ヒートチェックが多発し易い。
一方水冷孔割れは、水冷孔表面の腐食箇所が起点(応力集中部)となって亀裂が生じ、その亀裂が粒界部を進展して、遂には金型表面(成形面)まで貫通する現象である。
この水冷孔割れは、冷却水の水漏れを招く重大な不具合であり、いつ金型の成形面側に割れが到達するのか予測がつかず、途中の補修もできない。
このため水冷孔割れは非常に厄介な問題とされている。
特にハイサイクル化の下では金型冷却を強化する目的で水冷孔を金型表面(成形面)に近づけるため、金型の加熱時における水冷孔表面での引張応力が増大し、加熱の繰り返しによる熱疲労によって亀裂が進展し易く、また亀裂の経路も短く(金型の成形面と水冷孔との距離も近く)なるため、ハイサイクル化によって水冷孔割れが多発し易い。
次に金型の大割れとは、突発的な応力によって発生した亀裂が極めて短時間に進展して金型を破壊する現象である。特にハイサイクル化では、溶湯の充填と凝固を短時間化する目的で高速・高圧の射出と、凝固時の高圧化を併用するため、金型へ衝撃的に負荷される応力が増大し、大割れが多発し易い。
要するにハイサイクル化の下では、金型に負荷される引っ張りの熱応力が増大し、また高速・高圧の溶湯射出、鋳造品質向上を目的とした凝固時の高圧負荷等によって、金型に突発的・衝撃的な応力が付与され易く、この結果金型表面のヒートチェック,水冷孔割れ及び金型の大割れが生じ易くなる。即ちハイサイクル化によって金型寿命は低下せしめられる。
更に近年ではダイカスト品の大型化・複雑形状化も進んでおり、この場合、金型における応力集中部が増し、更に熱応力も増大することとなる。その結果必然的に上記の不具合が加速され、金型の短寿命化が助長される。
以上のように製品製造のハイサイクル化や製品の大型化・複雑形状化は、金型寿命の低下といった問題を引き起こしている。
このような事情の下で、金型寿命を高めるための対策として次の点が考えられる。
即ち、上記ヒートチェックを発生させる要因は金型の強度,靭性,軟化抵抗及び熱応力であり、従ってヒートチェックを抑制するためには強度,靭性,軟化抵抗を高め、また金型に作用する熱応力を下げることが重要である。
ここで軟化抵抗を高めることの意味は次の点にある。即ち軟化抵抗が低ければ常温での硬さは高くても鋳造を繰り返すうちに金型はへたってくる。即ち軟化してくる。その結果金型表面の強度が低下しヒートチェックが生じ易くなる。そこで金型の軟化抵抗を高めておくことで、金型表面で発生するヒートチェックを抑制することができる。
また水冷孔割れを決定する要因は金型の耐食性,靭性,熱応力であり、水冷孔割れを抑制する上で耐食性及び靭性を高め、また金型に作用する熱応力を下げることが重要である。
更に金型の大割れに対しては靭性を高めることが重要である。
また金型の内部及び表面の冷却に用いる冷媒の腐食性を下げることも有用である。
これら対策のうち冷媒の腐食性を下げる点については、冷却水のpHや成分管理によって達成される。
但し設備が大掛りとなるため一般的な対策とは言い難い。
従来、最も多用される対策は鋼の耐食性,破壊靭性値,衝撃値,軟化抵抗を高めることであり、これは鋼材の成分と熱処理の組合せによって行われてきた。例えばダイカスト用金型として最も多用される鋼はJIS SKD61(0.38C-0.9Si-0.45Mn-5.2Cr-1.2Mo-0.8V)であるが、耐食性を高めた高Crタイプや、軟化抵抗を高めた高Moタイプなどが開発されている。
しかしながら一般に鋼材の強度と靭性は反比例の関係にあり、高強度化は靭性の低下を招く。
このため、高強度化によってヒートチェックを改善させても、水冷孔割れや大割れが逆に頻発するといったことが起こる。
また、衝撃値や破壊靭性値を高めるための低強度化は耐力の低下を招き、ヒートチェックの発生を助長することになる。
また特性向上のために多量の合金元素を添加する場合、溶解・精錬の時間延長による環境負荷の増大を招くだけでなく、省資源の風潮に逆行した素材開発とならざるをえない。しかも、近年の合金元素の異常な高騰を受けて、金型の素材コストが大きく増加し、製品の低廉化を困難とする。
環境負荷軽減・省資源・低廉化の実現には、合金元素量が比較的に少なくても非常に高い特性を発揮する鋼が必要である。
一方、上記対策として考えられるうち、熱応力を低減させるための試みは従来なされていない。
尚、説明は省略した上記の状況はプラスチック,ゴムの射出成形や鍛造の分野においても同様である。
本発明に対する先行技術として、下記特許文献1,特許文献2,特許文献3に記載のものがある。但しこれらは熱応力の低減により金型寿命を向上せしめるものではなく、本願発明と異なっている。
特開平06−299235号公報 特開2003−138342号公報 特開2005−307242号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、合金の添加元素を少なくしつつ、熱応力を低減することによって熱疲労特性を高めるとともに軟化抵抗を高めることによってヒートチェック,水冷孔割れを抑制し、これにより金型寿命を高寿命化することのできる金型用鋼を提供することを目的とする。
また本発明の他の目的は、高い靭性を確保することによってヒートチェックや水冷孔割れとともに金型の大割れをも抑制し、金型寿命を高寿命化することを目的とする。
而して請求項1のものは、質量%でC:0.33〜0.6、Si:0.01〜0.8、Mn:0.1〜2.5、Cu:0.01〜2.0、Ni:0.01〜2.0、Cr:0.1〜2.0、Mo:0.01〜2.0、V:0.45〜2.0、Al:0.002〜0.04、N:0.002〜0.04、O:0.005以下、残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する金型用鋼であって、該鋼を1010℃〜1050℃で30分均熱後に30℃/分で焼入れし、更に以下の各温度で30時間の焼戻しを1回行なった状態で下記式(1),式(2)及び式(3)を満たすことを特徴とする。
30≦HRC600℃≦55・・・式(1)
−10.0≦HRC600℃−HRC550℃・・・式(2)
30≦λRT・・・式(3)
但しHRC600℃は600℃での焼戻し後に室温で測定したロックウェル硬さを、HRC550℃は550℃での焼戻し後に室温で測定したロックウェル硬さを、λRTは500〜650℃で焼き戻した後の室温における熱伝導率[W/m/℃]をそれぞれ表す。
請求項2のものは、請求項1において、前記焼戻しを1回行った状態で更に下記式(4),式(5)を満たすことを特徴とする。
110−1.50×HRC≦KIC RT・・・式(4)
180−3.35×HRC≦CH2mmU RT・・・式(5)
但しHRCは500〜650℃で焼き戻した後の室温におけるロックウェル硬さを、KIC RTは500〜650℃で焼き戻した後の室温における平面ひずみ破壊靭性値[MPa・m0.5]を、CH2mmU RTは500〜650℃で焼き戻した後の室温における、JIS3号(2mmのUノッチ)の試験片を用いたシャルピー衝撃試験による衝撃値[J/cm]をそれぞれ表す。
ここで平面ひずみ破壊靭性値KIC RTは、亀裂に応力が加わったときに亀裂が進展し易いか否かを表す値で、このKIC RTはASTM E399−81にて規定する値である。尚用いる試験片はコンパクト引張り試験片C(T)である。
またシャルピー衝撃値CH2mmU RTは、JIS3号(2mmのUノッチ)の試験片を用いてJIS Z 2242に従い行なったシャルピー衝撃試験での吸収エネルギーを切欠部の原断面積で割った値である。
請求項3のものは、請求項1又は2において、質量%でCo:0.01〜2.0を更に含有することを特徴とする。
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、質量%でTi:0.005〜0.5,Zr:0.005〜0.5の何れか1種又は2種を更に含有することを特徴とする。
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、質量%でB :0.0002〜0.02を更に含有することを特徴とする。
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、質量%でS :0.01〜2.0,Ca:0.0005〜0.5,Se:0.005〜0.5,Te:0.005〜0.5,Bi:0.005〜0.5,Pb:0.005〜0.5の何れか1種又は2種以上を更に含有することを特徴とする。
発明の作用・効果
上記のように金型におけるヒートチェック,水冷孔割れは何れも熱応力の繰返作用による熱疲労が原因で生ずる。
そこで本発明者は熱応力に着眼し、熱応力を低くすることによって熱疲労特性を高め、金型寿命を高寿命化することを考えた。
ここで熱応力は、金型の熱伝導率を高くすることによって低くすることができる。熱伝導率を高くすれば金型の表面温度と内部の温度との温度差を小さくすることができ、金型に発生する熱応力を小さくすることができる。
本発明はまた、金型の軟化抵抗がヒートチェックに影響を及ぼすことに着眼し、熱伝導率を高めることと併せて軟化抵抗を高めている点を特徴としている。
具体的には、成分的には本発明では熱伝導率を低くする元素であるSiの添加量を低く抑えるとともに、熱伝導率及び軟化抵抗を低下させるCrの添加量を低く抑え、また他の合金成分とのバランスを図って、所定の熱処理を施した後のHRCを30〜55,軟化抵抗を表すΔHRC(HRC600℃−HRC550℃)の値を−10以上、熱伝導率λを30以上となしている。
かかる本発明の金型用鋼は熱伝導率が高く、発生する熱応力も低いために、腐食部を生じても水冷孔割れが発生するのを抑制でき、また発生する熱応力の低さに加えて軟化抵抗も高いため、ヒートチェックの発生を抑制することができ、その結果として金型寿命を高寿命化することができる。
またこの他にも熱伝導率の高さは均熱度の向上につながり、金型変形量の部位間差が小さくなる結果、真空ダイカストにおける気密度の確保にも貢献できる。
また熱伝導率の高さは、金型温度の迅速な低下につながり、溶湯の凝固速度増大による鋳造品質の向上にも寄与する。
次に請求項2は、熱伝導率を高め、また軟化抵抗を高めるのと併せてKIC RT,CH2mmU RTで表される破壊靭性値,シャルピー衝撃値の値を式(4),式(5)で表される値として、それらを高い値に保持したもので、かかる本発明によれば、靭性を高く確保することによって、上記ヒートチェック,水冷孔割れを更に効果的に抑制できるとともに、金型の今一つの寿命要因となる大割れを効果的に抑制でき、金型寿命を高寿命化することができる。
次に本発明における化学成分その他の限定条件の理由を以下に詳しく説明する。
Cは鋼の強度調整に必須の元素である。プラスチックやゴムの射出成形、ダイカスト、鋳造などに用いられる金型として必要強度を確保するため、本発明においては質量比で0.33%〜0.6%含有させる。
Siは地鉄中に固溶し、破壊靭性や熱伝導率に影響を及ぼす。また、炭化物の生成挙動を介して様々な特性にも影響を及ぼす。高熱伝導化のためには低Siが良いが、過度の低減は生産コストを増すばかりではなく特性向上の実益にも乏しい。製造コスト・熱伝導率・破壊靱性・衝撃値などのバランスから、本発明においては、質量比で0.01%〜0.8%含有させる。上限値が従来の金型用鋼や耐熱鋼(例えばSKD61、SKD62、SUH1など)と比較して低いことが特徴である。
Mnは焼入れ性の向上元素として必須である。ただし、過剰の添加はAc1変態点を下げるだけでなく、焼鈍における炭化物の球状化を著しく阻害し、被削性に優れた軟質な状態を創製しにくくする。焼入れ性の向上効果・変態点・焼鈍性などのバランスから、本発明においては質量比で0.1%〜2.5%とする。
Cuは焼入れ性を向上する元素として有用である。また、地鉄中に単独析出して、鋼の高強度化や熱伝導率向上にも寄与する。ただし、過度の添加は熱間加工性を劣化させるため避けるべきである。焼入れ性の向上効果・熱間加工性などのバランスから、本発明においては、質量比で0.01%〜2.0%とする。
Niは焼入れ性を向上する元素として有用である。ただし、過度の添加はAcl変態点を下げるだけでなく、焼鈍における炭化物の球状化を著しく阻害し、被削性に優れた軟質な状態を創製しにくくする。焼入れ性の向上効果・変態点・焼鈍性などのバランスから、本発明においては質量比で0.01%〜2.0%とする。
Crは焼入れ性を向上するだけでなく、炭化物を形成して鋼を高強度化する元素として有用である。ただし、過度の添加は軟化抵抗を下げ、高温での使用中にヘタリやすくなる(疲労強度の低下)。焼入れ性の向上効果・軟化抵抗などのバランスから、本発明においては、質量比で0.1%〜2.0%とする。上限値が従来の金型用鋼や耐熱鋼(例えばJIS SKD11、SKD61、SKD62、SKH51、SKH55、SUH1など)と比較して低いことが特徴である。
Moは焼入れ性を向上するだけでなく、炭化物を形成して鋼を高強度化する元素として有用である。特に、軟化抵抗を高める効果が大きい。ただし、過度の添加は特性の飽和と製造コストの増大を招く。焼入れ性の向上効果・軟化抵抗のバランスから、本発明においては、質量比で0.01%〜2.0%とする。
Vは焼入れ性を向上するだけでなく、炭化物を形成して鋼を高強度化する元素として有用である。特に、軟化抵抗を高める効果が大きい。ただし、過度の添加は特性の飽和と製造コストの増大を招くだけでなく、凝固時の晶出炭化物を増すことになり、本鋼が金型となった場合の衝撃値を大きく低下させる。鋼に対する元素の作用はほぼ同じであるため、焼入れ性の向上効果・軟化抵抗などのバランスから、本発明においては、質量比で0.45%〜2.0%となるように含有させる。上限値が、従来の金型用鋼や耐熱鋼(例えばJIS SKD8、SKH51、SKH55など)と比較して低いことが特徴である。

Alは窒化物を形成して、焼入れにおける結晶粒の粗大化を防止する元素である。ただし、過度の添加は特性の飽和と製造コストの増大を招くだけでなく、介在物であるアルミナを増すことになり、本鋼が金型になった場合の衝撃値を大きく低下させる。結晶粒の粗大化を防止する効果・衝撃値などのバランスから、本発明においては、その含有量を質量比で0.002%〜0.04%とする。
NはAlNを形成して、焼入れにおける結晶粒の粗大化を防止する元素である。ただし、過度の添加は特性の飽和と製造コストの増大を招くのみである。結晶粒の粗大化を防止する効果・製造コストなどのバランスから、本発明においては、質量比で0.002%〜0.04%とする。
Oは酸化物を形成して、本鋼が金型となった場合の衝撃値を大きく低下させる。したがって、含有量は低い方が望ましい。ただし、精錬過程における脱酸の過度な延長は酸素量の飽和と製造コストの増大を招くのみである。製造コスト・衝撃値などのバランスから、本発明においては、質量比で0.005%以下とする。
上記に規定した特定成分の鋼を特定の工程で熱処理すると、所要の特性を得ることが可能となる。以下では、熱処理後の所要特性について説明する。
特性を評価する状態としては焼戻し状態が対象となる。焼戻しの時間を30時間とした理由は、短時間の焼戻しでは高温・長時間の実用環境下での特性を正確に判断できないためである。
ここで、600℃と30Hrの意味について補足する。600℃は、ダイカストに用いられる金型表面の最高到達温度に相当する。さらに、金型表面が約600℃で推移する時間は製品製造1サイクル当り1秒程度あり、一般的な金型寿命が100000〜110000ショットであることを考慮すれば、金型表面が約600℃で推移する時間は累積で28Hr〜31Hrとなる。したがって、600℃における30Hrでの処理後の特性が高い鋼材ほど、使用中の軟化が小さく、損傷を発生しにくい金型用素材として好適と判断できる。
温間・熱間鍛造においても同様のことが言える。
また、温度が600℃を大きく超える条件下で使用される金型についても、上記の条件が適用可能であることは分かっている。
以上の理由から、高温下で使用される金型が軟化する危険性を評価すべき焼戻し条件として600℃における30Hrの保持が適当である。
本発明では、鋼を1010℃〜1050℃の温度域で30分均熱後に30℃/分で焼入れ、600℃で30時間の焼戻しを1回行なった状態で式(1)を満たすことが必要である。
30≦HRC600℃≦55・・・式(1)
ここで、HRC600℃とは600℃での焼戻し後に室温で測定したロックウェル硬さである。
600℃の高温度で30時間の加熱をおこなっても金型としての用途に耐えうるHRC30〜HRC55の硬さが得られることが必須条件である。
本発明ではまた、鋼を1010℃〜1050℃の温度域で30分均熱後に30℃/分で焼入れ、550℃及び600℃で30時間の焼戻しを1回行なった状態で式(2)を満たすことが必要である。
−10.0≦ΔHRC(ΔHRC=HRC600℃−HRC550℃)・・・式(2)
ここでHRC550℃とは、550℃での焼戻し後に室温で測定したロックウェル硬さである。
ΔHRCは軟化抵抗に相当する特性であり、高温で使用される金型ではΔHRCが「ゼロに近い負の値」あるいは「正の値」であることが望ましい。
本発明鋼はCr量が低いことに加え、MoやVなどを適量添加しているため、−10以上のΔHRCを達成できることが特徴である。
なお、JIS SKD61(5.2%Cr)のΔHRCは−12〜−15程度である。このため、ダイカストや温間・熱間鍛造に用いられるJIS SKD61金型は使用中に軟化して、ヒートチェックや磨耗などの損傷を発生しやすい。
ここで、550℃での焼戻し硬さを基準として式(2)を定義した理由は次の通りである。
2次硬化を起こす合金工具鋼の焼戻し硬さは、焼戻しが550℃である場合に最も高くなることが多い。そこで、この最高硬さからの軟化量を、その鋼材が高温環境化で示す軟化抵抗と扱うことが妥当と考えた。
本発明では、鋼を1010℃〜1050℃の温度域で30分均熱後に30℃/分で焼入れ、さらに以下の任意の温度で30時間焼戻しを1回行なった状態で式(3)を満たすことが必要である。
30≦λRT・・・式(3)
ここでλRTとは、500℃〜650℃で焼戻した後の室温における熱伝導率[W/m/℃]である。
加熱と冷却のサイクルが繰り返される金型では、λRTの大きいものほど熱応力が小さくなり、望ましい。
本発明鋼はSi量とCr量が低いため、30以上のλRTを達成できることが特徴である。
なおJIS SKD61(1%Si-5.2%Cr)のλRTは23程度あり、熱サイクルが負荷された場合に発生する熱応力の高さが問題となる。
本発明(請求項2)では、鋼を1010℃〜1050℃の温度域で30分均熱後に30℃/分で焼入れ、さらに下記の温度で30時間の焼戻しを1回行なった状態で式(4)を満たすことが必要である。
110−1.5×HRC≦KIC RT・・・式(4)
ここでHRCとは、500℃〜650℃で焼戻した後の室温におけるロックウェル硬さ、KIC RTとは500℃〜650℃で焼戻した後の室温における平面ひずみ破壊靱性値[MPa・m0.5]である。
亀裂が発生した金型、あるいは亀裂を内在する金型に応力サイクルが負荷される場合、KIC RTの大きい鋼ほど破壊しにくいため望ましい。
本発明鋼は比較的に省合金でありながら、合金成分の添加量最適化によって、従来の高性能鋼と同等以上のKIC RTを確保できることが特徴である。HRC=45の場合、KIC RTは45程度となり、JIS SKD61と同等である。
本発明(請求項2)ではまた、鋼を1010℃〜1050℃の温度域で30分均熱後に30℃/分で焼入れ、さらに下記の温度で30時間の焼戻しを1回行なった状態で式(5)を満たすことが必要である。
180−3.35×HRC≦CH2mmU RT・・・式(5)
ここでCH2mmU RTとは、500℃〜650℃で焼戻した後の室温におけるシャルピー衝撃値[J/cm]であり、対象となる試験片はJIS3号(2mmのUノッチ)である。
本発明鋼は、比較的に省合金鋼でありながら合金成分の添加量最適化によって、炭化物を微細に析出させているため、従来の高性能鋼と同等以上のCH2mmU RTを確保できることが特徴である。HRC=45の場合、CH2mmU RTは32程度となり、JIS SKD61と同等である。
請求項3において選択添加元素として規定するCoは地鉄中に固溶し、破壊靭性や熱伝導率に影響を及ぼす。また、炭化物の生成挙動を介して様々な特性にも影響を及ぼす。高熱伝導化のためには低Coが良いが、過度の低減は高温での強度を低下させる。また、高温強度の向上には高Coが良いが、過度の添加は生産コストを増すばかりでなく特性向上の実益にも乏しい。製造コスト・熱伝導率・破壊靭性・衝撃値などのバランスから、本発明においてはCoを含有させる場合には質量比で0.01%〜2.0%の含有量とする。上限値が従来の金型用鋼や耐熱鋼(例えばJIS SKD8,SKH55など)と比較して低いことが特徴である。
請求項4において選択添加元素として規定するTiは、TiNやTiCを形成して焼入れにおける結晶粒の粗大化を防止する元素である。ただし、過度の添加は特性の飽和と製造コストの増大を招く。また、比較的に粗大に析出するTiNやTiCは、本鋼が金型となった場合の衝撃値を大きく低下させる。結晶粒の粗大化を防止する効果・製造コスト・材質などのバランスから、本発明においては、質量比で0.005%〜0.5%とする。
選択添加元素としてのZrは、ZrNやZrCを形成して焼入れにおける結晶粒の粗大化を防止する元素である。ただし、過度の添加は特性の飽和と製造コストの増大を招く。また、比較的に粗大に析出するZrNやZrCは、本鋼が金型となった場合の衝撃値を大きく低下させる。結晶粒の粗大化を防止する効果・製造コスト・材質などのバランスから、本発明においては、質量比で0.005%〜0.5%とする。
請求項5において選択添加元素として規定するBはオーステナイト結晶粒界に偏析してフェライト相の析出を抑制する元素であり、鋼の焼入れ性を著しく高める。ただし、過度の添加の特性の飽和と製造コストの増大を招き、実益に乏しい。焼入れ性を向上する効果と製造コストのバランスから、本発明においては、質量比で0.0002%〜0.02%とする。
請求項6において選択添加元素として規定するSは、MnSを形成して鋼の被削性を向上する元素である。ただし、過度の添加は特性の飽和と製造コストの増大を招く。また、比較的に粗大に晶出するMnSは、本鋼が金型となった場合の衝撃値を大きく低下させる。被削性を向上する効果・製造コスト・材質などのバランスから、本発明においては、Sを積極的に添加する場合は質量比で0.01%〜2.0%とする。被削性が問題とならない形状の金型の場合は、S量は低いほうが望ましい。
Caは被削性を向上する元素である。また、鋼中の非金属介在物の形態を変化させて鋼の熱間加工性を向上させる元素でもある。但し、過度の添加は特性の飽和と製造コストの増大を招く。被削性や熱間加工性を向上する効果・製造コスト・材質などのバランスから、本発明においては質量比で0.0005%〜0.5%とする。
Seは被削性を向上する元素である。但し、過度の添加は多量のSe化合物を生じさせることになり、鋼の熱間加工性や衝撃値を低下させる。被削性を向上する効果・製造コスト・材質などのバランスから、本発明においては質量比で0.005%〜0.5%とする。
Teは被削性を向上する元素である。但し、過度の添加は多量のTe化合物を生じさせることになり、鋼の熱間加工性や衝撃値を低下させる。被削性を向上する効果・製造コスト・材質などのバランスから、本発明においては質量比で0.005%〜0.5%とする。
Biは被削性を向上する元素である。但し、過度の添加は鋼中に分散するBi粒子を増すことになり、鋼の熱間加工性や衝撃値を低下させる。被削性を向上する効果・製造コスト・材質などのバランスから、本発明においては質量比で0.005%〜0.5%とする。
Pbは被削性を向上する元素である。但し、過度の添加は鋼中に分散するPb粒子を増すことになり、鋼の熱間加工性や衝撃値を低下させる。被削性を向上する効果・製造コスト・材質などのバランスから、本発明においては質量比で0.005%〜0.5%とする。
次に本発明の実施例を以下に詳述する。
<実施例1>
[熱伝導率と耐ヒートチェック性の相関]
表1に示す化学組成(但し残部はFe)の9種類の鋼材に対して、λRT(式(3))と耐ヒートチェック性の相関を調査した。手順は、先ずλRTの評価、次に耐ヒートチェック性の確認である。
λRTを調査する試験片は、φ10×2(単位はmm。以下同)の円盤である。荒加工した円盤を1030℃で30分の均熱後に30℃/分で焼き入れ、570〜620℃の範囲内で30時間焼き戻し、HRC45±0.6に調整した。その後、精加工によってφ10×2の正寸に仕上げた。
λRTはレーザーフラッシュ法によって求めた。即ち、レーザー発振器から発射したレーザー光を室温の試験片に対して直角に照射、そのとき試験片の背面から放射される熱量を赤外線検出器で測定して比熱と熱拡散率を求め、最終的にλRT(=比熱×熱拡散率×密度)を算出した。
一方、耐ヒートチェック性を調査する試験片は、φ15×φ3.5×φ5のリングである。荒加工したリングを1030℃で30分の均熱後に30℃/分で焼入れ,570℃〜620℃の範囲内で30Hr焼戻し、HRC45±0.6に調整した。その後、精加工によってφ15×φ3.5×φ5の正寸に仕上げた。
実験では、試験片となるリングの側面を高周波誘導加熱にて600℃に加熱した後に、直ちに水冷する熱サイクルを10000回与えた。ここで600℃までの加熱時間は4秒,水冷時間は3秒である。
試験後、リングを1/2の高さの位置で切断し、加熱・冷却のサイクルを受けた面(外周面)におけるヒートチェックの最大深さを評価した。
Figure 0004992344
その結果を横軸に熱伝導率λRTを、縦軸にヒートチェックの最大深さを取って図1に示してある。
図1に示しているように、熱伝導率が30以上である場合にヒートチェックの最大深さは100μm以下となっている。
Alダイカスト製品に転写される亀裂深さは100μm程度と考えられており、従ってヒートチェックの最大深さ100μmはヒートチェックによる金型の寿命の判定基準となる。
ここにおいてλRTを30以上とすることで、ヒートチェックの最大深さを100μm以下とすることができ、ヒートチェックによる金型の寿命を高寿命化することができる。
<実施例2>
[軟化抵抗と耐ヒートチェック性の相関]
表2に示す化学組成(但し残部はFe)の9種類の鋼材に対して、ΔHRC(=HRC600℃−HRC550℃:式(2))と耐ヒートチェック性の相関を調査した。手順は先ずΔHRCの評価、次に耐ヒートチェック性の確認である。
ΔHRCを調査する試験片は10×10×20の角棒である。精加工した角棒を1030℃で30分の均熱後に30℃/分で焼き入れた。その後、550℃と600℃で30時間の焼戻しを行い、室温でHRC(HRC600℃,HRC550℃)を測定し、ΔHRCを求めた。
一方、耐ヒートチェック性を調査する試験片の形状や実施条件は実施例1と同様である。
Figure 0004992344
その結果を横軸に軟化抵抗ΔHRCを、縦軸にヒートチェックの最大深さを取って図2に表している。
図2の結果から、軟化抵抗ΔHRCを−10以上とすることで、ヒートチェックによる金型寿命を高寿命化することができることが分る。
<実施例3>
表1,図1,表2,図2によって、鋼材の熱伝導率λRTと軟化抵抗ΔHRCをともに大きくすれば、耐ヒートチェック性を向上(金型を超寿命化)できることが証明された。そこでこのような特徴を有する鋼材からなる金型が実生産においても同様の結果を示すのか確認することにした。
表3に示す化学組成(但し残部はFe)の17種類の鋼材を用いて、重量が500kgの金型を作成し、ダイカストに適用した場合の金型寿命を以下にて評価した。
焼鈍状態にある17種類の鋼材から荒加工されたダイカスト金型を1030℃に加熱し、60分保持した後、油焼入れを行なった。引き続き、金型に対して590℃で3時間の焼戻しを2回繰り返して表4に示すHRC硬さHに調整した後、ダイカスト金型に仕上げ精加工した。
鋼材の基礎特性を比較するため、表4中には実施例1で示した方法によって得られたλRT(式(3))と、実施例2で示した方法によって得られたΔHRC(式(2))を併記した。
また、表4中のKIC RT(式(4))とCH2mmU RT(式(5))は前述した手法によって求めた。その際試験片は1030℃で30分の均熱度に30℃/分で焼き入れ、570℃で30時間焼き戻した。このとき室温におけるHRCも、式(4)と式(5)の左辺を計算するため、表4中には併記してある。
なお、熱処理条件と硬さは基礎特性評価と金型性能評価とで一致していない。
これらの金型を、型締力2400トンのダイカストマシンに組み付け、鋳造試験を行った。金型には水冷孔を設け、内部冷却も実施した。湯材はADC12で、湯温(溶解保持炉内)は670℃である。
1サイクル72秒の鋳造を実施し、発生したヒートチェックの鋳造品表面への転写が顕著となった時点(ショット数)を金型寿命と判定した。金型寿命の評価は以下の基準にて行った。
××:3000ショット以下
× :3000ショット以上,且つ6000ショット未満
▲ :6000ショット以上,且つ10000ショット未満
○ :10000ショット以上,且つ15000ショット未満
◎ :15000ショット以上
表3,表4の結果を全体として見るとΔHRCが負の値で大きい、即ち使用中のヘタリが顕著な鋼材(比較例1〜比較例5)は評価が▲以下である。比較例4の鋼材は、ダイカスト金型用鋼として一般に用いられるJIS SKD61であるが、熱伝導率λRTが小さく、使用中のヘタリも大きいため、6000ショットの寿命を確保することが難しい結果となった。
一方本発明例では、熱伝導率λRTが大きく、使用中のヘタリも小さいため、10000ショット以上の寿命が得られている。これは、JIS SKD61の約2倍である。即ち合金元素が多量に添加された高級鋼よりも、低廉な本発明例鋼の方が型性能は高い。また、水冷孔に発生した割れの深さも、本発明例は比較例の半分であり、熱伝導率λRTを大きくすることで水冷孔の割れを抑制できることが確認できた。
Figure 0004992344
Figure 0004992344


この表3,表4の結果をより詳しく見ると、Moの添加量が2.5で本発明の上限値である2.0よりも多い比較例1のものは、軟化抵抗ΔHRCが低く、また熱伝導率λRTも本発明の条件を満たさないもので、その結果として金型寿命は▲となっている。
また比較例2のものは、Coの添加量が2.5で請求項3の上限値の2.0を超えており、その結果として軟化抵抗ΔHRCが低く、また熱伝導率λRTも本発明の条件を満たしていない。その結果として金型寿命は▲となっている。
比較例3のものは、Siの添加量が0.95で本発明の上限値である0.8よりも多く、これにより軟化抵抗ΔHRCが低く、熱伝導率λRTも本発明の条件を満たしていない。
また衝撃値CH2mmU RTも低い値となっており、その結果として金型寿命は×となっている。
比較例4はJIS SKD61に相当するもので、このものはSiが0.98と本発明の上限値である0.8よりも多く、またCrの添加量が5.21で本発明の上限値である2.0よりも多い。そのため軟化抵抗ΔHRC及び熱伝導率λRTが小さく、破壊靭性値KIC RT,衝撃値CH2mmU RTともに低い値となっている。その結果として金型寿命は×となっている。
次に比較例5は、Cが0.08で本発明の下限値である0.1よりも少なく、600℃での30時間焼戻し後の硬さHRC500℃が低く、軟化抵抗ΔHRCも低い値であり、金型寿命は××と悪いものとなっている。
これに対し、本発明例のものは何れの特性も良好で、その結果として金型寿命は良好なものであった。即ち、所定の条件下で評価された基礎特性(λRT,ΔHRC,KIC RT,CH2mmU RT)が高い鋼材は、実用的な処理を経て金型となった場合にも良好な特性を示すことが確認できた。
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
熱伝導率とヒートチェックの最大深さとの関係を表した図である。 軟化抵抗とヒートチェックの最大深さとの関係を表した図である。

Claims (6)

  1. 質量%で
    C:0.33〜0.6
    Si:0.01〜0.8
    Mn:0.1〜2.5
    Cu:0.01〜2.0
    Ni:0.01〜2.0
    Cr:0.1〜2.0
    Mo:0.01〜2.0
    V:0.45〜2.0
    Al:0.002〜0.04
    N:0.002〜0.04
    O:0.005以下
    残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する金型用鋼であって、該鋼を1010℃〜1050℃で30分均熱後に30℃/分で焼入れし、更に以下の各温度で30時間の焼戻しを1回行なった状態で下記式(1),式(2)及び式(3)を満たすことを特徴とする熱疲労特性に優れた金型用鋼。
    30≦HRC600℃≦55・・・式(1)
    −10.0≦HRC600℃−HRC550℃・・・式(2)
    30≦λRT・・・式(3)
    但し
    HRC600℃は600℃での焼戻し後に室温で測定したロックウェル硬さを
    HRC550℃は550℃での焼戻し後に室温で測定したロックウェル硬さを
    λRTは500〜650℃で焼き戻した後の室温における熱伝導率[W/m/℃]を
    それぞれ表す。
  2. 請求項1において、前記焼戻しを1回行った状態で更に下記式(4),式(5)を満たすことを特徴とする熱疲労特性に優れた金型用鋼。
    110−1.50×HRC≦KIC RT・・・式(4)
    180−3.35×HRC≦CH2mmU RT・・・式(5)
    但し
    HRCは500〜650℃で焼き戻した後の室温におけるロックウェル硬さを
    IC RTは500〜650℃で焼き戻した後の室温における平面ひずみ破壊靭性値[MPa・m0.5]を
    CH2mmU RTは500〜650℃で焼き戻した後の室温における、JIS3号(2mmのUノッチ)の試験片を用いたシャルピー衝撃試験による衝撃値[J/cm]を
    それぞれ表す。
  3. 請求項1又は2において、質量%で
    Co:0.01〜2.0
    を更に含有することを特徴とする熱疲労特性に優れた金型用鋼。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、質量%で
    Ti:0.005〜0.5
    Zr:0.005〜0.5
    の何れか1種又は2種を更に含有することを特徴とする熱疲労特性に優れた金型用鋼。
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、質量%で
    B :0.0002〜0.02
    を更に含有することを特徴とする熱疲労特性に優れた金型用鋼。
  6. 請求項1〜5の何れかにおいて、質量%で
    S :0.01〜2.0
    Ca:0.0005〜0.5
    Se:0.005〜0.5
    Te:0.005〜0.5
    Bi:0.005〜0.5
    Pb:0.005〜0.5
    の何れか1種又は2種以上を更に含有することを特徴とする熱疲労特性に優れた金型用鋼。
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