JP4989857B2 - 成形体の再充填方法 - Google Patents
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反応管内に充填される成形体としては、機械的強度が高いものが求められ、例えば、特許文献1に記載されるように、触媒原料と樹脂成分とを混練し、成形したものが使用されている。
ところで、管型反応器に成形体を充填した際には、反応管内でブリッジを形成して所定量が充填できなかったり、充填後の充填長や圧力損失が管理範囲から外れたりすることがあるが、その場合、従来では、その成形体を反応管から抜き出し、新しい成形体を充填し直していた。
ところが、成形体を反応管に充填し、抜き出した際には、成形体が粉砕されることがあり、成形体が破砕されて粒度分布が広くなると、成形体粒子が密に集合して、流動性が低下する傾向にある。よって、充填または抜き出しの際に粉砕された成形体を反応管に再充填すると、反応管内でブリッジが生じるなどして、所定の通りに充填することができず、目的生成物の収率が低くなることがあった。
本発明の目的は、成形体の無駄を少なくできる上に、反応管から抜き出して回収した成形体(以下、回収物という)を再充填した際のブリッジの発生および目的生成物の収率低下を抑制できる成形体の再充填方法を提供することにある。
落下粉化率(%)={(100−A)/100}×100 (1)
ここで、Aは、5mの高さから成形体100gを落下させ、目開き2mmのSUS−304製篩の上に残ったものの質量(g)のことである。前記成形体は、打錠成型、押出成型、造粒のいずれかによって成形した、球相当直径が3〜10mmの、球状、円柱状、リング状、板状のいずれかのものである。
本発明の成形体の再充填方法においては、反応管から抜き出した成形体を、目開き2mmの篩にかけ、該篩を通過しなかった成形体を分離回収して回収物を得て、該回収物を反応管に再充填することが好ましい。
まず、本発明の成形体の再充填方法における第1の実施形態例について説明する。
本実施形態例の成形体の再充填方法では、まず、充填する触媒またはその前駆体の成形体(成形体)について下記式(1)で表される落下粉化率を測定する。ここで触媒の前駆体としては、例えば熱処理する前の触媒等が挙げられる。
落下粉化率(%)={(100−A)/100}×100 (1)
ここで、Aは、5mの高さから成形体100g落下させ、目開き2mmのSUS−304製篩の上に残ったものの質量(g)のことである。
成形体の落下粉化率は、充填する成形体全部について測定しなくてもよく、代表サンプルとして一部を無作為に抽出して測定すればよい。また、反応管毎に測定してもよいし、製造ロット毎に測定してもよい。さらに、実質的に同じ製造方法で製造した成形体であれば同様の粉化率とみなしても構わない。
そして、落下粉化率が2%以下、好ましくは1%以下であった成形体を反応管に充填する。落下粉化率がこの値を超える成形体については、充填時および回収後の再充填時にブリッジの発生を招くことがあり、また目的生成物の収率低下を招くことがあるので、落下粉化率が2.0%を超える成形体は使用しない。
次いで充填した成形体を抜き出して回収した回収物を反応管に再充填する。ここで、回収物とは、回収した成形体の集合物のことである。
MoaPbCucVdXeYfOg (1)
(式中、Mo、P、Cu、VおよびOはそれぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素を表し、Xは鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Yはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。ただし、a、b、c、d、e、fおよびgは各元素の原子比を表し、a=12のとき、0.1≦b≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦3、0≦e≦3、0.01≦f≦3であり、gは前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。)
また、成形の際には、成形体の比表面積、細孔容積および細孔分布を再現性よく制御したり、機械的強度を高めたりする目的で、例えば、硫酸バリウム、硝酸アンモニウム等の無機塩類、グラファイト等の滑剤、セルロース類、でんぷん、ポリビニルアルコール、ステアリン酸等の有機物、シリカゾル、アルミナゾル等の水酸化物ゾル、ウィスカー、ガラス繊維、炭素繊維等の無機質繊維等の添加剤を、乾燥粉に対して適宜添加してもよい。
成形体のサイズは反応管の形状によっても異なるが、反応管に対する成形体の占有体積基準の球相当直径として、3〜10mm程度が好ましい。ここで、反応管に対する成形体の占有体積基準の相当直径とは、成形体内側に有する空間部も成形体体積とした際の球相当直径である(例えば、リング成形品であれば、リング内側空間部も成形体体積に計上する。)。
反応管から成形体を抜き出して回収する方法としては特に制限はなく、反応管下部から自然落下で抜き出す方法、反応管に振動を与えながら反応管下部から抜き出す方法、針金等を用い触媒層に軽い衝撃を与えながら反応管下部から抜き出す方法、反応管上部から真空引きにより抜き出す方法、反応管内部に空気等のガスを供給しながら反応管上部より真空引きにて抜き出す方法等、さまざまな抜き出し方法を採ることができる。
その際、反応管内の全ての成形体を抜き出してもよいし、一部の成形体のみを抜き出しても構わない。
次に、本発明の成形体の再充填方法における第2の実施形態例について説明する。
本実施形態例では、まず、反応管に充填した成形体を抜き出す。成形体の充填方法および抜き出し方法としては第1の実施形態例と同様の方法を採ることができる。
次いで、抜き出した成形体を目開き2mmの篩にかけ、その篩を通過した破片は除去するとともに、通過しなかった成形体を分離回収して成形体の回収物を得る。そして、得られた回収物を反応管に再充填する。
この第2の実施形態例の再充填方法では、目開き2mmの篩を通過しなかった成形体を分離回収し、細かい粒子を除去して反応管に再充填するから、成形体の流動性低下を防ぐことができ、再充填時のブリッジ発生を抑制できる。また、細かい粒子を除去しておくことで、目的生成物の収率低下を抑制できる。
メタクリル酸製造用反応器は、上述した成形体の再充填方法によりメタクリル酸合成用触媒成形体が再充填された反応管を具備するものである。また、この反応器は上述した成形体の再充填方法によりメタクリル酸合成用触媒の前駆体の成形体が再充填され、反応管内で熱処理等により前駆体が触媒に変化したものが充填されている反応管を具備するものであってもよい。該反応器においては、反応管の周囲に加熱用または除熱用の熱媒が充填される熱媒浴を具備することが好ましい。
反応管の数は一本であってもよいし、二本以上であってもよい。反応管が二本以上である場合には、全ての反応管に対して上記触媒成型体の再充填方法を適用してもよいし、一部の反応管に対して上記触媒成型体の再充填方法を適用してもよい。
反応器は縦型であってもよいし横型であってもよいが、縦型の場合に本発明の効果がより発揮される。
メタクリル酸の製造方法は、上述したメタクリル酸製造用反応器を用いる方法である。そして、この製造方法により、例えば、メタクロレインおよびイソブチルアルデヒド等の原料と分子状酸素とを気相状態で反応させてメタクリル酸を製造することが好ましい。ここで、分子状酸素としては、空気を用いるのが工業的には好ましいが、必要に応じて純酸素で富化した空気も使用できる。
反応条件は、原料や反応方式に応じて適宜選択されるが、メタクロレインを原料として用いる場合、原料と分子状酸素を含む原料ガス中のメタクロレインの濃度は1〜20容量%であることが好ましく、3〜10容量%であることがより好ましい。また、原料ガスには低級飽和アルデヒド等の実質的に反応に影響を与えない不純物を少量含まれていてもよい。原料ガス中の分子状酸素の量は、メタクロレイン1モルに対して0.5〜3モルが好ましい。また、原料ガスは不活性ガス、水蒸気等で希釈しておくことが好ましい。反応圧力は常圧ないし数気圧であることが好ましく、反応温度は200〜450℃であることが好ましい。
メタクロレインの反応率(%)=C/B×100
メタクリル酸の選択率(%)=D/C×100
メタクリル酸の収率(%)=D/B×100
ここで、Bは供給したメタクロレインのモル数、Cは反応したメタクロレインのモル数、Dは生成したメタクリル酸のモル数を表す。
パラモリブデン酸アンモニウム100部、メタバナジン酸アンモニウム4.4部および硝酸カリウム4.8部を純水400部に溶解した。これを攪拌しながら、85質量%リン酸水溶液8.2部を純水10部に溶解したリン酸溶液を加え、更に硝酸銅1.1部を純水10部に溶解した硝酸銅溶液を加えて、第1の金属溶液を調製した。次に、硝酸ビスマス6.9部に60質量%硝酸水溶液7.0部および純水40部を加えて第2の金属溶液を調製し、この第2の金属溶液を第1の金属溶液に加えた後、95℃に昇温した。これに60質量%ヒ酸水溶液2.2部を純水10部に溶解したヒ酸溶液を加え、続いて、三酸化アンチモン2.1部および二酸化セリウム1.6部を加えて触媒原料液を得た。得られた触媒原料液をドラムドライヤーにより乾燥し、乾燥粉を得た。
得られた乾燥粉100部にグラファイト3部を添加した後、打錠成型機により、外径5mm、内径2mm、長さ5mmのリング状に成型し、メタクリル酸製造用触媒の前駆体成形体(以下、前駆体1という。)を得た。前駆体1の占有体積基準の球相当直径は5.72mmであった。前駆体1の一部をサンプリングし、落下粉化率を測定したところ0.2%であった。
反応器としては、内径25.4mm、長さ3.5mのSUS304製反応管20本と、この反応管を加熱する熱媒浴とを備えた固定床管型反応器を用い、前駆体1を、二つの反応帯に分割されるように反応管に充填した。具体的には、反応管下側に520mL/本の前駆体1と240mL/本の外径5mmのアルミナ球とを混合した混合物を充填して、触媒層1を形成した。次に、反応管上側に760mL/本の前駆体1を充填して、触媒層2を形成した。20本の反応管の内、1本において、ブリッジが発生したため、その反応管に振動を与えながら反応管下部から前駆体1とアルミナ球の混合物を抜き出した。その際、抜き出した混合物を目開き2mmの篩にかけて、この篩を通過した前駆体1は取り除き、さらにアルミナ球を分離して、前駆体の回収物を得た。そして、回収物を上記と同様にして反応管に再充填した。その際、触媒層1の長さは1505mm(平均値)、触媒層2の長さは1501mm(平均値)であった。
そして、この前駆体1を反応管内で空気流通下、380℃にて12時間熱処理(焼成)してメタクリル酸製造用触媒を得た。この触媒の触媒成分における酸素以外の組成は、Mo12P1.5Cu0.1V0.8Sb0.3Bi0.3As0.2Ce0.2K1であった。
その後、熱媒温度を312℃とし、メタクロレイン6.0容量%、酸素10容量%、水蒸気10容量%および窒素74.0容量%からなる原料ガスを、反応器下側から空間速度1700hr−1で供給して反応を行った。反応結果を表1に示す。
前駆体の落下粉化率が1.8%であること以外は実施例1と同様にして前駆体2を製造し、実施例1と同様の条件で反応管に充填した。20本の反応管の内、2本において、ブリッジが発生したため、その反応管に振動を与えながら反応管下部から前駆体2とアルミナ球の混合物を抜き出した。その際、抜き出した混合物を目開き2mmの篩にかけて、この篩を通過した前駆体2は取り除き、さらにアルミナ球を分離して、前駆体の回収物を得た。そして、回収物を上記と同様にして反応管に再充填した。その際、触媒層1の長さは1495mm(平均値)、触媒層2の長さは1500mm(平均値)であった。続いて、実施例1と同様の条件で、焼成および反応を行った。反応結果を表1に示す。
前駆体の落下粉化率が2.6%であること以外は実施例1と同様にして前駆体3を製造し、実施例1と同様の条件で反応管に充填した。20本の反応管の内、9本において、ブリッジが発生したため、その反応管に振動を与えながら反応管下部から前駆体3とアルミナ球の混合物を抜き出した。その際、抜き出した混合物を目開き2mmの篩にかけて、この篩を通過した前駆体3は取り除き、さらにアルミナ球を分離して、前駆体の回収物を得た。そして、回収物を上記と同様にして反応管に再充填した。再充填を行った9本の反応管の内、3本において再度ブリッジが発生したので、先程と同様にして再充填を行った。その際、触媒層1の長さは1420mm(平均値)、触媒層2の長さは1455mm(平均値)であった。続いて、実施例1と同様の条件で、焼成および反応を行った。反応結果を表1に示す。
前駆体の落下粉化率が3.5%であること以外は実施例1と同様にして前駆体4を製造し、実施例1と同様の条件で反応管に充填した。20本の反応管の内、16本において、ブリッジが発生したため、その反応管に振動を与えながら反応管下部から前駆体4とアルミナ球の混合物を抜き出した。その際、抜き出した混合物を目開き2mmの篩にかけて、この篩を通過した前駆体4は取り除き、さらにアルミナ球を分離して、前駆体の回収物を得た。そして、回収物を上記と同様にして反応管に再充填した。再充填を行った16本の反応管の内、11本において再度ブリッジが発生したので、先程と同様にして再充填を行ったが、再びブリッジが発生したため、実験を中止した。
実施例2と同様に、前駆体2を実施例1と同様の条件で反応器に充填した。20本の反応管の内、3本において、ブリッジが発生したため、その反応管に振動を与えながら反応管下部から前駆体2とアルミナ球の混合物を抜き出した。その際、抜き出した混合物を篩にかけずに、そのまま上記と同様にして反応管に再充填した。その際、触媒層1の長さは1498mm(平均値)、触媒層2の長さは1501mm(平均値)であった。続いて、実施例1と同様の条件で、焼成および反応を行った。反応結果を表1に示す。
純水400部に三酸化モリブデン100部、85質量%リン酸水溶液8.0部、五酸化バナジウム4.2部、酸化銅0.9部、酸化鉄0.2部を加え、還流下で5時間攪拌した。この液を50℃まで冷却した後、29重量%アンモニア水37.4部を滴下し、15分間攪拌して金属溶液を調製した。次に、この金属溶液に、硝酸セシウム10.2部を純水30部に溶解した硝酸セシウム溶液を滴下し15分間攪拌して触媒原料液を調製した。得られた触媒原料液を噴霧乾燥機で乾燥して触媒成分を含む乾燥粉を得た。
その後、実施例1と同様にして前駆体5を得た。前駆体5の一部をサンプリングし、落下粉化率を測定したところ0.8%であった。
そして、実施例1と同様に反応器に前駆体5を充填した。20本の反応管の内、1本において、ブリッジが発生したため、その反応管に振動を与えながら反応管下部から前駆体5とアルミナ球の混合物を抜き出した。その際、抜き出した混合物を目開き2mmの篩にかけて、この篩を通過した前駆体5は取り除き、さらにアルミナ球を分離して、前駆体の回収物を得た。そして、回収物を上記と同様にして反応管に再充填した。その際、触媒層1の長さは1494mm(平均値)、触媒層2の長さは1500mm(平均値)であった。そして、実施例1と同様にして、焼成および反応を行った。反応結果を表2に示す。なお、焼成して得られた触媒の触媒成分における酸素以外の組成は、Mo12P1.2Cu0.2V0.8Fe0.05Cs0.9であった。
前駆体の落下粉化率が3.7%であること以外は実施例4と同様にして前駆体6を製造し、実施例1と同様の条件で反応器に充填した。20本の反応管の内、18本において、ブリッジが発生したため、その反応管に振動を与えながら反応管下部から前駆体6とアルミナ球の混合物を抜き出した。その際、抜き出した混合物を目開き2mmの篩にかけて、この篩を通過した前駆体6は取り除き、さらにアルミナ球を分離して、前駆体の回収物を得た。そして、回収物を上記と同様にして反応管に再充填した。再充填を行った18本の反応管の内、15本において再度ブリッジが発生したので、先程と同様にして再充填を行ったが、再びブリッジが発生したため、実験を中止した。
ブリッジが発生した反応管への再充填の際、回収物ではなく、新しい前駆体を用いること以外は実施例2と同様の条件で前駆体2を反応管に充填した。20本の反応管の内、3本において、ブリッジが発生したため、その反応管に振動を与えながら反応管下部から前駆体2とアルミナ球の混合物を抜き出し、再度新しい前駆体を充填した。その際、触媒層1の長さは1496mm(平均値)、触媒層2の長さは1502mm(平均値)であった。結果、20本の反応管に触媒前駆体を充填するにあたって、実施例2よりも3840mL多く触媒前駆体が必要となった。続いて、実施例1と同様の条件で、焼成および反応を行った。反応結果を表2に示す。
これに対し、落下粉化率が2.0%を超えていた回収物を反応管に再充填した比較例1では、実施例1と比較してブリッジの発生が多く、更にメタクリル酸選択率が低くなり、メタクリル酸の収率が低下した。また、比較例2,3では、再充填の際にブリッジが生じて反応を行うことができなかった。更に、参考例では、ブリッジが発生した反応管の回収物を再充填しなかったので、充填に必要な前駆体の総量が多くなった。
Claims (2)
- 下記式(1)で表される落下粉化率が2%以下の触媒または該触媒の前駆体の成形体(以下、成形体という)を反応管に充填し、次いで充填した成形体を抜き出して回収した回収物を反応管に再充填することを特徴とする成形体の再充填方法。
落下粉化率(%)={(100−A)/100}×100 (1)
ここで、Aは、5mの高さから成形体100gを落下させ、目開き2mmのSUS−304製篩の上に残ったものの質量(g)のことである。
前記成形体は、打錠成型、押出成型、造粒のいずれかによって成形した、球相当直径が3〜10mmの、球状、円柱状、リング状、板状のいずれかのものである。 - 反応管から抜き出した成形体を、目開き2mmの篩にかけ、該篩を通過しなかった成形体を分離回収して回収物を得て、該回収物を反応管に再充填することを特徴とする請求項1に記載の成形体の再充填方法。
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