JP4989366B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法 Download PDF

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Description

本発明は、反射・屈折角を乱れさせる領域を設けて光取り出し効率を向上する場合に、有機エレクトロルミネッセンス素子から出射される光の成分の量が所望の程度になるように有機エレクトロルミネッセンス素子の有機発光層の厚みを設計する有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方に関する。
図2は光透過性の基板6上に光透過性の電極1、ホール輸送層8、発光層3、電子輸送層9、光反射性の電極2が順次形成された有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を示す。この図2により従来の有機EL素子の設計方法を説明する。
特許文献1では、光反射性の電極2と、これに隣接する有機層4(ここでは電子輸送層9)の界面で光が反射する際には、外面反射であるので反射前後で位相シフトπが生じることを前提とし、発光層3から基板6側へ向かう光21と、発光層3から光反射性の電極2へ向かった後にこの電極2の表面で反射されてから基板6側に向かう光22とが干渉して強め合うようにするために、発光層3における発光源10と光反射性の電極2の表面との間の膜厚dに屈折率を乗じて導出される光学膜厚Dを光の波長λの1/4の奇数倍と略等しくなるようにし、これにより基板6から正面方向に外部に出射する光の成分の量が極大値となるようにすることができることが開示されている。
しかし、特許文献2で説明されているように、光反射性の電極2の表面で生じる位相シフトはπではなく、有機層4(電子輸送層9)の屈折率n1と消衰係数k1、並びに光反射性の電極2の屈折率n2と消衰係数k2に基づき、次の式(1)で表される位相シフトφである。
Figure 0004989366
特許文献2ではこの位相シフトφを考慮して、基板6から外部へ出射する光の成分の量が極大値となるようにするために、発光源10から電極2の表面までの光学膜厚Dが次の式(2)〜(4)を満たすようにすることが記載されている。
2π/9≦φ≦15π/18 …(2)
F=φ×λ/4π …(3)
0.73F≦D≦1.15F …(4)
ここで、図2において有機EL素子の発光層3の発光源10から斜めに発光した光23の伝搬について説明する。尚、実際には発光源10から光反射性の電極2へ向かう光も存在するが、ここでは省略している。屈折率の高い媒質から屈折率の低い媒質へ光が伝搬するとき、その界面では媒質間の屈折率により、スネルの法則から臨界角が決定され、その臨界角以上の光は界面で全反射して、屈折率の高い媒質に閉じ込められ、導波光として失われる。例えば、図2の有機EL素子で、基板6の屈折率が1.5である場合に、基板6から屈折率1.0の大気11へと出射する光の臨界角は約42°である。つまり、発光源10からの発光した光23が基板6から大気11へ出射するとき、大気11への入射角θが約42°より大きい光は基板6に閉じ込められ、導波光として失われる。立体角を考慮すると、基板6まで伝搬してきた光のうち、基板6から大気11へ出射する光の割合は約26%となり、残りの約74%は基板6に閉じ込められ、導波光として失われる。
この導波光を外部へ取り出すための手法として、例えば図3の有機EL素子のように基板6と大気11の間に反射・屈折角を乱れさせる領域7を形成することが挙げられる。この場合、スネルの法則を崩して、本来導波光として全反射される約42°以上の光の伝搬角を変化させることができ、これにより光の屈折角を変化させて全反射条件にある光を減らすことができる。このような手法としては、例えば透光性基体上に単粒子層を並べた拡散部材による光拡散層を形成する方法(特許文献3)が挙げられる。
このような光拡散層を形成する場合に、基板6の中で導波する光を効率良く取り出すための設計方法が特許文献4で提案されている。これは基板6から大気11へ出射される発光光の正面輝度値と50〜70°方向の輝度値が次の式(5)の関係を満たすようにし、或いは更に発光源10と光反射性の電極2の表面との間の寸法をd、発光層3に用いている発光材料の蛍光発光スペクトルのピーク波長をλ、発光層3と反射性電極との間の有機層4の屈折率をnとした場合に次の式(6)の関係を満たすようにするものである。
(正面輝度値)<(50〜70°方向の輝度値) …(5)
(3/n)λ<d<(0.5/n)λ …(6)
この設計方法によれば、正面方向の光は干渉により弱め合うが、通常は導波光として素子内に閉じ込められる広角度成分の光が強めあい、この光を光拡散層を設けることで外部に出射することで全体的な光の取り出し効率を向上しようというものである。
特開2000−243573号公報 特開2004−165154号公報 特開2001−356207号公報 特開2004−296423号公報
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、光反射性の電極2での反射の際の位相シフトが正確に考慮されておらず、この方法に従って発光源10から光反射性の電極2の表面までの寸法を設計しても、基板6から正面方向に外部へ出射する光の成分の量を極大値とすることができない。
また、特許文献2に記載の方法では、上記位相シフトを正確に考慮していることから、基板6から外部へ正面方向に出射する光の成分の量が極大値となるように設計することができるが、基板6を導波して失われる約70%の光の成分は考慮されておらず、このため光拡散層を設けて本来失われる光を取り出すようにした場合には、光取出し効率が必ずしも最も高くなるとはいえない。
また、特許文献4に記載の方法では、光拡散層を設けることで基板6を導波して失われる光を取り出す際に、光取り出し効率を向上することができるが、干渉効果によって変化する光の成分の量の一つの極大値のみを導出するものであって、発光源10と光反射性の電極2の表面との間の寸法を前記極大値とすることができない場合、例えば発光層3を複数層設ける場合のように発光源10と光反射性の電極2の表面との間の寸法が前記極大値を取り得る寸法を超えざるを得ないような場合には対応することができないものであった。
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板と大気との間に反射・屈折角を乱れさせる領域を設けることで本来基板を導波する光を外部に取り出して光取り出し効率を向上するにあたり、広い範囲のなかで有機発光層の厚みを設定することで、外部に出射する光の成分の量を向上することができる有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方を提供することを目的とするものである。
請求項1に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法は、光透過性の電極1と光反射性の電極2との間に発光層3と他の有機層4とを含む有機発光層5を設けると共に前記光透過性の電極1の有機発光層5とは反対側の表面に光透過性の基板6を備えて構成される有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法であって、前記基板6、光透過性の電極1、発光層3及び他の有機層4の、各厚み、屈折率及び消衰係数、並びに前記光反射性の電極2の屈折率及び消衰係数と、発光層3における発光材料のフォトルミネッセンススペクトルと、発光層3における発光点の位置及び発光分布とをファクターとして、光学伝搬解析を行うことにより、前記基板6内部を導波する光の成分の量と基板6から外部に出射する光の成分の量との和と、上記発光点から光反射性の電極2の表面までの寸法との間の関係を導出し、この関係に基づいて、基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設ける場合の有機発光層5の厚みを設計することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記光の成分の量が、視感度を考慮した光束であることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1において、上記光の成分の量が、光子数であることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1において、上記光の成分の量が、エネルギーであることを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、光の反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けていない状態での、基板6内部を導波する光の成分の量と基板6から外部に出射する光の成分の量との和と、発光点の位置から光反射性の電極2の表面までの寸法との間の関係から、有機発光層5の厚みを決定することで、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けた場合の出射光の光の成分の量が所望の程度になるようにすることができるものであり、またこのとき有機発光層5の広い厚み範囲に亘って前記関係を導出しておけば、広い厚み範囲に亘って有機発光層5の厚みを設計することができるものである。
また、請求項2に係る発明によれば、光の反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けていない状態での、基板6内部を導波する光束と基板6から外部に出射する光束との和と、発光点の位置から光反射性の電極2の表面までの寸法との間の関係から、有機発光層5の厚みを決定することで、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けた場合の出射光の光束が所望の程度になるようにすることができるものであり、またこのとき有機発光層5の広い厚み範囲に亘って前記関係を導出しておけば、広い厚み範囲に亘って有機発光層5の厚みを設計することができるものである。
また、請求項3に係る発明によれば、光の反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けていない状態での、基板6内部を導波する光子数と基板6から外部に出射する光子数との和と、発光点の位置から光反射性の電極2の表面までの寸法との間の関係から、有機発光層5の厚みを決定することで、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けた場合の出射光の光子数或いは量子効率が所望の程度になるようにすることができるものであり、またこのとき有機発光層5の広い厚み範囲に亘って前記関係を導出しておけば、広い厚み範囲に亘って有機発光層5の厚みを設計することができるものである。
また、請求項4に係る発明によれば、光の反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けていない状態での、基板6内部を導波する光のエネルギーと基板6から外部に出射する光のエネルギーとの和と、発光点の位置から光反射性の電極2の表面までの寸法との間の関係から、有機発光層5の厚みを決定することで、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けた場合の出射光の光のエネルギーが所望の程度になるようにすることができるものであり、またこのとき有機発光層5の広い厚み範囲に亘って前記関係を導出しておけば、広い厚み範囲に亘って有機発光層5の厚みを設計することができるものである。
以下、本発明の実施をするための最良の形態について説明する。
図2に有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の構成の一例を示す。
この有機EL素子は、透明な基板6の一面側に、光透過性の電極1、有機発光層5、光反射性の電極2が、この順に順次積層成形されている。前記有機発光層5は、発光材料を含む発光層3に必要に応じて電子注入層、電子輸送層9、正孔注入層、正孔輸送層等の適宜の有機層4を積層して構成される。図示の例では、光反射性の電極2と発光層3との間に電子輸送層9を介在させ、光透過性の電極1と発光層3との間にホール輸送層8を介在させている。
有機EL素子を構成する各層の材質は、有機EL素子に適用されている適宜のものを採用することができ、特に制限されない。
このような有機EL素子の設計にあたり、本発明では、光学伝搬解析を行うことにより、有機EL素子の基板6内部を導波する光の成分の量(導波成分量)と基板6から外部に出射する光の成分の量(出射成分量)との和と、上記発光点から光反射性の電極2の表面までの寸法(発光点位置寸法)との間の関係を求め、前記関係に基づいて有機発光層5の厚みの設計を行うものである。
ここで、上記の光の成分とは、有機エレクトロルミネッセンスの発光を評価するための成分であり、例えば視感度を考慮した光束、量子効率を求めるための光子数、或いは光のエネルギー(放射束)等、必要に応じて適宜のものが選択される。
上記光学伝搬解析を行うにあたっては、基板6、光透過性の電極1、発光層3及び前記発光層3以外の有機層4を有する場合はその有機層4の各厚み、屈折率及び消衰係数、並びに前記光反射性の電極2の屈折率及び消衰係数と、発光層3における発光材料のフォトルミネッセンススペクトル(PLスペクトル)と、発光層3における発光点の位置及び発光分布とを、ファクターとする。
発光層3における発光点の位置及び発光分布は、発光層3内に一つの発光点を設定し、発光分布としては前記発光点を基準にした発光層3内における厚み方向の発光源10の分布を設定したものを用いることができる。発光点の位置は、通常は発光層3内の最も強く発光する位置又はそれに相当する位置に設定することができる。また、発光分布としては、例えばデルタ分布、矩形分布、ガウス分布、発光点をピークとして指数関数的に減少する分布など、有機EL素子の構成に応じて発光源10の分布をよく反映するものを設定することができる。
例えば、発光層3内の発光材料としてAlq3等を用いる場合のように発光層3における電子移動度がホール移動度に比べて遙かに大きくなる場合には、主としてホール輸送層8と発光層3の界面で電子とホールの再結合が起こり最も強い発光が生じると考えられる。この場合、発光点の位置をホール輸送層8と発光層3の界面に設定し、発光分布をデルタ分布と設定することができる。
また、発光層3の厚みが1nm程度、或いはそれ以下の場合のように極く薄い場合には、発光層3の厚み方向の中心に発光点を設定すると共に、発光分布は発光層3の厚みと同一幅の矩形分布とみなして設定したり、或いは発光分布は発光点のみに分布するもの(分布なし)と設定しても良い。
また、発光層3内の発光点の位置と発光分布が不明な場合は、あらかじめ対象となる構成の有機EL素子を作製して、この素子から取り出される光の成分の量の角度特性を実測しておき、一方で後述する光学伝搬解析によって前記構成の有機EL素子について発光層3での発光点の位置と発光分布を変化させながら光の成分の量の角度特性を求め、両者を対比することで実測と一致する発光点の位置と発光分布とを設定しても良い。
また、発光層3における発光材料のPLスペクトルとしては文献値を使用しても良いが、実測値を使用することが好ましい。実測を行う場合には、例えばガラス製の基板6上に発光層3のみを蒸着法等により厚み数十nmに成膜し、この発光層3に紫外線を照射して発光させ、その発光を積分球等を用いて計測することで発光材料の発光スペクトルを測定することができる。
また、光透過性の電極1、発光層3、有機層4及び光反射性の電極2の、屈折率及び消衰係数については、文献値を利用しても良いが、実測値を使用することが好ましい。実測する場合には、例えばガラス製の基板6上に各層を形成するための材料のみを蒸着法等により厚み数十nmに成膜し、この層について分光法とエリプソメータや垂直入射式透過反射屈折率計とを用いて透過率と反射率を計測し、ローレンツモデルから誘電率を決定し、その値から逆算して屈折率と消衰係数とを求めることができる。屈折率と消衰係数は、波長ごとに求める。
これらのファクターを用いた光学伝搬解析にあたっては、有機EL素子では基板6を除き各層の厚みは数nm〜数100nm程度であり、可視光の波長380〜780nmと同程度であるため、有機EL素子内では光の多重干渉が生じる。
そこで、上記ファクターを用いることにより、有機EL素子の各層の材料の波長ごとの屈折率及び消衰係数と、発光層3での発光点の位置、発光分布及びPLスペクトルとを考慮した光の成分の量の角度特性を解析する光学伝搬解析を行うものである。この光学伝搬解析にあたっては、例えば、フレネル理論と特性マトリクス計算を組み合わせた波動光学に基づく理論計算(フレネル理論解析)やマクスウェル方程式を時間領域差分法で解く数値計算(FDTD法)等を適用することができる。
光学伝搬解析により導波成分量と出射成分量との和と、発光点位置寸法との間の関係を求めるにあたっては、光学伝搬解析のためのプログラムを用いたコンピュータによる情報処理によって行うことができる。この場合の、コンピュータが実行する手順のフローの一例について、図1を参照して説明する。
(S1)まず作業者がコンピュータ上で光学伝搬解析プログラムを起動する。
(S2)次に作業者によって、設計する有機EL素子の層構成と、各層の材料、構成、膜厚の値とが入力されると、その入力値を光学伝搬解析のファクターとして設定する。このとき、有機層4の厚みについては、発光点位置寸法と相関する有機層4の厚みは変数とし、残りの有機層4の厚みを設定する。例えば図1に示す構成の有機EL素子においては、発光層3と光反射性の電極2との間に介在する電子輸送層9の厚みを変数とし、また複数の有機層4が介在する場合にはこれらの有機層4の厚みを変数とする。
(S3)次に作業者によって前記各層の材料について波長ごとの屈折率と消衰係数が入力されると、その入力値を光学伝搬解析のファクターとして設定する。尚、コンピュータのメモリや適宜の記憶媒体等に予め有機EL素子に汎用される材料の波長ごとの屈折率と消衰係数を記憶させておき、上記材料の設定の際に設定された材料についての波長ごとの屈折率と消衰係数を自動的に読み込んで設定するものであっても良い。
(S4)次に作業者によって、発光層3に用いる材料のPLスペクトルが入力されると、これらを光学伝搬解析のファクターとして設定する。
(S5)次に作業者によって発光点の位置及び発光分布が入力されると、これらを光学伝搬解析のファクターとして設定する。
(S6)次に、作業者によって取得する光の成分の種類が入力されると、この光の成分の種類を設定する。
(S7)次に、作業者によって発光点位置寸法の範囲(初期値及び最大値)と刻み幅が入力されると、この寸法範囲と刻み幅を設定する。尚、作業者による入力を不要とし、あらかじめ寸法範囲と刻み幅を設定しておいても良い。例えば初期値を40nm、最大値を740nm、刻み幅を10nmと設定することができる。
(S8)次に発光点位置寸法を、S7で設定された初期値に設定すると共に、S2において変数とされている電子輸送層9等の有機層4の厚みを、発光点位置寸法の前記設定値と合致する値に設定する。尚、二層以上の有機層4の厚みが変数とされている場合には、例えばこの二層以上の有機層4同士の厚みの比率を一定に保ったり、特定の一つの有機層4の厚みを変更して他の有機層4の厚みを固定するなど、適宜の手法により有機層4の厚みを設定することができる。
上記S2〜S8を実行する順序は上記のものに限られず、適宜順序を入れ替えても良い。
(S9)次に有機EL素子内の光についてフレネル理論解析等の光学伝搬解析を実行し、導波成分量と出射成分量との和を取得する。ここでは光学伝搬解析としてフレネル理論解析を用いる。
このS9における処理は、例えば下記T1〜T7の手順を実行することで行うことができる。このとき、発光層3内の発光源10は、上記発光点の位置及び発光分布に従って分布する点光源であり、全方位に向けて等方的に光を放射するものと仮定する。また、同一の発光源10からは全方位に向けて光が同位相で放射され、発光層3内で多重干渉が生じるが、異なる発光源10から放射される光同士は干渉しないと仮定する。また、各層間の界面は平坦であると仮定する。また、光の成分の量はs偏光とp偏光の平均値であると仮定する。
また、導波成分量と出射成分量との和を導出する際には、導波成分量と射出成分量とをそれぞれ導出した後、これらを足し合わせることで導出することもできるが、下記T1〜T6の手順では、基板6がこの基板6と同一の屈折率及び同一の消衰係数を有する層と接触すると仮定した場合に基板6から出射される光の成分の量を導出し、これを導波成分量と出射成分量との和としている。
(T1)まず、発光源10からの上層側及び下層側への光の放射角度、発光波長、及び発光源10の発光層3内での位置をパラメータとし、各値の初期値を設定する。
(T2)次に、上記の光の放射角度、発光波長、及び発光源10の発光層3内での位置の設定値と、基板6、光透過性の電極1、発光層3及びこの発光層3以外の有機層4(電子輸送層9、ホール輸送層8等)の、各厚み、屈折率及び消衰係数、並びに前記光反射性の電極2の屈折率及び消衰係数の設定値とに基づき、基板6の外部には基板6と同一の屈折率及び消衰係数を有する層が積層されていると仮定した上で発光層3よりも下層と上層の各多層膜をそれぞれ光学的に等価な単層膜に変換し、特性マトリクス計算を実行することで、有効フレネル係数として、発光層3とその上層との界面での光の反射係数及び透過係数、並びに発光層3とその下層との界面での反射係数を導出する。
このとき、まず発光層3とその上層との界面での有効フレネル係数を導出するにあたっては、発光層3よりも上層側に配置されている基板6までの層数sの多層膜について、j番目の層の特性マトリクスM及び多層膜の特性マトリックスMを下記式から導く。式中のλは発光波長の設定値である。dはj番目の層の厚みの設定値である。n、kはそれぞれj番目の層の屈折率及び消衰係数の設定値である。θはj番目の層からの光の入射角であって、光の放射角度の設定値に基づき、各層につきスネルの法則から導かれるものである。
Figure 0004989366
この特性マトリクスMを用い、規格化された電界及び磁界の各振幅B,Cを、下記式から導く。式中のθは基板6からの光の入射角である。
Figure 0004989366
この結果に基づき、発光層3とその上層の仮想的な単層膜との界面での有効フレネル係数である反射係数ρと位相変化φを下記式にて算出する。式中のn、kはそれぞれ発光層3の屈折率及び消衰係数の設定値である。θは発光層3からの光の入射角であって、光の放射角度の設定値に基づいて導かれるものである。
Figure 0004989366
また、発光層3とその下層との界面での有効フレネル係数を導出するにあたっては、上記と同様にして、発光層3よりも下層側に配置されている光反射性の電極2までの多層膜について特性マトリックス計算を行い、発光層3とその下層の仮想的な単層膜との界面での反射係数ρと位相変化φを算出する。
(T3)次に、設定波長に基づき、上記導出された有効フレネル係数を境界条件として、発光源10から上面側と下面側にそれぞれ同一角度で放射される光につき、下記式に示すような多重干渉計算を実行することにより、発光源10から有機EL素子の外部に出射される光のエネルギー透過率Tが算出される。この光のエネルギー透過率Tに、発光材料のフォトルミネッセンススペクトルから取得される設定波長での光のエネルギーを積算することで有機EL素子から外部に出射される光のエネルギーを算出する。尚、有機EL素子から外部に出射される光のエネルギーの精度を上げるために、発光層3と有機EL素子外部の屈折率差に伴う立体角の変化を補正したり、膜厚の厚い基板6部分の透過率を補正しても良い。下記式中のnは発光層3の屈折率の設定値である。θは発光層3からの光の入射角であって、光の放射角度の設定値に基づいて導かれるものである。dは発光層3の膜厚である。Zは発光源10から電子輸送層9までの界面までの距離であって、発光源10の位置の設定値に基づいて導かれるものである。
Figure 0004989366
尚、この算出される光の成分の量には、後述する反射・屈折角を乱れさせる領域7の角度特性に基づく補正を施しても良い。この場合、更に正確に有機EL素子の設計を行うことができる。例えば、予め領域7のみを基板6に積層したものについて、基板6側から入射角を変化させながら光を照射すると共に入射角ごとに出射光の光の成分の量を計測したり、FDTD法等による解析を行ったりするなどして、領域7から出射される光の成分の量の角度特性を導出し、この角度特性に基づき、光の成分の量を補正することができる。
(T4)次に、発光源10の位置の設定値を変更し、上記T2〜T3の手順を繰り返す。この手順はて全ての発光源10の位置が順次設定されるまで繰り返し行う。ここで、発光源10の位置は、設定されている発光点の位置と発光分布とに基づいて導出されたものを用いる。
(T5)次に、発光波長の設定値を変更し、上記T2〜T4の手順を繰り返す。このとき発光波長の設定値は、例えば可視光の波長380〜780nmの範囲で順次変更する。
(T6)次に、発光源10からの放射角度の設定値を変更し、上記T2〜T5の手順を繰り返す。このとき放射角度の設定値は例えば0°〜90°の範囲で順次変更する。
(T7)次に、導波成分量と出射成分量との和を導出し、メモリや各種記憶媒体に記憶させる。このとき、上記S6において光の成分の量として光のエネルギーが設定されている場合には、T2〜T6の手順で順次算出した光のエネルギーの積分値を導波成分量と出射成分量との和として導出する。また、上記S6において光の成分の量として光子数が設定されている場合には、前記光のエネルギーをchν(c:光速、h:プランク定数、ν:波長の逆数)の値で除することで導波成分量と出射成分量との和を導出する。また、上記S6において光の成分の量として光束が設定されている場合には、導波成分量と出射成分量との和は、T2〜T6の手順で順次算出した光のエネルギーからCIE標準比視感度と最大視感度とに基づいて導出する。
(S10)次に、この時点で設定されている発光点位置寸法の値を、S8で設定された発光点位置寸法の最大値と比較する。
(S11)S10において、発光点位置寸法の設定値が前記最大値よりも小さいと判定されたら、この設定値をS7で設定された刻み幅分だけ増大させた値に変更すると共に、電子輸送層9等の発光点位置寸法と相関する有機層4の厚みの設定値をS8と同様にして発光点位置寸法の前記設定値と合致する値に変更し、その後、上記S9(T1〜T7)の処理を繰り返す。これにより、発光点位置寸法の設定範囲内における、導波成分量と出射成分量との和と、発光点位置寸法との間の関係が記録される。尚、S11においては、導波成分量と出射成分量との和の極大値付近では発光点位置寸法の設定値を前記設定された刻み幅よりも小さな値だけ増大させることで、極大値付近の光の成分の量を詳細に導出するようにしても良い。
(S12)また、S10において、設定値が前記最大値まで達していると判定されたら、上記のようにして得られた、導波成分量と出射成分量との和と、発光点位置寸法との間の関係を、メモリや適宜の記憶媒体等に電子データとして記憶させて保存する。
このS11の処理においては、上記導波成分量と出射成分量との和の極大値と、この極大値に対応する発光点位置寸法との組み合わせを導出し、これをメモリや適宜の記憶媒体等に電子データとして記憶させて保存しても良い。このとき、光の干渉効果により有機発光層5の膜厚の設定範囲内で複数の極大値が現れている場合には、各極大値につき、この極大値と、対応する発光点位置寸法との組み合わせを保存する。また、極大値ごとに、この極大値に対応する発光点位置寸法を中心とした一定幅(例えば±40nm)の発光点位置寸法の範囲、或いはこの範囲内における導波成分量と出射成分量との和と、発光点位置寸法との間の関係を導出して保存しても良い。また、これらの結果をディスプレイ等の表示装置に出力して表示しても良い。
以上のようにして得られた導波成分量と出射成分量との和と、発光点位置寸法との間の関係は、図3に示すように有機EL素子の基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けることで導波成分を外部に取り出す場合の、有機発光層5の厚みの設計に利用する。この反射・屈折角を乱れさせる領域7は、基板6内からのこの基板6とその外部との界面に到達した光を拡散させるなどすることにより本来前記界面で反射して基板6内を導波する光を外部に出射させる機能を有するものであり、例えばシリカやアルミナ等の透光性微粒子を透光性を有する結着剤中に分散させるなどして構成される光拡散層を形成することができる。
有機発光層5の厚みの設計は、導波成分量と出射成分量との和が所望の値となるように発光点位置寸法を調整することで行うことができる。この発光点位置寸法の調整は、発光点位置寸法の値と相関する電子輸送層9等の有機層4の厚みを、所望の発光点位置寸法と対応する値になるようにすることで行うことができる。
このように有機発光層5の厚みを設計するにあたり、導波成分量と出射成分量との和が極大値あるいはその近傍の値をとるように有機発光層5の厚みを設計することで、基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けた場合に有機EL素子から出射される光の成分の量を著しく向上することができる。
ここで、光学伝搬解析の際に発光点位置寸法の設定範囲を広くとっていれば、上記極大値として第一の極大値だけでなく、第二の極大値或いは第三以降の極大値と、発光点位置寸法との関係も導出される。このため、導波成分量と出射成分量との和が、複数の極大値のうちのいずれかの値又はその近傍の値をとるように、有機発光層5の厚みを設計することができる。
また、上記のように導波成分量と出射成分量との和が極大値又はその近傍をとるようにするだけでなく、この値が適宜の値をとるように有機発光層5の厚みを設計することができ、このとき導波成分量と出射成分量との和と、発光点位置寸法との間の関係から、導波成分量と出射成分量との和が充分に大きくなるように有機発光層5の厚みを設計することで、有機EL素子から出射される光の成分の量を向上することができる。
また、有機EL素子の構成によっては発光点位置寸法が制限される場合がある。その具体的な例としては、有機EL素子が複数の発光層3を含むことで、この有機EL素子の各発光層3における発光点ごとの発光点位置寸法の範囲が一定の範囲に制限される場合が挙げられる。このような場合であっても、上記のように有機発光層5の厚み設計を広い範囲で行うことができるので、各発光層3ごとに、その発光点位置寸法の制限範囲内で、導波成分量と出射成分量との和が極大値又はその近傍をとるように、或いはこのような値でなくても導波成分量と出射成分量との和が前記制限範囲内で最も高い値をとるなどのように充分に大きい値をとるように、有機発光層5の厚みの設計を行うことができる。
ここで、複数の発光層3から発せられる光の成分のうち、全ての発光層3からの導波成分量と出射成分量との和が極大値をとるように厚み設計をすると、光の取り出し効率を非常に高くすることができるが、少なくとも一つの発光層3からの導波成分量と出射成分量との和が極大値をとるようにすれば、光の取り出し効率の向上に寄与することができる。また、導波成分量と出射成分量との和がいずれも極大値をもとることができない場合でも、上述のように有機エレクトロルミネッセンスから出射される光の成分の量が所望のものとなるように有機発光層5の厚みを設計することができる。
以下に、有機EL素子の設計の具体例を示す。
有機EL素子として、膜厚0.7mmのガラスの基板6上に、ITOからなる膜厚150nmの光透過性の電極1、NPDからなる膜厚40nmのホール輸送層8、ルブレン(Rubrene)を6重量%ドープしたAlq3からなる膜厚30nmの発光層3、下記[化1]のTmPyPhBからなり膜厚が変数となる電子輸送層9、Alからなる膜厚80nmの光反射性の電極2を積層したものを想定する。
Figure 0004989366
このとき、発光層3に用いられるルブレン(Rubrene)を6重量%ドープしたAlq3の、光のエネルギー(放射束)のPLスペクトルを実測すると、図4に示すようなものとなり、スペクトルのピーク波長は559nmである。尚、図4の縦軸は光のエネルギーの規格化強度を示す。
また、発光層3内の発光点の位置と発光分布は、本例のようにAlq3を用いる場合には発光層3における電子移動度がホール移動度より3桁程度大きくなるため、発光点の位置をホール輸送層8と発光層3の界面に設定し、発光分布はデルタ分布と設定することができる。
図5は、上記のような形態の有機EL素子において、電子輸送層9の厚みを変化させることにより発光点位置寸法を変化させた場合の、光束の導波成分量と出射成分量との和と、発光点位置寸法との関係を、上記のようなフレネル理論解析により導出した結果を示す。図5の縦軸は光束の相対値を示している。尚、このフレネル理論解析においては光の反射・屈折角を乱れさせる領域7の角度特性に基づく補正は行っていない。
また、図5には、併せて光束の出射成分量と、発光点位置寸法との関係を示す。ここで、光束の出射成分量は、上記のようなフレネル理論解析における特性マトリクス計算において基板6が直接大気11に接触していると仮定することで導出することができる。
図示のように、導波成分量と出射成分量との和と、出射成分量とは、共に発光点位置寸法が増大するに従って変化してそれぞれ複数の極大値をとるが、その変化の傾向は相違しており、極大値をとる発光点位置寸法の値にずれが生じている。
すなわち、出射成分量については、発光点位置寸法が70nmで第一の極大値が現れ、250nmで第二の極大値が現れるが、導波成分量と出射成分量との和については発光点位置寸法が80nmで第一の極大値が、290nmで第二の極大値が現れる。このため、導波成分量と出射成分量との和と発光点位置寸法との関係に基づけば、導波成分量と出射成分量との和の極大値をとるように有機発光層5の厚みを設計することで、出射成分量のみに基づく場合よりも、光の反射・屈折角を乱れさせる領域7が設けられた有機EL素子から出射される光束を増大させることができる。例えば、出射成分量のみを基準にしてその第二の極大値をとるように有機発光層5の厚み設計をした場合と比較して、導波成分量と出射成分量との和が第二の極大値をとるように有機発光層5の厚み設計を行うと、理想的には有機エレクトロルミネッセンスから出射される光束を1.12倍増加させることができる。
また、導波成分量と出射成分量との和の、第一の極大値を中心とした範囲、例えば膜厚70〜90nmの範囲では、導波成分量と出射成分量との和が大きくなっており、この範囲において、有機発光層5の厚みを設計すれば、有機エレクトロルミネッセンスから出射される光束を充分に大きくすることができる。
また、出射成分量の値は各極大値の間で大きく落ち込んでいるが、導波成分量と出射成分量との和の値は、例えば第二の極大値と第三の極大値との間では変化がなだらかで値の落ち込みが小さくなっている。このため、ここに挙げた例では、導波成分量と出射成分量との和に基づけば、第二の極大値と第三の極大値の間、並びにその近傍を含む、導波成分量と出射成分量との和が充分に大きな範囲、例えば発光点位置寸法が250〜470nmの範囲において、有機発光層5の厚みを設計すれば、有機エレクトロルミネッセンスから出射される光束を充分に大きくすることができる。すなわち、出射成分量と発光点位置寸法との関係に基づいて有機EL素子を設計する場合では充分な光束が出射されないと判断されるような発光点位置寸法であっても、実際にはその発光点位置寸法では充分に大きな光束が出射されることを見出して、有機EL素子を設計することができるものである。
このように、有機EL素子の基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けた場合の出射光の光束が所望の程度になるように有機発光層5の厚み設計を行うことができ、またこのとき有機発光層5の広い厚み範囲に亘って有機発光層5の厚みを設計することができるものである。
また、図6は、光の成分の量として光子数を用いた場合に光学伝搬解析により導出された、導波光量と出射光量との和と発光点位置寸法との関係を示す。ここで、縦軸は、光子数を電子数J/e(Jは有機EL素子に流れる電流密度。eは電荷素量)で除して得られる量子効率の相対値を示しており、このとき電流密度Jを10mA/cm2と仮定している。従って、図6は、正確には光子数の導波成分量と出射成分量との和から導出される量子効率と、発光点位置寸法との関係を示している。また、併せて出射成分量のみから導出される量子効率と、発光点位置寸法との関係も示している。
この場合も、導波成分量と出射成分量との和から導出される量子効率と、出射成分量のみから導出される量子効率とは、共に発光点位置寸法が増大するに従って変化してそれぞれ複数の極大値をとるが、その変化の傾向は相違しており、極大値をとる発光点位置寸法の値にずれが生じている。その変化の傾向は、図4に示す光の成分の量として光束を用いた場合の結果と同様である。
すなわち、出射成分量については、発光点位置寸法が70nmで第一の極大値が現れ、260nmで第二の極大値が現れるが、導波成分量と出射成分量との和については発光点位置寸法が90nmで第一の極大値が、300nmで第二の極大値が現れる。このため、導波成分量と出射成分量との和と発光点位置寸法との関係に基づけば、導波成分量と出射成分量との和の極大値をとるように有機発光層5の厚みを設計することで、出射成分量のみに基づく場合よりも、光の反射・屈折角を乱れさせる領域7が設けられた有機EL素子から出射される光子数或いは量子効率を増大させることができる。例えば、出射成分量のみを基準にしてその第二の極大値をとるように有機発光層5の厚み設計をした場合と比較して、導波成分量と出射成分量との和が第二の極大値をとるように有機発光層5の厚み設計を行うと、理想的には有機エレクトロルミネッセンスから出射される光子数或いは量子効率を1.12倍増加させることができる。
また、導波成分量と出射成分量との和の、第一の極大値を中心とした範囲、例えば膜厚70〜100nmの範囲では、導波成分量と出射成分量との和が大きくなっており、この範囲において、有機発光層5の厚みを設計すれば、有機エレクトロルミネッセンスから出射される光子数或いは量子効率を充分に大きくすることができる。
また、出射成分量の値は各極大値の間で大きく落ち込んでいるが、導波成分量と出射成分量との和の値は、例えば第二の極大値と第三の極大値との間では変化がなだらかで値の落ち込みが小さくなっている。このため、ここに挙げた例では、導波成分量と出射成分量との和に基づけば、第二の極大値と第三の極大値の間、並びにその近傍を含む、導波成分量と出射成分量との和が充分に大きな範囲、例えば発光点位置寸法が260〜500nmの範囲において、有機発光層5の厚みを設計すれば、有機エレクトロルミネッセンスから出射される光子数或いは量子効率を充分に大きくすることができる。すなわち、出射成分量と発光点位置寸法との関係に基づいて有機EL素子を設計する場合では充分な光子数が出射されないと判断されるような発光点位置寸法であっても、実際にはその発光点位置寸法では充分に大きな光子数が出射されることを見出して、有機EL素子を設計することができるものである。
このように、有機EL素子の基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けた場合の出射光の光子数或いは量子効率が所望の程度になるように有機発光層5の厚み設計を行うことができ、またこのとき有機発光層5の広い厚み範囲に亘って有機発光層5の厚みを設計することができるものである。
また、図7は、光の成分の量としてエネルギー(放射束)を用いた場合に光学伝搬解析により導出される、導波光量と出射光量との和と発光点位置寸法との関係を示す。ここで、縦軸はエネルギーの相対値を示す。また、併せて出射成分量のみから導出されるエネルギーと、発光点位置寸法との関係も示している。
この場合も、導波成分量と出射成分量との和と、出射成分量とは、共に発光点位置寸法が増大するに従って変化してそれぞれ複数の極大値をとるが、その変化の傾向は相違しており、極大値をとる発光点位置寸法の値にずれが生じている。その変化の傾向は、図4に示す光の成分の量として光束を用いた場合の結果と同様である
すなわち、出射成分量については、発光点位置寸法が70nmで第一の極大値が現れ、260nmで第二の極大値が現れるが、導波成分量と出射成分量との和については発光点位置寸法が90nmで第一の極大値が、300nmで第二の極大値が現れる。このため、導波成分量と出射成分量との和と発光点位置寸法との関係に基づけば、導波成分量と出射成分量との和の極大値をとるように有機発光層5の厚みを設計することで、出射成分量のみに基づく場合よりも、光の反射・屈折角を乱れさせる領域7が設けられた有機EL素子から出射される光のエネルギーを増大させることができる。例えば、出射成分量のみを基準にしてその第二の極大値をとるように有機発光層5の厚み設計をした場合と比較して、導波成分量と出射成分量との和が第二の極大値をとるように有機発光層5の厚み設計を行うと、理想的には有機エレクトロルミネッセンスから出射される光のエネルギーを1.11倍増加させることができる。
また、導波成分量と出射成分量との和の、第一の極大値を中心とした範囲、例えば膜厚70〜100nmの範囲では、導波成分量と出射成分量との和が大きくなっており、この範囲において、有機発光層5の厚みを設計すれば、有機エレクトロルミネッセンスから出射される光のエネルギーを充分に大きくすることができる。
また、出射成分量の値は各極大値の間で大きく落ち込んでいるが、導波成分量と出射成分量との和の値は、例えば第二の極大値と第三の極大値との間では変化がなだらかで値の落ち込みが小さくなっている。このため、ここに挙げた例では、導波成分量と出射成分量との和に基づけば、第二の極大値と第三の極大値の間、並びにその近傍を含む、導波成分量と出射成分量との和が充分に大きな範囲、例えば発光点位置寸法が260〜500nmの範囲において、有機発光層5の厚みを設計すれば、有機エレクトロルミネッセンスから出射される光のエネルギーを充分に大きくすることができる。すなわち、出射成分量と発光点位置寸法との関係に基づいて有機EL素子を設計する場合では充分な光のエネルギーが出射されないと判断されるような発光点位置寸法であっても、実際にはその発光点位置寸法では充分に大きな光のエネルギーが出射されることを見出して、有機EL素子を設計することができるものである。
このように、有機EL素子の基板6に反射・屈折角を乱れさせる領域7を設けた場合の出射光の光のエネルギーが所望の程度になるように有機発光層5の厚み設計を行うことができ、またこのとき有機発光層5の広い厚み範囲に亘って有機発光層5の厚みを設計することができるものである。
このようにして導出された導波成分量と出射成分量との和と発光点位置寸法との関係が、実際の有機EL素子から出射される光の成分の量を反映していることを、以下に検証する。
図9は、上記構成を有する有機EL素子を実際に作製し、この有機EL素子から出射される、導波成分量と出射成分量との和に相当する光の成分の量を計測した結果を示す。図9の縦軸は光束の相対値を示している。この計測は次のようにして行ったものである。
まず、図5に示す関係を導出するために想定したものと同一の構成を有する有機エレクトルミネッセンス素子を、電子輸送層9の厚みを異ならせて複数個作製する。
各有機EL素子につき、図8に示すように、基板6の表面に半球レンズ12を設ける。この半球レンズ12は基板6と同一の材質で形成したものであり、一面側が平面、他面側が球面となったレンズである。この半球レンズ12は、その平面を基板6の表面と密接させるようにして基板6に設ける。
この状態で有機EL素子を発光させて、光を半球レンズ12から出射させ、出射光を積分球を用いて計測する。このとき、基板6の屈折率は約1.5であるから、半球レンズ12を設けない場合はスネルの法則により基板6から大気11側へ出射する光の臨界角は約42°となり、入射角θが臨界角よりも小さい光23は大気11側に出射されるが、入射角θが臨界角よりも大きい光23は基板6と大気11との界面で全反射して基板6内を導波する。しかし、前記半球レンズ12を設けることで本来全反射するはずの光23も半球レンズ12へ入射される。また半球レンズ12へ入射した光23は球面側から出射するため、半球レンズ12から大気11への入射角が低減され、半球レンズ12へ入射した光23の殆どを球面側から大気11に出射することができる。このため、半球レンズ12から出射される光の成分の量は、導波成分量と出射成分量との和に相当するものとなる。
また、上記半球レンズ12を設けない状態で、同様に有機EL素子からの出射光を計測した。このとき出射される光の成分の量は、出射成分量に相当するものになる。
図5と図9を対比すると、光学伝搬解析にて導出された図5に示す導波成分量と出射成分量との和と発光点位置寸法との関係は、図9に示す実測結果と非常によく近似しており、光学伝搬解析にて導出される導波成分量と出射成分量との和と発光点位置寸法との関係に基づけば、有機EL素子の設計を正確に行うことができることを確認することができる。
本発明の実施の形態の一例を示すフローチャートである。 反射・屈折角を乱れさせる領域が設けられていない有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。 反射・屈折角を乱れさせる領域が設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。 ルブレンを6重量%ドープしたAlq3のフォトルミネッセンススペクトルの測定結果を示すグラフである。 光学伝搬解析を行うことにより導出された、基板内部を導波する光束と基板から外部に出射する光束との和と、発光点から光反射性の電極の表面までの寸法との間の関係の一例を示すグラフである。 光学伝搬解析を行うことにより導出された、基板内部を導波する光子数と基板から外部に出射する光子数との和から求められる量子効率と、発光点から光反射性の電極の表面までの寸法との間の関係の一例を示すグラフである。 光学伝搬解析を行うことにより導出された、基板内部を導波する光のエネルギーと基板から外部に出射する光のエネルギーとの和と、発光点から光反射性の電極の表面までの寸法との間の関係の一例を示すグラフである。 半球レンズが設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。 半球レンズを設けた場合及び半球レンズを設けない場合において計測された、有機エレクトロルミネッセンス素子から出射される光束と、発光点から光反射性の電極の表面までの寸法との間の関係の一例を示すグラフである。
符号の説明
1 光透過性の電極
2 光反射性の電極
3 発光層
4 有機層
5 有機発光層
6 基板
7 反射・屈折角を乱れさせる領域

Claims (4)

  1. 光透過性の電極と光反射性の電極との間に発光層と他の有機層とを含む有機発光層を設けると共に前記光透過性の電極の有機発光層とは反対側の表面に光透過性の基板を備えて構成される有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法であって、
    前記基板、光透過性の電極、発光層及び他の有機層の、各厚み、屈折率及び消衰係数、並びに前記光反射性の電極の屈折率及び消衰係数と、発光層における発光材料のフォトルミネッセンススペクトルと、発光層における発光点の位置及び発光分布とをファクターとして、光学伝搬解析を行うことにより、
    前記基板内部を導波する光の成分の量と基板から外部に出射する光の成分の量との和と、上記発光点から光反射性の電極の表面までの寸法との間の関係を導出し、この関係に基づいて、基板に反射・屈折角を乱れさせる領域を設ける場合の有機発光層の厚みを設計することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法。
  2. 上記光の成分の量が、視感度を考慮した光束であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法。
  3. 上記光の成分の量が、光子数であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法。
  4. 上記光の成分の量が、エネルギーであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の設計方法
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