JP4988559B2 - 細胞の調製 - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明は、閉鎖系での形質導入及び遺伝子改変型細胞の選択のための方法に関する。
発明の背景
現在、通常は形質導入及び遺伝子改変型細胞の選択に開放系が使用されている。しかし、係るシステムは時間がかかるものであり得、かつかなりの汚染リスクに関連し得る。これは特に、細胞を臨床設定で用いる予定である場合、及び高用量が要求される場合である。係る要求の一例は、同種骨髄移植に使用するための、ドナーT細胞の製造である。
同種骨髄移植は、多くの血液悪性腫瘍のための最適な治療である(Thomas 1983, J Clin Oncol 1:517; O’Reilly 1993, Curr Op In Hematol 221)。
同種骨髄移植の関連で、腫瘍の頻繁な完全撲滅におけるドナーTリンパ球の免疫学的役割が一般的に認められている。ドナーTリンパ球により誘導される抗腫瘍効果(移植片対白血病、GvL)は、従来の化学療法及び自己移植よりも優れた治療方法を与える。
さらに、ドナーTリンパ球の注入も、ウイルス及び真菌に対する免疫応答の再構成を仲介することができ、これは係る感染の発生率及び重篤度が、移植操作されていないもの対Tリンパ球が消耗しているものの関連で、より低下することによって立証されている(Papadopoulos 1994, N Engl J Med 330:1185; Rooney 1995, The Lancet 345:9; Heslop 1996, Nature Med 2:551; Rooney 1998, Blood 92:1549; Riddel 1992, Science 257; Walter 1995, N Engl J Med 333:1038)。
抗腫瘍効果の誘導における明確な臨床的利益にも関わらず、ドナーTリンパ球の注入は、移植片対宿主拒絶反応(GvHD)の発生に関する高められたリスクによって、依然として困難である。これはドナーリンパ球による宿主組織への攻撃に起因しており、特に関連のハプロ一致ドナー由来の移植片を受け取る患者における、死亡及び死亡率の上昇によって特徴付けられる(Kolb 1995, Blood 86:2041; Collins 1997, J Clin Oncol 15:433; Porter 2000, Blood 95:1214)。
疾患の発生率及び重篤度は、注入されたリンパ球数に比例し、これは用量が多いほど、疾患がより重度であることを意味する。抗腫瘍活性及び抗ウイルス活性に関する臨床的利益は注入用量に比例するため、用量の増加は抗腫瘍利益を増大するが、同時にGvHDのリスクを増大する。GvHDに特異的な治療は存在せず、使用されているステロイド及び他の免疫抑制剤を基礎とするその治療は、非特異的であり、かつ重篤な感染及び疾患の再発の発生率の上昇により困難とされる。
発生するGvHDを選択的に制御することを可能としながら、免疫学的再構成を達成しかつ感染事象及び疾患の再発を低減するための有望な戦略は、自殺遺伝子及びマーカー遺伝子を含むレトロウイルスベクターが形質導入されているドナーリンパ球の使用である。自殺遺伝子は、遺伝子改変型細胞を、GvHDが出現する場合に、注入した細胞をその後選択的に排除するために使用される薬剤に感受性なものとする。マーカー遺伝子の存在は、遺伝子改変型細胞の生存、増殖及び移動部位の追跡を可能にする。
例えば、自殺遺伝子であるHSV-tk及びマーカー遺伝子であるΔLNGFRの両方を保有するベクターSFCMM-3を使用し得る(Verzeletti 98, Human Gene Therapy 9:2243)。HSV-tkは単純ヘルペスウイルスIのチミジンキナーゼ酵素(HSV-tk)をコードし、これは一旦ドナーリンパ球に挿入されて、これをガンシクロビルに選択的に感受性にする。この薬剤ガンシクロビルは、患者への投与後に遺伝子改変型細胞によって発現されるチミジンキナーゼ酵素によってリン酸化され、その後細胞キナーゼによって連続的にリン酸化される。活性形態のガンシクロビルはゲノムDNAの合成を阻害し、それによって細胞死を引き起こす(Smee 1983, Antimicrobials Agents and Chemotherapy 4:504)。HSV-sk自殺系は、既に様々な臨床研究で有効であることが立証されている(Bordignon 1995, Hum Gene Ther 2:813; Bonini 1997, Science 276:1719; Tiberghien 1997, Hum Gene Ther 8:615; Tiberghien 2001, Blood 97:63; Link 1998, Hum Gene Ther 9:115; Champlin 1999, Blood 94:1448)。
LNGFR遺伝子は、細胞内部分で欠失している神経成長因子(NGF)に対する親和性の低いレセプターをコードし、その結果、もはやシグナル(ΔLNGFR)を伝達することができない(Mavilio 1994, Blood 83:1988)。モノクローナル抗体及び磁気ビーズを利用して、ΔLNGFRタンパク質の存在が遺伝子改変型細胞のin vitro免疫選択を可能にする。さらに、ΔLNGFRタンパク質の発現は、一旦患者に注入されて、係る細胞の存在、増殖又は減少の記録、並びにリンパ球サブタイプ及び活性化の状態に関するその特徴付けを可能にした時点で、遺伝子改変型細胞に対するマーカーとして使用される。
上記の臨床研究(Bordignon 1995, Hum Gene Ther 2:813; Bonini 1997, Science 276:1719; Tiberghien 1997, Hum Gene Ther 8:615; Tiberghien 2001, Blood 97:63; Link 1998, Hum Gene Ther 9:115; Champlin 1999, Blood 94:1448)は、異なる遺伝子改変リンパ球(最終産物)の製造方法に依存する。この方法は、細胞の解凍、刺激、形質導入、選択、増殖及び患者注入のための最終産物の回収が含まれる。患者注入前に試験される最終産物の安全性は、このプロセスの各ステップ中の細胞操作に関連する。通常これらの方法は、細胞培養用のフラスコ及び細胞操作(形質導入及び選択等)用の層流ボックスを用いて開放系で開発される。現在の開放系は臨床プロトコールのための形質導入T細胞の製造に使用されている。しかし、係るシステムは時間がかかるものであり得、かつかなりの汚染リスクに関連し得る。
したがって、形質導入しかつ遺伝子改変した細胞を選択する、効果的かつ安全な方法のニーズが存在する。
発明の概要
本発明は、閉鎖系で細胞を操作しかつ培養する方法を提供することによって上記問題を回避する。開放系から閉鎖系への転換により、生産物のスケールアップ及び臨床用途のための生産物の安全性の改善が可能になる。
本発明の一態様では、細胞に遺伝子構築物を形質導入しかつ係る遺伝子改変型細胞を選択する方法であって、該形質導入及び選択を閉鎖系で実施することを含む、上記方法が提供される。
本発明の別の態様では、細胞を改変する方法であって
(i)場合により該細胞を解凍すること;
(ii)場合により該細胞を刺激すること;
(iii)該細胞に遺伝子構築物を形質導入すること;
(iv)形質導入した細胞を選択すること;及び
(v)該形質導入した細胞を増殖しかつ回収すること、
を含み、その際、ステップ(i)〜(v)を閉鎖系で実施する、上記方法が提供される。
閉鎖系は、該システムの外側の環境への細胞の暴露を防止する隔離されたシステムである。細胞は閉鎖系を構成するバッグ、管材及び機械部品の隣接環境(immediate environment)のみに曝露される。
本発明の閉鎖系は、形質導入した細胞の汚染を防止する。閉鎖系は、該システムの外部の環境からの細胞の密封を保証すること、すなわち汚染物質の該システムへの侵入を防止することによってこれを達成する。
本発明の方法が流体の手動輸送を含まないことが好ましい。
細胞操作のための自動化流体管理装置を用いて、細胞を洗浄し、濃縮しかつ再懸濁することが好ましい。
一実施形態では、遺伝子構築物はレトロウイルスベクターである。
レトロウイルスベクターがマウス白血病ウイルス(MLV)由来のベクターであることが好ましい。
レトロウイルスベクターが、例えば、特定の抗体が認識できるΔLNGFR等の細胞表面マーカーをコードすることが好ましい。
一実施形態では、細胞はドナーT細胞である。
この方法がフィブロネクチン又はその変異体を用いた形質導入ステップを含むことが好ましい。以前の研究は、細胞外マトリックス分子の一部のキモトリプシン断片はこれらが感染中に使用される場合にヒト造血前駆細胞の形質導入を増加できることを示唆した(Moritzら(1994) J. Clin. Invest. 93, 1451; Moritzら. (1996) Blood 88, 855)。タカラは、ヒトフィブロネクチンの組換えペプチドであるCH-296(レトロネクチン(登録商標))を開発しており、これは3つの機能的ドメインから構成され(Hanenberg ら, (1996) Nature Medicine 2, 876)、レトロウイルス仲介遺伝子形質導入を増強することが示されている(Kimizukaら. (1991) J. Biochem. 110, 284)。ペトリ皿又はフラスコ又はバッグの表面にコートされる際に、レトロネクチン(登録商標)は哺乳動物細胞へのレトロウイルス仲介遺伝子形質導入を有意に増強する。
レトロネクチン(登録商標)形質導入システムが本発明で使用されることが好ましい。
本発明の方法が形質導入細胞の免疫選択を含むことが好ましい。例えば、マーカー遺伝子であるΔLNGFRが形質導入された細胞は、抗LNGFR抗体に対するその反応性に基づいて選択し得る。
本発明の方法が免疫磁気選択を含むことがより好ましい。免疫磁気選択は、磁石を用いて抗原構造の分離を可能にする、常磁性粒子への抗体のカップリングに関する。例えば、ΔLNGFR細胞表面分子を発現する形質導入細胞の遺伝子改変型部分集団はΔLNGFR陽性細胞と結合するマウスIgG抗NGFレセプター抗体と共にインキュベートし得る。次いで、細胞をヒツジ抗マウスIgGでコートされた免疫磁気ビーズと共にインキュベートし、ΔLNGFR陽性細胞を単離するために磁石に適用し得る。単離した細胞は磁石を解除することによって回収し得る。
閉鎖系は形質導入細胞の単離を達成するのに必要な全てのステップを実施する単一の装置を含み得る。
あるいは、閉鎖系は2以上の装置を含んでもよい。第1の装置を細胞濃縮、細胞洗浄、形質導入及び培地交換ステップに使用してもよく、第2の装置が形質導入細胞の選択を実施してもよい。装置間での細胞の輸送は、全体的なプロセスを閉鎖プロセスのままにすることを保証するために、密封バッグ及び無菌接続を用いて達成し得る。細胞操作のための自動化流体管理装置を用いることによって細胞を洗浄し、濃縮し、形質転換しかつ再懸濁することが好ましい。この装置は、段階的に使用者が規定可能なプログラミングを可能にする完全な閉鎖系において、バッファーの向流循環に対して細胞の濾過を保証し、かつ異なるバッグへ接続されるスピニング・メンブレンからなってよい。細胞の洗浄及び濃縮は、濾過済み洗浄バッグ、バッファーバッグ及び廃棄バッグに連結されたスピニング・メンブレンからなる、滅菌の使い捨てセットで行ってもよい。所望の洗浄手順は使用者が定義し得る。係る装置の一例は、CytomateTM Cell Processing Systemである。
先のプロセスの最終産物はバッグ中で濃縮し得る。次いで、このバッグは常磁性マイクロスフェア(ビーズ)を用いた選択ステップを開始するために第2の管材セットに無菌的に接続される。このステップに適当な装置の一例は、IsolexTM 300 Magnetic Cell Separation Systemである。
図1に示されるプロセススキームは、本発明による遺伝子改変型細胞の調製に要求され得るステップを要約する。
臨床研究に応じて、異なる生物学的出発物質を操作することができる。1以上のステップを省略してもよい。一実施形態では、影の範囲中のステップを省略できる。
本発明は、閉鎖系での、好ましくは臨床的使用のための、形質導入及び遺伝子改変型細胞の選択方法に関する。
特に、本発明は、解凍(凍結細胞が出発物質として使用される場合にのみ要求される)、刺激(細胞及びベクターの特性に基づいて要求される場合)、形質導入及び選択(例えば、レトロウイルスベクターが使用される)、増殖、並びに臨床用途のための患者特異的細胞の回収、の連続ステップを含み得る。全プロセスは短期間、例えば2週間未満で実施することができる。
閉鎖系は、細胞洗浄、培地交換、形質導入及び選択のためのインキュベーション、並びに患者への細胞注射のための最終的な回収を含む、全てのステップで使用し得る。
一実施形態では、最終産物の安全性は、使い捨てのプラスチック材料及び異なる2種類の操作(1.細胞濃縮/洗浄/培地交換;2.磁気選択)を実施可能な装置を用いて開発された閉鎖系によって保証される。
特に、本発明は同種骨髄移植臨床プロトコールの関連で使用されるべき遺伝子改変型T細胞の製造に首尾よく使用し得る。
例えば、以下の装置を使用し得る:
1)臨床グレードの閉鎖使い捨てキット(Cell Washer Disposable Set, Baxter, コードR4R9811)で細胞操作するためのCytoMateTM Cell Processing System(Nexell Therapeutic Inc.の商標)(Baxter, コードR4R9860);
2)形質導入細胞の選択のためのIsolexTM 300 Magnetic Cell Separation System。
解凍後の細胞の洗浄に使用されるCytoMateTM Cell Processing Systemの例及び、細胞の臨床スケールの単離に使用される細胞磁気選別機の例は、それぞれでCalmels 2003, Bone Marrow Transplant 31:823及びSuen 2001, Cytotherapy 3:365中で与えられる。
本発明は、臨床センターにおける細胞の簡便な操作のために標準化できる完全な閉鎖系を用いて、単一の方法で、解凍、刺激、形質導入、選択、細胞の増殖及び患者注入用の最終産物の回収の、異なるステップにグループ分けされる。
本発明の利点は、単一の方法での異なるステップの組合せ、最終産物の安全性の改善及び細胞の簡便な操作を含む。
本発明のさらに好ましい特徴及び実施形態は、これから非限定的な実施例を用いて及び添付の図面を参照しながら説明する。
実施例1
解凍後の、ドナーリンパ球からのDMSOの洗い出し
本発明は、臨床グレードの閉鎖使い捨てキットで細胞操作用の装置を用いることにより、完全な閉鎖系で細胞操作しかつ培養する方法を提供する。
この例では、細胞操作用の自動化流体管理装置としてCytoMateTMを使用した。これは、段階的に使用者が規定可能なプログラミングを可能にする完全な閉鎖系で、バッファーの向流循環に対して細胞濾過を保証しかつ異なるバッグに接続されるスピニング・メンブレンからなる。
細胞の洗浄及び濃縮は、濾過済み洗浄バッグ、バッファーバッグ及び廃棄バッグに接続されたスピニング・メンブレンからなる、滅菌の使い捨てセットで実施される。このシステムは、GMP環境での細胞処理を可能にする。この洗浄手順は使用者によって規定され、(処理されるべき)サンプルを含むバッグは滅菌セットに接続され、そしてこの手順で規定される異なるバッグ間の流体輸送は4つの重量秤及び探査機によってモニターされる。
単純なメニュー方式インターフェースは最大100のカスタム手順をプログラミングし得る。
洗浄効率は、洗浄プログラムにおいて「residual fold reduction」パラメーターを設定することで規定される。
上述される遺伝子改変型細胞の製造用の出発物質は、新鮮な又は凍結した細胞(アフェレーシス、バフィーコート、末梢全血、臍帯血、骨髄由来)から構成されてもよく、凍結細胞が使用される際には、これらが解凍され、細胞培養のために細胞を刺激すべく、凍結培地の凍結防止剤成分(10%)であるDMSOが解凍後に洗い出される。
サンプルバッグを使い捨てセット(BaxterコードR4R9811)の細胞供給源管路へ接続した後、細胞を冷却した解凍バッファー(グルタミン1%及びIL-2 600 IUを加えたX-Vivo 15)により、最初に10ml(毎分5mlの速度で)で、そしてその後20ml(毎分10mlの速度で)で、2回希釈される。これらの操作中、解凍バッグは氷層又はアイスパック上に重ねられ、細胞を再懸濁しかつ細胞沈殿を避けるために穏やかに振盪される。
その後、細胞はスピニング・メンブレンを用いて洗浄及び濃縮され、収集バックに輸送される。供給源バック、洗浄バック及び管材は、細胞の損失を最小にするために130mlのバッファーで濯がれる。簡潔に言うと、細胞がスピニング・メンブレンを通過し、そこで細胞がこのメンブレンの外側に濃縮されてトップポートへ出て行き、細胞破片を含む上清とDMSOとがメンブレンを通じてボトムポートに洗い出される。
洗浄ステップの効率及び長さは、洗浄の度合い(すなわち元の流体が洗浄手順の間に除去される程度)を規定する選択パラメーターである「residual fold reduction」に左右される。このパラメーター値は1〜1000で選択可能である。100の値はNexellデータ(CytoMateTM Custom Programming Guideline)に基づいて選択した。この値は供給源溶液の約2対数減少を生じるだろう。通常は100〜250mlである最終量は、2つの選択可能なパラメーター(開始細胞数及び洗浄バックの最大最終重量)に左右され、250の値をCytoMateTM Custom Programming GuidelineであるNexellデータに基づくデフォルトの設定として選択した。
洗浄手順の終わりに、細胞のサンプルを収集し、細胞の生存率及び細胞数を評価することができ、その後、細胞懸濁液を、洗浄バッファー(これは細胞培養に使用される培地である)により、細胞数に従って希釈することができる。細胞は、刺激のために、培養培地中1x106/mlの濃度で調製される。
最終細胞希釈を含む洗浄手順の時間の長さは約1時間である。
異なる2つの実験を上記の洗浄手順を用いて、単一の洗浄ステップにより行った。これらの実験では、異なるパラメーターを評価した:出発量及び最終量(少量の細胞懸濁液での出発サンプルの洗浄実現可能性を評価する);細胞の出発数及び最終数(解凍及び洗浄ステップ中の細胞損失を評価する);全手順の長さ(この手順が開放系と比較して、時間の消費が少ないかを判断する);使用される洗浄バッファーの量(試薬の消費を評価する)。
下記の実験において、出発物質は健康なドナーのバフィーコートに由来する凍結PBLのバッグである。
出発物質の量は15mlであるが、広い範囲の細胞量を1以上のバッグ中で処理することができる。
バッグ中の細胞数は全部で約1x109個であるが、処理されるべき細胞数の範囲は0.1x109〜100x109個であり得、1以上のバッグ中に含まれる。
供給源溶液(DMSO及び細胞破片を含む)の2対数減少値(洗浄プログラムにおいて使用者が設定する、「residual fold reduction」値100)は、CytoMateTMを用いたDMSOの洗い出しに対する文献データ(Calmels B.ら, Bone Marrow Transplant. 2003 May;31(9):823-8)に従って選択したが、50の値はDMSOの96%以上を排除するのにもはや十分である。
表1は、異なるドナーのバフィーコート由来の細胞を用いた、3つの独立した実験で得た結果を示す。
Figure 0004988559
供給源溶液を減少させる代替的な方法は、第2洗浄を伴うプログラムを設定することであろう。全てのプログラムは段階的に使用者が規定可能である。
この手順は第2の洗浄ステップが加わる以外は上述されるものと同一の原理に従う。この場合は、この手順の長さは1時間20分まで延長され、解凍バッファーの量は1100mlまで増加する。
3つの実験を第2洗浄を付加した手順を用いて実施した。
これらの実験では、上記と同一のパラメーターを評価した:出発量(サンプルバック中の細胞懸濁液の量)及び最終量(少量の細胞懸濁液での出発サンプルの洗浄実現可能性を評価する);細胞の出発数及び最終数(解凍及び洗浄ステップ中の細胞損失を評価する);全手順の長さ(この手順が開放系と比較して時間の消費が少ないかを判断する);使用される洗浄バッファーの量(試薬の消費を評価する)。
下記の実験において、出発物質は実験4においては健康なドナーのバフィーコートに由来する凍結PBLのバッグであり、実験5においては健康なドナーのアフェレーシス由来の凍結PBLのバッグであるが、この手順は例えば臍帯血又は骨髄サンプルにも適用し得る。
出発物質の量は20〜100mlであるが、処理されるべき細胞量の範囲は1ml〜9999mlであり得、1以上のバッグに含まれる。
バッグ中の細胞数は約1x109個であるが、処理されるべき細胞数の範囲は0.1x109〜100x109個であり、1以上のバッグに含まれる。
表2は、異なるドナーのバフィーコート又はアフェレーシスに由来する細胞を用いた、2つの独立した実験から得た結果を示す。
Figure 0004988559
考察
5つの実験の内の4つにおけるサンプルの出発量は15〜20mlの範囲であり、わずか1つの実験のみ、出発サンプルは解凍バッファーで100mlの総量まで希釈した。
これらの実験の結果は、出発量が解凍後の細胞の回収及び生存率に主に影響しないことを示す。
最初の4つの実験における平均細胞回収率は実際に92%(5.7%の標準偏差)であり(範囲:85%〜100%)、5つ目の実験における83%の値はこの範囲に近似する。
平均細胞生存率は91.5%(5.9%の標準偏差)(範囲:87%〜100%)であり、5つ目の実験における100%の値はこの範囲内である。
この実験は、解凍ステップが少量(15〜20ml)の及びより高い量の出発サンプルにより実施できることを示す。
細胞損失に関して、CytoMateTMによる解凍後かつ細胞洗浄前に出発細胞数の試験を実施した実験1及び3は、9%の最大細胞損失を示す。
実験2、4及び5において、凍結前の細胞数を出発細胞数とみなした。これはおそらく実際の出発数の過大評価を表す。この場合でさえ、15%の最大細胞損失が観察された。
これらの細胞損失の値は、開放系で取得された本発明者らの最新のデータ(データは示されない)及び文献に示されたCytoMateTMを用いたデータ(Calmels B.ら, Bone Marrow Transplant. 2003 May;31(9):823-8)と有意に異ならない。
全手順(含まれるステップは、出発サンプルの解凍、サンプルの洗浄及び細胞培養のためのサンプル希釈)の長さは、文献データ(Calmels B.ら, Bone Marrow Transplant. 2003 May;31(9):823-8)によれば、装置による第1サイクルの洗浄を考慮すれば1時間であり、細胞の第2洗浄を考慮すれば20分の遅れを伴う。
これらのデータも開放系により取得された本発明者らの最新のデータ(約1時間である)と有意に異ならない。
これらの結果によれば、開放系で実施されたプロセスと比較して、閉鎖系で実施された解凍及び洗浄プロセスは時間のかかるものではなく、処理された細胞の安全性は、細胞は解凍及び洗浄操作中に開始バックから最終培養バックに管材セットを通じて輸送され、培養培地はバッグを通じて添加され、細胞試験用のサンプルは滅菌の注射器によって取り上げられるため、閉鎖系により十分に維持される。異なるバッグ間の接続は、無菌接続を保証する滅菌の管材溶接機(Sterile Connecting Device, Terumo)によって又はバックポートに挿入されるスパイクを用いて設けられる。
このシステムはサンプル及び処理試薬の環境との接触を回避する。
実施例2
バッグ又はフラスコにおける、異なるリンパ球刺激の細胞増殖への効果
閉鎖系での細胞増殖を評価するために、異なる方法(いずれも組換えIL-2の存在下でOKT(登録商標)3(Orthoclone, Janssen-Cilag S.p.A.)及びDynabeads(登録商標)CD3/CD28 T細胞Expander(Dynal Biotech, コード番号111.31)による)でリンパ球を刺激する幾つかの実験を行った。例えば可溶性CD3/CD28抗体又は異なるサイトカインカクテルによる別の刺激を考慮することができる。
OKT(登録商標)3は、CD3抗原に対するマウスモノクローナル抗体の、臨床的用途のための滅菌溶液である。OKT(登録商標)3は、リンパ球増殖を誘導してレトロウイルスベクターを細胞に形質導入すべく、遺伝子療法の臨床研究で現在使用されている。レトロウイルスベクターは、実際に、DNA複製の間に細胞ゲノムへ自己組込みするために細胞増殖を必要とする。
Dynabeads(登録商標)CD3/CD28 T細胞Expanderは、CD3及びCD28抗体の混合物でコートされた超常磁性ポリスチレンビーズである。CD3抗体はOKT(登録商標)3と同じくT細胞上のヒトCD3抗原に特異的であり、CD28抗体はT細胞上のヒトCD28共刺激性抗原に特異的である。
Dynabeads(登録商標)は、2つのシグナルによってT細胞を同時刺激する抗原提示細胞のin vivo性能を模倣し、その結果、T細胞増殖を誘導する。
図2及び3に要約される以下の実験において、細胞増殖に対するOKT(登録商標)3対ビーズ刺激の効果を評価するために、9個体のドナー由来のPBLを6つの独立した実験で使用した。細胞増殖は開放系(OKT3 スピノキュレーション(spinoculation)サンプル)及びバッグ中(その他のサンプル)での10日間の培養の間に測定した。各点は6〜8個のデータの平均を示す。
形質導入効率(形質導入後のLNGFR陽性細胞%)に対する異なる刺激の効果も評価した。
OKT3スピノキュレーションサンプルにおいて、形質導入はスピノキュレーション法を用いて開放系で行い、他のサンプルにおいては、形質導入はレトロネクチンを用いて閉鎖系で行った。
これらの形質導入方法及び本明細書下記で記載される全ての実験で使用されるレトロウイルスベクターは、実施例3及び4で詳細に説明される。このベクターは、形質導入効率を評価し得る末端切断形態のヒト低親和性NGFレセプターをコードする細胞表面マーカー遺伝子を含む(細胞蛍光分析により細胞表面上でΔLNGFR発現を試験する)。
図2は予備的細胞増殖結果のみを示す。全てのサンプルは6日目まで比較されるが、CD3対3:1ビーズだけは10日目まで比較される。
この最終ステップにおいては、幾つかのサンプル間の増殖の差異がより明らかである。
図3は図2に関連し、同一のサンプルが形質導入効率について試験され、開放系と閉鎖系とが比較される。
図2中の幾つかの実験から要約されるこの結果は、開放系でOKT3により刺激された細胞が、閉鎖系で刺激された細胞よりも高い増殖潜在性を有することを証明する。しかし、CD3/CD28ビーズの使用により取得した刺激は、閉鎖系での細胞増殖を増加する。細胞増殖におけるこれらの差異は、細胞培養の6日目から10日目でより明らかであるが、6日目までは、形質導入ステップ後2日か3日目で、細胞増殖が全てのサンプルで非常に類似する。
同一の実験において、形質導入効率は異なる方法で刺激したリンパ球の形質導入後に評価した(図3)。この結果は非常に興味深く、閉鎖系でのCD3/CD28による刺激及びレトロネクチンによる形質導入が、形質導入のスピノキュレーション法又はレトロネクチン法のいずれかでOKT3でなされた他の刺激よりも高い形質導入効率(LNGFR陽性細胞%)を生じることを示している。
これは開放系と比較した閉鎖系の効率に非常に重要であり、というのも、より少ない増殖にも関わらず、遺伝子改変型細胞の最終数は、より高い形質導入効率が得られることにより、閉鎖系でより高くなるからである。
これらの予備的結果は、図3及び4に示されるものに代表される他の実験で確認した。
図4は、閉鎖系における、OKT3及び2つの異なるビーズ:細胞比で刺激されたサンプル間の差異を明確に示す代表的な細胞増殖実験を示す。
図5は、同一の実験において、OKT3及びビーズ刺激により取得したデータと比較した、代替的にレトロネクチン及びスピノキュレーションにより取得した形質転換効率を示す。
この結果は、形質転換効率がスピノキュレーションを用いるよりもレトロネクチンを用いる方が高かった、図3に要約される実験で取得した予備的データを確認する。
図4は、CD3/CD28刺激がOKT3刺激と比較して閉鎖系で細胞増殖を増加すること、及びビーズ:細胞比が、細胞増殖に非常に重要である(各細胞に対して少なくとも2つのビーズを要するようである)ことを確認する。Dynal Biotechにより示唆される3:1の比は増殖率をさらに増加することができただろう。
それとは逆に(図5)、このビーズ:細胞比は形質導入効率に影響しない。2:1及び1:1の比率のいずれも、形質導入後のLNGFR陽性細胞の割合はOKT3刺激により取得された割合より高く、これはレトロネクチンを用いて閉鎖系で取得した形質導入ステップ後の形質導入効率がCD3/CD28刺激でより高くなることを証明する。
これらのデータは、閉鎖系における遺伝子改変型細胞の製造が、生産物の安全性を保証するために非常に重要であること、及びこれが非常に効率的なシステムであり得ることも示唆する。
実施例3
細胞形質導入用のベクター
遺伝子療法のための遺伝子改変型細胞の製造に導く全ての実験はレトロウイルスベクターを用いて実施した。
この発明は、解凍、洗浄、形質導入、選択、増殖及び最終的な回収の全ての製造ステップを完全な閉鎖系で行うことができる場合に、レトロウイルスベクター形質導入細胞に使用し得るが、これらのステップの一部のみが使用されるか、このステップの順序が変更若しくは逆にされる必要があるか、又はレンチウイルスベクター若しくはアデノウイルスベクター等の異なるベクターが使用される場合に、他のプロトコールにも適用可能である。
以下の実験のために選択されるレトロウイルスベクターはSFCMM-3(Verzelettiら. HSV-TK gene transfer for controlled GvHD and GvL: clinical follow-up and improved new vectors. Human Gene Therapy, 1998)である。
ΔLNGFR遺伝子の転写は初期SV40プロモーターによって調節される。
このベクターは既に説明される同種骨髄移植の関連で、臨床研究のために自殺遺伝子であるHSV-tkで操作されたリンパ球を製造するために使用し得る。
開放系における操作型リンパ球の製造プロセスについて、多くのデータが利用可能である。この予備知識は、開放系を本発明の新規閉鎖系と比較するために使用した。
形質転換方法の変換(開放系から閉鎖系へ製造プロセスを変更する)
開放系におけるレトロウイルスベクターによる形質導入ステップは、臨床研究において実施され、また本発明者らの、スピノキュレーションプロトコールを用いた遺伝子改変型細胞の製造の開放系方法においても実施される。
この方法において、細胞(例えばリンパ球)は、培養フラスコにより、層流ボックス内で、通常はOKT3による刺激の2又は3日後に回収される。
培養培地はチューブ中で遠心分離サイクルにより洗い出され、細胞は、レトロウイルス上清培地中、ウイルス力価に応じてレトロウイルス上清1ml当たり1〜5x106細胞の濃度で懸濁される。
細胞は細胞培養のためにプラスチック容器中に塗布され、1000〜2000gで1〜2時間遠心分離される。その後、レトロウイルス上清はチューブ中で細胞の遠心分離により洗い出される。
細胞ペレットは培養培地中で懸濁され、処理した細胞はフラスコ中に塗布され、培養される。通常は形質導入の第2サイクルが培養の24時間後に実施される。
48時間後、細胞は細胞蛍光分析によりΔLNGFR発現について試験される。
本発明の閉鎖系での遺伝子改変型細胞の製造では、形質導入ステップを変更してバッグ中での細胞の洗浄及び形質導入を行った。
実施例4で詳細に説明される方法は、組換えヒトフィブロネクチン断片であるレトロネクチン(登録商標)分子(Takara)を使用して、標的細胞とビリオンとを一緒に局在化させることによってレトロウイルス仲介遺伝子形質導入を増強する。レトロネクチン(登録商標)コートバッグ中でレトロウイルス上清と共に細胞を12〜24時間培養することにより、閉鎖系での細胞形質導入を可能にする。
この形質導入方法は、既に実施例2、図3で要約される幾つかの実験において、OKT3によるリンパ球の刺激後にスピノキュレーション法と比較した。
下記の表(表3)では、2つの異なる形質導入方法の特徴が要約される。
Figure 0004988559
レトロネクチンを用いた形質導入法の利点は、閉鎖したより安全なシステムへの移行、形質導入サイクルの減少(2から1)、潜在的に危険な遠心分離ステップの排除及び形質導入効率の増加である。
安全性の考慮及び効率性結果の改善は、本発明者らに、閉鎖系製造プロセスの開発においてレトロネクチン(登録商標)形質導入法を使用させるに至った。
実施例4
リンパ球形質導入
細胞刺激後の第2ステップは細胞形質導入である。
以下の実験では、OKT3(Orthoclone)による刺激ステップ(ただし前の節に記載されるように異なる刺激プロトコールを適用することができる)後に、リンパ球細胞をレトロウイルス上清(このベクターは、既に記載されるように、目的の遺伝子と細胞表面マーカー用の遺伝子とを含む、SFCMM-3である)と共に24時間、レトロネクチン(登録商標)(Takara)プレコートバッグ中で培養することにより、リンパ球の形質導入を行った。レトロネクチン(登録商標)は組換えヒトフィブロネクチン断片であり、標的細胞とビリオンとを一緒に局在化することによってレトロウイルス仲介遺伝子形質導入を増強する。
形質導入は、一般的には刺激後0〜7日の範囲で行われる。下記に記載される実験では、形質導入は2日目に行った。
レトロネクチン(登録商標)を用いた形質導入プロセスは異なるステップを含む:レトロネクチン(登録商標)コートバッグの調製、標的細胞の調製、レトロネクチン(登録商標)プレコートバッグへのレトロウイルスベクターの充填、細胞のプレロードバッグ中でのインキュベーション。
レトロネクチン(登録商標)凍結乾燥粉末を注射用滅菌水中に溶解し、この溶液の適量を各バッグ(CellGenix Vuelife bags又はBaxter x fold bags)中に分配し、光で保護しながら室温(RT)で2時間インキュベートする。使用されるレトロネクチン(登録商標)濃度は、一般的にはバッグ表面1cm2当たり1〜8μgの範囲である。これらの実験では、1.2μg/cm2を用いた。
レトロネクチン(登録商標)溶液を除去した後、PBS2%ヒト血清アルブミン(HSA)の滅菌溶液をブロッキングのために各バッグに添加する。RTでの30分間のインキュベーションが必要であり、その後、HSA溶液はPBSで3回洗浄することによって除去される。バッグはすぐに使用でき、最大1週間4℃又は−80℃で保存できる。
次いで、レトロウイルス上清は37℃で1時間のインキュベーションの間にバッグ中でレトロネクチン(登録商標)にプレロードされる。
細胞形質導入に使用されるべきレトロウイルス上清の量は細胞数に関連し、細胞数と上清の量との間の比は1ml当たり0.5x106〜10x106細胞の範囲であり得る。
上清はIL-2(範囲:100〜600 IU/ml)、2mM グルタミン及び3%自己由来の血漿で補充される。これらの実験において、1ml当たり1x106細胞比のレトロウイルス上清が使用される。プレローディングステップに関して、使用されるべき上清の範囲は0〜計画した総量である。これらの実験では、プレローディングステップで使用される上清は計画の半分であった。
感染の直前に細胞は収集され、その後、残存量の上清中に懸濁され、上述のように試薬が添加される。上記のように、1ml当たり1x106細胞の最終比のレトロウイルス上清を用いた。
バッグ中での細胞インキュベーションは24時間実施したが、例えば1時間〜72時間の範囲であってもよい。
形質導入と遺伝子発現との間に、通常は24〜48時間の遅延が存在し、このステップでは実際にΔLNGFRタンパク質はまだ検出可能ではない。
表3に示されるデータは、形質導入プロセス後48時間で試験した形質導入効率の結果を要約する。
CytoMate TM を用いた形質導入
実施例1に詳細に記載されるように、本発明の一態様は、臨床グレードの閉鎖使い捨てキットで細胞操作用の装置を用いた、完全な閉鎖系での細胞操作及び培養方法を提供する。
この実施例では、CytoMateTMを自動化流体管理装置として用いて、感染の直前に細胞を収集した。
上述のプロトコールに従って、形質導入前に、1以上のバッグを、レトロネクチン(登録商標)でプレコートし、かつ計画したレトロウイルス上清の半分の量でプレコートする。
OKT3刺激後2日目に、培養したリンパ球のバッグ(単数又は複数)をCytoMateを用いて収集し、最終プレロードバッグ中で計画した上清の半分の量で懸濁する。1ml当たり1x106細胞の最終比のレトロウイルス上清を用いた。
バッグ中での細胞のインキュベーションを24時間行った。
細胞の洗浄及び濃縮を、細胞の解凍と同様に、濾過済み洗浄バッグ、バッファーバッグ及び廃棄バッグに接続したスピニング・メンブレンからなる滅菌の使い捨てセット中で実施する。培養したリンパ球を含むサンプルバッグ及びプレロードした上清を含む最終バッグがこのセットに無菌的に接続される。このシステムはGMP環境での細胞の処理を可能にする。
洗浄手順は使用者によって規定され、遺伝子改変した細胞製造プロセスの異なるステップで相違する。
簡潔に言うと、細胞はスピニング・メンブレンを用いて冷却したバッファー(グルタミン1%及びIL-2 600 IU/mlを添加したX-Vivo 15)で2サイクルで洗浄され、洗浄バッグである収集バッグに輸送される。次いで、細胞は少容量(約40ml)で最終バッグに輸送され、洗浄バッグと管材は細胞損失を低減するために計画された上清の半分で濯がれる。この上清は最終バッグに輸送され、細胞は上清1ml当たり1x106個の細胞まで希釈される。
最終バッグ中のレトロウイルス上清は、40ml(これは異なる規定のパラメーターに左右される)の洗浄バッファーで希釈されるが、この希釈はレトロウイルス上清の形質転換効率を低下しない(データは示されない)。
洗浄ステップの効率及び長さは選択されたパラメーターである「residual fold reduction」に左右される。50の値はNexellデータ(CytoMateTM Custom Programming Guidelines)に基づいて選択した。100の値は供給源溶液の約2対数減少を生じるだろう。
洗浄手順の終わりに、細胞のサンプルは生細胞数について評価することができ、細胞は最後に37℃、5%CO2のインキュベーター中で24時間インキュベートされる。感染性レトロウイルス粒子が細胞培養培地であるX-VIVO 15中で再懸濁される場合には、上清が試薬である。上述されるように、上清はグルタミン1%、IL-2 600 IU/ml、自己由来の血清3%及びプロタミンの形質導入前に添加される。この培養環境により、24時間のインキュベーションの間、レトロウイルス粒子と共に細胞培養することが可能となる。
希釈を含む洗浄手順の長さはおよそ1時間である。
3つの異なる実験を上記の洗浄手順を用いて実施した。これらの実験では、異なるステップを評価した:出発量(サンプルバッグ中の細胞懸濁液の量)及び最終量;使用されるべき上清の量を評価するための出発細胞数(上清1ml当たり1x106個の細胞)、「細胞対上清」の最終比を評価するための最終細胞数;この手順が開放系と比較して時間の浪費でないかを判断するための全手順の長さ;試薬の消費を評価するための使用される洗浄バッファーの量。
表4はCytoMateTMを用いて実施した3つの洗浄実験のデータを要約する。
Figure 0004988559
サンプルの出発量は、細胞が1ml当たり1x106個の濃度で培養される際には、刺激の日の細胞数に左右される。細胞数は刺激及びOKT3の使用に左右され、その数は通常は刺激後2日以内に減少する。細胞数を知ることで、使用されるべき上清の量は上清1ml当たり1x106個の比を用いて規定することができる。細胞懸濁液の最終量は、洗浄後の懸濁液の量(約40mlの洗浄バッファー(X-Vivo 15))に、添加した上清の量を加えた結果である。この点において、最終上清は最大0.33で希釈される。この希釈は上清の形質転換効率を低下しない。細胞は形質導入ステップの間に1ml当たり0.75〜0.9x106個の範囲に濃縮され、この濃度は次の節で記載されるように細胞への良好な遺伝子導入を可能にする。
CytoMateTMによる手順は非常に時間が短い。実験3でのみ1時間以上であった。閉鎖系でのこのレトロネクチンプロトコールの使用は、形質転換サイクルを1まで減少することができるが、スピノキュレーションによる開放系では2サイクル存在し、これは2時間要する。
このデータに従って、形質導入用の細胞懸濁液を調製するための、閉鎖系で実施される洗浄プロセスは短期間であり、かつ処理された細胞の安全性は十分に維持される。これは、洗浄操作の間に細胞が開始バッグから最終レトロネクチンプレロードバッグに管材セットを通じて輸送され、上清がバッグを介して添加され、かつサンプルの細胞試験(細胞のカウント)が滅菌注射器により行われるからである。したがって、このシステムはサンプル及びプロセス試薬の環境との接触を回避する。これは細胞がクラスAの層流ボックス内で、フラスコ中で操作される、スピノキュレーションを用いた形質導入サイクルと大きく異なる。
実施例5
形質導入後のリンパ球培養
レトロウイルス上清との24時間のインキュベーション後、細胞培養のために細胞を回収し、バッグ中の細胞培地に懸濁した。培養培地は刺激に使用されるものと同一である:自己由来の血漿3%、グルタミン1%及びIL-2(範囲:100〜600 IU/ml)で補充したX-Vivo 15。
この実施例では、CytoMateTMを自動化流体管理装置として使用し、閉鎖系で細胞を操作した。このステップでは、細胞はX-Vivo 15を用いて洗浄され、培養培地中に懸濁され、レトロウイルス上清が廃棄される。
培養細胞の画分はその際、目的の遺伝子とマーカー遺伝子(末端切断型のNGFレセプター(ΔLNGFR))を含む実施例3に記載のレトロウイルスベクターで遺伝子改変されている。培養の数日後、このプロトコールでは2日後に、細胞集団はΔLNGFR発現について試験される。ΔLNGFRをコードする遺伝子は白血球中で内因的に発現されないが、形質導入された細胞では発現され、蛍光色素がカップリングした抗LNGFR抗体を用いたFACS(Fluorescence Activated Cell Sorter)分析によって細胞表面上で検出可能である。
簡潔に言うと、蛍光色素がコンジュゲートした細胞がレーザー光線を通過する。これらはレーザー光線を崩壊しかつ散乱させ、前方散乱光及び側散乱光として検出される。第1のパラメーターは細胞サイズに関連し、第2のパラメーターは細胞内部の複雑性の指標である。散乱に加えて、血球計算機は蛍光パラメーターを測定する。蛍光色素はレーザー光線を吸収し、かつこの吸収された光の一部を異なるスペクトル領域で放出する。血球計算機は個々の細胞上の各色素の相対量を測定し、各細胞から生じる電子シグナルを加工し、そして各パラメーターに関する数値を生じさせる。次いで表示及び分析のためにこの情報をコンピューターシステムへ送る。蛍光強度は細胞表面に結合した蛍光色素コンジュゲート型抗体の量に比例する。
CytoMate TM を用いたレトロウイルス上清の洗い出し
このステップでは、細胞の洗浄及び濃縮が、濾過済み洗浄バッグ、バッファーバッグ及び廃棄バッグに接続されたスピニング・メンブレンからなる滅菌の使い捨てセットで、実施例4に記載されるように実施される。形質導入されたリンパ球を含むサンプルバッグ及び細胞培養のための最終バッグがこのセットに無菌的に接続される。既に言及したように、このシステムはGMP環境での細胞の処理を可能にする。
洗浄手順は使用者によって規定され、これは実施例4に記載されるものと同一である。細胞はスピニング・メンブレンを用いてバッファー(グルタミン1%及びIL-2(範囲:100〜600 IU/ml)を加えたX-Vivo 15)で2サイクルで洗浄され、洗浄バッグである収集バッグに輸送され、その後、この細胞はプログラムされた量で最終バッグに輸送され、洗浄バッグと管材は細胞損失を最小にするために一定のバッファー量で濯がれる。
その後、最終バッグ中の細胞懸濁液は、細胞培地1mlあたり0.2〜0.5x106個の濃度で細胞を培養するために、最終細胞数に従って希釈される。自己由来の血漿は3%の最終量で添加した。
洗浄ステップの効率及び長さは選択されるパラメーターである「residual fold reduction」に左右される。50の値はCytoMateTM Custom Programming GuidelineであるNexellデータに基づいて選択した。100の値は供給源溶液の約2対数減少を生じるだろう。
最終希釈を含む洗浄手順の長さは約1時間である。
3つの独立の実験を上記の洗浄手順を用いて実施した。これらの実験において、以下のパラメーターを考慮した:出発量、出発細胞数、全手順の長さ及び試薬の消費を評価するために使用される洗浄バッファーの量。一実験において、洗浄ステップの間の細胞損失を試験するために最終細胞数を評価した。
表5はCytoMateTMを用いて実施した3つの洗浄実験のデータを要約する。
Figure 0004988559
細胞がレトロウイルス上清中1ml当たり1x106個で培養される際には、サンプルの出発量は形質導入日の細胞数に左右される。使用されるべき培養培地の量は、出発細胞数から、培養培地1ml当たり0.5x106個の比を用いて規定することができる。
CytoMateTMを用いた手順は実施例4にも記載される通り非常に短時間である。
細胞は、上清を廃棄するために開放系を用いて遠心分離されるべきであるし、また層流ボックス内で、細胞培養用のフラスコ中で培養培地により希釈される必要がる。このステップは、操作される量が非常に高くなり得るため、細胞に対する医薬ストレス及び操作の困難性の原因となる。例えば実験3では、556mlのレトロウイルス上清が除去される必要があり、かつ1100mlの培養培地が多くのフラスコに分配される必要がある。これらの操作は生産物の汚染のリスクを増加する。
開放系におけるこれらの操作に使われる時間は本発明者らのデータによると約1時間30分である。
このデータによれば、細胞培養用の細胞懸濁液を調製するために閉鎖系で実施される洗浄プロセスは、開放系で実施される洗浄プロセスと比較して時間がかかるものではない。細胞は洗浄操作中に開始バッグから最終培養バッグへ管材セットを通じて輸送され、培養培地はバッグを通じて添加され、かつサンプルの細胞試験が滅菌注射器により行われる(細胞のカウント)ため、処理した細胞の安全性は閉鎖系により十分に維持される。
このシステムはサンプル及びプロセス試薬の環境との接触を回避し、かつ細胞の生存率に影響し得る遠心分離のストレスを排除する。
実施例6
先の実施例で記載されるように、形質導入ステップ後、2日間の培養の間に、遺伝子改変した部分集団はΔLNGFR細胞表面分子を発現する。この分子は磁気ビーズシステムを用いて遺伝子改変型部分集団の選択を可能にする。
細胞懸濁液は、ΔLNGFR陽性細胞(遺伝子改変型部分集団)に結合するGMPグレードのマウスIgG抗NGFレセプター抗体と共にインキュベートされる。2回の洗浄ステップ後、ヒツジ抗マウスIgG(Baxter、コードRAR 9950)でコートされたGMPグレードの免疫磁気ビーズとの第2インキュベーションが実施される。
その際、ビーズで処理された細胞懸濁液は、ビーズでコートされたΔLNGFR陽性細胞を単離するために磁石に適用される。磁石に捕捉されない陰性集団は適切なバッファー(PBS 0.1% HSA)で洗い出される。
次いで、陽性細胞が磁石を断つことにより培養培地中で回収される。培養の24時間後、抗原と抗体との間の結合が破壊される。ビーズは培地中に放出され、磁石を用いて除去される。磁石を適用する間、ビーズは磁石及び細胞集団に結合し、磁石に捕捉されない細胞集団は適当なバッファー(PBS 0.1% HSA)で洗い出される。
均一な遺伝子改変集団である回収された細胞集団は、数日間(1〜7日の範囲で)培養され、最低48時間後に細胞増殖及びΔLNGFR発現について試験される。
形質導入ステップについて記載されるように、ΔLNGFR分子のダウンレギュレーション後、ΔLNGFR分子をコードする遺伝子は細胞表面上での分子発現に24〜48時間要する。
ΔLNGFR発現を試験するために使用される細胞蛍光アッセイは先の実施例で記載された。
CytoMate TM を用いた抗体インキュベーション及び細胞洗浄
本願の開示は閉鎖系で以下のステップを実施するためにCytoMateTMを用いる:培養培地の洗い出し及び細胞濃縮、細胞懸濁液の抗NGFレセプター抗体とのインキュベーション、過剰な抗体の洗い出し並びにビーズインキュベーションのための細胞の濃縮。
洗浄及び濃縮は、実施例4に記載されるように、濾過済み洗浄バッグと接続したスピニング・メンブレンからなる滅菌の使い捨てセットで実施される。バッファーバッグ及び廃棄バッグもこのセットに接続される。インキュベーションステップに使用されるバッファーはPBS 0.5% HSAであり、洗浄ステップで使用されるものはPBS 0.1% HSAである。培養培地中で懸濁された形質導入細胞を含むサンプルバッグ及び細胞回収用の最終バッグは、このセットに無菌的に接続される。この細胞は選択操作を計画するために、洗浄前に細胞数について試験される。
既に考察したように、このシステムはGMP環境での細胞処理を可能にする。細胞はスピニング・メンブレンを用いて、プログラムされた1サイクルの洗浄により洗浄バッグ中で濃縮され、培地培養物の洗い出しのために既に記載されたバッファーが使用される。
計画したμgの抗体(1μg/5x106細胞)を含む抗体溶液を洗浄バッグに添加した。予め計画した洗浄ステップ後の「洗浄バッグを循環する」ステップは、洗浄バッグ中の細胞懸濁液を洗浄回路を通じて循環させる。この操作は、使用者により設定されたプログラムに従って、20分間、細胞懸濁液を抗体溶液と混合する。
インキュベーション時間後、過剰の未結合抗体が第2サイクルの洗浄で洗い出され、その後、細胞がプログラムした量で最終バッグに輸送され、洗浄バッグと管材とが細胞損失を低減するために一定量のバッファーで濯がれる。
バッグに収集された抗体結合細胞懸濁液は、その際、磁石を装備した異なる装置を用いてビーズと共にインキュベートする準備ができている。
洗浄ステップの効率及び長さは選択されるパラメーターである「residual fold reduction」に左右される。50の値はNexellデータに基づいて選択した。100の値は供給源溶液の約2対数減少を生じるだろう。
細胞洗浄及び抗体との細胞インキュベーションの全手順の長さはおよそ1時間30分である。
3つの異なる実験をまさに記載した手順を用いて実施した。これらの実験において、以下のパラメーターを考慮した:出発量(サンプルバッグ中の細胞懸濁液の量)、その後のインキュベーションステップ用に細胞を濃縮するための細胞懸濁液の最終量、選択手順用の試薬を計画するための出発細胞数、この手順が開放系と比較して時間がかからないものであるかを判断するための全手順の長さ、及び試薬消費を評価するための使用される洗浄バッファーの量。一実験では、最終的な細胞数及び生存率を試験してこの手順の間の細胞損失を評価した。
表6はCytoMateTMを用いて実施した3つの実験のデータを要約する。
Figure 0004988559
細胞が培養培地中1ml当たり0.5x106個で培養される際、サンプルの出発量は形質導入ステップ後の細胞数に左右される(実施例5参照)。
後のビーズとのインキュベーションステップ用に細胞を濃縮するために、細胞懸濁液の最終量を検出する必要がある。
出発細胞数により、使用されるべき(抗体溶液をバッファー1ml当たり20x106細胞で調製するための)インキュベーションバッファーの量及び抗体のμg(1μg/5x106細胞)を規定することができる。
最終細胞数及び細胞懸濁液の生存率を一実験で試験して、この手順の間の細胞損失を評価した。生存率は100%であり、これはこの手順が細胞にストレスを与えないことを示す。
実験1では細胞回収率は88%であり、これはCytoMateTM手順後にわずかな細胞損失が存在することを示し、これはプログラムを変更すること(例えば洗浄ステップを減少させること)によって低減できた。
CytomateTMを用いた手順は時間が掛るものではなく、約1時間30分である。この期間に多くの操作がなされる(2回の洗浄及び20分のインキュベーション)。開放系でのこれらの操作に使われる時間は本発明者らの経験によれば約2時間である。
このデータに従って、細胞懸濁液を抗体と結合させかつ磁気選択用の細胞を調製するために閉鎖系で実施される洗浄、濃縮及びインキュベーションプロセスは、開放系で実施される同一のプロセスと比べて時間の消費がより少なく、かつ、細胞は管材セットを用いて操作され、試薬はバッグを通じて添加されかつサンプルの細胞試験は滅菌注射器を用いて実施される(細胞カウント)ため、処理した細胞の安全性は十分に維持される。
このシステムはサンプル及びプロセス試薬の環境との接触を回避し、かつ細胞の生存率に影響し得る遠心分離のストレスを排除する。
免疫磁気選択
感作細胞(抗NGFレセプターと共にインキュベートした)である先のプロセスの最終産物は、今度はバッグ中で濃縮される。このバッグは、常磁性マイクロスフィア(ビーズ)及び磁石を備えた装置(磁気細胞分離機)を用いた選択ステップを開始するために、第2の管材セットと無菌的に接続することができる。無菌の非発熱性使い捨てセットは孔のある円筒型の150mlチャンバーから成る。このチャンバーは2つの管材システム(吸い込み管路及び吐き出し管路)を具備するY字接合子を通じてボトムに恒久的に接続される。いずれの管路も2つの釘接続部を有し、これは細胞懸濁液を含有するバッグ(サンプルバッグ)とワーキングバッファーを含有するバッグとを吸い込み管路を通じてこのチャンバーへ取り付けるための接続部、及び最終細胞収集バッグと廃棄バッグとを吐き出し管路を通じてチャンバーへ取り付けるための接続部である。
本明細書下記に記載される実験において、使用される磁気分離機はBaxter International Inc.により設計されたIsolexTM 300であり、これは抗CD34モノクローナル抗体及び常磁性マイクロスフィアを利用して異種細胞集団からCD34+細胞を選択及び単離するために使用される。
IsolexTM 300標準プロトコールでは、細胞は開放系において抗CD34モノクローナル抗体で感作され、その後、この細胞が管材セットを用いてビーズと混合され、CD34+が磁気的に単離され、そして未結合の陰性細胞が洗い出される。最後に、CD34+細胞は一次抗体に対して高親和性のペプチド分子を用いてビーズから解放される。抗体/ペプチド複合体は分離チェンバー内で磁気的に保持され得るが、CD34+細胞は収集バッグ中に放出される。
本発明者らの、感作した細胞(抗NGFレセプターと共にインキュベートした)をビーズ(Baxter、上で詳述される)と混合する目的、及びロゼットΔLNGFR陽性細胞の磁気分離の目的についてのみ、このプロセスに従った。非ロゼット陰性細胞は3回の洗浄サイクルにより分離チャンバーから廃棄バッグへ洗い出される。
簡潔に言うと、吸い込み管路の2つのバッグと吐き出し管路の2つのバッグとが、無菌接続を保証する滅菌の管材溶接機(Terumo)によって、又はバッグポートに挿入される管路の釘を使用することによって、無菌的に接続される。このシステムは、サンプル及びプロセス試薬の環境との接触を回避する。接続後、一定の設定プログラムが以下のステップの順序で開始する:管材セットの洗浄バッファーとのプライミング、チャンバー中での感作細胞の(インキュベーション前に出発細胞バック中へ添加された)ビーズとの混合、ロゼットの磁気分離、残存するビーズ及び陰性細胞の洗浄。
洗浄バッファーはPBS 0.1% HSAである。ビーズは出発NGF陽性細胞数に従って1個のNGF陽性細胞に対して5個のビーズの比で添加される。NGF陽性細胞数は、実施例5で既に記載されるように、選択前に、少量の細胞懸濁液中で細胞をカウントし、NGF陽性細胞の割合をFACS分析で試験することにより検出される。
100ml(90mlの出発溶液及び予め洗浄した10mlの計画したビーズ)の量は過剰ではない。最大10x109個の感作細胞をこの装置で処理することができる。この混合物のインキュベーション時間は室温で30分である。
混合後、ロゼットNGF+細胞は磁石によって一次チャンバー壁上に保持される。非ロゼット細胞は廃棄バックに洗い出され、次いで、NGF+細胞が残存の非ロゼット細胞を除去するためにバッファーで3回洗浄される。洗浄に使用されるワーキングバッファーは非ロゼット細胞と共に収集され、この細胞懸濁液は最終的に選択手順の良好な結果を制御するためにカウントすることができる。
2つの異なる実験は上述の手順を用いて実施した。これらの実験では、以下のパラメーターを測定した:出発量(管材セットチャンバー中の細胞懸濁液の量)、免疫磁気分離後に培養するべくΔLNGFR+細胞を濃縮するための細胞懸濁液の最終量、FACS分析によって試験したNGF+細胞の割合、出発細胞数(CytoMateTM洗浄前に検出される)及びΔLNGFR+細胞の割合に由来するΔLNGFR+細胞の総数、この手順が開放系と比べて時間の消費が少ないかを判断するための全手順の長さ、廃棄バッグ中で懸濁された細胞数、並びに試薬消費を評価するための使用された洗浄バッファーの量。
表7はIsolexTM 300を用いて実施した2つの実験のデータを要約する。
Figure 0004988559
考察
サンプルの出発量は、約80mlに予め洗浄したビーズの添加量を加えた総量約100mlを洗浄する、CytoMateTMにより実施される洗浄及び感作ステップに左右される。130mlの量は、管材セットチャンバーの量が150mlであることから過剰とすべきではない。20mlの残存量が細胞とビーズとの良好な混合に必要とされる。
細胞懸濁液の最終量はLNGFR陽性細胞の総数に基づいて固定化される。細胞懸濁液の量は細胞培養物の量であり、細胞は培養培地1ml当たり2x106個のLNGFR陽性細胞の濃度で塗布される。ロゼット細胞の洗浄後、計画した量の培養培地を含むバッグが無菌接続を保証する滅菌の管材溶接機(Terumo)により無菌的に接続される。
LNGFR+細胞の割合は、形質導入ステップに関連し、細胞の刺激、形質導入法、形質導入に使用される上清のウイルス力価及び形質導入サイクル数を含む、異なる要素に左右される。
より高い割合のLNGFR陽性細胞は、最終的な遺伝子改変型細胞の回収及び全手順の効率を改善するため、非常に重要である。
出発細胞数及びLNGFR陽性細胞の割合に関連するLNGFR陽性細胞の総数は、使用されるべき選択用の試薬、ビーズ数及びワーキングバッファーを調製するために、並びに選択後の細胞の回収(すなわち、選択ステップの効率)を評価するために、重要である。ΔLNGFR分子のダウンレギュレーションが培養培地中にビーズを放出させる場合、細胞回収は選択の翌日に評価される。細胞はトリパンブルー染色を用いて細胞数について試験される。これらの結果は表8に示され、これは実施例8で詳細に考察されるように、開放系で得られた平均回収結果の範囲内である。
最終的な細胞懸濁液は、2つの実験の内の一つでカウントし、選択手順の結果を評価した。全細胞の10%未満が手順の間に損失する。
選択手順は、細胞懸濁液を少なくとも3つのチューブに分け、各チューブを磁石に適用する必要がある開放選択方法と比較して、時間がかかるものではない。また次のロゼット細胞の洗浄ステップは数個のチューブで実施され、各チューブが磁石に適用される必要があり、これは時間がかかる。さらに、層流ボックス内での数個のチューブの操作は管材セットにおける細胞の操作と比較して高リスクの汚染に関連する。
免疫磁性マイクロスフィア分離
Dynabeads(登録商標)(Baxter)M-450ヒツジ抗マウスIgGは、その表面に共有結合した精製された親和性ヒツジ抗マウスIgGを有する、常磁性のポリスチレンビーズである。滅菌の非発熱性懸濁液はex-vivo用途のみである。このため、ビーズは細胞懸濁液から除去する必要がある。上述したように、選択の翌日にロゼット細胞は細胞培地にビーズを放出する。その後、細胞懸濁液は細胞培養物からビーズを除去するために磁気細胞分離システムで処理される。
チャンバーを備えた管材セットは先の節で記載されるように使用される。
簡潔に言うと、吸い込み管路の2つのバッグと吐き出し管路の2つのバッグとが、無菌接続を保証する滅菌の管材溶接機(Terumo)により、又はバッグポートに挿入される管路の釘を用いて、無菌的に接続される。接続された吸い込み管路のバッグは、バッファーバッグ(このバッファーは培養培地である)及び細胞懸濁液バッグである。接続された吐き出し管路のバッグは、細胞回収用の最終細胞懸濁液のバッグ及び廃棄バッグである。
接続後、一定の設定プログラムが以下のステップをこの順序で開始する:管材セットの洗浄バッファーとのプライミング、チャンバー中での感作細胞の(インキュベーション前に出発細胞バッグに添加された)ビーズとの混合、ロゼットの磁気分離、残存のビーズ及び陰性細胞の洗浄。
この洗浄の設定のみが本発明者らの目的に使用される。ビーズは磁石によりチャンバーの壁に保持され、細胞は最終バッグに収集される。
2つの異なる実験を上記の手順を用いて実施した。これらの実験の細胞の選択ステップは上記節に記載される。
これらの実験において、細胞回収を評価して、閉鎖系で実施される本発明の選択及び分離を、開放系で実施される選択及び分離と比較した。
表8はIsolexTM 300を用いて実施したビーズ分離後の細胞の回収を要約する。
Figure 0004988559
実施例8で詳しく考察されるように、選択及び分離が閉鎖系で実施される実験1及び2における細胞回収の結果は、開放系で実施した選択及び分離で得られた結果の平均値内である。
実施例7
選択後のリンパ球培養
ビーズの分離後、細胞は24時間培養される。選択した集団の均一性を試験するために、細胞がトリパンブルー染色を用いてカウントされ、ΔLNGFR発現がFACS分析によって評価される。
その後、バッグ中で培養された細胞は、培養培地中で、バッグ間の無菌接続を保証する滅菌の管材溶接機(Terumo)を用いて培地を添加することにより、1ml当たり0.2〜1x106個の細胞の濃度範囲に希釈される。
通常、ΔLNGFR分子は90%以上の集団で既に発現されている。しかし、細胞増殖速度に応じて、必ずしも全ての細胞がこの時点では細胞表面分子を発現せず、均一でない集団を生じるかもしれない。いずれにせよ、細胞集団が完全に遺伝子改変されていることを保証するために、患者への注入前又は細胞凍結前の培養の最終日に、同一の細胞蛍光分析が反復される。
選択後の培養日数は0〜6日の範囲であり、各患者への注入のための臨床研究において計画される細胞数に左右される。集団のアリコートは無菌試験を含む質管理分析(quality control analysis)に使用される。
ヨーロッパ薬局方(EP)に従って、生産物のアリコートが試験される。アリコートの量は生産物の総量に左右される。統計的考察に基づき、このアリコートが細菌の増殖を生じないかを推測することができ、無菌試験で試験される際に、全体生産物は無菌とみなすことができる。
しかし、最終産物中のかなり低量の汚染の存在は完全には除外できない。このリスクは、その主要な利点が完全な閉鎖系での細胞操作である本発明等の細胞培養システムを用いることによって最小化することができる。
この場合は、製造の各ステップにおいて細胞は環境と決して接触しないため、最終産物の安全性はそのシステム自体によって保証される。
細胞は常に滅菌の管材セットで操作され、かつ滅菌バッグ中で調製された試薬で処理されるため、無菌環境が非常に容易に保証される。
CytoMateを用いた最終産物の洗浄及び回収
このステップでは、最終産物が回収され、培養培地を排除するために洗浄され、そしてその後、患者へ注入するために又は将来の注入用に凍結するために、50〜60mlの最終量で濃縮される。
以下の実験では、細胞洗浄に使用されるバッファーは0.5% HSAが添加されたPBSであるが、遺伝子療法の臨床プロトコールに関しては、細胞に対する生理環境をより良く維持し、かつ患者への注入に適当な生理的産物を調製するために、0.5〜4% HSAを含む0.9%の塩化ナトリウム溶液を使用する必要がある。
洗浄及び濃縮ステップは、実施例4に記載されるように、濾過済み洗浄バッグ、バッファーバッグ及び廃棄バッグに接続されたスピニング・メンブレンからなる滅菌の使い捨てセットで実施される。遺伝子改変したリンパ球を含むサンプルバッグ及び細胞回収用の最終バッグはこのセットに無菌的に接続される。
既に述べたように、このシステムは滅菌環境での細胞処理を可能にする。
洗浄プロセスは使用者によって規定され、これは実施例4に記載されるものと同一である。細胞はスピニング・メンブレンの使用により、まさに記載したバッファーを用いて2サイクルで洗浄され、洗浄バッグである収集バッグに輸送される。次いで、この細胞はプログラムされた50〜60mlの量で最終回収バッグに輸送され、洗浄バッグ及び管材は細胞損失を低減するために一定のバッファー量で濯がれる。
上述したように、最終回収バッグ中の最終産物(遺伝子改変した細胞)は注入のためにHSA 0.5〜4%で補充した生理食塩水、又は細胞凍結のためにHSA 0.5〜4%及びDMSO 10%で補充した生理食塩水中で懸濁することができる。
注入又は凍結前に、最終産物のアリコートが、ヨーロッパの規則で要求される試験を用いて品質について管理される。
洗浄ステップの効率及び長さは選択されるパラメーターである「residual fold reduction」に左右される。50の値はNexellデータに基づいて選択した。100の値は供給源溶液の約2対数減少を生じるだろう。
洗浄及び濃縮手順の長さは約1時間である。
2つの独立の実験をまさに記載した洗浄手順を用いて実施した。これらの実験では、以下のパラメーターを分析した:出発量(サンプルバッグ中の細胞懸濁液の量)、洗浄ステップの間の細胞損失を試験するための出発細胞数及び最終細胞数、試薬の消費を評価するための使用される洗浄バッファーの量、及び全手順の長さ。細胞の生存率が基本的な問題である最後の時点がこのステップにおいて非常に重要である。
表9はCytoMateTMを用いて実施した2つの洗浄実験のデータを要約する。
Figure 0004988559
細胞が細胞培地1ml当たり0.2〜1x106細胞で培養される際に、サンプルの出発量は先の分離ステップ時の細胞数に左右される。
回収バッグ中の細胞の最終量は、使用者によりプログラム中で設定され、患者へ注射するための量を最小化するために、おそらくは60mlを超えない。
細胞の出発数及び最終数は、この手順の間の細胞損失を評価するために、及び遺伝子療法臨床研究(Bibliografia)において患者の体重1kg当たりの細胞数として一般的に規定される患者へ注射されるべき用量を計画するための臨床研究目的に、非常に有用なデータである。
実施例4に記載されるように、CytoMateTMを用いた手順は非常に短時間である。
最終的に回収した細胞が最終産物であるこのステップにおいて、細胞操作の総時間は患者への注射又は細胞凍結まで細胞の生存率を維持するために最小化する必要がある。本発明者らの実験室で実施された、4% HSAを含む0.9%塩化ナトリウム中に懸濁された最終産物の生存率に対する安定性試験は、細胞懸濁液が4時間安定性を維持し、従って一時間がこのプロセスステップに適当な時間であることを示す。
この生産物の生存率を評価し、2つの実験で96〜97%であることが見出され、そして洗浄ステップの間の細胞損失は4〜7%であった。この結果は、患者への注射又は凍結用の最終産物の質を保証する。
このデータに従って、最終産物(注射又は凍結用の遺伝子改変型細胞)を調製するために閉鎖系で実施される洗浄プロセスは時間がかかるものではなく、かつ処理された細胞の質及び安全性は十分に維持される。すなわち、細胞は、洗浄操作の間、開始バッグから最終注射用又は凍結用バッグへ管材セットを通じて輸送され、かつ生産物の質の管理は滅菌注射器を用いて生産物のアリコートを取り上げることにより実施される。
実施例8
開放系と閉鎖系の比較
先の実施例で詳細に記載されるように、本発明は臨床用途のために標準化された安全な閉鎖系での形質導入及び遺伝子改変型細胞の選択方法を提供する。
特に、本発明は同種骨髄移植臨床プロトコールの関連で使用されるべき遺伝子改変型T細胞の製造に使用した(先の実施例参照)。
現在、開放系は臨床プロトコール用の形質導入型T細胞の製造に使用される。このシステムのステップは上記で要約され、刺激、形質導入、選択、増殖及び回収を含む。
各実施例において、単一のステップを閉鎖系へのこのステップの展開と共に記載した。
開放系から閉鎖系への転換は、生産物のスケールアップに必要であり、これは臨床用途用の生産物の安全性を改善するため必要である。
本発明者らの経験で、細胞数の制限を要する場合(1〜1.2x108個の最終細胞、患者用量1Kg当たり106細胞)、汚染の有意なリスク無く開放系を使用し得る。
しかし臨床プロトコールが高用量(1Kg当たり107又は108細胞)を要求する際には、0.8〜8x109個の最終細胞が製造され、汚染のリスクを低減しかつ細胞操作を容易にするために閉鎖系を必要とする。
この目的により、簡単に適用可能な閉鎖系を本発明者らの実験室で開発した。上述の各ステップで説明されるように、このシステムは開放系と比較してより高量の細胞の無菌操作を保証する。開放ステップが存在しない限り、全操作を従来の実験室で実施し得る。
この方法は広範な実験室オペレーターが使用するためにプロトコール装置で標準化することができる。
下記の表では、先の実施例で詳細に考察された2つの実験が要約され、段階的に開放系で実施された実験と比較される。
開放系の各値はアフェレーシスにより回収された5個体の異なるドナー細胞を用いて実施した5つの実験の中間値であり、閉鎖系で実施した2つの実験はバフィーコート及びアフェレーシスから実施した。
Figure 0004988559
Day2/Day0は2日目と0日目で試験した細胞数間の比を示す。この比は、2日目までの細胞増殖速度を示す。Day3/Day2及びDay6/Day3の比も同じ意味を有する。
選択前のNGFR+細胞%は、Tk分子及びΔLNGFR細胞表面発現分子をコードする実施例2に記載のSFCMM-3ベクターで遺伝子改変した、形質導入細胞の数を示す。この値は選択ステップ前に細胞蛍光分析を用いて検出した。
MFIは蛍光強度の平均であり、かつ細胞表面上で発現された細胞分子の量に関連する細胞蛍光分析のパラメーターである。
回収%は選択ステップ後に収集した総細胞数と選択ステップ前の形質導入細胞の総細胞数との比である。
NGFR細胞の最終%は最終産物中の遺伝子改変型細胞の数を示す。
最終細胞数は、患者への注射日又は細胞凍結日に収集した遺伝子改変型細胞の数である。
時点はday 0(細胞の刺激日)、day 2(形質導入日)、day 6(選択日)、day 7(ビーズ分離日)、day 10(最終産物の回収日)である。
この実験は類似の細胞数(5つの開放系実験に関して平均1622x106細胞、閉鎖系実験に関して932〜1000x106細胞)から実施したため比較することができる。
この表はアフェレーシスから閉鎖系により実施した実験が非常に効果的であり、製造した遺伝子改変型細胞数は実際に、アフェレーシスから開放系により製造したものより高いことを示す。
このプロセスの詳細な分析は、閉鎖系が主要な利点を示すステップが、細胞の回収が非常に高い形質導入及び選択であることを示す。
最終産物の純度(NGFR陽性細胞の最終%)は非常に類似しており、遺伝子改変型細胞の最終集団の均一性を示す。
増殖速度は、特にday3と6との間並びにday10と7との間で、開放系よりも閉鎖系で低い。しかし異なるバッグ又は異なる培養培地を用いた細胞培養の開発は細胞増殖を改善するはずである。
これらの結果は、本発明が安全かつ効率的である標準化された閉鎖系での、形質導入及び遺伝子改変型細胞の選択方法を提供することを立証する。
同種骨髄移植臨床プロトコールの関連で試験される本発明は、安全性及び効率性が必要な幾つかの遺伝子治療臨床研究に適用することができる。
図1は、遺伝子改変型細胞の調製に要求され得るステップを要約するプロセススキームを示す。 図2は、細胞増殖に対する、刺激及び形質導入方法の効果を示す。増殖(倍)は、示される各時点で細胞をカウントし、0日目で播種された細胞数で割算することで評価した。 図3は、形質導入効率に対する、刺激及び形質導入方法の効果を示す。LNGFR陽性細胞%は6日目でフローサイトメトリーによって評価した。 図4は細胞増殖に対するビーズ:細胞比の効果を示す。増殖(倍)は示される各時点で細胞をカウントし、0日目で播種された細胞数で生存可能な細胞数を割算することによって評価した。 図5は形質導入効率に対するビーズ:細胞比の効果を示す。LNGFR陽性細胞%は6日目でフローサイトメトリーによって評価した。

Claims (15)

  1. 遺伝子構築物をT細胞に形質導入し、遺伝子改変した細胞を選択する方法であって、閉鎖系で形質導入及び選択を実施することを含み、流体の手動輸送なく、自動化流体管理装置を用いて、前記細胞を洗浄し、濃縮し、形質導入し、及び再懸濁し、且つ常磁性ポリスチレンビーズを使用する形質導入した細胞の免疫磁気選択を含み、前記ビーズは前記細胞の免疫グロブリン選択後に該細胞から除去される、上記方法。
  2. T細胞を改変する方法であって、
    (i)前記細胞に遺伝子構築物を形質導入すること;及び
    (ii)ポリスチレンビーズを使用する免疫磁気選択を用いて形質導入した細胞を選択すること、ここで前記ビーズは前記細胞の免疫グロブリン選択後に該細胞から除去される
    を含み、その際、ステップ(i)及び(ii)を閉鎖系で実施し、且つ流体の手動輸送なく、自動化流体管理装置を用いて、前記細胞を洗浄し、濃縮し、形質導入し、及び再懸濁する、上記方法。
  3. ステップ(i)前に、閉鎖系において前記細胞を解凍し、及び/又は前記細胞を刺激することを含む、請求項2に記載の方法。
  4. ステップ(ii)後に、閉鎖系において前記形質導入した細胞を増殖し、且つ回収することを含む、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 遺伝子構築物がレトロウイルスベクターである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. レトロウイルスベクターがMLV由来のベクターである、請求項5に記載の方法。
  7. レトロウイルスベクターが細胞表面マーカーをコードする、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 細胞表面マーカーがΔLNGFRである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記方法がフィブロネクチン又はそのキモトリプシン断片を用いた形質導入ステップを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記方法がヒトフィブロネクチンの組換えペプチドを用いた形質導入ステップを含み、該組換えペプチドがCH-296である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記方法が単一の装置を使用するものである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記方法が、細胞濃縮、細胞洗浄、形質導入、培地交換及び形質導入細胞の免疫磁気選択用の2以上の装置を使用するものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記方法が、
    (I)細胞濃縮、細胞洗浄、形質導入及び培地交換用の第1装置;及び
    (II)形質導入細胞の免疫磁気選択用の第2装置、
    を使用するものである、請求項12に記載の方法。
  14. 装置間の細胞の輸送を密閉バッグ及び無菌接続を用いて実施する、請求項12又は13に記載の方法。
  15. 段階的に使用者が規定可能なプログラミングを可能にする完全な閉鎖系において、スピニング・メンブレンが、バッファーの向流循環に対して細胞濾過を保証し、且つ異なるバッグへ接続される、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
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