JP4987525B2 - ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム - Google Patents

ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム Download PDF

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Description

本発明は、基材フィルム上にダイヤモンドライクカーボン膜が被覆されたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムに係り、所定のパラメータを有する、ガスバリア性、透明性に優れたダイヤモンドカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムに関する。
従来、医療用品、薬品、食品等の各種包装材には、酸素、湿気等による内容物の劣化を防ぐために、ガスバリア性の高い各種包装材が使用されてきた。例えば、プラスチックフィルムの表面に(1)酸化珪素や、窒化珪素等の珪素化合物被膜、(2)酸化アルミ被膜、(3)ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon、以下「DLC」ともいう。)被膜を形成することによりガスバリア性を高めたプラスチックフィルムが知られている。しかし、(1)珪素化合物被膜をコーティングしたガスバリア性フィルムにおいては、フィルムの屈曲・伸縮等の応力により珪素化合物被膜が割れてガスバリア性が低下し易いという問題があり、基材フィルムにプライマー層を設ける必要がある。(2)酸化アルミ被膜をコーティングしたガスバリア性フィルムにおいてはX線による異物検査等が使用できず、また、アルカリ性の内容物と直接触れることにより被膜が剥離するという問題があった。
これらに対して、(3)DLC被膜は、プラスチックフィルムの変形に対する追従性・柔軟性が高いためガスバリア性の低下が少なく、X線による異物検査機も使用できる点で優れている。このようなDLC膜が形成されたプラスチックフィルムとしては、例えば、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、水素濃度が50原子%以下であり、かつ、酸素濃度が2〜20原子%であるダイヤモンド状炭素膜が形成されてなる耐薬品用容器フィルムが知られている(特許文献1参照)。
また、特許文献2には、プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に非晶質のダイヤモンド状炭素膜が形成されていることを特徴とするガスバリアフィルムについて記載されており、該ガスバリアフィルムは、酸素透過度が0.95cc/m/日、光線透過率が68%、透明性が黄褐色透明という性質を有する。また、特許文献2においては、炭素と水素を含有する原料ガスをプラズマによって励起させ、プラスチックフィルム基材と接触させて、該基材上にダイヤモンド状炭素膜を形成しており、プラズマによって励起する手段としては、成膜速度が速く成膜温度が低いことから、電子サイクロトロン共鳴によってプラズマ分解する方法が好ましい旨が記載されている。
さらに、特許文献3には、CVD法によって基板上にダイヤモンド膜を形成する方法において、炭素原子を含む原料として、アダマンタン又はアダマンタン化合物を用い、前記炭素原子を含む原料を入れる容器中の大気を排気する際、前記原料を入れる容器を冷却することを特徴とするダイヤモンド膜形成方法について記載されており、原料として、常温常圧では固体であるアダマンタン、又はアダマンタン化合物を用いることによってダイヤモンド膜の成膜速度の向上、及び低温での成膜が可能となる旨が記載されている。
また特許文献4には、特定の置換基を有するジアマンタン又はアダマンタン化合物、若しくは該化合物を含む組成物を化学気相蒸着することにより形成された膜について記載されており、該膜は低誘電率の絶縁膜であり、電子デバイスなどにおける層間絶縁膜として利用できる旨が記載されている。
しかしながら、従来のダイヤモンドライクカーボン膜が形成されたフィルムは、該ダイヤモンドライクカーボン膜の形成において、グラファイト構造に由来する着色により、透明性が低下し、また全光線透過率や、酸素透過率等の諸性質も満足できるものではなかった。
特開平11−70152号公報 特開平06−344495号公報 特許第3071855号公報 特開2006−100794号公報
本発明の課題は、ガスバリア性を低下させることなく、かつ透明性に優れたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを提供することである。
上記特許文献3及び4には、アダマンタン又はアダマンタン化合物等を原料としたダイヤモンドライクカーボン膜や、該ダイヤモンドライクカーボン膜の作製方法について記載されているが、成膜速度の向上や、低誘電率の絶縁膜の作製を目的としており、透明性や、ガスバリア性についての検討は一切されていなかった。
そこで、本発明者らは、基材フィルム上にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を形成する際において、可視光領域での光学的透明性の向上と、酸素透過率、及び着色度の低減を目的として、鋭意検討を重ねたところ、ラマン分光分析において観測されるピークを、ガウス関数を用いて波形近似させ、各種ピーク関係についての解析結果から、グラファイト構造を示す中心波数1500〜1600cm−1のピーク強度と、結晶構造の不規則性を表す中心波数1300〜1400cm−1のピーク強度と、中心波数2000〜3000cm−1に現れるポリマー起因のピーク強度とが、透明性及びガスバリア性と密接な関係にあることを明らかにし、ガスバリア性を低下させることなく、透明性に優れたガスバリア性フィルムの作製には、以下(1)及び(2)の条件を充足する必要があることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)ラマン分光分析において観測されるピークをガウス関数で近似した近似曲線を描き、グラファイト構造を示す中心波数1500〜1600cm−1のピークの面積をG−bandの強度:Igとし、結晶構造の不規則性を表す中心波数1300〜1400cm−1のピークの面積をD−bandの強度:Idとし、中心波数2000〜3000cm−1に表れるポリマー起因のピークの面積をポリマー強度:Ipとし、これら3つの合計(Ia+Ig+Ip)を全ピーク強度(Ia)と設定したときに、G−band強度:Igを全ピーク強度:Iaで除した値、すなわち、全ピーク強度に対するG−bandの強度(面積強度比:Ig/Ia)が、0.1以下であること。
(2)全ピーク強度に対するD−bandの強度(面積強度比:Ig/Ia)が、0.05以下であること。
なお、上記特許文献3記載の方法によって、DLC膜が形成されたフィルムを作製した場合(原料ガス:アダマンタン1sccmと水素100sccm、電源:マイクロ波(2.45GHz)、反応圧力:40Torr、基板温度:500〜700℃)、該フィルムは、上記(1)及び(2)のパラメータ条件を充足しないことから、上記文献3記載の方法によって、ガスバリア性を低下させることなく、透明性に優れた本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを作製することはできない。特に上記文献3記載の方法においては、高い基板温度(500〜700℃)でDLC膜を形成していることから、DLC膜の形成段階において膜中より水素が抜けるため、本願発明においていう、Ig/Iaの値(上記(1))が極めて高い値となることが容易に予想される。
また、上記特許文献4記載の方法によって、DLC膜を形成した場合も、同様であり、上記特許文献4に記載の方法(電源:高周波(13.56MHz))によって、DLC膜が形成されたフィルムは、上記(1)及び(2)の条件を充足しないことから、ガスバリア性を低下させることなく、透明性に優れた、本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを作製することはできない。
本発明によれば、基材フィルムにDLC被膜が被覆されたガスバリア性フィルムにおいて、ガスバリア性を低下させることなく、透明性に優れ、内容物視認性が改善されたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを提供することができる。
以下、本発明を詳しく説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム、基材フィルムの少なくとも一方の面に、式C4n+64n+12で表される脂環式炭化水素により、厚さ1〜100nmのダイヤモンドライクカーボン膜が形成されたガスバリア性フィルムであって、該ガスバリア性フィルムが、ラマン分光分析において全ピークの強度に対する1500〜1600cm−1に中心波数の存在するG−bandの強度が0.1以下、1300〜1400cm−1に中心波数の存在するD−bandの強度が0.05以下であり着色度(YI)が5.0以下であり、かつ前記ダイヤモンドライクカーボン膜が、パルス幅1〜50μsecのパルス幅変動型電源を用いたプラズマCVD法により形成されたものであれば特に制限されるものではなく、前記条件を充足する本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムは、ガスバリア性が低下することなく、透明性に優れたものである。
次に、本発明において規定したG−bandの強度、及びD−bandの強度について説明する。
図1は、本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを、ラマン分光法を用いて、分光測定を行った結果のラマンスペクトルを示している。得られた測定結果をガウス関数で近似して近似曲線を描くと、グラファイト構造を示すG−band(1500〜1600cm−1)、結晶構造の不規則性を表すD−band(1300〜1400cm−1)、その他に2000〜3000cm−1に表れるポリマー起因のピークとに波形分離される。この波形分離したピーク強度をそれぞれIg(G−band)、Id(D−band)、Ip(P−band)として、さらにこれらの3つの合計(全ピーク強度:Ig+Id+Ip=Ia)で割ることにより、形成したDLC膜の全組成に対する割合を求めた。Id/Iaが0.05以下であると、ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムは基材フィルムと比較して10倍以上のガスバリア性を有する。また、Ig/Iaが0.1以下であると、DLC膜中のグラファイト成分が多いため着色の原因となる。
上記基材フィルムの樹脂材料としては、特に限定されず樹脂成形品に適用される公知の合成樹脂材料が適用される。具体的には、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、シクロオレフィンコポリマ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリ−4−メチルペンテン−1 樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、アイオノマ樹脂、ポリスルホン樹脂及び4−フッ化エチレン樹脂(TFE)、ポリ乳酸樹脂(PLA)等が挙げられる。これらのうちで、DLC膜との密着性及び成形性が良好である点、透明性が高く飲食品等の収容容器に好適に使用することができる点よりポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。
基材フィルムは、上記合成樹脂材料を原料として公知の方法により製造することができる。基材フィルムは、未延伸でもよいが、機械強度を向上させるために、好ましくは延伸フィルムが適用される。延伸倍率は、流れ方向に2〜6倍及び幅方向に2〜5倍が好ましく、二軸延伸が好ましい。フィルムの厚さは、目的・用途、機械強度、可撓性、透明性等の観点より適宜設定することができる。本発明のガスバリア性フィルムが、例えば、飲食品、医薬品等の包装材料として使用される場合、厚みは好ましくは5〜500μm、より好ましくは10〜200μmの範囲に設定される。また、フィルムの幅や長さは特に制限はなく、適宜用途に応じて選択することができる。
DLC膜を基材フィルム上に形成する方法の一例として、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。プラズマCVD法を用いたDLC被膜の形成は、市販のプラズマCVD装置を用いて行なうことが可能である。プラズマCVD装置を用いた具体的なDLC被膜の形成方法は、まず真空チャンバー内に基材フィルムをセットする。真空チャンバー内には二対の電極があり、片方に所定(例えば13.56MHz)の高周波(RF)電源が接続され、もう一方はアースとなる。この真空チャンバー内を真空ポンプを用いて所定の圧力(例えば1〜50Pa)まで減圧し、ガス導入口から原料ガスを真空チャンバー内に導入する。プラズマ発生用電源に電力を印加することにより基材フィルム表面にプラズマを発生させ、ガスバリア性薄膜を形成させる。なお、DLC被膜の形成方法はこれに限定されるものではなく、基材フィルムの種類・大きさ、厚み等に応じ公知の方法を適宜用いることができる。
プラズマを発生させるための方法としては、特に限定されず市販のプラズマ発生用電源が適用される。具体的には、400KHz〜100MHzの高周波電源、915MHz〜2.45GHzのマイクロ波電源、パルス幅変調型の高周波・マイクロ波電源等が挙げられる。これらのうちで、プラズマの制御が容易であり、低温にてプラズマを発生できるため、パルス幅変調型電源が好ましい。さらに、パルス幅変調型電源は、その電力印加特性より定間隔において断続的にプラズマが発生するため、形成されるDLC膜は非常に薄いDLC膜を何層も積層した構成となることが考えられる。ガスバリア性が低下する原因の一つとして、DLC膜のピンホールが挙げられる。このピンホールを埋める手段として、薄膜の積層形成が有効である。そのためパルス幅変調型電源が好ましい。パルス幅変調型電源のパルス幅は好ましくは1〜50μsec、より好ましくは1〜20μsecの範囲に設定される。
プラズマCVD法によるDLC膜形成の際に使用される原料としては、式C4n+64n+12で表される脂環式炭化水素であれば制限されず、例えば、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ペンタマンタン、テトラマンタン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。前記原料は、前記各化合物を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。混合する原料としては脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素が好ましい。また、原料ガスをアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の希ガスで希釈して使用してもよい。
脂環式炭化水素に混合する原料としては、アセチレン、エチレン、プロピレン、メタン、エタン、プロパン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を混合することにより、DLC膜の成膜速度が向上する。前記原料は、脂環式炭化水素と混合する場合、混合量が増加すると着色の原因となるため、全原料に対して体積比において60%以下(0%を含む)の割合となるよう混合することが好ましいが、成膜速度の向上の点からは5%以上含むことが好ましく、着色を抑制する点からは40%以下とすることが好ましい。すなわち、10〜30%以下とすることがより好ましく、5〜20%以下とすることが最も好ましい。
基材フィルムに被覆されるDLC膜の膜厚は、5〜100nm、好ましくは10〜80nm、より好ましくは15〜50nmである。DLC被膜の膜厚が5nm未満であるとガス透過度の上昇を招くおそれがある。一方、DLC被膜の膜厚が100nmを超えると黄色度が上昇するとともに全光線透過率の低下を招くおそれがある。DLC膜の膜厚は、プラズマCVD法を使用する場合、出力、原料ガスの圧力・濃度、プラズマ発生時間等を調節することにより変化させることができる。また、基材フィルムに被覆されるDLC膜の表面粗さ(Rms)は、1〜10nmの範囲内とすることが好ましく、中でも、1〜5nmの範囲内とすることがより好ましい。通常、基材フィルムとして使用される二軸延伸フィルムは表面粗さが5nm以下と良好である。この二軸延伸フィルム上にDLC膜を形成する場合、DLC膜の表面粗さが大きくなるとガスバリア性に対して必要以上の膜厚となるため、DLC膜の応力によりガスバリア性フィルムが変形したり、DLC膜に亀裂(クラック)が生じる可能性がある。
本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムは、好ましくは全光線透過率が80%以上に設定される。全光線透過率が80%以上であると、ガスバリア性フィルムを飲食品、医薬品、化粧品等の収容容器に適用した場合に内容物の確認及び変色等を容易且つ正確に確認することができる。全光線透過率は基材フィルムを構成する合成樹脂材料、膜厚、ガスバリア層の膜厚に依存する。全光線透過率(%)は、JISK7105に準じて分光光度計を用いて測定することができる。
本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムは、黄色度(YI)が5.0以下であることを必要とするが、中でも黄色度(YI)が2.5〜5.0の範囲内に設定するのが好ましい。黄色度(YI)は、JISZ7103の準拠して測定した。具体的には、市販の色差計によって測定することができ、三刺激値X、Y、Zを求め、これらを次の式を用いて計算する。
Figure 0004987525
黄色度(YI)とは、無色、又は白色から色相が黄色向に離れる度合いであり、プラスの量として表示される。従って、黄色度がマイナスの値で表示される時は色相が青方向へ移向することを示している。そこで、透明合成樹脂を原料としてガスバリア性フィルムを成形した場合、黄色度(YI)が低いことはDLC被膜由来の着色が少ないことを示す。黄色度(YI)が2.5〜5.0の範囲内であると、ガスバリア性フィルムを飲食品、医薬品、化粧品等の収容容器に適用した場合に内容物の確認、及び変色等を容易且つ正確に確認することができる。黄色度(YI)はダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを構成する合成樹脂材料、膜厚、ガスバリア層の膜厚・膜組成に依存する。
本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムは、好ましくは水素量が1〜50原子%の範囲内に設定される。DLC膜中における水素含有量が1〜50原子%の範囲内であると、ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムは基材フィルムと比較して10倍以上のガスバリア性を有する。
本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムは、好ましくは25℃、80%RH条件下での酸素透過率が、1cc/m/24hr以下であることが好ましく、0.5cc/m/24hr以下であることがより好ましく、更に好ましくは0.25cc/m/24hr以下である。
以下に本発明を実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
(実施例1)
基材フィルムとして、厚さ125μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を使用した。成膜は平行平板型のパルスプラズマCVD装置を用いて行った。先ず、真空チャンバー内を真空ポンプにより0.01Paに減圧した後、アダマンタンを導入して装置内圧力を1Paとして、パルス幅約5μsecの直流単パルス電源により電力を印加してプラズマを発生し、DLC膜を形成した。なお、アダマンタンは常温では固体であるため、120℃に加熱して昇化させ装置内に導入した。実施例1の得られたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムについて、酸素透過率、全光線透過率、DLC膜の膜厚、ラザフォード後方散乱分光分析、ラマン分光分析、及び黄色度について測定した。各測定及び評価の方法は以下の通りである。なお、以下の実施例、及び比較例も同様の測定及び評価方法にて行なった。測定結果を表1に示す。
[DLC被膜の膜厚]
予めPETフィルムの製膜面に黒色インキ等でマスキングを行って、DLC被膜を被覆した後、ジエチルエーテル等でマスキングを除去し、米国sloan社製、表面形状測定器「DEKTAK3030」によって膜厚を測定した。
[DLC被膜の二乗平均粗さ(Rms)]
走査型プローブ顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製SPI3800)の非接触モード(ダイナミックフォースモード)で測定した。走査速度、1測定領域中の測定点数、傾斜補正は、表面状態を明確に測定できる条件を選択した。フィルムの表面形状の表面粗さ(Rms)は、走査型プローブ顕微鏡SPI3800付属ソフトの「CROSSSECTION」解析のAREA解析で求めた。
[DLC膜中の水素量]
DLC膜中における水素含有量は、ラザフォード後方散乱分光法(Charles Evans & Associates社製、[RBS400])により測定した。具体的には、シリコンウェハー上にDLC膜を形成し、人工的なアルファ粒子(高速のHe原子核)を照射し、後方に散乱した同粒子を検出することにより、表面から約1μmの部分に存在する元素を分析する。
[ラマン分光測定]
ラマン分光測定はDLC膜をガラス板の上に形成し、日本分光(株)社製、ラマン分光装置[NRS−1000]にて測定した。測定範囲は50〜5000cm−1の範囲内にて行ない、得られたデータをガウス関数により、1500〜1600cm−1に中心波数の存在するグラファイト構造を示すG−band、1300〜1400cm−1に中心波数の存在する結晶構造の不規則性を表すD−band、その他に中心波数2000〜3000cm−1に現れるポリマー起因のピークとに波形分離した。
[ガスバリア性(酸素透過率)]
酸素透過測定装置(米国モダンコントロール製、「OX−TRAN2/21」)を使用し、温度25℃、相対湿度80%の条件下で測定した。ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムのガスバリア性は、未コートPETフィルムに対するガスバリア性を倍率にて表した。
[黄色度]
色差計(日本電色社製「ZE2000」)により垂直に光を通過させてYIを測定することにより、前記被膜による黄色の程度を評価した。
[全光線透過率]
JISK7105に準じて光度計(日本電色社製「NDH−300A」)を用いて全光線透過率を測定した。
(実施例2)
実施例1において、アダマンタンに対してアセチレンを12sccm供給した以外は同様にして、ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを作製した。得られたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、プラズマ発生用電源としてパルス幅約1μsecの直流単パルス電源を使用した以外は同様にしてダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを作製した。得られたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例3において、アダマンタンに対してアセチレンを5sccm供給した以外は同様にして、ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを作製した。得られたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例3において、アダマンタンに対してアセチレンを10sccm供給した以外は同様にして、ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを作製した。得られたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、アセチレン原料のみを使用した以外は同様にして、ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを作製した。得られたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例3において、アセチレン原料のみを使用した以外は同様にして、ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを作製した。得られたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、アセチレン原料を使用し、プラズマ発生用電源として13.56MHzの高周波電源によりDLC膜を形成した以外は同様にして、ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムを作製した。得られたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0004987525
以上の通り、本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムは、上記(1)及び(2)のパラメータを充足することによって、ガスバリア性が低下することなく、透明性に優れたガスバリア性フィルムとなることが明らかにされた。
図1は、本発明のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムに関するラマンスペクトルである。

Claims (9)

  1. 基材フィルムの少なくとも一方の面に、式C4n+64n+12で表される脂環式炭化水素により、厚さ1〜100nmのダイヤモンドライクカーボン膜が形成されたガスバリア性フィルムであって、
    ラマン分光分析において全ピークの強度に対する1500〜1600cm−1に中心波数の存在するG−bandの強度が0.1以下、1300〜1400cm−1に中心波数の存在するD−bandの強度が0.05以下であり、かつ着色度(YI)が5.0以下であり、
    前記ダイヤモンドライクカーボン膜が、パルス幅1〜50μsecのパルス幅変動型電源を用いたプラズマCVD法により形成されたものであることを特徴とするダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム。
  2. 前記脂環式炭化水素化合物が、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、ペンタマンタン、テトラマンタンの群より選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム。
  3. 前記ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚が5〜100nmの範囲内であり、かつ表面粗さ(Rms)が1〜10nmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム。
  4. 前記ダイヤモンドライクカーボン膜が、前記脂環式炭化水素にさらに脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を全原料の60%以下の体積比で混合して形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム。
  5. 前記ダイヤモンドライクカーボン膜の組成において、水素が1〜50原子%含有されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム。
  6. 全光線透過率が80%以上である請求項1〜のいずれかに記載のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム。
  7. 25℃、80%RH条件下での酸素透過率が、1cc/m/24hr以下である請求項1〜のいずれかに記載のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム。
  8. 基材フィルムが、流れ方向に2〜6倍及び幅方向に2〜5倍の延伸倍率で延伸処理されたフィルムである請求項1〜のいずれかに記載のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム。
  9. 基材フィルムの厚さが5〜500μmである請求項1〜のいずれかに記載のダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルム。
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