JP4986067B2 - 耐火シート - Google Patents

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Description

本発明は、例えば建物の壁、床、柱、梁等の部材に遮熱性を付与するための耐火シートに関する。
従来、建物の壁、床、柱、梁等の構造部材(部材)は、盛期火災時の熱から守ることが建物の焼損防止性及び構造安定性(耐火性)を確保する上で必要であり、例えば壁体の非火災側の裏面温度や柱、梁の温度の上昇を抑えること(遮熱性を確保すること)が重要である。特に、調湿性、衝撃安全性、断熱性に優れ、心身不調の低減、香りによるリラックス効果、わくわく感の向上、子供たちの情緒安定等に大きな効果をもたらすことから、児童福祉施設などへの採用が期待されている木材を用いた構造部材(木造部材)などにおいては、燃え抜けずに、焼け止まることが必要である。
これに対し、例えば特許文献1、特許文献2に開示されるような耐熱シートを部材と抱き合わせたり、部材の内部に挿入するなどして構造部材を形成し、耐火性(遮熱性)を付与することが考えられている。
特開平8−199458号公報 特開平10−331553号公報
しかしながら、例えばシートシャッターに使用される従来の耐熱シートは、防火シャッターの換わりとして用いられるものであるため、火炎や煙の遮断性能を有する反面、その厚さが薄く、遮熱性まで期待されていない。このため、この種の耐熱シートを集成材等と抱き合わせたり、無垢の木材等の部材の内部に挿入しても、加熱側から裏面の非加熱側に熱が伝わってしまい、遮熱性とともに焼け止まりを確保することができないおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑み、遮熱性を容易に且つ確実に部材に付与することが可能な耐火シートを提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の耐火シートは、部材に遮熱性を付与するための耐火シートであって、加熱されるとともに発泡して遮熱性を発揮する珪酸ソーダを含んでなり、一面から他面に貫通する貫通孔が形成された珪酸ソーダ層と、該珪酸ソーダ層の前記一面及び前記他面にそれぞれ剥離可能に設けられた剥離紙と、前記珪酸ソーダ層の貫通孔を形成する内面を被覆するコーティング材とを備えて形成されていることを特徴とする。
この発明においては、剥離紙を剥離して取り外し、珪酸ソーダ層の一面及び他面に接着剤を塗布して部材に貼り付けて、例えば建物の壁、床、柱、梁等の構造部材として使用される集成材に抱き合わせるように設けたり、無垢の木造部材の内部に挿入して設けるだけで、部材に遮熱性を付与することが可能になる。すなわち、火災時に部材の内部に配置されたこの耐火シートの珪酸ソーダ層が加熱されるとともに、珪酸ソーダが発泡することにより、遮熱性を発揮させることができる。このため、耐火シートよりも内側(部材の裏面側)に熱が伝わることを抑制することができ(遮熱性を発揮させることができ)、焼け止まりを確保することが可能になる。
また、珪酸ソーダ層に貫通孔が形成されていることによって、耐火シートひいては部材の軽量化を図ることが可能になる。さらに、部材が木造部材である場合には、通常時に、この貫通孔を通じて耐火シートよりも内側に配された木材に調湿性を発揮させることができるとともに、この内側の木材の香りを貫通孔を通じて外部に拡散させることが可能になる。このため、木材の良さを損なうことなく、火災時の遮熱性を部材に付与することが可能になる。なお、この貫通孔は、火災時に珪酸ソーダ層が加熱されて発泡膨張するとともに閉塞されるため、耐火シートによって遮熱性が確実に部材に付与される。
さらに、耐火シートを部材に設置する前(耐火シートの使用前)においては、珪酸ソーダ層が剥離紙と貫通孔の内面に設けたコーティング材とで被覆されているため、珪酸ソーダ層を保護するとともにその含水率を保持することができ、珪酸ソーダ層の発泡性能を好適な状態で維持することが可能になる。また、部材に設置した際(使用時)には、珪酸ソーダ層の一面及び他面に塗布した接着剤と貫通孔の内面に設けたコーティング材で、珪酸ソーダ層の含水率を保持することができ、長期にわたって確実に珪酸ソーダ層の発泡性能を維持することが可能になる。
本発明の耐火シートによれば、剥離紙を剥離して取り外し、例えば建物の壁、床、柱、梁等の構造部材として使用される集成材に抱き合わせるように設けたり、無垢の木造部材の内部に挿入して設けるだけで、容易に且つ確実に部材に遮熱性を付与することが可能になる。
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係る耐火シートについて説明する。本実施形態は、例えば建物の壁、床、柱、梁等の構造部材(部材)に遮熱性を付与するための耐火シートに関するものであり、本実施形態においては、この構造部材が木造部材であるものとして説明を行う。
本実施形態の耐火シートAは、図1及び図2に示すように、珪酸ソーダ層1と、剥離紙2、3と、コーティング材4とを備えて形成されている。
珪酸ソーダ層1は、有機剤及び/又は無機剤を含んだ珪酸ソーダからなり、弾力性を有し、1mm程度の厚さH1で形成されている。また、この珪酸ソーダ層1には、一面1aから他面1bに貫通する複数の貫通孔1bが分散して形成されており、各貫通孔1cは、数mmから数十mm程度の直径で形成されている。そして、珪酸ソーダ層1は、加熱されるとともに珪酸ソーダが発泡してその厚さH1を増大させるとともに透明から不透明(白色に近い有色)に変化することで遮熱性を発揮する。
また、珪酸ソーダ層1の一面1a及び他面1bにそれぞれ、剥離可能に剥離紙2、3が貼り付けて設けられている。さらに、珪酸ソーダ層1の各貫通孔1cを形成する内面に、例えばエマルジョン系塗料や保護フィルムなどのコーティング材4がこの内面を被覆して設けられている。
そして、このように珪酸ソーダ層1の一面1a及び他面1bがそれぞれ、剥離紙2、3で被覆されていることによって、珪酸ソーダ層1が保護されるとともにその含水率が保持されている。また、珪酸ソーダ層1の貫通孔1cを形成する内面がコーティング材4で被覆されていることによって、珪酸ソーダ層1が周囲の空気等に触れることを防止しその含水率が保持されている。これにより、使用前の耐火シートAは、珪酸ソーダ層1の発泡性能が剥離紙2、3及びコーティング材4によって好適な状態で維持され、機能劣化が生じないように形成されている。
上記のように構成した本実施形態の耐火シートAは、図3及び図4に示すように、建物の壁、床、柱、梁等の構造部材(部材)5として使用される集成材に抱き合わせるように設けたり、無垢の木造部材の内部に挿入して使用される。このとき、耐火シートAの剥離紙2、3を剥離して取り外し、珪酸ソーダ層1の一面1a及び他面1bに耐熱性を有する接着剤6を塗布し、部材5に貼り付けることによって設置される。このとき、耐火シートA(珪酸ソーダ層1)に弾力性があるため、持ち運びや貼り付け作業を容易に行える。また、耐火シートAを設置した場合においても、珪酸ソーダ層1に貫通孔1cが形成されて耐火シートAの軽量化が図られているため、部材5の重量が増大することはない。
そして、このように部材5の内部に設けられた耐火シートAは、一面1a及び他面1bが接着剤6によって被覆され、貫通孔1cを形成する内面がコーティング材4によって被覆されているため、珪酸ソーダ層1が保護され、且つその含水率が保持される。これにより、部材5の内部に設置した珪酸ソーダ層1は、その発泡性能が確実に長期にわたって維持される。
また、このように部材5の内部に耐火シートAを設けた場合においても、珪酸ソーダ層1に複数の貫通孔1cが形成されているため、この耐火シートA(珪酸ソーダ層1)を挟んで部材5の表面側に配された表面木材部5aと、部材5の内側に配された木材本体部5bとが貫通孔1cを通じて繋がる。このため、部材5は、通常時において、表面木材部5aによって調湿性、香り、見た目等が通常木材と同様に確保され、内側の木材本体部5bから表面木材部5aひいては外部への空気等の流路が確保され、木材本体部5bの調湿性が発揮されるとともに、その香りが確実に外部に拡散することになる。これにより、耐火シートAを設けた場合においても、部材5は木材の良さを失うことなく形成される。
一方、火災時には、表面木材部5aが燃えて珪酸ソーダ層1が加熱されるとともに、この珪酸ソーダ層1の珪酸ソーダが発泡してその厚さH1が増大する。また、これとともに、珪酸ソーダ層1が透明から白色に近い不透明に変化する。このように発泡した珪酸ソーダ層1は、木材本体部5bに熱が伝わることを防ぐ遮熱性を発揮し、木材本体部5bが燃焼することを防止する。
また、珪酸ソーダ層の発泡厚H1は、700℃程度になるまで大きく低減することはないが、無機剤を含んで珪酸ソーダ層1を形成することによって、この無機剤で珪酸ソーダ層1の温度を珪酸ソーダが確実に発泡する温度で維持することが可能になる。これにより、珪酸ソーダを安定して発泡させ、珪酸ソーダ層1の発泡厚H1(発泡による増大した厚さ)を安定させることが可能になり、珪酸ソーダ層1に確実に遮熱性を発揮させることが可能になる。
また、このとき、珪酸ソーダ層1に形成された貫通孔1cは、珪酸ソーダ層1の発泡膨張とともに閉塞する。このため、本実施形態のように珪酸ソーダ層1に貫通孔1cを分散して形成した場合においても、火災時の熱が木材本体部5bに伝搬することはなく、確実に木材本体部5bの燃焼が防止される。
そして、珪酸ソーダ層1によって木材本体部5bの燃焼が防止されることで、本実施形態の耐火シートAを設けた部材5は、表面木材部5aのみが燃焼し、この表層木材部5aの厚さH2が燃え代となって焼け止まることになる。
したがって、本実施形態の耐火シートAにおいては、剥離紙2、3を剥離して取り外し、珪酸ソーダ層1の一面1a及び他面1bに接着剤6を塗布して部材5に貼り付けることができ、建物の壁、床、柱、梁等の構造部材5として使用される集成材に抱き合わせるように設けたり、無垢の木造部材の内部に挿入して設けるだけで、容易に部材5に遮熱性を付与することが可能になる。すなわち、火災時に部材5の内部に配置されたこの耐火シートAの珪酸ソーダ層1が加熱されるとともに珪酸ソーダが発泡することにより、遮熱性を発揮させることができる。このため、耐火シートAよりも内側(部材5の裏面側)に熱が伝わることを抑制することができ(遮熱性を発揮させることができ)、焼け止まりを確保することが可能になる。
また、このとき、耐火シートAが非常に安価な珪酸ソーダを主要材として形成され低コストであるため、部材5のコストを増大させることなく遮熱性を付与することが可能になる。
さらに、珪酸ソーダ層1に貫通孔1cが形成されていることによって、耐火シートAひいては部材5の軽量化を図ることが可能になる。また、通常時に、この貫通孔1cを通じて耐火シートAよりも内側の木材(木材本体部5b)に調湿性を発揮させることが可能になるとともに、この木材5bの香りを外部に拡散させることが可能になる。よって、木材の良さを損なうことなく、火災時の遮熱性を部材5に付与することが可能になる。
さらに、部材5への設置前(使用前)においては、珪酸ソーダ層1が剥離紙2、3と貫通孔1cの内面に設けたコーティング材4で被覆されているため、珪酸ソーダ層1を保護するとともにその含水率を保持することができ、珪酸ソーダ層1の発泡性能を好適な状態で維持することが可能になる。また、部材5に設置した際(使用時)には、珪酸ソーダ層1の一面1a及び他面1bに塗布した接着剤6と貫通孔1cの内面に設けたコーティング材4とで珪酸ソーダ層1の含水率を保持することができる。これにより、長期にわたって確実に珪酸ソーダ層1の発泡性能を維持することが可能になる。
そして、このように木材の良さを損なうことなく、火災に弱いという木材の弱点を補えるため、建物への木材利用の促進を支援することが可能になる。また、建物を木造とする場合には鉄骨造と比較してトータルとしての二酸化炭素排出量を削減することができることから、環境面でも貢献できる。
以上、本発明に係る耐火シートの実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、耐火シートAを木造の構造部材5に設けて、この部材5に遮熱性を付与するものとしたが、本発明の耐火シートは、木造以外の部材に遮熱性を付与するために適用してもよい。
また、本実施形態では、通常時の珪酸ソーダ層1の厚さH1が1mm程度であるものとしたが、珪酸ソーダ層1の厚さH1は、所望の遮熱性を発揮できる範囲で適宜決められればよい。
さらに、本実施形態では、図3に示すように、部材5の表面側の内部にそれぞれ1枚ずつの耐火シートAを設けて部材5に遮熱性を付与するようにしているが、耐火シートAは薄く、軽量であるため、より多くの耐火シートAを部材5の厚さ方向に並設してもよく、その設置数は、耐火シートA(珪酸ソーダ層1)の厚さH1を調整するのと同様に、遮熱性と焼け止まりの要求に応じて適宜変えればよい。
また、珪酸ソーダ層1の貫通孔1cが円形孔であるものとしたが、例えば線状(スリット状)に形成してもよく、特に貫通孔1cの形状を限定する必要はない。
本発明の一実施形態に係る耐火シートを示す平面図である。 図1のX1−X1線矢視図である。 本発明の一実施形態に係る耐火シートを部材に設置した状態を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る耐火シートを部材に設置した状態を示す断面図である。
符号の説明
1 珪酸ソーダ層
1a 一面
1b 他面
1c 貫通孔
2 剥離紙
3 剥離紙
4 コーティング材
5 部材
5a 表面木材部
5b 木材本体部
A 耐火シート
H1 珪酸ソーダ層の厚さ
H2 表面木材部の厚さ(燃え代)

Claims (1)

  1. 部材に遮熱性を付与するための耐火シートであって、
    加熱されるとともに発泡して遮熱性を発揮する珪酸ソーダを含んでなり、一面から他面に貫通する貫通孔が形成された珪酸ソーダ層と、該珪酸ソーダ層の前記一面及び前記他面にそれぞれ剥離可能に設けられた剥離紙と、前記珪酸ソーダ層の貫通孔を形成する内面を被覆するコーティング材とを備えて形成されていることを特徴とする耐火シート。
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