JP4984423B2 - L−アミノ酸生産菌及びl−アミノ酸の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、エシェリヒア・コリを用いたL−アミノ酸の製造法、特にL−トリプトファン、L−リジン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−システイン、L−プロリンの製造法に関する。L−トリプトファン、L−リジン、は動物飼料用の添加物、健康食品の成分、アミノ酸輸液等として、L−フェニルアラニンは、飼料用アミノ酸、アスパルテームの前駆体として、L−チロシンはアドレナリンの合成原料として、L−グルタミン酸は、調味料原料として、アミノ酸輸液及び総合アミノ酸製剤等の成分等として、L−ヒスチジンは肝機能促進薬、ヒスタミンの前駆体として、L−システインは、食品添加物、医薬品、化粧品として、L−プロリンは輸液用アミノ酸混合物として、産業上有用なL−アミノ酸である。
エシェリヒア属細菌は、L−アミノ酸の発酵生産に用いられている(非特許文献1参照)。発酵生産に用いるL−アミノ酸生産菌の育種は、主に、組換えDNA技術を用いて目的L−アミノ酸の生合成酵素の活性が増強するように改変したり、人工変異を導入してL−アミノ酸生産能を付与したりすることにより行われている。人工変異の導入はN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン等の変異剤処理などによって行われてきたが、目的とする遺伝子以外にも変異が導入されやすく、生育に重要な遺伝子に変異が導入され、栄養要求性が付与された菌株が出現しやすくなることがあった。また、組換えDNA技術により、L−アミノ酸生合成系の目的酵素をコードする遺伝子を増強、あるいは欠失する場合には、一部の代謝系のみが強化又は弱化されて生合成系全体としてアンバランスを生じ、目的物質とは無関係のL−アミノ酸等の栄養物質が不足することがあった。このような場合、菌株が要求する栄養素や不足する栄養素を補った培地で発酵生産を行う必要があるが、母液から目的L−アミノ酸を採取する工程でこれらが不純物として混入するという問題があった。
L−アミノ酸生産菌育種に使用するエシェリヒア属細菌の代表的なものにエシェリヒア・コリK12株がある。例えば、エシェリヒア・コリK12株を親株として育種されたL−アミノ酸生産株として、代謝活性を変化させた人工変異株や組換えDNA技術によりL−アミノ酸生合成酵素の活性が増強するように改変された菌株が知られている(特許文献1又は2参照)。
K12株はL−バリン感受性を示し、L−バリンが培地中に存在すると生育が阻害される。すなわち、L−バリンを含む培地で培養した場合は、L−バリンを含まない培地で培養した場合と比べて、生育しないか、又は生育が遅くなる。一方、L−バリン無添加で培養すると、L−イソロイシン、L−ロイシンなどの分岐鎖L−アミノ酸が不足し、生育が悪くなる。よって生育をカバーするために、培地中にL−バリンと同種の分岐鎖L−アミノ酸であるL−イソロイシン、L−ロイシンを添加して培養する必要が生じる。しかしながら、L−イソロイシン、L−ロイシンを添加することは、これら以外のL−アミノ酸を生産する場合においては好ましくなかった。
エシェリヒア・コリでは、分岐鎖L−アミノ酸の生合成の最初の酵素である、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)として、AHASI,AHASII,AHASIIIの3種のアイソザイムが存在するが、K12株では、そのうち一つであるAHASIIのラージサブユニットをコードするilvG遺伝子にフレームシフト変異が導入されており、正常なilvG遺伝子が発現していない(非特許文献2参照)。
L−バリン耐性を付与する変異導入により正常なilvG遺伝子の発現が回復した株が得られることが知られている(非特許文献3参照)。また、フレームシフト変異を有しないilvG遺伝子を含むilvGMEDAオペロンが増幅されたK12株を用いたL−イソロイシン又はL−ロイシンの製造法が知られていた(特許文献3又は4参照)。また、L−バリン耐性が付与されたK12株を用いたL−ロイシンの製造法が知られていた(特許文献5参照)。
しかし、これまでに、L−イソロイシン又はL−ロイシンのような分岐鎖L−アミノ酸以外のL−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−リジン、L−チロシン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−システイン、L−プロリンの生産において、K12株由来のL−アミノ酸生産菌に、L−バリン耐性を付与したり、ilvG遺伝子のフレームシフト変異を回復するような改変を行った菌は使用されていなかった。
米国特許第6653111号明細書 特許第3185261号公報 米国特許第5,998,178号明細書 特開2001-346578号公報 特開2000-116393号公報 アミノ酸発酵、(株)学会出版センター、1986年、p77-84 Proc.Natl.Acad.Sci USA, 1981, vol. 78:p922-925 E.coli and Salmonella 2nd Edition 1996年、vol. 1、p442-457
本発明は、K12株を改変してL−トリプトファンなどのL−アミノ酸を効率よく生産することのできる菌株を提供すること、及び該菌株を用いてL−トリプトファンなどのL−アミノ酸を効率よく生産する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、K12株の派生株であるSV164/pGH5株において、分岐鎖L−アミノ酸を添加することによりL−トリプトファン生産能が向上することを見出した。さらに、SV164/pGH5株において、L−バリン耐性を指標としてilvG遺伝子のフレームシフト変異を回復させることにより、分岐鎖以外のL−アミノ酸、特にL−トリプトファンを効率よく製造できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) エシェリヒア・コリK12株又はその派生株を改変して得られるエシェリヒア・コリの菌株であって、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−リジン、L−チロシン、L−グルタミン酸、、L−ヒスチジン、L−システイン、L−プロリンからなる群より選ばれる1又は2以上のL−アミノ酸の生産能を有し、かつL−バリン耐性を有するように改変された菌株。
(2) L−バリン耐性が20mg/LのL−バリンを含有する培地における生育能である、(1)の菌株。
(3) アセトヒドロキシ酸シンターゼの活性がK12株より上昇するように改変されることによってL−バリン耐性が付与された、(1)又は(2)の菌株。
(4) 活性を有するアセトヒドロキシ酸シンターゼIIを産生するように改変された、(3)の菌株。
(5) 配列番号3または5の塩基配列を有する遺伝子を保持することにより、活性を有するアセトヒドロキシ酸シンターゼIIを産生する、(4)の菌株。
(6) (1)〜(5)のいずれかの菌株を培地で培養して、L−トリプトファン、L
−フェニルアラニン、L−リジン、L−チロシン、L−グルタミン酸、、L−ヒスチジン、L−システイン又はL−プロリンを該培地中又は菌体内に生成蓄積させ、該培地又は菌体より前記L−アミノ酸を回収することを特徴とする、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−リジン、L−チロシン、L−グルタミン酸、、L−ヒスチジン、L−システイン又はL−プロリンの製造法。
本発明の菌株は分岐鎖L−アミノ酸が不足する条件下での生育が向上している。したがって、本発明の菌株を用いることにより、分岐鎖L−アミノ酸を培地に添加しない条件下でも、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−リジン、L−チロシン、L−グルタミン酸、、L−ヒスチジン、L−システイン、L−プロリンなどのL−アミノ酸を効率よく生産することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明の微生物
本発明の微生物は、エシェリヒア・コリK12株又はその派生株を改変して得られるエシェリヒア・コリの菌株であって、L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−リジン、L−チロシン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−システイン、L−プロリンからなる群より選ばれる1又は2以上のL−アミノ酸の生産能を有し、かつ、L−バリン耐性を有するように改変された菌株である。これらのL−アミノ酸生産能を有すればいずれでもよいが、芳香族アミノ酸(L−トリプトファン、L−フェニルアラニン、L−チロシン)がより好ましい。
エシェリヒア・コリK12株は、1922年にスタンフォード大学で分離されたものであり、λファージの溶原菌であるとともに、F因子を持ち、接合等遺伝的組み換え体の作成が可能である汎用性の高い菌株である。またエシェリヒア・コリK12株のゲノム配列は既に決定されており、遺伝子情報も自由に利用出来る。(Science 277 (5331), 1453-1474 (1997) )エシェリヒア・コリK12株や、これの誘導株を入手するには、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より分譲を受けることができる(住所 12301 Parklawn Drive,Rockville Maryland 20852,United States of America )。
K12株の派生株としては、K12株由来のilvG遺伝子、すなわち後述のフレームシフト変異を有するilvG遺伝子を保持している株であれば特に制限されないが、例えば、エシェリヒア・コリ MG1655株(ATCC No.47076)、W3110株(ATCC No.27325)、SV164株(日本国特許第3032013号参照)等が挙げられる。
本発明のエシェリヒア・コリ菌株を得るためには、まず、上記のようなK12株又はその派生株を、L−バリン耐性を有するように改変する。L−バリン耐性とは、高濃度のL−バリンを含有する培地で生育することができる性質を意味する。ここで、高濃度とは、例えば、20mg/L以上、好ましくは100mg/Lの濃度が挙げられる。
改変は、例えば、エシェリヒア・コリK12株又はその派生株を変異処理し、得られた変異株の中から高濃度のL−バリンを含有する培地で生育できる株を選択することによって行うことができる。変異株を取得するための変異処理としては、特に制限はないが、例えば、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤による処理等が挙げられる。
例えば、固体培地を用いてL−バリン耐性株を取得する場合は、液体培地で対数増殖期又は定常期になるまで培養した変異株の培養液を培地又は食塩水などで希釈し、得られた
菌体懸濁液をL−バリンを含有する固体培地に塗布して培養する。培養は、通常、至適生育温度付近、例えば37℃で1〜3日間行う。そして、出現するコロニーをL−バリン耐性株として選択する。培地に加えるL−バリンの量としては、例えば20mg/L以上、好ましくは100mg/L程度が挙げられる。
L−バリンを含有する培地としては、最小培地が挙げられる。L−バリンを含有する最小培地としては、例えば、以下の組成を有する培地が挙げられる。グルコース4g/L、リン酸一水素二ナトリウム12.8g/L、リン酸二水素カリウム3g/L、塩化ナトリウム1g/L、塩化アンモニウム1 g/L、硫酸マグネシウム5mM、塩化カルシウム0.1mM、チアミン1mg/Lに、L−バリンを20mg/L含んだ培地が挙げられる。
尚、この最小培地は、必要に応じて生育に必須な栄養素を含んでいてもよい。例えば、L−トリプトファン生産菌においてL−バリン耐性を付与する場合、L−トリプトファン生産菌はL−トリプトファンと生合成系が共通であるL−フェニルアラニン生合成系、L−チロシン生合成系酵素が弱化されているものが多く、L−フェニルアラニン、L−チロシン要求性であるため、培地には増殖に必要な程度のL−フェニルアラニン、L−チロシンを含有させることが好ましい。
さらに、L−バリン耐性は、遺伝子組み換えによって付与することもできる。例えば、K12株又はその派生株を、L−バリン生合成系に関与する酵素、すなわちアセトヒドロキシ酸シンターゼの活性がK12株より上昇するように改変することによって、L−バリン耐性を付与することができる。なお、アセトヒドロキシ酸シンターゼの活性は、Westerferd,W.W
(1945) J.Biol.Chem,161,495-502に記載の方法によって測定することができる。
エシェリヒア・コリにはアセトヒドロキシ酸シンターゼとして3種のアイソザイム(AHASI,AHASII,AHASIII)が知られている。そのうちのAHASIIは、ラージサブユニットとスモールサブユニットからなる酵素であり、前者がilvG遺伝子、後者がilvM遺伝子にコードされている。
エシェリヒア・コリK12株の派生株であるMG1655株のilvG遺伝子を配列番号1 (GenBank
Accession No. AAC77488)に示す。このように、K12株又はその派生株のilvG遺伝子では、他の種類のエシェリヒア・コリ株(O株やB株)由来のilvG遺伝子(例えば、配列番号3の塩基配列を有する遺伝子;以下、正常型ilvG遺伝子と呼ぶ)の983−984位の塩基GTが欠失しているため、フレームシフト変異を起こして982〜4塩基のTGAが終始コドンになっている。このため、正常型ilvG遺伝子が発現せず、AHASII活性が欠失している。
したがって、K12株由来のエシェリヒア・コリにおいてAHAS活性を上昇させるためには、活性を有するAHASIIを産生するように菌株を改変することが好ましい。そのためには、フレームシフト変異を有さないilvG遺伝子(例えば配列番号3の塩基配列を有する遺伝子)を保持するように菌株を改変することが好ましい。具体的には、配列番号1のilvG遺伝子の982〜4塩基のTGAが終始コドンとして機能しなくなる配列を有する遺伝子を導入し、フレームシフト変異を元に戻すことが好ましい。例えば、正常型ilvG遺伝子の配列(配列番号3)でK12株由来のilvGの遺伝子配列を置換することにより達成される。特に好ましくは、配列番号1の982番目のTと983番目のGとの間にGT残基を挿入することによって、達成される。
上記変異を導入する為には、遺伝子操作による部位特異的組換えにより、フレームシフト変異が導入されている領域を元に戻す変異を導入することによって達成出来る。
またP1形質導入等により、配列番号1のilvG遺伝子の982〜984番目の塩基を正常型ilvG遺伝子の982-986番目の塩基に置き換えることによって達成出来る。またK12株のilvG遺伝
子全長を正常型ilvG遺伝子全長と置き換えてもよい。
フレームシフト変異を有さないilvG遺伝子を保持するためには、ilvG遺伝子の982〜4塩基の前を一塩基あるいは四塩基欠失させて、終始コドン上流でフレームシフトを起こし、982〜4塩基が終始コドンとして機能しなくなる変異を導入することによっても達成出来る。具体的には、配列番号1のilvG遺伝子の979のCを欠失させることによっても達成出来る。このようなilvG遺伝子として、配列番号5の塩基配列を有する遺伝子を例示することができる。
また、K12株において活性を有するAHASIIを産生させるための改変は、遺伝子組換え技術を利用して、正常型ilvG遺伝子(配列番号3)を導入し、正常型ilvG遺伝子の細胞内のコピー数を高めることによっても行うことができる。
この場合、効率よくAHASIIの活性を上昇させるためには、AHASIIのスモールサブユニットをコードするilvM遺伝子(例えば、GenBank Accession No. X04890の2374-2637)も導入することが好ましい。この場合、正常型ilvG遺伝子およびilvM遺伝子は別々に導入してもよいが、正常型ilvGM遺伝子(例えば、GenBank Accession No. X04890の731-2637)として同時に導入してもよい。また、正常型ilvG遺伝子を含むilvGMEDAオペロン(例えば、GenBank Accession No. X04890)として導入してもよい。
なお、正常型ilvG遺伝子の細胞内のコピー数を高めるために導入する遺伝子は、ilvM遺伝子産物と複合体を形成してAHAS活性を示すことのできるタンパク質をコードする遺伝子をコードする限りにおいて、前記正常型ilvG遺伝子(配列番号3)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子であってもよい。また、「ストリンジェントな条件」とは、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましく90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である。例えば、60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度で、1回より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。
正常型ilvG遺伝子(またはilvGM、ilvGMEDA遺伝子)を導入するためには、例えば、配列番号3あるいは配列番号5の塩基配列を含むDNA断片を、K-12株で機能するベクター、好ましくはマルチコピー型のベクターと連結して組換えDNAを作製し、これをK-12株に導入して形質転換すればよい。K-12株の細胞内において機能することのできるベクターとしては、宿主微生物の細胞内において自律複製可能なベクターを挙げることができる。
エシェリヒア・コリK-12株の細胞内において自律複製可能なベクターとしては、pUC19、pUC18、pHSG299, pHSG399, pHSG398, pACYC184,(pHSG、pACYCは宝バイオ社より入手可), RSF1010, pBR322, pMW219(pMWはニッポンジーン社より入手可)等が挙げられる。
上記のように調製した組換えDNAを微生物に導入するには、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))があり、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法( Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E., Gene, 1, 153 (1977))がある。
さらに、正常型ilvG遺伝子の発現量を高めることは、正常型ilvG遺伝子をエシェリヒア・コリK12株の染色体DNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。微生物の染
色体DNA上に正常型ilvG遺伝子を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行う。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。あるいは、特開平2-109985号公報に開示されているように、正常型ilvG遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。
正常型ilvG遺伝子を導入する際には、強力なプロモーターの下流に該遺伝子を連結して導入してもよい。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。また、完全長のilvG遺伝子のプロモーター領域に塩基置換等を導入し、より強力なものに改変することも可能である。これらのプロモーター置換または改変により正常型ilvG遺伝子の発現が強化される。発現調節配列の置換は、例えば温度感受性プラスミドを用いて行うことができる。例えば温度感受性プラスミドとしては、エシェリヒア・コリの複製起点を有するpMAN997(WO99/03988)を使用することが出来る。また、発現調節領域はRed-recombinaseを用いる方法によっても置換することが可能である。(Datsenko, K.A., PNAS, 97(12), 6640-6645, 2000). 発現制御領域の置換は、コピー数の上昇と組み合わせてもよい。また、発現を向上させるために、リボソーム結合部位(RBS)と開始コドンとの間のスペーサ、特に開始コドンのすぐ上流の配列における数個のヌクレオチドの置換を行ってもよい。ilvG遺伝子のプロモーターを含む発現制御領域は、プロモーター検索ベクターを用いたり、Genetyx等の遺伝子解析ソフトを用いて同定できる。
なお、本発明の菌株は、L−バリン耐性が付与されることによって、分岐鎖L−アミノ酸が不足する条件下での生育が対照株(K12株由来の親株)より向上したものであることが好ましい。ここで、分岐鎖L−アミノ酸とは、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−バリンを意味する。また、分岐鎖L−アミノ酸が不足する条件とは、例えば、培地中の分岐鎖L−アミノ酸の濃度が、1g/L以下 、好ましくは100mg/L以下、より好ましくは50mg/L 以下、特に好ましくは0である条件を意味する。分岐鎖L−アミノ酸が不足する条件での生育が向上した変異株及び対照株(K12株由来の親株)の分岐鎖L−アミノ酸が不足する条件での生育の評価は、液体培地及び固体培地のいずれでも行うことができる。
例えば、固体培地を用いる場合は、液体培地で対数増殖期又は定常期になるまで培養した変異株及び対照株の培養液を培地又は食塩水などで希釈し、得られた菌体懸濁液を分岐鎖L−アミノ酸が不足した固体培地に塗布し、同じ条件で変異株及び対照株を培養する。培養は、通常、至適生育温度付近、例えば37℃で1〜3日間行う。そして、出現するコロニーの大きさが対照株よりも大きければ、変異株は、対照株よりも生育が良好であると評価される。固体培地に加える分岐鎖L−アミノ酸の量としては、例えば50mg/L以下、好ましくは10mg/L以下、より好ましくは0である。
また、液体培地を用いる場合は、上記と同様に培養、希釈した変異株及び対照株の菌体懸濁液を分岐鎖L−アミノ酸が不足した液体培地に接種し、至適生育温度付近、例えば37℃で数時間〜1日程度、好ましくは6時間程度培養する。培地に加える分岐鎖L−アミノ酸の量としては、例えば50mg/L以下、より好ましくは10mg以下、好ましくは0である。そして、対照株よりも変異株の方が、少なくとも対数増殖期又は定常期のいずれかにおいて培地の光学密度(OD)又は濁度が高ければ、生育が良好であると評価される。具体的には、対数増殖期により早く到達するか、ODの最大値がより高ければ、生育はより良好である。前記対数増殖期とは、生育曲線において、細胞数が対数的に増加していく時期をいう。また、定常期とは、対数増殖期が過ぎ、分裂、増殖が停止し、細胞数の増加がみられなくなる時期をいう。
本発明の菌株は、上述したようなL−バリン耐性を有する菌株において、L−アミノ酸生産能を付与することにより得ることができる。ただし、L−バリン耐性を付与するための改変と、L−アミノ酸生産能の付与はどちらを先に行ってもよい。
本発明において、L−アミノ酸生産能とは、本発明の微生物を培地中で培養したときに、培地中または菌体内にL−アミノ酸を生成し、蓄積する能力をいう。L−アミノ酸の生産能を有する微生物としては、本来的にL−アミノ酸の生産能を有するものであってもよいが、上記のような微生物を、変異法や組換えDNA技術を利用して、L−アミノ酸の生産能を有するように改変したものであってもよい。なお、本発明の微生物は、前記の正常型ilvG遺伝子の発現が増強されることによってL−アミノ酸生産能が付与されたものであってもよい。
L−アミノ酸の種類は、分岐鎖L−アミノ酸以外のL−アミノ酸であれば特に制限されないが、L−トリプトファン、L−リジン、L−チロシン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−システイン等のL−アミノ酸が好ましい。本発明の微生物は2種類以上のL−アミノ酸の生産能を有するものであってもよい。
L−アミノ酸生産能を付与するには、栄養要求性変異株、アナログ耐性株又は代謝制御変異株の取得や、L−アミノ酸の生合成系酵素の発現が増強された組換え株の創製等、従来、コリネ型細菌又はエシェリヒア属細菌等の育種に採用されてきた方法を適用することができる(アミノ酸発酵、(株)学会出版センター、1986年5月30日初版発行、第77〜100頁参照)。ここで、L−アミノ酸生産菌の育種において、付与される栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質は、単独でもよく、2種又は3種以上であってもよい。また、発現が増強されるL−アミノ酸生合成系酵素も、単独であっても、2種又は3種以上であってもよい。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵素の増強が組み合わされてもよい。
L−アミノ酸生産能を有する栄養要求性変異株、L−アミノ酸のアナログ耐性株、又は代謝制御変異株を取得するには、親株又は野生株を通常の変異処理、すなわちX線や紫外線の照射、またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン等の変異剤処理などによって処理し、得られた変異株の中から、栄養要求性、アナログ耐性、又は代謝制御変異を示し、かつL−アミノ酸生産能を有するものを選択することによって得ることができる。またL−アミノ酸生産菌は、L−アミノ酸生合成系酵素遺伝子の発現を増強することによっても行うことができる。
以下、各種L−アミノ酸生産能を付与する方法及び各種L−アミノ酸生産菌について述べる。ただし、L−アミノ酸生産能を付与する方法及びL−アミノ酸生産菌は、以下のものに制限されない。
L−トリプトファン生産能を有する細菌として好ましいものは、アントラニル酸合成酵素活性、ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ活性もしくはトリプトファンシンターゼ活性のうち、1又は2以上の活性が増強された細菌である。アントラニル酸合成酵素及びホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼは、それぞれL−トリプトファン及びL−セリンによるフィードバック阻害を受けるため、脱感作型の変異酵素を保持させることにより、酵素活性を強化することができる。具体的には、例えば、アントラニル酸合成酵素遺伝子(trpE)、及び/又はホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ遺伝子(serA)を、フィードバック阻害を受けないように変異させ、得られた変異型遺伝子をエシェリヒア属性菌に導入することによって、脱感作型酵素を保持する細菌を取得することができる。このような細菌としてより具体的には、脱感作型アントラニル酸合成酵素を保持するエシェリヒア・コリSV164に、脱感作型ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼをコードする変異型serAを持つ
プラスミドpGH5(国際公開第94/08031号パンフレット参照)を導入することによって得られる形質転換株が挙げられる。
また、トリプトファンオペロンを含む組換えDNAが導入された細菌も、好適なL−トリプトファン生産菌である。具体的には、脱感作型アントラニル酸合成酵素をコードする遺伝子を含むトリプトファンオペロンが導入されたエシェリヒア・コリが挙げられる(特開昭57-71397号公報、特開昭62-244382号公報、米国特許第4,371,614明細書)。また、トリプトファンオペロンのうち、トリプトファンシンターゼをコードする遺伝子(trpBA)の発現を強化することによっても、L−トリプトファン生産能を向上又は付与することができる。トリプトファンシンターゼは、α及びβサブユニットからなり、それぞれtrpA、trpBによってコードされている。
さらに、L−トリプトファン生産菌として、L−フェニルアラニン及びL−チロシン要求性の形質を有する菌株エシェリヒア・コリAGX17(pGX44)〔NRRL B-12263〕株、及びトリプトファンオペロンを含むプラスミドpGX50を保持するAGX6(pGX50)aroP〔NRRL B-12264〕株(いずれも米国特許第 4,371,614号明細書参照)が挙げられる。
エシェリヒア・コリK12株由来のL−フェニルアラニン生産菌としては、tyrA,tyrRが欠損したAJ12739 (tyrA::Tn10, tyrR) (VKPM B-8197)や、フェニルアラニン排出遺伝子であるyddG、yedA増幅株(国際公開第03/044192号パンフレット)が挙げられる。
エシェリヒア・コリK12株由来の芳香族アミノ酸生産菌としては、PEP(フォスフォエノールピルビン酸)の生産能力が向上した微生物(EP0877090A)や、芳香族アミノ酸に共通する生合成系に関与する酵素の活性を向上させた微生物を挙げることが出来る。芳香族アミノ酸に共通する遺伝子としては、 aroF、aroG、 aroH、 aroB、aroD、aroE、aroK、 aroL、 aroA、aroC が挙げられる。
L−リジン生産能を有するL−リジンアナログ耐性株又は代謝制御変異株として具体的には、エシェリヒア・コリAJ11442株(FERM BP-1543、NRRL B-12185;特開昭56-18596号公報及び米国特許第4346170号明細書参照)、エシェリヒア・コリ VL611株(特開2000−189180号公報)等が挙げられる。また、エシェリヒア・コリのL−リジン生産菌として、WC196株(国際公開第96/17930号パンフレット参照)を用いることも出来る。WC196株は、エシェリヒア・コリK-12由来のW3110株にAEC(S−(2−アミノエチル)−システイン)耐性を付与することによって育種されたものである。同株は、エシェリヒア・コリAJ13069株と命名され、平成6年12月6日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P-14690として寄託され、平成7年9月29日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-5252が付与されている。
L−ヒスチジン生産能を有するエシェリヒア属細菌としては、L−ヒスチジン生合成に関与する遺伝情報を担うDNAを組み込んだベクターを導入したエシェリヒア・コリFERM-P5038,5048株 (特開昭56-005099)や、アミノ酸排出遺伝子Rhtを導入した菌株(欧州特許公開公報1016710)、スルファグアニジン、D,L-1,2,4-triazole-3-alanine ,ストレプトマイシン耐性が付与されたエシェリヒア・コリ80株(VKPM B-7270 ロシア特許公報2119536号)等が挙げられる。
エシェリヒア・コリK12株由来のL−システイン生産菌として、シスタチオニン−β−リアーゼ活性が低下した細菌(特開2003-169668号公報)や、L−システインによるフィードバック阻害が低減されたセリンアセチルトランスフェラーゼを保持するエシェリヒア属
細菌(特開平11-155571号公報)が知られている。
エシェリヒア・コリK12株由来のL−プロリン生産菌として、3,4-デヒドロキシプロリン、アザチジン−2−カルボキシレート耐性株である702株(VKPMB-8011)や、702のilvA欠損株である702ilvA株(VKPMB-8012株)が知られている(特開2002−300874号公報)。
L-グルタミン酸生産能を有するエシェリヒア・コリは、例えば、L−グルタミン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように改変することによって得ることができる。L−グルタミン酸生合成に関与する酵素としては、例えば、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グルタミンシンテターゼ、グルタミン酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、クエン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、エノラーゼ、ホスホグリセルムターゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、フルトースビスリン酸アルドラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼなどが挙げられる。
L−グルタミン酸生産能を付与するための改変は、L−グルタミン酸の生合成経路から分岐して他の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性を低下または欠損させることにより行ってもよい。L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素としては、イソクエン酸リアーゼ、α‐ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ、リン酸アセチルトランスフェラーゼ、酢酸キナーゼ、アセトヒドロキシ酸シンターゼ、アセト乳酸シンターゼ、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、1−ピロリンデヒドロゲナーゼなどが挙げられるが、この中でも特にα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が低下した株が望ましい。また、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が弱化したエシェリヒア・コリとしては、特開平5-244970号公報及び特開平7−203980号公報などに記載されている。
<2>L−アミノ酸の製造法
本発明のL−アミノ酸の製造法は、本発明のエシェリヒア・コリを培地で培養して、L−アミノ酸を該培地中又は菌体内に生成蓄積させ、該培地又は菌体よりL−アミノ酸を回収することを特徴とする製造法である。本発明の菌株は分岐鎖L−アミノ酸が不足する条件下での生育が向上しているため、分岐鎖L−アミノ酸を添加しない条件下でも、効率よくL−アミノ酸の製造を行うことができる。
使用する培地は、微生物を用いたL−アミノ酸の発酵生産において従来より用いられてきた培地を用いることができる。すなわち、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地を用いることができる。ここで、炭素源としては、グルコース、シュクロース、ラクトース、ガラクトース、フラクトースやでんぷんの加水分解物などの糖類、グリセロールやソルビトールなどのアルコール類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養源としては、ビタミンB1、L−ホモセリンなどの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じて、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。なお、本発明で用いる培地は、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じてその他の有機微量成分を含む培地であれば、天然培地、合成培地のいずれでもよい。
培養は好気的条件下で1〜7日間実施するのがよく、培養温度は24℃〜37℃、培養中のpHは5〜9がよい。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更にアンモニアガス等を使用することができる。発酵液からのL−アミノ酸の回収は通常イオン交換樹脂法、沈殿法その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。なお、菌体内にL−アミノ酸が蓄積する場合には、例えば菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清からイオン交換樹脂法などによって、L−アミノ酸を回収することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
[参考例1]
L−トリプトファン生産菌SV164/pGH5株において、分岐鎖L−アミノ酸のL−トリプトファン蓄積に対する影響を調べた。
この株は、K12株の派生株であるSV164に、脱感作型ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼをコードする変異型serAを持つプラスミドpGH5(国際公開第94/08031号パンフレット参照)を導入したトリプトファン生産株である。なお、SV164株は、K12株由来のYMC9株(ATCC33927)において、アントラニラートシンターゼをコードするTrpEの対立遺伝子に変異が導入された株である(特許第3032013号公報)。
L−トリプトファン生産培地生産培地(40g/L グルコース、1.5g/L KH2PO4、0.5g/L NaCl、15g/L (NH4) 2SO4、0.3g/L MgSO4・7H2O、14.7mg/L CaCl2・2H2O、75mg/L FeSO4・7H2O、0.15mg/L Na2MoO4・7H2O、0.7mg/L CoCl2・7H2O、1.6mg/L MnCl2・7H2O、2.5mg/L H3BO3、0.25mg/L CuSO4・7H2O、0.3mg/L ZnSO4・7H2O、1g/L Na3Citrate、125mg/L L−フェニルアラニン、125mg/L L−Tyr、5mg/L thiamine・HCl、1g/L yeast extract、2g/L Corn
steep solid、30g/L CaCO3、20mg/L テトラサイクリン、pH7.1(NH4OH))にL−イソロイシン及びL−ロイシンを所定量添加して、SV164/pGH5株を40時間培養した。残糖量、L−トリプトファン蓄積量、及び消費等に対するL−トリプトファンの収率を表1に示す。
Figure 0004984423
その結果、SV164/pGH5株では、L−イソロイシン、L−ロイシンの添加量が少ないと生育、糖消費及びL−トリプトファン生産量が低下することがわかった。
実施例1.L−バリン耐性株の取得と評価
(1−1)L−バリン耐性株の取得
P1形質導入によって、L−バリン耐性を導入した。L−バリン耐性の供与菌としては、MI162(Lawther et al., J. Bacteriol., 149, 294- (1982))及びTDH7(EP-0593792-B1、VKPM B-5318)を用いた。MI162株のバリン耐性に関与する変異点はilvG遺伝子に導入されており、ilvG603として同定されている。MI162株の変異点は配列番号3に示すとおりであり、フレームシフト変異が復帰している。また、TDH7の変異は、配列番号1に示すK12株の979番目のCが欠失しており、フレームシフト変異が復帰している。受容菌としては、上記のSV164/pGH5株を用いた。
定法に従いP1形質導入実験を実施し、最小培地にL−バリンを含む培地(4g/Lグルコース、12.8g/L Na2HPO4・7H2O、3g/L KH2PO4、0.5g/L NaCl、1g/L NH4Cl、5mM MgSO4、0.1mM CaCl2、1mg/L チアミン、20mg/l L−フェニルアラニン、20mg/L L−チロシン、20mg/L L−メチオニン、3mg/L ピリドキシン、20mg/L L−バリン、20mg/L テトラサイクリン)に塗布して37℃、3日間培養して出現したコロニーをL−バリン耐性株として選択した。
MI162を供与菌として得られたL−バリン耐性株M6、M9株、TDH7を供与菌として得られたL−バリン耐性株T2株の3株について、以下の解析を実施した。
(1−2)L−バリン耐性株のL−トリプトファン蓄積に及ぼすL−イソロイシン、L−ロイシン添加の影響
得られたL−バリン耐性株と親株SV164/pGH5株について、L−トリプトファン生産能に対するL−イソロイシン、L−ロイシン添加の影響を検討した。LB培地(10g/Lポリペプトン、5g/L イーストエキストラクト、10g/L NaCl、20mg/Lテトラサイクリン、20g/L 寒天)プレートにて30℃、24時間培養した菌を4mlのLB培地を張り込んだ試験管に各株を植菌した後、30℃、24時間振とう培養した。これを、L−イソロイシン、L−ロイシン添加濃度を変化させた40mlの生産培地(40g/L グルコース、1.5g/L KH2PO4、0.5g/L NaCl、15g/L (NH4) 2SO4、0.3g/L MgSO4・7H2O、14.7mg/L CaCl2・2H2O、75mg/L FeSO4・7H2O、0.15mg/L
Na2MoO4・7H2O、0.7mg/L CoCl2・7H2O、1.6mg/L MnCl2・7H2O、2.5mg/L H3BO3、0.25mg/L CuSO4・7H2O、0.3mg/L ZnSO4・7H2O、1g/L Na3Citrate、30mg/L pyridoxine、50mg/L L−メチオニン、125mg/L L−フェニルアラニン、125mg/L L−Tyr、5mg/L thiamine・HCl、1g/L yeast extract、2g/L Corn steep solid、30g/L CaCO3、20mg/L テトラサイクリン、pH7.1(NH4OH))を張り込んだ坂口フラスコ(500ml容)にシードし、30℃、40時間振とう培養した。培養後のL−トリプトファン蓄積を分析した結果を図1に示す。
対照のSV164/pGH5株は、L−イソロイシン、L−ロイシン無添加条件では、低いL−トリプトファン蓄積を示したのに対して、L−バリン耐性株(M6、M9、T2)はいずれも、L−イソロイシン、L−ロイシン無添加条件でも、L−イソロイシン、L−ロイシン添加条件とほとんど変わらないL−トリプトファン蓄積を示した。
さらに、取得したL−バリン耐性株及び対照株の、分岐鎖L−アミノ酸無添加培地での生育を最小培地を用いて詳細に検討した。SV164/pGH5株あるいはT2株を、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−バリンおよびL−トリプトファン以外のアミノ酸を各20mg/L添加した最小培地(4g/L glucose、12.8g/L Na2HPO4・7H2O、3g/L KH2PO4、0.5g/L NaCl、1g/L NH4Cl、5mM MgSO4、0.1mM CaCl2、1mg/L thiamine、20mg/L tetracycline)に植菌し、30℃で振とう培養して経時的にOD660を測定して菌の生育を追跡した(図2)。その結果、SV164/pGH5株はL−イソロイシン、L−ロイシン、L−バリン無添加培地では生育が遅延するのに対して、L−バリン耐性株T2株ではほとんど遅延せず、生育時の分岐鎖L−アミノ酸の不足が軽減されたことが示された。これにより、L−バリン耐性を付与することにより、分岐鎖L−アミノ酸を添加することなくL−トリプトファンを効率的に生産できることがわかった。
本発明の菌株を用いることのより、L−トリプトファンなどのL−アミノ酸を効率よく生産することができる。
SV164/pGH5株及びL−バリン耐性株を用いたL−トリプトファン蓄積に対するL−ロイシン及びL−イソロイシンの影響を示すグラフ図。●はSV164/pGH5株、■はM6株、▲はM9株、○はT2株を示す。 L−ロイシン及びL−イソロイシン非添加条件における、SV164/pGH5株及びL−バリン耐性株T2の生育を示すグラフ図。●、○はそれぞれSV164/pGH5株、T2株を示す。

Claims (1)

  1. エシェリヒア・コリK12株又はその派生株を改変して得られるエシェリヒア・コリの菌株を培地で培養して、L−トリプトファンを該培地中に生成蓄積させ、該培地よりL−トリプトファンを回収することを特徴とするL−トリプトファンの製造方法であって、前記菌株が、培地中で培養したときに培地にL−トリプトファンを生成し蓄積する能力を有し、かつ、配列番号3または5の塩基配列を有する遺伝子を保持することにより、活性を有するアセトヒドロキシ酸シンターゼIIを産生し、L−バリン耐性を有するように改変された菌株であって、前記L−バリン耐性が20mg/LのL−バリンを含有する培地における生育能である、方法。
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