JP3915275B2 - L−ロイシンの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、L−ロイシンの製造法に関し、詳しくは、L−ロイシンをエシェリヒア属細菌を用いて製造する方法に関する。L−ロイシンは、食品及び飼料用の栄養添加物、医療、製薬及び化学工業における試薬、あるいはリジンのような他のアミノ酸の製造に用いられる微生物の成長因子として用いられる必須アミノ酸である。
【0002】
【従来の技術】
従来、L−ロイシンは、主としてブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属またはセラチア属に属するL−ロイシン生産菌またはそれらの変異株を用いた発酵法により製造されている(アミノ酸発酵、学会出版センター、397〜422頁、1986年)。最も高いレベルでL−ロイシンを蓄積するのは、ブレビバクテリウム・フラバム VKPM B-2736である。この株は、研究用ファーメンターで、スクロース含有培地を用いた72時間の醗酵で、L−ロイシンを26g/Lまで生産する(USSR発明者証第1394711号)。また、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム34株は、グルコースを含む培地でL−ロイシンを34g/Lまで生産する(Appl. Environ. Microbiol., 51, p.1024 (1986))。
【0003】
上記のように、微生物のL−ロイシンの生産性はかなり高まってはいるが、今後のL−ロシインの需要の一層の増大に応えるためには、さらに安価かつ効率的な製造法の開発が求められている。
ところで、エシェリヒア(Escherichia)属に属する微生物は、その増殖速度の速さ並びに遺伝子解析の進み方、遺伝子材料の豊富さ等から優れたL−ロイシン生産菌として利用される可能性を有しているが、エシェリヒア属細菌によるL−ロイシン生産の報告は少ない。L−ロイシン生産性を有するエシェリヒア属細菌としては、β−2−チエニルアラニン耐性を有する微生物、β−2−チエニルアラニン耐性及びβ−ヒドロキシロイシン耐性を有する微生物(以上、特公昭62-34397号公報)、4−アザロイシン耐性又は5,5,5−トリフルオロロイシン耐性を有する微生物(特開平8-70879号公報)が知られている。しかし、L−ロイシン耐性を有するエシェリヒア属細菌及びエシェリヒア属細菌におけるL−ロイシン耐性とL−ロイシン生産性との関係については知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点から、エシェリヒア属に属する微生物のL−ロイシン生産能を向上させ、安価かつ効率的なL−ロイシンの製造法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、エシェリヒア属細菌へのL−ロイシン耐性の付与が、L−ロイシン生産性の向上に寄与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、L−ロイシン生産能を有し、かつL−ロイシンに対して耐性を有するエシェリヒア属細菌である。
本発明はまた、前記エシェリヒア属細菌において、さらにロイシンアナログに対する耐性を有するエシェリヒア属細菌を提供する。ロイシンアナログとしては、4−アザロイシン、3−ヒドロキシロイシン、β−2−チエニルアラニンン及び5,5,5−トリフルオロロイシン等、好ましくは4−アザロイシン及び3−ヒドロキシロイシンが挙げられる。
【0007】
さらに本発明は、エシェリヒア属細菌から、ロイシンアナログに対する耐性及びL−ロイシンに対する耐性を有する株を、各々の耐性について少なくとも1回、かつ、任意の順序で段階的に選択された、L−ロイシン生産能を有するエシェリヒア属細菌を提供する。
【0008】
本発明はさらに、前記エシェリヒア属細菌を培地で培養し、該培養物中にL−ロイシンを生成蓄積せしめ、該培養物からL−ロイシンを採取することを特徴とするL−ロイシンの製造法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
<1>本発明のエシェリヒア属細菌
本発明のエシェリヒア属細菌は、L−ロイシン生産能を有し、かつ、L−ロイシンに対して耐性を有するエシェリヒア属細菌である。エシェリヒア属細菌として具体的には、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。L−ロイシン生産能を有するエシェリヒア属細菌としては、例えば特公昭62-34397号公報、特開平8-70879号公報に記載されるようなβ−チエニルアラニン、3−ヒドロキシロイシン、4−アザロイシン及び5,5,5−トリフルオロロイシン等のロイシンアナログに対する耐性を有するものや、WO96/06926号国際公開パンフレットに記載されるような遺伝子組換え技術によって育種されるもの等が挙げられる。
L−ロイシン生産能を有するエシェリヒア属細菌から、L−ロイシンに対して耐性を有する株を選択すれば、それが本発明のエシェリヒア属細菌である。あるいは、L−ロイシンに対して耐性を示すエシェリヒア属細菌から、L−ロイシン生産能を示す株を選択しても、本発明のエシェリヒア属細菌である。
本発明のエシェリヒア属細菌として特に好ましい態様はL−ロイシン耐性に加えてロイシンアナログに対する耐性を有するエシェリヒア属細菌である。
【0011】
エシェリヒア属細菌において、L−ロイシンは、L−バリン生合成系の最終中間体(2−ケトイソ吉草酸)から分岐するL−ロイシン固有の生合成経路を通って生合成される。エシェリヒア属細菌では、L−バリン生合成の最終段階の反応はilvGMEDAオペロンによってコードされている酵素群によって、L−ロイシン固有の生合成反応はleuABCDオペロンによってコードされている酵素群によって、それぞれ行われている。
【0012】
leuABCDオペロンは、leuA、leuB、leuC及びleuDの各遺伝子を有しており、leuAがα−イソプロピルマレートシンターゼ、leuBがβ−イソプロピルマレートデヒドロゲナーゼ、leuC及びleuDがα−イソプロピルマレートイソメラーゼをコードしている。これらの酵素のうち、α−イソプロピルマレートシンターゼはα−ケトイソ吉草酸からα−イソプロピルリンゴ酸への合成反応を、α−イソプロピルマレートイソメラーゼはα−イソプロピルリンゴ酸からβ−イソプロピルリンゴ酸への異性化反応を、β−イソプロピルマレートデヒドロゲナーゼはβ−イソプロピルリンゴ酸からL−ロイシン生合成の最終中間体であるα−ケトイソカプロン酸への脱水素反応を、各々触媒する。α−ケトイソカプロン酸から最終産物であるL−ロイシンへのアミノ化反応は、主としてトランスアミナーゼによって触媒される。エシェリヒア属細菌には4種のトランスアミナーゼ、すなわち、aspC遺伝子がコードするトランスアミナーゼA(アスパラギン酸−グルタミン酸トランスアミナーゼ)、ilvGMEDAオペロンに含まれるilvE遺伝子がコードするトランスアミナーゼB(BCAAアミノトランスフェラーゼ)、avtA遺伝子がコードするトランスアミナーゼC(アラニン−バリンアミノトランスフェラーゼ)、及びtyrB遺伝子がコードするトランスアミナーゼD(チロシンアミノトランスフェラーゼ)が存在し、種々のアミノ化反応に関与している。これらのうち、上記のα−ケトイソカプロン酸からL−ロイシンへのアミノ化反応は、トランスアミナーゼB及びトランスアミナーゼDによって触媒される。トランスアミナーゼC及びトランスアミナーゼDは、L−ロイシン合成と共通の合成経路を有するL−バリン生合成経路の最終段階を触媒する。
【0013】
上記のL−ロイシン生合成経路の反応のうち律速段階であるのは、α−ケトイソ吉草酸からα−イソプロピルリンゴ酸への合成反応であり、この反応を触媒するα−イソプロピルマレートシンターゼは、L−ロイシンによるフィードバック阻害を受ける。また、leuABCDオペロンの発現は、L−ロイシンにより抑制される。アセトヒドロキシ酸シンターゼIをコードするilvBN遺伝子の発現はL−バリン及びL−ロイシンによる協奏抑制を受け、アセトヒドロキシ酸シンターゼIIをコードするilvGM遺伝子の発現はL−イソロイシン、L−バリン及びL−ロイシンによる協奏抑制を受け、そして、アセトヒドロキシ酸シンターゼIIIをコードするilvIH遺伝子の発現はL−ロイシンによる抑制を受ける。
【0014】
L−ロイシンが過剰に存在しても、阻害を受けるα−イソプロピルマレートシンターゼも、抑制されるleuABCDオペロンも、L−ロイシンの生合成にのみ関与するので、これらの阻害や抑制により供給路が絶たれることになる栄養物質はない。また、ilvIH遺伝子の発現は抑制されるが、他のアイソザイムをコードするilvBN遺伝子とilvGM遺伝子の発現は影響を受けない。したがって、L−ロイシンが過剰に存在しても細胞の生育に影響がないと考えられるが、本発明者は意外にもL−ロイシン過剰存在下で細胞の生育が阻害されることを発見し、さらにL−ロイシンに対する耐性を付与することによって、エシェリヒア属細菌のL−ロイシン生産能を向上させることに成功した。
【0015】
以下に、L−ロイシン耐性を有するエシェリヒア属細菌及びロイシンアナログ耐性を有するエシェリヒア属細菌を取得する方法について説明する。
L−ロイシン耐性を有するエシェリヒア属細菌は、エシェリヒア属細菌をその生育が阻害される濃度のL−ロイシンを含む最小培地で培養し、生育する株を選択することによって取得することができる。ここで、生育阻害とは生育の遅れや生育阻止をいう。選択は、1回でもよく、複数回行ってもよい。培地に添加するL−ロイシンの量は、L−ロイシン耐性を付与しようとする親株の生育が阻害される濃度であれば特に制限されないが、1g/L以上、好ましくは1g/L〜20g/Lが挙げられる。選択に先だって、エシェリヒア属細菌に突然変異処理を施してもよい。突然変異処理は、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工突然変異に用いられている変異剤による処理によって行えばよい。
【0016】
上記のようにして得られるL−ロイシン耐性を有するエシェリヒア属細菌は、親株が生育できない濃度のL−ロイシン存在下でも、生育することができる。
上述のようにL−ロイシンは、L−ロイシン生合成の種々の段階の調節に関与しており、L−ロイシン耐性を付与する単独の変異のみでもL−ロイシン生産性向上に効果を示すが、複数の変異によってより多くの調節が解除されることが好ましい。また、単独の変異を有するエシェリヒア属細菌は、L−ロイシン生産性が低いものであっても、L−ロイシン生産菌育種の出発材料として用いることができる。
【0017】
ロイシンアナログ耐性を有するエシェリヒア属細菌は、エシェリヒア属細菌をその生育を阻害する濃度のロイシンアナログを含む最小培地で培養し、生育する株を選択することによって取得することができる。ロイシンアナログとしては、4−アザロイシン、3−ヒドロキシロイシン、β−2−チエニルアラニンン及び5,5,5−トリフルオロロイシン等、好ましくは4−アザロイシン及び3−ヒドロキシロイシンが挙げられる。ロイシンアナログ耐性株の選択は、1種のロイシンアナログについて行ってもよく、複数のロイシンアナログについて行ってもよい。また、選択は、1種のロイシンアナログについて1回でもよく、複数回行ってもよい。
【0018】
培地に添加するロイシンアナログの量は、ロイシンアナログの種類によっても異なるが、例えば4−アザロイシン及びβ−ヒドロキシロイシンについては、0.1g/L以上が好ましい。選択に先だって、エシェリヒア属細菌に前記と同様にして突然変異処理を施してもよい。
【0019】
L−ロイシン耐性に加えてロイシンアナログ耐性を有するエシェリヒア属細菌を選択する場合には、各々の耐性を有する株の選択の順序に特に制限はなく、任意の順序で行えばよい。
尚、エシェリヒア属細菌としてエシェリヒア・コリK-12株又はその誘導体を用いる場合には、L−ロイシン耐性及び/又はロイシンアナログ耐性に加えて、L−バリン耐性を付与することが好ましい。K-12株は、分岐鎖アミノ酸生合成経路の酵素であるアセトヒドロキシ酸シンターゼのアイソザイムのうち、アイソザイムIIの大サブユニットをコードしているilvG遺伝子がフレームシフト変異をもっているために、活性のあるアセトヒドロキシ酸シンターゼのアイソザイムIIが発現していない(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78,922-925,1981)。このアイソザイムIIはL−バリンによるフィードバック阻害を受けないが、他のアイソザイムであるアイソザイムI及びアイソザイムIIIは、L−バリンによるフィードバック阻害を受ける(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78,922-925,1981)。そのために、L−バリンの過剰量存在下ではL−イソロイシン、L−バリン及びL−ロイシンの生合成が阻害され、生育することができない。したがって、K-12株由来のL−ロイシン生産菌を得ようとする場合には、活性のあるアイソザイムIIを発現するように、ilvG遺伝子の復帰変異株を用いることが好ましい。このようなilvG遺伝子の復帰変異株は、L−バリン耐性を示す(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78,922-925,1981)。L−バリン耐性を有するK-12株は、L−ロイシン耐性又はロイシンアナログ耐性と同様に、L−バリンを含む最小培地で培養し、生育できる株を選択することによって得られる。
【0020】
ただし、L−ロイシン耐性を有するエシェリヒア属細菌の育種に、L−バリンによるフィードバック阻害を受けないアセトヒドロキシ酸シンターゼを保持するエシェリヒア属細菌を用いる場合には、上記のK-12株のようにL−バリン耐性を付与する操作は必要ない。
【0021】
本発明のエシェリヒア属細菌は、さらに、通常の突然変異処理又は遺伝子工学的手法により、L−ロイシン生合成に関与する酵素の活性を増強してもよい。そのような酵素の活性の増強は、例えば、ilvGMEDAオペロン又は/及びleuABCDオペロン、又はこれらの一部を有するDNA断片をプラスミド、ファージ又はトランスポゾンに挿入し、得られる組換えDNAをエシェリヒア属細菌に導入することによって行うことができる。
【0022】
leuABCDオペロンの塩基配列解析については、Nucleic Acid Res., 20, 3305-3308 (1992)に記載されており、全塩基配列はデータベース(DDBJ accession no. D10483、DDBJのインターネットアドレス:http://www.ddbj.nig.ac.jp)に登録されている。leuABCDオペロンは、これらに記載されている配列を基に作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、エシェリヒア属細菌染色体DNAを鋳型とするPCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション、White,T.J. et al ;Trends Genet., 5,185 (1989)参照)によって、leuABCDオペロンを含むDNA断片を増幅することによって取得できる。また、leuABCDオペロンは、前記文献に記載されている配列を基に作製したオリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションによりエシェリヒア属細菌染色体DNAライブラリーをスクリーニングすることによっても、取得することができる。
【0023】
また、ilvGMEDAオペロンの全塩基配列及び該オペロンの上流域の塩基配列は、それぞれ Nucleic Acid Res., 15, 2137-2155 (1987)及び Gene, 97, 21-27 (1991)に記載されている。ilvGMEDAオペロンは、これらに記載されている配列を基に作製したプローブ又はプライマーを用いたPCR又はハイブリダイゼーションによって取得することができる。尚、ilvGMEDAオペロンの取得にエシェリヒア・コリK-12株又はその誘導体を用いる場合には、アセトヒドロキシ酸シンターゼ・アイソザイムIIを発現するように、ilvG遺伝子の復帰変異株を用いることが好ましい。ilvGMEDAオペロンの取得法及びトランスポゾンを用いて該オペロンをエシェリヒア属細菌細胞内で増幅する方法は、それぞれWO96/06926国際公開パンフレット、フランス特許公開第2627508号に詳細に記載されている。
【0024】
<2>L−ロイシンの製造法
上記のようにして得られるエシェリヒア属細菌を培地で培養し、該培養物中にL−ロイシンを生成蓄積せしめ、該培養物からL−ロイシンを採取することにより、L−ロイシンを効率よく製造することができる。
【0025】
本発明の製造法におけるエシェリヒア属細菌の培養および培養液からのL−ロイシンの採取、精製等は、従来の微生物を用いた発酵法によるアミノ酸の製造法と同様にして行えばよい。培養に使用する培地としては、炭素源、窒素源、無機物を含有し、必要があれば使用菌株が生育に要求する栄養源を適当量含有するするものであれば、合成培地でも天然培地でもよい。炭素源としては、グルコースやシュークロースをはじめとする各種炭水化物、各種有機酸があげられる。また使用する微生物の資化性によってはエタノールやグリセロール等のアルコールを用いることが出来る。窒素源としては、アンモニアや、硫酸アンモニウム等の各種のアンモニウム塩類や、アミン類その他の窒素化合物や、ペプトン、大豆加水分解物、発酵菌体分解物等の天然窒素源を用いることが出来る。無機物としては、燐酸一カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウム等が用いられる。
【0026】
培養は、振盪培養、通気撹拌培養等の好気的条件下で行うことが好ましく、培養温度は20〜40℃で、好ましくは30〜38℃の範囲で行う。培地のpHは通常5〜9の範囲であり、6.5〜7.2の範囲が好ましい。培地のpHは、アンモニア、炭酸カルシウム、各種酸、各種塩基、緩衝液などによって調整することができる。通常、1〜3日の培養によって、培養液中にL−ロイシンが蓄積する。
【0027】
培養終了後、培養液から菌体などの固形物を遠心分離や膜分離法で除去し、イオン交換法、濃縮法、晶析法等によってL−ロイシンを採取、精製することが出来る。
【0028】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0029】
【実施例1】
L−ロイシン耐性を有するエシェリヒア・コリ菌株の誘導
<1>L−ロイシン耐性株の選択
標準的な研究室用野生株であるエシェリヒア・コリ K-12株から、以下に示すように段階的選択によって、L−ロイシン耐性及びロイシンアナログ耐性を有するエシェリヒア・コリ菌株を誘導した。尚、各々の耐性を有する株の選択は、自然突然変異を有する株を選択することによって得た。具体的には、以下に示す各々の濃度のL−ロイシン又はロイシンアナログを含有する平板培地に、選択に用いるエシェリヒア・コリ K-12株又はその変異株をまき、生育する株を選択した。
【0030】
初めに、L−ロイシン耐性及びロイシンアナログ耐性を有する株の選択に先立って、エシェリヒア・コリ K-12株から5g/LのL−バリンに対する耐性変異株を選択し、B−5株(Valr)とした。この株から1g/LのL−ロイシンに対する耐性変異株を選択し、No.325株とした(Valr、Leur)。次に、このNo.325株から、0.1g/Lの4−アザ−D、L−ロイシン(以下、アザロイシンという)に対する耐性変異株を選択し、No.244株を得た(Valr、Leur、ALr)。このNo.244株から2g/Lの4−アザロイシンに対する耐性変異株を選択し、No.70株を得た(Valr、Leur、ALrr)。尚、Valr、Leur、ALrは、それぞれ、L−バリン、L−ロイシン、アザロイシン耐性を付与された菌株であることを表し、「ALrr」は、アザロイシン耐性付与が2回行われた菌株であることを表す。
【0031】
<2>L−ロイシン耐性とL−ロイシン生産性との関係
L−ロイシン耐性とL−ロイシン生産性との関係を調べるために、上記で得られたNo.70株から、15g/LのL−ロイシンに耐性な自然突然変異株を選択した。
【0032】
No.70株からランダムに選択した7個の単一コロニーと、No.70株由来のL−ロイシン耐性変異株からランダムに選択した10個の変異株について、L−ロイシン生産性を調べた。その結果、No.70株由来のL−ロイシン耐性変異株は、親株よりもL−ロイシン生産性が上昇しており、上昇の平均は60%であった。
【0033】
【実施例2】
エシェリヒア・コリ K-12株からのL−ロイシン生産菌の育種
エシェリヒア・コリ K-12株から、以下に示すようにL−バリン、アザロイシン、ヒドロキシロイシン及びL−ロイシンに対する耐性変異株を段階的に選択することによって、L−ロイシン生産菌を誘導した。具体的には、以下に示す各々の濃度のL−バリン、ロイシンアナログ又はL−ロイシンを含有する最小培地プレートに、選択に用いるエシェリヒア属細菌をまき、生育する株を選択した。
【0034】
エシェリヒア・コリ K-12株から5g/LのL−バリンに対する耐性を有する自然突然変異株を選択し、No.101株を得た(Valr)。この株のL−ロイシン生産は認められなかった。
No.101株から、1.3g/Lのアザロイシンに対する耐性を有する自然突然変異株を選択し、No.51株を得た(Valr、ALr)。この株のL−ロイシン生産量は、約0.05〜0.1g/Lであった。
【0035】
さらにNo.51株から、2g/Lのヒドロキシロイシンに対する耐性変異株を選択し、No.4株を得た(Valr、ALr、Hleur)。尚、HLeurは、ヒドロキシロイシン耐性を付与された菌株であることを表す。この株のL−ロイシン生産量は、約0.4〜0.6g/Lである。
【0036】
次に、No.4株をNTGで処理し、15g/LのL−ロイシンに対する耐性変異株を2株選択し、No.57株及びNo.103株とした(Valr、ALr、Hleur、Leur)。これらの株のL−ロイシン生産量は、1.5〜1.7g/Lであった。
【0037】
上記菌株のうち、No.4株(Escherichia coli K-12,4)、No.57株(Escherichia coli K12,57)及びNo.103株(Escherichia coli K-12,103)は、ルシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオーガニズムス(Russian National Collection of Industrial Microorganisms;Russia 113545 Moscow 1 Dorozhny proezd, 1)に、それぞれVKPM B-7387、VKPM B-7386及びVKPM B-7388の受託番号で寄託されている。
【0038】
【実施例3】
No.57株およびNo.103株によるL−ロイシンの製造
No.57株の菌体およびNo.103株の菌体のそれぞれをM9寒天平板上で37℃の温度条件下、30時間かけて生育させた。得られた培養物の白金耳一杯ずつを、発酵培地(グルコース6%、硫酸アンモニウム1.5%、リン酸水素カリウム0.15%、硫酸マグネシウム0.1%、チアミン0.00001%、炭酸カルシウム2%を含有)が15ml入った振盪フラスコ(250ml)に、それぞれ接種した。培養はロータリー式振盪培養機(250rpm)を用いて32℃の条件下で48時間行われた。その結果、No.57株の培養では1.5g/Lの、またNo.103株の培養では1.7g/LのL−ロイシンがそれぞれ産生された。
【0039】
【発明の効果】
本発明のエシェリヒア属細菌は、L−ロイシン生産菌として、又はL−ロイシン生産菌育種の出発材料として、利用することができる。本発明により、従来知られているエシェリヒア属細菌を用いたL−ロイシン製造法よりも、効率よくL−ロイシンを製造することができる。
Claims (5)
- L−ロイシン生産能を有し、かつ15g/LのL−ロイシンに対して耐性を有するエシェリヒア・コリ細菌。
- さらにロイシンアナログに対する耐性を有する請求項1記載のエシェリヒア・コリ細菌。
- 前記ロイシンアナログが、4−アザロイシン及び3−ヒドロキシロイシンから選ばれる請求項2記載のエシェリヒア・コリ細菌。
- エシェリヒア・コリ細菌から、ロイシンアナログに対する耐性及び15g/LのL−ロイシンに対する耐性を有する株を、各々の耐性について少なくとも1回、かつ、任意の順序で段階的に選択された、L−ロイシン生産能を有するエシェリヒア・コリ細菌。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のエシェリヒア・コリ細菌を培地で培養し、該培養物中にL−ロイシンを生成蓄積せしめ、該培養物からL−ロイシンを採取することを特徴とするL−ロイシンの製造法。
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1998
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