JP4982506B2 - 単結晶ダイヤモンドの製造方法 - Google Patents
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Description
一方、ダイヤモンドは、ドリフト移動度も高く、Johnson性能指数を比較しても、半導体の中で最も高速電子デバイスとして有利である。
従って、ダイヤモンドは、高周波・高出力電子デバイスに適した究極の半導体と云われている。
そのため、基材に単結晶のダイヤモンドを利用した各種電子デバイスの研究が進められている。
しかしながら、HPHTダイヤモンドは結晶性が高いものが得られる一方で大型化が困難で、サイズが大きくなると極端に価格が高くなり、デバイス用基材としての実用化を困難としている。
当該方法では、基材と成長した単結晶ダイヤモンドとが同材料のためそれらの分離が困難で、そのために、基材に予めイオン注入が必要であることや、成長後も長時間のウェットエッチング分離処理が必要なことなどコストの面で課題がある。また、得られる単結晶ダイヤモンドの結晶性も基材へのイオン注入があるため、ある程度の低下は生じてしまう問題がある。
しかしながら当該方法では単結晶MgOと単結晶イリジウムを介して成長させた単結晶ダイヤモンドとの間で発生する応力(内部応力と熱応力の和)のため、基材と成長させた単結晶ダイヤモンドが細かく割れてしまう問題がある。また、得られる単結晶ダイヤモンドの結晶性も、種基材である入手可能な単結晶MgOの結晶性が充分で無いため、満足のできるレベルではない。
このように、単結晶ダイヤモンドを種基材として、その上にイリジウム(以下Irとも記載)膜またはロジウム(以下Rhとも記載)膜をヘテロエピタキシャル成長させたものであるため、Ir膜またはRh膜の結晶性を良好なものとすることができ、そしてこのような構造の薄膜の表面にヘテロエピタキシャル成長させると、結晶性の良好な単結晶ダイヤモンドを得ることができる。
また、種基材がCVD成長によって成長させるものと同じダイヤモンドであるため、その間の応力で割れるようなことが無く、さらにIr膜またはRh膜で生じる応力によって簡単に単結晶ダイヤモンドと基材を分離させることができる。また、Ir膜またはRh膜できれいに分離することができるため、種基材は繰り返し使用することができる。
このように、高結晶性である高温高圧合成単結晶ダイヤモンドか気相合成単結晶ダイヤモンドを種基材として用いることによって、その表面上に結晶性の良好な薄膜を形成することができ、結果として、その上に結晶性が非常に良好な単結晶ダイヤモンドをヘテロエピタキシャル成長させることができる。
このように、種基材の厚みが0.03mm以上あればハンドリングを良好なものとすることができ、そして15.00mm以下であれば、容易に入手することができる。
このように、成長速度の速いスパッター法によって種基材上に薄膜をヘテロエピタキシャル成長させることによって、薄膜の成長時間を短くすることができる。
このように、薄膜の厚みが0.5nm以上であれば、Ir膜またはRh膜の結晶性を高くすることができ、また薄膜と単結晶ダイヤモンドとの間に適当な応力を発生させることができる。また、100μm以下であれば、成長時間が長時間となることがないためコスト面で不利になることはなく、そして応力が大きくなり過ぎることもないため、種基材や単結晶ダイヤモンドが破損したり割れる恐れもない。
このように、ダイヤモンド核の形成をバイアス処理によって行った単結晶ダイヤモンド成長用の基材とすることによって、Ir膜またはRh膜上に容易に高品質の単結晶ダイヤモンドをヘテロエピタキシャル成長させることができる単結晶ダイヤモンド成長用の基材とすることができる。
このように、本発明の単結晶ダイヤモンド成長用の基材は、結晶性が良好なものであり、このような基材を用いてCVD法によって単結晶ダイヤモンドを製造すれば、結晶性の良好な単結晶ダイヤモンドを得ることができ、また破損や割れの恐れがほとんどない単結晶ダイヤモンドの製造方法とすることができる。
本発明に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法によって製造された単結晶ダイヤモンドを有する基材は単結晶ダイヤモンドを容易に分離することができるため、破損したり割れることなく結晶性の良好な単結晶ダイヤモンドを得ることができる。また、表面のIr膜またはRh膜を研磨して除去することによって種基材として再利用することができる。従って、極めてコスト面で有利である。
また、単結晶ダイヤモンドを有する基材を純水またはウェットエッチング液につけることによって、更に容易に分離させることができる。
図1に示すように、本発明の単結晶ダイヤモンド成長用の基材11は、単結晶ダイヤモンドからなる種基材12上に、Ir膜またはRh膜(薄膜)13がヘテロエピタキシャル成長されたものである。
高温高圧合成単結晶ダイヤモンドや気相合成単結晶ダイヤモンドは結晶性が非常に良好であるため、このような単結晶ダイヤモンドを種基材とすることによって、その表面上に結晶性の良好なイリジウム膜またはロジウム膜をヘテロエピタキシャル成長させることができる。そして、この薄膜の上に結晶性が非常に良好な単結晶ダイヤモンドをIr膜またはRh膜上にヘテロエピタキシャル成長させることができる。HPHT法によるものは結晶性が高い利点があり、CVD法によるものは、より安価で大面積のものとし易い利点がある。
種基材の厚みが0.03mm以上であれば、後の工程におけるハンドリングを良好なものとすることができる。また厚みが15.00mm以下であれば、容易に入手することができるため、従来に比べて安価な単結晶ダイヤモンド成長用の基材を得ることができる。
このように、成長速度の速いスパッター法、例えばR.F.マグネトロンスパッター法であれば、成長速度が速いので、種基材上にIr膜またはRh膜を製造する時間を短時間とすることができ、また、容易に薄膜を成長させることができる。
このように、Ir膜またはRh膜が0.5nm以上の厚さであれば、Ir膜またはRh膜の結晶性を高いものとすることができ、また後にダイヤモンドをCVD法によって製造する際に、Ir膜またはRh膜と単結晶ダイヤモンドとの間に適当な応力を発生させることができ、よって基材と単結晶ダイヤモンドを容易に分離させることができる。また、100μm以下であれば、ヘテロエピタキシャル成長にかかる時間を必要以上に長時間とすることがないためコスト面で有利であり、そして基材や単結晶ダイヤモンドとの間で発生する応力を大き過ぎるものとなることを抑制することができるため、種基材や単結晶ダイヤモンドが割れたり破損したりする恐れもない。
このバイアス処理としては、具体的には、例えば特開2007−238377号公報に記載されているような、バイアス処理と呼ばれる方法によって前処理を行って、Ir膜またはRh膜の表面に結晶方位の揃ったダイヤモンド成長核を形成することができる。
このように、予め薄膜表面にダイヤモンド核の形成を該基材側の電極をカソードとした直流放電によるバイアス処理を行った単結晶ダイヤモンド成長用の基材とすることによって、後にIr膜またはRh膜上に容易に単結晶ダイヤモンドをヘテロエピタキシャル成長させることができる。
本発明の単結晶ダイヤモンド成長用の基材は、前述のように、結晶性が良好であり、また基材や成長させた単結晶ダイヤモンドが破損する恐れがほとんどなく、このような基材を用いて単結晶ダイヤモンドをCVD法で製造することによって、結晶性の良好な単結晶ダイヤモンドを、歩留り良く得ることができる。
前述のように、本発明に記載の単結晶ダイヤモンドは、Ir膜またはRh膜と単結晶ダイヤモンド間に発生する応力によって成長させた単結晶ダイヤモンドを単結晶ダイヤモンド成長用の基材から容易に分離することができるので、破損したり割れることなく結晶性の良好な単結晶ダイヤモンドを、成長用の基材と同サイズである大面積で得ることができる。そして分離して得られた単結晶ダイヤモンドは、高結晶性でデバイス用として非常に有用なものである。
このように、本発明では、単結晶ダイヤモンドを有する基材を純水またはウェットエッチング液につけることによって、単結晶ダイヤモンドと基材の分離を更に容易に、かつ確実に行うことができる
通常であれば、成長を終えて、CVD装置から取り出す時点で、容易に成長した単結晶ダイヤモンド部分が基材から分離できるが、たまに基材と成長した単結晶ダイヤモンドとの間に付着力が残っている場合がある。この場合、純水や例えばリン酸溶液などのウェットエッチング液に浸けると容易に分離することができ、よって分離の際に単結晶ダイヤモンドや基材が破損したり割れたりすることを防止することができる。
また、種基材がCVD成長によって成長させるものと同じダイヤモンドであるため、基材や成長させたダイヤモンドとの間の応力によって種基材や単結晶ダイヤモンドが割れるといったことも無く、中間に存在するIr膜またはRh膜で生じる適当な応力によって簡単に成長させた単結晶ダイヤモンドと基材を分離させることができる単結晶ダイヤモンド成長用の基材とすることができる。また、Ir膜またはRh膜できれいに分離することができ、また割れたりすることがほとんどないため、種基材は繰り返し使用することができ、よってコスト低減を図ることができる。
(実施例1)
5.0mm角、厚みが0.5mmで方位(100)の両面研磨加工したHPHT単結晶ダイヤモンドを種基材として用意した。
そして、この種基材のダイヤモンド成長を行う面に単結晶Ir膜をヘテロエピタキシャル成長させて単結晶ダイヤモンド成長用の基材を作製した。製膜は、Irをターゲットとした、R.F.マグネトロンスパッター法で、Arガス6×10−2Torr(8Pa)、基材温度700℃の条件で単結晶Ir膜厚が1.5μmになるまでスパッターして仕上げた。また、バイアス処理及びDCプラズマCVDを行う際の電気的導通のために、基材温度を100℃とした他は同じ条件で、裏面にもIrを1.5μm成長させた。
先ず、基材をバイアス処理装置の負電圧印加電極(カソード)上にセットし、真空排気を行った。次に、基材を600℃に加熱してから、3vol.%水素希釈メタンガスを導入し、圧力を120Torr(1.6×104Pa)とした。それから、バイアス処理を行った。すなわち、両電極間にDC電圧を印加して、所定の直流電流を流した。
そして最後に、このバイアス処理済みの基材の単結晶Ir膜側の表面上に、DCプラズマCVD法によって900℃で30hrかけて、単結晶ダイヤモンドをヘテロエピタキシャル成長させた。
成長させた単結晶ダイヤモンドに対して表面研磨加工を行って、基材とほぼ同サイズの約5mm角厚み150μmに仕上げた。
そして、使用後の単結晶ダイヤモンド成長用の基材は単結晶Ir膜を除去した後に、種基材の単結晶ダイヤモンドのきれいな面が出る程度に研磨加工して、新たな種基材の単結晶ダイヤモンドとして再利用することができた。
最後のDCプラズマCVDでの単結晶ダイヤモンドの成長時間を9hr(60μm厚狙い)とする他は実施例1と同様の条件で単結晶ダイヤモンドを製造した後、製造物が室温程度に冷えたのを確認してからチャンバー内に大気を導入してベルジャーを開けた。
この場合、アノード上の製造物は、ヘテロエピタキシャル成長させた単結晶ダイヤモンドと基材部分とが、弱い付着力で貼り付いていた。そこで、製造物を沸騰した純水中に1hr浸けて取り出しところ、単結晶ダイヤモンドと基材部分とをきれいに分離することができた。また、単結晶ダイヤモンド種基材のIr膜側の表面には僅かにIrが付着している部分もあったが、その後の研磨加工で容易に除去することができた。
得られた単結晶ダイヤモンドは、ラマン分光、XRDロッキングカーブ、断面TEM、カソードルミネッセンス(CL)で評価したところ、充分な結晶性であることが確認できた。
また、単結晶ダイヤモンド成長用の基材はIr膜の除去及び種基材の単結晶ダイヤモンドのきれいな面が出る程度に研磨加工して、新たな種基材の単結晶ダイヤモンドとして再利用することができた。
種基材として、5.0mm角、厚みが0.5mmで方位(100)の両面研磨加工単結晶MgOを使用した以外は実施例1と同様の条件で、単結晶Ir膜の成長とバイアス処理を行って単結晶ダイヤモンド成長用の基材を用意し、その上にDCプラズマCVD法で単結晶ダイヤモンドのヘテロエピタキシャル成長を行って、単結晶ダイヤモンドの製造を図った。
しかし、ベルジャーを開けて、チャンバー内の製造物を見ると、単結晶MgO基材および単結晶ダイヤモンドが共に1mm角程度の細かい破片に割れていた。
この単結晶ダイヤモンドの破片一つを取って、結晶性を評価したところ、ラマン半値幅も広く、断面TEMでも転位欠陥が多く存在するなど、デバイス用途では不充分なレベルであった。
当然、粉々となった単結晶MgO基材の再利用は不可能であった。
Claims (3)
- 単結晶ダイヤモンドの製造方法であって、
厚みが0.03mm以上15.00mm以下の高温高圧合成(HPHT)単結晶ダイヤモンドまたは気相合成(CVD)単結晶ダイヤモンドからなる種基材上に、薄膜として、スパッター法によって厚みが0.5nm〜100μmのイリジウム膜またはロジウム膜をヘテロエピタキシャル成長させて単結晶ダイヤモンド成長用の基材を作製し、
該単結晶ダイヤモンド成長用の基材の前記薄膜側に、マイクロ波CVD法あるいは直流プラズマCVD法によって単結晶ダイヤモンドをヘテロエピタキシャル成長させ、
前記単結晶ダイヤモンドを有する基材から前記単結晶ダイヤモンドを分離することを特徴とする単結晶ダイヤモンドの製造方法。 - 前記単結晶ダイヤモンドをヘテロエピタキシャル成長させる前に、前記薄膜の表面に対して、前記基材側の電極をカソードとした直流放電でダイヤモンド核形成を行うバイアス処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
- 前記単結晶ダイヤモンドの分離は、前記単結晶ダイヤモンドを有する基材を、純水またはウェットエッチング液に浸けるものとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
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