JP4980656B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、サイプを有する複数のブロックがトレッド部に形成された空気入りタイヤに関する。
氷上におけるブレーキ性能(制動性能)を向上させるために、氷上に発生する水をタイヤのトレッド部に形成されたサイプに逃がすことが従来から行われてきている。しかし、従来、サイプが吸収できる水分量が大きくないため、特に氷表面に水が発生しやすい温度において、水の逃げ道を充分に確保し難い。このため、トレッド部が水膜上に乗った状態になってしまってサイプによる吸水効果を充分に得難い場合があった。
この対策として、サイプに連通する中空ゾーンをサイプ底に形成し、吸水量を増大させることが開示されている(例えば特許文献1〜3参照)。
しかし、特許文献1〜3よりも更に吸水効果を得ることができる空気入りタイヤが実現されると、氷上における制動性能が更に向上して好ましい。
なお、吸水量を増大させようとして特許文献1〜3において中空ゾーンを含めたサイプ容積を大きくし過ぎると、ブロック剛性が低下して吸水性能が逆に低下してしまうという難点がある。また、特許文献1〜3では、サイプが路面に当接して吸水するときの吸水方向が重力方向とは反対方向なので、吸水させ難く、排水性という点では限度がある。
特表2002−501458号公報 特表2004−513014号公報 特開2003−159911号公報
本発明は、上記事実を考慮して、サイプ内に吸い上げることができる水分量を増大させることにより氷上における制動性能を向上させた空気入りタイヤを提供することを課題とする。
請求項1に記載の発明は、周方向溝と横溝とによって区画された複数のブロックがトレッド部に形成され、前記ブロックには、両端が前記ブロック内で閉じている少なくとも1つのタイヤ幅方向に延びるサイプが形成され、前記サイプの底部には、サイプ幅方向断面における空隙断面積が局所的に広い空隙部が形成され、前記空隙部のサイプ幅方向断面では、タイヤ半径方向の空隙幅がタイヤ半径方向に直交する方向の空隙幅よりも長くなく、前記空隙部のサイプ幅方向断面では、空隙中心が、ブロック表面から前記空隙部まで延びるサイプ細幅部の中心線よりもタイヤ踏み込み側にずれた位置に配置されている、ことを特徴とする。
ブロックが踏み込む初期の過程において、空隙部が圧縮されて空隙容積が減少していく。その後、タイヤ蹴り出し側において、空隙部は圧縮変形力から開放されていき、空隙容積が増加していく。従って、この空隙容積の変化がスポイトの吸水作用としての働きをするため、タイヤ蹴り出し側の路面上に水が発生していると、路面上の水の少なくとも一部がサイプへ能動的に吸い上げられる。これにより、タイヤ蹴り出し側においてブロックと路面との間の摩擦力が上がるので、路面に対するブロックのすべりが抑制され、制動性能(ブレーキ性能)が向上する。
また、空隙部のサイプ幅方向断面では、空隙中心が、ブロック表面から空隙部まで延びるサイプ細幅部の中心線よりもタイヤ踏み込み側にずれた位置に配置されているので、これにより、ブロック変形の早い段階でより空隙部がつぶれやすくなり、排水性が更に向上する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記空隙部のサイプ幅方向断面では、空隙中心が前記サイプ細幅部の中心線よりもタイヤ踏み込み側に1〜3mmの範囲内でずれた位置に配置されている、ことを特徴とする。
ずれる距離が1mmよりも小さいとあまり効果がなく、3mmよりも大きくてもあまり効果がないためである。
請求項3に記載の発明は、サイプ幅方向断面における前記空隙部の断面形状が円である、ことを特徴とする。これにより、空隙部の形状を簡素にすることができ、製造工程を簡素化し易い。
請求項4に記載の発明は、サイプ幅方向断面における前記空隙部の断面形状が、タイヤ周方向を長軸とする楕円である、ことを特徴とする。これにより、空隙部の圧縮を更に助長する効果が得られる。
請求項5に記載の発明は、前記ブロックの非荷重時では、前記楕円の短径が長径の30〜70%の範囲内である、ことを特徴とする。空隙部の短径が長径の30%よりも短いと、空隙部が細すぎてつぶれ難くなるので、空隙容積が変化し難くなるからである。また、空隙部の短径が長径の70%よりも大きいと、やはり空隙部がつぶれ難くなるので空隙容積が変化し難くなるからである。
請求項6に記載の発明は、前記ブロックの非荷重時では、前記空隙部の空隙容積が前記ブロックの体積の1〜5%の範囲内である、ことを特徴とする。1%よりも小さいと空隙容積が小さ過ぎて排水の効果が小さくなり易く、5%よりも大きいとブロック剛性が低くなり過ぎ易いためである。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記サイプ細幅部は、湾曲して前記空隙部に接続されている。
本発明によれば、サイプ内に吸い上げることができる水分量を増大させることにより氷上における制動性能を向上させた空気入りタイヤとすることができる。
以下、参考例を挙げ、本発明の実施の形態については後で説明する。なお、第2参考例、及び第1実施形態以下では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付して、その説明を省略する。
[第1参考例]
まず、第1参考例について説明する。図1に示すように、本第1参考例に係る空気入りタイヤ10は、両端部がそれぞれビードコア11で折り返された1層又は複数層で構成されるカーカス12を備えている。
カーカス12のクラウン部12Cのタイヤ径方向外側には、複数枚(例えば2枚)のベルトプライが重ねられたベルト層14が埋設されている。
ベルト層14のタイヤ径方向外側には、溝を配設したトレッド部16が形成されている。図2に示すように、トレッド部16には、タイヤ赤道面CL上とその両側とに、タイヤ周方向Uに沿った複数本の周方向溝(主溝)22が形成されている。また、トレッド部16には、タイヤ周方向Uと交差する複数本の横溝24が形成されている。本参考例では、横溝24はタイヤ幅方向Vに沿って形成されている。各横溝24の両端部は、周方向溝22に連通するか、又は、トレッド端Tを越えてタイヤ幅方向外側へ排水可能なように延びている。
ここで、トレッド端とは、空気入りタイヤをJATMA YEAR BOOK(2005年度版、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%を内圧として充填し、最大負荷能力を負荷したときのタイヤ幅方向最外の接地部分を指す。なお、使用地又は製造地においてTRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
トレッド部16には、図2に示すように、周方向溝22及び横溝24によって多数のブロック26が形成されている。
図2、図3に示すように、各ブロック26には、横溝24に沿ったサイプ28が形成されている。各サイプ28の両端はブロック26内で閉じており、ブロック側壁には開口していない。本参考例では、サイプ28は各ブロック26に1本づつ形成されている。また、本参考例では、サイプ28はタイヤ幅方向Vに沿って形成されている。
図3に示すように、サイプ28の底部には、サイプ幅方向断面(図2の矢視I−I)における断面積が局所的に広い空隙部28Pが形成されている。サイプ28は、ブロック表面に開口してタイヤ半径方向Rに進展し空隙部28Pにまで連通しているサイプ細幅部28Sとこの空隙部28Pとによって構成されており、サイプ細幅部28Sのみが形成されているサイプに比べてサイプ容積が大きくなっている。
本参考例では、サイプ幅方向断面における空隙部28Pの断面形状が円形である。また、本参考例では、非荷重時では、空隙部28Pの空隙容積がブロック26の体積の1〜5%の範囲内にされている。
(作用、効果)
以下、本参考例に係る空気入りタイヤ10を車両に装着して氷路面上を走行したときの作用、効果について説明する。
図4に示すように、ブロック26(26A〜D)が氷路面Sに接地し、タイヤ踏み込み側Iからタイヤ蹴り出し側Kにブロック26が移行する際、氷路面S上に水膜Wが発生している。ここで、本参考例では、ブロック26が踏み込む初期の過程において、空隙部28Pが圧縮されて空隙容積が減少していく(図4のブロック26A、ブロック26B参照)。その後、タイヤ蹴り出し側Kで、空隙部28Pは圧縮変形力から徐々に開放されていき、空隙容積が増加していく(図4のブロック26C、ブロック26D参照)。
すなわち、空隙容積の変化がポンプとして作用するので、スポイトの吸水作用としての働きによりサイプ28内へ水膜を吸い上げることができる。従って、タイヤ蹴り出し側Kの氷路面S上に水膜Wが発生していると、この水膜Wがサイプ28へ効果的に吸い上げられて氷路面S上から除去される。これにより、タイヤ蹴り出し側Kでブロック26と氷路面Sとの間の摩擦力が上がるので、路面に対するブロック26のすべりが抑制され、ブレーキ性能が向上する。この効果は、水の発生量が多い0℃近傍の温度において特に顕著に認められる。
また、本参考例では、非荷重時では、空隙部28Pの容積がブロック26の体積の1〜5%の範囲内にされており、これにより、ブロック26の剛性が低くなり過ぎることなくサイプ28による排水の効果を充分に得ることができる。
更に、サイプ幅方向断面における空隙部28Pの断面形状が円状であるので、空隙部28Pの形状を簡素にすることができ、製造工程を簡素化し易い。
なお、本参考例では、1つのブロック26にサイプ28を1本のみ形成しているが、1つのブロック26にサイプ28を2本あるいは3本形成しても良い。ただし、1つのブロック26にサイプ28を4本以上形成するとブロック剛性が低くなり過ぎるおそれがある。1つのブロック26にサイプ28を複数本形成する場合、ブロックをブロック周方向に等間隔で分断するように配置されていると、接地圧が均一になり、局所的な偏摩耗が生じ難い。
また、本参考例では、サイプ細幅部28Sは横溝24に沿った平板状の空隙とされているが、本発明はこれに限らず、例えば、ブロック表面でジグザグ状に延びる空隙とされていてもよい。ここで、ブロック表面でサイプ細幅部がジグザグ状に延びるとは、ブロック表面におけるサイプ細幅部の延びる方向に対して傾斜しているサイプ部分が、傾斜方向が互い違いになるように折り返しながら延びることをいう。
第2参考例
次に、第2参考例について説明する。本第2参考例に係る空気入りタイヤでは、第1参考例で説明したブロック26に代えて、図5に示すようなブロック36がトレッド部に形成されている。
このブロック36に形成されたサイプ38の底部には、第1実施形態で説明した空隙部28Pに代えて空隙部38Pが形成されている。この空隙部38Pのサイプ幅方向断面(すなわち、サイプ38のタイヤ周方向断面)の断面形状は、タイヤ周方向Uを長軸としタイヤ半径方向(タイヤ径方向)Rを短軸とする楕円である。
これにより、第1実施形態に比べ、空隙部38Pが更に圧縮されるという効果が得られる。
本参考例では、非荷重時では、サイプ幅方向断面における空隙部38Pの短径bが長径aの30〜70%の範囲内となるように空隙部38Pの寸法が決められている。これにより、タイヤ転動時に空隙部38Pがつぶれ難くなることが回避されている。
また、本参考例では、非荷重時における空隙部38Pの空隙容積はブロック36の体積の1〜5%の範囲内にされている。これにより、ブロック36の剛性が低くなり過ぎることなくサイプ38による排水の効果を充分に得ることができる。
[第1実施形態]
次に、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る空気入りタイヤでは、第1参考例で説明したブロック26に代えて、図6に示すようなブロック46がトレッド部に形成されている。
このブロック46に形成されたサイプ48の底部には空隙部48Pが形成されている。空隙部48Pのサイプ幅方向断面では、空隙中心48Cは、ブロック表面から空隙部48Pまで延びるサイプ細幅部48Sの中心線48Mよりもタイヤ踏み込み側にP=1mmずらした位置に配置されている。なお、サイプ幅方向断面における空隙部48Pの断面形状は、第1参考例で説明した空隙部48Pと同じである。
本実施形態では、空隙部48Pがサイプ細幅部48Sよりもタイヤ踏み込み側に1mmずれており、これにより、ブロック変形の早い段階でより空隙部48Pがつぶれやすくなるので、排水性が更に向上する。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態に係る空気入りタイヤでは、第1参考例で説明したブロック26に代えて、図7に示すようなブロック56がトレッド部に形成されている。
このブロック56に形成されたサイプ58の底部には空隙部58Pが形成されている。空隙部58Pのサイプ幅方向断面では、空隙中心58Cは、ブロック表面から空隙部58Pまで延びるサイプ細幅部58Sの中心線58Mよりもタイヤ踏み込み側にQ=2mmずらした位置に配置されている。なお、サイプ幅方向断面における空隙部58Pの断面形状は、第1参考例で説明した空隙部58Pと同じである。
本実施形態では、空隙部58Pがサイプ細幅部58Sよりもタイヤ踏み込み側に2mmずれており、これにより、ブロック変形の早い段階でより空隙部58Pがつぶれやすくなることが第3実施形態よりも更に顕著になり、排水性が更に向上する。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態に係る空気入りタイヤでは、第1実参考例で説明したブロック26に代えて、図8に示すようなブロック66がトレッド部に形成されている。
このブロック66に形成されたサイプ68の底部には空隙部68Pが形成されている。空隙部68Pのサイプ幅方向断面では、空隙中心68Cは、ブロック表面から空隙部68Pまで延びるサイプ細幅部68Sの中心線68Mよりもタイヤ踏み込み側にN=3mmずらした位置に配置されている。なお、サイプ幅方向断面における空隙部68Pの断面形状は、第1参考例で説明した空隙部68Pと同じである。
本実施形態では、空隙部68Pがサイプ細幅部68Sよりもタイヤ踏み込み側に3mmずれており、これにより、ブロック変形の早い段階でより空隙部68Pがつぶれやすくなることが第1実施形態よりも更に顕著になる。
<試験例>
本発明の効果を確かめるために、本発明者は、第1参考例に係る空気入りタイヤ10の一例(以下、参考例1のタイヤという)、第2参考例に係る空気入りタイヤの一例(以下、参考例2のタイヤという)、第1実施形態に係る空気入りタイヤの一例(以下、実施例1のタイヤという)、第2実施形態に係る空気入りタイヤの一例(以下、実施例2のタイヤという)、第3実施形態に係る空気入りタイヤの一例(以下、実施例3のタイヤという)、及び、従来例の空気入りタイヤの一例(図14参照。以下、従来例のタイヤという)を用意し、氷路上で制動性能のテストを行って制動性能を評価した。
ブロック寸法については、参考例1のタイヤでは、図3に示すように、タイヤ周方向長さLを25mm、タイヤ幅方向長さMを20mm、タイヤ半径方向深さ(ブロック高さ)Hを10mmとした。参考例2、実施例1〜3のタイヤ及び従来例のタイヤについても、ブロック寸法(L、M、Hの値)を参考例1のタイヤと同じにした。
サイプ寸法については、参考例1のタイヤでは、図3に示すように、ブロック表面におけるサイプ長さdを15mm、サイプ細幅部28Sのサイプ幅tを0.4mm、サイプ細幅部28Sのサイプ深さhを6mm、サイプ幅方向断面における空隙部28Pの径Dを3mmとした。空隙部28Pの長さはサイプ長さdと同じである。参考例2のタイヤでは、図5に示すように、サイプ細幅部38S(ブロック表面から空隙部38Pまで延びるサイプ部分)のサイプ幅、サイプ長さを実施例1のタイヤと同じにし、サイプ幅方向断面における空隙部38Pの楕円形状の長径aを4.5mm、短径bを2mmとした。実施例1〜3のタイヤでは、サイプ細幅部のサイプ幅、サイプ長さを参考例1のタイヤと同じとし、サイプ幅方向断面における空隙部の径も参考例1と同じとした。従来例のタイヤでは、図14に示すように、参考例1のサイプ細幅部28Sと同じ形状のサイプ88を同じ位置に配置しており、サイプ88の寸法はサイプ細幅部28Sと同じである。
また、非荷重時におけるブロック体積に対する空隙容積の比は、参考例1、参考例2、実施例1〜3のタイヤで全て2%である。
本試験例では、全てのタイヤについて、タイヤサイズを195/65R15とし、正規リムに装着して内圧を200kPaとし、乗用車に取付けて正規荷重を負荷した状態で実車走行により試験を行った。ここで、「正規リム」とは、例えばJATMAが発行する2005年版のYEAR BOOKに定められた適用サイズにおける標準リムを指し、「正規荷重」とは、同様に、JATMAが発行する2005年版のYEAR BOOKに定められた適用サイズ・プライレーティングにおける最大荷重を指す。
本試験例では、初速度40km/hからフルブレーキをかけて静止状態になるまでの制動距離を計測し、初速度と制動距離とから平均減速度を算出した。そして、従来例のタイヤの平均減速度に基づく評価指数100とし、参考例1、参考例2、実施例1〜3のタイヤについて相対評価となる評価指数を算出した。評価結果を表1に示す。
表1の評価結果では評価指数が大きいほど氷上性能が高いこと、すなわち制動距離が短くて制動性能に優れていることを示す。表1から判るように、参考例1、参考例2、実施例1〜3のタイヤでは、従来例のタイヤに比べ、評価指数は何れも高くなっており、氷上における制動性能が向上していることが判った。
従って、従来例のタイヤでは、図15に示すように、サイプ88が吸水できる水分量が少ないため、タイヤ蹴り出し側Kでブロック86(86A〜D)と氷路面Sとの間の水膜Wを充分に除去できなかったが、参考例1、参考例2、実施例1〜3のタイヤでは、従来例のタイヤに比べてこの水膜Wをより多く除去できていることが判った。
<解析例>
本発明者は、参考例1のタイヤ、実施例1のタイヤ、実施例2のタイヤ、及び、実施例3のタイヤについて、解析モデルをそれぞれ設定し、ブロックが接地する際におけるサイプの空隙部の容積変化を解析計算で求めた。この解析計算では、1ステップ毎にタイヤが4mm進行するとして、各ステップ毎に空隙部の容積を計算した。計算結果を図13に示す。
図13から判るように、何れものタイヤであっても、ブロックが接地する初期の段階から空隙部の容積が減少しているという結果になった。また、空隙部の容積変化量は、参考例1のタイヤよりも実施例1のタイヤのほうが大きく、実施例2、3のタイヤのほうが更に大きいという結果になった。
また、本解析例では、荷重直下の位置にブロックが到達した状態における各タイヤのブロック形状を解析計算で算出した。算出されたブロック形状を、参考例1のタイヤでは図9に、実施例1のタイヤでは図10に、実施例2のタイヤでは図11に、実施例3のタイヤでは図12に、それぞれ示す。
ブロック形状の解析計算の結果、実施例3のタイヤでは、図12に示すように、サイプ細幅部68Sの内壁同士が当接してサイプ細幅部68Sが閉じているという結果になった。一方、実施例2のタイヤでは、図11に示すように、サイプ細幅部58Sは閉じておらず、従って、空隙部58Pにスムーズに吸水されるという結果になった。
以上の解析結果により、本解析例では、氷路面上の水膜の吸水量という観点では実施例2のタイヤが最も好ましいという結果になった。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
第1参考例に係る空気入りタイヤのタイヤ径方向断面図である。 第1参考例に係る空気入りタイヤのトレッド部のブロック配置を平面状態で示す説明図である。 第1参考例に係る空気入りタイヤのトレッド部を構成するブロックの斜視図である(ブロックがタイヤの上側に位置する状態)。 第1参考例で、空気入りタイヤが氷路面上を転動することを示す模式的な部分側面断面図である。 第2参考例に係る空気入りタイヤのトレッド部を構成するブロックの斜視図である(ブロックがタイヤの上側に位置する状態)。 第1実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を構成するブロックの斜視図である(ブロックがタイヤの下側に位置する状態)。 第2実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を構成するブロックの斜視図である(ブロックがタイヤの下側に位置する状態)。 第3実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を構成するブロックの斜視図である(ブロックがタイヤの下側に位置する状態)。 解析例での参考例1のタイヤで、荷重直下の位置にブロックが到達した状態を示すブロック側面断面図である。 解析例での実施例1のタイヤで、荷重直下の位置にブロックが到達した状態を示すブロック側面断面図である。 解析例での実施例2のタイヤで、荷重直下の位置にブロックが到達した状態を示すブロック側面断面図である。 解析例での実施例3のタイヤで、荷重直下の位置にブロックが到達した状態を示すブロック側面断面図である。 解析例での解析計算結果を示すグラフ図である。 試験例で用いた従来の空気入りタイヤのトレッド部を構成するブロックの斜視図である(ブロックがタイヤの上側に位置する状態)。 試験例で用いた従来の空気入りタイヤが氷路面上を転動することを示す模式的な部分側面断面図である。
10 空気入りタイヤ
16 トレッド部
22 周方向溝
24 横溝
26A〜D ブロック
28 サイプ
28P 空隙部
28S サイプ細幅部
36 ブロック
38 サイプ
38P 空隙部
38S サイプ細幅部
46 ブロック
48C 空隙中心
48M 中心線
48P 空隙部
48S サイプ細幅部
56 ブロック
58 サイプ
58C 空隙中心
58M 中心線
58P 空隙部
58S サイプ細幅部
66 ブロック
68C 空隙中心
68P 空隙部
68M 中心線
68S サイプ細幅部
86A〜D ブロック
88 サイプ

Claims (7)

  1. 周方向溝と横溝とによって区画された複数のブロックがトレッド部に形成され、
    前記ブロックには、両端が前記ブロック内で閉じている少なくとも1つのタイヤ幅方向に延びるサイプが形成され、
    前記サイプの底部には、サイプ幅方向断面における空隙断面積が局所的に広い空隙部が形成され、
    前記空隙部のサイプ幅方向断面では、タイヤ半径方向の空隙幅がタイヤ半径方向に直交する方向の空隙幅よりも長くなく、
    前記空隙部のサイプ幅方向断面では、空隙中心が、ブロック表面から前記空隙部まで延びるサイプ細幅部の中心線よりもタイヤ踏み込み側にずれた位置に配置されている、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記空隙部のサイプ幅方向断面では、空隙中心が前記サイプ細幅部の中心線よりもタイヤ踏み込み側に1〜3mmの範囲内でずれた位置に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. サイプ幅方向断面における前記空隙部の断面形状が円である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. サイプ幅方向断面における前記空隙部の断面形状がタイヤ周方向を長軸とする楕円である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記ブロックの非荷重時では、前記楕円の短径が長径の30〜70%の範囲内である、ことを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記ブロックの非荷重時では、前記空隙部の空隙容積が前記ブロックの体積の1〜5%の範囲内である、ことを特徴とする請求項3〜5のうち何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記サイプ細幅部は、湾曲して前記空隙部に接続されている、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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