JP4978400B2 - 転写シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は転写シートの製造方法に関し、特に、樹脂含浸紙と木質基材の両方を有する基板に接着性よく転写することができ、意匠性の高い化粧板を製造し得る転写シートの製造方法に関する。
従来、化粧板等の各種転写製品を、転写シートを用いて被転写基材に装飾層を含む転写層を転写して製造することが広く行われている。また、被転写基材への転写層の接着には熱融着型接着剤を用いることが多い(例えば特許文献1参照)。
そして、転写層で用いる接着剤については、転写する被転写体の種類に応じて適宜選択される。例えば、被転写体がポリエチレンなどの樹脂フィルムの場合には、ウレタン系樹脂を主成分とした接着剤が用いられ、MDF(中密度圧縮合板)、HDF(高密度圧縮合板)などの木質系材料には、ポリアミド系接着剤や塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などの接着剤が適当である。
ところで、ドア材などはMDFボードなどの木質系材料で作られているが、そのエッジ部分に樹脂含浸紙を用い、かつ意匠性を向上させるためにR部分を作成することが試みられている。こうしたドア材などに転写箔を用いて装飾を施す場合には、木質系材料の部分に加えて、樹脂含浸紙の部分にも転写箔が転写される。しかしながら、樹脂含浸紙はポーラスであり、かつ、樹脂成分が存在するため、転写シートと被転写体を接着し、接着剤層を構成する樹脂組成物が樹脂含浸紙に浸透する際に、接着剤層の樹脂成分と樹脂含浸紙の樹脂成分との相性が悪く、十分な接着性が得られない場合があった。また、転写シートを転写した後に、表面に微小なクラック(マイクロクラック)が発生するといった問題があった。
一方、転写シートなどの化粧材を構成する各層は、通常、樹脂材料をトルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤に溶解し、これを塗布・乾燥して作製されるが、近年の環境問題により、これらの芳香族系溶剤を使用しないことが要望されている。
特に、MDF(中密度圧縮合板)、HDF(高密度圧縮合板)などの木質系材料に好適な、ポリアミド系接着剤は芳香族系溶剤を用いているのが現状であり、これに代わる溶剤が要望されていた。
特公昭60−59876号公報
本発明は上記問題点に鑑み、芳香族系溶剤を用いずに、MDFボードなどの木質系材料とそのエッジ部分などを構成する樹脂含浸紙のいずれにも接着性よく転写することができ、かつ高い意匠性を有する化粧板を製造し得る転写シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材に、少なくとも剥離層、装飾層、及び接着剤層を含む転写層を積層した転写シートの製造方法であって、接着剤層を塗工するインキ組成物の溶剤として、メチルシクロヘキサン及び低級アルコールを主成分とし、装飾層と接着剤層との間にオーバープリント層を有することによって、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材に、少なくとも剥離層、装飾層、及び接着剤層を含む転写層を積層した樹脂含浸紙が貼付された木質系基板用の転写シートの製造方法であって、該接着剤層はメチルシクロヘキサン及び炭素数1〜4のアルコールを主成分とし、芳香族化合物を含有しない溶剤にポリアミド系樹脂を溶解してなるインキ組成物を塗工して形成し、かつ装飾層と接着剤層の間にオーバープリント層を有することを特徴とする転写シートの製造方法、
(2)前記アルコールの炭素数が3又は4である上記(1)に記載の転写シートの製造方法、
(3)前記アルコールの相対蒸発速度が30〜200である上記(1)又は(2)に記載の転写シートの製造方法、
(4)前記インキ組成物中のメチルシクロヘキサンの含有量が25〜50質量%であり、アルコールの含有量が10〜25質量%である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の転写シートの製造方法、
(5)前記インキ組成物中のメチルシクロヘキサンの含有量が40〜50質量%である上記(4)に記載の転写シートの製造方法、
)前記インキ組成物がブロッキング防止剤を含有する上記(1)〜()のいずれかに記載の転写シートの製造方法、及び
)前記インキ組成物中の固形分の含有量が35〜50質量%である上記(1)〜()のいずれかに記載の転写シートの製造方法、
を提供するものである。
本発明の製造方法によれば、芳香族系溶剤を用いないため、環境に対する負荷が小さく、かつ木質系材料と樹脂含浸紙のいずれにも接着性よく転写することができ、しかも高い意匠性を有する化粧板を製造することができる。
本発明は、基材に、少なくとも剥離層、装飾層、及び接着剤層を含む転写層を積層した転写シートの製造方法であって、接着剤層はメチルシクロヘキサン及び炭素数1〜4のアルコールを主成分とし、芳香族化合物を含有しない溶剤にポリアミド系樹脂を溶解してなるインキ組成物を塗工して形成し、装飾層と接着剤層の間にオーバープリント層を有することを特徴とする。
以下、図1を参照しつつ、本発明の転写シートの製造方法について詳細に説明する。
図1は本発明にかかる転写シートの断面を示す模式図である。図1に例示される転写シート1は、基材2と、剥離層3、プライマー層4、装飾層5、オーバープリント層6、及び接着剤層7を含む転写層8から構成される。
基材2は、転写層8と離型性が有り、また被転写面に凹凸が有る場合は該凹凸への形状追従性があるものであれば、従来公知のものでよく特に制限はない。従って、被転写面が平面又は二次元的凹凸表面で転写シートが伸ばされない場合には、一般的な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(シート)、又は延伸性が無い紙等を用いることができる。
また、被転写面が三次元的凹凸表面で転写シートが伸ばされる場合には、少なくとも転写時には延伸性の有る基材を用いることが肝要である。延伸性のある基材としては、例えば熱可塑性樹脂を用いることができ、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂;エチレンテレフタレートイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ウレタン系熱可塑性エラストマー等のエラストマー等が挙げられる。
基材2は上述の材料からなるフィルム又はシートを単層で用いてもよいし、又は異種材料からなる積層体として用いてもよい。
基材2の厚さとしては特に限定されないが、通常は20〜200μm程度である。
基材2は必要に応じ、その転写層側に転写層との剥離性を向上させるため、離型層を設けてもよい(図示せず)。この離型層は基材2を剥離する際に基材2と共に転写層から剥離除去される。離型層としては、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこれらを含む混合物が用いられる。
また、剥離性を調整するために、基材2の転写層側の面に、コーティング処理、コロナ放電処理、オゾン処理などの表面処理を行ってもよい。
また、基材2の転写層に接する側の面に、凹凸模様を設ければ、転写後の転写層表面に砂目、梨地、木目等の凹凸模様を賦形できる。凹凸模様は、エンボス加工、サンドブラスト、賦形層(離型層を兼用もできる)の盛り上げ印刷加工等の公知の方法で形成することができる。
さらには、基材2の転写層に接する面の反対側に、ごみの付着防止の目的で静電気防止層を設けることができる。静電気防止層としては、非イオン界面活性剤及び/又はカチオン界面活性剤を配合した水溶液などを用いることができる。
本発明にかかる転写シートにおける転写層8は、少なくとも、剥離層3、装飾層5、及び接着剤層7を含有し、所望に応じて、剥離層3と装飾層5との間にプライマー層4、装飾層5と接着剤層7との間にオーバープリント層6が設けられる。
剥離層3は基材2又は基材2に設けられた離型層と装飾層5との間の剥離性を調整するため、また、転写後の装飾層5の表面保護のために設けられる層である。
本発明における転写シートの製造方法においては、まず基材上に剥離層3が設けられる。剥離層3はグラビア印刷、ロールコート、スクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の手法により積層することができる。剥離層3の厚さとしては特に限定されないが、通常は1〜20μm程度である。
剥離層3としては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、セルロース系樹脂等を単独で或いは2種以上混合したもの、及び電子線硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂を架橋硬化したものを用いることが好ましい。この場合、摩耗性、透明性を考慮すると、アクリル樹脂が好ましい。
転写後に剥離層3に表面滑性を出現させるため、添加剤として、ポリエチレンワックス、テフロンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等を添加することが好ましい。また、外装用途や太陽光にさらされる部位に使用される場合には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系紫外線吸収剤やヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、フェノール系酸化防止剤や熱安定剤等を添加することが好ましい。
次に、剥離層3の上、すなわち、剥離層3と装飾層5の間には所望によりプライマー層4を設けることができる。プライマー層4は、装飾層を保護する役割及び剥離層と装飾層の接着性を高める役割を担うものである。
プライマー層4の厚さとしては特に限定されないが、通常は1〜10μm程度である。
また、プライマー層4は、剥離層3と同様の方法で積層することができる。
プライマー層4としては、アミノ基含有アクリル樹脂を用いることが好ましい。また、転写後の装飾層5の表面保護を考慮すると、シリコーン系化合物を硬化剤として用いる、2液型のシリコーン・アミノ基含有アクリル樹脂がより好ましい。
アミノ基含有アクリル樹脂としては、3級アミノ基含有アクリル樹脂が好ましい。3級アミノ基含有アクリル樹脂とはジアルキルアミノ基を側鎖に有するアクリル樹脂であり、通常、3級アミノ基含有ラジカル重合性モノマーと、他のラジカル重合性モノマーとのモノマー組成物のラジカル共重合によって得ることができるものである。
3級アミノ基含有ラジカル重合性モノマーとしては、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリンなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、4−(N,N−ジエチルアミノ)スチレン、4−ビニルピリジンなどの芳香族系モノマー;N−〔2−ジメチルアミノエチル〕(メタ)アクリルアミド、N−〔3−ジメチルアミノプロピル〕(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル、3−ジエチルアミノプロピルビニルエーテル、4−ジメチルアミノブチルビニルエーテル、6−ジメチルアミノヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーなどを挙げることができる。
上記3級アミノ基含有ラジカル重合性モノマーと共重合反応させる他のラジカル重合性モノマーとしては特に限定されず、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;その他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、α−メチルスチレン等を挙げることができる。なお、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記3級アミノ基含有アクリル樹脂の重合方法は特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。
硬化剤として用いるシリコーン系化合物としては、1分子中に1個以上のエポキシ基、あるいはトリアルコキシシリル基を有する化合物が好ましく、さらには、1分子中にエポキシ基とトリアルコキシシリル基をそれぞれ1個以上有する化合物が好ましい。アルコキシの例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基などの低級アルコキシ基などが好ましい。
次に装飾層5は被転写体に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して剥離層3又はプライマー層4の上に印刷することにより形成される。印刷方法としては特に限定されず、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等公知の方法で行うことができる。なお、装飾層5の厚さとしては特に限定されないが、通常は1〜10μm程度である。
模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
また、印刷は部分印刷でもベタ印刷でもよく、部分印刷とベタ印刷の両方を行ってもよい。また、剥離層へのエンボス加工等による凹凸模様であってもよい。
装飾層5に用いるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
次に、オーバープリント層6は、所望により、装飾層5と接着剤層7との間に設けられる層であって、接着剤層と装飾層との密着性を良好にするとともに、転写シートを被転写体に転写する過程で、装飾層等を構成する樹脂組成物が樹脂含浸紙に浸透しないようにする、いわゆる目止め層としての働きをも有する。このような目止め効果を有することから、オーバープリント層6を設けることによって、転写シートを転写した化粧板表面の微小なクラック(マイクロクラック)を抑制することができる。
オーバープリント層6を構成する成分としては、目止め層としての効果を有するものであれば特に制限はなく、例えば、1液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が例示される。1液硬化型ウレタン樹脂及び2液硬化型ウレタン樹脂としては、後に詳述する接着剤層7を構成する転写用接着剤として用いられるものと同様のものを用いることができる。
また、アクリル樹脂としては、前述のプライマー層4に用いられるアミノ基含有アクリル樹脂、シリコーン系化合物を硬化剤として用いる、2液型のシリコーン・アミノ基含有アクリル樹脂などが好適に用いられる。
なお、オーバープリント層6は、剥離層3と同様の方法で積層することができる。
本発明の転写シートにおける、接着剤層7はメチルシクロヘキサン(相対蒸発速度;320)及び炭素数1〜4のアルコールを主成分とし、芳香族化合物を含有しない溶剤にポリアミド系樹脂を溶解してなるインキ組成物を塗工して形成する。これらの溶剤を用いることで、環境負荷が小さく、かつポリアミド系樹脂の十分な溶解性を得ることができる。
ここで用いるアルコールとしては、炭素数が1〜4であり、具体的には、メタノール(相対蒸発速度;190)、エタノール(相対蒸発速度;154)、n−プロパノール(相対蒸発速度;94)、イソプロパノール(相対蒸発速度;150)、n−ブタノール(相対蒸発速度;50)、イソブタノール(相対蒸発速度;64)、sec−ブタノール(相対蒸発速度;115)、tert−ブタノール(相対蒸発速度;130)が挙げられるが、中でも炭素数3又は4のアルコールが溶解性の点で好ましい。
また、これらのアルコールのうち相対蒸発速度が30〜200の範囲であることが好ましく、30〜170の範囲がさらに好ましい。メチルシクロヘキサンの相対蒸発速度が320であり、これより相対蒸発速度の低い成分を加えることで、溶剤全体の蒸発速度を適当なものとすることができるからである。なお、ここで相対蒸発速度とは、酢酸−n−ブチルの蒸発速度を100としたときの相対的な蒸発速度をいい、数値が大きいほど蒸発速度が遅いことを意味する。
上記インキ組成物中のメチルシクロヘキサンの含有量及びアルコールの含有量はそれぞれ25〜50質量%、10〜25質量%の範囲が好ましい。この範囲であると、後に詳述するポリアミド系樹脂の溶解性が良好であり、かつ、接着剤層7を塗工する際の、インキ組成物の粘度等が適当であり、塗工性が良好である。また、乾燥性も良好であり、効率的に均一な接着剤層7を形成することができる。
接着剤層7を形成するためのインキ組成物中に含有されるポリアミド系樹脂としては、重合脂肪酸とジアミン類との縮合により得られるものが挙げられる。具体的には、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ダイマー酸のようなジカルボン酸とエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンのようなジアミンから誘導されるポリアミドの単独重合体ないしは共重合体、ラクタム類とジカルボン酸およびジアミンから誘導されるポリアミド共重合体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)スベルアミド、ポリ(γ−メチルグルタメート)、ポリ(γ−エチルグルタメート)、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルピロリドン)などのアミド化合物が挙げられる。
また、本発明で使用するポリアミド系樹脂としては、分子量が1万〜2万程度のものが好ましい。
また、本発明で使用するポリアミド系樹脂は、粘着性(タック性)を有するものを選択することが好ましい。粘着性を有するものを選択することで、木質系材料と樹脂含浸紙のいずれにも良好に接着し得る転写用接着剤が設計しやすくなる。
但し、この粘着性がポリアミド系樹脂のハンドリングを悪くするので、これを防止することを目的に、前記インキ組成物中にはブロッキング防止剤を含有させることが好ましい。
上記ブロッキング防止剤としては通常化粧シート等に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム等の透明性の高い無機粒子が好適に用いられる。
ブロッキング防止剤の粒径としては、効果の点から通常0.1〜5μm程度が好ましく、さらには0.5〜3μmの範囲が好ましい。
ブロッキング防止剤の含有量としては、接着剤層を形成するためのインキ組成物中に1〜20質量%の範囲で含有されることが好ましい。
また、本発明の製造方法におけるインキ組成物中の固形分の含有量は、上記ポリアミド系樹脂、ブロッキング防止剤、及び以下に説明するその他の添加剤等を含めて、全体として35〜50質量%の範囲が好ましい。この範囲であると、溶剤とのバランスがよく、高い生産性で塗工、乾燥等の工程を行うことができ、良好な性能を有する転写シートを製造することができる。
上記転写用接着剤には、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、耐摩耗性向上剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、充填剤、溶剤、着色剤、耐候性向上剤、抗菌剤などが挙げられる。
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の微粒子が挙げられる。該微粒子の形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の微粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
接着剤層7は上記にて詳述したインキ組成物を塗工して形成する。接着剤層の厚さとしては、被転写体への接着性が得られれば特に制限はないが、通常1〜50μmの範囲である。特に、木質材料と樹脂含浸紙に同時に接着することを考慮すると、接着剤層7の膜厚は5〜30μmの範囲が好ましく、さらには10〜20μmの範囲が好ましい。
接着剤層7の塗工方法については特に制限はなく、通常用いられる、グラビア印刷、スプレーコート、フローコート等の方法を用いることができる。
本発明にかかる転写シートは、樹脂含浸紙が貼付された木質系材料において、樹脂含浸紙と木質系材料のいずれにも良好に接着させることができる。すなわち、本発明にかかる転写シートは、被転写体が樹脂含浸紙と木質基材の両方を有する基板用として極めて有効である。
ここで、樹脂含浸紙とは、繊維質基材に樹脂を含浸したものである。繊維質基材としては紙が代表的であるが、この他、不織布、或いはこれらの積層体等でもよい。紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙等が使用される。また、不織布としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、硝子等の繊維からなる不織布が使用される。紙や不織布の坪量は、通常20〜100g/m2程度である。そしてこれらの繊維質基材に対して、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂(DAP樹脂)などを添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)することで樹脂含浸紙となる。これらのうち、密着性の点から、DAP樹脂が好ましい。樹脂の含浸率{=〔(含浸後の坪量−含浸前の坪量)/含浸前の坪量〕×100〔%〕}については、曲加工適性の面から、30〜100%程度が好ましい。
また、木質系材料としては、木質合板、木質単板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)等の木質系材料が挙げられる。
上記被転写体の表面には、予め、接着剤層との接着を補助するための易接着プライマー、あるいは表面の微凹凸や多孔質を目止めし封じるシーラー剤を塗工しておいてもよい。易接着プライマー、あるいはシーラー剤としては、通常、イソシアネート、2液硬化ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の樹脂を塗工し形成する。
なお、被転写体の形状についても特に限定はなく、シート、フィルム、平板、曲面板、棒状板、立体物などいずれの形状にも適用できる。
本発明にかかる転写シートを樹脂含浸紙が貼付された木質系材料に転写する場合の加熱転写の温度は、180〜200℃程度である。より具体的には、転写シート1から転写層8を被転写体に転写する際に、接着剤層7を構成する接着剤を加熱熔融し、該接着剤を冷却固化させることによって転写層8を被転写体に接着し(初期接着)、その後、該接着剤を180〜200℃程度で溶融させ、硬化させて最終接着状態とするものである。
なお、基材2を剥離するタイミングは、転写圧の解除以降、基材2が剥離時応力で切断や塑性変形をしない程度に冷却し、接着剤層7が冷却や一部進行した硬化反応で固化し転写シート1が被転写体に固着した時点以降に行えばよい。
転写の条件としては、加熱転写温度は上述のとおりであり、転写速度は1〜10m/分の範囲が好ましい。1m/分以上であると高い生産性が得られ、また10m/分以下であると良好な転写加工性が得られる。以上の観点から、転写速度は4〜8m/分の範囲がさらに好ましい。
本発明の製造方法で得られた転写シートを用いた化粧板はドア材、浴室の壁材、ユニットバス壁材、ユニットバス内装材、厨房の壁財、AV機器、エアコンカバーなどとして用いることができるが、特に、上述のように、木質合板、木質単板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)等の木質系材料の一部を樹脂含浸紙で加工しているドア材などに最適である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)粘度;接着剤層7を形成するためのインキ組成物の塗工時の粘度を岩田カップにより、20℃の条件で測定した。
(2)化粧板の評価
MDF基板(大建工業(株)製「テクノウッド」、厚さ2mm)の周囲にDAP含浸紙(富士高分子(株)製「FLX−230BK」)を貼付した材料を用意した。この材料に実施例及び参考例で得られた化粧シートを、転写温度200℃、転写速度7m/分の条件で転写し、化粧板を製造した。このようにして製造した化粧板に関して、以下の項目について評価した。
(A)マイクロクラックの有無
得られた化粧板について、80℃で2時間加熱し、−20℃で2時間冷却するサイクルを3回繰り返し、デジタルマイクロスコープ(HIROX社製「SH−4500」」を用いて150倍で観察し、微小なクラック(マイクロクラック)の有無を確認した。以下の基準で評価した。
○;マイクロクラックなし
△;若干のマイクロクラックあり
×;マイクロクラックあり
(B)密着性
得られた化粧板の剥離層に18mm幅のセロファンテープ(ニチバン(株)製「セロテープ(登録商標)」)を密着させた後に、45度の方向に剥離を1回行い、以下の基準で評価した。
○;剥離なし
△;若干剥離あり
×;剥離あり
(C)ブロッキング性
得られた化粧板を2枚重ね、49kPa(0.5kg/cm2)の圧力をかけて、40℃で3日間保管した。その後のブロッキング性を以下の基準で評価した。
○;良好
△;PETフィルムに転写シートがわずかに密着するが実用上問題なし。
×;PETフィルムに転写シートが密着する。
実施例1
基材2として、PET(三菱ポリエステルフィルム(株)製「E−130」、1000mm幅)を用い、その片面にアクリル樹脂をバインダーとし、添加剤としてポリエステルを含有する樹脂組成物を塗工して剥離層3を設けた。剥離層3の厚さは2μmであった。
次いで、剥離層3上に3級アミノ基含有アクリル樹脂及びシリコーン系硬化剤を配合してなる2液硬化型の湿気硬化型シリコーンアクリル樹脂((株)昭和インク工業所製「耐SOL AC剤」)からなるプライマー層4を設けた。プライマー層4の厚さは2μmであった。
その上に、アクリルセルロースをバインダーとし、フタロシアニン、イソインドリノン、及びキナクリドンを主成分とする着色剤を用いて、木目模様の装飾層5をグラビア印刷にて形成した。装飾層5の厚さは2μmであった。
次に、装飾層5上に剥離層3を形成するのに用いたのと同様の2液硬化型アミノ基含有アクリル樹脂を用いてオーバープリント層6を設けた。オーバープリント層6の厚さは2μmであった。
次に、メチルシクロヘキサン(相対蒸発速度;320)42質量%、及びイソプロパノール(相対蒸発速度;150)18質量%からなる混合溶剤に、ポリアミド系樹脂(重量平均分子量17,000)24質量%、沈降防止剤としてシリカを11質量%、及びブロッキング防止剤として炭酸カルシウムを5質量%添加してインキ組成物を得た。上記方法により粘度を測定したところ17秒であった。
該インキ組成物を、上記オーバープリント層6の上にグラビアコーティングし、乾燥後の厚さが13μmとなるように接着剤層7を形成した。このようにして製造した転写シートを上記方法により評価した。結果を第1表に示す。
実施例2
実施例1において、溶剤として、メチルシクロヘキサン(相対蒸発速度;320)40質量%、及びn−ブタノール(相対蒸発速度;50)16質量%の混合溶剤を用い、ブロッキング防止剤である炭酸カルシウムを9質量%としたこと以外は実施例1と同様にして転写シートを製造した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
参考例1
溶剤として、トルエン(相対蒸発速度;240)40質量%、及びイソプロパノール(相対蒸発速度;150)15質量%の混合溶剤を用い、これにポリアミド系樹脂(重量平均分子量17,000)24質量%、沈降防止剤としてシリカを11質量%、及びブロッキング防止剤として炭酸カルシウムを5質量%添加してインキ組成物を得たこと以外は実施例1と同様にして転写シートを製造した。但し、該インキ組成物をオーバープリント層6上に印刷するに際しては、トルエンとイソプロパノールの混合溶剤(質量比1:1)14質量%を加えて希釈した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
Figure 0004978400
実施例1、2及び参考例1の評価結果から明らかなように、本発明の製造方法によれば、従来の芳香族系溶剤を用いた場合と同程度の塗工性を得ることができ、また同様の性能を有する転写シートを製造することができる。すなわち、本発明は、従来と同程度の性能を有する転写シートを、環境負荷の小さい溶剤を用いて、製造することを可能としたものである。
本発明の転写シートによれば、木質系材料と樹脂含浸紙のいずれにも接着性よく転写することができ、かつ高い意匠性を有する化粧板を製造することができる。従って、木質合板、木質単板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)等の木質系材料の一部をDAP樹脂含浸紙などの樹脂含浸紙で加工しているドア材などに好適に用いることができ、木質系材料及び樹脂含浸紙のいずれにも高い接着性で転写することができる。
本発明にかかる転写シートの一例の断面を示す模式図である。
符号の説明
1.転写シート
2.基材
3.剥離層
4.プライマー層
5.装飾層
6.オーバープリント層
7.接着剤層
8.転写層

Claims (7)

  1. 基材に、少なくとも剥離層、装飾層、及び接着剤層を含む転写層を積層した樹脂含浸紙が貼付された木質系基板用の転写シートの製造方法であって、該接着剤層はメチルシクロヘキサン及び炭素数1〜4のアルコールを主成分とし、芳香族化合物を含有しない溶剤にポリアミド系樹脂を溶解してなるインキ組成物を塗工して形成し、かつ装飾層と接着剤層の間にオーバープリント層を有することを特徴とする転写シートの製造方法。
  2. 前記アルコールの炭素数が3又は4である請求項1に記載の転写シートの製造方法。
  3. 前記アルコールの相対蒸発速度が30〜200である請求項1又は2に記載の転写シートの製造方法。
  4. 前記インキ組成物中のメチルシクロヘキサンの含有量が25〜50質量%であり、アルコールの含有量が10〜25質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の転写シートの製造方法。
  5. 前記インキ組成物中のメチルシクロヘキサンの含有量が40〜50質量%である請求項4に記載の転写シートの製造方法。
  6. 前記インキ組成物がブロッキング防止剤を含有する請求項1〜のいずれかに記載の転写シートの製造方法。
  7. 前記インキ組成物中の固形分の含有量が35〜50質量%である請求項1〜のいずれかに記載の転写シートの製造方法。
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