図1は、この発明の実施例に係る船外機の制御装置を船体も含めて全体的に示す概略図である。また、図2は図1に示す船外機の部分断面拡大側面図であり、図3は図1などに示す船外機の拡大側面図である。
図1から図3において、符号10は船外機を示す。船外機10は、図示の如く、船体(艇体)12の船尾(後尾)12aに装着される(固定される)。
船外機10は、図2に示すように、スイベルケース14、チルティングシャフト16およびスターンブラケット18を介して船体12に取り付けられる。また、船外機10はマウントフレーム20とシャフト部22を備え、シャフト部22がスイベルケース14の内部に鉛直軸回りに回転自在に収容されることで、船外機10は船体12に対して鉛直軸回りに回転自在とされる。マウントフレーム20は、その上端と下端が船外機10の本体を構成するフレーム(図示せず)に固定される。
スイベルケース14の付近には、シャフト部22を駆動する操舵用電動モータ24と、船外機10の船体12に対するチルト角およびトリム角を調節するパワーチルトトリムユニット(トリム角調整機構)26が配置される。操舵用電動モータ24の出力軸は減速ギヤ機構28を介してマウントフレーム20の上端に接続される。即ち、操舵用電動モータ24の回転出力が減速ギヤ機構28を介してマウントフレーム20に伝達され、よって船外機10はシャフト部22を操舵軸として左右に(鉛直軸回りに)操舵される。
パワーチルトトリムユニット26はチルト角調整用の油圧シリンダ26aとトリム角調整用の油圧シリンダ26bを一体的に備え、油圧シリンダ26a,26bを伸縮させることで、スイベルケース14がチルティングシャフト16を回転軸として回転させられ、船外機10はチルトアップ・ダウンあるいはトリムアップ・ダウンさせられる。尚、油圧シリンダ26a,26bは、船外機10に配置された図示しない油圧回路に接続されて作動油の供給を受けて伸縮させられる。
船外機10の上部には、内燃機関(以下「エンジン」という)30が搭載される。エンジン30は火花点火式の水冷ガソリンエンジンで、排気量2200ccを備える。エンジン30は水面上に位置し、エンジンカバー32によって覆われる。
エンジン30の吸気管34には、スロットルボディ36が接続される。スロットルボディ36はその内部にスロットルバルブ38を備えると共に、スロットルバルブ38を開閉するスロットル用電動モータ40が一体的に取り付けられる。
スロットル用電動モータ40の出力軸はスロットルボディ36に隣接して配置された減速ギヤ機構(図示せず)を介してスロットルバルブ38に接続され、スロットル用電動モータ40を動作させることでスロットルバルブ38が開閉され、エンジン30の吸気量が調量されてエンジン回転数が調節される。
船外機10は、鉛直軸と平行に配置されて回転自在に支持されるドライブシャフト(バーチカルシャフト)42と、エンジン30とドライブシャフト42の間に介挿されるトルクコンバータ44と、ドライブシャフト42に取り付けられると共に、エンジン30の潤滑部、パワーチルトトリムユニット26およびトルクコンバータ44などに作動油を圧送する油圧ポンプ46と、その作動油を貯留するリザーバ50とを備える。
ドライブシャフト42の上端にはエンジン30のクランクシャフト52がトルクコンバータ44を介して接続される一方、下端にはシフト機構54を介して水平軸回りに回転自在に支持されたプロペラシャフト56が接続される。プロペラシャフト56は、パワーチルトトリムユニット26の初期状態において、その軸線56aが船体12の進行方向に対して略平行となるように配置される。プロペラシャフト56の一端にはプロペラ60が取り付けられる。このように、ドライブシャフト42はエンジン30とプロペラ60を接続する。
図4は、図2に示すトルクコンバータ44付近を拡大して示す拡大断面図である。
図4に示す如く、トルクコンバータ44は、クランクシャフト52にドライブプレート62を介して接続されるポンプ・インペラ44aと、ポンプ・インペラ44aに対向配置されて作動油が給排されると共に、ドライブシャフト42に接続されるタービン・ランナ44bと、ポンプ・インペラ44aとタービン・ランナ44bの間に配置されるステータ44cと、ロックアップクラッチ44dなどからなる。
図5は、トルクコンバータ44や油圧ポンプ46などを模式的に示す油圧回路図である。
図5を参照しつつトルクコンバータ44や油圧ポンプ46などについて説明すると、油圧ポンプ46はエンジン30によって駆動され、リザーバ50の作動油を汲み上げて第1の油路64aに圧送する。第1の油路64aに圧送された作動油は、エンジン30の潤滑部やパワーチルトトリムユニット26(図5で省略)などに供給された後、第2の油路64bを介してリザーバ50へ還流される。
第1の油路64aには、第1の油路64aと油圧ポンプ46の吸入口とを接続する第3の油路64cが設けられ、その途中にはエンジン30に供給される作動油の圧力が規定値以上のときに開弁する一方、規定値未満のときに閉弁するリリーフ弁66が介挿される。
第1の油路64aにおいて油圧ポンプ46の吐出口と第3の油路64cの分岐点との間には、トルクコンバータ44に供給される作動油を流通させる第4の油路64dが接続される。また、第3の油路64cにおいてリリーフ弁66の下流側には、トルクコンバータ44から油圧ポンプ46へ戻る作動油を流通させる第5の油路64eが接続される。第4、第5の油路64d,64eには、ロックアップクラッチ44dの動作を制御するロックアップ制御弁70が設けられる。
ロックアップ制御弁70は電磁弁からなり、その出力は一方ではトルクコンバータ44のロックアップクラッチ44dのピストン室44d1に接続されると共に、他方ではその背面側の室44d2に接続される。従って、ロックアップ制御弁70が励磁・消磁されるときに油路を切替え、それによってロックアップクラッチ44dのオン(係合)・オフ(解放)が制御される。
具体的には、ロックアップクラッチ44dにあっては、ロックアップ制御弁70が励磁されて作動油がピストン室44d1に供給される一方、背面側の室44d2から排出されると、オン(締結。係合)される。また、ロックアップ制御弁70が消磁されると(図5に示す状態。初期状態)、作動油は背面側の室44d2に供給されると共に、ピストン室44d1から排出され、ロックアップクラッチ44dがオフ(非締結。解放)される。尚、上記したトルクコンバータ44の詳細は、特許文献1に開示されているので、これ以上の説明を省略する。
図2の説明に戻ると、シフト機構54は、ドライブシャフト42に接続されて回転させられる前進ベベルギヤ54aと後進ベベルギヤ54b、プロペラシャフト56を前進ベベルギヤ54aと後進ベベルギヤ54bのいずれかに係合自在とするクラッチ54cなどからなる。
エンジンカバー32の内部にはシフト機構54を駆動するシフト用電動モータ72が配置され、その出力軸は、減速ギヤ機構(図示せず)を介してシフト機構54のシフトロッド54dの上端に接続自在とされる。シフト用電動モータ72を駆動することにより、シフトロッド54dとシフトスライダ54eが適宜に変位させられ、それによってクラッチ54cを動作させてシフトポジションがフォワード、リバースおよびニュートラルの間で切り替えられる。
シフトポジションがフォワードあるいはリバースのとき、ドライブシャフト42の回転はシフト機構54を介してプロペラシャフト56に伝達され、よってプロペラ60は回転させられ、船体12を前進あるいは後進させる方向の推力を生じる。尚、船外機10はエンジン30に取り付けられたバッテリなどの電源部(図示せず)を備え、各電動モータ24,40,72などに動作電源が供給される。
図3に示す如く、スロットルバルブ38の付近にはスロットル開度センサ80が配置され、スロットルバルブ38の開度TH(以下「スロットル開度」という)を示す出力を生じる。シフトロッド54dの付近には、シフト位置センサ82が配置されてシフトポジション(ニュートラル、フォワードおよびリバース)に応じた信号を示す出力すると共に、ニュートラルスイッチ84も配置されてシフトポジションがニュートラルであるときにオン信号を、フォワードあるいはリバースであるときにオフ信号を出力する。
エンジン30のクランクシャフト52の付近にはクランク角センサ(入力回転数検出手段)86が取り付けられ、所定のクランク角度ごとにパルス信号を出力する。また、ドライブシャフト42の付近にはドライブシャフト回転数センサ(出力回転数検出手段)90が取り付けられ、ドライブシャフト42の回転数に応じた信号を出力する。
スイベルケース18の付近にはトリム角センサ(回転角センサ)92が配置され、船外機10のトリム角θtrm(具体的には、船体12に対する船外機10のピッチ軸回りの回転角)に応じた出力を生じる。
上記した各センサやスイッチの出力は、船外機10に搭載された電子制御ユニット(Electronic Control Unit。以下「ECU」という)94に入力される。ECU94はCPUやROM、RAMなどを備えたマイクロ・コンピュータからなり、船外機10のエンジンカバー32の内部に配置(搭載)される。
図1に示す如く、船体12の操縦席100の付近には、操船者によって回転操作自在なステアリングホイール102が配置される。ステアリングホイール102のシャフト(図示せず)には操舵角センサ104が取り付けられ、操船者によって入力されたステアリングホイール102の操舵角に応じた信号を出力する。
操縦席100付近にはリモートコントロールボックス106が配置され、そこには操船者の操作自在に配置されるシフト・スロットルレバー110が設けられる。シフト・スロットルレバー110は、初期位置から前後方向に揺動操作自在とされ、操船者からのシフトチェンジ指示とエンジン回転数の調節指示を入力する。リモートコントロールボックス106の内部にはレバー位置センサ112が取り付けられ、操船者によって操作されたシフト・スロットルレバー110の位置に応じた信号を出力する。
操縦席100付近にはさらに、操船者に手動操作自在に設けられると共に、船外機10のチルト角およびトリム角の調整指示を入力するパワーチルトトリムスイッチ(スイッチ)114が配置され、操船者によって入力された船外機10のチルトアップ・ダウンおよびトリムアップ・ダウンの指示に応じた信号を出力する。これら操舵角センサ104、レバー位置センサ112およびパワーチルトトリムスイッチ114の出力もECU94に入力される。
ECU94は、上記したセンサやスイッチの出力に基づいて各電動モータの動作を制御すると共に、トルクコンバータ44のロックアップクラッチ44dのオン・オフを制御し、さらにパワーチルトトリムユニット26を作動させてトリム角を調整する。
図6は、そのトルクコンバータ44のロックアップクラッチ44dのオン・オフの制御およびトリム角の調整を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは、ECU94によって所定の周期(例えば100msec)ごとに実行される。
先ずS10において、シフトポジションがニュートラルか否か判断する。この判断は、ニュートラルスイッチ84からオン信号が出力されているか否か検出することで行う。S10で否定されるときはS12に進み、スロットル開度THをスロットル開度センサ80の出力から検出(算出)し、S14に進んで検出されたスロットル開度THの所定時間(例えば500msec)当たりの変化量(変動量)DTHを算出する。
次いでS16に進み、エンジン30が減速状態にあるか否か判断する。S16の処理は、スロットル開度THの変化量DTHが0deg未満か否か判定することで、エンジン30(正確には船体12)が減速状態にあるか否か判断する。即ち、スロットル開度THの変化量DTHが負値の場合、エンジン30が減速していると判断する一方、0または正値の場合は定速あるいは加速していると判断する。
S16で否定されるときはS18に進み、トルクコンバータ44の増幅判定フラグ(以下「トルコン増幅判定フラグ」という)のビットが0か否か判断する。このトルコン増幅判定フラグのビットは、後述する如く、トルクコンバータ44においてエンジン30の出力トルクを増幅させてドライブシャフト42に伝達させる状態(即ち、船外機10がトルクコンバータ44でトルクを増幅させる領域(トルクの増幅領域)にあって船体12を加速させる状態)のとき、1にセットされる一方、エンジン30の出力トルクを増幅させないとき(即ち、船外機10がトルクの増幅領域外にあるとき)、0にリセットされる。
トルコン増幅判定フラグのビットは初期値が0とされるため、最初のプログラムループにおいてS18の判断は通例肯定されてS20に進み、エンジン30が加速状態にあるか否か判断する。具体的には、上記で算出されたスロットル開度THの変化量DTHとスロットル用所定値(しきい値)DTHrefとを比較し、変化量DTHがスロットル用所定値DTHref以上のとき、エンジン30が加速状態にあると判断する。従って、スロットル用所定値DTHrefは、エンジン30が加速していると判断できる値に設定され、例えば0.5degとされる。
S20で否定、即ち、エンジン30が減速・加速のいずれの状態でもなく、船体12が一定速度で走行しているときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS22に進み、トルクコンバータ44をロックアップオフモードで制御する。ロックアップオフモードでは、ロックアップ制御弁70を消磁し、トルクコンバータ44のロックアップクラッチ44dをオフさせる。これにより、エンジン30の出力トルクはトルクコンバータ44によって増幅させられてドライブシャフト42に伝達され、加速性能が向上することとなる。
次いでS24に進み、前記したトルコン増幅判定フラグのビットを1にセットし、今回のプログラムループを終了する。トルコン増幅判定フラグのビットが1にセットされると、次回以降のプログラム実行時はS18で否定されてS26に進む。
このように、トルコン増幅判定フラグのビットが1、即ち、船外機10においてエンジン30の出力トルクをトルクコンバータ44で増幅させて船体12を加速させる状態、換言すれば、エンジン30が加速状態にあるときのみS18で否定されてS26以降の処理を実行する。
S26においては、トルクコンバータ44の入力回転数NINと出力回転数NOUTを検出(算出)する。トルクコンバータ44の入力側はエンジン30のクランクシャフト52に接続されるため、入力回転数NINは、エンジン回転数と同一であり、よってクランク角センサ86の出力パルスをカウントすることで検出(算出)する。出力回転数NOUTはドライブシャフト回転数センサ90の出力から検出(算出)する。
次いでS28に進み、入力回転数NINと出力回転数NOUTからトルクコンバータ44の速度比eを算出する。ここで速度比eとは、次式に示す如く、トルクコンバータ44の出力回転数NOUTを入力回転数NINで除した値である。
速度比e=(出力回転数NOUT)/(入力回転数NIN)
S30に進み、トルクコンバータ44においてトルクの増幅領域が終了する直前か否か(詳しくは、トルクの増幅領域(加速領域)が飽和して加速が終了する直前か否か)判断する。具体的には、算出された速度比eを第1の所定値(しきい値)eref1と比較し、速度比eが第1の所定値eref1以上のとき、トルクの増幅領域が終了する直前であると判断する。従って、第1の所定値eref1は、トルクコンバータ44においてトルクの増幅領域が終了する直前であると判断できるような値、例えば0.7とされる。
尚、S30においては、前記したパワーチルトトリムスイッチ114が操船者によって操作されてトリム角などの調整指示に応じた信号が入力されたか否かも同時に判断され、信号が入力されるときはトルクコンバータ44の速度比eが第1の所定値eref1以上でない場合であっても、入力された信号に即してパワーチルトトリムユニット26を作動させる。これにより、操船者はパワーチルトトリムスイッチ114を操作することでパワーチルトトリムユニット26を作動させることができ、トリム角θtrmの調整を常に行うことができる。
S30で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS32に進み、パワーチルトトリムユニット26を作動させ、トリム角センサ92の出力から検出(算出)されるトリム角θtrmが所定角度θtrm1となるように調整する。
図7はその処理を説明する説明図である。尚、図中の符号yは船外機10の前後方向を、符号zは上下方向を示し、符号Wは海水あるいは淡水を、符号Sはその水面を示す。前後方向yと上下方向zは、船外機10における前後、上下を意味し、船外機10のチルト角やトリム角によっては必ずしも重力方向あるいは水平方向とは一致しない。
図7(a)は、船体12が停止あるいは比較的低速で走行される状態を示す。この状態のとき、エンジン30が加速されて船体12の速度(船速)が上昇すると、船体12は、図7(b)に示す如く、船首12bが持ち上がる一方、船尾12aが沈み込む、いわゆるハンプ状態となる。尚、図から分かるように、このときのプロペラシャフト56の軸線56aの方向は船体12の進行方向に対して平行とならない。
その後もエンジン30の加速状態が継続され、トルクコンバータ44の速度比eが第1の所定値eref1以上となってトルクの増幅領域が終了する直前になると、図7(c)に示すように、パワーチルトトリムユニット26を作動させてトリム角θtrmを所定角度θtrm1に調整してトリムアップさせる(S32)。トリム角θtrmを所定角度θtrm1に調整することで、プロペラシャフト56の軸線56aの方向(換言すれば、船外機10の推力の向き)は船体12の進行方向と略平行とされ、水面Sから受ける船体12の抵抗を減少させることができる。
これにより、船体12の速度は、トルクの増幅領域が終了する直前において上昇させられることとなる。このように、所定角度θtrm1は、プロペラシャフト56の軸線56aの方向を船体12の進行方向と略平行にし、水面Sから受ける船体12の抵抗を減少させるような値とされ、例えば5degに設定される。
図6の説明に戻ると、次いでS34に進み、トルクコンバータ44においてトルクの増幅領域が終了したか否か判断する。具体的には、算出された速度比eを第1の所定値eref1よりも大きい値に設定された第2の所定値(しきい値)eref2と比較し、速度比eが第2の所定値eref2以上のとき、トルクの増幅領域が終了したと判断する。第2の所定値eref2は、トルクコンバータ44においてトルクの増幅領域が終了したか否か判定できるような値、例えば0.8とされる。
S34で肯定されるときはS36に進み、入力回転数NINの変化量DNIN(換言すれば、エンジン回転数の変化量(変動量))を算出する。変化量DNINは、前回のプログラムループで検出された入力回転数NINから今回検出されたそれを減算して求める。
次いでS38に進み、加速終了後、船体12の速度が最高速付近で安定しているか否か判断する。これは、算出された入力回転数NINの変化量DNINの絶対値を既定値(しきい値)DNINrefと比較して変化量DNINの絶対値が既定値DNINref以下か否か判定し、変化量DNINの絶対値が既定値DNINref以下のとき、船体12の速度が最高速付近で安定していると判断することで行う。従って、既定値DNINrefは、加速終了後において船体12の速度が最高速付近となって運転状態が安定している、別言すれば、変化量DNINが比較的少ない状態であることを判定できるような値、例えば500rpmとされる。
S38で肯定されるときはS40に進み、トルクコンバータ44をロックアップオンモードで制御する。ロックアップオンモードでは、ロックアップ制御弁70を励磁し、ロックアップクラッチ44dをオンさせる。これにより、エンジン30のクランクシャフト52とドライブシャフト42が直結されるため、トルクコンバータ44において滑りなどが生じず、結果として船体12の速度が(エンジン性能上の)最高速度に到達、換言すれば、速度性が向上することとなる。
このように、ロックアップクラッチ44dがオンされる前に、パワーチルトトリムユニット26を作動させてトリム角θtrmを所定角度θtrm1に調整し、船体12の速度を上昇させる。これにより、ロックアップクラッチ44dをオンさせてドライブシャフト42に伝達されるトルクが減少するときであっても、船体12の速度はパワーチルトトリムユニット26の作動によって上昇させられているため、操船者に減速感を与え難くする(減速感を軽減させる)ことができる。尚、S40の処理後、S42に進んでトルコン増幅判定フラグのビットを0にリセットする。
また、S34およびS38で否定されるときはトルクコンバータ44によるトルクの増幅領域が終了(飽和)していない、あるいは船体12の速度が最高速付近で安定していないと判断されるため、S40,S42などの処理をスキップしてプログラムを終了する。
他方、S10で肯定、即ち、シフトポジションがニュートラルのときはS44に進み、トルクコンバータ44をロックアップオンモードで制御し(ロックアップクラッチ44dをオンさせ)、S46に進んでトルコン増幅判定フラグのビットを0にリセットする。
また、S16で肯定、即ち、エンジン30が減速状態にあるときはS48に進み、トルクコンバータ44をロックアップオフモードで制御、具体的にはロックアップクラッチ44dをオフさせ、S50に進んでトルコン増幅判定フラグのビットを0にリセットする。
次いでS52に進み、パワーチルトトリムユニット26を初期状態にする、具体的には、トリム角θtrmがS32の処理で所定角度θtrm1に調整されている場合、パワーチルトトリムユニット26を作動させてトリム角θtrmを初期の角度(例えば0deg)となるように調整してプログラムを終了する。
以上の如く、この発明の実施例にあっては、内燃機関(エンジン)30とプロペラ60を接続するドライブシャフト42と、前記内燃機関と前記ドライブシャフトの間に介挿されると共に、ロックアップクラッチ44dを有するトルクコンバータ44と、船体12に対するトリム角θtrmを調整するトリム角調整機構(パワーチルトトリムユニット)26とを備える船外機の制御装置において、前記トルクコンバータ44の入力回転数NINを検出する入力回転数検出手段(クランク角センサ86,ECU94。S26)と、前記トルクコンバータ44の出力回転数NOUTを検出する出力回転数検出手段(ドライブシャフト回転数センサ90,ECU94。S26)と、前記検出された入力回転数NINと出力回転数NOUTから前記トルクコンバータ44の速度比eを算出する速度比算出手段(ECU94。S28)と、前記算出された速度比eが第1の所定値eref1以上のとき、前記トリム角調整機構26を作動させて前記トリム角θtrmを所定角度θtrm1に調整するトリム角調整機構作動手段(ECU94。S30,S32)と、前記トリム角θtrmが前記所定角度θtrm1に調整された後、前記トルクコンバータ44のロックアップクラッチ44dをオンさせるクラッチオン手段(ECU94。S40)とを備える如く構成した。
このように、ロックアップクラッチ44dがオンされる前に、速度比eに基づいてパワーチルトトリムユニット26を作動させてトリム角θtrmを所定角度θtrm1に調整するように構成したので、所定角度θtrm1を水面Sから受ける船体12の抵抗が減少するような値にしてトリムアップさせることも可能となり、ロックアップクラッチ44dがオンされる前に船体12の速度を上昇させることができる。それにより、加速終了後にロックアップクラッチ44dをオンさせてドライブシャフト42に伝達されるトルクが減少するときであっても、船体12の速度はパワーチルトトリムユニット26の作動によって上昇させられているため、操船者に減速感を与え難い、換言すれば、減速感を軽減させることができる。
また、前記検出された入力回転数NINの変化量DNINを算出する入力回転数変化量算出手段(ECU94。S36)とを備えると共に、前記クラッチオン手段は、前記算出された速度比eが前記第1の所定値eref1よりも大きい値に設定された第2の所定値eref2以上であり、かつ前記算出された入力回転数NINの変化量DNINが既定値DNINref以下のとき、前記トルクコンバータ44のロックアップクラッチ44dをオンさせるように構成した(S34,S38,S40)。
これにより、トルクコンバータ44によるトルクの増幅が終わって加速が終了した時点を正確に検出(検知)でき、その状態のときにロックアップクラッチ44dをオンさせることで速度性を向上させることができる。即ち、トルクコンバータ44によるトルクの増幅領域が終了して加速が終わり、船体12の速度が最高速付近であることをトルクコンバータ44の速度比eと入力回転数NINの変化量DNINに基づいて検出(検知)し、それに応じてロックアップクラッチ44dをオンさせるように構成したので、加速終了後であって最高速付近の状態であるとき、ロックアップクラッチ44dを直ちにオンさせることができ、それによってトルクコンバータ44の滑りを防止しつつ最高速度に到達させることができ、速度性を向上させることができる。さらに、ロックアップクラッチ44dをオンさせてトルクコンバータ44の滑りを防止することで、燃費の悪化も防止することができる。
また、前記内燃機関(エンジン)30が加速状態にあるか否か判断する加速状態判断手段(ECU94。S20)とを備えると共に、前記トリム角調整機構作動手段は、前記内燃機関30が加速状態にあると判断されるとき、前記トリム角調整機構(パワーチルトトリムユニット)26を作動させて前記トリム角θtrmを前記所定角度θtrm1に調整するように構成した(S32)ので、エンジン30が加速状態にあるときのみトリム角θtrmを所定角度θtrm1に調整することとなり、よって加速終了後のロックアップクラッチ44dをオンさせる際に生じる減速感を効果的に軽減させることができる。
また、操船者に手動操作自在に設けられるスイッチ(パワーチルトトリムスイッチ)114とを備えると共に、前記トリム角調整機構作動手段は、前記スイッチ114が操作されるとき、前記トリム角調整機構(パワーチルトトリムユニット)26を作動させるように構成した(S30)ので、操船者はパワーチルトトリムスイッチ114を操作することでパワーチルトトリムユニット26を作動させることができ、よってトリム角θtrmの調整を常に行うことが可能となる。
尚、上記において、所定角度θtrm1や第1、第2の所定値eref1,eref2、既定値DNINref、エンジン30の排気量などを具体的な値で示したが、それらは例示であって限定されるものではない。
10 船外機、12 船体、26 パワーチルトトリムユニット(トリム角調整機構)、30 エンジン(内燃機関)、42 ドライブシャフト、44 トルクコンバータ、44d ロックアップクラッチ、60 プロペラ、86 クランク角センサ、90 ドライブシャフト回転数センサ、94 ECU(電子制御ユニット)、114 パワーチルトトリムスイッチ(スイッチ)